説明

2,6−ナフチル基を有する化合物

本発明は、一般式(I)で示され、その式中の置換基が請求項1に示される意味を有する化合物並びに1もしくは複数の本発明による化合物を含有する重合可能なもしくは重合不可能な液晶組成物、重合可能な本発明による液晶組成物のオリゴマー化もしくは重合によって得られるオリゴマー又はポリマー、基体に印刷もしくは被覆をするための方法において重合可能な本発明による液晶組成物を基体上に施与し、引き続き重合させることによって行う方法、本発明による液晶組成物又は本発明によるオリゴマーもしくはポリマーを、光学部材もしくは電子光学部材の製造のために用いる使用、選択された本発明による化合物の製造方法、並びに選択された本発明による化合物の製造に特に適した中間生成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式I
【化1】

[式中、置換基及び変数は以下の意味を有する:
1、Z2は、互いに無関係に、水素、置換されていてよいC1〜C20−アルキル又は重合を引き起こしうる反応性基を意味し、前記アルキルにおいて、その炭素鎖は、エーテル官能中の酸素原子、チオエーテル官能中の硫黄原子によって又は隣接していないイミノ基もしくはC1〜C4−アルキルイミノ基によって中断されていてよく、
1、A2は、互いに無関係に、1〜30個の炭素原子を有するスペーサーを意味し、前記スペーサーにおいて、その炭素鎖は、エーテル官能中の酸素原子、チオエーテル官能中の硫黄原子によって又は隣接していないイミノ基もしくはC1〜C4−アルキルイミノ基によって中断されてよく、
1、Y2は、互いに無関係に、化学的単結合、酸素、硫黄、−CO−、−O−CO−、−CO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−NR−CO−又は−CO−NR−を意味し、
3、Y4は、互いに無関係に、化学的単結合、酸素、硫黄、−CR=CR−、−C≡C−、−CR=CR−CO−O−、−O−CO−CR=CR−、−C≡C−O−、−O−C≡C−、−CH2−CH2−、−CH2−O−、−O−CH2−、−CH2−S−、−S−CH2−、−CO−、−O−CO−、−CO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−NR−CO−、−CO−NR−、−O−CO−O−、−O−CO−NR−又は−NR−CO−O−を意味し、
Rは、水素又はC1〜C4−アルキルを意味し、
5は、Y1及びY2とは無関係に、それらの上述の意味又は−O−COO−を意味し、
1、T2は、飽和もしくは不飽和の、置換されていてよい、同素環式もしくは複素環式の、二価の基を意味し、
r、tは、互いに無関係に、0又は1を意味し、かつ
sは、0、1、2又は3を意味し、その際、
それぞれの置換基T2及びY3は、s>1の場合に、互いに同一もしくは異なってよく、かつ
2,6−ナフチル基中の水素原子も、置換基Z1、Z2、A1、A2、Y3、Y4、R、T1及びT2中の炭素原子に結合された水素原子は、部分的にもしくは完全に、ハロゲン原子によって置換されていてよい]で示される化合物に関する。
【0002】
更に、本発明は、1もしくは複数の本発明による化合物を含有する重合可能なもしくは重合不可能な液晶組成物、重合可能な本発明による液晶組成物のオリゴマー化もしくは重合によって得られるオリゴマー又はポリマー、基体に印刷もしくは被覆をするための方法において重合可能な本発明による液晶組成物を基体上に施与し、引き続き重合させることによって行う方法、本発明による液晶組成物又は本発明によるオリゴマーもしくはポリマーを、光学部材もしくは電子光学部材の製造のために用いる使用、選択された本発明による化合物の製造方法、並びに選択された本発明による化合物の製造に特に適した中間生成物に関する。
【0003】
多くの化合物は、加熱に際して、分子の定義された短距離秩序及び遠距離秩序の液晶状態から、液状の無秩序な状態に直接的に移り変わらず、その際に、分子は運動しているが、分子軸は秩序構造を形成している液晶相を通過する。延伸された分子は、この場合、しばしばネマティック液晶相であって、遠距離秩序配向によって分子長軸の平行配置を特徴とするものを形成する。係るネマティック相がキラル化合物又はキラル分子部分を含む場合には、螺旋型上位構造を特徴とするキラル−ネマティック相もしくはコレステリック相が形成しうる。
【0004】
その注目すべき光学特性のため、液晶材料、特にネマティック材料、キラル−ネマティック材料又はコレステリック材料は、とりわけ光学的用途又は電子光学的用途において関心が持たれている。しかしながら、しばしば、液晶相が生ずる温度範囲は、所望の使用温度の範囲外にあるか、又は小さい温度間隔でのみ広がっているにすぎない。
【0005】
液晶性の秩序構造を固体状態で固定する場合に、種々の可能性が存在する。冷却に際して液晶状態からガラス状に固化させる他に、ポリマー網目構造に重合導入する可能性があり、又は液晶性化合物が重合可能な基を含む場合には、液晶化合物自体を重合させる可能性がある。
【0006】
更に、しばしば、液晶材料の複屈折ができる限り高いことが望まれている。前記の態様として、とりわけ2,6−ナフチル基を含む液晶材料は、高い潜在性を有すると思われる。
【0007】
2,6−ナフチル基及び反応性のグリシジル基を含む重合可能なコレステリック化合物は、例えばM.A.Espinosa他著のJournal of Polymer Science Part A,Polymer Chemistry,Vol.39,2847−2858(2001)の文献に記載され、2,6−ナフチル基及び反応性プロパルギル末端基を有する熱硬化可能なネマチックな及びコレステリックなジエステルは、H.R.Kricheldorf及びA.Gerken著のHigh Performance Polymers 9(1997),75−90の文献並びに文献DE19717371号A1の文献に記載されている。2,6−ナフチル基を含む重合可能でない化合物は、文献EP0982621号A2に開示されている。
【0008】
本発明の課題は、液晶組成物の製造に適した、比較的高い複屈折特性を有する更なる化合物であって、それ自体もしくは係る組成物の形態において加工のために十分に大きな位相幅(Phasenbreite)を有する化合物を提供することであった。
【0009】
従って、冒頭に記載した式Iの化合物が見出された。
【0010】
式I中の置換基Z1及びZ2に関して、C1〜C20−炭素鎖がエーテル官能中の酸素によって中断されていてよいC1〜C20−アルキルとしては、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t−ペンチル、ヘキシル、2−メチル−ペンチル、ヘキシル、へプチ−3−イル、オクチル、2−エチルヘキシル、イソオクチル、ノニル、イソノニル、デシル、イソデシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、3,5,5,7−テトラメチルノニル、イソトリデシル(上述の呼称、イソオクチル、イソノニル、イソデシル及びイソトリデシルは、慣用名であり、オキソ合成により得られるアルコールに由来する − それについてはUllmanns Encyklopaedie der technischen Chemie,第4版,第7巻,第215〜217頁並びに第11巻,第435及び436頁を参照のこと)、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、メトキシメチル、2−エチルヘキソキシメチル、2−メトキシエチル、2−エトキシエチル、2−プロポキシエチル、2−イソプロポキシエチル、2−ブトキシエチル、2−もしくは3−メトキシプロピル、2−もしくは3−エトキシプロピル、2−もしくは3−プロポキシプロピル、2−もしくは3−ブトキシプロピル、2−もしくは4−メトキシブチル、2−もしくは4−エトキシブチル、2−もしくは4−プロポキシブチル、2−もしくは4−ブトキシブチル、3,6−ジオキサヘプチル、3,6−ジオキサオクチル、4,8−ジオキサノニル、3,7−ジオキサオクチル、3,7−ジオキサノニル、4,7−ジオキサオクチル、4,7−ジオキサノニル、4,8−ジオキサデシル、3,6,8−トリオキサデシル、3,6,9−トリオキサウンデシル、3,6,9,12−テトラオキサトリデシル又は3,6,9,12−テトラオキサテトラデシル;C1〜C20−炭素鎖がチオエーテル官能中の硫黄原子、隣接していないイミノ基、C1〜C20−アルキルイミノ基及び/又はカルボニル基によって中断されていてよい、相応のC1〜C20−アルキルは、形式上、前記の例示した酸素を含む基から、その酸素を硫黄原子、隣接していないイミノ基、C1〜C20−アルキルイミノ基及び/又はカルボニル基で交換することによって導くことができる。
【0011】
好適な、重合を引き起こしうる反応性基Z1及びZ2は、例えば
【化2】

であり、その際、重合とは、ポリマーのあらゆる合成反応を意味するべきであり、従って連鎖反応としての付加重合、段階反応としての付加重合並びに縮合重合も意味する。
【0012】
前記の例示された反応性基の置換基R′は、この場合に、水素又はC1〜C4−アルキル、すなわち、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、イソブチル又はt−ブチルを表し、それらは同一又は異なってよい。
【0013】
シアネート基を有する化合物は、自発的に三量体化して、相応のシアヌレート、シアノ基を有するシアヌレートをもたらし、特に酸、例えば塩酸もしくは塩基の触媒下で三量体化して、相応のトリアジンをもたらしうる。エポキシ基、チイラン基、アジリジン基、イソシアネート基及びイソチオシアネート基を有する化合物は、重合のために、通常は、相補的な反応性基を有する更なる化合物を必要とする。ここで、例えばイソシアネートは、アルコールと重合してウレタンをもたらし、そしてアルコールと重合して、尿素誘導体をもたらしうる。同様のことは、チイラン及びアジリジンについても当てはまる。相補的な反応性基は、その際、第一の本発明による化合物と混合される第一の本発明による化合物中に存在してよく、又は、前記基は、2もしくは複数の前記の相補的な基を含む補助化合物によって、重合混合物中に導入することができる。これらの化合物が、それぞれ2個の前記の反応性基を有するのであれば、十分に熱可塑性の特性を有する直鎖状のポリマーが生成する。該化合物が2個より多くの反応性基を有するのであれば、機械的に特に安定な架橋されたポリマーが生成する。マレインイミド基は、スチレンなどのオレフィン性化合物とのラジカル共重合のために特に適している。
【0014】
本発明による化合物中の好ましい反応性基Z1及びZ2は、
【化3】

からなる群から選択される。
【0015】
特に好ましい反応性基Z1及びZ2は、
【化4】

である。
【0016】
本発明による化合物中の好ましい反応性基Z1−Y1及びZ2−Y2は、
【化5】

からなる群から選択される。
【0017】
特に好ましい反応性基Z1−Y1及びZ2−Y2は、この場合に、
【化6】

である。
【0018】
架橋Y1〜Y4中に現れる置換基Rは、水素の他に、C1〜C4−アルキル、すなわち、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、イソブチル又はt−ブチルを表す。
【0019】
スペーサーA1及びA2としては、この目的のために知られる全ての基が該当する。該スペーサーは、1〜30個の、有利には3〜12個の炭素原子を含み、かつ主に直鎖状の脂肪族の基からなる。該スペーサーは、その鎖中で、例えば隣接していない酸素原子もしくは硫黄原子又はイミノ基もしくはC1〜C4−アルキルイミノ基、例えばメチルイミノ基によって中断されていてよい。スペーサー鎖についての可能な置換基としては、フッ素、塩素、臭素、シアン、メチル及びエチルが該当する。特に、スペーサー鎖の炭素原子に結合される水素原子は、部分的にもしくは完全に、フッ素原子によって置換されていてよい。
【0020】
代表的なスペーサーA1及びA2は、例えば:
【化7】

[式中、mは、1〜3を表し、かつpは、1〜12を表す]である。
【0021】
基T1及びT2は、飽和もしくは不飽和の、同素環式もしくは複素環式の、二価の基である。これらは、1個の環からなるだけでなく、複数の互いに縮合された環からなってもよい。ここで、T1及びT2については、二価のキノリン基、デカリン基又はナフタリン基が該当する。
【0022】
好ましくは、式Iの重合可能な液晶化合物中の基T1及びT2は、
【化8】

からなる群から選択される二価の基であり、その際、基
【化9】

は、4個までの同一もしくは異なる置換基で置換されていてよく、基
【化10】

は、3個までの同一もしくは異なる置換基で置換されていてよく、基
【化11】

は、2個までの同一もしくは異なる置換基で置換されていてよく、かつ基
【化12】

は、1個の置換基で置換されていてよく、前記置換基は、ハロゲン、NO2、NO、CN、CHO、L1、CO−L1、X1−CO−L1、X1−SO−L1、X1−SO2−L1、X1−L1′、CO−X1−L1′、O−CO−X1−L1′、SO−X1−L1′又はSO2−X1−L1′であり、その際、
1は、C1〜C20−アルキル、C2〜C20−アルケニル、C2〜C20−アルキニル、C6〜C10−アリール、2〜12個の炭素原子を有するヘテロアリール、C6〜C10−アリール−C1〜C20−アルキル、C6〜C10−アリール−C2〜C20−アルケニル、C6〜C10−アリール−C2〜C20−アルキニル、ヘテロアリール基中にそれぞれ2〜12個の炭素原子を有するヘテロアリール−C1〜C20−アルキル、ヘテロアリール−C1〜C20−アルケニルもしくはヘテロアリール−C1〜C20−アルキニルを意味し、その際、前記のC1〜C20−炭素鎖は、エーテル官能中の酸素原子、チオエーテル官能中の硫黄原子、隣接していないイミノ基、C1〜C20−アルキルイミノ基及び/又はカルボニル基によって中断されていてよく、かつC6〜C10−アリールも、ヘテロアリールも、ハロゲン、NO2、NO、CN、CHO、L2、CO−L2、X2−CO−L2、X2−SO−L2、X2−SO2−L2、X2−L2′、CO−X2−L2′、O−CO−X2−L2′、SO−X2−L2′又はSO2−X2−L2′からなる群から選択される1もしくは複数の置換基で置換されていてよく、
1′は、水素を意味するか、又はL1とは無関係に、L1と同じ意味を有し、
2は、C1〜C20−アルキル、C2〜C20−アルケニル、C2〜C20−アルキニル、C6〜C10−アリール、2〜12個の炭素原子を有するヘテロアリール、C6〜C10−アリール−C1〜C20−アルキル、C6〜C10−アリール−C2〜C20−アルケニル、C6〜C10−アリール−C2〜C20−アルキニル、ヘテロアリール−C1〜C20−アルキル、ヘテロアリール基中にそれぞれ2〜12個の炭素原子を有するヘテロアリール−C2〜C20−アルケニル又はヘテロアリール−C2〜C20−アルキニルを意味し、
2′は、水素を意味するか、又はL2とは無関係に、L2と同じ意味を有し、かつ
1、X2は、互いに無関係に、水素、硫黄又はNL1′もしくはNL2′を意味し、その際、
基L1及び/又はL2において、炭素原子に結合される水素原子は、部分的にもしくは完全に、ハロゲン原子によって置換されていてよい。
【0023】
1〜C20−アルキルであってそのC1〜C20−炭素鎖がエーテル官能中の酸素原子、チオエーテル官能中の硫黄原子、隣接していないイミノ基、C1〜C20−アルキルイミノ基及び/又はカルボニル基によって中断されていてよいものの意味における置換基L1及びL1′並びにC1〜C20−アルキルの意味における置換基L2及びL2′のための例は、既に、置換基Z1及びZ2の場合に例示されたものである。
【0024】
2〜C20−アルケニルであってそのC2〜C20−炭素鎖がエーテル官能中の酸素原子、チオエーテル官能中の硫黄原子、隣接していないイミノ基、C1〜C20−アルキルイミノ基及び/又はカルボニル基によって中断されていてよいものの意味における置換基L1及びL1′並びにC2〜C20−アルケニルの意味における置換基L2及びL2′のための例は、特に、C2〜C20−アルケ−1−エニル基である。これらの基は、前記に置換基Z1及びZ2の場合に例示した好適な基から、隣接している炭素原子に存在する2個の水素原子を、更なる1個の炭素−炭素−結合によって形式上交換することによって誘導することができる。
【0025】
2〜C20−アルキニルであってそのC2〜C20−炭素鎖がエーテル官能中の酸素原子、チオエーテル官能中の硫黄原子、隣接していないイミノ基、C1〜C20−アルキルイミノ基及び/又はカルボニル基によって中断されていてよいものの意味における置換基L1及びL1′並びにC2〜C20−アルキニルの意味における置換基L2及びL2′のための例は、特に、C2〜C20−アルキ−1−イニル基である。これらの基は、前記に置換基Z1及びZ2の場合に例示した好適な基から、隣接している炭素原子に存在する4個の水素原子を、更なる2個の炭素−炭素−結合によって形式上交換することによって誘導することができる。
【0026】
6〜C10−アリール−C1〜C20−アルキル、C6〜C10−アリール−C2〜C20−アルケニル、C6〜C10−−アリール−C2〜C20−アルキニル、それぞれヘテロアリール基中に2〜12個の炭素原子を有するヘテロアリール−C1〜C20−アルキル、ヘテロアリール−C2〜C20−アルケニル及びヘテロアリール−C2〜C20−アルキニルであってそのC1〜C20−炭素鎖がエーテル官能中の酸素原子、チオエーテル官能中の硫黄原子、隣接していないイミノ基、C1〜C20−アルキルイミノ基及び/又はカルボニル基によって中断されていてよいものの意味における置換基L1及びL1′並びにC6〜C10−アリール−C1〜C20−アルキル、C6〜C10−アリール−C2〜C20−アルケニル、C6〜C10−アリール−C2〜C20−アルキニル、それぞれヘテロアリール基中に2〜12個の炭素原子を有するヘテロアリール−C1〜C20−アルキル、ヘテロアリール−C2〜C20−アルケニル及びヘテロアリール−C2〜C20−アルキニルの意味における置換基L2及びL2′のための例は、特に、前記で置換基Z1及びZ2の場合に例示した基から、末端水素原子をC6〜C10−アリールもしくは2〜12個の炭素原子を有するヘテロアリールによって形式上交換することによって誘導することができる基である。
【0027】
置換基L1及びL1′並びにL2及びL2′については、C6〜C10−アリールとして、特にフェニル及びナフチルが該当する。
【0028】
置換基L1及びL1′並びにL2及びL2′については、2〜12個の炭素原子を有するヘテロアリールとして、ピロール、フラン、チオフェン、ピラゾール、イソキサゾール、イソチアゾール、イミダゾール、1H−1,2,3−トリアゾール、1H−1,2,4−トリアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、1H−アゼピン、2H−アゼピン、オキサゾール、チアゾール、1,2,3−、1,2,4−もしくは1,3,4−オキサゾール、1,2,3−、1,2,4−もしくは1,3,4−チアジアゾールから、並びに場合によりベンゾ縮合されたもしくはジベンゾ縮合された環、例えばキノリン、イソキノリン、インドール、ベンゾ[b]フラン(クマロン)、ヘンゾ[b]チオフェン(チオナフテン)、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、1H−インダゾール、インドキサゾール、ベンゾ[d]イソチアゾール、アントラニル、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、キノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン又はフェナジンから誘導される基が該当する。
【0029】
置換基L1及びL1′の場合に、C6〜C10−アリールもしくは2〜12個のヘテロアリールは、1もしくは複数の置換基のハロゲン、NO2、NO、CN、CHO、L2、CO−L2、X2−CO−L2、X2−SO−L2、X2−SO2−L2、X2−L2′、CO−X2−L2′、O−CO−X2−L2′、SO−X2−L2′及びSO2−X2−L2′で置換されていてよい。
【0030】
ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素、特にフッ素又は塩素を意味する。
【0031】
置換基X1及びX2は、互いに無関係に、酸素、硫黄又はNL1′もしくはNL2′を意味する。
【0032】
基L1及び/又はL2において、炭素原子に結合される水素原子は、部分的にもしくは完全に、ハロゲン原子によって置換されていてよい。前記ハロゲン原子としては、ここでは、塩素原子、特にフッ素原子が該当する。
【0033】
式Iの化合物とは、特に、構造
【化13】

の化合物が好ましく、すなわち式I中の変数rが、値0を採ることが好ましい。更に、2,6−ナフチル基において、水素原子は、部分的にもしくは完全に、ハロゲン原子、例えば塩素原子又は特にフッ素原子によって置換されていてよい。
【0034】
更なる好ましい本発明による化合物は、式I中の(Y3−T2−)sが、式Ia
【化14】

[式中、s′が0、1又は2の値を採り、そしてs′>0の場合には、置換基Y3は、かつs′>1の場合には、置換基T2は、互いに同一もしくは互いに異なっていてよい]の基に相当する化合物である。
【0035】
これらの好ましい化合物は、従って、以下に示される式
【化15】

及び(rが0である場合には)
【化16】

[式中、G1及びG2は、基Z1−Y1−A1−O−COO−もしくは−(Y5−A2−)t2−Z2を表し、かつ両方の2,6−ナフチル基において、水素原子は、部分的にもしくは完全に、ハロゲン原子、例えば塩素原子又は特にフッ素原子によって置換されていてよい]に相当する。
【0036】
特に好ましくは、式Iで示される化合物並びに前記の式で示される化合物であって、それらの式中、tが1の値を採り、かつY5が、基−O−COO−に相当する化合物である。
【0037】
殊に好ましくは、重合可能な液晶化合物並びにそれらの好ましい実施態様であって、式中、tが1の値を採り、かつ基Z1−Y1−A1−及び−A2−Y2−Z2であるものである。
【0038】
好ましい本発明による化合物は、以下に示される式I′
【化17】

[式中、G1及びG2′は、基Z1−Y1−A1−O−COO−もしくは−COO−O−A2−Y2−Z2(tは、1の値を採る)を意味し、かつR1〜R4は、互いに無関係に、水素又は、ハロゲン、NO2、CN、CHO、L1、CO−L1、X1−CO−L1、X1−L1′及びCO−X1−L1′からなる群から選択される置換基を表し、その際、
1は、C1〜C20−アルキルを意味し、
1′は、水素又はC1〜C20−アルキルを意味し、かつ
1は、酸素又はNL1′を意味する]に相当する。
【0039】
前記の式I′の特に好ましい化合物においては、基G1及びG2は、同一である。
【0040】
前記の式I′の更なる特に好ましい化合物においては、両方の置換基R1及びR3か、又は両方の置換基R4及びR2のいずれかは、水素を意味する。
【0041】
前記の式I′の更なる特に好ましい化合物においては、両方の置換基R1又はR3の少なくとも1個は、ハロゲン、NO2、CN、CHO、L1、CO−L1、X1−CO−L1、X1−L1′又はCO−X1−L1′を意味し、かつ両方の置換基R4及びR2と、場合により置換基R1又はR3の1個は、水素を意味し、その際、L1は、C1〜C20−アルキルを表し、L1′は、水素又はC1〜C20−アルキルを表し、かつX1は、水素又はNL1′を表す。
【0042】
前記の式I′の更なる特に好ましい化合物においては、両方の置換基R1又はR3の少なくとも1個は、L1、CO−L1、X1−CO−L1、X1−L1又はCO−X1−L1′を意味し、かつ両方の置換基R4及びR2と、場合により置換基R1又はR3の1個は、水素を意味し、その際、L1は、C1〜C20−アルキルを表し、L1′は、水素又はC1〜C20−アルキルを表し、かつX1は、水素又はNL1′を表す。
【0043】
前記の式の更なる特に好ましい化合物においては、両方の置換基R1又はR3の少なくとも1個は、L1、X1−L1又はCO−X1−L1を意味し、かつ両方の置換基R4及びR2と、場合により置換基R1又はR3の1個は、水素を意味し、その際、L1は、C1〜C20−アルキルを表し、かつX1は、酸素を表す。
【0044】
本発明の更なる対象は、重合可能なもしくは重合可能でない液晶組成物であって、成分として、10〜100質量%の式Iの本発明による化合物もしくはその好ましい実施態様と、0〜90質量%の他のモノマーと、0〜50質量%の1もしくは複数のキラル化合物と、0〜90質量%の他の添加剤とを含有し、その際、それらの成分の割合の合計は、補い合って100質量%となる組成物である。
【0045】
重合可能な又は重合可能でない本発明による液晶組成物とは、その際、まさに一般的に、係る組成物であって、その1もしくは複数の成分が自体で既に(関心が持たれる温度範囲において)液晶特性を示す組成物を表すだけでなく、むしろその組成物とは、それらの成分の混合によって又は本発明による化合物の混加によってはじめて液晶挙動を示す組成物(例えばリオトロピック系)をも表す。更に、本発明による式Iの化合物及びそれらの好ましい実施態様は、既にそれ自体が液晶挙動を有してよいが、そららが、前記特性を必ずしも示さねばならないわけではない。
【0046】
本発明による重合可能でない組成物は、特に、通常の重合条件下で、自己支持性の重合生成物もしくは縮合生成物の形成が可能でない組成物である。前記組成物は、例えば好適な市販の液晶性材料、例えばディスプレイ技術においてアクティブLC層のために使用されるような液晶性材料と、1もしくは複数の本発明による式Iの化合物もしくはその好ましい実施態様とを混合することによって製造することができる。後者が、1もしくは2個の反応性基Z1及びZ2を含む化合物である場合に、該化合物は、本発明による組成物中に、相応して密に架橋された自己支持性の重合生成物もしくは縮合生成物の生成のために十分でない濃度において存在している。
【0047】
重合可能な本発明による組成物は、前記成分の少なくとも1個が、通常の重合条件下で、重合生成物もしくは縮合生成物を形成できる組成物であって、それ自体で重合可能であり、かつ重合もしくは縮合して自己支持性の生成物となりうる組成物である。
【0048】
重合可能な液晶組成物の成分中の反応性基の数に応じて、所望の重合度、架橋度及び/又は縮合度は、引き続いての重合もしくは縮合に応じて調整することができる。前記組成物は、好適な材料と、1もしくは複数の本発明による化合物との混合によって容易に製造することができ、その際、前記材料はそれ自体で重合可能であるか又は重合可能でなく、液晶性であるか又は液晶性でなくてもよい。好適な重合可能な液晶材料は、例えば国際公開番号WO95/22586号A1、95/24454号A1、95/24455号A1、96/04351号A1、96/24647号A1、97/00600号A2、97/34862号A1及び98/47979号A1並びに欧州文献番号EP1134270号A1及びDE19835730号A1に記載されており、かつ主に、概略構造P−Y−A−Y−M−Y−A−Y−Pに相当し、式中、P、Y及びAは、式I中の置換基Z1及びZ2、Y1〜Y5並びにA1及びA2と同様の意味を有し、かつMは、メソゲン単位を指す。
【0049】
文献DE10025782号A1中で、そこに記載される液晶混合物の成分B)として挙げられている反応性化合物を、本発明による液晶組成物に、更なるモノマーとして混加してよい。これらの主に廉価な化合物は、それ自体、一般に、液晶性挙動を示さないが、その混加は、本発明による組成物中の費用のかかる成分の割合を、液晶挙動に顕著な影響を及ぼすことなく減らす可能性を与える。更に、係る反応性モノマーを用いると、組成物の特性、例えば架橋度、粘度、弾性などを狙い通りに調整することができる。好適な反応性モノマーの選択は、当業者によって、場合により予備試験を実施することにより容易に実施することができる。ここでは、係る反応性化合物は、(補助)化合物としても、更に前記に議論した範囲内で作用しうることを留意すべきである。
【0050】
本発明による液晶組成物の意図される用途に応じて、前記組成物は、少なくとも1種のキラル化合物をなおも含有してよい。その添加によって、キラル−ネマティックもしくはコレステリックな液晶組成物であって、例えば視角に依存する色彩効果、スペル特領域のIRもしくはUVの波長領域での反射などの特定の光学特性を有する組成物が得られる。
【0051】
好ましいキラル化合物は、この場合に、一般式(P−Y−)pX、(P−Y−A−Y−)pX及び(P−Y−A−Y−M−Y−)p−Xに相当し、その式中、置換基P、Y及びAの定義は、式Iの置換基Z1及びZ2、Y1〜Y5並びにA1及びA2の定義に相当し、Mは、メソゲン基を指し、pは、1、2、3、4、5もしくは6の値を表し、かつXは、相応のp価のキラル基を表し、その際、キラル基Xに結合されるp個の基は、同一又は異なってよい。
【0052】
可能な基Xは、例えば文献WO95/16007号A1の第5〜9頁に示されており、その際、特に2価の基
【化18】

が挙げられるべきである。
【0053】
更なるキラル化合物であって、上述の並びに別の好適なキラル基Xを含む化合物は、例えば文献EP0747382号A1、EP0750029号A1、EP1136478号A1及びDE19843724号A1に挙げられている。
【0054】
本発明による液晶組成物は、なおも更なる添加剤を含有してよい。係る添加剤としては、光開始剤、希釈剤、増粘剤、消泡剤及び脱気剤、滑沢助剤及びレベリング助剤、熱硬化性もしくは放射線硬化性の助剤、基体湿潤助剤、湿潤助剤及び分散助剤、疎水化剤、定着剤及び引掻強さの向上のための助剤、着色物質及び顔料並びに光安定剤、熱安定剤及び/又は酸化安定剤の群から選択される添加剤が該当する。前記の添加剤の化学・物理的性質については、文献WO00/47694号A1に詳細に検討されている。
【0055】
本発明の更なる対象は、本発明による重合可能な液晶組成物のオリゴマー化又は重合によって得られるオリゴマー又はポリマーである。これらの本発明によるオリゴマー又はポリマーは、特に、フィルムの形態においても、すなわち均一な厚さの自己支持性の層の形態においても存在してよい。前記フィルムは、好適な措置によって、容易に剥離可能であり、かつ他の基体に移して永続的に残留させることが可能である性質を持った基体上に存在してよい。係るフィルムは、例えばシート被覆の分野で、かつ積層法において使用することができる。
【0056】
更に、係るフィルムは、その特性を相応の使用目的に適合させて、種々の分野で使用することができる。例えば、光学的な情報の表示のための装置において使用することができる。係る装置は、例えばビデオプロジェクターもしくはオーバーヘッドプロジェクター、電気泳動表示装置、交通用ディスプレイ、コンピュータモニタ、テレビ、プリンタスクリーンもしくは調理機器で使用するためのLCD並びに宣伝用ボード、照明及び標識板、更なる可動式スクリーン、例えば携帯電話、ラップトップ、デジタルカメラ、車両中のスクリーン並びにバスや電車の行き先表示板である。前記フィルムは、前記の装置において種々の機能において、例えば波長選択的な光又は広帯域偏光の生成用のカラーフィルタ又はシートとして含まれていてよい。
【0057】
本発明の更なる対象は、基体の印刷又は被覆のための方法において、本発明による重合可能な液晶組成物を基体上に施与し、引き続き重合させることを特徴とする方法である。
【0058】
基体を液晶材料で印刷又は被覆するための方法様式に関しては、適宜、文献WO96/02597号A2を参照されたい。更に、本発明による方法によって製造される基体表面と当初の基体表面は、部分的にもしくは完全に覆っている重合された層を、本願の範囲における基体として解すべきなので、本発明によれば、複数回の印刷及び/又は被覆がされた基体の製造も含まれている。
【0059】
ここでは更に、"印刷"とは、通常、基体表面を不完全に覆うことを表し、"被覆"とは、基体表面を完全に覆うことを表すことに留意すべきである。
【0060】
基体としては、更に、紙製品及び板紙製品の他に、例えば買い物袋、雑誌、パンフレット、消耗品、飲食物及び高級品の贈り物用包装及び包装材料、また例えば装飾包装と非装飾包装の用途のためのシート、並びにあらゆる種類のテキスタイル及び皮革が該当する。更に、基体としては、紙幣、有価証券、入場券などの製造に使用される材料が該当する。
【0061】
しかしながら、他の基体は、(娯楽用)電気機器、例えば音楽カセット(MC)、SVHSカセット及びVHSカセット、ミニディスク(MD)、コンパクトディスク(CD)、デジタル汎用ディスク(DVD)及び相応の再生装置及び/又は記録装置、テレビ、ラジオ、電話/携帯電話、EDV機器などの商品並びにレジャー用、スポーツ用、家庭用及び娯楽用の商品、例えば自転車、児童用車両、スキー、スノーボード及びサーフボード、インラインスケート及びローラースケート靴及びスケート靴並びに家庭用機器である。更に、係る基体とは、例えば筆記具及び眼鏡フレームを表す。
【0062】
しかしながら、更なる基体は、光学部材もしくは電子光学部材において又はそれらの製造に使用される種々のシートでもある。係るシートは、ポリビニルアルコール(PVA)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリイミド(PI)、ポリビニルシンナメート(PVC)又はポリオレフィン、例えばポリノルボルネンからなり、かつ例えば(広帯域)偏光板、LCDにおける背面照明用の導光エレメント(いわゆる"ライトガイド")、分光用シート(いわゆる"BEF"、すなわち"輝度上昇フィルム")及びLCDにおける分光の生成のためのシート(いわゆる"DBEF"、すなわち"デュアル輝度上昇フィルム")であってよい。しかしながら、この関連における他の基体は、LCDの規定の構造群、例えばガラス板もしくはポリマー板であって、場合によりなおも透明な導電性の、例えば酸化インジウムスズ(ITO)からなる被覆を有するものであってよい。
【0063】
ライトガイド又はBEFは、例えば直接的に、本発明によるネマチック(すなわちキラル化合物の割合が0質量%である)又はキラル−ネマティックの組成物で被覆して、これを引き続き重合させることができる。この場合に、被覆過程を、多かれ少なかれ、しばしば、同一又は異なる組成の本発明による組成物によって繰り返して、相応の光学部品、例えば波長フィルム(いわゆる"リターデーションフィルム")、(広帯域)偏光板及び光学フィルタを作製することができる。これにより、相応してコンパクトな光学部材の構造をLCD中に製造することができる。
【0064】
更に、本発明による方法によって、波長フィルムとして好適なネマティック層を、円偏光を与える(広帯域)偏光板に施与することができる。これによって、円偏光を線形偏光に変換することができる。(広帯域)偏光板は、この場合に、同様に本発明による組成物から、場合により本発明による方法を使用して製造することができる。
【0065】
しかしながら、更なる基体は、建築分野で見出される表面、例えば建造物壁又は窓ガラスでもある。後者の場合に、装飾的効果の他に、機能的な効果も望まれうる。ここで、窓材料上に、個々の層が異なる化学・物理特性を有する複層を作製することが可能である。もしキラル化合物のエナンチオマー並びに相応の光学対掌体を添加して、反対の転位を有する重合された液晶組成物の個々の層を施与する場合か又は異なる濃度のキラル化合物を添加して、同じ回転方向であるが、それぞれ異なるピッチの、従って異なる反射特性の重合された液晶組成物の個々の層を施与する場合に、光スペクトルの規定の波長又は波長領域を狙い通りに反射することができる。これによって、例えばIR又はUVを反射する窓被覆が可能である。
【0066】
従って、本発明の更なる対象は、本発明による液晶組成物又は本発明によるオリゴマーもしくはポリマーを、1もしくは複数のコレステリック層を含む断熱被覆であって、赤外波長領域、有利には750nmより大で、特に751nm〜約2000nmの波長領域において、入射する放射線の少なくとも40%、特に少なくとも45%を反射する被覆を製造するために用いる使用である。
【0067】
特に、本発明の更なる対象は、本発明による液晶組成物又は本発明によるオリゴマーもしくはポリマーを、1もしくは複数のコレステリック層を含む断熱被覆であって、赤外波長領域、有利には750nmより大で、特に751nm〜約2000nmの波長領域において、入射する放射線の少なくとも40%、特に少なくとも45%を反射し、かつ約390nm〜750nmの波長領域において、入射する放射線の少なくとも80%、特に少なくとも90%の透過率を有する被覆を製造するために用いる使用である。
【0068】
本発明の更なる対象は、1もしくは複数のコレステリック層を含む断熱被覆であって、赤外波長領域、有利には750nmより大で、特に751nm〜約2000nmの波長領域において、入射する放射線の少なくとも40%、特に少なくとも45%を反射し、かつ本発明による液晶組成物又は本発明によるオリゴマーもしくはポリマーを使用して得られる被覆である。
【0069】
特に、本発明の更なる対象は、1もしくは複数のコレステリック層を含む断熱被覆であって、赤外波長領域、有利には750nmより大で、特に751nm〜約2000nmの波長領域において、入射する放射線の少なくとも40%、特に少なくとも45%を反射し、かつ約390nm〜750nmの波長領域において、入射する放射線の少なくとも80%、特に少なくとも90%の透過率を有し、かつ本発明による液晶組成物又は本発明によるオリゴマーもしくはポリマーを使用して得られる被覆である。
【0070】
本発明による液晶組成物の前記の態様について、特に断熱被覆に関して、適宜、文献WO99/19267号A1を参照されたい。
【0071】
本発明の更なる対象は、本発明による液晶組成物又は本発明によるオリゴマーもしくはポリマーを、光学部材の製造のために用いる使用である。係る部材としては、例えばLCD並びにその部品、例えば(広帯域)偏光板、光学フィルタ、波長フィルム(いわゆる"リターデーションフィルム")及びBEFを挙げることができる。
【0072】
重合可能な液晶材料を基礎とする係る部品の製造に関しては、適宜、例えば文献WO00/37585号A1を参照されたい。
【0073】
本発明による重合可能なキラル−ネマティック組成物を、(広帯域)偏光板の製造のために用いる使用に関しては、適宜、例えば文献US6,421,107号、US6,417,902号、US6,061,108号、US6,099,758号、US6,016,177号、US5,948,831号、US5,793,456号、US5,691,789号及びUS5,506,704号を参照されたい。
【0074】
本発明による重合可能なネマティック組成物を、DBEFの製造のために用いる使用に関しては、適宜、例えば、文献US4,525,413号、US5,828,488号及びUS5,965,247号を参照されたい。
【0075】
後者の両方の文献は、ポリマー層の積層体であって、その光学特性において、層S1が等方性か異方性のいずれかの光学特性を示し、それに隣接する層S2がS1とは相違する異方性の光学特性を示すといった性質を示すものを記載している。S1の平面方向での屈折率n11は、その際、その値において実質的に、S2の同じ平面方向での屈折率n12に相当し、それに対してそれぞれ垂直の平面方向での屈折率n21もしくはn22は、それに対してS1もしくはS2とは異なる。前記の積層体に入射する光線は、従って、その偏光方向に応じて、透過するか(n11とn12が実質的に同一の場合)、又は反射するか(n21とn22が互いに異なる場合)のいずれかである。従って、異方性の層S2は、好適な等方性のもしくは異方性の屈折率を有するポリマー層との交換において、本発明による重合可能なネマティック組成物の重合によって得られる相応のポリマー又はオリゴマーからなってよい。ポリマー層S1として、例えば複数の異方性の層S2を互いに接着する接着剤又は好適なガラス転移温度を有するプラスチックシートであって相応の温度処理で層S2と一緒に所望の積層体を形成するプラスチックシートが該当する。更に、ポリマー層S1を、本発明による重合可能なネマティック組成物で被覆し、更なるポリマー層S1を施与し、次いで両方のポリマー層S1の間に存在する組成物を重合させることができる。係る積層体の選択された製造方法様式とは無関係に、当然、層S1及びS2の互いに十分に良好な付着が保証されねばならない。
【0076】
本発明による液晶組成物は、しかし、分散性液晶相としても、いわゆる"ポリマー分散液晶"("PDLC")で使用することができる。係るPDLCは、基本的に、等方性のポリマーマトリクスと巨視的等方性の分散性液晶相か異方性の分散性液晶相かのいずれかを有しても、異方性のポリマーマトリクスと巨視的等方性の分散性液晶相か異方性の分散性液晶相かのいずれかを有してもよく、その際、巨視的等方性相は、巨視的異方性のドメインの統計学的分布からもたらされる。
【0077】
一般に、係るPDLCの製造のためには、(一般に光学的に異方性の)ポリマーシートであって、その中に液晶相が微細に含有された形態で存在し、通常はマイクロメートル又はサブミクロンのサイズ範囲で均一に分散されて存在するポリマーフィルムから出発する。ポリマーフィルムの延伸によって、ポリマーマトリクスも、分散された相も、異方性の光学挙動を強制されることとなる。本発明による重合可能な液晶組成物を使用する場合に、分散された相の異方性状態は重合によって固定化され、従って例えば明らかに良好な温度(交換)耐久性を達成できる。ポリマーマトリクスとしては、この場合に主にポリビニルアルコールが使用される。
【0078】
更に、本発明による重合可能なキラル−ネマティック組成物は、例えば光学部材の製造のためにも使用することができ、それは文献US5,235,443号及びUS5,050,966号に記載される。
【0079】
本発明による液晶組成物は、更に、液晶着色剤としても、又は液晶着色剤の製造のためにも使用することができる。着色剤としての使用は、その組成物自体が既に色彩を有している場合に可能である。前記の色彩は、この場合に、存在するキラル−ネマティック相の干渉効果及び/又は含まれる着色物質及び/又は顔料の存在する吸収効果を基礎とすることがある。更に、該組成物は、それが色彩を有するか否かとは無関係に、着色剤の製造のためにも用いることができる。液晶性の着色剤及びその基体の印刷もしくは被覆のための使用に関しては、適宜、文献WO96/02597号A2を参照されたい。
【0080】
本発明による組成物は、更に、好ましくは水を基礎とする分散液及びエマルジョンの製造において使用することができる。液晶性材料を使用して係る分散液及びエマルジョンを製造するために、この場合に、国際公開番号WO96/02597号A2及び98/47979号A1を参照されたい。前記の分散液及びエマルジョンは、同様に、前記に例記したように、基体の印刷及び被覆のために使用することができる。
【0081】
更に、本発明による組成物は、顔料の製造において使用することもできる。係る顔料の製造は、公知であり、かつ例えば文献WO99/11733号A1に詳細に記載されている。しかしながら更に、形状及び寸法において予め調整された顔料を、印刷技術を使用して、又は隙間に重合可能な組成物が存在するネットを用いて製造することができる。液晶組成物の後続の重合又は縮合に引き続き、この場合に、基体もしくはネットからの剥離もしくは溶出が行われる。前記の方法は、国際公開番号WO96/02597号A1、97/27251号A1、97/27252号A1及び文献EP0931110号A1に詳細に記載されている。
【0082】
前記の顔料は、一層であっても、又は多層構造を有していてもよい。後者の顔料は、通常は、連続的な複数の層を重ねて作製し、次に機械的粉砕に供する被覆法を使用することでのみ製造できる。
【0083】
本発明による液晶組成物を、液晶性着色剤として用いる使用又は前記組成物を、液晶性着色剤の製造のために、分散液及びエマルジョンの製造において、並びに顔料の製造に際して用いる使用といった前記の使用については、有利には重合可能な組成物が使用される。
【0084】
本発明の範囲内で、式Ia′
【化19】

の化合物又は式Ib′
【化20】

の化合物
[式中、Mは、式
2−(Y3−T2−)s′′
に相当し、その際、s′′は、0又は1の値を採り、s′′>0の場合に、置換基T2は互いに同一もしくは異なっていてよく、X及びX′は、互いに無関係に、酸素又は硫黄を意味し、かつT2及びY3並びに他の置換基は、前記に定義したような一般的な意味及び好ましい意味を有する]の製造方法において、式II′
HX−M−X′H II′
の化合物と、式IIIa′
【化21】

の相応のモル数のカルボン酸誘導体とを、場合により1もしくは複数の補助化合物の存在下で反応させて、式Ia′の対称的な化合物を得るか、又は
式II′の化合物を、第一段階において、式IIIa′の相応のモル数のカルボン酸誘導体と、場合により1もしくは複数の補助化合物の存在下で反応させ、そして第二段階において、式IIIb′
【化22】

の相応のモル数のカルボン酸誘導体と、場合により1もしくは複数の補助化合物の存在下で反応させて、式Ib′の非対称的な化合物を得る[式中、W及びW′は、反応に際して離れる同一もしくは互いに異なる離脱基を表すか、又は1もしくは複数の場合により存在する補助化合物で変換して離れる離脱基となる同一もしくは互いに異なる前駆体基を表す]ことを特徴とする方法が特許請求される。
【0085】
種々のエステル合成の方法及び本発明による方法について考慮される相応の合成条件に関しては、関連文献及び当業者に公知の文献、例えばUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,John Wiley and Sons又はAdvanced Organic Chemistry,M.B.Smith and J.March,5th Edition,Wiley−Interscience,New York,第485〜499頁を参照されたい。
【0086】
W及びW′については、当業者に自体公知の全ての基が該当する。
【0087】
特に、ここでは、W及びW′については、ヒドロキシ、ハロゲン、例えばフッ素、臭素及び、特に塩素並びにC1〜C4−アルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、s−ブトキシ、イソブトキシ又はt−ブトキシが挙げられるべきである。
【0088】
更に、W及びW′については、無機酸の残基、例えば硫酸水素基、硫酸基、リン酸二水素基、リン酸水素基又はリン酸基、有機酸の残基、例えばギ酸基、酢酸基、トリフルオロ酢酸基並びに脂肪族もしくは芳香族のスルホン酸の残基又は部分的にもしくは完全にフッ素化された脂肪族もしくは芳香族のスルホン酸基が該当する。係る脂肪族もしくは芳香族のスルホン酸基のための例は、H3C−SO2−O、F3C−SO2−O、F3C−CH2−SO2−O、F94−SO2−O、
【化23】

である。
【0089】
式IIIa′及びIIIb′の化合物は、その際、相応の混合無水物である。
【0090】
式Ia′の化合物の合成のために、式IIIa′で示され、その式中、Wが基
【化24】

に相当する化合物から出発してもよい。式IIIa′の化合物は、その際、式
【化25】

で示される相応の酸無水物である。
【0091】
同様に、式Ib′の化合物の合成のために、式IIIb′で示され、その式中、W′が基
【化26】

に相当する化合物から出発してもよい。式IIIb′の化合物は、その際、まさに同様に、式
【化27】

で示される相応の酸無水物である。
【0092】
補助化合物としては、例えば希釈されたもしくは濃縮された無機酸、例えば硫酸、リン酸又は塩酸、希釈されたもしくは濃縮された有機酸、例えばギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、希釈されたもしくは濃縮された脂肪族もしくは芳香族のスルホン酸、希釈されたもしくは濃縮された、部分的にフッ素化された脂肪族もしくは芳香族のスルホン酸又は希釈されたもしくは濃縮された、完全にフッ素化された脂肪族もしくは芳香族のスルホン酸を使用することができる。
【0093】
係る脂肪族もしくは芳香族のスルホン酸としては、特に、H3C−SO3H、F3C−SO3H、F3C−CH2−SO3H、F94−SO3H、
【化28】

が挙げられるべきである。
【0094】
上述の酸は、特にW及びW′がヒドロキシ又はC1〜C4−アルコキシである場合に、補助化合物として使用される。
【0095】
W及びW′がヒドロキシである場合については、更なる補助化合物として、有機酸の無水物、例えば無水酢酸又はトリフルオロ酢酸無水物及び式
【化29】

[式中、置換基R及びR′は、互いに無関係に、シクロペンチル、シクロヘキシル又は、場合によりヒドロキシ、C1〜C4−アルコキシ、アミノ、C1〜C4−アルキルアミノもしくはジ(C1〜C4−アルキル)アミノで置換されたC1〜C4−アルキルを意味する]で示されるカルボジイミドが挙げられるべきである。係るカルボジイミドのための例は、
【化30】

であり、その際、後者の化合物は、その塩酸塩の形でも使用することができる。しばしば、カルボジイミドは、アミン、例えばN,N−ジメチルアミノピリジンと一緒に使用される。ここで、エステル合成でしばしば使用される助剤は、最初に示したジシクロヘキシルカルボジイミドであり、それは単独でもしくはN,N−ジメチルアミノピリジンと組み合わせて使用される。前記のカルボジイミドによって、式IIIa′及び式IIIb′の化合物のヒドロキシ基は、例えば式
【化31】

の基に変換される。相応の中間化合物は、大抵は、単離されないか、又は当該化合物は、しばしば、単離することができない。それというのも、その化合物は、反応混合物中で迅速に他の反応物と反応してしまうからである。
【0096】
W及びWがヒドロキシである場合について、更なる補助化合物は、ジアルキルアゾジカルボキシレートと、トリアリールホスフィンとの組み合わせ、例えばジエチルアゾジカルボキシレート/トリフェニルホスフィン、N,N′−カルボニルジイミダゾール、脂肪族もしくは芳香族のスルホン酸塩化物と、第三級アミンとの組み合わせ、例えばメタンスルホン酸塩化物/トリエチルアミン、クロロシラン、十酸化四リン又はイオン交換体、例えばAmberlyst(登録商標)−15(Rohm&Haas社から販売されている)である。
【0097】
式IIIa′及び式IIIb′の化合物として既出した混合無水物が使用される場合に、ここで、化合物II′との反応に際して、補助化合物として上述した相応の酸が生成する。
【0098】
更なる補助化合物としては、特にW及びW′がハロゲン、有利には塩素又は臭素である場合には、窒素を含む5員もしくは6員の複素芳香族化合物、例えばイミダゾール又はピリジンが該当する。これらの複素芳香族化合物によって、式IIIa′及び式IIIb′の基COWもしくはCOW′は、例えば基
【化32】

に変換される。相応の中間化合物は、大抵は同様に、単離されないか、又は当該化合物は、しばしば、単離することができない。それというのも、その化合物は、反応混合物中で迅速に他の反応物と反応してしまうからである。
【0099】
本発明の更なる対象は、式
【化33】

[式中、W′′は、ヒドロキシ、ハロゲン、例えばフッ素もしくは塩素、C1〜C4−アルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、s−ブトキシもしくはt−ブトキシ、部分的にもしくは完全にハロゲン化されたフェノキシ、例えば2,4,6−トリクロロフェノキシ、2,4,6−トリフルオロフェノキシ、ペンタクロロフェノキシ又はペンタフルオロフェノキシ、無機酸の残基、例えば硫酸水素基、硫酸基、リン酸二水素基、リン酸水素基もしくはリン酸基、カルボン酸の残基、例えばギ酸基、酢酸基、トリフルオロ酢酸基、脂肪族もしくは芳香族のスルホン酸の残基、例えばH3C−SO2−O、
【化34】

部分的にもしくは完全にフッ素化された脂肪族もしくは芳香族のスルホン酸の残基、例えばF3C−SO2−O、F3C−CH2−SO2−O又はF94−SO2−O又は、式
【化35】

の基を表し、かつZ1、Y1及びA1は、既に更に前記で定義したのと同じ意味を有する]で示される化合物である。
【0100】
実施例:
本発明による化合物及びそれらの出発物質の以下に記載される合成において、これらが市販されているものでない限り、エステルの、特に一官能性の及び二官能性のメソゲン化合物の有機合成の一般的方法を利用することができ、例えばそれらの方法は、関連のある科学文献及び特許文献で知られている。また、これに関しては、既に引用された著作物Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,John Wiley and Sons及びAdvanced Organic Chemistry,M.B.Smith and J.March,5th Edition,Wiley−Interscience,New York,第485〜499頁を参照されたい。
【0101】
本発明による化合物の合成:
合成スキームA:
【化36】

【0102】
I. 一般式
【化37】

[式中、X−M−XもしくはX−M−Z2は、以下の表A1に挙げられる意味を有する]で示される本発明による化合物の製造
ここで、補足的に、製造に制限されて、化合物ABC−Clにおいても、中間段階NAPSの基ABCにおいても、アクリレート基の一部は、そのHCl付加物の形で存在することを述べたい。しかしながら、前記のスキームAの最後の合成段階において、再び、HClの脱離が行われて、アクリレート基が再形成される(これについては、WO98/47979号A1の第66頁の実施例6aも参照のこと)。
【0103】
基ABC("アクリロイルオキシ−ブチル−クロロホルミエート")において、上述の式Ia′の用語体系によれば、アクリレート基のビニル基は、置換基Z1に相当し、カルボキシル基は、置換基Y1に相当し、そしてn−ブチレン基−(CH24−は、置換基A1に相当する。合成された化合物中の置換基X及びMもしくは基X−M−Xの意味は、以下の表に挙げられている。
【0104】
【表1】

【0105】
一般的な合成法:
A)6−(4−アクリロイルオキシ−ブトキシカルボニルオキシ)−2−ナフトエ酸
【化38】

の製造
100g(0.53モル)の6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸を、600mlの水と500mlのDMFとからなる溶剤混合物中に溶かした溶液のpH値を、10%の苛性ソーダ液で0℃において10に調整した。132g(0.61モル)の4−アクリロイルオキシブチルクロロホルミエート(WO97/00600号A2に従って製造される)を、引き続き、2時間の期間にわたって滴加し、その際、温度は、0〜5℃に保持し、そしてpH値は、10%の苛性ソーダ液で10(±0.2のpH単位)に保持した。得られた溶液を、引き続き、3lの水/氷の混合物で希釈し、そしてpH値を、濃塩酸で5に調整した。得られた懸濁液を濾過し、得られた濾過ケークを3lの水で洗浄し、そして乾燥後に、165.8g(純粋なアクリレート誘導体に対する理論値の87%)のベージュ色の粉末であって、前記の化合物NAPSと相応のアクリレート/HCl付加物とを含有する粉末が得られた。
【0106】
B)式
【化39】

で示される化合物の製造
65.2g(168ミリモル)もしくは、化合物10の場合には、32.6g(84ミリモル)のNAPSと、少量のKerobit(登録商標)BHT(0.14g)とを、350mlの塩化オキサリル中に投入し、ゆっくりと5滴のジメチルホルムアミド(DMF)と混合した。引き続き、該反応混合物を、室温で1時間撹拌し、次いで過剰の塩化オキサリルを真空中で除去し、そして残留物を高真空中で乾燥させた。帯黄色のゴム様の生成物を、100mlのCH2Cl2中に溶解させ、−10℃で窒素ですすぎつつ、70ミリモルのそれぞれの化合物HX−M−XH(表A1;出発物質1Eないし3E及び6Eないし9E)もしくは70ミリモルの化合物HX−M−Z2(表A1;出発物質10E)、0.03gのKerobit(登録商標)BHT及び53.4g(420ミリモル)のN,N−ジメチルシクロヘキシルアミンからなる200mlのCH2Cl2中に溶かした溶液を滴加し、そして得られた反応混合物を引き続き、まず室温で12時間にわたり撹拌し、そして次いで45℃で5時間にわたり撹拌した。次に、200mlの蒸留水及び15.2gの濃塩酸水を添加し、そして相分離させた。有機相を、それぞれ200mlの飽和食塩水溶液で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、そして真空中で濃縮した。得られた残留物(一般に褐色の油状物)は、一般に、メタノールもしくはエタノール中での磨砕もしくは懸濁によって、カラムクロマトグラフィー(SiO2上、通常は溶出剤として:トルエン/アセトン 10:1)によって、CH2Cl2中の溶液からのn−ヘキサンもしくはメタノールを用いた沈殿によって、又はこれらの工程の組み合わせによって精製することができた。その都度の生成物は、白色ないし灰白色の粉末として得られた。
【0107】
その都度の化合物の収率及び純度は、前記の表A1に挙げられている。
【0108】
II. 一般式
【化40】

[式中、ABCは、上述のように、アクリロイルオキシブトキシカルボニル基に相当し、置換基R1、R2、R3及びR4は、表A2に挙げられる意味を有する]で示される本発明による化合物の製造
【表2】

【0109】
【表3】

【0110】
【表4】

【0111】
出発物質14E
【化41】

の製造
158.4g(2.4モル)の水酸化カリウムを、600mlのトリエチレングリコールに添加し、そして得られた懸濁液を80℃に加熱した。93.1g(0.6モル)の2,5−ジヒドロキシアセトフェノン及び90.1g(1.8モル)のヒドラジン水和物を、添加し、そして得られた溶液を、1.5時間の期間にわたり還流(約140℃)下に保持した。揮発性成分を140〜190℃で留去した後で、そのバッチを、190℃の温度で4時間にわたり保持した。引き続き、600mlの水を添加し、pH値を、濃塩酸で2〜3に調整し、そして水相を、それぞれ200mlのt−ブチルメチルエーテルで8回抽出した。有機相を濃縮し、それぞれ200mlの水で4回洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、そして真空中で濃縮した。得られた褐色の油状物をn−ヘキサンをもって撹拌している間に、結晶化が起こった。濾過後に、67.7g(0.49ミリモル、理論値の82%)の所望の生成物14Eが明るい帯褐色の固体として得られた。
【0112】
出発物質15E
【化42】

の製造
16.0g(250.9ミリモル)の水酸化カリウムを、350mlのトリエチレングリコールに添加し、そして得られた懸濁液を80℃に加熱した。引き続き、10g(60.2ミリモル)の2,5−ジヒドロキシプロピオフェノン及び10g(199.2ミリモル)のヒドラジン水和物を添加し、そして該溶液を、還流(約140℃)下で2時間加熱した。揮発性成分を140〜195℃で留去した後で、そのバッチを、195℃の温度で4時間にわたり保持した。引き続き、400mlの水を添加し、pH値を、濃塩酸で約2〜3に調整し、そして水相を、それぞれ200mlのt−ブチルメチルエーテルで3回抽出した。有機相を濃縮し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、そして真空中で濃縮した。得られた油状物を、CH2Cl2中に溶解させ、そしてゆっくりとn−ヘキサンを添加することで、生成物が沈殿した。濾過後に、6.4g(41.2ミリモル、理論値の69%)の所望の生成物15Eが灰色の固体として得られた。
【0113】
出発物質16Eないし18E及び22Eの製造
【表5】

【0114】
一般的な合成法:
0.05モルのシクロヘキサン−1,4−ジオン、0.05モルのアルデヒドRCHO及び0.05モルの塩化リチウムを100mlのピリジン中に入れた混合物を、115℃に4時間加熱した。大部分のピリジンを、引き続き留去し、残留物を200mlの水に注ぎ、そしてpH値を濃塩酸で2に調整した。得られた溶液を、それぞれ200mlのジエチルエーテルで2回抽出し、濃縮された有機相を、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、そして引き続き減圧下で濃縮した。褐色の油状の残留物を、n−ヘキサンで一晩撹拌し、そして得られた固体を濾別した。相応の粗生成物が、帯褐色の粉末として得られ、そして該粉末は、更なる精製をせずに後続反応に使用した。
【0115】
出発物質32E
【化43】

の製造
その製造は、Z.Bao他著のJ.Amer.Chem.Soc.1995,177,12426〜12435に従って行った。
【0116】
出発物質34Eないし37Eの製造
【表6】

【0117】
合成法A:
15g(97.3ミリモル)の2,5−ジヒドロキシ安息香酸及び4mlの濃硫酸を300mlのアルコール(34Eについてはエタノール、そして35Eについてはn−プロパノール)中に入れた混合物を、還流下で加熱した。24時間の反応時間後に、2mlの濃硫酸を添加し、そしてそのバッチを、更に24時間にわたり還流下で保持した。室温に冷却した後に、300mlの水をその反応混合物に添加し、そこで生成物が油状物として沈殿した。更に撹拌した後に(一般に約1時間後)、生成物が晶出し、そして濾別した後に白色の粉末が得られた。
【0118】
合成法B:
3.1g(20ミリモル)の2,5−ジヒドロキシ安息香酸及び5g(59ミリモル)の重炭酸ナトリウムを30mlのDMF中に入れた混合物を、70℃で窒素下に1時間撹拌した。20ミリモルの相応のブロモアルカンR−Brを添加し、そして該懸濁液を、70℃で更に7時間撹拌した。該反応混合物を、100mlの水に注ぎ、そして得られた水相を、n−ヘキサンと酢酸エチルエステルとの1:1混合物60mlで抽出した。有機相を、それぞれ50mlの水で3回洗浄し、3gのAl23(3g)を添加し、そして濾過した。母液を、減圧下で濃縮させ、そして相応の生成物が白色ないし灰白色の固体として得られた。
【0119】
その都度の化合物に関して、合成法A及びBに従って得られる収率は、前記の表A5に挙げられている。
【0120】
出発物質23E
【化44】

の製造
2.0g(10.0ミリモル)の2,5−ジヒドロキシテレフタル酸及び2mlの濃硫酸を25ml(0.42モル)のエタノール中に溶かした溶液を、還流下で24時間撹拌した。引き続き、該反応混合物を室温にまで冷却し、そしてpH値を、5%の重炭酸ナトリウム水溶液で6に調整し(約80mlの溶液が必要)、そこで固体が沈殿した。これを濾別し、酢酸エチルエステル中に溶解させ、そして得られた有機相を、それぞれ100mlの水で2回洗浄し、そしてそれぞれ100mlの5%の重炭酸ナトリウム水溶液で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、そして真空中で濃縮した。主に化合物23Eからなる帯褐色の残留物が得られ、それは、更なる精製をせずに後続工程で使用した。
【0121】
B)式
【化45】

で示される本発明による化合物の製造
65.2g(168ミリモル)のNAPS及び少量のKerobit(登録商標)BHT(0.14g)を、350mlの塩化オキサリル(それは5滴のジメチルホルムアミド(DMF)と混合されている)中にゆっくりと導入した。引き続き、該反応混合物を、室温で1時間撹拌し、次いで過剰の塩化オキサリルを真空中で除去し、そして残留物を高真空中で乾燥させた。帯黄色のゴム様の生成物を、100mlのCH2Cl2中に溶解させ、−10℃で窒素ですすぎつつ、70ミリモルのそれぞれの化合物HX−M−XH(化合物の利用能については表A3を参照のこと)、0.03gのKerobit(登録商標)BHT及び53.4g(420ミリモル)のN,N−ジメチルシクロヘキシルアミンからの200mlのCH2Cl2中に溶かした溶液を滴加し、そして得られた反応混合物を、引き続き、まず室温で12時間撹拌し、そして次いで45℃で5時間撹拌した。次に、200mlの蒸留水及び15.2gの濃塩酸水を添加し、そして相分離させた。有機相を、それぞれ200mlの飽和食塩水溶液で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、そして真空中で濃縮した。得られた残留物(一般に褐色の油状物)は、一般に、メタノールもしくはエタノール中での磨砕もしくは懸濁によって、カラムクロマトグラフィー(SiO2上、通常は溶出剤として:トルエン/アセトン 10:1)によって、CH2Cl2中の溶液からのn−ヘキサンもしくはメタノールを用いた沈殿によって、又はこれらの工程の組み合わせによって精製することができた。その都度の生成物は、白色ないし灰白色の粉末として得られた。
【0122】
合成スキームB:
【化46】

【0123】
III. 一般式
【化47】

[式中、基
【化48】

は、スキームB中の単位X−M−Xに相当し、そして置換基R1〜R4は、表B1に挙げられる意味を有する]で示される本発明による化合物の製造
【表7】

【0124】
A)式
【化49】

で示されるヒドロキノンの利用能
【表8】

【0125】
出発物質19E
【化50】

の製造
75.7g(0.435モル)の亜ジチオン酸ナトリウムを150mlの水中に入れた懸濁液を、5.0gの2,5−ジメチル−p−ベンゾキノンを150mlのジエチルエーテル中に溶かした溶液にゆっくりと添加した。該反応混合物を、1時間にわたり激しく撹拌し、その際、色が黄色から無色に変化した。引き続き、200mlの水を、全固体が溶解されるまで添加し、そして更に1時間撹拌した。相分離をし、水相を、それぞれ100mlのジエチルエーテルで2回抽出した。濃縮された有機相を、100mlの水及び100mlの濃縮された食塩溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、そして減圧下で濃縮させた。固体の残留物を、100mlのCH2Cl2中に懸濁させ、その懸濁液を1時間撹拌し、そして次いで固体を濾別した。ほぼ定量的な収率において、5.1gの所望の化合物19Eが白色の粉末として得られた。
【0126】
B)式
【化51】

で示されるジヒドロキシ化合物の製造
【表9】

【0127】
0.06モル(11.3g)の6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、0.033モルの相応のヒドロキノン誘導体
【化52】

及び4滴の濃硫酸を40mlのトルエン中に入れた混合物を、共沸蒸留条件下で(ディーン・シュタルク)、還流下で3時間にわたり加熱した。室温にまで冷却した後に、100mlのメタノールを添加し、そして得られた溶液を濾過した。濾過ケークを、メタノールで複数回洗浄し、そして引き続き乾燥させた。相応の化合物が明るい帯褐色の固体として得られた。
【0128】
C)式
【化53】

で示される本発明による化合物の製造
【表10】

【0129】
22.1ミリモルの4−アクリロイルオキシブチルクロロホルミエートを、0℃で、6.3ミリモルの相応のB)で製造されたジヒドロキシ化合物及び18.9ミリモルのN,N−ジメチルシクロヘキシルアミンを20mlのDMF中に溶かした溶液に滴加し、そして該混合物を室温で12時間撹拌した。次いで、もう一度、6.3ミリモルのN,N−ジメチルシクロヘキシルアミンを添加し、そして反応バッチを、40℃で更に1時間撹拌した。該反応混合物を、300mlの水に注ぎ、そしてpH値を濃塩酸で5に調整した。2時間撹拌した後に、該懸濁液を濾過し、濾過ケークを水で洗浄し、そして乾燥させた。カラムクロマトグラフィーによる精製(SiO2、トルエン/酢酸エチルエステル 20:1)の後に、相応の化合物が白色の固体として、表中に示される収率で得られた。
【0130】
IV. 式
【化54】

で示される本発明による化合物5の製造
一般式Iと化合物5の前記の式との間での比較において、アクリレート基のビニル基は、置換基Z1及びZ2に相当し、アクリレート基のカルボキシル基は、置換基Y1及びY2に相当し、n−ブチレン基−(CH24−は、置換基A1及びA2に相当し、そして右方のカーボネート基は、置換基Y5に相当する。式I中の変数rは、値0を採り、そして基(Y3−T2−)s中の置換基Y3及びT2は、−CO−O−もしくは1,4−フェニレン基に相応し、その際、変数sは、値1を採る。
【0131】
A)化合物
【化55】

の製造
18.82g(0.1モル)の6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、33.03g(0.3モル)のヒドロキノン、1.6gのp−トルエンスルホン酸一水和物及び5滴の濃硫酸を100mlのトルエン中に入れた混合物を、還流下で3時間加熱した。得られた懸濁液を、室温にまで冷却し、そして濾過した。濾過ケークを、メタノール中に溶解させ、そして生成物を水で沈殿させた。濾過と乾燥をした後に、25.9g(理論値の93%)の粗生成物NpPhが褐色の固体として得られた。これは、更なる精製をせずに、後続の反応工程で使用した。
【0132】
B)本発明による化合物5の製造
10g(0.048モル)の4−アクリロイルオキシブチルクロロホルミエートを、0℃で、5.6g(0.02モル)のNpPh、7.6g(0.06モル)のN,N−ジメチルシクロヘキシルアミン及び0.03gの4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−ヒドロキシ−TEMPO)を40mlのDMF中に溶かした溶液に滴加した。該反応混合物を、0℃で更に1時間撹拌し、そして次いで40℃でさらに4時間撹拌した。150mlの水を添加した後に、希塩酸で4〜5のpH値に調整し、そして得られた水相を、400mlのCH2Cl2で抽出した。有機相を、それぞれ250mlの水で2回洗浄し、そして200mlの食塩飽和溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、そして減圧下で濃縮した。得られた帯黄色の粉末を、50mlのメタノール中に懸濁させ、そして引き続き濾別した。7.7g(理論値の62%)の所望の化合物5が白色の粉末として得られた。
【0133】
V. 式
【化56】

で示される本発明による化合物11の製造
一般式Iと化合物11の式との間での比較において、アクリレート基のビニル基は、置換基Z1及びZ2に相当し、アクリレート基のカルボキシル基は、置換基Y1及びY2に相当し、n−ブチレン基−(CH24−は、置換基A1及びA2に相当し、そして右方のカーボネート基は、置換基Y5に相当する。式I中の変数rは、値0を採り、そして基(Y3−T2−)s中の置換基Y3及びT2は、−CO−O−もしくは2,6−ナフチレン基に相応し、その際、変数sは、値1を採る。
【0134】
A)化合物
【化57】

の製造
9.41g(0.05モル)の6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、24.03g(0.15モル)の2,6−ジヒドロナフタリン、0.8gのp−トルエンスルホン酸一水和物及び3滴の濃硫酸を100mlのトルエン中に入れた混合物を、折を見て濃硫酸を添加して(全3時間で3滴)、還流下で12時間加熱した。得られた懸濁液を、室温にまで冷却し、そして濾過した。濾過ケークを、メタノール中に懸濁し、該懸濁液を3時間撹拌し、そして最後に固体を濾別した。10.9gの6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸−6−ヒドロキシナフチルエステル("NpNp")が帯褐色の固体として得られ、それは、更なる精製をせずに後続工程で用いられた。
【0135】
B)本発明による化合物11の製造
10g(0.048モル)の4−アクリロイルオキシブチルクロロホルミエートを、0℃で、6.6g(20ミリモル)のNpNp、7.6g(0.06モル)のN,N−ジメチルシクロヘキシルアミン及び0.03gの4−ヒドロキシ−TEMPOを40mlのDMF中に溶かした溶液に滴加した。該反応混合物を前記温度で更に1時間撹拌した後に、それをゆっくりと室温にまで加温させた。40℃で4時間加熱した後に、150mlの水を添加し、そしてpH値を、濃塩酸で4〜5に調整した。得られた混合物をデカンテーションし、そして残留した粘性のペーストを50mlのメタノールと一緒に一晩撹拌した後に、褐色の固体が得られ、それをカラムクロマトグラフィー(SiO2、トルエン/アセトン 10:1)によって精製した。7.7g(理論値の62%)の所望の化合物11が白色の固体の形で得られた。
【0136】
その他の合成:
VI. 式
【化58】

で示される本発明による化合物4の製造
一般式Iと化合物4の式との間での比較において、アクリレート基のビニル基は、置換基Z1及びZ2に相当し、アクリレート基のカルボキシル基は、置換基Y1及びY2に相当し、n−ブチレン基−(CH24−は、置換基A1及びA2に相当し、そして右方のカーボネート基は、置換基Y5に相当する。基(−T1−Y4r中の置換基T1及びY4には、1,4−フェニレン基もしくは−CO−O基の意味が相応し、その際、変数rは、1の値を採る;基(Y3−T2−)s中の置換基Y3及びT2には、−CO−O基もしくは1,4−フェニレン基の意味が相応し、その際、変数sは、2の値を採る。
【0137】
8.2g(25ミリモル)の4−(4−アクリロイルオキシブトキシカルボニルオキシ)安息香酸(文献WO97/00600号A2の第33頁のBb)に開示される方法と同様に合成される)、5滴のDMF及び触媒量の4−ヒドロキシ−TEMPOからの60mlの塩化オキサリル中に入れた混合物を、室温で1時間撹拌した。引き続き、過剰の塩化オキサリルを、減圧下で留去し、そして残留物を高真空中で乾燥させた。得られた固体を、30mlのCH2Cl2中に溶解させ、そして0℃で、2.8g(10ミリモル)のNpPh及び3.8g(30ミリモル)のN,N−ジメチルシクロヘキシルアミンを70mlのCH2Cl2中に溶かした溶液にゆっくりと添加した。該反応混合物を、室温で14時間撹拌し、そして40℃で6時間加熱した。引き続き、200mlのメタノールを添加し、そして沈殿した帯黄白色の固体を濾別した。精製のために、50mlのメタノール中に懸濁された固体の懸濁液を12時間撹拌した。濾別し、乾燥させた後に、6.4g(理論値の75%)の所望の化合物4が白色の固体として得られた。
【0138】
本発明による化合物の相挙動の測定:
本発明による化合物の加熱及び冷却に際しての相挙動は、以下の表C1から引き出される。相の表記は、一般に使用される表記法に相応して行った(それについては、例えばPure Appl.Chem.2001,73,845−895;Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,Sixth Edition,2000 Electronic Release,Chap 3.1 "Thermotropic Liquid Crystal Polymorphism";Angew.Chem.2004,116,6340−6368を参照のこと)。液晶相の呼称のために、"K"が選択され、"poly"は、重合が起こるもしくは起こったことを指摘している。"Δn"は、それぞれのネマティック化合物の屈折率の異方性を指す。
【0139】
Δn値は、特に明記されない限りは、20℃で通常の方法に従って測定した(例えばS.T.Tang,H.S.Kwok著のJ.App.Phys.2003,89,1,80ff及びG.Pelzl著の"Handbook of Liquid Crystals",Vol2A,Chap.2.4 "Optical Properties of Nematic Liquid Crystals",128−141,1998,Eds.D.Demus,J.W.Gooby,G.W.Gray,H.W.Spiess,V.Vill,Wiley−VCH並びにそこに引用される文献)。
【0140】
【表11】

【0141】
【表12】

【0142】
選択されたキラル−ネマティック組成物の加熱及び冷却に際しての相挙動は、以下の表C2から引き出される。キラル−ネマティック組成物(表C2において、生ずるネマティック相を、"N*"で示した)を、式(39)
【化59】

で示されるドーピング物質6モル%と、表C1に特徴付けられる相応の化合物94モル%との混合によって得られた。
【0143】
【表13】

【0144】
表C1及びC2から、メソゲン分子部分に側方置換基、例えばアルキル基(表C1中の化合物13〜18並びに表C2中の組成物1及び2を参照)又はアルコキシカルボニル基(表C1中の化合物33〜37並びに表C2中の組成物3及び4を参照)を有する特定の化合物は、側方置換基のアルキル鎖長が増大すると、ネマティック相もしくはキラル−ネマティック相のより広範な存在範囲と、傾向的により低い融点及び透明点と、顕著な過冷却効果を有することを引き出すことができ、このことは、本発明による化合物並びに液晶組成物の応用技術的特性のために好ましい。
【0145】
更に、前記の本発明によるネマティック化合物もしくはキラル−ネマティック組成物を用いて、ポリマー被膜を、数マイクロメートルに至るまでの薄い層で製造でき、それは優れた均一なネマティック配向もしくはキラル−ネマティック配向及び高い安定性を有する。これらの被膜は、例えば前記の化合物もしくは組成物の溶液(溶剤としては、例えばメチルエチルケトン、テトラヒドロフランもしくはトルエン並びにこれらの溶剤の混合物が該当する)を、ポリエチレンテレフタレート(PET)基体又はトリアセチルセルロース(TAC)基体(この場合に大抵はシートである)上にブレード塗布して、引き続きUV硬化させることによって得られる。係る被膜の製造に関する厳密な方法については、例えば文献WO99/11733号A1を参照されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I
【化1】

[式中、置換基及び変数は以下の意味を有する:
1、Z2は、互いに無関係に、水素、置換されていてよいC1〜C20−アルキル又は重合を引き起こしうる反応性基を意味し、前記アルキルにおいて、その炭素鎖は、エーテル官能中の酸素原子、チオエーテル官能中の硫黄原子によって又は隣接していないイミノ基もしくはC1〜C4−アルキルイミノ基によって中断されていてよく、
1、A2は、互いに無関係に、1〜30個の炭素原子を有するスペーサーを意味し、前記スペーサーにおいて、その炭素鎖は、エーテル官能中の酸素原子、チオエーテル官能中の硫黄原子によって又は隣接していないイミノ基もしくはC1〜C4−アルキルイミノ基によって中断されてよく、
1、Y2は、互いに無関係に、化学的単結合、酸素、硫黄、−CO−、−O−CO−、−CO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−NR−CO−又は−CO−NR−を意味し、
3、Y4は、互いに無関係に、化学的単結合、酸素、硫黄、−CR=CR−、−C≡C−、−CR=CR−CO−O−、−O−CO−CR=CR−、−C≡C−O−、−O−C≡C−、−CH2−CH2−、−CH2−O−、−O−CH2−、−CH2−S−、−S−CH2−、−CO−、−O−CO−、−CO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−NR−CO−、−CO−NR−、−O−CO−O−、−O−CO−NR−又は−NR−CO−O−を意味し、
Rは、水素又はC1〜C4−アルキルを意味し、
5は、Y1及びY2とは無関係に、それらの上述の意味又は−O−COO−を意味し、
1、T2は、飽和もしくは不飽和の、置換されていてよい、同素環式もしくは複素環式の、二価の基を意味し、
r、tは、互いに無関係に、0又は1を意味し、かつ
sは、0、1、2又は3を意味し、その際、
それぞれの置換基T2及びY3は、s>1の場合に、互いに同一もしくは異なってよく、かつ
2,6−ナフチル基中の水素原子も、置換基Z1、Z2、A1、A2、Y3、Y4、R、T1及びT2中の炭素原子に結合された水素原子は、部分的にもしくは完全に、ハロゲン原子によって置換されていてよい]で示される化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物であって、rが0の値を採る化合物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の化合物であって、置換基T1及びT2が、互いに無関係に、
【化2】

を意味し、その際、基
【化3】

は、4個までの同一もしくは異なる置換基で置換されていてよく、基
【化4】

は、3個までの同一もしくは異なる置換基で置換されていてよく、基
【化5】

は、2個までの同一もしくは異なる置換基で置換されていてよく、かつ基
【化6】

は、1個の置換基で置換されていてよく、前記置換基は、ハロゲン、NO2、NO、CN、CHO、L1、CO−L1、X1−CO−L1、X1−SO−L1、X1−SO2−L1、X1−L1′、CO−X1−L1′、O−CO−X1−L1′、SO−X−L1′又はSO2−X1−L1′であり、その際、
1は、C1〜C20−アルキル、C2〜C20−アルケニル、C2〜C20−アルキニル、C6〜C10−アリール、2〜12個の炭素原子を有するヘテロアリール、C6〜C10−アリール−C1〜C20−アルキル、C6〜C10−アリール−C2〜C20−アルケニル、C6〜C10−アリール−C2〜C20−アルキニル、それぞれヘテロアリール基中に2〜12個の炭素原子を有するヘテロアリール−C1〜C20−アルキル、ヘテロアリール−C1〜C20−アルケニルもしくはヘテロアリール−C1〜C20−アルキニルを意味し、その際、C1〜C20−炭素鎖は、エーテル官能中の酸素原子、チオエーテル官能中の硫黄原子、隣接していないイミノ基、C1〜C20−アルキルイミノ基及び/又はカルボニル基によって中断されていてよく、かつC6〜C10−アリールも、ヘテロアリールも、ハロゲン、NO2、NO、CN、CHO、L2、CO−L2、X2−CO−L2、X2−SO−L2、X2−SO2−L2、X2−L2′、CO−X2−L2′、O−CO−X2−L2′、SO−X2−L2′及びSO2−X2−L2′からなる群から選択される1もしくは複数の置換基で置換されていてよく、
1′は、水素を意味するか、又はL1とは無関係に、L1と同じ意味を有し、
2は、C1〜C20−アルキル、C2〜C20−アルケニル、C2〜C20−アルキニル、C6〜C10−アリール、2〜12個の炭素原子を有するヘテロアリール、C6〜C10−アリール−C1〜C20−アルキル、C6〜C10−アリール−C2〜C20−アルケニル、C6〜C10−アリール−C2〜C20−アルキニル、それぞれヘテロアリール基中に2〜12個の炭素原子を有するヘテロアリール−C1〜C20−アルキル、ヘテロアリール−C2〜C20−アルケニルもしくはヘテロアリール−C2〜C20−アルキニルを意味し、
2′は、水素を意味するか、又はL2とは無関係に、L2と同じ意味を有し、かつ
1、X2は、互いに無関係に、酸素、硫黄又はNL1′もしくはNL2′を意味し、その際、
基L1及び/又はL2において、炭素原子に結合された水素原子が、部分的にもしくは完全に、ハロゲン原子によって置換されていてよい、化合物。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の化合物であって、式I中の(Y3−T2−)sが、式Ia
【化7】

で示される基に相当し、s′が、0、1もしくは2の値を採り、かつs′>0の場合に、置換基Y3は、s′>1の場合に、置換基T2は、互いに同一であるか、又は互いに異なっていてよく、その際、2,6−ナフチル基中の水素原子が、部分的にもしくは完全に、ハロゲン原子によって置換されていてよい、化合物。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の化合物であって、Y5が、基−O−COO−に相当する、化合物。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の化合物であって、基Z1−Y1−A1−及び−A2−Y2−Z2が同一である、化合物。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の化合物であって、Z1及び/又はZ2が反応性基
【化8】

を意味する、化合物。
【請求項8】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の化合物であって、Z1及び/又はZ2が反応性基
【化9】

を意味する、化合物。
【請求項9】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の化合物であって、Z1−Y1及び/又はZ2−Y2が反応性基
【化10】

を意味する、化合物。
【請求項10】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の化合物であって、Z1−Y1及び/又はZ2−Y2が反応性基
【化11】

を意味する、化合物。
【請求項11】
重合可能なもしくは重合可能でない液晶組成物であって、成分として、10〜100質量%の請求項1から10までのいずれか1項に記載の化合物と、0〜90質量%の他のモノマーと、0〜50質量%の1もしくは複数のキラル化合物と、0〜90質量%の他の添加剤とを含有し、その際、それらの成分の割合の合計は、補い合って100質量%となる組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の重合可能な液晶組成物のオリゴマー化又は重合によって得られる、オリゴマー又はポリマー。
【請求項13】
基体の印刷又は被覆のための方法において、請求項11に記載の重合可能な液晶組成物を基体上に施与し、引き続き重合させることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項11に記載の液晶組成物又は請求項12に記載のオリゴマーもしくはポリマーを、光学部材又は電子光学部材の製造のために用いる使用。
【請求項15】
式Ia′
【化12】

の化合物又は式Ib′
【化13】

の化合物
[式中、Mは、式
2−(Y3−T2−)s′′
に相当し、その際、s′′は、0又は1の値を採り、s′′>0の場合に、置換基T2は互いに同一もしくは異なっていてよく、X及びX′は、互いに無関係に、酸素又は硫黄を意味し、かつT2及びY3並びに他の置換基は、前記請求項に定義されるのと同じ意味を有する]の製造方法において、式II′
HX−M−X′H II′
の化合物と、式IIIa′
【化14】

の相応のモル数のカルボン酸誘導体とを、場合により1もしくは複数の補助化合物の存在下で反応させて、式Ia′の対称的な化合物を得るか、又は
式II′の化合物を、第一段階において、式IIIa′の相応のモル数のカルボン酸誘導体と、場合により1もしくは複数の補助化合物の存在下で反応させ、そして第二段階において、式IIIb′
【化15】

の相応のモル数のカルボン酸誘導体と、場合により1もしくは複数の補助化合物の存在下で反応させて、式Ib′の非対称的な化合物を得る[式中、W及びW′は、反応に際して離れる同一もしくは互いに異なる離脱基を表すか、又は1もしくは複数の場合により存在する補助化合物で変換して離れる離脱基となる同一もしくは互いに異なる前駆体基を表す]ことを特徴とする方法。
【請求項16】

【化16】

[式中、W′′は、ヒドロキシ、ハロゲン、C1〜C4−アルコキシ、部分的にもしくは完全にハロゲン化されたフェノキシ、無機酸の残基、カルボン酸の残基、脂肪族もしくは芳香族のスルホン酸の残基、部分的にもしくは完全にフッ素化された脂肪族もしくは芳香族のスルホン酸の残基又は式
【化17】

で示される基を表し、その際、Z1、Y1及びA1は、前記請求項に定義されるのと同じ意味を有する]で示される化合物。
【請求項17】
請求項11に記載の本発明による液晶組成物又は請求項12に記載のオリゴマーもしくはポリマーを、1もしくは複数のコレステリック層を含む断熱被覆であって、赤外波長領域、有利には750nmより大で、特に751nm〜約2000nmの波長領域において、入射する放射線の少なくとも40%、特に少なくとも45%を反射する被覆を製造するために用いる使用。
【請求項18】
請求項11に記載の本発明による液晶組成物又は請求項12に記載のオリゴマーもしくはポリマーを、請求項17に記載の断熱被覆であって約390nm〜750nmの波長領域において入射する放射線の少なくとも80%、特に少なくとも90%の透過率を有する断熱被覆の製造のために用いる使用。
【請求項19】
1もしくは複数のコレステリック層を含む断熱被覆であって、赤外波長領域、有利には750nmより大で、特に751nm〜約2000nmの波長領域において、入射する放射線の少なくとも40%、特に少なくとも45%を反射し、請求項11に記載の本発明による液晶組成物又は請求項12に記載の本発明によるオリゴマーもしくはポリマーを使用して得られる被覆。
【請求項20】
請求項19に記載の断熱被覆であって、約390nm〜750nmの波長領域において入射する放射線の少なくとも80%、特に少なくとも90%の透過率を有し、請求項11に記載の液晶組成物又は請求項12に記載の本発明によるオリゴマーもしくはポリマーを使用して得られる、断熱被覆。

【公表番号】特表2008−544954(P2008−544954A)
【公表日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510578(P2008−510578)
【出願日】平成18年5月10日(2006.5.10)
【国際出願番号】PCT/EP2006/062220
【国際公開番号】WO2006/120220
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】