3次元形状計測用撮影装置および方法並びにプログラム
【課題】被写体にパターン光を照射することにより取得した画像を用いて、被写体の3次元形状を正確に計測する。
【解決手段】第1のカメラ2により被写体のプレ画像を取得し、演算部5がプレ画像上に複数の領域からなる照射範囲を設定する。さらに、照射範囲の領域毎にパターン光照射の有無を判定し、判定結果に応じてプロジェクタ4の変換部12にパターンを表示する。これにより、光源11をオンとすると、被写体の必要な部分にのみパターン光が照射される。被写体におけるパターン光の反射光は、第1および第2のカメラ2,3に入射する。そして、第1および第2のカメラ2,3が基準画像および参照画像を取得し、演算部5が画素の対応付けを行うことにより、被写体の3次元形状を計測する。
【解決手段】第1のカメラ2により被写体のプレ画像を取得し、演算部5がプレ画像上に複数の領域からなる照射範囲を設定する。さらに、照射範囲の領域毎にパターン光照射の有無を判定し、判定結果に応じてプロジェクタ4の変換部12にパターンを表示する。これにより、光源11をオンとすると、被写体の必要な部分にのみパターン光が照射される。被写体におけるパターン光の反射光は、第1および第2のカメラ2,3に入射する。そして、第1および第2のカメラ2,3が基準画像および参照画像を取得し、演算部5が画素の対応付けを行うことにより、被写体の3次元形状を計測する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体の3次元形状を計測するための計測用画像を取得する3次元形状計測用撮影装置および方法並びに3次元形状計測用撮影方法をコンピュータに実行させるためのプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にステレオ法またはステレオ3次元画像計測法等と称される距離測定方法は、異なる位置に設けられた少なくとも2台以上のカメラ(1台の基準カメラおよびその他の参照カメラ)を用いて被写体を撮影し、これにより取得された複数の計測用画像(基準カメラによる基準画像および参照カメラによる参照画像)の間で画素を対応付け、対応付けられた基準画像上の画素と、参照画像上の画素との位置の差(視差)に三角測量の原理を適用することにより、基準カメラまたは参照カメラから当該画素に対応する被写体上の点までの距離を計測するものである。
【0003】
したがって、被写体の表面全体に対応するすべての画素までの距離を測定すれば、被写体の形状や奥行きという3次元形状を計測することが可能となる。なお、1台のカメラのみを使用して異なる位置において撮影を行うことにより複数の画像を取得して、被写体の3次元形状を計測することも可能である。
【0004】
ここで、ステレオ法においては、図11に示すように、基準画像G1上のある点Paに写像される実空間上の点は、点P1,P2,P3というように点Cからの視線上に複数存在するため、実空間上の点P1 ,P2 ,P3 等の写像である直線(エピポーラ線)上に、点Paに対応する参照画像G2上の点Pa′が存在することに基づいて画素の対応付けが行われる。なお、図11において点Cは基準カメラの視点、点C′は参照カメラの視点である。
【0005】
しかしながら、ステレオ法においては、被写体が人物の顔のように濃淡、形状および色等の局所的な特徴がない場合には、画素の対応付けを行うことにより対応点を求めることができないという問題がある。このような問題を解決するために、被写体にランダムドットパターン、格子状パターン、バーコード状パターン等のパターン光を照射し、パターン光の位置に基づいて対応点を求める手法が提案されている(特許文献1,2参照)。
【0006】
また、被写体のコントラストを測定し、その測定結果に応じてパターン光を照射するか否かを決定する手法も提案されている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2004−212385号公報
【特許文献2】特開2000−283752号公報
【特許文献3】特開2002−300605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3に記載された手法は、画角の全範囲に対してパターン光の照射の有無を設定しているため、画角の範囲におけるコントラストが高い部分や、局所的な特徴を有する部分にもパターン光が照射される。このようにコントラストが高い部分あるいは局所的な特徴を有する部分にパターン光が照射されると、取得される画像の高周波成分が多くなる。このため、その部分に対応する画像にモアレが生じる等してしまうことから、対応点の探索を良好に行うことができず、その結果、被写体までの距離を正確に測定できなくなってしまうという問題がある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、被写体にパターン光を照射することにより取得した画像を用いて、被写体の3次元形状を正確に計測することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による3次元形状計測用撮影装置は、被写体を撮影することにより、該被写体の3次元形状を計測するための複数の計測用画像からなる計測用画像群を取得する複数の撮影手段と、
前記撮影手段による画角の範囲内にパターン光を含む光を照射する照射手段と、
前記計測用画像群の取得前に前記被写体のプレ画像を取得するとともに、前記パターン光が照射された前記被写体の前記計測用画像を取得するよう、前記撮影手段を制御する撮影制御手段と、
前記プレ画像上に複数の領域を設定し、該領域毎にパターン光照射の有無を判定する判定手段と、
前記パターン光を照射すると判定された領域にのみ該パターン光が照射されるよう、前記照射手段を制御する照射制御手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0010】
なお、3次元形状計測用撮影装置においては、前記分割された領域毎に前記プレ画像の輝度を算出する輝度算出手段をさらに備えるものとし、
前記照射制御手段を、前記輝度に応じて、前記領域毎に前記被写体に照射される前記光の光量を変化させるよう前記照射手段を制御する手段としてもよい。
【0011】
この場合、前記照射制御手段を、前記複数の領域のうち前記輝度が所定値以下の領域には、該領域に所定輝度の前記パターン光が照射されるよう前記照射手段を制御する手段としてもよい。
【0012】
また、本発明による3次元形状計測用撮影装置においては、前記パターン光が照射された前記被写体の前記計測用画像群に基づいて、前記被写体の3次元形状を計測する計測手段をさらに備えるものとしてもよい。
【0013】
本発明による3次元形状計測用撮影方法は、被写体を撮影することにより、該被写体の3次元形状を計測するための複数の計測用画像からなる計測用画像群を取得する複数の撮影手段と、
前記撮影手段による画角の範囲内にパターン光を含む光を照射する照射手段とを備えた3次元形状計測用撮影装置における3次元形状計測用撮影方法であって、
前記計測用画像群の取得前に前記被写体のプレ画像を取得し、
前記プレ画像上に複数の領域を設定し、該領域毎にパターン光照射の有無を判定し、
前記パターン光を照射すると判定された領域にのみ該パターン光を照射し、
前記パターン光が照射された前記被写体の前記計測用画像を取得し、
前記計測用画像に基づいて、前記被写体の3次元形状を計測することを特徴とするものである。
【0014】
なお、本発明による3次元形状計測用撮影方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして提供してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、計測用画像群の取得前に被写体のプレ画像が取得され、プレ画像上に複数の領域が設定され、設定された領域毎にパターン光照射の有無が判定され、パターン光を照射すると判定された領域にのみパターン光が照射される。このため、画角の範囲に含まれるコントラストが高い部分や、局所的な特徴を有する部分には、パターン光が照射されないようにすることができる。したがって、画角の範囲にコントラストが高かったり、局所的な特徴を有する部分を含む場合であっても、モアレ等を含まない高画質の計測用画像群を取得できるため、対応点を精度よく求めることができ、その結果、被写体の3次元形状を精度よく計測することができる。
【0016】
また、分割された領域毎にプレ画像の輝度を算出し、輝度に応じて、領域毎に被写体に照射される光の光量を変化させることにより、輝度が低い領域を明るくすることができる。
【0017】
また、複数の領域のうち輝度が所定値以下の領域には、その領域に所定輝度のパターン光を照射することにより、被写体上の暗い部分に対して、煩雑な処理を行うことなく高輝度のパターン光を照射することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は本発明の第1の実施形態による3次元形状計測用撮影装置を適用した3次元形状計測装置の外観斜視図である。図1に示すように本実施形態による3次元形状計測装置1は、第1のカメラ2、第2のカメラ3、プロジェクタ4、演算部5、モニタ6および入力部7を備える。
【0019】
第1および第2のカメラ2,3は、所定間隔を空けかつ所定の輻輳角を持って配置されており、演算部5からの指示に応じて、被写体をそれぞれ異なる位置から撮影することにより、被写体の3次元形状の計測に使用する基準画像G1および参照画像G2をそれぞれ取得する。なお、取得した基準画像G1および参照画像G2は演算部5に入力されて、被写体の3次元形状の計測に用いられる。なお、第1および第2のカメラ2,3が撮影手段に相当する。
【0020】
プロジェクタ4は、演算部5からの指示により、格子状ドットパターン等の所定のパターンからなるパターン光を被写体に向けて照射するためのものであり、LED等の光を発する光源11、光源11から発せられた光をパターン光に変換する変換部12を備える。なお、プロジェクタ4が照射手段に相当する。
【0021】
変換部12は、光源11から発せられる光の光路X0上に配置された液晶フィルタからなり、後述する照射制御部21から指示されたパターンを表示することにより、光源11から発せられた光を透過させてパターン光に変換する。なお、パターン光については後述する。
【0022】
演算部5は、被写体の3次元形状の計測のために必要な演算を行うとともに、第1のカメラ2、第2のカメラ3およびプロジェクタ4の駆動を制御する。
【0023】
図2は演算部5の構成を示す概略ブロック図である。図2に示すように演算部5は、プロジェクタ4の駆動を制御する照射制御部21、第1および第2のカメラ2,3の動作を制御する撮影制御部22、被写体への光の照射範囲を設定する範囲設定部23、被写体へのパターン光照射の有無を判定する判定部24、パターン光が照射された被写体を撮影することにより取得された基準画像G1および参照画像G2を用いて被写体の3次元形状を計測する計測部25、および演算部5の全体の動作を制御する全体制御部27を備え、照射制御部21、撮影制御部22、範囲設定部23、判定部24、計測部25および全体制御部27が、モニタ6および入力部7とともにバス28により接続されている。
【0024】
全体制御部27は、CPU27A、作業領域となるRAM27Bおよび操作/制御プログラムを含む各種情報が記憶されているROM27Cからなる。
【0025】
照射制御部21は、全体制御部27からの指示により、光源11のオン、オフを制御する。また、判定部24の判定結果に応じて、パターンの変換部12への表示を制御する。
【0026】
撮影制御部22は、入力部7から3次元形状計測の指示がなされている場合、被写体を撮影して基準画像G1および参照画像G2を取得する指示を第1および第2のカメラ2,3に対して行う。また、基準画像G1および参照画像G2の取得前に、プレ画像を取得する指示を第1のカメラ2に対して行う。
【0027】
範囲設定部23は、プレ画像上にプロジェクタ4から発せられる光を照射する範囲を設定する。図3は光の照射範囲の設定を説明するための図である。図3に示すように範囲設定部23は、プレ画像上に4×4=16の領域からなる照射範囲R0を設定する。ここで、照射範囲R0内の各領域は、図3に示すようにxy座標系を設定した場合の座標値によりその位置を特定するものとする。
【0028】
なお、照射範囲R0の位置および分割数はこれに限定されるものではなく、例えば、図4(a)、(b)に示すように照射範囲R0を狭くしたり、図4(c)に示すように分割数を2×2としたりしてもよい。なお、照射範囲R0はユーザによる入力部7からの指示によりあらかじめ設定されたものであってもよく、プレ画像をモニタ6に表示し、表示されたプレ画像をユーザが見ながら設定したものであってもよい。
【0029】
判定部24は、プレ画像に設定された照射範囲R0の各領域において、パターン光照射の有無を判定するための評価値を算出する。具体的には、判定部24は、領域内の画像に含まれるエッジを微分フィルタ等を用いた演算により検出し、検出したエッジの本数を評価値として用いる。なお、領域内の画像のコントラストを検出し、検出したコントラストを評価値として用いるようにしてもよい。
【0030】
ここで、領域内の画像にエッジが少ない場合は評価値は低くなる。また、領域内の画像のコントラストが低い場合も評価値は低くなる。このように領域内の画像の評価値が低い場合は、後述するように3次元形状を計測するための対応点を精度よく求めることができない。このため、判定部24は、評価値をしきい値Th1と比較し、評価値がしきい値Th1以下の場合に、その領域についてはパターン光を照射すると判定する。
【0031】
なお、照射制御部21は、判定部24による判定結果に応じたパターンを変換部12に表示する。例えば、図3に示すように照射範囲R0が設定されている場合において、(1,1)、(1,2)および(4,4)の位置の領域にパターンを照射すると判定部24が判定した場合、図5に示すようなパターンを変換部12に表示する。これにより、光源11がオンとされると、第1および第2のカメラ2,3により取得される画像上の(1,1)、(1,2)および(4,4)の位置の領域に対応する被写体上の位置にパターン光が照射され、他の領域には何ら光は照射されないこととなる。
【0032】
計測部25は、パターン光が照射された被写体を撮影することにより第1および第2のカメラ2,3が取得した基準画像G1および参照画像G2に基づいて、被写体の3次元形状を計測する。すなわち、基準画像G1および参照画像G2上にマッチングウィンドウを設定し、エピポーラ線の情報を用いて、基準画像G1および参照画像G2上の画素の対応付けを行って対応点を求める。ここで、計測部25は、第1および第2のカメラ2,3のレンズの光路と撮像面との位置関係を表す内部パラメータ、並びに第1および第2のカメラ2,3の位置関係を表す外部パラメータをROM27Cに記憶しており、内部パラメータおよび外部パラメータを参照して画素の対応付けを行って対応点を求める。なお、内部パラメータおよび外部パラメータは、あらかじめカメラキャリブレーションにより求められ、ROM27Cに記憶されている。そして、計測部25は、画素の対応付けが終了すると、対応点に基づいて被写体の3次元形状を算出し、算出結果を距離画像としてモニタ6に出力する。
【0033】
次いで、第1の実施形態において行われる処理について説明する。図6は第1の実施形態において行われる処理を示すフローチャートである。まず、全体制御部27が、3次元形状計測のための撮影の指示がなされているか否かを監視しており(ステップST1)、ステップST1が肯定されると、第1のカメラ2がプレ画像を取得し(ステップST2)、範囲設定部23がプレ画像に照射範囲R0を設定する(ステップST3)。
【0034】
そして、全体制御部27が、照射範囲R0内の領域のうち判定の対象とする領域を最初の領域に設定し(i=1,ステップST4)、判定部24が対象の領域の評価値を算出し(ステップST5)、評価値がしきい値Th1以下であるか否かを判定する(ステップST6)。ステップST6が肯定されると、判定部24は、照射制御部21にその領域にパターン光を照射する旨の指示を行う(ステップST7)。ステップST6が否定されると、判定部24は、照射制御部21にその領域にパターン光を照射しない旨の指示を行う(ステップST8)。
【0035】
そして、全体制御部27がすべての領域について判定を行ったか否かを判定し(ステップST9)、ステップST9が否定されると、判定の対象を次の領域に変更し(i=i+1、ステップST10)、ステップST5の処理に戻る。ステップST9が肯定されると、照射制御部21が変換部12にパターンを表示し(ステップST11)、光源11をオンとする(ステップST12)。これにより、判定結果に応じたパターン光が被写体に照射される。
【0036】
次いで撮影制御部22が第1および第2のカメラ2,3により撮影を行い(ステップST13)、計測部25が基準画像G1および参照画像G2の画素の対応付けを行って対応点を求め、対応点に基づいて被写体の3次元形状を算出し(ステップST14)、算出結果である距離画像をモニタ6に表示し(ステップST15)、処理を終了する。
【0037】
このように、第1の実施形態においては、プレ画像上に複数の領域からなる照射範囲R0を設定し、照射範囲R0内の領域毎にパターン光照射の有無を判定し、パターン光を照射すると判定された領域にのみパターン光を照射するようにしたため、第1および第2のカメラ2,3の画角の範囲に含まれるコントラストが高い部分や、エッジが多い等の局所的な特徴を有する部分には、パターン光が照射されないようにすることができる。したがって、画角の範囲にコントラストが高かったり、局所的な特徴を有する部分を含む場合であっても、モアレ等を含まない高画質の基準画像G1および参照画像G2を取得できるため、対応点を精度良く求めることができ、その結果、被写体の3次元形状を精度よく計測することができる。
【0038】
次いで、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態においては、演算部5の構成のみが第1の実施形態と異なるため、ここでは演算部5の構成についてのみ説明する。図7は本発明の第2の実施形態による3次元形状計測装置における演算部の構成を示す図である。図7に示すように第2の実施形態による3次元形状計測装置の演算部5Aは、照射範囲内の領域毎にプレ画像の輝度を算出する輝度算出部26を備え、輝度に応じて領域毎に被写体に照射される光の光量を変化させるようにした点が第1の実施形態と異なる。
【0039】
次いで、第2の実施形態において行われる処理について説明する。図8および図9は第2の実施形態において行われる処理を示すフローチャートである。まず、全体制御部27が、3次元形状計測用撮影のための撮影の指示がなされているか否かを監視しており(ステップST21)、ステップST21が肯定されると、第1のカメラ2がプレ画像を取得し(ステップST22)、範囲設定部23がプレ画像に照射範囲R0を設定する(ステップST23)。
【0040】
そして、全体制御部27が、照射範囲R0内の領域のうち判定の対象とする領域を最初の領域に設定し(i=1,ステップST24)、輝度算出部26が対象の領域の輝度を算出する(ステップST25)。なお、輝度は、例えばプレ画像の全画素における画素値の平均値を用いればよい。そして、判定部24が、輝度が所定のしきい値Th2以上であるか否かを判定する(ステップST26)。ステップST26が否定されると、判定部24は、照射制御部21にその領域にあらかじめ設定した最高輝度のパターン光を照射する旨の指示を行い(ステップST27)、ステップST33の処理に進む。
【0041】
ステップST26が肯定されると、判定部24は対象の領域に照射する光の輝度を設定する(ステップST28)。具体的には、対象の領域の輝度があらかじめ設定した輝度となる光量の光を、その領域に対応する被写体上の領域に照射するように、変換部12のその領域における透過率を設定する。
【0042】
次いで、判定部24が対象の領域の評価値を算出し(ステップST29)、評価値がしきい値Th1以下であるか否かを判定する(ステップST30)。ステップST30が肯定されると、判定部24は、照射制御部21にその領域にパターン光を照射する旨の指示を行う(ステップST31)。ステップST30が否定されると、判定部24は、照射制御部21にその領域にパターン光を照射しない旨の指示を行う(ステップST32)。
【0043】
そして、全体制御部27がすべての領域について判定を行ったか否かを判定し(ステップST33)、ステップST33が否定されると、判定の対象を次の領域に変更し(i=i+1、ステップST34)、ステップST25の処理に戻る。ステップST33が肯定されると、照射制御部21が変換部12にパターンを表示し(ステップST35)、光源11をオンとする(ステップST36)。これにより、判定結果に応じたパターン光が被写体に照射される。
【0044】
図10は第2の実施形態において変換部12に表示されるパターンを示す図である。図3に示すように照射範囲R0が設定されている場合において、(1,1)および(4,4)の位置の領域に最高輝度のパターン光を照射し、(1,2)の領域に最高輝度よりも小さい輝度のパターン光を照射し、(4,3)の領域に最高輝度の光(パターン光ではない)を照射し、(3,2)の領域に最高輝度よりも小さい輝度の光(パターン光ではない)を照射すると判定部24が判定した場合、図10に示すようなパターンを変換部12に表示する。これにより、光源11をオンとすることにより、第1および第2のカメラ2,3により取得される画像上の(1,1)および(4,4)の位置の領域に対応する被写体上の位置に最高輝度のパターン光が、(1,2)の領域に最高輝度よりも小さい輝度のパターン光が、(4,3)の領域に最高輝度の光が、(3,2)の領域に最高輝度よりも小さい輝度の光がそれぞれ照射され、他の領域には何ら光は照射されないこととなる。
【0045】
次いで撮影制御部22が第1および第2のカメラ2,3により撮影を行い(ステップST37)、計測部25が基準画像G1および参照画像G2の画素の対応付けを行って対応点を求め、対応点に基づいて被写体の3次元形状を算出し(ステップST38)、算出結果である距離画像をモニタ6に表示し(ステップST39)、処理を終了する。
【0046】
このように、第2の実施形態においては、照射範囲R0内の領域毎にプレ画像の輝度を算出し、輝度に応じて、領域毎に被写体に照射される光の光量を変化させるようにしたため、輝度が低い領域を明るくすることができる。
【0047】
また、照射範囲R0内の複数の領域のうち輝度がしきい値Th2未満の領域には、その領域に最高輝度のパターン光を照射するようにしたため、被写体上の暗い部分に対して、煩雑な処理を行うことなく高輝度のパターン光を照射することができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態に係る装置1について説明したが、コンピュータを、上記の撮影制御部22、範囲設定部23、判定部24、計測部25および輝度算出部26に対応する手段として機能させ、図6,8,9に示すような処理を行わせるプログラムも、本発明の実施形態の1つである。また、そのようなプログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体も、本発明の実施形態の1つである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1の実施形態による3次元形状計測装置の外観斜視図
【図2】第1の実施形態における演算部の構成を示す概略ブロック図
【図3】光の照射範囲の設定を説明するための図
【図4】光の照射範囲の設定の他の例を説明するための図
【図5】第1の実施形態において変換部に表示されるパターンを示す図
【図6】第1の実施形態において行われる処理を示すフローチャート
【図7】第2の実施形態における演算部の構成を示す図
【図8】第2の実施形態において行われる処理を示すフローチャート(その1)
【図9】第2の実施形態において行われる処理を示すフローチャート(その2)
【図10】第1の実施形態において変換部に表示されるパターンを示す図
【図11】画素の対応付けを説明するための図
【符号の説明】
【0050】
1 3次元形状計測装置
2,3 カメラ
4 プロジェクタ
5 演算部
6 モニタ
7 入力部
11 光源
12 変換部
21 照射制御部
22 撮影制御部
23 範囲設定部
24 判定部
25 計測部
26 輝度算出部
27 全体制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体の3次元形状を計測するための計測用画像を取得する3次元形状計測用撮影装置および方法並びに3次元形状計測用撮影方法をコンピュータに実行させるためのプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にステレオ法またはステレオ3次元画像計測法等と称される距離測定方法は、異なる位置に設けられた少なくとも2台以上のカメラ(1台の基準カメラおよびその他の参照カメラ)を用いて被写体を撮影し、これにより取得された複数の計測用画像(基準カメラによる基準画像および参照カメラによる参照画像)の間で画素を対応付け、対応付けられた基準画像上の画素と、参照画像上の画素との位置の差(視差)に三角測量の原理を適用することにより、基準カメラまたは参照カメラから当該画素に対応する被写体上の点までの距離を計測するものである。
【0003】
したがって、被写体の表面全体に対応するすべての画素までの距離を測定すれば、被写体の形状や奥行きという3次元形状を計測することが可能となる。なお、1台のカメラのみを使用して異なる位置において撮影を行うことにより複数の画像を取得して、被写体の3次元形状を計測することも可能である。
【0004】
ここで、ステレオ法においては、図11に示すように、基準画像G1上のある点Paに写像される実空間上の点は、点P1,P2,P3というように点Cからの視線上に複数存在するため、実空間上の点P1 ,P2 ,P3 等の写像である直線(エピポーラ線)上に、点Paに対応する参照画像G2上の点Pa′が存在することに基づいて画素の対応付けが行われる。なお、図11において点Cは基準カメラの視点、点C′は参照カメラの視点である。
【0005】
しかしながら、ステレオ法においては、被写体が人物の顔のように濃淡、形状および色等の局所的な特徴がない場合には、画素の対応付けを行うことにより対応点を求めることができないという問題がある。このような問題を解決するために、被写体にランダムドットパターン、格子状パターン、バーコード状パターン等のパターン光を照射し、パターン光の位置に基づいて対応点を求める手法が提案されている(特許文献1,2参照)。
【0006】
また、被写体のコントラストを測定し、その測定結果に応じてパターン光を照射するか否かを決定する手法も提案されている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2004−212385号公報
【特許文献2】特開2000−283752号公報
【特許文献3】特開2002−300605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3に記載された手法は、画角の全範囲に対してパターン光の照射の有無を設定しているため、画角の範囲におけるコントラストが高い部分や、局所的な特徴を有する部分にもパターン光が照射される。このようにコントラストが高い部分あるいは局所的な特徴を有する部分にパターン光が照射されると、取得される画像の高周波成分が多くなる。このため、その部分に対応する画像にモアレが生じる等してしまうことから、対応点の探索を良好に行うことができず、その結果、被写体までの距離を正確に測定できなくなってしまうという問題がある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、被写体にパターン光を照射することにより取得した画像を用いて、被写体の3次元形状を正確に計測することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による3次元形状計測用撮影装置は、被写体を撮影することにより、該被写体の3次元形状を計測するための複数の計測用画像からなる計測用画像群を取得する複数の撮影手段と、
前記撮影手段による画角の範囲内にパターン光を含む光を照射する照射手段と、
前記計測用画像群の取得前に前記被写体のプレ画像を取得するとともに、前記パターン光が照射された前記被写体の前記計測用画像を取得するよう、前記撮影手段を制御する撮影制御手段と、
前記プレ画像上に複数の領域を設定し、該領域毎にパターン光照射の有無を判定する判定手段と、
前記パターン光を照射すると判定された領域にのみ該パターン光が照射されるよう、前記照射手段を制御する照射制御手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0010】
なお、3次元形状計測用撮影装置においては、前記分割された領域毎に前記プレ画像の輝度を算出する輝度算出手段をさらに備えるものとし、
前記照射制御手段を、前記輝度に応じて、前記領域毎に前記被写体に照射される前記光の光量を変化させるよう前記照射手段を制御する手段としてもよい。
【0011】
この場合、前記照射制御手段を、前記複数の領域のうち前記輝度が所定値以下の領域には、該領域に所定輝度の前記パターン光が照射されるよう前記照射手段を制御する手段としてもよい。
【0012】
また、本発明による3次元形状計測用撮影装置においては、前記パターン光が照射された前記被写体の前記計測用画像群に基づいて、前記被写体の3次元形状を計測する計測手段をさらに備えるものとしてもよい。
【0013】
本発明による3次元形状計測用撮影方法は、被写体を撮影することにより、該被写体の3次元形状を計測するための複数の計測用画像からなる計測用画像群を取得する複数の撮影手段と、
前記撮影手段による画角の範囲内にパターン光を含む光を照射する照射手段とを備えた3次元形状計測用撮影装置における3次元形状計測用撮影方法であって、
前記計測用画像群の取得前に前記被写体のプレ画像を取得し、
前記プレ画像上に複数の領域を設定し、該領域毎にパターン光照射の有無を判定し、
前記パターン光を照射すると判定された領域にのみ該パターン光を照射し、
前記パターン光が照射された前記被写体の前記計測用画像を取得し、
前記計測用画像に基づいて、前記被写体の3次元形状を計測することを特徴とするものである。
【0014】
なお、本発明による3次元形状計測用撮影方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして提供してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、計測用画像群の取得前に被写体のプレ画像が取得され、プレ画像上に複数の領域が設定され、設定された領域毎にパターン光照射の有無が判定され、パターン光を照射すると判定された領域にのみパターン光が照射される。このため、画角の範囲に含まれるコントラストが高い部分や、局所的な特徴を有する部分には、パターン光が照射されないようにすることができる。したがって、画角の範囲にコントラストが高かったり、局所的な特徴を有する部分を含む場合であっても、モアレ等を含まない高画質の計測用画像群を取得できるため、対応点を精度よく求めることができ、その結果、被写体の3次元形状を精度よく計測することができる。
【0016】
また、分割された領域毎にプレ画像の輝度を算出し、輝度に応じて、領域毎に被写体に照射される光の光量を変化させることにより、輝度が低い領域を明るくすることができる。
【0017】
また、複数の領域のうち輝度が所定値以下の領域には、その領域に所定輝度のパターン光を照射することにより、被写体上の暗い部分に対して、煩雑な処理を行うことなく高輝度のパターン光を照射することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は本発明の第1の実施形態による3次元形状計測用撮影装置を適用した3次元形状計測装置の外観斜視図である。図1に示すように本実施形態による3次元形状計測装置1は、第1のカメラ2、第2のカメラ3、プロジェクタ4、演算部5、モニタ6および入力部7を備える。
【0019】
第1および第2のカメラ2,3は、所定間隔を空けかつ所定の輻輳角を持って配置されており、演算部5からの指示に応じて、被写体をそれぞれ異なる位置から撮影することにより、被写体の3次元形状の計測に使用する基準画像G1および参照画像G2をそれぞれ取得する。なお、取得した基準画像G1および参照画像G2は演算部5に入力されて、被写体の3次元形状の計測に用いられる。なお、第1および第2のカメラ2,3が撮影手段に相当する。
【0020】
プロジェクタ4は、演算部5からの指示により、格子状ドットパターン等の所定のパターンからなるパターン光を被写体に向けて照射するためのものであり、LED等の光を発する光源11、光源11から発せられた光をパターン光に変換する変換部12を備える。なお、プロジェクタ4が照射手段に相当する。
【0021】
変換部12は、光源11から発せられる光の光路X0上に配置された液晶フィルタからなり、後述する照射制御部21から指示されたパターンを表示することにより、光源11から発せられた光を透過させてパターン光に変換する。なお、パターン光については後述する。
【0022】
演算部5は、被写体の3次元形状の計測のために必要な演算を行うとともに、第1のカメラ2、第2のカメラ3およびプロジェクタ4の駆動を制御する。
【0023】
図2は演算部5の構成を示す概略ブロック図である。図2に示すように演算部5は、プロジェクタ4の駆動を制御する照射制御部21、第1および第2のカメラ2,3の動作を制御する撮影制御部22、被写体への光の照射範囲を設定する範囲設定部23、被写体へのパターン光照射の有無を判定する判定部24、パターン光が照射された被写体を撮影することにより取得された基準画像G1および参照画像G2を用いて被写体の3次元形状を計測する計測部25、および演算部5の全体の動作を制御する全体制御部27を備え、照射制御部21、撮影制御部22、範囲設定部23、判定部24、計測部25および全体制御部27が、モニタ6および入力部7とともにバス28により接続されている。
【0024】
全体制御部27は、CPU27A、作業領域となるRAM27Bおよび操作/制御プログラムを含む各種情報が記憶されているROM27Cからなる。
【0025】
照射制御部21は、全体制御部27からの指示により、光源11のオン、オフを制御する。また、判定部24の判定結果に応じて、パターンの変換部12への表示を制御する。
【0026】
撮影制御部22は、入力部7から3次元形状計測の指示がなされている場合、被写体を撮影して基準画像G1および参照画像G2を取得する指示を第1および第2のカメラ2,3に対して行う。また、基準画像G1および参照画像G2の取得前に、プレ画像を取得する指示を第1のカメラ2に対して行う。
【0027】
範囲設定部23は、プレ画像上にプロジェクタ4から発せられる光を照射する範囲を設定する。図3は光の照射範囲の設定を説明するための図である。図3に示すように範囲設定部23は、プレ画像上に4×4=16の領域からなる照射範囲R0を設定する。ここで、照射範囲R0内の各領域は、図3に示すようにxy座標系を設定した場合の座標値によりその位置を特定するものとする。
【0028】
なお、照射範囲R0の位置および分割数はこれに限定されるものではなく、例えば、図4(a)、(b)に示すように照射範囲R0を狭くしたり、図4(c)に示すように分割数を2×2としたりしてもよい。なお、照射範囲R0はユーザによる入力部7からの指示によりあらかじめ設定されたものであってもよく、プレ画像をモニタ6に表示し、表示されたプレ画像をユーザが見ながら設定したものであってもよい。
【0029】
判定部24は、プレ画像に設定された照射範囲R0の各領域において、パターン光照射の有無を判定するための評価値を算出する。具体的には、判定部24は、領域内の画像に含まれるエッジを微分フィルタ等を用いた演算により検出し、検出したエッジの本数を評価値として用いる。なお、領域内の画像のコントラストを検出し、検出したコントラストを評価値として用いるようにしてもよい。
【0030】
ここで、領域内の画像にエッジが少ない場合は評価値は低くなる。また、領域内の画像のコントラストが低い場合も評価値は低くなる。このように領域内の画像の評価値が低い場合は、後述するように3次元形状を計測するための対応点を精度よく求めることができない。このため、判定部24は、評価値をしきい値Th1と比較し、評価値がしきい値Th1以下の場合に、その領域についてはパターン光を照射すると判定する。
【0031】
なお、照射制御部21は、判定部24による判定結果に応じたパターンを変換部12に表示する。例えば、図3に示すように照射範囲R0が設定されている場合において、(1,1)、(1,2)および(4,4)の位置の領域にパターンを照射すると判定部24が判定した場合、図5に示すようなパターンを変換部12に表示する。これにより、光源11がオンとされると、第1および第2のカメラ2,3により取得される画像上の(1,1)、(1,2)および(4,4)の位置の領域に対応する被写体上の位置にパターン光が照射され、他の領域には何ら光は照射されないこととなる。
【0032】
計測部25は、パターン光が照射された被写体を撮影することにより第1および第2のカメラ2,3が取得した基準画像G1および参照画像G2に基づいて、被写体の3次元形状を計測する。すなわち、基準画像G1および参照画像G2上にマッチングウィンドウを設定し、エピポーラ線の情報を用いて、基準画像G1および参照画像G2上の画素の対応付けを行って対応点を求める。ここで、計測部25は、第1および第2のカメラ2,3のレンズの光路と撮像面との位置関係を表す内部パラメータ、並びに第1および第2のカメラ2,3の位置関係を表す外部パラメータをROM27Cに記憶しており、内部パラメータおよび外部パラメータを参照して画素の対応付けを行って対応点を求める。なお、内部パラメータおよび外部パラメータは、あらかじめカメラキャリブレーションにより求められ、ROM27Cに記憶されている。そして、計測部25は、画素の対応付けが終了すると、対応点に基づいて被写体の3次元形状を算出し、算出結果を距離画像としてモニタ6に出力する。
【0033】
次いで、第1の実施形態において行われる処理について説明する。図6は第1の実施形態において行われる処理を示すフローチャートである。まず、全体制御部27が、3次元形状計測のための撮影の指示がなされているか否かを監視しており(ステップST1)、ステップST1が肯定されると、第1のカメラ2がプレ画像を取得し(ステップST2)、範囲設定部23がプレ画像に照射範囲R0を設定する(ステップST3)。
【0034】
そして、全体制御部27が、照射範囲R0内の領域のうち判定の対象とする領域を最初の領域に設定し(i=1,ステップST4)、判定部24が対象の領域の評価値を算出し(ステップST5)、評価値がしきい値Th1以下であるか否かを判定する(ステップST6)。ステップST6が肯定されると、判定部24は、照射制御部21にその領域にパターン光を照射する旨の指示を行う(ステップST7)。ステップST6が否定されると、判定部24は、照射制御部21にその領域にパターン光を照射しない旨の指示を行う(ステップST8)。
【0035】
そして、全体制御部27がすべての領域について判定を行ったか否かを判定し(ステップST9)、ステップST9が否定されると、判定の対象を次の領域に変更し(i=i+1、ステップST10)、ステップST5の処理に戻る。ステップST9が肯定されると、照射制御部21が変換部12にパターンを表示し(ステップST11)、光源11をオンとする(ステップST12)。これにより、判定結果に応じたパターン光が被写体に照射される。
【0036】
次いで撮影制御部22が第1および第2のカメラ2,3により撮影を行い(ステップST13)、計測部25が基準画像G1および参照画像G2の画素の対応付けを行って対応点を求め、対応点に基づいて被写体の3次元形状を算出し(ステップST14)、算出結果である距離画像をモニタ6に表示し(ステップST15)、処理を終了する。
【0037】
このように、第1の実施形態においては、プレ画像上に複数の領域からなる照射範囲R0を設定し、照射範囲R0内の領域毎にパターン光照射の有無を判定し、パターン光を照射すると判定された領域にのみパターン光を照射するようにしたため、第1および第2のカメラ2,3の画角の範囲に含まれるコントラストが高い部分や、エッジが多い等の局所的な特徴を有する部分には、パターン光が照射されないようにすることができる。したがって、画角の範囲にコントラストが高かったり、局所的な特徴を有する部分を含む場合であっても、モアレ等を含まない高画質の基準画像G1および参照画像G2を取得できるため、対応点を精度良く求めることができ、その結果、被写体の3次元形状を精度よく計測することができる。
【0038】
次いで、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態においては、演算部5の構成のみが第1の実施形態と異なるため、ここでは演算部5の構成についてのみ説明する。図7は本発明の第2の実施形態による3次元形状計測装置における演算部の構成を示す図である。図7に示すように第2の実施形態による3次元形状計測装置の演算部5Aは、照射範囲内の領域毎にプレ画像の輝度を算出する輝度算出部26を備え、輝度に応じて領域毎に被写体に照射される光の光量を変化させるようにした点が第1の実施形態と異なる。
【0039】
次いで、第2の実施形態において行われる処理について説明する。図8および図9は第2の実施形態において行われる処理を示すフローチャートである。まず、全体制御部27が、3次元形状計測用撮影のための撮影の指示がなされているか否かを監視しており(ステップST21)、ステップST21が肯定されると、第1のカメラ2がプレ画像を取得し(ステップST22)、範囲設定部23がプレ画像に照射範囲R0を設定する(ステップST23)。
【0040】
そして、全体制御部27が、照射範囲R0内の領域のうち判定の対象とする領域を最初の領域に設定し(i=1,ステップST24)、輝度算出部26が対象の領域の輝度を算出する(ステップST25)。なお、輝度は、例えばプレ画像の全画素における画素値の平均値を用いればよい。そして、判定部24が、輝度が所定のしきい値Th2以上であるか否かを判定する(ステップST26)。ステップST26が否定されると、判定部24は、照射制御部21にその領域にあらかじめ設定した最高輝度のパターン光を照射する旨の指示を行い(ステップST27)、ステップST33の処理に進む。
【0041】
ステップST26が肯定されると、判定部24は対象の領域に照射する光の輝度を設定する(ステップST28)。具体的には、対象の領域の輝度があらかじめ設定した輝度となる光量の光を、その領域に対応する被写体上の領域に照射するように、変換部12のその領域における透過率を設定する。
【0042】
次いで、判定部24が対象の領域の評価値を算出し(ステップST29)、評価値がしきい値Th1以下であるか否かを判定する(ステップST30)。ステップST30が肯定されると、判定部24は、照射制御部21にその領域にパターン光を照射する旨の指示を行う(ステップST31)。ステップST30が否定されると、判定部24は、照射制御部21にその領域にパターン光を照射しない旨の指示を行う(ステップST32)。
【0043】
そして、全体制御部27がすべての領域について判定を行ったか否かを判定し(ステップST33)、ステップST33が否定されると、判定の対象を次の領域に変更し(i=i+1、ステップST34)、ステップST25の処理に戻る。ステップST33が肯定されると、照射制御部21が変換部12にパターンを表示し(ステップST35)、光源11をオンとする(ステップST36)。これにより、判定結果に応じたパターン光が被写体に照射される。
【0044】
図10は第2の実施形態において変換部12に表示されるパターンを示す図である。図3に示すように照射範囲R0が設定されている場合において、(1,1)および(4,4)の位置の領域に最高輝度のパターン光を照射し、(1,2)の領域に最高輝度よりも小さい輝度のパターン光を照射し、(4,3)の領域に最高輝度の光(パターン光ではない)を照射し、(3,2)の領域に最高輝度よりも小さい輝度の光(パターン光ではない)を照射すると判定部24が判定した場合、図10に示すようなパターンを変換部12に表示する。これにより、光源11をオンとすることにより、第1および第2のカメラ2,3により取得される画像上の(1,1)および(4,4)の位置の領域に対応する被写体上の位置に最高輝度のパターン光が、(1,2)の領域に最高輝度よりも小さい輝度のパターン光が、(4,3)の領域に最高輝度の光が、(3,2)の領域に最高輝度よりも小さい輝度の光がそれぞれ照射され、他の領域には何ら光は照射されないこととなる。
【0045】
次いで撮影制御部22が第1および第2のカメラ2,3により撮影を行い(ステップST37)、計測部25が基準画像G1および参照画像G2の画素の対応付けを行って対応点を求め、対応点に基づいて被写体の3次元形状を算出し(ステップST38)、算出結果である距離画像をモニタ6に表示し(ステップST39)、処理を終了する。
【0046】
このように、第2の実施形態においては、照射範囲R0内の領域毎にプレ画像の輝度を算出し、輝度に応じて、領域毎に被写体に照射される光の光量を変化させるようにしたため、輝度が低い領域を明るくすることができる。
【0047】
また、照射範囲R0内の複数の領域のうち輝度がしきい値Th2未満の領域には、その領域に最高輝度のパターン光を照射するようにしたため、被写体上の暗い部分に対して、煩雑な処理を行うことなく高輝度のパターン光を照射することができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態に係る装置1について説明したが、コンピュータを、上記の撮影制御部22、範囲設定部23、判定部24、計測部25および輝度算出部26に対応する手段として機能させ、図6,8,9に示すような処理を行わせるプログラムも、本発明の実施形態の1つである。また、そのようなプログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体も、本発明の実施形態の1つである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1の実施形態による3次元形状計測装置の外観斜視図
【図2】第1の実施形態における演算部の構成を示す概略ブロック図
【図3】光の照射範囲の設定を説明するための図
【図4】光の照射範囲の設定の他の例を説明するための図
【図5】第1の実施形態において変換部に表示されるパターンを示す図
【図6】第1の実施形態において行われる処理を示すフローチャート
【図7】第2の実施形態における演算部の構成を示す図
【図8】第2の実施形態において行われる処理を示すフローチャート(その1)
【図9】第2の実施形態において行われる処理を示すフローチャート(その2)
【図10】第1の実施形態において変換部に表示されるパターンを示す図
【図11】画素の対応付けを説明するための図
【符号の説明】
【0050】
1 3次元形状計測装置
2,3 カメラ
4 プロジェクタ
5 演算部
6 モニタ
7 入力部
11 光源
12 変換部
21 照射制御部
22 撮影制御部
23 範囲設定部
24 判定部
25 計測部
26 輝度算出部
27 全体制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮影することにより、該被写体の3次元形状を計測するための複数の計測用画像からなる計測用画像群を取得する複数の撮影手段と、
前記撮影手段による画角の範囲内にパターン光を含む光を照射する照射手段と、
前記計測用画像群の取得前に前記被写体のプレ画像を取得するとともに、前記パターン光が照射された前記被写体の前記計測用画像を取得するよう、前記撮影手段を制御する撮影制御手段と、
前記プレ画像上に複数の領域を設定し、該領域毎にパターン光照射の有無を判定する判定手段と、
前記パターン光を照射すると判定された領域にのみ該パターン光が照射されるよう、前記照射手段を制御する照射制御手段とを備えたことを特徴とする3次元形状計測用撮影装置。
【請求項2】
前記分割された領域毎に前記プレ画像の輝度を算出する輝度算出手段をさらに備え、
前記照射制御手段は、前記輝度に応じて、前記領域毎に前記被写体に照射される前記光の光量を変化させるよう前記照射手段を制御する手段であることを特徴とする請求項1記載の3次元形状計測用撮影装置。
【請求項3】
前記照射制御手段は、前記複数の領域のうち前記輝度が所定値以下の領域には、該領域に所定輝度の前記パターン光が照射されるよう前記照射手段を制御する手段であることを特徴とする請求項2記載の3次元形状計測用撮影装置。
【請求項4】
前記パターン光が照射された前記被写体の前記計測用画像群に基づいて、前記被写体の3次元形状を計測する計測手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の3次元形状計測用撮影装置。
【請求項5】
被写体を撮影することにより、該被写体の3次元形状を計測するための複数の計測用画像からなる計測用画像群を取得する複数の撮影手段と、
前記撮影手段による画角の範囲内にパターン光を含む光を照射する照射手段とを備えた3次元形状計測用撮影装置における3次元形状計測用撮影方法であって、
前記計測用画像群の取得前に前記被写体のプレ画像を取得し、
前記プレ画像上に複数の領域を設定し、該領域毎にパターン光照射の有無を判定し、
前記パターン光を照射すると判定された領域にのみ該パターン光を照射し、
前記パターン光が照射された前記被写体の前記計測用画像を取得し、
前記計測用画像に基づいて、前記被写体の3次元形状を計測することを特徴とする3次元形状計測用撮影方法。
【請求項6】
被写体を撮影することにより、該被写体の3次元形状を計測するための複数の計測用画像からなる計測用画像を取得する複数の撮影手段と、
前記撮影手段による画角の範囲内にパターン光を含む光を照射する照射手段とを備えた3次元形状計測用撮影装置における3次元形状計測用撮影方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記計測用画像群の取得前に前記被写体のプレ画像を取得する手順と、
前記プレ画像上に複数の領域を設定し、該領域毎にパターン光照射の有無を判定する手順と、
前記パターン光を照射すると判定された領域にのみ該パターン光を照射する手順と、
前記パターン光が照射された前記被写体の前記計測用画像を取得する手順と、
前記計測用画像に基づいて、前記被写体の3次元形状を計測する手順とをコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項1】
被写体を撮影することにより、該被写体の3次元形状を計測するための複数の計測用画像からなる計測用画像群を取得する複数の撮影手段と、
前記撮影手段による画角の範囲内にパターン光を含む光を照射する照射手段と、
前記計測用画像群の取得前に前記被写体のプレ画像を取得するとともに、前記パターン光が照射された前記被写体の前記計測用画像を取得するよう、前記撮影手段を制御する撮影制御手段と、
前記プレ画像上に複数の領域を設定し、該領域毎にパターン光照射の有無を判定する判定手段と、
前記パターン光を照射すると判定された領域にのみ該パターン光が照射されるよう、前記照射手段を制御する照射制御手段とを備えたことを特徴とする3次元形状計測用撮影装置。
【請求項2】
前記分割された領域毎に前記プレ画像の輝度を算出する輝度算出手段をさらに備え、
前記照射制御手段は、前記輝度に応じて、前記領域毎に前記被写体に照射される前記光の光量を変化させるよう前記照射手段を制御する手段であることを特徴とする請求項1記載の3次元形状計測用撮影装置。
【請求項3】
前記照射制御手段は、前記複数の領域のうち前記輝度が所定値以下の領域には、該領域に所定輝度の前記パターン光が照射されるよう前記照射手段を制御する手段であることを特徴とする請求項2記載の3次元形状計測用撮影装置。
【請求項4】
前記パターン光が照射された前記被写体の前記計測用画像群に基づいて、前記被写体の3次元形状を計測する計測手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の3次元形状計測用撮影装置。
【請求項5】
被写体を撮影することにより、該被写体の3次元形状を計測するための複数の計測用画像からなる計測用画像群を取得する複数の撮影手段と、
前記撮影手段による画角の範囲内にパターン光を含む光を照射する照射手段とを備えた3次元形状計測用撮影装置における3次元形状計測用撮影方法であって、
前記計測用画像群の取得前に前記被写体のプレ画像を取得し、
前記プレ画像上に複数の領域を設定し、該領域毎にパターン光照射の有無を判定し、
前記パターン光を照射すると判定された領域にのみ該パターン光を照射し、
前記パターン光が照射された前記被写体の前記計測用画像を取得し、
前記計測用画像に基づいて、前記被写体の3次元形状を計測することを特徴とする3次元形状計測用撮影方法。
【請求項6】
被写体を撮影することにより、該被写体の3次元形状を計測するための複数の計測用画像からなる計測用画像を取得する複数の撮影手段と、
前記撮影手段による画角の範囲内にパターン光を含む光を照射する照射手段とを備えた3次元形状計測用撮影装置における3次元形状計測用撮影方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記計測用画像群の取得前に前記被写体のプレ画像を取得する手順と、
前記プレ画像上に複数の領域を設定し、該領域毎にパターン光照射の有無を判定する手順と、
前記パターン光を照射すると判定された領域にのみ該パターン光を照射する手順と、
前記パターン光が照射された前記被写体の前記計測用画像を取得する手順と、
前記計測用画像に基づいて、前記被写体の3次元形状を計測する手順とをコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−91491(P2010−91491A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−263385(P2008−263385)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【復代理人】
【識別番号】100104189
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 勲将
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【復代理人】
【識別番号】100104189
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 勲将
【Fターム(参考)】
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