説明

3次元形状計測装置を用いた個人別枕提示プログラム及びその記録媒体

【課題】これまで、個人に合わせた枕を提供するために、頸椎弧を2次元的に測定することなどが行われてきたが、2次元的測定では人体の曲線、人体の各部分の厚みなど、個人の背面形状の違いを正確に測定できず、その結果、個人に適した枕の決定に限界が生じていた。
また、個人に適した枕を決めるプロセスは、測定者の経験や能力に負うところが大きく、それをサポートするプログラムも充分なものは無かったと言える。
【解決手段】2次元的測定における課題は、簡易的で誰にでも手軽に計測できる3次元形状計測装置を用いて、対象者の後頭部及び背面を計測することにより解決される。
また、対象者の測定結果と、性別や年齢層など幾つかの入力情報から、対象者に最適な枕を導き出し提示する本発明のプログラムによって、計測者の経験や能力に頼ることなく、個人に適した枕を容易に決定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元形状計測装置を用いて対象者の後頭部及び背面を計測し、その取得データを基に対象者に適した枕を導き出し提示するプログラム及びその記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、人体の背面形状に合った枕を選ぶ方法として、対象者の頸椎弧を2次元的に測定することが一般に行われている。その測定の仕方は例えば、第七頸椎(首の付け根の突起部分)の外側から、床に対して垂直に手を立て、手のひらと頸椎との間にできた隙間の最も深いところに、ものさしや割り箸などを人差し指と中指に挟んで計測するというものである。
【0003】
或いは、特許文献1に開示されているように、個人に適した枕の高さを決定するために、測定の仕方を工夫することが行われている。しかしながら、従来の測定の仕方では、人体固有の丸みが考慮されておらず、少なくとも仰臥位のみにしか対応することができない。
【0004】
一方で、従来の非接触タイプの3次元計測機は高価で重量が重く大掛かりなものであったが、特許文献2で開示した3次元形状計測装置によって、簡易的で誰にでも手軽に計測できるものを実現した。
【特許文献1】特開2000−296044号公報
【特許文献2】特開2003−130621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまで、個人に合わせた枕を提供するために、前記の通り頸椎弧を2次元的に測定することなどが行われてきたが、2次元的測定では人体の曲線、人体の各部分の厚みなど、個人の背面形状の違いを正確に測定できず、その結果、個人に適した枕の決定に限界が生じていた。
【0006】
また、個人に適した枕を決めるプロセスは、測定者の経験や能力に負うところが大きく、それをサポートするプログラムも充分なものは無かったと言える。
【課題を解決するための手段】
【0007】
まず2次元的測定における課題は、簡易的で誰にでも手軽に計測できる3次元形状計測装置(特許文献2を参照)を用いて、対象者の後頭部及び背面を計測することにより解決される。
【0008】
また、対象者の測定結果と、性別や年齢層など幾つかの入力情報から、対象者に最適な枕を導き出し提示するプログラムを設計・開発したことによって、計測者の経験や能力に頼ることなく、個人に適した枕を容易に決定することができる。
【発明の効果】
【0009】
個人に合わせた枕を提供するための測定が、ほとんど経験を必要とせずに、手軽に行うことができるようになる。したがって、例えば枕の販売現場における販売員の負担の軽減に寄与することができる。
【0010】
また、対象者の後頭部及び背面を立体的に測定することによって、個人に最もフィットする枕を提供することが可能となる。
【0011】
更に、対象者の測定結果から枕決定までのプロセスを、プログラムによって自動化したことによって、コンピュータの簡易的な操作だけで個人に適した枕を導き出し提示することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。特許文献2で開示した3次元形状計測装置を用いて、対象者の後頭部及び背面を測定する。この場合、図1の(1−4)が対象者の後頭部及び背面となる。また、図1の(1−3)には本発明のプログラムがインストールされ、稼働している。
【0013】
図2は、本発明のプログラムのフローチャートである。プログラムを起動し、初めにS1の問診を行う。具体的には性別など対象者の属性や、枕の硬さなど対象者の嗜好を訊いて入力する。
【0014】
次にS2の測定準備を行う。図1の(1−2)のカメラ(撮像装置)が正常に動作していることを、ディスプレイモニタ上で確認する。対象者が立位正常姿勢で静止するようにし、後頭部及び背面の形状がはっきりと出るようにする。
【0015】
S3の後頭部及び背面の測定を行う。図1の(1−5)の照射レーザ光で対象者の後頭部及び背面を満遍なくなぞるようにして、3次元形状データを取得する。
【0016】
次にS4の測定ポイントの決定を行う。測定ポイントとは、図3に示した12点を指す。ディスプレイモニタ上で、対象者の測定ポイントをマウスでクリックしていく。
【0017】
S5の最適な枕の提示を行う。性別・年齢層別の人体計測データを予めデータベース化してあり、対象者の測定ポイントを基にデータベースのデータ分布のどこに位置するかを判定し、また枕の硬さなどの嗜好も参照して、対象者にとって最適な枕を提示する。
【0018】
ここでS6の再測定するか否かを選択し、しない場合は終了となる。再測定する場合は、S1の問診に戻って前記の処理の流れを繰り返すことになる。
【実施例1】
【0019】
本発明の実施例として、前記実施形態を具体的に実行する例を説明する。図1の(1−2)の撮像装置はデジタルビデオカメラでも良いが、より簡便に実施するため、Webカメラを用いることとする。
【0020】
図2のS1の問診では、対象者の性別と年齢層(20〜39歳等の年齢幅)と、好きな枕の硬さ(やわらかめ、普通、かための3段階)を確認して入力する。
【0021】
図2のS2の測定準備では、立ち位置を表示した規定の位置に対象者に立ってもらい、ふらつき防止用の棒を両手で握って所定の位置に顎を乗せてもらうことにより、立位正常姿勢を保つことを容易にする。また、対象者の後頭部及び背面を、柔軟性があり薄く白い布で覆うようにセッティングすることで、形状の凹凸が綺麗にはっきりと出るようにする。
【0022】
図2のS3の後頭部及び背面の測定では、実際に必要なデータは測定ポイント12点のみであるため、測定ポイントを重点的に照射レーザ光でなぞるようにすることで、迅速かつ効率的な測定が可能となる。
【0023】
図2のS4の測定ポイントの決定では、前記の白い布をセッティングした際に測定ポイントにマーカーとして赤いシールを貼っておけば、マウスでのクリックが容易になる。シールを貼るのは、図3の5の頸椎点や11及び12の肩胛骨など、ディスプレイモニタ上の目視だけでは決定しづらい点だけでも有効である。更には、図3の(3−1)の後頭点や(3−4)の頸椎最深部など、3次元座標値が周囲との比較で特徴的なポイントを、自動的に算出して決定するようにしても良い。
【0024】
図2のS5の最適な枕の提示では、ディスプレイモニタ上に表示すると共に、プリンタから「背中診断書」として2枚印刷し、販売現場ではお客様に1枚渡し店舗用に1枚控えるようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明のプログラムは、枕を販売する店舗において、コンピュータにインストールして利用することができる。測定は、対象者が立った姿勢で行うので、比較的狭いスペースにおいて利用することが可能である。
【0026】
また、本発明のプログラムによれば、対象者に適した枕を提示するだけでなく、対象者の後頭部及び背面の3次元形状データを取得して保存することができるので、性別・年齢層別の取得データを研究目的に利用し、新機能・新製品の開発に役立てることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明で用いる3次元形状計測装置の構成を示した図である。
【図2】本発明のプログラムの処理手順を示したフローチャートである。
【図3】対象者に適した枕の決定に用いる測定ポイントを示した図である。
【符号の説明】
【0028】
1−1 計測装置
1−1a ラインレーザ光源
1−1b 発光ダイオード
1−2 撮像装置
1−3 計算用コンピュータ
1−4 対象物体
1−5 照射レーザ光
3−1 後頭点
3−2 側頭点(左)
3−3 側頭点(右)
3−4 頸椎最深部
3−5 頸椎点
3−6 肩峰点(左)
3−7 肩峰点(右)
3−8 脇の下(左)
3−9 脇の下(右)
3−10 肩胛骨(左)
3−11 肩胛骨(右)
3−12 背骨(脇)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者に年齢層などの属性や枕の硬さなどの嗜好を訊いて入力する問診のステップと、データ入力手段であるカメラの動作確認など測定準備のステップと、3次元形状計測装置(特許文献2を参照)を用いた後頭部及び背面の測定のステップと、枕の提示に必要なデータである測定ポイントの決定のステップと、問診及び測定ポイントのデータを基に対象者に最適な枕の提示を行うステップと、必要であれば問診のステップに戻って再測定を行えるステップとを有することを特徴とする個人別枕提示プログラム。
【請求項2】
請求項1に記載の個人別枕提示プログラムを、コンピュータが読み取り可能に記憶した記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−296653(P2006−296653A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−121200(P2005−121200)
【出願日】平成17年4月19日(2005.4.19)
【出願人】(000184757)株式会社ロマンス小杉 (4)
【出願人】(397028991)ヤカタ株式会社 (2)
【出願人】(302010622)有限会社テクノドリーム二十一 (6)
【Fターム(参考)】