説明

3次元計測方法とその計測装置

【課題】従来の3次元計測方法とその計測装置は、基準となるパラメータや平面が実際の平面サンプルとは異なっていたり、カメラノイズやコントラストのバラツキの存在によって精度が低くなったり、ハードウェアが複雑になるという問題がある。
【解決手段】本発明の位相シフト法による3次元計測方法は、測定前に基準サンプルを使用し全計測点について、基準サンプルにおける位相を測定し、前記基準サンプルにおける位相の位相接続処理を行い、その結果を誤差最小化処理し、得られた全計測点の位相を基準位相として求め、測定時測定対象物について算出した位相から基準位相を差し引くことによって測定対象物の高さを得る3次元計測方法とその計測装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の3次元形状を測定するための位相シフト法による3次元計測方法とその計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、物体の3次元形状を非接触で計測する手法として、位相シフトを用いた格子パターン投影法がよく知られている。具体的には、照度分布が正弦波状態の格子パターンを測定の対象物に投影し変形格子画像を得る。その後、格子パターンを横方向に順次所定幅移動させて、位相が異なる複数枚の画像を得る。得られた複数枚の画像より各画素毎にその点における格子の位相を求め、その位相情報から対象物の形状を演算する。また、求めた位相情報から測定対象物の高さを求める方法として、従来から三角測量の原理に基づく方法がよく用いられる。
【0003】
図8は、従来の三角測量を利用した一例を示す。この例では、投影系と撮像系はテレセントリック光学系としている。また、基準平面を設け、計算される高さはすべて基準平面に対するものと考える。測定対象物の高さ、例えばp点の高さHighは、p点に投影された格子の位置と基準平面上q点に投影された格子の位置との差を用いて求められる。具体的には、p点の位相φaとb点の位相φb(φbを基準位相という)の差を用いて以下の(1)式で求められる。
【数1】

【0004】
ここで、Pitchは格子のピッチ、αは入射角度である。位相シフトを用いて求めた各点の位相は0〜2πの範囲に畳み込まれるので、求めた高さもPitch/sinαの範囲に畳み込まれる。更に位相接続などの手法が用いれば、より高い対象物の高さも再現することができる。
【特許文献1】特開平8−014844号公報
【特許文献2】特開平7−260451号公報
【特許文献3】特許番号第291321号
【特許文献4】特開平5−113320号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した(1)式では、基準平面の位相の正確さが最終結果へ直接的に影響を与えるため、基準位相を正確に求めることが重要となる。例えば、特許文献1では、外部入力のパラメータを用いて基準位相を間接的に求める方法が提案されている。具体的には、外部パラメータで平面状の基準位相を作り、位相シフト法による求めた位相分布を平面補正、つまり基準位相との差分をとることにより、測定対象物の形状を求める方法である。
【0006】
この方法では、平面補正に使用したパラメータは、実際の平面サンプルから求めたものではなく、外部から指定した格子ピッチと1ピッチのCCDカメラ上での画素数に決められたデータが使用される。しかし、基準平面は投影系及び撮像系の調整に誤差がないと仮定して求められているため、実際には、その影響が誤差として現れるという問題があった。また、計算に画素数単位の格子ピッチを使用するため、更に精度が悪いという問題もあった。
【0007】
これに対して、例えば特許文献2では、実際に基準平面サンプルを用いて基準位相を求める方法も提案されている。この特許文献2に記載される方法では、まず測定対象物を測定する前に、実際の平面サンプルを用いて平面サンプル位相を求める。その後、実際の測定対象物の高さを求める際、測定により得られた測定位相に対する基準位相として平面サンプル位相を直接使用している。その結果、光学系歪みの影響がある程度軽減される。
【0008】
しかし、カメラノイズの存在及び、撮影した平面サンプル内の撮影領域の違いにより画像の場所によってコントラストのバラツキが存在し、平面サンプルの位相の算出精度が低くなることがある。平面サンプルの位相を基準位相として直接使用すると、測定対象物の高さ精度に影響する問題があった。
【0009】
また、特許文献3には、正確な基準位相を求めるために、特にテレビカメラとプロジェクタのレンズ収差が影響しない装置が開示されている。しかし、特許文献3に記載の装置では、2次元格子が描かれた基準平板と、色違いの2次元格子を投影する投影装置が必要となり、ハードウェアが複雑になるという問題があり、特に平坦で且つ表面の格子模様による誤差が発生し難い基準平板が必要である。
【0010】
さらに特許文献4には、測定する物体の大きさに応じて格子パターンのピッチを拡大又は縮小する変更が可能な投影手段として、ブラウン管や液晶を用いた投影型テレビションを用いた技術が開示されている。しかし特許文献4は、装置構成が複雑なものとなり、コスト的にも高くなってしまう
そこで本発明は、平面以外の基準サンプルも使用可能な一般的な装置構成で、正確な基準位相計算により測定精度の向上を可能とする3次元計測方法とその計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するために、位相シフト法による3次元計測方法であって、測定前に基準サンプルを使用し、任意に定めた全計測点について、基準サンプルにおける位相を測定し、該位相の位相接続処理を行い、その結果に対して誤差最小化処理を施し、得られた全計測点における位相を基準位相として予め求めておき、測定対象物を測定して算出した位相から前記基準位相を差し引くことによって測定対象物の高さを得る3次元計測方法を提供する。
【0012】
また本発明は、基準サンプル又は測定対象物に対して斜め方向から輝度分布が正弦波状に変化する格子パターンの光束を投影する投影部と、前記基準サンプル又は前記測定対象物に投影された前記格子パターンによる像をシフトしながら撮像する撮像部と、前記複数の画像から任意に設定した計測点の全計測点の位相を算出する位相検出部と、前記基準サンプルを用いて求めた前記全計測点の位相に対して位相接続処理及び誤差最小化処理を施し基準位相を生成するデータ処理部と、前記データ処理部が生成した前記基準位相を保存する位相保存部とを具備し、前記データ処理部により前記測定対象物について算出した位相から前記基準位相を差し引くことによって対象物上に存在する凹凸部の高さを求める位相シフト法による3次元計測を行う3次元計測装置を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、位相シフト法に基づく3次元計測を行うときに、複雑な装置構成が必要なく、測定精度の向上が可能となる3次元計測方法とその計測装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る評価システムの構成を示す説明図である。
この評価システムは大別して、基準サンプル11又は測定対象物12を載置するステージ1と、ステージ1に向けて格子パターンを投影する格子パターン投影機構2と、撮像機構3と、データ処理や各種データを保存するための例えば、パーソナルコンピュータからなる処理制御部4とで構成される。
【0015】
前記格子パターン投影機構2は、照明光を照射する光源21と、照明光を光軸方向に偏光させる照明光学系22と、光軸方向と平行になった照明光に所定の格子パターンを付与し、その格子パターンを走査させるパターン形成走査部23と、パターン光を投影する投影光学系24とで構成される。照明光学系22及び投影光学系24は、複数のレンズの組み合わせにより構成される。撮像機構3は、後述する基準サンプル11又は測定対象物12からのパターン反射光を結像する結像光学系31とCCD等の撮像素子を備えるカメラ32とで構成される。さらに、処理制御部4は、データを演算処理(高さ計算等)するデータ処理部42と、各種パラメータや生成されたデータを保存するデータ保存部41と、データ等を表示するための図示しない表示部を有している。
【0016】
このような構成により、光源21から出射された照明光は、照明光学系22を透過して照明光学系22の光軸方向と平行になり、パターン形成走査部23の内部に設けられた格子パターンを照射する。
【0017】
処理制御部4は、パターン形成走査部23を制御して、格子パターンを光学系22の光軸と垂直方向にシフトさせる。パターン形成走査部23を透過したパターン光は、投影光学系24によりステージ1上の基準サンプル11又は測定対象物12に投影される。投影したパターン光の像は、明度が正弦波状(スリット状)に変化するものになっている。また、格子パターン投影機構2の光軸が撮像機構3の光軸に対して傾いている角度を入射角度と称し調整可能である。
【0018】
測定対象物12で反射されたパターン反射光は、撮像機構3の結像光学系31によりカメラ32の撮像素子の受光面に結像される。カメラ32で光電変換されて、測定対象物12により変形された格子パターンの画像データを得ることができる。以下同様に、パターン形成走査部23の格子パターンを複数段、移動させて測定対象物12により変形された格子パターンを含むパターン反射光を撮像する。この移動毎に撮像された画像データ(以後、位相シフト画像と称する)は、処理制御部4のデータ保存部41に保存される。
【0019】
これらの位相シフト画像は、測定対象物12を複数に分割して撮像した画像であり、隣り合う画像を連結することにより、測定対象物12の全体画像が得られる。また、この時に、撮像した際のカメラ分解能、入射角度、格子ピッチ、位相シフトステップ数等の撮像に関するデータを合わせてデータ保存部41に保存する。
【0020】
次に、このように構成された評価システムによる測定について説明する。
まず、基準サンプル11を用いた基準位相の算出について説明する。
前述したと同様に、基準サンプル11をステージ1にセットし、格子パターンを走査するように移動させながら基準サンプル11に投影し、反射されたパターン反射光連続的に撮像して、撮像された複数枚の位相シフト画像をデータ保存部41に保存する。そして、後述の処理手順で基準位相を求め、得られた基準位相及び/又は、基準位相に関連するパラメータをデータ保存部41に保存する。
【0021】
基準サンプル11に対する測定は、ユーザやサービスエンジニアが設置場所等で任意に行うことも可能である。さらに、装置の出荷段階でメーカ側で測定を行い、基準位相を装置に予め保存しておくことも可能である。更に測定条件が変更された場合、例えば基準サンプル11を変更したり、格子パターン投影機構や撮像機構の変更や修理調整を行った場合も、ユーザやサービスエンジニアによる基準サンプル11の測定を行うことも可能である。また予め各測定条件ごとに基準位相のデータベースを作って、それぞれの条件に対応した基準位相データを装置に保存しておくことも可能である。
【0022】
前述した位相分布の計算については、次の(2)式を用いて行う。
【数2】

【0023】
ここで、Ii(x,y)は各ステップの点(x,y)の輝度値、
【数3】

【0024】
は位相シフト量、Nはシフト回数である。また誤差最小化処理は、最小二乗法を用いて近似データを求める処理又は、ノイズ低減のフィルタ処理がある。
【0025】
図3に示すような基準平面サンプルを用いて、最小二乗平面近似で基準位相を求める一例について説明する。
【0026】
図3(c)に示すように、基準位相φbは、バラツキのない平面データになっている。求める基準位相φbは、Z=aX+bY+c(但し、X,Yは画素の座標、Zは基準位相)で表すことができる。ここで、パラメータa,bは装置の線形的な歪みを表している。この場合、各画素の基準位相シフト量を保存する必要もなく、パラメータa,b,cを保存すればよい。また、外部から格子ピッチと入射角度のどちらかが指定されれば、指定されなかった方を最小二乗平面を用いて求めることが可能である。例えば、格子ピッチPitch、カメラ分解能Rを指定すれば、実際の入射角度αが以下の(3)式より求められる。最終高さを求める時に、この入射角度を用いると、より正確な結果が得られる。
【数4】

【0027】
尚、より高速に計算するために、誤差最小化処理としてローパスフィルタなどのフィルタ処理を用いてもよい。
【0028】
次に、図2に示すフローチャート及び図3に示す基準平面サンプルを参照して、そのデータ処理部42での基準位相の算出手順について説明する。この算出に先立って、前述したように、パターン光が投光された基準サンプル11を撮像し、位相シフト画像としてデータ保存部41に記憶する。
【0029】
まず、処理制御部4において、誤差最小化処理手法を指定する(ステップS1)。この時に、測定する面が平面か曲面かを指定する。ここでは、例えば、図3(a)に示す基準平面サンプルに従い、平面を指定する。
【0030】
次に、データ処理部42は、データ保存部41に予め記憶されている基準サンプルの位相シフト画像を読み込む(ステップS2)。次に、任意に定めた測定点数の全測定点における位相分布φs(x,y)を計算する(ステップS3)。求められた位相分布φs(x,y)に対して、位相接続処理を行う(ステップS4)。
【0031】
次に、誤差最小化処理として最小二乗平面近似を使用するか否かを判断する(ステップS5)。この判断は、基準サンプル11が平面サンプルか、曲面又は平面と曲面とが混在するサンプルかを判断基準とする。ここで、基準サンプル11が平面サンプルであれば(YES)、前述した手法により、図3(c)に示すような最小二乗平面(パラメータa,b,c)による基準位相φbを求める(ステップS6)。これらのパラメータを用いて、実際の格子ピッチPitch又は、入射角度αを計算する(ステップS7)。データ処理部42はパラメータa,b,c及び格子ピッチPitch(又は入射角度α)をデータ保存部41に記憶して(ステップS8)、終了する。
【0032】
一方、前記ステップS5において、基準サンプル11が曲面又は平面と曲面とが混在するサンプルであった場合(NO)、位相接続処理結果に対して誤差最小化処理を行う(ステップS9)。この誤差最小化処理は、最小二乗近似(曲面近似)や従来技術として公知な、例えばノイズカットフィルタ等のハードウェア的な処理が考えられる。その後、誤差最小化処理、即ち最小二乗近似で求めた基準位相φb(x,y)をデータ保存部41へ出力し(ステップS10)、終了する。
【0033】
次に図4に示すフローチャート及び図5に示す高さ計算手順を参照して、基準サンプル11による基準位相を利用した測定対象物12の測定(高さ計算)について説明する。
【0034】
実際に測定する際には、前述した基準位相φb(又は、パラメータa,b,c及び格子ピッチPitchか入射角度α)を求めて記憶しておく。また、図5(a)に示すような測定対象物12をステージ1にセットし、基準サンプル測定と同様の手順で位相シフト画像データを撮像しデータ保存部41に保存する。その後、データ処理部42で高さ計算の処理を行う。図5(c)に基準位相φb(x,y)を示す。
【0035】
まず、データ保存部41から測定対象物12の位相シフト画像データをデータ処理部42へ読み込む(ステップS11)。図5(b)に示すように、全測定点における位相分布φ(x,y)を計算する(ステップS12)。その後、データ保存部41から基準位相φb(x,y)を読み込む(ステップS13)。
【0036】
次に、これらの位相分布φ(x,y)と基準位相φb(x,y)との差分、△φ=φ(x,y)−φb(x,y)を計算する(ステップS14)。続いて、Δφに対して、0〜2π範囲で畳み込み処理を行う(ステップS15)。尚、この0〜2π範囲による畳み込み処理は、Δφ≧0であれば、畳み込み処理結果=Δφ−mod(Δφ,2π)*2πとし、Δφ<0であれば、畳み込み処理結果=Δφ−mod(Δφ,2π)*2π+2πとする。
【0037】
その後、これらの位相接続を行い(ステップS16)さらに、図5(d)に示すような最終高さデータに変換する(ステップS17)。
【0038】
このような高さ計算において、測定対象物12の位相と基準サンプル11の基準位相との差分に対して、0〜2πの範囲に畳み込む処理を実施している。但し、高さがPitch/sinα範囲内限定の測定ならば、位相接続処理の必要はない。しかし、Pitch/sinα範囲を超える測定の場合、位相接続処理など測定範囲の拡張処理が行われる。その際、基準位相のバラツキと装置の歪みによる影響が軽減されるため、計算エラーが減少する。
【0039】
また、高さデータへ変換処理には前述した(1)式を用いている。基準サンプルの測定で実際の入射角度又は、格子ピッチの算出を行っていた場合、算出した後のデータを使用する。さらに、データ処理部42において、測定対象物12による位相と基準サンプル11による基準位相との差分を計算するときに、測定対象物12の測定時と同様な投影条件及び撮像条件で求めた基準位相を読み込んで使用する。
【0040】
以上説明したように、本実施形態は位相シフト法による3次元計測方法を用いて、測定前に基準サンプルを使用し全計測点について、基準サンプルにおける基準位相を測定し、前記基準サンプルにおける位相の位相接続処理を行っている。その結果に対して誤差最小化処理を行う。
【0041】
従って、実際の平面サンプルから求めたパラメータにより平面補正を行うため、基準平面の位相が正確に得られ、高さ計算の結果への誤差を少なくすることができる。さらに、カメラノイズの存在や撮影した平面サンプル内のコントラストのバラツキの存在に影響されることなく、高精度の測定対象物の高さを求めることができる。また、色違いの2次元格子を投影するための投影装置は不要であり、ハードウェアの複雑化を招くことはなく、簡易な構成で正確な基準位相計算により測定精度の向上を実現している。
【0042】
さらに、基準サンプルについても、平面形状サンプルと曲面形状サンプル又はそれらが組み合わされたサンプルを使用することができる。また誤差最小化処理に際しては、最小二乗法を用いて近似データを求める又は、ノイズ低減のフィルタ処理を施すことができる。さらに、平面形状サンプルで誤差最小化処理(最小二乗平面近似)による最小二乗平面のパラメータを用いて、外部から格子ピッチを指定し、正確な入射角度の計算、または外部から入射角度を指定し正確な格子ピッチの計算を実現することができる。
【0043】
次に図6を参照して、曲面形状サンプルを用いた基準位相の算出について説明する。
前述した基準位相の算出では、平面の基準サンプルを使用して最小二乗平面近似で基準位相を求めた例(図4参照)について説明したが、ここでは、曲面形状サンプルを基準サンプルとして使用し、最小二乗曲面近似で基準位相を求めて、曲面形状サンプルを基準とした測定対象物の高さを求める。ここでの評価システムの構成は、図1に示した構成部位を用いて同等に構成されているものとする。
【0044】
図6(a)は、曲面形状基準サンプルとなる円弧状サンプル、及び図6(b)は測定対象物を示している。この円弧状の基準サンプルを予め撮像し、位相シフト画像データ及び最小二乗曲面近似で求めた基準位相φbをデータ保存部41に保存しておく。その後、図6(b)に示すような測定対象物12をステージ1にセットして撮像し、基準サンプル測定と同様の手順で位相シフト画像データをデータ保存部41に保存する。
次に、データ保存部41から測定対象物12の位相シフト画像データをデータ処理部42へ読み込み、図6(c)に示すように、全測定点における位相分布φ(x,y)を計算する。
【0045】
さらにデータ保存部41から読み込んだ位相分布φ(x,y)と基準位相φb(x,y)(図6(d))との差分△φ=φ(x,y)−φb(x,y)を算出する。その後、前述した平面サンプルと同様に、図6(e)に示すような最終高さデータが得られる。
【0046】
以上説明したように、曲面形状サンプルにおいても、位相シフト法による3次元計測方法を用いて、測定前に基準サンプルを使用し全計測点について、基準サンプルにおける基準位相を測定し、前記基準サンプルにおける位相の位相接続処理を行っている。その結果に対して誤差最小化処理を行う。
【0047】
従って、実際の円弧状サンプルから求めたパラメータにより曲面補正を行うため、基準曲面の位相が正確に得られ、高さ計算の結果への誤差を少なくすることができる。さらに、円弧状サンプル内のコントラストのバラツキの存在に影響されることなく、測定対象物上の凹凸部分における高精度の高さを求めることができる。その他、前述した平面サンプルと同等な効果を得ることができる。
【0048】
次に図7は、第2の実施形態に係る評価システムの構成を示す説明図である。
尚、本実施形態の構成部位において、前述した図1に示す第1実施形態の構成部位と同等のものには同じ参照符号を付して、その説明を省略する。
【0049】
前述した第1の実施形態における評価システムは、ステージ1に載置された測定対象物12を1台の格子パターン投影機構2で1つの格子パターンを投影している。この場合、一方からのみの投光であるため、凹凸部分などにより非投射領域が生じ、測定結果に歪みが発生する可能性もある。そこで、第2の実施形態では、少なくとも2方向から同じ又は異なる格子ピッチの格子パターン光を投影できる構成としている。
【0050】
具体的には、図7に示すように、1つの撮像機構3を共有するそれぞれに格子パターン投影機構2a,2bを備えた構成A,Bにより構成されている。
【0051】
この評価システムは大別して、基準サンプル11又は測定対象物12を載置するステージ1と、ステージ1に向けて、それぞれの角度から格子パターンを投影する格子パターン投影機構2a,2bと、撮像機構3と、データ処理や各種データを保存するための例えば、パーソナルコンピュータからなる処理制御部4とで構成される。
【0052】
前記格子パターン投影機構2a,2bは、それぞれ光源21a,21bと、照明光学系22a,22bと、パターン形成走査部23a,23bと、投影光学系24a,24bとで構成される。さらに、処理制御部4は、各格子パターン投影機構2a,2bにより投光された時に撮像された測定対象物12の基準位相を含む画像データや前述した各種パラメータを構成A,B毎に記憶するデータ保存部41と、各構成A,B毎に第1の形態で前述したと同様に高さ計算を演算処理するデータ処理部42とで構成される。
【0053】
以上のような第2の実施形態の評価システムによれば、前述した第1の実施形態により得られる効果に加えて、それぞれの装置構成A,Bの測定条件に対応した基準位相を用いて高さ計算するため、各装置構成A,Bから得られた高さ値を合成する際、各装置構成A,Bの歪みの違いによる合成エラーを減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る評価システムの構成を示す説明図である。
【図2】基準平面サンプルにおける基準位相の算出手順について説明するためのフローチャートである。
【図3】基準平面サンプルにおける基準位相の算出手順に用いた誤差最小化処理について説明するための図である。
【図4】測定対象物(平面サンプル)の高さ計算について説明するためのフローチャートである。
【図5】測定対象物(平面サンプル)の高さ計算について説明するための図である。
【図6】測定対象物(円弧状サンプル)の高さ計算について説明するための図である。
【図7】評価システムの変形例を示す図である。
【図8】従来の三角測量を利用した測定原理を説明するための一例を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1…ステージ、2…格子パターン投影機構、3…撮像機構、4…処理制御部、11…基準サンプル、12…測定対象物、21…光源、22…照明光学系、23…パターン形成走査部、24,31…結像光学系、32…カメラ、41…データ保存部、42…データ処理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相シフト法による3次元計測方法であって、
測定前に基準サンプルを使用し任意に定めた全計測点に対して、基準サンプルにおける位相を測定し、該位相の位相接続処理を行い、その結果に対して誤差最小化処理を施し、得られた全計測点における位相を基準位相として予め求めておき、測定対象物を測定して算出した位相から前記基準位相を差し引くことによって測定対象物の高さを得ることを特徴とする3次元計測方法。
【請求項2】
前記3次元計測方法において、
前記基準サンプルは、平面形状サンプルを使用することを特徴とする請求項1記載の3次元計測方法。
【請求項3】
前記3次元計測方法において、
前記基準サンプルは、曲面形状サンプルを使用することを特徴とする請求項1記載の3次元計測方法。
【請求項4】
前記3次元計測方法において、
前記誤差最小化処理は、最小二乗法を用いて近似データを求めること又はノイズ低減のフィルタ処理を施すことの何れかであることを特徴とする請求項1記載の3次元計測方法。
【請求項5】
前記3次元計測方法において、
前記平面形状サンプルを使用し、前記誤差最小化処理として最小二乗平面近似の方法を使用し、前記最小二乗平面のパラメータを用いて、外部から格子パターンのピッチを指定し適正な入射角度の計算、または外部から入射角度を指定し適正な格子パターンのピッチの計算が可能であることを特徴とする請求項2に記載の3次元計測方法。
【請求項6】
基準サンプル又は測定対象物に対して斜め方向から輝度分布が正弦波状に変化する格子パターンの光束を投影する投影部と、
前記基準サンプル又は前記測定対象物に投影された前記格子パターンによる像をシフトしながら撮像する撮像部と、
前記複数の画像から任意に設定した計測点の全計測点の位相を算出する位相検出部と、
前記基準サンプルを用いて求めた前記全計測点の位相に対して位相接続処理及び誤差最小化処理を施し、基準位相を生成するデータ処理部と、
前記データ処理部が生成した前記基準位相を保存する位相保存部と、
を具備し、
前記データ処理部により前記測定対象物について算出した位相から前記基準位相を差し引くことによって対象物上に存在する凹凸部の高さを求める位相シフト法による3次元計測を行うことを特徴とする3次元計測装置。
【請求項7】
前記3次元計測装置において、
前記基準サンプル又は前記投影部又は前記撮影部における測定条件を変更する場合、それぞれの前記測定条件に対応した前記基準位相を前記位相保存部に予め保存し、測定時には、それぞれの前記測定条件に対応した前記基準位相を使用することを特徴とする請求項6に記載の3次元計測装置。
【請求項8】
前記3次元計測装置において、
前記投影部が複数の斜め方向から基準サンプル又は測定対象物に対して輝度分布が正弦波状に変化する格子パターンの光束を投影することを特徴とする請求項6に記載の3次元計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−84286(P2006−84286A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−268415(P2004−268415)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】