説明

3遊星歯車装置からなる2動作モードを有する出力分岐無段変速トランスミッション

本発明は、2動作モードを有する出力分岐無段変速トランスミッションに関する。本発明によれば、トランスミッション構成部品は、熱エンジン(1)を自動車の車輪(3)へ並列に接続する2つの出力経路の間に配分され、これらの構成部品は、少なくとも第1と第2の2つの遊星歯車装置(5、6)と、2つの電気機械(2、4)と、減速段(11)とを含む。本発明は、トランスミッションの2つの動作モードを設定するため、および2つの動作モードの間の切り換えを実施するために、制御装置(8、9)と協動する第3の遊星歯車装置(7)を有することを特徴とする。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後進から前進まで、熱エンジンの任意の回転数に対して、自動車の移動速度がゼロである「ニュートラル」と呼ばれる特定の位置を経て、ギヤ比の連続した変更を可能にする、出力分岐無段変速トランスミッションに関する。
【0002】
より正確には、本発明は、構成部品が、熱エンジンを自動車の車輪へ並列に接続する2つの出力経路の間に配分され、上記構成部品は、少なくとも第1と第2の2つの遊星歯車装置と、2つの電気機械と、減速段とを含む、2動作モードを有する出力分岐無段変速トランスミッションを対象とする。
【背景技術】
【0003】
文献FR2823156には、「技術分野」に示したようなタイプのトランスミッションが開示されており、この文献においては、2動作モードは、2つの遊星歯車装置の間に並列に取り付けられ、それぞれ第1と第2の動作モードにおいて起動される2つの減速段によって設定される。
【特許文献1】FR2823156
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、「背景技術」に記載したようなトランスミッションを、よりコンパクトにし、そのコストを減少し、自動車への組み込みを容易にするように改良することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、従来技術における出力分岐経路の並列な減速段を、第3の遊星歯車装置によって置き換えることを提案する。
【0006】
本発明によれば、上記第3の遊星歯車装置は、トランスミッションの2つの動作モードを設定するため、および上記2つの動作モードの間の切り換えを行うために、制御装置と協動する。
【0007】
本発明の望ましい1実施の形態によれば、第1の上記制御装置を閉じることによって、上記第3の遊星歯車装置を構成する要素は相対的に不動化されて、上記第3の遊星歯車装置は一体となって回転し、第2の上記制御装置を閉じることによって、上記第3の遊星歯車装置の1つの要素はケースに対して不動化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照しながら以下の説明を読むことによって明らかとなるであろう。添付の図1は、本発明の原理を模式図的に示す。
【0009】
このトランスミッションを構成する部品は、熱エンジン1を自動車の車輪3へ並列に接続する2つの出力経路の間に配分される。この図によれば、これらの部品には、変速機を形成する2つの電気機械2、4と、複数の遊星歯車装置5、6、7と、2つの制御装置8、9と、複数の減速段11が含まれる。
【0010】
この図には、熱エンジン1を自動車の車輪3へ接続する2つの出力経路が示されている。第1の経路すなわち出力伝達主経路は、第1の遊星歯車装置5の中で、第2の出力経路すなわち出力分岐経路と合流する。第1の電気機械2は、第2の遊星歯車装置6の中で出力分岐経路に接続される。2つの電気機械は、2つの制御装置8、9と結合された第3の遊星歯車装置7によって分離されている。
【0011】
最後に、熱エンジン1と、車輪3と、2つの電気機械2、4は、それぞれ対応する減速段11に接続される。これらの減速段の、異なる数と配置の少なくとも一方を、本発明の枠を逸脱することなく考慮することが可能であるので、図に示めされた減速段の特有の配置は、本発明の範囲に対する限定的な特徴を示すものではない。
【0012】
このトランスミッションは、熱エンジンと車輪の間のトルクの大部分が通過する出力伝達主経路と、熱エンジンと車輪の間のトルクの無断変速トランスミッションを実現させるように変速機を形成する、2つの電気機械が配置された第2の出力経路すなわち出力分岐経路を有する。
【0013】
このトランスミッションは、第3の遊星歯車装置の第1の制御装置8と第2の制御装置9との2つの制御装置がそれぞれ起動される2動作モードを有する。
【0014】
これらの2動作モードは、無段変速トランスミッションの動作範囲を拡げることを目的とする。それは、第1の制御装置8と第2の制御装置9をそれぞれ起動することによって、第3の遊星歯車装置7の中に異なる2つの減速比を設定することに該当する。
【0015】
図示された無段変速トランスミッションにおいては、熱エンジンの出口における出力の分岐は一対の出力分岐ピニオン(図示しない)によって確保され、車輪の前における2つの経路の合流は遊星歯車装置5の中で実行されるので、「適応点(point d’adaptation)」および「連結入口(entree couplee)」と呼ばれる。
【0016】
しかしながら、この特殊な配置は、限定的な特徴を示すものではなく、本発明は、エンジンの出口におけるトルク分岐歯車装置と、車輪の前における一対の集合ピニオンを有する、連結出口の全ての出力分岐無段変速トランスミッションにも適用される。同じ条件において、本発明は、トルク分岐遊星歯車装置とトルク集合歯車装置(第1の電気機械に取り付けられた遊星歯車装置6と動作モードを変更する遊星歯車装置を含めて数えて、全部で4つの歯車装置になる)を有する、「2適応点(a deux points d’adaptation)」の全ての出力分岐無段変速トランスミッションにも適用可能である。
【0017】
図に示すように、モード変更用の制御装置8、9は、第3の遊星歯車装置7に取り付けられる。本発明によれば、これらの制御装置は、ブレーキ、クラッチまたは噛み合いクラッチから構成することができる。
【0018】
図に示された本発明に特有の実施の形態によれば、第1の制御装置8を閉じることによって、第3の遊星歯車装置7を構成する要素は相対的に不動化され、第3の遊星歯車装置7は一体となって回転する。また、第2の制御装置9を閉じることによって、第3の遊星歯車装置7の1つの要素はケースに対して不動化される。上記に示したように、第1の制御装置8または第2の制御装置9を閉じることによって、トランスミッションは、第1の動作モードまたは第2の動作モードにそれぞれ位置付けられる。
【0019】
この枠内において、本発明の限定的ではない特に有利な配置は、第1の制御装置8を第3の遊星歯車装置7のクラウン歯車と衛星歯車キャリアとの間に、また第2の制御装置9を第3の遊星歯車装置7の衛星歯車キャリアとケースの間に配置することからなる。
【0020】
このようにして、第1の動作モードにおいては、第1の制御装置8は閉じられ、第2の制御装置9は開かれる。第3の遊星歯車装置7は一体となって回転し、第3の遊星歯車装置7によって出力分岐経路の中へ導入される減速比は1に等しい。第2の動作モードにおいては、第1の制御装置8は開かれ、第2の制御装置9は、第3の遊星歯車装置7を構成する要素の1つをケースに対して不動化するように閉じられる。従って、第3の遊星歯車装置7は、出力分岐経路の中へ1とは異なる減速比を導入する。
【0021】
最後に、モード変更の過度的な段階中には、第1の制御装置8と第2の制御装置9は、同時に閉じることができ、この状態においては、第3の遊星歯車装置7は不動化される。
【0022】
結論として、従来技術の2動作モードを有する出力分岐トランスミッションにおける2つの並列な減速段を、第3の遊星歯車装置によって代替することの利益は、第3の遊星歯車装置を同じ1つの軸に沿って1列に並べることが可能な、よりコンパクトな構造を得ることにある。実際、従来技術の解決策は、各減速段のために特定の軸を設けることを前提とするが、本発明は、最初の2つの遊星歯車装置とともに第3の遊星歯車装置を1列に並べることを可能にする。最後に、本発明が、ブレーキ、クラッチまたは噛み合いクラッチ装置を使用することによって実施される場合には、極めて経済的に装置を実現することができる。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成部品が、熱エンジン(1)を自動車の車輪(3)へ並列に接続する2つの出力経路の間に配分され、上記構成部品は、少なくとも第1と第2の2つの遊星歯車装置(5、6)と、2つの電気機械(2、4)と、減速段(11)とを含む、2動作モードを有する出力分岐無段変速トランスミッションにおいて、上記トランスミッションの2つの動作モードを設定するため、および上記動作モード変更の過度的な段階中に同時に係合することによって2つの動作モードの間の切り換えを行うために、第3の遊星歯車装置(7)と協動する制御装置(8、9)を有することを特徴とする、2動作モードを有する出力分岐無段変速トランスミッション。
【請求項2】
上記2つの電気機械(2、4)は、上記第3の遊星歯車装置(7)の両側に、上記第3の遊星歯車装置(7)と同じ出力経路上に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の2動作モードを有する出力分岐無段変速トランスミッション。
【請求項3】
上記トランスミッションの第1の動作モードに対応して第1の上記制御装置(8)を閉じることによって、上記第3の遊星歯車装置(7)を構成する要素は相対的に不動化されて、上記第3の遊星歯車装置(7)は一体となって回転することを特徴とする、請求項1または2に記載の2動作モードを有する出力分岐無段変速トランスミッション。
【請求項4】
上記トランスミッションの第2の動作モードに対応して第2の上記制御装置(9)を閉じることによって、上記第3の遊星歯車装置(7)の1つの要素はケースに対して不動化されることを特徴とする、請求項1または2に記載の2動作モードを有する出力分岐無段変速トランスミッション。
【請求項5】
上記制御装置(8、9)の少なくとも1つはブレーキから構成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の2動作モードを有する出力分岐無段変速トランスミッション。
【請求項6】
上記制御装置(8、9)の少なくとも1つはクラッチから構成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の2動作モードを有する出力分岐無段変速トランスミッション。
【請求項7】
上記制御装置(8、9)の少なくとも1つは噛み合いクラッチから構成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の2動作モードを有する出力分岐無段変速トランスミッション。
【請求項8】
第1の上記制御装置(8)は、上記第3の遊星歯車装置(7)のクラウン歯車と衛星歯車キャリアとの間に配置されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1つに記載の2動作モードを有する出力分岐無段変速トランスミッション。
【請求項9】
第2の上記制御装置(9)は、上記第3の遊星歯車装置(7)の衛星歯車キャリアとケースの間に配置されることを特徴とする、請求項5に記載の2動作モードを有する出力分岐無段変速トランスミッション。

【公表番号】特表2007−505001(P2007−505001A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525862(P2006−525862)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【国際出願番号】PCT/FR2004/002302
【国際公開番号】WO2005/025910
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(503041797)ルノー・エス・アー・エス (286)
【Fターム(参考)】