説明

6,8,10−ウンデカトリエン−3または4−オールおよび香料組成物

【課題】 フレッシュでナチュラルな果実感の強調された、天然感あふれる香りを再現する合成香料化合物およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】 6,8,10−ウンデカトリエン−3−オールおよび6,8,10−ウンデカトリエン−4−オールはウッディ調を伴ったグリーンノートを有しているだけでなく、天然感フレッシュ感あふれる果実様香気も有しており、これを配合した香料組成物は、飲食品、香粧品及び医薬品等の賦香用香料として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香料化合物として有用な6,8,10−ウンデカトリエン−3−オールまたは6,8,10−ウンデカトリエン−4−オールおよびこれらの化合物を有効成分として含有する香料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
多不飽和化合物が重要な香気特性を有することは既に知られており、例えば、特許文献1には、ガルバナム精油中に(3E,5E)−1,3,5−ウンデカトリエンおよび(3E,5Z)−1,3,5−ウンデカトリエンが存在することならびにこれらの化合物を合成し同定したことが開示されており、また、特許文献2には、1,3,5,7−ウンデカテトラエンの香料としての用途について開示されている。さらに、非特許文献1および非特許文献2には、パイナップル、ピーチ、マンゴー、キウイフルーツにおける(3E,5Z,8Z)−1,3,5,8−ウンデカテトラエンの存在について報告されており、特許文献3には、2,4,7−デカトリエナールのアセタールの香料としての用途について開示されている。
【0003】
これらの多不飽和化合物は優れた香気を有し、例えば、特許文献1には、1,3,5−ウンデカトリエンが、花様、例えば、ヒヤシンス、すみれ、水仙、ラベンダー、クチナシを想起させる香りを有し、その底にただよう葉の香りが天然と類似した性質を発現または強化すること、また、特許文献2には、1,3,5,7−ウンデカテトラエンが土壌及び樹木様の香気を有すること、そして特許文献3には、2,4,7−デカトリエナールのアセタールが快適な天然のグリーンノートを有すると記載されている。
【0004】
しかしながら、上記化合物の香気特性は、フレッシュな果実感が強調された、天然感あふれる香りとは全く異なるものである。
【0005】
【特許文献1】特開昭50−32105号公報
【特許文献2】特開昭59−42326号公報
【特許文献3】特表2005−515249号公報
【非特許文献1】J.Agric.Food Chem.,33(1985),232
【非特許文献2】J.Food Sci.,50(1985),1655
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、消費者の嗜好性の多様化により、飲食品、香粧品等に使用する香料においても天然感、フレッシュ感のある素材が求められており、従来の香料物質を組み合わせるだけでは、その要求に十分対応しきれないというのが現状である。
【0007】
したがって、本発明の目的は、天然感、フレッシュ感あふれる香りを再現することができる新規な香料化合物およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記多不飽和化合物が優れた香気特性を有することに鑑み、多不飽和化合物の誘導体を種々合成し、その香気特性を検討していたところ、今回、偶然にも、6,8,10−ウンデカトリエン−3−または4−オールが優れた香気特性を有し、その香気が意外なことにウッディ調を伴ったグリーンノートを有しているだけでなく、天然感、フレッシュ感あふれる果実様香気をも有していることを見出し、本発明を完成するに至った

【0009】
かくして、本発明は、下記式(1)
【0010】
【化1】

【0011】
[式中、RおよびRの一方は水素原子を示しそして他方は水酸基を示し、波線の結合はシス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示す]
で表される文献未記載の新規化合物6,8,10−ウンデカトリエン−3または4−オールを提供するものである。
【0012】
本発明は、また、上記式(1)の6,8,10−ウンデカトリエン−3または4−オールを有効成分として含有することを特徴とする香料組成物を提供するものである。
【0013】
本発明は、さらに、下記式(2)
【0014】
【化2】

【0015】
[式中、Rはアリール基を示し、Xはハロゲンを示す]
で表されるホスホニウム塩または下記式(3)
【0016】
【化3】

【0017】
[式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基またはアリール基を示す]
で表されるホスホナートを、下記式(4)
【0018】
【化4】

【0019】
で表されるラクトールとウィッティヒ反応またはホーナー−エモンズ反応させることを特徴とする下記式(5)
【0020】
【化5】

【0021】
[式中、波線の結合はシス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示す]
で表される6,8,10−ウンデカトリエン−3−オールの製造方法を提供するものである。
【0022】
本発明は、さらにまた、下記式(6)
【0023】
【化6】

【0024】
[式中、波線の結合はシス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示す]
で表される6,8,10−ウンデカトリエン−4−オンを還元することを特徴とする下記式(7)
【0025】
【化7】

【0026】
[式中、波線の結合はシス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示す]
で表される上記式(7)の6,8,10−ウンデカトリエン−4−オールの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明の式(1)の化合物は、ウッディ調を伴ったグリーンノートに加え、天然感、フレッシュ感あふれる果実様香気香味およびその優れた持続性を有しており、飲食品類、香粧品類、保健・衛生・医薬品などに用いる香料組成物の調合素材として有用である。
【0028】
以下、本発明の化合物、その製造方法および香料組成物としての用途について、さらに詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の式(1)の化合物に包含される式(5)の6,8,10−ウンデカトリエン−3−オール(R=OH、R=Hである式(1)の化合物)は、例えば、次の反応経路1に従って合成することができる。
【0030】
【化8】

【0031】
[式中、波線の結合はシス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示し、Rはアリール基を示し、Xはハロゲンを示し、Rは炭素数1〜8のアルキル基またはアリール基を示す]
【0032】
本明細書において、「アリール基」は、単環式または多環式の芳香族炭化水素基であり、例えば、各々場合により置換されていてもよいフェニル基、トリル基、ナフチル基などが挙げられ、好ましくはフェニル基である。
【0033】
「アルキル基」は、直鎖状または分枝鎖状の飽和炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、1−メチルエチル基、n−ブチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルエチル基、n−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、1−エチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,2,2−トリメチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、1−エチル−2−メチルプロピル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基などが挙げられ、中でも、炭素原子数1〜4のアルキル基が好ましい。
【0034】
Xにより示される特に好ましいハロゲンとしては、Cl、Brが挙げられる。
【0035】
式(2)のホスホニウム塩と式(4)のラクトールとのウィッティヒ反応、または式(3)のホスホナートと式(4)のラクトールとのホーナー−エモンズ反応は、文献(例えば、新実験化学講座14 有機化合物の合成と反応[I]p224−243参照)に記載されているこれらの反応に典型的な条件下で実施することができる。
【0036】
式(2)のホスホニウム塩と式(4)のラクトールとのウィッティヒ反応は、不活性有機溶媒中で塩基の存在下におこなうことができ、有機溶媒としては、例えば、エーテル(例:ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、ハロゲン化炭化水素(例:ジクロロメタン、クロロホルムなど)、芳香族炭化水素(例:ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、極性溶媒(例:ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリルなど)が挙げられ、特に、トルエン、テトラヒドロフラン,ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドまたはこれらの混合溶媒が好適である。
【0037】
上記塩基としては、ウィッティヒ反応に通常用いられる塩基がいずれも使用可能であり、例えば、アルカリ金属水酸化物(例:水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなど)、アルカリ金属水素化物(例:水素化ナトリウム、水素化カリウムなど)、有機リチウム化合物(例:n−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、フェニルリチウムなど)、アルカリ金属アミド(例:リチウムアミド、カリウムアミド、ナトリウムアミド、リチウムジイソプロピルアミドなど)、アルカリ金属ヘキサメチルジシラジド、アルカリ金属アルコラート(例:ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなど)が挙げられ、これらの塩基の使用量は、式(2)のホスホニウム塩に対して、通常0.8〜5当量、好ましくは1〜3当量の範囲内とすることができる。
【0038】
また、式(2)のホスホニウム塩に対する式(4)のラクトールの使用量は、式(2)のホスホニウム塩に対して、通常0.8〜5当量、好ましくは1〜3当量の範囲内とすることができる。
【0039】
上記ウィッティヒ反応は、通常−78〜60℃、好ましくは−10〜25℃の範囲内の温度で、通常0.5〜24時間、好ましくは0.5〜2時間程度行うことができる。
【0040】
式(3)のホスホナートと式(4)のラクトールとのホーナー−エモンズ反応は、上記の式(2)のホスホニウム塩と式(4)のラクトールとのウィッティヒ反応の場合と同様にして行うことができる。
【0041】
かくして、用いる反応条件により、式(1)の波線の結合におけるシス:トランス比が一般に10:1〜1:10の範囲内にある式(1)の6,8,10−ウンデカトリエン−3−オールが幾何異性体混合物の形態で得られる。
【0042】
出発物質として使用される式(4)のラクトールは、いかなる製法により得られたものでも使用することができ、例えば、以下の反応経路2に従って合成することができる。
【0043】
【化9】

【0044】
式(4)のラクトールの合成:
式(8)のγ−ヘキサラクトンを、不活性ガス雰囲気下に、例えば、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)、水素化ジメトキシエトキシナトリウムアルミニウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化リチウムアルミニウム等の還元剤を用い、例えば、トルエン、ヘキサン、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン等の不活性有機溶媒中にて、−78〜20℃の温度で1〜10時間程度反応させることにより、式(4)のラクトールを得ることができる。なお、出発物質である式(8)のγ−ヘキサラクトンは市販されており容易に入手することができる。
【0045】
式(2)のホスホニウム塩または式(3)のホスホナートはそれ自体既知の物質であり
、特許文献1に記載の方法に従って合成することができ、例として、反応経路3を挙げることができる。
【0046】
【化10】

【0047】
[式中、Rはアリール基を示し、Xはハロゲンを示し、Rは炭素数1〜8のアルキル基またはアリール基を示す]
【0048】
式(2)のホスホニウム塩および式(3)のホスホナートの合成:
出発物質である式(9)のグリニャール試薬は、有機溶媒中で、ハロゲン化ビニルを金属マグネシウムで処理することにより容易に調製することができる。ハロゲン化ビニルとしては、例えば、塩化ビニル、臭化ビニル、ヨウ化ビニルなどを使用することができるが、特に、塩化ビニルおよび臭化ビニルが好適である。本反応に使用しうる溶媒としては、グリニャール反応において一般に使用されるものが同様に使用可能であり、例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどを挙げることができるが、特に、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランが好ましい。また、式(9)のグリニャール試薬の使用量は、式(10)のギ酸エチル1モルあたり、少なくとも2モルであれば特に制限はないが、経済性などの面から、2〜2.2モルの範囲内が好ましい。
【0049】
式(9)のグリニャール試薬と式(10)のギ酸エチルとの反応は、通常−10〜40℃、好ましくは0〜15℃の範囲内の温度で行うことができる。反応終了後、常法に従って、例えば、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、必要により蒸留による精製を行うことにより、式(11)のアルコールを得ることができる。
【0050】
また、上記のグリニャール反応において、式(10)のギ酸エチルの代わりにアクロレインを用いても、同様に式(11)のアルコールを得ることができる。
【0051】
次いで、式(11)のアルコールをハロゲン化水素(HX)で求核置換反応を行うことにより、式(12)のハロゲン化物を得ることができる。本反応は、溶媒、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどの存在下または不存在下に、式(11)のアルコールに、ハロゲン化水素の20〜40%水溶液を添加することにより行うことができる。使用可能なハロゲン化水素(HX)としては、例えば、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素などが挙げられ、その添加量は、式(11)のアルコール1モルあたり、1〜2モルの範囲内とすることができる。また、添加時間は通常0.5〜3時間、好ましくは1〜2時間であり、反応温度は通常−10〜40℃、好ましくは0〜15℃の範囲内が適している。反応終了後、常法に従って、例えば、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、必要により蒸留による精
製を行うことにより、式(12)のハロゲン化物を得ることができる。
【0052】
引き続き、式(12)のハロゲン化物をホスフィン[P(R]または亜りん酸エステル[P(OR]と常法により反応させることにより、式(2)のホスホニウム塩または式(3)のホスホナートを生成せしめることができる。本反応は、溶媒の存在下または不存在下に行うことができ、使用しうる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジメチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、トルエンなどを挙げることができ、これら溶媒はそれぞれ単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。また、その使用量には特に制約はなく、例えば、式(12)のハロゲン化物に対して1〜50重量倍程度、好ましくは2〜10重量倍程度で使用することができる。また、上記の反応は一般に約−20〜約100℃の範囲内の温度で1〜72時間程度行うことができ、それによって、式(2)のホスホニウム塩または式(3)のホスホナートを得ることができる。得られる式(2)のホスホニウム塩または式(3)のホスホナートは結晶化等により容易に分離することができる。
【0053】
本発明の式(1)の化合物に包含される式(7)の6,8,10−ウンデカトリエン−4−オール(R=H、R=OHである式(1)の化合物)は、例えば、次の反応経路4に従って合成することができる。
【0054】
【化11】

【0055】
[式中、波線の結合はシス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示す]
【0056】
式(6)の6,8,10−ウンデカトリエン−4−オンの還元は、ケトンを還元しアルコールとする反応に典型的な条件下で実施することができ、具体的には、例えば、文献(例えば、新実験化学講座15 酸化と還元[II]参照)に記載されている水素化ジイソブチルアルミニウムによる還元、水素化アルミニウムリチウムによる還元、水素化ホウ素ナトリウムによる還元、Meerwein−Ponndorf−Verley還元などを用いて行うことができる。特に、水素化ジイソブチルアルミニウムによる還元、水素化アルミニウムリチウムによる還元、水素化ホウ素ナトリウムによる還元が好ましい。
【0057】
出発物質である式(6)の6,8,10−ウンデカトリエン−4−オンはいかなる製法により得られたものでも使用することができ、例えば、以下の反応経路5に従って合成することができる。
【0058】
【化12】

【0059】
[式中、波線の結合はシス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示し、Rはアリール基を示し、Xはハロゲン原子を示し、Rは炭素数1〜8のアルキル基またはアリール基を示す]
【0060】
式(2)のホスホニウム塩と式(13)のアルデヒドとのウィッティヒ反応または式(3)のホスホナートと式(13)のアルデヒドとのホーナー−エモンズ反応は、上記の式(2)のホスホニウム塩と式(4)のラクトールとのウィッティヒ反応の場合と同様にして行うことができる。
【0061】
かくして、用いる反応条件により、式(1)の波線の結合におけるシス:トランス比が一般に10:1〜1:10の範囲内にある式(14)のトリエンアセタールが幾何異性体混合物の形態で得られる。
【0062】
式(14)のトリエンアセタールの脱アセタール化による式(6)の6,8,10−ウンデカトリエン−4−オンの生成反応は、文献(例えば、PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS,GREENE WUTS,p317−322参照)に記載されているような通常用いられる脱アセタール化反応条件下で実施することができ、例えば、酸触媒(例えば、ピリジニウム p−トルエンスルホン酸(PPTS)−アセトン−水、p−トルエンスルホン酸(TsOH)−アセトンなど)を用いたアセタール交換反応、酸触媒(例えば、塩酸−テトラヒドロフラン、酢酸、過塩素酸など)による加水分解、または酸化(DDQ−アセトニトリル−水など)などにより行うことができる。
【0063】
出発物質である式(13)のアルデヒドはいかなる製法により得られたものでも使用することができ、例えば、以下の反応経路2に従って合成することができる。
【0064】
【化13】

【0065】
式(13)のアルデヒドの合成:
式(15)のエチル 3−オキソヘキサノエートとエチレングリコールとのアセタール化反応は、文献(例えば、PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC
SYNTHESIS,GREENE WUTS,P312−316参照)に記載されているこれらの反応に典型的な条件下で実施することができる。例えば、ベンゼン、トルエン、シクロヘキサンなどの水との共沸溶媒中で、ピリジニウム p−トルエンスルホン酸(PPTS)、p−トルエンスルホン酸(TsOH)、カンファースルホン酸(CSA)などの酸触媒を用いて、溶媒の沸点下、生成する水を除去しながら反応させることにより、式(16)の化合物へと導くことができる。
【0066】
次いで、式(16)の化合物を、不活性ガス雰囲気下に、例えば、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)等の還元剤を用い、トルエン、ヘキサンなどの不活性有機溶媒中にて還元反応させることにより、式(13)のアルデヒドを得ることができる。
【0067】
本発明により提供される式(1)の化合物は、香料組成物に特定の割合で配合することにより、香料組成物にフレッシュで天然感あふれる香りを賦与することができる。
【0068】
かくして、本発明によれば、式(1)の化合物を有効成分として含有することを特徴とする香料組成物を提供することができる。
【0069】
香料組成物に配合される式(1)の化合物の波線の結合部分の幾何異性に関しては、特に制限はなく、シス型またはトランス型のいずれか単独であっても、あるいはシス型とトランス型の任意の割合の混合物であってもよい。
【0070】
式(1)の化合物を香料組成物に配合する場合、その配合量は、配合の目的や香料組成物の種類などによって異なるが、香料組成物全量を基準にして、通常0.00001〜10重量%、好ましくは0.001〜0.1重量%の範囲内を例示することができる。
【0071】
かくして、例えば、果物(例:ストロベリー、ブルーベリー、ラズベリー、アップル、チェリー、プラム、アプリコット、ピーチ、パイナップル、バナナ、メロン、マンゴー、パパイヤ、キウイ、ペアー、グレープ、マスカット、巨峰など)、柑橘類(例:レモン、オレンジ、グレープフルーツ、ライム、マンダリンなど)、和柑橘類(例:みかん、カボス、スダチ、ハッサク、イヨカン、ユズ、シークワーサー、金柑など)、茶類(例:紅茶、ウーロン茶、緑茶など)などの香料組成物に、式(1)の化合物を上記の割合で添加することによりフレッシュで天然らしさのある果実感を強調することができる。また、ベルガモット調、ゼラニウム調、ローズ調、ブーケ調、ヒヤシンス調、ラン調、フローラル調などの調合香料に、式(1)の化合物を上記の割合で添加することにより、その香気の特徴をより強調することができ、天然精油が本来有するフレッシュで天然感あふれた香りを再現することができる。
【0072】
また、本発明によれば、式(1)の化合物を有効成分として含有する香料組成物を利用して、式(1)の化合物を香気香味成分として含有する飲食品類、香粧品類、保健・衛生・医薬品類等を提供することができる。
【0073】
例えば、炭酸飲料、果汁飲料、果実酒飲料類、乳飲料などの飲料類;アイスクリーム類、シャーベット類、アイスキャンディー類などの冷菓類;和・洋菓子、チューインガム類、パン類、コーヒー、紅茶、お茶、タバコなどの嗜好品類;和風スープ類、洋風スープ類などのスープ類;ハム、ソーセージなどの畜肉加工品;風味調味料、各種インスタント飲料ないし食品類、各種のスナック類などに、式(1)の化合物を有効成分として含有する香料組成物の適当量を添加することにより、そのユニークな香気香味が賦与された飲食品類を提供することができる。また、例えば、シャンプー類、ヘアクリーム類、その他の毛
髪化粧料基剤;オシロイ、口紅、その他の化粧用基剤や化粧用洗剤類基剤などに、式(1)の化合物を有効成分として含有する香料組成物を適当量添加することにより、そのユニークな香気が賦与された化粧品類を提供することができる。さらにまた、式(1)の化合物を有効成分として含有する香料組成物を、例えば、洗濯用洗剤類、消毒用洗剤類、防臭洗剤類、その他各種の保健・衛生用洗剤類;歯磨き、ティシュー、トイレットペーパーなどに適当量配合することにより、そのユニークな香気が賦与された各種保健・衛生材料類;医薬品類などを提供することができる。
【0074】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
【実施例】
【0075】
実施例1
下記一連の反応式に従って式(5)の6,8,10−ウンデカトリエン−3−オールを合成した。なお、工程番号の下のカッコ内の百分率は各工程の収率を示す。
【0076】
【化14】

【0077】
工程1:式(11)のアルコールの合成
アルゴン雰囲気下で、2Lフラスコに、マグネシウム48.6g(2.00mol)、テトラヒドロフラン300mLおよびヨウ素(触媒量)を仕込み、室温で撹拌しながら臭化ビニル214.0g(2.00mol)のテトラヒドロフラン(780mL)溶液を約20ml滴下した。反応溶液を30〜40℃まで加熱し反応を開始させてから、反応温度が30〜40℃になるように1時間かけて臭化ビニルのテトラヒドロフラン溶液の残りを滴下した。滴下終了後、室温で1.5時間撹拌し、その後氷水で冷却した。式(10)のギ酸エチル74.0g(1.00mol)を5〜15℃で1時間かけて滴下し、その後室温で1時間撹拌した。反応溶液を1Lの飽和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ、有機層を分離し、水層をジエチルエーテルを用いて抽出した。有機層を合わせ、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液にて順次洗浄後、有機層を硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣(96.7g)を減圧下蒸留(〜54℃/7.8kPa)し、式(11)のアルコール68.2g(0.811mol,収率81%、純度96%)を得た。
【0078】
工程2:式(18)のブロマイドの合成
300mLフラスコに式(11)のアルコール52.5g(0.625mol)を仕込み、メタノール−氷で冷却しながら、48%臭化水素水溶液126.2g(0.749m
ol)を1.5時間で滴下した。有機層を分離し、水で洗浄を行い、硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、式(16)のブロマイド57.1g(0.388mol、収率62%、純度97%)を得た。
【0079】
工程3:式(19)のホスホニウム塩の合成
500mLフラスコに、トリフェニルホスフィン106.8g(0.407mol)およびトルエン250mLを仕込み、室温で式(18)のブロマイド57.1g(0.388mol)を15分かけて滴下した。さらに、室温で22時間撹拌した後、析出した結晶を濾過して、式(19)のホスホニウム塩132.4g(0.323mol、収率83%)を得た。
【0080】
工程4:式(4)のラクトールの合成
アルゴン雰囲気下で、500mLフラスコに、γ−ヘキサラクトン(8)11.4g(0.100mol)およびトルエン200mLを仕込み、−63〜−61℃で水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)の1.01Mトルエン溶液109mL(0.110
mol)を30分かけて滴下した。滴下終了後そのままの温度で1時間撹拌し、メタノール20mL、セライトおよびジエチルエ−テルを加え室温で一晩撹拌した。反応溶液を濾過し、溶媒を減圧下で留去した。得られた残渣13.5gを減圧蒸留し(〜55℃/0.5kPa)、式(4)のラクトール6.00g(0.0517mol、収率52%、純度93%)を得た。
【0081】
工程5:式(5)の6,8,10−ウンデカトリエン−3−オールの合成
アルゴン雰囲気下で、100mLフラスコにジメチルスルホキシド(DMSO)20mLを仕込み、室温で水素化ナトリウム(60%オイル分散)1.38g(34.4 mmol)を加え、そのまま1時間撹拌した。式(19)のホスホニウム塩14.1g(34.4mmol)をDMSO10mLに溶解させた溶液を加え室温で10分間撹拌し、続いて式(4)のラクトール2.00g(17.2mmol)をDMSO10mLに溶解させた溶液を室温で加えた。一晩撹拌した後、反応溶液を水に注ぎ、ジエチルエーテルで抽出し、有機層を水、飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し減圧濃縮を行った。残渣にジエチルエーテルを加え、析出した結晶を濾別し、濾液を減圧下で濃縮した。再び残渣にジエチルエーテルを加え、析出した結晶を濾別し、濾液を減圧下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し(ヘキサン:酢酸エチル=30:1)、式(5)の6,8,10−ウンデカトリエン−3−オール2.04g(12.3mmol、収率71%)を得た。
【0082】
式(5)の6,8,10−ウンデカトリエン−3−オールの物性
6位の幾何異性体比:E:Z=10:7
H−NMR(6位の幾何異性体混合物,CDCl,400MHz):δ 0.92(3H,t,J=7.2),1.40−1.57(4H,m),2.02−2.32(2H,m),3.52(1H,br qui,J=3.6),5.03,5.07(total 1H,each d,J=10.0,J=10.4),5.15,5.20(total 1H,each d,J=16.4,J=16.8),5.47,5.72(total 1H,each dt,J=7.6,10.8,J=6.8,15.6),5.99−6.54(4H,m).
13C−NMR(6位の幾何異性体混合物,CDCl,100MHz):δ 9.86,9.88,24.2,29.1,30.2,30.3,36.3,36.6,72.7,116.5,117.1,128.3,128.8,130.5,131.3,132.6,133.2,133.3,135.2,137.0,137.1.
MS(m/z):31(13),41(34),57(27),67(21),79(63),91(100),105(52),119(25),166(M,11)
【0083】
実施例2
下記一連の反応式に従って式(7)の6,8,10−ウンデカトリエン−4−オールを合成した。なお、工程番号の下のカッコ内の百分率は各工程の収率を示す。
【0084】
【化15】

【0085】
工程1:式(21)のエステルの合成
200mlフラスコに式(20)のエチル 3−オキソヘキサノエート12.0g(78.9mmol)、エチレングリコール9.40g(151mmol)、ピリジニウム p−トルエンスルホン酸(PPTS)0.1gおよびシクロヘキサン50mlを仕込み、加熱還流下、留出してくる水を除去しながら9時間反応を行い、次いでp−トルエンスルホン酸(TsOH)を触媒量添加し、さらに加熱還流下、留出してくる水を除去しながら6時間反応を行った。冷却後、反応溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、有機層を分離し、有機層を水、飽和塩化ナトリウム水溶液にて順次洗浄後、硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣(14.9g)を減圧蒸留(〜77℃/0.2kPa)し、式(21)のエステル10.6g(52.4mmol、収率66%)を得た。
【0086】
工程2:式(22)のアルデヒドの合成
アルゴン雰囲気下で、200mLフラスコに、式(21)のエステル5.00g(24.7mmol)およびトルエン50mLを仕込み、−65〜−60℃で攪拌しながら水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)の0.99Mトルエン溶液27.5mL(27.2mmol)を30分かけて滴下し、その後そのままの温度で30分間撹拌した。反応溶液を5%シュウ酸二水和物水溶液140mlに注ぎ、有機層を分離し、水層は酢酸エチルで抽出した。有機層を全て合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣のアルデヒド4.20g(式(22))をそのまま次の工程に用いた。
【0087】
工程3:式(23)のトリエンアセタールの合成
窒素ガス雰囲気下で、200mLフラスコに式(22)のアルデヒド4.20g、実施例1と同様の反応にて得た式(19)のホスホニウム塩10.1g(27.2mmol)およびジメチルホルムアミド(DMF)16gを仕込み、氷水で冷やしながらナトリウムメトキシド(28%メタノール溶液)5.00g(25.9mmol)を滴下し、その後、そのままの温度で1時間撹拌した。反応溶液を飽和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ、ヘ
キサンを加え、析出した結晶を濾別した。濾液をヘキサンで抽出し、水、飽和塩化ナトリウム水溶液を用いて順次洗浄後、硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣(5.92g)を減圧蒸留(〜100℃/0.2kPa)し、式(23)のトリエンアセタール2.94g(14.1mmol、収率57%)を得た。
【0088】
工程4:式(6)の6,8,10−ウンデカトリエン−4−オンの合成
200mLフラスコに35%過塩素酸水溶液40mlとジエチルエーテル10mlを仕込み、氷水で冷やしながら式(23)のトリエンアセタール2.94g(14.1mmol)のジエチルエーテル溶液(30ml)を10分かけて滴下した。そのままの温度で20分間攪拌後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を用いてpHが7〜8になるまで中和した。反応溶液をジエチルエーテルで抽出し、有機層を水、飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣(2.61g)をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し(ヘキサン:酢酸エチル=80:1)、式(6)の6,8,10−ウンデカトリエン−4−オン1.90g(11.6mmol、収率82%)を得た。
【0089】
工程5:式(7)の6,8,10−ウンデカトリエン−4−オールの合成
50mLフラスコに(6)の6,8,10−ウンデカトリエン−4−オン1.50g(9.13mmol)と95%エタノール10mlを仕込み、氷水で冷やしながら水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)174mg(4.57mmol)を加えた。1時間後、1規定塩酸10mlをゆっくり加え、室温下で30分攪拌した。反応溶液を酢酸エチルを用いて抽出し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水を用いて順次洗浄後、硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣(1.60g)をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し(ヘキサン:酢酸エチル=50:1)、精製物1.1gを得た。クロマトグラフィー精製物482mgをさらに減圧蒸留し(〜140℃/0.3kPa)、式(7)の6,8,10−ウンデカトリエン−4−オール380mg(2.29mmol,収率59%)を得た。
【0090】
式(7)の6,8,10−ウンデカトリエン−4−オールの物性
6位の幾何異性体比:E:Z=65:35
H−NMR(6位の幾何異性体混合物,CDCl,400MHz):δ 0.916,0.922(total 3H,each t,J=6.8),1.32−1.50(5H,m),2.15−2.38(2H,m),3.52(1H,br d,J=5.6),5.06,5.09(total 1H,each d,J=10.0,J=11.6),5.18,5.22(total 1H,each d,J=12.4,J=12.4),5.51,5.71(total 1H,each dt,J=8.0,10.4,J=7.2,15.2),6.10−6.52(4H,m).
13C−NMR(6位の幾何異性体混合物,CDCl,100MHz):δ 14.1,18.88,18.94,35.9,39.0,39.1,41.0,70.9,71.2,117.0,117.6,128.1,128.3,131.0,131.2,132.1,132.9,133.3,134.1,136.9,137.0.
MS(m/z):27(7),31(7),43(23),55(55),79(100),94(40),105(2),166(M,7)
【0091】
実施例3(香気評価)
実施例1で得られた6,8,10−ウンデカトリエン−3−オール、実施例2で得られた6,8,10−ウンデカトリエン−4−オールならびに前記特許文献1および2に記載の1,3,5−ウンデカトリエンおよび1,3,5,7−ウンデカテトラエンのそれぞれ0.1%エタノール溶液について、よく訓練されたパネラーにより香気評価を行った。香気評価は30mlサンプル瓶に前記0.1%エタノール溶液を用意し、瓶口の香気および
その溶液をにおい紙につけて行った。5名の平均的な香気評価を表1に示す。
【0092】
【表1】

【0093】
実施例4
パイナップル様の調合香料組成物として、下記表2に示す成分からなる基本調合香料組成物を調製した。
【0094】
【表2】

【0095】
上記組成物99.9gに実施例1で製造した6,8,10−ウンデカトリエン−3−オール0.1gまたは実施例2で製造した6,8,10−ウンデカトリエン−4−オール0.1gを混合して、新規なパイナップル様の調合香料組成物を調製した。この新規調合香料組成物と該化合物を加えていない上記のパイナップル様調合香料組成物の香気について、専門パネラー10人により比較した。官能評価の結果を表3に示す。
【0096】
【表3】

【0097】
上記のとおり、専門パネラー10人の全員が、いずれの香料化合物を調合したパイナップルフレーバー組成物についても天然パイナップルの特徴をとらえ持続性の点でも格段に優れていると評価した。
【0098】
実施例5
ヒヤシンス様の調合香料組成物として、下記表4に示す成分からなる基本調合香料組成物を調製した。
【0099】
【表4】

【0100】
上記組成物99.9gに実施例1で製造した6,8,10−ウンデカトリエン−3−オール0.1gまたは実施例2で製造した6,8,10−ウンデカトリエン−4−オール0.1gを混合して、新規なヒヤシンス様の調合香料組成物を調製した。この新規調合香料組成物と該化合物を加えていない上記のヒヤシンス様調合香料組成物の香気について、専門パネラー10人により比較した。官能評価の結果を表5に示す。
【0101】
【表5】

【0102】
上記のとおり、専門パネラー10人の全員が、いずれの香料化合物を調合したヒヤシンス調合香料組成物についても天然ヒヤシンスの特徴をとらえ持続性の点でも格段に優れていると評価した。
【0103】
実施例6(6,8,10−ウンデカトリエン−3−オールの6E体と6Z体の香気評価)
実施例1で得られた6位の幾何異性がE:Z=10:7の6,8,10−ウンデカトリエン−3−オールに関して、ガスクロマトグラフィー匂い嗅ぎ法により(6E,8E)−6,8,10−ウンデカトリエン−3−オールと(6Z,8E)−6,8,10−ウンデカトリエン−3−オールそれぞれの香気を評価した。
【0104】
香気評価
(6E,8E)−6,8,10−ウンデカトリエン−3−オール:フレッシュ感のある果実様香気を伴うウッディなグリーンノート。
(6Z,8E)−6,8,10−ウンデカトリエン−3−オール:天然感フレッシュ感のある果実様香気を伴うシャープでウッディなグリーンノート。
【0105】
実施例7(6,8,10−ウンデカトリエン−4−オールの6E体と6Z体の香気評価)
実施例1で得られた6位の幾何異性がE:Z=65:35の6,8,10−ウンデカトリエン−4−オールに関して、ガスクロマトグラフィー匂い嗅ぎ法により(6E,8E)−6,8,10−ウンデカトリエン−4−オールと(6Z,8E)−6,8,10−ウンデカトリエン−4−オールそれぞれの香気を評価した。
【0106】
香気評価
(6E,8E)−6,8,10−ウンデカトリエン−4−オール:マイルドなグリーンノートおよび甘く天然感フレッシュ感あふれる果実様香気。
(6Z,8E)−6,8,10−ウンデカトリエン−4−オール:ウッディなグリーンノートおよびシャープで甘く天然感フレッシュ感あふれる果実様香気。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

[式中、RおよびRの一方は水素原子を示しそして他方は水酸基を示し、波線の結合はシス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示す]
で表される6,8,10−ウンデカトリエン−3または4−オール。
【請求項2】
下記式(1)
【化2】

[式中、RおよびRの一方は水素原子を示しそして他方は水酸基を示し、波線の結合はシス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示す]
で表される6,8,10−ウンデカトリエン−3または4−オールを有効成分として含有することを特徴とする香料組成物。
【請求項3】
下記式(2)
【化3】

[式中、Rはアリール基を示し、Xはハロゲンを示す]
で表されるホスホニウム塩または下記式(3)
【化4】

[式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基またはアリール基を示す]
で表されるホスホナートを、下記式(4)
【化5】

で表されるラクトールとウィッティヒ反応またはホーナー−エモンズ反応させることを特徴とする下記式(5)
【化6】

[式中、波線の結合はシス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示す]
で表される6,8,10−ウンデカトリエン−3−オールの製造方法。
【請求項4】
下記式(6)
【化7】

[式中、波線の結合はシス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示す]
で表される6,8,10−ウンデカトリエン−4−オンを還元することを特徴とする下記式(7)
【化8】

[式中、波線の結合はシス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示す]
で表される6,8,10−ウンデカトリエン−4−オールの製造方法。

【公開番号】特開2009−19029(P2009−19029A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−51939(P2008−51939)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【特許番号】特許第4143683号(P4143683)
【特許公報発行日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(000214537)長谷川香料株式会社 (176)
【Fターム(参考)】