説明

6H−[1]ベンゾピラノ[4,3−b]キノリン及びエストロゲン様物質としてのそれらの使用

【課題】
【解決手段】本発明は、式Iを有する6H−[1]ベンゾピラノ[4,3−b]キノリン化合物を提供する。本発明はさらに、前記化合物を含有する組成物、前記化合物の使用のための方法、及び前記化合物の製造の方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、6H−[1]ベンゾピラノ[4,3−b]キノリン化合物、エストロゲン様物質としてのそれらの使用、及びそれらの製造の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
哺乳動物組織におけるエストロゲンの多面作用は広く文書で証明されており、現在、エストロゲンは多くの器官系に作用することが認識されている(Mendelsohn and Karas, New England Journal of Medicine 340: 1801-1811 (1999), Epperson, et al., Psychosomatic Medicine 61 : 676-697 (1999), Crandall, Journal of Womens Health & Gender Based Medicine 8: 1155-1166 (1999), Monk and Brodaty, Dementia & Geriatric Cognitive Disorders 11 : 1-10 (2000), Hurn and Macrae, Journal of Cerebral Blood Flow & Metabolism 20: 631-652 (2000), Calvin, Maturitas 34: 195-210 (2000), Finking, et al., Zeitschrift fur Kardiologie 89: 442-453 (2000), Brincat, Maturitas 35: 107-117 (2000), Al-Azzawi, Postgraduate Medical Journal 77: 292-304 (2001)参照)。エストロゲンはいくつかの方法で組織に作用を及ぼすことができ、最も広く特性付けられている作用機構は、遺伝子転写の変化を導くエストロゲン受容体との相互作用である。エストロゲン受容体はリガンド活性化転写因子であり、核内ホルモン受容体スーパーファミリーに属する。このファミリーの他の成員は、プロゲステロン、アンドロゲン、グルココルチコイド及びミネラルコルチコイド需要体を含む。リガンドと結合したとき、これらの受容体は二量体化して、直接DNA上の特定配列(応答エレメントとして知られる)に結合することによって又は他の転写因子(例えばAP1)と相互作用して、それが次に特定DNA配列と直接結合することによって、遺伝子転写を活性化することができる(Moggs and Orphanides, EMBO Reports 2: 775-781 (2001), Hall, et al., Journal of Biological Chemistry 276: 36869-36872 (2001), McDonnell, Principles of Molecular Regulation 351-361 (2000)参照)。「共調節」タンパク質のクラスもリガンド結合受容体と相互作用することができ、さらにその転写活性を調節することができる(McKenna, et al., Endocrine Reviews 20: 321-344 (1999)参照)。エストロゲン受容体は、リガンド依存性及び非依存性の両方で、NFκBを介した転写を抑制できることも示された(Quaedackers, et al., Endocrinology 142: 1156-1166 (2001), Bhat, et al., Journal of Steroid Biochemistry & Molecular Biology 67: 233-240 (1998), Pelzer, et al., Biochemical & Biophysical Research Communications 286: 1153-7 (2001)参照)。
【0003】
エストロゲン受容体はまた、リン酸化によっても活性化され得る。このリン酸化はEGFなどの増殖因子によって媒介され、リガンドの不在下で遺伝子転写の変化を生じさせる(Moggs and Orphanides, EMBO Reports 2: 775-781 (2001), Hall, et al., Journal of Biological Chemistry 276: 36869-36872 (2001)参照)。
【0004】
エストロゲンが細胞に影響を及ぼし得る、上記ほどには十分に特性付けられていない手段は、いわゆる膜受容体を通してである。そのような受容体の存在は論議の対象となっているが、エストロゲンが細胞から非常に迅速な非ゲノム応答を惹起できることは文書で証明されている。これらの作用を導入する責任を担う分子実体は決定的に単離されていはいないが、少なくとも核内形態のエストロゲン受容体に関連することを示唆する証拠が存在する(Levin, Journal of Applied Physiology 91 : 1860-1867 (2001), Levin, Trends in Endocrinology & Metabolism 10: 374-377 (1999)参照)。
【0005】
2つのエストロゲン受容体がこれまでに発見されている。最初のエストロゲン受容体は約15年前にクローン化され、現在ERαと称されている(Green, et al., Nature 320: 134-9 (1986)参照)。2番目の形態のエストロゲン受容体は比較的最近発見され、ERβと呼ばれる(Kuiper, et al., Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 93: 5925-5930 (1996)参照)。ERβに関する初期研究は、様々なリガンドに対するその親和性を定義することを焦点とし、実際に、ERαとのいくつかの相違が認められた。ERβの組織分布はげっ歯動物において広く位置づけられており、ERαとは一致しない。マウス及びラット子宮などの組織は主としてERαを発現し、一方マウス及びラット肺などの他の組織は主としてERβを発現する(Couse, et al., Endocrinology 138: 4613-4621 (1997), Kuiper, et al., Endocrinology 138: 863-870 (1997)参照)。同じ器官内でも、ERαとERβの分布は区分化され得る。例えばマウス卵巣では、ERβが顆粒層細胞において高発現され、ERαは膜及び支質細胞に限定される(Sar and Welsch, Endocrinology 140: 963-971 (1999), Fitzpatrick, et al., Endocrinology 140: 2581-2591 (1999)参照)。しかし、受容体が共発現される例があり、ERαとERβはヘテロ二量体を形成し得るというインビトロ試験からの証拠が存在する(Cowley, et al., Journal of Biological Chemistry 272: 19858-19862 (1997)参照)。
【0006】
17β−エストラジオールの作用を模倣する又はブロックする数多くの化合物が記述されている。最も強力な内因性エストロゲンである17β−エストラジオールとほぼ同じ生物学的作用を有する化合物は、「エストロゲン受容体アゴニスト」と称される。17β−エストラジオールと組み合わせて投与したとき、その作用をブロックするものは、「エストロゲン受容体アンタゴニスト」と呼ばれる。実際には、エストロゲン受容体アゴニストとエストロゲン受容体アンタゴニスト作用の間には連続性があり、事実上、一部の化合物は、一部の組織ではエストロゲン受容体アゴニストとして行動し、別の組織ではエストロゲン受容体アンタゴニストとして行動する。混合型活性を有するこれらの化合物は選択的エストロゲン受容体調節剤(SERMS)と呼ばれ、治療上有用な物質である(例えばEVISTA(登録商標))(McDonnell, Journal of the Society for Gynecologic Investigation 7: S10-S15 (2000), Goldstein, et al., Human Reproduction Update 6: 212-224 (2000)参照)。同じ化合物が細胞特異的作用を有し得る正確な理由は解明されていないが、受容体の立体配座及び/又は共調節タンパク質の環境の相違が示唆されてきた。
【0007】
エストロゲン受容体はリガンドと結合したとき異なる立体配座をとることが以前から知られている。しかし、これらの変化の結果とその緻密性はごく最近明らかにされた。ERαとERβの三次元構造が、様々なリガンドとの共結晶化によって解明され、受容体と共調節タンパク質の相互作用のために必要なタンパク質配列の立体障害となる、エストロゲン受容体アンタゴニストの存在下でのヘリックス12の再配置を明らかに示す(Pike, et al., Embo 18: 4608-4618 (1999), Shiau, et al., Cell 95: 927-937 (1998)参照)。加えて、ファージディスプレイの手法が、種々のリガンドの存在下でエストロゲン受容体と相互作用するペプチドを特定するために使用されてきた(Paige, et al., Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 96: 3999-4004 (1999)参照)。例えば、完全なエストロゲン受容体アゴニストである17β−エストラジオールとジエチルスチルベステロールに結合するERαを識別するペプチドが特定された。異なるペプチドは、ERαとERβに結合するクロミフェンを識別することが示された。これらのデータは、各々のリガンドが潜在的に受容体を、異なる生物活性を有すると考えられる独自の予測不可能な立体配座に置くことを示す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、エストロゲンは極めて多様な生物学的過程に影響を及ぼす。加えて、性差が記述されている場合は(例えば疾患発生率、抗原投与に対する応答等)、雄性と雌性の間でのエストロゲンレベルの差が説明に含まれる可能性がある。これらの化合物の重要性を考慮すると、新しいエストロゲン様物質への必要性が存在することがわかる。本発明は、これら並びに他の重要な目的を対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、エストロゲン様物質として有用な6H−[1]ベンゾピラノ[4,3−b]キノリン化合物を提供する。ある実施形態では、前記化合物は、式I:
【化6】

[式中、
A及びA’は、各々独立してOH、H又はORであり;
各々のRは、C1−C6アルキル、アルケニル、ベンジル、アシル、アロイル、−C(=O)−OR’、スルホニル及びホスホリルから成る群より独立して選択され、前記式中、各々のR’は、各々が場合によりC1−C6アルキル又はハロゲンから選択される1−3個の置換基によって置換されている、C1−C6アルキル、C2−C7アルケニル、C2−C7アルキニル又はC3−C10シクロアルキルから独立して選択され;
1及びR2は、H、ハロゲン、C1−C6アルキル、C1−C6ペルハロアルキル、CF3、C2−C7アルケニル及びC1−C6アルコキシから成る群より独立して選択され;
3、R4、R5及びR6は、H、ハロゲン、CF3、C1−C6ペルハロアルキル、C1−C6アルキル、C2−C7アルケニル、C2−C7アルキニル、C3−C7シクロアルキル、C1−C6アルコキシ、−CN、−CHO、アシル、フェニル、アリール及びヘテロアリールから成る群より各々独立して選択され;
3、R4、R5及びR6のアルキル又はアルケニル部分は、各々、場合によりハロゲン、OH、CN、トリフルオロアルキル、トリフルオロアルコキシ、NO2又はフェニルから独立して選択される3個までの置換基で置換されていてもよく、前記フェニルは、場合により独立して選択される3個までのR10基で置換されており;
3、R4、R5及びR6のアルキニル部分は、各々、場合によりハロゲン、−CN、−CHO、アシル、トリフルオロアルキル、トリアルキルシリル又はフェニルから選択される3個までの置換基で置換されていてもよく、前記フェニルは、場合により独立して選択される3個までのR10基で置換されており;
3、R4、R5及びR6のフェニル、アリール又はヘテロアリール部分は、各々、場合によりハロゲン、−CN、アルキル、アルコキシ、ペルフルオロアルキル又はペルフルオロアルコキシから選択される3個までの置換基で置換されていてもよく;
各々のR10は、ハロゲン、C1−C6アルキル、C2−C7アルケニル、−OH、C1−C6アルコキシ、−CN、−CHO、−NO2、アミノ、C1−C6アルキルアミノ、ジ−(C1−C6)アルキルアミノ、チオール及びC1−C6アルキルチオから成る群より独立して選択され;及び
nは、0、1、2又は3であり;
但し、
A及びA’の少なくとも1つはHではなく;
nが0である場合、R3はハロゲンではなく;及び
3、R4及びR5の少なくとも1つは、ハロゲン、C1−C6アルキル、C2−C7アルケニル、C2−C7アルキニル、C3−C7シクロアルキル、C1−C6アルコキシ、−CN、−CHO、アシル、フェニル、アリール又はヘテロアリールである]
又はそのN−オキシド又は製薬上許容されるその塩又はそのプロドラッグを有する。
【0010】
本発明の化合物は、少なくとも部分的にエストロゲンの欠損又は過剰によって媒介される、又はエストロゲン様物質の使用を通して治療又は抑制され得る状態、障害又は疾患状態の治療又は抑制において有用なエストロゲン受容体調節剤である。それ故、一部の態様では、本発明は、疾患、例えば骨粗しょう症、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性直腸炎、大腸炎、エストロゲン依存性の癌、高コレステロール血症、高脂血症、心臓血管疾患、アテローム性動脈硬化症、老年痴呆、アルツハイマー病、不安障害、神経変性疾患、不妊症又は関節炎の治療又は予防における本発明の化合物の使用を対象とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、6H−[1]ベンゾピラノ[4,3−b]キノリン化合物、前記化合物を含有する組成物、及びエストロゲン様物質としての前記化合物の使用のための方法を提供する。本発明の化合物は、エストロゲン受容体、特にERβに関連する疾患の治療及び予防において有用である。一部の実施形態では、本発明のエストロゲン様化合物は、式I:
【化7】

[式中、
A及びA’は、各々独立してOH、H又はORであり;
各々のRは、C1−C6アルキル、アルケニル、ベンジル、アシル、アロイル、−C(=O)−OR’、スルホニル及びホスホリルから成る群より独立して選択され、前記式中、各々のR’は、各々が場合によりC1−C6アルキル又はハロゲンから選択される1−3個の置換基によって置換されている、C1−C6アルキル、C2−C7アルケニル、C2−C7アルキニル又はC3−C10シクロアルキルから独立して選択され;
1及びR2は、H、ハロゲン、C1−C6アルキル、C1−C6ペルハロアルキル、CF3、C2−C7アルケニル及びC1−C6アルコキシから成る群より独立して選択され;
3、R4、R5及びR6は、H、ハロゲン、CF3、C1−C6ペルハロアルキル、C1−C6アルキル、C2−C7アルケニル、C2−C7アルキニル、C3−C7シクロアルキル、C1−C6アルコキシ、−CN、−CHO、アシル、フェニル、アリール及びヘテロアリールから成る群より各々独立して選択され;
3、R4、R5及びR6のアルキル又はアルケニル部分は、各々、場合によりハロゲン、OH、CN、トリフルオロアルキル、トリフルオロアルコキシ、NO2又はフェニルから独立して選択される3個までの置換基で置換されていてもよく、前記フェニルは、場合により独立して選択される3個までのR10基で置換されており;
3、R4、R5及びR6のアルキニル部分は、各々、場合によりハロゲン、−CN、−CHO、アシル、トリフルオロアルキル、トリアルキルシリル又はフェニルから選択される3個までの置換基で置換されていてもよく、前記フェニルは、場合により独立して選択される3個までのR10基で置換されており;
3、R4、R5及びR6のフェニル、アリール又はヘテロアリール部分は、各々、場合によりハロゲン、−CN、アルキル、アルコキシ、ペルフルオロアルキル又はペルフルオロアルコキシから選択される3個までの置換基で置換されていてもよく;
各々のR10は、ハロゲン、C1−C6アルキル、C2−C7アルケニル、−OH、C1−C6アルコキシ、−CN、−CHO、−NO2、アミノ、C1−C6アルキルアミノ、ジ−(C1−C6)アルキルアミノ、チオール及びC1−C6アルキルチオから成る群より独立して選択され;及び
nは、0、1、2又は3であり;
但し、
A及びA’の少なくとも1つはHではなく;
nが0である場合、R3はハロゲンではなく;及び
3、R4及びR5の少なくとも1つは、ハロゲン、C1−C6アルキル、C2−C7アルケニル、C2−C7アルキニル、C3−C7シクロアルキル、C1−C6アルコキシ、−CN、−CHO、アシル、フェニル、アリール又はヘテロアリールである]
又はそのN−オキシド又は製薬上許容されるその塩又はそのプロドラッグを有する。
【0012】
一部の実施形態では、A及びA’は各々OHである。一部のさらなる実施形態では、A及びA’の一方はOHであり、A及びA’の他方はORである。一部のさらなる実施形態では、A及びA’の一方はOHであり、A及びA’の他方はO−C1−C6アルキルである。一部のさらなる実施形態では、A及びA’は各々ORである。さらなる実施形態では、A及びA’は各々−O−C1−C6アルキルである。さらなる実施形態では、A及びA’の一方はHであり、A及びA’の他方はOH又はORである。さらなる実施形態では、A及びA’の一方はHであり、A及びA’の他方はOH又はO−C1−C6アルキルである。
【0013】
一部の実施形態では、R3及びR5は、各々独立して、H、ハロゲン、C1−C6アルキル、C2−C7アルケニル、C2−C7アルキニル、−CN、−CHO、アシル又は先に述べたような、場合により置換されたフェニルである。一部のそのような実施形態では、R3はH以外である。
【0014】
一部の実施形態では、R3は、ハロゲン、C1−C6アルキル、C2−C7アルケニル、C2−C7アルキニル、−CN、−CHO、又は場合によりハロゲン、−O−C1−C6アルキル(すなわちC1−C6アルコキシ)、ペルフルオロアルキル及びCNから選択される3個までの基で置換されたフェニルであり;及びR5は、H、ハロゲン、C1−C6アルキル、C2−C7アルケニル、C2−C7アルキニル、−CN、−CHO、又は場合によりハロゲン、C1−C6アルコキシ、ペルフルオロアルキル及びCNから選択される3個までの基で置換されたフェニルである。一部のそのような実施形態では、R3のフェニルは、場合によりF、Cl、Br、CN、OCH3及びCF3から選択される3個までの置換基で置換されている。
【0015】
一部の実施形態では、R3は、ハロゲン、C2−C7アルキニル又は−CNである。一部のさらなる実施形態では、R3及びR5は、各々独立してハロゲン、C2−C7アルキニル又は−CNである。
【0016】
一部の実施形態では、R1及びR2の1つはハロゲンである。一部の好ましい実施形態では、R1及びR2の1つはフッ素である。一部のさらなる実施形態では、R1及びR2の一方はハロゲンであり、R1及びR2の他方はHである。一部のさらなる実施形態では、R1及びR2の一方はフッ素であり、R1及びR2の他方はHである。一部のさらなる実施形態では、R1及びR2は各々独立してハロゲンである。一部のさらなる実施形態では、R1及びR2は各々フッ素である。一部のさらなる実施形態では、R1及びR2は各々Hである。
【0017】
一部の実施形態では、R4は、H、ハロゲン又は−CNであり、好ましくはHである。
【0018】
一部の実施形態では、R3は、ハロゲン、C1−C6アルキル、C2−C7アルケニル、C2−C7アルキニル、−CN、−CHO、又は場合によりハロゲン、C1−C6アルコキシ、ペルフルオロアルキル及びCNから選択される3個までの基で置換されたフェニルであり;R5は、H、ハロゲン、C1−C6アルキル、C2−C7アルケニル、C2−C7アルキニル、−CN、−CHO、又は場合によりハロゲン、C1−C6アルコキシ、ペルフルオロアルキル及びCNから選択される3個までの基で置換されたフェニルであり;R1及びR2の1つはハロゲンであり;及びR4はH、ハロゲン又は−CNである。
【0019】
一部の実施形態では、好ましくは、A及びA’は各々OHであり、R1、R2、R4、R5及びR6は水素であり、及びR3はハロゲンであるか、又はR3はOHであるか、又はR3はC2−C7アルケニルであるか、又はR3はCNであるか、又はR3はC2−C7アルキニルであるか、又はR3はC1−C6アルキルであるか、又はR3は場合により置換されたフェニルであり、好ましくはフェニルの置換基は、ハロゲン、C1−C6アルコキシ、ペルフルオロアルキル及びCNである。
【0020】
前記の各々の一部の実施形態では、nは1である。
【0021】
一部の実施形態では、本発明は、本発明の1又はそれ以上の化合物、又は製薬上許容されるその塩、キレート、複合体又はプロドラッグを含有する組成物を提供する。
【0022】
本発明に従った化合物は、ここで示す式において示されるように、それらの遊離塩基形態で、又はその塩及び/又は水和物として、特にその製薬上許容される塩として存在し得ることが了解されるべきである。製薬上許容される塩は、水和物と同様に、当技術分野において公知であり、当業者は、当技術分野で認識されている手法を用いてそのような塩を製造することは慣例的であることを理解する。製薬上許容される塩は、本発明の化合物が塩基性部分を含むときは、有機及び無機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、マンデル酸、リンゴ酸、フタル酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸、メタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、及び同様に公知の許容される酸から形成され得る。塩はまた、本発明の化合物が酸性部分を含むときは、有機及び無機塩基、例えばアルカリ金属塩(例えばナトリウム、リチウム又はカリウム)、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、1−6個の炭素原子を含むアルキルアンモニウム塩又は各々のアルキル基内に1−6個の炭素原子を含むジアルキルアンモニウム塩、及び各々のアルキル基内に1−6個の炭素原子を含むトリアルキルアンモニウム塩から形成され得る。例示的な塩は、酸付加塩、例えばHCl、H2SO4、HBr、HI、HNO3、H3PO4、NaH2PO4、Na2HPO4、H3PO3、NaH2PO3、Na2HPO4、H2SO4、NaHSO4、カルボン酸、例えば酢酸、マロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸等、及び他の薬理学的に耐容される塩をさらに含む。水和物は、半水和物、一水和物、二水和物等を含む。ここで異なる変更が為されない限り、遊離塩基式の使用はその塩及び/又は水和物を包含することが意図されている。
【0023】
本発明はまた、ここで開示する化合物のN−オキシド誘導体を包含する。これらのN−オキシドは、類似化合物を製造するための公知の方法によって製造できる。例えば前記化合物を過酸、過酸化水素、アルカリ金属過酸化物又はアルキル過酸化物で酸化し得る。1つの有用なN−オキシド誘導体は、キノリン環の窒素原子がN−オキシド基を形成する組成物である。
【0024】
本発明はまた、プロドラッグ誘導体を包含する。「プロドラッグ誘導体」又は「プロドラッグ」は、インビボで本発明の化合物の対応する非誘導体化形態に変換される、本発明の化合物の誘導体を意味する。
【0025】
ここで使用する、「アルキル」という用語は、単独で使用されるか又はもう1つ別の基の一部として使用されるかに関わらず、脂肪族炭化水素鎖を指し、明白に異なる規定がない限り、1−12個の炭素原子、好ましくは1−6個の炭素原子を含む直鎖及び分枝鎖を含むが、これらに限定されない。例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル等は、「アルキル」の用語に包含される。
【0026】
ここで定義において使用する炭素原子の数は、その成分の炭素骨格及び炭素分枝を指すが、成分の置換基、例えばアルコキシ置換基等の炭素原子を含まない。
【0027】
ここで使用する、「アルケニル」という用語は、単独で使用されるか又はもう1つ別の基の一部として使用されるかに関わらず、脂肪族炭化水素鎖を指し、2−8個の炭素原子、例えば2−7個の炭素原子を有し、及び少なくとも1つの二重結合を含む直鎖及び分枝鎖を含むが、これらに限定されない。好ましくは、アルケニル部分は1又は2個の二重結合を有する。例えばビニル、アリル、1−メチルビニル等が「アルケニル」の用語に包含される。そのようなアルケニル部分はE又はZ立体配座で存在し得るが、本発明の化合物は両方の立体配座を含む。
【0028】
ここで使用する、「アルキニル」という用語は、単独で使用されるか又はもう1つ別の基の一部として使用されるかに関わらず、脂肪族炭化水素鎖を指し、2−8個の炭素原子、例えば2−7個の炭素原子を有し、及び少なくとも1つの三重結合を含む直鎖及び分枝鎖を含むが、これらに限定されない。好ましくは、アルキニル部分は1又は2個の三重結合を有する。例えばエチニル、プロピニル等が「アルキニル」の用語に包含される。
【0029】
「アシル」という用語は、例えばアルキルがここで定義されるとおりである場合の、アルキルカルボニル基を指す。「ベンジル」という用語は、フェニルメチル基としてのその慣例的な意味を有する。「アロイル」という用語は、カルボニル基、例えばベンゾイル基を通して結合されたアリール部分を指す。
【0030】
変数R1、R2、R3、R4、R5、R6、A及びA’に関してここで述べるアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリール、アロイル、アシル及びフェニル基は、場合により1又はそれ以上の置換基、好ましくは3個までの置換基で置換され得る。置換基は独立して選択され、ニトロ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アルキルアルコキシ、アルコキシアルコキシ、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアルコキシ、アリールアルキル、アルキルアリール、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アルキルチオ、S(O)s−アリール(式中、s=0−2)、S(O)s−ヘテロアリール(式中、s=0−2)、又は−C(=O)−OR’[式中、R’は先に述べたとおりである]を含む。本発明のある実施形態では、好ましい置換基は、ハロゲン、OH、CN、トリフルオロアルキル、トリフルオロアルコキシ、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアルコキシ、アリールアルキル、アルキルアリール、NO2及びフェニルを含み、前記フェニルは、場合により、ここで述べるような独立して選択される3個までのR10基で置換されている。
【0031】
例えば、アルキル又はアルケニル部分が置換されているとき、それらは、典型的には一、二、三又は過置換され得る。ハロゲン置換基の例は、1−ブロモビニル、1−フルオロビニル、1,2−ジフルオロビニル、2,2−ジフルオロビニル、1,2,2−トリフルオロビニル、1,2−ジブロモエタン、1,2−フルオロエタン、1−フルオロ−2−ブロモエタン、CF2CF3、CF2CF2CF3等を含む。
【0032】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を含む。
【0033】
例示的なシクロアルキル基は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチル等を含む。一部の実施形態では、シクロアルキル基は3−10個の炭素原子を有する。好ましくは、シクロアルキル基は3−7個の炭素原子を有する。ここで使用するとき、シクロアルキル基は、不飽和シクロアルキル基、すなわちシクロアルケニル基をさらに含む。例示的な不飽和シクロアルキル基は、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル等を含む。
【0034】
アリール基は、ヘテロ(すなわち非炭素)環原子を含まない少なくとも1個の芳香環を有する成分である。「アリール」という用語は、例えば6−15個の炭素原子の、単環式及び多環式芳香環系、例えばフェニル、ナフチル等を含む。アリール基は、芳香環に縮合された完全又は部分的飽和環を有し得る。それ故、例示的なアリール基は、フェニル、ナフチル、ピレニル、5,6,7,8−テトラヒドロナフト−1−イル等を含む。
【0035】
ヘテロアリールという用語は、O、N及びSから選択される少なくとも1個の非炭素環原子(例えば1−3個のヘテロ原子)を含み、例えば5−14個の環原子を有する、芳香環系を意味することが意図されている。例示的なヘテロアリール基は、ピロリル、イミダゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、キノリル、クオキサリニル(quoxalinyl)、キナゾリニル、チオフェニル、フラニル、オキサゾリル、チアゾリル、チエニル、ピラニル、チオピラニル、ベンゾフラニル、インドリル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾピラニル、ベンゾチオピラニル、インダゾリル、ピリドピロリル等を含む。
【0036】
一部の実施形態では、A又はA’の−C(=O)−OR’部分のR’基はC1−C6アルキルである。一部の実施形態では、R’はC1−C4アルキルである。一部の実施形態では、−C(=O)−OR’部分はt−ブトキシカルボニル(BOC)である。
【0037】
本発明に従って使用するとき、本発明によってカバーされる化合物又は物質を提供することに関して、「与える」という用語は、そのような化合物又は物質を直接投与すること、又は体内で有効量の化合物又は物質を形成するプロドラッグ、誘導体又は類似体を投与することを意味する。
【0038】
以下で述べるような、標準薬理試験手順で得られた結果に基づき、本発明の化合物は、少なくとも部分的にはエストロゲンの欠損又は過剰によって媒介される、又はエストロゲン様物質の使用を通して治療又は抑制され得る状態、障害又は疾患状態の治療又は抑制において有用なエストロゲン受容体調節剤である。本発明の化合物は、生産される内在性エストロゲンのレベルが大きく低下する閉経周辺期、閉経期又は閉経後患者において特に有用である。閉経期は一般に、最後の自然月経期間と定義され、血流中の循環エストロゲンの実質的な減少を導く、卵巣機能の停止によって特徴付けられる。ここで使用するとき、閉経はまた、外科手術によって、化学的に、又は卵巣機能の早発低下又は停止を導く疾患状態によって引き起こされ得るエストロゲン産生低下の状態を含む。
【0039】
従って、本発明の化合物は、正味の骨量減少を導く、個体における新しい骨組織の形成とより古い骨組織の吸収の不均衡から生じ得る、骨粗しょう症を治療する又は抑制する上で及び骨無機質脱落の抑制において有用である。そのような骨量減少は、様々な個人において、特に閉経後女性、両側卵巣摘出術を受けた女性、長期にわたるコルチコステロイド療法を受けている又は受けたことがある個人、生殖器発育不全を経験している個人、及びクッシング症候群に罹患している個人において起こる。骨折、骨構造欠陥を有する個人、及び骨関連手術及び/又はプロテーゼの移植を受ける個人において、歯及び口腔骨を含む骨置換の特殊な必要性も、これらの化合物を使用して対応できる。上述した問題に加えて、これらの化合物は、変形性関節症、脊椎関節症、低カルシウム血症、高カルシウム血症、パジェット病、骨軟化症、骨石灰脱失症、多発性骨髄腫及び骨組織への有害作用を有する他の形態の癌の治療又は抑制において使用できる。
【0040】
本発明の化合物はさらに、関節鏡検査又は手術処置に続発する関節損傷を治療する又は抑制する上で有用である。
【0041】
本発明の化合物はまた、前立腺肥大、子宮平滑筋腫、乳癌、子宮内膜症、子宮内膜癌、多嚢胞性卵巣症候群、子宮内膜ポリープ、良性乳房疾患、腺筋症、卵巣癌、黒色腫、前立腺癌、結腸癌又はCNS癌、例えば神経膠腫又は神経膠星状芽細胞腫を含む、良性又は悪性異常組織増殖を治療する又は抑制する上で有用である。
【0042】
本発明の化合物は心臓保護性であり、それらは、コレステロール、トリグリセリド、Lp(a)リポタンパク質及び低密度リポタンパク質(LDL)レベルを低下させる;高コレステロール血症、高脂血症、心臓血管疾患、アテローム性動脈硬化症、末梢血管疾患、再狭窄及び血管痙攣を抑制する又は治療する;及び免疫を介した血管損傷へと導く細胞事象から生じる血管壁損傷を抑制する上で有用である。これらの心臓血管保護特性は、骨粗しょう症を抑制するために閉経後患者をエストロゲンで治療するとき及びエストロゲン療法を指示されたときの男性において非常に重要である。
【0043】
本発明の化合物はまた、抗酸化性であり、それ故遊離基が誘導する疾患状態を治療する又は抑制する上で有用である。抗酸化薬治療が正当であると指示される特定状況は、癌、中枢神経系障害、アルツハイマー病、骨疾患、老化、炎症性疾患、末梢血管疾患、関節リウマチ、自己免疫疾患、呼吸窮迫、気腫、喘息、胸膜炎、ブドウ膜炎、敗血症、出血性ショック、再灌流障害の予防、ウイルス性肝炎、慢性活動性肝炎、結核、乾癬、全身性エリテマトーデス、成人呼吸促進症候群、中枢神経系外傷及び卒中を有する状況である。
【0044】
本発明の化合物はまた、認知機能増強を提供する上で、及び神経保護又は認知機能増強を与えて、老年痴呆、アルツハイマー病、認知機能低下、神経変性疾患を治療する又は抑制する上で有用である。
【0045】
本発明の化合物はまた、炎症性腸疾患、潰瘍性直腸炎、クローン病及び大腸炎;閉経関連状態、例えば顔面潮紅、膣又は外陰萎縮、萎縮性膣炎、膣乾燥、そう痒、性交疼痛症、排尿障害、頻尿、尿失禁、尿路感染症、筋痛、関節痛、不眠症、被刺激性等を含む、血管運動症状;男性型禿頭症;皮膚萎縮;?瘡;II型糖尿病;機能不全性不正子宮出血;及び不妊症を治療する又は抑制する上で有用である。
【0046】
本発明の化合物はまた、無月経が好都合である疾患状態、例えば白血病、子宮内膜剥離、慢性腎又は肝疾患、あるいは凝固疾患又は障害において有用である。
【0047】
本発明の化合物は、特にプロゲスチンと組み合わせたとき、避妊薬として使用することができる。
【0048】
特定疾患状態又は障害の治療又は抑制のために投与するとき、有効用量は、使用する特定化合物、投与様式、治療する状態及びその重症度、並びに治療する個人に関連する様々な身体的因子に依存して異なり得ることが了解される。本発明の化合物の有効な投与は、約0.1mg/日から約1,000mg/日の経口用量で実施し得る。好ましくは、投与は、単回投与あるいは2又は3回の分割投与で、約10mg/日から約600mg/日、より好ましくは約50mg/日から約600mg/日である。提案される1日用量は投与経路によって異なると予想される。
【0049】
そのような用量は、ここで述べる活性化合物を受容者の血流に導入するのに有用な方法で、例えば経口的に、移植によって、非経口的に(静脈内、腹腔内及び皮下注射を含む)、直腸経路、鼻内経路、膣経路で及び経皮的に、投与し得る。
【0050】
本発明の活性化合物を含有する経口製剤は、錠剤、カプセル、口腔形態、トローチ、ロゼンジ及び経口液体、懸濁液又は溶液を含む、何らかの慣例的に使用される経口剤型を含み得る。カプセルは、本発明の活性化合物と不活性充填剤及び/又は希釈剤、例えば製薬上許容されるデンプン(例えばトウモロコシ、ジャガイモ又はタピオカデンプン)、糖、人工甘味料、粉末セルロース、例えば結晶及び微結晶セルロース、小麦粉、ゼラチン、ゴム等の混合物を含み得る。有用な錠剤製剤は、従来の圧縮、湿式造粒又は乾式造粒法によって製造でき、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、滑石、ラウリル硫酸ナトリウム、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、アルギン酸、アカシアゴム、キサンタンガム、クエン酸ナトリウム、複合ケイ酸塩、炭酸カルシウム、グリシン、デキストリン、スクロース、ソルビトール、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、滑石、乾燥デンプン及び粉糖を含むがこれらに限定されない、製薬上許容される希釈剤、結合剤、潤滑剤、崩壊剤、表面修飾剤(界面活性剤を含む)、懸濁化剤又は安定剤を使用する。好ましい表面修飾剤は、非イオン性及び陰イオン性表面修飾剤を含む。表面修飾剤の代表的な例は、ポロキサマー188、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、セトステアリルアルコール、セトマクロゴル乳化ワックス、ソルビタンエステル、コロイド状二酸化ケイ素、リン酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム及びトリエタノールアミンを含むが、これらに限定されない。ここで述べる経口製剤は、活性化合物の吸収を変化させるために標準徐放性又は持続放出性製剤を使用し得る。経口製剤はまた、必要に応じて、適切な可溶化剤又は乳化剤を含む、水又は果汁中で有効成分を投与することで構成され得る。
【0051】
一部の場合は、化合物をエーロゾルの形態で気道に直接投与することが望ましいと考えられる。
【0052】
本発明の化合物はまた、非経口的に又は腹腔内に投与し得る。遊離塩基又は薬理学的に許容される塩としてのこれらの活性化合物の溶液又は懸濁液は、界面活性剤、例えばヒドロキシプロピルセルロースと適切に混合した水中で製造できる。分散も、油中のグリセロール、液体ポリエチレングリコール及びそれらの混合物において製造できる。通常の保存及び使用条件下では、これらの製剤は微生物の増殖を防ぐための防腐剤を含む。
【0053】
注射剤としての使用に適する医薬剤型は、無菌注射用溶液又は分散の即時調製のための無菌水溶液又は分散及び無菌粉末を含む。全ての場合に、剤型は無菌でなければならず、また容易に注射できる程度に流動性でなければならない。製造及び保存条件下で安定でなければならず、微生物、例えば細菌及び真菌の汚染作用に対して保護されていなければ成らない。担体は、例えば水、エタノール、ポリオル(例えばグリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコール)、それらの適切な混合物及び植物油を含む溶媒又は分散媒質であり得る。
【0054】
本開示のために、経皮投与は、上皮及び粘膜組織を含む身体の表面及び身体通路の内層を横切る全ての投与を包含すると理解される。そのような投与は、親化合物、そのN−オキシド、そのプロドラッグ、又は製薬上許容されるその塩を使用して、ローション、クリーム、泡、パッチ、懸濁液、溶液及び坐薬(直腸及び膣)中で実施され得る。
【0055】
経皮投与は、活性化合物、及び活性化合物に対して不活性であり、皮膚に非毒性であり、皮膚を通した血流中への全身的吸収のための作用物質送達を可能にする担体を含有する経皮パッチの使用を通して達成され得る。担体はどのような形態をとってもよく、例えばクリーム及び軟膏、ペースト、ジェル及び閉鎖装置の形態をとり得る。クリーム及び軟膏は、粘性液体あるいは水中油型又は油中水型の半固体乳剤であり得る。有効成分を含有する、石油又は親水性石油に分散した吸収性粉末から成るペーストも適切であり得る。様々な閉鎖装置、例えば担体と共に又は担体なしで有効成分を含有するレザバーを覆う半透膜、又は有効成分を含有するマトリックスは、有効成分を血流中の放出するために使用し得る。他の閉鎖装置は文献において公知である。
【0056】
坐薬製剤は、坐薬の融点を変化させるためのろうの添加を伴う又は伴わない、ココアバター、及びグリセリンを含む伝統的な材料から製造し得る。水溶性坐薬基剤、例えば様々な分子量のポリエチレングリコールも使用し得る。
【0057】
本発明の化合物の合成
本発明の化合物は、有機化学の技術分野において公知の方法によって製造することができる。本発明の化合物の製造において使用する試薬は、市販のものを入手し得るか又は文献に述べられている標準手順によって製造できる。
【0058】
本発明の代表的な例の合成を以下のスキーム1−4で述べる。スキーム1−4において言及する合成方法A−Mは、以下の実施例の中で説明する。
【化8】



【0059】
実施例
本発明の代表的化合物の合成:一般的方法
Aldrich Sure Seal(商標)は、さらなる精製を行わずに無水で、ここで述べる反応のために使用することができ、Aldrich Chemical Company(St.Louis,MO)から入手し得る。全ての反応を窒素雰囲気下で実施した。クロマトグラフィーは、230−400メッシュのシリカゲル(Merck Grade 60,Aldrich Chemical Company)を用いて実施した。薄層クロマトグラフィーは、EM Science( )からのSilica Gel 60 F254プレートで実施した。1H及び19F NMRスペクトルは、ジュウテリウム化溶媒、例えばCDCl3、DMSO−d6又はアセトン−d6中、Bruker AM−400又はBruker DPX−300装置(Bruker,Billerica,MA)で得た。化学シフト(δ)は、テトラメチルシラン(TMS)からの百万分の1(ppm)低磁場で表わす。融点はThomas−Hoover装置で測定し、補正しない。赤外(IR)スペクトルは、Perkin−Elmer回折格子又はPerkin−Elmer 784分光光度計(Perkin−Elmer,Shelton,CT)で記録した。質量スペクトルは、Kratos MS 50又はFinnigan 8230質量分析計で記録した。化合物の命名法は、一般にBeilstein Autonom(商標)プログラムを使用して決定した。
【実施例1】
【0060】
3−(3−メトキシ−フェノキシ)−プロピオン酸(1)
方法A:水(100mL)中の3−ブロモプロピオン酸(14.70g、118mmol)の混合物にNaHCO3(8.40g、100mmol)を緩やかに添加し、生じた混合物を5分間攪拌した。この溶液に、NaOH水溶液(4.67g、119mmol)中の3−メトキシフェノール(14.70g、96mmol)の70mL溶液を添加し、生じた混合物を100℃で3時間加熱した。室温に冷却した後、反応混合物を1N HClで酸性にし、Et2Oで抽出した。Et2O層をNaHCO3水溶液で洗った(3×)。水層を1N HClで再び酸性にし、Et2Oで抽出した。Et2O層を水、ブラインで洗い、乾燥して(Na2SO4)、ろ過し、濃縮して粗褐色固体を得、それを再結晶化して(Et2O/−20℃)、純粋な生成物を黄色固体として得た。収量:170.0g(23%)。1H−NMR(300MHz,CDCl3):δ2.85(t,J=6.3Hz,2H),3.79(s,3H),4.24(t,J=6.3Hz,2H),6.50(m,3H),7.18(t,J=8.2Hz,1H),11.45(br,1H);MS(ESI)m/z195([M−H]-);C10124について算定した分析値:C:61.22,H:6.16。実験値:C:61.24,H:6.12。
【実施例2】
【0061】
7−メトキシ−クロマン−4−オン(2)
方法B:0℃の3−(3−メトキシ−フェノキシ)−プロピオン酸(1)(7.00g、35.6mmol)を含む反応容器にトリフルオロメタンスルホン酸(15mL)を緩やかに添加した。反応混合物を、自然に室温まで温めながら3時間攪拌した。0℃に冷却した後、反応混合物を破砕氷でクエンチングし、その後Et2Oで抽出した(2×300mL)。有機層を水(2×)、NaHCO3水溶液、水、ブラインで洗い、その後乾燥して(Na2SO4)、ろ過し、濃縮して粗油を得、それをシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、純粋な生成物を黄色固体として得た。収量:4.26g(67%)。1H−NMR(300MHz,CDCl3):δ2.76(t,J=6.3Hz,2H),3.84(s,3H),4.52(t,J=6.3Hz,2H),6.41(d,J=2.3Hz,1H),6.58(dd,J=8.8,2.3Hz,1H),7.84(d,J=8.8Hz,1H);MS(ESI)m/z179([M+H]+)。
【実施例3】
【0062】
3,9−ジメトキシ−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン−7−オール(3)
方法C:Ph2O(10mL)中の2−アミノ−5−メトキシ安息香酸(1.839g、11.00mmol)と7−メトキシ−クロマン−4−オン(2)(1.960g、11.00mmol)の混合物を170℃で1時間及び200℃で7時間加熱した。室温に冷却した後、ヘキサンを添加した。形成された黄色沈殿物をろ過によって収集し、ヘキサンとEt2Oで連続的に洗って、真空中で乾燥した。収量:2.171g(64%)。融点298℃(分解);1H−NMR(300MHz,DMSO−d6)δ3.82(s,3H),3.84(s,3H),5.17(s,2H),6.64(d,J=2.4Hz,1H),6.79(dd,J=8.7,2.4Hz,1H),7.31(dd,J=9.0,2.9Hz,1H),7.50(d,J=2.8Hz,1H),7.74(d,J=9.0Hz,1H),7.99(d,J=8.7Hz,1H),11.56(s,1H);MS(ESI)m/z308([M−H]-),310([M+H]+);HRMS(ESI+)C1815NO4について算定した計算値310.1074([M+H]+)、実験値310.1068。
【実施例4】
【0063】
7−クロロ−3,9−ジメトキシ−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン(4)
方法C:3,9−ジメトキシ−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン−7−オール(3)(124mg、0.400mmol)とPOCl3(1mL)の混合物を還流で1時間加熱した。冷却後、過剰のPOCl3を減圧下で除去した。水、次にK2CO3水溶液を固体残留物に緩やかに添加し、その反応混合物をEtOAcで抽出した。有機層をブラインで洗い、その後乾燥して(Na2SO4)、ろ過し、濃縮して粗固体を得、それをシリカゲルの短いパッドに通して、再結晶化し(高温ヘプタン/−20℃)、純粋な生成物を黄色粉末として得た。収量:124mg(95%);融点190−191℃;1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ3.85(s,3H),3.97(s,3H),5.50(s,2H),6.53(d,J=2.4Hz,1H),6.71(dd,J=8.7,2.4Hz,1H),7.35(dd,J=8.9,2.8Hz,1H),7.38(d,J=3.2Hz,1H),7.98(d,J=8.8Hz,1H),8.29(d,J=8.7Hz,1H);MS(ESI)m/z328/330([M+H]+);HRMS(ESI+)C1814CINO3について算定した計算値328.0735([M+H]+)、実験値328.0728;C1814CINO3について算定した分析値:C:65.96,H:4.31,N:4.27.実験値:C:65.71,H:4.17,N:3.92。
【実施例5】
【0064】
7−ブロモ−3,9−ジメトキシ−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン(5)
方法E:DMF(15mL)中の3,9−ジメトキシ−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン−7−オール(3)(1.025g、3.31mmol)とPOBr3(1.430g、5.00mmol、1.5当量)を70℃で30分間加熱した。室温に冷却した後、水、次にK2CO3水溶液を緩やかに添加し、その反応混合物を温かいCHCl3で抽出した(2×)。有機層を水(2×)及びブラインで洗い、その後乾燥して(Na2SO4)、シリカゲルの短いパッドを通してろ過し、濃縮して、粗黄色固体を得、それを再結晶化して(高温EtOAc/−20℃)、純粋な生成物を黄色針状物質として得た。収量:1.127g(91%);融点196−197℃;1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ3.85(s,3H),3.98(s,3H),5.48(s,2H),6.53(d,J=2.4Hz,1H),6.71(dd,J=8.7,2.5Hz,1H),7.35(dd,J=9.0,2.7Hz,1H),7.39(d,J=2.7Hz,1H),7.97(d,J=9.0Hz,1H),8.30(d,J=8.7Hz,1H);MS(ESI)m/z372/374([M+H]+);HRMS(ESI+)C1814BrNO3について算定した計算値372.0230([M+H]+)、実験値372.0228;C1814BrNO3について算定した分析値:C:58.08,H:3.79,N:3.76.実験値:C:57.94,H:3.68,N:3.73。
【実施例6】
【0065】
7−クロロ−3,9−ジヒドロキシ−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン(6)
方法F:1,2−ジクロロエタン(3mL)中の7−クロロ−3,9−ジメトキシ−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン(4)(68mg、0.21mmol)の溶液に、CH2Cl2中のBBr3(1.0M、1mL、1mmol)の溶液を緩やかに添加した。反応混合物を室温で30分間攪拌し、次に40℃で2時間攪拌した。氷浴で冷却した後、反応を停止するために強く攪拌しながらNaHCO3水溶液を非常に緩やかに添加し、生じた反応混合物をEtOAcで抽出した。有機層をブラインで洗い、その後乾燥して(Na2SO4)、シリカゲルの短いパッドを通してろ過し、濃縮して、黄色固体を得、それを再結晶化した(THF/ヘキサン)。収量:56mg(90%);融点235℃(分解);1H−NMR(300MHz,DMSO−d6)δ5.47(s,2H),6.40(s,1H),6.60(d,J=8.0Hz,1H),7.34(d,J=2.1Hz,2H),7.89(d,J=9.6Hz,1H),8.09(d,J=8.6Hz,1H),10.10(s,1H),10.35(s,1H);HRMS(ESI+)C1610CINO3について算定した計算値300.0422([M+H]+)、実験値300.0411。
【実施例7】
【0066】
7−ブロモ−3,9−ジヒドロキシ−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン(7)
方法G:1,2−ジクロロエタン(20mL)中の7−ブロモ−3,9−ジメトキシ−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン(5)(881mg、2.37mmol)の溶液に、AlCl3(3.16g、23.7mmol)及びEtSH(2.7mL、36mmol)を緩やかに添加し、反応混合物を室温で3時間攪拌した。氷浴で冷却した後、反応を停止するために強く攪拌しながらNaHCO3水溶液を非常に緩やかに添加し、生じた反応混合物をEtOAcで抽出した。形成された沈殿物をCelite(登録商標)でろ過した。有機層をブラインで洗い、その後乾燥して(Na2SO4)、ろ過し、濃縮して、粗黄色固体を得、それをシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、純粋な生成物を橙色固体として得た。収量:478mg(59%);融点240℃(分解);1H−NMR(300MHz,DMSO−d6)δ5.44(s,2H),6.41(d,J=2.3Hz,1H),6.59(dd,J=8.6,2.3Hz,1H),7.33(dd,J=8.7,2.6Hz,1H),7.35(s,1H),7.88(d,J=8.7Hz,1H),8.09(d,J=8.6Hz,1H),10.09(s,1H),10.35(s,1H);MS(ESI)m/z342/344([M−H]-),344/346([M+H]+);HRMS(ESI+)C1610BrNO3について算定した計算値343.9917([M+H]+)、実験値343.9911。
【実施例8】
【0067】
3,9−ジヒドロキシ−7−ビニル−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン(8)
方法H:トルエン(1.5mL)中の7−ブロモ−3,9−ジヒドロキシ−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン(7)(34.5mg、0.100mmol)、トリブチル(ビニル)スズ(38mg、0.120mmol、1.2当量)及びPd(PPh34(11.6mg、0.0100mmol、10mol%)の混合物を、全ての出発物質が消費されるまで(1−2時間)窒素下で還流した。Celite(登録商標)でろ過し、シリカゲルの短いパッドを通すことによって精製して、純粋な生成物を橙色粉末として得た。収量:24mg(83%);融点160℃(分解);1H−NMR(400MHz,DMSO−d6)δ5.36(s,2H),5.47(dd,J=17.9,1.4Hz,1H),5.91(dd,J=11.6,1.4Hz,1H),6.38(d,J=2.3Hz,1H),6.58(dd,J=8.5,2.3Hz,1H),7.10(dd,J=17.7,11.6Hz,1H),7.22(d,J=2.5Hz,1H),7.26(dd,J=9.1,2.6Hz,1H),7.84(d,J=8.9Hz,1H),8.10(d,J=8.5Hz,1H),9.94(s,1H),9.95(s,1H);MS(ESI)m/z290([M−H]-),292([M+H]+);HRMS(ESI+)C1813NO3について計算値292.0968([M+H]+)、実験値292.0962。
【実施例9】
【0068】
3,9−ジヒドロキシ−7−[(トリメチルシリル)エチニル]−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン(9)
方法I:トルエン(2mL)中の7−ブロモ−3,9−ジヒドロキシ−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン(7)(51.6mg、0.150mmol)、(トリメチルシリルエチニル)トリブチルスズ(70mg、0.180mmol、1.2当量)及びPd(PPh34(17mg、0.015mmol、10mol%)の混合物を、全ての出発物質が消費されるまで(1−2時間)窒素下で還流した。Celite(登録商標)でろ過し、シリカゲルの短いパッドを通すことによって精製して、純粋な生成物を赤色固体として得た。収量:54mg(99.6%);融点160℃(分解);1H−NMR(300MHz,アセトン−d6)δ0.43(s,9H),5.53(s,2H),6.52(d,J=2.3Hz,1H),6.71(dd,J=8.6,2.3Hz,1H),7.42(dd,J=9.1,2.7Hz,1H),7.61(d,J=2.7Hz,1H),7.97(d,J=9.0Hz,1H),8.26(d,J=8.6Hz,1H),8.94(s,1H),9.16(s,1H);MS(ESI)m/z360([M−H]-),362([M+H]+);HRMS(ESI+)C2119NO3Siについて算定した計算値362.1207([M+H]+)、実験値362.1207。
【実施例10】
【0069】
3,9−ジヒドロキシ−7−エチニル−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン(10)
方法J:MeOH(2mL)中の3,9−ジヒドロキシ−7−[(トリメチルシリル)エチニル]−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン(9)(54mg、015mmol)にK2CO3(104mg、0.75mmol、5当量)を添加し、反応混合物を室温で30分間攪拌した。反応混合物をNH4Cl水溶液(5mL)でクエンチングした。メタノール(MeOH)を減圧下で除去し、反応混合物をEtOAcで抽出した。有機層を水及びブラインで洗い、その後乾燥して(Na2SO4)、ろ過し、濃縮して粗黄色固体を得、それをシリカゲルの短いパッドに通すことによって精製し、純粋な生成物を赤紫色粉末として得た。収量:27mg(63%);融点220℃(分解);1H−NMR(300MHz,DMSO−d6)δ5.27(s,1H),5.46(s,2H),6.41(d,J=2.1Hz,1H),6.59(dd,J=8.5,2.1Hz,1H),7.31(dd,J=9.1,2.6Hz,1H),7.41(d,J=2.5Hz,1H),7.87(d,J=9.0Hz,1H),8.09(d,J=8.5Hz,1H),10.04(s,1H),10.23(s,1H);MS(ESI)m/z288([M−H]-),290([M+H]+);HRMS(ESI+)C1811NO3について算定した計算値290.0812([M+H]+)、実験値290.0808。
【実施例11】
【0070】
3,9−ジヒドロキシ−7−エチル−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン(11)
方法K:EtOAc/THF(1.5mL)中の3,9−ジヒドロキシ−7−エチニル−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン(10)(13mg、0.045mmol)とPd/C(10重量%)の混合物を水素雰囲気(1気圧、バルーン)下で30分間攪拌した。反応混合物をCelite(登録商標)でろ過し、濃縮して黄色固体を得、それを再結晶化した(EtOAc/ヘキサン/−20℃)。収量:13mg(98%);融点145℃(分解);1H−NMR(300MHz,DMSO−d6)δ1.18(t,J=7.4Hz,3H),2.95(q,J=7.6Hz,2H),5.41(s,2H),6.38(d,J=2.2Hz,1H),6.56(dd,J=8.5,2.3Hz,1H),7.24(dd,J=8.3,2.4Hz,1H),7.26(s,1H),7.82(d,J=9.0Hz,1H),8.09(d,J=8.5Hz,1H),9.90(s,1H),9.93(s,1H);MS(ESI)m/z292([M−H]-),294([M+H]+);HRMS(ESI+)C1815NO3について算定した計算値294.1125([M+H]+)、実験値294.1123。
【実施例12】
【0071】
7−シアノ−3,9−ジヒドロキシ−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン(12)
方法L:無水DMF(2mL)中の7−ブロモ−3,9−ジヒドロキシ−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン(7)(47mg、0.14mmol)とCuCN(370mg、4.13mmol)の混合物を、全ての出発物質が消費されるまで(5時間)封管において200℃で加熱した。室温に冷却した後、反応混合物をCelite(登録商標)に通してろ過し、EtOAcで洗浄した。ろ液に水を添加し、反応混合物をEtOAcで抽出した。有機層を水(2×)及びブラインで洗い、その後乾燥して(Na2SO4)、ろ過し、濃縮して粗固体を得、それをシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して純粋な生成物を褐色粉末として得た。収量:9mg(23%);1H−NMR(300MHz,DMSO−d6)δ5.52(s,2H),6.44(d,J=2.1Hz,1H),6.63(dd,J=8.6,2.1Hz,1H),7.27(d,J=2.4Hz,1H),7.41(dd,J=9.1,2.5Hz,1H),7.98(d,J=9.1Hz,1H),8.09(d,J=8.6Hz,1H),10.19(s,1H),10.63(s,1H);MS(ESI)m/z289([M−H]-),291([M+H]+);HRMS(ESI+)C171023について算定した計算値291.0764([M+H]+)、実験値291.0758。
【実施例13】
【0072】
7−(4−クロロフェニル)−3,9−ジヒドロキシ−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン(13)
方法M:DME(3mL)中の7−ブロモ−3,9−ジヒドロキシ−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン(7)(40mg、0.12mmol)とPd(PPh34(7mg、0.006mmol、5mol%)の混合物を室温で10分間攪拌した。この混合物に4−クロロフェニルボロン酸(22mg、0.14mmol、1.2当量)及びNa2CO3水溶液(2M溶液、5当量)を連続的に添加し、反応混合物を、全ての出発物質が消費されるまで(2−3時間)還流した。冷却後、NH4Clを添加し、反応混合物をEtOAcで抽出した。有機層を水及びブラインで洗い、その後乾燥して(Na2SO4)、ろ過し、濃縮して粗固体を得、それを、シリカゲルの短いパッドを通過させることによって精製して、純粋な生成物を赤色粉末として得た。収量:41mg(94%);融点215−218℃(分解);1H−NMR(400MHz,DMSO−d6)δ5.01(s,2H),6.36(d,J=2.2Hz,1H),6.60(dd,J=8.7,2.2Hz,1H),6.62(d,J=2.5Hz,1H),7.26(dd,J=9.1,2.6Hz,1H),7.41(d,J=8.4Hz,2H),7.68(d,J=8.4Hz,2H),7.90(d,J=9.0Hz,1H),8.15(d,J=8.4Hz,1H),9.82(s,1H),9.98(s,1H);MS(ESI)m/z374/376([M−H]-),376/378([M+H]+);HRMS(ESI+)C2214CINO3について算定した計算値376.0735([M+H]+)、実験値376.0728。
【実施例14】
【0073】
7−(4−シアノフェニル)−3,9−ジヒドロキシ−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン(14)
この化合物は、7−ブロモ−3,9−ジヒドロキシ−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン(7)から、方法Mに従って4−シアノフェニルボロン酸を使用して製造した。象牙色粉末;収率:96%;融点295℃(分解);1H−NMR(400MHz,DMSO−d6)δ4.99(s,2H),6.36(d,J=2.3Hz,1H),6.53(d,J=2.7Hz,1H),6.61(dd,J=8.7,2.3Hz,1H),7.27(dd,J=9.1,2.6Hz,1H),7.62(d,J=8.5Hz,2H),7.91(d,J=9.0Hz,2H),8.09(d,J=8.3Hz,1H),8.16(d,J=8.6Hz,1H),9.86(s,1H),9.99(s,1H);MS(ESI)m/z365([M−H]-),367([M+H]+);HRMS(ESI+)C231423について算定した計算値367.1077([M+H]+)、実験値367.1074。
【実施例15】
【0074】
3,9−ジヒドロキシ−7−(4−メトキシフェニル)−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン(15)
この化合物は、7−ブロモ−3,9−ジヒドロキシ−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン(7)から、方法Mに従って4−メトキシフェニルボロン酸を使用して製造した。黄色粉末;収率:84%;融点195℃(分解);1H−NMR(400MHz,DMSO−d6)δ3.87(s,3H),5.03(s,2H),6.36(d,J=2.2Hz,1H),6.60(dd,J=8.5,2.5Hz,1H),6.73(d,J=2.6Hz,1H),7.16(d,J=8.6Hz,2H),7.24(dd,J=9.0,2.6Hz,1H),7.30(d,J=8.6Hz,2H),7.89(d,J=9.0Hz,1H),8.15(d,J=8.6Hz,1H),9.80(s,1H),9.98(s,1H);MS(ESI)m/z370([M−H]-),372([M+H]+);HRMS(ESI+)C2317NO4について算定した計算値372.1230([M+H]+)、実験値372.1226。
【実施例16】
【0075】
3,9−ジヒドロキシ−7−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン(16)
この化合物は、7−ブロモ−3,9−ジヒドロキシ−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン(7)から、方法Mに従って4−トリフルオロメチルフェニルボロン酸を使用して製造した。黄色粉末;収率:95%;融点175−177℃(分解);1H−NMR(400MHz,DMSO−d6)δ5.00(s,2H),6.36(d,J=2.3Hz,1H),6.56(d,J=2.6Hz,1H),6.61(dd,J=8.6,2.2Hz,1H),7.26(dd,J=9.1,2.6Hz,1H),7.64(d,J=7.9Hz,2H),7.92(d,J=9.0Hz,1H),7.98(d,J=8.1Hz,2H),8.16(d,J=8.6Hz,1H),9.84(s,1H),10.00(s,1H);19F−NMR(400MHz,DMSO−d6)δ−61.43(s);MS(ESI)m/z408([M−H]-),410([M+H]+);HRMS(ESI+)C23143NO3について算定した計算値410.0999([M+H]+)、実験値410.0992。
【実施例17】
【0076】
7−(3−クロロフェニル)−3,9−ジヒドロキシ−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン(17)
この化合物は、7−ブロモ−3,9−ジヒドロキシ−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン(7)から、方法Mに従って3−クロロフェニルボロン酸を使用して製造した。橙色粉末;収率:94%;融点162−165℃(分解);1H−NMR(400MHz,DMSO−d6)δ5.01(s,2H),6.36(d,J=2.3Hz,1H),6.60(dd,J=8.5,2.2Hz,1H),6.61(d,J=2.6Hz,1H),7.26(dd,J=9.1,2.6Hz,1H),7.35(m,1H),7.50(d,J=1.0Hz,1H),7.64(dd,J=3.9,1.6,Hz,2H),7.90(d,J=9.1Hz,1H),8.15(d,J=8.8Hz,1H),9.86(s,1H),9.98(s,1H);MS(ESI)m/z374/376([M−H]-),376/378([M+H]+);HRMS(ESI+)C2214CINO3について算定した計算値376.0735([M+H]+)、実験値376.0721。
【実施例18】
【0077】
3,9−ジヒドロキシ−7−(3−メトキシフェニル)−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン(18)
この化合物は、7−ブロモ−3,9−ジヒドロキシ−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン(7)から、方法Mに従って3−メトキシフェニルボロン酸を使用して製造した。黄色粉末;収率:87%;融点155−158℃(分解);1H−NMR(400MHz,DMSO−d6)δ3.82(s,3H),4.99(d,J=14.2Hz,1H),5.04(d,J=14.2Hz,1H),6.35(d,J=2.3Hz,1H),6.60(dd,J=8.6,2.3Hz,1H),6.71(d,J=2.7Hz,1H),6.90(m,1H),6.92(d,J=1.6Hz,1H),7.12(m,1H),7.24(dd,J=9.1,2.7Hz,1H),7.52(dd,J=8.2,7.9Hz,1H),7.89(d,J=9.1Hz,1H),8.15(d,J=8.6Hz,1H),9.80(s,1H),9.96(s,1H);MS(ESI)m/z370([M−H]-),372([M+H]+);HRMS(ESI+)C2317NO4について算定した計算値372.1230([M+H]+)、実験値372.1223。
【実施例19】
【0078】
7−(3−シアノフェニル)−3,9−ジヒドロキシ−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン(19)
この化合物は、7−ブロモ−3,9−ジヒドロキシ−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン(7)から、方法Mに従って3−シアノフェニルボロン酸を使用して製造した。黄色粉末;収率:74%;融点275℃(分解);1H−NMR(400MHz,DMSO−d6)δ4.98(d,J=14.2Hz,1H),5.03(d,J=14.2Hz,1H),6.36(d,J=2.3Hz,1H),6.54(d,J=2.6Hz,1H),6.61(dd,J=8.6,2.3Hz,1H),7.27(dd,J=9.1,2.6Hz,1H),7.74(dt,J=7.8,1.4Hz,1H),7.82(t,J=7.7Hz,1H),7.92(d,J=9.1Hz,1H),7.94(d,J=1.6Hz,1H),8.05(dt,J=7.7,1.4Hz,1H),8.16(d,J=8.6Hz,1H),9.87(s,1H),10.00(s,1H);MS(ESI)m/z365([M−H]-),367([M+H]+);HRMS(ESI+)C231423について算定した計算値367.1066([M+H]+)、実験値367.1083。
【0079】
薬理試験手順
エストロゲン様活性の実証
本発明の代表的な例を、ERα及びERβの両方に関して17β−エストラジオールと競合するそれらの能力に関して評価した。使用した試験手順は、特定化合物がエストロゲン受容体と結合するかどうか(及び、それ故、「エストロゲン様」であるかどうか)及びERα及びERβに対して選択性があるかどうかを判定することを可能にする。代表的化合物例の結果を、IC50として報告され得られた数値と共に、以下の表1に示す。IC50は、総17β−エストラジオール結合を50%低下させる化合物の濃度と定義される。使用した手順を簡単に述べる。ヒトERα及びERβのエストロゲン受容体リガンド結合ドメイン(D、E及びF)を発現する大腸菌の粗溶解産物を作製した。受容体と化合物の両方を、1mM エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を添加した1×ダルベッコリン酸緩衝食塩水(DPBS)に希釈した。高結合マスクマイクロタイタープレートを使用して、受容体100μL(1μG/ウエル)を2nM[3H]−17β−エストラジオール及び様々な濃度の化合物と組み合わせた。室温で5−15時間後、プレートをDPBS/1mM EDTAで洗い、液体シンチレーション計数によって結合放射能を測定した。
【表1】

【0080】
薬理試験手順において得られた結果は、本発明の化合物がエストロゲン様化合物であり、その多くがERβ受容体に対して強い選択的親和性を有することを明らかにする。本発明の化合物は、ERαに比べてERβ受容体に高い選択的親和性を有するものから、両方の受容体に対してほぼ等しい親和性を有するものまでに及ぶ。それ故、本発明の化合物は、少なくとも一部では、それらの受容体親和性の選択性プロフィールに基づく様々な活性範囲にわたる。加えて、各々の新規受容体リガンド複合体はユニークであり、それ故様々な共調節タンパク質との相互作用も独特であるので、本発明の化合物は、それらが存在する細胞環境に依存して異なる調節行動を示す。例えば、一部の細胞型では、化合物はエストロゲンアゴニストとして振る舞うが、他の組織ではアンタゴニストとして行動することが可能である。そのような活性を有する化合物は、時としてSERM(選択的エストロゲン受容体調節剤)と称されてきた。多くのエストロゲンと異なり、しかしながら、SERMの多くは子宮湿重量の上昇を生じさせない。これらの化合物は子宮では抗エストロゲン性であり、子宮組織におけるエストロゲンアゴニストの栄養作用に完全に拮抗し得る。しかしながら、これらの化合物は、骨、心臓血管及び中枢神経系ではエストロゲンアゴニストとして働く。これらの化合物のこの組織選択的性質の故に、それらは、哺乳動物、例えばヒト、例えば女性において、エストロゲン欠損(例えば骨又は心臓血管などのある種の組織における)又はエストロゲンの過剰(例えば子宮又は乳腺における)によって引き起こされる又はそれに関連する疾患状態又は症候群を治療する又は予防する上で有用である。
【0081】
そのような細胞特異的調節を越えて、本発明の化合物はまた、ある受容体型に対してはアゴニストとして行動するが、別の受容体型にはアンタゴニストとして行動する潜在的可能性を有する。例えば化合物が、ERαに対してはアゴニストであるが、ERβに対してはアンタゴニストであり得ることが明らかにされた(Meyers, Marvin J. et al., J. Med. Chem. 42(13): 2456-2468 (1999)参照)。そのようなERSAA(エストロゲン受容体選択的アゴニストアンタゴニスト)作用は、このシリーズの化合物の中で薬理学的に異なるエストロゲン活性を提供する。
【0082】
本発明の代表的化合物の活性プロフィールを測定するために他の薬理試験手順も容易に使用可能である。以下は、いくつかの代表的試験手順を簡単に要約する。SERMについての薬理試験手順はまた、各々その全体が参照してここに組み込まれる、米国特許第4,418,068号及び同第5,998,402号においても記述されている。
【0083】
ラット子宮肥大/抗子宮肥大試験手順
化合物のエストロゲン様及び抗エストロゲン特性は、未成熟ラットの子宮肥大試験(4日間)において測定することができる(L.J. Black and R. L. Goode, Life Sciences 26: 1453 (1980)参照)。未成熟Sprague−Dawleyラット(雌性、18日齢)を6匹ずつの群において試験した。注射用賦形剤としての50%DMSO/50%食塩水と共に、10μg化合物、100μg化合物、100μg化合物+1μg 17β−エストラジオール(抗エストロゲン性を調べるため)、及び1μg 17β−エストラジオールによる連日腹腔内注射によって動物を処置した。4日目に、動物をCO2窒息によって犠牲死させ、子宮を切除して過剰の脂質を取り除き、液体を除去して、湿重量を測定する。1つの子宮角の小さな切片を組織学的検査に供し、残りは補体成分3の遺伝子発現を評価するために全RNAを単離するのに使用した。
【0084】
6週間の卵巣摘出ラット試験手順−骨及び心臓保護
卵巣摘出又は擬似卵巣摘出術を実施した雌性Sprague−Dawley CDラットを、手術の1日後にTaconic(Greenwood,NY)より入手する(240−275g)。動物を12/12(明/暗)スケジュールの部屋に3又は4匹のラット/ケージで収容し、食餌(Purina Mills(登録商標)5K96Cラット飼料)と水は自由に摂取させる。全ての試験に関して、処置は動物の到着の1日後に開始し、毎週7日間6週間にわたって投与する。年齢が適合する、いかなる処置も受けない擬似手術ラットの群を、各々の試験についての無傷エストロゲン充実(replete)対照群として使用する。
【0085】
全ての処置は、処置容量が0.1mL/100g体重になるように、定義された濃度の通常生理食塩水中1%トゥイーン(Tween)80で調製する。17β−エストラジオールをトウモロコシ油(20μg/mL)に溶解し、0.1mL/ラットで皮下送達する。全ての用量は、群平均体重測定に従って3週間の間隔で調整する。
【0086】
処置の開始から5週間後及び試験終了の1週間前に、各々のラットを骨塩密度(BMD)に関して評価する。近位脛骨の全及び小柱密度を、XCT−960M(pQCT( );Stratec Medizintechnik,Pforzheim,Germany)を使用して麻酔ラットにおいて評価する。測定は以下のように実施する:走査の15分前に、各々のラットを45mg/kgケタミン、8.5mg/kgキシラジン及び1.5mg/kgアセプロマジンの腹腔内注射で麻酔する。
【0087】
右後脚を直径25mmのポリカーボネートチューブに通し、90°の角度の足根関節及び180°の膝関節と共にアクリルフレームにテープで貼る。ポリカーボネートチューブを、pQCTの開口部に対してそれを垂直に維持する、スライドプラットフォームに貼付する。大腿骨の遠位端及び脛骨の近位端が走査野にはいるようにプラットフォームを調整する。二次元調査観測を長さ10mmにわたって0.2mmの直線分解能で実施する。調査観測がモニターに表示された後、脛骨の近位端を位置づける。この点から3.4mmの距離でpQCTスキャンを開始する。pQCTスキャンは1mmの厚さで、0.140mmのボクセル(三次元でのピクセル)サイズを有し、切片を通る145投影(projection through the slice)から成る。
【0088】
pQCTスキャンが完了した後、画像をモニターに表示する。脛骨を含むが腓骨を除外した対象領域が鳥瞰される。軟組織は反復アルゴリズムを用いて自動的に除去される。残りの骨の密度(全密度)をmg/cm3で報告する。骨の外側55%を同心円らせん状にはぐ。残りの骨の密度(小柱密度)をmg/cm3で報告する。BMD評価の1週間後に、ラットを二酸化炭素窒息によって安楽死させ、コレステロール測定のために血液を採集する。子宮を切除し、重量を計測する。Cholesterol/HPキットを使用してBoehringer−Mannheim Hitachi 911臨床分析器で全コレステロールを測定する。統計は、ダネット検定による一方向分散分析(ANOVA)を用いて比較した。
【0089】
MCF−7/ERE抗増殖試験手順
試験化合物(通常0.1M)の保存溶液をDMSO中で調製し、その後DMSOで10−100倍希釈して、1又は10mMの作業溶液を作製する。DMSO保存溶液を4℃(0.1M)又は−20℃(<0.1M)のいずれかで保存する。MCF−7細胞を週に2回増殖培地[10%(v/v)熱不活化ウシ胎仔血清、1%(v/v)ペニシリン−ストレプトマイシン及び2mM glutaMax−1を含むD−MEM/F−12培地]で継代する。細胞を、5%CO2/95%加湿空気インキュベータの内部で37℃の通気フラスコに保持する。処置の1日前に、細胞を96穴プレートに25,000/穴で増殖培地にプレートし、37℃で一晩インキュベートする。
【0090】
細胞を、実験培地[10%(v/v)熱不活化チャコール処理ウシ胎仔血清、1%(v/v)ペニシリン−ストレプトマイシン、2mM glutaMax−1、1mMピルビン酸ナトリウムを含むD−MEM/F−12培地]中の1:10希釈のアデノウイルス5−ERE−tk−ルシフェラーゼ50μl/穴に37℃で2時間感染させる。次にウエルを実験培地150μlで1回洗う。最後に、細胞を、150μl/穴の賦形剤(≦0.1%v/vDMSO)又は実験培地に≧1000倍希釈した化合物により、8穴/処理の同型培養で、37℃で24時間処理する。
【0091】
単独で(アゴニストモード)又は0.1nM 17β−エストラジオール(EC80;アンタゴニストモード)と組み合わせて試験する、試験化合物の初期スクリーニングを、1μMの単回用量で実施する。各々の96穴プレートはまた、賦形剤対照群(0.1%v/vDMSO)及びアゴニスト対照群(0.1又は1nM 17β−エストラジオール)を含む。用量反応実験を、10-14から10-5Mまでの対数上昇の活性化合物に関してアゴニスト及び/又はアンタゴニストモードで実施する。これらの用量反応曲線から、EC50及びIC50値をそれぞれ作製する。各々の処置群の最後のウエルは、ERアンタゴニスト対照として3×10-5M ICI−182,780(10-6M最終濃度)5μlを含む。
【0092】
処置後、25μl/穴の1×細胞培養溶解試薬(Promega Corporation)と共に振とう機で15分間細胞を溶解する。細胞溶解産物(20μl)を96穴ルミノメータープレートに移し、100μl/穴のルシフェラーゼ基質(Promega Corporation)を使用してMicroLumat LB 96 Pルミノメーター(EG & G Berthold)でルシフェラーゼ活性を測定する。基質を注入する前に、各々のウエルについて1秒間のバックグラウンド測定を行う。基質の注入後、1秒間の遅延時間後、ルシフェラーゼ活性を10秒間測定する。データをルミノメーターからMacintoshパソコンに移し、JMPソフトウエア(SAS Institute)を用いて解析する;このプログラムは、各ウエルについてのルシフェラーゼ測定からバックグラウンド読取り値を差し引き、各々の処置に関する平均値と標準偏差を決定する。
【0093】
ルシフェラーゼデータを対数によって変換し、フーバーのM推定量を使用して範囲外の変換所見値の加重を低下させる(down-weight)。JMPソフトウエアを使用して、変換した加重データを一方向ANOVA(ダネット検定)に関して解析する。化合物の処置を、アゴニストモードでの賦形剤対照結果又はアンタゴニストモードでの陽性アゴニスト対照結果(0.1nM 17β−エストラジオール)と比較する。初期単回投与実験に関しては、化合物処置が適切な対照と有意に異なる(p<0.05)場合は、結果を17β−エストラジオール対照に対するパーセントとして報告する[すなわち((化合物−賦形剤対照)/(17β−エストラジオール対照−賦形剤対照)×100)。JMPソフトウエアはまた、非線形用量反応曲線からEC50及び/又はIC50値を決定するためにも使用する。
【0094】
LDL酸化の阻害−抗酸化作用
ブタ大動脈を食肉処理場から入手し、洗浄して、深冷リン酸緩衝食塩水(PBS)中で運搬し、大動脈内皮細胞を採集する。細胞を採集するために、大動脈の肋間脈管を結紮し、大動脈の一方の端をクランプで締める。新鮮な無菌ろ過した0.2%コラゲナーゼ(Sigma I型)を脈管に入れ、脈管の他方の端をクランプで挟んで閉じた系を形成する。大動脈を37℃で15−20分間インキュベートし、その後コラゲナーゼ溶液を収集して、2000×gで5分間遠心分離する。各々のペレットを、チャコール処理ウシ胎仔血清(FBS;5%)、NuSerum(登録商標)、L−グルタミン(4mM)、ペニシリン−ストレプトマイシン(1000U/ml、100μg/ml)及びゲンタマイシン(75μg/ml)を添加したフェノールレッド不含DMEM/ハム(Ham's)のF12培地から成る内皮細胞培養培地7mLに懸濁し、100mmペトリ皿に接種して、5%CO2中37℃でインキュベートする。20分後、細胞をPBSで洗浄し、新鮮培地を添加して、24時間目にもう一度新鮮培地を添加する。約1週間後に細胞は集密になる。内皮細胞に、2週間に1回定期的に給餌し、集密になったとき、トリプシン処理して、1:7比で接種する。12.5μg/mL LDLの細胞を介した酸化を、評価する化合物(5μM)の存在下に37℃で4時間進行させる。結果は、遊離アルデヒドの分析のためのTBARS(チオバルビツール酸反応性物質)法(Yagi K., Biochem Med 15:212-216 (1976))によって測定した酸化工程の阻害パーセントとして表わす。
【0095】
D12視床下部細胞試験手順
D12ラット視床下部細胞をRCF17親細胞系からサブクローニングし、凍結保存する。それらをDMEM:F12(1:1)、glutaMAX−1(2mM)、ペニシリン(100U/ml)−ストレプトマイシン(100mg/ml)、プラス10%FBS中で常套的に増殖させる。細胞を、2−10%チャコール処理FBSを含むフェノールレッド不含培地(DMEM:F12、glutaMAX、ペニシリン−ストレプトマイシン)に集密以下の密度で(1−4×106細胞/150mm皿)プレートする。24時間後に、2%チャコール処理血清を含む培地を細胞に供給する。アゴニスト活性を試験するために、細胞を10nM 17β−エストラジオール又は様々な用量の試験化合物(1mM又は1pM−1mMの範囲)で処理する。アンタゴニスト活性に関して試験するために、様々な用量(100pM−1mM)の試験化合物の不在下又は存在下で、細胞を0.1nM 17β−エストラジオールで処理する。対照皿も、陰性対照としてDMSOで処理する。ホルモン添加の48時間後に、細胞を溶解し、結合試験手順を実施する。
【0096】
各々の結合試験手順のために、タンパク質100−150mgを150mL容量中の10nM 3H−R5020+100倍過剰のR5020と共にインキュベートする。3セットの反応物(R5020を含むものを3、R5020を含まないもの3)を96穴プレートにおいて調製する。タンパク質抽出物を最初に添加し、次に3H−R5020又は3H−R5020+100×非標識R5020を添加する。反応を室温で1−2時間実施する。TE、pH7.4中の低温5%チャコール(Norit SX−4)、0.5%デキストラン69K(Pharmacia)100mLの添加によって反応を停止させる。室温で5分後、結合リガンドと非結合リガンドを遠心分離(5分間、1000RCF、4℃)によって分離する。上清溶液(〜150ml)を取り、シンチレーションバイアルに移す。シンチレーション液(Beckman Ready Protein+)の添加後、試料をシンチレーションカウンターで1分間計数する。
【0097】
CNS視索前野におけるプロゲステロン受容体
60日齢の雌性Sprague−Dawleyラットに卵巣摘出術を実施する。動物を、12時間明、12時間暗の照明時間で動物飼育施設に収容し、水道水とげっ歯動物試料を自由に摂取させる。
【0098】
卵巣摘出した動物を、賦形剤(50%DMSO、40%PBS、10%エタノール賦形剤)、17β−エストラジオール(200ng/kg)又は試験化合物を注射する群に無作為に分ける。この化合物のアンタゴニスト特性を評価するため、付加的な動物に、17β−エストラジオールの注射の1時間前に試験化合物を注射する。皮下注射の6時間後に、動物を致死量のCO2で安楽死させ、それらの脳を収集して、凍結する。
【0099】
動物から収集した組織を−16℃の低温保持装置上で切断し、シラン被覆した顕微鏡スライドガラスに収集する。次に切片を封入したスライドガラスを、42℃に保持したスライド加温機で乾燥し、−80℃の乾燥スライド箱で保存する。処理の前に、スライド上での凝縮形成を排除し、それにより組織及びRNAの分解を最小限に抑えるために、乾燥スライド箱を室温まで緩やかに温める(−20℃、12−16時間;4℃、2時間;室温、1時間)。乾燥スライドガラスを金属ラックに負荷し、4%パラホルムアルデヒド(pH9.0)において5分間後固定して、先に述べたように処理する。
【0100】
ラットPR cDNA9の815bpフラグメント(リガンド結合ドメイン)を含むプラスミドを線状にし、ラットPR mRNAの一部に相補的なS 35−UTP標識プローブを作製するために使用する。処理した切片封入スライドガラスを、リボプローブ(4−6×106DPM/スライド)及び50%ホルムアルデヒドを含むハイブリダイゼーション混合物200mLとハイブリダイズし、55℃の加湿チェンバーで一晩インキュベートする。午前中に、スライドガラスを金属ラックに置き、それを2×SSC(0.15M NaCl、0.015Mクエン酸ナトリウム;pH7.0)/10mM DTTに液浸する。ラックを全て大きな容器に移し、静かに攪拌しながら室温で15分間、2×SSC/10mM DTT中で洗浄する。次にスライドガラスを37℃で30分間、RNアーゼ緩衝液中で洗浄し、37℃で30分間、RNアーゼA(2mg/ml)で処理して、室温の1×SSC中で15分間洗浄する。その後、非特異的標識を除去するためにスライドガラスを0.1×SSC中65℃で洗浄し(2×30分間)、室温の0.1×SSC中で15分間すすいで、段階的な一連のアルコール:酢酸アンモニウム(70%、95%及び100%)で脱水する。空気乾燥したスライドガラスを3日間X線フィルムに露出し、その後写真処理する。アッセイ間の条件の変動による相違を排除するために、全ての動物からのスライドガラスを一緒にハイブリダイズし、洗浄して、露出し、写真処理する。
【0101】
ラットの潮紅−CNS作用
卵巣摘出した雌性の60日齢のSprague−Dawleyラットを手術後に入手する。手術は最初の処置の少なくとも8日目に実施する。動物を12/12時間の明/暗周期の下で個別に収容し、標準ラット試料と水を自由に摂取させる。
【0102】
それぞれの試験に2つの対照群を含める。用量は、ゴマ油中の10%DMSO(皮下試験)又は食塩水中の1.0%トゥイーン80((経口)試験)のいずれかにおいてmg/kg平均群体重に基づいて調製する。動物に0.01−10mg/kg平均群体重の範囲の用量で試験化合物を投与する。賦形剤及びエチニルエストラジオール(EE)(0.1mg/kg、皮下又は0.3mg/kg、経口)対照群を各々の試験に含める。化合物をそれらのアンタゴニスト活性に関して試験するときは、EEを、皮下又は経口試験に関してそれぞれ0.1又は0.3mg/kgで同時投与する。試験化合物は、尾の皮膚温度を測定する日まで投与する。
【0103】
4日間の順化期間後、動物を対象化合物で1日1回処置する。処置群当り10匹の動物とする。化合物の投与は、首の項部における0.1mlの皮下注射によって又は0.5mlの容量で経口的に実施する。処置の3日目に、モルヒネペレット(硫酸モルフィン75mg)を皮下に移植する。処置の5日目に、1又は2個の追加のモルヒネペレットを移植する。8日目に、動物の約半数にケタミン(80mg/kg、筋肉内)を注射し、MacLab Data Acquisition System(API Instruments,Milford,MA)に接続した熱電対を尾の根元から約1インチの尾上にテープで止める。このシステムは尾の皮膚温度の連続測定を可能にする。基線温度を15分間測定し、次にモルヒネの作用をブロックするためにナロキソン(1.0mg/kg)を皮下投与して(0.2mL)、その後1時間、尾の皮膚温度を測定する。9日目に、残りの動物を同様に設定して、分析する。
【0104】
単離したラット大動脈輪における血管運動神経機能
Sprague−Dawleyラット(240−260g)を4つの群に分ける:
1.正常非卵巣摘出(無傷)
2.卵巣摘出(ovx)賦形剤処置
3.卵巣摘出17β−エストラジオール処置(1mg/kg/日)
4.試験化合物(すなわち1mg/kg/日)で処置した卵巣摘出動物。
【0105】
動物を処置の約3週間前に卵巣摘出する。各々の動物に、1%トゥイーン80を含む蒸留脱イオン水に懸濁した17β−エストラジオール硫酸塩又は試験化合物のいずれか1mg/kg/日を胃瘻栄養によって投与する。賦形剤処置動物には、薬剤処置群で使用する賦形剤の適切な容量を投与する。
【0106】
動物をCO2吸入と瀉血によって安楽死させる。それらの胸大動脈を迅速に切除し、以下の組成物(mM)を含む37℃の生理的溶液に入れる:最終pH7.4となるようにCO2−O2、95%/5%を供給したNaCl(54.7)、KCl(5.0)、NaHCO3(25.0)、MgCl2−2H2O(2.5)、D−グルコース(11.8)及びCaCl2(0.2)。外膜を外側表面から切除し、血管を2−3mm幅の輪に切断する。輪を、一方の末端を浴の底部に接着し、他方の末端を力変換器に接続して、10mL組織浴に懸濁する。輪に1グラムの静止張力をかける。シグナルを獲得し、分析しながら、輪を1時間平衡させる。
【0107】
平衡後、輪を漸増濃度のフェニレフリン(10-8−10-4M)に暴露し、張力を記録する。次に浴を新鮮緩衝液で3回洗浄する。洗い流し後、200mM L−NAMEを阻止局に添加し、30分間平衡させる。その後フェニレフリン濃度反応曲線を反復する。
【0108】
8アームの放射状アーム迷路−認知機能増強
到着時に体重200−250gの雄性Sprague−Dawley CDラット(Charles River,Kingston,NY)を使用する。1週間、ラットをケージ当り6匹ずつ収容し、標準実験動物試料と水を自由に摂取させる。収容施設は、午前6時から照明する12/12時間の明/暗周期で22℃に保持したコロニー室である。施設への順化後、動物を個別に収容し、自由摂取体重の85%に維持する。ひとたび安定な体重が達成されれば、ラットを8アームの放射状迷路に順化させる。
【0109】
迷路の構造は、Peele and Baron [Pharmacology, Biochemistry, and Behavior 29:143-150 (1988))からの応用である。迷路は、75.5cmの高さまで上昇しており、互いに等距離にある、中心から放射状に広がる8本のアームによって取り囲まれた円形部分から成る。各々のアームは長さ58cm×高さ13cmである。各々のセッションの開始前には、動物を迷路の中心部分に閉じ込めるための透明なプレキシガラス円柱が下りている。迷路の各々のアームは、データ獲得ユニットに接続された3組の光電池を備え、データ獲得ユニットはコンピュータに接続されている。光電池を使用して迷路内でのラットの動きを探知する。各々のアームの先端の試料カップの上に位置するペレット供給装置は、アームの外側の光電池が所与のセッションで最初に作動されたときに2個の45mgのチョコレートペレットを配給する。迷路は、視覚的合図の役割をする、各々の壁面に黒白の幾何学的ポスターが貼付された試験室に位置する。全ての訓練及び試験手順の間は、白色雑音が聞こえる(〜70db)。
【0110】
訓練手順は5段階から成り、各々の段階は5又は10分間続く毎日のセッションを含む。ラットを迷路の中心部分に入れる時点とセッションを開始するために円柱を挙げるときまでに10秒間の遅延時間を置く。第I段階の間は、45mgチョコレート飼料ペレットを迷路の8本のアーム全体に撒き散らして、食餌制限されたラットの対を10分間迷路上に置く。第II段階では、ペレットを中心の光電池から各々のアームの飼料カップまで撒き散らして、各々のラットを個別に10分間迷路上に置く。第III段階の間は、飼料ペレットを各々のアームの飼料カップの中とその周囲にだけ置いて、各々のラットを10分間迷路上に置く。第IV段階では、各々のラットを放置して各々のアームから2個のペレットを集めさせる。1本のアームに再び入ることはエラーとみなす。ラットが、3日間連続の訓練で合計2回又はそれ以下のエラーという判定基準成績を達成するまで、毎日このように訓練する。順化と訓練の合計期間は約3週間である。
【0111】
試験化合物をリン酸緩衝食塩水中で調製し、1mg/kgの容量で投与する。臭化水素酸スコポラミン(0.3mg/kg皮下)を、エラー率の上昇(記憶障害)を生じさせる損傷剤として使用する。試験化合物は、所与の試験日に最初に迷路に接触する30分前に、スコポラミンと同時に腹腔内投与する。
【0112】
試験化合物を評価するにあたって、最小数の動物で高い実験効率を達成するために、反復測定のための8×8釣り合い型ラテン方格法を設計する。週に2回ずつ、8回の実験セッションを、各々のセッション内で無作為化した8つの処置(賦形剤、スコポラミン、スコポラミンと組み合わせた3つの用量の試験化合物)に関して実施する。各々の処置に続いて他の処置を同じ回数実施する。それ故、それぞれの処置の残留効果を評価することができ、直接処置効果から離れることができる。ANOVAに従って、調整した平均値に関してダネットの両側検定を用いて多重比較を実施する。
【0113】
最初の接触時に5分以内に4回正しい選択をしない動物、又は2回目の接触の終了までに合計8回の選択をしなかった動物は、そのセッションに関して「時間切れ(timed-out)」とみなす。試験化合物の2つ以上の用量の投与後に「時間切れ」となった動物は、分析から除外する。
【0114】
神経保護
一次皮質ニューロン培養物における時間依存性細胞死の阻害
一次皮質ニューロンを、Monyer et al., Brain Research 483:347- 354 (1989)が述べた方法の変法を用いて0−1日齢のラット脳から作製した。分散させた脳組織をDMEM/10%PDHS(妊娠ドナーウマ血清)中で3日間増殖させ、その後、夾雑グリア細胞を除去するためにシトシンアラビノシド(ARC)で2日間処理した。5日目に、ARC培地を除去し、DMEM/10%PDHSと交換した。神経細胞を使用前にさらに4−7日間培養した。
【0115】
対照一次神経培養物は、培養の12日目から18日目までに漸進的な細胞死を示す。9日目にDMEM及び10%PDHS中に保持した6つの培養物に試験化合物を添加し、残りの培養物を対照として保持した後、12の培養物を12日目と16日目に乳酸デヒドロゲナーゼ(LD)酵素のレベルに関して評価した。Wroblewski et al., Proc. Soc. Exp. Biol. Med. 90:210-213 (1955)による方法の変法を用いてLDを検定した。LDは、組織生存率を測定するために臨床及び基本研究の両方において一般的に使用されるサイトゾル酵素である。培地LDの上昇は細胞死に直接関連する。
【0116】
低血糖によって誘導される細胞傷害に対する神経保護
米国菌株保存機関(ATCC)から入手したC6神経膠腫細胞を、FALCON(登録商標)25cm2組織培養フラスコ中1×106細胞/mLの濃度で、FBSを添加したRPMI培地にプレートした。低血糖の発症の4時間前に、維持培地を廃棄し、単層を適切な培地中で2回洗い、その後無血清中又は無血清+試験化合物中、37℃で4時間インキュベートした。クレブス‐リンガーリン酸緩衝液を使用して単層を2回洗った後、適切なグルコース添加処理を実施した。RPMI培地は2mgグルコース/mLを含む;フラスコを6つの群に分け、各々100%グルコース(2mg/ml)、80%グルコース(1.6mg/ml)、60%グルコース(1.2mg/ml)又は0%グルコース(緩衝液)を添加するか、又は試験化合物を添加した。全てのフラスコを20時間培養し、その後トリパンブルーを使用して総細胞数、生細胞数及び死細胞数を評価した。
【0117】
興奮毒性アミノ酸に対する神経保護
SK−N−SH神経芽細胞腫を含む5つの培養皿を試験化合物で処理し、5つの培養皿をRPMI培地で処理した。4時間後、全ての細胞をNMDA(500μM)で5分間処理した。その後、総生細胞及び死細胞を測定した。
【0118】
酸素−グルコース欠乏に対する神経保護−アポトーシスを測定するための凝縮核の分析
E18ラット胎仔から皮質ニューロンを作製し、ポリ−D−リシン(10ng/ml)及び血清で前被覆した8穴チェンバースライドに100,000細胞/穴の密度でプレートする。10%FCSを含む高グルコースDMEMに細胞をプレートし、37℃、10%CO2/90%空気のインキュベータ内に保持する。翌日、培地を、B27添加物を含む高グルコースDMEMと交換することによって血清を除去し、実験の当日までさらなる培地交換を行わずに細胞をインキュベータ内に保持する。6日目に、スライドを対照群とOGD群の2群に分ける。対照群の細胞には、グルコースと特別誂えのB27(抗酸化剤を含まない)を添加したDMEMを与える。OGD群の細胞には、真空下で15分間脱ガスした、特別誂えB27を添加した無グルコースDMEMを与える。細胞を気密チェンバーにおいて10分間90%N2/10%CO2で洗い、37℃で6時間インキュベートする。6時間後、対照とOGD細胞の両方を、特別誂えB27を添加したグルコース含有DMEM中に賦形剤(DMSO)又は試験化合物のいずれかを含む培地との交換に供する。細胞を37℃の酸素正常状態のインキュベータに戻す。24時間後、細胞を4℃で4%PFA中に10分間固定し、Topro(蛍光核結合染料)で染色する。レーザー走査サイトメーターを用いて凝縮核を測定することによってアポトーシスを評価する。
【0119】
細胞死の指標としてのLDH放出の測定
E18ラット胎仔から皮質ニューロンを作製し、ポリ−D−リシン(10ng/ml)及び血清で前被覆した48穴培養プレートに150,000細胞/穴の密度でプレートする。10%FCSを含む高グルコースDMEMに細胞をプレートし、37℃、10%CO2/90%空気のインキュベータ内に保持する。翌日、培地を、B27添加物を含む高グルコースDMEMと交換することによって血清を除去する。6日目に、細胞を対照群とOGD群の2群に分ける。対照群の細胞には、グルコースと特別誂えのB27(抗酸化剤を含まない)を添加したDMEMを与える。OGD群の細胞には、真空下で15分間脱ガスした、特別誂えB27を添加した無グルコースDMEMを与える。細胞を気密チェンバーにおいて10分間90%N2/10%CO2で洗い、37℃で6時間インキュベートする。6時間後、対照とOGD細胞の両方を、特別誂えB27を添加したグルコース含有DMEM中に賦形剤(DMSO)又は試験化合物のいずれかを含む培地との交換に供する。細胞を37℃の酸素正常状態のインキュベータに戻す。24時間後、培地へのLDH(乳酸デヒドロゲナーゼ)の細胞放出を測定することによって細胞死を評価する。LDHアッセイのために、培地50μlのアリコートを96穴プレートに移す。0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)140μl及び0.2mg/ml NADH 100μlの添加後、プレートを室温で20分間暗所に放置する。ピルビン酸ナトリウム10μlを添加して反応を開始させる。プレートを直ちにThermomaxプレートリーダー(Molecular Devices)において340nMで読み取る。NADH濃度の指標である吸光度を6秒ごとに5分間記録し、NADH消失の速度を示す勾配を使用してLDH活性を算定する:
LDH活性(U/ml)=(ΔA/分)(TCF)(20)(0.0833)/(.78)
[式中、
0.0833=比例定数及び
0.78=装置の光路長(cm)]。
【0120】
HLAラット試験手順−クローン病及び炎症性腸疾患
雄性HLA−B27ラットをTaconicより入手し、飼料(Purina Mills(登録商標)LabDiet(登録商標)5001)と水を自由に摂取させる。試験の開始時に、ラットは22−26週齢である。
【0121】
ラットに、以下に列記する製剤の1つを1日1回7日間にわたって皮下投与する。各々の群に5匹のラットとし、最後の用量を投与した2時間後に安楽死させる。
・賦形剤(50%DMSO/50%ダルベッコのPBS);
・17α−エチニル−17β−エストラジオール(10μg/kg);又は
・試験化合物。
【0122】
糞便の質を毎日観察し、以下の尺度に従って等級付ける:下痢=3;軟便=2;正常便=1。試験手順の終了時に、血清を採集し、−70℃で保存する。組織学的分析のために結腸の切片を調製し、付加的な分節をミエロペルオキシダーゼ活性に関して分析する。
【0123】
ミエロペルオキシダーゼ活性を測定するために以下の方法を使用する。結腸組織を採集し、液体窒素中で瞬間凍結する。試料間の一貫性を確保するために結腸全体の代表試料を使用する。組織を使用時まで−80℃で保存する。次に、組織を計量し(約500mg)、1:15 w/vの5mM H2KPO4(pH6)洗浄緩衝液中で均質化する。組織をSorvall RC 5B遠心分離機において2−8℃で45分間、20,000×gで遠心する。その後上清を廃棄する。細胞内MPOを可溶化するのを助けるために、10mM EDTA及び0.5%Hex臭化アンモニウムを添加した(1:5 w/v)50mM H2KPO4 2.5mL中に組織を再懸濁し、均質化する。液体窒素中で組織を凍結し、37℃の水浴で解凍して、膜溶解を確実にするために15秒間超音波処理する。この手順を3回反復する。その後試料を20分間氷上に保持し、2−8℃で15分間、12,000×gで遠心分離する。上清をこれらの工程に従って分析する。
【0124】
0.0005%H22及び0.167 O−ジアニシジン/mlと共に50mM H2KPO4 2.9mLを反応チューブに添加することによって試験混合物を調製する。過酸化水素が分解するとき、O−ジアニシジンが酸化され、460nmで濃度依存的に吸光する。混合物を25℃に加熱する。組織上清100μLを反応チューブに添加し、25℃で1分間インキュベートして、その後1mlを使い捨てプラスチックキュベットに移す。光学密度(OD)を、反応混合物2.9mL及び0.5%臭化アンモニウム溶液100μLを含むブランクに対して460nmで反応時間2分ごとに測定する。
【0125】
460nmでの吸光度を、精製ヒトMPO 31.1単位/バイアルに関して作成した標準曲線と比較して酵素活性単位を定量する。MPOを再溶解し、10mM EDTA及び0.5%Hex臭化アンモニウムと50mM H2KPO4を使用して4つの既知濃度に連続希釈する。活性を決定するために試料の吸光度をこの曲線と比較する。
【0126】
組織学的分析を以下のように実施する。結腸組織を10%中性緩衝ホルマリンに液浸する。結腸の各々の標本を評価のために4つの試料に分ける。ホルマリン固定組織を、パラフィン包埋するために真空浸透プロセッサー(vacuum infiltration processor)で処理する。試料を5μmの切片にし、Boughton−Smithに従って修正したスケールを用いる盲検化組織学的評価のためにヘマトキシリンとエオシン(H&E)で染色する。評点が完了した後、試料を非盲検化し、データを表にして、多重平均比較を伴うANOVA線形モデリングによって解析する。
【0127】
ここで述べるような、標準薬理試験手順で得られた結果に基づき、本発明の化合物は、少なくとも部分的にはエストロゲンの欠損又は過剰によって媒介される、又はエストロゲン様物質の使用を通して治療又は抑制され得る状態、障害又は疾患状態の治療又は抑制において有用なエストロゲン受容体調節剤である。
【0128】
本特許出願書類において言及する、特許、特許出願、及び書籍を含む印刷刊行物の各々は、それらの全体が参照してここに組み込まれることが意図されている。本出願は、その全体が参照してここに組み込まれる、2004年9月7日出願の米国特許仮出願第60/607,766号の優先権を主張する。
【0129】
当業者に認識されるように、本発明の精神から逸脱することなく本発明の好ましい実施形態に数多くの変更及び修正を施し得る。そのような変更は本発明の範囲内に含まれることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造:
【化1】

[式中、
A及びA’は、各々独立してOH、H又はORであり;
各々のRは、C1−C6アルキル、アルケニル、ベンジル、アシル、アロイル、−C(=O)−OR’、スルホニル及びホスホリルから成る群より独立して選択され、前記式中、各々のR’は、各々が場合によりC1−C6アルキル又はハロゲンから選択される1−3個の置換基によって置換されている、C1−C6アルキル、C2−C7アルケニル、C2−C7アルキニル又はC3−C10シクロアルキルから独立して選択され;
1及びR2は、H、ハロゲン、C1−C6アルキル、C1−C6ペルハロアルキル、CF3、C2−C7アルケニル及びC1−C6アルコキシから成る群より独立して選択され;
3、R4、R5及びR6は、H、ハロゲン、CF3、C1−C6ペルハロアルキル、C1−C6アルキル、C2−C7アルケニル、C2−C7アルキニル、C3−C7シクロアルキル、C1−C6アルコキシ、−CN、−CHO、アシル、フェニル、アリール及びヘテロアリールから成る群より各々独立して選択され;
3、R4、R5及びR6のアルキル又はアルケニル部分は、各々、場合によりハロゲン、OH、CN、トリフルオロアルキル、トリフルオロアルコキシ、NO2又はフェニルから独立して選択される3個までの置換基で置換されていてもよく、前記フェニルは、場合により独立して選択される3個までのR10基で置換されており;
3、R4、R5及びR6のアルキニル部分は、各々、場合によりハロゲン、−CN、−CHO、アシル、トリフルオロアルキル、トリアルキルシリル又はフェニルから選択される3個までの置換基で置換されていてもよく、前記フェニルは、場合により独立して選択される3個までのR10基で置換されており;
3、R4、R5及びR6のフェニル、アリール又はヘテロアリール部分は、各々、場合によりハロゲン、−CN、アルキル、アルコキシ、ペルフルオロアルキル又はペルフルオロアルコキシから選択される3個までの置換基で置換されていてもよく;
各々のR10は、ハロゲン、C1−C6アルキル、C2−C7アルケニル、−OH、C1−C6アルコキシ、−CN、−CHO、−NO2、アミノ、C1−C6アルキルアミノ、ジ−(C1−C6)アルキルアミノ、チオール及びC1−C6アルキルチオから成る群より独立して選択され;及び
nは、0、1、2又は3であり;
但し、
A及びA’の少なくとも1つはHではなく;
nが0である場合、R3はハロゲンではなく;及び
3、R4及びR5の少なくとも1つは、ハロゲン、C1−C6アルキル、C2−C7アルケニル、C2−C7アルキニル、C3−C7シクロアルキル、C1−C6アルコキシ、−CN、−CHO、アシル、フェニル、アリール又はヘテロアリールである]
を有する式Iの化合物、又はそのN−オキシド又は製薬上許容されるその塩又はそのプロドラッグ。
【請求項2】
A及びA’が各々OHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
A及びA’の一方がOHであり、A及びA’の他方がORである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
A及びA’の一方がOHであり、A及びA’の他方がO−C1−C6アルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
A及びA’が各々ORである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
A及びA’が各々−O−C1−C6アルキルである、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
A及びA’の一方がHであり、A及びA’の他方がOH又はORである、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
A及びA’の一方がHであり、A及びA’の他方がOH又はO−C1−C6アルキルであり、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
3及びR5が、各々独立して、H、ハロゲン、C1−C6アルキル、C2−C7アルケニル、C2−C7アルキニル、−CN、−CHO、アシル又は先に定義したように、場合により置換されたフェニルである、請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
3がH以外である、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
3が、ハロゲン、C1−C6アルキル、C2−C7アルケニル、C2−C7アルキニル、−CN、−CHO、又は場合によりハロゲン、C1−C6アルコキシ、ペルフルオロアルキル及びCNから選択される3個までの基で置換されたフェニルであり;及びR5が、H、ハロゲン、C1−C6アルキル、C2−C7アルケニル、C2−C7アルキニル、−CN、−CHO、又は場合によりハロゲン、C1−C6アルコキシ、ペルフルオロアルキル及びCNから選択される3個までの基で置換されたフェニルである、請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
前記R3の前記フェニルが、場合によりF、Cl、Br、CN、OCH3及びCF3から選択される3個までの置換基で置換されている、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
3が、ハロゲン、C2−C7アルキニル又は−CNである、請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
3及びR5が、各々独立してハロゲン、C2−C7アルキニル又は−CNである、請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
1及びR2の1つがハロゲンである、請求項1から14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
1及びR2の1つがフッ素である、請求項1から14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
1及びR2の一方がハロゲンであり、R1及びR2の他方がHである、請求項1から14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項18】
1及びR2の一方がフッ素であり、R1及びR2の他方がHである、請求項1から14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項19】
1及びR2が各々独立してハロゲンである、請求項1から14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項20】
1及びR2が各々Hである、請求項1から14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項21】
1及びR2が各々フッ素である、請求項1から14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項22】
4が、H、ハロゲン又は−CNである、請求項1から21のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項23】
4がHである、請求項1から21のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項24】
3が、ハロゲン、C1−C6アルキル、C2−C7アルケニル、C2−C7アルキニル、−CN、−CHO、又は場合によりハロゲン、C1−C6アルコキシ、ペルフルオロアルキル及びCNから選択される3個までの基で置換されたフェニルであり;
5が、H、ハロゲン、C1−C6アルキル、C2−C7アルケニル、C2−C7アルキニル、−CN、−CHO、又は場合によりハロゲン、C1−C6アルコキシ、ペルフルオロアルキル及びCNから選択される3個までの基で置換されたフェニルであり;
1及びR2の1つがハロゲンであり;及びR4がH、ハロゲン又は−CNである、
請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項25】
3がハロゲンであり、及びR1、R2、R4、R5及びR6が水素である、請求項2に記載の化合物。
【請求項26】
3がOHであり、及びR1、R2、R4、R5及びR6が水素である、請求項2に記載の化合物。
【請求項27】
3がC2−C7アルケニルであり、及びR1、R2、R4、R5及びR6が水素である、請求項2に記載の化合物。
【請求項28】
3がCNであり、及びR1、R2、R4、R5及びR6が水素である、請求項2に記載の化合物。
【請求項29】
3がC2−C7アルキニルであり、及びR1、R2、R4、R5及びR6が水素である、請求項2に記載の化合物。
【請求項30】
3がC1−C6アルキルであり、及びR1、R2、R4、R5及びR6が水素である、請求項6に記載の化合物。
【請求項31】
3が場合により置換されたフェニルであり、及びR1、R2、R4、R5及びR6が水素である、請求項6に記載の化合物。
【請求項32】
前記フェニルの前記置換基が、ハロゲン、C1−C6アルコキシ、ペルフルオロアルキル及びCNから成る群より選択される、請求項31に記載の化合物。
【請求項33】
nが1である、請求項1から23又は25から32のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項34】
nが1である、請求項24に記載の化合物。
【請求項35】
a)3,9−ジメトキシ−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン−7−オール;
b)7−クロロ−3,9−ジメトキシ−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン;
c)7−ブロモ−3,9−ジメトキシ−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン;
d)7−クロロ−3,9−ジヒドロキシ−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン;
e)7−ブロモ−3,9−ジヒドロキシ−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン;
f)3,9−ジヒドロキシ−7−ビニル−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン;
g)3,9−ジヒドロキシ−7−[(トリメチルシリル)エチニル]−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン;
h)3,9−ジヒドロキシ−7−エチニル−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン;
i)3,9−ジヒドロキシ−7−エチル−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン;
j)7−シアノ−3,9−ジヒドロキシ−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン;
k)7−(4−クロロフェニル)−3,9−ジヒドロキシ−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン;
l)7−(4−シアノフェニル)−3,9−ジヒドロキシ−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン;
m)3,9−ジヒドロキシ−7−(4−メトキシフェニル)−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン;
n)3,9−ジヒドロキシ−7−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン;
o)7−(3−クロロフェニル)−3,9−ジヒドロキシ−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン;
p)3,9−ジヒドロキシ−7−(3−メトキシフェニル)−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン;
q)7−(3−シアノフェニル)−3,9−ジヒドロキシ−6H−クロメノ[4,3−b]キノリン
である化合物、又は製薬上許容されるその塩、キレート、複合体又はプロドラッグ。
【請求項36】
請求項35に記載の化合物を含有する組成物。
【請求項37】
請求項1から35のいずれか一項に記載の化合物を含有する組成物。
【請求項38】
その必要のある哺乳動物に、請求項1から35のいずれか一項に記載の1又はそれ以上の化合物の有効量を与えることを含む、その必要のある哺乳動物において骨粗しょう症を治療する又は抑制するあるいは骨無機質脱落を抑制する方法。
【請求項39】
その必要のある哺乳動物に、請求項1から35のいずれか一項に記載の1又はそれ以上の化合物の有効量を与えることを含む、その必要のある哺乳動物において炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性直腸炎又は大腸炎を治療する又は抑制する方法。
【請求項40】
その必要のある哺乳動物に、請求項1から35のいずれか一項に記載の1又はそれ以上の化合物の有効量を与えることを含む、その必要のある哺乳動物においてコレステロール、トリグリセリド、Lp(a)又はLDLレベルを低下させる;高コレステロール血症、高脂血症、心臓血管疾患、アテローム性動脈硬化症、末梢血管疾患、再狭窄又は血管痙攣を抑制する又は治療する;あるいは血管損傷を抑制する方法。
【請求項41】
その必要のある哺乳動物に、請求項1から35のいずれか一項に記載の1又はそれ以上の化合物の有効量を与えることを含む、その必要のある哺乳動物において認知機能増強又は神経保護を提供する;あるいは老年痴呆、アルツハイマー病、認知機能低下、卒中、不安又は神経変性疾患を治療する又は抑制する方法。
【請求項42】
その必要のある哺乳動物に、請求項1から35のいずれか一項に記載の1又はそれ以上の化合物の有効量を与えることを含む、その必要のある哺乳動物において遊離基が誘導する疾患状態を治療する又は抑制する方法。
【請求項43】
その必要のある哺乳動物に、請求項1から35のいずれか一項に記載の1又はそれ以上の化合物の有効量を与えることを含む、その必要のある哺乳動物において膣又は外陰萎縮、萎縮性膣炎、膣乾燥、そう痒、性交疼痛症、排尿障害、頻尿、尿失禁、尿路感染症を治療する又は抑制する方法。
【請求項44】
その必要のある哺乳動物に、請求項1から35のいずれか一項に記載の1又はそれ以上の化合物の有効量を与えることを含む、その必要のある哺乳動物において血管運動症状を治療する又は抑制する方法。
【請求項45】
前記血管運動症状が顔面潮紅である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
その必要のある哺乳動物に、請求項1から35のいずれか一項に記載の1又はそれ以上の化合物の有効量を与えることを含む、その必要のある哺乳動物における避妊の方法。
【請求項47】
その必要のある哺乳動物に、請求項1から35のいずれか一項に記載の1又はそれ以上の化合物の有効量を与えることを含む、その必要のある哺乳動物において関節リウマチ、変形性関節症又は脊椎関節症を治療する又は抑制する方法。
【請求項48】
その必要のある哺乳動物に、請求項1から35のいずれか一項に記載の1又はそれ以上の化合物の有効量を与えることを含む、その必要のある哺乳動物において関節鏡検査又は手術処置に続発する関節損傷を治療する又は抑制する方法。
【請求項49】
その必要のある哺乳動物に、請求項1から35のいずれか一項に記載の1又はそれ以上の化合物の有効量を与えることを含む、その必要のある哺乳動物において不妊症を治療する又は抑制する方法。
【請求項50】
その必要のある哺乳動物に、請求項1から35のいずれか一項に記載の1又はそれ以上の化合物の有効量を与えることを含む、その必要のある哺乳動物において虚血、再灌流障害、喘息、胸膜炎、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、筋痛、関節痛、不眠症、被刺激性、ブドウ膜炎、敗血症、出血性ショック又はII型糖尿病を治療する又は抑制する方法。
【請求項51】
その必要のある哺乳動物に、請求項1から35のいずれか一項に記載の1又はそれ以上の化合物の有効量を与えることを含む、その必要のある哺乳動物において低カルシウム血症、高カルシウム血症、パジェット病、骨軟化症、骨石灰脱失症、多発性骨髄腫を治療する又は抑制する方法。
【請求項52】
その必要のある哺乳動物に、請求項1から35のいずれか一項に記載の1又はそれ以上の化合物の有効量を与えることを含む、その必要のある哺乳動物において、前立腺肥大、子宮平滑筋腫、乳癌、子宮内膜症、子宮内膜癌、多嚢胞性卵巣症候群、子宮内膜ポリープ、良性乳房疾患、腺筋症、卵巣癌、黒色腫、前立腺癌、結腸癌又はCNS癌を含む、良性又は悪性異常組織増殖を治療する又は抑制する方法。
【請求項53】
前記良性又は悪性異常組織増殖が、前立腺肥大、子宮平滑筋腫、乳癌、癌、多嚢胞性卵巣症候群、子宮内膜ポリープ、良性乳房疾患、腺筋症、卵巣癌、黒色腫、前立腺癌、結腸癌又はCNS癌である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記CNS癌が、神経膠腫又は神経膠星状芽細胞腫である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
その必要のある哺乳動物に、請求項1から35のいずれか一項に記載の1又はそれ以上の化合物の有効量を与えることを含む、その必要のある哺乳動物において癌、中枢神経系障害又は外傷、骨疾患、老化、炎症性疾患、末梢血管疾患、自己免疫疾患、呼吸窮迫、気腫、ウイルス性肝炎、慢性活動性肝炎、結核、乾癬、成人呼吸促進症候群を治療する又は抑制する方法。
【請求項56】
その必要のある哺乳動物に、請求項1から35のいずれか一項に記載の1又はそれ以上の化合物の有効量を与えることを含む、その必要のある哺乳動物において皮膚萎縮、?瘡又は男性型禿頭症を治療する又は抑制する方法。
【請求項57】
その必要のある哺乳動物に、請求項1から35のいずれか一項に記載の1又はそれ以上の化合物の有効量を与えることを含む、その必要のある哺乳動物において白血病、子宮内膜剥離、慢性腎疾患、肝疾患又は凝固疾患又は障害を治療する又は抑制する方法。
【請求項58】
式IV:
【化2】

[式中、
A及びA’は、各々独立してOH、H又はORであり;
各々のRは、C1−C6アルキル、アルケニル、ベンジル、アシル、アロイル、−C(=O)−OR’、スルホニル及びホスホリルから成る群より独立して選択され、前記式中、各々のR’は、各々が場合によりC1−C6アルキル又はハロゲンから選択される1−3個の置換基によって置換されている、C1−C6アルキル、C2−C7アルケニル、C2−C7アルキニル又はC3−C10シクロアルキルから独立して選択され;
1及びR2は、H、ハロゲン、C1−C6アルキル、C1−C6ペルハロアルキル、CF3、C2−C7アルケニル及びC1−C6アルコキシから成る群より独立して選択され;
3、R4、R5及びR6は、H、ハロゲン、CF3、C1−C6ペルハロアルキル、C1−C6アルキル、C2−C7アルケニル、C2−C7アルキニル、C3−C7シクロアルキル、C1−C6アルコキシ、−CN、−CHO、アシル、フェニル、アリール及びヘテロアリールから成る群より各々独立して選択され;
3、R4、R5及びR6のアルキル又はアルケニル部分は、各々、場合によりハロゲン、OH、CN、トリフルオロアルキル、トリフルオロアルコキシ、NO2又はフェニルから独立して選択される3個までの置換基で置換されていてもよく、前記フェニルは、場合により独立して選択される3個までのR10基で置換されており;
3、R4、R5及びR6のアルキニル部分は、各々、場合によりハロゲン、−CN、−CHO、アシル、トリフルオロアルキル、トリアルキルシリル又はフェニルから選択される3個までの置換基で置換されていてもよく、前記フェニルは、場合により独立して選択される3個までのR10基で置換されており;
3、R4、R5及びR6のフェニル、アリール又はヘテロアリール部分は、各々、場合によりハロゲン、−CN、アルキル、アルコキシ、ペルフルオロアルキル又はペルフルオロアルコキシから選択される3個までの置換基で置換されていてもよく;
各々のR10は、ハロゲン、C1−C6アルキル、C2−C7アルケニル、−OH、C1−C6アルコキシ、−CN、−CHO、−NO2、アミノ、C1−C6アルキルアミノ、ジ−(C1−C6)アルキルアミノ、チオール及びC1−C6アルキルチオから成る群より独立して選択され;及び
nは、0、1、2又は3であり;
但し、
A及びA’の少なくとも1つはHではなく;
nが0である場合、R3はハロゲンではなく;及び
3、R4及びR5の少なくとも1つは、ハロゲン、C1−C6アルキル、C2−C7アルケニル、C2−C7アルキニル、C3−C7シクロアルキル、C1−C6アルコキシ、−CN、−CHO、アシル、フェニル、アリール又はヘテロアリールである]
の化合物、又はそのN−オキシド又は製薬上許容されるその塩又はそのプロドラッグの製造のための方法であって、
a)式II:
【化3】

の化合物を提供すること;及び
b)式IIの化合物を式III:
【化4】

の化合物と反応させて式IVの化合物を生成すること
の工程を含む方法。
【請求項59】
式IVの化合物を変性試薬と接触させて、式I:
【化5】

[式中、
3は、H、ハロゲン、CF3、C1−C6ペルハロアルキル、C1−C6アルキル、C2−C7アルケニル、C2−C7アルキニル、C3−C7シクロアルキル、C1−C6アルコキシ、−CN、−CHO、アシル、フェニル、アリール及びヘテロアリールから成る群より選択され;
3のアルキル又はアルケニル部分は、場合によりハロゲン、OH、CN、トリフルオロアルキル、トリフルオロアルコキシ、NO2及びフェニルから独立して選択される3個までの置換基で置換されており、前記フェニルは、場合により独立して選択される3個までのR10基で置換されており;
3のアルキニル部分は、場合によりハロゲン、−CN、−CHO、アシル、トリフルオロアルキル、トリアルキルシリル及びフェニルから選択される3個までの置換基で置換されており、前記フェニルは、場合により独立して選択される3個までのR10基で置換されており;
3のフェニル、アリール又はヘテロアリール部分は、場合によりハロゲン、−CN、アルキル、アルコキシ、ペルフルオロアルキル又はペルフルオロアルコキシから選択される3個までの置換基で置換されており;
但し、
A及びA’の少なくとも1つはHではなく;
nが0である場合、R3はハロゲンではなく;及び
3、R4及びR5の少なくとも1つは、ハロゲン、C1−C6アルキル、C2−C7アルケニル、C2−C7アルキニル、C3−C7シクロアルキル、C1−C6アルコキシ、−CN、−CHO、アシル、フェニル、アリール又はヘテロアリールである]
の化合物、又はそのN−オキシド又は製薬上許容されるその塩又はそのプロドラッグを形成する工程をさらに含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
請求項58に記載の工程の生成物。
【請求項61】
請求項59に記載の工程の生成物。

【公表番号】特表2008−512458(P2008−512458A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−531265(P2007−531265)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【国際出願番号】PCT/US2005/031696
【国際公開番号】WO2006/029146
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】