8気筒エンジンにおける排気装置
【課題】8気筒エンジンにおいて、各気筒からの排気が互いに干渉することを防止して、エンジン性能を、より確実に向上させるようにする。
【解決手段】排気管47は、この順序で点火される第1−第8気筒27A−27Hからそれぞれ延出する第1−第8上流側排気管49A−49Hと、第1、第5上流側排気管49A,49Eの延出端部同士、第2、第6上流側排気管49B,49Fの延出端部同士、第3、第7上流側排気管49C,49Gの延出端部同士、および第4、第8上流側排気管49D,49Hの延出端部同士のそれぞれの結合部からそれぞれ延出する第1−第4中途部排気管50A−50Dと、第1、第3中途部排気管50A,50Cの延出端部同士、および第2、第4中途部排気管50B,50Dの延出端部同士のそれぞれの結合部からそれぞれ延出して大気側に連通させる第1、第2下流側排気管51A,51Bとを備える。
【解決手段】排気管47は、この順序で点火される第1−第8気筒27A−27Hからそれぞれ延出する第1−第8上流側排気管49A−49Hと、第1、第5上流側排気管49A,49Eの延出端部同士、第2、第6上流側排気管49B,49Fの延出端部同士、第3、第7上流側排気管49C,49Gの延出端部同士、および第4、第8上流側排気管49D,49Hの延出端部同士のそれぞれの結合部からそれぞれ延出する第1−第4中途部排気管50A−50Dと、第1、第3中途部排気管50A,50Cの延出端部同士、および第2、第4中途部排気管50B,50Dの延出端部同士のそれぞれの結合部からそれぞれ延出して大気側に連通させる第1、第2下流側排気管51A,51Bとを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気干渉の防止のために、第1−第8気筒から延出する排気管のそれぞれの管経路が、各気筒の点火順序に基づいて定められるようにした8気筒エンジンにおける排気装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多気筒エンジンにおける排気装置には、従来、下記特許文献1に示されるものがある。この公報のものによれば、奇数番に爆発する複数の気筒からそれぞれ延出する各排気通路と、偶数番に爆発する複数の気筒からそれぞれ延出する他の各排気通路とを一旦別個に集合させた後に、すべての排気通路を集合させるようにしている。そして、この構成によれば、爆発順序が連続するシリンダ同士の排気干渉が防止され、これにより、エンジン性能が向上することとされている。
【特許文献1】特開2000−265836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来の技術では、エンジンは船外機の駆動源とされている。この船外機は、持ち運びや取り扱いの容易化のため、従来より、特にコンパクト化が要求されている。そこで、このエンジンを全体的にコンパクトにしようとして、上記各排気通路を短くしたとする。すると、例えば、奇数番に爆発する先の気筒と、これに続いて爆発する偶数番の後の気筒とは上記のように短くされた各排気通路を通して、寸法上、互いに接近しがちとなる。
【0004】
このため、上記先の気筒からの排気に対し、後の気筒からの排気が干渉しがちとなる。よって、上記先の気筒から延出する排気通路において、負圧が十分に大きい所望の排気脈動を得ることはできないおそれを生じる。
【0005】
そして、上記したように、排気脈動の負圧が十分に大きくない場合には、気筒の掃気が不十分になりがちとなる。このため、気筒内への燃焼ガスの残留によるノッキングの発生、失火の発生、ポンピングロスの増大、および新気の吸入不良による体積効率の減少などが生じる。この結果、エンジン出力の低下、燃費の悪化、および排気の悪化などが生じ、つまり、エンジン性能の低下が生じがちとなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、8気筒エンジンにおいて、各気筒からの排気が互いに干渉することを防止して、エンジン性能を、より確実に向上させるようにすることである。
【0007】
請求項1の発明は、全図に例示するように、第1−第8気筒27A−27Hと、これら第1−第8気筒27A−27Hから延出する排気管47とを備え、上記第1−第8気筒27A−27Hがこの順序で点火されるようにした8気筒エンジンにおける排気装置において、
上記排気管47が、上記第1−第8気筒27A−27Hからそれぞれ延出する第1−第8上流側排気管49A−49Hと、上記第1、第5上流側排気管49A,49Eの延出端部同士、第2、第6上流側排気管49B,49Fの延出端部同士、第3、第7上流側排気管49C,49Gの延出端部同士、および第4、第8上流側排気管49D,49Hの延出端部同士のそれぞれの結合部からそれぞれ延出する第1−第4中途部排気管50A−50Dと、上記第1、第3中途部排気管50A,50Cの延出端部同士、および第2、第4中途部排気管50B,50Dの延出端部同士のそれぞれの結合部からそれぞれ延出して大気側に連通させる第1、第2下流側排気管51A,51Bとを備えたものである。
【0008】
請求項2の発明は、全図に例示するように、請求項1の発明に加えて、上記第1、第5上流側排気管49A,49E同士、第2、第6上流側排気管49B,49F同士、第3、第7上流側排気管49C,49G同士、および第4、第8上流側排気管49D,49H同士をそれぞれ互いにほぼ同じ等価管長となるようにしたものである。
【0009】
請求項3の発明は、図9−19に例示するように、請求項1、もしくは2の発明に加えて、上記排気管47内の排気通路48に排気浄化用の触媒60,61を設け、この触媒60,61よりも上流側の排気通路48内に2次空気63を供給可能とする空気通路65を形成したものである。
【0010】
請求項4の発明は、図9−12に例示するように、請求項3の発明に加えて、上記排気通路48の径方向における上記触媒60,61の径寸法よりも上記排気通路48の長手方向における上記触媒60,61の長さ寸法を、より大きくしたものである。
【0011】
請求項5の発明は、図13−19に例示するように、請求項1から4のうちいずれか1つの発明に加えて、上記エンジン11を船外機4の駆動源とし、上記排気管47内の排気通路48の中途部分を水2の表面上の大気側に開放させるアイドリング排気通路57を形成した8気筒エンジンにおける排気装置であって、
上記排気通路48の中途部分よりも下流側における排気通路48の部分の開度を可変とする絞り部78を設けたものである。
【0012】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0013】
本発明による効果は、次の如くである。
【0014】
請求項1の発明は、第1−第8気筒と、これら第1−第8気筒から延出する排気管とを備え、上記第1−第8気筒がこの順序で点火されるようにした8気筒エンジンにおける排気装置において、
上記排気管が、上記第1−第8気筒からそれぞれ延出する第1−第8上流側排気管と、上記第1、第5上流側排気管の延出端部同士、第2、第6上流側排気管の延出端部同士、第3、第7上流側排気管の延出端部同士、および第4、第8上流側排気管の延出端部同士のそれぞれの結合部からそれぞれ延出する第1−第4中途部排気管と、上記第1、第3中途部排気管の延出端部同士、および第2、第4中途部排気管の延出端部同士のそれぞれの結合部からそれぞれ延出して大気側に連通させる第1、第2下流側排気管とを備えている。
【0015】
このため、例えば、第1気筒からの排気は第1上流側排気管、第1中途部排気管、および第1下流側排気管を順次通して大気側に達する。次に、第2気筒からの排気は第2上流側排気管、第2中途部排気管、および第2下流側排気管を順次通して大気側に達する。次に、第3気筒から排気が排出されるが、この排気については後述する。次に、第4気筒からの排気は第4上流側排気管、第4中途部排気管、および第2下流側排気管を順次通して大気側に達する。よって、上記第1気筒からの排気に対し、これに後続する上記第2気筒、第4気筒からの排気が上記各上流側排気管、各中途部排気管、および各下流側排気管内で干渉する、ということは防止される。
【0016】
ここで、上記した第3気筒からの排気は第3上流側排気管、第3中途部排気管、および第1下流側排気管を順次通して大気側に達する。このため、上記第1気筒からの排気と、上記第3気筒からの排気とは共に上記第1下流側排気管を通ることとなる。よって、上記第1気筒からの排気に対し、上記第3気筒からの排気が上記第1下流側排気管内で干渉するおそれを生じる。
【0017】
しかし、上記第1気筒からの排気が通る第1上流側排気管、および第1中途部排気管と、上記第3気筒からの排気が通る第3上流側排気管、および第3中途部排気管とは、互いに独立していて、長い寸法を有している。このため、上記第1、第3気筒は、排気通路の寸法上、互いに大きく離れている。よって、上記第1気筒からの排気に対し、上記第3気筒からの排気が上記第1下流側排気管内で干渉する、ということは防止される。
【0018】
また、上記第1気筒と第5気筒とは、これらから延出する第1、第5上流側排気管同士が互いに結合していて、寸法上、互いに接近している。しかし、上記第1気筒の点火から第5気筒の点火までの間隔は、上記第2−第4気筒の点火を挟むことにより、大きく離れている。このため、上記第1気筒と第5気筒との各排気期間が重なる、ということが防止される。よって、上記第1気筒からの排気に対し、上記第5気筒からの排気が上記第1、第5上流側排気管内で干渉する、ということは防止される。
【0019】
また、第1気筒の点火から第6−第8気筒の点火までの間隔は、更に大きく離れている。このため、第1気筒からの排気に対し、第6−第8気筒からの排気が干渉する、ということも防止される。
【0020】
以下、上記第1気筒以外の他の各気筒からの各排気についても、上記第1気筒からの排気につき説明したことと同様である。この結果、上記エンジンにおける排気干渉が防止されて、負圧が十分に大きい所望の排気脈動が得られ、このエンジンのエンジン性能の向上が、より確実に達成される。
【0021】
請求項2の発明は、上記第1、第5上流側排気管同士、第2、第6上流側排気管同士、第3、第7上流側排気管同士、および第4、第8上流側排気管同士をそれぞれ互いにほぼ同じ等価管長となるようにしている。
【0022】
ここで、上記第1−第8気筒からの各排気のうち、互いに干渉し合う可能性が高い排気同士は、次の通りである。即ち、これら排気同士とは、互いに結合された上記第1、第5上流側排気管内においての上記第1、第5気筒からの排気同士、上記第2、第6上流側排気管内においての上記第2、第6気筒からの排気同士、上記第3、第7上流側排気管内においての上記第3、第7気筒からの排気同士、および上記第4、第8上流側排気管内においての上記第4、第8気筒からの排気同士である。
【0023】
そこで、前記のように、その内部で干渉が生じる可能性の大きい第1、第5上流側排気管同士などをそれぞれ互いにほぼ等しい等価管長としてある。
【0024】
このため、例えば、上記第1気筒からの排気に対し、この第1気筒から4番目に点火する第5気筒からの排気が干渉する程度と、この第5気筒からの排気に対し、この第5気筒から上記と同じ4番目に点火する上記第1気筒からの排気が干渉する程度とを互いにほぼ同じ状態にさせることができる。つまり、上記第1、第5気筒などからの各排気同士の干渉を、共に小さくかつより均一にさせることができる。よって、良好で安定したエンジン性能が確保される。
【0025】
請求項3の発明は、上記排気管内の排気通路に排気浄化用の触媒を設け、この触媒よりも上流側の排気通路内に2次空気を供給可能とする空気通路を形成している。
【0026】
ここで、前記したように、負圧が十分に大きい所望の排気脈動が得られるため、この負圧により、上記排気通路に2次空気をより円滑に吸入させることができる。つまり、上記排気通路に多量の2次空気を供給できる。よって、仮に、エンジンに供給される混合気の空燃比が小さい(濃い)としても、上記触媒上流の排気空燃比を理論空燃比など、所望値にさせることができ、排気の浄化がより確実に達成される。つまり、この排気の浄化につき、エンジンのエンジン性能の向上が、更に確実に達成される。
【0027】
請求項4の発明は、上記排気通路の径方向における上記触媒の径寸法よりも上記排気通路の長手方向における上記触媒の長さ寸法を、より大きくしている。
【0028】
ここで、例えば、上記エンジンを船外機に適用した場合には、エンジンを一般自動車に適用する場合に比べ、エンジンは全負荷最大出力点で使用されることが多い。このため、上記排気通路における排気の流速は比較的速くなる。そこで、上記したように上記触媒の長さを、より大きくしたのであり、これにより、これら触媒に対し排気をより十分に接触させることができる。このため、上記排気の浄化が更に確実に達成される。つまり、このエンジンのエンジン性能の向上が、より確実に達成される。
【0029】
請求項5の発明は、上記エンジンを船外機の駆動源とし、上記排気管内の排気通路の中途部分を水の表面上の大気側に開放させるアイドリング排気通路を形成した8気筒エンジンにおける排気装置であって、
上記排気通路の中途部分よりも下流側における排気通路の部分の開度を可変とする絞り部を設けている。
【0030】
このため、第1に、上記絞り部の開度をエンジンの運転状態に合致するよう適性に調整してやれば、上記各中途部排気管を流動してきた排気の圧力が上記絞り部で反転させられて、所望タイミングかつ所望負圧の排気脈動を得ることができる。よって、このエンジンのエンジン性能を、より向上させることができる。
【0031】
また、第2に、次の作用効果が生じる。即ち、仮に、上記船外機により船体を後方に向けて推進させた場合など、水の動圧によって、この水が上記排気通路を逆流し、上記アイドリング排気通路にまで達するおそれがある。そして、この場合には、上記各排気通路が塞がれるため、上記エンジンが失速したり、停止したりするおそれを生じる。
【0032】
そこで、上記船体を後方に向けて推進させた場合など、水が排気通路を逆流するおそれがあるときには、これに連動するような自動制御により、もしくは手動操作などにより、上記絞り部の開度を小さくさせてやれば、上記水が上記アイドリング排気通路にまで達することは、上記絞り部により防止できる。よって、少なくとも上記アイドリング排気通路を通しての排気の流動が確保される。この結果、上記排気通路を水が逆流することに基づくエンジンの失速や停止が防止され、エンジンの駆動を続けることができて有益である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明の8気筒エンジンにおける排気装置に関し、8気筒エンジンにおいて、各気筒からの排気が互いに干渉することを防止して、エンジン性能を、より確実に向上させるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための最良の形態は、次の如くである。
【0034】
即ち、8気筒エンジンにおける排気装置は、第1−第8気筒とこれら第1−第8気筒から延出する排気管とを備え、上記第1−第8気筒がこの順序で点火される。上記排気管は、上記第1−第8気筒からそれぞれ延出する第1−第8上流側排気管と、上記第1、第5上流側排気管の延出端部同士、第2、第6上流側排気管の延出端部同士、および第3、第7上流側排気管の延出端部同士、および第4、第8上流側排気管の延出端部同士のそれぞれの結合部からそれぞれ延出する第1−第4中途部排気管と、上記第1、第3中途部排気管の延出端部同士、および第2、第4中途部排気管の延出端部同士のそれぞれの結合部からそれぞれ延出して大気側に連通させる第1、第2下流側排気管とを備えている。
【実施例1】
【0035】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例1を添付の図1−8に従って説明する。
【0036】
図2において、符号1は、海など水2の表面に浮かべられる小型船艇である。また、矢印Frは、この船艇1の推進方向の前方を示している。また、下記する左右とは、上記前方に向かっての船艇1の幅方向をいうものとする。
【0037】
上記船艇1は、水2の表面に浮かべられる船体3と、この船体3の船尾に支持される船外機4とを備えている。この船外機4は、推進力を生じて上記船体3を前方、もしくは後方に向けて推進可能とさせる船外機本体5と、この船外機本体5を船体3に対し支持させるブラケット6とを備えている。
【0038】
上記船外機本体5は、縦方向に延びて、上記船体3に対しブラケット6により支持され、下部が水2中に没入されるケース9と、このケース9の下端部に支持されるプロペラ10と、上記ケース9の上端部に支持されるエンジン11と、上記ケース9内に収容されて、上記エンジン11に対しプロペラ10を連動連結させる動力伝達装置12と、上記エンジン11をその外方から開閉可能に覆うカウリング13とを備えている。
【0039】
上記動力伝達装置12は、手動操作により、上記プロペラ10を正、逆転切換可能とする歯車式の切換装置14を備えている。この切り換え操作により、上記船体3は前、後方のいずれかに向けて選択的に推進可能とされる。
【0040】
図1−6において、上記エンジン11は、4サイクルV型8気筒エンジンであって、上記船外機4の駆動源とされている。上記エンジン11は、上記ケース9の上面側に支持されるエンジン本体15、このエンジン本体15に大気側の空気16と燃料とによる混合気を供給可能とする吸気装置17、および上記エンジン本体15において混合気の燃焼により生じた燃焼ガスを排気18としてエンジン11の外部に排出させる排気装置19とを備えている。
【0041】
上記エンジン本体15は、上記ケース9の上面側に支持され、縦向きの軸心21回りに回転可能となるようクランク軸22を支持するクランクケース23と、このクランクケース23から水平方向の外方である後側方に向かって、エンジン11の底面視(図5)でV型に突出する左右バンク24,25とを備えている。これら各バンク24,25の挟角はほぼ60°であって、第1−第8気筒27A−27Hにより構成されている。これら第1−第8気筒27A−27Hは、この順序で順次点火されるようになっている。
【0042】
より具体的には、上記両バンク24,25のうちの一方(左側)のバンク24は、上記第1、第4、第6、第7気筒27A,27D,27F,27Gにより構成されている。また、これら気筒27A,27D,27F,27Gは、下方に向けてこの順序で配置されている。また、他方(右側)のバンク25は、上記第8、第3、第5、第2気筒27H,27C,27E,27Bにより構成されている。また、これら気筒27H,27C,27E,27Bは、下方に向けてこの順序で配置されている。更に、上記第1−第8気筒27A−27Hは、下方に向けて、第1気筒27A、第8気筒27H、第4気筒27D、第3気筒27C、第6気筒27F、第5気筒27E、第7気筒27G、第2気筒27Bの順序で配置されている。
【0043】
上記クランク軸22は、上記軸心21上に配置され、上記クランクケース23に支持されるジャーナル部を有するクランク主軸30と、このクランク主軸30に突設されるクランクアーム31と、これらクランクアーム31に支持され上記第1−第8気筒27A−27Hに対応して設けられるクランクピン32とを備えている。この場合、前記したように両バンク24,25の挟角は60°である。そして、上記第1−第8気筒27A−27Hに対応する8つのクランクピン32はエンジン11の底面視(図5)で次のように配列されている。
【0044】
即ち、上記クランク軸22の反時計回りで、上記第1、第8、第4、第3、第7、第2、第6、第5気筒に対応する各クランクピン32が、この順序で配置されている。また、上記第1、8気筒、第4、3気筒、第7、2気筒、および第6、5気筒にそれぞれ対応する両クランクピン32のなす角はそれぞれ30°とされている。また、上記第8、4気筒、第3、7気筒、第2、6気筒、および第5、1気筒にそれぞれ対応する両クランクピン32のなす角はそれぞれ60°とされている。つまり、このクランク軸22は、両バンクの挟角が90°であるV型多気筒エンジンにおけるクロスプレーン、ダブルプレーン、もしくはデュアルプレーンクランク式といわれる種類のものと同等種のものとされている。
【0045】
上記第1−第8気筒27A−27Hは、それぞれそのシリンダ孔34に軸方向摺動可能に嵌入されるピストン35と、これら各ピストン35と上記クランク軸22のクランクピン32とを互いに連動連結させる連接棒36とを備えている。
【0046】
上記各気筒27には、それぞれ上記シリンダ孔34の内外を連通させる吸、排気ポート38,39が形成されている。これら各ポート38,39をそれぞれ開閉可能とする吸、排気弁40,41が設けられている。これら吸、排気弁40,41は、上記クランク軸22に連動する不図示の動弁装置により所定のクランク角(θ)で開閉可能とされている。
【0047】
前記吸気装置17は、上記各気筒27から延出する吸気管44と、この吸気管44の延出端部に取り付けられるスロットル弁45とを備えている。上記吸気管44の内部は、上記スロットル弁45を通し大気側を上記各吸気ポート38に連通させる吸気通路46とされている。上記スロットル弁45は、上記吸気管44の延出端部における吸気通路46の開度を調整可能とする。
【0048】
図1−8において、前記排気装置19は、上記各気筒27から延出する排気管47を備えている。この排気管47の内部は、上記排気ポート39を大気側に連通させる排気通路48とされている。
【0049】
上記排気管47は、上記第1−第8気筒27A−27Hからそれぞれ個別に延出する第1−第8上流側排気管49A−49Hと、上記第1、第5上流側排気管49A,49Eの延出端部同士、第2、第6上流側排気管49B,49Fの延出端部同士、第3、第7上流側排気管49C,49Gの延出端部同士、および第4、第8上流側排気管49D,49Hの延出端部同士のそれぞれ結合部からそれぞれ延出する第1−第4中途部排気管50A−50Dとを備えている。
【0050】
また、排気管47は、上記上記第1、第3中途部排気管50A,50Cの延出端部同士、および第2、第4中途部排気管50B,50Dの延出端部同士のそれぞれの結合部からそれぞれ延出して、上記各結合部を大気側に連通させる第1、第2下流側排気管51A,51Bを備えている。この場合、上記大気側にとは、大気に向けて直接にと、水2中を通し大気に向けて間接にとを含んでいる。
【0051】
上記第1、第5上流側排気管49A,49E同士、第2、第6上流側排気管49B,4F同士、第3、第7上流側排気管49C,49G同士、および第4、第8上流側排気管49D,49H同士はそれぞれ互いにほぼ同じ等価管長とされている。また、上記第1−第4中途部排気管50A−50Dのうち、第1、第4中途部排気管50A,50D同士は互いにほぼ同じ等価管長とされている。また、上記第2、第3中途部排気管50B,50C同士は互いにほぼ同じ等価管長とされている。一方、上記第1、第4中途部排気管50A,50Dと第2、第3中途部排気管50B,50Cとは互いに不等の等価管長とされている。
【0052】
上記各排気ポート39は下流側に向かうに従い、その断面積が拡大するラバーズノズル形状とされている。このため、上記各排気弁41が開弁し始める際、上記シリンダ孔34側から上記排気ポート39に向かう排気18は、マッハ1以上に加速されて衝撃波が生成される。
【0053】
また、上記各上流側排気管49の排気通路48は、下流側に向かうに従い、その断面積が拡大するディフューザ構造とされている。また、上記排気弁41のシリンダ孔34側の端面から上記各中途部排気管50の下流端に至る寸法は300mm以上となるよう、上記各上流側排気管49と中途部排気管50との管長が長く定められている。
【0054】
即ち、上記上流側排気管49をディフューザ構造とし、これに加えて、上流側排気管49および中途部排気管50を長くしてある。このため、上記排気ポート39で生じた上記衝撃波、およびその通過後の部分により、より効率的に疎密領域を生じさせることができる。つまり、上記排気ポート39、上流側排気管49、および中途部排気管50における排気脈動の負圧を十分に大きくさせることができる。
【0055】
前記各下流側排気管51A,51Bは、それぞれその上流側を形成して上記各中途部排気管50の下流端を連結させる膨張室ケース56を備えている。これら各膨張室ケース56は、サージタンクとして働くものである。一方、上記各下流側排気管51A,51Bの下流側は、上記ケース9により形成されている。つまり、上記各下流側排気管51A,51Bの下流側の各排気通路48は、上記ケース9の上端面から水2の表面下の下端部後面にまで貫通するよう形成されている。上記各膨張室ケース56の下端部は上記ケース9の上端面に連結され、上記各膨張室ケース56内の排気通路48の下端部は、上記ケース9に形成された上記各排気通路48の上端部に連通させられている。
【0056】
上記各中途部排気管50の各下流端の軸方向に沿った視線でみて(図5)、上記各中途部排気管50の各下流端近傍における膨張室ケース56の断面積の大きさは、上記各中途部排気管50の各下流端の合計断面積の2倍以上とされている。これにより、上記各中途部排気管50から膨張室ケース56内に流入する排気18の圧力振動が効果的に減衰させられ、各排気18同士の干渉が防止される。
【0057】
上記各膨張室ケース56の内底面56aは、上記ケース9に形成された上記各排気通路48の上流端に向かって下方に傾くよう傾斜させられている。これにより、上記各膨張室ケース56の内底部に溜まろうとする水2は、上記ケース9内の上記各排気通路48を通して排水される。
【0058】
上記各中途部排気管50や下流側排気管51内の排気通路48の長手方向の中途部分を水2の表面上の大気側に開放させるアイドリング排気通路57が、上記ケース9に形成されている(図2)。
【0059】
上記排気管47の各上流側排気管49、各中途部排気管50、各下流側排気管51の膨張室ケース56、およびケース9には、それぞれ水冷却ジャケット58が形成されている。この水冷却ジャケット58は、上記排気18により、排気管47が高温になろうとすることを防止する。
【0060】
図1,6において、上記各排気ポート39の上流側に2次空気63が供給されるよう、上記各気筒27に空気通路65が形成され、かつ、リード弁66が設けられている。また、図1,4において、上記各中途部排気管50内の排気通路48に他の2次空気64が供給されるよう、他の空気通路67が形成され、かつ、リード弁が設けられている。
【0061】
上記各2次空気63,64よりも下流側において、上記各中途部排気管50を流動する排気18の成分(酵素濃度)を検出するO2センサー72と、上記各膨張室ケース56の下流端部を流動する排気18の成分を検出する他のO2センサー73とが設けられている。この他のO2センサー73をその上方から覆うカバー74が設けられている。このため、上記O2センサー73に向けて水滴が落下することが防止される。よって、上記O2センサー73が水滴により破損する、ということが防止される。
【0062】
上記各O2センサー72,73の検出信号に基づき、前記スロットル弁45による吸気通路46の開度、燃料の供給量、および2次空気63,64の供給量などが自動制御される。そして、この制御により、排気18の浄化効果が向上させられる。
【0063】
上記エンジン11が駆動するとき、クランク軸22が回転Rし、第1−第8気筒27A−27Hは、この順序で順次点火させられる。これら各点火のクランク角(θ)の間隔は90°とされて、一定とされている。なお、上記点火の間隔は、一定でなくてもよく、いずれか複数(2つ)の気筒がほぼ同時に点火するようにしてもよい。
【0064】
上記各気筒27の点火順序と同じ順序で、これら各気筒27から排気管47を通し、順次排気18が排出される。上記エンジン11が、全負荷など通常の駆動状態であるときは、上記排気18の圧力は大きく、かつ、多量である。このため、この排気18は、そのほとんどが上記排気管47の排気通路48を通し、水圧に対抗して水2中を通し大気中に排出される。一方、残りの少量の排気18は、上記アイドリング排気通路57を通して、大気中に直接排出される。そして、このエンジン11の駆動によるクランク軸22の回転Rに上記動力伝達装置12を介しプロペラ10が連動して、船艇1が推進可能とされる。
【0065】
一方、上記エンジン11のアイドリング時には、排気18は圧力が低く、かつ、少量である。このため、この排気18が上記排気管47の排気通路48を通し水2中に排出されることは、上記水圧により防止されて、上記排気18のほとんどが上記アイドリング排気通路57を通し大気側に排出される。
【0066】
図1,4,8において、上記各中途部排気管50の排気通路48の中途部分である下流端部に絞り部78が形成されている。この絞り部78の開度は、上記各中途部排気管50の下流端部にそれぞれ設けられたバタフライ式の複数(4つ)の絞り弁79により可変とされている。これら各絞り弁79は互いに一体的に開、閉弁動作するよう互いに連動連結されている。また、この弁動作をさせる不図示のアクチュエータが設けられている。なお、上記各絞り弁79は個別に弁動作させるようにしてもよい。
【0067】
上記構成によれば、排気管47が、上記第1−第8気筒27A−27Hからそれぞれ延出する第1−第8上流側排気管49A−49Hと、上記第1、第5上流側排気管49A,49Eの延出端部同士、第2、第6上流側排気管49B,49Fの延出端部同士、および第3、第7上流側排気管49C,49Gの延出端部同士、および第4、第8上流側排気管49D,49Hの延出端部同士のそれぞれの結合部からそれぞれ延出する第1−第4中途部排気管50A−50Dと、上記第1、第3中途部排気管50A,50Cの延出端部同士、および第2、第4中途部排気管50B,50Dの延出端部同士のそれぞれの結合部からそれぞれ延出して大気側に連通させる第1、第2下流側排気管51A,51Bとを備えている。
【0068】
このため、例えば、第1気筒27Aからの排気18は第1上流側排気管49A、第1中途部排気管50A、および第1下流側排気管51Aを順次通して大気側に達する。次に、第2気筒27Bからの排気18は第2上流側排気管49B、第2中途部排気管50B、および第2下流側排気管51Bを順次通して大気側に達する。次に、第3気筒27Cから排気18が排出されるが、この排気18については後述する。次に、第4気筒27Dからの排気18は第4上流側排気管49D、第4中途部排気管50D、および第2下流側排気管51Bを順次通して大気側に達する。よって、上記第1気筒27Aからの排気18に対し、これに後続する上記第2気筒27B、第4気筒27Bからの排気18が上記各上流側排気管49、各中途部排気管50、および各下流側排気管51内で干渉する、ということは防止される。
【0069】
ここで、上記した第3気筒27Cからの排気18は第3上流側排気管49C、第3中途部排気管50C、および第1下流側排気管51Aを順次通して大気側に達する。このため、上記第1気筒27Aからの排気18と、上記第3気筒27Cからの排気18とは共に上記第1下流側排気管51Aを通ることとなる。よって、上記第1気筒27Aからの排気18に対し、上記第3気筒27Cからの排気18が上記第1下流側排気管51A内で干渉するおそれを生じる。
【0070】
しかし、上記第1気筒27Aからの排気18が通る第1上流側排気管49A、および第1中途部排気管50Aと、上記第3気筒27Cからの排気18が通る第3上流側排気管49C、および第3中途部排気管50Cとは、互いに独立していて、長い寸法を有している。このため、上記第1、第3気筒27A,27Cは、排気通路48の寸法上、互いに大きく離れている。よって、上記第1気筒27Aからの排気18に対し、上記第3気筒27Cからの排気18が上記第1下流側排気管51A内で干渉する、ということは防止される。
【0071】
また、上記第1気筒27Aと第5気筒27Eとは、これらから延出する第1、第5上流側排気管49A,49E同士が互いに結合していて、寸法上、互いに接近している。しかし、上記第1気筒27Aの点火から第5気筒27Eの点火までの間隔は、上記第2−第4気筒27B−27Dの各点火を挟むことにより、大きく離れている。このため、上記第1気筒27Aと第5気筒27Eとの各排気期間が重なる、ということが防止される。よって、上記第1気筒27Aからの排気18に対し、上記第5気筒27Eからの排気18が上記第1、第5上流側排気管49A,49E内で干渉する、ということは防止される。
【0072】
また、第1気筒27Aの点火から第6−第8気筒27F−27Hの点火までの間隔は、更に大きく離れている。このため、第1気筒27Aからの排気18に対し、第6−第8気筒27F−27Hからの排気18が干渉する、ということも防止される。
【0073】
以下、他の各気筒27からの各排気18についても、上記第1気筒27Aからの排気18につき説明したことと同様である。この結果、上記エンジン11における排気干渉が防止されて、負圧が十分に大きい所望の排気脈動が得られ、このエンジン11のエンジン性能の向上が、より確実に達成される。
【0074】
また、前記したように、第1、第5上流側排気管49A,49E同士、第2、第6上流側排気管49B,49F同士、第3、第7上流側排気管49C,49G同士、および第4、第8上流側排気管49D,49H同士をそれぞれ互いにほぼ同じ等価管長となるようにしている。
【0075】
ここで、上記第1−第8気筒27A−27Hからの各排気18のうち、互いに干渉し合う可能性が高い排気18同士は、次の通りである。即ち、これら排気18同士とは、互いに結合された上記第1、第5上流側排気管49A,49E内においての上記第1、第5気筒27A,27Eからの排気18同士、上記第2、第6上流側排気管49B,49F内においての上記第2、第6気筒27B,27Fからの排気18同士、上記第3、第7上流側排気管49C,49G内においての上記第3、第7気筒27C,27Gからの排気18同士、および上記第4、第8上流側排気管49D,49H内においての上記第4、第8気筒27D,27Hからの排気18同士である。
【0076】
そこで、前記のように、その内部で干渉が生じる可能性の大きい第1、第5上流側排気管49A,49E同士などをそれぞれ互いにほぼ等しい等価管長としてある。
【0077】
このため、例えば、上記第1気筒27Aからの排気18に対し、この第1気筒27Aから4番目に点火する第5気筒27Eからの排気18が干渉する程度と、この第5気筒27Eからの排気18に対し、この第5気筒27Eから上記と同じ4番目に点火する上記第1気筒27Aからの排気18が干渉する程度とを互いにほぼ同じ状態にさせることができる。つまり、上記第1、第5気筒27A,27Eなどからの各排気18同士の干渉を、共に小さくかつより均一にさせることができる。よって、良好で安定したエンジン性能が確保される。
【0078】
なお、以上は図示の例によるが、上記両バンク24,25は、左右で逆の配置であってもよい。また、上記ケース9内に形成される排気通路48は単一であってもよい。
【0079】
以下の図9−19は、実施例2,3を示している。これら実施例2,3は、前記実施例1と構成、作用効果において多くの点で共通している。そこで、これら共通するものについては、図面に共通の符号を付してその重複した説明を省略し、異なる点につき主に説明する。また、これら実施例における各部分の構成を、本発明の目的、作用効果に照らして種々組み合せてもよい。
【実施例2】
【0080】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例2を添付の図9−12に従って説明する。
【0081】
図9−12において、上記両バンク24,25のうちの一方(左側)のバンク24は、上記第1、第3、第7、第5気筒27A,27C,27G,27Eにより構成されている。また、他方(右側)のバンク25は、上記第2、第4、第8、第6気筒27B,27D,27H,27Fにより構成されている。
【0082】
そして、上記第1、第3、第7、第5気筒27A,27C,27G,27Eに関連する第1、第3、第7、第5上流側排気管49A,49C,49G,49Eと、第1、第3中途部排気管50A,50Cと、第1下流側排気管51Aとは、上記クランク軸22よりも左側に配置されている。また、上記第2、第4、第8、第6気筒27B,27D,27H,27Fに関連する他のものは、上記クランク軸22よりも右側に配置されている。
【0083】
上記各中途部排気管50の排気通路48には、それぞれその長手方向に沿って複数(2つ)の触媒60,61が設置されている。これら触媒60,61は排気18を浄化するための三元触媒である。これら各触媒60,61は、排気通路48の径方向における径寸法よりも、排気通路48の長手方向における長さ寸法が、より大きくなるよう形成されている。
【0084】
前記両2次空気63,64のうち、より下流側の排気通路48に供給される2次空気64は、上記両触媒60,61の間の排気通路48に前記空気通路67とリード弁68とを通し供給される。また、前記両O2センサー72,73は、共に上記各触媒60,61よりも下流側に設置されている。
【0085】
上記構成によれば、排気管47内の排気通路48に排気浄化用の触媒60,61を設け、この触媒60,61よりも上流側の排気通路48内に2次空気63を供給可能とする空気通路65を形成している。
【0086】
ここで、前記したように、負圧が十分に大きい所望の排気脈動が得られるため、この負圧により、上記排気通路48に2次空気63,64をより円滑に吸入させることができる。つまり、上記排気通路48に多量の2次空気63,64を供給できる。よって、仮に、エンジン11のエンジン本体15に対し吸気装置17により供給される混合気の空燃比(A/F)が小さい(濃い)としても、上記触媒60,61上流の排気空燃比を理論空燃比など、所望値にさせることができ、排気18の浄化がより確実に達成される。つまり、この排気18の浄化につき、エンジン11のエンジン性能の向上が、更に確実に達成される。
【0087】
また、前記したように、排気通路48の径方向における上記触媒60,61の径寸法よりも上記排気通路48の長手方向における上記触媒60,61の長さ寸法を、より大きくしている。
【0088】
ここで、上記エンジン11は船外機4に適用されており、このエンジン11を一般自動車に適用するような場合に比べ、エンジン11は全負荷最大出力点で使用されることが多い。このため、上記排気通路48における排気18の流速は比較的速くなる。そこで、上記したように上記触媒60,61の長さを、より大きくしたのであり、これにより、これら触媒60,61に対し排気18をより十分に接触させることができる。このため、上記排気18の浄化が更に確実に達成される。つまり、このエンジン11のエンジン性能の向上が、より確実に達成される。
【0089】
なお、図9中二点鎖線で示すように、各中途部排気管50は、その各長さをより短くしてもよい。
【実施例3】
【0090】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例3を添付の図13−19に従って説明する。
【0091】
この実施例3は、実施例2とほぼ同構成であるが、上記排気装置19のほぼ全体が上記エンジン本体15の前方に配置されている。また、クランク軸22と連動するバランサ82が設けられている。
【0092】
上記各中途部排気管50の排気通路48の長手方向の“中途部分”を水2の表面上の大気側に開放させるアイドリング排気通路57が形成されている。前記絞り弁79により開度が可変とされた前記絞り部78は、上記排気通路48の“中途部分”よりも下流側でその近傍に設けられている。
【0093】
上記構成によれば、第1に、上記絞り部78の開度をエンジン11の運転状態に合致するよう適性に調整してやれば、上記各中途部排気管50を流動してきた排気18の圧力が上記絞り部78で反転させられて、所望タイミングかつ所望負圧の排気脈動を得ることができる。よって、このエンジン11のエンジン性能を、より向上させることができる。
【0094】
また、第2に、次の作用効果が生じる。即ち、仮に、上記船外機4における動力伝達装置12の切換装置14への切り換え操作により、船体3を後方に向けて推進させた場合、水2の動圧によって、この水2が上記下流側排気管51の排気通路48を逆流し、上記アイドリング排気通路57にまで達するおそれがある。そして、この場合には、上記各排気通路48,57が塞がれるため、上記エンジン11が失速したり、停止したりするおそれを生じる。
【0095】
そこで、上記船体3を後方に向けて推進させるよう上記切換装置14の切り換え操作をしたときには、これに連動するような自動制御により、もしくは手動操作などにより、上記絞り部78の開度を小さくするよう上記絞り弁79を閉弁動作させてやれば、上記水2が上記アイドリング排気通路57にまで達することは、上記絞り部78により防止できる。よって、少なくとも上記アイドリング排気通路57を通しての排気18の流動が確保される。この結果、上記排気通路48を水2が逆流することに基づくエンジン11の失速や停止が防止され、エンジン11の駆動を、安定した状態で続けることができて有益である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】実施例1を示し、エンジンの全体簡略線図である。
【図2】実施例1を示し、船艇の後部側面図である。
【図3】実施例1を示し、エンジンの側面図である。
【図4】実施例1を示し、エンジンの背面図である。
【図5】実施例1を示し、エンジンの底面部分断面図である。
【図6】実施例1を示し、図5の部分拡大詳細断面図である。
【図7】実施例1を示し、排気装置の部分斜視図である。
【図8】実施例1を示し、絞り部と絞り弁との平面断面図である。
【図9】実施例2を示し、図3に相当する図である。
【図10】実施例2を示し、エンジンの正面図である。
【図11】実施例2を示し、エンジンの平面部分断面図である。
【図12】実施例2を示し、図9の部分拡大断面図である。
【図13】実施例3を示し、図3に相当する図である。
【図14】実施例3を示し、エンジンの正面図である。
【図15】実施例3を示し、エンジンの部分平面図である。
【図16】実施例3を示し、図5に相当する図である。
【図17】実施例3を示し、排気装置の部分斜視図である。
【図18】実施例3を示し、図15の部分拡大断面図である。
【図19】実施例3を示し、図15の他の部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0097】
1 船艇
2 水
3 船体
4 船外機
9 ケース
10 プロペラ
11 エンジン
12 動力伝達装置
14 切換装置
15 エンジン本体
16 空気
17 吸気装置
18 排気
19 排気装置
21 軸心
22 クランク軸
23 クランクケース
24 バンク
25 バンク
27A−27H 第1−第8気筒
47 排気管
48 排気通路
49A−49H 第1−第8上流側排気管
50A−50D 第1−第4中途部排気管
51A 第1下流側排気管
51B 第2下流側排気管
57 アイドリング排気通路
60 触媒
61 触媒
63 2次空気
64 2次空気
65 空気通路
66 リード弁
67 空気通路
68 リード弁
78 絞り部
79 絞り弁
R 回転
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気干渉の防止のために、第1−第8気筒から延出する排気管のそれぞれの管経路が、各気筒の点火順序に基づいて定められるようにした8気筒エンジンにおける排気装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多気筒エンジンにおける排気装置には、従来、下記特許文献1に示されるものがある。この公報のものによれば、奇数番に爆発する複数の気筒からそれぞれ延出する各排気通路と、偶数番に爆発する複数の気筒からそれぞれ延出する他の各排気通路とを一旦別個に集合させた後に、すべての排気通路を集合させるようにしている。そして、この構成によれば、爆発順序が連続するシリンダ同士の排気干渉が防止され、これにより、エンジン性能が向上することとされている。
【特許文献1】特開2000−265836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来の技術では、エンジンは船外機の駆動源とされている。この船外機は、持ち運びや取り扱いの容易化のため、従来より、特にコンパクト化が要求されている。そこで、このエンジンを全体的にコンパクトにしようとして、上記各排気通路を短くしたとする。すると、例えば、奇数番に爆発する先の気筒と、これに続いて爆発する偶数番の後の気筒とは上記のように短くされた各排気通路を通して、寸法上、互いに接近しがちとなる。
【0004】
このため、上記先の気筒からの排気に対し、後の気筒からの排気が干渉しがちとなる。よって、上記先の気筒から延出する排気通路において、負圧が十分に大きい所望の排気脈動を得ることはできないおそれを生じる。
【0005】
そして、上記したように、排気脈動の負圧が十分に大きくない場合には、気筒の掃気が不十分になりがちとなる。このため、気筒内への燃焼ガスの残留によるノッキングの発生、失火の発生、ポンピングロスの増大、および新気の吸入不良による体積効率の減少などが生じる。この結果、エンジン出力の低下、燃費の悪化、および排気の悪化などが生じ、つまり、エンジン性能の低下が生じがちとなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、8気筒エンジンにおいて、各気筒からの排気が互いに干渉することを防止して、エンジン性能を、より確実に向上させるようにすることである。
【0007】
請求項1の発明は、全図に例示するように、第1−第8気筒27A−27Hと、これら第1−第8気筒27A−27Hから延出する排気管47とを備え、上記第1−第8気筒27A−27Hがこの順序で点火されるようにした8気筒エンジンにおける排気装置において、
上記排気管47が、上記第1−第8気筒27A−27Hからそれぞれ延出する第1−第8上流側排気管49A−49Hと、上記第1、第5上流側排気管49A,49Eの延出端部同士、第2、第6上流側排気管49B,49Fの延出端部同士、第3、第7上流側排気管49C,49Gの延出端部同士、および第4、第8上流側排気管49D,49Hの延出端部同士のそれぞれの結合部からそれぞれ延出する第1−第4中途部排気管50A−50Dと、上記第1、第3中途部排気管50A,50Cの延出端部同士、および第2、第4中途部排気管50B,50Dの延出端部同士のそれぞれの結合部からそれぞれ延出して大気側に連通させる第1、第2下流側排気管51A,51Bとを備えたものである。
【0008】
請求項2の発明は、全図に例示するように、請求項1の発明に加えて、上記第1、第5上流側排気管49A,49E同士、第2、第6上流側排気管49B,49F同士、第3、第7上流側排気管49C,49G同士、および第4、第8上流側排気管49D,49H同士をそれぞれ互いにほぼ同じ等価管長となるようにしたものである。
【0009】
請求項3の発明は、図9−19に例示するように、請求項1、もしくは2の発明に加えて、上記排気管47内の排気通路48に排気浄化用の触媒60,61を設け、この触媒60,61よりも上流側の排気通路48内に2次空気63を供給可能とする空気通路65を形成したものである。
【0010】
請求項4の発明は、図9−12に例示するように、請求項3の発明に加えて、上記排気通路48の径方向における上記触媒60,61の径寸法よりも上記排気通路48の長手方向における上記触媒60,61の長さ寸法を、より大きくしたものである。
【0011】
請求項5の発明は、図13−19に例示するように、請求項1から4のうちいずれか1つの発明に加えて、上記エンジン11を船外機4の駆動源とし、上記排気管47内の排気通路48の中途部分を水2の表面上の大気側に開放させるアイドリング排気通路57を形成した8気筒エンジンにおける排気装置であって、
上記排気通路48の中途部分よりも下流側における排気通路48の部分の開度を可変とする絞り部78を設けたものである。
【0012】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0013】
本発明による効果は、次の如くである。
【0014】
請求項1の発明は、第1−第8気筒と、これら第1−第8気筒から延出する排気管とを備え、上記第1−第8気筒がこの順序で点火されるようにした8気筒エンジンにおける排気装置において、
上記排気管が、上記第1−第8気筒からそれぞれ延出する第1−第8上流側排気管と、上記第1、第5上流側排気管の延出端部同士、第2、第6上流側排気管の延出端部同士、第3、第7上流側排気管の延出端部同士、および第4、第8上流側排気管の延出端部同士のそれぞれの結合部からそれぞれ延出する第1−第4中途部排気管と、上記第1、第3中途部排気管の延出端部同士、および第2、第4中途部排気管の延出端部同士のそれぞれの結合部からそれぞれ延出して大気側に連通させる第1、第2下流側排気管とを備えている。
【0015】
このため、例えば、第1気筒からの排気は第1上流側排気管、第1中途部排気管、および第1下流側排気管を順次通して大気側に達する。次に、第2気筒からの排気は第2上流側排気管、第2中途部排気管、および第2下流側排気管を順次通して大気側に達する。次に、第3気筒から排気が排出されるが、この排気については後述する。次に、第4気筒からの排気は第4上流側排気管、第4中途部排気管、および第2下流側排気管を順次通して大気側に達する。よって、上記第1気筒からの排気に対し、これに後続する上記第2気筒、第4気筒からの排気が上記各上流側排気管、各中途部排気管、および各下流側排気管内で干渉する、ということは防止される。
【0016】
ここで、上記した第3気筒からの排気は第3上流側排気管、第3中途部排気管、および第1下流側排気管を順次通して大気側に達する。このため、上記第1気筒からの排気と、上記第3気筒からの排気とは共に上記第1下流側排気管を通ることとなる。よって、上記第1気筒からの排気に対し、上記第3気筒からの排気が上記第1下流側排気管内で干渉するおそれを生じる。
【0017】
しかし、上記第1気筒からの排気が通る第1上流側排気管、および第1中途部排気管と、上記第3気筒からの排気が通る第3上流側排気管、および第3中途部排気管とは、互いに独立していて、長い寸法を有している。このため、上記第1、第3気筒は、排気通路の寸法上、互いに大きく離れている。よって、上記第1気筒からの排気に対し、上記第3気筒からの排気が上記第1下流側排気管内で干渉する、ということは防止される。
【0018】
また、上記第1気筒と第5気筒とは、これらから延出する第1、第5上流側排気管同士が互いに結合していて、寸法上、互いに接近している。しかし、上記第1気筒の点火から第5気筒の点火までの間隔は、上記第2−第4気筒の点火を挟むことにより、大きく離れている。このため、上記第1気筒と第5気筒との各排気期間が重なる、ということが防止される。よって、上記第1気筒からの排気に対し、上記第5気筒からの排気が上記第1、第5上流側排気管内で干渉する、ということは防止される。
【0019】
また、第1気筒の点火から第6−第8気筒の点火までの間隔は、更に大きく離れている。このため、第1気筒からの排気に対し、第6−第8気筒からの排気が干渉する、ということも防止される。
【0020】
以下、上記第1気筒以外の他の各気筒からの各排気についても、上記第1気筒からの排気につき説明したことと同様である。この結果、上記エンジンにおける排気干渉が防止されて、負圧が十分に大きい所望の排気脈動が得られ、このエンジンのエンジン性能の向上が、より確実に達成される。
【0021】
請求項2の発明は、上記第1、第5上流側排気管同士、第2、第6上流側排気管同士、第3、第7上流側排気管同士、および第4、第8上流側排気管同士をそれぞれ互いにほぼ同じ等価管長となるようにしている。
【0022】
ここで、上記第1−第8気筒からの各排気のうち、互いに干渉し合う可能性が高い排気同士は、次の通りである。即ち、これら排気同士とは、互いに結合された上記第1、第5上流側排気管内においての上記第1、第5気筒からの排気同士、上記第2、第6上流側排気管内においての上記第2、第6気筒からの排気同士、上記第3、第7上流側排気管内においての上記第3、第7気筒からの排気同士、および上記第4、第8上流側排気管内においての上記第4、第8気筒からの排気同士である。
【0023】
そこで、前記のように、その内部で干渉が生じる可能性の大きい第1、第5上流側排気管同士などをそれぞれ互いにほぼ等しい等価管長としてある。
【0024】
このため、例えば、上記第1気筒からの排気に対し、この第1気筒から4番目に点火する第5気筒からの排気が干渉する程度と、この第5気筒からの排気に対し、この第5気筒から上記と同じ4番目に点火する上記第1気筒からの排気が干渉する程度とを互いにほぼ同じ状態にさせることができる。つまり、上記第1、第5気筒などからの各排気同士の干渉を、共に小さくかつより均一にさせることができる。よって、良好で安定したエンジン性能が確保される。
【0025】
請求項3の発明は、上記排気管内の排気通路に排気浄化用の触媒を設け、この触媒よりも上流側の排気通路内に2次空気を供給可能とする空気通路を形成している。
【0026】
ここで、前記したように、負圧が十分に大きい所望の排気脈動が得られるため、この負圧により、上記排気通路に2次空気をより円滑に吸入させることができる。つまり、上記排気通路に多量の2次空気を供給できる。よって、仮に、エンジンに供給される混合気の空燃比が小さい(濃い)としても、上記触媒上流の排気空燃比を理論空燃比など、所望値にさせることができ、排気の浄化がより確実に達成される。つまり、この排気の浄化につき、エンジンのエンジン性能の向上が、更に確実に達成される。
【0027】
請求項4の発明は、上記排気通路の径方向における上記触媒の径寸法よりも上記排気通路の長手方向における上記触媒の長さ寸法を、より大きくしている。
【0028】
ここで、例えば、上記エンジンを船外機に適用した場合には、エンジンを一般自動車に適用する場合に比べ、エンジンは全負荷最大出力点で使用されることが多い。このため、上記排気通路における排気の流速は比較的速くなる。そこで、上記したように上記触媒の長さを、より大きくしたのであり、これにより、これら触媒に対し排気をより十分に接触させることができる。このため、上記排気の浄化が更に確実に達成される。つまり、このエンジンのエンジン性能の向上が、より確実に達成される。
【0029】
請求項5の発明は、上記エンジンを船外機の駆動源とし、上記排気管内の排気通路の中途部分を水の表面上の大気側に開放させるアイドリング排気通路を形成した8気筒エンジンにおける排気装置であって、
上記排気通路の中途部分よりも下流側における排気通路の部分の開度を可変とする絞り部を設けている。
【0030】
このため、第1に、上記絞り部の開度をエンジンの運転状態に合致するよう適性に調整してやれば、上記各中途部排気管を流動してきた排気の圧力が上記絞り部で反転させられて、所望タイミングかつ所望負圧の排気脈動を得ることができる。よって、このエンジンのエンジン性能を、より向上させることができる。
【0031】
また、第2に、次の作用効果が生じる。即ち、仮に、上記船外機により船体を後方に向けて推進させた場合など、水の動圧によって、この水が上記排気通路を逆流し、上記アイドリング排気通路にまで達するおそれがある。そして、この場合には、上記各排気通路が塞がれるため、上記エンジンが失速したり、停止したりするおそれを生じる。
【0032】
そこで、上記船体を後方に向けて推進させた場合など、水が排気通路を逆流するおそれがあるときには、これに連動するような自動制御により、もしくは手動操作などにより、上記絞り部の開度を小さくさせてやれば、上記水が上記アイドリング排気通路にまで達することは、上記絞り部により防止できる。よって、少なくとも上記アイドリング排気通路を通しての排気の流動が確保される。この結果、上記排気通路を水が逆流することに基づくエンジンの失速や停止が防止され、エンジンの駆動を続けることができて有益である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明の8気筒エンジンにおける排気装置に関し、8気筒エンジンにおいて、各気筒からの排気が互いに干渉することを防止して、エンジン性能を、より確実に向上させるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための最良の形態は、次の如くである。
【0034】
即ち、8気筒エンジンにおける排気装置は、第1−第8気筒とこれら第1−第8気筒から延出する排気管とを備え、上記第1−第8気筒がこの順序で点火される。上記排気管は、上記第1−第8気筒からそれぞれ延出する第1−第8上流側排気管と、上記第1、第5上流側排気管の延出端部同士、第2、第6上流側排気管の延出端部同士、および第3、第7上流側排気管の延出端部同士、および第4、第8上流側排気管の延出端部同士のそれぞれの結合部からそれぞれ延出する第1−第4中途部排気管と、上記第1、第3中途部排気管の延出端部同士、および第2、第4中途部排気管の延出端部同士のそれぞれの結合部からそれぞれ延出して大気側に連通させる第1、第2下流側排気管とを備えている。
【実施例1】
【0035】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例1を添付の図1−8に従って説明する。
【0036】
図2において、符号1は、海など水2の表面に浮かべられる小型船艇である。また、矢印Frは、この船艇1の推進方向の前方を示している。また、下記する左右とは、上記前方に向かっての船艇1の幅方向をいうものとする。
【0037】
上記船艇1は、水2の表面に浮かべられる船体3と、この船体3の船尾に支持される船外機4とを備えている。この船外機4は、推進力を生じて上記船体3を前方、もしくは後方に向けて推進可能とさせる船外機本体5と、この船外機本体5を船体3に対し支持させるブラケット6とを備えている。
【0038】
上記船外機本体5は、縦方向に延びて、上記船体3に対しブラケット6により支持され、下部が水2中に没入されるケース9と、このケース9の下端部に支持されるプロペラ10と、上記ケース9の上端部に支持されるエンジン11と、上記ケース9内に収容されて、上記エンジン11に対しプロペラ10を連動連結させる動力伝達装置12と、上記エンジン11をその外方から開閉可能に覆うカウリング13とを備えている。
【0039】
上記動力伝達装置12は、手動操作により、上記プロペラ10を正、逆転切換可能とする歯車式の切換装置14を備えている。この切り換え操作により、上記船体3は前、後方のいずれかに向けて選択的に推進可能とされる。
【0040】
図1−6において、上記エンジン11は、4サイクルV型8気筒エンジンであって、上記船外機4の駆動源とされている。上記エンジン11は、上記ケース9の上面側に支持されるエンジン本体15、このエンジン本体15に大気側の空気16と燃料とによる混合気を供給可能とする吸気装置17、および上記エンジン本体15において混合気の燃焼により生じた燃焼ガスを排気18としてエンジン11の外部に排出させる排気装置19とを備えている。
【0041】
上記エンジン本体15は、上記ケース9の上面側に支持され、縦向きの軸心21回りに回転可能となるようクランク軸22を支持するクランクケース23と、このクランクケース23から水平方向の外方である後側方に向かって、エンジン11の底面視(図5)でV型に突出する左右バンク24,25とを備えている。これら各バンク24,25の挟角はほぼ60°であって、第1−第8気筒27A−27Hにより構成されている。これら第1−第8気筒27A−27Hは、この順序で順次点火されるようになっている。
【0042】
より具体的には、上記両バンク24,25のうちの一方(左側)のバンク24は、上記第1、第4、第6、第7気筒27A,27D,27F,27Gにより構成されている。また、これら気筒27A,27D,27F,27Gは、下方に向けてこの順序で配置されている。また、他方(右側)のバンク25は、上記第8、第3、第5、第2気筒27H,27C,27E,27Bにより構成されている。また、これら気筒27H,27C,27E,27Bは、下方に向けてこの順序で配置されている。更に、上記第1−第8気筒27A−27Hは、下方に向けて、第1気筒27A、第8気筒27H、第4気筒27D、第3気筒27C、第6気筒27F、第5気筒27E、第7気筒27G、第2気筒27Bの順序で配置されている。
【0043】
上記クランク軸22は、上記軸心21上に配置され、上記クランクケース23に支持されるジャーナル部を有するクランク主軸30と、このクランク主軸30に突設されるクランクアーム31と、これらクランクアーム31に支持され上記第1−第8気筒27A−27Hに対応して設けられるクランクピン32とを備えている。この場合、前記したように両バンク24,25の挟角は60°である。そして、上記第1−第8気筒27A−27Hに対応する8つのクランクピン32はエンジン11の底面視(図5)で次のように配列されている。
【0044】
即ち、上記クランク軸22の反時計回りで、上記第1、第8、第4、第3、第7、第2、第6、第5気筒に対応する各クランクピン32が、この順序で配置されている。また、上記第1、8気筒、第4、3気筒、第7、2気筒、および第6、5気筒にそれぞれ対応する両クランクピン32のなす角はそれぞれ30°とされている。また、上記第8、4気筒、第3、7気筒、第2、6気筒、および第5、1気筒にそれぞれ対応する両クランクピン32のなす角はそれぞれ60°とされている。つまり、このクランク軸22は、両バンクの挟角が90°であるV型多気筒エンジンにおけるクロスプレーン、ダブルプレーン、もしくはデュアルプレーンクランク式といわれる種類のものと同等種のものとされている。
【0045】
上記第1−第8気筒27A−27Hは、それぞれそのシリンダ孔34に軸方向摺動可能に嵌入されるピストン35と、これら各ピストン35と上記クランク軸22のクランクピン32とを互いに連動連結させる連接棒36とを備えている。
【0046】
上記各気筒27には、それぞれ上記シリンダ孔34の内外を連通させる吸、排気ポート38,39が形成されている。これら各ポート38,39をそれぞれ開閉可能とする吸、排気弁40,41が設けられている。これら吸、排気弁40,41は、上記クランク軸22に連動する不図示の動弁装置により所定のクランク角(θ)で開閉可能とされている。
【0047】
前記吸気装置17は、上記各気筒27から延出する吸気管44と、この吸気管44の延出端部に取り付けられるスロットル弁45とを備えている。上記吸気管44の内部は、上記スロットル弁45を通し大気側を上記各吸気ポート38に連通させる吸気通路46とされている。上記スロットル弁45は、上記吸気管44の延出端部における吸気通路46の開度を調整可能とする。
【0048】
図1−8において、前記排気装置19は、上記各気筒27から延出する排気管47を備えている。この排気管47の内部は、上記排気ポート39を大気側に連通させる排気通路48とされている。
【0049】
上記排気管47は、上記第1−第8気筒27A−27Hからそれぞれ個別に延出する第1−第8上流側排気管49A−49Hと、上記第1、第5上流側排気管49A,49Eの延出端部同士、第2、第6上流側排気管49B,49Fの延出端部同士、第3、第7上流側排気管49C,49Gの延出端部同士、および第4、第8上流側排気管49D,49Hの延出端部同士のそれぞれ結合部からそれぞれ延出する第1−第4中途部排気管50A−50Dとを備えている。
【0050】
また、排気管47は、上記上記第1、第3中途部排気管50A,50Cの延出端部同士、および第2、第4中途部排気管50B,50Dの延出端部同士のそれぞれの結合部からそれぞれ延出して、上記各結合部を大気側に連通させる第1、第2下流側排気管51A,51Bを備えている。この場合、上記大気側にとは、大気に向けて直接にと、水2中を通し大気に向けて間接にとを含んでいる。
【0051】
上記第1、第5上流側排気管49A,49E同士、第2、第6上流側排気管49B,4F同士、第3、第7上流側排気管49C,49G同士、および第4、第8上流側排気管49D,49H同士はそれぞれ互いにほぼ同じ等価管長とされている。また、上記第1−第4中途部排気管50A−50Dのうち、第1、第4中途部排気管50A,50D同士は互いにほぼ同じ等価管長とされている。また、上記第2、第3中途部排気管50B,50C同士は互いにほぼ同じ等価管長とされている。一方、上記第1、第4中途部排気管50A,50Dと第2、第3中途部排気管50B,50Cとは互いに不等の等価管長とされている。
【0052】
上記各排気ポート39は下流側に向かうに従い、その断面積が拡大するラバーズノズル形状とされている。このため、上記各排気弁41が開弁し始める際、上記シリンダ孔34側から上記排気ポート39に向かう排気18は、マッハ1以上に加速されて衝撃波が生成される。
【0053】
また、上記各上流側排気管49の排気通路48は、下流側に向かうに従い、その断面積が拡大するディフューザ構造とされている。また、上記排気弁41のシリンダ孔34側の端面から上記各中途部排気管50の下流端に至る寸法は300mm以上となるよう、上記各上流側排気管49と中途部排気管50との管長が長く定められている。
【0054】
即ち、上記上流側排気管49をディフューザ構造とし、これに加えて、上流側排気管49および中途部排気管50を長くしてある。このため、上記排気ポート39で生じた上記衝撃波、およびその通過後の部分により、より効率的に疎密領域を生じさせることができる。つまり、上記排気ポート39、上流側排気管49、および中途部排気管50における排気脈動の負圧を十分に大きくさせることができる。
【0055】
前記各下流側排気管51A,51Bは、それぞれその上流側を形成して上記各中途部排気管50の下流端を連結させる膨張室ケース56を備えている。これら各膨張室ケース56は、サージタンクとして働くものである。一方、上記各下流側排気管51A,51Bの下流側は、上記ケース9により形成されている。つまり、上記各下流側排気管51A,51Bの下流側の各排気通路48は、上記ケース9の上端面から水2の表面下の下端部後面にまで貫通するよう形成されている。上記各膨張室ケース56の下端部は上記ケース9の上端面に連結され、上記各膨張室ケース56内の排気通路48の下端部は、上記ケース9に形成された上記各排気通路48の上端部に連通させられている。
【0056】
上記各中途部排気管50の各下流端の軸方向に沿った視線でみて(図5)、上記各中途部排気管50の各下流端近傍における膨張室ケース56の断面積の大きさは、上記各中途部排気管50の各下流端の合計断面積の2倍以上とされている。これにより、上記各中途部排気管50から膨張室ケース56内に流入する排気18の圧力振動が効果的に減衰させられ、各排気18同士の干渉が防止される。
【0057】
上記各膨張室ケース56の内底面56aは、上記ケース9に形成された上記各排気通路48の上流端に向かって下方に傾くよう傾斜させられている。これにより、上記各膨張室ケース56の内底部に溜まろうとする水2は、上記ケース9内の上記各排気通路48を通して排水される。
【0058】
上記各中途部排気管50や下流側排気管51内の排気通路48の長手方向の中途部分を水2の表面上の大気側に開放させるアイドリング排気通路57が、上記ケース9に形成されている(図2)。
【0059】
上記排気管47の各上流側排気管49、各中途部排気管50、各下流側排気管51の膨張室ケース56、およびケース9には、それぞれ水冷却ジャケット58が形成されている。この水冷却ジャケット58は、上記排気18により、排気管47が高温になろうとすることを防止する。
【0060】
図1,6において、上記各排気ポート39の上流側に2次空気63が供給されるよう、上記各気筒27に空気通路65が形成され、かつ、リード弁66が設けられている。また、図1,4において、上記各中途部排気管50内の排気通路48に他の2次空気64が供給されるよう、他の空気通路67が形成され、かつ、リード弁が設けられている。
【0061】
上記各2次空気63,64よりも下流側において、上記各中途部排気管50を流動する排気18の成分(酵素濃度)を検出するO2センサー72と、上記各膨張室ケース56の下流端部を流動する排気18の成分を検出する他のO2センサー73とが設けられている。この他のO2センサー73をその上方から覆うカバー74が設けられている。このため、上記O2センサー73に向けて水滴が落下することが防止される。よって、上記O2センサー73が水滴により破損する、ということが防止される。
【0062】
上記各O2センサー72,73の検出信号に基づき、前記スロットル弁45による吸気通路46の開度、燃料の供給量、および2次空気63,64の供給量などが自動制御される。そして、この制御により、排気18の浄化効果が向上させられる。
【0063】
上記エンジン11が駆動するとき、クランク軸22が回転Rし、第1−第8気筒27A−27Hは、この順序で順次点火させられる。これら各点火のクランク角(θ)の間隔は90°とされて、一定とされている。なお、上記点火の間隔は、一定でなくてもよく、いずれか複数(2つ)の気筒がほぼ同時に点火するようにしてもよい。
【0064】
上記各気筒27の点火順序と同じ順序で、これら各気筒27から排気管47を通し、順次排気18が排出される。上記エンジン11が、全負荷など通常の駆動状態であるときは、上記排気18の圧力は大きく、かつ、多量である。このため、この排気18は、そのほとんどが上記排気管47の排気通路48を通し、水圧に対抗して水2中を通し大気中に排出される。一方、残りの少量の排気18は、上記アイドリング排気通路57を通して、大気中に直接排出される。そして、このエンジン11の駆動によるクランク軸22の回転Rに上記動力伝達装置12を介しプロペラ10が連動して、船艇1が推進可能とされる。
【0065】
一方、上記エンジン11のアイドリング時には、排気18は圧力が低く、かつ、少量である。このため、この排気18が上記排気管47の排気通路48を通し水2中に排出されることは、上記水圧により防止されて、上記排気18のほとんどが上記アイドリング排気通路57を通し大気側に排出される。
【0066】
図1,4,8において、上記各中途部排気管50の排気通路48の中途部分である下流端部に絞り部78が形成されている。この絞り部78の開度は、上記各中途部排気管50の下流端部にそれぞれ設けられたバタフライ式の複数(4つ)の絞り弁79により可変とされている。これら各絞り弁79は互いに一体的に開、閉弁動作するよう互いに連動連結されている。また、この弁動作をさせる不図示のアクチュエータが設けられている。なお、上記各絞り弁79は個別に弁動作させるようにしてもよい。
【0067】
上記構成によれば、排気管47が、上記第1−第8気筒27A−27Hからそれぞれ延出する第1−第8上流側排気管49A−49Hと、上記第1、第5上流側排気管49A,49Eの延出端部同士、第2、第6上流側排気管49B,49Fの延出端部同士、および第3、第7上流側排気管49C,49Gの延出端部同士、および第4、第8上流側排気管49D,49Hの延出端部同士のそれぞれの結合部からそれぞれ延出する第1−第4中途部排気管50A−50Dと、上記第1、第3中途部排気管50A,50Cの延出端部同士、および第2、第4中途部排気管50B,50Dの延出端部同士のそれぞれの結合部からそれぞれ延出して大気側に連通させる第1、第2下流側排気管51A,51Bとを備えている。
【0068】
このため、例えば、第1気筒27Aからの排気18は第1上流側排気管49A、第1中途部排気管50A、および第1下流側排気管51Aを順次通して大気側に達する。次に、第2気筒27Bからの排気18は第2上流側排気管49B、第2中途部排気管50B、および第2下流側排気管51Bを順次通して大気側に達する。次に、第3気筒27Cから排気18が排出されるが、この排気18については後述する。次に、第4気筒27Dからの排気18は第4上流側排気管49D、第4中途部排気管50D、および第2下流側排気管51Bを順次通して大気側に達する。よって、上記第1気筒27Aからの排気18に対し、これに後続する上記第2気筒27B、第4気筒27Bからの排気18が上記各上流側排気管49、各中途部排気管50、および各下流側排気管51内で干渉する、ということは防止される。
【0069】
ここで、上記した第3気筒27Cからの排気18は第3上流側排気管49C、第3中途部排気管50C、および第1下流側排気管51Aを順次通して大気側に達する。このため、上記第1気筒27Aからの排気18と、上記第3気筒27Cからの排気18とは共に上記第1下流側排気管51Aを通ることとなる。よって、上記第1気筒27Aからの排気18に対し、上記第3気筒27Cからの排気18が上記第1下流側排気管51A内で干渉するおそれを生じる。
【0070】
しかし、上記第1気筒27Aからの排気18が通る第1上流側排気管49A、および第1中途部排気管50Aと、上記第3気筒27Cからの排気18が通る第3上流側排気管49C、および第3中途部排気管50Cとは、互いに独立していて、長い寸法を有している。このため、上記第1、第3気筒27A,27Cは、排気通路48の寸法上、互いに大きく離れている。よって、上記第1気筒27Aからの排気18に対し、上記第3気筒27Cからの排気18が上記第1下流側排気管51A内で干渉する、ということは防止される。
【0071】
また、上記第1気筒27Aと第5気筒27Eとは、これらから延出する第1、第5上流側排気管49A,49E同士が互いに結合していて、寸法上、互いに接近している。しかし、上記第1気筒27Aの点火から第5気筒27Eの点火までの間隔は、上記第2−第4気筒27B−27Dの各点火を挟むことにより、大きく離れている。このため、上記第1気筒27Aと第5気筒27Eとの各排気期間が重なる、ということが防止される。よって、上記第1気筒27Aからの排気18に対し、上記第5気筒27Eからの排気18が上記第1、第5上流側排気管49A,49E内で干渉する、ということは防止される。
【0072】
また、第1気筒27Aの点火から第6−第8気筒27F−27Hの点火までの間隔は、更に大きく離れている。このため、第1気筒27Aからの排気18に対し、第6−第8気筒27F−27Hからの排気18が干渉する、ということも防止される。
【0073】
以下、他の各気筒27からの各排気18についても、上記第1気筒27Aからの排気18につき説明したことと同様である。この結果、上記エンジン11における排気干渉が防止されて、負圧が十分に大きい所望の排気脈動が得られ、このエンジン11のエンジン性能の向上が、より確実に達成される。
【0074】
また、前記したように、第1、第5上流側排気管49A,49E同士、第2、第6上流側排気管49B,49F同士、第3、第7上流側排気管49C,49G同士、および第4、第8上流側排気管49D,49H同士をそれぞれ互いにほぼ同じ等価管長となるようにしている。
【0075】
ここで、上記第1−第8気筒27A−27Hからの各排気18のうち、互いに干渉し合う可能性が高い排気18同士は、次の通りである。即ち、これら排気18同士とは、互いに結合された上記第1、第5上流側排気管49A,49E内においての上記第1、第5気筒27A,27Eからの排気18同士、上記第2、第6上流側排気管49B,49F内においての上記第2、第6気筒27B,27Fからの排気18同士、上記第3、第7上流側排気管49C,49G内においての上記第3、第7気筒27C,27Gからの排気18同士、および上記第4、第8上流側排気管49D,49H内においての上記第4、第8気筒27D,27Hからの排気18同士である。
【0076】
そこで、前記のように、その内部で干渉が生じる可能性の大きい第1、第5上流側排気管49A,49E同士などをそれぞれ互いにほぼ等しい等価管長としてある。
【0077】
このため、例えば、上記第1気筒27Aからの排気18に対し、この第1気筒27Aから4番目に点火する第5気筒27Eからの排気18が干渉する程度と、この第5気筒27Eからの排気18に対し、この第5気筒27Eから上記と同じ4番目に点火する上記第1気筒27Aからの排気18が干渉する程度とを互いにほぼ同じ状態にさせることができる。つまり、上記第1、第5気筒27A,27Eなどからの各排気18同士の干渉を、共に小さくかつより均一にさせることができる。よって、良好で安定したエンジン性能が確保される。
【0078】
なお、以上は図示の例によるが、上記両バンク24,25は、左右で逆の配置であってもよい。また、上記ケース9内に形成される排気通路48は単一であってもよい。
【0079】
以下の図9−19は、実施例2,3を示している。これら実施例2,3は、前記実施例1と構成、作用効果において多くの点で共通している。そこで、これら共通するものについては、図面に共通の符号を付してその重複した説明を省略し、異なる点につき主に説明する。また、これら実施例における各部分の構成を、本発明の目的、作用効果に照らして種々組み合せてもよい。
【実施例2】
【0080】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例2を添付の図9−12に従って説明する。
【0081】
図9−12において、上記両バンク24,25のうちの一方(左側)のバンク24は、上記第1、第3、第7、第5気筒27A,27C,27G,27Eにより構成されている。また、他方(右側)のバンク25は、上記第2、第4、第8、第6気筒27B,27D,27H,27Fにより構成されている。
【0082】
そして、上記第1、第3、第7、第5気筒27A,27C,27G,27Eに関連する第1、第3、第7、第5上流側排気管49A,49C,49G,49Eと、第1、第3中途部排気管50A,50Cと、第1下流側排気管51Aとは、上記クランク軸22よりも左側に配置されている。また、上記第2、第4、第8、第6気筒27B,27D,27H,27Fに関連する他のものは、上記クランク軸22よりも右側に配置されている。
【0083】
上記各中途部排気管50の排気通路48には、それぞれその長手方向に沿って複数(2つ)の触媒60,61が設置されている。これら触媒60,61は排気18を浄化するための三元触媒である。これら各触媒60,61は、排気通路48の径方向における径寸法よりも、排気通路48の長手方向における長さ寸法が、より大きくなるよう形成されている。
【0084】
前記両2次空気63,64のうち、より下流側の排気通路48に供給される2次空気64は、上記両触媒60,61の間の排気通路48に前記空気通路67とリード弁68とを通し供給される。また、前記両O2センサー72,73は、共に上記各触媒60,61よりも下流側に設置されている。
【0085】
上記構成によれば、排気管47内の排気通路48に排気浄化用の触媒60,61を設け、この触媒60,61よりも上流側の排気通路48内に2次空気63を供給可能とする空気通路65を形成している。
【0086】
ここで、前記したように、負圧が十分に大きい所望の排気脈動が得られるため、この負圧により、上記排気通路48に2次空気63,64をより円滑に吸入させることができる。つまり、上記排気通路48に多量の2次空気63,64を供給できる。よって、仮に、エンジン11のエンジン本体15に対し吸気装置17により供給される混合気の空燃比(A/F)が小さい(濃い)としても、上記触媒60,61上流の排気空燃比を理論空燃比など、所望値にさせることができ、排気18の浄化がより確実に達成される。つまり、この排気18の浄化につき、エンジン11のエンジン性能の向上が、更に確実に達成される。
【0087】
また、前記したように、排気通路48の径方向における上記触媒60,61の径寸法よりも上記排気通路48の長手方向における上記触媒60,61の長さ寸法を、より大きくしている。
【0088】
ここで、上記エンジン11は船外機4に適用されており、このエンジン11を一般自動車に適用するような場合に比べ、エンジン11は全負荷最大出力点で使用されることが多い。このため、上記排気通路48における排気18の流速は比較的速くなる。そこで、上記したように上記触媒60,61の長さを、より大きくしたのであり、これにより、これら触媒60,61に対し排気18をより十分に接触させることができる。このため、上記排気18の浄化が更に確実に達成される。つまり、このエンジン11のエンジン性能の向上が、より確実に達成される。
【0089】
なお、図9中二点鎖線で示すように、各中途部排気管50は、その各長さをより短くしてもよい。
【実施例3】
【0090】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例3を添付の図13−19に従って説明する。
【0091】
この実施例3は、実施例2とほぼ同構成であるが、上記排気装置19のほぼ全体が上記エンジン本体15の前方に配置されている。また、クランク軸22と連動するバランサ82が設けられている。
【0092】
上記各中途部排気管50の排気通路48の長手方向の“中途部分”を水2の表面上の大気側に開放させるアイドリング排気通路57が形成されている。前記絞り弁79により開度が可変とされた前記絞り部78は、上記排気通路48の“中途部分”よりも下流側でその近傍に設けられている。
【0093】
上記構成によれば、第1に、上記絞り部78の開度をエンジン11の運転状態に合致するよう適性に調整してやれば、上記各中途部排気管50を流動してきた排気18の圧力が上記絞り部78で反転させられて、所望タイミングかつ所望負圧の排気脈動を得ることができる。よって、このエンジン11のエンジン性能を、より向上させることができる。
【0094】
また、第2に、次の作用効果が生じる。即ち、仮に、上記船外機4における動力伝達装置12の切換装置14への切り換え操作により、船体3を後方に向けて推進させた場合、水2の動圧によって、この水2が上記下流側排気管51の排気通路48を逆流し、上記アイドリング排気通路57にまで達するおそれがある。そして、この場合には、上記各排気通路48,57が塞がれるため、上記エンジン11が失速したり、停止したりするおそれを生じる。
【0095】
そこで、上記船体3を後方に向けて推進させるよう上記切換装置14の切り換え操作をしたときには、これに連動するような自動制御により、もしくは手動操作などにより、上記絞り部78の開度を小さくするよう上記絞り弁79を閉弁動作させてやれば、上記水2が上記アイドリング排気通路57にまで達することは、上記絞り部78により防止できる。よって、少なくとも上記アイドリング排気通路57を通しての排気18の流動が確保される。この結果、上記排気通路48を水2が逆流することに基づくエンジン11の失速や停止が防止され、エンジン11の駆動を、安定した状態で続けることができて有益である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】実施例1を示し、エンジンの全体簡略線図である。
【図2】実施例1を示し、船艇の後部側面図である。
【図3】実施例1を示し、エンジンの側面図である。
【図4】実施例1を示し、エンジンの背面図である。
【図5】実施例1を示し、エンジンの底面部分断面図である。
【図6】実施例1を示し、図5の部分拡大詳細断面図である。
【図7】実施例1を示し、排気装置の部分斜視図である。
【図8】実施例1を示し、絞り部と絞り弁との平面断面図である。
【図9】実施例2を示し、図3に相当する図である。
【図10】実施例2を示し、エンジンの正面図である。
【図11】実施例2を示し、エンジンの平面部分断面図である。
【図12】実施例2を示し、図9の部分拡大断面図である。
【図13】実施例3を示し、図3に相当する図である。
【図14】実施例3を示し、エンジンの正面図である。
【図15】実施例3を示し、エンジンの部分平面図である。
【図16】実施例3を示し、図5に相当する図である。
【図17】実施例3を示し、排気装置の部分斜視図である。
【図18】実施例3を示し、図15の部分拡大断面図である。
【図19】実施例3を示し、図15の他の部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0097】
1 船艇
2 水
3 船体
4 船外機
9 ケース
10 プロペラ
11 エンジン
12 動力伝達装置
14 切換装置
15 エンジン本体
16 空気
17 吸気装置
18 排気
19 排気装置
21 軸心
22 クランク軸
23 クランクケース
24 バンク
25 バンク
27A−27H 第1−第8気筒
47 排気管
48 排気通路
49A−49H 第1−第8上流側排気管
50A−50D 第1−第4中途部排気管
51A 第1下流側排気管
51B 第2下流側排気管
57 アイドリング排気通路
60 触媒
61 触媒
63 2次空気
64 2次空気
65 空気通路
66 リード弁
67 空気通路
68 リード弁
78 絞り部
79 絞り弁
R 回転
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1−第8気筒と、これら第1−第8気筒から延出する排気管とを備え、上記第1−第8気筒がこの順序で点火されるようにした8気筒エンジンにおける排気装置において、
上記排気管が、上記第1−第8気筒からそれぞれ延出する第1−第8上流側排気管と、上記第1、第5上流側排気管の延出端部同士、第2、第6上流側排気管の延出端部同士、第3、第7上流側排気管の延出端部同士、および第4、第8上流側排気管の延出端部同士のそれぞれの結合部からそれぞれ延出する第1−第4中途部排気管と、上記第1、第3中途部排気管の延出端部同士、および第2、第4中途部排気管の延出端部同士のそれぞれの結合部からそれぞれ延出して大気側に連通させる第1、第2下流側排気管とを備えたことを特徴とする8気筒エンジンにおける排気装置。
【請求項2】
上記第1、第5上流側排気管同士、第2、第6上流側排気管同士、第3、第7上流側排気管同士、および第4、第8上流側排気管同士をそれぞれ互いにほぼ同じ等価管長となるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の8気筒エンジンにおける排気装置。
【請求項3】
上記排気管内の排気通路に排気浄化用の触媒を設け、この触媒よりも上流側の排気通路内に2次空気を供給可能とする空気通路を形成したことを特徴とする請求項1、もしくは2に記載の8気筒エンジンにおける排気装置。
【請求項4】
上記排気通路の径方向における上記触媒の径寸法よりも上記排気通路の長手方向における上記触媒の長さ寸法を、より大きくしたことを特徴とする請求項3に記載の8気筒エンジンにおける排気装置。
【請求項5】
上記エンジンを船外機の駆動源とし、上記排気管内の排気通路の中途部分を水の表面上の大気側に開放させるアイドリング排気通路を形成した8気筒エンジンにおける排気装置であって、
上記排気通路の中途部分よりも下流側における排気通路の部分の開度を可変とする絞り部を設けたことを特徴とする請求項1から4のうちいずれか1つに記載の8気筒エンジンにおける排気装置。
【請求項1】
第1−第8気筒と、これら第1−第8気筒から延出する排気管とを備え、上記第1−第8気筒がこの順序で点火されるようにした8気筒エンジンにおける排気装置において、
上記排気管が、上記第1−第8気筒からそれぞれ延出する第1−第8上流側排気管と、上記第1、第5上流側排気管の延出端部同士、第2、第6上流側排気管の延出端部同士、第3、第7上流側排気管の延出端部同士、および第4、第8上流側排気管の延出端部同士のそれぞれの結合部からそれぞれ延出する第1−第4中途部排気管と、上記第1、第3中途部排気管の延出端部同士、および第2、第4中途部排気管の延出端部同士のそれぞれの結合部からそれぞれ延出して大気側に連通させる第1、第2下流側排気管とを備えたことを特徴とする8気筒エンジンにおける排気装置。
【請求項2】
上記第1、第5上流側排気管同士、第2、第6上流側排気管同士、第3、第7上流側排気管同士、および第4、第8上流側排気管同士をそれぞれ互いにほぼ同じ等価管長となるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の8気筒エンジンにおける排気装置。
【請求項3】
上記排気管内の排気通路に排気浄化用の触媒を設け、この触媒よりも上流側の排気通路内に2次空気を供給可能とする空気通路を形成したことを特徴とする請求項1、もしくは2に記載の8気筒エンジンにおける排気装置。
【請求項4】
上記排気通路の径方向における上記触媒の径寸法よりも上記排気通路の長手方向における上記触媒の長さ寸法を、より大きくしたことを特徴とする請求項3に記載の8気筒エンジンにおける排気装置。
【請求項5】
上記エンジンを船外機の駆動源とし、上記排気管内の排気通路の中途部分を水の表面上の大気側に開放させるアイドリング排気通路を形成した8気筒エンジンにおける排気装置であって、
上記排気通路の中途部分よりも下流側における排気通路の部分の開度を可変とする絞り部を設けたことを特徴とする請求項1から4のうちいずれか1つに記載の8気筒エンジンにおける排気装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図9】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2008−31897(P2008−31897A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−204699(P2006−204699)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(000176213)ヤマハマリン株式会社 (256)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(000176213)ヤマハマリン株式会社 (256)
【Fターム(参考)】
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