説明

BRCA単独での、又は抗エストロゲン薬を伴った組み合わせ物としての使用のためのプロゲステロン受容体拮抗薬

本発明は、BRCA1又はBRCA2介在性乳癌の予防及び治療のための、プロゲステロン受容体拮抗薬11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オン、又は医薬的に許容し得るその誘導体若しくは類似体の頓用、並びにBRCA1又はBRCA2介在性乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、胃癌、結腸直腸癌、子宮内膜症、骨髄腫、筋腫、又は髄膜腫の予防及び治療のための、少なくとも1種類の純粋抗エストロゲン薬と共に、プロゲステロン受容体拮抗薬11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オン、又は医薬的に許容し得るその誘導体若しくは類似体を含んで成る組み合わせ物に関する。本発明はまた、BRCA1又はBRCA2介在性乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、胃癌、結腸直腸癌、子宮内膜症、骨髄腫、筋腫、又は髄膜腫の予防及び治療のための、少なくとも1種類のEGF又はEGFR標的薬と共に、プロゲステロン受容体拮抗薬11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オン、又は医薬的に許容し得るその誘導体若しくは類似体の組み合わせ物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、BRCA1又はBRCA2介在性乳癌の予防及び治療のための、プロゲステロン受容体拮抗薬11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オン、又は医薬的に許容し得るその誘導体若しくは類似体の頓用、並びにBRCA1又はBRCA2介在性乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、胃癌、結腸直腸癌、子宮内膜症、骨髄腫、筋腫、又は髄膜腫の予防及び治療のための、少なくとも1種類の純粋抗エストロゲン薬と共に、プロゲステロン受容体拮抗薬11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オン、又は医薬的に許容し得るその誘導体若しくは類似体を含んで成る組み合わせ物に関する。
【0002】
本発明はまた、BRCA1又はBRCA2介在性乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、胃癌、結腸直腸癌、子宮内膜症、骨髄腫、筋腫、又は髄膜腫の予防及び治療のための、少なくとも1種類のEGF又はEGFR標的薬と共に、プロゲステロン受容体拮抗薬11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オン、又は医薬的に許容し得るその誘導体若しくは類似体の組み合わせ物に関する。
【背景技術】
【0003】
以下のプロゲステロン受容体拮抗薬11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オン、別名ZK230211又はZK-PRA:
【0004】
【化1】

【0005】
は、その他の内分泌学的効果をほとんど伴わない、高い抗プロゲスターゲン活性(antiprogestagenic activity)を有する(Fuhrmann, U. et al., J. Med. Chem. 2000, 43, 5010-5016)。
【0006】
BRCA1とBRCA2は、いわゆる腫瘍抑制遺伝子であり、それらの正常型において癌を防ぐ遺伝子である。それらがこういったことをする手段の1つは、そうしないと発癌性の突然変異を引き起こす可能性があるDNA損傷の細胞修復を助けることによる。Poole et al., Science, Vol. 314, 12/2006には、腫瘍抑制遺伝子BRCA1又はBRCA2が、プロゲステロン受容体の分解に関与し、その遺伝子のタンパク質産物が、おそらく、乳房組織に対するプロゲステロンの成長促進作用を制御しているらしいと記載されている。ミフェプリストン(非特異的抗プロゲスチン)が、乳腺において齧歯動物バージョンのBRCA1又はBRCA2を不活性化したマウスにおける乳房腫瘍の発症を妨げることが示されている。それらのBrca1/p53欠損モデルにおける乳房腫瘍形成のミフェプリストン媒介性抑制が、BCRA1又はBRCA2変異を保有する女性における潜在的な化学的予防ストラテジーとしての抗プロゲステロンの将来的な臨床的評価のための分子骨格を提供することが、さらに主張されている。しかしながら、単独の又は純粋抗エストロゲン薬と組み合わせた、11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オンの活性と反応に関して何も記載されていない。
【0007】
Rosenらは、正常なBRCA1又はBRCA2がプロゲステロン受容体の作用を抑制することを記載しているが、しかしながら、機構について何も言及されていない。内分泌療法は、転移乳癌のための有効な、最小限の毒性の、緩和的な治療の柱である。手術不可能な乳癌の標準的な緩和療法として、並びに乳癌の一次治療後のアジュバント療法のために、非ステロイド系抗エストロゲン薬であるタモキシフェンなどの抗エストロゲン薬が使用される。しかしながら、タモキシフェンは、乳癌を治療できない。このため、二次療法のために、プロゲスチン又はアロマターゼ阻害剤が一般的に使用される。閉経前女性の卵巣摘出では、タモキシフェンとLHRH(黄体形成ホルモン放出ホルモン)類似体が、同様の結果を達成する(H.T. Mouridson et al., Eur. J. Cancer Clin. Oncol., 24, pp. 99-105,1988)。タモキシフェンは乳癌のアジュバント療法に広く使用されるが、その治療が子宮内膜癌の発生の増加をもたらすことが示されたので、化学的予防薬としての使用には問題が多い(I.N. White, Carcinogenesis, 20(7): 1153-60, 1999; L. Bergman et al., The Lancet, Vol. 356, Sept. 9, 2000)。
【0008】
選択的プロゲステロン受容体拮抗薬(抗プロゲスチンとも呼ばれる)は、比較的新しく、癌治療に重大な影響を与え得る有望な治療薬群体である。特定のプロゲステロン受容体拮抗薬は、最近、プロゲステロンの受容体を持つそれらの癌の内分泌療法における重要性を増している(Nathalie Chabbert-Buffet et al, Human Reproduction Update, Vol. 11, No. 3, 293-307, 2005)。
【0009】
内分泌療法におけるこの新しいストラテジーは、試験管内でのプロゲステロン受容体陽性ヒト乳癌細胞株、並びに生体内でのマウス及びラットの数種類のホルモン依存性乳房腫瘍におけるプロゲステロン受容体拮抗薬の抗腫瘍活性に基づいている。特に、プロゲステロン受容体拮抗薬オナプリストン及びミフェプリストン(RU 486)の抗癌機序が、マウスのホルモン依存性MXT乳房腫瘍モデル、並びにラットのDMBA及びMNU誘発型乳房腫瘍モデルを使用して調査された(M. R. Schneider et al., Eur. J. Cancer Clin. Oncol., Vol. 25, No. 4, pp. 691-701, 1989; H. Michna et al., Breast Cancer Research and Treatment 14: 275-288,1989; H. Michna, J. Steroid. Biochem. Vol. 34, Nos 1-6, pp. 447-453, 1989)。しかしながら、例えば、ミフェプリストン、に関係する低い活性と不都合な副作用のため、これらの化合物は、乳癌の管理において単剤としては推薦できなかった(D. Perrauit et al., J. Clin. Oncol. 1996 Oct, 14(10), pp.2709-2712)。
【0010】
RU486は、その強力な抗グルココルチコイド活性(antiglucocorticoidially activity)のため、深刻な副作用を引き起こしている。これは長期使用を妨げる。RU486を使用するとき、さらなる問題は、例えば、経口的に投与された場合の乏しい生物学的利用能である。したがって、通常、その化合物は、予想される好ましくない副作用を生じさせる高投与量で投与しなければならなかった。そのうえ、患者の利便性と服薬遵守に関して、経口投与が望ましい。
【0011】
そのうえさらに、乳癌及びその他のホルモン依存性疾患の治療において活性であるだけではなく、予防においても活性である、単独の又は組み合わせ物の状態の化合物が依然として必要とされている。
【0012】
ホルモン依存性腫瘍の増殖は、とりわけ、例えば、エストロゲン、プロゲステロンに、そして、テストステロンにさえも依存する。例えば、ほとんどの乳癌が、エストロゲン、並びにプロゲステロン受容体を提示する。このため、抗エストロゲン薬を伴ったプロゲステロン受容体拮抗薬の組み合わせ物は、閉経前及び閉経後の乳癌の治療に有効である可能性がある。
【0013】
よって、特にBRCA1又はBRCA2変異を担持する女性における乳癌発生、並びにプロゲステロンに依存するその他の疾患、例えば、卵巣癌、子宮内膜癌、結腸直腸癌、胃癌、子宮内膜症、骨髄腫、筋腫、及び髄膜腫など、の予防及び治療のための極めて有効なツールを提供することが、本発明の目的である。
【発明の概要】
【0014】
驚いたことに、単独の、又は少なくとも1種類の純粋抗エストロゲン薬を伴った組み合わせ物として、11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オンが、BRCA1又はBRCA2介在性乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、及び結腸直腸癌の予防及び治療に使用できることがここでわかった。
【0015】
さらに最も驚いたことに、抗エストロゲン薬を伴ったプロゲステロン受容体拮抗薬11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オンの組み合わせ物が、単独のプロゲステロン受容体拮抗薬又は純粋抗エストロゲン薬の阻害と比較して、相乗効果を示すことがここでわかった。
【0016】
化合物11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オンと共に組み合わせられ得る抗エストロゲン薬は、例えば、WO 03/045972に開示されたものであり、且つ、以下の一般式(I):
【0017】
【化2】

【0018】
[式中、
Halが、F又はClを表し、且つ、11β位のエストラトリエン骨格に結合され、
R3が、水素、C1-C4-アルキル、C1-C4-アルカノイル、又はO原子を伴った環状C3-C7-エーテルを表し、
R17’が、水素、C1-C4-アルキル、又はC1-C4-アルカノイルを表し、
R17”が、C1-C4-アルキル、C1-C4-アルキル、C1-C4-アルキニル(alkinyl)、並びに少なくとも部分的にフッ素化されたC1-C4-アルキル基を表し、ここで、17β位のR17’-Oと17α位のR17’’が、エストラトリエン骨格に結合され、そして、
【0019】
SKが、基U-V-W-X-Y-Z-E
{式中、Uが、直鎖若しくは分岐鎖いずれかのC1-C13-アルキレン-、-アルケニレン-、若しくは-アルキニレン(alkinylene)基、又は基A-Bを意味し、ここで、Aが、エストラトリエン骨格に結合され、且つ、-CH2-を介してエストラトリエン骨格に結合されるベンジリデン基、フェニレン基、又はアルキル基を介してエストラトリエン骨格に結合されるC1-C3-アルキルアリール基を意味し、且つ、Bが、直鎖若しくは分岐鎖C1-C13-アルキレン-、-アルケニレン-、又は-アルキニレン基を表し、そして、ここで、AとBが、O原子を介して互いに接続されてもよく、
式中、Vが、CH2-又はC(O)基をさらに意味し、
【0020】
式中、Wが、さらに、N(R6)-基若しくはN+(O-)(R6)基であるか、又はアゾリジニレン環若しくはアゾリジニレン-N-オキシド環であり、ここで、上記のアゾリジニレン環又はアゾリジニレン-N-オキシド環が、基Xの少なくとも1つのC原子を包含し、ここで、R6が、さらに、H、又はCH2-R7若しくはC(O)-R7のいずれかであり、式中、R7が、以下の:
a)水素、又は
b)1ヶ所以上でヒドロキシル化され得、且つ、1〜3個のヘテロ原子-O-及び-S-、及び/又は基-NR9-(式中、R9が、水素又はC1-C3-アルキル基を表す)によって中断され得る、直鎖若しくは分岐鎖の、フッ素化されていない若しくは少なくとも部分的にフッ素化されたC1-C14-アルキル-、-アルケニル-、若しくは-アルキニル基、又は
【0021】
c)置換されていないか若しくは置換されたアリール基若しくはヘテロアリール基、又は
d)置換されていないか若しくは置換されたC3-C10-シクロアルキル基、又は
e)置換されていないか若しくは置換されたC4-C15-シクロアルキルアルキル基、又は
f)置換されていないか若しくは置換されたC7-C20-アラルキル基、又は
g)置換されていないか若しくは置換されたヘテロアリール-C1-C6-アルキル基、又は
h)置換されていないか若しくは置換されたアミノアルキル基若しくはビフェニル基、
を意味することができ、
【0022】
式中、Xが、さらに、直鎖又は分岐鎖C1-C12-アルキレン-、-アルケニレン-、又は-アルキニレン基であり、
式中、Yが、さらに、XとZの間の直接結合であるか、又は以下の:
a)SOn-R10基、ここで、WがN+(O-)R6基又はアゾリジニレン-N-オキシド環であり、且つ、N(R6)基又はアゾリジニレン環ではない場合のみ、n=0、1、又は2であり、ここで、R10が、SOnとZの間の直接結合を意味するか、又は直鎖若しくは分岐鎖C1-C6-アルキレン-、-アルケニレン-、若しくは-アルキニレン基を意味し、又は、
【0023】
b)基R11又はO-R11、ここで、R11が、以下の:
i)直鎖若しくは分岐鎖C1-C5-アルキレン-、-アルケニレン-、若しくは-アルキニレン基、若しくは
ii)置換されていないか若しくは置換されたアリール基若しくはヘテロアリール基、若しくは
iii)置換されていないか若しくは置換されたC3-C10-シクロアルキル基、若しくは
iv)置換されていないか若しくは置換されたC4-C15-シクロアルキルアルキル基、若しくは
v)置換されていないか若しくは置換されたC7-C20-アラルキル基、若しくは
vi)置換されていないか若しくは置換されたヘテロアリール-C1-C6-アルキル基、
を表し、又は
【0024】
c)基CH=CF、又は
d)基HN-C(O)-NH-R12、ここで、R12が、置換されていないか又は置換されたアリーレン基を表し、且つ、ここで、R12が、Zに結合され、
であり、そして、
式中、Zが、さらに、YとEの間の直接結合であるか、又は部分的に若しくは完全にフッ素化されてもよい、直鎖若しくは分岐鎖C1-C9-アルキレン-、-アルケニレン-、又は-アルキニレン基であり、そして、
式中、Eが、さらに、CF3基であるか、又は少なくとも部分的にフッ素化されたアリール基である。}を表し、ここで、この基が、7α位のUを介してエストラトリエン骨格に結合される。]を持つものであり、ここで、薬理学的に適合し得る酸付加塩、並びにエステルも含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】PRAとFaslodexの組合せ物に関する結果を示す。
【図2】PRAとFaslodexの組合せ物に関する結果を示す。
【0026】
Halは、特に、フッ素を表す。
R3は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、及びtert-ブチル、対応するアルカノイル(アセチル、プロピオニル、ブタノイル)、又は環状エーテルであり得る。R3は、特に、水素、CH3、CH3CO、又はC5H10Oを表す。
【0027】
R17’及びR17”は、特に、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、及びtert-ブチルであり、ここで、加えて、R17’はまた、水素、アセチル、プロピオニル、及びブタノイルであり得、そして、この場合、その対応する異性体が含まれ得る。加えて、R17’は、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、及び3-ブチニル、並びにトリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、及びノナフルオロブチルであり得、この場合、対応する異性体もまた含まれる。R17’は、特に、水素、CH3、又はCH3COである。R17”は、好ましくは、メチル、エチニル、及びトリフルオロメチルを表す。Uは、特に、直鎖又は分岐鎖アルキレン基であり得、そして、特に、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン、又はトリデシレン基であり得る。Uは、好ましくは、(CH2pを表し、ここで、pは2〜10の整数である。特に、Uは、好ましくは、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、又はヘプチレン基である。Uは、極めて特に好ましくは、n-ブチレン基、すなわち、Uに関する式(CH2pにおいて、p=4である。特に、VはCH2を表す。よって、基U-Vは、極めて好ましい態様において、n-ペンチレンである。
【0028】
特に、Wは、アミン-N-オキシドN+(O-)(R6)を表すか、又はアミンN(R6)を表し、ここで、R6は、好ましくは、水素、又はCH2-R7{式中、R7は、特に、水素、又はメチル若しくはエチルを表す}である。よって、R6は、好ましくは、水素又はC1-C3-アルキル基であり、よって、特に、メチル、エチル、n-プロピル、又はイソ-プロピル基である。特に好ましい態様において、Wは、N+(O-)(CH3)基(N-メチルアミン-N-オキシド)を意味する。Xは、好ましくは、(CH2qを表し、ここで、q=0であるか、又は整数1〜12である、よって、WとYの間の直接結合を表すか、又は直鎖若しくは分岐のメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、又はドデシレン基を表す。特に好ましい態様において、Xは、エチレン、n-プロピレン、n-ブチレン、n-ペンチレン、n-ヘキシレン、n-ヘプチレン、又はn-オクチレン基である。
【0029】
特に、Yは、XとZの間の直接結合を表し得る。この場合であれば、Xは、より長いアルキレン鎖を表し、よって、特に、Xは、n-ヘキシレン、n-ヘプチレン、又はn-オクチレンを表す。好ましい態様において、Yはまた、SOn基であってもよく、ここで、n=0、1、又は2であり、よって、スルファニル基、スルフィニル基、又はスルホニル基であってもよい。YがSOn基であれば、Xは、ある程度短いアルキレン鎖、特に、n-プロピル鎖を意味する。
【0030】
Zは、好ましくはYとEの間の直接結合であるか、又は、少なくとも部分的にフッ素化され得る、直鎖又は分岐鎖C1-C7-アルキレン基である。特に、Zは、少なくとも部分的にフッ素化され得る、メチレン、エチレン、プロピレン、又はブチレン基であり得る。特に、Zは、ジフルオロメチレン、又は一端がペルフルオロ化された直鎖アルキレン基であり、よって、例えば、1,1-ジフルオロエチレン、1,1,2,2-テトラフルオロ-n-プロピレン、又は1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロ-n-ブチレン基である。端末のC原子上に2つだけフッ素原子を担持するアルキレン基が特に有利であり、ここで、このCF2基は基Eに結合される。この場合、側鎖SKはC2F5により終結される。
特に、Eは、CF3を表すか、又はペンタフルオロフェニルを表す。よって、基Z-Eは、好ましくは、C2F5、C3F7、及びC4F9、並びにC6F5を含んで成る群から選択される基の1つを意味する。
【0031】
本願発明によると、17α-アルキル-17β-オキシ-エストラトリエンの薬理学的に適合し得る酸付加塩又はエステルもまた含まれる。付加塩は、無機酸及び有機酸によるその対応する塩である。付加塩として、特に、塩酸塩、臭化水素酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩、及びメタンスルホン酸塩が考慮される。3,17β-ジオールが存在するような、R3及びR17が水素である場合には、これらのヒドロキシ化合物のエステルもまた形成され得る。これらのエステルは、好ましくは、有機酸を用いて形成され、ここで、付加塩を形成するためのものと同じ酸、すなわち、特に酢酸が好適であるが、しかしまた、より高級なカルボン酸、例えば、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、又はピバル酸も好適である。
【0032】
11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オンと共に組み合わせられ得る選択された化合物は、以下のものである:
11β-フルオロ-7α-{5-[メチル(7,7,8,8,9,9,9-ヘプタフルオロノニル)アミノ]ペンチル}-17α-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオールN-オキシド、
11β-フルオロ-7α-{5-[メチル(8,8,9,9,10,10,10-ヘプタフルオロデシル)アミノ]ペンチル}-17α-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオールN-オキシド、
(RS)-11β-フルオロ-7α-{5-[メチル(7,7,8,8,9,9,10,10,10-ノナフルオロデシル)アミノ]-ペンチル}-17α-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオールN-オキシド、
11β-フルオロ-7α-{5-[メチル(8,8,9,9,9-ペンタフルオロノニル)アミノ]ペンチル}-17α-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオールN-オキシド、
【0033】
11β-フルオロ-7α-{5-[メチル(9,9,10,10,10-ペンタフルオロデシル)アミノ]ペンチル-17α-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオールN-オキシド、
11β-フルオロ-7α-{5-[メチル(8,8,9,9,9-ペンタフルオロノニル)アミノ]ペンチル}-17α-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、
11β-フルオロ-7α-{5-[メチル(7,7,8,8,9,9,10,10,10-ノナフルオロデシル)アミノ]ペンチル}-17α-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、
11β-フルオロ-7α-{5-[メチル(7,7,8,8,9,9,9-ヘプタフルオロノニル)アミノ]ペンチル}-17α-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、
17α-エチニル-11β-フルオロ-7α-{5-[メチル(7,7,8,8,9,9,10,10,10-ノナフルオロデシル)-アミノ]ペンチル}-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、
【0034】
17α-エチニル-11β-フルオロ-3-(2-テトラヒドロピラノイルオキシ)-7α-{5-[メチル(7,7,8,8,9,9,10,10,10-ノナフルオロデシル)アミノ]ペンチル}-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-17β-オール、
11β-フルオロ-3-(2-テトラヒドロピラニルオキシ)-7α-{5-[メチル(7,7,8,8,9,9,10,10,10-ノナフルオロデシル)アミノ]ペンチル}-17α-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-17β-オール、
11β-フルオロ-7α-{5-[メチル(7,7,8,8,9,9,10,10,10-ノナフルオロデシル)アミノ]ペンチル}-17α-トリフルオロメチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、
11β-フルオロ-7α-{5-[メチル(6,6,7,7,8,8,8-ヘプタフルオロオクチル)アミノ]ペンチル}-17α-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、
【0035】
11β-フルオロ-7α-{5-[メチル(8,8,9,9,10,10,10-ヘプタフルオロデシル)アミノ]ペンチル}-17α-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、
11β-フルオロ-7α-{5-[メチル(6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-ウンデカフルオロデシル)アミノ]ペンチル}-17α-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール
11β-フルオロ-7α-{5-[メチル(5,5,6,6,7,7,8,8,8-ノナフルオロオクチル)アミノ]ペンチル}-17α-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、
11β-フルオロ-7α-{5-[メチル(9,9,10,10,11,11,11-ヘプタフルオロウンデシル)アミノ]ペンチル}-17α-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、
11β-フルオロ-7α-{5-[メチル(9,9,10,10,10-ペンタフルオロデシル)アミノ]ペンチル}-17α-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール。
【0036】
これらの化合物は、投与後、高い抗エストロゲン活性を示す。17β位の封鎖によって、(活性)代謝産物の形成が抑えられる。
特に好ましい抗エストロゲン化合物は、11β-フルオロ-17α-メチル-7α-{5-[メチル(8,8,9,9,9-ペンタフルオロノニル)アミノ]ペンチル}-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール及び7α-[9-(4,4,5,5,5-ペンタフルオロペンチルスルフィニル)-ノニル]-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、並びに医薬的に許容し得るそれらの誘導体若しくはその類似体である。
プロゲステロン受容体拮抗薬11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オンと組み合わせられ得る、さらに興味深いステロイド系抗エストロゲン化合物は、例えば、以下の構造:
【0037】
【化3】

【0038】
を有するTAS-108(Yamamoto et al., Clin. Cancer Res. 315, Vol. 11, 315-322, 2005)及びICI 164.384(Wakeling et al., Cancer Res. 51, 3867, 1991)である。
【0039】
11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オン、又は抗エストロゲン薬との組み合わせ物は、細胞サイクルのS期にある腫瘍細胞量の増加が高い危険性の指標となる乳癌とその他のホルモン依存性疾患の予防及び治療のための作用の中で特に有利な機構である、腫瘍細胞のアポトーシスの増加を伴うことがさらにわかった。前述のその他のホルモン依存性疾患としては、卵巣癌、子宮内膜癌、骨髄腫、肺癌、髄膜腫、すなわち、ホルモン受容体、及び/又はホルモン依存性経路の存在に実質的に起因するか、又はそれによって影響を受ける疾患を挙げることができる。
【0040】
本発明は、そのうえさらに、BRCA1及びBRCA2変異を担持する女性の癌、並びにその他のホルモン依存性病態の予防用及び治療用医薬品の調製のための組み合わせ物の使用に関する。具体的には、11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オンは、ホルモン依存性腫瘍を予防するのに特に好適であり、そして、純粋抗エストロゲン薬を伴った11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オンの組み合わせ物が、単独のプロゲステロン受容体拮抗薬又は純粋抗エストロゲン薬と比較した場合に、前述の腫瘍の増殖を効果的に抑制することを示した。
【0041】
他の側面において、本発明は、BRCA1又はBRCA2遺伝子の突然変異によりこのような治療を必要としている哺乳動物、特にヒトの乳癌及びその他のホルモン依存性疾患の予防及び治療方法であって、プロゲステロン受容体拮抗薬11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オン、又は医薬的に許容し得るその誘導体若しくは類似体、及び少なくとも1種類の純粋抗エストロゲン薬を含んで成る組成物の医薬的に有効な量を、それを必要とする哺乳動物に投与するステップを含んで成る前記方法を提供する。
11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オン、又は医薬的に許容し得るその誘導体若しくは類似体は、単独で、又は少なくとも1種類の純粋抗エストロゲン薬と組み合わせて、本発明に従って使用され得る。
【0042】
好ましくは、純粋抗エストロゲン薬は、これらの純粋抗エストロゲン薬の医薬的に許容し得る誘導体若しくは類似体を含めた純粋抗エストロゲン薬から成る群から選択される。その組み合わせ物は、癌及び他のホルモン依存性疾患の予防及び治療に特に有利である。
純粋抗エストロゲン薬としても知られている化合物、例えば、7α-[9-(4,4,5,5,5-ペンタフルオロペンチルスルフィニル)-ノニル]-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、及び医薬的に許容し得るその誘導体若しくは類似体が、本発明の目的に使用される。
【0043】
プロゲステロン受容体拮抗薬(I)は、本発明の目的のための好ましいプロゲステロン受容体拮抗薬であるが、これはまた、その他の好適なプロゲステロン受容体拮抗薬も使用する可能性を排除しない。
【0044】
従来技術を越える本発明の組み合わせ物の優位性に関して、プロゲステロン受容体拮抗薬11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オンが、例えば、アンドロゲン、エストロゲン、又は抗グルココルチコイド活性などの内分泌副作用が極めて弱いか又はそれがないことを示すことが、特に好ましい。
【0045】
さらに、本発明に従って使用される純粋抗エストロゲン薬は、タモキシフェン又はラロキシフェンと比較して、部分的エストロゲン活性を実質的に持たない。本発明に従って使用される純粋抗エストロゲン薬、特に、純粋抗エストロゲン薬11β-フルオロ-17α-メチル-7α-{5-[メチル(8,8,9,9,9-ペンタフルオロノニル)-アミノ]ペンチル}-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオールは、例えば、従来法で使用される抗エストロゲン薬ICI 182,780(EP-A-0 138 504)と比較した場合に、特に高い生物学的利用能を示す。
【0046】
それらの医薬的に許容し得る誘導体又はその類似体を含めた、プロゲステロン受容体拮抗薬11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オン、及び純粋抗エストロゲン薬、好ましくは、純粋抗エストロゲン薬11β-フルオロ-17α-メチル-7α-{5-[メチル(8,8,9,9,9-ペンタフルオロノニル)-アミノ]ペンチル}-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、を含んで成る本発明による組み合わせ物の高い生物学的利用能のため、組み合わせ物を経口的に投与できると考えられる。
【0047】
よって、最も興味深いものは、抗エストロゲン薬11β-フルオロ-17α-メチル-7α-{5-[メチル(8,8,9,9,9-ペンタフルオロノニル)-アミノ]ペンチル}-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、及び医薬的に許容し得るそれらの誘導体や類似体と共にプロゲステロン受容体拮抗薬11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オンを含んで成る組み合わせ物である。
【0048】
経口投与には、改良された利便性と患者の服薬遵守の利点がある。さらなる好ましい結果として、本発明の組み合わせ物は良好な耐容性を示す。部分的な作動化作用は、例えば、部分的な抗エストロゲン薬のタモキシフェンの場合の子宮内膜癌の発生の増加などの望ましくない副作用(I.N. White, Carcinogenesis, 20(7): 1153-60,1999; L. Bergman et al., The Lancet, Vol. 356, Sept. 9, 2000, 881-887を参照のこと)、並びに従来技術のプロゲステロン受容体拮抗薬であるミフェプリストンの投与に関連する抗グルココルチコイド効果や特定の毒性副作用(D. Perrault et al., J. Clin. Oncol. 1996 Oct. 14(10), pp.2709-2712; L.M. Kettel et al., Fertii. Steril. 1991 Sep, 56(3), pp.402-407; X. Bertagna, Psychoneuroendocrinology 1997, 22 Suppl. 1; pp. 51-55を参照のこと)に一般的に関連する。本発明による量で使用される場合、純粋抗エストロゲン薬は、部分的抗エストロゲン薬に関連した望ましくない副作用を示さないだろう。
【0049】
任意に、プロゲステロン受容体拮抗薬11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オンと純粋抗エストロゲン薬、例えば、11β-フルオロ-17α-メチル-7α-{5-[メチル(8,8,9,9,9-ペンタフルオロノニル)-アミノ]ペンチル}-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオールは、細胞毒性薬などのさらなる薬理学的活性物質とさらに組み合わせられ得る。
【0050】
医薬品/医薬組成物の製造は、当該技術分野で知られている方法に従って実施できる。一般的に知られている及び使用されているアジュバント、並びにさらなる好適な担体又は希釈剤が使用されてもよい。
【0051】
好適な担体及びアジュバントは、以下の:Ullmann's Encyclopedia of Technical Chemistry, Vol. 4, (1953), pp. 1-39; Journal of Pharmaceutical Sciences, Vol. 52 (1963), p. 918ff; H.v. Czetsch-Lindenwald, "Hilfsstoffe fur Pharmazie und angrenzende Gebiete"; Pharm. Ind. 2, 1961, p.72ff; Dr. H.P. Fiedler, Lexikon der Hilfsstoffe fur Pharmazie, Kosmetik und angrenzende Gebiete, Cantor KG, Aulendorf in Wurttemberg, 1971において調剤業、化粧品、及び関連分野に関して推薦されるものなどであり得る。
【0052】
本発明の組み合わせ物はまた、経口、腸管外、例えば、腹腔内、筋肉内、皮下、若しくは経皮適用のための本草薬物の公知の調製方法によって調製できる医薬組成物も含んで成る。本発明の組み合わせ物はまた、組織内に埋め込まれてもよい。
【0053】
本発明の組み合わせ物はまた、錠剤、丸薬、糖衣錠、ゲルカプセル、顆粒剤、坐剤、インプラント、注射用無菌水性若しくは油性溶液、懸濁液、若しくは乳濁液、軟膏、クリーム、ゲル、経皮投与用パッチ、吸入法、例えば、鼻内スプレーによって、又は腟内(例えば、膣リング)若しくは子宮内システム(ペッサリー(diaphragms)、ループ)によって投与されるのに好適な製剤でもあり得る。
【0054】
経口投与のための医薬組成物の調製に関して、先に規定される本発明の目的に好適な活性物質は、一般的に知られ、使用されているアジュバント及び担体、例えば、アラビアゴム、タルカム、デンプン、例えば、マンニトース(mannitose)のような糖、メチルセルロース、ラクトース、ゼラチン、界面活性剤、ステアリン酸マグネシウム、水性若しくは非水性賦形剤、パラフィン誘導体、架橋剤、分散剤、乳化剤、滑沢剤、保存料、及び着香料(例えば、精油)と混合され得る。医薬組成物において、プロゲステロン受容体拮抗薬と純粋抗エストロゲン薬は、微小粒子組成物、例えば、ナノ粒子組成物の状態に分散され得る。
【0055】
活性物質の生物学的利用能をさらに高めるために、先に規定される本発明の目的に好適な活性物質はまた、PCT/EP95/02656に開示される方法に従ってα-、β-、若しくはγ-シクロデキストリン、又はその誘導体とそれらを反応させることによってシクロデキストリンのクラスレートとしても製剤され得る。
【0056】
非経口投与に関して、先に規定される本発明の目的に好適な活性物質は、例えば、可溶化剤を含む若しくは含まないオイル、界面活性剤、分散剤、又は乳化剤などの生理学的に許容される希釈剤中に溶解され得るか、又は懸濁され得る。例えば、そして、制限のない、オイルとして、オリブ油、ラッカセイ油、綿実油、ダイズ油、ヒマシ油、及びゴマ油が使用できる。
【0057】
本発明による医薬組成物/医薬品はまた、蓄積注射又はインプラント調製物、任意に、(単数若しくは複数の)活性物質の持続的なデリバリーを介しても投与され得る。
インプラントは、不活性材料として、例えば、生物学的に分解可能な重合体である合成シリコーン、例えば、シリコーンゴムなどが含まれ得る。
経皮適用に関して、(単独又は複数の)活性物質はまた、絆創膏(adhesives)中にも処方できる。
【0058】
好ましい投与様式は、経口投与である。本発明による組み合わせ物、特に、プロゲステロン受容体拮抗薬11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オン、又は医薬的に許容し得るその誘導体若しくは類似体、及び純粋抗エストロゲン薬11β-フルオロ-17α-メチル-7α-{5-[メチル(8,8,9,9,9-ペンタフルオロノニル)-アミノ]ペンチル}-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、又は両化合物の医薬的に許容し得る誘導体若しくは類似体を含んで成る組み合わせ物は、特に経口投与に好適である。
【0059】
本発明の組み合わせ物は、抗エストロゲン薬と共にプロゲステロン受容体拮抗薬11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オンを適用することによって、又は抗エストロゲン薬と別個にプロゲステロン受容体拮抗薬11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オンを適用することによって投与できる。例えば、プロゲステロン受容体拮抗薬11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オンは、皮下又はi.m.に投与でき、そして、純粋抗エストロゲン薬、例えば、11β-フルオロ-17α-メチル-7α-{5-[メチル(8,8,9,9,9-ペンタフルオロノニル)-アミノ]ペンチル}-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオールは、経口的に投与され得る、あるいは、逆もまた同様である。
【0060】
投与されるべき、組み合わせた活性物質の量(「医薬的に有効な量」)は、広い範囲の中で変化し、そして、治療されるべき病態及び投与方法に依存する。それらは、対象とする治療のためのあらゆる効果的な量に及ぶ。組み合わせた活性物質の「医薬的に有効な量」を決定することは、当業者の範囲内にある。
【0061】
先に規定したとおり、プロゲステロン受容体拮抗薬11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オン対(単独又は複数の)純粋抗エストロゲン薬の重量比は、広い範囲の中で変化する。それらは、等しい量で存在しても、一方の成分が他方の成分を上回って存在してもよい。好ましくは、0.1〜200mgの純粋抗エストロゲン薬と0.1〜100mgのプロゲステロン受容体拮抗薬11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オンが単位用量で、より好ましくは、それぞれ10〜150mgの純粋抗エストロゲン薬とプロゲステロン受容体拮抗薬11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オンから成る単位用量で投与される。特殊な場合において、最大200mgのプロゲステロン受容体拮抗薬11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オンを投与できる。純粋抗エストロゲン薬とプロゲステロン受容体拮抗薬11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オンは、好ましくは、100:1〜1:100の比で存在する。より好ましくは、それらは、4:1〜1:4の比で存在する。
【0062】
プロゲステロン受容体拮抗薬11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オンと(単数又は複数の)純粋抗エストロゲン薬は、同時に、及び/又は連続して、一緒に又は別々に投与され得る。好ましくは、それらは、1つの単位用量に組み合わせられた状態で投与される。それらが連続して投与される場合、好ましくは、プロゲステロン受容体拮抗薬11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オンは、先に規定したように、(単数又は複数の)純粋抗エストロゲン薬の前に投与される。
【0063】
プロゲステロン受容体拮抗薬11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オンと純粋抗エストロゲン薬、例えば、11β-フルオロ-17α-メチル-7α-{5-[メチル(8,8,9,9,9-ペンタフルオロノニル)-アミノ]ペンチル}-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、又はこれらの成分の医薬的に許容し得る誘導体若しくは類似体の組み合わせ物は、ホルモン依存性乳癌モデルのパネルにおいて非常に強力な腫瘍阻害効果を発揮する(実施例1を参照のこと)。その阻害は、単独のこれらの化合物によって達成された阻害と比較して、相乗的なものである。プロゲステロン受容体拮抗薬11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オンと、純粋抗エストロゲン薬、例えば、11β-フルオロ-17α-メチル-7α-{5-[メチル(8,8,9,9,9-ペンタフルオロノニル)-アミノ]ペンチル}-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオールは、プロゲステロン受容体拮抗薬11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オンと、乳癌治療において標準的な作用物質である部分的抗エストロゲン薬タモキシフェンの組み合わせ物よりさらに優れている(実施例1を参照のこと)。
【0064】
本発明の種々の側面における組み合わせ物などの、例えば、腫瘍細胞の場合にはG0G1期の進行を妨げることによって、細胞のアポトーシスを誘発する医薬品には、多数の病態を治療及び予防するための潜在的な適用がある。例えば、プロゲステロン受容体拮抗薬11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オンと(単独又は複数の)純粋抗エストロゲン薬の組み合わせ物は、細胞サイクルのS期にある腫瘍細胞量の増加が高い危険性の指標となるそれらの癌、例えば、乳癌などを治療するのに使用できる(G. M. Clark et al., N. Engl. J. Med. 320,1989, March, pp.627-633; L. G. Dressier et al., Cancer61 (3), 1988, pp. 420-427、及びその中に引用された文献を参照のこと)。
【0065】
どのような理論にも制限されることなく、実施例において提供された結果は、試験モデルにおいて本発明によるプロゲステロン受容体拮抗薬11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オンと純粋抗エストロゲン薬の組み合わせ物の抗腫瘍作用の主要な機構が、終末細胞死に関連した終末分化の誘導を介した、腫瘍細胞レベルにおける直接的なエストロゲン受容体、及び/又はプロゲステロン受容体媒介型の抗増殖効果であることを示唆している。このように、本発明による組み合わせ物が、プロゲステロン受容体陽性及びエストロゲン受容体陽性腫瘍の悪性腫瘍細胞に本来備わっている終末分化における内因性障害を除去できることが明らかである。
【0066】
細胞培養を使用することで、BRCA1又はBRCA2活性がノックダウンされているときに、プロゲステロン受容体が分解されにくいことを明らかにした。その結果、プロゲステロンによるプロゲステロン受容体の転写活性が、より長く、また、より強い。我々は、BRCA1又はBRCA2ノックダウン細胞において、本化合物(instand compounds)及び組み合わせ物を用いた予防的治療によってPRシグナリングの促進を減弱できることを示した。これは、これらの乳房細胞の増殖の減少という結果につながる。
【0067】
PR転写の対照における喪失は、BRCA1又はBRCA2遺伝子が全身の細胞で変異しているにもかかわらず、なぜPRに特異的に依存して乳房、卵巣及び子宮内膜、髄膜(meningio)臓器において腫瘍が特異的に発生するかに関して1つの説明となり得る。
【0068】
ヒトBRCA1又はBRCA2変異に類似したものを担持する(そして、p53遺伝子がノックアウトされた)雌マウスの乳房組織は、細胞増殖の増加、及びプロゲステロン受容体発現を示し、そして、乳癌を発症した。しかしながら、本化合物、それぞれ組み合わせ物を用いて処置されたマウスには腫瘍がなかった。本化合物、それぞれ組み合わせ物の効果は、腫瘍組織に制限され得るだけではなく、むしろ、正常な乳房からの組織と比較して高いプロゲステロン発現も示す、BRCA1又はBRCA2変異を持つ<ヒト>乳房腫瘍に隣接した組織に制限され得る。
【0069】
本発明は実施例でさらに例証される。しかしながら、以下の実施例は、制限として理解されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0070】
【実施例1】
【0071】
11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オンは、BRCA1及びBRCA2ノックダウンを持つ乳房細胞の増殖を阻害する
【0072】
ATCCから得たMCF-10乳腺細胞及びT47D乳癌細胞を、BRAC1及びBRCA2遺伝子をノックダウンしたsiRNAを用いて処理した。未トランスフェクト細胞及び偽トランスフェクト細胞との比較により細胞増殖を比較した。第2段階では、細胞を、プロゲステロン、及び/又はエストロゲンで刺激した。プロゲステロンの存在下、BRCA1及びBRCA2 kno細胞において、増殖の増加が見られた。単独又は抗エストロゲン薬と組み合わせた11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オンを用いた同時処理はまた、BRCA1ノックダウンの効果に拮抗することもできた。プロゲステロン受容体タンパク質の発現に対する効果をさらに調査した。BRCA1のノックダウンにsiRNAを使用することによって、プロゲステロン受容体拮抗薬11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オンによって拮抗され得るプロゲステロン受容体の安定性の増強を発見した。
【0073】
よって、その結果は、単独の、又は本発明による他の薬物と組み合わせた、11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オンなどのプロゲステロン受容体拮抗薬の使用が、BRCA1ノックダウン細胞の増殖の強力な阻害をもたらすことを示している。
【実施例2】
【0074】
BRCA1及びBRCA2介在性腫瘍形成におけるプロゲステロン受容体の役割
BRCA1及びBRCA2介在性腫瘍形成におけるプロゲステロン受容体の特異的役割を検討するために、乳房組織におけるp53、及びBRCA1とBRCA2のそれぞれの臓器特異的不活性化を有する遺伝子導入マウスを研究した。マウス乳腺におけるBRCA1とBRCA2のそれぞれ、及びp53又はc-myc遺伝子の両方の不活性化は、p53突然変異も担持するヒトBRCA1関連腫瘍の大部分を再現している。
【0075】
プロゲステロンは、BRCA1とBRCA2のそれぞれ、及びp53又はc-myc Crec乳腺上皮細胞の強力な分裂促進因子であるので、プロゲステロン受容体拮抗薬11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オンによるプロゲステロン受容体活性の遮断が乳腺腫瘍形成を予防し得るか、又は遅らせ得るかどうかを試験した。マウスを、プラシーボ、又は11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オンで処理した。そのマウスを、腫瘍形成について毎週観察した。すべてのマウスが触知可能な腫瘍を発症したプラシーボ対照群に関して、腫瘍の潜伏期間の中央値は6.6カ月であった。対照的に、11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オンで処理したマウスにおいて、触知可能な腫瘍は検出されなかった。
これらの結果は、プロゲステロン受容体機能がそれぞれBRCA1及びBRCA2介在性乳腺腫瘍形成に重要であること、並びにPRAを用いた治療が乳腺腫瘍形成を予防するか又は遅らせることを示唆している。
【実施例3】
【0076】
Faslodexを伴ったプロゲステロン受容体拮抗薬11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オンの組み合わせ物は、BRAC1及びBRCA2ノックダウンを持つ乳房細胞の増殖を阻害する
【0077】
ATCCから得たMCF-10乳腺細胞を、BRAC1及びBRCA2遺伝子をノックダウンしたsiRNAを用いて処理した。未トランスフェクト細胞及び偽トランスフェクト細胞との比較により細胞増殖を比較した。第2段階では、細胞を、プロゲステロン、及び/又はエストロゲンで刺激した。プロゲステロンの存在下、BRCA1及びBRCA2 ko細胞において、増殖の増加が見られた。単独又は抗エストロゲン薬と組み合わせた11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オンを用いた同時処理はまた、BRCA1ノックダウンの効果に拮抗することもできた。プロゲステロン受容体タンパク質の発現に対する効果をさらに調査した。BRCA1のノックダウンにsiRNAを使用することによって、プロゲステロン受容体拮抗薬11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オンによって拮抗され得るプロゲステロン受容体の安定性の増強を発見した。
【0078】
よって、その結果は、本発明による、タモキシフェン又はフルベストラント(Faslodex)と組み合わせたプロゲステロン受容体拮抗薬11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オンの組み合わせ物が、BRCA1ノックダウン細胞の増殖の強力な阻害をもたらすことを示している。
【実施例4】
【0079】
マウスにおけるMXT乳癌モデル
抗エストロゲン薬Faslodexを伴ったプロゲステロン受容体拮抗薬11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オンの組み合わせ物
ドナー・マウスから得られたMXT乳腺腫瘍を、雌BDF1マウス(Charles River)の鼠径部に直径約2mmの断片にして移植する。腫瘍が25mm2のサイズになったときに、以下のものを用いて治療を開始する。
A)1)対照、2)プロゲステロン受容体拮抗薬(I)、3)faslodex、4)プロゲステロン受容体拮抗薬(I)とfaslodex(I)の組み合わせ物、ここで、すべての化合物を皮下に又は経口で毎日投与する。
B)1)対照、2)、3)プロゲステロン受容体拮抗薬(I)、4)プロゲステロン受容体拮抗薬(I)の組み合わせ物、ここで、すべての化合物を経口で毎日投与する。
【0080】
腫瘍面積を、キャリパー計測によって測定する。腫瘍重量を、実験終了時点に測定する。
プロゲステロン受容体拮抗薬(I)=PA-I:11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オン
抗エストロゲン薬(Ia)=AE-I:Faslodex
PRAとFaslodexの組み合わせ物に関する結果を、図1/2及び図2/2に示す。
対照の急速な増殖と比較して、本発明によるプロゲステロン受容体拮抗薬(I)とfaslodex(Ia)の組み合わせ物は、単一化合物の効果よりも有意に優れた抗癌効果を発揮する。よって、本発明による組成物の腫瘍増殖阻害効果は、相乗効果である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種類の純粋抗エストロゲン薬と共に、プロゲステロン受容体拮抗薬11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オン、又は医薬的に許容し得るその誘導体若しくは類似体を含んで成る、BRCA1又はBRCA2介在性乳癌の予防用及び治療用の医薬組み合わせ物。
【請求項2】
前記純粋抗エストロゲン薬が、以下の一般式(I):
【化1】

[式中、
Halが、F又はClを表し、且つ、11β位でエストラトリエン骨格に結合され、
R3が、水素、C1-C4-アルキル、C1-C4-アルカノイル、又はO原子を有する環状C3-C7-エーテルを表し、
R17’が、水素、C1-C4-アルキル、又はC1-C4-アルカノイルを表し、
R17”が、C1-C4-アルキル、C1-C4-アルキル、C1-C4-アルキニル、及び少なくとも部分的にフッ素化されたC1-C4-アルキル基を表し、ここで、17β位のR17’-Oと17α位のR17’’が、エストラトリエン骨格に結合され、そして、
SKが、基U-V-W-X-Y-Z-E
{式中、Uが、直鎖若しくは分岐鎖いずれかのC1-C13-アルキレン-、-アルケニレン-、若しくは-アルキニレン基、又は基A-Bを意味し、ここで、Aが、エストラトリエン骨格に結合され、そして、-CH2-を介してエストラトリエン骨格に結合されるベンジリデン基、フェニレン基、又はアルキル基を介してエストラトリエン骨格に結合されるC1-C3-アルキルアリール基を意味し、且つ、Bが、直鎖若しくは分岐鎖C1-C13-アルキレン-、-アルケニレン-、又は-アルキニレン基を表し、そして、ここで、AとBが、O原子を介して互いに接続されてもよく、
式中、Vが、さらに、CH2-又はC(O)基を意味し、
式中、Wが、さらに、N(R6)-基若しくはN+(O-)(R6)基であるか、又はアゾリジニレン環若しくはアゾリジニレン-N-オキシド環であり、ここで、上記のアゾリジニレン環又はアゾリジニレン-N-オキシド環が、基Xの少なくとも1つのC原子を包含し、ここで、R6が、さらに、H、又はCH2-R7若しくはC(O)-R7のいずれかであり、式中、R7が、以下の:
i)水素、又は
j)1又は複数ヶ所以上でヒドロキシル化され得、且つ、1〜3個のヘテロ原子-O-及び-S-、及び/又は基-NR9-(式中、R9が、水素若しくはC1-C3-アルキル基を表す)によって中断され得る、直鎖若しくは分岐鎖の、フッ素化されていない若しくは少なくとも部分的にフッ素化されたC1-C14-アルキル-、-アルケニル-、若しくは-アルキニル基、又は
k)置換されていないか若しくは置換されたアリール基若しくはヘテロアリール基、又は
l)置換されていないか若しくは置換されたC3-C10-シクロアルキル基、又は
m)置換されていないか若しくは置換されたC4-C15-シクロアルキルアルキル基、又は
n)置換されていないか若しくは置換されたC7-C20-アラルキル基、又は
o)置換されていないか若しくは置換されたヘテロアリール-C1-C6-アルキル基、又は
p)置換されていないか若しくは置換されたアミノアルキル基若しくはビフェニル基、
を意味することができ、
式中、Xが、さらに、直鎖又は分岐鎖C1-C12-アルキレン-、-アルケニレン-、又は-アルキニレン基であり、
式中、Yが、さらに、XとZの間の直接結合であるか、又は以下の:
a)SOn-R10基、ここで、WがN+(O-)R6基又はアゾリジニレン-N-オキシド環であり、且つ、N(R6)基又はアゾリジニレン環ではない場合のみ、n=0、1、又は2であり、ここで、R10が、SOnとZの間の直接結合を意味するか、又は直鎖若しくは分岐鎖C1-C6-アルキレン-、-アルケニレン-、若しくは-アルキニレン基を意味し、又は、
b)基R11又はO-R11、ここで、R11が、以下の:
i)直鎖若しくは分岐鎖C1-C5-アルキレン-、-アルケニレン-、若しくは-アルキニレン基、若しくは
ii)置換されていないか若しくは置換されたアリール基若しくはヘテロアリール基、若しくは
iii)置換されていないか若しくは置換されたC3-C10-シクロアルキル基、若しくは
iv)置換されていないか若しくは置換されたC4-C15-シクロアルキルアルキル基、若しくは
v)置換されていないか若しくは置換されたC7-C20-アラルキル基、若しくは
vi)置換されていないか若しくは置換されたヘテロアリール-C1-C6-アルキル基、
を表し、又は
c)基CH=CF、又は
d)基HN-C(O)-NH-R12、ここで、R12が、置換されていないか又は置換されたアリーレン基を表し、且つ、ここで、R12が、Zに結合され、
であり、そして、
式中、Zが、さらに、YとEの間の直接結合であるか、又は部分的に若しくは完全にフッ素化され得る、直鎖若しくは分岐鎖C1-C9-アルキレン-、-アルケニレン-、又は-アルキニレン基であり、そして、
式中、Eが、さらに、CF3基であるか、又は少なくとも部分的にフッ素化されたアリール基である。}を表し、ここで、この基が、7α位のUを介してエストラトリエン骨格に結合される。]によって表される化合物、並びに薬理学的に適合し得るそれらの酸付加塩及びエステルから成る群から選ばれる、請求項1に記載の医薬組み合わせ物。
【請求項3】
前記純粋抗エストロゲン薬が、11β-フルオロ-17α-メチル-7α-{5-[メチル-(8,8,9,9,9-ペンタフルオロノニル)アミノ]ペンチル}-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール又は7α-[9-(4,4,5,5,5-ペンタフルオロペンチルスルフィニル)-ノニル]-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、あるいは、医薬的に許容し得るそれらの誘導体又はその類似体である、請求項1又は2に記載の医薬組み合わせ物。
【請求項4】
前記純粋抗エストロゲン薬が、TAS-108又はICI 164.384である、請求項1に記載の医薬組み合わせ物。
【請求項5】
前記のプロゲステロン受容体拮抗薬と純粋抗エストロゲン薬の重量比が、1:100〜100:1である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬組み合わせ物。
【請求項6】
前記のプロゲステロン受容体拮抗薬と純粋抗エストロゲン薬の重量比が、1:4〜4:1である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬組み合わせ物。
【請求項7】
前記プロゲステロン受容体拮抗薬が0.1〜100mgの単位用量で存在し、且つ、純粋抗エストロゲン薬が0.1〜200mgの単位用量で存在する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬組み合わせ物。
【請求項8】
前記プロゲステロン受容体拮抗薬が10〜150mgの単位用量で存在し、且つ、純粋抗エストロゲン薬が10〜150mgの単位用量で存在する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の医薬組み合わせ物。
【請求項9】
前記のプロゲステロン受容体拮抗薬と純粋抗エストロゲン薬が、錠剤、丸薬、糖衣錠、ゲルカプセル、顆粒剤、坐剤、インプラント、注射用無菌水性若しくは油性溶液、懸濁液、乳濁液、軟膏、クリーム、ゲル、経皮投与用パッチ、又は吸入法による投与に好適な製剤の形態で投与される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の医薬組み合わせ物。
【請求項10】
前記組み合わせ物が、プロゲステロン受容体拮抗薬11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オン、抗エストロゲン薬、及び薬理学的活性物質を含んで成ることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の医薬組み合わせ物。
【請求項11】
前記薬理学的活性物質が、細胞毒性薬である、請求項10に記載の医薬組み合わせ物。
【請求項12】
経口投与のための、請求項1〜11のいずれか1項に記載の医薬組み合わせ物。
【請求項13】
BRCA1若しくはBRCA2介在性乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、胃癌、結腸直腸癌、子宮内膜症、骨髄腫、筋腫、又は髄膜腫の予防用又は治療用の医薬品としての、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組み合わせ物の使用。
【請求項14】
BRCA1若しくはBRCA2介在性乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、胃癌、結腸直腸癌、子宮内膜症、骨髄腫、筋腫、又は髄膜腫の治療用医薬品の製造のための、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組み合わせ物の使用。
【請求項15】
BRCA1若しくはBRCA2介在性乳癌の予防及び治療のためのプロゲステロン受容体拮抗薬11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オン、又は医薬的に許容し得るその誘導体若しくは類似体の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−524997(P2010−524997A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504551(P2010−504551)
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【国際出願番号】PCT/EP2008/003333
【国際公開番号】WO2008/128791
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(300049958)バイエル・シエーリング・ファーマ アクチエンゲゼルシャフト (357)
【Fターム(参考)】