説明

CMCタービン静翼

【課題】翼とバンドの結合部の応力集中を低減でき、翼とバンドの間からのガスの漏れを低減でき、組立時に翼とバンドを簡単に締結できるCMCタービン静翼を提供する。
【解決手段】CMCタービン静翼1は、セラミックマトリックス複合材料または金属材料からなる翼2と、セラミックマトリックス複合材料からなり翼2を支持するバンド5とを備える。翼2は、バンド5が外嵌する部分である第1嵌合部3を有する。バンド5は、第1嵌合部3が内側に嵌合する第2嵌合部7を有する。CMCタービン静翼1は、さらに、翼2とバンド5とが固定されるように第1嵌合部3と第2嵌合部7の間に配置された可撓性のワイヤ8とを備える。第1嵌合部3の外周面には翼2の前後方向に延びる第1溝3aが形成されている。第2嵌合部7aの内周面には第1溝3aに沿って延びる第2溝7aが形成されている。ワイヤ8は第1溝3aと第2溝7aの間に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックマトリックス複合材料(CMC)で形成されたタービン翼に関し、特に翼とバンドとを簡単な構造で締結(結合)したCMCタービン静翼に関する。
【背景技術】
【0002】
タービン静翼は、ガスタービンエンジンにおいて、燃焼器からの燃焼ガスの流路となる構成部品である。図1に従来のタービン翼30の一例を示す。タービン翼30は、タービンの軸心周りに周方向に間隔をおいて配置された複数の翼31と、各翼31の両端部を支持して周方向に延びるバンド32とを有する。
【0003】
タービン静翼30の表面は、燃焼器からの高温の燃焼ガス(主流ガス)34に曝されるため、タービン翼表面の熱による損傷を防止するために、翼の内部を冷却空気で冷却するとともに、翼及びバンドに設けた冷却孔から冷却空気を噴き出して、冷却空気の膜を形成し、翼及びバンドの表面を冷却するフィルム冷却が行われる。このようなフィルム冷却を行うために、タービン静翼は複雑な構造を有するため製造コストが高く、また、推力に寄与すべき高圧空気の一部を冷却空気として利用するため推力を損失している。
【0004】
一方、航空エンジンにおいて、燃焼ガスの温度を向上させることでタービン出力と効率を向上できるため、燃焼ガスの高温化は、航空エンジンの高性能化に重要である。また、航空エンジンの高性能化のためには、構成部品の軽量化も求められる。このため、タービン静翼の構成材料として、金属材料よりも耐熱性に優れ、比重が小さいセラミックマトリックス複合材料(CMC:Ceramic Matrix Composites)を利用する研究が進められている。
【0005】
CMCは繊維織物とセラミックの複合材であり、強度を保つためには、部品の細部まで、繊維織物を配置することが必要である。フィルム冷却構造を有する翼は構造が複雑であり、また、翼とバンドでは機能・強度要求から繊維織物の構成方向が異なるため、翼の部分とバンドの部分を繊維織物で一体的に形成することは、現状の技術では困難である。そのため、翼とバンドを別々に製作し、両者を締結することでタービン静翼を形成する手法がとられている。
【0006】
しかし、CMCは金属と比べて強度が小さいため、CMCからなる部品同士を結合するに際しては、結合部の応力集中を緩和する対策を講じる必要がある。また、締結部において隙間があると、主流ガスの漏れが生じるため、このような漏れの低減についても対策を講じる必要がある。
【0007】
ところで、下記特許文献1には、翼とバンドを別々に製作し、両者を締結することでタービン翼を形成する先行技術が開示されている。
図2A及び図2Bは特許文献1において開示されたタービン翼40を示す断面図である。図2A及び図2Bにおいて、翼41とバンド(プラットフォーム)42は別々に製作された部品であり、両者が結合されてタービン翼40を構成している。図2Aにおいて、翼41とバンド42は、両者を貫通する機械的締結手段(ボルト、クランプ、ピンなど)43によって締結されている。図2Bにおいて、翼41とバンド42は、断面U字状の補強部材44によって締結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6648597号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、図2Aに示した締結構造では、翼41とバンド42を貫通する機械的締結手段43で両者を締結する構造であるため、両者をしっかりと固定するためには機械的締結手段43を複数ヶ所に取り付ける必要があり、また、翼41が小型である場合には締結作業が困難となるなど、組み立ての作業性が悪いという問題がある。
また、図2Bに示した締結構造も同様に、翼とバンドをしっかりと固定するためには補強部材44を複数ヶ所に取り付ける必要があり、組み立ての作業性が悪いという問題がある。また、機械的締結手段を取り付けた部分に応力集中が発生するという問題がある。
【0010】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、翼とバンドの結合部の応力集中を低減でき、翼とバンドの間からのガスの漏れを低減でき、組立時に翼とバンドを簡単に締結できるCMCタービン静翼を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の問題を解決するため、本発明のCMCタービン静翼は、以下の技術的手段を採用する。
本発明は、セラミックマトリックス複合材料からなる翼と、セラミックマトリックス複合材料または金属材料からなり前記翼を支持するバンドとを備え、前記翼と前記バンドが結合されて構成されるCMCタービン静翼であって、前記翼は、前記バンドが外嵌する部分である第1嵌合部を有し、前記バンドは、前記第1嵌合部が内側に嵌合する第2嵌合部を有し、さらに、前記翼と前記バンドとが固定されるように前記第1嵌合部と前記第2嵌合部の間に配置された可撓性のワイヤを備え、前記第1嵌合部の外周面には翼の前後方向に延びる第1溝が形成され、前記第2嵌合部の内周面には前記第1溝に沿って延びる第2溝が形成され、前記ワイヤは前記第1溝と前記第2溝の間に配置されている、ことを特徴とする。
【0012】
上記の本発明の構成によれば、翼の第1嵌合部に形成された第1溝と、バンドの第2嵌合部に形成された第2溝の間に、翼とバンドとが固定されるように可撓性のワイヤが配置される。これにより、翼とバンドはワイヤを介して固定される。このため、翼とバンドとは物理的に一体化されているのではなく、ワイヤによって相対移動が拘束されているだけなので、翼とバンドとの締結部での応力集中を低減できる。また、ワイヤは可撓性であるため、翼とバンドの形状にフィットし、固定と同時にガスシールの役目も果たす。さらに、組み立ての際には、翼の第1嵌合部とバンドの第2嵌合部の間にワイヤを挿入することで翼とバンドが固定されるので、翼が小型である場合でも、簡単な作業で両者を締結できる。
【0013】
また上記のCMCタービン静翼において、前記第1溝は、翼の腹側と背側において、前記第1嵌合部の外周面に形成されており、前記第2溝は、翼の腹側と背側において、前記第2嵌合部の内周面に形成されている。
【0014】
上記の構成によれば、翼の腹側と背側の両方においてワイヤを介して翼とバンドが固定されるので、締結力を強固にできる。
【0015】
また上記のCMCタービン静翼において、前記第2嵌合部の前縁側の端部には第1切欠き部が形成され、前記第2嵌合部の後縁側の端部には第2切欠き部が形成され、前記ワイヤは、前記第1切欠き部と前記第2切欠き部の一方から両端部が突出し、前記第1切欠き部と前記第2切欠き部の他方において途中部分が折り返されている。
【0016】
上記の構成によれば、一方の切欠き部(例えば第1切欠き部)から背側又は腹側の第1溝と第2溝の間にワイヤの一端を挿入し、他方の切欠き部(例えば第2切欠き部)からワイヤの一端を出して、そこで折り返し、逆側の第1溝と第2溝の間にワイヤの一端を挿入して一方の切欠き部からワイヤの端部を出ことで、ワイヤを第1溝と第2溝の間に挿入することができる。したがって、ワイヤの配置作業を簡単に行うことができる。また、ワイヤを途中で折り返して配置するので1本のワイヤで翼とバンドを固定することができる。
【0017】
また上記のCMCタービン静翼において、前記第1嵌合部の端部と前記第2嵌合部の端部は接着されている。
【0018】
上記の構成によれば、接着を併用することで、翼とバンドの固定を補強することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のCMCタービン静翼によれば、翼とバンドの結合部の応力集中を低減でき、翼とバンドの間からのガスの漏れを低減でき、組立時に翼とバンドを簡単に締結できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】従来のタービン静翼の一例を示す図である。
【図2】特許文献1に開示されたタービン翼の構造を示す図である。
【図3】本発明に係るタービン静翼の第1実施形態を示す概略斜視図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】図4のA部拡大図である。
【図6】本発明に係るタービン静翼の実施形態の第1変形例を示す断面図である。
【図7】本発明に係るタービン静翼の実施形態の第2変形例を示す断面図である。
【図8】本発明に係るタービン静翼の第2実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0022】
図3は、本発明に係るタービン静翼1の第1実施形態を示す図であり、タービン静翼1を主流ガスの流れ方向の上流側から見た概略斜視図である。
以下の説明において、「半径方向」とはタービンの半径方向を意味するものとする。
【0023】
図3において、CMCタービン静翼1は、タービンの軸心周りに周方向に間隔をおいて配置された複数の翼2と、各翼2の両端部を支持して周方向に延びるバンド5とを備える。本明細書では、半径方向内側(図3で下側)に位置するバンド5を第1バンド5Aと定義し、半径方向外側(図3で上側)に位置するバンド5を第2バンド5Bと定義する。ただし、以下では、第1バンド5Aと第2バンド5Bを区別して説明する必要がある場合を除き、両者を総称してバンド5と呼ぶ。
【0024】
翼2はセラミックマトリックス複合材料(CMC)からなり、バンド11はCMCまたは金属材料からなり、それぞれ別々に製作された部品であり、両者を締結することでタービン静翼1が構成される。翼2とバンド5を製作するCMCプロセスにおいては、PIP(ポリマー含浸焼成法)やCVI(化学気相含浸法)などの公知の手法を用いてよい。CMCにおける強化繊維は、セラミック材料でよく、例えば、炭化ケイ素を用いることができる。
【0025】
図3に示すCMCタービン静翼1は、第1バンド5Aと第2バンド5Bとの間に2枚の翼2を配置した構成で1つのセグメントを構成しており、ガスタービンの静翼部では、このようなセグメントがタービン軸心周りに360度にわたって配列される。ただし、本発明は図3の構成に限定されず、1つのセグメントに1枚または3枚以上の翼2を配置した構成であってもよい。
【0026】
CMCタービン静翼1の表面は、燃焼器からの高温の燃焼ガス(主流ガス)に曝されるため、タービン翼表面の熱による損傷を防止するために、翼2の内部を冷却空気で冷却するとともに、翼2及びバンド5に設けた冷却孔から冷却空気を噴き出して、冷却空気の膜を形成し、翼2及びバンド5の表面を冷却するフィルム冷却が行われる。なお、図3では、簡略化のため、フィルム冷却用の冷却孔については図示を省略している。
【0027】
図4は、図3のIV−IV線断面図である。図3及び図4に示すように、翼2はバンドが外嵌する第1嵌合部3を有し、バンド5は第1嵌合部3が内側に嵌合する第2嵌合部7を有する。
第1嵌合部3は、翼2の両端部に形成されている。第2嵌合部7は、第1嵌合部3に沿って半径方向に突出する部分である。具体的には、第1バンド5Aの第2嵌合部7は周方向に延びるベース部6から半径方向内側に突出する部分であり、第2バンド5Bの第2嵌合部7は周方向に延びるベース部6から半径方向外側に突出する部分である。そして、このように構成された翼2とバンド5では、第2嵌合部7の内周に第1嵌合部3の外周が嵌ることで、翼2とバンド5が嵌合するようになっている。
【0028】
本発明のCMCタービン静翼1は、さらに、翼2とバンド5とが固定されるように第1嵌合部3と第2嵌合部7の間に配置された可撓性のワイヤ8を備える。このような可撓性のワイヤ8は、たとえば金属で形成することができ、インコネル(登録商標)、ワスパロイ(登録商標)、ユディメット(登録商標)などの耐熱金属を用いることができる。
【0029】
図5は、図4のA部拡大図である。図5に示すように、第1嵌合部3の外周面には翼2の前後方向に延びる第1溝3aが形成され、第2嵌合部7の内周面には第1溝3aに沿って延びる第2溝7aが形成され、ワイヤ8は第1溝3aと第2溝7aの間に配置されている。
第1溝3aと第2溝7aは、例えば機械加工により第1嵌合部3と第2嵌合部7に形成することができるが、第1溝3aと第2溝7aが形成される形状に繊維織物を製作しておくことで、機械加工をすることなく第1溝3aと第2溝7aを形成するようにしてもよい。
【0030】
第1実施形態において、第1溝3aは、翼2の腹側と背側において、第1嵌合部3の外周面に形成されており、第2溝7aは、翼2の腹側と背側において、第2嵌合部7の内周面に形成されている。
第1溝3a及び第2溝7aは、翼2の腹側と背側のいずれか一方のみに形成されてもよいが、本実施形態のように翼2の腹側と背側の両方に形成されるのが好ましい。
【0031】
また図3に示すように、本実施形態では、第2嵌合部7の前縁側の端部には第1切欠き部11が形成されており、これにより、第1嵌合部3の前縁側の端部が露出した状態となっている。また、第2嵌合部7の後縁側の端部には第2切欠き部12が形成されており、これにより、第1嵌合部3の後縁側の端部が露出した状態となっている。
またワイヤ8は、第1切欠き部11と第2切欠き部12の一方(図示例では第1切欠き部11)から両端部が突出し、第1切欠き部11と第2切欠き部12の他方(図示例では第2切欠き部12)において途中部分が折り返されている。
【0032】
また、本実施形態では、第1切欠き部11から出たワイヤ8の両端部同士は接着剤などにより接合されている。なお、ワイヤ8の両端部の接合は、接着以外の方法によってもよい。また、ワイヤ8の両端部同士を接合する代わりに、両端部を別の部位(例えば、第2嵌合部7の外面など)に接合してもよい。
【0033】
次に、図3〜図5を参照し、上記のように構成されたCMCタービン静翼1を組み立てる手順を説明する。
まず、CMCからなる翼2、第1バンド5A及び第2バンド5Bを用意し、第1バンド5Aの第2嵌合部7に翼2の半径方向内側の第1嵌合部3を嵌め込むとともに、第2バンド5Bの第2嵌合部7に翼2の半径方向外側の第1嵌合部3を嵌め込む。このとき、第1嵌合部3の第1溝3aと、第2嵌合部7の第2溝7aが、半径方向外側と半径方向内側の各位置で一致するように、翼2とバンド5の相対位置を調整する。
【0034】
続いて、一方の切欠き部(図示例では第1切欠き部11)から背側又は腹側の第1溝3aと第2溝7aの間にワイヤ8の一端を挿入し、他方の切欠き部(図示例では第2切欠き部12)からワイヤ8の一端を出して、そこで折り返し、逆側(最初にワイヤの一端を挿入した側が背側の場合は腹側、最初にワイヤの一端を挿入した側が腹側の場合は背側)の第1溝3aと第2溝7aの間にワイヤ8の一端を挿入して一方の切欠き部(図示例では第1切欠き部11)からワイヤ8の端部を出す。これにより、第1溝3aと第2溝7aの間の全長にワイヤ8が挿入され、翼2とバンド5がワイヤ8を介して締結される。
【0035】
上述した本発明の実施形態によれば、翼2の第1嵌合部3に形成された第1溝3aと、バンド5の第2嵌合部7に形成された第2溝7aの間に、翼2とバンド5とが固定されるように可撓性のワイヤ8が配置される。これにより、翼2とバンド5はワイヤ8を介して固定される。このため、翼2とバンド5とは物理的に一体化されているのではなく、ワイヤ8によって相対移動が拘束されているだけなので、翼2とバンド5との締結部での応力集中を低減できる。また、ワイヤ8は可撓性であるため、翼2とバンド5の形状にフィットし、固定と同時にガスシールの役目も果たす。さらに、組み立ての際には、翼2の第1嵌合部3とバンド5の第2嵌合部7の間にワイヤ8を挿入することで翼2とバンド5が固定されるので、翼2が小型である場合でも、簡単な作業で両者を締結できる。
【0036】
また、図3〜図5の構成例のように、翼2の腹側と背側の両側においてワイヤ8を介して翼2とバンド5が固定されることにより、締結力を強固にできる。
また、図3の構成例のように、第2嵌合部7に第1切欠き部11と第2切欠き部12を形成することで、ワイヤ8を第1溝3aと第2溝7aの間に容易に挿入し、配置することができる。また、ワイヤ8を途中で折り返して配置するので1本のワイヤ8で翼2とバンド5を固定することができる。
【0037】
なお、上述の説明では、ワイヤ8を途中で折り返すことで、翼2の腹側と背側とで一本のワイヤ8を用いたが、これに代えて、翼2の腹側と背側とで別々のワイヤ8を用いてもよい。この場合、第1切欠き部11と第2切欠き部12の各位置で、切欠き部から出た各ワイヤ8の端部同士を接着などにより接合してもよいし、あるいは、各ワイヤ8の端部を、他の部位(例えば、第2嵌合部7の外面など)に接合してもよい。
【0038】
また、上述の説明では、第2嵌合部7には前後両側に切欠き部(第1切欠き部11及び第2切欠き部12)が形成されていたが、一方の切欠き部を省略してもよい。この場合、ワイヤ8を最初に挿入側した側と反対側の切欠き部においてワイヤ8を折り返すことは困難となるため、腹側と背側とで別々にワイヤ8を挿入すればよい。
【0039】
図6は、本発明のタービン静翼1の第1実施形態の第1変形例を示す断面図である。図6において、翼2の外周面には、翼2とバンド5を嵌め合わせたときに第1溝3aと第2溝7aがちょうど対向する位置にくるように、第1嵌合部3の挿入深さを決めるための段差部3bが設けられている。このような段差部3bを設けておくことにより、第1溝3aと第2溝7aの位置合わせが容易となるので、組立て作業性をさらに向上できる。なお、この変形例の他の部分の構成は、図3〜図5に示した第1実施形態の構成と同じである。
【0040】
図7は、本発明のタービン静翼1の第1実施形態の第2変形例を示す断面図である。図7において、第1嵌合部3の外周面には半径方向に間隔をおいて複数(図示例では2つ)の第1溝3aが形成されている。また、第2嵌合部7の内周面には半径方向に間隔をおいて、複数の第1溝3aに対向する位置に、複数(図示例では2つ)の第2溝7aが形成されている。また、複数の第1溝3aと第2溝7aの間の各隙間には、複数のワイヤ8が挿入され、配置されている。第1嵌合部3と第2嵌合部7において、第1溝3aと第2溝7aは、それぞれ3つずつ以上形成されてもよい。第2変形例の他の部分の構成は、図3〜図5に示した第1実施形態の構成と同じである。
このように構成された第2変形例によれば、半径方向の複数位置において、翼2とバンド5がワイヤ8を介して固定されるので、翼2とバンド5の固定をより強固にすることができる。
【0041】
図8は、本発明のタービン静翼1の第2実施形態を示す図であり、図4と同様の断面図である。第2実施形態において、第1嵌合部3の端部と第2嵌合部7の端部は接着部材13によって接着されている。このような接着部材13としては、接着部材13が配置される環境の温度(例えば400℃〜500℃以上)に耐えられるもの、例えば、セラミックボンドやアルミナ、シリカ、ムライト等をスラリー状にしたもののような接着剤やロウ材を用いることができる。また、フェルト状のシリカウールやセラミック繊維などを含んだ柔軟性のある接着剤を用いてもよい。第2実施形態の他の部分の構成は、図3〜図5に示した第1実施形態の構成と同じである。
【0042】
上述のように構成された第2実施形態によれば、第1実施形態と共通する構成を備えるので、翼2とバンド5の結合部の応力集中を低減でき、翼2とバンド5の間からのガスの漏れを低減でき、組立時に翼2とバンド5を簡単に締結できる。
また第2実施形態では、接着部材13を併用するので、翼2とバンド5の固定を補強し、より強固に翼2とバンド5を締結できる。また、柔軟性のある接着剤を用いることで、より応力集中を低減することができる。
【0043】
なお、上記において、本発明の実施形態について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0044】
1 CMCタービン静翼
2 翼
3 第1嵌合部
3a 第1溝
3b 段差部
5 バンド
5A 第1バンド
5B 第2バンド
6 ベース部
7 第2嵌合部
7a 第2溝
8 ワイヤ
11 第1切欠き部
12 第2切欠き部
13 接着部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックマトリックス複合材料からなる翼と、セラミックマトリックス複合材料または金属材料からなり前記翼を支持するバンドとを備え、前記翼と前記バンドが結合されて構成されるCMCタービン静翼であって、
前記翼は、前記バンドが外嵌する部分である第1嵌合部を有し、
前記バンドは、前記第1嵌合部が内側に嵌合する第2嵌合部を有し、
さらに、前記翼と前記バンドとが固定されるように前記第1嵌合部と前記第2嵌合部の間に配置された可撓性のワイヤを備え、
前記第1嵌合部の外周面には翼の前後方向に延びる第1溝が形成され、前記第2嵌合部の内周面には前記第1溝に沿って延びる第2溝が形成され、前記ワイヤは前記第1溝と前記第2溝の間に配置されている、ことを特徴とするCMCタービン静翼。
【請求項2】
前記第1溝は、翼の腹側と背側において、前記第1嵌合部の外周面に形成されており、
前記第2溝は、翼の腹側と背側において、前記第2嵌合部の内周面に形成されている、請求項1記載のCMCタービン静翼。
【請求項3】
前記第2嵌合部の前縁側の端部には第1切欠き部が形成され、
前記第2嵌合部の後縁側の端部には第2切欠き部が形成され、
前記ワイヤは、前記第1切欠き部と前記第2切欠き部の一方から両端部が突出し、前記第1切欠き部と前記第2切欠き部の他方において途中部分が折り返されている、請求項2記載のCMCタービン静翼。
【請求項4】
前記第1嵌合部の端部と前記第2嵌合部の端部は接着されている、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のCMCタービン静翼。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−229837(P2010−229837A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75962(P2009−75962)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】