説明

EL表示パネル及び電子機器

【課題】低コスト化と画質品質とが両立するEL表示デバイスを実現する。
【解決手段】アクティブマトリクス駆動方式に対応した画素構造を有するEL表示パネルにおいて、複数の画素回路に共通に接続される電流供給線のうち信号線との交差部分の線幅を、信号線との非交差部分の線幅よりも細く形成する。このパネル構造の場合、電流供給線と信号線との交差部分の面積を増やすことなく、その他の領域部分での電流供給線の線幅を広げることができる。結果的に、表示内容や画素位置に依存した電流供給線の電位変動を小さくできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書で説明する発明は、アクティブマトリクス駆動方式で駆動制御されるEL表示パネルの構造に関する。なお、この明細書で提案する発明は、EL表示パネル及び電子機器としての側面も有する。
【背景技術】
【0002】
図1に、アクティブマトリクス駆動型の有機ELパネルに一般的な回路ブロック構成を示す。図1に示すように、有機ELパネル1は、画素アレイ部3と、その駆動回路である書込制御線駆動部5及び水平セレクタ7で構成される。なお、画素アレイ部3には、信号線DTLと書込制御線WSLの各交点に画素回路9が配置される。
【0003】
ところで、有機EL素子は電流発光素子である。このため、有機ELパネルでは、各画素に対応する有機EL素子に流れる電流量の制御により発色の階調を制御する。
図2に、この種の画素回路9のうち最も単純な回路構成の一つを示す。この画素回路9は、書込トランジスタT1、駆動トランジスタT2及び保持容量Csで構成される。
【0004】
なお、書込トランジスタT1は、対応画素の階調に対応する信号電位Vsig の保持容量Csへの書き込みを制御する薄膜トランジスタである。また、駆動トランジスタT2は、保持容量Csに保持された信号電位Vsig に応じて定まるゲート・ソース間電圧Vgsに基づいて駆動電流Idsを有機EL素子OLEDに供給する薄膜トランジスタである。図2の場合、書込トランジスタT1は、Nチャネル型の薄膜トランジスタで構成され、駆動トランジスタT2は、Pチャネル型の薄膜トランジスタで構成される。
【0005】
図2の場合、駆動トランジスタT2のソース電極は、電源電位Vccが固定的に印加されている電流供給線(電源線)に接続される。このため、駆動トランジスタT2は、常に飽和領域で動作する。すなわち、駆動トランジスタT2は、信号電位Vsig に応じた大きさの駆動電流を有機EL素子OLEDに供給する定電流源として動作する。この際、駆動電流Idsは次式で与えられる。
Ids=k・μ・(Vgs−Vth)2/2
【0006】
因みに、μは、駆動トランジスタT2の多数キャリアの移動度である。また、Vthは、駆動トランジスタT2の閾値電圧である。また、kは、(W/L)・Coxで与えられる係数である。ここで、Wはチャネル幅、Lはチャネル長、Coxは単位面積当たりのゲート容量である。
【0007】
なお、この構成の画素回路の場合、図3に示す有機EL素子のI−V特性の経時変化に伴って、駆動トランジスタT2のドレイン電圧が変化する。
しかし、ゲート・ソース間電圧Vgsは一定に保たれるので、有機EL素子に供給される電流量には変化が無く、発光輝度を一定に保つことができる。
【0008】
以下に、アクティブマトリクス駆動方式を採用する有機ELパネルディスプレイに関する文献を例示する。
【特許文献1】特開2003−255856号公報
【特許文献2】特開2003−271095号公報
【特許文献3】特開2004−133240号公報
【特許文献4】特開2004−029791号公報
【特許文献5】特開2004−093682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、薄膜プロセスの種類によっては図2に示す回路構成を採用できない場合がある。すなわち、現在の薄膜プロセスでは、Pチャネル型の薄膜トランジスタを採用できない場合がある。このような場合、駆動トランジスタT2をNチャネル型の薄膜トランジスタに置き換えることになる。
【0010】
図4に、この種の画素回路の構成を示す。この場合、駆動トランジスタT2のソース電極は有機EL素子OLEDの陽極(アノード)端子に接続される。従って、この画素回路9の場合、有機EL素子のI−V特性が時間の経過に伴って変化すると、駆動トランジスタT2のゲート・ソース間電圧Vgsが変動する問題がある。このゲート・ソース間電圧Vgsの変動は駆動電流量を変化させ、発光輝度を変化させてしまう。
【0011】
さらに、各画素回路を構成する駆動トランジスタT2の閾値及び移動度は、画素毎に異なっている。この駆動トランジスタT2の閾値や移動度の違いは、駆動電流値のバラツキとなって出現し、各画素の発光輝度を変化させる原因となる。
【0012】
従って、図4に示す画素回路を採用する場合には、経時変化によらず安定した発光特性の得られる駆動方法の確立が求められる。同時に、表示品質の高いパネル構造の実現が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで、発明者らは、アクティブマトリクス駆動方式に対応した画素構造を有するEL表示パネルとして、複数の画素回路に共通に接続される電流供給線のうち信号線との交差部分の線幅が、信号線との非交差部分の線幅よりも細く形成されているEL表示パネルを提案する。
【0014】
このパネル構造の場合、電流供給線と信号線との交差部分の面積を増やすことなく、その他の領域部分での電流供給線の線幅を広げることができる。このことは、電流供給線の全体としての配線抵抗値を小さくできることを意味する。結果として、表示内容や画素位置に依存した電流供給線の電位変動を小さくできる。
【0015】
なお、このパネル構造は、電流供給線が2値以上の電位で駆動制御される場合に、さらに高い効果が期待できる。電流供給線が固定電位でない場合、信号線との交差部分の対向面積が大きいと、電流供給線の電位変動が信号線との交差部分に形成されるカップリング容量を通じて信号線に伝播しやすくなる。
【0016】
しかし、このパネル構造の場合、電流供給線と信号線との交差部分の面積を電流駆動能力に比して小さくできる。このため、電流供給線の電位変動が信号線に与える影響を小さくできる。結果的に、信号線に伝播する電位変動は小さくなり、書き込み電位への影響を最小化できる。結果的に、表示品質の低下を抑制できる。
【0017】
また、提案するパネル構造は、画素構造がトップエミッション構造を有している場合に効果的である。トップエミッション構造の場合、電流供給線の形成層は光線の出力経路と交差せずに済む。従って、開口率に影響を与えることなく、信号線との交差部以外における電流供給線の線幅を太くすることができる。
【0018】
また、提案するパネル構造の場合、ある行に対応する電流供給線の電位変動のタイミングが他行の信号線電位の書込期間に位置する場合に高い効果が期待できる。前述したように、電流供給線の電位変動は信号線との交差部を通じて伝播するが、信号線との交差部分の面積が小さい。このため、他行に位置する画素回路における信号線の電位の書き込みへの影響を最小限にとどめることができる。
【0019】
特に、信号線電位の書込期間中に移動度補正が実行される場合には、駆動トランジスタの移動度補正の精度を高めることが可能になる。また、閾値補正が実行される場合には、駆動トランジスタの閾値補正の精度を高めることが可能になる。このように、表示品質の低下の抑制に効果的である。
【0020】
また、発明者らは、前述したパネル構造を有するEL表示パネルを搭載した電子機器を提案する。
ここで、電子機器は、EL表示パネルと、システム全体の動作を制御するシステム制御部と、システム制御部に対する操作入力を受け付ける操作入力部とで構成する。
【発明の効果】
【0021】
発明者らの提案する発明の採用により、電流供給線と信号線との交差部分の面積を増やすことなく、交差部分以外の電流供給線の線幅を広げることが可能になる。この線幅の拡大により、電流供給線の全体としての配線抵抗値を小さくできる。その結果、表示内容や画素位置に依存した電流供給線の電位低下を抑制して画質を改善できる。
【0022】
また、電流供給線と信号線との交差部分の面積を小さくできる。このため、電流供給線から信号線への電位変動の伝播量を抑制することができる。かくして、信号線電位の変動による画素回路への誤書き込みを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、発明を、アクティブマトリクス駆動型の有機ELパネルに適用する場合について説明する。
なお、本明細書で特に図示又は記載されない部分には、当該技術分野の周知又は公知技術を適用する。また以下に説明する形態例は、発明の一つの形態例であって、これらに限定されるものではない。
【0024】
(A)外観構成
なお、この明細書では、画素アレイ部と駆動回路とを同じ半導体プロセスを用いて同じ基板上に形成した表示パネルだけでなく、例えば特定用途向けICとして製造された駆動回路を画素アレイ部の形成された基板上に実装したものも有機ELパネルと呼ぶ。
【0025】
図5に、有機ELパネルの外観構成例を示す。有機ELパネル11は、支持基板13のうち画素アレイ部の形成領域に対向部15を貼り合わせた構造を有している。
【0026】
支持基板13は、ガラス、プラスチックその他の基材で構成され。その表面に有機EL層や保護膜等を積層した構造を有している。対向部15は、ガラス、プラスチックその他の透明部材を基材とする。なお、有機ELパネル11には、外部から支持基板13に信号等を入出力するためのFPC(フレキシブルプリントサーキット)17が配置される。
【0027】
(B)形態例1
(B−1)システム構成
以下では、Nチャネル型の薄膜トランジスタで構成された駆動トランジスタT2の特性バラツキを防ぎ、かつ画素回路を構成する素子数が少なく済む有機ELパネル11のシステム構成例を示す。
【0028】
図6は、有機ELパネル11のシステム構成例である。図6に示す有機ELパネル11は、画素アレイ部21と、その駆動回路である書込制御線駆動部23、電流供給線駆動部25、水平セレクタ27、タイミングジェネレータ29で構成される。
【0029】
画素アレイ部21は、信号線DTLと書込制御線WSLとの各交点位置にサブ画素を配置したマトリクス構造を有している。因みに、サブ画素は1画素を構成する画素構造の最小単位である。例えばホワイトユニットとしての1画素は、有機EL材料の異なる3つのサブ画素(R、G、B)で構成される。
【0030】
図7に、サブ画素に対応する画素回路と各駆動回路との接続関係を示す。また図8に、形態例1で提案する画素回路の内部構成を示す。図8に示す画素回路は、2つのNチャネル型の薄膜トランジスタT1、T2と1つの保持容量Csとで構成される。
【0031】
この回路構成の場合も、書込制御線駆動部23は、書込制御線WSLを通じて書込トランジスタT1を開閉制御し、信号線電位の保持容量Csへの書き込みを制御する。因みに、書込制御線駆動部23は、垂直解像度数分の出力段数を有するシフトレジスタで構成される。
【0032】
電流供給線駆動部25は、電流供給線DSLaを通じて駆動トランジスタT2の一方の主電極に接続される電流供給線DSLaを2値的に制御し、他の駆動回路との協働動作により画素回路内の動作内容を制御する。ここでの動作には、有機EL素子の発光・非発光だけでなく、特性バラツキの補正動作も含まれる。この形態例の場合、特性バラツキの補正は、駆動トランジスタT2の閾値のバラツキや移動度のバラツキに基づくユニフォーミティの劣化の補正を意味する。
【0033】
水平セレクタ27は、信号線DTLに画素データDinに応じた信号電位Vsig 又は閾値補正用のオフセット電位Vofs を印加する。なお、水平セレクタ27は、水平解像度数分の出力段数を有するシフトレジスタと、各出力段に対応するラッチ回路と、D/A変換回路と、バッファ回路と、セレクタとで構成される。
タイミングジェネレータ29は、書込制御線WSL、電流供給線DSLa、信号線DTLの駆動に必要なタイミングパルスを生成する。
【0034】
(B−2)駆動動作例
図9に、図8に示す画素回路の駆動動作例を示す。因みに図9では、電流供給線DSLaに印加する2種類の電源電位のうち高電位(発光電位)の方をVccで表し、低電位(非発光電位)の方をVssで表す。
【0035】
まず、発光状態における画素回路内の動作状態を図10に示す。このとき、書込トランジスタT1はオフ状態である。一方、駆動トランジスタT2は飽和領域で動作し、ゲート・ソース間電圧Vgsに応じて定まる電流Idsを有機EL素子OLEDに供給する(図9(t1))。
【0036】
次に、非発光状態の動作状態を説明する。このとき、電流供給線DSLaの電位が高電位Vccから低電位Vssに切り換わる(図9(t2))。この際、有機EL素子の閾値電圧VthelがVss−Vcath(カソード電位)<Vthelであれば有機EL素子は消灯する。
【0037】
なお、駆動トランジスタT2のソース電位Vsは、電流供給線DSLaの電位と同じになる。すなわち、有機EL素子のアノード電極は低電位Vssに充電される。図11に、画素回路内の動作状態を示す。図11に破線で示すように、この際、保持容量Csに保持されていた電荷は電流供給線DSLaへ引き出される。
【0038】
この後、信号線DTLの電位が閾値補正用のオフセット電位Vofs に遷移した状態で、書込制御線WSLが高電位に変化すると、オン動作した書込トランジスタT1を通じて駆動トランジスタT2のゲート電位がオフセット電位Vofs に変化する(図9(t3))。
【0039】
図12に、この場合における画素回路内の動作状態を示す。この際、駆動トランジスタT2のゲート・ソース間電圧VgsはVofs −Vssで与えられる。この電圧は、駆動トランジスタT2の閾値電圧Vthよりも大きくなるように設定される。Vofs −Vss>Vthを満たさなければ閾値補正動作を実行できないためである。
【0040】
次に、電流供給線DSLaの電位が再び高電位Vccに切り換えられる(図9(t4))。電流供給線DSLaの電位が高電位Vccに変化することで、有機EL素子OLEDのアノード電位Velが駆動トランジスタT2のソース電位Vsとなる。
【0041】
図13に、この場合における画素回路内の動作状態を示す。なお図13では、有機EL素子OLEDを等価回路で示す。すなわち、ダイオードと寄生容量Celで示す。このとき、Vel≦Vcat +Vthelの関係を満たす限り(ただし、有機EL素子のリーク電流は駆動トランジスタT2に流れる駆動電流Idsよりかなり小さいと考える。)、駆動トランジスタT2に流れる駆動電流Idsは、保持容量Csと寄生容量Celを充電するのに使用される。
【0042】
結果的に、有機EL素子OLEDのアノード電位Velは、図14に示すように、時間の経過と共に上昇する。すなわち、駆動トランジスタT2のゲート電位Vgはオフセット電位Vofs に固定した状態のまま、駆動トランジスタT2のソース電位Vsが上昇を開始する。この動作が閾値補正動作である。
【0043】
やがて、駆動トランジスタT2のゲート・ソース間電圧Vgsは閾値電圧Vthに収束する。このとき、Vel=Vofs
−Vth≦Vcat +Vthelを満たしている。
閾値補正期間が終了すると、書込トランジスタT1が再びオフ制御される(図9(t5))。
【0044】
このオフ制御により駆動トランジスタT2のゲート電位Vgはフローティング状態になる。ただし、ゲート・ソース間電圧Vgsは閾値電圧Vthに収束しているのでカットオフ状態にあり、駆動電流Idsは流れない。
【0045】
この後、信号線DTLの電位が信号電位Vsig に遷移するのに必要なタイミング以降に、書込トランジスタT1は再びオン状態に制御される(図9(t6))。図15に、この場合における画素回路内の動作状態を示す。因みに、信号電位Vsig は、対応画素の階調値に応じて与えられる電位である。
【0046】
この際、駆動トランジスタT2のゲート電位Vgは、信号電位Vsig に遷移する。すなわち、ゲート・ソース間電圧Vgsが閾値電圧Vthより大きくなる。これにより、駆動トランジスタT2はオン状態になり、保持容量Csと寄生容量Celを充電するように駆動電流Idsを流し始める。
【0047】
この駆動電流Idsの供給開始に伴って、駆動トランジスタT2のソース電位Vsは上昇する。因みに、駆動トランジスタT2のソース電位Vsが有機EL素子の閾値電圧Vthelとカソード電圧Vcat の和を越えない限り(有機EL素子OLEDに流れ込むリーク電流が駆動電流Idsよりもかなり小さければ)、駆動トランジスタT2により供給される駆動電流Idsは、保持容量Csと寄生容量Celを充電するのに使用される。
【0048】
ところで、この動作開始時点においては、既に駆動トランジスタT2の閾値補正動作が完了している。従って、駆動トランジスタT2から供給される駆動電流Idsは、駆動トランジスタT2の移動度μを反映した値になる。具体的には、移動度μが大きい駆動トランジスタほど大きな駆動電流Idsが流れ、ソース電位Vsの上昇も早くなる。
【0049】
逆に移動度μが小さい駆動トランジスタほど小さな駆動電流Idsが流れ、ソース電位Vsの上昇は遅くなる(図16)。
結果的に、保持容量Csの保持電圧は、駆動トランジスタT2の移動度μに応じて補正される。すなわち、駆動トランジスタT2のゲート・ソース間電圧Vgsは、移動度μを補正した電圧へと変化する。
【0050】
最後に、書込トランジスタT1がオフ制御されて信号電位Vsig の書き込みが終了する。このとき、駆動トランジスタT2のゲート・ソース間電圧Vgs(=Vsig −Vofs +Vth−ΔV)は、閾値電圧Vthより大きい。従って、駆動電流Ids’の供給が継続され、有機EL素子OLEDの発光が開始される。
【0051】
なお、有機EL素子OLEDに駆動電流Ids’が流れることで、駆動トランジスタT2のソース電位Vsは電位Vx まで上昇する。図17に、この場合における画素回路内の動作状態を示す。
【0052】
この際、駆動トランジスタT2のゲート電位Vgはフローティング状態にある。従って、駆動トランジスタT2のゲート電位Vgは、保持容量Csのブートストラップ動作により、ゲート・ソース間電圧Vgsを保持したまま上昇する(図9(t7))。
【0053】
ところで、この形態例で提案する駆動回路の場合も、発光時間が長くなると、有機EL素子OLEDのI−V特性が変化する。すなわち、駆動トランジスタT2のソース電位Vsも変化する。
【0054】
しかし、駆動トランジスタT2のゲート・ソース間電圧Vgsは、保持容量Csにより一定に保たれるので有機EL素子OLEDに流れる電流量は変化せずに済む。
このように、この形態例で提案する画素回路と駆動方式を採用すれば、有機EL素子OLEDのI−V特性の変化にかかわらず、信号電位Vsig に応じた駆動電流Idsを常に流し続けることができる。
【0055】
すなわち、有機EL素子OLEDの特性の経時変化にかかわらず、発光輝度を信号電位Vsig
に応じた輝度に保ち続けることができる。
【0056】
(B−3)まとめ
以上の通り、この形態例で説明した画素回路と駆動方式の採用により、駆動トランジスタT2をNチャネル型の薄膜トランジスタで構成する場合にも、画素毎に輝度バラツキのない有機ELパネルを実現することができる。また、Nチャネル型の薄膜トランジスタだけで画素回路を構成することができ、有機ELパネルの製造にアモルファスシリコン系のプロセスを採用することが可能になる。
【0057】
(C)形態例2
(C−1)他の技術課題の考察
前述したように、有機EL素子OLEDは電流駆動素子である。このため、電流供給線DSLaには、各画素回路で必要とされる駆動電流Idsが累積的に流れている。図18に、電流供給線DSLaが水平ラインに対して平行に延びる場合における画素位置と電圧降下との関係を示す。なお、図18では、電流供給線DSLaが有する抵抗成分を明示的に表している。
【0058】
図18で明示した抵抗成分の影響により、画素位置が電流供給線駆動部25から遠ざかるほど電流供給線DSLaの電圧降下分は除々に大きくなる。これは、1画素当たりの電圧降下が、各画素回路に対応する駆動電流Idsと1画素当たりの配線抵抗の積で与えられるためである。当然、画面右端に位置する画素回路の電源電位Vyは、画面左端に位置する画素回路の電源電位Vxよりも低くなる。
【0059】
この電源電位の低下は、画素回路を構成する駆動トランジスタT2のドレイン・ソース間電圧Vdsを小さくする方向で作用する。
図19に、画面の右端と左端の電源電位の違いが駆動電流Idsに与える影響を示す。図19に示すように、同じ階調値でも駆動電流Idsが異なれば、発光輝度差が発生してしまう。この現象はシェーディング現象として知覚される。
【0060】
このシェーディングと呼ばれる現象は、前述したように電流供給線DSLaの配線構造に起因する現象である。このため、形態例1で説明した駆動トランジスタT2の特性補正機能では、その発生を防ぐことはできない。
しかも、シェーディング現象は、クロストークの発生にも関連する。
【0061】
クロストークとは、図20(A)に示すような表示画像(全白背景画像の一部領域に黒表示窓を配置した画像等)の表示時に、図20(B)に示すように水平ライン間で輝度差が知覚される現象をいう。具体的には、黒表示窓と同じ水平ラインの背景白部分と、黒表示窓の上下に位置する水平ラインの背景白部分との間に輝度差が生じる現象をいう。
【0062】
この輝度差は、図21に示すように、黒表示窓部分の画素回路には駆動電流Idsが流れないことが影響している。具体的には、黒表示窓部分での電流供給線DSLの電圧降下が非常に小さいことが影響している。結果的に、黒表示窓部分と同列の画面右端付近における電流供給線DSLの電圧降下は小さく済み、発光輝度は高くなる。
【0063】
一方、図21に示すように、黒表示窓とは異なる水平ライン上の画面右端付近では、電圧降下の累積により電圧降下量が大きくなる。すなわち、発光輝度は電源電位の降下分だけ暗くなる。結果的に、同じ画面右端でも黒表示窓のある水平ラインとその他の水平ラインでは輝度差が発生し、その輝度差が一定量以上になると視認されてしまう。
【0064】
ところで、電圧降下量は、駆動電流と電流供給線の配線抵抗との積和で計算される。
例えば図21のパネル構造の場合、水平ライン上の画素数(R画素、G画素、B画素の全てを含む)をN、各画素で必要とされる駆動電流Idsの最大値をI、1画素当たりの配線抵抗をrとすると、電流供給線DSLのうち電流供給線駆動部25から最も離れた位置(この形態例の場合、画面右端)の電源電位Vy は、次式で与えられる。
Vy={N(N+1)/2}×I×r (式1)
【0065】
従って、電圧降下量を小さくするには、N、I、rの少なくとも一つを小さくすれば良い。
ここでは、配線抵抗rを小さくすることを考える。配線抵抗rを小さくするには、電流供給線DSLの配線幅を太くする(広げる)か、電流供給線DSLを構成する金属膜(例えばアルミニウム)の膜厚を増やすことが必要である。
【0066】
このうち、膜厚を増大する方法はプロセスの変更を伴い、生産タクトや歩留まりの低下等を招く可能性がある。このため、もう一つの方法が選択肢となる。すなわち、電流供給線DSLの線幅を太くする方法が選択肢となる。
【0067】
図22に、形態例1に対応する画素回路31のレイアウト例を示す。なお、図中の符号は、それぞれ図8の符号に対応するものとする。図22の場合、電流供給線DSLaの線幅はW1で与えられる。
【0068】
図23に、電流供給線DSLaの線幅W2(>W1)を太くする場合のレイアウト例を示す。図23のレイアウトを採用すれば、電流供給線DSLaの配線抵抗を小さくでき、結果的にシェーディングやクロストークの改善が期待できる。
ただし、電流供給線DSLaの線幅が太くなると、電流供給線DSLaと信号線DTLとが交差する部分(図中破線で囲んで示す符号Aの部分)の面積が大きくなる。
【0069】
この面積の増加は、電流供給線DSLaと信号線DTLとの間に形成される配線間容量(カップリング容量)の増加を意味する。すなわち、電流供給線DSLaの電位変動が信号線DTLに伝搬し易くなる新たな技術課題が発生する。
【0070】
例えばある水平ラインに対応する画素回路の信号電位Vsig の書き込みタイミングで、他の水平ラインに対応する電流供給線DSLaの電位が変動する場合、移動度補正期間中に電位の変動が戻らないと、駆動トランジスタT2の移動度補正が正しく実行されないおそれがある。
【0071】
図24に、ある水平ラインに対応する画素回路31の駆動動作例を示す。なお、注目する水平ラインの位置を添え字の“i”で示す。添え字の“i”は、画面の上からi番目に位置する水平ラインを意味する。
【0072】
ここで、図24(A)は、i番目の水平ラインに対応する画素回路31の書込制御線WSL(i)の信号波形例である。また、図24(B)は、i番目の水平ラインに対応する電流供給線DSLa(i)の信号波形例である。また、図24(C)は、i+1番目の水平ラインに対応する電流供給線DSLa(i+1)の信号波形例である。
【0073】
図24(D)は、電流供給線と交差する信号線DTLの信号波形を示す。図24(E)は、i番目の水平ラインに対応する画素回路31を構成する駆動トランジスタT2のゲート電位Vgの信号波形である。図24(F)は、i番目の水平ラインに対応する画素回路31を構成する駆動トランジスタT2のソース電位Vsの信号波形である。
【0074】
図24(D)に示すように、電流供給線DSLaの電位変動は、自段であるか否かにかかわらず、交差部分の配線容量を通じて信号線DTL(i)に伝搬する。図24の場合、信号電位Vsig の書込及び移動度補正期間中(t6)に生じた電源電位の変動(高電位Vccから低電位Vssへの変動)が駆動トランジスタT2のゲート電位Vgとソース電位Vsに及ぶ様子が確認できる。
【0075】
それでも、ゲート電位Vgとソース電位Vsの電位変動が移動度補正期間中に本来の電位に戻るのであれば、問題なく移動度補正動作を完了することができる。しかし、本来の電位に戻らなかった場合、移動度補正動作を正常な状態で完了することができない。
その理由は、ソース電位Vsの電位変動量は、保持容量Csを介するためにゲート電位Vgの電位変動量に対して小さくなることに起因する。
【0076】
すなわち、ゲート電位Vgの変動が移動度補正期間中に戻らなかった場合、正常な移動度補正の場合に比して駆動トランジスタT2のゲート・ソース間電圧Vgsが小さくなってしまう。このことは、画面上の輝度が本来の輝度レベルよりも低くなることを意味する。
【0077】
しかも、カップリングの影響による電位の変動量は、信号電位Vsig とは無関係に一定である。
従って、信号電位Vsig が低輝度の場合、この輝度レベルの低下は更に大きく表れることになる。このことは、黒つぶれやガンマ補正の不足として画質の低下を引き起こす。
【0078】
また、この信号線DTLへの電位変動の伝搬は、閾値補正期間が複数の水平走査期間に分割実行される場合に影響を与えることがある。
例えばある水平ラインに対応する画素回路の閾値補正期間中に、他の水平ラインに対応する電流供給線DSLaの電位が変動する場合、閾値補正期間中に電位の変動が戻らないと、駆動トランジスタT2の閾値補正が正しく実行されない。
【0079】
図25に、ある水平ラインに対応する画素回路31の駆動動作例を示す。図25は、閾値補正動作を3水平走査期間に分割して実行する場合の動作例である。なお、図25の場合も、注目する水平ラインの位置を添え字の“i”で示す。添え字の“i”は、画面の上からi番目に位置する水平ラインを意味する。
【0080】
ここで、図25(A)は、i番目の水平ラインに対応する画素回路31の書込制御線WSL(i)の信号波形例である。また、図25(B)は、i番目の水平ラインに対応する電流供給線DSLa(i)の信号波形例である。また、図25(C)は、i+1番目の水平ラインに対応する電流供給線DSLa(i+1)の信号波形例である。
【0081】
また、図25(D)は、i+2番目の水平ラインに対応する電流供給線DSLa(i+2)の信号波形例である。
図25(E)は、電流供給線と交差する信号線DTLの信号波形を示す。図25(F)は、i番目の水平ラインに対応する画素回路31を構成する駆動トランジスタT2のゲート電位Vgの信号波形である。図25(G)は、i番目の水平ラインに対応する画素回路31を構成する駆動トランジスタT2のソース電位Vsの信号波形である。
【0082】
図25(E)に示すように、電流供給線DSLaの電位変動は、自段の電位変動であるか他段の電位変動であるにかかわらず、交差部分の配線容量を通じて信号線DTLに伝搬する。図25の場合、書込トランジスタT1がオン状態である期間t3、t4、t6、t8の電源電位の変動(低電位Vssから高電位Vccへの変動)が駆動トランジスタT2のゲート電位Vgとソース電位Vsに伝搬する。
【0083】
この場合も、ゲート電位Vgとソース電位Vsの電位変動が閾値補正期間中に戻れば、問題なく閾値補正を完了することができる。しかし、閾値補正動作のほぼ終了間際に他段の電流供給線DSLaの電位変動が伝搬し、ゲート電位Vgとソース電位Vsが変動して本来の電位に戻らない場合には、やはり閾値補正動作を正常な状態で完了することができなくなる。
【0084】
図26に、その理由を示す。図26(A)は、電流供給線DSLaに電位変動が生じる前の画素回路内の電位関係を示している。図26(A)の場合、駆動トランジスタT2のゲート・ソース間電圧Vgsは既に閾値電圧Vthに収束している。図26(B)は、閾値補正期間の終了間際に電流供給線DSLaの電位が変動した状態を表している。
【0085】
この時点のゲート電位Vgは、オフセット電位Vofs から変動分ΔVだけ大きくなる。一方、ソース電位Vsの変動部ΔVsは、保持容量Csを通じて伝搬するのでゲート電位Vgの変動部ΔVより小さくなる。このため、駆動トランジスタT2のゲート・ソース間電圧Vgsは閾値電圧Vthより大きくなり、駆動トランジスタT2は再びオン動作する。
【0086】
結果として、図26(C)に示すように、駆動トランジスタT2の動度補正動作は継続し、ソース電位Vsは更にΔVs’だけ上昇する。
やがて、図26(D)に示すように、電流供給線DSLaの電位変動の影響が収束すると、駆動トランジスタT2のゲート電位Vgはオフセット電位Vofs に収束し、ソース電位Vsは電位変動前よりもΔVs’だけ大きい電位に収束する。
【0087】
このことは、閾値補正期間の終了時点で、駆動トランジスタT2のゲート・ソース間電圧Vgsが閾値電圧Vthよりも小さい電圧Vgs’ に変化していることを意味する。
すなわち、閾値補正動作が正常に実行されていないことを意味する。結果的に、発光輝度が本来の輝度に一致しなくなる。
【0088】
また、電流供給線DSLaと信号線DTLの交差面積の増大は、金属層同士の重なり面積の増大を意味する。従って、交差面積の増大は、層間ショートの可能性を高める原因にもなる。
【0089】
また、図23に示すように、電流供給線DSLaが信号線DTLの上層(第2層)として配線される場合、信号線DTLのうち電流供給線DSLaの下層(第1層)部分の配線長が長くなる。この場合に、下層(第1層)部分の配線抵抗が上層(第2層)の配線抵抗より大きいと、信号線DTLの全体としての配線抵抗が大きくなる原因にもなる。
【0090】
(C−2)提案するレイアウト
そこで、発明者らは、図27に示すレイアウトを提案する。すなわち、電流供給線DSLbのうち信号線DTLとの交差部分でのみ線幅W3(<W1)が細く、その他の部分では線幅W4(>W1)が太い配線構造を提案する。
【0091】
このため、電流供給線DSLbの線幅は、水平ラインに沿って細い部分と太い部分が画素ピッチで交互に出現することになる。
なお、図27の場合、電流供給線DSLbの線幅は、線幅W3から線幅W4に徐々に太くなる一方で、線幅W4から線幅W3に徐々に細くなるように形成する。
【0092】
もっとも、電流供給線DSLbの線幅は、線幅W3とW4の間で階段状(直角)に変化しても良い。
この配線構造の採用により、電流供給線DSLbの全体としての配線抵抗を低下させることができ、シェーディングやクロストークの発生を効果的に抑制することができる。
【0093】
勿論、線幅W3やW4(特にW4)は、式1で与えられる電圧降下量Vyがクロストークの視認限界値未満になるように設定する。因みに、クロストークの視認限界値は、使用環境や水平走査周期等により最適値は異なる値をとる。ここでは、目安の一つとして、最大階調値に対応する輝度の1%未満を例示する。
【0094】
更に、図27に示す配線構造の場合、前述したその他の課題も解決することができる。
まず、図27に示す配線構造の場合、電流供給線DSLbと信号線DTLとの間に形成される配線間容量を小さくできる。線幅がW3と短くなるためである。このため、電流供給線DSLbにおける電位変動の信号線DTLへの伝搬を小さくすることができる。
【0095】
従って、ある水平ラインに対応する画素回路の信号電位Vsig の書き込みタイミングで、他の水平ラインに対応する電流供給線DSLbの電位が変動し、書込中の信号電位Vsig に電位変動が生じたとても、変動自体が小さいので移動度補正期間中に電位の変動を戻すことができる。すなわち、正常な移動度補正の実行を確保できる。
【0096】
図28に、ある水平ラインに対応する画素回路31の駆動動作例を示す。図28は、前述した図24に対応する図面であり、注目する水平ラインの位置を添え字の“i”で示しめしている。従って、図28(A)〜図28(F)の信号波形は、いずれも図24(A)〜図24(F)の信号波形に対応する。
【0097】
勿論、発明者らの提案する配線構造の場合も、図28(D)に示すように、電流供給線DSLbの電位変動が、信号線DTLとの交差部分に形成される配線間容量を通じて信号線DTLに伝搬する。ただし、その伝搬量は図24の場合に比して小さくなる。
【0098】
従って、信号電位Vsig の書込及び移動度補正期間中(t6)に、電源電位が高電位Vccから低電位Vssに変化する際にも、駆動トランジスタT2のゲート電位Vgとソース電位Vsに出現する変動量は小さく済む。
【0099】
このため、ゲート電位Vgとソース電位Vsの電位変動は、ほぼ間違いなく移動度補正期間中に戻すことが可能となり、移動度補正動作を期間内に完了することができる。従って、信号電位Vsig が高輝度の場合は勿論、低輝度の場合についても、階調値に対応する本来の発光輝度を実現できる。
【0100】
また、信号線DTLに伝搬する電位変動量の抑制は、閾値補正期間が複数の水平走査期間に分割実行される場合にも効果を発揮する。
ここでは、図29を参照して説明する。なお、図29は、前述した図25に対応する画面であり、注目する水平ラインの位置を添え字の“i”で示しめしている。従って、図29(A)〜図29(G)の信号波形は、いずれも図25(A)〜図25(G)の信号波形に対応する。
【0101】
図29の場合も、書込トランジスタT1がオン状態である期間t3、t4、t6、t8に発生した電流供給線DSLbの電位変動(低電位Vssから高電位Vccへの変動)が、駆動トランジスタT2のゲート電位Vgとソース電位Vsに伝搬する。
ただし、発明者らの提案する配線構造を採用した電流供給線DSLbと信号線DTLとの交差部分に形成される配線間容量(カップリング容量)は小さいため、電位変動の伝搬量は非常に小さくなる。
【0102】
結果的に、ゲート電位Vgとソース電位Vsの電位変動が閾値補正期間の終了間際に発生したとしても、その変動を残りの補正期間中に戻すことができ、問題なく閾値補正を完了することができる。また、閾値補正動作の完了後に電位変動が伝搬して閾値補正動作が再開したとしても、その際に生じるソース電位Vsの上昇量ΔVs’は無視できるほど小さく済む。従って、閾値補正動作への影響を考えずに済む。
【0103】
また、図27に示す配線構造では、電流供給線DSLbと信号線DTLの交差面積が小さくなるので金属層同士の重なり面積も小さくなり、層間ショートの可能性を小さくできるという効果も期待できる。
また、図27に示すように、電流供給線DSLaが信号線DTLの上層(第2層)として配線される場合、信号線DTLのうち電流供給線DSLaの下層(第1層)部分の配線長を短くできる。
【0104】
従って、下層(第1層)部分の配線抵抗が上層(第2層)の配線抵抗より大きくても、信号線DTLの全体としての配線抵抗を小さくできる。
なお、前述した各種の効果は、有機ELパネルの画素構造がトップエミッション型の画素構造を採用する場合に特に有効である。
【0105】
図30に、トップエミッション構造を有する有機ELパネルの断面構造例を示す。この構造の場合、書込トランジスタT1、駆動トランジスタT2、保持容量Cs等の半導体素子が支持基板としてのガラス基板33上に形成され、その上層に有機EL素子OLEDが形成される。
【0106】
更にその上層には、封止材35、カラーフィルタ37、ガラス基板39が順番に配置される。
この層構造の場合、有機層から出力された光は、半透明膜で構成されたカソード電極とカラーフィルタ37を順番に通過し、これらを封止するガラス基板39の表面から外部に出力される。
【0107】
このように、トップエミッション構造では、電流供給線DSLbや信号線DTL等の配線層を光路上に配置せずに済む。すなわち、電流供給線DSLbは、有機EL素子OLEDの下位階層に配線される。
従って、信号線DTLとの交差部以外で電流供給線DSLbの線幅W4を広げる上での開口率の成約はなく、線幅W4を必要なだけ広げることが可能になる。
【0108】
(C−3)システム構成
図31に、前述した配線構造を有する有機ELパネル11のシステム構成例を示す。図31には、図6との対応部分に同一符号を付して示している。
図31に示す有機ELパネル11は、画素アレイ部41と、その駆動回路である書込制御線駆動部23、電流供給線駆動部25、水平セレクタ27、タイミングジェネレータ29で構成される。
【0109】
このうち、画素アレイ部41は、電流供給線DSLb(図27)以外は、形態例1で説明した画素アレイ部21と同じ構造を有している。すなわち、画素アレイ部41は、電流供給線DSLbの2値電位駆動により画素回路の動作状態を制御するアクティブマトリクス駆動方式に対応した画素構造を採用する。
従って、画素回路31と各駆動回路との接続関係(図32)や画素回路31の内部構成(図33)については形態例1と同じになる。
【0110】
(D)他の形態例
(D−1)駆動方式1
前述の形態例の場合には、電流供給線DSLbが2値電位(高電位Vccと低電位Vss)で駆動制御される場合について説明した。
【0111】
しかし、電流供給線DSLbが3値以上の電位で駆動制御される場合にも勿論適用できる。そして、前述した配線構造の電流供給線DSLbを適用すれば、3値以上の電位で駆動制御される場合にも信号線DTLへの電位の伝搬を効果的に抑制できる。
【0112】
(D−2)駆動方式2
前述の形態例の場合には、電流供給線DSLbが2値電位(高電位Vccと低電位Vss)で駆動制御される場合について説明した。
しかし、電流供給線DSLbは、例えば図2や図4に示す画素構造に適用する場合にも採用できる。すなわち、電流供給線DSLbが固定電位に制御される場合にも適用できる。
【0113】
この場合でも、電流供給線DSLbの配線抵抗を小さくできるため、シェーディングやクロストークの影響を小さくできる。
また、信号線DTLとの交差部分の面積を小さくできるので配線間容量(カップリング容量)の小型化や信号線DTLの低抵抗化等を実現できる。
【0114】
(D−3)駆動方式3
前述の形態例の説明では、他の水平ラインに対応する電流供給線DSLbの電位変動がある水平ラインの信号線電位(信号電位Vsigやオフセット電位Vofs )の書込期間と重なる場合について説明した。
【0115】
しかし、これらは必須の駆動条件ではなく、他の水平ラインに対応する電流供給線DSLbの電位変動がある水平ラインの信号電位Vsig の書込期間やオフセット電位Vofs の書込期間と重ならなくても、前述した配線構造はシェーディングやクロストークの抑制に効果的である。
【0116】
(D−4)駆動方式4
前述の形態例の説明では、信号電位Vsig の書込期間では移動度補正も同時に実行される場合について説明した。
しかし、信号電位Vsig の書き込みと移動度補正とが別々に実行される場合にも応用できる。
【0117】
(D−5)駆動方式5
前述の形態例の説明では、電流供給線駆動部25が画素アレイ部41の片側から電流供給線DSLbを駆動する場合について説明した。
しかし、画素アレイ部41の両側から1本の電流供給線DSLbを駆動する場合にも適用できる。
【0118】
なお、この場合、1つの電流供給線駆動部25が駆動する画素数は、片側から駆動する場合の半分で済む。
従って、式1の計算では、画素数NをN/2に置き換えて計算すれば、画面中央付近の電圧降下量を算出することができる。
【0119】
この場合、求められた電圧降下量が輝度差として知覚されないように1画素当たりの抵抗値rを満たすように線幅W3及びW4を設定すれば良い。
【0120】
(D−6)画素構造1
前述した形態例の説明では、画素構造がトップエミッション構造の場合に配線幅の制約もなく、特に効果的である場合について説明した。
しかし、必ずしもトップエミッション構造に限定されるものではなく、ボトムエミッション構造の場合にも適用可能である。
【0121】
(D−7)画素構造2
前述した形態例の説明では、画素回路が2つの薄膜トランジスタと保持容量Csとで構成される場合について説明した。
【0122】
しかし、3つ以上の薄膜トランジスタを用いる画素回路でも、電流供給線DSLbを適用できる。例えば信号線DTLは信号電位Vsig の印加専用とし、オフセット電位Vofs の印加には別途異なる薄膜トランジスタを用意しても良い。
【0123】
(D−8)製品例
(a)電子機器
前述の説明では、有機ELパネルを例に発明を説明した。しかし、前述した有機ELパネルは、各種の電子機器に実装した商品形態でも流通される。以下、他の電子機器への実装例を示す。
【0124】
図34に、電子機器51の概念構成例を示す。電子機器51は、有機ELパネル53、システム制御部55及び操作入力部57で構成される。ここでの有機ELパネル53には、例えば形態例2で説明した有機ELパネル11を適用する。
【0125】
なお、システム制御部55で実行される処理内容は、電子機器51の商品形態により異なる。また、操作入力部57は、システム制御部55に対する操作入力を受け付けるデバイスである。操作入力部57には、例えばスイッチ、ボタンその他の機械式インターフェース、グラフィックインターフェース等が用いられる。
【0126】
なお、電子機器51は、機器内で生成される又は外部から入力される画像や映像を表示する機能を搭載していれば、特定の分野の機器には限定されない。
図35に、その他の電子機器がテレビジョン受像機の場合の外観例を示す。
【0127】
テレビジョン受像機61の筐体正面には、フロントパネル63及びフィルターガラス65等で構成される表示画面67が配置される。表示画面67の部分が、形態例で説明した有機ELパネルに対応する。
【0128】
また、この種の電子機器51には、例えばデジタルカメラが想定される。図36に、デジタルカメラ71の外観例を示す。図36(A)が正面側(被写体側)の外観例であり、図36(B)が背面側(撮影者側)の外観例である。
【0129】
デジタルカメラ71は、保護カバー73、撮像レンズ部75、表示画面77、コントロールスイッチ79及びシャッターボタン81で構成される。このうち、表示画面77の部分が、形態例で説明した有機ELパネルに対応する
【0130】
また、この種の電子機器51には、例えばビデオカメラが想定される。図37に、ビデオカメラ91の外観例を示す。
ビデオカメラ91は、本体93の前方に被写体を撮像する撮像レンズ95、撮影のスタート/ストップスイッチ97及び表示画面99で構成される。このうち、表示画面99の部分が、形態例で説明した有機ELパネルに対応する。
【0131】
また、この種の電子機器51には、例えば携帯端末装置が想定される。図38に、携帯端末装置としての携帯電話機101の外観例を示す。図38に示す携帯電話機101は折りたたみ式であり、図38(A)が筐体を開いた状態の外観例であり、図38(B)が筐体を折りたたんだ状態の外観例である。
【0132】
携帯電話機101は、上側筐体103、下側筐体105、連結部(この例ではヒンジ部)107、表示画面109、補助表示画面111、ピクチャーライト113及び撮像レンズ115で構成される。このうち、表示画面109及び補助表示画面111の部分が、形態例で説明した有機ELパネルに対応する。
【0133】
また、この種の電子機器51には、例えばコンピュータが想定される。図39に、ノート型コンピュータ121の外観例を示す。
ノート型コンピュータ121は、下型筐体123、上側筐体125、キーボード127及び表示画面129で構成される。このうち、表示画面129の部分が、形態例で説明した有機ELパネルに対応する。
【0134】
これらの他、電子機器51には、オーディオ再生装置、ゲーム機、電子ブック、電子辞書等が想定される。

(D−9)他の表示デバイス例
前述の形態例においては、発明を有機ELパネルに適用する場合について説明した。
しかし、前述した駆動技術は、その他のEL表示装置に対しても適用することができる。例えばLEDを配列する表示装置その他のダイオード構造を有する発光素子を画面上に配列した表示装置に対しても適用できる。また例えば無機EL素子を画面上に配列した表示装置にも適用できる。
【0135】
(D−10)その他
前述した形態例には、発明の趣旨の範囲内で様々な変形例が考えられる。また、本明細書の記載に基づいて創作される又は組み合わせられる各種の変形例及び応用例も考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】有機ELパネルの機能ブロック構成を説明する図である。
【図2】画素回路と駆動回路との接続関係を説明する図である。
【図3】有機EL素子のI−V特性の経時変化を説明する図である。
【図4】他の画素回路例を示す図である。
【図5】有機ELパネルの外観構成例を示す図である。
【図6】有機ELパネルのシステム構成例を示す図である。
【図7】画素回路と駆動回路との接続関係を説明する図である。
【図8】形態例1に係る画素回路の構成例を示す図である。
【図9】形態例1に係る駆動動作例を示す図である。
【図10】画素回路の動作状態を説明する図である。
【図11】画素回路の動作状態を説明する図である。
【図12】画素回路の動作状態を説明する図である。
【図13】画素回路の動作状態を説明する図である。
【図14】ソース電位の経時変化を示す図である。
【図15】画素回路の動作状態を説明する図である。
【図16】移動度の違いによる経時変化の違いを示す図である。
【図17】画素回路の動作状態を説明する図である。
【図18】シェーディング現象を説明する図である。
【図19】シェーディング現象の発生原因を説明する図である。
【図20】クロストーク現象を説明する図である。
【図21】クロストーク現象の発生原因を説明する図である。
【図22】形態例1に対応する画素回路のレイアウトを示す図である。
【図23】画素回路の改善レイアウト例を示す図である。
【図24】電流供給線の電位変動が移動度補正に与える影響を説明する図である。
【図25】電流供給線の電位変動が閾値補正に与える影響を説明する図である。
【図26】閾値補正に表れる影響の発生原理を説明する図である。
【図27】形態例2で提案する画素回路のレイアウトを示す図である。
【図28】移動度補正の改善を説明する図である。
【図29】閾値補正の改善を説明する図である。
【図30】トップエミッション構造例を説明する図である。
【図31】形態例2に係る有機ELパネルの構成例を示す図である。
【図32】形態例2に係る画素回路と駆動回路との接続関係を示す図である。
【図33】形態例2に係る画素回路の構成例を示す図である。
【図34】電子機器の概念構成例を示す図である。
【図35】電子機器の商品例を示す図である。
【図36】電子機器の商品例を示す図である。
【図37】電子機器の商品例を示す図である。
【図38】電子機器の商品例を示す図である。
【図39】電子機器の商品例を示す図である。
【符号の説明】
【0137】
11 有機ELパネル
21 画素アレイ部
23 書込制御線駆動部
25 電流供給線駆動部
27 水平セレクタ
29 タイミングジェネレータ
31 画素回路
41 画素アレイ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクティブマトリクス駆動方式に対応した画素構造を有するEL表示パネルにおいて、
複数の画素回路に共通に接続される電流供給線のうち信号線との交差部分の線幅が、信号線との非交差部分の線幅よりも細く形成されている
ことを特徴とするEL表示パネル。
【請求項2】
請求項1に記載のEL表示パネルにおいて、
前記電流供給線は、2値以上の電位で駆動制御される
ことを特徴とするEL表示パネル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のEL表示パネルにおいて、
前記画素構造はトップエミッション構造を有している
ことを特徴とするEL表示パネル。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のEL表示パネルにおいて、
ある行に対応する前記電流供給線における電位変動のタイミングが、他行の信号線電位の書込期間に位置する
ことを特徴とするEL表示パネル。
【請求項5】
請求項4に記載のEL表示パネルにおいて、
前記信号線電位の書込期間中に移動度補正が実行される
ことを特徴とするEL表示パネル。
【請求項6】
請求項4に記載のEL表示パネルにおいて、
ある行に対応する前記電流供給線における電位変動のタイミングが、他行の閾値補正期間に位置する
ことを特徴とするEL表示パネル。
【請求項7】
アクティブマトリクス駆動方式に対応した画素構造を有するEL表示パネルであって、複数の画素回路に共通に接続される電流供給線のうち信号線との交差部分の線幅が、信号線との非交差部分の線幅よりも細く形成されているEL表示パネルと、
システム全体の動作を制御するシステム制御部と、
前記システム制御部に対する操作入力を受け付ける操作入力部と
を有することを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図19】
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【図21】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図28】
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【図29】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図18】
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【図20】
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【図22】
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【図23】
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【図27】
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【図30】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【公開番号】特開2009−128870(P2009−128870A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−307042(P2007−307042)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】