説明

FRP成形物

【課題】 従来のFRP成形物と金属との接合は、金属外面にローレット加工したり、成形方法により接合強度の向上を図っているが、金属構造物を接合する場合等には、接合強度が不足する場合が多い。
【解決手段】 本発明のFRP成形物においては、鋼板2c等の埋め込み体及び該埋め込み体の開孔2eを一方側から他方側に貫通して設置した炭素繊維等の繊維強化材2dを樹脂含浸により表皮部2aに一体接合した接合端部2とFRP成形部1とでFRP成形物を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FRP成形物に関し、特に、接合端部として金属等を接合したFRP成形物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のFRP成形物と金属の接合に関して、ボルト、ナット、ロッド、座金、コイル、メタルシートなどの金属製の小物部品をFRPに取付ける必要がある場合には、インサート成形により成形時にFRPに埋め込むようにすること、そして、ボルト、ナットの外側にはローレット溝がつけられており、インサート部品をFRP成形品内部に強く固定することを記載したものがある。
また、FRPと金属とを接合するのに、接着剤による接合とオーバーレイによる接合の例が記載されている。(例えば、非特許文献1参照。)
【非特許文献1】笠野英秋編、「だれでも使えるFRP−FRP入門−」、社団法人 強化プラスチック協会、平成14年9月12日、p.35、97、98 なお、出願時に未公開であるが、関連の先行出願に、特願2004−15374がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記の非特許文献1によると、金属外面にローレット加工をしたり、インサート成形やオーバーレイ接合によりFRP成形物と金属との接合強度の向上を図っているが、金属構造物を接合する場合等には、一層接合強度を上げることを要求される場合が多い。
本発明は、金属等の接合端部を有し、該接合端部を強力に接合したFRPの成形物を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のFRP成形物は、心材を樹脂含浸して形成した心材部を内部にし、該心材部の両外側を繊維強化材を樹脂含浸して形成した表皮部でサンドイッチ状に覆ったFRP成形部と、FRP成形部の端部に連続して設けられ、埋め込み体を有する埋め込み部のFRP成形部側の両外側を同じく表皮部でサンドイッチ状に覆い、埋め込み部のFRP成形部側と反対側の埋め込み体を表皮部外に出し形成した接合端部とを備えたFRP成形物であって、表皮部でサンドイッチ状に覆われた埋め込み部が、埋め込み体及び該埋め込み体の開孔を一方側から他方側に貫通して設置した繊維強化材を樹脂含浸により一体形成したものである。
【0005】
また、本発明のFRP成形物は、接合端部の表皮部外に出した埋め込み体に金属構造物を接合したものである。
【0006】
また、本発明のFRP成形物は、一端側に金属構造物が設けられた埋め込み体の接合端部の他端側が、接合端部の表皮部でサンドイッチ状に覆われ、金属構造物が接合端部によりFRP成形部に結合されたものである。
【0007】
また、本発明のFRP成形物においては、表皮部で覆われた埋め込み体は、開孔に繊維強化材を貫通させ設置するとともに、表皮部側の面に凹凸を設けたものである。
【0008】
また、本発明のFRP成形物は、埋め込み体の開孔を、開孔の貫通方向の中央部で孔の大きさが小さく、両外側で孔の大きさが大きいテーパ状の孔としたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のFRP成形物においては、表皮部でサンドイッチ状に覆われた埋め込み部が、埋め込み体及び該埋め込み体の開孔を一方側から他方側に貫通して設置した繊維強化材を樹脂含浸により一体形成したものであるので、FRP成形時に表皮部と埋め込み体との接合は、含浸樹脂による両界面間の接合に加えて、埋め込み体に開孔などで含浸樹脂により接合した繊維強化材と表皮部との接合で補強され強固なものとなる。即ち、接合端部を形成する埋め込み部と表皮部との接合は強固なものとなる。また、FRP成形部を形成する表皮部と接合端部を形成する表皮部とは同一の連続する表皮部であるので、金属等の接合端部を有し、該接合端部を強力に接合したFRPの成形物を得ることができる。
【0010】
また、本発明のFRP成形物は、接合端部の表皮部外に出した埋め込み体に金属構造物を接合したので、表皮外の埋め込み体に金属構造物を溶接、ねじ止め等で結合でき、接合端部により金属構造物を強力に接合したFRP成形物を得ることができる。
【0011】
また、本発明のFRP成形物は、一端側に金属構造物が設けられた埋め込み体の接合端部の他端側が、接合端部の表皮部でサンドイッチ状に覆われ、金属構造物が接合端部によりFRP成形部に結合されたので、FRP成形により同時に金属構造物を接合したFRP成形物を得ることができる。
【0012】
また、本発明のFRP成形物においては、表皮部で覆われた埋め込み体は、開孔に繊維強化材を貫通させ設置するとともに、表皮部側の面に凹凸を設けたので、埋め込み体と表皮部との接合が一層強固となる。
【0013】
また、本発明のFRP成形物は、埋め込み体の開孔を、開孔の貫通方向の中央部で孔の大きさが小さく、両外側で孔の大きさが大きいテーパ状の孔としたので、開孔を貫通する繊維強化材への応力のかかり具合をスムーズにできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1の接合端部を有するFRP成形物の概略を示す断面図であり、図2は、図1の接合端部を有するFRP成形物の構成を示す断面図であり、図3は、図2のFRP成形物の接合端部の埋め込み部の構成を示す斜視図であり、図4は同じく埋め込み部の変形例を示す斜視図であり、図5は、同じく埋め込み部の別の変形例を示す斜視図である。
【0015】
図1に示すように、本FRP成形物は、ほぼ板状体であるFRP成形部1と、その一端に連続して形成される同じくほぼ板状体である接合端部2とからなる。
FRP成形部1は、内部の心材部1bの両外面に表皮部1aを配置し、表皮部1aで心材部1bをサンドイッチしたものであり、また、接合端部2は、埋め込み体である鋼板2c等からなる埋め込み部2bのFRP成形部1側の両外側を表皮部2aでサンドイッチ状に覆い、埋め込み部2bのFRP成形部1と反対側の埋め込み体を表皮部2a外に出し形成したものである。ここで、表皮部1aと表皮部2aとは、連続して形成された同一の表皮部であり、内部に心材部1bと埋め込み部2bとの両端部を連続して配置し、それぞれサンドイッチして、FRP成形物の端部に接合端部2を形成する。図1に示すように、一般にFRP成形部1の心材部1bの厚さが接合端部2の埋め込み部2bの厚さより大きく、FRP成形物はFRP成形部1から接合端部2にテーパ状に厚さが小さくなる。
【0016】
図2、図3によりFRP成形部1と接合端部2の構成を詳細に説明する。
FRP成形部1の表皮部1aは炭素繊維等の繊維強化材2dに含浸樹脂を含浸させたFRP成形体であり、内部の心材部1bは、ポリウレタン等の心材に含浸樹脂を含浸させたものである。表皮部1aと心材部1bとは含浸樹脂により一体に結合されている。
【0017】
接合端部2の表皮部2aは、前記のようにFRP成形部1の表皮部1aと同一のものである。内部の埋め込み部2bは、FRP成形部1の内部の心材部1bの端部にその端部を接続する鋼板2cと、この鋼板2cに適宜設けた板面を貫通する開孔2eの一方側から他方側へ開孔2eを貫通して設置された炭素繊維等の繊維強化材2dとを含浸樹脂により一体化したものとからなる。表皮部2aと埋め込み部2bとは含浸樹脂により一体に結合されている。開孔2eの数は1個以上適当数設けるが、複数個設けてそれぞれに繊維強化材2dを貫通させた方が結合強度が増し、望ましい。
【0018】
このように、本接合端部2を有するFRP成形物においては、接合端部2の鋼板2cは含浸樹脂によりFRP成形部1の表皮部1aと同一の表皮部2aに結合するのに加えて、開孔2eを貫通し設置され、含浸樹脂により開孔2e等で鋼板2cと結合した繊維強化材2dが含浸樹脂により表皮部2aと結合するので、接合端部2を形成する埋め込み部2bは、強固に表皮部1aと同一の表皮部2aに結合する。そこで、接合端部2のFRP成形部1への結合は強固となる。即ち、接合端部2を強力に接合したFRPの成形物を得ることができる。
【0019】
次に、このような接合端部2を有するFRP成形物の真空含浸成形により製造する製造方法を説明する。
真空含浸成形装置は、樹脂注入手段と、脱気手段と、繊維強化材2d及び心材等が載置され樹脂注入手段により樹脂が注入される成形型と、成形型に載置された繊維強化材2d及び心材等の載置物を覆う真空フィルムと、成形型の周辺部で、成形部を真空フィルムで外部からシールするシール手段等を具備する公知のものを使用する。
まず、成形型に下部の表皮部1a、2aを形成する繊維強化材2dであるシート状の炭素繊維を大きさ及び形状を合わせて切断し載置する。
その上に、FRP成形部1を形成する心材である所定の形状のポリウレタン心材及び埋め込み部2bを載置する。埋め込み部2bは、図2に示すように鋼板2cとその開孔2eを貫通して鋼板2c面に配置したシート状の炭素繊維とである。
次いで、上部の表皮部1a、2aを形成する繊維強化材2dであるシート状の炭素繊維を大きさ及び形状を合わせて切断し載置する。
それから、これらの載置物を真空フィルムで覆い、周辺をシール後通常の条件で真空脱気、樹脂注入含浸、圧締め硬化により成形し、一体の成形物を得る。
前記の真空含浸成形において、図1に示すように埋め込み部2bの鋼板2cの端部は、成形型から外に出し、表皮部2aと接合しない。
【0020】
また、FRP成形物を得る成形方法は、上記の真空含浸成形により製造方法に限らず、ポリウレタン等の心材の上にシート状の炭素繊維等と含浸樹脂を供給しながら積層させて硬化させ、同様の成形物を得る所謂手積み成形法により成形してもよい。
【0021】
このようにして形成した接合端部2を有するFRP成形物は、表皮部2aと接合せずに外に出ている鋼板2cの端部により溶接、ボルト止め等で金属構造物と結合できる。
また、接合端部2を有するFRP成形物は、埋め込み部2bの鋼板2cの表皮部2aと接合しない側を金属構造物とし、直接FRP成形物と金属構造物を接合端部2により結合することもできる。
【0022】
繊維強化材2dとしては、炭素繊維の他に、ガラス繊維、アラミド繊維等の織物やマット等を使用する。
また、心材としては、ポリウレタンの他に、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、シリコン、ポリ塩化ビニル、木材(バルサ材等)等を使用する。
また、注入樹脂は、成形物のマトリックス樹脂となるものであり、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂を使用する。
埋め込み体は、鋼板2cの他にアルミニウム板等の金属板としてもよく、接合する金属構造物と同種の金属とすれば溶接等が容易となる。また、木材板としてボルト止めで結合してもよい。
なお、表皮部1a、2aとしては、繊維強化材2dを使用して一体成形する他に、別工程であらかじめ繊維強化材2dに樹脂含浸し成形したFRP成形体を使用してもよい。
【0023】
埋め込み部2bは、図2、図3においては、繊維強化材2dを開孔2eの一方側から他方側へ開孔2eを貫通させているが、図4に示すように、所定の間隔で設けた2個の開孔2eを使用し、1個目の開孔2eを一方側から他方側へ貫通し、更に続けて2個目の開孔2eを他方側から一方側へ貫通させるようにしてもよい。また、図5に示すように図4の隣接する1個目の開孔2eの開孔を拡大して2個の開孔2eを拡大した1個の開孔2eとし、2個目の開孔2eも同様に拡大した1個の開孔2eとし、幅広のシート状の炭素繊維を開孔2eの一方側から他方側更に一方側へと貫通させるようにしてもよい。要するに鋼板2cを表皮部2aに結合させるのに、炭素繊維等の繊維強化材2dを貫通孔2eを貫通させ、繊維強化材2dを貫通孔2eに充填した含浸樹脂で鋼板2cに結合させ、この繊維強化材2dの鋼板2c表面上の部分を含浸樹脂により表皮部2aに結合させることにより、鋼板2cと表皮部2aとの結合を補強している。炭素繊維等の繊維強化材2dは、表皮部2aを構成する同じ材料であるため、含浸樹脂により強力な結合となる。
また、開孔2eを貫通させる繊維強化材2dの方向は、図2に示すように接合方向に限らず、荷重の方向を考慮して方向を選定するのが望ましい。
【0024】
実施の形態2.
図6は、本実施の形態の接合端部2を有するFRP成形物を示す図であり、図6(a)は、その概略の断面図であり、図6(b)、(c)は、それぞれ異なる埋め込み部を形成する鋼板を示す斜視図である。
本実施の形態のFRP成形物の埋め込み部2bの鋼板2cは、開孔2eを設けずに、鋼板2bの表面及び/又は裏面を網目状加工を施した網目状鋼板2fまたは波型の加工を施した波型鋼板2gとしたものである。実施の形態1のFRP成形物のように開孔2eを貫通させた繊維強化材2dで鋼板2cの接合を補強する代わりに、網目状鋼板2fまたは波型鋼板2gとすることにより表皮部2aとの接合面積を増加して接合強度を増加している。その他の構造等は、実施の形態1の接合端部2を有するFRP成形物と同様である。なお、鋼板2cの表面及び/又は裏面に網目状加工または波型の加工をするのに限らず、凹凸を設けることにより同様の効果を得ることができる。
【0025】
本接合端部2を有するFRP成形物は、網目状鋼板2f、波型鋼板2g等の凹凸を設け、更に開孔2eも設け、実施の形態1の埋め込み部2bと同様に繊維強化材2dで接合補強すれば一層強度の大きな接合が得られる。
【0026】
実施の形態3.
図7は、実施の形態3の接合端部を有するFRP成形物を示す断面図である。本FRP成形物は、実施の形態1の埋め込み部2bの鋼板2cと同様に開孔2eを設けるが、図7に示すように開孔2eの貫通方向の中心部の孔の大きさを小さくし、表面及び裏面側を大きくするように、開孔2eに貫通方向にテーパを付けて加工する。このようにすれば、開孔2eを貫通する繊維強化材2dへの応力のかかり具合をスムーズにでき繊維強化材2dの耐久性が向上し、接合強度の劣化を防止できる。その他の構造は、実施の形態1の場合と同様である。また、実施の形態2のFRP成形物の鋼板2f、2g等に開孔2eを設置する場合も同様である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明のFRP成形物は、接合端部2を介して金属構造物に接合可能となる。
また、本発明のFRP成形物は、一端側に金属構造物を設けた埋め込み体を使用することにより、FRP成形と同時に接合端部に金属構造物を結合したFRP成形物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態1のFRP成形物の概略を示す断面図である。
【図2】図1のFRP成形物の構成を示す断面図である。
【図3】図2のFRP成形物の接合端部の埋め込み部の構成を示す斜視図である。
【図4】図2のFRP成形物の接合端部の埋め込み部の変形例を示す斜視図である。
【図5】図2のFRP成形物の接合端部の埋め込み部の別の変形例を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態2のFRP成形物を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態3のFRP成形物を示す断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 FRP成形部、1a 表皮部(FRP成形部の表皮部)、1b 心材部、2 接合端部、2a 表皮部(接合端部の表皮部)、2b 埋め込み部、2c 埋め込み体、2d 繊維強化材、2e 開孔、2h テーパ状孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心材を樹脂含浸して形成した心材部を内部にし、該心材部の両外側を繊維強化材を樹脂含浸して形成した表皮部でサンドイッチ状に覆ったFRP成形部と、前記FRP成形部の端部に連続して設けられ、鋼板等の埋め込み体を有する埋め込み部の前記FRP成形部側の両外側を同じく前記表皮部でサンドイッチ状に覆い、前記埋め込み部の前記FRP成形部側と反対側の前記埋め込み体を前記表皮部外に出し形成した接合端部とを備えたFRP成形物において、
前記表皮部でサンドイッチ状に覆われた前記埋め込み部は、前記埋め込み体及び該埋め込み体の開孔を一方側から他方側に貫通して設置した繊維強化材を樹脂含浸により一体形成したものであることを特徴とするFRP成形物。
【請求項2】
前記接合端部の前記表皮部外に出した前記埋め込み体に金属構造物を接合したことを特徴とする請求項1に記載のFRP成形物。
【請求項3】
一端側に金属構造物が設けられた前記埋め込み体の他端側が、前記接合端部の前記表皮部でサンドイッチ状に覆われ、前記金属構造物が前記接合端部により前記FRP成形部に接合されたことを特徴とする請求項1に記載のFRP成形物。
【請求項4】
前記表皮部で覆われた前記埋め込み体の前記表皮部側の面に凹凸を設けたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかの請求項に記載のFRP成形物。
【請求項5】
前記埋め込み体の開孔は、前記開孔の貫通方向の中央部で孔の大きさが小さく、両外側で孔の大きさが大きいテーパ状の孔であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかの請求項に記載のFRP成形物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−15187(P2007−15187A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−197907(P2005−197907)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【出願人】(502116922)ユニバーサル造船株式会社 (172)
【Fターム(参考)】