説明

ICチップ供給装置、ICチップ実装体の製造装置

【課題】ICチップ保持体から個々のICチップを離脱させてからICチップ搭載機構に供給するまでの処理時間の短縮化及び低コスト化を図ることが可能なICチップ供給装置を提供する。
【解決手段】切り分けられた状態でICチップ保持体DT上に保持されているICチップCを順番に押し出してICチップ保持体DTから離脱させるICチップ離脱機構31と、ICチップ離脱機構31によりICチップ保持体DTから離脱させたICチップCを受け取って搬送し、ICチップ搭載機構に受け渡すICチップ搬送機構32とを備え、ICチップ搬送機構32に、ICチップ離脱機構31から受け取ったICチップCを裏返して反転させた姿勢でICチップ搭載機構に受け渡すICチップ反転部34を設けたICチップ供給装置3とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、向きを揃えたICチップを次工程に供給可能なICチップ供給装置、およびICチップ供給装置を備えたICチップ実装体の製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えばICチップをアンテナシート(「フィルム基板」とも称される)に実装したICチップ実装体を製造する装置に適用されるICチップ供給装置として、所定の回収部に回収されて向きが不揃いとなった多数のICチップを螺旋状や直線状の搬送路(「トラフ」とも称される)における走行面に沿って搬送しながら向きを揃えて次工程へ搬送する装置(パーツフィーダ)が知られている。
【0003】
本出願人は、ICチップ実装体を高速で製造することを目的として、上述したようなパーツフィーダを備えたICチップ実装体の製造装置を開発してきている(特許文献1参照)。この製造装置は、パーツフィーダにより向きを揃えたICチップをICチップ搭載機構(同文献では「同期ローラ」なる機構部品)に供給し、ICチップ搭載機構によりアンテナシートの所定位置、具体的にはアンテナシート上においてアンテナ回路を形成した接着剤塗布箇所に搭載し、接着剤を熱硬化させて製造されるICチップ実装体をロール状に巻き取る処理を行うものである。
【0004】
ところで、上述したパーツフィーダに多数のICチップが投入される前工程では以下のような処理がなされている。通常、粘着性のダイシングテープ等のICチップ保持体上に貼り付けたウエハを例えば高速回転する円形のダイヤモンドブレードにより賽の目(ダイス)状に切断することにより、一つ一つのICチップが切り分けられた状態でダイシングテープ上に保持されている(この状態のウエハを「ダイシング済ウエハ」と称す)。そして、ダイシング済ウエハから離脱させたICチップをパーツフィーダの収容部、例えばボウルフィーダ部に投入していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−309541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、パーツフィーダ内に多数のICチップが投入された時点ではそれぞれのICチップの向きは不揃いであり、このようなICチップをパーツフィーダの搬送路に沿って振動させながら搬送させて向きを揃える必要があった。また、各ICチップには何れか一方の面に、例えば銅や金等の金属で形成されたバンプが設けられており、このバンプをアンテナシート上のアンテナ回路に電気的に接続するようにICチップの天地(表裏)の向きも揃える必要がある。
【0007】
バンプとアンテナ回路とが電気的に接続し得ない姿勢のICチップをICチップ搭載機構によりアンテナシート上に搭載した場合には不良品となり、歩留まりが低下するという不具合が生じ得る。
【0008】
また、ダイシング済ウェハからICチップを離脱させてからこれら多数のICチップを向きを揃えた状態で次工程であるICチップ搭載機構に供給するまでの処理時間、ひいてはアンテナシート上の所定箇所(アンテナ回路形成箇所)に搭載するまでの処理時間が掛かるのみならず、各ICチップの向きを揃えるために搬送路上に種々の選別手段(例えばカメラや画像解析ソフトウェア、エアー吹き付け機構等)を設けた専用且つ高コストのパーツフィーダを適用しなければならなかった。
【0009】
本発明は、このような問題に着目してなされたものであって、主たる目的は、ダイシングテープ等のICチップ保持体から個々のICチップを離脱させてからICチップ搭載機構に供給するまでの処理時間、ひいてはダイシングテープ等のICチップ保持体から離脱させた個々のICチップをアンテナシート上に搭載するまでの処理時間の短縮化及び低コスト化を図ることが可能なICチップ供給装置を提供し、さらには、このようなICチップ供給装置を備えてICチップとアンテナ回路とを適切に接続したICチップ実装体を製造することができ、歩留まりの向上を図ることが可能なICチップ実装体の製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち本発明は、ICチップをアンテナシート(フィルム基板とも称される)に搭載するICチップ搭載機構にICチップを供給するICチップ供給装置に関するものであって、切り分けられた状態でICチップ保持体に保持されている複数のICチップをICチップ保持体から離脱させるICチップ離脱機構と、ICチップ離脱機構によりICチップ保持体から離脱させたICチップを直接受け取って搬送し、ICチップ搭載機構に受け渡すICチップ搬送機構とを備えたものである。
【0011】
このようなICチップ供給装置であれば、ダイシングテープ等のICチップ保持体から離脱させたICチップをパーツフィーダの収容部(ボウルフィーダ等)へ投入する必要も、そのようなパーツフィーダを使用する必要もなく、ICチップ保持体上での姿勢(向き)を維持したままICチップ保持体上から離脱させたICチップをICチップ搭載機構に受け渡すまでの処理時間を従来よりも大幅に短縮することができる。ここで、ICチップ離脱機構は、複数のICチップを1つずつ順番にICチップ保持体から離脱させるもの、または複数のICチップを複数個ずつICチップ保持体から離脱させるもの、或いは複数のICチップを一気にICチップ保持体から離脱させるもの、これら何れであっても構わない。また、ICチップ離脱機構としては、ICチップ保持体に保持されているICチップを押し出してICチップ保持体から離脱させたり、ICチップ保持体に保持されているICチップを吸引してICチップ保持体から離脱させるものが挙げられる。
【0012】
そして、本発明のICチップ供給装置は、ICチップ搬送機構として、ICチップ離脱機構から受け取ったICチップを裏返して反転させた姿勢でICチップ搭載機構に受け渡すICチップ反転部を有するものを適用していることを特徴としている。
【0013】
本発明者らは、本発明を案出する過程で以下の2点に着目した。1点目は、切り分けられた状態でダイシングテープ等のICチップ保持体上に保持されている各ICチップの平面視における姿勢(向き)は揃っており、このようなICチップを平面視の向きを変更することなくそのままの向きでICチップ離脱機構によりICチップ保持体から順次離脱させれば、あとはICチップの表裏姿勢のみを揃えれば、ICチップ搭載機構にICチップを適切な姿勢で供給することができる点である。そして2点目は、ICチップ保持体上に保持されている各ICチップはICチップ保持体から離脱する方向の面(具体的にはICチップのうちICチップ保持体の粘着面に接触しない面であり、例えば粘着面を上向きにしたICチップ保持体に保持されているICチップであれば上向き面)にアンテナシート上のアンテナ回路に接続するための例えば銅や金等の金属からなるバンプが形成され、バンプが形成されている面(以下「バンプ形成面」と称す)を上向きにした姿勢のICチップをICチップ搭載機構に受け渡した場合、ICチップ搭載機構によってICチップをその姿勢のままアンテナシート上に搭載すれば、バンプを形成していない面がアンテナ回路に接触し、電気的に不良なICチップ実装体を製造してしまうことになる点である。
【0014】
このような点に着目し、本発明者らは、ICチップ搬送機構として、ICチップ離脱機構から受け取ったICチップを裏返して反転させた姿勢でICチップ搭載機構に受け渡すICチップ反転部を備えたICチップ供給装置を着想するに至った。
【0015】
このようなICチップ供給装置であれば、ICチップの平面視の向きを揃えるために搬送路上に種々の選別手段(例えば幅を狭くした部分やエアー吹き付け機構、カメラ等のハードウェアや、画像解析ソフトウェア等)を有する専用のパーツフィーダを適用する必要がなく、低コスト化を図ることができるとともに、ICチップ反転部によってICチップ離脱機構から受け取った時点の姿勢とは表裏を逆転させた姿勢のICチップをICチップ搭載機構に受け渡すことができ、このICチップ搭載機構によってICチップをアンテナシート上の所定箇所に搭載した場合に、ICチップのバンプをアンテナ回路に接続することが可能になる。
【0016】
また、本発明に係るICチップ実装体の製造装置は、ICチップをアンテナシート上のアンテナ回路に接続してなるICチップ実装体を製造するものであり、上述したICチップ供給装置を備えていることを特徴としている。このようなものであれば、ICチップ供給装置によって得られる上述した種々の作用効果を発揮し、ICチップをICチップ保持体から離脱させてからアンテナシート上に搭載するまでの処理時間の短縮化、及び低コスト化を図ることができるとともに、ICチップとアンテナ回路とを電気的に適切に接続したICチップ実装体を製造することができ、歩留まりの向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ICチップ保持体から離脱させたICチップを搬送しながらICチップの平面視の姿勢(向き)を揃えるための選別手段(カメラ等のハードウェアや画像解析ソフトウェア等)を有するパーツフィーダが不要となり、コストを削減することができるとともに、ICチップ保持体から離脱させたICチップをICチップ搭載機構に受け渡すまでの処理時間の短縮化をも有効に図ることができる。さらに、ICチップ離脱機構から受け取ったICチップの姿勢をICチップ反転部で裏返して反転させた状態のICチップをICチップ搭載機構に受け渡すようにしているため、ICチップ搭載機構によるICチップのアンテナシート上への搭載処理を適切且つ効率良く行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係るICチップ供給装置で供給するICチップを備えたICタグの平面模式図。
【図2】図1のa−a線断面模式図。
【図3】同実施形態で用いるアンテナシートの平面模式図。
【図4】同実施形態に係るICチップ実装体製造装置で製造したICチップ実装体の平面模式図。
【図5】同実施形態に係るICチップ供給装置を備えたICチップ実装体製造装置の全体構成模式図。
【図6】同実施形態に係るICチップ実装体製造装置の要部平面模式図。
【図7】図6のa−a線断面模式図。
【図8】図6のb−b線断面模式図。
【図9】同実施形態で用いるICチップ反転機構の要部分解図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係るICチップ供給装置3は、図1〜図5に示すように、ICチップCをアンテナシートS上に形成されたアンテナ回路Aに接続してなるICチップ実装体Jを製造するICチップ実装体の製造装置Xに適用されるものである。
【0020】
ICチップ実装体製造装置Xにより製造されるICチップ実装体Jは、図1〜図4に示すように、長手方向に間隔をあけて(例えば等間隔とすることができる)アンテナ回路Aが予め印刷やエッチング等によって連続的に複数形成されているアンテナシートS(フィルム基板とも称される)と、アンテナシートS上においてアンテナ回路Aに接続される位置に搭載したICチップCとを備えたものである。また、ICチップCは、図2に示すように、アンテナ回路Aに対向する面に、アンテナ回路Aに接続するための例えば銅や金等の金属で形成されたバンプC1が設けられており、例えば絶縁ペーストや異方導電性ペースト等からなる接着剤Zを介してアンテナ回路Aに接続される。本実施形態における「ICチップ実装体J」は、個々のICタグTに切り出される前の長尺なシート状のものを指している。なお、図1は長尺のICチップ実装体Jから切断された1つのICタグTの平面模式図であり、図2は図1のa−a線断面模式図である。また、図4はICタグTとして切り出される前の長尺シート状のICチップ実装体Jを一部破断して模式的に示す平面図である。これら図1等では各部の厚みを誇張して示しているが、実際のICチップ実装体Jは全体として極めて薄いものである。また、長尺のアンテナシートS上に形成されたアンテナ回路AにICチップCが搭載されただけで未だ製品として扱うことができない(利用できない)状態のものはインレット或いはインレイと呼ばれ、このようなインレットを長手方向に複数有する長尺のシートはロールインレットとも称され、このロールインレットを所定サイズに切断することにより多数のICタグTを得ることができる。
【0021】
本実施形態のICチップ実装体製造装置Xは、アンテナシートSの所定箇所、具体的にはアンテナ回路Aを形成した箇所に接着剤Zを塗布し、その塗布部分にICチップCを搭載して、接着剤Zを熱硬化させ、さらに、剥離フィルム6FによりICチップCをアンテナシートSに向かって押さえ付けて、ICチップCをアンテナシートSに密着させたICチップ実装体Jをロール状に巻き取る処理を行うものである。
【0022】
そして、このICチップ実装体製造装置Xは、図5にその全体構成を模式的に示すように、アンテナシートSの搬送経路の始点となりアンテナシートSをロール状に巻回して収容し順次送り出すアンテナシート供給部1と、アンテナシートSにICチップCを搭載する位置に接着剤Zを塗布する接着剤塗布部2と、ICチップCをバンプC1がアンテナ回路Aに接続可能な姿勢にその向きを揃えながら次工程に移送するICチップ供給装置3と、ICチップ供給装置3から供給されたICチップCを吸着して保持しながら回転することによりそのICチップCをアンテナシートS上に搭載可能な同期ローラ部4(本発明の「ICチップ搭載機構」に相当)と、接着剤Zを熱硬化させるヒータ5と、ICチップCをアンテナシートSに密着させるために剥離フィルム6FでICチップCを上方から押圧するICチップ加圧部6と、ICチップ実装体Jを検査し順次巻き取る製品検査・巻取部7と、これら各部を制御する制御部8とを主たる構成機構として備えている。
【0023】
アンテナシート供給部1は、ロール状に巻回したアンテナシートSを収容するとともに、制御部8により制御されて一定速度且つ一定張力でアンテナシートSを連続的に繰り出して供給するものである。具体的に、このアンテナシート供給部1は、制御部8により回転速度を制御されて図示しないモータにより回転するクロックローラ11(主ローラ)と、このクロックローラ11を挟む位置に設けた上流側補助ローラ12および下流側補助ローラ13とを備え、上流側補助ローラ12、クロックローラ11、下流側補助ローラ13の各周面に沿わせながらアンテナシートSを所定方向に供給する。
【0024】
接着剤塗布部2は、クロックローラ11に沿って搬送されるアンテナシートSに対して接着剤Zを塗布する塗布部本体21とを備えたものである。アンテナシートSへの接着剤Zの塗布処理は、アンテナシートSの搬送を停止することなく連続的に行われる。なお、適宜箇所にクロックローラ11上におけるアンテナシートSのうち接着剤塗布位置を撮像するカメラを配置することもできる。
【0025】
ICチップ供給装置3は、図6〜図9(図6はICチップ実装体製造装置Xの要部平面模式図であり、図7は図6のa−a線断面模式図であり、図8は図6のb−b線模式断面図であり、図9は後述するICチップ反転部34の要部分解図である)に示すように、切り分けられた状態でダイシングテープDT(本発明の「ICチップ保持体」に相当)上に保持されているICチップCを順番に押し出してダイシングテープDTから離脱させるICチップ離脱機構31と、ICチップ離脱機構31によりダイシングテープDTから離脱させたICチップCを受け取って搬送し、同期ローラ部4に受け渡すICチップ搬送機構32とを備えている。
【0026】
ICチップ離脱機構31は、複数のICチップCをダイシングテープDT上に配置してなるダイシング済ウエハDからICチップCを1つずつ分離させるものである。ここで、ダイシング済ウエハDは、図6に示すように、粘着性のダイシングテープDTにウエハWを貼り付けた状態で、例えば高速回転する円形のダイヤモンドブレードにより賽の目(ダイス)状に切断し、一つ一つのICチップCが切り分けられた状態で保持されたものである。ダイシング済ウエハDは、ダイシングテープDTの外縁部近傍領域にウエハWを貼り付けておらず、この外縁部近傍領域を円環状のリング部DRによって支持している。そして、ICチップ離脱機構31は、賽の目(ダイス)状に切り分けた状態でダイシングテープDT上に保持されているICチップCをダイシングテープDTの下方から1つずつ突き上げることが可能な突き上げ部311と、この突き上げ部311を突没させたり、前後左右へ移動させるためのアクチュエータ312とを備えている。本実施形態では1本の突き上げピンで突き上げ部311を構成しているが、構造上の支障がなければ複数のICチップを同時ないし略同時に突き上げる構成を採用してもよい。また、このICチップ離脱機構31には、ダイシング済ウエハDのうちリング部DRを高さ方向に挟んで支持するリング支持部313と、ダイシングテープDTのうちウエハWの外縁部近傍に相当する領域を支持するダイシングテープ支持部314を設けている(図7参照)。なお、図6及び図7ではICチップCを誇張して簡略化して示しており、その数は実際のICチップCの数よりも遥かに少ないことは言及するまでもない。
【0027】
ICチップ搬送機構32は、ICチップ離脱機構31によってダイシングテープDTから浮き上がる方向に突き上げられたICチップCを拾い上げるピックアップローラ部33と、ピックアップローラ部33からリリースされたICチップCの姿勢をICチップ搭載機構に受け渡すまでの間に裏返して反転させるICチップ反転部34とを備えている。
【0028】
ピックアップローラ部33は、図6及び図7に示すように、ピックアップローラ部本体331を主体としてなり、ピックアップローラ部本体331の外周面に設けた吸引部332(図6では省略)によって、ICチップ離脱機構31で上方へ押し出したICチップCを1つずつ吸引して保持し、ICチップ反転部34に移送するものである。本実施形態では、ピックアップローラ部本体331に、周方向に等間隔で複数の吸引部332を設けている。図7では、ピックアップローラ部本体331の外周面よりも突出するノズル状の吸引部332をピックアップローラ部本体331の外周面に一体に設けた態様を例示しているが、吸引部として、ピックアップローラ部本体331内に収容される胴部と、胴部をピックアップローラ部本体331内に収容した状態でピックアップローラ部本体331の外周面よりも突出する吸引部本体とを一体又は一体的に有するものを適用したり、ピックアップローラ部本体331の外周面にICチップCを収容可能な大きさで形成した吸引孔を適用してもよい。そして、本実施形態のピックアップローラ部33は、吸引部332の内部に先端からピックアップローラ部本体331内まで貫通する吸引貫通孔333を形成し、図示しない電磁弁等の空圧制御機器により吸引貫通孔333からの負圧を大気圧に切替可能に構成している。このような構成により、ピックアップローラ部33は、ICチップ離脱機構31により突き上げられたICチップCを吸引貫通孔333からの負圧によって吸引部332の先端で吸着して保持するとともに、保持したICチップCが次に説明するICチップ反転部34の第1リニア搬送路341に当接ないし近接した時点で吸引貫通孔333からの負圧を大気圧に切り替えて吸引力を弱めることによってICチップCをリリースしてICチップ反転部34の第1リニア搬送路341上に移送する機能を発揮する。
【0029】
なお、ICチップ離脱機構31は、上述した突き上げ部311、アクチュエータ312、リング支持部313、及びダイシングテープ支持部314を、共通のXYステージ315上に設け、突き上げ部311により上方へ突き上げたICチップCが常にピックアップローラ部33の吸引部332によって吸引可能な位置になるように設定している。
【0030】
ICチップ反転部34は、相対的にICチップ離脱機構31側に配置した第1リニア搬送路341と、相対的にICチップ搭載機構(同期ローラ部4)側に配置した第2リニア搬送路343と、第1リニア搬送路341と第2リニア搬送路343との接続部分に配置し、ICチップCの表裏を反転させる反転搬送路342とを一体または一体的に有するものである。本実施形態では、図示しない振動付与部から各搬送路を通じて与えられる一定の振動によってICチップCを振動させながら第1リニア搬送路341、反転搬送路342、第2リニア搬送路343の順に搬送するように構成している。
【0031】
第1リニア搬送路341は、図6及び図7に示すように、断面視ほぼV字状をなすように下端同士をほぼ直角に交差させた第1走行面341a及び第2走行面341bを形成したものである。ICチップCは、第1リニア搬送路341のうち第1走行面341aに対して横臥した姿勢をとる(図7参照)。
【0032】
反転搬送路342は、第1リニア搬送路341の下流端(終端)に接続可能な始端から第2リニア搬送路343の上流端(始端)に接続可能な終端に向かって漸次ツイストした(捩れた)形状の反転走行面342aを有するものである。本実施形態では、ICチップCの搬送方向に延びる半円柱状ないし略半円柱状の突条部342bのうち外周面にICチップCの厚みに相当する深さの反転走行面342aを形成している。この反転走行面342aは、突条部342bを有する反転搬送路本体342cと、突条部342bに嵌合し得る凹溝342dを有するカバー体342eとを相互に組み付けた状態で、突条部342bと凹溝342dとの間に形成されるツイスト状のものである。具体的には、反転走行面342aの始端342f側を終端342g側よりも相対的に高い位置に設定している。これにより、反転走行面342aに沿って始端342f側から終端342g側に向かって搬送するICチップCを途中でICチップC自体の重みによって裏返すことができる。なお、カバー体342eは、反転走行面342aへの塵埃、水滴等の付着を防止する機能、および反転搬送路342を通過するICチップCが途中で反転走行面342aから落下することを防止する機能を発揮する。本実施形態では、反転搬送路本体342cの一部にねじ孔342hを形成し、反転搬送路本体342cの突条部342bにカバー体342eの凹溝342dを嵌め合わせるようにして反転搬送路本体342cにカバー体342eを装着した状態で、カバー体342eに設けたねじ挿通孔342iを通じて外部に開放されたねじ孔342hにねじ342jを締め付けることによって、反転搬送路本体342cとカバー体342eとを一体的に組み付けている。
【0033】
第2リニア搬送路343は、図6及び図8に示すように、断面視ほぼV字状をなすように下端同士をほぼ直角に交差させた第1走行面343a及び第2走行面343bを形成したものである。ICチップCは、第2リニア搬送路343のうち、第1走行面343aに対して横臥した姿勢をとる。ここで、図6及び図8に示すように、第1リニア搬送路341における第1走行面341a及び第2走行面341bと、第2リニア搬送路343における第1走行面343a及び第2走行面343bとの相対位置関係は、反転搬送路342を挟んで左右逆転している。これにより、本実施形態のICチップ反転部34は、反転搬送路342で反転させたICチップCを第2リニア搬送路343の第1走行面343aに横臥した姿勢で支持することができる。
【0034】
同期ローラ部4は、制御部8の制御によりアンテナシートSの搬送速度に同期して(本実施形態ではクロックローラ11の回転速度に同期して)回転する同期ローラ部本体41を主体としてなり、同期ローラ部本体41の外周面よりも突出するように設けた吸引部42(図6では省略)によって、ICチップ供給装置3から供給されたICチップCを1つずつ吸引して保持し、クロックローラ11上のアンテナシートSのうち接着剤Zが塗布された位置に搭載するものである。本実施形態では、同期ローラ部本体41に、周方向に等間隔で複数の吸引部42を設けている。図8では、同期ローラ部本体41の外周面よりも突出するノズル状の吸引部42を同期ローラ部本体41の外周面に一体に設けた態様を例示しているが、吸引部として、同期ローラ部本体41内に収容される胴部と、胴部を同期ローラ部本体41内に収容した状態で同期ローラ部本体41の外周面よりも突出する吸引部本体とを一体又は一体的に有するものを適用したり、同期ローラ部本体41の外周面にICチップCを収容可能な大きさで形成した吸引孔を適用してもよい。そして、本実施形態の同期ローラ部4は、吸引部42の内部に先端から同期ローラ部本体41内まで貫通する吸引貫通孔43を形成し、外部の電磁弁等の空圧制御機器により吸引貫通孔43からの負圧を大気圧に切替可能に構成している。このような構成により、同期ローラ部4は、ICチップ反転部34の供給端(第2リニア搬送路343の下流端ないし下流端近傍)に到達しているICチップCを吸引貫通孔43からの負圧によって吸引部42の先端で吸着して保持するとともに、保持したICチップCがアンテナシートS上に当接ないし近接した時点で吸引貫通孔43からの負圧を大気圧に切り替えて吸引力を弱めることによってICチップCをリリースしてアンテナシートS上の所定位置(接着剤Zを塗布した位置)に搭載する機能を発揮する。
【0035】
また、同期ローラ部本体41は、図示しない駆動モータによって所定角度(例えば吸引部42を5つ設けた態様では72°)ずつインデックス動作を行うように構成されるとともに、図示しないXYステージによって、吸引部42の回転軌跡がICチップ反転部34の下流端(第2リニア搬送路343の下流端(終端))上となる位置と、吸引部42の回転軌跡がクロックローラ11に沿って搬送されるアンテナシートS上となる位置との間で移動可能に構成されている。なお、ICチップCを載せる位置を撮像可能なカメラ(図示省略)を適宜箇所に配置し、撮像した画像に基づいて所定の位置から誤差などがあれば随時制御部8と通信して補正できるようにしてもよい。また、アンテナシートSへICチップCを搭載する処理は、アンテナシートSの搬送を停止することなく連続的に行われる。
【0036】
ヒータ5は、ICチップCを搭載したアンテナシートSを直接または間接的に加熱してアンテナシートS上に塗布されている接着剤Zを熱硬化させるものである。本実施形態では、図5に示すように、次に説明する剥離フィルム加圧部6のキュア部61をヒータ5で加熱することによってこのキュア部61に接触しながら搬送されるアンテナシートSを加熱できるように構成している。
【0037】
剥離フィルム加圧部6は、図5に示すように、ICチップCが搭載されたアンテナシートSを上方から加圧し得るキュア部61と、ローラ状に巻回した剥離フィルム6Fを順次繰り出す剥離フィルム繰り出し部62と、キュア部61を通過した剥離フィルム6Fを順次巻き取る剥離フィルム巻取り部63とを備えている。なお、剥離フィルム6Fは、ICチップCが搭載されたアンテナシートSに接触する面が少なくとも剥離性を有するものであればよい。
【0038】
製品検査・巻取部7は、製造されたICチップ実装体Jの検査を行い、ロール状に巻き取って収容するものである。
【0039】
次に、このようなICチップ実装体製造装置XによってICチップ実装体J(ICタグTを帯状に連続して形成したもの)を製造する工程及び作用を説明する。
【0040】
先ず、本実施形態に係るICチップ実装体製造装置Xは、アンテナシート供給部1からアンテナシートSを制御部8により一定の速度で制御しながら接着剤塗布部2に搬送し、接着剤塗布部2では、回転するクロックローラ11に沿って搬送するアンテナシートSのうちICチップCが搭載される位置に塗布部本体21により接着剤Zを塗布する。なお、アンテナシートS上に接着剤Zを塗布する際、アンテナシートSは停止することなく一定速度で搬送される。また、本実施形態では、アンテナシート供給部1の上流側補助ローラ12を通過したアンテナシートSに対して接着剤塗布部2により接着剤Zを塗布するように設定しており(図8参照)、下流側補助ローラ13の幅方向中央部分には接着剤ZやICチップCとの干渉を回避する凹部13aを形成している(図6参照)。
【0041】
次いで、本実施形態のICチップ実装体製造装置Xは、ICチップ供給装置3から平面視の向きが揃った状態で供給されるICチップCを同期ローラ部4によってアンテナシートS上の所定位置、つまり接着剤Zを塗布した箇所にICチップCを順次搭載する。
【0042】
具体的には、ICチップ供給装置3は、ダイシング済ウエハDのリング部DRをICチップ離脱機構31のリング支持部313によって支持するとともに、ダイシングテープDTのうちウエハWの外縁部近傍に相当する領域をダイシングテープ支持部314によって支持する。これによりダイシング済ウエハD全体を平面状に保持した状態で、本実施形態のICチップ供給装置3は、アクチュエータ312を駆動させて、ダイス状に切り分けた状態でダイシングテープDT上に保持されているICチップCをダイシングテープDTの下方から突き上げ部311で1つずつ突き上げる(図7参照)。突き上げ部311でダイシングテープDTの下方から1つのICチップCを突き上げた際、この突き上げられたICチップC(突き上げ対象ICチップC)はダイシング処理時に形成されたカット部分を境に周囲のICチップCよりも上方へ浮き上がり、ダイシングテープDTからも離脱可能な状態になる。なお、突き上げ処理時にダイシングテープDTは適宜可撓変形することにより、破れたり裂けたりすることはない。また、このダイシング済ウエハDには、外観不良や電気的に不良なICチップC(不良品ICチップ)が含まれていることがあるが、ダイシング済ウエハDにおける不良品ICチップのビットパターン(座標)は、ダイシング加工を施す時点(ダイシング加工中)又はダイシング加工を施した時点(ダイシング加工後)で所定の試験を行うことによって特定されている。そこで、本実施形態に係るICチップ供給装置3のICチップ離脱機構31は、このダイシング済ウエハDにおける不良品ICチップのビットパターンを利用して、良品ICチップのみを突き上げ対象ICチップCとして1つずつ突き上げるように設定している。また、ダイシング済ウエハDにおいては、各ICチップCのうち突き上げ部311によって突き上げられる方向の面(ICチップ離脱機構31によって離脱される方向の面であり、ダイシングテープの粘着面には接触しない面)、すなわち上向き面にバンプC1が形成されている。図6では各ICチップCにおけるバンプC1の形成箇所を黒丸で模式的に示している。以下の説明では、ICチップCのうちバンプC1が形成されている面を「バンプ形成面Ca」と称する。また、ダイシングテープDT上に切り分けられた状態で保持されている複数のICチップCのうち、ウエハWの外縁部近傍を形成し得るICチップCを除く全てのICチップCは平面視において全て同じ向きを向いた矩形状ないし略矩形状をなす(図6参照)。
【0043】
次いで、本実施形態のICチップ供給装置3は、例えば駆動モータによって所定角度ずつ回転するインデックス動作によりピックアップローラ部本体331の回転駆動を一時的に停止させた間に、ICチップ離脱機構31によってダイシングテープDTから離脱可能な状態にしたICチップCをピックアップローラ部33の吸引部332で吸着して保持する。この際、図7に示すように、ICチップCはバンプ形成面Caをピックアップローラ部本体331に向き合わせた姿勢(バンプ形成面Caを内側(ピックアップローラ部本体331の中心側)に向けた姿勢)で吸引部332により吸引保持されている。また、ダイシングテープDTから離脱可能な状態にあるICチップCの平面視における向きは全て同じであり、そのままの姿勢でピックアップローラ部33の吸引部332により吸着保持する。
【0044】
引き続いて、本実施形態のICチップ供給装置3は、吸引部332でICチップCを吸着保持した状態でピックアップローラ部本体331を所定方向(図7における矢印y方向)に回転させ、ICチップ反転部34を構成する第1リニア搬送路341の上流端(始端)に到達した時点で、吸引貫通孔333からの負圧を大気圧に切り替えてICチップCを吸引部332からリリースする。
【0045】
本実施形態のICチップ供給装置3は、ピックアップローラ部33の吸引部332からリリースしたICチップCを第1リニア搬送路341の第1走行面341aに横臥した姿勢で第1リニア搬送路341に受け取る。この際、図7に示すように、ICチップCはバンプ形成面Caを上方に向け、このバンプ形成面Caが第1リニア搬送路341の第1走行面341aと向き合わない姿勢をとる。
【0046】
本実施形態のICチップ供給装置3は、ピックアップローラ部33から第1リニア搬送路341の上流端(始端)に移送したICチップCをその姿勢(バンプ形成面Caが第1走行面341aと向き合わない姿勢)を保持したまま第1リニア搬送路341の下流端(終端)まで搬送し、引き続いて反転搬送路342のツイスト状をなす反転走行面342aを通過させる。反転搬送路342の反転走行面342aに沿って通過する過程でICチップCは、バンプ形成面Caを上方に向けた姿勢からこのバンプ形成面Caを下方に向く方向へ反転して表裏姿勢が逆転する。その結果、反転搬送路342から第2リニア搬送路343の上流端(始端)に到達したICチップCは、バンプ形成面Caを下方に向け、このバンプ形成面Caが第2リニア搬送路343の第1走行面343aと向き合うように横臥した姿勢で第2リニア搬送路343に受け渡される(図8参照)。本実施形態のICチップ供給装置3は、第1リニア搬送路341、反転搬送路342を通過させて第2リニア搬送路343の上流端(始端)に移送したICチップCをその姿勢(バンプ形成面Caが第1走行面343aと向き合う姿勢)を保持したまま第2リニア搬送路343の下流端(終端)まで搬送する。なお、本実施形態のICチップ供給装置3は、図示しない振動付与部から与えられる振動によってICチップCを振動させながらICチップ反転部34を構成する各搬送路(第1リニア搬送路341、反転搬送路342、第2リニア搬送路343)を搬送するようにしているが、ICチップ反転部34を構成する搬送路全体に所定角度の勾配を設定し、ICチップC自体の自重で搬送するように設定することもできる。
【0047】
このように、本実施形態に係るICチップ供給装置3は、反転搬送路342を通過して第2リニア搬送路343の下流端(先端)である供給端まで搬送したICチップCの姿勢を、図8に示すように、バンプ形成面Caが第2リニア搬送路343の第1走行面343aと向き合う姿勢に矯正することができ、このICチップCに続く後続のICチップCも全て同じ姿勢で向きを揃えた整列状態で同期ローラ部4に供給することができる。
【0048】
そして、本実施形態のICチップ実装体製造装置Xは、以上の工程を経てICチップ反転部34の供給端(第2リニア搬送路343の下流端)に向きを揃えて整列させた状態で供給されるICチップCのうち先頭のICチップCを同期ローラ部4の吸引部42で吸着して、アンテナシートS上に搭載する。
【0049】
同期ローラ部4によりICチップCを吸着してアンテナシートS上にそのICチップCを搭載する動作は以下の通りである。同期ローラ部4は、例えば駆動モータによって所定角度ずつ回転するインデックス動作により同期ローラ部本体41の回転駆動を一時的に停止させた間に、ICチップ供給装置3によりICチップ反転部34の供給端(第1リニア搬送路341の下流端)に移送したICチップCのうち先頭のICチップCを吸引部42で吸着して保持する。この際、図8に示すように、ICチップCはバンプ形成面Caを同期ローラ部本体41に対して背向する姿勢(バンプ形成面Caを外側(同期ローラ部本体41の反中心側)に向けた姿勢)で吸引部42により吸引保持されている。
【0050】
引き続いて、同期ローラ部本体41は、駆動モータによってインデックス動作を行い、同期ローラ部本体41の所定方向(図8における矢印y方向)への回転駆動を行い、吸引部42の先端に吸引保持しているICチップCがアンテナシートSに臨む位置(接触する位置)で、吸引貫通孔43からの負圧を大気圧に切り替えてICチップCをリリースしてアンテナシートS上のうち接着剤Zが塗布されている位置、すなわちアンテナ回路A(図8では省略)を形成している箇所にICチップCを搭載する。そして、バンプ形成面Caを外側に向けた向きで吸引部42に保持しているICチップCをアンテナシートSに臨む位置(接触する位置)で吸引部42からリリースすることにより、ICチップCをバンプ形成面CaがアンテナシートS上のアンテナ回路Aに電気的に接続可能な状態でアンテナシートS上のうち接着剤Zを塗布した所定位置に搭載することができる。
【0051】
なお、ICチップCをアンテナシートSに搭載する際、同期ローラ部本体41のインデックス動作により回転し続けた状態で(一時的に停止することなく)ICチップCはアンテナシートS上に搭載される。また、アンテナシートSは、ICチップCが搭載される時点もクロックローラ11によって所定方向へノンストップで搬送支持されている。
【0052】
このように構成されたICチップ実装体製造装置Xによれば、アンテナシートSを一時的に停止させることなくICチップCを搭載することができ、ICチップ実装体Jの製造効率が向上する。
【0053】
アンテナシートS上にICチップCを搭載した後、本実施形態のICチップ実装体製造装置Xは、ヒータ5によってアンテナシートSを加熱し、接着剤Zを硬化させることでICチップCをアンテナシートSに固定すると同時ないし略同時に、剥離フィルム加圧部6の剥離フィルム6FによりICチップC及びアンテナシートSを加圧する。最後に、製品検査・巻取部7によって、製造されたICチップ実装体Jの検査を行い、ロール状に巻き取って収容する。製品検査・巻取部7で巻き取った長尺のICチップ実装体Jを所定サイズごとに適宜の手段で切断することにより、多数のICタグTを得ることができる。
【0054】
このように本実施形態に係るICチップ供給装置3は、切り分けられた状態でダイシングテープDT上に保持されているICチップCを順番に押し出してダイシングテープDTから離脱させるICチップ離脱機構31と、ICチップ離脱機構31によりダイシングテープDTから離脱させたICチップCを直接受け取って搬送し、そのままICチップ搭載機構である同期ローラ部4に直接受け渡すICチップ搬送機構32とを備えているため、ダイシング済ウエハDから離脱させたICチップCをパーツフィーダの収容部へ投入する処理や作業工程が不要となり、ダイシングテープDT上から離脱させたICチップCを同期ローラ部4に受け渡すまでの時間短縮化を図ることができる。さらに、本実施形態に係るICチップ供給装置3は、ダイシングテープDT上において平面視方向が揃っている個々のICチップCをそのままの向きでICチップ離脱機構31によりダイシングテープDTから離脱させ、そのICチップCの表裏姿勢を、同期ローラ部4に受け渡すまでの間に反転させるICチップ反転部34をICチップ搬送機構32内に設けているため、ICチップCの平面姿勢や表裏姿勢の向きを揃えるために搬送路上に種々の選別手段(例えば幅を狭くした部分やエアー吹き付け機構、カメラ等のハードウェハや、画像解析用等のソフトウェア)を有する専用且つ高コストのパーツフィーダを適用する必要がなく、低コスト化を図ることができるとともに、同期ローラ部4によるICチップCのアンテナシートS上への搭載処理を適切且つ効率良く行うことが可能になる。
【0055】
また、本実施形態に係るICチップ実装体製造装置Xは、このようなICチップ反転部34を有するICチップ搬送機構32と同期ローラ部4とを備えているため、ICチップCとアンテナ回路Aとを適切に接続したICチップ実装体Jを製造することができ、歩留まりの向上を図ることができる。
【0056】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、ICチップ保持体としてダイシングテープ以外のものを適用することができる。そして、ICチップ搬送機構として、ICチップ離脱機構でICチップ保持体から離脱させたICチップを直接ピックアップしてICチップ搭載機構に直接受け渡す反転用ローラ部(上述したピックアップローラ部に準じる構成のローラ部)のみで構成したICチップ反転部を備えたものを採用することができる。この場合、ICチップ離脱機構により突き上げられたICチップを反転用ローラ部の吸引部で吸着して保持し、その保持状態を維持したまま反転用ローラ部本体を当該吸引部がICチップ搭載機構(同期ローラ部)の吸引部と対向する位置まで所定角度(例えば180度)回転させる。そして、ICチップ搭載機構(同期ローラ部)の吸引部による吸引力を反転用ローラ部の吸引部による吸引力よりも強くしたり、反転用ローラ部の吸引部による吸引動作を停止したり、あるいはICチップ搭載機構(同期ローラ部)の吸引部による吸引タイミングと反転用ローラ部の吸引部による吸引タイミングとを一時的にずらすことによってICチップを反転用ローラ部からICチップ搭載機構(同期ローラ部)に受け渡すことができる。なお、切り分けられた状態でICチップ保持体上に保持されている各ICチップは、突き上げ部によって突き上げられる方向の面、すなわち上向き面にバンプが形成されていることから、反転用ローラ部の吸引部で吸着保持した状態では、ICチップはバンプ形成面が反転用ローラ部本体の中心側を向く姿勢となる。そして、反転用ローラ部本体を所定角度回転させてICチップをICチップ搭載機構(同期ローラ部)に受け渡すと、ICチップはバンプ形成面を外側(同期ローラ部本体の反中心側)に向けた姿勢となり、このICチップをアンテナシートに臨む位置(接触する位置)でリリースしてアンテナシート上の所定箇所(接着剤が塗布されている位置)に搭載することができる。すなわち、反転用ローラ部とICチップ搭載機構(同期ローラ部)とによるICチップの受け渡しの際に、ICチップの表裏反転が行われる。なお、反転用ローラ部の吸引部として、反転用ローラ部の外周面に所定ピッチで形成され且つICチップを収容し得る大きさの孔(吸着孔)を採用してもよい。
【0057】
また、上述した実施形態では、ICチップ離脱機構の突き上げ部を、1つのICチップを1本の突き上げピンで構成した態様を例示したが、複数本の突き上げピンによって1つのICチップを突き上げる突き上げ部を構成しても構わない。さらに、突き上げ部として、ICチップ保持体を介してICチップに面接触し得るフラット面を先端に有する部材を適用してもよい。また、ICチップ離脱機構として、複数のICチップを同時ないし略同時にICチップ保持体から離脱させることが可能なものを採用することもできる。
【0058】
また、ICチップ離脱機構が、突き上げ部で突き上げる対象のICチップ(突き上げ対象ICチップ)の周辺部分を下方へ吸い込む吸込部をさらに備えたものであってもよい。このようなICチップ離脱機構であれば、突き上げ対象ICチップの周辺に存在するICチップが突き上げ対象ICチップと一緒にICチップ保持体から離脱することを防止できる。また、ICチップ離脱機構が、突き上げ部を有さず、ICチップ保持体から離脱させる対象のICチップ(離脱対象ICチップ)の周辺部分をICチップ保持体に密着する方向に吸い込む周辺ICチップ吸込部と、離脱対象ICチップをICチップ保持体から離脱させる方向に吸い込む離脱対象ICチップ吸込部とを備えたものであってもよい。
【0059】
また、本発明のICチップ実装体製造装置によって製造するICチップ実装体が、アンテナシート及びICチップの上方からこれらアンテナシート及びICチップを被覆し得るカバーフィルムを備えたものであってもよい。カバーフィルムとしては、アンテナシート及びICチップに対向する面のみに接着性を有し、所定位置にICチップを搭載したアンテナシート上に貼り合わせることが可能なものが挙げられる。
【0060】
また、ICチップ搭載機構として同期ローラ部以外のものを適用することが可能である。
【0061】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0062】
3…ICチップ供給装置
31…ICチップ離脱機構
32…ICチップ搬送機構
34…ICチップ反転部
4…ICチップ搭載機構(同期ローラ部)
C…ICチップ
DT…ICチップ保持体(ダイシングテープ)
S…アンテナシート
X…ICチップ実装体製造装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICチップをアンテナシートに搭載するICチップ搭載機構にICチップを供給するICチップ供給装置であって、
切り分けられた状態でICチップ保持体に保持されている複数のICチップをその姿勢を維持したままICチップ保持体から離脱させるICチップ離脱機構と、
前記ICチップ離脱機構により前記ICチップ保持体から離脱させたICチップを直接受け取って搬送し、前記ICチップ搭載機構に受け渡すICチップ搬送機構とを備え、
前記ICチップ搬送機構が、前記ICチップ離脱機構から受け取ったICチップを裏返して反転させた姿勢で前記ICチップ搭載機構に受け渡すICチップ反転部を有するものであることを特徴とするICチップ供給装置。
【請求項2】
ICチップをアンテナシート上のアンテナ回路に接続してなるICチップ実装体を製造するものであって、請求項1に記載のICチップ供給装置を備えていることを特徴とするICチップ実装体製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−198136(P2011−198136A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65155(P2010−65155)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】