ＩＨ調理器
【課題】調理時の具材の軟化を促進させて、加熱調理時間を短縮させること。
【解決手段】蓋１８に設けられた一対の電極２０、２１を水と具材をいれた湯煎容器１５に挿入する。衝撃波発生制御手段２２によって、高電圧パルス電源１９がＯＮされて一対の電極２０、２１間に立ち上がりの速い例えば１μｓのパルス電圧が印加して衝撃波を発生させる。衝撃波による圧力で瞬間的に具材の細胞が破壊されて軟化されるので、その後の加熱が短くてすみ、大幅に調理時間を短縮することができる。
【解決手段】蓋１８に設けられた一対の電極２０、２１を水と具材をいれた湯煎容器１５に挿入する。衝撃波発生制御手段２２によって、高電圧パルス電源１９がＯＮされて一対の電極２０、２１間に立ち上がりの速い例えば１μｓのパルス電圧が印加して衝撃波を発生させる。衝撃波による圧力で瞬間的に具材の細胞が破壊されて軟化されるので、その後の加熱が短くてすみ、大幅に調理時間を短縮することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は衝撃波を用いたＩＨ調理器に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来、この種のＩＨ調理器は、食品を短時間に軟化するための工夫がなされてきた。具体的には圧力鍋調理や凍結融解処理や凍結減圧含浸法などがある。
【０００３】
圧力鍋では加熱中の食品や水から発生した蒸気を鍋から逃がさない構造とすることで鍋内を加圧状態にして食品自体を１００℃以上にして加熱する方法である。１００℃以上で加熱すると、２０分ほどの短時間でも長時間煮込んで得られる柔らかさにすることができる。
【０００４】
また、凍結融解処理では調理前の食品を一度凍結することで食品細胞内に氷結晶を生成させて細胞壁を破壊させる。その後、融解すると細胞が破壊されているので軟化した状態となり、加熱時の軟化に要する時間が削減できるというものである。
【０００５】
さらに、凍結減圧酵素含浸法では凍結融解した食品を減圧下におき、ペクチン分解酵素を含んだ溶液を食品内部まで含浸させて軟化を促進させる（例えば、特許文献１参照）。これは、凍結融解によって溶液が浸透しやすい状態にしてペクチン分解酵素を食品内部まで含浸させて酵素作用によって細胞壁の結合を弱めて軟化処理するものである。この方法では食品細胞が単細胞化しているので、咀嚼が容易となり介護食や消化器官術後の病院食に適応できる。
【０００６】
また、工業的には衝撃波の反射を利用した連続的な食品の処理方法が提案されている（例えば、特許文献２参照）。
【０００７】
図４は、特許文献２に記載された従来の衝撃波の反射を利用した処理装置の構成図を示すものである。図４に示すように、水が満たされたタンク４００内に導管１００が浸漬しており、前記導管１００は水に近い音響インピーダンスを有する壁からなる。水および肉片が前記導管１００内をポンプ１２０で輸送される。爆発手段（火薬または容量放電電極）２００が前記導管に隣接して設けられている。前記爆発手段２００は容量放電回路２２０に接続されていて爆発用のエネルギーを供給し、水中に衝撃波を発生する。導管の壁材インピーダンスは水のインピーダンスと整合しているので、衝撃波は実質的に反射なしに導管を通過して衝撃波は肉を柔軟化する。衝撃波が反射体Ｒ１、Ｒ２で反射して導管１００を通過することで導管内の全ての肉が柔軟化される。
【特許文献１】特開２００３−２８４５２２号公報
【特許文献２】特表２００２−５１９０４５号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００８】
しかしながら、前記従来の構成では、圧力鍋は高圧を保持している時間は５分から２０分ほどであるが、調理開始時の常圧から所定の圧力まで上昇させる間と、高圧状態から常圧に戻す間に時間を要し、調理開始から調理終了までの全工程時間を考慮すると調理時間は通常の調理方法と大差ない状態である。また、高温での加熱によって栄養成分が分解するなどの弊害も危惧される。
【０００９】
また、凍結融解や凍結減圧酵素含浸法では食品の形状によっては凍結と融解でトータル
３〜５時間要することもあり、決して短時間でできる処理ではなかった。さらに家庭で酵素を少量入手するのは困難であり実用的ではなかった。
【００１０】
さらに、衝撃波の反射を利用した連続的な食品の処理は工業的には有効であるが、装置が大掛かりで家庭で容易に出来ないという課題を有していた。
【００１１】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、天板の一部に設けた湯煎容器に衝撃波発生装置を備え、加熱前あるいは加熱調理後に衝撃波を照射して食品の軟化を促進して短時間で調理ができるＩＨ調理器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【００１２】
前記従来の課題を解決するために、本発明のＩＨ調理器は、湯煎容器を収納する湯煎容器収納部と、前記湯煎容器収納部に嵌合する湯煎容器と、前記湯煎容器を加熱する第２の加熱手段と、前記湯煎容器の上部を覆う蓋と、前記湯煎容器内に衝撃波を発生する衝撃波発生手段を備えたものである。
【００１３】
これによって、湯煎容器内の水中で加熱前あるいは加熱後に衝撃波を発生させて、食品を瞬時に軟化することができる。
【発明の効果】
【００１４】
本発明のＩＨ調理器は、湯煎容器内の水中で衝撃波を発生させることにより、瞬時に食品を軟化させて煮込みなどの調理時間を大幅に短縮できるとともに食品を何時間も煮込んだような柔らかさに仕上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１５】
第１の発明は、被加熱物を収容した加熱容器を載置する天板と、前記加熱容器を加熱する加熱手段と、湯煎容器を収納する湯煎容器収納部と、前記湯煎容器収納部に嵌合する湯煎容器と、前記湯煎容器を加熱する第２の加熱手段と、前記湯煎容器の上部を覆う蓋と、前記湯煎容器内に衝撃波を発生する衝撃波発生手段を備えたことにより、湯煎容器内の水中に衝撃波を発生した時の水圧によって瞬時に食品を軟化させることができ、加熱調理の時間を短縮することができる。
【００１６】
第２の発明は、特に、第１の発明の前記湯煎容器の蓋に着脱自在の電極と、前記電極間に電圧を印加して衝撃波を発生させるパルスパワー電源を備えたことにより、パルス単位で連続して衝撃波を発生することができ、また、電極に付着した汚れを洗い流すことができる。
【００１７】
第３の発明は、特に、第１または第２の発明の前記湯煎容器の温度を検出する温度検知手段と、前記温度検知手段で検出された温度値に基づいて前記加熱手段を制御する制御手段を備え、前記湯煎容器を所定の温度に保持した状態で衝撃波を発生することにより、電極間の絶縁破壊が容易に起こり低電圧で衝撃波を発生させることができる。
【００１８】
第４の発明は、特に、第１〜３のいずれか１つの発明の前記衝撃波発生手段が液体に浸漬した食品に対して加熱前に衝撃波を発生することにより、調味液の浸透を促進することができる。
【００１９】
第５の発明は、特に、第１〜３のいずれか１つの発明の前記衝撃波発生手段が液体に浸漬した食品に対して加熱調理後に衝撃波を発生することにより、粉砕手段を用いずとも食材を粉砕でき流動食や離乳食の状態にすることができる。
【００２０】
第６の発明は、特に、第４または第５の発明の前記衝撃波発生手段が調理メニューに応じて１回あるいは数回の衝撃波を選択的に発生することにより、硬さおよび粉砕状態を任意の状態に調整することができる。
【００２１】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【００２２】
（実施の形態１）
図１は、本発明の第１の実施の形態におけるＩＨ調理器の構成概略図を示し、図２は本発明の第１の実施の形態におけるＩＨ調理器の構成断面図を示し、図３は本発明の第１の実施の形態におけるＩＨ調理器の湯煎容器の外観図を示すものである。
【００２３】
図１および図２において、ＩＨ調理器本体１の上面は天板２が配設されている。前記天板２の下方に加熱手段である加熱コイル３が位置し、前記加熱コイル３の出力を制御する制御手段４と、メニューごとに予め設定された加熱プログラムを記憶する記憶手段５と、前記制御手段４および前記記憶手段５を冷却する送風機６がケース７に内装されている。
【００２４】
前記ケース７前面には電源の入／切を行う電源スイッチ８と、メニューや湯煎温度および加熱時間の設定を行う操作手段９と、湯煎温度および加熱時間の設定を表示する出力表示手段１０、加熱をスタートさせるスタートボタン１１が備えられている。
【００２５】
また、天板２には前記加熱コイル３が配設されている位置に加熱容器１２を載せるため加熱領域内を示す円が描かれている。
【００２６】
天板２に横並びで湯煎容器収納部１３を配し、前記湯煎容器収納部１３の下部には第２の加熱手段である加熱コイル１４が位置している。前記湯煎容器収納部１３には着脱自在の湯煎容器１５を嵌合する。前記湯煎容器１５は誘導加熱が可能な材質たとえばステンレスや鉄などの金属からなる。
【００２７】
また、図３において、湯煎容器１５の開口部には熱伝導の遅いプラスチック材料からなる持ち手部１６が備えられている。前記持ち手部１６は加熱終了時に金属からなる前記湯煎容器１５ほど高温にならないので素手で取り出すことができる。前記湯煎容器収納部１３の側面あるいは底面には温度検知手段１７が備えられており、前記湯煎容器１５の外壁面と接触して温度を検知する。前記湯煎容器１５（湯煎容器収納部１３に収納した状態において）の上面には蓋１８が備えられている。
【００２８】
前記湯煎容器収納部１３の内部には衝撃波発生手段である高電圧パルス電源１９を内装しており、蓋１８から前記湯煎容器１５内に向けて設けられた一対の電極２０、２１と接続している。前記一対の電極２０、２１は接続端子（図示なし）で蓋１８と結合しており、必要に応じて蓋１８から取り外すことができる。
【００２９】
また、前記電極２０、２１の材質はチタンやステンレスのような金属で構成されており、金属成分の水中への溶出を防いでいる。前記高電圧パルス電源１９から電極２０、２１に印加する電圧の制御は衝撃波発生制御手段２２で行う。
【００３０】
以上のように構成されたＩＨ調理器について、以下その動作、作用を説明する。
なお、加熱コイルによる誘導加熱の原理などは公知事項なのでここでは説明を省略する。
【００３１】
まず、前記蓋１８を開け、誘導加熱が可能である前記湯煎容器１５を前記湯煎容器収納部１３から取り外して水および具材を入れ、再び前記湯煎容器収納部１３に装着する。
蓋１８を閉めて前記湯煎容器１５内に電極２０、２１を挿入する。その後、前記電源スイッチ８を入れ、例えば短時間煮込みというメニューを操作手段９で使用者が選択すると、まず、前記衝撃波発生制御手段２２によって、高電圧パルス電源１９がＯＮされて一対の電極２０、２１間に立ち上がりの速い例えば１μｓのパルス電圧が印加される。高電圧が印加された電極間には放電がおこり、水蒸気が瞬時に発生して衝撃波が発生する。
【００３２】
発生した衝撃波による圧力は瞬時に水を伝播して具材内部まで貫通し、瞬間的に具材の細胞が破壊される。その後、スタートボタン１１を押して加熱を開始する。
【００３３】
従来の加熱調理では、加熱していく間に具材の細胞壁が破壊され、時間をかけて調味液を染みこませるが、衝撃波では細胞破壊が瞬時に起こり、破壊された細胞の隙間に調味液がすみやかに浸透していくので、調味液の具材内部への浸透も瞬時にすますことができる。よって、加熱前に衝撃波による処理をしておけば、その後の加熱は温める程度ですみ、煮物の調理が短時間行え、消費電力の削減も可能とすることができる。
【００３４】
以上のように、本発明の形態においては、湯煎容器を収納する湯煎容器収納部と、前記湯煎容器収納部に嵌合する湯煎容器と、前記湯煎容器を加熱する第２の加熱手段と、前記湯煎容器の上部を覆う蓋と、前記湯煎容器内に衝撃波を発生する衝撃波発生手段とを備えることにより、湯煎容器内の水中で加熱前あるいは加熱後に衝撃波を発生させて、食品を瞬時に軟化することができる。
【００３５】
なお、衝撃波の発生は加熱前に１回行う場合でも上記の効果は十分に得られるが、食品によっては硬く細胞破壊によって軟化しにくいものもある。そのような場合、加熱前の衝撃波をパルスで連続的に発生させるようにしてもよい。
【００３６】
また、加熱調理後に具材をすり潰してつくるポタージュや餡子などの場合は、加熱調理後に衝撃波を１回発生させることで瞬時に具材が粉々に潰すことができる。さらに、細かく潰した状態にしたい場合は加熱後の衝撃波を連続的に発生させればよい。
【００３７】
なお、調理中に電極が汚れないようにするには、加熱開始の前に蓋を開けて一対の電極を蓋から取り外しておくことが望ましいが、調理後に取り外して洗うことも可能である。
【００３８】
（実施の形態２）
実施の形態２は具材を浸漬している水を室温よりも高温に加温してから衝撃波を発生させる点が実施の形態１と異なっている。その他の構成については実施の形態１と同じであるので相違点についてのみ説明していく。
【００３９】
本実施の形態におけるＩＨ調理器について、以下その動作、作用を説明する。
【００４０】
図１において、操作手段９で短時間煮込みというメニューを使用者が選択すると、加熱手段１４が動作して前記湯煎容器１５内の水および具材が加熱される。加熱するに従い、鍋底の温度は上昇していくが、ある設定温度に到達したことを温度検知手段１７で検知する。
【００４１】
例えば８０℃に到達したことを温度検知手段１７で検知すると、加熱手段１４の電力が制御されて鍋底温度が８０℃の一定温度に保持される。この状態で前記衝撃波発生制御手段２２によって高電圧パルス電源１９がＯＮされ、立ち上がりの速い例えば１μｓのパルス電圧が一対の電極２０、２１間に印加される。
【００４２】
水中で放電を起こすには空気中よりも絶縁破壊が起こりにくいので高電圧にしなければ
ならない。しかし、水温を上昇させると絶縁破壊しやすい状態になるので、低電圧で放電するようになる。
【００４３】
以上のように、本実施の形態においては、湯煎容器の温度を検出する温度検知手段と、前記温度検知手段で検出された温度値に基づいて前記加熱手段を制御する制御手段を備えることにより、前記湯煎容器１５内の水を室温よりも高温で一定の温度に保持することで、低電力で電極間に放電が起こり、衝撃波発生のための電力の低減を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【００４４】
以上のように、本発明にかかるＩＨ調理器は加熱前に瞬時に具材を軟化させるので調理時間が短縮でき、省エネルギーな家庭用のＩＨ調理器に有効である。
【図面の簡単な説明】
【００４５】
【図１】本発明の実施の形態１におけるＩＨ調理器の構成概略図
【図２】本発明の実施の形態１におけるＩＨ調理器の構成断面図
【図３】本発明の実施の形態１におけるＩＨ調理器の湯煎容器の外観図
【図４】従来の衝撃波の反射を利用した処理装置の構成図
【符号の説明】
【００４６】
１ ＩＨ調理器本体
２ 天板
３ 加熱手段（加熱コイル）
４ 制御手段
５ 記憶手段
６ 送風機
７ ケース
８ 電源スイッチ
９ 操作手段
１０ 出力表示手段
１１ スタートボタン
１２ 加熱容器
１３ 湯煎容器収納部
１４ 第２の加熱手段（加熱コイル）
１５ 湯煎容器
１６ 持ち手部
１７ 温度検知手段
１８ 蓋
１９ 高電圧パルス電源（パルスパワー電源）
２０ 電極
２１ 電極
２２ 衝撃波発生制御手段
【技術分野】
【０００１】
本発明は衝撃波を用いたＩＨ調理器に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来、この種のＩＨ調理器は、食品を短時間に軟化するための工夫がなされてきた。具体的には圧力鍋調理や凍結融解処理や凍結減圧含浸法などがある。
【０００３】
圧力鍋では加熱中の食品や水から発生した蒸気を鍋から逃がさない構造とすることで鍋内を加圧状態にして食品自体を１００℃以上にして加熱する方法である。１００℃以上で加熱すると、２０分ほどの短時間でも長時間煮込んで得られる柔らかさにすることができる。
【０００４】
また、凍結融解処理では調理前の食品を一度凍結することで食品細胞内に氷結晶を生成させて細胞壁を破壊させる。その後、融解すると細胞が破壊されているので軟化した状態となり、加熱時の軟化に要する時間が削減できるというものである。
【０００５】
さらに、凍結減圧酵素含浸法では凍結融解した食品を減圧下におき、ペクチン分解酵素を含んだ溶液を食品内部まで含浸させて軟化を促進させる（例えば、特許文献１参照）。これは、凍結融解によって溶液が浸透しやすい状態にしてペクチン分解酵素を食品内部まで含浸させて酵素作用によって細胞壁の結合を弱めて軟化処理するものである。この方法では食品細胞が単細胞化しているので、咀嚼が容易となり介護食や消化器官術後の病院食に適応できる。
【０００６】
また、工業的には衝撃波の反射を利用した連続的な食品の処理方法が提案されている（例えば、特許文献２参照）。
【０００７】
図４は、特許文献２に記載された従来の衝撃波の反射を利用した処理装置の構成図を示すものである。図４に示すように、水が満たされたタンク４００内に導管１００が浸漬しており、前記導管１００は水に近い音響インピーダンスを有する壁からなる。水および肉片が前記導管１００内をポンプ１２０で輸送される。爆発手段（火薬または容量放電電極）２００が前記導管に隣接して設けられている。前記爆発手段２００は容量放電回路２２０に接続されていて爆発用のエネルギーを供給し、水中に衝撃波を発生する。導管の壁材インピーダンスは水のインピーダンスと整合しているので、衝撃波は実質的に反射なしに導管を通過して衝撃波は肉を柔軟化する。衝撃波が反射体Ｒ１、Ｒ２で反射して導管１００を通過することで導管内の全ての肉が柔軟化される。
【特許文献１】特開２００３−２８４５２２号公報
【特許文献２】特表２００２−５１９０４５号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００８】
しかしながら、前記従来の構成では、圧力鍋は高圧を保持している時間は５分から２０分ほどであるが、調理開始時の常圧から所定の圧力まで上昇させる間と、高圧状態から常圧に戻す間に時間を要し、調理開始から調理終了までの全工程時間を考慮すると調理時間は通常の調理方法と大差ない状態である。また、高温での加熱によって栄養成分が分解するなどの弊害も危惧される。
【０００９】
また、凍結融解や凍結減圧酵素含浸法では食品の形状によっては凍結と融解でトータル
３〜５時間要することもあり、決して短時間でできる処理ではなかった。さらに家庭で酵素を少量入手するのは困難であり実用的ではなかった。
【００１０】
さらに、衝撃波の反射を利用した連続的な食品の処理は工業的には有効であるが、装置が大掛かりで家庭で容易に出来ないという課題を有していた。
【００１１】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、天板の一部に設けた湯煎容器に衝撃波発生装置を備え、加熱前あるいは加熱調理後に衝撃波を照射して食品の軟化を促進して短時間で調理ができるＩＨ調理器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【００１２】
前記従来の課題を解決するために、本発明のＩＨ調理器は、湯煎容器を収納する湯煎容器収納部と、前記湯煎容器収納部に嵌合する湯煎容器と、前記湯煎容器を加熱する第２の加熱手段と、前記湯煎容器の上部を覆う蓋と、前記湯煎容器内に衝撃波を発生する衝撃波発生手段を備えたものである。
【００１３】
これによって、湯煎容器内の水中で加熱前あるいは加熱後に衝撃波を発生させて、食品を瞬時に軟化することができる。
【発明の効果】
【００１４】
本発明のＩＨ調理器は、湯煎容器内の水中で衝撃波を発生させることにより、瞬時に食品を軟化させて煮込みなどの調理時間を大幅に短縮できるとともに食品を何時間も煮込んだような柔らかさに仕上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１５】
第１の発明は、被加熱物を収容した加熱容器を載置する天板と、前記加熱容器を加熱する加熱手段と、湯煎容器を収納する湯煎容器収納部と、前記湯煎容器収納部に嵌合する湯煎容器と、前記湯煎容器を加熱する第２の加熱手段と、前記湯煎容器の上部を覆う蓋と、前記湯煎容器内に衝撃波を発生する衝撃波発生手段を備えたことにより、湯煎容器内の水中に衝撃波を発生した時の水圧によって瞬時に食品を軟化させることができ、加熱調理の時間を短縮することができる。
【００１６】
第２の発明は、特に、第１の発明の前記湯煎容器の蓋に着脱自在の電極と、前記電極間に電圧を印加して衝撃波を発生させるパルスパワー電源を備えたことにより、パルス単位で連続して衝撃波を発生することができ、また、電極に付着した汚れを洗い流すことができる。
【００１７】
第３の発明は、特に、第１または第２の発明の前記湯煎容器の温度を検出する温度検知手段と、前記温度検知手段で検出された温度値に基づいて前記加熱手段を制御する制御手段を備え、前記湯煎容器を所定の温度に保持した状態で衝撃波を発生することにより、電極間の絶縁破壊が容易に起こり低電圧で衝撃波を発生させることができる。
【００１８】
第４の発明は、特に、第１〜３のいずれか１つの発明の前記衝撃波発生手段が液体に浸漬した食品に対して加熱前に衝撃波を発生することにより、調味液の浸透を促進することができる。
【００１９】
第５の発明は、特に、第１〜３のいずれか１つの発明の前記衝撃波発生手段が液体に浸漬した食品に対して加熱調理後に衝撃波を発生することにより、粉砕手段を用いずとも食材を粉砕でき流動食や離乳食の状態にすることができる。
【００２０】
第６の発明は、特に、第４または第５の発明の前記衝撃波発生手段が調理メニューに応じて１回あるいは数回の衝撃波を選択的に発生することにより、硬さおよび粉砕状態を任意の状態に調整することができる。
【００２１】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【００２２】
（実施の形態１）
図１は、本発明の第１の実施の形態におけるＩＨ調理器の構成概略図を示し、図２は本発明の第１の実施の形態におけるＩＨ調理器の構成断面図を示し、図３は本発明の第１の実施の形態におけるＩＨ調理器の湯煎容器の外観図を示すものである。
【００２３】
図１および図２において、ＩＨ調理器本体１の上面は天板２が配設されている。前記天板２の下方に加熱手段である加熱コイル３が位置し、前記加熱コイル３の出力を制御する制御手段４と、メニューごとに予め設定された加熱プログラムを記憶する記憶手段５と、前記制御手段４および前記記憶手段５を冷却する送風機６がケース７に内装されている。
【００２４】
前記ケース７前面には電源の入／切を行う電源スイッチ８と、メニューや湯煎温度および加熱時間の設定を行う操作手段９と、湯煎温度および加熱時間の設定を表示する出力表示手段１０、加熱をスタートさせるスタートボタン１１が備えられている。
【００２５】
また、天板２には前記加熱コイル３が配設されている位置に加熱容器１２を載せるため加熱領域内を示す円が描かれている。
【００２６】
天板２に横並びで湯煎容器収納部１３を配し、前記湯煎容器収納部１３の下部には第２の加熱手段である加熱コイル１４が位置している。前記湯煎容器収納部１３には着脱自在の湯煎容器１５を嵌合する。前記湯煎容器１５は誘導加熱が可能な材質たとえばステンレスや鉄などの金属からなる。
【００２７】
また、図３において、湯煎容器１５の開口部には熱伝導の遅いプラスチック材料からなる持ち手部１６が備えられている。前記持ち手部１６は加熱終了時に金属からなる前記湯煎容器１５ほど高温にならないので素手で取り出すことができる。前記湯煎容器収納部１３の側面あるいは底面には温度検知手段１７が備えられており、前記湯煎容器１５の外壁面と接触して温度を検知する。前記湯煎容器１５（湯煎容器収納部１３に収納した状態において）の上面には蓋１８が備えられている。
【００２８】
前記湯煎容器収納部１３の内部には衝撃波発生手段である高電圧パルス電源１９を内装しており、蓋１８から前記湯煎容器１５内に向けて設けられた一対の電極２０、２１と接続している。前記一対の電極２０、２１は接続端子（図示なし）で蓋１８と結合しており、必要に応じて蓋１８から取り外すことができる。
【００２９】
また、前記電極２０、２１の材質はチタンやステンレスのような金属で構成されており、金属成分の水中への溶出を防いでいる。前記高電圧パルス電源１９から電極２０、２１に印加する電圧の制御は衝撃波発生制御手段２２で行う。
【００３０】
以上のように構成されたＩＨ調理器について、以下その動作、作用を説明する。
なお、加熱コイルによる誘導加熱の原理などは公知事項なのでここでは説明を省略する。
【００３１】
まず、前記蓋１８を開け、誘導加熱が可能である前記湯煎容器１５を前記湯煎容器収納部１３から取り外して水および具材を入れ、再び前記湯煎容器収納部１３に装着する。
蓋１８を閉めて前記湯煎容器１５内に電極２０、２１を挿入する。その後、前記電源スイッチ８を入れ、例えば短時間煮込みというメニューを操作手段９で使用者が選択すると、まず、前記衝撃波発生制御手段２２によって、高電圧パルス電源１９がＯＮされて一対の電極２０、２１間に立ち上がりの速い例えば１μｓのパルス電圧が印加される。高電圧が印加された電極間には放電がおこり、水蒸気が瞬時に発生して衝撃波が発生する。
【００３２】
発生した衝撃波による圧力は瞬時に水を伝播して具材内部まで貫通し、瞬間的に具材の細胞が破壊される。その後、スタートボタン１１を押して加熱を開始する。
【００３３】
従来の加熱調理では、加熱していく間に具材の細胞壁が破壊され、時間をかけて調味液を染みこませるが、衝撃波では細胞破壊が瞬時に起こり、破壊された細胞の隙間に調味液がすみやかに浸透していくので、調味液の具材内部への浸透も瞬時にすますことができる。よって、加熱前に衝撃波による処理をしておけば、その後の加熱は温める程度ですみ、煮物の調理が短時間行え、消費電力の削減も可能とすることができる。
【００３４】
以上のように、本発明の形態においては、湯煎容器を収納する湯煎容器収納部と、前記湯煎容器収納部に嵌合する湯煎容器と、前記湯煎容器を加熱する第２の加熱手段と、前記湯煎容器の上部を覆う蓋と、前記湯煎容器内に衝撃波を発生する衝撃波発生手段とを備えることにより、湯煎容器内の水中で加熱前あるいは加熱後に衝撃波を発生させて、食品を瞬時に軟化することができる。
【００３５】
なお、衝撃波の発生は加熱前に１回行う場合でも上記の効果は十分に得られるが、食品によっては硬く細胞破壊によって軟化しにくいものもある。そのような場合、加熱前の衝撃波をパルスで連続的に発生させるようにしてもよい。
【００３６】
また、加熱調理後に具材をすり潰してつくるポタージュや餡子などの場合は、加熱調理後に衝撃波を１回発生させることで瞬時に具材が粉々に潰すことができる。さらに、細かく潰した状態にしたい場合は加熱後の衝撃波を連続的に発生させればよい。
【００３７】
なお、調理中に電極が汚れないようにするには、加熱開始の前に蓋を開けて一対の電極を蓋から取り外しておくことが望ましいが、調理後に取り外して洗うことも可能である。
【００３８】
（実施の形態２）
実施の形態２は具材を浸漬している水を室温よりも高温に加温してから衝撃波を発生させる点が実施の形態１と異なっている。その他の構成については実施の形態１と同じであるので相違点についてのみ説明していく。
【００３９】
本実施の形態におけるＩＨ調理器について、以下その動作、作用を説明する。
【００４０】
図１において、操作手段９で短時間煮込みというメニューを使用者が選択すると、加熱手段１４が動作して前記湯煎容器１５内の水および具材が加熱される。加熱するに従い、鍋底の温度は上昇していくが、ある設定温度に到達したことを温度検知手段１７で検知する。
【００４１】
例えば８０℃に到達したことを温度検知手段１７で検知すると、加熱手段１４の電力が制御されて鍋底温度が８０℃の一定温度に保持される。この状態で前記衝撃波発生制御手段２２によって高電圧パルス電源１９がＯＮされ、立ち上がりの速い例えば１μｓのパルス電圧が一対の電極２０、２１間に印加される。
【００４２】
水中で放電を起こすには空気中よりも絶縁破壊が起こりにくいので高電圧にしなければ
ならない。しかし、水温を上昇させると絶縁破壊しやすい状態になるので、低電圧で放電するようになる。
【００４３】
以上のように、本実施の形態においては、湯煎容器の温度を検出する温度検知手段と、前記温度検知手段で検出された温度値に基づいて前記加熱手段を制御する制御手段を備えることにより、前記湯煎容器１５内の水を室温よりも高温で一定の温度に保持することで、低電力で電極間に放電が起こり、衝撃波発生のための電力の低減を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【００４４】
以上のように、本発明にかかるＩＨ調理器は加熱前に瞬時に具材を軟化させるので調理時間が短縮でき、省エネルギーな家庭用のＩＨ調理器に有効である。
【図面の簡単な説明】
【００４５】
【図１】本発明の実施の形態１におけるＩＨ調理器の構成概略図
【図２】本発明の実施の形態１におけるＩＨ調理器の構成断面図
【図３】本発明の実施の形態１におけるＩＨ調理器の湯煎容器の外観図
【図４】従来の衝撃波の反射を利用した処理装置の構成図
【符号の説明】
【００４６】
１ ＩＨ調理器本体
２ 天板
３ 加熱手段（加熱コイル）
４ 制御手段
５ 記憶手段
６ 送風機
７ ケース
８ 電源スイッチ
９ 操作手段
１０ 出力表示手段
１１ スタートボタン
１２ 加熱容器
１３ 湯煎容器収納部
１４ 第２の加熱手段（加熱コイル）
１５ 湯煎容器
１６ 持ち手部
１７ 温度検知手段
１８ 蓋
１９ 高電圧パルス電源（パルスパワー電源）
２０ 電極
２１ 電極
２２ 衝撃波発生制御手段
【特許請求の範囲】
【請求項１】
被加熱物を収容した加熱容器を載置する天板と、前記加熱容器を加熱する加熱手段と、湯煎容器を収納する湯煎容器収納部と、前記湯煎容器収納部に嵌合する湯煎容器と、前記湯煎容器を加熱する第２の加熱手段と、前記湯煎容器の上部を覆う蓋と、前記湯煎容器内に衝撃波を発生する衝撃波発生手段を備えたＩＨ調理器。
【請求項２】
前記湯煎容器上部を覆う蓋に着脱自在の電極と、前記電極間に電圧を印加して衝撃波を発生させるパルスパワー電源とを備えた請求項１に記載のＩＨ調理器。
【請求項３】
前記湯煎容器の温度を検出する温度検知手段と、前記温度検知手段で検出された温度値に基づいて前記加熱手段を制御する制御手段を備え、前記湯煎容器を所定の温度に保持した状態で衝撃波を発生させるとした請求項１または２に記載のＩＨ調理器。
【請求項４】
前記衝撃波発生手段は、液体に浸漬した食品に対して加熱前に衝撃波を発生するとした請求項１〜３のいずれか１項に記載のＩＨ調理器。
【請求項５】
前記衝撃波発生手段は、液体に浸漬した食品に対して加熱調理後に衝撃波を発生するとした請求項１〜３のいずれか１項に記載のＩＨ調理器。
【請求項６】
前記衝撃波発生手段は、調理メニューに応じて１回あるいは数回の衝撃波を選択的に発生するとした請求項４または５に記載のＩＨ調理器。
【請求項１】
被加熱物を収容した加熱容器を載置する天板と、前記加熱容器を加熱する加熱手段と、湯煎容器を収納する湯煎容器収納部と、前記湯煎容器収納部に嵌合する湯煎容器と、前記湯煎容器を加熱する第２の加熱手段と、前記湯煎容器の上部を覆う蓋と、前記湯煎容器内に衝撃波を発生する衝撃波発生手段を備えたＩＨ調理器。
【請求項２】
前記湯煎容器上部を覆う蓋に着脱自在の電極と、前記電極間に電圧を印加して衝撃波を発生させるパルスパワー電源とを備えた請求項１に記載のＩＨ調理器。
【請求項３】
前記湯煎容器の温度を検出する温度検知手段と、前記温度検知手段で検出された温度値に基づいて前記加熱手段を制御する制御手段を備え、前記湯煎容器を所定の温度に保持した状態で衝撃波を発生させるとした請求項１または２に記載のＩＨ調理器。
【請求項４】
前記衝撃波発生手段は、液体に浸漬した食品に対して加熱前に衝撃波を発生するとした請求項１〜３のいずれか１項に記載のＩＨ調理器。
【請求項５】
前記衝撃波発生手段は、液体に浸漬した食品に対して加熱調理後に衝撃波を発生するとした請求項１〜３のいずれか１項に記載のＩＨ調理器。
【請求項６】
前記衝撃波発生手段は、調理メニューに応じて１回あるいは数回の衝撃波を選択的に発生するとした請求項４または５に記載のＩＨ調理器。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図２】
【図３】
【図４】
【公開番号】特開２０１０−２２５３４７（Ｐ２０１０−２２５３４７Ａ）
【公開日】平成２２年１０月７日（２０１０．１０．７）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００９−６９４９０（Ｐ２００９−６９４９０）
【出願日】平成２１年３月２３日（２００９．３．２３）
【出願人】（０００００５８２１）パナソニック株式会社 (73,050)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２２年１０月７日（２０１０．１０．７）
【国際特許分類】
【出願日】平成２１年３月２３日（２００９．３．２３）
【出願人】（０００００５８２１）パナソニック株式会社 (73,050)
【Ｆターム（参考）】
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