III族窒化物半導体レーザ素子
【課題】CODによる動作不良を低減できると共に放熱能力の低下も縮小できる構造を有するIII族窒化物半導体レーザ素子を提供する。
【解決手段】レーザ共振器となる第1及び第2の割断面27、29が、m−n面に交差する。III族窒化物半導体レーザ素子11は、m−n面と半極性面17aとの交差線の方向に延在するレーザ導波路を有する。割断面27、29は、c面、m面又はa面等のへき開面とは異なる。半導体領域19は、導波路ベクトルLGVの方向に延在する第1〜第3領域19b〜19dを含む。絶縁膜31の開口31aは半導体領域19の第3領域19dのリッジ構造上に位置する。電極15では、パッド電極18の第1〜第3電極部18b〜18dは、半導体領域19の第1〜第3領域19b〜19d上にそれぞれ設けられている。第1電極部18bは、割断面27の縁に到達するアーム部18b_ARM1を有する。
【解決手段】レーザ共振器となる第1及び第2の割断面27、29が、m−n面に交差する。III族窒化物半導体レーザ素子11は、m−n面と半極性面17aとの交差線の方向に延在するレーザ導波路を有する。割断面27、29は、c面、m面又はa面等のへき開面とは異なる。半導体領域19は、導波路ベクトルLGVの方向に延在する第1〜第3領域19b〜19dを含む。絶縁膜31の開口31aは半導体領域19の第3領域19dのリッジ構造上に位置する。電極15では、パッド電極18の第1〜第3電極部18b〜18dは、半導体領域19の第1〜第3領域19b〜19d上にそれぞれ設けられている。第1電極部18bは、割断面27の縁に到達するアーム部18b_ARM1を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、III族窒化物半導体レーザ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、窒化物系半導体レーザ素子が記載されている。特許文献1における半導体レーザ素子は、製造工程を増加させずに劈開に起因する素子不良の判定を容易に行うことを可能にする。この窒化物系半導体レーザ素子は、c面n型GaN基板上に形成された窒化物系半導体各層と、劈開面からなる光出射面と、窒化物系半導体層上に形成されたp側パッド電極とを備える。p側パッド電極は、光出射面30aとなる端部におけるリッジ部を覆わないように形成された切欠部を含む。また、p側パッド電極は光出射面の縁から離れている。
【0003】
特許文献2では、基板の半極性面上に形成された窒化物半導体レーザ素子が記載されている。この窒化物半導体レーザ素子では、光共振器のための端面は、へき開により形成されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−28020号公報
【特許文献2】特許4475357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者らの知見によれば、光共振器のための端面の縁にパッド電極の一辺が到達しているIII族窒化物半導体レーザ素子では、該端面上への誘電体多層膜の形成において、パッド電極の一辺で誘電体の異常成長が発生する可能性がある。この異常成長を避けるためにパッド電極の該一辺を全体にわたって光共振器のための端面の縁から離したIII窒化物半導体レーザ素子では、瞬時光学損傷(Catastrophic Optical Damage:COD)への耐性が高くなる。
【0006】
発明者らの検討によれば、光出射面の近傍で発生された熱は、レーザ動作の際にパッド電極を介して拡散される。しかしながら、既に説明したように、端面に到達したパッド電極の一辺では誘電体の異常成長が生じる可能性がある。加えて、特許文献2に記載される窒化物半導体レーザ素子では、光共振器のための端面はへき開により形成されないので、この端面(つまり、へき開面ではない端面)に起因した異常成長の潜在的な要因が存在する。この点からも、パッド電極の一辺に起因する誘電体異常成長を抑制して、他の要因からの異常成長の誘発を避けたい。
【0007】
本発明は、このような事情を鑑みて為されたものであり、CODによる動作不良を低減できると共に放熱能力の低下も縮小できる構造を有するIII族窒化物半導体レーザ素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るIII族窒化物半導体レーザ素子は、(a)六方晶系III族窒化物半導体からなる半極性主面を有する支持基体及び前記支持基体の前記半極性主面上に設けられた半導体領域を含み、該III族窒化物半導体レーザ素子のレーザ共振器のための第1及び第2の端面を有するレーザ構造体と、(b)前記レーザ構造体の前記半導体領域上に設けられた絶縁膜と、(c)前記レーザ構造体の前記半導体領域及び前記絶縁膜上に設けられた電極と、(d)前記第1の端面および第2の端面の上に設けられた誘電体多層膜とを備える。前記支持基体の前記六方晶系III族窒化物半導体のc軸は、前記第1の端面から前記第2の端面への方向に延在する導波路軸の方向に前記半極性主面の法線軸に対して角度ALPHAで傾斜しており、前記半導体領域は、前記導波路軸の方向に延在する第1、第2及び第3領域を含み、前記第3領域は前記第1領域と前記第2領域との間に設けられ、前記半導体領域の前記第3領域は、第1導電型の窒化ガリウム系半導体からなる第1のクラッド層と、第2導電型の窒化ガリウム系半導体からなる第2のクラッド層と、前記第1のクラッド層と前記第2のクラッド層との間に設けられた活性層とを含み、前記絶縁膜は、前記半導体領域の前記第3領域上に開口を有し、前記電極は、オーミック電極及びパッド電極を含み、前記オーミック電極は、前記絶縁膜の前記開口を介して前記半導体領域の前記第3領域に接触を成し、前記パッド電極は、前記半導体領域の前記第1、第2及び第3領域上にそれぞれ設けられた第1、第2及び第3電極部を含み、前記第1電極部はそれぞれ第1アーム部を有し、前記第1アーム部は前記第1の端面の縁に到達すると共に、前記第3電極部は前記第1の端面の前記縁から離れている。
【0009】
このIII族窒化物半導体レーザ素子によれば、電極はオーミック電極及びパッド電極を含む。このオーミック電極は絶縁膜の開口を介して半導体領域の第3領域に接触を成す。一方、パッド電極は半導体領域の第1、第2及び第3領域上にそれぞれ設けられた第1、第2及び第3電極部を含み、第1電極部における第1アーム部は、当該III族窒化物半導体レーザ素子おける第1の端面の縁に到達する。これ故に、半導体領域における第3領域に隣接する第1領域において、熱放散がパッド電極を介して可能になる。また、半導体領域においてレーザの主要動作を行う第3領域は第1の端面に到達し、この第1の端面の縁から第3電極部が離れている。これ故に、半導体領域の第3領域が到達する端部において、パッド電極の端面に起因する誘電体異常成長の影響が低減される。
【0010】
本発明に係るIII族窒化物半導体レーザ素子では、前記角度ALPHAは、45度以上80度以下又は100度以上135度以下の範囲であることができる。
【0011】
このIII族窒化物半導体レーザ素子によれば、45度未満及び135度を越える角度では、押圧により形成される端面がm面からなる可能性が高くなる。また、80度を越え100度未満の角度では、所望の平坦性及び垂直性が得られないおそれがある。
【0012】
本発明に係るIII族窒化物半導体レーザ素子では、前記レーザ構造体は第1及び第2の面を含み、前記第1の面は前記第2の面の反対側の面であり、前記第1及び第2の端面は、それぞれ前記第1の面のエッジから前記第2の面のエッジまで延在することができる。
【0013】
このIII族窒化物半導体レーザ素子によれば、六方晶系III族窒化物半導体のc軸が導波路軸の方向に法線軸に対してゼロより大きな角度で傾斜する。これ故に、第1及び第2の端面の各々はレーザ構造体における第1の面のエッジからレーザ構造体おける第2の面のエッジまで延在するけれども、へき開により形成されていない。
【0014】
本発明に係るIII族窒化物半導体レーザ素子では、前記第1のクラッド層、前記第2のクラッド層及び前記活性層は、前記半極性主面の法線軸に沿って配列されており、前記半導体領域の前記第3領域は、前記第1の端面から前記第2の端面への方向を示す導波路軸にそって延在するリッジ構造を有することが好適である。
【0015】
このIII族窒化物半導体レーザ素子によれば、電極からの電流は、リッジ構造を介して導波路軸に沿った半導体領域の部分に案内される。リッジ構造が到達する端面の部分に位置合わせして、第3電極部を設けることが好ましい。
【0016】
本発明に係るIII族窒化物半導体レーザ素子では、前記角度ALPHAは、63度以上80度以下又は100度以上117度以下の範囲であることが好適である。
【0017】
このIII族窒化物半導体レーザ素子によれば、このIII族窒化物半導体レーザ素子では、63度以上80度以下又は100度以上117度以下の範囲では、押圧により形成される端面が、基板主面に垂直に近くなる可能性が高くなる。また、80度を越え100度未満の角度では、所望の平坦性及び垂直性が得られないおそれがある。しかしながら、このような平坦性及び垂直性を有する端面でも、半極性面にエピタキシャル成長された半導体領域の層構造に応じて、端面は、へき開面に比べると平坦ではない。これ故に、共振器のための端面は、半導体領域の半導体層の界面で屈曲することがある。このような微視的なラフネスが端面に形成されると、端面上の誘電体多層膜に応力を生じさせる。このような品質の膜は、熱の影響を受けやすくなる。これ故に、パッド電極の構造による放熱はCOD耐性の向上に有効である。また、電極は、半導体領域の第3領域に、導波路軸の方向への凹みを形成する開口を有するので、光導波路の端面付近において誘電体多層膜の異常成長による影響を低減できる。
【0018】
本発明に係るIII族窒化物半導体レーザ素子では、前記支持基体の厚さは400μm以下であることが好ましい。このIII族窒化物半導体レーザ素子では、レーザ共振器のための良質な割断面を得るために好適である。
【0019】
本発明に係るIII族窒化物半導体レーザ素子では、前記支持基体の厚さは、50μm以上であることが好ましく、また100μm以下であることが好ましい。このIII族窒化物半導体レーザ素子によれば、支持基体の厚さが50μm以上であれば、当該レーザ素子のハンドリングが容易になり、生産歩留まりが向上する。支持基体の厚さが100μm以下であれば、レーザ共振器のための良質な割断面を得るために更に好適である。
【0020】
本発明に係るIII族窒化物半導体レーザ素子では、前記半極性主面は、{20−21}面、{10−11}面、{20−2−1}面、及び{10−1−1}面のいずれかの面から−4度以上+4度以下の範囲でオフした面であることが好ましい。
【0021】
このIII族窒化物半導体レーザ素子によれば、これら典型的な半極性面からの微傾斜面において、当該III族窒化物半導体レーザ素子のレーザ共振器を構成できる程度の十分な平坦性及び垂直性の第1及び第2の端面を提供できる。
【0022】
本発明に係るIII族窒化物半導体レーザ素子では、前記半極性主面は、{20−21}面、{10−11}面、{20−2−1}面、及び{10−1−1}面のいずれかであることが好ましい。
【0023】
このIII族窒化物半導体レーザ素子によれば、これら典型的な半極性面において、当該III族窒化物半導体レーザ素子のレーザ共振器を構成できる程度の十分な平坦性及び垂直性の第1及び第2の端面を提供できる。
【0024】
本発明に係るIII族窒化物半導体レーザ素子では、前記支持基体は、GaN、AlGaN、AlN、InGaN及びInAlGaNのいずれかからなることが好ましい。
【0025】
このIII族窒化物半導体レーザ素子によれば、これらの窒化ガリウム系半導体からなる基板を用いるとき、共振器として利用可能な第1及び第2の端面を得ることができる。AlN基板又はAlGaN基板を用いるとき、偏光度を大きくでき、また低屈折率により光閉じ込めを強化できる。InGaN基板を用いるとき、基板と発光層との格子不整合率を小さくでき、結晶品質を向上できる。
【0026】
本発明に係るIII族窒化物半導体レーザ素子では、前記活性層は窒化ガリウム系半導体層を含み、前記活性層は、波長500nm以上の光を発生するように設けられた発光領域を含むことが好ましい。
【0027】
このIII族窒化物半導体レーザ素子によれば、500nm以上の発振波長を得るためには、活性層のInGaN層は0.2以上のインジウム組成を有することが必要となる。インジウム組成が増加すると、InGaNの格子定数が増大し、この結果、InGaN層が格子ひずみを内包する。活性層及びその近傍の半導体層における応力が大きいとき、光共振器のための端面を形成する際の割断において、形成された端面が屈曲することがある。このような屈曲が端面にあると、パッド電極の縁における三次元核成長をきっかけとして、大きなエリアに異常成長が及ぶことがある。しかし、主要なレーザ動作を行う第3領域ではパッド電極の縁に起因する異常成長が低減されるので、光共振器のための端面における上記のような屈曲が誘電体の異常成長を発現させることを低減できる。
【0028】
本発明に係るIII族窒化物半導体レーザ素子では、前記支持基体の前記六方晶系III族窒化物半導体の前記c軸は、前記六方晶系III族窒化物半導体のm軸の方向に傾斜することが好ましい。
【0029】
このIII族窒化物半導体レーザ素子によれば、レーザ共振器となる第1の端面が、六方晶系III族窒化物半導体のm軸及び法線軸によって規定されるm−n面に交差するので、m−n面と半極性面との交差線の方向に延在するレーザ導波路を設けることができる。これ故に、低しきい値電流を可能にするレーザ共振器を有するIII族窒化物半導体レーザ素子を提供できる。
【0030】
本発明に係るIII族窒化物半導体レーザ素子では、前記第1及び第2の端面の各々には、前記支持基体の端面及び前記半導体領域の端面が現れており、前記半導体領域の前記活性層における端面と前記六方晶系窒化物半導体からなる支持基体のm軸に直交する基準面との成す角度は、前記III族窒化物半導体のc軸及びm軸によって規定される第1平面において(ALPHA−5)度以上(ALPHA+5)度以下の範囲の角度を成すことが好ましい。
【0031】
このIII族窒化物半導体レーザ素子は、c軸及びm軸の一方から他方に取られる角度に関して、上記の垂直性を満たす端面を有する。
【0032】
本発明に係るIII族窒化物半導体レーザ素子では、前記角度は、前記第1平面及び前記法線軸に直交する第2平面において−5度以上+5度以下の範囲になることが好ましい。このIII族窒化物半導体レーザ素子は、半極性面の法線軸に垂直な面において規定される角度に関して、上記の垂直性を満たす端面を有する。
【0033】
本発明に係るIII族窒化物半導体レーザ素子では、前記第2電極部は第2アーム部を有し、前記第2アーム部は前記第1の端面の縁に到達することが好適である。
【0034】
このIII族窒化物半導体レーザ素子によれば、第1アーム部だけでなく、第2電極部の第2アーム部もまた、端面付近に設けられる。この両アーム部により、熱の拡散が可能になる。
【0035】
本発明に係るIII族窒化物半導体レーザ素子では、前記オーミック電極はPdを含むことが好ましい。このIII族窒化物半導体レーザ素子によれば、Pd電極は、酸化性に富む半極性面においても電気的接触を提供できる。
【0036】
本発明に係るIII族窒化物半導体レーザ素子では、前記第1の端面はへき開面とは異なり、また前記第2の端面はへき開面とは異なる。
【0037】
本発明の上記の目的および他の目的、特徴、並びに利点は、添付図面を参照して進められる本発明の好適な実施の形態の以下の詳細な記述から、より容易に明らかになる。
【発明の効果】
【0038】
以上説明したように、本発明によれば、CODによる動作不良を低減できると共に放熱能力の低下も小さくできる構造を有するIII族窒化物半導体レーザ素子が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、本実施の形態に係るIII族窒化物半導体レーザ素子の構造を概略的に示す図面である。
【図2】図2は、本実施の形態に係るIII族窒化物半導体レーザ素子の活性層からの光の偏光を示す図面である。
【図3】図3は、c軸及びm軸によって規定される断面を模式的に示す図面である。
【図4】図4は、本実施の形態に係るIII族窒化物半導体レーザ素子を作製する方法の主要な工程を示す図面である。
【図5】図5は、本実施の形態に係るIII族窒化物半導体レーザ素子を作製する方法の主要な工程を模式的に示す図面である。
【図6】図6は、パッド電極及びオーミック電極の配列を示す図面である。
【図7】図7は、実施例2に示されたレーザーダイオードの構造を示す図面である。
【図8】図8は、結晶格子における{20−21}面及びレーザ端面を示す図面である。
【図9】図9は、構造(A)及び構造(B)の割断面上に成長した誘電体多層膜の走査型電子顕微鏡像を示す図面である。
【図10】図10は、半導体領域上のパッド電極破断面上に成膜された誘電体の断面を示す図である。
【図11】図11は、割断面の半導体領域上に形成された段差の電子顕微鏡像を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の知見は、例示として示された添付図面を参照して以下の詳細な記述を考慮することによって容易に理解できる。引き続いて、添付図面を参照しながら、本発明のIII族窒化物半導体レーザ素子、及びIII族窒化物半導体レーザ素子を作製する方法に係る実施の形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付する。
【0041】
図1は、本実施の形態に係るIII族窒化物半導体レーザ素子の構造を概略的に示す図面である。III族窒化物半導体レーザ素子11は、リッジ構造を有するけれども、本発明の実施の形態は、リッジ構造に限定されるものではない。III族窒化物半導体レーザ素子11は、レーザ構造体13及び電極15を備える。レーザ構造体13は、支持基体17及び半導体領域19を含む。支持基体17は、六方晶系III族窒化物半導体からなり、また半極性主面17a及び裏面17bを有する。半導体領域19は、支持基体17の半極性主面17a上に設けられている。電極15は、レーザ構造体13の半導体領域19上に設けられる。半導体領域19は、第1のクラッド層21と、第2のクラッド層23と、活性層25とを含む。第1のクラッド層21は、第1導電型の窒化ガリウム系半導体からなり、例えばn型AlGaN、n型InAlGaN等からなる。第2のクラッド層23は、第2導電型の窒化ガリウム系半導体からなり、例えばp型AlGaN、p型InAlGaN等からなる。活性層25は、第1のクラッド層21と第2のクラッド層23との間に設けられる。活性層25は窒化ガリウム系半導体層を含み、この窒化ガリウム系半導体層は例えば井戸層25aである。活性層25は窒化ガリウム系半導体からなる障壁層25bを含み、井戸層25a及び障壁層25bは交互に配列されている。井戸層25aは、例えばInGaN等からなり、障壁層25bは例えばGaN、InGaN等からなる。活性層25は、例えば波長360nm以上600nm以下の光を発生するように設けられた発光領域を含むことができる。第1のクラッド層21、第2のクラッド層23及び活性層25は、半極性主面17aの法線軸NXに沿って配列されている。レーザ構造体13は、光共振器のための第1の割断面27及び第2の割断面29を含む。支持基体17の六方晶系III族窒化物半導体のc軸は、第1の割断面27から第2の割断面29への方向に延在する導波路軸の方向に半極性主面17aの法線軸NXに対して角度ALPHAで傾斜する。
【0042】
III族窒化物半導体レーザ素子11は、絶縁膜31を更に備える。絶縁膜31はレーザ構造体13の半導体領域19の表面19aを覆っており、半導体領域19は絶縁膜31と支持基体17との間に位置する。レーザ構造体13の第1の割断面27及び第2の割断面29は、六方晶系III族窒化物半導体のm軸及び法線軸NXによって規定されるm−n面に交差する。絶縁膜31の一端部のエッジは第1の割断面27に到達しており、また絶縁膜31の他端部のエッジは第2の割断面29に到達している。支持基体17は六方晶系III族窒化物半導体からなる。絶縁膜31は開口31aを有し、開口31aは半導体領域19の表面19aと上記のm−n面との交差線LIXの方向に延在し、例えばストライプ形状を成す。電極15は、開口31aを介して半導体領域19の表面19a(例えば第2導電型のコンタクト層33)に接触を成しており、上記の交差線LIXの方向に延在する。III族窒化物半導体レーザ素子11では、レーザ導波路は、第1のクラッド層21、第2のクラッド層23及び活性層25を含み、また上記の交差線LIXの方向に延在する。
【0043】
半導体領域19は、第1、第2及び第3領域19b、19c、19dを含み、第1〜第3領域19b〜19dは、導波路軸(導波路ベクトルLGVで表される軸)の方向に延在する。この導波路軸は、第1の端面27から第2の端面29への方向を示すに沿って延在する。第3領域19dは第1領域19bと第2領域19cとの間に設けられる。絶縁膜31の開口31aは半導体領域19の第3領域19d上に位置する。第3領域19dは半導体領域19のリッジ構造を含むことができる。
【0044】
電極15は、オーミック電極16及びパッド電極18を含む。オーミック電極16は、絶縁膜31の開口31aを介して半導体領域19の第3領域19dにオーミック接触を成す。パッド電極18は第1、第2及び第3電極部18b、18c、18dを含み、第1〜第3電極部18b〜18dは、半導体領域19の第1〜第3領域19b〜19d上にそれぞれ設けられている。オーミック電極16は例えばPdを含むことができる。Pd電極は、酸化性に富む半極性面においても電気的接触を提供できる。パッド電極18は例えばTi/Pt/Auからなることができる。
【0045】
第1電極部18bは第1アーム部18b_ARM1を有し、このアーム部18b_ARM1は割断面27の縁に到達する。第3電極部18dは第1の端面27の縁13cから離れている。また、本実施例では、第2電極部18cは第2アーム部18c_ARM1を有することができ、このアーム部18c_ARM1は第1の端面27の縁に到達する。
【0046】
第1電極部18bはアーム部18b_ARM2を有し、このアーム部18b_ARM2は割断面29の縁に到達する。また、第2電極部18cはアーム部18c_ARM2を有することができ、このアーム部18c_ARM2は第2の端面29の縁に到達する。
【0047】
III族窒化物半導体レーザ素子11は、図1に示されるように、第1及び第2の割断面27、29それぞれに設けられた誘電体多層膜43、44を更に備える。割断面27、29にも端面コートを適用できる。端面コートにより反射率を調整できる。
【0048】
誘電体多層膜43は、支持基体17の一端面及び半導体領域19の一端面上に設けられ、これらの端面は割断面27を構成する。誘電体多層膜43のための堆積物は、電極15(パッド電極18)の一端面上にも設けられる。また、誘電体多層膜44は、支持基体17の他端面及び半導体領域19の他端面上に設けられ、これらの端面は割断面29を構成する。誘電体多層膜44のための堆積物は、電極15(パッド電極18)の他端面上に設けられる。
【0049】
このIII族窒化物半導体レーザ素子11によれば、電極15はオーミック電極16及びパッド電極18を含む。このオーミック電極16は絶縁膜31の開口31aを介して半導体領域19の第3領域19dに接触を成す。一方、パッド電極18は、半導体領域19の第1〜第3領域19b〜19d上にそれぞれ設けられた第1、第2及び第3電極部15b〜15dを含む。第1電極部15bにおける第1アーム部18b_ARM1は、当該III族窒化物半導体レーザ素子11おける第1の端面19bの縁に到達する。これ故に、半導体領域19における第3領域19dに隣接する第1領域19bにおいて、熱放散がパッド電極18を介して可能になる。また、半導体領域19においてレーザの主要動作を行う第3領域19dは第1の割断面27に到達する一方で、この第1の割断面27の縁から第3電極部15dが離れている。これ故に、第3領域19dが到達する端部27において、パッド電極18の辺に起因する誘電体異常成長の影響が低減される。
【0050】
また、パッド電極18が割断面27のリッジ構造の周囲に設けられるので、パッド電極10のアーム部に働きによる放熱効果のため、レーザ端面及びその付近における温度上昇を防げる。これにより端面コート劣化やCODを抑制でき、レーザ素子の長寿命化が可能になる。
【0051】
オーミック電極16の厚さは例えば20nm〜100nm程度であり、パッド電極18の厚さは例えば0.2μm〜1μm程度である。誘電体多層膜43(誘電体多層膜44も同様に)は、電極15の端面上にも成長され、特にオーミック電極16に比べて厚いパッド電極18の端面に、誘電体多層膜の異常成長が生じやすい。このため、レーザ動作を行う光導波路を含む半導体領域19内の部分領域19dの直上に位置するオーミック電極16上に、パッド電極18を設けない。該領域19dに隣接する半導体領域19内の他の領域19b、19cの少なくともいずれか一方上に、パッド電極19のアーム部を設けている。このアーム部を介して、レーザ動作を行う光導波路を含む領域19dにおいて発生される熱を放散される。
【0052】
電極15からの電流は、導波路軸に沿った半導体領域部分19dにリッジ構造を介して案内される。リッジ構造が到達する端面の部分に位置合わせして、第3電極部18dを設けることが好ましい。
【0053】
パッド電極18の一部に切り欠きがあり、リッジ部周囲でパッド電極18が割断面27、29から離れている。反射率を上げるために酸化膜蒸着による端面コートを行う場合、平坦な半導体面上には平坦な誘電体多層膜が成長されるけれども、パッド電極18上では三次元核成長になり平坦な膜が得られない。パッド電極18の端面上に堆積される誘電体と平坦な誘電体多層膜部との品質差(結晶性、温度特性)により、コート膜のひび割れやはがれが起こり、素子動作の不良を引き起こす可能性を高める。本実施の形態のようなパッド電極を形成した場合、特に温度が上がりやすいリッジ部周辺で三次元核成長が抑制でき、コート膜品質が維持できる。
【0054】
活性層25は、波長500nm以上の光を発生するように設けられた量子井戸構造を含むことができる。半極性面の利用により、波長500nm以上550nm以下の光の発生に好適である。
【0055】
このIII族窒化物半導体レーザ素子11によれば、500nm以上の発振波長を得るためには、活性層25のInGaN層は0.2以上のインジウム組成を有することが必要となる。インジウム組成が増加すると、InGaNの格子定数が増大し、この結果、InGaN層が格子ひずみを内包する。活性層25及びその近傍の半導体層における応力が増大するとき、光共振器のための端面27、29を形成する際に割断において、該端面27、29が屈曲することがある。このような屈曲があると、パッド電極18の端面において三次元角成長をきっかけとして、大きなエリアに異常成長が生じることがある。しかし、主要なレーザ動作を行う第3領域19dではパッド電極18の端面に起因する異常成長が低減されるので、光共振器のための端面27、29における上記のような屈曲が誘電体の異常成長にまで発展する可能性を低減できる。
【0056】
図1を参照すると、直交座標系S及び結晶座標系CRが描かれている。法線軸NXは、直交座標系SのZ軸の方向に向く。半極性主面17aは、直交座標系SのX軸及びY軸により規定される所定の平面に平行に延在する。また、図1には、代表的なc面Scが描かれている。支持基体17の六方晶系III族窒化物半導体のc軸は、六方晶系III族窒化物半導体のm軸の方向に法線軸NXに対してゼロより大きい角度ALPHAで傾斜している。
【0057】
III族窒化物半導体レーザ素子11では、第1の割断面27及び第2の割断面29は、本実施例では、六方晶系III族窒化物半導体のm軸及び法線軸NXによって規定されるm−n面に交差する。III族窒化物半導体レーザ素子11のレーザ共振器は第1及び第2の割断面27、29を含み、第1の割断面27及び第2の割断面29の一方から他方に、レーザ導波路が延在している。レーザ構造体13は第1の面13a及び第2の面13bを含み、第1の面13aは第2の面13bの反対側である。第1及び第2の割断面27、29は、第1の面13aの縁(エッジ)13cから第2の面13bの縁(エッジ)13dまで延在する。第1及び第2の割断面27、29は、c面、m面又はa面といったこれまでのへき開面とは異なる。
【0058】
このIII族窒化物半導体レーザ素子11によれば、レーザ共振器を構成する第1及び第2の割断面27、29がm−n面に交差する。これ故に、m−n面と半極性面17aとの交差線の方向に延在するレーザ導波路を設けることができる。これ故に、III族窒化物半導体レーザ素子11は、低しきい値電流を可能にするレーザ共振器を有することになる。
【0059】
III族窒化物半導体レーザ素子11は、n側光ガイド層35及びp側光ガイド層37を含む。n側光ガイド層35は、第1の部分35a及び第2の部分35bを含み、n側光ガイド層35は例えばGaN、InGaN等からなる。p側光ガイド層37は、第1の部分37a及び第2の部分37bを含み、p側光ガイド層37は例えばGaN、InGaN等からなる。キャリアブロック層39は、例えば第1の部分37aと第2の部分37bとの間に設けられる。支持基体17の裏面17bには別の電極41が設けられ、電極41は例えば支持基体17の裏面17bを覆っている。
【0060】
図2は、III族窒化物半導体レーザ素子11の活性層25における発光の偏光を示す図面である。III族窒化物半導体レーザ素子における活性層におけるバンド構造では、バンド構造BANDのΓ点近傍では、伝導帯と価電子帯との間の可能な遷移は、3つある。Aバンド及びBバンドは比較的小さいエネルギ差である。伝導帯とAバンドとの遷移Eaによる発光はa軸方向に偏光しており、伝導帯とBバンドとの遷移Ebによる発光はc軸を主面に投影した方向に偏光している。レーザ発振に関して、遷移Eaのしきい値は遷移Ebのしきい値よりも小さい。このバンド構造を反映して、III族窒化物半導体レーザ素子11におけるLEDモードにおける光遷移には、2つのスペクトルが可能である。偏光度ρは(I1−I2)/(I1+I2)によって規定されるとき、LEDモードにおける光は、六方晶系III族窒化物半導体のa軸の方向の偏光成分I1と、六方晶系III族窒化物半導体のc軸を主面に投影した方向の偏光成分I2を含み、偏光成分I1は偏光成分I2よりも大きい。このIII族窒化物半導体レーザ素子11のレーザ共振器を用いて、LEDモードにおいて大きな発光強度のモードの光をレーザ発振させることができる。
【0061】
図2の(a)部に示されるように、活性層25からのレーザ光Lは六方晶系III族窒化物半導体のa軸の方向に偏光している。このIII族窒化物半導体レーザ素子11において、低しきい値電流を実現できるバンド遷移は偏光性を有する。レーザ共振器のための第1及び第2の割断面27、29は、c面、m面又はa面といったこれまでのへき開面とは異なる。しかしながら、第1及び第2の割断面27、29は共振器のための、ミラーとしての平坦性、垂直性を有する。これ故に、第1及び第2の割断面27、29とこれらの割断面27、29間に延在するレーザ導波路とを用いて、図2の(a)部に示されるように、c軸を主面に投影した方向に偏光する遷移Ebの発光よりも強い遷移Eaの発光を利用して低しきい値のレーザ発振が可能になる。
【0062】
図3は、c軸及びm軸によって規定される断面を模式的に示す図面である。図2の(b)部を参照すると、III族窒化物半導体レーザ素子11では、第1及び第2の割断面27、29の各々には、支持基体17の端面17c及び半導体領域19の端面19cが現れており、端面17c及び端面19cは誘電体多層膜43で覆われている。支持基体17の端面17c及び活性層25における端面25cの法線ベクトルNAと活性層25のm軸ベクトルMAとの成す角度BETAが規定される。この角度BETAは、III族窒化物半導体のc軸及びm軸によって規定される第1平面S1において規定される成分(BETA)1と、第1平面S1及び法線軸NXに直交する第2平面S2において規定される成分(BETA)2とによって規定される。ここで、BETA2=(BETA)12+(BETA)22である。成分(BETA)1は、III族窒化物半導体のc軸及びm軸によって規定される第1平面S1において(ALPHA−5)度以上(ALPHA+5)度以下の範囲であることが好ましい。この角度範囲は、図3において、代表的なm面SMと参照面FAとの成す角度として示されている。代表的なm面SMが、理解を容易にするために、図3において、レーザ構造体の内側から外側にわたって描かれている。参照面FAは、活性層25の端面25cに沿って延在する。このIII族窒化物半導体レーザ素子11は、c軸及びm軸の一方から他方に取られる角度BETAに関して、上記の垂直性を満たす端面を有する。また、成分(BETA)2は第2平面S2において−5度以上+5度以下の範囲であることが好ましい。このとき、III族窒化物半導体レーザ素子11の端面27、29は、半極性面17aの法線軸NXに垂直な面において規定される角度に関して上記の垂直性を満たす。
【0063】
再び図1を参照すると、III族窒化物半導体レーザ素子11では、支持基体17の厚さDSUBは400μm以下であることが好ましい。このIII族窒化物半導体レーザ素子では、レーザ共振器のための良質な割断面を得るために好適である。III族窒化物半導体レーザ素子11では、支持基体17の厚さDSUBは50μm以上100μm以下であることが更に好ましい。このIII族窒化物半導体レーザ素子11では、レーザ共振器のための良質な割断面を得るために更に好適である。また、ハンドリングが容易になり、生産歩留まりを向上させることができる。
【0064】
III族窒化物半導体レーザ素子11では、法線軸NXと六方晶系III族窒化物半導体のc軸との成す角度ALPHAは45度以上であることが好ましく、また80度以下であることが好ましい。また、角度ALPHAは100度以上であることが好ましく、また135度以下であることが好ましい。45度未満及び135度を越える角度では、押圧により形成される端面がm面からなる可能性が高くなる。また、80度を越え100度未満の角度では、所望の平坦性及び垂直性が得られないおそれがある。
【0065】
III族窒化物半導体レーザ素子11では、更に好ましくは、法線軸NXと六方晶系III族窒化物半導体のc軸との成す角度ALPHAは63度以上であることが好ましく、また80度以下であることが好ましい。また、角度ALPHAは100度以上であることが好ましく、また117度以下であることが好ましい。63度未満及び117度を越える角度では、押圧により形成される端面の一部に、m面が出現する可能性がある。また、80度を越え100度未満の角度では、所望の平坦性及び垂直性が得られないおそれがある。
【0066】
半極性主面17aは、{20−21}面、{10−11}面、{20−2−1}面、及び{10−1−1}面のいずれかであることができる。更に、これらの面から−4度以上+4度以下の範囲で微傾斜した面も半極性主面として好適である。これら典型的な半極性面17aにおいて、当該III族窒化物半導体レーザ素子11のレーザ共振器を構成できる程度の十分な平坦性及び垂直性の第1及び第2の端面27、29を提供できる。また、これらの典型的な面方位にわたる角度の範囲において、十分な平坦性及び垂直性を示す端面が得られる。
【0067】
III族窒化物半導体レーザ素子11では、支持基体17は、GaN、AlN、AlGaN、InGaN及びInAlGaNのいずれかからなることができる。これらの窒化ガリウム系半導体からなる基板を用いるとき、共振器として利用可能な端面27、29を得ることができる。AlN又はAlGaN基板を用いるとき、偏光度を大きくでき、また低屈折率により光閉じ込めを強化できる。InGaN基板を用いるとき、基板と発光層との格子不整合率を小さくでき、結晶品質を向上できる。
【0068】
図4は、本実施の形態に係るIII族窒化物半導体レーザ素子を作製する方法の主要な工程を示す図面である。図5の(a)部を参照すると、基板51が示されている。工程S101では、III族窒化物半導体レーザ素子の作製のための基板51を準備する。基板51の六方晶系III族窒化物半導体のc軸(ベクトルVC)は、六方晶系III族窒化物半導体のm軸方向(ベクトルVM)に法線軸NXに対して有限な角度ALPHAで傾斜している。これ故に、基板51は、六方晶系III族窒化物半導体からなる半極性主面51aを有する。
【0069】
工程S102では、基板生産物SPを形成する。図5の(a)部では、基板生産物SPはほぼ円板形の部材として描かれているけれども、基板生産物SPの形状はこれに限定されるものではない。基板生産物SPを得るために、まず、工程S103では、レーザ構造体55を形成する。レーザ構造体55は、半導体領域53及び基板51を含んでおり、工程S103では、半導体領域53は半極性主面51a上に形成される。半導体領域53を形成するために、半極性主面51a上に、第1導電型の窒化ガリウム系半導体領域57、発光層59、及び第2導電型の窒化ガリウム系半導体領域61を順に成長する。窒化ガリウム系半導体領域57は例えばn型クラッド層を含み、窒化ガリウム系半導体領域61は例えばp型クラッド層を含むことができる。発光層59は窒化ガリウム系半導体領域57と窒化ガリウム系半導体領域61との間に設けられ、また活性層、光ガイド層及び電子ブロック層等を含むことができる。窒化ガリウム系半導体領域57、発光層59、及び第2導電型の窒化ガリウム系半導体領域61は、半極性主面51aの法線軸NXに沿って配列されている。これらの半導体層はエピタキシャル成長される。
【0070】
必要な場合は、半導体領域53にリッジ構造を形成することができ、リッジ構造はストライプ形状を成す。これに従えば、引き続く工程では、リッジ構造を形成すると共に、パターン形成されたオーミック電極とパターン形成されたパッド電極を形成する。半導体領域53上は、絶縁膜54で覆われている。絶縁膜54は例えばシリコン酸化物からなる。絶縁膜54は開口54aを有する。開口54aは例えばストライプ形状を成す。リッジ構造の形成から絶縁膜54の形成までの工程は、リフトオフ法を適用できる。この後に、パターン形成されたオーミック電極とパターン形成されたパッド電極を形成する。具体的には、工程S104では、レーザ構造体55上に、アノード電極58及びカソード電極60が形成される。また、基板51の裏面に電極を形成する前に、結晶成長に用いた基板の裏面を研磨して、所望の厚さDSUBの基板生産物SPを形成する。電極の形成では、例えばアノード電極58が半導体領域53上に形成されると共に、カソード電極60が基板51の裏面(研磨面)51b上に形成される。アノード電極58はオーミック電極58a及びパッド電極58bを含み、オーミック電極58aは絶縁膜54の開口54aを介して半導体領域53のコンタクト層に接触を成す。パッド電極58b及びオーミック電極58aは絶縁膜54上に形成される。アノード電極58はX軸方向に延在し、カソード電極60は裏面51bの全面を覆っている。これらの工程により、基板生産物SPが形成される。基板生産物SPは、第1の面63aと、これに反対側に位置する第2の面63bとを含む。半導体領域53は第1の面63aと基板51との間に位置する。
【0071】
オーミック電極58aは例えばPd、Ni/Au等からなり、オーミック電極58aの形成には例えばリフトオフ法が適用される。パッド電極58bは例えばTi/Au等からなり、パッド電極58bの形成には例えばフォトリソグラフィ法が適用される。図6は、基板生産物SPのアノード電極の配列及びリッジストライプの配列を示す図面である。オーミック電極58aは、図6に示されるように、例えば所定の軸の方向に延在するストライプ形状を有する。パッド電極58bは、図6に示されるように、所定の軸に交差する方向に配列された第1電極部AN1、第2の電極部AN2及び第3の電極部AN3を有する。第1電極部AN1及び第2電極部AN2は、所定の軸の方向に延在する。第3の電極部AN3は第1電極部AN1と第2電極部AN2との間に設けられる。第3の電極部AN3は、第1電極部AN1と第2電極部AN2との間に所定の間隔で配列される部分を有しており、この結果、第1電極部AN1と第2電極部AN2との間には開口が規定される。第1電極部AN1、第2の電極部AN2及び第3の電極部AN3はストライプ導電体を構成する。ストライプ導電体の間にはギャップGAPが設けられる。ストライプ導電体は所定の軸の方向に延在する一方で、所定の軸の方向に交差する方向(交差方向)に間隔GAPで配列される。ストライプ導電体は所定の間隔で配列された開口を有する。交差方向には、個々のストライプ導電体の開口が配列され、この開口の配列方向に延在し割断位置を示すラインBREAKが規定される。所定の間隔は例えばレーザ共振器長に関連している。ストライプ導電体の開口のサイズは例えば幅20μmであり、長さ20μmである。
【0072】
工程S105では、図5の(b)部に示されるように、基板生産物SPの第1の面63aをスクライブする。このスクライブは、レーザスクライバ10aを用いて行われる。スクライブによりスクライブ溝65aが形成される。図5の(b)部では、5つのスクライブ溝が既に形成されており、レーザビームLBを用いてスクライブ溝65bの形成が進められている。スクライブ溝65aの長さは、六方晶系III族窒化物半導体のa軸及び法線軸NXによって規定されるa−n面と第1の面63aとの交差線AISの長さよりも短く、交差線AISの一部分にレーザビームLBの照射が行われる。レーザビームLBの照射により、特定の方向に延在し半導体領域に到達する溝が第1の面63aに形成される。スクライブ溝65aは例えば基板生産物SPの一エッジに形成されることができる。
【0073】
工程S106では、図5の(c)部に示されるように、基板生産物SPの第2の面63bへの押圧により基板生産物SPの分離を行って、基板生産物SP1及びレーザバーLB1を形成する。押圧は、例えばブレード69といったブレイキング装置を用いて行われる。ブレード69は、一方向に延在するエッジ69aと、エッジ69aを規定する少なくとも2つのブレード面69b、69cを含む。また、基板生産物SP1の押圧は支持装置71上において行われる。支持装置70は、支持面70aと凹部70bとを含み、凹部70bは一方向に延在する。凹部71bは、支持面70aに形成されている。基板生産物SP1のスクライブ溝65aの向き及び位置を支持装置70の凹部70bの延在方向に合わせて、基板生産物SP1を支持装置70上において凹部70bに位置決めする。凹部70bの延在方向にブレイキング装置のエッジの向きを合わせて、第2の面63bに交差する方向からブレイキング装置のエッジを基板生産物SP1に押し当てる。交差方向は好ましくは第2の面63bにほぼ垂直方向である。これによって、基板生産物SPの分離を行って、基板生産物SP1及びレーザバーLB1を形成する。押し当てにより、第1及び第2の端面67a、67bを有するレーザバーLB1が形成され、これらの端面67a、67bは少なくとも発光層の一部は半導体レーザの共振ミラーに適用可能な程度の垂直性及び平坦性を有する。
【0074】
形成されたレーザバーLB1は、上記の分離により形成された第1及び第2の端面67a、67bを有し、端面67a、67bの各々は、第1の面63aから第2の面63bにまで延在する。これ故に、端面67a、67bは、当該III族窒化物半導体レーザ素子のレーザ共振器を構成し、XZ面に交差する。このXZ面は、六方晶系III族窒化物半導体のm軸及び法線軸NXによって規定されるm−n面に対応する。基板生産物は図6に示されたラインBREAKで分離される。端面67aでは、レーザストライプを規定する半導体部分の直上では、パッド電極が端面67aに到達していない。また、端面67bでは、レーザストライプを規定する半導体部分の直上では、パッド電極が端面67bに到達していない。
【0075】
この方法では、図5及び図6に示されるように、電極58はオーミック電極58a及びパッド電極58bを含む。このオーミック電極59aは絶縁膜54の開口54aを介して半導体領域の第3領域53dに接触を成す。一方、パッド電極58bは、半導体領域53の第1、第2及び第3領域53b、53c、53d上にそれぞれ設けられた第1、第2及び第3電極部56b、56c、56dを含む。第1電極部56bにおけるアーム部ARMは、当該III族窒化物半導体レーザ素子おける端面67a(或いは端面67b)の縁に到達する。これ故に、半導体領域53における第3領域53dに隣接する第1領域53bにおいて、熱放散がパッド電極58を介して可能になる。また、半導体領域53においてレーザの主要動作を行う第3領域53dは第1の端面67aに到達し、この第1の端面67aの縁から第3電極部56dが離れている。これ故に、第3領域53dが到達する端部において、パッド電極58bの辺に起因する誘電体異常成長の影響が低減される。
【0076】
また、この方法によれば、六方晶系III族窒化物半導体のa軸の方向に基板生産物SPの第1の面63aをスクライブした後に、基板生産物SPの第2の面63bへの押圧により基板生産物SPの分離を行って、新たな基板生産物SP1及びレーザバーLB1を形成する。これ故に、m−n面に交差するように、レーザバーLB1に第1及び第2の端面67a、67bが形成される。この端面形成によれば、第1及び第2の端面67a、67bに当該III族窒化物半導体レーザ素子のレーザ共振器を構成できる程度の十分な平坦性及び垂直性が提供される。
【0077】
また、この方法では、形成されたレーザ導波路は、六方晶系III族窒化物のc軸の傾斜の方向に延在している。ドライエッチング面を用いずに、このレーザ導波路を提供できる共振器ミラー端面を形成している。
【0078】
この方法によれば、基板生産物SP1の割断により、新たな基板生産物SP1及びレーザバーLB1が形成される。工程S107では、押圧による分離を繰り返して、多数のレーザバーを作製する。この割断は、レーザバーLB1の割断線BREAKに比べて短いスクライブ溝65aを用いて引き起こされる。
【0079】
工程S108では、オフセット構造のパッド電極を有するレーザバーLB1の端面67a、67bに誘電体多層膜を形成して、レーザバー生産物を形成する。端面67aでは、レーザストライプを規定する半導体部分の直上では、パッド電極が端面67aに到達していないので、この半導体部分の直上ではパッド電極端面における異常成長の発生が低減される。この半導体部分の両側に設けられた半導体部分の各直上には、パッド電極58bが端面67aに到達して、パッド電極58bのアーム部ARMを構成する。これらのアーム部ARMは、レーザストライプを規定する半導体部分において発生された熱の放散に役立つ。また、端面67bでは、レーザストライプを規定する半導体部分の直上では、パッド電極58bが端面67bに到達していない。この半導体部分の両側に設けられた半導体部分の各直上には、パッド電極58bが端面67bに到達して、パッド電極58bのアーム部ARMを構成する。これらのアーム部ARMは、レーザストライプを規定する半導体部分において発生された熱の放散に役立つ。工程S109では、このレーザバー生産物を個々の半導体レーザのチップに分離する。
【0080】
また、基板51は、GaN、AlN、AlGaN、InGaN及びInAlGaNのいずれかからなることができる。これらの窒化ガリウム系半導体からなる基板を用いるとき、レーザ共振器として利用可能な端面を得ることができる。基板51は好ましくはGaNからなる。
【0081】
基板生産物SPを形成する工程S104において、結晶成長に使用された半導体基板は、基板厚が400μm以下になるようにスライス又は研削といった加工が施され、第2の面63bが研磨により形成された加工面であることができる。この基板厚では、当該III族窒化物半導体レーザ素子のレーザ共振器を構成できる程度の十分な平坦性、垂直性又はイオンダメージの無い端面67a、67bを歩留まりよく形成できる。第2の面63bが研磨により形成された研磨面であり、研磨されて基板厚が100μm以下であれば更に好ましい。また、基板生産物SPを比較的容易に取り扱うためには、基板厚が50μm以上であることが好ましい。
【0082】
本実施の形態に係るレーザ端面の製造方法では、レーザバーLB1においても、図2を参照しながら説明された角度BETAが規定される。レーザバーLB1では、角度BETAの成分(BETA)1は、III族窒化物半導体のc軸及びm軸によって規定される第1平面(図2を参照した説明における第1平面S1に対応する面)において(ALPHA−5)度以上(ALPHA+5)度以下の範囲であることが好ましい。レーザバーLB1の端面67a、67bは、c軸及びm軸の一方から他方に取られる角度BETAの角度成分に関して上記の垂直性を満たす。また、角度BETAの成分(BETA)2は、第2平面(図2に示された第2平面S2に対応する面)において−5度以上+5度以下の範囲であることが好ましい。このとき、レーザバーLB1の端面67a、67bは、半極性面51aの法線軸NXに垂直な面において規定される角度BETAの角度成分に関して上記の垂直性を満たす。
【0083】
端面67a、67bは、半極性面51a上にエピタキシャルに成長された複数の窒化ガリウム系半導体層への押圧によるブレイクによって形成される。半極性面51a上へのエピタキシャル膜であるが故に、端面67a、67bは、これまで共振器ミラーとして用いられてきたc面、m面、又はa面といった低面指数のへき開面ではない。しかしながら、半極性面51a上へのエピタキシャル膜の積層のブレイクにおいて、端面67a、67bは、共振器ミラーとして適用可能な平坦性及び垂直性を有する。
【0084】
(実施例1)
以下の通り、半極性面GaN基板を準備し、割断面の垂直性を観察した。基板には、HVPE法で厚く成長した(0001)GaNインゴットからm軸方向に75度の角度で切り出した{20−21}面GaN基板を用いた。GaN基板の主面は鏡面仕上げであり、裏面は研削仕上げされた梨地状態であった。梨地状態の裏面側に、ダイヤモンドペンを用いて、c軸を基板主面に投影した方向に垂直にケガキ線を入れた後、押圧して基板を割断した。得られた割断面の垂直性を観察するため、走査型電子顕微鏡を用いてa面方向から基板を観察したとき、割断面は半極性主面に対して、平坦性及び垂直性を有することがわかる。
【0085】
(実施例2)
実施例1では、半極性{20−21}面を有するGaN基板において、c軸を基板主面に投影した方向に垂直にケガキ線を入れて押圧して得た割断面は、基板主面に対して平坦性及び垂直性を有することがわかった。そこでこの割断面をレーザの共振器としての有用性を調べるため、以下の通り、図7に示されるレーザーダイオードを有機金属気相成長法により成長した。原料にはトリメチルガリウム(TMGa)、トリメチルアルミニウム(TMAl)、トリメチルインジウム(TMIn)、アンモニア(NH3)、シラン(SiH4)を用いた。基板71を準備した。基板71には、HVPE法で厚く成長した(0001)GaNインゴットからm軸方向に0度から90度の範囲の角度でウェハスライス装置を用いて切り出し、m軸方向へのc軸の傾斜角度ALPHAが、0度から90度の範囲の所望のオフ角を有するGaN基板を作製した。例えば、75度の角度で切り出したとき、{20−21}面GaN基板が得られ、図8の(a)部に示される六方晶系の結晶格子において参照符号71aによって示されている。
【0086】
この基板71を反応炉内のサセプタ上に配置した後に、以下の成長手順でエピタキシャル層を成長した。摂氏900度で、厚さ1100nmのn型(Siドープ)InAlGaNクラッド層72を基板71上に成長し、In組成は0.03であり、Al組成は0.11である。摂氏1000度で、厚さ200nmのn型GaNガイド層73aを成長すると共に摂氏870度で厚さ100nmのアンドープInGaNガイド層73bを成長した後に、3周期のMQW74を成長した。GaN障壁層の成長温度は摂氏840度であり、InGaN井戸層の成長温度は摂氏740度である。GaN障壁層の厚さは10nmである。InGaN井戸層の厚さは3nmであり、In組成は0.30である。摂氏870度で厚さ100nmのアンドープInGaNガイド層75aを成長し、摂氏890度で厚さ20nmのp型(Mgドープ)AlGaNブロック層76を成長する。摂氏880度で厚さ200nmのp型GaNガイド層75bを成長した。摂氏880度で厚さ400nmのp型InAlGaNクラッド層77を成長し、In組成は0.03であり、Al組成は0.11である。摂氏880度で、厚さ50nmのp型GaNコンタクト層78を成長した。
【0087】
SiO2の絶縁膜79をコンタクト層78上に成膜した後に、フォトリソグラフィを用いて幅10μmのストライプ窓をウェットエッチングにより形成した。ここで、以下の2通りにストライプ方向のコンタクト窓を形成した。レーザストライプは、M方向(コンタクト窓がc軸及びm軸によって規定される所定の面に沿った方向)である。
【0088】
ストライプ窓を形成した後に、Ni/Auから成るp側電極80aとTi/Alから成るパッド電極80bを蒸着した。次いで、ダイヤモンドスラリーを用いてGaN基板(GaNウエハ)の裏面を研磨し、裏面がミラー状態の基板生産物を作製した。このとき、接触式膜厚計を用いて基板生産物の厚みを測定した。厚みの測定には、試料断面からの顕微鏡によっても行っても良い。顕微鏡には、光学顕微鏡や、走査型電子顕微鏡を用いることができる。GaN基板(GaNウエハ)の裏面(研磨面)にはTi/Al/Ti/Auから成るn側電極80cを蒸着により形成した。
【0089】
これら2種類のレーザストライプに対する共振器ミラーの作製には、波長355nmのYAGレーザを用いるレーザスクライバを用いた。スクライブ溝の形成条件として以下のものを用いた:レーザ光出力100mW;走査速度は5mm/s。形成されたスクライブ溝は、例えば、長さ30μm、幅10μm、深さ40μmの溝であった。800μmピッチで基板の絶縁膜開口箇所を通してエピ表面に直接レーザ光を照射することによって、スクライブ溝を形成した。共振器長は600μmとした。
【0090】
ブレードを用いて、共振ミラーを割断により作製した。基板裏側に押圧によりブレイクすることによって、レーザバーを作製した。より具体的に、{20−21}面のGaN基板について、図8の(a)部と図8の(b)部は結晶方位と割断面との関係を示している。図8の(a)部はレーザストライプを(1)M方向に設けた場合であり、半極性面71aと共にレーザ共振器のための端面81a、81bが示される。端面81a、81bは半極性面71aにほぼ直交しているが、従来のc面、m面又はa面等のこれまでのへき開面とは異なる。図8の(b)部はレーザストライプを(2)<11−20>方向に設けた場合であり、半極性面71aと共にレーザ共振器のための端面81c、81dが示される。端面81c、81dは半極性面71aにほぼ直交しており、a面から構成される。
【0091】
ブレイクによって形成された割断面を走査型電子顕微鏡で観察した結果によれば、端面顕著な凹凸は観察されない。このことから、割断面の平坦性(凹凸の大きさ)は、20nm以下と推定される。更に、割断面の試料表面に対する垂直性は、−5度〜+5度の範囲内であった。
【0092】
レーザバーの端面に真空蒸着法によって誘電体多層膜をコーティングした。誘電体多層膜は、SiO2とTiO2を交互に積層して構成した。膜厚はそれぞれ、50〜100nmの範囲で調整して、反射率の中心波長が500〜530nmの範囲になるように設計した。片側の反射面を10周期とし、反射率の設計値を約95%に設計し、もう片側の反射面を6周期とし、反射率の設計値を約80%とした。
【0093】
通電による評価を室温にて行った。電源には、パルス幅500ns、デューティ比0.1%のパルス電源を用い、表面電極に針を落として通電した。光出力測定の際には、レーザバー端面からの発光をフォトダイオードによって検出して、電流−光出力特性(I−L特性)を調べた。発光波長を測定する際には、レーザバー端面からの発光を光ファイバに通し、検出器にスペクトルアナライザを用いてスペクトル測定を行った。偏光状態を調べる際には、レーザバーからの発光に偏光板を通して回転させることで、偏光状態を調べた。LEDモード光を観測する際には、光ファイバをレーザバー表面側に配置することで、表面から放出される光を測定した。
【0094】
全てのレーザで発振後の偏光状態を確認した結果、a軸方向に偏光していることがわかった。発振波長は500〜530nmの波長範囲内にある。
【0095】
全てのレーザでLEDモード(自然放出光)の偏光状態を測定した。a軸の方向の偏光成分をI1、m軸を主面に投影した方向の偏光成分をI2とし、(I1−I2)/(I1+I2)を偏光度ρと定義した。こうして、求めた偏光度ρとしきい値電流密度の最小値の関係を調べた結果、偏光度が正の場合に、レーザストライプM方向のレーザでは、しきい値電流密度が大きく低下することがわかる。すなわち、偏光度が正(I1>I2)で、かつオフ方向に導波路を設けた場合に、しきい値電流密度が大幅に低下することがわかる。
【0096】
(実施例3)
実施例2の製造方法を用いてエピタキシャル基板を作製すると共に、p側電極及びn側電極を形成する。p側電極の形成では、2つの構造(A)及び(B)を作製する。
構造(A)では、本実施の形態において説明したように、パッド電極は2つのアーム部を有する(以下、「切り欠き有り構造」として参照する)。
構造(B)では、パッド電極の一辺は、全体に亘って、共振器のための端面に到達する(以下、「切り欠き無し構造」として参照する)。
これらの構造(A)及び構造(B)の端面に、Al2O3/TiO2の誘電体多層膜を成長した。一方側の端面の反射率は90%であり、他方側の端面の反射率は80%である。図9の(a)部は、構造(A)の割断面上に成長した誘電体多層膜の走査型電子顕微鏡像を示し、図9の(b)部は、構造(B)の割断面上に成長した誘電体多層膜の走査型電子顕微鏡像を示す。
【0097】
構造(B)では、図10に示されるように、割断面の半導体領域上に残るパッド電極の破断面上にも誘電体が成膜されており、この誘電体は成長異常を起こしている。成長異常の影響のため、レーザ導波路の端面において、意図した反射率の誘電体膜が得られない。
【0098】
構造(A)では、パッド電極のアーム部が割断面のエッジの一部に到達して電極端面を構成するけれども、構造(A)において割断面のエッジに位置する電極端面が、構造(B)に比べて短い。これ故に、構造(A)においては、誘電体多層膜の異常成長の発生頻度が低減される。構造(B)のレーザデバイスでは誘電体多層膜に異常成長が生じると、レーザ発振せず、誘電体多層膜の形成工程の後においては、構造(A)のレーザデバイスに対して構造(B)の歩留りが50%低下する。
【0099】
構造(A)及び構造(B)のレーザデバイスに、通電による寿命試験を行う。寿命試験の結果によれば、構造(A)のレーザデバイスのデバイス寿命は、構造(B)のレーザデバイスの寿命に比べて200%伸びる。
【0100】
半極性と誘電体多層膜の異常成長とについて説明する。半極性主面を有する基板を用いて半導体レーザ素子を作製するとき、発明者らの知見によれば、レーザバーの形成の際に割断面に段差が形成される。この段差は、レーザ構造体に含まれる複数の半導体層の界面に沿ってその一部分に形成される。この段差が形成されると、導波路軸に対する垂直からの割断面のズレを抑えて、発振歩留りを向上させることができる。図11は、ストライプ形状の電極STの端部付近におけるレーザ端面に拡大写真を示す。この端面における段差は、基板主面の延在する方向に沿った長さと、導波路軸の方向に沿った幅とによって規定される。段差の幅が80nmを超えるとき、電流注入による発熱が段差部分で生じて、図11に示されるように、端面コートにひび割れが発生する。このようなレーザデバイスは動作しなくなる。しかしながら、レーザデバイスが、部分的にオフセットされている切り欠き有り構造のパッド電極を有するとき、構造(A)は半極性基板で特に有利に働く。
【0101】
好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。
【産業上の利用可能性】
【0102】
以上説明したように、本実施の形態によれば、CODによる動作不良を低減できると共に放熱能力の低下も縮小できる構造を有するIII族窒化物半導体レーザ素子を提供できる。
【符号の説明】
【0103】
11…III族窒化物半導体レーザ素子、13…レーザ構造体、13a…第1の面、13b…第2の面、13c、13d…エッジ、15…電極、17…支持基体、17a…半極性主面、17b…支持基体裏面、17c…支持基体端面、19…半導体領域、19a…半導体領域表面、19c…半導体領域端面、21…第1のクラッド層、23…第2のクラッド層、25…活性層、25a…井戸層、25b…障壁層、27、29…割断面、ALPHA…角度、Sc…c面、NX…法線軸、31…絶縁膜、31a…絶縁膜開口、35…n側光ガイド層、37…p側光ガイド層、39…キャリアブロック層、41…電極、43、44…誘電体多層膜、MA…m軸ベクトル、BETA…角度、DSUB…支持基体厚さ、51…基板、51a…半極性主面、SP…基板生産物、57…窒化ガリウム系半導体領域、59…発光層、61…窒化ガリウム系半導体領域、53…半導体領域、54…絶縁膜、54a…絶縁膜開口、55…レーザ構造体、58…アノード電極、58a…オーミック電極、58b…パッド電極、60…カソード電極、63a…第1の面、63b…第2の面、10a…レーザスクライバ、65a…スクライブ溝、65b…スクライブ溝、LB…レーザビーム、SP1…基板生産物、LB1…レーザバー、69…ブレード、69a…エッジ、69b、69c…ブレード面、70…支持装置、70a…支持面、70b…凹部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、III族窒化物半導体レーザ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、窒化物系半導体レーザ素子が記載されている。特許文献1における半導体レーザ素子は、製造工程を増加させずに劈開に起因する素子不良の判定を容易に行うことを可能にする。この窒化物系半導体レーザ素子は、c面n型GaN基板上に形成された窒化物系半導体各層と、劈開面からなる光出射面と、窒化物系半導体層上に形成されたp側パッド電極とを備える。p側パッド電極は、光出射面30aとなる端部におけるリッジ部を覆わないように形成された切欠部を含む。また、p側パッド電極は光出射面の縁から離れている。
【0003】
特許文献2では、基板の半極性面上に形成された窒化物半導体レーザ素子が記載されている。この窒化物半導体レーザ素子では、光共振器のための端面は、へき開により形成されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−28020号公報
【特許文献2】特許4475357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者らの知見によれば、光共振器のための端面の縁にパッド電極の一辺が到達しているIII族窒化物半導体レーザ素子では、該端面上への誘電体多層膜の形成において、パッド電極の一辺で誘電体の異常成長が発生する可能性がある。この異常成長を避けるためにパッド電極の該一辺を全体にわたって光共振器のための端面の縁から離したIII窒化物半導体レーザ素子では、瞬時光学損傷(Catastrophic Optical Damage:COD)への耐性が高くなる。
【0006】
発明者らの検討によれば、光出射面の近傍で発生された熱は、レーザ動作の際にパッド電極を介して拡散される。しかしながら、既に説明したように、端面に到達したパッド電極の一辺では誘電体の異常成長が生じる可能性がある。加えて、特許文献2に記載される窒化物半導体レーザ素子では、光共振器のための端面はへき開により形成されないので、この端面(つまり、へき開面ではない端面)に起因した異常成長の潜在的な要因が存在する。この点からも、パッド電極の一辺に起因する誘電体異常成長を抑制して、他の要因からの異常成長の誘発を避けたい。
【0007】
本発明は、このような事情を鑑みて為されたものであり、CODによる動作不良を低減できると共に放熱能力の低下も縮小できる構造を有するIII族窒化物半導体レーザ素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るIII族窒化物半導体レーザ素子は、(a)六方晶系III族窒化物半導体からなる半極性主面を有する支持基体及び前記支持基体の前記半極性主面上に設けられた半導体領域を含み、該III族窒化物半導体レーザ素子のレーザ共振器のための第1及び第2の端面を有するレーザ構造体と、(b)前記レーザ構造体の前記半導体領域上に設けられた絶縁膜と、(c)前記レーザ構造体の前記半導体領域及び前記絶縁膜上に設けられた電極と、(d)前記第1の端面および第2の端面の上に設けられた誘電体多層膜とを備える。前記支持基体の前記六方晶系III族窒化物半導体のc軸は、前記第1の端面から前記第2の端面への方向に延在する導波路軸の方向に前記半極性主面の法線軸に対して角度ALPHAで傾斜しており、前記半導体領域は、前記導波路軸の方向に延在する第1、第2及び第3領域を含み、前記第3領域は前記第1領域と前記第2領域との間に設けられ、前記半導体領域の前記第3領域は、第1導電型の窒化ガリウム系半導体からなる第1のクラッド層と、第2導電型の窒化ガリウム系半導体からなる第2のクラッド層と、前記第1のクラッド層と前記第2のクラッド層との間に設けられた活性層とを含み、前記絶縁膜は、前記半導体領域の前記第3領域上に開口を有し、前記電極は、オーミック電極及びパッド電極を含み、前記オーミック電極は、前記絶縁膜の前記開口を介して前記半導体領域の前記第3領域に接触を成し、前記パッド電極は、前記半導体領域の前記第1、第2及び第3領域上にそれぞれ設けられた第1、第2及び第3電極部を含み、前記第1電極部はそれぞれ第1アーム部を有し、前記第1アーム部は前記第1の端面の縁に到達すると共に、前記第3電極部は前記第1の端面の前記縁から離れている。
【0009】
このIII族窒化物半導体レーザ素子によれば、電極はオーミック電極及びパッド電極を含む。このオーミック電極は絶縁膜の開口を介して半導体領域の第3領域に接触を成す。一方、パッド電極は半導体領域の第1、第2及び第3領域上にそれぞれ設けられた第1、第2及び第3電極部を含み、第1電極部における第1アーム部は、当該III族窒化物半導体レーザ素子おける第1の端面の縁に到達する。これ故に、半導体領域における第3領域に隣接する第1領域において、熱放散がパッド電極を介して可能になる。また、半導体領域においてレーザの主要動作を行う第3領域は第1の端面に到達し、この第1の端面の縁から第3電極部が離れている。これ故に、半導体領域の第3領域が到達する端部において、パッド電極の端面に起因する誘電体異常成長の影響が低減される。
【0010】
本発明に係るIII族窒化物半導体レーザ素子では、前記角度ALPHAは、45度以上80度以下又は100度以上135度以下の範囲であることができる。
【0011】
このIII族窒化物半導体レーザ素子によれば、45度未満及び135度を越える角度では、押圧により形成される端面がm面からなる可能性が高くなる。また、80度を越え100度未満の角度では、所望の平坦性及び垂直性が得られないおそれがある。
【0012】
本発明に係るIII族窒化物半導体レーザ素子では、前記レーザ構造体は第1及び第2の面を含み、前記第1の面は前記第2の面の反対側の面であり、前記第1及び第2の端面は、それぞれ前記第1の面のエッジから前記第2の面のエッジまで延在することができる。
【0013】
このIII族窒化物半導体レーザ素子によれば、六方晶系III族窒化物半導体のc軸が導波路軸の方向に法線軸に対してゼロより大きな角度で傾斜する。これ故に、第1及び第2の端面の各々はレーザ構造体における第1の面のエッジからレーザ構造体おける第2の面のエッジまで延在するけれども、へき開により形成されていない。
【0014】
本発明に係るIII族窒化物半導体レーザ素子では、前記第1のクラッド層、前記第2のクラッド層及び前記活性層は、前記半極性主面の法線軸に沿って配列されており、前記半導体領域の前記第3領域は、前記第1の端面から前記第2の端面への方向を示す導波路軸にそって延在するリッジ構造を有することが好適である。
【0015】
このIII族窒化物半導体レーザ素子によれば、電極からの電流は、リッジ構造を介して導波路軸に沿った半導体領域の部分に案内される。リッジ構造が到達する端面の部分に位置合わせして、第3電極部を設けることが好ましい。
【0016】
本発明に係るIII族窒化物半導体レーザ素子では、前記角度ALPHAは、63度以上80度以下又は100度以上117度以下の範囲であることが好適である。
【0017】
このIII族窒化物半導体レーザ素子によれば、このIII族窒化物半導体レーザ素子では、63度以上80度以下又は100度以上117度以下の範囲では、押圧により形成される端面が、基板主面に垂直に近くなる可能性が高くなる。また、80度を越え100度未満の角度では、所望の平坦性及び垂直性が得られないおそれがある。しかしながら、このような平坦性及び垂直性を有する端面でも、半極性面にエピタキシャル成長された半導体領域の層構造に応じて、端面は、へき開面に比べると平坦ではない。これ故に、共振器のための端面は、半導体領域の半導体層の界面で屈曲することがある。このような微視的なラフネスが端面に形成されると、端面上の誘電体多層膜に応力を生じさせる。このような品質の膜は、熱の影響を受けやすくなる。これ故に、パッド電極の構造による放熱はCOD耐性の向上に有効である。また、電極は、半導体領域の第3領域に、導波路軸の方向への凹みを形成する開口を有するので、光導波路の端面付近において誘電体多層膜の異常成長による影響を低減できる。
【0018】
本発明に係るIII族窒化物半導体レーザ素子では、前記支持基体の厚さは400μm以下であることが好ましい。このIII族窒化物半導体レーザ素子では、レーザ共振器のための良質な割断面を得るために好適である。
【0019】
本発明に係るIII族窒化物半導体レーザ素子では、前記支持基体の厚さは、50μm以上であることが好ましく、また100μm以下であることが好ましい。このIII族窒化物半導体レーザ素子によれば、支持基体の厚さが50μm以上であれば、当該レーザ素子のハンドリングが容易になり、生産歩留まりが向上する。支持基体の厚さが100μm以下であれば、レーザ共振器のための良質な割断面を得るために更に好適である。
【0020】
本発明に係るIII族窒化物半導体レーザ素子では、前記半極性主面は、{20−21}面、{10−11}面、{20−2−1}面、及び{10−1−1}面のいずれかの面から−4度以上+4度以下の範囲でオフした面であることが好ましい。
【0021】
このIII族窒化物半導体レーザ素子によれば、これら典型的な半極性面からの微傾斜面において、当該III族窒化物半導体レーザ素子のレーザ共振器を構成できる程度の十分な平坦性及び垂直性の第1及び第2の端面を提供できる。
【0022】
本発明に係るIII族窒化物半導体レーザ素子では、前記半極性主面は、{20−21}面、{10−11}面、{20−2−1}面、及び{10−1−1}面のいずれかであることが好ましい。
【0023】
このIII族窒化物半導体レーザ素子によれば、これら典型的な半極性面において、当該III族窒化物半導体レーザ素子のレーザ共振器を構成できる程度の十分な平坦性及び垂直性の第1及び第2の端面を提供できる。
【0024】
本発明に係るIII族窒化物半導体レーザ素子では、前記支持基体は、GaN、AlGaN、AlN、InGaN及びInAlGaNのいずれかからなることが好ましい。
【0025】
このIII族窒化物半導体レーザ素子によれば、これらの窒化ガリウム系半導体からなる基板を用いるとき、共振器として利用可能な第1及び第2の端面を得ることができる。AlN基板又はAlGaN基板を用いるとき、偏光度を大きくでき、また低屈折率により光閉じ込めを強化できる。InGaN基板を用いるとき、基板と発光層との格子不整合率を小さくでき、結晶品質を向上できる。
【0026】
本発明に係るIII族窒化物半導体レーザ素子では、前記活性層は窒化ガリウム系半導体層を含み、前記活性層は、波長500nm以上の光を発生するように設けられた発光領域を含むことが好ましい。
【0027】
このIII族窒化物半導体レーザ素子によれば、500nm以上の発振波長を得るためには、活性層のInGaN層は0.2以上のインジウム組成を有することが必要となる。インジウム組成が増加すると、InGaNの格子定数が増大し、この結果、InGaN層が格子ひずみを内包する。活性層及びその近傍の半導体層における応力が大きいとき、光共振器のための端面を形成する際の割断において、形成された端面が屈曲することがある。このような屈曲が端面にあると、パッド電極の縁における三次元核成長をきっかけとして、大きなエリアに異常成長が及ぶことがある。しかし、主要なレーザ動作を行う第3領域ではパッド電極の縁に起因する異常成長が低減されるので、光共振器のための端面における上記のような屈曲が誘電体の異常成長を発現させることを低減できる。
【0028】
本発明に係るIII族窒化物半導体レーザ素子では、前記支持基体の前記六方晶系III族窒化物半導体の前記c軸は、前記六方晶系III族窒化物半導体のm軸の方向に傾斜することが好ましい。
【0029】
このIII族窒化物半導体レーザ素子によれば、レーザ共振器となる第1の端面が、六方晶系III族窒化物半導体のm軸及び法線軸によって規定されるm−n面に交差するので、m−n面と半極性面との交差線の方向に延在するレーザ導波路を設けることができる。これ故に、低しきい値電流を可能にするレーザ共振器を有するIII族窒化物半導体レーザ素子を提供できる。
【0030】
本発明に係るIII族窒化物半導体レーザ素子では、前記第1及び第2の端面の各々には、前記支持基体の端面及び前記半導体領域の端面が現れており、前記半導体領域の前記活性層における端面と前記六方晶系窒化物半導体からなる支持基体のm軸に直交する基準面との成す角度は、前記III族窒化物半導体のc軸及びm軸によって規定される第1平面において(ALPHA−5)度以上(ALPHA+5)度以下の範囲の角度を成すことが好ましい。
【0031】
このIII族窒化物半導体レーザ素子は、c軸及びm軸の一方から他方に取られる角度に関して、上記の垂直性を満たす端面を有する。
【0032】
本発明に係るIII族窒化物半導体レーザ素子では、前記角度は、前記第1平面及び前記法線軸に直交する第2平面において−5度以上+5度以下の範囲になることが好ましい。このIII族窒化物半導体レーザ素子は、半極性面の法線軸に垂直な面において規定される角度に関して、上記の垂直性を満たす端面を有する。
【0033】
本発明に係るIII族窒化物半導体レーザ素子では、前記第2電極部は第2アーム部を有し、前記第2アーム部は前記第1の端面の縁に到達することが好適である。
【0034】
このIII族窒化物半導体レーザ素子によれば、第1アーム部だけでなく、第2電極部の第2アーム部もまた、端面付近に設けられる。この両アーム部により、熱の拡散が可能になる。
【0035】
本発明に係るIII族窒化物半導体レーザ素子では、前記オーミック電極はPdを含むことが好ましい。このIII族窒化物半導体レーザ素子によれば、Pd電極は、酸化性に富む半極性面においても電気的接触を提供できる。
【0036】
本発明に係るIII族窒化物半導体レーザ素子では、前記第1の端面はへき開面とは異なり、また前記第2の端面はへき開面とは異なる。
【0037】
本発明の上記の目的および他の目的、特徴、並びに利点は、添付図面を参照して進められる本発明の好適な実施の形態の以下の詳細な記述から、より容易に明らかになる。
【発明の効果】
【0038】
以上説明したように、本発明によれば、CODによる動作不良を低減できると共に放熱能力の低下も小さくできる構造を有するIII族窒化物半導体レーザ素子が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、本実施の形態に係るIII族窒化物半導体レーザ素子の構造を概略的に示す図面である。
【図2】図2は、本実施の形態に係るIII族窒化物半導体レーザ素子の活性層からの光の偏光を示す図面である。
【図3】図3は、c軸及びm軸によって規定される断面を模式的に示す図面である。
【図4】図4は、本実施の形態に係るIII族窒化物半導体レーザ素子を作製する方法の主要な工程を示す図面である。
【図5】図5は、本実施の形態に係るIII族窒化物半導体レーザ素子を作製する方法の主要な工程を模式的に示す図面である。
【図6】図6は、パッド電極及びオーミック電極の配列を示す図面である。
【図7】図7は、実施例2に示されたレーザーダイオードの構造を示す図面である。
【図8】図8は、結晶格子における{20−21}面及びレーザ端面を示す図面である。
【図9】図9は、構造(A)及び構造(B)の割断面上に成長した誘電体多層膜の走査型電子顕微鏡像を示す図面である。
【図10】図10は、半導体領域上のパッド電極破断面上に成膜された誘電体の断面を示す図である。
【図11】図11は、割断面の半導体領域上に形成された段差の電子顕微鏡像を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の知見は、例示として示された添付図面を参照して以下の詳細な記述を考慮することによって容易に理解できる。引き続いて、添付図面を参照しながら、本発明のIII族窒化物半導体レーザ素子、及びIII族窒化物半導体レーザ素子を作製する方法に係る実施の形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付する。
【0041】
図1は、本実施の形態に係るIII族窒化物半導体レーザ素子の構造を概略的に示す図面である。III族窒化物半導体レーザ素子11は、リッジ構造を有するけれども、本発明の実施の形態は、リッジ構造に限定されるものではない。III族窒化物半導体レーザ素子11は、レーザ構造体13及び電極15を備える。レーザ構造体13は、支持基体17及び半導体領域19を含む。支持基体17は、六方晶系III族窒化物半導体からなり、また半極性主面17a及び裏面17bを有する。半導体領域19は、支持基体17の半極性主面17a上に設けられている。電極15は、レーザ構造体13の半導体領域19上に設けられる。半導体領域19は、第1のクラッド層21と、第2のクラッド層23と、活性層25とを含む。第1のクラッド層21は、第1導電型の窒化ガリウム系半導体からなり、例えばn型AlGaN、n型InAlGaN等からなる。第2のクラッド層23は、第2導電型の窒化ガリウム系半導体からなり、例えばp型AlGaN、p型InAlGaN等からなる。活性層25は、第1のクラッド層21と第2のクラッド層23との間に設けられる。活性層25は窒化ガリウム系半導体層を含み、この窒化ガリウム系半導体層は例えば井戸層25aである。活性層25は窒化ガリウム系半導体からなる障壁層25bを含み、井戸層25a及び障壁層25bは交互に配列されている。井戸層25aは、例えばInGaN等からなり、障壁層25bは例えばGaN、InGaN等からなる。活性層25は、例えば波長360nm以上600nm以下の光を発生するように設けられた発光領域を含むことができる。第1のクラッド層21、第2のクラッド層23及び活性層25は、半極性主面17aの法線軸NXに沿って配列されている。レーザ構造体13は、光共振器のための第1の割断面27及び第2の割断面29を含む。支持基体17の六方晶系III族窒化物半導体のc軸は、第1の割断面27から第2の割断面29への方向に延在する導波路軸の方向に半極性主面17aの法線軸NXに対して角度ALPHAで傾斜する。
【0042】
III族窒化物半導体レーザ素子11は、絶縁膜31を更に備える。絶縁膜31はレーザ構造体13の半導体領域19の表面19aを覆っており、半導体領域19は絶縁膜31と支持基体17との間に位置する。レーザ構造体13の第1の割断面27及び第2の割断面29は、六方晶系III族窒化物半導体のm軸及び法線軸NXによって規定されるm−n面に交差する。絶縁膜31の一端部のエッジは第1の割断面27に到達しており、また絶縁膜31の他端部のエッジは第2の割断面29に到達している。支持基体17は六方晶系III族窒化物半導体からなる。絶縁膜31は開口31aを有し、開口31aは半導体領域19の表面19aと上記のm−n面との交差線LIXの方向に延在し、例えばストライプ形状を成す。電極15は、開口31aを介して半導体領域19の表面19a(例えば第2導電型のコンタクト層33)に接触を成しており、上記の交差線LIXの方向に延在する。III族窒化物半導体レーザ素子11では、レーザ導波路は、第1のクラッド層21、第2のクラッド層23及び活性層25を含み、また上記の交差線LIXの方向に延在する。
【0043】
半導体領域19は、第1、第2及び第3領域19b、19c、19dを含み、第1〜第3領域19b〜19dは、導波路軸(導波路ベクトルLGVで表される軸)の方向に延在する。この導波路軸は、第1の端面27から第2の端面29への方向を示すに沿って延在する。第3領域19dは第1領域19bと第2領域19cとの間に設けられる。絶縁膜31の開口31aは半導体領域19の第3領域19d上に位置する。第3領域19dは半導体領域19のリッジ構造を含むことができる。
【0044】
電極15は、オーミック電極16及びパッド電極18を含む。オーミック電極16は、絶縁膜31の開口31aを介して半導体領域19の第3領域19dにオーミック接触を成す。パッド電極18は第1、第2及び第3電極部18b、18c、18dを含み、第1〜第3電極部18b〜18dは、半導体領域19の第1〜第3領域19b〜19d上にそれぞれ設けられている。オーミック電極16は例えばPdを含むことができる。Pd電極は、酸化性に富む半極性面においても電気的接触を提供できる。パッド電極18は例えばTi/Pt/Auからなることができる。
【0045】
第1電極部18bは第1アーム部18b_ARM1を有し、このアーム部18b_ARM1は割断面27の縁に到達する。第3電極部18dは第1の端面27の縁13cから離れている。また、本実施例では、第2電極部18cは第2アーム部18c_ARM1を有することができ、このアーム部18c_ARM1は第1の端面27の縁に到達する。
【0046】
第1電極部18bはアーム部18b_ARM2を有し、このアーム部18b_ARM2は割断面29の縁に到達する。また、第2電極部18cはアーム部18c_ARM2を有することができ、このアーム部18c_ARM2は第2の端面29の縁に到達する。
【0047】
III族窒化物半導体レーザ素子11は、図1に示されるように、第1及び第2の割断面27、29それぞれに設けられた誘電体多層膜43、44を更に備える。割断面27、29にも端面コートを適用できる。端面コートにより反射率を調整できる。
【0048】
誘電体多層膜43は、支持基体17の一端面及び半導体領域19の一端面上に設けられ、これらの端面は割断面27を構成する。誘電体多層膜43のための堆積物は、電極15(パッド電極18)の一端面上にも設けられる。また、誘電体多層膜44は、支持基体17の他端面及び半導体領域19の他端面上に設けられ、これらの端面は割断面29を構成する。誘電体多層膜44のための堆積物は、電極15(パッド電極18)の他端面上に設けられる。
【0049】
このIII族窒化物半導体レーザ素子11によれば、電極15はオーミック電極16及びパッド電極18を含む。このオーミック電極16は絶縁膜31の開口31aを介して半導体領域19の第3領域19dに接触を成す。一方、パッド電極18は、半導体領域19の第1〜第3領域19b〜19d上にそれぞれ設けられた第1、第2及び第3電極部15b〜15dを含む。第1電極部15bにおける第1アーム部18b_ARM1は、当該III族窒化物半導体レーザ素子11おける第1の端面19bの縁に到達する。これ故に、半導体領域19における第3領域19dに隣接する第1領域19bにおいて、熱放散がパッド電極18を介して可能になる。また、半導体領域19においてレーザの主要動作を行う第3領域19dは第1の割断面27に到達する一方で、この第1の割断面27の縁から第3電極部15dが離れている。これ故に、第3領域19dが到達する端部27において、パッド電極18の辺に起因する誘電体異常成長の影響が低減される。
【0050】
また、パッド電極18が割断面27のリッジ構造の周囲に設けられるので、パッド電極10のアーム部に働きによる放熱効果のため、レーザ端面及びその付近における温度上昇を防げる。これにより端面コート劣化やCODを抑制でき、レーザ素子の長寿命化が可能になる。
【0051】
オーミック電極16の厚さは例えば20nm〜100nm程度であり、パッド電極18の厚さは例えば0.2μm〜1μm程度である。誘電体多層膜43(誘電体多層膜44も同様に)は、電極15の端面上にも成長され、特にオーミック電極16に比べて厚いパッド電極18の端面に、誘電体多層膜の異常成長が生じやすい。このため、レーザ動作を行う光導波路を含む半導体領域19内の部分領域19dの直上に位置するオーミック電極16上に、パッド電極18を設けない。該領域19dに隣接する半導体領域19内の他の領域19b、19cの少なくともいずれか一方上に、パッド電極19のアーム部を設けている。このアーム部を介して、レーザ動作を行う光導波路を含む領域19dにおいて発生される熱を放散される。
【0052】
電極15からの電流は、導波路軸に沿った半導体領域部分19dにリッジ構造を介して案内される。リッジ構造が到達する端面の部分に位置合わせして、第3電極部18dを設けることが好ましい。
【0053】
パッド電極18の一部に切り欠きがあり、リッジ部周囲でパッド電極18が割断面27、29から離れている。反射率を上げるために酸化膜蒸着による端面コートを行う場合、平坦な半導体面上には平坦な誘電体多層膜が成長されるけれども、パッド電極18上では三次元核成長になり平坦な膜が得られない。パッド電極18の端面上に堆積される誘電体と平坦な誘電体多層膜部との品質差(結晶性、温度特性)により、コート膜のひび割れやはがれが起こり、素子動作の不良を引き起こす可能性を高める。本実施の形態のようなパッド電極を形成した場合、特に温度が上がりやすいリッジ部周辺で三次元核成長が抑制でき、コート膜品質が維持できる。
【0054】
活性層25は、波長500nm以上の光を発生するように設けられた量子井戸構造を含むことができる。半極性面の利用により、波長500nm以上550nm以下の光の発生に好適である。
【0055】
このIII族窒化物半導体レーザ素子11によれば、500nm以上の発振波長を得るためには、活性層25のInGaN層は0.2以上のインジウム組成を有することが必要となる。インジウム組成が増加すると、InGaNの格子定数が増大し、この結果、InGaN層が格子ひずみを内包する。活性層25及びその近傍の半導体層における応力が増大するとき、光共振器のための端面27、29を形成する際に割断において、該端面27、29が屈曲することがある。このような屈曲があると、パッド電極18の端面において三次元角成長をきっかけとして、大きなエリアに異常成長が生じることがある。しかし、主要なレーザ動作を行う第3領域19dではパッド電極18の端面に起因する異常成長が低減されるので、光共振器のための端面27、29における上記のような屈曲が誘電体の異常成長にまで発展する可能性を低減できる。
【0056】
図1を参照すると、直交座標系S及び結晶座標系CRが描かれている。法線軸NXは、直交座標系SのZ軸の方向に向く。半極性主面17aは、直交座標系SのX軸及びY軸により規定される所定の平面に平行に延在する。また、図1には、代表的なc面Scが描かれている。支持基体17の六方晶系III族窒化物半導体のc軸は、六方晶系III族窒化物半導体のm軸の方向に法線軸NXに対してゼロより大きい角度ALPHAで傾斜している。
【0057】
III族窒化物半導体レーザ素子11では、第1の割断面27及び第2の割断面29は、本実施例では、六方晶系III族窒化物半導体のm軸及び法線軸NXによって規定されるm−n面に交差する。III族窒化物半導体レーザ素子11のレーザ共振器は第1及び第2の割断面27、29を含み、第1の割断面27及び第2の割断面29の一方から他方に、レーザ導波路が延在している。レーザ構造体13は第1の面13a及び第2の面13bを含み、第1の面13aは第2の面13bの反対側である。第1及び第2の割断面27、29は、第1の面13aの縁(エッジ)13cから第2の面13bの縁(エッジ)13dまで延在する。第1及び第2の割断面27、29は、c面、m面又はa面といったこれまでのへき開面とは異なる。
【0058】
このIII族窒化物半導体レーザ素子11によれば、レーザ共振器を構成する第1及び第2の割断面27、29がm−n面に交差する。これ故に、m−n面と半極性面17aとの交差線の方向に延在するレーザ導波路を設けることができる。これ故に、III族窒化物半導体レーザ素子11は、低しきい値電流を可能にするレーザ共振器を有することになる。
【0059】
III族窒化物半導体レーザ素子11は、n側光ガイド層35及びp側光ガイド層37を含む。n側光ガイド層35は、第1の部分35a及び第2の部分35bを含み、n側光ガイド層35は例えばGaN、InGaN等からなる。p側光ガイド層37は、第1の部分37a及び第2の部分37bを含み、p側光ガイド層37は例えばGaN、InGaN等からなる。キャリアブロック層39は、例えば第1の部分37aと第2の部分37bとの間に設けられる。支持基体17の裏面17bには別の電極41が設けられ、電極41は例えば支持基体17の裏面17bを覆っている。
【0060】
図2は、III族窒化物半導体レーザ素子11の活性層25における発光の偏光を示す図面である。III族窒化物半導体レーザ素子における活性層におけるバンド構造では、バンド構造BANDのΓ点近傍では、伝導帯と価電子帯との間の可能な遷移は、3つある。Aバンド及びBバンドは比較的小さいエネルギ差である。伝導帯とAバンドとの遷移Eaによる発光はa軸方向に偏光しており、伝導帯とBバンドとの遷移Ebによる発光はc軸を主面に投影した方向に偏光している。レーザ発振に関して、遷移Eaのしきい値は遷移Ebのしきい値よりも小さい。このバンド構造を反映して、III族窒化物半導体レーザ素子11におけるLEDモードにおける光遷移には、2つのスペクトルが可能である。偏光度ρは(I1−I2)/(I1+I2)によって規定されるとき、LEDモードにおける光は、六方晶系III族窒化物半導体のa軸の方向の偏光成分I1と、六方晶系III族窒化物半導体のc軸を主面に投影した方向の偏光成分I2を含み、偏光成分I1は偏光成分I2よりも大きい。このIII族窒化物半導体レーザ素子11のレーザ共振器を用いて、LEDモードにおいて大きな発光強度のモードの光をレーザ発振させることができる。
【0061】
図2の(a)部に示されるように、活性層25からのレーザ光Lは六方晶系III族窒化物半導体のa軸の方向に偏光している。このIII族窒化物半導体レーザ素子11において、低しきい値電流を実現できるバンド遷移は偏光性を有する。レーザ共振器のための第1及び第2の割断面27、29は、c面、m面又はa面といったこれまでのへき開面とは異なる。しかしながら、第1及び第2の割断面27、29は共振器のための、ミラーとしての平坦性、垂直性を有する。これ故に、第1及び第2の割断面27、29とこれらの割断面27、29間に延在するレーザ導波路とを用いて、図2の(a)部に示されるように、c軸を主面に投影した方向に偏光する遷移Ebの発光よりも強い遷移Eaの発光を利用して低しきい値のレーザ発振が可能になる。
【0062】
図3は、c軸及びm軸によって規定される断面を模式的に示す図面である。図2の(b)部を参照すると、III族窒化物半導体レーザ素子11では、第1及び第2の割断面27、29の各々には、支持基体17の端面17c及び半導体領域19の端面19cが現れており、端面17c及び端面19cは誘電体多層膜43で覆われている。支持基体17の端面17c及び活性層25における端面25cの法線ベクトルNAと活性層25のm軸ベクトルMAとの成す角度BETAが規定される。この角度BETAは、III族窒化物半導体のc軸及びm軸によって規定される第1平面S1において規定される成分(BETA)1と、第1平面S1及び法線軸NXに直交する第2平面S2において規定される成分(BETA)2とによって規定される。ここで、BETA2=(BETA)12+(BETA)22である。成分(BETA)1は、III族窒化物半導体のc軸及びm軸によって規定される第1平面S1において(ALPHA−5)度以上(ALPHA+5)度以下の範囲であることが好ましい。この角度範囲は、図3において、代表的なm面SMと参照面FAとの成す角度として示されている。代表的なm面SMが、理解を容易にするために、図3において、レーザ構造体の内側から外側にわたって描かれている。参照面FAは、活性層25の端面25cに沿って延在する。このIII族窒化物半導体レーザ素子11は、c軸及びm軸の一方から他方に取られる角度BETAに関して、上記の垂直性を満たす端面を有する。また、成分(BETA)2は第2平面S2において−5度以上+5度以下の範囲であることが好ましい。このとき、III族窒化物半導体レーザ素子11の端面27、29は、半極性面17aの法線軸NXに垂直な面において規定される角度に関して上記の垂直性を満たす。
【0063】
再び図1を参照すると、III族窒化物半導体レーザ素子11では、支持基体17の厚さDSUBは400μm以下であることが好ましい。このIII族窒化物半導体レーザ素子では、レーザ共振器のための良質な割断面を得るために好適である。III族窒化物半導体レーザ素子11では、支持基体17の厚さDSUBは50μm以上100μm以下であることが更に好ましい。このIII族窒化物半導体レーザ素子11では、レーザ共振器のための良質な割断面を得るために更に好適である。また、ハンドリングが容易になり、生産歩留まりを向上させることができる。
【0064】
III族窒化物半導体レーザ素子11では、法線軸NXと六方晶系III族窒化物半導体のc軸との成す角度ALPHAは45度以上であることが好ましく、また80度以下であることが好ましい。また、角度ALPHAは100度以上であることが好ましく、また135度以下であることが好ましい。45度未満及び135度を越える角度では、押圧により形成される端面がm面からなる可能性が高くなる。また、80度を越え100度未満の角度では、所望の平坦性及び垂直性が得られないおそれがある。
【0065】
III族窒化物半導体レーザ素子11では、更に好ましくは、法線軸NXと六方晶系III族窒化物半導体のc軸との成す角度ALPHAは63度以上であることが好ましく、また80度以下であることが好ましい。また、角度ALPHAは100度以上であることが好ましく、また117度以下であることが好ましい。63度未満及び117度を越える角度では、押圧により形成される端面の一部に、m面が出現する可能性がある。また、80度を越え100度未満の角度では、所望の平坦性及び垂直性が得られないおそれがある。
【0066】
半極性主面17aは、{20−21}面、{10−11}面、{20−2−1}面、及び{10−1−1}面のいずれかであることができる。更に、これらの面から−4度以上+4度以下の範囲で微傾斜した面も半極性主面として好適である。これら典型的な半極性面17aにおいて、当該III族窒化物半導体レーザ素子11のレーザ共振器を構成できる程度の十分な平坦性及び垂直性の第1及び第2の端面27、29を提供できる。また、これらの典型的な面方位にわたる角度の範囲において、十分な平坦性及び垂直性を示す端面が得られる。
【0067】
III族窒化物半導体レーザ素子11では、支持基体17は、GaN、AlN、AlGaN、InGaN及びInAlGaNのいずれかからなることができる。これらの窒化ガリウム系半導体からなる基板を用いるとき、共振器として利用可能な端面27、29を得ることができる。AlN又はAlGaN基板を用いるとき、偏光度を大きくでき、また低屈折率により光閉じ込めを強化できる。InGaN基板を用いるとき、基板と発光層との格子不整合率を小さくでき、結晶品質を向上できる。
【0068】
図4は、本実施の形態に係るIII族窒化物半導体レーザ素子を作製する方法の主要な工程を示す図面である。図5の(a)部を参照すると、基板51が示されている。工程S101では、III族窒化物半導体レーザ素子の作製のための基板51を準備する。基板51の六方晶系III族窒化物半導体のc軸(ベクトルVC)は、六方晶系III族窒化物半導体のm軸方向(ベクトルVM)に法線軸NXに対して有限な角度ALPHAで傾斜している。これ故に、基板51は、六方晶系III族窒化物半導体からなる半極性主面51aを有する。
【0069】
工程S102では、基板生産物SPを形成する。図5の(a)部では、基板生産物SPはほぼ円板形の部材として描かれているけれども、基板生産物SPの形状はこれに限定されるものではない。基板生産物SPを得るために、まず、工程S103では、レーザ構造体55を形成する。レーザ構造体55は、半導体領域53及び基板51を含んでおり、工程S103では、半導体領域53は半極性主面51a上に形成される。半導体領域53を形成するために、半極性主面51a上に、第1導電型の窒化ガリウム系半導体領域57、発光層59、及び第2導電型の窒化ガリウム系半導体領域61を順に成長する。窒化ガリウム系半導体領域57は例えばn型クラッド層を含み、窒化ガリウム系半導体領域61は例えばp型クラッド層を含むことができる。発光層59は窒化ガリウム系半導体領域57と窒化ガリウム系半導体領域61との間に設けられ、また活性層、光ガイド層及び電子ブロック層等を含むことができる。窒化ガリウム系半導体領域57、発光層59、及び第2導電型の窒化ガリウム系半導体領域61は、半極性主面51aの法線軸NXに沿って配列されている。これらの半導体層はエピタキシャル成長される。
【0070】
必要な場合は、半導体領域53にリッジ構造を形成することができ、リッジ構造はストライプ形状を成す。これに従えば、引き続く工程では、リッジ構造を形成すると共に、パターン形成されたオーミック電極とパターン形成されたパッド電極を形成する。半導体領域53上は、絶縁膜54で覆われている。絶縁膜54は例えばシリコン酸化物からなる。絶縁膜54は開口54aを有する。開口54aは例えばストライプ形状を成す。リッジ構造の形成から絶縁膜54の形成までの工程は、リフトオフ法を適用できる。この後に、パターン形成されたオーミック電極とパターン形成されたパッド電極を形成する。具体的には、工程S104では、レーザ構造体55上に、アノード電極58及びカソード電極60が形成される。また、基板51の裏面に電極を形成する前に、結晶成長に用いた基板の裏面を研磨して、所望の厚さDSUBの基板生産物SPを形成する。電極の形成では、例えばアノード電極58が半導体領域53上に形成されると共に、カソード電極60が基板51の裏面(研磨面)51b上に形成される。アノード電極58はオーミック電極58a及びパッド電極58bを含み、オーミック電極58aは絶縁膜54の開口54aを介して半導体領域53のコンタクト層に接触を成す。パッド電極58b及びオーミック電極58aは絶縁膜54上に形成される。アノード電極58はX軸方向に延在し、カソード電極60は裏面51bの全面を覆っている。これらの工程により、基板生産物SPが形成される。基板生産物SPは、第1の面63aと、これに反対側に位置する第2の面63bとを含む。半導体領域53は第1の面63aと基板51との間に位置する。
【0071】
オーミック電極58aは例えばPd、Ni/Au等からなり、オーミック電極58aの形成には例えばリフトオフ法が適用される。パッド電極58bは例えばTi/Au等からなり、パッド電極58bの形成には例えばフォトリソグラフィ法が適用される。図6は、基板生産物SPのアノード電極の配列及びリッジストライプの配列を示す図面である。オーミック電極58aは、図6に示されるように、例えば所定の軸の方向に延在するストライプ形状を有する。パッド電極58bは、図6に示されるように、所定の軸に交差する方向に配列された第1電極部AN1、第2の電極部AN2及び第3の電極部AN3を有する。第1電極部AN1及び第2電極部AN2は、所定の軸の方向に延在する。第3の電極部AN3は第1電極部AN1と第2電極部AN2との間に設けられる。第3の電極部AN3は、第1電極部AN1と第2電極部AN2との間に所定の間隔で配列される部分を有しており、この結果、第1電極部AN1と第2電極部AN2との間には開口が規定される。第1電極部AN1、第2の電極部AN2及び第3の電極部AN3はストライプ導電体を構成する。ストライプ導電体の間にはギャップGAPが設けられる。ストライプ導電体は所定の軸の方向に延在する一方で、所定の軸の方向に交差する方向(交差方向)に間隔GAPで配列される。ストライプ導電体は所定の間隔で配列された開口を有する。交差方向には、個々のストライプ導電体の開口が配列され、この開口の配列方向に延在し割断位置を示すラインBREAKが規定される。所定の間隔は例えばレーザ共振器長に関連している。ストライプ導電体の開口のサイズは例えば幅20μmであり、長さ20μmである。
【0072】
工程S105では、図5の(b)部に示されるように、基板生産物SPの第1の面63aをスクライブする。このスクライブは、レーザスクライバ10aを用いて行われる。スクライブによりスクライブ溝65aが形成される。図5の(b)部では、5つのスクライブ溝が既に形成されており、レーザビームLBを用いてスクライブ溝65bの形成が進められている。スクライブ溝65aの長さは、六方晶系III族窒化物半導体のa軸及び法線軸NXによって規定されるa−n面と第1の面63aとの交差線AISの長さよりも短く、交差線AISの一部分にレーザビームLBの照射が行われる。レーザビームLBの照射により、特定の方向に延在し半導体領域に到達する溝が第1の面63aに形成される。スクライブ溝65aは例えば基板生産物SPの一エッジに形成されることができる。
【0073】
工程S106では、図5の(c)部に示されるように、基板生産物SPの第2の面63bへの押圧により基板生産物SPの分離を行って、基板生産物SP1及びレーザバーLB1を形成する。押圧は、例えばブレード69といったブレイキング装置を用いて行われる。ブレード69は、一方向に延在するエッジ69aと、エッジ69aを規定する少なくとも2つのブレード面69b、69cを含む。また、基板生産物SP1の押圧は支持装置71上において行われる。支持装置70は、支持面70aと凹部70bとを含み、凹部70bは一方向に延在する。凹部71bは、支持面70aに形成されている。基板生産物SP1のスクライブ溝65aの向き及び位置を支持装置70の凹部70bの延在方向に合わせて、基板生産物SP1を支持装置70上において凹部70bに位置決めする。凹部70bの延在方向にブレイキング装置のエッジの向きを合わせて、第2の面63bに交差する方向からブレイキング装置のエッジを基板生産物SP1に押し当てる。交差方向は好ましくは第2の面63bにほぼ垂直方向である。これによって、基板生産物SPの分離を行って、基板生産物SP1及びレーザバーLB1を形成する。押し当てにより、第1及び第2の端面67a、67bを有するレーザバーLB1が形成され、これらの端面67a、67bは少なくとも発光層の一部は半導体レーザの共振ミラーに適用可能な程度の垂直性及び平坦性を有する。
【0074】
形成されたレーザバーLB1は、上記の分離により形成された第1及び第2の端面67a、67bを有し、端面67a、67bの各々は、第1の面63aから第2の面63bにまで延在する。これ故に、端面67a、67bは、当該III族窒化物半導体レーザ素子のレーザ共振器を構成し、XZ面に交差する。このXZ面は、六方晶系III族窒化物半導体のm軸及び法線軸NXによって規定されるm−n面に対応する。基板生産物は図6に示されたラインBREAKで分離される。端面67aでは、レーザストライプを規定する半導体部分の直上では、パッド電極が端面67aに到達していない。また、端面67bでは、レーザストライプを規定する半導体部分の直上では、パッド電極が端面67bに到達していない。
【0075】
この方法では、図5及び図6に示されるように、電極58はオーミック電極58a及びパッド電極58bを含む。このオーミック電極59aは絶縁膜54の開口54aを介して半導体領域の第3領域53dに接触を成す。一方、パッド電極58bは、半導体領域53の第1、第2及び第3領域53b、53c、53d上にそれぞれ設けられた第1、第2及び第3電極部56b、56c、56dを含む。第1電極部56bにおけるアーム部ARMは、当該III族窒化物半導体レーザ素子おける端面67a(或いは端面67b)の縁に到達する。これ故に、半導体領域53における第3領域53dに隣接する第1領域53bにおいて、熱放散がパッド電極58を介して可能になる。また、半導体領域53においてレーザの主要動作を行う第3領域53dは第1の端面67aに到達し、この第1の端面67aの縁から第3電極部56dが離れている。これ故に、第3領域53dが到達する端部において、パッド電極58bの辺に起因する誘電体異常成長の影響が低減される。
【0076】
また、この方法によれば、六方晶系III族窒化物半導体のa軸の方向に基板生産物SPの第1の面63aをスクライブした後に、基板生産物SPの第2の面63bへの押圧により基板生産物SPの分離を行って、新たな基板生産物SP1及びレーザバーLB1を形成する。これ故に、m−n面に交差するように、レーザバーLB1に第1及び第2の端面67a、67bが形成される。この端面形成によれば、第1及び第2の端面67a、67bに当該III族窒化物半導体レーザ素子のレーザ共振器を構成できる程度の十分な平坦性及び垂直性が提供される。
【0077】
また、この方法では、形成されたレーザ導波路は、六方晶系III族窒化物のc軸の傾斜の方向に延在している。ドライエッチング面を用いずに、このレーザ導波路を提供できる共振器ミラー端面を形成している。
【0078】
この方法によれば、基板生産物SP1の割断により、新たな基板生産物SP1及びレーザバーLB1が形成される。工程S107では、押圧による分離を繰り返して、多数のレーザバーを作製する。この割断は、レーザバーLB1の割断線BREAKに比べて短いスクライブ溝65aを用いて引き起こされる。
【0079】
工程S108では、オフセット構造のパッド電極を有するレーザバーLB1の端面67a、67bに誘電体多層膜を形成して、レーザバー生産物を形成する。端面67aでは、レーザストライプを規定する半導体部分の直上では、パッド電極が端面67aに到達していないので、この半導体部分の直上ではパッド電極端面における異常成長の発生が低減される。この半導体部分の両側に設けられた半導体部分の各直上には、パッド電極58bが端面67aに到達して、パッド電極58bのアーム部ARMを構成する。これらのアーム部ARMは、レーザストライプを規定する半導体部分において発生された熱の放散に役立つ。また、端面67bでは、レーザストライプを規定する半導体部分の直上では、パッド電極58bが端面67bに到達していない。この半導体部分の両側に設けられた半導体部分の各直上には、パッド電極58bが端面67bに到達して、パッド電極58bのアーム部ARMを構成する。これらのアーム部ARMは、レーザストライプを規定する半導体部分において発生された熱の放散に役立つ。工程S109では、このレーザバー生産物を個々の半導体レーザのチップに分離する。
【0080】
また、基板51は、GaN、AlN、AlGaN、InGaN及びInAlGaNのいずれかからなることができる。これらの窒化ガリウム系半導体からなる基板を用いるとき、レーザ共振器として利用可能な端面を得ることができる。基板51は好ましくはGaNからなる。
【0081】
基板生産物SPを形成する工程S104において、結晶成長に使用された半導体基板は、基板厚が400μm以下になるようにスライス又は研削といった加工が施され、第2の面63bが研磨により形成された加工面であることができる。この基板厚では、当該III族窒化物半導体レーザ素子のレーザ共振器を構成できる程度の十分な平坦性、垂直性又はイオンダメージの無い端面67a、67bを歩留まりよく形成できる。第2の面63bが研磨により形成された研磨面であり、研磨されて基板厚が100μm以下であれば更に好ましい。また、基板生産物SPを比較的容易に取り扱うためには、基板厚が50μm以上であることが好ましい。
【0082】
本実施の形態に係るレーザ端面の製造方法では、レーザバーLB1においても、図2を参照しながら説明された角度BETAが規定される。レーザバーLB1では、角度BETAの成分(BETA)1は、III族窒化物半導体のc軸及びm軸によって規定される第1平面(図2を参照した説明における第1平面S1に対応する面)において(ALPHA−5)度以上(ALPHA+5)度以下の範囲であることが好ましい。レーザバーLB1の端面67a、67bは、c軸及びm軸の一方から他方に取られる角度BETAの角度成分に関して上記の垂直性を満たす。また、角度BETAの成分(BETA)2は、第2平面(図2に示された第2平面S2に対応する面)において−5度以上+5度以下の範囲であることが好ましい。このとき、レーザバーLB1の端面67a、67bは、半極性面51aの法線軸NXに垂直な面において規定される角度BETAの角度成分に関して上記の垂直性を満たす。
【0083】
端面67a、67bは、半極性面51a上にエピタキシャルに成長された複数の窒化ガリウム系半導体層への押圧によるブレイクによって形成される。半極性面51a上へのエピタキシャル膜であるが故に、端面67a、67bは、これまで共振器ミラーとして用いられてきたc面、m面、又はa面といった低面指数のへき開面ではない。しかしながら、半極性面51a上へのエピタキシャル膜の積層のブレイクにおいて、端面67a、67bは、共振器ミラーとして適用可能な平坦性及び垂直性を有する。
【0084】
(実施例1)
以下の通り、半極性面GaN基板を準備し、割断面の垂直性を観察した。基板には、HVPE法で厚く成長した(0001)GaNインゴットからm軸方向に75度の角度で切り出した{20−21}面GaN基板を用いた。GaN基板の主面は鏡面仕上げであり、裏面は研削仕上げされた梨地状態であった。梨地状態の裏面側に、ダイヤモンドペンを用いて、c軸を基板主面に投影した方向に垂直にケガキ線を入れた後、押圧して基板を割断した。得られた割断面の垂直性を観察するため、走査型電子顕微鏡を用いてa面方向から基板を観察したとき、割断面は半極性主面に対して、平坦性及び垂直性を有することがわかる。
【0085】
(実施例2)
実施例1では、半極性{20−21}面を有するGaN基板において、c軸を基板主面に投影した方向に垂直にケガキ線を入れて押圧して得た割断面は、基板主面に対して平坦性及び垂直性を有することがわかった。そこでこの割断面をレーザの共振器としての有用性を調べるため、以下の通り、図7に示されるレーザーダイオードを有機金属気相成長法により成長した。原料にはトリメチルガリウム(TMGa)、トリメチルアルミニウム(TMAl)、トリメチルインジウム(TMIn)、アンモニア(NH3)、シラン(SiH4)を用いた。基板71を準備した。基板71には、HVPE法で厚く成長した(0001)GaNインゴットからm軸方向に0度から90度の範囲の角度でウェハスライス装置を用いて切り出し、m軸方向へのc軸の傾斜角度ALPHAが、0度から90度の範囲の所望のオフ角を有するGaN基板を作製した。例えば、75度の角度で切り出したとき、{20−21}面GaN基板が得られ、図8の(a)部に示される六方晶系の結晶格子において参照符号71aによって示されている。
【0086】
この基板71を反応炉内のサセプタ上に配置した後に、以下の成長手順でエピタキシャル層を成長した。摂氏900度で、厚さ1100nmのn型(Siドープ)InAlGaNクラッド層72を基板71上に成長し、In組成は0.03であり、Al組成は0.11である。摂氏1000度で、厚さ200nmのn型GaNガイド層73aを成長すると共に摂氏870度で厚さ100nmのアンドープInGaNガイド層73bを成長した後に、3周期のMQW74を成長した。GaN障壁層の成長温度は摂氏840度であり、InGaN井戸層の成長温度は摂氏740度である。GaN障壁層の厚さは10nmである。InGaN井戸層の厚さは3nmであり、In組成は0.30である。摂氏870度で厚さ100nmのアンドープInGaNガイド層75aを成長し、摂氏890度で厚さ20nmのp型(Mgドープ)AlGaNブロック層76を成長する。摂氏880度で厚さ200nmのp型GaNガイド層75bを成長した。摂氏880度で厚さ400nmのp型InAlGaNクラッド層77を成長し、In組成は0.03であり、Al組成は0.11である。摂氏880度で、厚さ50nmのp型GaNコンタクト層78を成長した。
【0087】
SiO2の絶縁膜79をコンタクト層78上に成膜した後に、フォトリソグラフィを用いて幅10μmのストライプ窓をウェットエッチングにより形成した。ここで、以下の2通りにストライプ方向のコンタクト窓を形成した。レーザストライプは、M方向(コンタクト窓がc軸及びm軸によって規定される所定の面に沿った方向)である。
【0088】
ストライプ窓を形成した後に、Ni/Auから成るp側電極80aとTi/Alから成るパッド電極80bを蒸着した。次いで、ダイヤモンドスラリーを用いてGaN基板(GaNウエハ)の裏面を研磨し、裏面がミラー状態の基板生産物を作製した。このとき、接触式膜厚計を用いて基板生産物の厚みを測定した。厚みの測定には、試料断面からの顕微鏡によっても行っても良い。顕微鏡には、光学顕微鏡や、走査型電子顕微鏡を用いることができる。GaN基板(GaNウエハ)の裏面(研磨面)にはTi/Al/Ti/Auから成るn側電極80cを蒸着により形成した。
【0089】
これら2種類のレーザストライプに対する共振器ミラーの作製には、波長355nmのYAGレーザを用いるレーザスクライバを用いた。スクライブ溝の形成条件として以下のものを用いた:レーザ光出力100mW;走査速度は5mm/s。形成されたスクライブ溝は、例えば、長さ30μm、幅10μm、深さ40μmの溝であった。800μmピッチで基板の絶縁膜開口箇所を通してエピ表面に直接レーザ光を照射することによって、スクライブ溝を形成した。共振器長は600μmとした。
【0090】
ブレードを用いて、共振ミラーを割断により作製した。基板裏側に押圧によりブレイクすることによって、レーザバーを作製した。より具体的に、{20−21}面のGaN基板について、図8の(a)部と図8の(b)部は結晶方位と割断面との関係を示している。図8の(a)部はレーザストライプを(1)M方向に設けた場合であり、半極性面71aと共にレーザ共振器のための端面81a、81bが示される。端面81a、81bは半極性面71aにほぼ直交しているが、従来のc面、m面又はa面等のこれまでのへき開面とは異なる。図8の(b)部はレーザストライプを(2)<11−20>方向に設けた場合であり、半極性面71aと共にレーザ共振器のための端面81c、81dが示される。端面81c、81dは半極性面71aにほぼ直交しており、a面から構成される。
【0091】
ブレイクによって形成された割断面を走査型電子顕微鏡で観察した結果によれば、端面顕著な凹凸は観察されない。このことから、割断面の平坦性(凹凸の大きさ)は、20nm以下と推定される。更に、割断面の試料表面に対する垂直性は、−5度〜+5度の範囲内であった。
【0092】
レーザバーの端面に真空蒸着法によって誘電体多層膜をコーティングした。誘電体多層膜は、SiO2とTiO2を交互に積層して構成した。膜厚はそれぞれ、50〜100nmの範囲で調整して、反射率の中心波長が500〜530nmの範囲になるように設計した。片側の反射面を10周期とし、反射率の設計値を約95%に設計し、もう片側の反射面を6周期とし、反射率の設計値を約80%とした。
【0093】
通電による評価を室温にて行った。電源には、パルス幅500ns、デューティ比0.1%のパルス電源を用い、表面電極に針を落として通電した。光出力測定の際には、レーザバー端面からの発光をフォトダイオードによって検出して、電流−光出力特性(I−L特性)を調べた。発光波長を測定する際には、レーザバー端面からの発光を光ファイバに通し、検出器にスペクトルアナライザを用いてスペクトル測定を行った。偏光状態を調べる際には、レーザバーからの発光に偏光板を通して回転させることで、偏光状態を調べた。LEDモード光を観測する際には、光ファイバをレーザバー表面側に配置することで、表面から放出される光を測定した。
【0094】
全てのレーザで発振後の偏光状態を確認した結果、a軸方向に偏光していることがわかった。発振波長は500〜530nmの波長範囲内にある。
【0095】
全てのレーザでLEDモード(自然放出光)の偏光状態を測定した。a軸の方向の偏光成分をI1、m軸を主面に投影した方向の偏光成分をI2とし、(I1−I2)/(I1+I2)を偏光度ρと定義した。こうして、求めた偏光度ρとしきい値電流密度の最小値の関係を調べた結果、偏光度が正の場合に、レーザストライプM方向のレーザでは、しきい値電流密度が大きく低下することがわかる。すなわち、偏光度が正(I1>I2)で、かつオフ方向に導波路を設けた場合に、しきい値電流密度が大幅に低下することがわかる。
【0096】
(実施例3)
実施例2の製造方法を用いてエピタキシャル基板を作製すると共に、p側電極及びn側電極を形成する。p側電極の形成では、2つの構造(A)及び(B)を作製する。
構造(A)では、本実施の形態において説明したように、パッド電極は2つのアーム部を有する(以下、「切り欠き有り構造」として参照する)。
構造(B)では、パッド電極の一辺は、全体に亘って、共振器のための端面に到達する(以下、「切り欠き無し構造」として参照する)。
これらの構造(A)及び構造(B)の端面に、Al2O3/TiO2の誘電体多層膜を成長した。一方側の端面の反射率は90%であり、他方側の端面の反射率は80%である。図9の(a)部は、構造(A)の割断面上に成長した誘電体多層膜の走査型電子顕微鏡像を示し、図9の(b)部は、構造(B)の割断面上に成長した誘電体多層膜の走査型電子顕微鏡像を示す。
【0097】
構造(B)では、図10に示されるように、割断面の半導体領域上に残るパッド電極の破断面上にも誘電体が成膜されており、この誘電体は成長異常を起こしている。成長異常の影響のため、レーザ導波路の端面において、意図した反射率の誘電体膜が得られない。
【0098】
構造(A)では、パッド電極のアーム部が割断面のエッジの一部に到達して電極端面を構成するけれども、構造(A)において割断面のエッジに位置する電極端面が、構造(B)に比べて短い。これ故に、構造(A)においては、誘電体多層膜の異常成長の発生頻度が低減される。構造(B)のレーザデバイスでは誘電体多層膜に異常成長が生じると、レーザ発振せず、誘電体多層膜の形成工程の後においては、構造(A)のレーザデバイスに対して構造(B)の歩留りが50%低下する。
【0099】
構造(A)及び構造(B)のレーザデバイスに、通電による寿命試験を行う。寿命試験の結果によれば、構造(A)のレーザデバイスのデバイス寿命は、構造(B)のレーザデバイスの寿命に比べて200%伸びる。
【0100】
半極性と誘電体多層膜の異常成長とについて説明する。半極性主面を有する基板を用いて半導体レーザ素子を作製するとき、発明者らの知見によれば、レーザバーの形成の際に割断面に段差が形成される。この段差は、レーザ構造体に含まれる複数の半導体層の界面に沿ってその一部分に形成される。この段差が形成されると、導波路軸に対する垂直からの割断面のズレを抑えて、発振歩留りを向上させることができる。図11は、ストライプ形状の電極STの端部付近におけるレーザ端面に拡大写真を示す。この端面における段差は、基板主面の延在する方向に沿った長さと、導波路軸の方向に沿った幅とによって規定される。段差の幅が80nmを超えるとき、電流注入による発熱が段差部分で生じて、図11に示されるように、端面コートにひび割れが発生する。このようなレーザデバイスは動作しなくなる。しかしながら、レーザデバイスが、部分的にオフセットされている切り欠き有り構造のパッド電極を有するとき、構造(A)は半極性基板で特に有利に働く。
【0101】
好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。
【産業上の利用可能性】
【0102】
以上説明したように、本実施の形態によれば、CODによる動作不良を低減できると共に放熱能力の低下も縮小できる構造を有するIII族窒化物半導体レーザ素子を提供できる。
【符号の説明】
【0103】
11…III族窒化物半導体レーザ素子、13…レーザ構造体、13a…第1の面、13b…第2の面、13c、13d…エッジ、15…電極、17…支持基体、17a…半極性主面、17b…支持基体裏面、17c…支持基体端面、19…半導体領域、19a…半導体領域表面、19c…半導体領域端面、21…第1のクラッド層、23…第2のクラッド層、25…活性層、25a…井戸層、25b…障壁層、27、29…割断面、ALPHA…角度、Sc…c面、NX…法線軸、31…絶縁膜、31a…絶縁膜開口、35…n側光ガイド層、37…p側光ガイド層、39…キャリアブロック層、41…電極、43、44…誘電体多層膜、MA…m軸ベクトル、BETA…角度、DSUB…支持基体厚さ、51…基板、51a…半極性主面、SP…基板生産物、57…窒化ガリウム系半導体領域、59…発光層、61…窒化ガリウム系半導体領域、53…半導体領域、54…絶縁膜、54a…絶縁膜開口、55…レーザ構造体、58…アノード電極、58a…オーミック電極、58b…パッド電極、60…カソード電極、63a…第1の面、63b…第2の面、10a…レーザスクライバ、65a…スクライブ溝、65b…スクライブ溝、LB…レーザビーム、SP1…基板生産物、LB1…レーザバー、69…ブレード、69a…エッジ、69b、69c…ブレード面、70…支持装置、70a…支持面、70b…凹部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
III族窒化物半導体レーザ素子であって、
六方晶系III族窒化物半導体からなる半極性主面を有する支持基体及び前記支持基体の前記半極性主面の上に設けられた半導体領域を含み、該III族窒化物半導体レーザ素子のレーザ共振器のための第1及び第2の端面を有するレーザ構造体と、
前記レーザ構造体の前記半導体領域の上に設けられた絶縁膜と、
前記レーザ構造体の前記半導体領域及び前記絶縁膜の上に設けられた電極と、
前記第1の端面および第2の端面の上に設けられた誘電体多層膜と、
を備え、
前記支持基体の前記六方晶系III族窒化物半導体のc軸は、前記第1の端面から前記第2の端面への方向に延在する導波路軸の方向に前記半極性主面の法線軸に対して角度ALPHAで傾斜しており、
前記半導体領域は、前記導波路軸の方向に延在する第1、第2及び第3領域を含み、
前記第3領域は前記第1領域と前記第2領域との間に設けられ、
前記半導体領域の前記第3領域は、第1導電型の窒化ガリウム系半導体からなる第1のクラッド層と、第2導電型の窒化ガリウム系半導体からなる第2のクラッド層と、前記第1のクラッド層と前記第2のクラッド層との間に設けられた活性層とを含み、
前記絶縁膜は、前記半導体領域の前記第3領域の上に開口を有し、
前記電極は、オーミック電極及びパッド電極を含み、
前記オーミック電極は、前記絶縁膜の前記開口を介して前記半導体領域の前記第3領域に接触を成し、
前記パッド電極は、前記半導体領域の前記第1、第2及び第3領域の上にそれぞれ設けられた第1、第2及び第3電極部を含み、
前記第1電極部は第1アーム部を有し、
前記第1アーム部は前記第1の端面の縁に到達すると共に、前記第3電極部は前記第1の端面の前記縁から離れている、III族窒化物半導体レーザ素子。
【請求項2】
前記角度ALPHAは、45度以上であり且つ80度以下、又は、100度以上であり且つ135度以下の範囲である、請求項1に記載されたIII族窒化物半導体レーザ素子。
【請求項3】
前記レーザ構造体は第1及び第2の面を含み、前記第1の面は前記第2の面の反対側の面であり、
前記第1及び第2の端面は、それぞれ前記第1の面のエッジから前記第2の面のエッジまで延在する、請求項1又は請求項2に記載されたIII族窒化物半導体レーザ素子。
【請求項4】
前記角度ALPHAは、63度以上であり且つ80度以下、又は、100度以上であり且つ117度以下の範囲である、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体レーザ素子。
【請求項5】
前記支持基体の厚さは400μm以下である、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体レーザ素子。
【請求項6】
前記支持基体の厚さは、50μm以上100μm以下である、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体レーザ素子。
【請求項7】
前記第1のクラッド層、前記第2のクラッド層及び前記活性層は、前記法線軸に沿って配列されており、
前記半導体領域の前記第3領域は、前記導波路軸にそって延在するリッジ構造を有する、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体レーザ素子。
【請求項8】
前記半極性主面は、{20−21}面、{10−11}面、{20−2−1}面、及び{10−1−1}面のいずれかの面から−4度以上+4度以下の範囲でオフした面である、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体レーザ素子。
【請求項9】
前記半極性主面は、{20−21}面、{10−11}面、{20−2−1}面、及び{10−1−1}面のいずれかである、請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体レーザ素子。
【請求項10】
前記支持基体は、GaN、AlGaN、AlN、InGaN及びInAlGaNのいずれかからなる、請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体レーザ素子。
【請求項11】
前記活性層は窒化ガリウム系半導体層を含み、
前記活性層は、波長500nm以上の光を発生するように設けられた発光領域を含む、請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体レーザ素子。
【請求項12】
前記支持基体の前記六方晶系III族窒化物半導体の前記c軸は、前記六方晶系III族窒化物半導体のm軸の方向に傾斜する、請求項1〜請求項11のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体レーザ素子。
【請求項13】
前記第1及び第2の端面の各々には、前記支持基体の端面及び前記半導体領域の端面が現れており、
前記半導体領域の前記活性層における端面と前記六方晶系III族窒化物半導体からなる支持基体のm軸に直交する参照面との成す角度は、前記III族窒化物半導体のc軸及びm軸によって規定される第1平面において(ALPHA−5)度以上(ALPHA+5)度以下の範囲の角度を成す、請求項1〜請求項12のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体レーザ素子。
【請求項14】
前記角度は、前記第1平面及び前記法線軸に直交する第2平面において−5度以上+5度以下の範囲になる、請求項13に記載されたIII族窒化物半導体レーザ素子。
【請求項15】
前記第2電極部は第2アーム部を有し、
前記第2アーム部は前記第1の端面の縁に到達する、請求項1〜請求項14のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体レーザ素子。
【請求項16】
前記オーミック電極はPdを含む、請求項1〜請求項15のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体レーザ素子。
【請求項17】
前記第1の端面はへき開面とは異なる、請求項1〜請求項16のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体レーザ素子。
【請求項1】
III族窒化物半導体レーザ素子であって、
六方晶系III族窒化物半導体からなる半極性主面を有する支持基体及び前記支持基体の前記半極性主面の上に設けられた半導体領域を含み、該III族窒化物半導体レーザ素子のレーザ共振器のための第1及び第2の端面を有するレーザ構造体と、
前記レーザ構造体の前記半導体領域の上に設けられた絶縁膜と、
前記レーザ構造体の前記半導体領域及び前記絶縁膜の上に設けられた電極と、
前記第1の端面および第2の端面の上に設けられた誘電体多層膜と、
を備え、
前記支持基体の前記六方晶系III族窒化物半導体のc軸は、前記第1の端面から前記第2の端面への方向に延在する導波路軸の方向に前記半極性主面の法線軸に対して角度ALPHAで傾斜しており、
前記半導体領域は、前記導波路軸の方向に延在する第1、第2及び第3領域を含み、
前記第3領域は前記第1領域と前記第2領域との間に設けられ、
前記半導体領域の前記第3領域は、第1導電型の窒化ガリウム系半導体からなる第1のクラッド層と、第2導電型の窒化ガリウム系半導体からなる第2のクラッド層と、前記第1のクラッド層と前記第2のクラッド層との間に設けられた活性層とを含み、
前記絶縁膜は、前記半導体領域の前記第3領域の上に開口を有し、
前記電極は、オーミック電極及びパッド電極を含み、
前記オーミック電極は、前記絶縁膜の前記開口を介して前記半導体領域の前記第3領域に接触を成し、
前記パッド電極は、前記半導体領域の前記第1、第2及び第3領域の上にそれぞれ設けられた第1、第2及び第3電極部を含み、
前記第1電極部は第1アーム部を有し、
前記第1アーム部は前記第1の端面の縁に到達すると共に、前記第3電極部は前記第1の端面の前記縁から離れている、III族窒化物半導体レーザ素子。
【請求項2】
前記角度ALPHAは、45度以上であり且つ80度以下、又は、100度以上であり且つ135度以下の範囲である、請求項1に記載されたIII族窒化物半導体レーザ素子。
【請求項3】
前記レーザ構造体は第1及び第2の面を含み、前記第1の面は前記第2の面の反対側の面であり、
前記第1及び第2の端面は、それぞれ前記第1の面のエッジから前記第2の面のエッジまで延在する、請求項1又は請求項2に記載されたIII族窒化物半導体レーザ素子。
【請求項4】
前記角度ALPHAは、63度以上であり且つ80度以下、又は、100度以上であり且つ117度以下の範囲である、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体レーザ素子。
【請求項5】
前記支持基体の厚さは400μm以下である、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体レーザ素子。
【請求項6】
前記支持基体の厚さは、50μm以上100μm以下である、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体レーザ素子。
【請求項7】
前記第1のクラッド層、前記第2のクラッド層及び前記活性層は、前記法線軸に沿って配列されており、
前記半導体領域の前記第3領域は、前記導波路軸にそって延在するリッジ構造を有する、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体レーザ素子。
【請求項8】
前記半極性主面は、{20−21}面、{10−11}面、{20−2−1}面、及び{10−1−1}面のいずれかの面から−4度以上+4度以下の範囲でオフした面である、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体レーザ素子。
【請求項9】
前記半極性主面は、{20−21}面、{10−11}面、{20−2−1}面、及び{10−1−1}面のいずれかである、請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体レーザ素子。
【請求項10】
前記支持基体は、GaN、AlGaN、AlN、InGaN及びInAlGaNのいずれかからなる、請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体レーザ素子。
【請求項11】
前記活性層は窒化ガリウム系半導体層を含み、
前記活性層は、波長500nm以上の光を発生するように設けられた発光領域を含む、請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体レーザ素子。
【請求項12】
前記支持基体の前記六方晶系III族窒化物半導体の前記c軸は、前記六方晶系III族窒化物半導体のm軸の方向に傾斜する、請求項1〜請求項11のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体レーザ素子。
【請求項13】
前記第1及び第2の端面の各々には、前記支持基体の端面及び前記半導体領域の端面が現れており、
前記半導体領域の前記活性層における端面と前記六方晶系III族窒化物半導体からなる支持基体のm軸に直交する参照面との成す角度は、前記III族窒化物半導体のc軸及びm軸によって規定される第1平面において(ALPHA−5)度以上(ALPHA+5)度以下の範囲の角度を成す、請求項1〜請求項12のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体レーザ素子。
【請求項14】
前記角度は、前記第1平面及び前記法線軸に直交する第2平面において−5度以上+5度以下の範囲になる、請求項13に記載されたIII族窒化物半導体レーザ素子。
【請求項15】
前記第2電極部は第2アーム部を有し、
前記第2アーム部は前記第1の端面の縁に到達する、請求項1〜請求項14のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体レーザ素子。
【請求項16】
前記オーミック電極はPdを含む、請求項1〜請求項15のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体レーザ素子。
【請求項17】
前記第1の端面はへき開面とは異なる、請求項1〜請求項16のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体レーザ素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図9】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図9】
【図11】
【公開番号】特開2013−46039(P2013−46039A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185196(P2011−185196)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【特許番号】特許第5054221号(P5054221)
【特許公報発行日】平成24年10月24日(2012.10.24)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【特許番号】特許第5054221号(P5054221)
【特許公報発行日】平成24年10月24日(2012.10.24)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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