III族窒化物半導体基板の製造方法
【課題】結晶性に優れたIII族窒化物半導体基板を製造することを課題とする。
【解決手段】c面よりa面方向もしくはm面方向に角度R(0°<R≦90°)となる傾斜面を有する酸化物基板、炭化物基板、またはIII族窒化物半導体基板を準備する工程と、前記準備した基板1を選択的にエッチングし、平坦面2と、平坦面2より突出している突起部3と、平坦面2より掘り下げられている溝部4と、を形成するエッチング工程と、エッチングされ、平坦面2、突起部3、および、溝部4が形成された基板1上に、III族窒化物をエピタキシャル成長する成長工程と、を有するIII族窒化物半導体基板の製造方法を提供する。
【解決手段】c面よりa面方向もしくはm面方向に角度R(0°<R≦90°)となる傾斜面を有する酸化物基板、炭化物基板、またはIII族窒化物半導体基板を準備する工程と、前記準備した基板1を選択的にエッチングし、平坦面2と、平坦面2より突出している突起部3と、平坦面2より掘り下げられている溝部4と、を形成するエッチング工程と、エッチングされ、平坦面2、突起部3、および、溝部4が形成された基板1上に、III族窒化物をエピタキシャル成長する成長工程と、を有するIII族窒化物半導体基板の製造方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、III族窒化物半導体基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
III族窒化物半導体(AlxGa1−x−yInyN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1))は、優れた物理的・化学的特徴を有するため様々な用途向けに研究がなされ、例えば半導体レーザなどの用途では既に実用化されている。
【0003】
このようなIII族窒化物半導体の単結晶を製造する方法としてはエピタキシャル成長が利用されるが、大型で、結晶欠陥の少ない単結晶を製造するのは難しく、様々な研究が多数なされている。
【0004】
また、上述したエピタキシャル成長はサファイヤ基板等の異種基板上に行われる場合があるが、異種基板上に極性面であるc面窒化物結晶成長を行うと、ヘテロ接合面の格子不整合等に起因する内部電界が存在することとなり、内部量子効率の低下などの問題が発生する。このような理由などから、無極性面窒化物結晶成長に関する研究が多数なされている。
【0005】
ここで、特許文献1には、図16に示すように、R面サファイヤ基板の主面上に、凹状の溝部と、凸状のテラス部とを交互に設け、この主面上にIII族窒化物半導体をエピタキシャル成長させる技術が記載されている。この技術によれば、成長方位依存性により、溝部の底からの成長よりも側壁からの選択横方向成長(c軸方向成長)が促進され、このような選択横方向成長により溝部を埋めた後に、R面サファイヤ基板に対して垂直方向にも成長していくことで、a軸配向したIII族窒化物半導体が得られると記載されている。そして、このようなエピタキシャル成長によれば、初期成長では溝部の側壁から横方向に成長するので、転位は横方向に伝搬し、結果、膜厚方向に伸びる貫通転位を減少させることができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−232640号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Japanese Journal of Applied Physics 47(2008)119-123
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術の場合、テラス部の角において結晶欠陥が発生しやすく、改善の余地が残る。
【0009】
以上のような状況に鑑み、本発明では、結晶性に優れたIII族窒化物半導体基板を製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、c面よりa面方向もしくはm面方向に角度R(0°<R≦90°)となる傾斜面を有する酸化物基板、炭化物基板、またはIII族窒化物半導体基板を準備する工程と、前記基板を選択的にエッチングし、平坦面と、前記平坦面より突出している突起部と、前記平坦面より掘り下げられている溝部とを形成するエッチング工程と、前記エッチングされた前記基板上にIII族窒化物を成長する成長工程とを有するIII族窒化物半導体基板の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明のIII族窒化物半導体基板の製造方法によれば、結晶性に優れたIII族窒化物半導体基板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態の平坦面、突起部および溝部の断面の一例を模式的に示す図である。
【図2】本実施形態の平坦面、突起部および溝部の断面の一例を模式的に示す図である。
【図3】本実施形態の平坦面、突起部および溝部の平面の一例を模式的に示す図である。
【図4】本実施形態の平坦面、突起部および溝部の平面の一例を模式的に示す図である。
【図5】本実施形態の平坦面、突起部および溝部の平面の一例を模式的に示す図である。
【図6】本実施形態の平坦面、突起部および溝部の平面の一例を模式的に示す図である。
【図7】本実施形態の平坦面、突起部および溝部の平面を形成する工程の一例を模式的に示す図である。
【図8】所定時間ドライエッチングした後の、基板の断面形状を示す走査電子顕微鏡像である。
【図9】本実施例により得られたGaN結晶を示す図である。
【図10】本実施例により得られたGaN結晶と基板を構成するサファイヤ結晶との結晶方位関係を示す図である。
【図11】X線ロッキングカーブ測定におけるX線入射方向を示す図である。
【図12】本実施例のX線ロッキングカーブ測定の結果である。
【図13】比較例により得られたGaN結晶を示す図である。
【図14】比較例のX線ロッキングカーブ測定の結果である。
【図15】本実施形態の平坦面、突起部および溝部の断面の一例を模式的に示す図である。
【図16】従来の結晶成長を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のIII族窒化物半導体基板の製造方法の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
本実施形態のIII族窒化物半導体基板の製造方法は、(1)c面よりa面方向もしくはm面方向に角度R(0°<R≦90°)の角度となる傾斜面を有する酸化物基板、炭化物基板、またはIII族窒化物半導体基板を準備する工程と、(2)前記基板を選択的にエッチングし、平坦面と、前記平坦面より突出している突起部と、前記平坦面より掘り下げられている溝部を形成するエッチング工程と、(3)前記エッチングされた前記基板上に、III族窒化物を成長する成長工程を有する。以下、各工程について説明する。
【0015】
(1)基板を準備する工程
本工程で準備する基板は、c面よりa面方向もしくはm面方向に角度R(0°<R≦90°)の角度となる傾斜面を有する酸化物基板、炭化物基板、またはIII族窒化物半導体基板であれば特段制限されない。例えば、R面サファイヤ基板、a面GaN基板、または、{11−22}面GaN基板、同様の面を有するSiC基板、LiAlO2基板、LiGaO2基板などを選択することができる。
【0016】
(2)エッチング工程
本工程では、上記(1)工程で準備した基板の表面を選択的にエッチングし、平坦面と、前記平坦面より突出している突起部と、前記平坦面より掘り下げられている溝部と、を形成する。1つの基板上に形成する平坦面、突起部、および溝部の数は制限されないが、製造効率等を考慮すると、複数形成するのが好ましい。
【0017】
まず、本工程で形成される平坦面、突起部および溝部の構成について説明する。
【0018】
図1に、エッチング工程後の基板の断面形状の一例を模式的に示す。図1に示すように、エッチング工程後の基板1には、平坦面2と、突起部3と、突起部3に近接して溝部4が形成される。基板1を断面視した際の突起部3および溝部4の形状は図1に示すものに限定されず、あらゆる形状とすることができる。すなわち、本実施形態の突起部3および溝部4の側壁は、基板1の面(平坦面2)に対して垂直になる必要はなく、基板1の面(平坦面2)に対して垂直な面から所定角度R(0°<R<90°)傾いていてもよい。また、図1では突起部3の両サイドに溝部4が設けられているが、このような構成に限定されず、1つの溝部4が突起部3に近接して設けられてもよい。
【0019】
なお、突起部3および溝部4の位置関係は、以下のようにするのが望ましい。
【0020】
すなわち、第1の突起部3の高さをhとし、第1の突起部3と第1の溝部4(図1中、左側の溝部4)の間に介在する平坦面2の第1の突起部3と第1の溝部4とを結ぶ方向の長さをlとした時、h>lの関係、より好ましくはh/2>lを満たすのが望ましい。例えば、図2に示すように、第1の突起部3と第1の溝部4とは、平坦面2を介さず繋がっていてもよい(l=0)。第1の突起部3に対して上記関係を満たす第1の溝部4は少なくとも1つ存在するのが好ましく、複数存在してもよい。上記位置関係を満たす場合、後に説明する成長工程において、第1の突起部3が第1の溝部4内に原料ガスを導くガイドとして効果的に機能すると考えられる。
【0021】
次に、本実施形態の平坦面2、突起部3および溝部4の平面形状について説明するが、これについても特段制限されず、あらゆる形状とすることができる。ここで、図3および図4に、図1に示すような断面形状を有する基板1の平面図の一例を模式的に示す。また、図5および図6に、図2に示すような断面形状を有する基板1の平面図の一例を模式的に示す。
【0022】
図3および図5に示すように、平坦面2、突起部3および溝部4はストライプ形状を形成していてもよい。なお、図示する各ラインの幅はあくまで一例であり、本実施形態は図3および図5に示す関係に限定されない。すなわち、図示するように各ラインの幅はバラバラであってもよいし、または、規則正しく同じ幅のラインが形成されてもよい。その他の平面形状としては、図4および図6に示すように、突起部3はドット形状に形成されてもよい。かかる場合、平坦面2および溝部4は、ドット形状の周囲の一部または全部に近接して設けられることで、図1または図2に示すような断面形状が得られる。例えば、平坦面2および溝部4は、突起部3の周囲を取り囲むように形成されてもよい(図4および図6中、上側に示す状態)。なお、突起部3のドット形状としては、図示する正方形に限定されず、その他の四角形、その他の多角形、円形、楕円形など、あらゆる形状とすることができ、また、これらが1つの基板1上に混在していてもよい。また、複数のドット形状の大きさはすべて同一であってもよいし、ばらばらであってもよい。
【0023】
なお、図3乃至図6に示す例では、異なる幅または大きさの平坦面2、突起部3および溝部4が不規則に配列しているが本実施形態はこのような構成に限定されず、同じ幅または大きさの複数の平坦面2、同じ幅または大きさの複数の突起部3および同じ幅または大きさの複数の溝部4が規則正しく周期的に配列していてもよい。
【0024】
次に、本実施形態の平坦面2、突起部3および溝部4の形成方法について説明する。
【0025】
本実施形態の平坦面2、突起部3および溝部4は、フォトリソグラフィおよびエッチングなどの技術を用いて容易に形成することができ、その手段は制限されない。
【0026】
例えば、(1)基板1上に、平坦面2および溝部4となる箇所に開口を有するフォトレジストパターンを形成、(2)次いで、ドライエッチングにより突起部3(エッチングされなかった箇所)を形成、(3)次いで、フォトレジストパターンを除去、(4)次いで、基板1上に溝部4となる箇所に開口を有するフォトレジストパターンを形成、(5)次いで、ドライエッチングにより溝部4(エッチングされた箇所)を形成、(6)次いで、フォトレジストパターンを除去、という工程を経ることで実現することができる。
【0027】
しかし、本発明者は、以下のような第1工程、第2工程および第3工程を有する形成方法によっても本実施形態の平坦面2、突起部3および溝部4を形成できることを見出した。そして、かかる手段の場合、上述の手段よりも工程数が少なくなり、作業効率が向上するという効果を奏する。以下、図7を用いて第1工程、第2工程および第3工程について説明する。図7は、製造工程を模式的に示す断面図である。
【0028】
第1工程では、図7(c)に示すように、基板1上に、所定のパターンを有する膜6´を形成する。膜6´は、ドライエッチング時に基板に対し高いエッチング選択比を取りうる性質を有するものであれば特段制限されず、Ni膜や、Ti膜,W膜,Mo膜,SiNx膜などとすることができる。
【0029】
このような第1工程はあらゆる技術を用いて実現できるが、例えば以下のような工程であってもよい。まず、図7(a)に示すように、基板1上にフォトレジストパターン5を形成する。このフォトレジストパターン5の幅mは、開口部の幅nよりも大きくするのが望ましい。この理由は以下で明らかになる。次に、図7(b)に示すように、フォトレジストパターン5の上から膜6を成膜する。例えばスパッタリング法を用いて膜6を成膜してもよい。その後、リフトオフにより、フォトレジストパターン5とともにその上に成膜された膜6を除去することで、図7(c)に示す状態を得る。
【0030】
第1工程の後に行われる第2工程では、膜6´をマスクとして基板1をドライエッチングする。このドライエッチングは、例えば、膜6´を一部または全部エッチングする条件で行われてもよい。膜6´を全部エッチングする条件でドライエッチングが行われた場合は、第2工程の後に、図7(d)に示す状態が得られる。また、それ以外の条件でドライエッチングが行われた場合は、第2工程の後に膜6´を除去する工程を経ることで、図7(d)に示す状態が得られる。かかる状態では、平坦面2および突起部3が形成されているが溝部4は形成されていない。なお、突起部3の側壁を基板1の面(平坦面2)に対して垂直にするのは手間を要するため、突起部3の側壁は図7(d)に示すように非垂直となる場合がある。
【0031】
第2工程の後に行われる第3工程は、膜6´が除去された後に行われ、所定時間、基板1の全面をエッチングする。エッチングの条件は、例えば、第2工程のドライエッチングの条件と同じにすることができる。
【0032】
図7(e)は、第3工程の後の基板1の状態を示す。図7(e)に示す状態では、平坦面2、突起部3および溝部4が形成されている。本発明者は、膜6´が除去された後、所定時間、基板1の全面をエッチングすることで、図7(e)に示す状態が得られことを見出した(以下の実施例で実際に得られた状態を表す走査電子顕微鏡像を示す)。
【0033】
ここで、膜6´を除去する手段は特段制限されないが、第2工程のドライエッチングを、膜6´を全部エッチングする条件で行う場合、第2工程のドライエッチングにより膜6´をもエッチングすることで除去してもよい。かかる場合、第2工程のドライエッチング、および、第3工程のエッチングを連続的に行うことが可能となり、作業効率が格段に向上する。その他の膜6´を除去する手段としては、第2工程と第3工程との間に、膜6´を例えばウェットエッチングなどにより除去する工程を設けることで実現してもよい。かかる場合、上記手段に比べて作業効率は落ちるが、第2工程のドライエッチングの間は膜6´が存在することとなり、結果、所望の大きさおよび形状の平坦面2、突起部3および溝部4を得ることが可能となる。いずれの手段を用いるかは、基板に対する要求性能などに応じて決定することができる。
【0034】
なお、図7(d)の状態から図7(e)の状態に移ると、平坦面2および突起部3の平面が削られ小さくなるが、上述したようにm>nの関係を満たしていると、平坦面2が維持されるので、好ましい。なお、第3工程の後には、突起部3は平面を有さなくてもよい。
【0035】
以上説明した手段の場合、膜6の種類および厚さ、ドライエッチングの時間、また、第3工程のエッチング時間などを変化させることで、平坦面2、突起部3および溝部4の形状や、突起部3の高さ、溝部4の深さなどを変化させることができる。
【0036】
次に、本発明者は、上記手段の変形例として、以下のような手段によっても本実施形態の平坦面2、突起部3および溝部4を形成できることを見出した。
【0037】
すなわち、まず、基板1上に、平坦面2および溝部4となる箇所に開口を有するフォトレジストパターンを形成する(m>n)。その後、ドライエッチングにより突起部3を形成し、次いで、フォトレジストパターンを除去する。ここまでの工程により、図7(d)に示す状態が得られる。その後、例えば上記エッチングと同じ条件で第2突起部3が形成された基板上をエッチングすることで、図7(e)に示す状態が得られる。
【0038】
(3)成長工程
本工程では、エッチングされ、平坦面2、突起部3および溝部4を形成された基板1上に、III族窒化物半導体をエピタキシャル成長する。
【0039】
III族窒化物の成長方法は特段制限されず、HVPE(ハイドライド気相成長)法、MOVPE(有機金属気相成長)法またはMBE(分子線エピタキシ)法を用いたあらゆる技術を適用して実現することができる。なお、成長条件は、加熱温度:1000℃以上1300℃以下、かつ、供給する原料比:V/III比=1以上15以下、とするのが好ましい。このようにすれば、結晶核が基板1上の随所で生成されてしまうのを抑制することができる。
【0040】
上記成長工程の後、従来技術を適用して、エピタキシャル成長したIII族窒化物半導体から基板1を除去する。
【0041】
次に、本実施形態のIII族窒化物半導体基板の製造方法による作用効果について説明する。
【0042】
本実施形態の製造方法によれば、平坦面2と溝部4の境界部からの選択的な結晶成長が促進され、基板1上の随所で結晶核が生成されるのを抑制することができ、結果、高品質な単結晶を得ることができる。平坦面2と溝部4の境界部からの結晶成長が促進される理由は明らかではないが、本実施形態の基板1の特徴的な表面構造が1つの要因であると考えられる。すなわち、平坦面2より突出した突起部3が基板1上に供給された原料ガスを溝部4内に導くガイドの役割を果していること、平坦面2と溝部4との境界付近に存在する微小傾斜部分に適度な密度の原子ステップが形成されるため、GaN結晶の成長核が発生し易くなっていることなどが考えられる。なお、平坦面2、突起部3および溝部4を上述した位置関係(h>l、または、h/2>l、特に、l=0)とした場合、突起部3による上記ガイドの機能はより効果的に実現され、結果、平坦面2と溝部4の境界付近からの選択的な結晶成長がより促進されると考えられる。
【0043】
また、本実施形態の製造方法によれば、突起部3や溝部4の角部における結晶欠陥を抑制することができる。この理由は明らかでないが、本実施形態における結晶成長核は平坦面2と溝部4の境界付近に選択的に生成するため、この部分から起きる初期のエピタキシャル成長は、特許文献1に記載された技術のように側壁から溝部4内を一方向に向かって成長する可能性は低い。すなわち、平坦面2と溝部4の境界付近を起点にして3次元的に成長すると考えられる。このため、溝部4内を埋めた後、横方向成長に切り替わる際、突起部3や溝部4の角部において成長方向が大きくシフトすることなく、結果、結晶欠陥が生じにくいと考えられる。なお、初期は3次元的に成長しても、溝部4を埋めた後には横方向成長するので、最終的には、平坦な面を有するIII族窒化物半導体を得ることができる。
【0044】
また、本実施形態の製造方法によれば、基板1を断面視した際の突起部3および溝部4の形状は特段制限されない。すなわち、基板1を加工して設ける突起部3および溝部4の側壁を基板1の面(平坦面2)に対して垂直にするなどの困難な制限がない。このため、容易に基板1を加工することができ、製造効率の向上および歩留まりの改善などが実現される。なお、本実施形態の製造方法の場合、基板1の加工において、平坦面2、突起部3および溝部4の位置関係に制限が設けられる場合があるが、このような位置関係は、基板1加工時のマスクとなる膜の形状を制御することで容易に実現できるほか、上述した第1工程および第2工程を有する方法およびこれに準じた手段を用いることで、容易に実現できる。これに対して、特許文献1に記載の技術の場合、R面サファイヤ基板に垂直な側壁を有する溝部およびテラス部を形成する必要があり、これを実現する手段として、フォトリソグラフィを利用した手段が記載されているが、化学的に安定なサファイヤの加工は難しく、垂直に近い側壁を有する溝部を形成するのは手間を要する。
【0045】
また、本実施形態の製造方法の一例である上記第1工程乃至第3工程を用いた手段であって、第2工程のドライエッチングを、膜6´を全部エッチングする条件で行う手段の場合、第2工程における基板1を加工するためのエッチング工程において、マスクとして用いられる膜6´をも除去するので、第2工程と、基板全面をエッチングする第3工程との間に、別途膜6´を除去する工程を設ける必要がない。すなわち、工程数を減らすことができ、製造効率の向上が実現される。なお、エッチング工程(第2工程)においてマスクとして用いられる膜6´が除去されてしまうと、所望のパターンを形成できなくなってしまう恐れがあるが、本実施形態の場合、基板1には平坦面2、突起部3および溝部4が形成されればよく、突起部3および溝部4の形状は特段制限されないので問題はない。
【実施例】
【0046】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。
【0047】
<実施例1>
<平坦面、突起部および溝部の形成>
【0048】
上述した第1工程および第2工程を有する手段を用いた。
【0049】
(1)基板の準備
厚さ430μmのR面サファイヤ基板を準備した。
【0050】
(2)基板の前処理
アルキルベンゼン、2−ブタノン、および、エタノールの順で各10分間ずつ、R面サファイヤ基板の超音波洗浄を行った。その後、基板を脱イオン水で流水洗浄し、次いで王水(塩酸:硝酸=1:1混合液)に60分間浸し、また、150℃の硫酸:りん酸=1:3混合液に30分間浸した。その後、基板を脱イオン水で5分間、超純水で10分間の流水洗浄し、窒素ブローにより乾燥した。
【0051】
(3)フォトレジストパターンの形成
まず、ドライオーブンを用いて上記前処理後のR面サファイヤ基板を乾燥した。その後、スピンコーターを用いてポジ型フォトレジストをR面サファイヤ基板全面に塗布し、次いで、ドライオーブンで30分間のプリベークを実施した。その後、フォトマスクと紫外線露光装置を用いてパターン露光した。ストライプマスクはレジスト幅5μm、開口部の幅2μmのものを使用した。なお、ストライプの方向がR面サファイヤ基板の<1−101>軸に直角となるように配置した。
【0052】
その後、フォトレジストの現像を行い、次いで、超純水を用いて10分間流水洗浄を行った。続いて、ドライオーブンを用いて30分間のポストベークを実施した。
【0053】
(4)Ni膜の成膜
フォトレジストパターンの上から、スパッタリング法によりNi膜を成膜した。スパッタ種はArを用い、室温で成膜した。膜厚は150nmとした。
【0054】
(5)リフトオフ
アセトンに浸漬してレジストを溶かし、その上に堆積していたNi膜をR面サファイヤ基板から剥離した。なお、マスク開口部に堆積していたNi膜は剥離されずに基板上に残った。その後、基板をエタノールを用いて10分間超音波洗浄し、その後超純水による流水洗浄を行った。
【0055】
以上の工程により、Ni膜の幅が2μm、基板表面露出幅が5μmの
ストライプ構造を表面に有するR面サファイヤ基板が得られた。
【0056】
(6)ドライエッチング
次いで、R面サファイヤ基板をRIE(Reactive Ion Etching)装置内に設置し、ドライエッチングを行った。ドライエッチングに用いたエッチングガスおよびガス流量は、Ar(15sccm)、Cl2(20sccm)、および、BCl3(30sccm)であり、バイアス電圧は800Vとした。
【0057】
<<結果>>
図8は、上記(6)ドライエッチングを9分間、18分間、45分間または90分間行った後の、R面サファイヤ基板の断面形状を示す走査電子顕微鏡像である。図8に示すように、ドライエッチング90分後には、R面サファイヤ基板の表面に、平坦面、突起部および溝部が形成されており、その位置関係は、図2および図7(e)に示したものと同様になっている。
【0058】
なお、Ni膜は、9分間のドライエッチング処理後には残存していたが、18分間のドライエッチング処理後には完全に消失していた。すなわち、Ni膜の膜厚を150nmとした場合、上記条件にて9分間から18分間のエッチングを行うことにより、Ni膜は消失することが分かる。以上より、上記条件を利用した場合には、エッチング時間を変化することで、平坦面、突起部および溝部の形状を変化できることが分かる。
【0059】
<III族窒化物半導体のエピタキシャル成長>
上述したように(6)ドライエッチングを90分間行うことにより平坦面、突起部および溝部を形成したR面サファイヤ基板上に、HVPE法を用いてGaNをエピタキシャル成長させた。成長条件は以下の通りである。
【0060】
成長温度 :1040℃
V/III比:NH3/HCl=900sccm/60sccm=15
成長時間 :47分
【0061】
<<結果>>
<1>
図9(1)および図9(2)は、初期成長後のGaN結晶を示す走査電子顕微鏡像である。図9(2)は、図9(1)の拡大図である。また、図9(3)は、初期成長後のGaN結晶を模式的に示してある。なお、図9(1)には、平坦面、突起部および溝部を示す線を書き加えている。
【0062】
図9(1)および図9(2)に示すように、突起部の図中右側の溝部と平坦面の境界付近から選択的に結晶核の生成・結晶成長が起こり(図中左側の溝部からは結晶成長せず)、この結晶は図中右側から左側に向かって結晶成長して、突起部を乗り越えようとしていることが分かる。この事実より、GaN結晶をエピタキシャル成長させる際、突起部のガイド機能により溝部付近に選択的に原料ガスが流入し、結果、溝部と平坦面の境界付近に形成された微小傾斜構造において、選択的に結晶核が生成し、結晶成長したと推測される。
【0063】
なお、突起部の右側の溝部と平坦面の境界付近にのみ選択的に結晶核の生成が起こる理由については、以下のように考えられる。
【0064】
図15は、本実施形態のエッチング工程後の基板の断面形状の一例を模式的に示した図である。図15に示すように、平坦面2と溝部4の境界は微視的には急峻ではなく、傾斜が連続的に変化している。その結果、突起部の右側の溝部・平坦面境界(傾斜角θがマイナス)にはGa極性面を有する原子ステップ端面が露出する。一方、突起部の左側の溝部・平坦面境界(傾斜角θがプラス)にはN極性面を有する原子ステップ端面が露出する。Ga極性面はN極性面に比べて成長が促進され易く(非特許文献1)、核発生も容易と考えられる。また、適度な傾斜角においては原子ステップ密度も適度となるため、核発生と平坦化成長が有利となる。結果的に、突起の右側の溝部・平坦面境界付近の、かつ、特定の傾斜角を有する極めて限定された領域のみで結晶核発生・成長が促進されたものと考えられる。
【0065】
なお、結晶成長したGaNと基板を構成するサファイヤとの結晶方位関係は図10に示す通りであり、GaNのm軸とサファイヤのa軸とが平行になる。
【0066】
<2>
次に、十分に結晶成長させた後、得られたGaN結晶からR面サファイヤ基板を除去し、GaN結晶の研磨を行った後、X線ロッキングカーブ(XRC)測定を実施した。測定時、図11に示す2つの方向からX線を入射した。結果を、図12に示す。図中に示す数字(375および447)は、ピーク半値幅(単位:arcsec)である。図示するように、2入射方向とも半値幅が同等であった。
【0067】
<比較例1>
実施例1と同様の工程を行い、上述した(6)ドライエッチングを9分間行うことで、平坦面および突起部を形成したR面サファイヤ基板を比較例1とし(図8参照)、実施例1と同様の手段を用いて、GaNをエピタキシャル成長させた。
【0068】
<<結果>>
<1>
図13は、初期成長後のGaN結晶を示す走査電子顕微鏡像である。図13から、突起部の両側の平坦面において、結晶成長していることが分かる。また、図13の上側の走査電子顕微鏡像では、図中左側から右側に向かって結晶が成長し、突起部を乗り越えようとしている様子が示されているが、図13の下側の走査電子顕微鏡像では、図中右側から左側に向かって結晶が成長し、突起部を乗り越えようとしている様子が示されている。
【0069】
<2>
次に、実施例1と同様にして、X線ロッキングカーブ(XRC)測定を実施した。結果を、図14に示す。図中に示す数字(668および980)は、ピーク半値幅(単位:arcsec)である。図示するように、入射方向により半値幅が大きく異なり、その差も大きいことが分かる。
【0070】
<まとめ>
実施例1および比較例1を比較すると、実施例1の方が、選択成長の観点で有利であることが分かる。また、実施例1の方が、結晶性改善に有利であることが分かる。
【符号の説明】
【0071】
1 基板
2 平坦面
3 突起部
4 溝部
5 フォトレジストパターン
6 膜
6´ 膜(パターン)
【技術分野】
【0001】
本発明は、III族窒化物半導体基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
III族窒化物半導体(AlxGa1−x−yInyN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1))は、優れた物理的・化学的特徴を有するため様々な用途向けに研究がなされ、例えば半導体レーザなどの用途では既に実用化されている。
【0003】
このようなIII族窒化物半導体の単結晶を製造する方法としてはエピタキシャル成長が利用されるが、大型で、結晶欠陥の少ない単結晶を製造するのは難しく、様々な研究が多数なされている。
【0004】
また、上述したエピタキシャル成長はサファイヤ基板等の異種基板上に行われる場合があるが、異種基板上に極性面であるc面窒化物結晶成長を行うと、ヘテロ接合面の格子不整合等に起因する内部電界が存在することとなり、内部量子効率の低下などの問題が発生する。このような理由などから、無極性面窒化物結晶成長に関する研究が多数なされている。
【0005】
ここで、特許文献1には、図16に示すように、R面サファイヤ基板の主面上に、凹状の溝部と、凸状のテラス部とを交互に設け、この主面上にIII族窒化物半導体をエピタキシャル成長させる技術が記載されている。この技術によれば、成長方位依存性により、溝部の底からの成長よりも側壁からの選択横方向成長(c軸方向成長)が促進され、このような選択横方向成長により溝部を埋めた後に、R面サファイヤ基板に対して垂直方向にも成長していくことで、a軸配向したIII族窒化物半導体が得られると記載されている。そして、このようなエピタキシャル成長によれば、初期成長では溝部の側壁から横方向に成長するので、転位は横方向に伝搬し、結果、膜厚方向に伸びる貫通転位を減少させることができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−232640号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Japanese Journal of Applied Physics 47(2008)119-123
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術の場合、テラス部の角において結晶欠陥が発生しやすく、改善の余地が残る。
【0009】
以上のような状況に鑑み、本発明では、結晶性に優れたIII族窒化物半導体基板を製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、c面よりa面方向もしくはm面方向に角度R(0°<R≦90°)となる傾斜面を有する酸化物基板、炭化物基板、またはIII族窒化物半導体基板を準備する工程と、前記基板を選択的にエッチングし、平坦面と、前記平坦面より突出している突起部と、前記平坦面より掘り下げられている溝部とを形成するエッチング工程と、前記エッチングされた前記基板上にIII族窒化物を成長する成長工程とを有するIII族窒化物半導体基板の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明のIII族窒化物半導体基板の製造方法によれば、結晶性に優れたIII族窒化物半導体基板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態の平坦面、突起部および溝部の断面の一例を模式的に示す図である。
【図2】本実施形態の平坦面、突起部および溝部の断面の一例を模式的に示す図である。
【図3】本実施形態の平坦面、突起部および溝部の平面の一例を模式的に示す図である。
【図4】本実施形態の平坦面、突起部および溝部の平面の一例を模式的に示す図である。
【図5】本実施形態の平坦面、突起部および溝部の平面の一例を模式的に示す図である。
【図6】本実施形態の平坦面、突起部および溝部の平面の一例を模式的に示す図である。
【図7】本実施形態の平坦面、突起部および溝部の平面を形成する工程の一例を模式的に示す図である。
【図8】所定時間ドライエッチングした後の、基板の断面形状を示す走査電子顕微鏡像である。
【図9】本実施例により得られたGaN結晶を示す図である。
【図10】本実施例により得られたGaN結晶と基板を構成するサファイヤ結晶との結晶方位関係を示す図である。
【図11】X線ロッキングカーブ測定におけるX線入射方向を示す図である。
【図12】本実施例のX線ロッキングカーブ測定の結果である。
【図13】比較例により得られたGaN結晶を示す図である。
【図14】比較例のX線ロッキングカーブ測定の結果である。
【図15】本実施形態の平坦面、突起部および溝部の断面の一例を模式的に示す図である。
【図16】従来の結晶成長を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のIII族窒化物半導体基板の製造方法の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
本実施形態のIII族窒化物半導体基板の製造方法は、(1)c面よりa面方向もしくはm面方向に角度R(0°<R≦90°)の角度となる傾斜面を有する酸化物基板、炭化物基板、またはIII族窒化物半導体基板を準備する工程と、(2)前記基板を選択的にエッチングし、平坦面と、前記平坦面より突出している突起部と、前記平坦面より掘り下げられている溝部を形成するエッチング工程と、(3)前記エッチングされた前記基板上に、III族窒化物を成長する成長工程を有する。以下、各工程について説明する。
【0015】
(1)基板を準備する工程
本工程で準備する基板は、c面よりa面方向もしくはm面方向に角度R(0°<R≦90°)の角度となる傾斜面を有する酸化物基板、炭化物基板、またはIII族窒化物半導体基板であれば特段制限されない。例えば、R面サファイヤ基板、a面GaN基板、または、{11−22}面GaN基板、同様の面を有するSiC基板、LiAlO2基板、LiGaO2基板などを選択することができる。
【0016】
(2)エッチング工程
本工程では、上記(1)工程で準備した基板の表面を選択的にエッチングし、平坦面と、前記平坦面より突出している突起部と、前記平坦面より掘り下げられている溝部と、を形成する。1つの基板上に形成する平坦面、突起部、および溝部の数は制限されないが、製造効率等を考慮すると、複数形成するのが好ましい。
【0017】
まず、本工程で形成される平坦面、突起部および溝部の構成について説明する。
【0018】
図1に、エッチング工程後の基板の断面形状の一例を模式的に示す。図1に示すように、エッチング工程後の基板1には、平坦面2と、突起部3と、突起部3に近接して溝部4が形成される。基板1を断面視した際の突起部3および溝部4の形状は図1に示すものに限定されず、あらゆる形状とすることができる。すなわち、本実施形態の突起部3および溝部4の側壁は、基板1の面(平坦面2)に対して垂直になる必要はなく、基板1の面(平坦面2)に対して垂直な面から所定角度R(0°<R<90°)傾いていてもよい。また、図1では突起部3の両サイドに溝部4が設けられているが、このような構成に限定されず、1つの溝部4が突起部3に近接して設けられてもよい。
【0019】
なお、突起部3および溝部4の位置関係は、以下のようにするのが望ましい。
【0020】
すなわち、第1の突起部3の高さをhとし、第1の突起部3と第1の溝部4(図1中、左側の溝部4)の間に介在する平坦面2の第1の突起部3と第1の溝部4とを結ぶ方向の長さをlとした時、h>lの関係、より好ましくはh/2>lを満たすのが望ましい。例えば、図2に示すように、第1の突起部3と第1の溝部4とは、平坦面2を介さず繋がっていてもよい(l=0)。第1の突起部3に対して上記関係を満たす第1の溝部4は少なくとも1つ存在するのが好ましく、複数存在してもよい。上記位置関係を満たす場合、後に説明する成長工程において、第1の突起部3が第1の溝部4内に原料ガスを導くガイドとして効果的に機能すると考えられる。
【0021】
次に、本実施形態の平坦面2、突起部3および溝部4の平面形状について説明するが、これについても特段制限されず、あらゆる形状とすることができる。ここで、図3および図4に、図1に示すような断面形状を有する基板1の平面図の一例を模式的に示す。また、図5および図6に、図2に示すような断面形状を有する基板1の平面図の一例を模式的に示す。
【0022】
図3および図5に示すように、平坦面2、突起部3および溝部4はストライプ形状を形成していてもよい。なお、図示する各ラインの幅はあくまで一例であり、本実施形態は図3および図5に示す関係に限定されない。すなわち、図示するように各ラインの幅はバラバラであってもよいし、または、規則正しく同じ幅のラインが形成されてもよい。その他の平面形状としては、図4および図6に示すように、突起部3はドット形状に形成されてもよい。かかる場合、平坦面2および溝部4は、ドット形状の周囲の一部または全部に近接して設けられることで、図1または図2に示すような断面形状が得られる。例えば、平坦面2および溝部4は、突起部3の周囲を取り囲むように形成されてもよい(図4および図6中、上側に示す状態)。なお、突起部3のドット形状としては、図示する正方形に限定されず、その他の四角形、その他の多角形、円形、楕円形など、あらゆる形状とすることができ、また、これらが1つの基板1上に混在していてもよい。また、複数のドット形状の大きさはすべて同一であってもよいし、ばらばらであってもよい。
【0023】
なお、図3乃至図6に示す例では、異なる幅または大きさの平坦面2、突起部3および溝部4が不規則に配列しているが本実施形態はこのような構成に限定されず、同じ幅または大きさの複数の平坦面2、同じ幅または大きさの複数の突起部3および同じ幅または大きさの複数の溝部4が規則正しく周期的に配列していてもよい。
【0024】
次に、本実施形態の平坦面2、突起部3および溝部4の形成方法について説明する。
【0025】
本実施形態の平坦面2、突起部3および溝部4は、フォトリソグラフィおよびエッチングなどの技術を用いて容易に形成することができ、その手段は制限されない。
【0026】
例えば、(1)基板1上に、平坦面2および溝部4となる箇所に開口を有するフォトレジストパターンを形成、(2)次いで、ドライエッチングにより突起部3(エッチングされなかった箇所)を形成、(3)次いで、フォトレジストパターンを除去、(4)次いで、基板1上に溝部4となる箇所に開口を有するフォトレジストパターンを形成、(5)次いで、ドライエッチングにより溝部4(エッチングされた箇所)を形成、(6)次いで、フォトレジストパターンを除去、という工程を経ることで実現することができる。
【0027】
しかし、本発明者は、以下のような第1工程、第2工程および第3工程を有する形成方法によっても本実施形態の平坦面2、突起部3および溝部4を形成できることを見出した。そして、かかる手段の場合、上述の手段よりも工程数が少なくなり、作業効率が向上するという効果を奏する。以下、図7を用いて第1工程、第2工程および第3工程について説明する。図7は、製造工程を模式的に示す断面図である。
【0028】
第1工程では、図7(c)に示すように、基板1上に、所定のパターンを有する膜6´を形成する。膜6´は、ドライエッチング時に基板に対し高いエッチング選択比を取りうる性質を有するものであれば特段制限されず、Ni膜や、Ti膜,W膜,Mo膜,SiNx膜などとすることができる。
【0029】
このような第1工程はあらゆる技術を用いて実現できるが、例えば以下のような工程であってもよい。まず、図7(a)に示すように、基板1上にフォトレジストパターン5を形成する。このフォトレジストパターン5の幅mは、開口部の幅nよりも大きくするのが望ましい。この理由は以下で明らかになる。次に、図7(b)に示すように、フォトレジストパターン5の上から膜6を成膜する。例えばスパッタリング法を用いて膜6を成膜してもよい。その後、リフトオフにより、フォトレジストパターン5とともにその上に成膜された膜6を除去することで、図7(c)に示す状態を得る。
【0030】
第1工程の後に行われる第2工程では、膜6´をマスクとして基板1をドライエッチングする。このドライエッチングは、例えば、膜6´を一部または全部エッチングする条件で行われてもよい。膜6´を全部エッチングする条件でドライエッチングが行われた場合は、第2工程の後に、図7(d)に示す状態が得られる。また、それ以外の条件でドライエッチングが行われた場合は、第2工程の後に膜6´を除去する工程を経ることで、図7(d)に示す状態が得られる。かかる状態では、平坦面2および突起部3が形成されているが溝部4は形成されていない。なお、突起部3の側壁を基板1の面(平坦面2)に対して垂直にするのは手間を要するため、突起部3の側壁は図7(d)に示すように非垂直となる場合がある。
【0031】
第2工程の後に行われる第3工程は、膜6´が除去された後に行われ、所定時間、基板1の全面をエッチングする。エッチングの条件は、例えば、第2工程のドライエッチングの条件と同じにすることができる。
【0032】
図7(e)は、第3工程の後の基板1の状態を示す。図7(e)に示す状態では、平坦面2、突起部3および溝部4が形成されている。本発明者は、膜6´が除去された後、所定時間、基板1の全面をエッチングすることで、図7(e)に示す状態が得られことを見出した(以下の実施例で実際に得られた状態を表す走査電子顕微鏡像を示す)。
【0033】
ここで、膜6´を除去する手段は特段制限されないが、第2工程のドライエッチングを、膜6´を全部エッチングする条件で行う場合、第2工程のドライエッチングにより膜6´をもエッチングすることで除去してもよい。かかる場合、第2工程のドライエッチング、および、第3工程のエッチングを連続的に行うことが可能となり、作業効率が格段に向上する。その他の膜6´を除去する手段としては、第2工程と第3工程との間に、膜6´を例えばウェットエッチングなどにより除去する工程を設けることで実現してもよい。かかる場合、上記手段に比べて作業効率は落ちるが、第2工程のドライエッチングの間は膜6´が存在することとなり、結果、所望の大きさおよび形状の平坦面2、突起部3および溝部4を得ることが可能となる。いずれの手段を用いるかは、基板に対する要求性能などに応じて決定することができる。
【0034】
なお、図7(d)の状態から図7(e)の状態に移ると、平坦面2および突起部3の平面が削られ小さくなるが、上述したようにm>nの関係を満たしていると、平坦面2が維持されるので、好ましい。なお、第3工程の後には、突起部3は平面を有さなくてもよい。
【0035】
以上説明した手段の場合、膜6の種類および厚さ、ドライエッチングの時間、また、第3工程のエッチング時間などを変化させることで、平坦面2、突起部3および溝部4の形状や、突起部3の高さ、溝部4の深さなどを変化させることができる。
【0036】
次に、本発明者は、上記手段の変形例として、以下のような手段によっても本実施形態の平坦面2、突起部3および溝部4を形成できることを見出した。
【0037】
すなわち、まず、基板1上に、平坦面2および溝部4となる箇所に開口を有するフォトレジストパターンを形成する(m>n)。その後、ドライエッチングにより突起部3を形成し、次いで、フォトレジストパターンを除去する。ここまでの工程により、図7(d)に示す状態が得られる。その後、例えば上記エッチングと同じ条件で第2突起部3が形成された基板上をエッチングすることで、図7(e)に示す状態が得られる。
【0038】
(3)成長工程
本工程では、エッチングされ、平坦面2、突起部3および溝部4を形成された基板1上に、III族窒化物半導体をエピタキシャル成長する。
【0039】
III族窒化物の成長方法は特段制限されず、HVPE(ハイドライド気相成長)法、MOVPE(有機金属気相成長)法またはMBE(分子線エピタキシ)法を用いたあらゆる技術を適用して実現することができる。なお、成長条件は、加熱温度:1000℃以上1300℃以下、かつ、供給する原料比:V/III比=1以上15以下、とするのが好ましい。このようにすれば、結晶核が基板1上の随所で生成されてしまうのを抑制することができる。
【0040】
上記成長工程の後、従来技術を適用して、エピタキシャル成長したIII族窒化物半導体から基板1を除去する。
【0041】
次に、本実施形態のIII族窒化物半導体基板の製造方法による作用効果について説明する。
【0042】
本実施形態の製造方法によれば、平坦面2と溝部4の境界部からの選択的な結晶成長が促進され、基板1上の随所で結晶核が生成されるのを抑制することができ、結果、高品質な単結晶を得ることができる。平坦面2と溝部4の境界部からの結晶成長が促進される理由は明らかではないが、本実施形態の基板1の特徴的な表面構造が1つの要因であると考えられる。すなわち、平坦面2より突出した突起部3が基板1上に供給された原料ガスを溝部4内に導くガイドの役割を果していること、平坦面2と溝部4との境界付近に存在する微小傾斜部分に適度な密度の原子ステップが形成されるため、GaN結晶の成長核が発生し易くなっていることなどが考えられる。なお、平坦面2、突起部3および溝部4を上述した位置関係(h>l、または、h/2>l、特に、l=0)とした場合、突起部3による上記ガイドの機能はより効果的に実現され、結果、平坦面2と溝部4の境界付近からの選択的な結晶成長がより促進されると考えられる。
【0043】
また、本実施形態の製造方法によれば、突起部3や溝部4の角部における結晶欠陥を抑制することができる。この理由は明らかでないが、本実施形態における結晶成長核は平坦面2と溝部4の境界付近に選択的に生成するため、この部分から起きる初期のエピタキシャル成長は、特許文献1に記載された技術のように側壁から溝部4内を一方向に向かって成長する可能性は低い。すなわち、平坦面2と溝部4の境界付近を起点にして3次元的に成長すると考えられる。このため、溝部4内を埋めた後、横方向成長に切り替わる際、突起部3や溝部4の角部において成長方向が大きくシフトすることなく、結果、結晶欠陥が生じにくいと考えられる。なお、初期は3次元的に成長しても、溝部4を埋めた後には横方向成長するので、最終的には、平坦な面を有するIII族窒化物半導体を得ることができる。
【0044】
また、本実施形態の製造方法によれば、基板1を断面視した際の突起部3および溝部4の形状は特段制限されない。すなわち、基板1を加工して設ける突起部3および溝部4の側壁を基板1の面(平坦面2)に対して垂直にするなどの困難な制限がない。このため、容易に基板1を加工することができ、製造効率の向上および歩留まりの改善などが実現される。なお、本実施形態の製造方法の場合、基板1の加工において、平坦面2、突起部3および溝部4の位置関係に制限が設けられる場合があるが、このような位置関係は、基板1加工時のマスクとなる膜の形状を制御することで容易に実現できるほか、上述した第1工程および第2工程を有する方法およびこれに準じた手段を用いることで、容易に実現できる。これに対して、特許文献1に記載の技術の場合、R面サファイヤ基板に垂直な側壁を有する溝部およびテラス部を形成する必要があり、これを実現する手段として、フォトリソグラフィを利用した手段が記載されているが、化学的に安定なサファイヤの加工は難しく、垂直に近い側壁を有する溝部を形成するのは手間を要する。
【0045】
また、本実施形態の製造方法の一例である上記第1工程乃至第3工程を用いた手段であって、第2工程のドライエッチングを、膜6´を全部エッチングする条件で行う手段の場合、第2工程における基板1を加工するためのエッチング工程において、マスクとして用いられる膜6´をも除去するので、第2工程と、基板全面をエッチングする第3工程との間に、別途膜6´を除去する工程を設ける必要がない。すなわち、工程数を減らすことができ、製造効率の向上が実現される。なお、エッチング工程(第2工程)においてマスクとして用いられる膜6´が除去されてしまうと、所望のパターンを形成できなくなってしまう恐れがあるが、本実施形態の場合、基板1には平坦面2、突起部3および溝部4が形成されればよく、突起部3および溝部4の形状は特段制限されないので問題はない。
【実施例】
【0046】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。
【0047】
<実施例1>
<平坦面、突起部および溝部の形成>
【0048】
上述した第1工程および第2工程を有する手段を用いた。
【0049】
(1)基板の準備
厚さ430μmのR面サファイヤ基板を準備した。
【0050】
(2)基板の前処理
アルキルベンゼン、2−ブタノン、および、エタノールの順で各10分間ずつ、R面サファイヤ基板の超音波洗浄を行った。その後、基板を脱イオン水で流水洗浄し、次いで王水(塩酸:硝酸=1:1混合液)に60分間浸し、また、150℃の硫酸:りん酸=1:3混合液に30分間浸した。その後、基板を脱イオン水で5分間、超純水で10分間の流水洗浄し、窒素ブローにより乾燥した。
【0051】
(3)フォトレジストパターンの形成
まず、ドライオーブンを用いて上記前処理後のR面サファイヤ基板を乾燥した。その後、スピンコーターを用いてポジ型フォトレジストをR面サファイヤ基板全面に塗布し、次いで、ドライオーブンで30分間のプリベークを実施した。その後、フォトマスクと紫外線露光装置を用いてパターン露光した。ストライプマスクはレジスト幅5μm、開口部の幅2μmのものを使用した。なお、ストライプの方向がR面サファイヤ基板の<1−101>軸に直角となるように配置した。
【0052】
その後、フォトレジストの現像を行い、次いで、超純水を用いて10分間流水洗浄を行った。続いて、ドライオーブンを用いて30分間のポストベークを実施した。
【0053】
(4)Ni膜の成膜
フォトレジストパターンの上から、スパッタリング法によりNi膜を成膜した。スパッタ種はArを用い、室温で成膜した。膜厚は150nmとした。
【0054】
(5)リフトオフ
アセトンに浸漬してレジストを溶かし、その上に堆積していたNi膜をR面サファイヤ基板から剥離した。なお、マスク開口部に堆積していたNi膜は剥離されずに基板上に残った。その後、基板をエタノールを用いて10分間超音波洗浄し、その後超純水による流水洗浄を行った。
【0055】
以上の工程により、Ni膜の幅が2μm、基板表面露出幅が5μmの
ストライプ構造を表面に有するR面サファイヤ基板が得られた。
【0056】
(6)ドライエッチング
次いで、R面サファイヤ基板をRIE(Reactive Ion Etching)装置内に設置し、ドライエッチングを行った。ドライエッチングに用いたエッチングガスおよびガス流量は、Ar(15sccm)、Cl2(20sccm)、および、BCl3(30sccm)であり、バイアス電圧は800Vとした。
【0057】
<<結果>>
図8は、上記(6)ドライエッチングを9分間、18分間、45分間または90分間行った後の、R面サファイヤ基板の断面形状を示す走査電子顕微鏡像である。図8に示すように、ドライエッチング90分後には、R面サファイヤ基板の表面に、平坦面、突起部および溝部が形成されており、その位置関係は、図2および図7(e)に示したものと同様になっている。
【0058】
なお、Ni膜は、9分間のドライエッチング処理後には残存していたが、18分間のドライエッチング処理後には完全に消失していた。すなわち、Ni膜の膜厚を150nmとした場合、上記条件にて9分間から18分間のエッチングを行うことにより、Ni膜は消失することが分かる。以上より、上記条件を利用した場合には、エッチング時間を変化することで、平坦面、突起部および溝部の形状を変化できることが分かる。
【0059】
<III族窒化物半導体のエピタキシャル成長>
上述したように(6)ドライエッチングを90分間行うことにより平坦面、突起部および溝部を形成したR面サファイヤ基板上に、HVPE法を用いてGaNをエピタキシャル成長させた。成長条件は以下の通りである。
【0060】
成長温度 :1040℃
V/III比:NH3/HCl=900sccm/60sccm=15
成長時間 :47分
【0061】
<<結果>>
<1>
図9(1)および図9(2)は、初期成長後のGaN結晶を示す走査電子顕微鏡像である。図9(2)は、図9(1)の拡大図である。また、図9(3)は、初期成長後のGaN結晶を模式的に示してある。なお、図9(1)には、平坦面、突起部および溝部を示す線を書き加えている。
【0062】
図9(1)および図9(2)に示すように、突起部の図中右側の溝部と平坦面の境界付近から選択的に結晶核の生成・結晶成長が起こり(図中左側の溝部からは結晶成長せず)、この結晶は図中右側から左側に向かって結晶成長して、突起部を乗り越えようとしていることが分かる。この事実より、GaN結晶をエピタキシャル成長させる際、突起部のガイド機能により溝部付近に選択的に原料ガスが流入し、結果、溝部と平坦面の境界付近に形成された微小傾斜構造において、選択的に結晶核が生成し、結晶成長したと推測される。
【0063】
なお、突起部の右側の溝部と平坦面の境界付近にのみ選択的に結晶核の生成が起こる理由については、以下のように考えられる。
【0064】
図15は、本実施形態のエッチング工程後の基板の断面形状の一例を模式的に示した図である。図15に示すように、平坦面2と溝部4の境界は微視的には急峻ではなく、傾斜が連続的に変化している。その結果、突起部の右側の溝部・平坦面境界(傾斜角θがマイナス)にはGa極性面を有する原子ステップ端面が露出する。一方、突起部の左側の溝部・平坦面境界(傾斜角θがプラス)にはN極性面を有する原子ステップ端面が露出する。Ga極性面はN極性面に比べて成長が促進され易く(非特許文献1)、核発生も容易と考えられる。また、適度な傾斜角においては原子ステップ密度も適度となるため、核発生と平坦化成長が有利となる。結果的に、突起の右側の溝部・平坦面境界付近の、かつ、特定の傾斜角を有する極めて限定された領域のみで結晶核発生・成長が促進されたものと考えられる。
【0065】
なお、結晶成長したGaNと基板を構成するサファイヤとの結晶方位関係は図10に示す通りであり、GaNのm軸とサファイヤのa軸とが平行になる。
【0066】
<2>
次に、十分に結晶成長させた後、得られたGaN結晶からR面サファイヤ基板を除去し、GaN結晶の研磨を行った後、X線ロッキングカーブ(XRC)測定を実施した。測定時、図11に示す2つの方向からX線を入射した。結果を、図12に示す。図中に示す数字(375および447)は、ピーク半値幅(単位:arcsec)である。図示するように、2入射方向とも半値幅が同等であった。
【0067】
<比較例1>
実施例1と同様の工程を行い、上述した(6)ドライエッチングを9分間行うことで、平坦面および突起部を形成したR面サファイヤ基板を比較例1とし(図8参照)、実施例1と同様の手段を用いて、GaNをエピタキシャル成長させた。
【0068】
<<結果>>
<1>
図13は、初期成長後のGaN結晶を示す走査電子顕微鏡像である。図13から、突起部の両側の平坦面において、結晶成長していることが分かる。また、図13の上側の走査電子顕微鏡像では、図中左側から右側に向かって結晶が成長し、突起部を乗り越えようとしている様子が示されているが、図13の下側の走査電子顕微鏡像では、図中右側から左側に向かって結晶が成長し、突起部を乗り越えようとしている様子が示されている。
【0069】
<2>
次に、実施例1と同様にして、X線ロッキングカーブ(XRC)測定を実施した。結果を、図14に示す。図中に示す数字(668および980)は、ピーク半値幅(単位:arcsec)である。図示するように、入射方向により半値幅が大きく異なり、その差も大きいことが分かる。
【0070】
<まとめ>
実施例1および比較例1を比較すると、実施例1の方が、選択成長の観点で有利であることが分かる。また、実施例1の方が、結晶性改善に有利であることが分かる。
【符号の説明】
【0071】
1 基板
2 平坦面
3 突起部
4 溝部
5 フォトレジストパターン
6 膜
6´ 膜(パターン)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
c面よりa面方向もしくはm面方向に角度R(0°<R≦90°)となる傾斜面を有する酸化物基板、炭化物基板、またはIII族窒化物半導体基板を準備する工程と、
前記基板を選択的にエッチングし、平坦面と、前記平坦面より突出している突起部と、前記平坦面より掘り下げられている溝部と、を形成するエッチング工程と、
前記エッチングされた前記基板上に、III族窒化物を成長する成長工程と、を有するIII族窒化物半導体基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のIII族窒化物半導体基板の製造方法において、
前記酸化物基板としてサファイヤ基板を用いてIII族窒化物を成長するIII族窒化物半導体基板の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のIII族窒化物半導体基板の製造方法において、
前記平坦面からの前記突起部の高さをh、第1の前記突起部と前記第1の突起部の最も近くに位置する第1の前記溝部と、の間に介在する前記平坦面の前記第1の突起部と前記第1の溝部とを結ぶ方向の長さをlとした時、h>lの関係を満たす、III族窒化物半導体基板の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のIII族窒化物半導体基板の製造方法において、
前記第1の突起部と前記第1の溝部とは、前記平坦面を介さず繋がっているIII族窒化物半導体基板の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のIII族窒化物半導体基板の製造方法において、
前記成長工程は、
V族原料およびIII族原料の供給比(V/III比)は1以上15以下、かつ、加熱温度は1000℃以上1300℃以下の条件で行われるIII族窒化物半導体基板の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のIII族窒化物半導体基板の製造方法において、
前記エッチング工程は、
前記基板上に、所定のパターンを有する膜を形成する第1工程と、
前記膜をマスクとして前記基板をドライエッチングする第2工程と、
前記第2工程の後に行われ、前記膜が除去された後、所定時間、前記基板全面をエッチングする第3工程と、を有するIII族窒化物半導体基板の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載のIII族窒化物半導体基板の製造方法において、
前記第2工程の前記ドライエッチングは、前記膜を一部または全部エッチングする条件で行われ、
前記第3工程のエッチングは、前記第2工程の前記ドライエッチングを継続することで実現されるIII族窒化物半導体基板の製造方法。
【請求項1】
c面よりa面方向もしくはm面方向に角度R(0°<R≦90°)となる傾斜面を有する酸化物基板、炭化物基板、またはIII族窒化物半導体基板を準備する工程と、
前記基板を選択的にエッチングし、平坦面と、前記平坦面より突出している突起部と、前記平坦面より掘り下げられている溝部と、を形成するエッチング工程と、
前記エッチングされた前記基板上に、III族窒化物を成長する成長工程と、を有するIII族窒化物半導体基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のIII族窒化物半導体基板の製造方法において、
前記酸化物基板としてサファイヤ基板を用いてIII族窒化物を成長するIII族窒化物半導体基板の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のIII族窒化物半導体基板の製造方法において、
前記平坦面からの前記突起部の高さをh、第1の前記突起部と前記第1の突起部の最も近くに位置する第1の前記溝部と、の間に介在する前記平坦面の前記第1の突起部と前記第1の溝部とを結ぶ方向の長さをlとした時、h>lの関係を満たす、III族窒化物半導体基板の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のIII族窒化物半導体基板の製造方法において、
前記第1の突起部と前記第1の溝部とは、前記平坦面を介さず繋がっているIII族窒化物半導体基板の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のIII族窒化物半導体基板の製造方法において、
前記成長工程は、
V族原料およびIII族原料の供給比(V/III比)は1以上15以下、かつ、加熱温度は1000℃以上1300℃以下の条件で行われるIII族窒化物半導体基板の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のIII族窒化物半導体基板の製造方法において、
前記エッチング工程は、
前記基板上に、所定のパターンを有する膜を形成する第1工程と、
前記膜をマスクとして前記基板をドライエッチングする第2工程と、
前記第2工程の後に行われ、前記膜が除去された後、所定時間、前記基板全面をエッチングする第3工程と、を有するIII族窒化物半導体基板の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載のIII族窒化物半導体基板の製造方法において、
前記第2工程の前記ドライエッチングは、前記膜を一部または全部エッチングする条件で行われ、
前記第3工程のエッチングは、前記第2工程の前記ドライエッチングを継続することで実現されるIII族窒化物半導体基板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図8】
【図9】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図8】
【図9】
【図13】
【公開番号】特開2012−56797(P2012−56797A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202280(P2010−202280)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000165974)古河機械金属株式会社 (211)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000165974)古河機械金属株式会社 (211)
【Fターム(参考)】
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