説明

Keap1タンパク質結合化合物、該Keap1タンパク質結合化合物とKeap1タンパク質の複合体の結晶及びその製造方法

【課題】Keap1タンパク質と複合体を形成し、Nrf2結合部位で相互作用するKeap1タンパク質結合化合物を提供し、酸化ストレスを原因とする疾患の治療薬又は予防薬の開発に貢献すること。
【解決手段】本発明は、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列を規準とした場合における第13番目のチロシン、第15番目のアルギニン、第42番目のセリン、第59番目のアルギニン、第61番目のアスパラギン、第195番目のヒスチジン、第197番目のシステイン、第199番目のチロシン、第215番目のアルギニン、第251番目のチロシン、第256番目のフェニルアラニン、第265番目のプロリン及び第266番目のアスパラギン酸からなる群から選択される一以上のアミノ酸残基と相互作用し、Keap1タンパク質又は配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むKeap1部分タンパク質と複合体を形成するKeap1タンパク質結合化合物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Keap1タンパク質結合化合物、該Keap1タンパク質結合化合物とKeap1タンパク質の複合体の結晶及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のバイオテクノロジーの進歩により、医薬品の標的タンパク質のアミノ酸配列が容易に決定できるようになり、X線構造解析法やコンピューター技術の発展に伴って、これらのアミノ酸配情報から標的タンパク質の立体構造が解明されるようになってきた。医薬品の標的タンパク質の立体構造は、新たな医薬品を設計する上で有力な情報となるため、医薬分子設計(Structure−Based Drug Design;以下、SBDD)と呼ばれる創薬手法が開発され、現在では医薬品の候補化合物を探索する上での主要なアプローチの一つとなっている(非特許文献1及び2)。
【0003】
このSBDDは、標的タンパク質の立体構造情報を利用し、標的タンパク質に結合して生理作用(例えば、アゴニスト作用、アンタゴニスト作用)を発揮し得る化合物を合理的に設計する技術である(非特許文献3)。SBDDに必要な標的タンパク質の立体構造情報は、X線結晶構造解析、電子顕微鏡による解析、核磁気共鳴法による解析等により得ることができるが、中でも、X線結晶構造解析で得られる立体構造情報は精度が高く情報量も多いため、特に有用であるとされている。
【0004】
一方、酸化ストレスは、生体に対して種々のダメージを与えることが知られており、癌、種々の循環器疾患、糖尿病、神経変性疾患(非特許文献4〜9)の原因の一つになっていると考えられている。Keap1(Kelch−like ECH Associationg Protein 1)タンパク質は、酸化ストレスに対する生体防御機構に関与するタンパク質であり、酸化ストレスを感知するセンサーとしての役割を果たしていることが知られている。
【0005】
Keap1タンパク質は、平常時、抗酸化ストレスタンパク質群の発現を誘導する転写因子であるNrf2(NF−E2−related Factor 2)と結合し、Nrf2を細胞質に留めているが、細胞が一旦酸化ストレスに曝されると、Keap1タンパク質はNrf2を遊離するため、Nrf2は核内へと移行して抗酸化ストレスタンパク質群の発現を誘導し、酸化ストレスに対する生体防御機構を活性化するからである(非特許文献10)。
【0006】
これまでに、Keap1タンパク質を構成する一部のアミノ酸配列からなるKeap1部分タンパク質の単体やKeap1部分タンパク質とペプチド化合物との複合体のX線結晶構造解析の結果が開示されている(非特許文献11及び12)。また、結合部位等の詳細な立体構造情報については不明であるが、Keap1タンパク質に対して相互作用する化合物の報告もされている(非特許文献13及び14)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Kuntsら、Science、1992年、257巻、p.1078〜1082
【非特許文献2】Liら、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America、1997年、94巻、p.73〜78
【非特許文献3】石黒、「科学」、岩波書店、1996年、66巻、p.556〜566、
【非特許文献4】Amesら、1993年、「DNA and Free Radicals」(Halliwell, B. and Aruoma, O.I., eds.)、Ellis Horwood Ltd.、p.1〜15
【非特許文献5】Jacksonら、Mutation Research、2001年、477巻、p.7〜21
【非特許文献6】Bonnefontら、Current Opinion in Clinical Nutrition and Metabolic Care、2002年、5巻、p.561〜568
【非特許文献7】Ceconiら、Archives of Biochemistry and Biophysics、2003年、420巻、p.217〜221
【非特許文献8】Ghanbariら、Aging Cell、2004年、3巻、p.41〜44
【非特許文献9】Mhatreら、Journal of Alzheimer‘s Disease、2004年、6巻、p.147〜157
【非特許文献10】Truyenら、The Journal of Biological Chemistry、2009年、284巻、p.13291〜13295
【非特許文献11】Loら、The European Molecular Biology Organization Journal of Biological Chemistry、2006年、25巻、p.3605〜3617
【非特許文献12】Liら、The Journal of Biological Chemistry、2004年、279巻、p.54750〜54758
【非特許文献13】Baekら、Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry、2008年、5巻、p.1176〜1182
【非特許文献14】Dinkova−Kostovaら、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America、2002年、99巻、p.11908〜11913
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これまでの知見より、Keap1タンパク質のNrf2結合部位に相互作用する化合物は、Keap1タンパク質とNrf2の結合を阻害してNrf2を強制的に遊離させることができるため、抗酸化ストレスタンパク質群の発現を誘導し、酸化ストレスに対する生体防御機構を活性化できる医薬品の候補化合物になると考えられたが、Keap1タンパク質のNrf2結合部位に相互作用する化合物についての報告は一切なく、この考えの立証に利用できる化合物はなかった。なお、非特許文献13及び14に記載されたKeap1タンパク質に対して相互作用する化合物は、Keap1タンパク質のNrf2結合部位に結合する化合物ではなく、酸化ストレスに対する生体防御機構を活性化できる医薬品にはなり得ないものであった。
【0009】
また、SBDDには、少なくともタンパク質の詳細な立体構造の情報が必要不可欠であり、さらにタンパク質に相互作用する低分子化合物との複合体の原子座標の情報が必要となるが、SBDDに利用可なKeap1と低分子化合物との複合体の詳細な立体構造の情報についての報告もなかった。
【0010】
そこで本発明は、Keap1タンパク質と複合体を形成し、Nrf2結合部位で相互作用するKeap1タンパク質結合化合物を提供し、酸化ストレスを原因とする疾患の治療薬又は予防薬の開発に貢献することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、Keap1タンパク質の部分アミノ酸配列からなるタンパク質と複合体を形成する尿素誘導体を化学合成するとともに、新たな共結晶化法を構築することにより該複合体を結晶化することに成功し、該複合体の結晶の原子座標の解析からKeap1タンパク質のNrf2結合部位に相互作用するKeap1タンパク質結合化合物の特性を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列を規準とした場合における第13番目のチロシン、第15番目のアルギニン、第42番目のセリン、第59番目のアルギニン、第61番目のアスパラギン、第195番目のヒスチジン、第197番目のシステイン、第199番目のチロシン、第215番目のアルギニン、第251番目のチロシン、第256番目のフェニルアラニン、第265番目のプロリン及び第266番目のアスパラギン酸からなる群から選択される一以上のアミノ酸残基と相互作用し、Keap1タンパク質又は配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むKeap1部分タンパク質と複合体を形成するKeap1タンパク質結合化合物を提供する。
【0013】
上記のKeap1タンパク質結合化合物は、Keap1タンパク質のNrf2結合部位に相互作用し、Keap1タンパク質とNrf2の結合を阻害してNrf2を遊離させることができるため、抗酸化ストレスタンパク質群の発現を誘導し、酸化ストレスに対する生体防御機構を活性化できる。
【0014】
上記のKeap1タンパク質結合化合物は、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列を規準とした場合における第13番目のチロシン、第15番目のアルギニン、第195番目のヒスチジン及び第266番目のアスパラギン酸と相互作用することが好ましい。
【0015】
上記のKeap1タンパク質結合化合物は、Keap1タンパク質のNrf2結合部位により強く結合でき、Keap1タンパク質とNrf2の結合を阻害してNrf2を強制的に遊離させることができるため、抗酸化ストレスタンパク質群の発現を迅速に誘導し、酸化ストレスに対する生体防御機構をより強く活性化できる。
【0016】
上記のKeap1タンパク質結合化合物は、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列を規準とした場合における第13番目のチロシン、第15番目のアルギニン、第42番目のセリン、第59番目のアルギニン、第61番目のアスパラギン、第195番目のヒスチジン、第197番目のシステイン、第199番目のチロシン、第215番目のアルギニン、第251番目のチロシン、第256番目のフェニルアラニン、第265番目のプロリン及び第266番目のアスパラギン酸と相互作用することがより好ましく、例えば、下記の化学式(I)で示される尿素誘導体又はその薬理学的に許容される塩であればさらに好ましい。
【化1】

【0017】
上記のKeap1タンパク質結合化合物は、Keap1タンパク質のNrf2結合部位に特に強く結合でき、Keap1タンパク質と複合体を形成できる。Nrf2の結合を阻害してNrf2を強制的に遊離させることができるため、抗酸化ストレスタンパク質群の発現をさらに迅速に誘導し、酸化ストレスに対する生体防御機構を特に強く活性化できる。
【0018】
また本発明は、上記のKeap1タンパク質結合化合物と、Keap1タンパク質又は配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むKeap1部分タンパク質と、の複合体の結晶を提供する。
【0019】
上記の結晶は、X線構造解析を利用することにより、タンパク質と低分子化合物の原子の位置座標も含めた結合状態に関する詳細な情報を得ることができるため、SBDDを用いた酸化ストレスを原因とする疾患の治療薬又は予防薬、その他有益な低分子化合物の創出に利用できる。
【0020】
さらに本発明は、Keap1タンパク質又は配列表の配列番号1のアミノ酸配列を含むKeap1部分タンパク質を1〜12mg/mLの濃度で含有する標的タンパク質水溶液を調製するA工程と、上記標的タンパク質水溶液に含まれる上記Keap1タンパク質又は上記Keap1部分タンパク質のモル量に対し、モル過剰量の上記Keap1タンパク質結合化合物を上記標的タンパク質水溶液に加えるB工程と、B工程の後に、平均分子量が1000〜10000のポリエチレングリコールを5〜30%(W/V)の濃度で含有する5〜20mM酢酸カルシウム溶液を上記標的タンパク質水溶液に加え、上記の結晶を成長させ、塩析させるC工程と、を備える、上記の複合体の共結晶の製造方法を提供する。
【0021】
上記の製造方法によれば、Keap1タンパク質又はKeap1タンパク質の部分アミノ酸配列からなるKeap1部分タンパク質と上記の化学式(I)で示される尿素誘導体又はその薬理学的に許容される塩との複合体の良質な結晶を製造できる。特に、X線結晶構造解析に供した際に、2.2Å以下の分解能を与えるだけの品質を有する結晶を取得できるため、SBDDを用いた酸化ストレスを原因とする疾患の治療薬又は予防薬、その他有益な低分子化合物の創出に利用できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のKeap1タンパク質結合化合物は、Keap1タンパク質のNrf2結合部位に相互作用し、Keap1タンパク質とNrf2の結合を阻害してNrf2を遊離させることができるため、抗酸化ストレスタンパク質群の発現を誘導し、酸化ストレスに対する生体防御機構を活性化できる。また、本発明のKeap1タンパク質結合化合物は、酸化ストレスを軽減できるため、酸化ストレスを原因とする疾患(癌、種々の循環器疾患、糖尿病、神経変性疾患等)の治療薬又は予防薬の候補化合物とすることができる。さらに、本発明の複合体、結晶及び共結晶化方法は、Keap1タンパク質と相互作用する化合物をSBDDで探索する際に必要な立体構造情報の取得を可能にし、酸化ストレスを原因とする疾患の治療薬又は予防薬、その他有益な低分子化合物の創出に利用できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書において、「複合体」とは、タンパク質と低分子化合物が互いに相互作用し合い、又は結合して一体となっているものを指す。
【0024】
「相互作用」とは、タンパク質や低分子化合物などが互いに影響を及ぼすことを指し、例えば、静電作用や分子間力、水素結合などの影響が挙げられる。
【0025】
「共結晶化法」とは、タンパク質とそのタンパク質と相互作用する化合物を混合して、その複合体の結晶を作製する方法を指す。この他に複合体の結晶を作製する方法としてはソーキング法が用いられる。ソーキング法は事前にタンパク質の結晶を作製し、その結晶を化合物の溶液に浸漬することで複合体の結晶を作製する方法である。共結晶化法の具体的な手法は、「タンパク質の結晶化」坂部知平ら監修、2005年、京都大学学術出版会等に記載されている。共結晶の例としてはプロテインデータバンク(PDB)で見ることができる。
【0026】
「緩衝水溶液」とは、酸または塩基を溶液に加えた場合に溶液のpHの変化を最小限にする基質を含む水性基剤の溶液を指し、例えば、トリス緩衝液やリン酸緩衝液などが挙げられる。
【0027】
「蒸気拡散法」とは、結晶化溶液を気体相のみを通して沈殿剤貯留層溶液によって平衡化させる当技術分野で周知のタンパク質結晶化法を指し、液滴の置き方によって、ハンギングドロップ法及びシッティングドロップ法がある。ハンギングドロップ法は、タンパク質溶液の液滴をカバーガラス上に配置し、カバーガラスを貯留層上で反転させ、密封する方法である。一方、シッティングドロップ法は、貯留層内部に適切な液滴台を設置し、タンパク質溶液の液滴を液滴台上に配置し、カバーガラス等で貯留層を密封する方法である。
【0028】
「アポ型単結晶」とは、化合物が結合せずに形成されたタンパク質の結晶を意味し、例えば、前述の蒸気拡散法などを用いた結晶化法で作製できる。
【0029】
「分子置換法」とは、同じ機能を有するタンパク質構造を初期モデルとして位相角結晶構造を決定する方法であり、具体的な手法は、Methods in Enzymology,115,55−77(1985),M.G.Rossman編等に記載されている。
【0030】
「原子座標」とは、結晶形態におけるタンパク質の原子に含まれる電子によるX線の回折により得られる個々の回折点の回折強度を数値化し、解析することによって導かれる数学的座標であって、上記タンパク質の原子の位置を3次元座標として表したものを指す。例えば、図1に示したように、タンパク質、低分子化合物などを構成する個々の原子についての座標を表す。
【0031】
「ファーマコフォア」とは、ある薬理活性を示すために必須の構造的特徴を意味し、例えば、相互作用に必要な複数の官能基群とそれらの空間的な位置関係を表している。
【0032】
「特性球」とは、疎水性、水素結合供与体、水素結合受容体、などの種々の物理化学的性質を保持した空間的領域を意味し、例えば、脂溶性官能基やカルボニル構造、アミノ基などが挙げられる。
【0033】
本発明のKeap1タンパク質結合化合物は、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列を規準とした場合における第13番目のチロシン、第15番目のアルギニン、第42番目のセリン、第59番目のアルギニン、第61番目のアスパラギン、第195番目のヒスチジン、第197番目のシステイン、第199番目のチロシン、第215番目のアルギニン、第251番目のチロシン、第256番目のフェニルアラニン、第265番目のプロリン及び第266番目のアスパラギン酸からなる群から選択される一以上のアミノ酸残基と相互作用し、Keap1タンパク質又は配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むKeap1部分タンパク質と複合体を形成することを特徴としている。
【0034】
ここで、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列とは、ヒトのKeap1タンパク質の一部を構成する領域のアミノ酸配列であり、転写因子であるNrf2がKeap1タンパク質に結合する領域(Nrf2結合領域)のアミノ酸配列を包含する。なお、配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列は、ヒトのKeap1タンパク質の全長のアミノ酸配列を示している。
【0035】
上記のKeap1タンパク質結合化合物は、Keap1タンパク質又は配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むKeap1部分タンパク質と複合体を形成することにより、Keap1タンパク質に結合しているNrf2を遊離させ、Nrf2の核内移行を導き、抗酸化ストレスタンパク質群の発現を誘導する活性を発揮し、最終的に酸化ストレスに対する生体防御機構を活性化することとなる。
【0036】
また、上記のKeap1タンパク質結合化合物は、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列を規準とした場合における第13番目のチロシン、第15番目のアルギニン、第195番目のヒスチジン及び第266番目のアスパラギン酸と相互作用することが好ましく、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列を規準とした場合における第13番目のチロシン、第15番目のアルギニン、第42番目のセリン、第59番目のアルギニン、第61番目のアスパラギン、第195番目のヒスチジン、第197番目のシステイン、第199番目のチロシン、第215番目のアルギニン、第251番目のチロシン、第256番目のフェニルアラニン、第265番目のプロリン及び第266番目のアスパラギン酸と相互作用することがより好ましく、例えば、下記の化学式(I)で示される尿素誘導体又はその薬理学的に許容される塩であればさらに好ましい。
【化2】

【0037】
上記の尿素誘導体(2−(3−((3−(5−(フラン−2−イル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ウレイド)メチル)フェノキシ)酢酸)又はその薬理学的に許容される塩は、水和物又は溶媒和物であってもよく、結晶多形を形成してもよく、例えば、以下に記載する製造方法に従って製造することができる。
【0038】
以下に記載する製造方法において、原料化合物はその塩を用いてもよい。原料化合物の塩としては、例えば、酸付加塩として塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、リン酸塩などの無機酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、グルタル酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、マンデル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、フタル酸塩などの有機カルボン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩などの有機スルホン酸塩などが挙げられる。また、塩基との塩であってもよく、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、アンモニウム塩、さらにはトリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N−ジベンジルエチレンジアミン塩などの有機塩基塩などが挙げられる。以下の製造方法により得られた上記の尿素誘導体は、公知の手段、例えば、溶媒抽出、再結晶及び/又はクロマトグラフィーによって単離精製でき、公知の方法又はそれに準じる方法によって目的とする塩に変換でき、上記の尿素誘導体が塩の状態で得られた場合には、公知の方法又はそれに準ずる方法によって別途目的とする他の塩に変換できる。
【0039】
(製造方法1) 上記の尿素誘導体の製造方法:
上記の尿素誘導体は、以下の通り、塩基の存在下又は非存在下で、1,3,4−オキサジアゾリルアミン(II)とベンジルアミン(III)を縮合させることにより製造できる。
【化3】

[式中、Lは、脱離基であり、例えば、アルコキシ基又はアリールオキシ基が挙げられる。]
【0040】
ベンジルアミン(III)の使用量としては、1,3,4−オキサジアゾリルアミン(II)1モルに対して0.4〜2モルが好ましく、0.8〜1.5モルがより好ましい。
【0041】
塩基の使用量は、1,3,4−オキサジアゾリルアミン(II)1モルに対して1〜3.0モルが好ましく、1〜2.0モルがより好ましい。
【0042】
塩基としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム若しくは炭酸セシウムなどの金属炭酸塩類、水酸化ナトリウム若しくは水酸化カリウムなどの無機塩基類、ピリジン若しくはルチジンなどの芳香族アミン類、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、シクロヘキシルジメチルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチルアニリン、N−メチルピペリジン、N−メチルピロリジン若しくはN−メチルモルホリン、N,N−ジイソプロピルエチルアミンなどの第3級アミン類、水素化ナトリウム若しくは水素化カリウムなどのアルカリ金属水素化物類、ナトリウムアミド、リチウムジイソプロピルアミド若しくはリチウムヘキサメチルジシラジドなどの金属アミド類又はナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド若しくはカリウムtert−ブトキシドなどの金属アルコキシド類が挙げられる。
【0043】
本反応は一般に溶媒中で行われ、反応を阻害しない溶媒が適宜選択される。このような溶媒としては、反応が進行する限り特に限定されないが、例えば、ピリジンなどの芳香族アミン類、ジクロロメタン若しくは1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類、ヘプタン若しくはヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、トルエン、クロロベンゼン若しくはキシレンなどの芳香族炭化水素類、テトラヒドロフラン若しくは1,4−ジオキサンなどのエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド若しくはN−メチルピロリドンなどのアミド類又はアセトニトリル若しくはプロピオニトリルなどの脂肪族ニトリル類が挙げられるが、ピリジン、トルエン又はプロピオニトリルが好ましい。ピリジンなどの芳香族アミン類を溶媒として選択した場合は、塩基非存在下にて反応を行うことができる。
【0044】
反応温度としては、50〜200℃が好ましく、60〜100℃がより好ましい。また、反応時間としては、3時間〜72時間が好ましく、6時間〜24時間がより好ましい。
【0045】
1,3,4−オキサジアゾリルアミン(II)は、自体公知の方法又はこれらに準じた方法に従って製造することができる。例えば、市販されている2−アミノ−5−(2−フリル)−1,3,4−オキサジアゾールより、公知の方法(Journal of Agricultural and Food Chemistry、2000年、48巻、5465〜5468)又はこれに準ずる方法に従い製造することができる。
【0046】
(製造方法2) ベンジルアミン(III)の製造方法:
ベンジルアミン(III)は、以下の通り、3−ヒドロキシベンゾニトリル(IV)のアルキル化工程である工程1、加水分解工程である工程2及び還元工程である工程3塩を経る方法で製造できる。
【化4】

【0047】
(工程1)
ベンゾニトリル(V)は、例えば、塩基の存在下又は非存在下、3−ヒドロキシベンゾニトリル(IV)にブロモ酢酸エチルを作用させるアルキル化反応により、製造することができる。ブロモ酢酸エチルの使用量は、3−ヒドロキシベンゾニトリル(IV)1モルに対して0.8〜5.0モルが好ましく、1.2〜3.0モルがより好ましい。
【0048】
塩基の使用量は、3−ヒドロキシベンゾニトリル(IV)1モルに対して0.8〜5.0モルが好ましく、1.2〜3.0モルがより好ましい。
【0049】
塩基としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム若しくは炭酸セシウムなどの金属炭酸塩類、水酸化ナトリウム若しくは水酸化カリウムなどの無機塩基類、水素化ナトリウム若しくは水素化カリウムなどのアルカリ金属水素化物類又はカリウムtert−ブトキシドなどの金属アルコキシド類が挙げられる。
本反応は一般に溶媒中で行われ、反応を阻害しない溶媒が適宜選択される。このような溶媒としては、反応が進行する限り特に限定されないが、例えば、トルエン、クロロベンゼン若しくはキシレンなどの芳香族炭化水素類、テトラヒドロフラン若しくは1,4−ジオキサンなどのエーテル類、アセトンなどのケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド若しくはN−メチルピロリドンなどのアミド類又はアセトニトリル若しくはプロピオニトリルなどの脂肪族ニトリル類が挙げられるが、アセトン又はN,N−ジメチルホルムアミドが好ましい。
【0050】
反応温度としては、20〜50℃が好ましく、23〜30℃がより好ましい。また、反応時間としては、15分〜24時間が好ましく、30分〜12時間がより好ましい。
【0051】
(工程2)
カルボン酸(VI)は、例えば塩基の存在下、エステル(V)を公知の方法で加水分解することにより、製造できる。
【0052】
加水分解反応には、例えば、塩基として、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム若しくは水酸化カリウムなどの無機塩基類が挙げられる。本反応は一般に溶媒中で行われ、反応を阻害しない溶媒が適宜選択される。このような溶媒としては、反応が進行する限り特に限定されないが、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、テトラヒドロフラン若しくは1,4−ジオキサンなどのエーテル類、又はそれらエーテル類と水との混合溶媒が挙げられるが、テトラヒドロフランと水との混合溶媒が好ましい。
【0053】
反応温度としては、20〜50℃が好ましく、23〜30℃がより好ましい。また、反応時間としては、15分〜24時間が好ましく、30分〜12時間がより好ましい。
【0054】
(工程3)
ベンジルアミン(III)は、例えば、ベンゾニトリル(VI)を公知の方法で還元することにより、製造することができる。
【0055】
還元反応には、例えば、還元剤として、例えば、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、リチウムアルミニウムヒドリド、ナトリウムビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムヒドリド又はボラン錯体などの金属水素化物を用いる方法と、水素雰囲気下で遷移金属触媒を用いる方法が挙げられる。該遷移金属触媒としては、例えば、パラジウム−炭素、水酸化パラジウム又は4価酸化白金が挙げられる。触媒の使用量は、ベンゾニトリル(VI)1モルに対して0.01〜1.0モルが好ましい。反応温度としては、20〜50℃が好ましく、23〜30℃がより好ましい。また、反応時間としては、15分〜24時間が好ましく、30分〜12時間がより好ましい。
【0056】
また本発明の結晶は、上記のKeap1タンパク質結合化合物と、Keap1タンパク質又は配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むKeap1部分タンパク質との複合体の共結晶であることを特徴としている。
【0057】
上記の複合体の結晶は、タンパク質水溶液の調整工程、複合体を形成する工程、共結晶化工程で製造できる。特に好ましい製造方法としては、Keap1タンパク質又は配列表の配列番号1のアミノ酸配列を含むKeap1部分タンパク質を1〜12mg/mLの濃度で含有する標的タンパク質水溶液を調製するA工程と、上記標的タンパク質水溶液に含まれる上記Keap1タンパク質又は上記Keap1部分タンパク質のモル量に対し、モル過剰量の上記Keap1タンパク質結合化合物を上記標的タンパク質水溶液に加えるB工程と、B工程の後に、平均分子量が1000〜10000のポリエチレングリコールを5〜30%(W/V)の濃度で含有する5〜20mM酢酸カルシウム溶液を上記標的タンパク質水溶液に加え、上記の共結晶を成長させ、塩析させるC工程と、を備える製造方法が挙げられる。
【0058】
具体的には、Keap1タンパク質又は配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むKeap1部分タンパク質を緩衝水溶液に溶解する。緩衝水溶液は、例えば、トリス緩衝液やリン酸緩衝液などが挙げられ、トリス緩衝液が好ましい。タンパク質の濃度は0.1〜20mg/mLが好ましく、1〜12mg/mLがより好ましい。
【0059】
その後、上記標的タンパク質水溶液にモル過剰量のKeap1タンパク質結合化合物を加えて、そのまま静置すれば複合体が形成される。モル過剰量としては、Keap1タンパク質又は配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むKeap1部分タンパク質1モルに対して1〜30モルが好ましく、5〜20モルがより好ましい。静置する時間は1分〜3日が好ましく、2時間〜1日がより好ましい。静置する温度としては、3〜25℃が好ましく、4℃がより好ましい。
【0060】
共結晶化工程は蒸気拡散法が好ましく、例えば、ハンギングドロップ法及びシッティングドロップ法が利用できる。具体的には、タンパク質と化合物複合体の溶液約10μL未満を、貯留層溶液と混合し、このタンパク質/沈殿剤溶液と貯留層をカバーガラス等で密封し、結晶が成長するまで静置すればよい。
【0061】
貯留層溶液としては、例えば、当該分野で公知の沈殿剤及び緩衝水溶液が挙げられ、沈殿剤と緩衝水溶液を組み合わせて使用しても良い。沈殿剤としては、硫酸アンモニウムやポリエチレングリコールが好ましく、ポリエチレングリコールがより好ましい。ポリエチレングリコールの平均分子量としては、200〜20000が好ましく、2000〜8000がより好ましい。ポリエチレングリコールの濃度は1〜40%(W/V)が好ましく、5〜30%(W/V)がより好ましい。
【0062】
緩衝水溶液は1〜20mMの市販の緩衝水溶液が好ましく、5〜20mM酢酸カルシウム溶液がより好ましい。また、結晶を成長させる温度としては、3〜25℃が好ましく、4℃がより好ましい。結晶を成長させる時間は1日〜1年が好ましく、3日〜3週間がより好ましい。
【0063】
上記の結晶は、X線結晶構造解析に供した際に少なくとも10Å以下の分解能、好ましくは4.0Å以下の分解能、より好ましくは3.4Å以下の分解能、特に好ましくは2.2Å以下の分解能を与えるだけの品質を有していることが好ましい。
【0064】
こうして得られる上記の結晶及びその解析により得られる原子座標は、幅広い用途を有する。例えば、上記の結晶及び原子座標は、新しい治療物質を開発するためのアプローチとしてKeap1タンパク質と結合する化合物を同定するために特に有用である。
【0065】
具体的には、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むKeap1部分タンパク質と低分子化合物との複合体結晶の構造情報を解析し、疎水的な相互作用・イオン結合・水素結合を形成している部位やアミノ酸残基、さらには、複合体構造のKeap1タンパク質の分子形状を解析することで、化合物の分子設計やスクリーニングに必要なファーマコフォアを提示(設計)することが可能となる。さらに、既に記述したアミノ酸残基の立体的配置や水分子の三次元的な配置を規定することで、コンピューターによるKeap1タンパク質に結合する化合物の分子設計やスクリーニングができる。
【0066】
以下に、Keap1タンパク質に結合する化合物の分子設計方法、ファーマコフォアの設計方法及びファーマコフォアを用いたスクリーニング方法について記載する。
【0067】
(Keap1タンパク質に結合する化合物の分子設計方法)
本発明のKeap1タンパク質の原子座標を用いることでKeap1タンパク質に結合する化合物の分子設計(活性上昇、選択性付与など)が可能となる。また、得られた化合物の誘導最適化に活用することも可能となる。例えば、スクリーニングによって得られたKeap1タンパク質に結合する化合物を、コンピューターによってドッキングモデル構造を予測することも可能である。このモデル構造は、化合物と近傍のアミノ酸残基との相互作用を増強させるような誘導方向性を見出す上で、非常に有用である。さらに、活性には影響を与えずに、代謝、毒性などの改善を進める上で適当な方向性を提示することもできる。加えて、薬理試験や代謝試験における種差の考察や、副作用軽減を目的として標的タンパク質に対する選択性を向上させるための誘導合成を支援する上で最も有用な情報を提供できる。
【0068】
(ファーマコフォアの設計方法)
ファーマコフォアの設計は、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むKeap1部分タンパク質と低分子化合物との複合体結晶の原子座標により表される3次元構造を解析し、ファーマコフォアとして使用し得る部分構造(アミノ酸残基、構造水等)を特定する工程、及び、該部分構造を特性球に変換し、ファーマコフォアを発生させる工程、により実施できる。
【0069】
ファーマコフォアとして使用し得る部分構造を特定する工程は、目視及び/又は適切なコンピュータープログラムを使用しても良い。また、部分構造を特性球に変換し、ファーマコフォアを発生させる工程は、コンピューターシステムを用いることにより実施できる。例えば、市販のソフトウェアと該ソフトウェアを作動可能なコンピューターシステムが利用でき、ソフトウェアとしてはMOE(ccg社)等が挙げられる。
【0070】
(ファーマコフォアを用いたスクリーニング方法)
設計したファーマコフォアと解析用ソフトウェアを用いて、Keap1タンパク質に結合する化合物のスクリーニングを行うことができる。ソフトウェアはリガンドからの化学的機能の抽出及び抽出した化学的機能と類似した空間配置を取り得る化合物の検索が可能なソフトウェアであれば何を用いても良く、例えば、解析用ソフトウェアであるMOE(ccg社)やSybyl(トライポス社)のモジュールであるUnity等を用いてもよい。この際、化合物のクラスタリングが必要であれば、Daylight Clustering Package(Daylight Chemical Information Systems,Inc.,Mission Viejo,CA)等のプログラムを使用することが可能である。以下、MOE(ccg社)を使用した例を示す。
【0071】
設計したファーマコフォアを用いて、あらかじめ準備したコンピュータースクリーニング用の化合物構造データベースを対象としてスクリーニングを実施する。ファーマコフォアの情報とある化合物の立体構造の空間配置とを比較し、該化合物がファーマコフォアの性質を満足させるものであるかどうかを計算により決定する。コンピュータースクリーニングの利点として、検索対象が理論上考え得る全ての化合物の部分集合であることが挙げられる。通常は、自社で保有する化合物のデータベース、市販化合物データベース(例えば、Available Chemical Directory(MDL社)又はバーチャルコンビナトリアル合成手法等を用いて発生させた仮想化合物のデータベース、天然物由来の化合物データベース、医薬品データベース等をコンピューター検索用に変換して用いることができる。
【0072】
また、検索式でヒットした化合物群をデータベース化し、引き続きタンパク質構造を市販のドッキングソフトウェアに適用することによってヒット率を増すこともできる。また、Keap1タンパク質に結合する化合物は、MVD(Molregro社)等を用いてコンピュータースクリーニングする際に有効なフィルターとして使用することができるし、各ファーマコフォアに対して適合するフラグメントを配置した後に各フラグメントを適当な官能基で結合させて化合物を構築すること(De Novo設計的使用)も可能である。上記コンピュータースクリーニングによりヒットした化合物群は、一定の確率で、Keap1タンパク質に結合する化合物となり得る。
【0073】
本明細書に記載の原子座標は、さらに全長のKeap1タンパク質又は変異Keap1タンパク質の結晶構造と、化合物が結合したようなKeap1タンパク質の複合体の結晶の構造とを決定するための位相調整モデルとして用いることができる。原子座標と、そこから得られる三次元構造とを用いてNMRによって得られるような、本来のKeap1タンパク質又は変異Keap1タンパク質の溶液に基づく構造解析にも役立てることができる。このように、本発明の結晶及び原子座標は、Keap1タンパク質の構造及び機能を解明するための手段を提供する。
【実施例】
【0074】
以下、実施例及び参考例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、以下の記載において、NMRデータ中の溶媒名は、測定に使用した溶媒を示している。
【0075】
また、400 MHz NMRスペクトルは、JNM−AL400型核磁気共鳴装置(日本電子)を用いて測定した。ケミカルシフトは、テトラメチルシランを基準として、δ(単位:ppm)で表し、シグナルはそれぞれs(一重線)、d(二重線)、t(三重線)、q(四重線)、quint(五重線)、sept(七重線)、m(多重線)、br(幅広)、dd(二重二重線)、dt(二重三重線)、ddd(二重二重二重線)、dq(二重四重線)、td(三重二重線)、tt(三重三重線)で表した。IRスペクトルはFT/IR−410(日本分光)を、ESI−MSスペクトルは、Micromass ZQ2K(Waters)又は1200LC/MSD(AgilentTechnology)を用いて測定した。溶媒は全て市販のものを用いた。フラッシュクロマトグラフィーはYFLC W−prep2XY(山善)を用いた。
【0076】
上記の尿素誘導体(実施例1の化合物)の原料及び中間体については、以下の参考例に記載する方法で合成した。なお、参考例化合物の合成に使用される化合物で、合成法の記載のないものについては、市販の化合物を使用した。
【0077】
(参考例1) 2−(3−シアノフェノキシ)酢酸エチルの合成:
【化5】

3−ヒドロキシベンゾニトリル(1.429g、12mmol)、炭酸カリウム(2.156g、15.8mmol)のアセトン(120mL)溶液に、ブロモ酢酸エチル(2.81g、18.8mmol)を加えて室温にて攪拌した。11時間撹拌を継続した後、セライトにより濾過し、濾液を減圧下濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、n−ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、表題化合物(2.46g、11.9mmol、99%)を無色油状物として得た。
1H‐NMR (400 MHz, CDCL3) δ: 1.29 (3H, t, J=7.8Hz), 4.13 (2H, q, J=7.8Hz), 4.96 (2H, s), 7.27‐7.48 (3H, m),7.61(1H, s)
ESI‐MS: m/z= 206 (M+H)+
【0078】
(参考例2) 2−(3−シアノフェノキシ)酢酸の合成:
【化6】

2−(3−シアノフェノキシ)酢酸エチル(616mg、3mmol)のテトラヒドロフラン(12mL)及び水(6mL)溶液に、4mM水酸化リチウム水溶液(3.75mL)を加え、1時間撹拌した。その後、1N塩酸水溶液を反応系に滴下し、液性をpH<1まで酸性とした後、塩化メチレン(20mL)にて抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウム溶液(10mL)で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過し、濾液を減圧濃縮し、表題化合物を白色固体(531mg、99%)として得た。
1H‐NMR (400 MHz, CDCL3) δ: 4.08 (2H, s), 7.27‐7.48 (3H, m),7.64(1H, s)
ESI‐MS: m/z= 177 (M+)
【0079】
(参考例3) 2−(3−(アミノメチル)フェノキシ)酢酸の合成:
【化7】

2−(3−シアノフェノキシ)酢酸(100mg、0.564mmol)のメタノール(1.2mL)溶液に、酢酸(1.2mL)を添加し、パラジウム−炭素(10mg)を加え、反応系を水素雰囲気下とした。4時間撹拌を継続した後、反応系をアルゴン雰囲気下へとした。セライトにより濾過し、濾液を減圧下濃縮し、表題化合物(138mg、0.138mmol、131%)を白色固体として得た。
1H‐NMR (400 MHz, CDCL3) δ: 4.36 (2H, s), 4.66 (2H, s), 6.79-7.01 (3H, m), 7.15 (1H, s),
ESI‐MS: m/z= 182 (M+H)+
【0080】
(参考例4) 2,2,2−トリクロロエチル−(5−(フラン−2−イル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)カルバメートの合成:
【化8】

2−アミノ−5−(2−フリル)−1,3,4−オキサジアゾール(3.02g、20mmol)のテトラヒドロフラン(80mL)溶液に、1,4−ジオキサン(40mL)を添加し、ジイソプロピルエチルアミン(3.88g、30mmol)及びクロロ蟻酸2、2,2−トリクロロエチルエステル(4.45g、21mmol)を室温にて加え、室温で20時間撹拌した後、反応液を減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、n−ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、表題化合物(5.11g、78%)を白色固体として得た。
1H‐NMR (400 MHz, CDCL3) δ: 4.84 (2H, s), 6.68 (1H, dd, J=1.5, 7.5Hz), 7.08 (1H, dd, J=1.5, 7.5Hz),7.86 (1H,dd, J=1.5, 7.5Hz) 9.15(1H,bs)
ESI‐MS: m/z= 325,327 (M+H)+
【0081】
(実施例1) 2−(3−((3−(5−(フラン−2−イル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ウレイド)メチル)フェノキシ)酢酸(以下、実施例1の化合物)の合成:
【化9】

2,2,2−トリクロロエチル−(5−(フラン−2−イル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)カルバメート(0.098g、0.3mmol)、及び2−(3−(アミノメチル)フェノキシ)酢酸(0.072g、0.3mmol)のアセトニトリル(1.5mL)溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(0.081g、0.63mmol)を室温にて加え、60℃で12時間撹拌した。反応液を室温まで冷却後、反応液を減圧濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、n−ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、さらにフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム/メタノール)で精製し、2−(3−((3−(5−(フラン−2−イル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ウレイド)メチル)フェノキシ)酢酸、すなわち、実施例1の化合物(0.090g、0.25mmol、84%)を白色固体として得た。
1H‐NMR (400 MHz, DMSO‐d6) δ: 4.38 (2H, d, J=5.6 Hz), 4.65 (2H, s), 6.78 (2H, tt, J=5.12, 2.56 Hz), 6.91 (2H, tt, J=5.6, 8.0 Hz), 7.18 (1H, td, J=2.2, 1.22 Hz), 7.25 (1H, t, J=7.93 Hz), 8.01 (2H, m, J=1.6 Hz), 11.6 (1H, brs), 13.0 (1H, brs)
ESI‐MS: m/z= 359 (M+H)+
【0082】
(実施例2) Keap1タンパク質の部分アミノ酸配列からなるタンパク質(以下、Keap1部分タンパク質)の発現と精製:
1)Keap1タンパク質部分タンパク質の発現:
Huh−7細胞のTotal RNAから逆転写したcDNAを鋳型にして、ヒトKeap1の塩基配列(RefSeq番号:NM_012289)に基づき設計した2つのプライマー、フォワード側:5’−catatggcgcccaaggtgggccgcctg−3’(配列番号3)及びリバース側:5’−ggatcctcaggtgacagccacgcccaccccac−3’(配列番号4)を用いて、PCR法にてDNA断片を増幅し、そのDNA断片をプラスミドベクターpTA2(東洋紡社)にサブクローニングした。ポジティブクローンの塩基配列の解析を行い、目的とするKeap1の部分塩基配列並びに、その5’末端に制限酵素NdeI及び3’末端にBamHI認識配列が付加された配列を有するクローンを得た。
【0083】
このクローンを制限酵素NdeI及びBamHIで切断して得られた、約880bpのKeap1の部分塩基配列を含むcDNA断片を、発現ベクターpET−15b(Novagen社)のNdeI、BamHI開裂部位に挿入し、発現ベクターKeap1/pET−15bを得た。このクローンについて塩基配列を調べた結果、目的の配列が挿入されたクローンであることを確認した。なお、該クローンに含まれる約880bpのKeap1の部分塩基配列は、Keap1タンパク質のアミノ酸残基第322番から第609番までのポリペプチド(配列番号1)をコードする塩基配列である。
【0084】
このように構築した発現ベクターKeap1/pET−15bを大腸菌BL21(DE3) competent cells(Novagen社)へ形質転換した。カルベニシリン(Carbenicillin;ナカライテスク社)選択培地で取得した、カルベニシリン耐性のシングルコロニーを、10mLのカルベニシリン含有LB(GIBCO)培地で37℃にて一晩培養した。翌日、この培養液5mLを270mLのカルベニシリン含有Plusgrow(ナカライテスク社)培地に加え、37℃にてOD600が0.8以上になるまで培養を行った。20℃にて30分間静置した後、終濃度0.4mmol/LとなるようIPTG(ナカライテスク社)を培地に添加し、20℃にてタンパク質誘導を一晩行った。培養液を5,000×g、10分間遠心して得られた大腸菌を、タンパク質精製を実施するまで−80℃にて保存した。
【0085】
2)Keap1部分タンパク質の精製:
1)で得た大腸菌にBugBuster HT(Novagen社)を用いて室温にて20分間反応させることで溶菌した。溶菌した液を20,000×g、20分間遠心することで可溶画分と不溶画分に分画した。不溶画分は、8mol/L Urea(ナカライテスク社)にて再溶解した。可溶画分を回収し、終濃度10mmol/Lになるようにイミダゾール(ナカライテスク社)を添加した後、0.45μmのPVDFフィルター(Millipore)でろ過し、これを精製用サンプルとした。結合緩衝液(20mmol/L Phosphate buffer pH7.4(Wako社)、500mmol/L NaCl(Wako社))で平衡化したHisTrap HP 5mLカラム(GE healthcare社)に、ペリスタポンプを用いて精製用サンプルを添加した。精製用サンプル添加後、カラムをAKTAexplorer 10s(GE healthcare社)に接続し、2%の溶出緩衝液(20mmol/L Phosphate buffer(pH7.4)、500mmol/L NaCl、1 mol/L イミダゾール)でカラムを洗浄した。カラム洗浄後、30%の溶出緩衝液を添加し、Keap1部分タンパク質を溶出した。
【0086】
Keap1部分タンパク質を含む溶出画分を回収し、Amicon Ultra−15(Millipore、MWCO=10,000)を用いて約5mLまで濃縮し、0.45μmのPVDFフィルターでろ過した。次に、このろ液について、ゲルろ過緩衝液(20mmol/L Tris−HCl(pH8.3)(ナカライテスク社)、150 mmol/L NaCl、20mmol/L DTT(ナカライテスク社))で平衡化したHiload 16/60 Superdex200 120mLカラム(GE healthcare社)にて、AKTAexplorer 10sを用いてゲルろ過を行った。
【0087】
ゲルろ過により得られたKeap1部分タンパク質を含む溶出画分を回収し、それをイオン交換緩衝液A(25mmol/L Tris−HCl(pH8.0)、20mmol/L DTT)で2倍に希釈した。この希釈した溶出画分を、ペリスタポンプを用いてイオン交換緩衝液Aで平衡化したHiTrap Q FF 5mLカラム(GE healthcare社)に添加した。次に、AKTAexplorer 10sにカラムを接続後、10%のイオン交換緩衝液B(25mmol/L Tris−HCl(pH8.0)、20mmol/L DTT、1mol/L NaCl)でカラムを洗浄した。引き続き100mLで10〜40%のイオン交換緩衝液BになるようなリニアグラジエントでKeap1部分タンパク質を溶出した。なお、ここで得られたKeap1部分タンパク質のアミノ酸配列は配列番号1に示されており、このアミノ酸配列は、配列番号2に示されるKeap1タンパク質のN末端の第一のメチオニンを1番とした時に、アミノ酸残基第322番から第609番までに相当する。
【0088】
3)Keap1部分タンパク質の確認:
2)で得られたKeap1部分タンパク質について、SDS−PAGEにて精製度を確認した。NuPAGE 4−12% Bis−Tris gel(Invitrogen社)及びNuPAGE MES SDS Running緩衝液(Invitrogen社)を用いて非還元下にて200V、35分間泳動した。なお、分子量マーカーにはNovex Sharp Pre−stained Protein Standard(Invitrogen社)を用いた。泳動終了後、SimplyBlue Safe Stain(Invitrogen社)を用いてゲルをCBB染色し、約35kDaに目的のバンドを確認した。
【0089】
(実施例3) 実施例1の化合物とKeap1部分タンパク質の複合体の共結晶化:
共結晶化は、実施例2で得られたKeap1部分タンパク質(配列番号1)を12.08 mg/mL、20mMトリス(pH8.3)、20mM DTT及び実施例1の化合物(Keap1部分タンパク質の15倍濃度)を含有する溶液中で実施し、得られた結晶は、ハンギングドロップ法を使用して蒸気拡散法によって成長させた。
【0090】
具体的には、下記の通りである。24ウェル培養プレートの貯留層容器を、平均分子量約3350ダルトンの10%(W/V)ポリエチレングリコール、0.1M酢酸カルシウムを含有する0.5mLの沈殿剤溶液で満たした。実施例2で得られたKeap1部分タンパク質(配列番号1)を12.08mg/mL、20mMトリス(pH8.3)、20mM DTT及び実施例1の化合物(Keap1部分タンパク質の15倍濃度)を含有する溶液1μLと沈殿剤1μLとをガラス板上で混合して、ドロップを作製し、ガラス板を裏返して貯留層容器のふたになるようにドロップを下向きにして、24ウェル培養プレートに設置し、隙間ができないようにグリースで密封させて4℃で保管して結晶化を開始した。結晶は、3日〜3週間で現れた。得られた結晶を、30%(W/V)エチレングリコールを添加した母液に浸した後、液体窒素中で瞬間凍結した。
【0091】
(実施例4) X線回折データ収集:
X線回折データはSPring−8(理化学研究所の播磨研究所)のBL26B2(理化学研究所の構造生物学ビームライン)で、波長1.0Åにて、MarMosaic225(Rayonix社)のCCD検出器により収集した。X線回折データは、Otwinowskiらが発表したHKL2000プログラム(Methods of Enzymology、1997年、276巻、p.307−326)によって処理し、分解能が1.8ÅまでのX線回折データを記録した。結晶の単位格子寸法は、a=51Å、b=66Å、c=77Å、α = β = γ = 90°を有し、空間群はP2(1)2(1)2(1)であると決定した。
【0092】
(実施例5) 実施例1の化合物とKeap1部分タンパク質の複合体の結晶の構造決定及び精密化:
実施例1の化合物とKeap1部分タンパク質の複合体の構造は、実施例4で収集したX線回折データをもとに、Keap1アポ型単結晶の立体構造(PDBコード:1U6D)をサーチモデルとして、プログラムMolrep(CCP4i)を利用した分子置換法により決定した。立体構造の構築はプログラムRefmac(CCP4i)で行い、構造精密化は、Brungerらが発表したプログラムCNS(Acta Cryst.、1998年、D54巻、p.905−921)を使った。
【0093】
表1−1〜1−46は、実施例1の化合物とKeap1部分タンパク質の複合体の結晶の原子座標を示しており、当業者において一般的に用いられているプロテインデータバンク(PDB)の表記方法に基づいて表記した。また、表1−1〜表1−46は、データ量が多いため、1つの表を46個の表に分断したものである。
【0094】
なお、表には左から順に以下の内容が記載されている:
Atom number:座標表内の原子の識別番号
Atom Name:特定の座標に存在する原子についての識別子
Residue:鎖中のアミノ酸や結晶中に存在する他の成分(例えば、化合物についてはDRG、水についてはHOHで表す。)
Chain ID:結晶中のタンパク質の一つのモノマーを鎖「X」で示す。タンパク質ダイマーの場合は、2つのChain IDを有する。
Residue Number:鎖中のアミノ酸残基数
X、Y、Z:X、Y及びZ座標値
Occupancy:原子が結晶中に観察される時間の割合を表す。例えば、Occupancy=1は、原子が常に存在することを意味し、Occupancy=0.5は、原子がその時間の50%はその位置に存在していることを示す。
B−factor:原子の熱運動の測定値
Chain ID:上記Chain IDと同様
Element:元素の識別子
【0095】
【表1−1】

【0096】
【表1−2】

【0097】
【表1−3】

【0098】
【表1−4】

【0099】
【表1−5】

【0100】
【表1−6】

【0101】
【表1−7】

【0102】
【表1−8】

【0103】
【表1−9】

【0104】
【表1−10】

【0105】
【表1−11】

【0106】
【表1−12】

【0107】
【表1−13】

【0108】
【表1−14】

【0109】
【表1−15】

【0110】
【表1−16】

【0111】
【表1−17】

【0112】
【表1−18】

【0113】
【表1−19】

【0114】
【表1−20】

【0115】
【表1−21】

【0116】
【表1−22】

【0117】
【表1−23】

【0118】
【表1−24】

【0119】
【表1−25】

【0120】
【表1−26】

【0121】
【表1−27】

【0122】
【表1−28】

【0123】
【表1−29】

【0124】
【表1−30】

【0125】
【表1−31】

【0126】
【表1−32】

【0127】
【表1−33】

【0128】
【表1−34】

【0129】
【表1−35】

【0130】
【表1−36】

【0131】
【表1−37】

【0132】
【表1−38】

【0133】
【表1−39】

【0134】
【表1−40】

【0135】
【表1−41】

【0136】
【表1−42】

【0137】
【表1−43】

【0138】
【表1−44】

【0139】
【表1−45】

【0140】
【表1−46】

【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明のKeap1タンパク質結合化合物は、抗酸化ストレスタンパク質群の発現を誘導し、酸化ストレスに対する生体防御機構を活性化できるため、酸化ストレスを原因とする疾患(癌、種々の循環器疾患、糖尿病、神経変性疾患等)の治療薬又は予防薬の候補化合物とすることができる。さらに、本発明の複合体、共結晶及び共結晶化方法は、Keap1タンパク質と相互作用する化合物をSBDDで探索する際に必要な立体構造情報の取得を可能にし、酸化ストレスを原因とする疾患の治療薬又は予防薬、その他有益な低分子化合物の創出に利用できる。
【配列表フリーテキスト】
【0142】
配列番号1:Nrf2結合領域を含むKeap1部分タンパク質
配列番号2:Keap1タンパク質
配列番号3及び4:PCRプライマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列を規準とした場合における第13番目のチロシン、第15番目のアルギニン、第42番目のセリン、第59番目のアルギニン、第61番目のアスパラギン、第195番目のヒスチジン、第197番目のシステイン、第199番目のチロシン、第215番目のアルギニン、第251番目のチロシン、第256番目のフェニルアラニン、第265番目のプロリン及び第266番目のアスパラギン酸からなる群から選択される一以上のアミノ酸残基と相互作用し、
Keap1タンパク質又は配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むKeap1部分タンパク質と複合体を形成するKeap1タンパク質結合化合物。
【請求項2】
配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列を規準とした場合における第13番目のチロシン、第15番目のアルギニン、第195番目のヒスチジン及び第266番目のアスパラギン酸と相互作用する、請求項1記載のKeap1タンパク質結合化合物。
【請求項3】
配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列を規準とした場合における第13番目のチロシン、第15番目のアルギニン、第42番目のセリン、第59番目のアルギニン、第61番目のアスパラギン、第195番目のヒスチジン、第197番目のシステイン、第199番目のチロシン、第215番目のアルギニン、第251番目のチロシン、第256番目のフェニルアラニン、第265番目のプロリン及び第266番目のアスパラギン酸と相互作用する、請求項1記載のKeap1タンパク質結合化合物。
【請求項4】
下記の化学式(I)で示される尿素誘導体又はその薬理学的に許容される塩である、請求項3記載のKeap1タンパク質結合化合物。
【化1】

【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項記載のKeap1タンパク質結合化合物と、Keap1タンパク質又は配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むKeap1部分タンパク質と、の複合体の結晶。
【請求項6】
Keap1タンパク質又は配列表の配列番号1のアミノ酸配列を含むKeap1部分タンパク質を1〜12mg/mLの濃度で含有する標的タンパク質水溶液を調製するA工程と、
前記標的タンパク質水溶液に含まれる前記Keap1タンパク質又は前記Keap1部分タンパク質のモル量に対し、モル過剰量の請求項1〜4のいずれか一項記載のKeap1タンパク質結合化合物を前記標的タンパク質水溶液に加えるB工程と、
B工程の後に、平均分子量が1000〜10000のポリエチレングリコールを5〜30%(W/V)の濃度で含有する5〜20mM酢酸カルシウム溶液を前記標的タンパク質水溶液に加え、請求項5記載の結晶を成長させ、塩析させるC工程と、
を備える、請求項5記載の複合体の共結晶の製造方法。

【公開番号】特開2013−28575(P2013−28575A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167537(P2011−167537)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】