説明

LED光源ユニットを用いた灯具

【課題】砲弾型のLED光源のように透明樹脂モールドのあるLED光源を用いないLED光源ユニットを用いることで、所望の配光設計作業に要する手間を簡略化可能とする。
【解決手段】 LED光源モジュールを透明樹脂モールドを有さず、半導体発光層および拡散層を有する半導体発光装置を搭載したモジュールとする。また、灯具照射方向前方に設けた仮想スクリーンに照射したときに仮想スクリーン上に光源モジュールの発光面が配列することで所定の配光特性を発揮するように光学部材を用いて灯具を構成する。前記光学部材は、前記半導体発光層の光軸と交差する位置に配設したレンズもしくは反射面とし、その焦点位置をLED光源モジュールの発光面とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、灯具に係り、特に車両用信号灯具や車両用信号灯具以外の一般照明などに適用可能な半導体発光装置を用いた灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地球温暖化、環境意識の高まりから白熱電球に換えて低消費電力な半導体発光装置、特に発光ダイオード(LED)を用いた照明装置などの灯具が実用化されている。この種のLEDを光源として用いた車両用灯具として、例えば特許文献1がある。
【0003】
特許文献1に記載の車両用灯具90は、図10に示すようにLEDを光源とするプロジェクタ型ランプ90として、例えばLED光源94と、回転楕円反射面系の反射鏡91と、シェード92と投影レンズ93とを備え、反射鏡91の第一焦点にLED光源94を配置し第二焦点をシェード上とし、第二焦点を投影レンズ93の焦点と一致させた構成としている。符号95は投影レンズホルダ、符号96は光線、符号Xは光軸を示す。
【0004】
LED光源94は、ランバーシアン分布を示している。そのためこれを光源とした灯具においては、面発光によるランバーシアン分布となり、例えば水平方向正面に照度の最高値が出にくい等の配光形成上の問題点が特性が出にくいなどの配光形成上の問題を有することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−61916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明者等は、上記した配光形成上の問題点を解決するため、前記した車両用灯具90において、LED光源94として種々の形態のLED光源とした場合について検討した。
【0007】
図11は、発明者等が検討した種々の形態のLED光源を車両用灯具に適用した場合の代表例を模式的に示す図である。図11(a)はいわゆる砲弾型と称されるドーム型の透明樹脂102にてLEDチップ101をモールドしたLED光源100を用いた場合、図11(b)は面実装型LEDとして実用化されている白色樹脂からなる反射壁113を有するもので、反射壁113内にLEDチップ111を配設し、それらを透明樹脂112にて覆ったLED光源110である。なお、このとき検討したLEDチップは、同じ半導体素子構造のGaN系の面発光型の青色LEDであり、同一面積のものを用いた。また、発光面の上にのみイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)系の蛍光体層を設けたものを用いた。また、透明樹脂はエポキシ樹脂を用いた。
【0008】
図11(a)の砲弾型のLED光源100を上記したプロジェクタ型ランプ90に適用した場合には、ドーム型の透明樹脂モールド102によるレンズ効果によりLEDチップ101の実像位置と反射鏡91の第一焦点位置が所定の設定位置からずれてしまい、所望の配光特性を得るのが困難となった。図11(b)の面実装型LEDの場合には、ドーム型の透明樹脂モールド102のようなレンズ効果による屈折作用が生じての影響は小さかったものの反射壁113による反射光とLEDチップ111からの直接光あることから反射鏡91の第一焦点位置が所定の設定位置がずれてしまい、所望の配光特性を得るのが困難となった。
【0009】
本願発明はこれらの検討に鑑みてなされたものであり、ドーム型の透明樹脂モールドを設けた場合および反射壁内において透明樹脂にて覆った場合のLED光源を光源した場合に比べて、所望の配光特性を設計し易いLED光源を用いた灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、発光面に対し交差する方向に光軸を有する半導体発光層と、前記発光層の発光面上に設けた少なくとも波長変換粒子もしくは拡散粒子を含有する拡散層とを有する半導体発光装置と、前記半導体発光装置の発光面もしくはその近傍に一つ以上の焦点を有する投影レンズ若しくは反射面を有する光学部材を備えた灯具であって、前記灯具は、灯具照射方向前方に設けた仮想スクリーンに照射したときに仮想スクリーン上に前記発光面が配列することで所定の配光特性を有するように前記半導体発光装置の光路を調整する前記レンズもしくは反射面を有する光学部材が配設され、前記拡散層は、発光面の平行な方向に延在する導光層を有さないで空気層もしくは微小レンズ素子群を介して空気層と接しており、前記半導体発光装置は、前記拡散層を通って照射する配光特性が前記光軸を通る発光装置断面輝度分布が急峻な立ち上がりを示し、
前記光学部材は、前記半導体発光層の光軸と交差する位置に配設され、光学部材の少なくとも一つの焦点が前記発光面の端部もしくは中央部またはそれらの近傍に配設している、ことを特徴とする灯具を提供する。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、灯具からの照射光は、半導体発光装置から照射される光のうち輝度の高い半導体発光素子の正面の光を有効に利用することができる。また、半導体発光装置からの照射光を光学部材により所望の配光特性をなすようにする際に、光源となる半導体発光装置の位置がレンズ効果により屈折することがないので配光設計を容易に行なうことができる。また、透明樹脂を充填する反射壁もないので発光面の大きさを小さくして設計することができ、投影レンズなどの光学部材を小型のものとすることができ得る。従って、灯具全体の小型化を図ることができ得る。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、所望の配光特性を得るための設計作業を、透明樹脂レンズを介する場合に比べて容易にすることが出来、総じて灯具のコストを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態である灯具の模式的な断面図である。
【図2】図2は、評価用サンプルa〜cの半導体発光装置を示す概略断面図である。(a)が評価用サンプルa、(b)が評価用サンプルb、(c)が評価用サンプルcを示す。
【図3】図1に示した灯具に用いる光源ユニットの概略断面図である。
【図4】本発明の実施形態に用いるLEDのチップ縦断面輝度分布を説明するための図である。
【図5】本発明に係る第2の実施の形態である灯具の縦断面図である。
【図6】本発明に係る第2の実施の形態である灯具の分解斜視図である。。
【図7】本発明に係る第3の実施の形態である灯具の模式的な縦断面図である。
【図8】本発明に係る第3の実施の形態である灯具による配光パターンを説明する平面図である。
【図9】図8の配光パターンを形成する光源像を模式的に示した配光パターン説明図である。
【図10】従来のプロジェクター型前照灯を示す縦断面図である。
【図11】従来のプロジェクター型前照灯においてLED光源を透明樹脂モールドを有するLEDとした検討例を説明する模式的な断面図。(a)が砲弾型LED光源を用いた場合、(b)が反射壁を有する面実装型LED光源を用いた場合である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態である灯具について図面を参照しながら説明する。
【0015】
以下の実施の形態では、投影光学系として反射およびと投影レンズを組合わせた光学系と、投影レンズのみを用いた光学系の2種類の実施の形態について説明し、反射光学系として反射面を用いた1種類の実施の形態について説明する。また、各々の光学系とした灯具において、特にことわりのない限り、光源は半導体発光装置、具体的には発光ダイオードを用いた白色光とした光源を用いた例にて説明する。
【0016】
<第1の実施の形態>
図1は本発明の第1の実施態様に係る灯具200の構成の一例を示す概略断面図である。本実施形態の灯具200は、例えばすれ違いビーム用の車両用のヘッドランプであり、図1に示すように、光源ユニット210、反射面220、シェード230、投影レンズ240等を備えている。反射面220、シェード230、投影レンズ240が投影光学系に相当し、光源からの光を最初に捉える反射面220が本発明の光学部材に該当する。図3は光源ユニット210の概略断面図である。
【0017】
光源ユニット210は、図3に示すように半導体発光装置211を有する。半導体発光装置211は、本発明における半導体発光層212と、半導体発光層212上に設けた蛍光体粒子を含有する拡散層214を有する。半導体発光層212は、例えばGaN系の青色半導体発光層でありサファイア基板の上にエピタキシャル成長される。半導体発光層212を有するLEDチップ213は半導体発光層と垂直な方向に向かって光出射する。拡散層214は、LEDチップ213上に蛍光体粒子を塗布もしくは蛍光体粒子分散溶液を塗布することで形成される。なお、半導体発光装置211については後に詳細に説明する。半導体発光装置211は、セラミック基板215の一方の表面上に搭載される。セラミック基板215上には図示しない給電用の配線が金属メッキなどにより形成されており、半導体発光層212と電気的に接続する。またセラミック基板の他方の表面側、図3において下方側、には半導体発光装置211から生じる発熱を放熱するためのヒートシンク216が設けられている。また、半導体発光層212の光軸Xは図1に示すように番線方向に対して後ろ側に傾斜するように配設される。
【0018】
反射面220は、本発明における光学部材である。反射面220は前記光軸Xと交差する位置に設けられ反射面220と光源ユニット210の間には空気層250が存在する。また、前記反射面220は、第1焦点を半導体発光装置211の発光面上もしくはその近傍、より具体的には、前記発光層212の反射面側の表面端部もしくは中央部またはそれらの近傍とし、第2焦点をシェード230上の近傍とした回転楕円放物面系の反射面とされている。これにより半導体発光装置211から放射された光L1はシェード230近傍の第2焦点に向かって反射する。
【0019】
シェード230は、黒色とした金属材料などからなり反射面220の第2焦点近傍に設けられる。シェード230にて、投影方向前方に設けたスクリーン上において法規にて定められたすれ違いビームの配光パターンとなるように一部の光を遮光する。なお、灯具200を複数個用い、それら複数個の灯具による配光パターンを合成して車両用灯具のすれ違い配光パターンを形成する場合には、シェード230の形状はすれ違い配光パターンの一部をなすように適宜調整される。
【0020】
投影レンズ240は反射面220にて反射された光を投影方向前方に向かって照射する半球状の非球面レンズであり、ガラスもしくはアクリルなどの透明樹脂により形成される。また、その焦点位置は前記第2焦点位置と一致して設ける。
【0021】
本例によれば、光源としてLED光源ユニットを用いることにより、灯具を小型化することができる。また、所望の配光特性を設計し易いLED光源ユニットを用いた灯具とすることができる。
【0022】
本実施の形態において、半導体発光装置211には透明樹脂レンズを形成していず、半導体発光層212上に拡散層214を有するのみの構成とされている。そして拡散層214が空気層250と接している。この透明樹脂レンズを有さない半導体発光装置211について詳述する。
【0023】
まず、半導体発光装置に設ける透明樹脂レンズの作用を検討するために、評価用サンプルa〜評価用サンプルcを作成して半導体発光装置に設ける透明樹脂レンズの形態の違いによる影響を別途検討した。
【0024】
図2は評価用の半導体発光装置を示す概略断面図であり、図2(a)は透明樹脂からなる半球状レンズを設けた評価用サンプルa、図2(b)は透明樹脂からなる平面レンズを設けた評価用サンプルb、図2(c)は透明樹脂からなるレンズを設けなかった評価用サンプルcを示す。
【0025】
<評価用サンプルa>
図2(a)の半導体発光装置120は、板状のセラミック基板124上にLEDチップ121を搭載し、LEDチップ121およびセラミック基板124の一部はLEDチップ121の中央を中心とした半球状の透明樹脂レンズ123にて、LEDチップ121の上面および側面の全てが覆われている。透明樹脂レンズ123は半球状をなしているので、LEDチップ121の半導体発光層122から放射する光は半球状の透明樹脂レンズ123を通った後、外部となる大気(空気層)との界面において殆ど反射することなく外部に取り出すことができる。なお、セラミック基板124上には図示しない給電用の一対の電極ラインがメッキ等により配設されている。透明樹脂として屈折率1.5のシリコーン樹脂を用いた。このときの、中心光度は29000cd、光源全光束は203lm、投影角度は約4.0°であった。なお、投影角度は、焦点距離が20mmのコリメートレンズにてLEDチップからの照射光を平行光線に変換して投影したときの25m前方スクリーン上における大きさを角度で示すものである。
【0026】
<評価用サンプルb>
図2(b)の半導体発光装置130は、板状のセラミック基板124上にLEDチップ121を搭載し、LEDチップ121およびセラミック基板124の一部は矩形形状の平面レンズ(透明樹脂レンズ)133にて覆われている。平面レンズ(透明樹脂レンズ)133はLEDチップ121の全周側面および上面を覆っておりその表面は平坦面となっている。よって、LEDチップ121の半導体発光層122から放射する光は、平面レンズを通った後に外部に取り出される。このとき、LEDチップ121からセラミック基板124に対して垂直な方向に出射する光の成分は、透明樹脂レンズ133と大気との界面において殆ど反射することなく外部に取り出すことができる。一方、LEDチップ121から斜め方向に向かう光の成分は、一部は外部に取り出すことができるものの、前記界面にてスネルの法則に基づいて内面反射され、平面レンズ133内を導光して、繰り返し反射した後に一部のみが外部に出射する。平面レンズ133に用いた透明樹脂は評価用サンプルaと同一材料を用いた。このときの、中心光度は27000cd、光源全光束は96lm、投影角度は約2.8°であった。
【0027】
<評価用サンプルc>
図2(c)の半導体発光装置140は、板状のセラミック基板124上にLEDチップ121を搭載している。評価用サンプルcの半導体発光装置140は、LEDチップ121およびセラミック基板124の一部を覆う透明樹脂レンズを形成していない。このときの、中心光度は42000cd、光源全光束は200lm、投影角度は約2.8°であった。
【0028】
上記した評価用サンプルa〜cのいずれの場合においてもLEDチップ121として同一の構造のものを使用し、同一条件にて点灯している。
半球状レンズ(評価用サンプルa)から平面レンズ(評価用サンプルb)に変えることで、投影角度は約半分になり、中心光度も約半分に低下する。また、中心光度も低下している。なお、投影角度とはセラミック基板124に垂直な光軸を基準とした半導体発光装置により照射可能な角度をいう。一方、透明樹脂レンズを設けない場合(評価用サンプルc)には、半球状レンズ(評価用サンプルa)に対し、中心光度は約1.5倍に増加し、光源光束に大きな変化がなかった。なお、投影角度は平面レンズを設けた場合に比べ小さくなるが、おおよそ等しい大きさであった。
【0029】
これら評価用サンプルの検討から、半導体発光装置として透明樹脂レンズを設けない評価用サンプルcが最も中心光度が高く明るく、かつ、投影光源像を小さくした光源ユニットを得られると考えられる。
【0030】
また、灯具において反射面220と光源位置との関係は精度良く固定しなければならない。特に所望の配光パターンを形成する必要がある場合には、両者の位置精度は重要である。光源位置が反射面220の焦点位置とずれると狙い通りの配光特性が得られない。反射面220と半導体発光装置210を位置精度良く固定しても、レンズ作用を有する透明樹脂が存在すると、その実像位置にあわせた補正を反射面に適用しなければならない。しかしながら、第2焦点位置を保ったまま第1焦点位置を光路に応じて変えた反射面を設計するのは容易ではない。そこで、透明樹脂レンズを設けない構成、すなわち評価用サンプルcと同様の構成を光源ユニット210とするのが良い。
【0031】
そこで、前記した灯具200において、光源ユニット210は前記評価用サンプルcと同様な構成、すなわち、図3に示したように半導体発光層212上に拡散層214のみを有し拡散層214は空気層250と接するものとした。LEDチップ213は、サファイア基板上に結晶成長させることにより形成され、n型GaN層、InGaN層およびp型GaN層等を有し、ダブルヘテロ構造、量子井戸構造などとした発光層212を有す。半導体発光層212は、供給される電力に応じて、例えば360〜420nm程度の紫外線または短波長可視光線を発するものとされ、青色発光を行なうものが好適である。拡散層214は、例えば50μm程度の粒子径を有する蛍光体、例えばYAGをシリコーン樹脂またはエポキシ樹脂のバインダ中に高濃度に分散させて半導体発光層の上にのみ塗布形成する。これにより拡散層214は蛍光体にて波長変換するとともにLEDからの照射光を一部拡散する。
【0032】
図4は拡散層214として蛍光体粒子を分散した拡散層214を厚みを均一に設けた場合のチップ縦断面輝度分布である。図面からわかるようにLEDチップ中心部を最大として周囲に行くほどなだらかに低下する輝度分布を示す。また、輝度分布の立ち上がりは急峻であり、急峻に立ち上がった後になだらかな分布を示している。これは拡散層214にて蛍光体粒子により波長変換された光およびされなかった光が拡散して照射されるので、チップ周囲ほど断面輝度が低下しているものと考えられる。なお図4において横軸はLEDチップの縦断面における位置を中心を0mmとした長さにて示すもので、縦軸は輝度を任意のスケールにて表したものである。なお、発光装置断面輝度分布が急峻な立ち上がりとは、断面における発光装置端部の外側近傍において輝度分布の変曲点を有する輝度分布をいい、明確な変曲点を有さないブロードな輝度分布を含まない。
【0033】
透明樹脂レンズを半導体発光装置に設けない場合には、断面輝度分布において急峻な立ち上がりを示し、かつ、中心光度が高い。このような半導体発光装置211を用いた光源ユニット210とすることで、反射面220、特に光軸L1と交差する位置の反射面にて高い光度の光を利用することができ配光設計上好適である。なお、透明樹脂レンズを設けないとは、半導体発光層の側面を実質的に覆う透明樹脂レンズが存在せず、かつ、半導体発光層の発光面側を覆う大きなレンズ素子もしくは前記した導光作用を発揮する平面レンズが実質的に存在しないこと、すなわち評価用サンプルaおよび評価用サンプルbのような透明樹脂レンズを設けた例を排除するものである。また、本実施の形態では、従来技術に記したような反射壁112も有していない。よって、反射面220の第1焦点位置と光源位置が、透明樹脂レンズを設けた評価用サンプルaを用いた場合のようにレンズ作用により、その実像位置と焦点位置が一致しない、といった不都合が生じることはない。
【0034】
本実施の形態において半導体発光装置は中心光度が高く、光源光束も高いので、半導体発光装置211から照射される光を取扱う最初の光学部材、すなわち本実施形態における反射面220を小さくしても効率よく光を利用できることになる。従って光学系を小さなものとしても灯具全体の照度を高く保つことができる。また、投影レンズ240も小さくすることができるので灯具全体の軽量化も図ることができる。さらに、光束の高い光軸方向の光を制御するにあたり透明樹脂レンズが介在していないのでレンズ効果による屈折を考慮する必要がなく、反射面の設計が容易になり、総じてコスト低減を図ることができる。
【0035】
<第2の実施の形態>
図5および図6は本発明の第2の実施態様に係る灯具300を示すもので、図5が概略断面図、図6は分解斜視図である。本実施形態の灯具300は、例えば車両用のフロントフォグランプであり、図5に示すように、光源ユニット310、投影レンズ340等を備えたダイレクトプロジェクション方式の灯具である。本実施の形態においては投影レンズ340が本発明の光学部材に該当する投影光学系である。
【0036】
光源ユニット310は、半導体発光装置311を有する。半導体発光装置311は、本発明における半導体発光層と、半導体発光層上に設けた蛍光体粒子を含有する拡散層を有する。半導体発光層および拡散層は第1の実施の形態と同一であるので、ここでの説明は省略する。半導体発光装置311は、金属製のヒートシンクを一体に設けた台座313上に図示しない絶縁性のセラミック基板を介して搭載される。
【0037】
台座313は、ベースプレート304と位置調整可能にネジ305にて固定され、ベースプレート304が位置調整ネジ306にて投影レンズホルダ302と固定される。投影レンズホルダ302には非球面投影レンズ340が配設されている。
【0038】
投影レンズ340は、その焦点が半導体発光装置311上に位置するようにし、また、半導体発光装置311の光軸と投影レンズ340の光軸は一致させる。これにより半導体発光装置311からの光を投影することができる。投影レンズ340と半導体発光装置311の間には空気層350が介在しており半導体発光装置311には、第1の実施の形態と同様に透明樹脂レンズが設けられていない。よって、投影レンズの焦点位置と光源位置を容易に光学的に位置合わせすることができる。また、最も中心光度が高い光軸と投影レンズの光軸とを一致させているので、灯具300の中心光度を高くすることができる。
【0039】
<第3の実施の形態>
図7は本発明の第3の実施態様に係る灯具400の構成の一例を示す概略断面図である。本実施形態の灯具400は、例えば車両用のすれ違いヘッドランプであり、図8に示すような配光パターンを照射する。光源ユニット410、反射面440等を備えた反射方式の灯具である。本実施の形態においては反射面440が本発明の光学部材に該当する。
【0040】
光源ユニット410は、半導体発光装置411を有する。半導体発光装置411は、本発明における半導体発光層と、半導体発光層上に設けた蛍光体粒子を含有する拡散層を備える。半導体発光層および拡散層は第1の実施の形態と同一であるので、ここでの説明は省略する。半導体発光装置411は、セラミック基板415の一方の表面上にLEDチップ413が搭載される。セラミック基板415の一方の表面上には図示しない給電用の配線が金属メッキなどにより形成されており、半導体発光層412と電気的に接続する。またセラミック基板の他方の表面側にはヒートシンク416が設けられている。また、光軸Xが下向き、図8における下方に向かって照射するものとすることで、光源ユニット410の発光部、すなわちLEDチップ413が外部から視認され難いものとしている。
【0041】
反射面420は、本発明における光学部材である。反射面420は前記光軸Xと交差する位置に設けられ、反射面420と光源ユニット410の間には空気層450が存在する。また、前記反射面420は、LEDチップ413の発光面上、より具体的には前記LEDチップの反射面420と反対側のLEDチップ表面端部もしくはその近傍に焦点Fを有する回転放物面系の反射面もしくは回転放物面を基礎とした所謂自由曲面またはこれらの複合反射面とされている。これにより半導体発光装置411の焦点Fから放射された光線L2(図8において実線にて示す)は、水平方向に向かって照射する。また、焦点より反射面420寄りに位置するLEDチップ表面端部から出射した光線L3(図面上にて点線にて示す)は、下向き光となって灯具投影方向に向かって反射される。これにより発光層から光軸X方向に向かって照射された光束の高い光は、光線L2およびL3とされ、水平線よりも下方に向かって反射するものとされる。これにより水平線より上方に向かう所謂グレア光が生じないようにされるとともに、所望のカットラインを有する配光特性が得られる。なお、図6において符号500で示すものは灯具400の照射方向前方に設けたスクリーンである。
【0042】
図8はスクリーン500上に照射された配光パターンを示す。スクリーン500は灯具照射方向前方、例えば10m前方に設けて配光パターンを確認するためのものである。すなわちスクリーンは灯具を構成するものではない。よって、スクリーン500が本発明における仮想スクリーンに相当する。
スクリーン500上において灯具400の光軸を通る水平面との交線をH軸、光軸を通る垂直面との交線をV軸として表している。すれ違い配光のパターンはH軸上もしくはH軸より僅かに下側に水平カットオフラインCL1と水平に対して15°斜め方向の斜めカットラインCL2が形成されている。また、H軸とV軸の交点近傍のH軸より下側の領域が最も明るいものとしている。
【0043】
上記すれ違い配光パターンを形成するためには、反射面420を複数のエリアに分割し、各々の領域における反射方向を調整することにより、かかる配光パターンを形成するのが好適である。本実施の形態では反射面420を焦点Fとした回転楕円面を基本とした多数の自由曲面からなる複合反射面とした。そのため反射面420における各々の反射領域毎に反射面が異なり、各々の領域が焦点Fを有するものではない。しかしながら、反射面420全体として単一の焦点Fと近似して捉えることができ、このような反射面も本発明に係る焦点を有する光学部材に含まれる。
【0044】
図8のような配光パターンを得るためには、反射面420に設けた各々の反射領域によりLEDチップ413の発光層像を投影反射し、かかる投影像を合成することで所定の配光パターンを得るようにするのが好適である。図9は、スクリーン500上に投影した発光層像の合成例を示す。図9に示すように異なる反射領域からの光を発光層の大きさが異なるようにして複数重ね合わせることで所望の配光特性とすることができ好適である。図9のような配光パターンを発光層像を重ね合わせて合成するためには、中心光度の高い光源を用いると明るい灯具とすることができる。また、断面輝度分布が急峻な光源を用い、半導体発光装置の光軸と交差する発光層と平行な平面方向への光照射が小さいものを用いると反射面を小さくすることができる。すなわち光源ユニットと反射面との距離を小さくした小型化した灯具とすることができ好適である。なお、図9において符号P1およびP1’は多数の反射領域により投影反射された発光層像を模式的に示すものである。
【0045】
<第4の実施の形態>
前記した第1の実施の形態の灯具において、本発明に係る半導体発光装置として、半導体発光層上に設ける拡散層を、蛍光体粒子を含有するものに変えて、ガラスビーズなどの拡散作用のある拡散粒子を含有するものとした。それ以外は前記第1の実施の形態と同一とした。これにより発光色は青色の灯具が得られる。
【0046】
<第5の実施の形態>
前記した第1の実施の形態の灯具において、本発明に係る半導体発光装置として、半導体発光層上に設ける拡散層として、蛍光体粒子を含有するシリコーン樹脂を半導体発光層上に形成した。その際に拡散層の表面形状として凹凸形状とし、拡散層が小さなプリズムを多数設けた場合と同様の微小プリズム面とした。それ以外は前記第1の実施の形態と同一とした。これによりチップ断面輝度分布は異なるものとなるものの、急峻な立ち上がりを有するLED光源を得ることができた。またかかる光源を用いた場合においても、同様に中心光度の高いLED光源を用いた灯具が得られた。
【0047】
上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。これらの記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。例えば、拡散層として蛍光体粒子およびガラスビーズの双方を分散させたものを用いたが、蛍光体粒子を公知の電気泳動法を用いて半導体発光層上に積層しバインダ樹脂を含まないものとする。拡散層表面にガラス製のマイクロビーズを離散的に配設した光源なども本発明に包含される。
本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
LED光源と反射面もしくは投影レンズからなる光学部材との間に半導体発光層よりも広い面積のレンズ作用を有する透明樹脂レンズを供えていないので、所望の配光特性とする灯具の設計を比較的容易に行なうことができ、建築用照明、サーチライトなどの集光型投光器を始め、ヘッドランプやフォグランプなどの照明用車両用灯具、スポット照明用光源などの一般照明の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0049】
90 プロジェクタ型ランプ(車両用灯具)
91 回転楕円反射面の反射鏡
92 シェード
93 投影レンズ
94 LED光源
100 LED光源
101 LEDチップ
102 ドーム型の透明樹脂
110 LED光源
111、121、213,413 LEDチップ
112 透明樹脂
113 反射壁
120、130、211、311、411 半導体発光装置
122、212 半導体発光層
123、133、215,415 透明樹脂レンズ
124 セラミック基板
200、300 灯具
210,310、410 光源ユニット
214 拡散層
216,416 ヒートシンク
220,420,440 反射面
230 シェード
240 投影レンズ
250,350、450 空気層
313 台座
302 投影レンズホルダ
304 ベースプレート
500 スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光面に対し交差する方向に光軸を有する半導体発光層と、前記発光層の発光面上に設けた少なくとも波長変換粒子もしくは拡散粒子を含有する拡散層とを有する半導体発光装置と、前記半導体発光装置の発光面もしくはその近傍に焦点を有する投影レンズ若しくは反射面を有する光学部材を備えた灯具であって、
前記灯具は、灯具照射方向前方に設けた仮想スクリーンに照射したときに仮想スクリーン上に前記発光面が配列することで所定の配光特性を有するように前記半導体発光装置の光路を調整する前記レンズもしくは反射面を有する光学部材が配設され、
前記半導体発光装置は、前記拡散層は空気層もしくは微小レンズ素子群を介して空気層と接するとともに、前記拡散層を通って照射する配光特性が前記光軸を通る発光装置断面輝度分布が急峻な立ち上がりを有しており、
前記光学部材は、前記半導体発光層の光軸と交差する位置に配設していることを特徴とする灯具。
【請求項2】
前記半導体発光層がGaN系化合物半導体からなる青色LEDであり、前記拡散層が蛍光体粒子を含有することを特徴とする請求項1に記載の灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−238497(P2011−238497A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109771(P2010−109771)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】