LED発光装置
【課題】放熱性能に優れたLED発光装置を提供する。
【解決手段】上端面に開口する凹部を有した基体2と、基体2の凹部内に取り付けられたLED素子3と、LED素子3を封止する透光性材料からなる封止部材4と、封止部材4の上方に設けられた蛍光体61を含有する波長変換部材6と、を備え、基体2には、LED素子3から発した熱と波長変換部材6から発した熱とを遮断する熱遮断部となる凹溝81が形成されているようにした。
【解決手段】上端面に開口する凹部を有した基体2と、基体2の凹部内に取り付けられたLED素子3と、LED素子3を封止する透光性材料からなる封止部材4と、封止部材4の上方に設けられた蛍光体61を含有する波長変換部材6と、を備え、基体2には、LED素子3から発した熱と波長変換部材6から発した熱とを遮断する熱遮断部となる凹溝81が形成されているようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED素子を備えた発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、窒化ガリウム系化合物半導体を用いて青色光又は紫外線を放射するLED素子と種々の蛍光体とを組み合わせることにより、白色をはじめとするLED素子の発光色とは異なる色の光を発する発光装置が開発されている(特許文献1)。LED素子を用いたこのような発光装置は、小型、省電力、長寿命等の長所があり、表示用光源や照明用光源として広く用いられている。特に近時では高出力、高輝度のLED素子が開発されてきており、その用途は益々拡大の一途にある。
【0003】
ところで、LED素子内部での電力損失は熱エネルギーに変換されジャンクション温度の上昇原因となるが、LED素子は温度に敏感で、温度が上昇すると結晶の熱じょう乱が激しくなり、多数の電子・正孔対が発生し、正常な動作が得られにくくなる。このため、LED素子が高出力化すると、LED素子の発熱量が増大し、その熱によってLED素子そのものが劣化するという問題が生じる。
【0004】
また、蛍光体も熱に脆弱であり、蛍光体自らの発熱やLED素子からの伝熱によって蛍光体も熱劣化する。このため、熱劣化による蛍光体の発光効率や輝度の低下の解決も急務である。
【0005】
そこで従来、このようなLED素子を用いた発光装置の下部に放熱フィンを設け、ここから熱を発散させることが試みられている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−191197号公報
【特許文献2】特開2007−80867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、LED素子から発した熱と蛍光体から発した熱とが発光装置内で分離されずに両者が混ざり合うと、LED素子又は蛍光体のどちらかを優先して冷却したい場合でも、効果的に冷却することができず、LED素子から発した熱と蛍光体から発した熱とを適切に管理し処理することができない。
【0008】
また、図25に例示するような構成を有する発光装置1´では、発光色の色目や照度についてのロット毎でのバラツキを抑制するために、蛍光体61を含有する波長変換部材6を予め作製して、基準光源を使用して波長変換部材6の発光色や照度等を分析し、その結果に従い波長変換部材6を分類・管理してから、所望の発光色や照度等を有するものを選び出して、適合するLED素子3と組み合わせることが試みられている。
【0009】
そして、発光装置1´を製造するに際しては、例えば、図26及び図27に示すような各工程が行われている。すなわち、まず、予め作製した蛍光体61を含有する波長変換部材6によって上側開口部が塞がれた筒状の枠体2を上下逆にして設置する(図26(a))。次いで、枠体2内に、LED素子3の封止材料である透明樹脂4´を所定量充填する(図26(a)〜(b))。そして、透明樹脂4´が硬化する前に、その上にLED素子3が搭載された基板8をLED素子3が下側を向くように設置して、LED素子3を透明樹脂4´で封止する(図27(c)〜(d))。そして、必要に応じて加熱等して透明樹脂4´を硬化させて封止部材4を形成し、発光装置1を完成させる。
【0010】
この際、ポッティングにより枠体2内に充填する透明樹脂4´量は、封止部材4を形成するのに必要な量よりも多めにして、LED素子3が搭載された基板8を透明樹脂4´上に設置する際に、透明樹脂4´が、基板8と枠体2との間に染み出すようにして、透明樹脂4´をこれらの接着剤としても機能させている。
【0011】
しかし、このように基板8と枠体2との間に透明樹脂4´が介在すると、枠体2から基板8への熱の伝導が阻害されるので、波長変換部材6(蛍光体61)から発した熱を、枠体2を経由して基板8へ放出することが困難になり、放熱効率が低下してしまう。
【0012】
本発明はかかる問題点に鑑みなされたものであって、放熱性能に優れたLED発光装置を提供することをその主たる所期課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち本発明に係るLED発光装置は、上端面に開口する凹部を有した基体と、前記基体の凹部内に取り付けられたLED素子と、前記LED素子を封止する透光性材料からなる封止部材と、前記封止部材の上方に設けられた蛍光体を含有する波長変換部材と、を備え、前記基体には、前記LED素子から発した熱と前記波長変換部材から発した熱とを遮断する熱遮断部が形成されていることを特徴とする。
【0014】
このようなものであれば、LED素子から発した熱と波長変換部材(蛍光体)から発した熱とが基体内で混ざり合わないので、それぞれの熱を別個に管理することができる。
【0015】
このような本発明に係るLED発光装置は、更に、前記封止部材を囲むように設けられた環状の断熱部材を備え、前記基体が、LED素子が取り付けられた下部基体と、前記下部基体上に設けられ前記波長変換部材を支持する筒状の上部基体とからなり、前記上部基体が、その側壁の内側周面から突出して設けられ、前記断熱部材を前記下部基体に向かって押圧する環状の押圧部を有し、前記下部基体と前記波長変換部材と前記上部基体とにより閉塞された空間が、前記断熱部材により、前記封止部材が形成された空間と、その外周側に形成された前記透光性材料が流入していない空間とに液密に仕切られていてもよい。このようなものであれば、環状の断熱部材により仕切られた外周側の空間には透光性材料が流入していないので、上部基体の側壁と下部基体との間には透明樹脂等の透光性材料は介在しない。このため、波長変換部材から発して上部基体を介して伝わった熱は、当該透光性材料により妨げられずに、効率的に下部基体に伝えられる。
【0016】
前記断熱部材としては、例えば、弾性変形部材が好適に用いられる。
【0017】
基体内に熱遮断部が形成されている本発明に係るLED発光装置には、前記下部基体の前記LED素子が取り付けられた面とは反対側の面に、前記熱遮断部が形成された位置より内側に設けられたLED素子用放熱フィンと、前記熱遮断部が形成された位置より外側に設けられた波長変換部材用放熱フィンとが配設されていることが好ましい。このようなものであれば、それぞれの放熱フィンの大きさを、LED素子から発した熱量と波長変換部材から発した熱量とに合わせて、適切に選択することができる。
【0018】
このような本発明に係るLED発光装置において、前記下部基体と前記上部基体とを接合するためには、ねじ又は半田ペーストを用いることが好ましい。ねじ又は半田ペーストを用いれば、枠体から基板への熱の伝導を妨げずに両者を密着させることができる。
【0019】
本発明に係るLED発光装置の用途としては特に限定されないが、例えば、照明装置の光源として用いることができる。本発明に係るLED発光装置を光源として用いた照明装置としては、例えば、個々の製品間では放射ピークにバラツキがある同一製品の集合から選び出された放射ピークの分布波長領域が互いに異なる複数のLED素子群にそれぞれ属する複数個のLED素子を有する本発明に係るLED発光装置と、前記複数個のLED素子へ供給する電流値をそれぞれ変化させる電流制御部と、を備えているものが挙げられる。このような照明装置もまた、本発明の1つである。
【0020】
当該照明装置においては、互いに異なる前記LED素子群に属するLED素子が、前記基体上に交互に配置されていることが好ましい。このように同一製品から選び出された放射ピークの分布波長領域が異なるグループに属するLED素子を基体上に交互に配置することにより、各LED素子により励起された波長変換部材の発する光が混ざりやすくなり、当該光が白色光である場合、各白色光の色温度を所定の値に微調整することができる。
【発明の効果】
【0021】
このような構成の本発明によれば、放熱性に優れたLEDパッケージを構築することができ、LED素子や蛍光体の熱劣化を抑制して、長寿命を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係る発光装置の縦断面図である。
【図2】同実施形態に係る発光装置の平面図である。
【図3】同実施形態に係る発光装置の底面図である。
【図4】同実施形態における短波長透過フィルタの透過率及び反射率の概要を示すグラフである。
【図5】同実施形態における長波長透過フィルタの透過率及び反射率の概要を示すグラフである。
【図6】同実施形態に係る発光装置の製造工程(a)〜(b)を示す図である。
【図7】同実施形態に係る発光装置の製造工程(c)〜(d)を示す図である。
【図8】同実施形態における波長変換部材が挟まれた積層体の製造工程(a)〜(c)を示す図である。
【図9】同実施形態における波長変換部材が挟まれた積層体の製造工程(d)〜(f)を示す図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る発光装置の縦断面図である。
【図11】同実施形態に係る発光装置の底面図である。
【図12】同実施形態に係る発光装置の側面図である。
【図13】同実施形態に係る発光装置の製造工程(a)〜(b)を示す図である。
【図14】同実施形態に係る発光装置の製造工程(c)〜(d)を示す図である。
【図15】他の実施形態に係る発光装置の製造工程(a)〜(b)を示す図である。
【図16】同実施形態に係る発光装置の製造工程(c)〜(d)を示す図である。
【図17】同実施形態に係る発光装置の製造工程(e)〜(f)を示す図である。
【図18】他の実施形態に係る発光装置の製造工程を示す図である。
【図19】他の実施形態に係る発光装置の縦断面図である。
【図20】他の実施形態に係る発光装置の縦断面図である。
【図21】本発明に係る発光装置を備えた照明装置の模式的構成図である。
【図22】他の実施形態に係る発光装置を備えた電球の縦断面図である。
【図23】同実施形態における電球の斜視図である。
【図24】同実施形態に係る発光装置の放熱フィンの要部拡大図である。
【図25】従来の発光装置の縦断面図である。
【図26】従来の発光装置の製造工程(a)〜(b)を示す図である。
【図27】従来の発光装置の製造工程(c)〜(d)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第1実施形態>
以下に本発明の第1実施形態について図面を参照して説明する。
【0024】
本実施形態に係る発光装置1は、図1〜3に示すように、LED素子3と、LED素子3を封止する封止部材4と、封止部材4の上方に設けられた波長変換部材6とを備えているものであり、LED素子3と封止部材4と波長変換部材6とは基体2内に収容され保持されている。
【0025】
以下に各部を詳述する。
LED素子3は、紫外線や短波長の可視光線を発するものであり、例えば360〜430nmに放射ピークを有するものである。このようなLED素子3は、例えば、サファイア基板や窒化ガリウム基板の上に窒化ガリウム系化合物半導体がn型層、発光層及びp型層の順に積層してなるものである。
【0026】
LED素子3は、窒化ガリウム系化合物半導体を下にして基板8に半田バンプや金バンプ等(図示しない。)を用いてフリップチップ実装されている。なお、LED素子3は基板8に設けられた配線導体にワイヤボンディングを用いて接続されていてもよい。また、本実施形態においては、複数個(9個)のLED素子3が搭載されているが、LED素子3の数はこの限りではなく、目的・用途に応じて適宜変更することができる。
【0027】
基板8は、アルミニウム、銅、アルミナ、窒化アルミニウム等の熱伝導率が高い材料からなるものであり、基板8の上面には、LED素子3が電気的に接続されるための、例えば銀パターン等からなる配線導体(図示しない。)が形成されている。この配線導体が基体2内部に形成された配線層(図示しない。)を介して発光装置1の外表面に導出されて外部電気回路基板に接続されることにより、LED素子3と外部電気回路基板とが電気的に接続される。
【0028】
封止部材4は、LED素子3を封止するためのものであり、LED素子3から封止部材4へ効率良く光を取り出すためには、透光性及び耐熱性に優れるとともに、LED素子3との屈折率差が小さい、シリコーン樹脂等の透明樹脂からなるものであることが好ましい。
【0029】
波長変換部材6は、内部に蛍光体61を含有しているものであり、例えば、透光性及び耐熱性に優れた、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、低融点ガラス等からなるマトリックス中に蛍光体61が分散しているものが挙げられる。
【0030】
波長変換部材6が含有する蛍光体61としては特に限定されず、例えば、赤色蛍光体、緑色蛍光体、青色蛍光体、黄色蛍光体等が挙げられる。このうち、赤色蛍光体、緑色蛍光体及び青色蛍光体を併用すると、白色光を発する発光装置1を構成することができる。
【0031】
当該波長変換部材6は、下部透光板5と上部透光板7との間にスペーサSとともに挟まれて積層体Aを構成している。ここで、スペーサSは、例えば、銅、アルミニウム等の熱伝導率が高い金属からなり、波長変換部材6を形成されるための貫通孔S1が設けられた平板状のものである。
【0032】
下部透光板5は、例えば、水晶、サファイア、ダイアモンド、石英、窒化アルミニウム等の熱伝導率が高く透光性に優れた材料からなるものである。また、下部透光板5としては、例えば、その表面に銅やアルミニウム等の熱伝導性に優れた金属をライン状や格子状等に蒸着することによって、透光性を担保しながら熱伝導性を向上させたガラス基板を用いることもできる。
【0033】
下部透光板5には、430nm近傍を境界として、光の透過率と反射率とが逆転する誘電体多層膜を形成してもよく、これにより、図4に示すように、長波長の可視光線を反射して、紫外線や短波長の可視光線を選択的に透過するローパスフィルタとして用いることができる。
【0034】
上部透光板7は、下部透光板5と同様に、例えば、水晶、サファイア、ダイアモンド、石英、窒化アルミニウム等の熱伝導率が高く透光性に優れた材料からなるものが用いられる。
【0035】
上部透光板7には、430nm付近を境界として、光の反射率と透過率とが逆転する誘電体多層膜を形成してもよく、これにより、図5に示すように、紫外線や短波長の可視光線を反射して、長波長の可視光線を選択的に透過するハイパスフィルタとして用いることができる。
【0036】
下部透光板5及び上部透光板7にそれぞれ誘電体多層膜を形成し、下部透光板5をローパスフィルタとし、上部透光板7をハイパスフィルタとした場合、蛍光体61に当たらずに波長変換部材6を通過した紫外線や短波長の可視光線は、上部透光板7で反射して、再度、波長変換部材6内を進行する。このため、紫外線や短波長の可視光線が蛍光体61に当たる確率が向上するので、より多くの紫外線や短波長の可視光線が長波長の可視光線に変換され、その結果、発光装置1からの発光量が増加する。また、蛍光体61が発する長波長の可視光線のうち、LED素子3側に向かって逆進したものは、下部透光板5で反射し、進行方向を変えて上部透光板7に向かい、当該フィルタ7を透過して発光装置1外に射出されるので、長波長の可視光線の取り出し効率も向上する。従って、波長変換部材6が、下部透光板5(LED素子3側)と上部透光板7(光射出面側)との間に挟まれていることによって、紫外線や短波長の可視光線を効率的に長波長の可視光線に変換し、更に、変換された可視光線を効率的に発光装置1外に取り出すことができる。
【0037】
また、上述のとおりLED素子3側に向かって逆進した長波長の可視光線は、下部透光板5で反射されるので、基体2の凹部の側面及び底面を含む内面に到達する長波長の可視光線が減る。LED素子3は従来の光源に比べて極めて長い寿命を有するが、基体2の凹部内面に到達する長波長の可視光線を減らすことができれば、当該可視光線に長時間曝されることによって引き起こされる基体2の凹部内面に形成されたリフレクタの経時劣化が抑制され、延いては、発光装置1の発光色の変化も抑制される。
【0038】
基体2は、上端面に開口する凹部を有するものであり、例えば、アルミニウム、銅、アルミナ、窒化アルミニウム等の熱伝導率が高い材料からなるものが挙げられる。
【0039】
基体2の凹部の側面には環状をなす突条部23が形成されており、当該突条部23の上端面上には積層体Aが載置されている。なお、基体2の凹部には、図2に示すように、四隅に角取り孔24が形成されており、凹部内に積層体Aを嵌め込む際にその角部が妨げとならないようにしてある。また、基体2の凹部の側面及び底面を含む内面には、銀、アルミニウム、金等の金属メッキ等が施されることにより高反射率の金属薄膜が形成されており、リフレクタとして機能している。そして、上部透光板7で下方向に反射され、波長変換部材6と下部透光板5とを透過した紫外線や短波長の可視光線を、当該金属薄膜により、再度、波長変換部材6に向けて反射することができる。
【0040】
なお、封止部材4や波長変換部材6を構成するシリコーン樹脂等は気体透過率が高いが、本実施形態では下部透光板5及び上部透光板7が、基体2の凹部内への気体や水分の侵入を抑制することができるので、基体2の凹部内面に形成された金属薄膜の酸化、硫化、塩化等による腐食等を防止することができる。
【0041】
基体2には、その底面から下垂する放熱フィン9が設けられている。放熱フィン9は、その外表面に、列方向に延びる複数段の凹溝Tを設けることにより、隣り合う凹溝Tと凹溝Tとの突条部分が放熱機能を奏するように構成してあるものである。放熱フィン9は、LED素子3から発した熱を放出するためにLED素子3の下方に設けた放熱フィン9aと、波長変換部材6から発した熱を基体2を介して放出するために基体2の側壁の下方に設けた放熱フィン9bとからなり、LED素子3から発した熱と波長変換部材6から発した熱は、それぞれ放熱フィン9aの外表面と放熱フィン9bの外表面とから放出される。
【0042】
基体2の凹部の底面には、LED素子3を取り囲むようにして凹溝81が形成されており、当該凹溝81が基体2内において、LED素子3から発した熱が拡散するのを防ぎ、LED素子3から発した熱と波長変換部材6から発した熱とを遮断するように機能する。
【0043】
次に、本実施形態に係る発光装置1の製造方法について、図6〜9を参照して説明する。
【0044】
まず、図6(a)〜(b)に示すように、基体2の凹部内に、突条部23の上端面より膨出する程度に多めに透明樹脂4´を充填する。しかる後、図7(c)〜(d)に示すように、予め作製された、下部透光板5と上部透光板7との間にスペーサSとともに波長変換部材6が挟まれてなる積層体Aを、突条部23の上端面上にその周縁部が載置されるように配設する。すると、溢れた透明樹脂4´が突条部23の上端面と積層体Aの下面との間に浸み出して、基体2と積層体Aとを接着する接着剤として機能する。
【0045】
ここで、下部透光板5と上部透光板7との間にスペーサSとともに波長変換部材6が挟まれてなる積層体Aは、上述のとおり予め作製しておくが、当該積層体Aは次のようにして作製する。
【0046】
まず、複数個分の下部透光板5(又は上部透光板7)に相当する大きさの大型フィルタ上に、複数個分のスペーサSに相当する大きさの多数の貫通孔S1が設けられた金属板を重ねて配置する(図8(a))。ここで、当該スペーサSは、積層体Aを突条部23の上端面上に配置した際に、基体2の上端面と上部透光板7の上面とが略面一になるように、積層体Aの高さを調節するものである。
【0047】
次いで、貫通孔S1に内に、蛍光体61を含有する樹脂組成物6を所定量充填する(図8(b)〜(c))。
【0048】
その後、スペーサS上に複数個分の上部透光板7(又は下部透光板5)に相当する大きさの大型フィルタを重ねて配置する(図9(d))。
【0049】
そして、必要に応じて加熱等して樹脂組成物6を硬化させることにより、波長変換部材6がスペーサSとともに下部透光板5と上部透光板7との間に挟まれてなる積層体Aの複数個分が一体となった積層体を形成することができる(図9(e))。
【0050】
このようにして得られた複数個の積層体Aが一体となった積層体を切断して、一個ずつ切り離すことにより、複数個の積層体Aを一度に作製することができる(図9(f))。
【0051】
このような本実施形態に係る発光装置1によれば、基体2の凹部の底面に、熱遮断部として機能する凹溝81が形成されているので、LED素子3から発した熱と波長変換部材6から発した熱とが基体2内で混ざり合わず、それぞれの熱を別個に管理することができる。このため、LED素子3から発した熱を放出するためにLED素子3の下方に設けた放熱フィン9aの大きさと、波長変換部材6から発した熱を放出するために基体2の底面の周縁部に設けた放熱フィン9bの大きさとを、LED素子3から発した熱量と波長変換部材6から発した熱量とに合わせて、それぞれ適正に決定することができる。
【0052】
<第2実施形態>
以下に本発明の第2実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下においては、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0053】
本実施形態に係る発光装置1は、図10〜12に示すように、基板8に搭載されたLED素子3と、LED素子3を封止する封止部材4と、封止部材4の上方に設けられた波長変換部材6とを備えているものであり、LED素子3はメイン基板(下部基体)2Aに取り付けられており、封止部材4と波長変換部材6とはメイン基板2A上に起立して設けられた枠体(上部基体)2B内に収容され保持されている。
【0054】
メイン基板2Aは、例えば、アルミニウム、銅、アルミナ、窒化アルミニウム等の熱伝導率が高い材料からなるものである。メイン基板2Aには、基板8と嵌合する凹部が形成されており、これにより基板8の位置決めが行われる。
【0055】
メイン基板2Aには、その下面から下垂する放熱フィン9が設けられている。放熱フィン9は、LED素子3から発した熱を放出するためにLED素子3の下方に設けた放熱フィン9aと、波長変換部材6から発した熱を枠体2Bを介して放出するために枠体2Bの側壁の下方に設けた放熱フィン9bとからなる。
【0056】
メイン基板2Aには、更に、LED素子3を取り囲むようにして環状の貫通孔81が形成されており、当該貫通孔81がメイン基板2A内においてLED素子3から発した熱と波長変換部材6から発して枠体2Bを介して伝わった熱とを遮断するように機能する。なお、環状の貫通孔81によってメイン基板2Aの内側と外側とが分離しないように、環状の貫通孔81を挟んだ内側周側と外側周側とを連結する連結部が部分的に設けられている。
【0057】
枠体2Bは、筒状をなしており、例えば、銅、アルミニウム等の熱伝導率が高い金属からなるものである。枠体2Bには、その側壁の内側周面から突出して形成された環状をなす押圧部23が形成されており、当該押圧部23の上端面上には積層体Aが載置されている。また、押圧部23には、枠体2Bの内側周面と外側周面との間を貫通する貫通孔21が設けられている。
【0058】
基板8と枠体2Bの押圧部23との間にはOリングRが配置されており、当該OリングRにより、枠体2B内の空間が中心側(LED素子3側)の空間SP1と外周側(枠体2Bの下方周縁部側)の空間SP2とに仕切られ、中心側の空間SP1には透明樹脂4´が充填されて封止部材4が形成されるとともに、外周側には透明樹脂4´が流入していない空間SP2が形成される。
【0059】
メイン基板2Aの上面及び枠体2Bの内側周面には、銀、アルミニウム、金等の金属メッキ等が施されることにより高反射率の金属薄膜が形成されており、リフレクタとして機能している。
【0060】
次に、本実施形態に係る発光装置1の製造方法について、図13及び図14を参照して説明する。
【0061】
まず、予め作製された、下部透光板5と上部透光板7との間にスペーサSとともに波長変換部材6が挟まれてなる積層体Aを、押圧部23の上端面(図13においては下端面)と枠体2Bの内側周面とに密接するように配設する。なお、積層体Aと枠体2Bとはシリコーン樹脂系接着剤により接着する。また、押圧部23の下端面(図13においては上端面)に形成した凹部231内にOリングRを設置する。そして、積層体A(下部透光板5)の上に、OリングRを超えて流れ出さない程度の量の透明樹脂4´を注入する(図13(a)〜(b))。
【0062】
次いで、透明樹脂4´が硬化する前に、LED素子3と放熱フィン9とが設けられたメイン基板2Aを、LED素子3が下側を向くようにして、枠体2B上に載置する(図14(c))。この際、OリングRと透明樹脂4´とが基板8で押圧されて、余剰の透明樹脂4´が貫通孔21内に流れ込む。このように、OリングRが設置された枠体2B上にメイン基板2Aを設けると、OリングRにより相互に仕切られた、透明樹脂4´で充満された中心側空間SP1と、透明樹脂4´が流入していない外周側空間SP2とが形成される。そして、必要に応じて加熱等して透明樹脂4´を硬化させることにより、中心側空間SP1内に封止部材4が形成され、枠体2Bとメイン基板2Aとが一体となった発光装置1が完成する(図14(d))。なお、得られた発光装置1では、枠体2Bの側壁とメイン基板2Aとの間には透明樹脂4´は介在しておらず、枠体2Bの側壁とメイン基板2Aとの間はねじや半田ペースト等により接合してもよい。
【0063】
このような本実施形態に係る発光装置1によれば、OリングRにより仕切られた外周側の空間SP2には透明樹脂4´が流入していないので、枠体2Bの側壁とメイン基板2Aとの間には透明樹脂4´は介在していない。このため、波長変換部材6から発して枠体2Bを介して伝わった熱は、透明樹脂4´により妨げられずに、効率的にメイン基板2Aに伝わる。
【0064】
また、本実施形態に係る発光装置1によれば、メイン基板2Aに、熱遮断部として機能する貫通孔81が形成されているので、LED素子3から発した熱と波長変換部材6から発して枠体2Bを介して伝わった熱とがメイン基板2A内で混ざり合わず、それぞれの熱を別個に管理することができる。このため、LED素子3から発した熱を放出するためにLED素子3の下方に設けた放熱フィン9aの大きさと、波長変換部材6から発した熱を枠体2Bを介して放出するために枠体2Bの下方に設けた放熱フィン9bの大きさとを、LED素子3から発した熱量と波長変換部材6から発した熱量とに合わせて、それぞれ適正に決定することができる。
【0065】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0066】
例えば、波長変換部材6は、下部透光板5と上部透光板7との間にスペーサSとともに挟まれて積層体Aとして形成されなくてもよく、例えば、下部透光板5及びスペーサSを用いずに、上部透光板7を基板としてポッティング等の手法により波長変換部材6が形成されてもよい。
【0067】
また、第1実施形態に係る発光装置1を製造する際には、以下のようにしてもよい。すなわち、まず、図15(a)〜(b)に示すように、基体2の凹部内に、適量の透明樹脂4´を充填し、これを硬化させて封止部材4を形成し、次いで、図16(c)〜(d)に示すように、積層体Aの下部透光板5側に透明樹脂4´を盛ってから、図17(e)〜(f)に示すように、下部透光板5側を封止部材4に向けて、突条部23の上端面上にその周縁部が載置されるように積層体Aを配設する。すると、積層体Aと封止部材4とが接着されるとともに、溢れた透明樹脂4´が突条部23の上端面と積層体Aの下面との間に浸み出して、基体2と積層体Aとを接着する接着剤として機能する。
【0068】
更に、第2実施形態に係る発光装置1を製造する際には、図18に示すように、下部透光板5と上部透光板7との間にスペーサSとともに波長変換部材6が挟まれてなる積層体Aと、LED素子3と放熱フィン9とが設けられたメイン基板2Aとを、予め枠体2Bに固定してから(図18(a))、枠体2B内に形成された中心側空間SP1内に、貫通孔21に挿し込んだノズルを介して、透明樹脂4´を充填してもよい(図18(b)〜(c))。
【0069】
また、第1実施形態に係る発光装置1においても、第2実施形態に係る発光装置1のように、突条部23に基体2の内側周面と外側周面との間を貫通する貫通孔21が設けられていてもよく、また、基体2の底面に形成された凹溝81が貫通孔であってもよい。なお、第1実施形態に係る発光装置1に貫通孔21が設けられている場合は、第1実施形態に係る発光装置1を製造する際にも、図18に示された第2実施形態に係る発光装置1の製造方法を適用することができる。
【0070】
更に、本発明に係る発光装置1は、例えば図19に示すように、発光装置1の上端面上にレンズ10を配設してもよい。この際、レンズ10の光射出面には、光の取り出し効率を向上させるために、反射防止コーティングを施してあることが好ましい。
【0071】
また、本発明に係る発光装置1では、LED素子3から発した熱と波長変換部材6から発した熱とは何らかの手段により遮断されていればよく、凹溝や貫通孔等のような熱の拡散を妨げるために設けられた空間により熱遮断する以外に、例えば図20に示すように、メイン基板2Aと枠体2Bと間に断熱部材81´を配置することにより熱遮断するようにしてもよい。
【0072】
更に、発光装置1の底面にはLED素子3から発した熱を放出するための放熱フィン9aのみを設け、波長変換部材6から発した熱を放射するための放熱フィン9bは枠体2Bの側面に別途独立して形成してもよい。
【0073】
なお、図20に示す実施形態の発光装置1では、枠体2Bの内側周面とスペーサSの内側周面とが連続して、光射出方向に向かうほど拡開する傾斜面を形成している。この際、枠体2Bの内側周面に金属薄膜を設け、一方、スペーサSを金属や白色の樹脂等から構成し、当該傾斜面をリフレクタとして機能させることにより、発光装置1からの光の取り出し効率を向上させることができる。
【0074】
更に、本発明に係る発光装置1自体には放熱フィン9を設けずに、別体として形成された放熱フィン9を発光装置1の底面に設置するようにしてもよい。また、放熱フィン9に向けて風を送り、より効率的に空冷できるようにファンを設置してもよい。
【0075】
本発明に係る発光装置1は調光機能を備えた照明装置10の光源として用いることができる。そして、このような照明装置10としては、図21に示すように、発光装置1に加えて、電源12と、電流調整回路14A、14Bと、制御装置15と、を備えたものが挙げられる。ここで、本実施形態に係る発光装置1は、白色光を射出するものであり、LED素子3として、同一製品(例えば放射ピークが405nmであるLED素子)であるものの、当該同一製品から選び出された放射ピークのバラツキが異なる第1のLED素子3A(例えば放射ピークが395〜400nmに分布するもの)と第2のLED素子3B(例えば放射ピークが410〜415nmに分布するもの)との2グループが用いられている。
【0076】
電源12は、その電圧がLED素子3A、3Bの降下電圧より大きいものである。
【0077】
電流調整回路14A、14Bは、例えば、トランジスタやCMOS、専用のチップ等を利用してなるものであり、電流制御部153から発した制御信号の値に応じた電流I1、I2でLED素子3A、3Bを駆動して、電流I1、I2の量やその比を調整するものである。
【0078】
制御装置15は、CPUやメモリ、A/D変換器、D/A変換器等を有したデジタル乃至アナログ電気回路で構成されたもので、専用のものであってもよいし、一部又は全部にパソコン等の汎用コンピュータを利用するようにしたものであってもよい。また、CPUを用いず、アナログ回路のみで前記各部としての機能を果たすように構成してもよいし、物理的に一体である必要はなく、有線乃至無線によって互いに接続された複数の機器からなるものであってもよい。そして前記メモリに所定のプログラムを格納し、そのプログラムにしたがってCPUやその周辺機器を協働動作させることによって、少なくとも、色温度受付部151、光量受付部152、電流制御部153としての機能を発揮するように構成してある。
【0079】
色温度受付部151は、例えば、ダイヤルを備えていて、ダイヤルを回すことにより2800〜3200Kの間で選択された色温度値を有する色温度データを受け付けるものである。
【0080】
光量受付部152は、例えば、ダイヤルを備えていて、ダイヤルを回すことにより選択された光量値(明るさ)を有する光量データを受け付けるものである。
【0081】
電流制御部153は、色温度受付部151から色温度データを、光量受付部152から光量データを、それぞれ取得して、当該色温度データ及び光量データに基づき制御信号を生成し、当該制御信号を各電流調整回路14A、14Bに出力して電流I1、I2を調節するものである。
【0082】
このように構成された照明装置10は、発光装置1に取り付けられたLED素子3A、3Bが発光色にバラツキがあるものであっても、照明装置10から発する白色光の色温度を所定の値に微調整することができる。このため、複数個の照明装置10のいずれからも同じ色温度の白色光が発するように微調整することができるので、多数の照明装置10から均一な色温度の白色光を射出させることが求められる用途に好適に用いることができる。
【0083】
なお、本実施形態においては、放射ピークにバラツキがある同一製品のLED素子3A、3Bが同一基板8上に実装されているが、2種類以上の異なる製品から構成されたLED素子2群が同一基板8上に実装されていてもよい。
【0084】
また、本発明に係る発光装置1を用いて、電球100を構成してもよい。このような電球としては、例えば、図22〜24に示すような実施形態のものが挙げられる。
【0085】
当該実施形態に係る電球100は、概略回転体形状をなすものであり、光を拡散させる拡散部材により形成された第1筺体22と、発光装置1及び当該発光装置1に供給する電圧等を制御する制御部23を収容し、空気吸込口26aと空気吐出口26bとが形成された第2筺体24と、空気吸込口26aから空気吐出口26bへの空気の流れを強制的に生じさせるファン26とを備えている。
【0086】
本実施形態に係る発光装置1では、波長変換部材6から発した熱を放出する放熱フィン9bが側面に形成された上部基体2Bと、LED素子3から発した熱を放出する放熱フィン9aが側面に形成された下部基体2Aとが、間に断熱部材81´が介在した状態でねじBによって互いに固定されている。
【0087】
このような実施形態に係る発光装置1であれば、波長変換部材6から発する熱とLED素子3から発する熱との比率が変わった場合は、波長変換部材6用の放熱フィン9bとLED素子3用の放熱フィン9aとの表面積を適宜変更することにより、放熱比率を最適なものに調節することができる。
【0088】
その他、本発明は上記の各実施形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない限り、前述した種々の構成の一部又は全部を適宜組み合わせて構成してもよい。
【符号の説明】
【0089】
1・・・発光装置
2・・・基体
3・・・LED素子
4・・・封止部材
6・・・波長変換部材
8・・・基板
R・・・Oリング(弾性変形部材)
SP1・・・中心側空間
SP2・・・外周側空間
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED素子を備えた発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、窒化ガリウム系化合物半導体を用いて青色光又は紫外線を放射するLED素子と種々の蛍光体とを組み合わせることにより、白色をはじめとするLED素子の発光色とは異なる色の光を発する発光装置が開発されている(特許文献1)。LED素子を用いたこのような発光装置は、小型、省電力、長寿命等の長所があり、表示用光源や照明用光源として広く用いられている。特に近時では高出力、高輝度のLED素子が開発されてきており、その用途は益々拡大の一途にある。
【0003】
ところで、LED素子内部での電力損失は熱エネルギーに変換されジャンクション温度の上昇原因となるが、LED素子は温度に敏感で、温度が上昇すると結晶の熱じょう乱が激しくなり、多数の電子・正孔対が発生し、正常な動作が得られにくくなる。このため、LED素子が高出力化すると、LED素子の発熱量が増大し、その熱によってLED素子そのものが劣化するという問題が生じる。
【0004】
また、蛍光体も熱に脆弱であり、蛍光体自らの発熱やLED素子からの伝熱によって蛍光体も熱劣化する。このため、熱劣化による蛍光体の発光効率や輝度の低下の解決も急務である。
【0005】
そこで従来、このようなLED素子を用いた発光装置の下部に放熱フィンを設け、ここから熱を発散させることが試みられている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−191197号公報
【特許文献2】特開2007−80867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、LED素子から発した熱と蛍光体から発した熱とが発光装置内で分離されずに両者が混ざり合うと、LED素子又は蛍光体のどちらかを優先して冷却したい場合でも、効果的に冷却することができず、LED素子から発した熱と蛍光体から発した熱とを適切に管理し処理することができない。
【0008】
また、図25に例示するような構成を有する発光装置1´では、発光色の色目や照度についてのロット毎でのバラツキを抑制するために、蛍光体61を含有する波長変換部材6を予め作製して、基準光源を使用して波長変換部材6の発光色や照度等を分析し、その結果に従い波長変換部材6を分類・管理してから、所望の発光色や照度等を有するものを選び出して、適合するLED素子3と組み合わせることが試みられている。
【0009】
そして、発光装置1´を製造するに際しては、例えば、図26及び図27に示すような各工程が行われている。すなわち、まず、予め作製した蛍光体61を含有する波長変換部材6によって上側開口部が塞がれた筒状の枠体2を上下逆にして設置する(図26(a))。次いで、枠体2内に、LED素子3の封止材料である透明樹脂4´を所定量充填する(図26(a)〜(b))。そして、透明樹脂4´が硬化する前に、その上にLED素子3が搭載された基板8をLED素子3が下側を向くように設置して、LED素子3を透明樹脂4´で封止する(図27(c)〜(d))。そして、必要に応じて加熱等して透明樹脂4´を硬化させて封止部材4を形成し、発光装置1を完成させる。
【0010】
この際、ポッティングにより枠体2内に充填する透明樹脂4´量は、封止部材4を形成するのに必要な量よりも多めにして、LED素子3が搭載された基板8を透明樹脂4´上に設置する際に、透明樹脂4´が、基板8と枠体2との間に染み出すようにして、透明樹脂4´をこれらの接着剤としても機能させている。
【0011】
しかし、このように基板8と枠体2との間に透明樹脂4´が介在すると、枠体2から基板8への熱の伝導が阻害されるので、波長変換部材6(蛍光体61)から発した熱を、枠体2を経由して基板8へ放出することが困難になり、放熱効率が低下してしまう。
【0012】
本発明はかかる問題点に鑑みなされたものであって、放熱性能に優れたLED発光装置を提供することをその主たる所期課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち本発明に係るLED発光装置は、上端面に開口する凹部を有した基体と、前記基体の凹部内に取り付けられたLED素子と、前記LED素子を封止する透光性材料からなる封止部材と、前記封止部材の上方に設けられた蛍光体を含有する波長変換部材と、を備え、前記基体には、前記LED素子から発した熱と前記波長変換部材から発した熱とを遮断する熱遮断部が形成されていることを特徴とする。
【0014】
このようなものであれば、LED素子から発した熱と波長変換部材(蛍光体)から発した熱とが基体内で混ざり合わないので、それぞれの熱を別個に管理することができる。
【0015】
このような本発明に係るLED発光装置は、更に、前記封止部材を囲むように設けられた環状の断熱部材を備え、前記基体が、LED素子が取り付けられた下部基体と、前記下部基体上に設けられ前記波長変換部材を支持する筒状の上部基体とからなり、前記上部基体が、その側壁の内側周面から突出して設けられ、前記断熱部材を前記下部基体に向かって押圧する環状の押圧部を有し、前記下部基体と前記波長変換部材と前記上部基体とにより閉塞された空間が、前記断熱部材により、前記封止部材が形成された空間と、その外周側に形成された前記透光性材料が流入していない空間とに液密に仕切られていてもよい。このようなものであれば、環状の断熱部材により仕切られた外周側の空間には透光性材料が流入していないので、上部基体の側壁と下部基体との間には透明樹脂等の透光性材料は介在しない。このため、波長変換部材から発して上部基体を介して伝わった熱は、当該透光性材料により妨げられずに、効率的に下部基体に伝えられる。
【0016】
前記断熱部材としては、例えば、弾性変形部材が好適に用いられる。
【0017】
基体内に熱遮断部が形成されている本発明に係るLED発光装置には、前記下部基体の前記LED素子が取り付けられた面とは反対側の面に、前記熱遮断部が形成された位置より内側に設けられたLED素子用放熱フィンと、前記熱遮断部が形成された位置より外側に設けられた波長変換部材用放熱フィンとが配設されていることが好ましい。このようなものであれば、それぞれの放熱フィンの大きさを、LED素子から発した熱量と波長変換部材から発した熱量とに合わせて、適切に選択することができる。
【0018】
このような本発明に係るLED発光装置において、前記下部基体と前記上部基体とを接合するためには、ねじ又は半田ペーストを用いることが好ましい。ねじ又は半田ペーストを用いれば、枠体から基板への熱の伝導を妨げずに両者を密着させることができる。
【0019】
本発明に係るLED発光装置の用途としては特に限定されないが、例えば、照明装置の光源として用いることができる。本発明に係るLED発光装置を光源として用いた照明装置としては、例えば、個々の製品間では放射ピークにバラツキがある同一製品の集合から選び出された放射ピークの分布波長領域が互いに異なる複数のLED素子群にそれぞれ属する複数個のLED素子を有する本発明に係るLED発光装置と、前記複数個のLED素子へ供給する電流値をそれぞれ変化させる電流制御部と、を備えているものが挙げられる。このような照明装置もまた、本発明の1つである。
【0020】
当該照明装置においては、互いに異なる前記LED素子群に属するLED素子が、前記基体上に交互に配置されていることが好ましい。このように同一製品から選び出された放射ピークの分布波長領域が異なるグループに属するLED素子を基体上に交互に配置することにより、各LED素子により励起された波長変換部材の発する光が混ざりやすくなり、当該光が白色光である場合、各白色光の色温度を所定の値に微調整することができる。
【発明の効果】
【0021】
このような構成の本発明によれば、放熱性に優れたLEDパッケージを構築することができ、LED素子や蛍光体の熱劣化を抑制して、長寿命を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係る発光装置の縦断面図である。
【図2】同実施形態に係る発光装置の平面図である。
【図3】同実施形態に係る発光装置の底面図である。
【図4】同実施形態における短波長透過フィルタの透過率及び反射率の概要を示すグラフである。
【図5】同実施形態における長波長透過フィルタの透過率及び反射率の概要を示すグラフである。
【図6】同実施形態に係る発光装置の製造工程(a)〜(b)を示す図である。
【図7】同実施形態に係る発光装置の製造工程(c)〜(d)を示す図である。
【図8】同実施形態における波長変換部材が挟まれた積層体の製造工程(a)〜(c)を示す図である。
【図9】同実施形態における波長変換部材が挟まれた積層体の製造工程(d)〜(f)を示す図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る発光装置の縦断面図である。
【図11】同実施形態に係る発光装置の底面図である。
【図12】同実施形態に係る発光装置の側面図である。
【図13】同実施形態に係る発光装置の製造工程(a)〜(b)を示す図である。
【図14】同実施形態に係る発光装置の製造工程(c)〜(d)を示す図である。
【図15】他の実施形態に係る発光装置の製造工程(a)〜(b)を示す図である。
【図16】同実施形態に係る発光装置の製造工程(c)〜(d)を示す図である。
【図17】同実施形態に係る発光装置の製造工程(e)〜(f)を示す図である。
【図18】他の実施形態に係る発光装置の製造工程を示す図である。
【図19】他の実施形態に係る発光装置の縦断面図である。
【図20】他の実施形態に係る発光装置の縦断面図である。
【図21】本発明に係る発光装置を備えた照明装置の模式的構成図である。
【図22】他の実施形態に係る発光装置を備えた電球の縦断面図である。
【図23】同実施形態における電球の斜視図である。
【図24】同実施形態に係る発光装置の放熱フィンの要部拡大図である。
【図25】従来の発光装置の縦断面図である。
【図26】従来の発光装置の製造工程(a)〜(b)を示す図である。
【図27】従来の発光装置の製造工程(c)〜(d)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第1実施形態>
以下に本発明の第1実施形態について図面を参照して説明する。
【0024】
本実施形態に係る発光装置1は、図1〜3に示すように、LED素子3と、LED素子3を封止する封止部材4と、封止部材4の上方に設けられた波長変換部材6とを備えているものであり、LED素子3と封止部材4と波長変換部材6とは基体2内に収容され保持されている。
【0025】
以下に各部を詳述する。
LED素子3は、紫外線や短波長の可視光線を発するものであり、例えば360〜430nmに放射ピークを有するものである。このようなLED素子3は、例えば、サファイア基板や窒化ガリウム基板の上に窒化ガリウム系化合物半導体がn型層、発光層及びp型層の順に積層してなるものである。
【0026】
LED素子3は、窒化ガリウム系化合物半導体を下にして基板8に半田バンプや金バンプ等(図示しない。)を用いてフリップチップ実装されている。なお、LED素子3は基板8に設けられた配線導体にワイヤボンディングを用いて接続されていてもよい。また、本実施形態においては、複数個(9個)のLED素子3が搭載されているが、LED素子3の数はこの限りではなく、目的・用途に応じて適宜変更することができる。
【0027】
基板8は、アルミニウム、銅、アルミナ、窒化アルミニウム等の熱伝導率が高い材料からなるものであり、基板8の上面には、LED素子3が電気的に接続されるための、例えば銀パターン等からなる配線導体(図示しない。)が形成されている。この配線導体が基体2内部に形成された配線層(図示しない。)を介して発光装置1の外表面に導出されて外部電気回路基板に接続されることにより、LED素子3と外部電気回路基板とが電気的に接続される。
【0028】
封止部材4は、LED素子3を封止するためのものであり、LED素子3から封止部材4へ効率良く光を取り出すためには、透光性及び耐熱性に優れるとともに、LED素子3との屈折率差が小さい、シリコーン樹脂等の透明樹脂からなるものであることが好ましい。
【0029】
波長変換部材6は、内部に蛍光体61を含有しているものであり、例えば、透光性及び耐熱性に優れた、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、低融点ガラス等からなるマトリックス中に蛍光体61が分散しているものが挙げられる。
【0030】
波長変換部材6が含有する蛍光体61としては特に限定されず、例えば、赤色蛍光体、緑色蛍光体、青色蛍光体、黄色蛍光体等が挙げられる。このうち、赤色蛍光体、緑色蛍光体及び青色蛍光体を併用すると、白色光を発する発光装置1を構成することができる。
【0031】
当該波長変換部材6は、下部透光板5と上部透光板7との間にスペーサSとともに挟まれて積層体Aを構成している。ここで、スペーサSは、例えば、銅、アルミニウム等の熱伝導率が高い金属からなり、波長変換部材6を形成されるための貫通孔S1が設けられた平板状のものである。
【0032】
下部透光板5は、例えば、水晶、サファイア、ダイアモンド、石英、窒化アルミニウム等の熱伝導率が高く透光性に優れた材料からなるものである。また、下部透光板5としては、例えば、その表面に銅やアルミニウム等の熱伝導性に優れた金属をライン状や格子状等に蒸着することによって、透光性を担保しながら熱伝導性を向上させたガラス基板を用いることもできる。
【0033】
下部透光板5には、430nm近傍を境界として、光の透過率と反射率とが逆転する誘電体多層膜を形成してもよく、これにより、図4に示すように、長波長の可視光線を反射して、紫外線や短波長の可視光線を選択的に透過するローパスフィルタとして用いることができる。
【0034】
上部透光板7は、下部透光板5と同様に、例えば、水晶、サファイア、ダイアモンド、石英、窒化アルミニウム等の熱伝導率が高く透光性に優れた材料からなるものが用いられる。
【0035】
上部透光板7には、430nm付近を境界として、光の反射率と透過率とが逆転する誘電体多層膜を形成してもよく、これにより、図5に示すように、紫外線や短波長の可視光線を反射して、長波長の可視光線を選択的に透過するハイパスフィルタとして用いることができる。
【0036】
下部透光板5及び上部透光板7にそれぞれ誘電体多層膜を形成し、下部透光板5をローパスフィルタとし、上部透光板7をハイパスフィルタとした場合、蛍光体61に当たらずに波長変換部材6を通過した紫外線や短波長の可視光線は、上部透光板7で反射して、再度、波長変換部材6内を進行する。このため、紫外線や短波長の可視光線が蛍光体61に当たる確率が向上するので、より多くの紫外線や短波長の可視光線が長波長の可視光線に変換され、その結果、発光装置1からの発光量が増加する。また、蛍光体61が発する長波長の可視光線のうち、LED素子3側に向かって逆進したものは、下部透光板5で反射し、進行方向を変えて上部透光板7に向かい、当該フィルタ7を透過して発光装置1外に射出されるので、長波長の可視光線の取り出し効率も向上する。従って、波長変換部材6が、下部透光板5(LED素子3側)と上部透光板7(光射出面側)との間に挟まれていることによって、紫外線や短波長の可視光線を効率的に長波長の可視光線に変換し、更に、変換された可視光線を効率的に発光装置1外に取り出すことができる。
【0037】
また、上述のとおりLED素子3側に向かって逆進した長波長の可視光線は、下部透光板5で反射されるので、基体2の凹部の側面及び底面を含む内面に到達する長波長の可視光線が減る。LED素子3は従来の光源に比べて極めて長い寿命を有するが、基体2の凹部内面に到達する長波長の可視光線を減らすことができれば、当該可視光線に長時間曝されることによって引き起こされる基体2の凹部内面に形成されたリフレクタの経時劣化が抑制され、延いては、発光装置1の発光色の変化も抑制される。
【0038】
基体2は、上端面に開口する凹部を有するものであり、例えば、アルミニウム、銅、アルミナ、窒化アルミニウム等の熱伝導率が高い材料からなるものが挙げられる。
【0039】
基体2の凹部の側面には環状をなす突条部23が形成されており、当該突条部23の上端面上には積層体Aが載置されている。なお、基体2の凹部には、図2に示すように、四隅に角取り孔24が形成されており、凹部内に積層体Aを嵌め込む際にその角部が妨げとならないようにしてある。また、基体2の凹部の側面及び底面を含む内面には、銀、アルミニウム、金等の金属メッキ等が施されることにより高反射率の金属薄膜が形成されており、リフレクタとして機能している。そして、上部透光板7で下方向に反射され、波長変換部材6と下部透光板5とを透過した紫外線や短波長の可視光線を、当該金属薄膜により、再度、波長変換部材6に向けて反射することができる。
【0040】
なお、封止部材4や波長変換部材6を構成するシリコーン樹脂等は気体透過率が高いが、本実施形態では下部透光板5及び上部透光板7が、基体2の凹部内への気体や水分の侵入を抑制することができるので、基体2の凹部内面に形成された金属薄膜の酸化、硫化、塩化等による腐食等を防止することができる。
【0041】
基体2には、その底面から下垂する放熱フィン9が設けられている。放熱フィン9は、その外表面に、列方向に延びる複数段の凹溝Tを設けることにより、隣り合う凹溝Tと凹溝Tとの突条部分が放熱機能を奏するように構成してあるものである。放熱フィン9は、LED素子3から発した熱を放出するためにLED素子3の下方に設けた放熱フィン9aと、波長変換部材6から発した熱を基体2を介して放出するために基体2の側壁の下方に設けた放熱フィン9bとからなり、LED素子3から発した熱と波長変換部材6から発した熱は、それぞれ放熱フィン9aの外表面と放熱フィン9bの外表面とから放出される。
【0042】
基体2の凹部の底面には、LED素子3を取り囲むようにして凹溝81が形成されており、当該凹溝81が基体2内において、LED素子3から発した熱が拡散するのを防ぎ、LED素子3から発した熱と波長変換部材6から発した熱とを遮断するように機能する。
【0043】
次に、本実施形態に係る発光装置1の製造方法について、図6〜9を参照して説明する。
【0044】
まず、図6(a)〜(b)に示すように、基体2の凹部内に、突条部23の上端面より膨出する程度に多めに透明樹脂4´を充填する。しかる後、図7(c)〜(d)に示すように、予め作製された、下部透光板5と上部透光板7との間にスペーサSとともに波長変換部材6が挟まれてなる積層体Aを、突条部23の上端面上にその周縁部が載置されるように配設する。すると、溢れた透明樹脂4´が突条部23の上端面と積層体Aの下面との間に浸み出して、基体2と積層体Aとを接着する接着剤として機能する。
【0045】
ここで、下部透光板5と上部透光板7との間にスペーサSとともに波長変換部材6が挟まれてなる積層体Aは、上述のとおり予め作製しておくが、当該積層体Aは次のようにして作製する。
【0046】
まず、複数個分の下部透光板5(又は上部透光板7)に相当する大きさの大型フィルタ上に、複数個分のスペーサSに相当する大きさの多数の貫通孔S1が設けられた金属板を重ねて配置する(図8(a))。ここで、当該スペーサSは、積層体Aを突条部23の上端面上に配置した際に、基体2の上端面と上部透光板7の上面とが略面一になるように、積層体Aの高さを調節するものである。
【0047】
次いで、貫通孔S1に内に、蛍光体61を含有する樹脂組成物6を所定量充填する(図8(b)〜(c))。
【0048】
その後、スペーサS上に複数個分の上部透光板7(又は下部透光板5)に相当する大きさの大型フィルタを重ねて配置する(図9(d))。
【0049】
そして、必要に応じて加熱等して樹脂組成物6を硬化させることにより、波長変換部材6がスペーサSとともに下部透光板5と上部透光板7との間に挟まれてなる積層体Aの複数個分が一体となった積層体を形成することができる(図9(e))。
【0050】
このようにして得られた複数個の積層体Aが一体となった積層体を切断して、一個ずつ切り離すことにより、複数個の積層体Aを一度に作製することができる(図9(f))。
【0051】
このような本実施形態に係る発光装置1によれば、基体2の凹部の底面に、熱遮断部として機能する凹溝81が形成されているので、LED素子3から発した熱と波長変換部材6から発した熱とが基体2内で混ざり合わず、それぞれの熱を別個に管理することができる。このため、LED素子3から発した熱を放出するためにLED素子3の下方に設けた放熱フィン9aの大きさと、波長変換部材6から発した熱を放出するために基体2の底面の周縁部に設けた放熱フィン9bの大きさとを、LED素子3から発した熱量と波長変換部材6から発した熱量とに合わせて、それぞれ適正に決定することができる。
【0052】
<第2実施形態>
以下に本発明の第2実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下においては、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0053】
本実施形態に係る発光装置1は、図10〜12に示すように、基板8に搭載されたLED素子3と、LED素子3を封止する封止部材4と、封止部材4の上方に設けられた波長変換部材6とを備えているものであり、LED素子3はメイン基板(下部基体)2Aに取り付けられており、封止部材4と波長変換部材6とはメイン基板2A上に起立して設けられた枠体(上部基体)2B内に収容され保持されている。
【0054】
メイン基板2Aは、例えば、アルミニウム、銅、アルミナ、窒化アルミニウム等の熱伝導率が高い材料からなるものである。メイン基板2Aには、基板8と嵌合する凹部が形成されており、これにより基板8の位置決めが行われる。
【0055】
メイン基板2Aには、その下面から下垂する放熱フィン9が設けられている。放熱フィン9は、LED素子3から発した熱を放出するためにLED素子3の下方に設けた放熱フィン9aと、波長変換部材6から発した熱を枠体2Bを介して放出するために枠体2Bの側壁の下方に設けた放熱フィン9bとからなる。
【0056】
メイン基板2Aには、更に、LED素子3を取り囲むようにして環状の貫通孔81が形成されており、当該貫通孔81がメイン基板2A内においてLED素子3から発した熱と波長変換部材6から発して枠体2Bを介して伝わった熱とを遮断するように機能する。なお、環状の貫通孔81によってメイン基板2Aの内側と外側とが分離しないように、環状の貫通孔81を挟んだ内側周側と外側周側とを連結する連結部が部分的に設けられている。
【0057】
枠体2Bは、筒状をなしており、例えば、銅、アルミニウム等の熱伝導率が高い金属からなるものである。枠体2Bには、その側壁の内側周面から突出して形成された環状をなす押圧部23が形成されており、当該押圧部23の上端面上には積層体Aが載置されている。また、押圧部23には、枠体2Bの内側周面と外側周面との間を貫通する貫通孔21が設けられている。
【0058】
基板8と枠体2Bの押圧部23との間にはOリングRが配置されており、当該OリングRにより、枠体2B内の空間が中心側(LED素子3側)の空間SP1と外周側(枠体2Bの下方周縁部側)の空間SP2とに仕切られ、中心側の空間SP1には透明樹脂4´が充填されて封止部材4が形成されるとともに、外周側には透明樹脂4´が流入していない空間SP2が形成される。
【0059】
メイン基板2Aの上面及び枠体2Bの内側周面には、銀、アルミニウム、金等の金属メッキ等が施されることにより高反射率の金属薄膜が形成されており、リフレクタとして機能している。
【0060】
次に、本実施形態に係る発光装置1の製造方法について、図13及び図14を参照して説明する。
【0061】
まず、予め作製された、下部透光板5と上部透光板7との間にスペーサSとともに波長変換部材6が挟まれてなる積層体Aを、押圧部23の上端面(図13においては下端面)と枠体2Bの内側周面とに密接するように配設する。なお、積層体Aと枠体2Bとはシリコーン樹脂系接着剤により接着する。また、押圧部23の下端面(図13においては上端面)に形成した凹部231内にOリングRを設置する。そして、積層体A(下部透光板5)の上に、OリングRを超えて流れ出さない程度の量の透明樹脂4´を注入する(図13(a)〜(b))。
【0062】
次いで、透明樹脂4´が硬化する前に、LED素子3と放熱フィン9とが設けられたメイン基板2Aを、LED素子3が下側を向くようにして、枠体2B上に載置する(図14(c))。この際、OリングRと透明樹脂4´とが基板8で押圧されて、余剰の透明樹脂4´が貫通孔21内に流れ込む。このように、OリングRが設置された枠体2B上にメイン基板2Aを設けると、OリングRにより相互に仕切られた、透明樹脂4´で充満された中心側空間SP1と、透明樹脂4´が流入していない外周側空間SP2とが形成される。そして、必要に応じて加熱等して透明樹脂4´を硬化させることにより、中心側空間SP1内に封止部材4が形成され、枠体2Bとメイン基板2Aとが一体となった発光装置1が完成する(図14(d))。なお、得られた発光装置1では、枠体2Bの側壁とメイン基板2Aとの間には透明樹脂4´は介在しておらず、枠体2Bの側壁とメイン基板2Aとの間はねじや半田ペースト等により接合してもよい。
【0063】
このような本実施形態に係る発光装置1によれば、OリングRにより仕切られた外周側の空間SP2には透明樹脂4´が流入していないので、枠体2Bの側壁とメイン基板2Aとの間には透明樹脂4´は介在していない。このため、波長変換部材6から発して枠体2Bを介して伝わった熱は、透明樹脂4´により妨げられずに、効率的にメイン基板2Aに伝わる。
【0064】
また、本実施形態に係る発光装置1によれば、メイン基板2Aに、熱遮断部として機能する貫通孔81が形成されているので、LED素子3から発した熱と波長変換部材6から発して枠体2Bを介して伝わった熱とがメイン基板2A内で混ざり合わず、それぞれの熱を別個に管理することができる。このため、LED素子3から発した熱を放出するためにLED素子3の下方に設けた放熱フィン9aの大きさと、波長変換部材6から発した熱を枠体2Bを介して放出するために枠体2Bの下方に設けた放熱フィン9bの大きさとを、LED素子3から発した熱量と波長変換部材6から発した熱量とに合わせて、それぞれ適正に決定することができる。
【0065】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0066】
例えば、波長変換部材6は、下部透光板5と上部透光板7との間にスペーサSとともに挟まれて積層体Aとして形成されなくてもよく、例えば、下部透光板5及びスペーサSを用いずに、上部透光板7を基板としてポッティング等の手法により波長変換部材6が形成されてもよい。
【0067】
また、第1実施形態に係る発光装置1を製造する際には、以下のようにしてもよい。すなわち、まず、図15(a)〜(b)に示すように、基体2の凹部内に、適量の透明樹脂4´を充填し、これを硬化させて封止部材4を形成し、次いで、図16(c)〜(d)に示すように、積層体Aの下部透光板5側に透明樹脂4´を盛ってから、図17(e)〜(f)に示すように、下部透光板5側を封止部材4に向けて、突条部23の上端面上にその周縁部が載置されるように積層体Aを配設する。すると、積層体Aと封止部材4とが接着されるとともに、溢れた透明樹脂4´が突条部23の上端面と積層体Aの下面との間に浸み出して、基体2と積層体Aとを接着する接着剤として機能する。
【0068】
更に、第2実施形態に係る発光装置1を製造する際には、図18に示すように、下部透光板5と上部透光板7との間にスペーサSとともに波長変換部材6が挟まれてなる積層体Aと、LED素子3と放熱フィン9とが設けられたメイン基板2Aとを、予め枠体2Bに固定してから(図18(a))、枠体2B内に形成された中心側空間SP1内に、貫通孔21に挿し込んだノズルを介して、透明樹脂4´を充填してもよい(図18(b)〜(c))。
【0069】
また、第1実施形態に係る発光装置1においても、第2実施形態に係る発光装置1のように、突条部23に基体2の内側周面と外側周面との間を貫通する貫通孔21が設けられていてもよく、また、基体2の底面に形成された凹溝81が貫通孔であってもよい。なお、第1実施形態に係る発光装置1に貫通孔21が設けられている場合は、第1実施形態に係る発光装置1を製造する際にも、図18に示された第2実施形態に係る発光装置1の製造方法を適用することができる。
【0070】
更に、本発明に係る発光装置1は、例えば図19に示すように、発光装置1の上端面上にレンズ10を配設してもよい。この際、レンズ10の光射出面には、光の取り出し効率を向上させるために、反射防止コーティングを施してあることが好ましい。
【0071】
また、本発明に係る発光装置1では、LED素子3から発した熱と波長変換部材6から発した熱とは何らかの手段により遮断されていればよく、凹溝や貫通孔等のような熱の拡散を妨げるために設けられた空間により熱遮断する以外に、例えば図20に示すように、メイン基板2Aと枠体2Bと間に断熱部材81´を配置することにより熱遮断するようにしてもよい。
【0072】
更に、発光装置1の底面にはLED素子3から発した熱を放出するための放熱フィン9aのみを設け、波長変換部材6から発した熱を放射するための放熱フィン9bは枠体2Bの側面に別途独立して形成してもよい。
【0073】
なお、図20に示す実施形態の発光装置1では、枠体2Bの内側周面とスペーサSの内側周面とが連続して、光射出方向に向かうほど拡開する傾斜面を形成している。この際、枠体2Bの内側周面に金属薄膜を設け、一方、スペーサSを金属や白色の樹脂等から構成し、当該傾斜面をリフレクタとして機能させることにより、発光装置1からの光の取り出し効率を向上させることができる。
【0074】
更に、本発明に係る発光装置1自体には放熱フィン9を設けずに、別体として形成された放熱フィン9を発光装置1の底面に設置するようにしてもよい。また、放熱フィン9に向けて風を送り、より効率的に空冷できるようにファンを設置してもよい。
【0075】
本発明に係る発光装置1は調光機能を備えた照明装置10の光源として用いることができる。そして、このような照明装置10としては、図21に示すように、発光装置1に加えて、電源12と、電流調整回路14A、14Bと、制御装置15と、を備えたものが挙げられる。ここで、本実施形態に係る発光装置1は、白色光を射出するものであり、LED素子3として、同一製品(例えば放射ピークが405nmであるLED素子)であるものの、当該同一製品から選び出された放射ピークのバラツキが異なる第1のLED素子3A(例えば放射ピークが395〜400nmに分布するもの)と第2のLED素子3B(例えば放射ピークが410〜415nmに分布するもの)との2グループが用いられている。
【0076】
電源12は、その電圧がLED素子3A、3Bの降下電圧より大きいものである。
【0077】
電流調整回路14A、14Bは、例えば、トランジスタやCMOS、専用のチップ等を利用してなるものであり、電流制御部153から発した制御信号の値に応じた電流I1、I2でLED素子3A、3Bを駆動して、電流I1、I2の量やその比を調整するものである。
【0078】
制御装置15は、CPUやメモリ、A/D変換器、D/A変換器等を有したデジタル乃至アナログ電気回路で構成されたもので、専用のものであってもよいし、一部又は全部にパソコン等の汎用コンピュータを利用するようにしたものであってもよい。また、CPUを用いず、アナログ回路のみで前記各部としての機能を果たすように構成してもよいし、物理的に一体である必要はなく、有線乃至無線によって互いに接続された複数の機器からなるものであってもよい。そして前記メモリに所定のプログラムを格納し、そのプログラムにしたがってCPUやその周辺機器を協働動作させることによって、少なくとも、色温度受付部151、光量受付部152、電流制御部153としての機能を発揮するように構成してある。
【0079】
色温度受付部151は、例えば、ダイヤルを備えていて、ダイヤルを回すことにより2800〜3200Kの間で選択された色温度値を有する色温度データを受け付けるものである。
【0080】
光量受付部152は、例えば、ダイヤルを備えていて、ダイヤルを回すことにより選択された光量値(明るさ)を有する光量データを受け付けるものである。
【0081】
電流制御部153は、色温度受付部151から色温度データを、光量受付部152から光量データを、それぞれ取得して、当該色温度データ及び光量データに基づき制御信号を生成し、当該制御信号を各電流調整回路14A、14Bに出力して電流I1、I2を調節するものである。
【0082】
このように構成された照明装置10は、発光装置1に取り付けられたLED素子3A、3Bが発光色にバラツキがあるものであっても、照明装置10から発する白色光の色温度を所定の値に微調整することができる。このため、複数個の照明装置10のいずれからも同じ色温度の白色光が発するように微調整することができるので、多数の照明装置10から均一な色温度の白色光を射出させることが求められる用途に好適に用いることができる。
【0083】
なお、本実施形態においては、放射ピークにバラツキがある同一製品のLED素子3A、3Bが同一基板8上に実装されているが、2種類以上の異なる製品から構成されたLED素子2群が同一基板8上に実装されていてもよい。
【0084】
また、本発明に係る発光装置1を用いて、電球100を構成してもよい。このような電球としては、例えば、図22〜24に示すような実施形態のものが挙げられる。
【0085】
当該実施形態に係る電球100は、概略回転体形状をなすものであり、光を拡散させる拡散部材により形成された第1筺体22と、発光装置1及び当該発光装置1に供給する電圧等を制御する制御部23を収容し、空気吸込口26aと空気吐出口26bとが形成された第2筺体24と、空気吸込口26aから空気吐出口26bへの空気の流れを強制的に生じさせるファン26とを備えている。
【0086】
本実施形態に係る発光装置1では、波長変換部材6から発した熱を放出する放熱フィン9bが側面に形成された上部基体2Bと、LED素子3から発した熱を放出する放熱フィン9aが側面に形成された下部基体2Aとが、間に断熱部材81´が介在した状態でねじBによって互いに固定されている。
【0087】
このような実施形態に係る発光装置1であれば、波長変換部材6から発する熱とLED素子3から発する熱との比率が変わった場合は、波長変換部材6用の放熱フィン9bとLED素子3用の放熱フィン9aとの表面積を適宜変更することにより、放熱比率を最適なものに調節することができる。
【0088】
その他、本発明は上記の各実施形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない限り、前述した種々の構成の一部又は全部を適宜組み合わせて構成してもよい。
【符号の説明】
【0089】
1・・・発光装置
2・・・基体
3・・・LED素子
4・・・封止部材
6・・・波長変換部材
8・・・基板
R・・・Oリング(弾性変形部材)
SP1・・・中心側空間
SP2・・・外周側空間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端面に開口する凹部を有した基体と、
前記基体の凹部内に取り付けられたLED素子と、
前記LED素子を封止する透光性材料からなる封止部材と、
前記封止部材の上方に設けられた蛍光体を含有する波長変換部材と、を備え、
前記基体には、前記LED素子から発した熱と前記波長変換部材から発した熱とを遮断する熱遮断部が形成されていることを特徴とするLED発光装置。
【請求項2】
前記封止部材を囲むように設けられた環状の断熱部材を備え、
前記基体が、LED素子が取り付けられた下部基体と、前記下部基体上に設けられ前記波長変換部材を支持する筒状の上部基体とからなり、
前記上部基体が、その側壁の内側周面から突出して設けられ、前記断熱部材を前記下部基体に向かって押圧する環状の押圧部を有し、
前記下部基体と前記波長変換部材と前記上部基体とにより閉塞された空間が、前記断熱部材により、前記封止部材が形成された空間と、その外周側に形成された前記透光性材料が流入していない空間とに液密に仕切られている請求項1記載のLED発光装置。
【請求項3】
前記断熱部材が、弾性変形部材である請求項1又は2記載のLED発光装置。
【請求項4】
前記下部基体の前記LED素子が取り付けられた面とは反対側の面に、前記熱遮断部が形成された位置より内側に設けられたLED素子用放熱フィンと、前記熱遮断部が形成された位置より外側に設けられた波長変換部材用放熱フィンとが配設されている請求項1、2又は3記載のLED発光装置。
【請求項5】
前記下部基体と前記上部基体とが、ねじ又は半田ペーストにより接合されている請求項1、2又は3記載のLED発光装置。
【請求項6】
個々の製品間では放射ピークにバラツキがある同一製品の集合から選び出された放射ピークの分布波長領域が互いに異なる複数のLED素子群にそれぞれ属する複数個のLED素子を有する請求項1、2、3、4又は5記載のLED発光装置と、
前記複数個のLED素子へ供給する電流値をそれぞれ変化させる電流制御部と、を備えていることを特徴とする照明装置。
【請求項7】
互いに異なる前記LED素子群に属するLED素子が、前記基体上に交互に配置されている請求項6記載の照明装置。
【請求項1】
上端面に開口する凹部を有した基体と、
前記基体の凹部内に取り付けられたLED素子と、
前記LED素子を封止する透光性材料からなる封止部材と、
前記封止部材の上方に設けられた蛍光体を含有する波長変換部材と、を備え、
前記基体には、前記LED素子から発した熱と前記波長変換部材から発した熱とを遮断する熱遮断部が形成されていることを特徴とするLED発光装置。
【請求項2】
前記封止部材を囲むように設けられた環状の断熱部材を備え、
前記基体が、LED素子が取り付けられた下部基体と、前記下部基体上に設けられ前記波長変換部材を支持する筒状の上部基体とからなり、
前記上部基体が、その側壁の内側周面から突出して設けられ、前記断熱部材を前記下部基体に向かって押圧する環状の押圧部を有し、
前記下部基体と前記波長変換部材と前記上部基体とにより閉塞された空間が、前記断熱部材により、前記封止部材が形成された空間と、その外周側に形成された前記透光性材料が流入していない空間とに液密に仕切られている請求項1記載のLED発光装置。
【請求項3】
前記断熱部材が、弾性変形部材である請求項1又は2記載のLED発光装置。
【請求項4】
前記下部基体の前記LED素子が取り付けられた面とは反対側の面に、前記熱遮断部が形成された位置より内側に設けられたLED素子用放熱フィンと、前記熱遮断部が形成された位置より外側に設けられた波長変換部材用放熱フィンとが配設されている請求項1、2又は3記載のLED発光装置。
【請求項5】
前記下部基体と前記上部基体とが、ねじ又は半田ペーストにより接合されている請求項1、2又は3記載のLED発光装置。
【請求項6】
個々の製品間では放射ピークにバラツキがある同一製品の集合から選び出された放射ピークの分布波長領域が互いに異なる複数のLED素子群にそれぞれ属する複数個のLED素子を有する請求項1、2、3、4又は5記載のLED発光装置と、
前記複数個のLED素子へ供給する電流値をそれぞれ変化させる電流制御部と、を備えていることを特徴とする照明装置。
【請求項7】
互いに異なる前記LED素子群に属するLED素子が、前記基体上に交互に配置されている請求項6記載の照明装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
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【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2013−74273(P2013−74273A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214626(P2011−214626)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(596099446)シーシーエス株式会社 (121)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(596099446)シーシーエス株式会社 (121)
【Fターム(参考)】
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