説明

LNG再ガス化と発電プラントとの熱的統合のための構成および方法

ここで企図するプラントは、凍結温度降下剤の再生をLNG再ガス化および発電サイクルに統合する。最も好ましくは、このプラントは複合サイクルプラントであり、そこでは再生器を再沸騰させる熱が蒸気サイクルによって供給され、LNGの冷却分が使用されて再生器からの蒸気を凝縮させ、燃焼タービンの吸入空気をさらに過冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、本願と同時係属の2005年3月30日出願の米国仮特許出願第60/667182号の優先権を主張する。
【0002】
本発明の分野は、LNG再ガス化施設における発電であり、特に、吸入空気の冷却を使用した複合サイクル発電プラントにおける再ガス化の熱的統合である。
【背景技術】
【0003】
燃焼タービンの吸入空気の冷却は当技術でよく知られており、様々な冷源が使用されている。例えば、中間熱伝達流体を備えた、また備えていない多数の蒸発冷却器が米国特許第6457315号に記述されている。しかし、このような構成は、冷却剤の圧縮/凝縮のために大量のエネルギーを消費する場合が多く、典型的には他の形で利用可能な冷源には熱的結合されない。
【0004】
他の知られている構成では、液化天然ガス(LNG)の冷却分が吸入空気を冷却するために利用され、空気冷却および/またはある種の他のプロセスが蒸発器でのLNGの蒸発に寄与する。例えば、知られている一構成では、米国特許出願第2003/0182941号で記述されているように、LNGは冷却剤として使用され、次いで少なくともこの一部が重層タンクに戻され、他の部分は蒸発される。さらに別の知られている構成では、米国特許第5626019号または欧州特許第0651145号で教示されているように、LNGは吸入空気を冷却するために中間冷却剤を冷却する冷源として使用され、そのように蒸発された天然ガスはその後燃料として使用される。同様に欧州特許第0605159号で述べられているように、流入空気をLNGと交差交換して、蒸発燃料と冷却吸入空気との両方を供給することができる。このようなプラントの構成は一般的には少なくともある程度は満足に動作するが、様々な欠点が残る。とりわけ、再ガス化LNGの量が、例えば一般的にパイプライン輸送で必要とされる比較的大きな量と比較すると比較的小さい。
【0005】
このような欠点を克服するために、米国特許第6367258号で述べられているように、タービン吸入空気および海水との熱交換で(再)加熱される熱交換流体を使用して、より大きな量のLNGを再ガス化することができる。さらに知られている構成では、米国特許出願第2005/0223712号で教示されているように、LNGの冷気が水蒸気サイクルの吸熱器として使用される。代替方法として、LNGを再ガス化するために熱伝達流体からの熱が使用される複合サイクルプラント構成も知られており、また米国特許出願第2003/0005698号、米国特許第6374591号、欧州特許第0683847号、または欧州特許0828915号で述べられているように、吸入空気の冷却と熱回収蒸気生成器からの熱とを使用して、冷却された熱伝達流体が再加熱される。さらに知られているプラントは、国際公開第2004/109206号で述べられているように、LNGの再ガス化を、電力生産と特定の脱メタンおよび/または脱エタン作業工程とに統合する。
【0006】
このような構成は有利に、LNGの再ガス化を他のプロセス、典型的には発電プロセスに統合する場合が多いが、様々な欠点が残る。例えばこうしたプロセスのほとんどは一般的に、不安全な状態を作り出す、または発電プラントを動作不能にさえしてしまうことになる吸入空気の水の凍結を回避するように、ガスタービンの吸入空気を華氏50°に(またはそれよりもさらに高く)冷却するように制限されている。したがって、知られているプラントにおけるLNGの冷却分を使用した発電の効率向上は一般的に、吸入空気温度の冷却限界による限界がある。さらに現在知られているガスタービン空気予備冷却方法は全て、またはほぼ全て、高温気候地域(熱帯または亜熱帯域など)で発電の効率を高める傾向にあるが、これらは寒冷気候地域(北アメリカの北東部など)では適切ではない場合が多い。比較的高温の気候でも、このような構成は、夏季期間だけの極めて小さな効率的有益性しかもたらさず、冬の気候ではその有益性は縮小する。さらに悪いことに、場合によっては、周囲温度が華氏45°を下回ると、吸入空気部での水凍結と氷閉塞による機械の損傷とを回避するためにこれらの知られているプロセスの運転を中断しなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、LNG利用および/または再ガス化を備えた発電プラントの多数のプロセスおよび構成が当技術で知られているが、それらの全てまたはほとんど全てが1つまたは複数の欠点を有している。このように、LNGの利用および/または再ガス化を備えた発電プラントの、改良された構成および方法を提供することがなお求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、LNG再ガス化作業工程を含む発電プラントの構成および方法であって、燃焼タービンの吸入空気が、LNGの冷気と凍結温度降下溶液を使用して過冷却され、これが発電からの廃熱を使用して再生される構成および方法を対象としている。LNGは、凍結温度降下剤の再生器からの蒸気塔頂留出物との交換でさらに加熱される。
【0009】
本発明の主題の一態様では、複合サイクル発電プラントが、濃厚な凍結温度降下溶液(水で濃厚にされ、または水でさらに飽和されている)を受け取るように構成された、さらにこの濃厚な溶液から水蒸気と希薄な凍結温度降下溶液(濃厚な溶液に対して水分が少なく、最も典型的には10%未満に、最も一般的には5%未満に水分が除去されている)とを形成するように構成された再生器を含む。最も好ましくは、再生器は、熱伝達流体回路(例えばLNGによって冷却されている)に熱的に結合されて、再生器の塔頂水蒸気からの熱が熱伝達流体に伝達されるようになり、再生器は蒸気サイクルにさらに熱的に結合されて、水蒸気サイクルからの熱が再生器内の濃厚な凍結温度降下溶液に伝達されるようになる。
【0010】
ここで企図しているプラントは、典型的には、LNGが冷却された熱伝達流体回路に熱的に結合された、また混合装置にさらに流体結合された空気吸入冷却器をさらに備え、この混合装置は、希薄な凍結温度降下溶液を受け取るように、希薄な凍結温度降下溶液を空気と混合することを可能にするように構成される。好ましくは、空気の希薄な凍結温度降下溶液の混合物は華氏32°未満の温度に、最も好ましくは華氏20°から華氏−40°の温度に冷却される。典型的には空気吸入冷却器に分離器が結合され、これは冷却された混合物から濃厚な凍結温度降下溶液を除去することを可能にするように構成される。必要に応じて、LNGが冷却された熱伝達流体回路に熱的に第2空気吸入冷却器が結合され、これが上流で第1空気吸入冷却器にさらに流体結合される。
【0011】
特に好ましい態様では、濃厚な凍結温度降下溶液の冷却分を使用して、熱交換器が、希薄な凍結温度降下溶液を冷却することを可能にするように構成される。再生器の蒸気サイクルへの熱的結合は、(a)蒸気サイクルの蒸気タービンからの少なくとも部分的に膨張した蒸気を受け取り、(b)少なくとも部分的に膨張した蒸気を再生器の再沸騰器に供給し、また(c)その少なくとも部分的に膨張した蒸気および/または再生器からの復水を蒸気サイクルに返還するように構成される回路を備えること、かつ/あるいは再生器のLNG冷却熱伝達流体回路への熱的結合が、蒸気からの熱をLNG冷却熱伝達流体に供給するように構成される熱交換器を備えることも好ましい。LNG冷却熱伝達流体に関しては、このような流体はグリコールを備え、かつ/または多成分系冷却剤を備えることが一般的に好ましい。同様に、希薄な凍結温度降下溶液はグリコールまたは華氏32°以下での吸水能力を有する任意の他の溶液を備えることが好ましい。
【0012】
したがって、本発明の主題の他の態様では、燃焼タービン用の吸入空気を冷却する方法は、冷却された気流を希薄な凍結温度降下溶液に組み合わせ、それによって混合物を形成し、この混合物を華氏32°未満の温度に過冷却するステップを含む。他のステップでは、このように形成された濃厚な凍結温度降下溶液が、過冷却された混合物から除去され、凍結温度降下溶液は、発電サイクルからの熱を使用して再生器で再生され、それによって蒸気を形成する。さらに他のステップでは、LNG冷却熱伝達流体を使用して蒸気が凝縮される。
【0013】
最も好ましくは、冷却空気ストリームは、周囲空気を華氏35°から華氏55°までの温度に冷却する上流冷却器によって形成され、希薄な凍結温度降下溶液が微細液滴またはミストとして冷却空気ストリーム内に噴霧される。すると華氏20°から華氏−40°までの温度を有する過冷却された混合物で過冷却が生じる。典型的には、濃厚な凍結温度降下溶液を除去するステップは、冷却された濃厚な凍結温度降下溶液を供給する分離器で実施され、かつ/または冷却された濃厚な凍結温度降下溶液は再生器からの加熱された希薄な凍結温度降下溶液と熱交換される。
【0014】
再生するステップは、蒸気サイクルからの少なくとも部分的に膨張した蒸気を再生器に供給し、それによって蒸気と加熱された希薄な凍結温度降下溶液とを形成するステップを含むこと、また少なくとも部分的に膨張した蒸気または復水は、再生器から蒸気サイクルに返還されることがさらに好ましい。最も典型的には、冷却空気ストリームと過冷却された混合物のうちの少なくとも一方は、LNG冷却熱伝達流体からの冷却分を使用して冷却され、LNG冷却熱伝達流体は再生器からの蒸気からの熱分を使用して加熱される。
【0015】
本発明の様々な目的、特徴、態様、および利点が本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明からより明らかになろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明者は、発電プラントでの燃焼タービン吸入空気の過冷却を、有利にLNG再ガス化作業工程と熱的に結合できることを発見した。このような構成は、数ある望ましい特色のうちとりわけ、発電出力が向上するとともに季節の影響を受けないこと、またLNG再ガス化のための外部エネルギーの必要がなくなること特徴とする。
【0017】
プラントでのLNG処理の特に好ましい一態様では、LNGの冷気が利用されて、複合化サイクル発電プラントにおける発電出力とガスタービンの効率とが増大される。最も典型的には、このような構成は、ガスタービン流入空気の熱分を使用してLNGを再ガス化するのに使用される熱伝達流体回路と、過冷却(即ち華氏32°未満)流入空気の氷形成を防止する凍結温度降下溶液回路とを含み、凍結温度降下溶液は、回路でガスタービンの燃焼熱を使用して再生される。
【0018】
例示的な複合サイクルプラントの一構成を図1に表しているが、ここでは典型的には、送り出し量1000MMscfdの、貯蔵コンテナからのLNGストリーム1が、LNGポンプ51によっておよそ1250psigに加圧されて、ストリーム2を形成する。次いでLNGは熱交換器52でストリーム3として、およそ華氏−225°からおよそ華氏40°までに、またはパイプラインの仕様に応じて他の温度に加熱される。加熱負荷は、グリコール水冷却剤混合物から成る熱伝達流体ストリーム29によってもたらされるが、ストリーム29はおよそ華氏60°からおよそ華氏−40°に冷却される。この冷たいグリコール冷却剤ストリーム5は循環ポンプ53によってポンピングされて、およそ120psigで排出され、ストリーム6を形成するが、これを使用して、ガスタービン流入空気を2段式冷却器54および56で冷却する。第1段冷却器から出た加熱グリコール水混合物ストリーム4は、グリコール再生復水器63の凝縮負荷でさらに加熱されて、LNG再ガス化交換器52による加熱要件を補足する。本明細書で用いている数字と併せた「およそ」という用語は、その数字から+/−10%(を含む)の範囲を指す。例えば、「およそ200psia」という用語は、180psiaから220psiaの包含的範囲を指している。同様に、およそ華氏−40°とは華氏−44°から華氏−36°までの範囲の温度を指す。
【0019】
2段式冷却システムによって、ガスタービン吸入空気ストリーム8は、周囲温度および湿度に関係なく、周囲温度(例えば華氏40°から華氏90°)から低温度(例えば華氏0°から華氏−20°またはそれより低い温度)まで冷却される。このように、制限のない連続的な冷却空気の供給を維持できることを特に認識されたい。その結果、2段式空気冷却器の構成を使用して発電の効率および出力をあらゆる気候条件下で最高にすることができる。最も好ましくは、以下にさらに述べるように、この冷却器構成は、凍結温度降下溶液を使用した段間の抗凍結保護を有する。
【0020】
2段式空気冷却器システムには、典型的には第1空気冷却器54が設けられ、これが周囲空気ストリーム8を、およそ華氏34°から華氏38°までの温度で供給されるグリコール冷却ストリーム7を使用して、典型的にはおよそ華氏90°で80%の相対湿度から、およそ華氏40°から華氏45°までに冷却して、ストリーム10を形成する。本発明の主題に限定しないが、第1段空気冷却器54の熱交換管は、交換器から復水ストリーム9が自由に排水されるのを可能にするよう構成されることがさらに好ましい。グリコール冷却剤ストリーム7は、好ましくは華氏32°の水凍結温度よりも高温で維持され、そのようにして交換管に氷が形成されるのを回避することを理解されたい。この第1空気冷却器は、吸入空気の含水比をおよそ4.7%から0.8%に減少させて、その結果水分のおよそ80%を除去する。復水ストリーム9は、複合サイクル発電プラントの蒸気システムへの、または必要に応じてプラントの他の任意の部分への補給水として回収することができる。
【0021】
第1段冷却器54から出る冷却空気(ストリーム10)は、噴霧ノズル55を使用することにより、ストリーム11として供給される凍結温度降下溶液と完全に混合され、それによってストリーム12を形成する。一般的に噴霧ノズルが好ましいが、他のタイプの混合装置も適切であると考えられ、これには混合用T字管、静混合器、または凍結温度降下溶液と空気混合物とを均質化するのに充分な乱流を作り出す他の装置が含まれる。凍結温度降下溶液はグリコール水混合物、メタノール、または好都合な熱伝達特性および凍結温度降下特性を有する他の適切な作用剤であることが好ましい。凍結温度降下溶液の空気流に対する質量流量比は主に、使用する特定の凍結温度降下溶液によって決まる。例えば、凍結温度降下溶液がグリコールを含む場合、凍結温度降下溶液の空気に対する質量流量比(即ちストリーム11のストリーム10に対する割合)は0.005から0.01の間であることが好ましいが、使用するグリコールのタイプおよび/または必要な凍結温度降下レベルの程度に応じて、0.01から0.02もの大きさであること、またはそれを越えることもできる。典型的には水和物生成または華氏−20°での水の凍結を回避するために、凍結温度降下溶液の空気に対するおよそ0.01の質量比が一般的に適切である。しかし第1冷却器から出るより高い空気温度(華氏45°以上)は、典型的には凍結温度降下溶液の追加の流れを必要とし、凍結温度降下溶液の空気に対する質量比を増大しなければならない(例えば0.015以上の比率が必要である)。凍結温度降下溶液の過剰使用は、抗凍結システムおよび再生ユニットのコストを増大することになるので、ほとんどの場合望ましくないことにも留意されたい。したがって第1冷却器が周囲空気をおよそ華氏55°以下の温度、しかし華氏32°よりも高い温度(例えば華氏35°から華氏45°まで)に冷却することが一般的に好ましい。
【0022】
凍結温度降下溶液を使用することにより、第2冷却器56はさらに、第1段冷却器からの空気ストリーム12を水凍結温度より低く、典型的にはおよそ華氏0°からおよそ華氏−20°までに、またはそれよりも低く冷却することができる。また、好ましい凍結温度降下溶液(例えばグリコール溶媒)は残留水分を凝縮させ、吸収し、凍結温度降下溶液は2相混合ストリーム13として第2冷却器から退出する。次いで2相混合ストリームは分離器64で分離されて、水分を含んだ濃厚なグリコールストリーム23と冷乾燥空気ストリーム33とを作り出す。分離器には、グリコール同伴を除去し、グリコールの損失を最小限に抑えるようにデミスターが備えられることが好ましい。デミスターはメッシュタイプの装置または羽根分離器であることができ、これは典型的には、ガスタービンの性能を他の形で妨げることになる過剰な圧力降下を生むことなく、ミクロン寸法またはサブミクロン寸法の同伴液体を除去するのに適切な材料で構築される。冷却ガスストリーム33の含水比は、典型的にはおよそ0.05%に縮小される。このように水を除去することによって、ガスタービンの圧縮セクション57によって必要とされる馬力も縮小され、これが発電の効率を高めることを理解されたい。燃焼器に燃料がストリーム32(気化LNGである場合もない場合もある)として供給される。
【0023】
空気がこのように低い温度に冷却されると、空気の質量濃度が高まり、(ガスタービンが一定の流量で動作するとき)空気流が増大し、これに続いてガスタービンの発電出力が増大することに留意されたい。より冷たい空気の温度もガスタービンの圧縮セクションによる電力消費を縮小して、ガスタービン(ブレイトンサイクル)の発電の効率を高める。この望ましい効果を図2に示すが、これは本発明の主題によるガスタービン入口での冷却を備えた複合サイクル発電プラントの例示的な性能グラフを示している。典型的には空気温度の華氏3°から華氏5°の低下ごとに発電プラントの出力がおよそ1%増大される。例えば夏季運転中に、周囲空気の吸入温度が華氏100°から華氏−20°に低下されると、複合サイクル発電プラントの発電出力を33%よりも多く増大させることができる。図2に示しているように、発電プラントの出力はこれらの空気冷却ステップによって900MWから1200MWに増大することができる。発電出力のこのような300MWの増大は、特に消費者の需要がピークに達し、電気を割り増し料金で販売することができる夏季期間中は、電力収益の大幅な増加を意味する。周囲温度が低い冬季期間中は、電力収益はさらに大きい。例えば周囲空気の吸入温度が華氏50°から華氏−20°に低下されると、発電出力の15%を超える増大を達成することができる。このシナリオでは、図2に示すように、この空気冷却ステップで、発電プラントの出力を1050MWから1200MWに増大することができる。このような150MWの増大は電力生産および電力収益の相当の増加を意味する。
【0024】
空気の薄い凍結温度降下溶液混合物は華氏32°未満の温度に冷却され、より典型的にはおよそ華氏30°からおよそ華氏10°までに、さらにより典型的には華氏10°からおよそ華氏−10°までに、最も典型的には華氏−10°からおよそ華氏−20°までに冷却されることが一般的に企図されている。冷却温度は華氏−20°であることが好ましいが、追加の発電出力を得るために、LNGが華氏−250°で供給されるとき、吸入空気の温度を華氏−40°未満にさらに低下させることもできる。このように、下限値は主に、LNG再ガス化の送り出し量(即ち利用可能な冷却)と、実際の機械の設計と、空気力学と、低い空気温度で動作するための構造物の材料とによって支配されることを理解されたい。
【0025】
濃厚なグリコールストリーム23は交換器66で希薄なグリコールストリーム30と熱交換され、およそ華氏220°になってストリーム24を形成し、その後グリコール再生器62に進入する。濃厚なグリコールから水分を剥離するために、蒸気加熱再沸騰器67が使用されることが好ましい。複合サイクル発電プラントの蒸気タービン59の中間段階から、低圧蒸気がストリーム16として供給される。復水蒸気は、復水ポンプ61の排出ストリーム20と組み合わせることによって、ストリーム21として蒸気沸騰システム58に戻されて、複合ストリーム22を形成する。典型的には、水を含むストリーム23のグリコール重量濃度は40%から55%である。冷却空気温度が低いほど、水凍結および水和物生成を避けるためにより高いグリコール濃度が必要となる。反対に、空気温度が高いほど、凍結温度降下が緩和されることから少量のグリコール注入しか必要にならない。
【0026】
剥離水は、およそ華氏240°の温度、およそ10psigの圧力でグリコール再生器からオーバーヘッドストリーム26として除去される。このストリームで利用可能な有効廃熱は、交換器63で熱伝達ストリーム4をおよそ華氏60°に予備加熱するのに利用され、これが有利にLNG再ガス化の加熱負荷を補足する。交換器63から出た復水28は、沸騰器給水の補充として蒸気システムに回収することができる。グリコール生成器62は、グリコールポンプ65によってポンピングされる底部の希薄なグリコールストリーム25を作り出して、ストリーム30を形成し、引き続いてこれが交換器66で濃厚なグリコールと熱交換され、その後注入するために再使用される。
【0027】
蒸気沸騰システム58が燃焼排出部14から出た熱を受け取り、これが冷却されてストリーム31を形成する。次いで加熱または過熱ストリーム15が蒸気タービン59で膨張されて電力を作り出す。次いで部分的に膨張した蒸気(典型的には低圧蒸気)の一部分が蒸気タービンから再沸騰器67に供給され、さらに膨張した蒸気17が冷却剤ストリーム18を使用して復水器60で凝縮されて、復水19を形成する。復水ポンプ61が復水19をポンピングして圧力を掛けて、ストリーム20を形成し、これが再沸騰器の復水ストリーム21と組み合わされてストリーム22を形成する。
【0028】
したがって、本発明の主題による好ましい複合サイクル発電プラントは、濃厚な凍結温度降下溶液を受け取るように構成された、またさらにその濃厚な溶液から蒸気と希薄な凍結温度降下溶液とを形成するように構成された再生器を含むことになることが企図される。最も好ましくは、この再生器は、蒸気からの熱を熱伝達流体に伝達することができるようにLNG冷却熱伝達流体回路に熱的に結合され、また再生器は、蒸気サイクルからの熱を再生器の濃厚な凍結温度降下溶液に伝達することができるように蒸気サイクルにさらに熱的に結合される。
【0029】
過去に知られている構成および方法は一般的に、吸入空気を華氏40°以上の温度に冷却することに限定されており、したがって大幅な電力の増加を生むことはできないことを特に理解されたい。これとは対照的に、本明細書で提示している構成は、吸入空気を華氏−40°の温度まで冷却することを可能にする。これは現在知られている方法および構成の技術に対して大幅な増加である。さらに、本発明の主題による構成および方法は、廃熱を使用して凍結温度降下溶液を再生し、LNG再ガス化用の追加の熱を供給することに留意されたい。
【0030】
ここで企図している発電プラントは、熱伝達流体を使用してガスタービン流入空気を冷却する2段式冷却器を有し、さらにその2つの冷却器段の間に凍結温度降下溶液を冷却された空気と混和させる注入装置を含むことが好ましい。特に好ましい構成では、LNGの冷気を使用して、ガスタービン吸入空気を間接的に冷却して、吸入空気の湿分を間接的に凝縮させ、除去し、かつ/あるいはガスタービン流入空気を水凍結温度未満の温度に間接的に大いに冷却する。最も好ましくは、氷および水和物の形成は、過冷却するべき空気ストリームに凍結温度降下溶液を注入することによって抑制され(例えば第1段冷却器と第2段冷却器との間で)、それによってガスタービンへの制限のない連続的な冷却空気の供給をもたらす。このように、空気吸入冷却器および/またはLNG再ガス化交換器のための熱伝達流体は、LNGの極低温で凍結しない溶液を含み、また吸入空気の冷却に好都合な熱伝達特性を有することが一般的に好ましい。典型的にはこのような流体は、グリコールを基にした溶媒、最も典型的にはエチレングリコール水混合物(例えばおよそ80wt%のグリコール濃度を有するエチレングリコール水混合物)を含む。他の溶媒も適切であると考えられ、これには多成分熱伝達流体、ハロゲン化炭化水素、メタノール等が含まれる。
【0031】
最も典型的には、ここで企図している構成は凍結温度降下溶液を使用して第1段冷却器から残留水を除去し、同時に第2冷却器での水凍結を抑制する。このように形成された水を含む凍結温度降下溶液は吸入空気ストリームから分離され、好ましくは複合サイクル発電プラントの蒸気サイクルから抽出された廃蒸気、またはガスタービン排出部からの排ガスを使用して抗凍結剤が再生される。代替方法として、水を様々な他のやり方で吸入空気から除去することもでき、ここで企図するやり方には特に分子状ふるいとTEG接触器とが含まれる。このような場合、吸収剤の再生も蒸気サイクルに熱的に結合される。
【0032】
本明細書で企図している構成は、LNG送り出しの様々な容量とガスタービンの様々な寸法に適合可能であることをなおさらに認識されたい。さらにここで企図している構成は、水供給が稀少な遠隔地域でしばしば遭遇する蒸気発電サイクルを備えていない単純なガスタービンサイクルにも適している。このような場合、凍結温度降下溶液の再生用の熱は、ガスタービン排出部から回収されることが好ましい。本発明の主題に限定しないが、ここで企図しているプラントは、蒸気発電プラントの沸騰器給水システムへの補充水として、復水を吸入空気から回収できることを理解されたい。このように、回収された復水の使用は、蒸気発電プラントへの水の取り込みと、沸騰器給水処理プラントからの廃棄物排出とを縮小または解消する。
【0033】
したがって、燃焼タービンの吸入空気を冷却する好ましい方法は、冷却された空気ストリームを希薄な凍結温度降下溶液と組み合わせ、それによって混合物を形成し、これが華氏32°未満の温度に過冷却されるステップを含む。さらなるステップでは濃厚な凍結温度降下溶液が過冷却された混合物から除去され、希薄な凍結温度降下溶液が、発電サイクルからの熱を使用して再生器で再生され、それによって蒸気を形成する。次いでLNG冷却熱伝達流体を使用して、蒸気が凝縮されることが好ましい。
【0034】
本明細書で企図している熱的に統合された構成は、現在知られている発電技術を遥かに超える発電プラントの発電出力と発電効率との大幅な増大をもたらし、同時に発電施設の資本コストを削減する(例えば発電コストを40%も削減することができる)ことも企図されている。さらに、本明細書で提示している構成はゼロから建設されるプラントで、あるいは既存の発電プラントおよび/またはLNG再ガス化設備への追加導入部として実施できることを認識されたい。
【0035】
このように、統合化された電力生産についての特定の実施形態および用途を開示した。しかし、既にここに記述したもの以外のより多数の修正形態が、本明細書の発明概念から逸脱することなく可能であることが当業者には明らかである。したがって本発明の主題は、ここに添付する請求項の趣旨を除いて限定されない。さらに、本明細書を解釈する際も、本請求項を解釈する際も、全ての用語は文脈と整合する最も広範な意味に解釈されるべきである。特に、「備える」および「備えている」という用語は、非排他的な意味での要素、構成要素、またはステップを指しており、そこで出した要素、構成要素、またはステップが、ここで明確には参照していない他の要素、構成要素、またはステップとともに存在し、利用され、または組み合わされる場合があることを表すものとして解釈されるべきである。さらに、参照によって本明細書の一部としている参照の用語の定義または使用が、本明細書で示しているその用語の定義と整合しないまたは相容れない場合、本明細書で示しているその用語の定義が適用され、参照の用語の定義は適用されない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】LNG再ガス化、発電、および吸入空気過冷却が熱的に統合された統合化複合サイクルプラントの例示的構成を示す図である。
【図2】流入空気の温度に応じた燃焼タービン発電機の発電出力の増大を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合サイクル発電プラントであって、
濃厚な凍結温度降下溶液を受け取るように構成され、濃厚な溶液から蒸気と希薄な凍結温度降下溶液とを形成するようにさらに構成された再生器を備え、
再生器が、蒸気からの熱を熱伝達流体に伝達することができるように、LNG冷却熱伝達流体回路に熱的に結合され、
再生器が、蒸気サイクルからの熱を再生器の濃厚な凍結温度降下溶液に伝達できるように、蒸気サイクルにさらに熱的に結合される、複合サイクル発電プラント。
【請求項2】
LNG冷却熱伝達流体回路に熱的に結合され、混合装置にさらに流動結合された空気吸入冷却器をさらに備え、混合装置が希薄な凍結温度降下溶液を受け取るように、また希薄な凍結温度降下溶液を空気に混合することを可能にするように構成されている、請求項1に記載のプラント。
【請求項3】
空気吸入冷却器が、空気の希薄な凍結温度降下溶液混合物を華氏32°未満の温度に冷却するように構成されている、請求項2に記載のプラント。
【請求項4】
空気吸入冷却器に流動結合された、また冷却された混合物から濃厚な凍結温度降下溶液を除去するのを可能にするように構成された分離器をさらに備える、請求項3に記載のプラント。
【請求項5】
LNG冷却熱伝達流体回路に熱的に結合された、またさらに上流で空気吸入冷却器に流動結合された第2空気吸入冷却器をさらに備える、請求項2に記載のプラント。
【請求項6】
濃厚な凍結温度降下溶液の冷却分を使用して希薄な凍結温度降下溶液を冷却することを可能にするように構成された熱交換器をさらに備える、請求項1に記載のプラント。
【請求項7】
再生器の蒸気サイクルへの熱的な結合が、蒸気サイクルの蒸気タービンからの少なくとも部分的に膨張した蒸気を受け取り、少なくとも部分的に膨張した蒸気を再生器の再沸騰器に供給し、少なくとも部分的に膨張した蒸気を再生器から蒸気サイクルに返還するように構成された回路を備える、請求項1に記載のプラント。
【請求項8】
再生器のLNG冷却熱伝達流体回路への熱的な結合が、蒸気からの熱をLNG冷却熱伝達流体に供給するように構成された熱交換器を備える、請求項1に記載のプラント。
【請求項9】
LNG冷却熱伝達流体が、グリコール、または華氏32°以下の温度で水を吸収する能力を有する溶液を備える、請求項1に記載のプラント。
【請求項10】
希薄な凍結温度降下溶液がグリコールを備える、請求項1に記載のプラント。
【請求項11】
燃焼タービンの吸入空気を冷却する方法であって、
冷却された空気ストリームを希薄な凍結温度降下溶液と組み合わせ、それによって混合物を形成し、混合物を華氏32°未満の温度に過冷却するステップと、
過冷却された混合物から濃厚な凍結温度降下溶液を除去し、発電サイクルからの熱を使用して再生器で希薄な凍結温度降下溶液を再生し、それによって蒸気を形成するステップと、
LNG冷却熱伝達流体を使用して蒸気を凝縮させるステップとを備える、方法。
【請求項12】
冷却された空気ストリームが、周囲空気を華氏35°から華氏45°の温度に冷却する上流の空気冷却器によって形成される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
組み合わせるステップが、希薄な凍結温度降下溶液の冷却された空気ストリームへの噴霧を使用して実行される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
過冷却された混合物が、華氏20°から華氏−40°の温度を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
濃厚な凍結温度降下溶液を除去するステップが、冷却された濃厚な凍結温度降下溶液剤を供給する分離器で実行される、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
冷却された濃厚な凍結温度降下溶液が、再生器からの加熱された希薄な凍結温度降下溶液と熱交換される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
再生するステップが、蒸気サイクルからの少なくとも部分的に膨張した蒸気を再生器に供給し、それによって蒸気と加熱された希薄な凍結温度降下溶液とを形成するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも部分的に膨張した蒸気が、再生器から蒸気サイクルに返還される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
冷却された空気ストリームと過冷却された混合物との少なくとも一方が、LNG冷却熱伝達流体からの冷却分を使用して冷却される、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
LNG冷却熱伝達流体が、再生器からの蒸気からの熱分を使用して加熱される、請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−537045(P2008−537045A)
【公表日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−504157(P2008−504157)
【出願日】平成18年3月21日(2006.3.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/010380
【国際公開番号】WO2006/104800
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(506354434)フルオー・テクノロジーズ・コーポレイシヨン (35)
【Fターム(参考)】