説明

LPG燃料用減圧弁

【課題】高圧のLPG燃料が導入される弁室が形成されるハウジングに、弁室に臨む弁座に一端部を着座させることを可能とするとともに弁座よりも下流側のLPG燃料の圧力を他端部に作用せしめるようにした弁体を有する弁機構が内蔵されるLPG燃料用減圧弁において、弁体に弁座よりも下流側のLPG燃料の圧力を背圧として弁体に作用せしめるようにしつつ、タールに起因した弁体の摺動性能の低下を抑える。
【解決手段】弁機構18で減圧されたLPG燃料を一旦貯留して気液分離を促すセパレータ室15がハウジング5内に形成され、弁座に一端部を着座させ得る弁体21が、その他端部をセパレータ室15に直接臨ませるように配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧のLPG燃料が導入される弁室が形成されるハウジングに、前記弁室に臨む弁座に一端部を着座させることを可能とするとともに前記弁座よりも下流側のLPG燃料の圧力を他端部に作用せしめるようにした弁体を有する弁機構が内蔵されるLPG燃料用減圧弁に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなLPG燃料用減圧弁は、特許文献1で知られており、このものでは、ハウジングの一部を構成するボディに、一端部を弁座に着座可能とした弁体を摺動可能に嵌合せしめる有底のガイド孔が設けられ、ガイド孔の閉塞端および弁体の他端部間に形成される背圧室に、弁座よりも下流側のLPG燃料の圧力を導くようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−176643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、LPG燃料にはタール成分が含まれており、弁座よりも上流側の高圧部ではタールの蓄積が微量であり、タールが弁機構の作動に影響を与える可能性は少ないのであるが、弁座よりも下流側の低圧部ではタールが蓄積する可能性があり、上記特許文献1で開示されるもののように背圧室が袋小路に形成されると、背圧室内にタールが溜まって弁体の摺動に影響を与える可能性があり、溜まったタールを背圧室から取り除くことも困難である。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、弁体に弁座よりも下流側のLPG燃料の圧力を背圧として弁体に作用せしめるようにしつつ、タールに起因した弁体の摺動性能の低下を抑えるようにしたLPG燃料用減圧弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、高圧のLPG燃料が導入される弁室が形成されるハウジングに、前記弁室に臨む弁座に一端部を着座させることを可能とするとともに前記弁座よりも下流側のLPG燃料の圧力を他端部に作用せしめるようにした弁体を有する弁機構が内蔵されるLPG燃料用減圧弁において、前記弁機構で減圧されたLPG燃料を一旦貯留して気液分離を促すセパレータ室が前記ハウジング内に形成され、前記弁体が、その他端部を前記セパレータ室に直接臨ませるように配置されることを第1の特徴とする。
【0007】
また本発明は、第1の特徴の構成に加えて、前記ハウジングの一部を構成するボディに、前記弁室および前記セパレータ室間にわたるガイド孔を形成するガイド筒部が設けられ、前記弁体が前記ガイド孔に摺動可能に嵌合されることを第2の特徴とする。
【0008】
さらに本発明は、第2の特徴の構成に加えて、前記弁室および前記セパレータ室間を気密に仕切る環状のシール部材が、前記ガイド孔の内周に摺接するようにして前記弁体の外周に装着されることを第3の特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1の特徴によれば、弁機構で減圧されたLPG燃料を一旦貯留して気液分離を促すようにしてハウジング内に形成されるセパレータ室に、弁体の他端部が直接臨むので、弁体の他端部が臨む部分が袋孔状となることはなく、弁体の摺動に影響を及ぼす部分からのタールの排出が容易であり、タールに起因した弁体の摺動性能の低下を抑えることができる。
【0010】
また本発明の第2の特徴によれば、ハウジングの一部を構成するボディに設けられたガイド筒部に、弁室およびセパレータ室間にわたるガイド孔が形成され、そのガイド孔に弁体が摺動可能に嵌合されるので、ガイド孔内の前記セパレータ室側の部分にはタールが蓄積され難く、弁体の摺動性能の低下をより効果的に抑えることができる。しかも弁体の他端部に背圧を作用せしめるための背圧導入通路をガイド孔とは別に設ける必要がない。
【0011】
さらに本発明の第3の特徴によれば、環状のシール部材が、ガイド孔の内周に摺接するようにして弁体の外周に装着されるので、前記弁体の前記ガイド孔への摺動部のうちシール部材よりもセパレータ室側の部分を小さく設定することができるので、タールの影響を受ける摺動部を小さくして、弁体の摺動性能の低下をさらに効果的に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】LPG燃料用減圧弁の横断面図である。
【図2】シール部材を弁体の外周およびガイド孔の内周にそれぞれ装着した状態を比較して説明するための横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図1および図2を参照しながら説明する。
【0014】
先ず図1において、このLPG燃料用減圧弁は、車両に搭載されるエンジン(図示せず)にLPG燃料を減圧して供給するためのものであり、そのハウジング5は、ボディ6と、該ボディ6との間にダイヤフラム13の周縁部を挟持するようにして前記ボディ6の一面に複数のボルト9,9…で締結されるダイヤフラムカバー7と、前記ボディ6の他面に複数のボルト10,10…で締結されるカバー部材8とで構成され、前記ダイヤフラム13の周縁部には前記ボディ6および前記ダイヤフラムカバー7間に介装される環状のシール部13aが一体に設けられ、前記カバー部材8および前記ボディ6間には環状のシール部材17が介装される。
【0015】
前記ボディ6は、筒状のボディ主部6aと、一端を前記ダイヤフラム13側に向けて開口するようにして前記ボディ主部6aの中央部に配置される段付き円筒状の弁機構収容筒部6bと、該弁機構収容筒部6bの他端から半径方向内方に張り出す内向き鍔部6cと、前記弁機構収容筒部6bよりも小径に形成されて該弁機構収容筒部6bと同軸に配置されるとともに前記内向き鍔部6cの内周に連設される円筒状のガイド筒部6dと、前記弁機構収容筒部6bの中間部および前記ボディ主部6aの中間部間を連結する隔壁部6eとを一体に有し、アルミダイキャスト等で型成形される。このボディ6には、前記隔壁部6eを閉塞端として前記ボディ6の一端側に開放する第1の凹部11と、前記隔壁部6eを閉塞端として前記ボディ6の他端側に開放する第2の凹部12とが形成される。
【0016】
第1の凹部11の開放端は前記ダイヤフラム13で閉じられており、該ダイヤフラム13および前記ボディ6間には、第1の凹部11で大部分が形成されるようにして加熱室14が形成される。また第2の凹部12の開放端は前記カバー部材8で閉じられており、該カバー部材8および前記ボディ6間には、LPG燃料を一旦貯留して気液分離を促すセパレータ室15が第2の凹部12で大部分が形成されるようにして形成される。前記加熱室14および前記セパレータ室15は、前記ボディ6の隔壁部6eで隔てられるのであるが、前記隔壁部6eの上部には、前記加熱室14および前記セパレータ室15間を連通させる連通孔16が設けられる。
【0017】
前記ボディ6には、高圧のLPG燃料を減圧するための弁機構18が第1および第2の凹部11,12の中央部に配置されるようにして内蔵されるものであり、この弁機構18は、高圧ガス通路23に通じる弁室24に臨むとともに弁孔19を中央部に開口させた弁座20と、該弁座20に着座可能な弁体21と、前記弁座20よりも下流側のLPG燃料の圧力に応じて作動する前記ダイヤフラム13に連結されて前記弁体21に連なる弁軸22とを有する。
【0018】
前記ボディ6の前記弁機構収容筒部6bは、第1および第2の凹部11,12の中心軸線CLと同軸に配置されるものであり、前記内向き鍔部6c側に向かうにつれて段階的に小径となる段付き形状の取付け孔25が前記弁機構収容筒部6bに設けられる。この取付け孔25の軸方向中間部には、前記ダイヤフラム13側に臨む環状の段部25aが形成されており、この段部25aに当接するように前記取付け孔25にその一端側から弁座部材26が嵌合され、前記取付け孔25の一端部に螺合される押え部材27および前記段部25a間に前記弁座部材26が挟持される。すなわち弁座部材26は、前記弁機構収容筒部6bに嵌合、固定される。
【0019】
前記弁座部材26は、半径方向内方に張り出す鍔部26aを一端に有して円筒状に形成されており、前記鍔部26aの中央に、弁孔19を中央部に開口させた環状の弁座20が形成される。この弁座部材26の外周には前記取付け孔25軸方向中間部内面に弾発的に接触する環状のシール部材28が装着される。而して前記取付け孔25の中間部に気密に挿入、固定される前記弁座部材26と、前記内向き鍔部6cとの間で、前記ガイド筒部6dの周囲に弁室24が形成される。
【0020】
また前記ガイド筒部6dには、前記取付け孔25よりも小径であるガイド孔29が前記弁室24および前記セパレータ室15間にわたって設けられており、半径方向外方に張り出す鍔部21aを一端に有する弁体21が前記ガイド孔29に摺動可能に嵌合され、前記鍔部21aの前記弁座20に対向する面には、前記弁座20に着座して前記弁孔19を閉じ得る環状のシール部材30が装着される。
【0021】
また前記弁室24および前記セパレータ室15間を気密に仕切る環状のシール部材31が、前記ガイド孔29の内周に摺接するようにして、前記弁体21の他端寄り外周に装着される。
【0022】
ところで前記弁体21は、ダイヤフラム13によって軸方向に駆動されるのであるが、ダイヤフラム13の作動に対する弁体21の追従性を高めるために、前記弁体21および前記カバー部材8間には、前記弁体21の前記鍔部21aを前記弁座20に近接させる側に前記弁体21を付勢するコイル状のばね32が縮設され、このばね32のセット荷重は、弁体21をダイヤフラム13に追従させるだけのごく小さな値に設定される。また前記鍔部21aが前記ガイド筒部6dの一端に当接することで弁体21の弁座20から離反する側への移動端が規制される。
【0023】
前記押え部材27は、摺動孔33と、前記弁座部材26側に向かうにつれて大径となるように形成されて前記摺動孔33に小径端が同軸に連なるテーパ孔34と、該テーパ孔34の大径端に同軸に連なる大径孔35とを有して円筒状に形成されており、この押え部材27の内側で該押え部材27および前記弁座部材26間には、前記弁孔19に連なる減圧室36が形成される。また前記押え部材27には、一端を前記テーパ孔34の内面に開口させた複数の通路37,37…が、前記減圧室36および前記加熱室14間を結ぶようにして設けられる。
【0024】
前記押え部材27の前記摺動孔33には、前記ダイヤフラム13の中央部に結合されるダイヤフラムロッド38が摺動可能に嵌合され、ダイヤフラムロッド38の外周には前記摺動孔33の内周に摺接する環状のシール部材39が装着される。前記弁体21には、該弁体21を同軸に貫通する弁軸22が結合されており、この弁軸22は前記弁孔19を緩く貫通して前記ダイヤフラムロッド38に連結される。
【0025】
前記ダイヤフラムロッド38は、第1リテーナ41を前記ダイヤフラム13の一面中央部との間に挟むものであり、このダイヤフラムロッド38に同軸に設けられる軸部38aが、第1リテーナ41、前記ダイヤフラム13ならびに該ダイヤフラム13の他面中央部に当接する第2リテーナ42を貫通する。しかも前記軸部38aの第2リテーナ42からの突出部外周には雄ねじ43が刻設されており、第2リテーナ42との間にワッシャ44を介在させるようにしてナット45が前記雄ねじ43に螺合される。而して前記ナット45を締めつけることでダイヤフラムロッド38が、前記ダイヤフラム13の中央部との間に第1および第2リテーナ41,42を挟むようにして、ダイヤフラム13の中央部に結合されることになる。
【0026】
ところで前記ボディ6およびダイヤフラム13の一面間には、前記減圧室36に通路37,37…を介して連通する加熱室14が形成され、ダイヤフラム13の他面およびダイヤフラムカバー7間にはばね室46が形成されるものであり、前記ダイヤフラム13は、前記ばね室46に収容される大小2つのコイル状のダイヤフラムばね47,48で前記加熱室14の容積を減少させる側に付勢される。
【0027】
前記ばね室46内には、円板状のばね受け部材49が収容されており、このばね受け部49は、前記ダイヤフラムカバー7に装着される支持軸50で支持される。前記支持軸50は、前記ダイヤフラムカバー7の中央部に気密に嵌合する嵌合軸部50aと、該嵌合軸部50aよりも大径に形成されるとともに前記ばね室46内に配置されるようにして前記嵌合軸部50aに同軸に連なるねじ軸部50bとを一体に有しており、前記ばね受け部材49は、前記支持軸50の軸方向に沿う位置を調節することを可能として前記ねじ軸部50bに螺合され、前記ダイヤフラムばね47,48は、ばね受け部材49および第2リテーナ42間に縮設される。而して前記支持軸50の軸方向に沿う前記ばね受け部材49の進退位置を調節することで前記ダイヤフラムばね47,48のばね荷重を調節することができる。
【0028】
また前記ダイヤフラムカバー7には、ばね室46内に通じる負圧導入管(図示せず)が設けられており、この負圧導入管には、エンジンの吸気負圧を導く管路(図示せず)が接続される。
【0029】
前記弁室24に通じる高圧ガス通路23は、前記弁機構収容筒部6bの半径方向に延びるものであり、前記隔壁部6eの前記セパレータ室15側の面との間に前記高圧ガス通路23を形成するための通路形成部6fが前記隔壁部6eから前記セパレータ室15側に隆起するようにして前記隔壁部6eに一体に設けられる。また前記高圧ガス通路23の外端は、該高圧ガス通路23と平行な軸線を有する入口通路52に連通されるものであり、この入口通路52は、前記ボディ主部6aならびに該ボディ主部6aから外側方に突出するようにして前記ボディ6に一体に設けられる入口側接続筒部6gに形成される。しかも前記入口通路52は、前記高圧ガス通路23の外端との間に外方に臨む段部53を形成するようにして前記高圧ガス通路23よりも大径に形成されており、この入口通路52の中心からオフセットした位置に前記高圧ガス通路23の外端が連設される。
【0030】
前記入口側接続筒部6gの突出端には、該入口側接続筒部6gとの間に環状のシール部材56を介在させた平板状の取付け板54が複数のボルト55,55…で締結されており、この取付け板54の中央部に該取付け板54を気密に貫通するようにして入口側接続管57が取付けられる。
【0031】
前記入口側接続管57は、大径筒部57aと、大径筒部57aとの間に環状の段部57cを形成するようにして大径筒部57aに同軸に連なる小径筒部57bとを一体に有するように形成されており、前記取付け板54の中央部に設けられた貫通孔58に、前記段部57cを前記取付け板54の内面に当接させるようにして前記小径筒部57bが挿通され、前記貫通孔58の内周に弾発的に接触する環状のシール部材59が前記小径筒部57bの外周に装着される。
【0032】
前記小径軸部57bの前記取付け板54からの突出部の外周には雄ねじ60が刻設されており、その雄ねじ60に螺合するナット61を前記取付け板58の外面に当接、係合するまで締めつけることによって、前記入口側接続管57が前記取付け板54の中央部に固定される。
【0033】
また前記セパレータ室15の上部に通じる出口通路62が、前記ボディ主部6aならびに該ボディ主部6aから外側方に突出するようにして前記ボディ主部6aに一体に設けられる出口側接続筒部6hに形成されており、この出口通路62に通じる出口側接続管(図示せず)が前記出口側接続筒部6hに接続される。
【0034】
また前記ボディ6のボディ主部6aには、前記加熱室14内に通じるリリーフ通路66が設けられており、そのリリーフ通路66の外端に接続されるリリーフ弁67が前記ボディ主部6aに取付けられる。
【0035】
前記弁機構18で減圧されて前記加熱室14に導かれたLPG燃料は、前記ボディ6に形成される加熱流体通路70を流通する加熱流体たとえばエンジン冷却液によって加熱されるものであり、前記加熱流体通路70は前記ボディ6のその型成形時に同時に成形される。
【0036】
また前記加熱流体通路70は、前記弁体21の作動方向すなわち第1および第2の凹部11,12の中心軸線CLに沿う方向で前記弁機構18の前記弁座20と同一位置を通るように配置されるものであり、弁機構18の弁座部材26を嵌合、固定するようにしてボディ6に一体に設けられる弁機構収容筒部6bで加熱流体通路70の周壁の一部が構成される。
【0037】
ところで前記弁機構18で減圧されたLPG燃料は減圧室36から加熱室14に導かれ、この加熱室14では加熱流体通路70を流通する加熱流体からの放熱で加熱され、LPG燃料の気化が促進されることになり、加熱室14およびセパレータ室15の上部間を連通する連通孔16からセパレータ室15に導かれた気相のLPG燃料に同伴する液相燃料は、セパレータ室15で分離され、気相のLPG燃料だけがセパレータ室15の上部から出口通路62を経て外部に導出されることになる。
【0038】
次にこの実施の形態の作用について説明すると、加熱流体通路70は、弁機構18の一部を構成する弁座部材26に形成される弁座20と弁体21の作動方向に沿う方向で同一位置に配置されており、前記弁座部材26を嵌合、固定するようにして前記ボディ6に一体に設けられる弁機構収容筒部6bで、加熱流体通路70の周壁の一部が構成されるので、LPG燃料の減圧時に最も温度が低下する弁座20の周辺を効果的に温めることができる。
【0039】
またハウジング5内には、弁機構18で減圧されたLPG燃料を一旦貯留して気液分離を促すセパレータ室15が形成されており、一端部を弁座20に着座させ得る弁体21が、その他端部をセパレータ室15に直接臨ませるように配置されるので、弁体21の他端部が臨む部分が袋孔状となることはなく、弁体21の摺動に影響を及ぼす部分からのタールの排出が容易であり、タールに起因した弁体21の摺動性能の低下を抑えることができる。
【0040】
またハウジング5の一部を構成するボディ6に設けられたガイド筒部6dに、弁室24およびセパレータ室15間にわたるガイド孔29が形成され、そのガイド孔29に弁体21が摺動可能に嵌合されるので、ガイド孔29内の前記セパレータ室15側の部分にはタールが蓄積され難く、弁体21の摺動性能の低下をより効果的に抑えることができる。しかも弁体21の他端部に背圧を作用せしめるための背圧導入通路をガイド孔29とは別に設ける必要がない。
【0041】
さらに環状のシール部材31が、ガイド孔29の内周に摺接するようにして弁体21の外周に装着されるので、前記弁体21の前記ガイド孔29への摺動部のうちシール部材31よりもセパレータ室15側の部分を小さく設定することができるので、タールの影響を受ける摺動部を小さくして、弁体21の摺動性能の低下をさらに効果的に抑えることができる。
【0042】
すなわち図2(a)で示すように、ガイド孔29の内周に摺接する環状のシール部材31が弁体21の外周に装着された状態では、弁体21の全閉および全開間の作動によっても弁体21のガイド孔29への摺動部のうちシール部材31よりもセパレータ室15側の部分の長さL1を小さい一定の値とすることができるのに対して、図2(b)で示すように、弁体21の外周に摺接する環状のシール部材31をガイド孔29の内周に装着した場合には、弁体21の全閉時には弁体21のガイド孔29への摺動部のうちシール部材31よりもセパレータ室15側の部分の長さL2が小さくなるものの弁体21の全開時には弁体21のガイド孔29への摺動部のうちシール部材31よりもセパレータ室15側の部分の長さL3が大きくなってしまうものであり、ガイド孔29の内周に摺接するようにして弁体21の外周に環状のシール部材31が装着されることによって、タールの影響を受ける摺動部を小さくして、弁体21の摺動性能の低下を効果的に抑えることができるようになる。
【0043】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0044】
5・・・ハウジング
6・・・ボディ
6d・・・ガイド筒部
15・・・セパレータ室
18・・・弁機構
20・・・弁座
21・・・弁体
24・・・弁室
29・・・ガイド孔
31・・・シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧のLPG燃料が導入される弁室(24)が形成されるハウジング(5)に、前記弁室(24)に臨む弁座(20)に一端部を着座させることを可能とするとともに前記弁座(20)よりも下流側のLPG燃料の圧力を他端部に作用せしめるようにした弁体(21)を有する弁機構(18)が内蔵されるLPG燃料用減圧弁において、前記弁機構(18)で減圧されたLPG燃料を一旦貯留して気液分離を促すセパレータ室(15)が前記ハウジング(5)内に形成され、前記弁体(21)が、その他端部を前記セパレータ室(15)に直接臨ませるように配置されることを特徴とするLPG燃料用減圧弁。
【請求項2】
前記ハウジング(5)の一部を構成するボディ(6)に、前記弁室(24)および前記セパレータ室(15)間にわたるガイド孔(29)を形成するガイド筒部(6d)が設けられ、前記弁体(21)が前記ガイド孔(29)に摺動可能に嵌合されることを特徴とする請求項1記載のLPG燃料用減圧弁。
【請求項3】
前記弁室(24)および前記セパレータ室(15)間を気密に仕切る環状のシール部材(31)が、前記ガイド孔(29)の内周に摺接するようにして前記弁体(21)の外周に装着されることを特徴とする請求項2記載のLPG燃料用減圧弁。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−97595(P2013−97595A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240214(P2011−240214)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)
【Fターム(参考)】