説明

MEMSマイクモジュール及びその製造方法

【課題】内径の小さいノズルを使った場合でも目詰まりしにくいように粘度の低い接着剤を用いた場合でも、応力を十分に吸収することができ、感度の良いMEMSマイクモジュールを提供する。
【解決手段】本発明に係るMEMSマイクモジュール100は、基板110と、MEMSマイク素子120と、基板110とMEMSマイク素子120とを接着する接着剤130とを備え、MEMSマイク素子120は、第1主面と、当該第1主面の反対の面である第2主面とを有し、第1主面から第2主面に貫通する貫通孔124が形成されている台座121と、台座121の第1主面上に形成され、貫通孔124の一部を覆うダイアフラム122とを備え、接着剤130は、台座121の第2主面と基板110とを接着するとともに、台座121の側面の一部を覆い、台座121の第2主面には、接着剤130との界面に少なくとも1つの凹部125が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)マイクモジュール及びその製造方法に関し、特に、基板と、当該基板に実装されたMEMSマイク素子とを備えるMEMSマイクモジュール及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、MEMS技術を用いた作成された変換体モジュールは、ダイアフラムの振動を電気信号に変換する変換体と、当該変換体が実装される基板とを備える。変換体は、基板の上に接着剤を介して接着され、ワイヤーボンド等で基板と電気的に接続されている(特許文献1参照)。
【0003】
MEMS技術を用いて作成された変換体モジュールは脆弱なものが多く、特に、音波によって振動するダイアフラムを有するMEMSマイク素子を備えたMEMSマイクモジュールでは、ダイアフラムが脆弱であるため、応力等の影響を受けやすい。例えば、MEMSマイク素子の実装時の応力によって、MEMSマイク素子がひずむためにダイアフラムが変形し、音波の感度が劣化する課題がある。この応力は、基板とMEMSマイク素子との熱膨張係数が違うことによって発生する。従来は、基板とMEMSマイク素子との間の接着剤が、応力を吸収する役目を果たしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−036280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術では、以下のような課題がある。
【0006】
上述したように、MEMSマイク素子と基板との熱膨張係数の差に基づいてMEMSマイク素子に応力が加わり、MEMSマイク素子の特性が変化するという課題がある。MEMSマイク素子への応力を低減するためには、接着剤の粘度を高くして(固形分の含有比を上げる)、チクソ比を高くして(流れにくくして)、かつ、接着剤の膜厚を厚くすることで接着剤の体積を増加させて、接着剤で応力を吸収させる対策が一般的にとられている。
【0007】
また、特許文献1では、MEMSマイク素子の底面に形成した溝に接着剤を溜め込み、MEMSマイク素子と基板とを接着させている。しかしながら、特許文献1に記載の技術では、溝の容積が十分でなく、応力を吸収できるだけの十分な量の接着剤を確保することができない。
【0008】
ここで、ダイアフラム付きのMEMSマイク素子のように、MEMSマイク素子の接着面、つまり、ダイアフラムを支える台座が枠状になっている場合は、この枠の幅に合わせた内径のノズルを使用して接着剤を描画しなければならない。しかしながら、MEMSマイク素子の小型化に伴って枠の幅が狭くなり、特許文献1に記載の技術では、溝の中に接着剤を溜め込むように接着剤を描画しなければならず、より小さなノズルの内径が要求される。このため、接着剤の粘度が高いとノズルが目詰まりし易く、細く描画するのが困難になるという課題が生じている。
【0009】
そこで、本発明では、上記課題を解決するためになされたものであって、内径の小さいノズルを使った場合でも目詰まりしにくいように粘度の低い接着剤を用いた場合でも、応力を十分に吸収することができ、感度の良いMEMSマイクモジュール及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係るMEMSマイクモジュールは、基板と、MEMSマイク素子と、前記基板と前記MEMSマイク素子とを接着する接着剤とを備え、前記MEMSマイク素子は、第1主面と、当該第1主面の反対の面である第2主面とを有し、前記第1主面から第2主面に貫通する貫通孔が形成されている台座と、前記台座の第1主面上に形成され、前記貫通孔の一部を覆うダイアフラムとを備え、前記接着剤は、前記台座の前記第2主面と前記基板とを接着するとともに、前記台座の側面の一部を覆い、前記台座の前記第2主面には、前記接着剤との界面に少なくとも1つの凹部が形成されている。
【0011】
これにより、MEMSマイク素子の台座の第2主面に凹部を設け、また、接着剤を台座の側面の一部を覆うように形成することで、接着剤の粘度を上げることなく、接着剤の体積を増やすことができる。したがって、実装後のMEMSマイク素子への応力を低減することができ、脆弱なダイアフラムの変形を緩和し、MEMSマイクモジュールの特性低下を抑制することができる。つまり、本発明の一態様によれば、感度の良いMEMSマイクモジュールを実現することができる。
【0012】
また、前記少なくとも1つの凹部は、V溝であってもよい。
【0013】
これにより、凹部がV溝であるので、接着剤が対流しやすくなり、接着剤の未充填によるボイドを抑制することができる。したがって、接着剤を硬化する際のボイドの膨張における応力を低減することができ、脆弱なダイアフラムの変形を緩和し、実装精度を向上させることができる。これにより、MEMSマイクモジュールの特性低下を抑制することができる。
【0014】
また、前記少なくとも1つの凹部の断面において、前記第2主面と、V溝である前記凹部の斜面とのなす角度は、34〜36°であってもよい。
【0015】
また、前記少なくとも1つの凹部の断面において、前記第2主面と、V溝である前記凹部の斜面とのなす角度は、53〜55°であってもよい。
【0016】
これにより、角度が34〜36°のV溝である凹部の幅と、角度が53〜55°のV溝である凹部の幅とが同一の場合は、角度が53〜55°の凹部は、角度が34〜36°の凹部に比べ、V溝の深さが深くなる。したがって、接着剤の体積を増やすことができ、実装後のMEMSマイク素子への応力を低減することができる。これにより、脆弱なダイアフラムの変形を緩和し、MEMSマイクモジュールの特性低下を抑制することができる。
【0017】
また、前記台座の断面において、前記貫通孔に面する前記台座の側面は、くの字型であってもよい。
【0018】
これにより、ダイアフラムの直下に形成される空間である貫通孔の体積を大きくすることができるので、ダイアフラムを振動しやすくすることができる。したがって、感度の良いMEMSマイクモジュールを実現することができる。
【0019】
また、前記接着剤の膜厚は、10〜40μmであってもよい。
【0020】
これにより、応力を吸収できるだけの十分な接着剤が設けられているので、脆弱なダイアフラムの変形を緩和し、MEMSマイクモジュールの特性低下を抑制することができる。
【0021】
また、前記凹部の深さは、10〜30μmであってもよい。
【0022】
これにより、応力を吸収できるだけの十分な接着剤が凹部に充填されているので、脆弱なダイアフラムの変形を緩和し、MEMSマイクモジュールの特性低下を抑制することができる。
【0023】
本発明の一態様に係るMEMSマイクモジュールの製造方法は、第1主面と、当該第1主面の反対の面である第2主面とを有する台座と、前記第1主面上に形成されたダイアフラムとを備えるMEMSマイク素子を準備する工程と、前記台座を前記第1主面から前記第2主面に貫通する貫通孔を形成する工程と、前記台座の前記第2主面に、少なくとも1つの凹部を形成する工程と、前記台座の前記第2主面の形状に沿って、基板に接着剤を塗布する工程と、前記接着剤を介して前記台座の前記第2主面と前記基板とを接着する工程とを含む。
【0024】
これにより、MEMSマイク素子の台座の第2主面に凹部を設け、また、接着剤を台座の側面の一部を覆うように形成することで、接着剤の粘度を上げることなく接着剤の体積を増やすことができる。したがって、実装後のMEMSマイク素子への応力を低減することができ、脆弱なダイアフラムの変形を緩和し、MEMSマイクモジュールの特性低下を抑制することができる。これにより、内径の小さいノズルを使った場合でも目詰まりしにくいように粘度の低い接着剤を用いた場合でも、応力を十分に吸収することができ、感度の良いMEMSマイクモジュールを製造することができる。
【0025】
また、前記凹部を形成する工程では、ウェットエッチングにより、前記少なくとも1つの凹部をV溝となるように形成してもよい。
【0026】
これにより、ウェットエッチングによる異方性エッチングを利用して、台座の底面にV溝である凹部を形成することができる。凹部がV溝であることから、接着剤が対流しやすくなり、接着剤の未充填によるボイドを抑制することで、接着剤を硬化する際のボイドの膨張における応力を低減することができる。したがって、脆弱なダイアフラムの変形を緩和し、実装精度を向上させることができる。これにより、MEMSマイクモジュールの特性低下を抑制することができる。
【0027】
また、前記貫通孔を形成する工程と、前記凹部を形成する工程とは、同時に実施されてもよい。
【0028】
これにより、貫通孔の形成と凹部の形成とを同時にできるため、脆弱なMEMSマイク素子へのプロセス時の負担を軽減できる。また、製作工数の削減により低コスト化が期待できる。
【発明の効果】
【0029】
内径の小さいノズルを使った場合でも目詰まりしにくいように粘度の低い接着剤を用いた場合でも、応力を十分に吸収することができ、感度の良いMEMSマイクモジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1A】本発明の実施の形態1に係るMEMSマイクモジュールの一例を示す平面図である。
【図1B】本発明の実施の形態1に係るMEMSマイクモジュールの一例を示す断面図である。
【図1C】本発明の実施の形態1に係るMEMSマイクモジュールの凹部の一例を示す平面拡大図である。
【図1D】本発明の実施の形態1に係るMEMSマイクモジュールの凹部の一例を示す断面拡大図である。
【図1E】本発明の実施の形態1に係るMEMSマイクモジュールの凹部の一例を示す断面拡大図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るMEMSマイクモジュールの製造方法の一例を示す工程断面図である。
【図3A】本発明の実施の形態1に係るMEMSマイクモジュールの台座の上面及び下面の一例を示す斜視図である。
【図3B】本発明の実施の形態1に係るMEMSマイクモジュールの台座の一例を示す断面図である。
【図3C】本発明の実施の形態1に係るMEMSマイクモジュールの台座の一例を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るMEMSマイクモジュールのダイアフラムの特性変動の一例を示す図である。
【図5A】本発明の実施の形態2に係るMEMSマイクモジュールの一例を示す平面図である。
【図5B】本発明の実施の形態2に係るMEMSマイクモジュールの一例を示す断面図である。
【図5C】本発明の実施の形態2に係るMEMSマイクモジュールの凹部の一例を示す平面拡大図である。
【図5D】本発明の実施の形態2に係るMEMSマイクモジュールの凹部の一例を示す断面拡大図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係るMEMSマイクモジュールの別の一例を示す断面図である。
【図7A】本発明の実施の形態2の変化形に係るMEMSマイクモジュールの一例を示す平面図である。
【図7B】本発明の実施の形態2の変化形に係るMEMSマイクモジュールの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係るMEMSマイクモジュールの好適な実施の形態について、図面を参照にして詳述する。
【0032】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係るMEMSマイクモジュールは、基板と、MEMSマイク素子と、基板とMEMSマイク素子とを接着する接着剤とを備える。MEMSマイク素子は、第1主面と、当該第1主面の反対の面である第2主面とを有し、第1主面から第2主面に貫通する貫通孔が形成されている台座と、台座の第1主面上に形成され、貫通孔の一部を覆うダイアフラムとを備える。接着剤は、台座の第2主面と基板とを接着するとともに、台座の側面の一部を覆うように形成されている。台座の第2主面には、接着剤との界面に少なくとも1つの凹部が形成されている。本発明の実施の形態1では、台座の第2主面には複数の凹部が形成され、これらの凹部は、V溝であることを特徴とする。
【0033】
図1Aは、本発明の実施の形態1に係るMEMSマイクモジュール100の一例を示す平面図である。また、図1Bは、本発明の実施の形態1に係るMEMSマイクモジュール100の一例を示す断面図である。
【0034】
本発明の実施の形態1に係るMEMSマイクモジュール100は、ダイアフラムを有し、音波によるダイアフラムの振動を電気信号に変換する変換体モジュールの一例である。図1A及び図1Bに示すように、MEMSマイクモジュール100は、基板110と、MEMSマイク素子120と、接着剤130と、ワイヤー140と、電極ランド150と、配線160と、ソルダーレジスト170とを備える。
【0035】
基板110は、MEMSマイク素子120を実装するための基板である。例えば、基板110は、ガラスエポキシ樹脂などで構成されている。あるいは、基板110は、半導体基板でもよい。
【0036】
MEMSマイク素子120は、台座121と、ダイアフラム122と、電極パッド123とを備える。MEMSマイク素子120は、ダイアフラム122の振動を電気信号に変換する変換体の一例である。
【0037】
台座121は、ダイアフラム122を支えるための台座であり、第1主面と第2主面とを有する。なお、第1主面は、例えば、台座121の上面であり、第2主面は、第1主面の反対の面であり、例えば、台座121の下面である。台座121は、例えば、シリコンから構成される。
【0038】
台座121は、例えば、図1A及び図1Bに示すように、底面が菱形の角柱である。台座121の底面の4つの頂点をABCDとすると、辺ABと辺DAとのなす角は70°、辺BCと辺CDとのなす角は110°である。また、台座121の幅は、約100μmである。例えば、台座121の幅は、台座121の貫通孔124に面した内壁と、台座121の外壁との間の距離であって、最も薄い部分の距離を示している。例えば、台座121の幅は、図1Aにおいて、菱形の台座121の一辺と、当該一辺に平行で、かつ、六角形の貫通孔124の最も近い一辺との距離である。
【0039】
さらに、台座121には、第1主面から第2主面に貫通する貫通孔124が形成されている。言い換えると、台座121を厚さ方向に貫通する貫通孔124が形成されている。貫通孔124は、図1Aに示すように、底面が六角形の角柱形状である。
【0040】
また、台座121の下面には、接着剤130との界面に少なくとも1つの凹部125が形成されている。図1Aに示すように、台座121の下面は枠状であり、複数の凹部125が枠に沿って形成されている。なお、凹部125の具体的な形状については、後で説明する。
【0041】
ダイアフラム122は、音波によって振動し、当該振動を電気信号に変換する振動板である。ダイアフラム122は、例えば、SiO2又はSiN等の無機金属薄膜から構成される。ダイアフラム122は、例えば、容量素子を構成する2枚の無機金属薄膜から構成され、振動によって容量が変化することで、振動を電気信号に変換する。
【0042】
また、ダイアフラム122は、台座121の上面上に形成され、貫通孔124の少なくとも一部を覆うように配置される。なお、貫通孔124は、ダイアフラム122を振動しやすくし、音波の検知精度を高めるために形成されている。
【0043】
電極パッド123は、ダイアフラム122によって変換された電気信号を、MEMSマイク素子120の外部に出力するための電極パッドである。図1A及び図1Bに示すように、電極パッド123には、ワイヤー140が接続されている。電極パッド123は、例えば、アルミニウム又は銅などから構成される。
【0044】
接着剤130は、基板110とMEMSマイク素子120とを接着する。図1Bに示すように、接着剤130は、台座121の下面と基板110とを接着するとともに、台座121の側面の一部を覆うように形成されている。また、接着剤130は、凹部125内部に充填されている。接着剤130は、例えば、エポキシアクリレート系、又は、シリコーン系の接着剤である。接着剤130の厚さは、例えば、台座121の下面と基板110との間において、10〜40μmである。また、接着剤130は、例えば、台座121の側面のうち、下面から10〜250μmの範囲の側面を覆っている。
【0045】
ワイヤー140は、電極パッド123と電極ランド150とを電気的に接続するワイヤーである。ワイヤー140は、例えば、銅又は金などから構成される。ここで、電極パッド123と電極ランド150との距離は、例えば、0.4mmである。したがって、ワイヤー140は、当該距離以上の長さを有する。
【0046】
電極ランド150は、ワイヤー140を接続するための電極である。電極ランド150は、配線160に接続され、MEMSマイク素子120からワイヤー140を介して出力される電気信号を配線160に伝達する。電極ランド150は、例えば、銅などから構成される。なお、電極ランド150は、ソルダーレジスト170に覆われた配線160のうち、ソルダーレジスト170に形成された開口によって外部に露出した部分に相当する。
【0047】
配線160は、MEMSマイク素子120から出力される電気信号を所定の回路(図示せず)に伝達するための配線である。配線160は、例えば、銅などから構成される。なお、所定の回路は、電気信号の増幅、及び、電気信号から音声データへの変換などを行う回路である。
【0048】
ソルダーレジスト170は、表面の平坦化のために、配線160及び基板110上に形成されたレジスト膜である。図1Bに示すように、基板110とMEMSマイク素子120とは、ソルダーレジスト170を介して、接着剤130によって接着されている。つまり、接着剤130は、ソルダーレジスト170と台座121の下面との間に形成されている。
【0049】
ソルダーレジスト170の厚さは、例えば、25μmである。また、ソルダーレジスト170には開口が形成されており、当該開口には、配線160の一部が電極ランド150として露出している。
【0050】
続いて、本発明の実施の形態1に係る台座121の下面に形成される少なくとも1つの凹部125について説明する。
【0051】
図1Cは、本発明の実施の形態1に係るMEMSマイクモジュール100の凹部125の一例を示す平面拡大図である。また、図1D及び図1Eは、本発明の実施の形態1に係るMEMSマイクモジュール100の凹部125の一例を示す断面拡大図である。
【0052】
図1Dに示すように、凹部125の断面は、V字型であることが好ましい。より具体的には、凹部125はV溝であることが好ましい。また、凹部125の平面形状は、例えば、菱形の台座121と相似な形状である。V溝である凹部125の頂点をabcdとすると、それぞれの辺は台座121の辺ABCDと平行に形成される。
【0053】
断面α−αにおいて、図1Dに示すように、V溝である凹部125の斜面と、台座121の底面とのなす角度は34〜36°であり、好ましくは、35°である。また、断面β−βにおいて、図1Eに示すように、V溝である凹部125の側面と、台座121の底面とのなす角度は89〜91°であり、好ましくは90°である。また、断面β−βにおいて、V字の頂点における角度、すなわち、凹部125の2つの斜面がなす角度は、例えば、110°である。
【0054】
V溝である凹部125のそれぞれの辺は15〜55μmであり、凹部125の深さは、10〜30μmである。ここで、凹部125の深さは、凹部125において最も深い地点における深さを意味する。
【0055】
なお、凹部125は、図1Aに示すように、台座121の下面に複数形成されている。凹部125を複数形成することで、接着剤130が充填される体積を増加させることができ、MEMSマイク素子120をより強固に固着させることができる。
【0056】
例えば、接着剤130を、基板110(具体的には、ソルダーレジスト170)上に台座121のパターンに沿って、ノズルで描画する。具体的には、接着剤130として、粘度9500cP、チクソ比4.5のエポキシアクリレート系接着剤を内径100μmのノズルで描画し、MEMSマイク素子120と基板110とを固着する。また、粘度10000cPのシリコーン系の接着剤を、接着剤130として用いてもよい。
【0057】
このとき、凹部125の部分は、その容積分だけ多い体積の接着剤130が充填され、接着剤130は、台座121の側面の一部に這い上がる。すなわち、接着剤130は、台座121の側面の一部、具体的には、側面のうち下面に隣接する部分を覆っている。
【0058】
続いて、本発明の実施の形態1に係るMEMSマイクモジュール100の製造方法について、図2を用いて説明する。図2は、本発明の実施の形態1に係るMEMSマイクモジュール100の製造方法の一例を示す工程断面図である。
【0059】
まず、図2(a)に示すように、<110>ウエハを準備する。<110>ウエハは、電極パッド123と、ダイアフラム122と、貫通孔124が形成されていない台座121とを有するMEMSマイク素子120が複数個形成された集合体である。なお、図2(a)には、1個のMEMSマイク素子120について示している。また、MEMSマイク素子120は、公知の方法により形成される。
【0060】
次に、図2(b)に示すように、所定のマスクパターンが形成されたマスク180を準備する。具体的には、台座121の底面に、貫通孔124及び凹部125の形状に沿ったマスクパターンを有するマスク180を公知の方法で形成する。マスクパターンの頂点ABCDは、台座121を構成するSiの(110)面に合わせるようにパターンニングする。同時に、台座121の底部に形成される複数の凹部125のマスクパターンの頂点abcdも、(110)面に合わせるようにパターンニングする。
【0061】
その後、図2(c)に示すように、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液)等の弱アルカリ水溶液でウェットエッチングを行い、貫通孔124と複数の凹部125とを形成する。なお、このとき、貫通孔124と複数の凹部125とを形成する際に、別々に形成してもよいが、MEMSマイク素子120が脆弱な構成であるため、また、製作工数を削減できるため、同時に形成することが好ましい。
【0062】
以上の工程により、図3Aに示すように、台座121の下面には複数の凹部125が形成される。また、図3B及び図3Cに示すように、複数の凹部125はV溝である。なお、図3Aは、本発明の実施の形態1に係る台座121の上面及び下面の一例を示す斜視図である。図3B及び図3Cは、本発明の実施の形態1に係る台座121の一例を示す断面図である。
【0063】
次に、複数のMEMSマイク素子120をステルスダイシングにより、個片化を行う(図示せず)。その後、複数の基板110を準備する。複数の基板110のそれぞれには、ガラスエポキシ樹脂等に、銅などからなる配線160と、ソルダーレジスト170と、ソルダーレジスト170に形成された開口により露出している電極ランド150とが、公知の方法で形成されている。
【0064】
次に、図2(d)に示すように、接着剤130を基板110(具体的には、ソルダーレジスト170)上に、台座121の下面の形状に沿ってノズルで描画する。例えば、粘度9500cP、チクソ比4.5のエポキシアクリレート系の接着剤を、接着剤130として内径100μmのノズルで描画する。
【0065】
続いて、MEMSマイク素子120と基板110とを、塗布した接着剤130を介して接着する。そして、接着剤130を硬化させることで、MEMSマイク素子120と基板110とを固着させる。なお、このとき、MEMSマイク素子120の隣にMEMSマイク素子120の信号を増幅させる増幅機能を持つ半導体素子を固着してもよい(図示せず)。
【0066】
次に、図2(e)に示すように、ワイヤー140を用いたワイヤーボンディングにより、電極パッド123と電極ランド150とを電気的に接続する。また、MEMSマイク素子120の隣に上記の半導体素子も固着させた場合は、電極パッド123と、半導体素子とをワイヤーで電気的に接続し、半導体素子と電極ランド150とを電気的に接続することで、増幅した信号を出力することができる。
【0067】
最後に、MEMSマイク素子120(及び半導体素子)を覆うように複数の基板110上にそれぞれシールドキャップを封着する。なお、複数の基板110の代わりに、配線160、ソルダーレジスト170及び電極ランド150を複数個ずつ備える1つの基板を用いてもよい。この場合、最後に、1つの基板を複数の基板110を個片化する(図示せず)。
【0068】
以上のようにして、図1A〜図1Eに示すような実施の形態1のMEMSマイクモジュール100を製造することができる。
【0069】
以上のように、本発明の実施の形態1に係るMEMSマイクモジュール100は、基板110と、MEMSマイク素子120と、接着剤130とを備え、接着剤130は、MEMSマイク素子120の台座121の下面と基板110とを接着するとともに、台座121の側面の一部を覆っている。また、台座121の下面には、接着剤130との界面に少なくとも1つの凹部125が形成されている。
【0070】
このように、台座121の下面に凹部125を設けることで、接着剤130の粘度を上げることなく、接着剤130の体積を増やすことができる。また、接着剤130は、台座121の下面だけでなく、台座121の側面の一部を覆うように形成されている。このため、接着剤130の体積をさらに増やすことができる。なお、接着剤130の体積が大きい程、応力を低減することができる。したがって、実装後のMEMSマイク素子120への応力を低減することができ、脆弱なダイアフラム122の変形を緩和し、MEMSマイクモジュール100の特性低下を抑制することができる。
【0071】
なお、本発明の実施の形態1に係るMEMSマイクモジュール100では、台座121の下面に、V溝である凹部125が形成されている。例えば、凹部125が矩形の形状である場合、接着剤130の未充填によりボイドが発生しやすくなる。この接着剤130の未充填により発生したボイドが、接着剤130の硬化時に膨張することでMEMSマイク素子120に応力が加わり、脆弱なダイアフラム122の変形、又は、MEMSマイク素子120の実装ズレが発生し、MEMSマイク素子120の特性の変化を引き起こす課題が考えられる。
【0072】
そこで、本発明の実施の形態1に係るMEMSマイクモジュール100では、凹部125の断面をV字型にすることで、より具体的には、凹部125をV溝とすることで、接着剤130が凹部125内を対流しやすくなる。これにより、接着剤130の未充填によるボイドを抑制することができ、接着剤130を硬化する際のボイドの膨張における応力を低減することができる。
【0073】
したがって、脆弱なダイアフラム122の変形を緩和し、実装精度を向上させることができるので、MEMSマイクモジュール100の特性低下を抑制することができる。脆弱なダイアフラム122を有するMEMSマイクモジュール100では、応力の影響が大きいため、本発明の実施の形態1に係る技術は、非常に有用である。
【0074】
ここで、接着剤130の膜厚とダイアフラム122の共振周波数との関係について説明する。図4は、本発明の実施の形態1に係るMEMSマイク素子120のダイアフラム122の特性変動の一例を示すグラフである。
【0075】
MEMSマイクモジュール100では、音の周波数に依存してダイアフラム122が振動し、このダイアフラム122の振動を電気信号に変換している。ダイアフラム122は、共振周波数を持ち、ダイアフラム122の感度が良いと共振周波数は低くなる。MEMSマイク素子120を基板110へ実装すると、基板110からの熱応力などによってMEMSマイク素子120が変形し、MEMSマイク素子120単体での共振周波数に比べて実装した場合の共振周波数が上昇する。感度の良いマイクを得るためには、実装での共振周波数の上昇を抑えることが重要である。
【0076】
図4は、実装による共振周波数の上昇する割合(%)を示している。図4から分かるように、接着剤130の膜厚が厚いほど、共振周波数の変動が少なくなる。本発明の実施の形態1に係るMEMSマイクモジュール100では、台座121の下面に形成された凹部125の内部、及び、台座121の側面の一部に接着剤130が形成されており、共振周波数の変動を抑制するのに十分な体積の接着剤130を設けている。したがって、本発明の実施の形態1によれば、感度の良いMEMSマイクモジュールを提供することができる。
【0077】
また、凹部125がV溝であり、接着剤130の対流がスムーズに行われることから、低い粘度の接着剤130を用いることができ、ノズルの目詰まりの発生を抑制することができる。
【0078】
また、複数の凹部125を設けることで、接着される表面積が多いので、シェア強度を向上させることができる。
【0079】
なお、基板110を厚さ方向に貫通する音孔を、ダイアフラム122に対応するMEMSマイク素子120の直下に形成してもよい(図示しない)。
【0080】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係るMEMSマイクモジュールは、台座の第2主面に形成された凹部の断面において、台座の第2主面と、V溝である凹部の斜面とのなす角度が、実施の形態1における角度より大きいことを特徴とする。
【0081】
図5Aは、本発明の実施の形態2に係るMEMSマイクモジュール200の一例を示す平面図である。図5Bは、本発明の実施の形態2に係るMEMSマイクモジュール200の一例を示す断面図である。図5Cは、本発明の実施の形態2に係るMEMSマイクモジュール200の凹部225の一例を示す平面拡大図である。図5Dは、本発明の実施の形態2に係るMEMSマイクモジュール200の凹部225の一例を示す断面拡大図である。
【0082】
図5A〜図5Dからも分かるように、本発明の実施の形態2は、本発明の実施の形態1と比較して、台座の形状と凹部の形状とが異なる。そこで、以降の説明は、上記の実施の形態1との相違点を中心に説明することとし、同一の構成要素には共通の参照番号を付して詳しい説明は省略する。
【0083】
図5A及び図5Bに示すように、MEMSマイクモジュール200は、実施の形態1に係るMEMSマイクモジュール100と比べて、MEMSマイク素子120の代わりに、MEMSマイク素子220を備える点が異なっている。また、MEMSマイク素子220は、実施の形態1に係るMEMSマイク素子120と比べて、台座121の代わりに台座221を備える点が異なっている。
【0084】
台座221は、ダイアフラム122を支えるための台座であり、第1主面と第2主面とを有する。台座221は、例えば、シリコンから構成される。台座221は、例えば、図5Aに示すように、底面(頂点EFGHで囲まれる面)が正方形又は長方形の角柱、すなわち、直方体である。台座221の幅は、約100μmである。例えば、台座221の幅は、台座221の貫通孔224に面した内壁と、台座221の外壁との間の距離であって、最も薄い部分の距離を示している。例えば、台座221の幅は、図5Aにおいて、正方形の台座221の一辺と、当該一辺に平行で、かつ、正方形の貫通孔224の最も近い一辺との距離である。
【0085】
また、台座221には、上面から下面に貫通する貫通孔224が形成されている。貫通孔224は、上面及び下面が正方形又は長方形であり、下面が上面より広い錐台状である。すなわち、貫通孔224は、角錐台又は円錐台状である。
【0086】
また、台座221の下面には、接着剤130との界面に少なくとも1つの凹部225が形成されている。本実施の形態では、複数の凹部225が形成されている。図5Bに示すように、複数の凹部225の断面は、V字型であることが好ましい。より具体的には、凹部225はV溝であることが好ましい。また、図5Cに示すように、凹部225の平面形状は、例えば、台座221と相似な形状である。V溝である凹部225の頂点をefghとすると、それぞれの辺は台座221の辺EFGHと平行に形成される。
【0087】
断面γ−γ及び断面δ−δにおいて、図5Dに示すように、V溝である凹部225の斜面と、台座221の下面とのなす角度は、53〜55°であり、好ましくは54°である。V溝である凹部225のそれぞれの辺は、12〜45μmであり、凹部225の深さは、10〜30μmである。ここで、凹部225の深さは、凹部225において最も深い地点における深さを意味する。
【0088】
続いて、本発明の実施の形態2に係るMEMSマイクモジュール200の製造方法について説明する。
【0089】
なお、本発明の実施の形態2に係るMEMSマイクモジュール200の製造方法は、実施の形態1に係る製造方法とは、ウエハの結晶方位と、貫通孔224と凹部225の形成用のパターンニングとが異なっている。したがって、以下では、異なる点を中心に説明し、同じ点は説明を省略する。つまり、本発明の実施の形態2に係るMEMSマイクモジュール200は、図2に示す工程断面図に従って製造することができる。
【0090】
まず、<100>ウエハを準備する(図2(a)に相当)。<100>ウエハは、電極パッド123と、ダイアフラム122と、貫通孔224が形成されていない台座221とを有するMEMSマイク素子220が複数個形成された集合体である。なお、MEMSマイク素子220は、公知の方法により形成される。
【0091】
次に、所定のマスクパターンが形成されたマスクを準備する(図2(b)に相当)。具体的には、台座221の底面に、貫通孔224及び凹部225の形状に沿ったマスクパターンを有するマスクを公知の方法で形成する。
【0092】
マスクパターンの頂点EFGHは、台座221を構成するSiの(110)面に合わせるようにパターンニングする。同時に、台座221の底部に形成される複数の凹部225のマスクパターンの頂点efghも、(110)面に合わせるようにパターンニングする。
【0093】
その後、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液)等の弱アルカリ水溶液を用いたウェットエッチングにより台座221に異方性エッチングを行い、貫通孔224と複数の凹部225とを形成する(図2(c)に相当)。なお、実施の形態1と同様に、貫通孔224と複数の凹部225との形成はそれぞれ別の工程で行うこともできるが、同時に行うことが好ましい。
【0094】
以降は、実施の形態1と同様にして、MEMSマイク素子220の個片化、基板110の準備、接着剤130の塗布、基板110とMEMSマイク素子220との接着、及び、ワイヤーボンディングなどを行うことにより、図5A〜図5Dに示すようなMEMSマイクモジュール200を製造することができる。
【0095】
以上のように、本発明の実施の形態2に係るMEMSマイクモジュール200は、実施の形態1と同様に、基板110と、MEMSマイク素子220と、接着剤130とを備え、接着剤130は、MEMSマイク素子220の台座221の下面と基板110とを接着するとともに、台座221の側面の一部を覆っている。また、台座221の下面には、接着剤130との界面に少なくとも1つの凹部225が形成されている。
【0096】
また、本発明の実施の形態2に係るMEMSマイクモジュール200では、台座221の下面と、V溝である凹部225の斜面とのなす角度が、実施の形態1に係るMEMSマイクモジュール100より大きい。具体的には、実施の形態1では、約35°であるのに対して、実施の形態2では、約54°である。
【0097】
角度が約35°のV溝である凹部125の幅と、角度が約54°のV溝である凹部225の幅とが同一の場合は、角度が約54°の凹部225は、角度35°の凹部125に比べ、V溝の深さが深くなる。したがって、接着剤130の体積を増やすことができ、実装後のMEMSマイク素子220への応力を低減することができる。これにより、脆弱なダイアフラム122の変形を緩和し、MEMSマイクモジュール200の特性低下を抑制することができる。
【0098】
なお、図6に示すMEMSマイクモジュール200aのように、貫通孔224aの側面をくの字型に形成してもよい。つまり、台座221aの断面(例えば、辺EF又は辺EHに平行な直線を含む断面)において、貫通孔224aに面する台座221aの側面は、くの字型であってもよい。言い換えると、台座221aの貫通孔224aに面する側面には、貫通孔224aの容積を大きくするように、凹部が形成され、当該凹部の形状がくの字型となっている。
【0099】
この構成によれば、ダイアフラム122直下の容積、すなわち、貫通孔224aの容積を増加させることができるので、音響特性の優れたMEMSマイクモジュールを提供できる。
【0100】
ここで、図6に示すような貫通孔224aの側面をくの字型に形成するには、まず、MEMSマイク素子220aを準備する。MEMSマイク素子220aは、ダイアフラム122と、ダイアフラム122直下の領域に対応するPoly−Siと、貫通孔224aが形成されていない台座221aとを有する。そして、上記の製造方法と同様に台座221aの底面をパターンニングし、ウェットエッチングを行う。
【0101】
台座221aを厚さ方向に貫通した際に、すなわち、ダイアフラム122の直下の領域において、Poly−Siが露出した後は、Poly−Siが等方性エッチングされる。台座221aは、表面(底面)から異方性エッチングされ、貫通孔224aの側面がくの字型にすることができる。
【0102】
以上、本発明に係るMEMSマイクモジュール及びその製造方法について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を当該実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0103】
例えば、各実施の形態では、複数の凹部を台座の下面に形成しているが、台座の下面の形状に沿った溝状の1つの凹部を形成してもよい。図7Aは、本発明の実施の形態2の変化例に係るMEMSマイクモジュール300の一例を示す平面図である。図7Bは、本発明の実施の形態2の変形例に係るMEMSマイクモジュール300の一例を示す断面図である。
【0104】
図7A及び図7Bからも分かるように、本発明の実施の形態2の変形例は、本発明の実施の形態2と比較して、V溝である凹部が台座の下面の全周に形成されている点が異なる。
【0105】
図7A及び図7Bに示すように、MEMSマイクモジュール300は、実施の形態2に係るMEMSマイクモジュール200と比べて、MEMSマイク素子220の代わりに、MEMSマイク素子320を備える点が異なっている。また、MEMSマイク素子320は、実施の形態2に係るMEMSマイク素子220と比べて、台座221の代わりに台座321を備える点が異なっている。
【0106】
台座321は、台座221と比べて下面に形成された凹部の形状が異なっている。具体的には、台座321の下面には、接着剤130との界面に凹部325が形成されている。
【0107】
凹部325は、図7Aに示すように、台座321の下面の形状に沿って形成されている。つまり、凹部325は、貫通孔224を囲むように形成されている。また、図7Bに示すように、凹部325の断面は、V字型であることが好ましい。より具体的には、凹部325はV溝であることが好ましい。なお、V溝である凹部325の斜面と、台座321の下面とのなす角度は、実施の形態2と同様である。
【0108】
なお、実施の形態2の変化形に係るMEMSマイクモジュール300の製造方法は、実施の形態2に係る製造方法と比較して、V溝である凹部325の形成用のパターンニングのみが異なる。具体的には、台座321の底面のパターンニングの際に、台座321の全周に渡って台座321の幅より狭い領域のパターンニングを行い、ウェットエッチングにより凹部325を形成する。
【0109】
これにより、本発明の実施の形態2の変形例によれば、実施の形態2に加え、以下の効果を得ることができる。V溝である凹部325が台座321の全周に形成していることで、凹部325の容積が多くなる。このため、接着剤130の体積を増やすことができ、実装後のMEMSマイク素子320への応力を低減することができる。したがって、脆弱なダイアフラム122の変形を緩和し、MEMSマイクモジュール300の特性低下を抑制することができる。ただし、実施の形態2に比べ、接着される表面積が減ることで、シェア強度は減少する。
【0110】
また、各実施の形態の平面図及び断面図のそれぞれにおいて、各構成要素の角部及び辺を直線的に記載しているが、製造上の理由により、角部及び辺が丸みをおびたものも本発明に含まれる。
【0111】
また、各実施の形態で用いた数字は、全て本発明を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されない。また、上記で示した各構成要素の材料は、全て本発明を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された材料に制限されない。
【0112】
また、各実施の形態で示したMEMSマイクモジュールの構成は、本発明を具体的に説明するために例示するためのものであり、本発明に係るMEMSマイクモジュールは、上記構成の全てを必ずしも備える必要はない。言い換えると、本発明に係るMEMSマイクモジュールは、本発明の効果を実現できる最小限の構成のみを備えればよい。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明に係るMEMSマイクモジュールは、実装時にMEMSマイク素子への応力を低減できるという効果を有し、例えば、MEMSマイクモジュールなどのマイク素子だけでなく、脆弱な構造を持つ圧力センサーなどにも利用することができる。
【符号の説明】
【0114】
100、200、200a、300 MEMSマイクモジュール
110 基板
120、220、220a、320 MEMSマイク素子
121、221、221a、321 台座
122 ダイアフラム
123 電極パッド
124、224、224a 貫通孔
125、225、325 凹部
130 接着剤
140 ワイヤー
150 電極ランド
160 配線
170 ソルダーレジスト
180 マスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
MEMSマイク素子と、
前記基板と前記MEMSマイク素子とを接着する接着剤とを備え、
前記MEMSマイク素子は、
第1主面と、当該第1主面の反対の面である第2主面とを有し、前記第1主面から第2主面に貫通する貫通孔が形成されている台座と、
前記台座の第1主面上に形成され、前記貫通孔の一部を覆うダイアフラムとを備え、
前記接着剤は、
前記台座の前記第2主面と前記基板とを接着するとともに、前記台座の側面の一部を覆い、
前記台座の前記第2主面には、前記接着剤との界面に少なくとも1つの凹部が形成されている
MEMSマイクモジュール。
【請求項2】
前記少なくとも1つの凹部は、V溝である
請求項1記載のMEMSマイクモジュール。
【請求項3】
前記少なくとも1つの凹部の断面において、前記第2主面と、V溝である前記凹部の斜面とのなす角度は、34〜36°である
請求項2記載のMEMSマイクモジュール。
【請求項4】
前記少なくとも1つの凹部の断面において、前記第2主面と、V溝である前記凹部の斜面とのなす角度は、53〜55°である
請求項2記載のMEMSマイクモジュール。
【請求項5】
前記台座の断面において、前記貫通孔に面する前記台座の側面は、くの字型である
請求項1〜4のいずれか1項に記載のMEMSマイクモジュール。
【請求項6】
前記接着剤の膜厚は、10〜40μmである
請求項1〜5のいずれか1項に記載のMEMSマイクモジュール。
【請求項7】
前記凹部の深さは、10〜30μmである
請求項1〜6のいずれか1項に記載のMEMSマイクモジュール。
【請求項8】
第1主面と、当該第1主面の反対の面である第2主面とを有する台座と、前記第1主面上に形成されたダイアフラムとを備えるMEMSマイク素子を準備する工程と、
前記台座を前記第1主面から前記第2主面に貫通する貫通孔を形成する工程と、
前記台座の前記第2主面に、少なくとも1つの凹部を形成する工程と、
前記台座の前記第2主面の形状に沿って、基板に接着剤を塗布する工程と、
前記接着剤を介して前記台座の前記第2主面と前記基板とを接着する工程とを含む
MEMSマイクモジュールの製造方法。
【請求項9】
前記凹部を形成する工程では、ウェットエッチングにより、前記少なくとも1つの凹部をV溝となるように形成する
請求項8記載のMEMSマイクモジュールの製造方法。
【請求項10】
前記貫通孔を形成する工程と、前記凹部を形成する工程とは、同時に実施される
請求項8又は9記載のMEMSマイクモジュールの製造方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【公開番号】特開2012−114672(P2012−114672A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261855(P2010−261855)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】