説明

P糖タンパク質特異的な非競合的ペプチドおよびペプチド模倣物調節因子

本発明は、P糖タンパク質(「多面的(Pleiotropic)糖タンパク質」としてのP−gp)の非競合的な特異的インヒビタとして作用し、医薬、特に化学療法処置の効果を改善するための医薬として使用され得る、構造式(I)を有する化合物に関する。従って、本発明は、特に医療分野における、特に癌または感染症の化学療法の観点での使用に好適である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、P糖タンパク質(「多面的(Pleiotropic)糖タンパク質」としてのP−gp)の非競合的な特異的インヒビタとして作用し、医薬、特に化学療法処置の効果を改善するための医薬として使用され得る、構造式(I)を有する化合物に関する。
【0002】
従って、本発明は、特に医薬分野における、特に癌または感染症の化学療法の観点での使用に好適である。
【0003】
以下の記載において、大括弧([ ])の間の数字は、実施例の後に提供される参考文献リストを参照のこと。
【0004】
〔背景技術〕
癌、ならびにウイルス、細菌、真菌または寄生虫に起因する感染症に対抗するために、腫瘍細胞、あるいは感染性因子(ウイルス、細菌、真菌、寄生性生物など)が感染した細胞によって示される処置の標的細胞を破壊することによる化学療法処置が、現在用いられている。これらの効果は、処置の観点で投与された化学療法剤に対して標的細胞が発達すること(すなわち耐性)によって、しばしば制限される。急性の耐性現象の中で、多剤耐性(MDRともいわれる。)が、化学療法剤の細胞内濃度の低下を生じさせる。標的細胞は、投与された化学療法剤だけでなく構造的に無関係の多数の分子に対してもまた耐性になる。
【0005】
化学療法剤の細胞内濃度の低下は、「ATP結合カセット(ABC)」タイプのトランスポータタンパク質が大量に発現することによって引き起こされる。このタンパク質は、標的細胞の外側へ化学療法剤を排出する。これらのタンパク質のうちの3つ(排出ポンプともいわれる。)がヒトにおいて同定されている:
- Juliano and Lingによって1976年に見出されたP糖タンパク質(P−gp)(Gottesman M. M., Ling V. FEBS Lett., 2006, 580(4), 998-1009, [1])(MDR1またはABCB1ともいわれる。)(Juliano, R. L. & Ling, V. A surface glycoprotein modulating drug permeability in Chinese hamster ovary cell mutants. Biochim Biophys Acta 455, 152-162, doi:0005-2736(76)90160-7 [pii] (1976), [2]);
- 肺癌においてCole and Deeleyによって見出されたMRP1(Multidrug Resistance Protein 1)(ABCC1ともいわれる。)(Cole, S. P. et al. Overexpression of a transporter gene in a multidrug-resistant human lung cancer cell line. Science 258, 1650-1654 (1992), [3]);
- 先ずRossら(Ross, D. D. et al. Atypical multidrug resistance: breast cancer resistance protein messenger RNA expression in mitoxantrone-selected cell lines. J Natl Cancer Inst 91, 429-433 (1999), [5] )によって見出され、次いでBatesら(J. Cell Sci., 2000, 113(Pt 11), 2011-2021, [6] )によって見出された乳癌耐性タンパク質(BCRP)(ABCG2またはMXR(ミトザントロン耐性)ともいわれる。)(Doyle L. A., Yang W., Abruzzo L. V., Krogmann T., Gao Y., Rishi A. K., Ross D. D. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1998, 95(26), 15665-15670, [4] )。
【0006】
これらの排出タンパク質は、2つのヌクレオチド結合部位(ヌクレオチド結合ドメイン;NBD)から構成される大きな細胞内ドメインおよび細胞外ドメインに連結された細胞膜ドメインを介して細胞の形質膜に埋め込まれている。P−gpの三次元構造が最近決定され(Aller, S. G. et al. Structure of P-Glycoprotein Reveals a Molecular Basis for Poly-Specific Drug Binding. Science 323, 1718-1722, doi:10.1126/science.1168750 (2009), [7])、これは、2つの原核生物排出タンパク質(Sav1866(Dawson, R. J. & Locher, K. P. Structure of a bacterial multidrug ABC transporter. Nature 443, 180-185 (2006), [8])およびMsbA(Ward, A., Reyes, C. L., Yu, J., Roth, C. B. & Chang, G. Flexibility in the ABC transporter MsbA: Alternating access with a twist. Proceedings of the National Academy of Sciences 104, 19005-19010, doi:10.1073/pnas.0709388104 (2007), [9]))と近い。これらのタンパク質は、種々の細胞毒性因子を細胞外へATP依存的に排出することを可能にする。
【0007】
P−gp(Ueda, K., Cardarelli, C., Gottesman, M. M. & Pastan, I. Expression of a Full-Length cDNA for the Human “MDR1” Gene Confers Resistance to Colchicine, Doxorubicin, and Vinblastine. Proceedings of the National Academy of Sciences 84, 3004-3008, doi:10.1073/pnas.84.9.3004 (1987), [10])は、薬剤耐性現象に最も広範に関与するタンパク質であり、MRP1([3])およびBCRP1によって強化される(Litman, T. et al. The multidrug-resistant phenotype associated with overexpression of the new ABC half-transporter, MXR (ABCG2). J Cell Sci 113 (Pt 11), 2011-2021 (2000), [11])。
【0008】
P−gpは、種々の器官を保護する際に存する生理学的な役割を有している;これは特に、血液脳関門の透過性を可能にする分子メカニズムに関与する(Juliano, R. L. & Ling, V. A surface glycoprotein modulating drug permeability in Chinese hamster ovary cell mutants. Biochim Biophys Acta 455, 152-162, doi:0005-2736(76)90160-7 [pii] (1976) [13])。よって、いくつもの抗癌剤(例えば、ドキソルビシンおよびビンカアルカロイド)が、P−gpによって細胞の外へ積極的に排出される([5])。これは、脳腫瘍の処置における化学療法の制限された効果の説明を可能にする。精巣において、P−gpは生殖細胞の生体異種(xenobiotic)化合物に対する保護を可能にする。胎盤でのP−gpの存在は、母親から胎児への生体異種物質(xenobiotics)の輸送に対する調節性の役割を反映する。多くの医薬がP−gpについての基質である(例えば、パクリタキセル、ダウノルビシンまたはミトザントロン)。このタンパク質はまた、医薬のバイオアベイラビリティに関与する([9])。
【0009】
P−gpは、近年、プロテアーゼインヒビタの経口バイオアベイラビリティおよびその中枢神経系への浸透を調節することによる、抗ウイルス処置耐性の開発と関連している(Kim, R. B. Drug transporters in HIV Therapy. Top HIV Med 11, 136-139 (2003), [15])。これらのポンプの輸送スペクトルは非常に広く、このことは、これらのポンプが多数の化合物の流出をもたらし得ることを意味し、多様な特性は、例えば、種々の病理学的状態(癌を含む。)を処置するために使用される。
【0010】
MRP1は、複合体化した有機アニオン(例えば、システイニルロイコトリエン(LTC(4)))を輸送する、多起源の細胞膜タンパク質である。このトランスポータは、ビンクリスチン、アントラサイクリンおよびエトポシドに対する耐性を付与する。MRP1は、広範な組織分布(ほとんどの組織の上皮細胞の基底膜を含む。)を有する;これは、肺、精巣および腎臓に比較的高レベルで発現される。MRP1の過剰発現は、肺癌、乳癌、前立腺癌、子宮頸癌、および化学療法剤で処置した白血病において観察される。
【0011】
BCRPは、細胞の形質膜に存在する。このタンパク質は、胎盤にて見出され(Allikments R., Schriml L. M., Hutchinson A., Romano-Spica V., Dean M. Cancer Res., 1998, 58(23), 5337-5339, [16] )、次いで乳癌にて見出された。胎盤でのBCRPレベルは、脳、前立腺、小腸、精巣、卵巣、結腸および肝臓に見出されるレベルの100倍高い。BCRPは、特定の癌細胞の多剤耐性と関与するが、種々の生理学的機能を実行する。さらに、BCRPは、特定の生体異種物質の吸収、分布、代謝および排泄に寄与する。さらに、BCRPは、腸管のレベルで、天然物質(例えば植物ポリフェノール)の輸送(Cooray H. C., Janvilisri T., Van Veen H. W., Hladky S. B., Barrand M. A. Biochem. Biophys. Res. Commun., 2004, 317(1), 269-275, [17])に、そして母親の血液からの特定の毒性物質に対する胎児の保護(Jonker J. W., Smit J. W., Brinkhuis R. F., Maliepaard M., Beijnen J. H., Schellens J. H. J. Natl. Cancer Inst., 2000, 92, 1651-1656, [18])に、顕著に関与すると考えられている。よって、このタンパク質は、医薬の薬物動態学およびバイオアベイラビリティに関与する。
【0012】
したがって、これらの排出タンパク質は、毒素、および細胞によって生成された老廃物を排出するために、正常な組織(例えば肺、腎臓および肝臓)にて天然に発現されている。これらはまた、毒素が脳へ浸透することを妨げるために、血液脳関門のレベルで産生される。
【0013】
いくつかの研究が、これらのトランスポータの発現の、化学療法剤によって処置された患者の生存予測および寛解予測に対する効果を示している。化学療法に対する耐性は特に、Benderraら(Benderra Z. et al. Breast Cancer Resistance Protein and P-glycoprotein in 149 Adult Acute Myeloid Leukemias. Clin Cancer Res 10, 7896-7902, doi:10.1158/1078-0432.ccr-04-0795 (2004) [12])によって発行された研究から引用した図1に示される。これは、生存予測および寛解の割合が、急性骨髄性白血病に罹患する患者がP−gpおよび/またはBCRPの過剰発現を発生している場合に減少することを示す。
【0014】
化学療法処置に対するこれらのトランスポータの発現の影響を低減させるための優位な戦略の1つは、化学療法剤をこれらの排出タンパク質のインヒビタと同時に投与することにある。いくつかの分子が、この目的のために開発されており、三世代のインヒビタが現在知られている。この観点で、表1aおよび表1bは、種々のABCトランスポータに対するMDRインヒビタの活性を示す(Modok, S., Mellor, H. R. & Callaghan, R. Modulation of multidrug resistance efflux pump activity to overcome chemoresistance in cancer. Current Opinion in Pharmacology 6, 350-354 (2006), [19])。記号は、特定のトランスポータに対してインビヒタが活性(+)であるか、または不活性(−)であるか、あるいは効果が知られていない(?)のかを示す。
【0015】
【表1a】

【0016】
【表1b】

【0017】
いくつかのインヒビタ(例えば、タリキダル(Chemical Abstract Service number 206873-63-4))はいくつかの標的を有する。これは有利でない。なぜなら、理想的には、健常な細胞における他の生理学的な機能を保持するために、可逆的因子(すなわち、排出タンパク質インヒビタ)は、一度に1つの排出タンパク質のみを標的化すべきだからである。他の因子(例えばゾルキダル(Chemical Abstract Service number 167354-41-8))は、これらの副作用のために、最近フェーズIIIにてストップしている。
【0018】
さらに、トランスポータタンパク質は、普遍的な排出スペクトルを有しており、これは、これらのタンパク質の調節因子の開発を抑制していることを示す。なぜなら、所定のトランスポータの調節因子は別のトランスポータの機能を低減し得るからである。
【0019】
さらに、これらのトランスポータが所定の耐性に関連しない場合、これらの生理学的機能を保持することは重要である。
【0020】
疎水性のジペプチドまたはトリペプチド(レベルシンと呼ばれる。)は、使用される有効量にて任意の毒性効果を示すことなくP−gp活性を阻害する特性を有する(Sarkadi B., Seprodi J., Csuka O., Magocsi M., Mezo I., Palyi I., Teplan I., Vadasz Z., Vincze, B. US 6,297,216 B1, 2 October 2001, [21], Seprodi J., Mezo I., Vadasz Zs., Szabo K., Sarkadi B., Teplan I. in peptides 1996, Proceedings of the Twenty-Fourth European Peptide Symposium: September 8-13, 1996, Edinburgh, Scotland. Robert Ramage and Roger Epton (Eds), 1998 pp. 801-802 [22])。特に、最も活性なレベルシンはレベルシン121、1092および213である、これらの疎水性ジペプチドはSharomらによって研究されており(Sharom F. J., Yu X., Lu P., Liu R., Chu J. W. K., Szabo K., Muller M., Hose C. D., Monks A., Varadi A., Seprodi J., Sarkadi B. Biochem. Pharmacol., 1999, 58(4), 571-586 [23])、P−gpについて高親和性を有し、μM以下の結合定数および約1μMの阻害定数を有することが見出されている。
【0021】
しかし、MDRタイプのABCトランスポータのインヒビタの開発が、癌の化学的耐性に対抗するための主要な手法であるといえ、このコンセプトはなお不完全である。なぜなら、これは、これらのタンパク質の輸送部位のレベルでの基質を競合し得る化合物についての研究に実質的に基づいているからである。
【0022】
A. Koubeissiによる主要な文献(These, Synthese et etude biologique d’analogues di- et tripeptidiques de reversines susceptibles de moduler lactivite de deux proteines de transport, la glycoproteine P et BCRP [Thesis, Synthesis and biological study of di- and tripeptide analogs of reversins capable of modulating the activity of two transport proteins, P-glycoprotein and BCRP] (2007), [24] )は、選択されたインヒビタが他のMDRトランスポータの基質になり得、内因的にポリ特異性である輸送部位を適合し得るということが、この手法の主要な制限であるということを強調している。この観点において、この文献は、P−gpおよびBCRPに関する活性に必要な構造的な要求を特定するために、これらのレベルシンのアナログであるインヒビタの合成を記載する。
【0023】
これらの例示は、排出ポンプの特定のインヒビタとして振舞い、問題の耐性に関与しない排出ポンプの有意な阻害を示さない、治療処置の観点で使用され得る新たな化合物を提供することが、本当に必要であり続けることを示している。
【0024】
〔発明の説明〕
本発明は、従来技術の不利益を克服しこれらの要求性を満たすことを実際に可能にする。
【0025】
本発明は、医薬として使用可能な、あるいは医薬を調製するための、P−gpを調節する化合物またはP−gpインヒビタのファミリーを提供する。この医薬は、哺乳動物、特にヒトまたは動物に使用され得る、特に化学療法処置または薬学的組成物に使用され得る。
【0026】
よって、本発明は、以下の式(I)
【0027】
【化1】

【0028】
の化合物、必要に応じて水和または溶媒化した形態にて、あるいはその薬学的に受容可能な塩の、医薬を調製するための使用に関し、ここで、
- Rは、Bn、−COBn基、−COcHex基または−CHcHex基を示し、
- Xは、−CHまたは−COを示し、
- Zはベンジロキシカルボニル基を示す。
【0029】
本発明について、以下の略称が用いられる:Boc;tert−ブチロキシカルボニル、Bn;ベンジル、cHex;シクロヘキシル、Hyp;4−ヒドロキシプロリン、Lys;リジン、Z;ベンジロキシカルボニル、tBu;tert−ブチル、O;オルソ、Ser;セリン、およびMe;メチル。
【0030】
あるいは、本発明は、医薬として使用するための、上述した式(I)の化合物またはその塩に関する。
【0031】
式(I)の化合物の立体異性体、混合物、およびこれらの塩が本発明の一部であることはいうまでもない。
【0032】
医薬としての式(I)の化合物は、MRP−1またはBCRPの有意な阻害を誘導しない利点を有し、よってこれらに対応する生理学的機能を保護する。
【0033】
医薬としての式(I)の化合物は、以下の利点を有している:P−gpに対する特異性、P−gpに対する親和性、これはμMよりも良好(すなわち1μM以下)であり、例えばP−gpに対するレベルシン121の親和性よりも7倍であり、レベルシン121の阻害レベルよりも良好なレベルであり、副作用がほとんどないか全くなく、ポンプによって輸送される基質と競合しない。
【0034】
Xが−OHの場合、Rは、−Bn,−COBn,−COcHexまたは−CHcHexより選択され得る。
【0035】
例えば、XがCHを示し得、RがBnを示し得る。
【0036】
Xが−COの場合、Rは、−Bn,−COBn,−COcHexまたは−CHcHexより選択され得る。
【0037】
例えば、Xが−COを示し得、Rが−COBnを示し得る。
【0038】
別の例で、Xが−COを示し得、RがCOcHexを示し得る。
【0039】
別の例で、Xが−COを示し得、RがBnを示し得る。
【0040】
別の例で、Xが−COを示し得、RがCHcHexを示し得る。
【0041】
上記化合物は、式(II)、(III)、(IV)、(V)または(VI)より選択される式の1つを有し得、以下、それぞれを「化合物6」、「化合物2」、「化合物3」、「化合物4」および「化合物5」を記載する。
【0042】
【化2】

【0043】
【化3】

【0044】
【化4】

【0045】
【化5】

【0046】
【化6】

【0047】
上述した式を有するこれらの化合物はまた、1つ以上の水素原子、炭素原子またはハロゲン(特にフッ素または塩素(chorine))原子が、放射性同位元素(例えばトリチウムまたはカーボン14)と置換されている。
【0048】
これらの化合物の全てが以下の特性を有している:MRP1およびBCRPの有意な阻害の欠失;P−gpに対する特異性;P−gpに対するμMよりもよい(すなわち、1μM以下の)親和性、例えばP−gpに対するレベルシン121よりも7倍高いレベルの親和性、レベルシン121の阻害レベルよりも良好なレベル;副作用がほとんどないか全くなく競合しない。
【0049】
本発明は、上述した式を有する単一タイプの化合物、または少なくとも2つの上記化合物の混合物を含む組成物であり得る。
【0050】
上記化合物が混合物の形態にある場合、各化合物の割合は、例えば、選択された投与様式に従って、当業者によって決定される。
【0051】
これらの化合物の混合物は、以下の特性を有している:MRP1およびBCRPの有意な阻害の欠失;P−gpに対する特異性;P−gpに対するμMよりもよい(すなわち、1μM以下の)親和性、例えばP−gpに対するレベルシン121よりも7倍高いレベルの親和性、レベルシン121の阻害レベルよりも良好なレベル;副作用がほとんどないか全くなく、そして競合しない。
【0052】
上述した式の化合物は、純化されたアイソマーの形態であるか、アイソマーの混合物の形態であり得る。
【0053】
これらのアイソマーの混合物は、例えば、選択された投与様式に従って、当業者によって決定され得る。
【0054】
これらのアイソマーの混合物は、MRP1およびBCRPの有意な阻害を誘導しないという利点を有する。
【0055】
これらのアイソマーの混合物は、以下の利点を有している:P−gpに対する特異性;P−gpに対するμMよりもよい(すなわち、1μM以下の)親和性、例えばP−gpに対するレベルシン121よりも7倍高いレベルの親和性、レベルシン121の阻害レベルよりも良好なレベル;副作用がほとんどないか全くなく、そして競合しない。
【0056】
上述した式の化合物の塩は、無機酸または有機酸との塩、および薬学的に受容可能な塩を含む。
【0057】
好適な塩は、シュウ酸または光学活性な酸(例えば、酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、マンデル酸またはカンファースルホン酸)、および薬学的に受容可能な塩を形成するもの(例えば、ヒドロクロリド、ヒドロブロミド、スルフェート、一水素スルフェート、二水素スルフェート、マレエート、フマレート、2−ナフタレンスルフェータ、パラ−トルエンスルフェート、メシレート、ベンジレートまたはイソチオネート)から構成され得る。
【0058】
これらのアイソマーの混合物は、MRP1およびBCRPの有意な阻害を誘導しないという利点を有している。
【0059】
これらのアイソマーの混合物は、以下の利点を有している:P−gpに対する特異性;P−gpに対するμMよりもよい(すなわち、1μM以下の)親和性、例えばP−gpに対するレベルシン121よりも7倍高いレベルの親和性、レベルシン121の阻害レベルよりも良好なレベル;副作用がほとんどないか全くなく、そして競合しない。
【0060】
水和した形態の化合物は、例えば、半水和物および一水和物から構成され得る。
【0061】
本発明の化合物は、当業者に公知の任意のプロセスによって調製され得る。例えば、文献A. Koubeissi ([24])に記載のプロセスが使用され得る。本発明の化合物の合成は、混合無水法(Lai, M. Y. H. et al. Synthesis and pharmacological evaluation of glycine-modified analogs of the neuroprotective agent glycyl-l-prolyl-l-glutamic acid (GPE). Bioorganic & Medicinal Chemistry 13, 533-548 (2005), [25])によって、トランス−4−ヒドロキシ−L−プロリンの保護された誘導体を市販のH−Lys(Z)−OtBu.HClとペプチド結合させることによって行われ得る。アミノメチルアナログ化合物6は、慣用的な条件下での還元アミノ化によって、保護されたトランス−4−ヒドロキシ−L−プロリンおよびH−Lys(Z)−OtBu.HClから誘導された、対応するアミノ無水物から取得され得る(Martinez, J. et al. Synthesis and biological activities of some pseudo-peptide analogs of tetragastrin: the importance of the peptide backbone. Journal of Medicinal Chemistry 28, 1874-1879 (1985), [26] )。
【0062】
これらの化合物の精製は、当業者に公知の任意の技術によって行われ得る(W. Clark Still, Michael Kahn, and Abhijit Mitra J. Org. Chem. Rapid Chromatographic Technique for Preparative Separations with Moderate Resolution, J. Org. Chem., 1978, 43(14), 2923-2925 [14] )。
【0063】
塩は、当業者に公知の任意の技術に従って調製され得る(Vogel’s textbook of practical organic chemistry, Vth edition, 1989, Longman Scientific & Technical, publisher [34] )。
【0064】
レベルシン121は式(VII)の化合物である。
【0065】
【化7】

【0066】
レベルシンは、例えば、米国特許第6,297,216号または文献Sharom et al. ([23]) or Palyi et al. (Palyi, I.et al. Compounds for reversing drug resistance. Hungary patent (2001), [27] )に記載された、当業者に公知の任意のプロセスによって調製され得る。
【0067】
上記にて規定した化合物は、低いIC50値を有する。IC50は、化学療法剤の排出を50%ブロックまたは阻害する化合物の濃度として規定される。
【0068】
この値は、レベルシン121の値よりも低くてよい。例えば、0.01±0.001μM〜1.5±0.03μMである。例えば、上記の化合物は、IC50が約0.22±0.03μMである。
【0069】
本発明の化合物の活性およびレベルシン121の活性を測定するための試験は、当業者に周知である。例えば、以下の実施例2に記載の試験を用いることが可能である。
【0070】
本発明の化合物は、MRP1およびBCRPの有意でない阻害を示す。例えば、本発明の化合物は、MRP1またはBCRPの15%未満の阻害を10μMで示し得る。
【0071】
有利には、本発明の化合物を薬理学的に活性な用量を用いて、細胞毒性の兆候が観察されない。これは、これらの化合物を医薬として使用させる。
【0072】
本発明の目的のために、用語「医薬」は、哺乳動物(すなわちヒトまたは動物)にて使用され得る任意の物質または組成物を意味することが意図され、医学的診断を達成する目的、あるいは、薬理学的作用、免疫学的作用または代謝作用を発揮することによってその生理学的機能を回復、補正または改変する目的のために、哺乳動物に投与され得る。これは、患者の化学療法処置のためのアジュバントとして投与される本発明の化合物または組成物であり得、処置された患者の身体が耐性を発達させる。本発明に従う医薬は、化学療法処置の活性を回復または維持することが意図され得る。本発明に従う医薬は、P−gpをブロック、調節または阻害することを可能にする。本発明に従う医薬は化学療法処置の標的細胞から化学療法剤が排出されることを防止または低減することを可能にし得る。よって、本発明の化合物は、化学療法剤のためのアジュバント医薬として使用される。
【0073】
本発明の目的のために、用語「動物」は、愛玩動物(例えばイヌ)、ネコ科(例えばネコおよびフィーライン)、ウサギ、ウシ、卵生動物、ウマ、哺乳類、げっ歯類、鳥類、爬虫類、トカゲを意味することが意図されるが、これらに限定されない。
【0074】
本発明の目的のために、用語「哺乳動物(哺乳類)」は、心臓が4つの腔を有している任意の温血脊椎動物を意味することが意図され、例えば、ヒト、イヌ、ネコ、げっ歯類、ウシ、ウマ、卵生動物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
本発明の化合物は、有効量にて哺乳動物に投与され得る。本発明の目的のために、用語「有効量」は、所望の効果を得ることを可能にする、本発明の化合物の任意量を意味することが意図される。
【0076】
この量は、処置される病理学的状態の1つ以上のパラメータ特性を改善することを可能にし得る。この量はまた、P−gpの排出活性の全体的なまたは部分的な減少を得ることを可能にし得る。例えば、有効量の本発明の化合物は、P−gpの排出活性にて、少なくとも50%、有利には少なくとも60%、70%、80%、90%または99%の減少を得ることを可能にし得る。
【0077】
あるいは、この量は、活性物質、特に化学療法剤に対する耐性を低減することを可能にし得る。
【0078】
有利には、有効量の構造式(I)の化合物は、0.01〜100μMであり得る。あるいは、この有効量は、1〜100mg/kg体重/日であり得る。
【0079】
よって、医薬は、哺乳動物におけるABCB1排出タンパク質の活性を減少させることが意図され得る。
【0080】
医薬は、薬学的に活性な物質に対する耐性を減少させることが意図される。
【0081】
本発明の化合物は、単独で、あるいは薬学的に活性な物質とともに投与され得る。
【0082】
薬学的に活性な物質とともに投与される場合、本発明の化合物は、この物質を用いる処置に対するアジュバントとして記載され得る。
【0083】
例えば、医薬は、癌または感染症の化学療法処置に対するアジュバントであり得る。
【0084】
本発明の目的のために、用語「癌」は、生物組織内の細胞の異常な増殖/調節されていない増殖を含む任意の病理学的状態を意味することが意図され、例示の目的で、悪性腫瘍、リンパ腫(例えばホジキン病およびホジキン病でないリンパ腫)、芽腫、肉腫、白血病、より詳細には、肺癌、乳癌、結腸癌(大腸癌、直腸癌)、膵癌、多発性骨髄腫(特に、骨髄癌、カポシ肉腫)、精巣癌、腺癌、中皮腫、黒色腫、腎臓癌、前立腺癌、肝癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
本発明の目的のために、用語「感染症」または「感染性疾患」は、生物による組織内の細胞の侵入を含む任意の病理学的状態を意味することが意図される。この生物は、ウイルス、細菌、寄生虫または真菌であり得る。例示の目的で、破傷風、マラリア、肺炎、インフルエンザ、エイズ、敗血症、リウマチ性心疾患、虫垂炎、腹膜炎、結核、腸感染、ウイルス性肝炎が挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
本発明の目的のために、用語「薬学的に活性な物質」は、ヒトまたは動物に投与される場合に薬学的効果を有する任意の物質を意味することが意図される。
【0087】
例えば、薬学的に活性な物質は、化学療法剤(例えば、抗生物質、抗真菌剤、抗癌剤、抗感染性剤)であり得るが、化学物質起源の任意の分子でもあり得る。
【0088】
本発明の目的のために、用語「化学療法剤」は、治療の観点で使用される任意の化学品または合成物質を意味することが意図される。特に、これは、癌細胞、または病原性因子が感染した細胞を破壊することが意図され得る。次いで、これは、抗癌剤または抗感染性剤の問題でもあり得る。例示の目的で、アントラサイクリン、トポイソメラーゼインヒビタ、代謝拮抗剤(例えば葉酸代謝拮抗薬)、チロシンキナーゼインヒビタ、抗ウイルス薬(例えば、逆転写酵素インヒビタ)、抗寄生虫薬、抗真菌剤、特に、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ミトザントロン、カンプトセシンおよびその誘導体、イリノテカン、トポテシン、インドロカルバゾル、メトトレキセート、イマチニブ、ゲフィチニブ、ジドブジン、ラミブジン、アバカビブ、イベルメクチン、アルベンダゾル、オクスフェンダゾル、ケトコナゾルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
化合物が単独で投与される場合、化学療法剤は投与されない。
【0090】
化合物が化学療法剤とともに投与される場合、本発明の化合物および化学療法剤は、順序付けた様式にて、連続的にかまたは長時間にわたって、同時に投与され得る。
【0091】
本発明の化合物は、効果を増強するために、すなわち、化学療法剤の効果(特に抗感染性剤または抗癌剤)を増加させるために用いられ得る。例えば、これらの化学療法剤は、排出メカニズムを介する耐性種に関してわずかに活性または不活性になり得る。本発明の目的のために、用語「増強」は、式(I)の化合物および化学療法剤(例えば、抗感染性剤または抗癌剤)が組み合わせられた場合に、これらの化合物の一方または他方のみによって得られる治療効果よりも大きな治療効果が得られることを意味することが意図される。有利には、治療効果は、別々に得られる効果の合計よりも大きくあり得る。
【0092】
有効量の化学療法剤が、好ましくは投与される。有利には、この有効量は、本発明の化合物が化学療法剤とともに投与されない場合に標的細胞の破壊を得ることができない量である。治療剤の有効量は、本発明の化合物なしでその治療剤が投与される場合のその有効量よりも低くあり得る。有利には、投与される化学療法剤の用量は、標的細胞の完全または部分的な破壊を得ることを可能にし得る。有利には、有効量の化学療法剤は。標的細胞の、少なくとも50%、有利には少なくとも60%または70%または80%または90%または99%の破壊を得ることを可能にし得る。有利には、化学療法剤の有効量は、組成物全体に対して0.1μM〜100μMであり得る。あるいは、この有効量は、0.01〜100mg/kg体重/日であり得る。
【0093】
本発明の化合物および化学療法剤は、P−gpの排出活性の完全または部分的な阻害を得ることを可能にする割合にて投与され得る。
【0094】
種々の順番の投与または処置が想定され得る。本発明の化合物は、例えば、化学療法剤の投与の5分前、15分前、30分前、45分前、1時間前、2時間前、4時間前、6時間前、12時間前、24時間前、48時間前、72時間前、96時間前、1週間前、2週間前、3週間前、4週間前、5週間前、8週間前または12週間前に投与され得る。
【0095】
あるいは、上記にて規定された式の化合物は、化学療法剤と同時に投与されても、化学療法剤の投与の5分後、15分後、30分後、45分後、1時間後、2時間後、4時間後、6時間後、12時間後、24時間後、48時間後、72時間後、96時間後、1週間後、2週間後、3週間後、4週間後、5週間後、8週間後または12週間後に投与され得る。
【0096】
本発明の別の目的は、医薬としての、上記にて規定された式の化合物、それらの混合物、塩およびイソマーに関する。この医薬は、ヒトまたは動物にて使用され得る。
【0097】
本発明はまた、癌または感染症の処置のための、上記にて規定された式の化合物に関する。この化合物は、ヒトまたは動物にて使用され得る。
【0098】
本発明はまた、ヒトまたは動物におけるABCB1排出タンパク質の活性を低減するための、上記にて規定された式の化合物に関する。
【0099】
本発明の別の目的は、本発明の化合物を含む薬学的組成物に関する。
【0100】
本発明の化合物の濃度は、薬学的組成物中にて0.001〜500μMであり得る。例えば、その濃度は、0.001〜50μMであるか、0.001〜1μMである。
【0101】
本発明の化合物および化学療法剤は、異なる薬学的組成物中にて、それぞれ別々にて投与され得る。
【0102】
あるいは、本発明の化合物および化学療法剤は、単一の薬学的組成物にて投与され得る。すなわち、本発明の医薬は、(i)本発明の化合物、および(ii)上記にて規定した化学療法剤、を同一の処方物中に組み合わせた単一の薬学的組成物の形態であり得る。このような薬学的組成物は、ヒトまたは動物にて使用され得る。
【0103】
薬学的組成物はまた、有利には、所望される薬学的な形態および投与様式に従って選択される、薬学的に受容可能なキャリアを含む。使用され得る薬学的に受容可能なキャリアは、当業者に公知のキャリアである。例示の目的で、ゼラチン、デンプン、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、アラビアゴムまたは任意のアナログから構成され得る。
【0104】
薬学的組成物は、MRP1およびBCRPの有意な阻害を誘導しないという利点を有する。
【0105】
薬学的組成物は以下の利点を有する:P−gpに対する特異性、P−gpに対する親和性、これはμMよりも良好(すなわち1μM以下)であり、例えばP−gpに対するレベルシン121の親和性よりも7倍であり、レベルシン121の阻害レベルよりも良好なレベルであり、副作用がほとんどないか全くなく、そして競合しない。
【0106】
薬学的組成物または医薬の投与様式は、経口投与、舌下投与、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与、局所投与、気管内投与、鼻腔内投与、経皮投与、直腸投与または眼内投与であり得る。
【0107】
薬学的組成物または医薬の投与形態は、所望の目的物に匹敵する形態の全てを含む。これらの投与形態は、当業者に公知であり、例えば、フィルムコートした錠剤、コートした錠剤もしくは分割した錠剤、ゲルカプセル、粉末、顆粒、経口の懸濁液もしくは溶液、クリーム、軟膏、ローションもしくは眼用ローション、シロップ、エマルションが挙げられるがこれらに限定されない。
【0108】
医薬または薬学的組成物の形態は、延長または遅延した活性に適切な形態であり得る。この形態は、徐放性の、所定量の本発明の化合物および必要に応じて化学療法剤に好適であり得る。
【0109】
処方物、特に錠剤、ゲルカプセルまたは顆粒は、スクロースまたはセルロース誘導体でコートされ得る。
【0110】
例えば、ゲルカプセルは、活性成分を希釈剤と混合し、得られた混合物をゲルカプセル中に流し込むことによって調製され得る。
【0111】
本発明の医薬または薬学的組成物を含む液体形態は、好適な任意の液体をキャリアとして有し得る。このようなキャリアは、当業者に公知であり、例えば、水、溶媒(特に有機溶媒(例えば、グリセロールまたはグリコール))、および種々の割合でのこれらの混合物から構成され得る。
【0112】
シロップ、エリキシルまたはドロップの形態での調製物は、甘味料(例えば、カロリーフリーの甘味料)、防腐剤(例えば、メチルパラベンまたはプロピルパラベン)、芳香剤および好適な着色料を含み得る。
【0113】
水分散可能な粉末または顆粒は、分散剤または湿潤剤または懸濁剤(例えばポリビニルピロリドン)との混合物、あるいは甘味料または芳香増強剤との混合物としての活性成分を含み得る。
【0114】
本発明の別の目的は、病理学的な状態を処置するための、本発明の化合物の使用である。
例示の目的で、病理学的な状態は、ヒトまたは動物における癌または感染症から構成され得る。
【0115】
本発明の別の目的は、インビトロでのABCB1排出ポンプを阻害するための、式(I)の化合物の使用である。例えば、式(I)の化合物は、分子、特に化学療法剤をスクリーニングするために使用され得る。
【0116】
本発明の別の目的は、治療処置のための、特に、治療処置を必要とする患者のための方法に関し、この方法は、構造式(I)の化合物またはその薬学的に受容可能な塩の投与を包含する。
【0117】
他の利点は、説明の目的で提供された添付の図面によって例証された以下の実施例を読んだ当業者にさらに明らかになり得る。
【0118】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、P−gpおよびBCRPの発現の、急性骨髄性白血病についての生存予測および寛解に対する影響を示す([12])
図2は、化合物1,2,3,4,5および6、ならびにP−gpの排出機能に対するこれらの効果を示す。レベルシン121は参照化合物である([23], [27])。P−gp阻害率を、50%最大効果(IC50)についての濃度として示した
図3Aは、レベルシン121によるP−gpに輸送された抗癌剤であるニトザントロンの排出の阻害(パーセント)を示す。IC50値を、実験値の数学的処理によって取得し、表2に記録した
図3Bは、化合物3によるP−gpに輸送された抗癌剤であるニトザントロンの排出の阻害(パーセント)を示す。IC50値を、実験値の数学的処理によって取得し、表2に記録した
図3Cは、化合物5によるP−gpに輸送された抗癌剤であるニトザントロンの排出の阻害(パーセント)を示す。IC50値を、実験値の数学的処理によって取得し、表2に記録した
図3Dは、化合物4によるP−gpに輸送された抗癌剤であるニトザントロンの排出の阻害(パーセント)を示す。IC50値を、実験値の数学的処理によって取得し、表2に記録した
図3Eは、化合物6によるP−gpに輸送された抗癌剤であるニトザントロンの排出の阻害(パーセント)を示す。IC50値を、実験値の数学的処理によって取得し、表2に記録した
図4は、化合物6を用いた、コントロールNIH3T3細胞(○、□)またはP−gpを発現するNIH3T3細胞(▽、◇)のミトザントロンに対する化学感受性を示す。漸増濃度(μM)のミトザントロン(MTX)が、化合物6の存在下または非存在下にて、P−gpを発現するNIH3T3細胞またはP−gpを発現しないNIH3T3細胞に適用された。細胞生存率をパーセントで示した
図5Aは、P−gpを発現するNIH3TS細胞(□)またはP−gpを発現しないNIH3T3細胞(○)に対する漸増濃度(μM)の化合物4の細胞毒性を示す
図5Bは、P−gpを発現するNIH3TS細胞(□)またはP−gpを発現しないNIH3T3細胞(○)に対する漸増濃度(μM)の化合物6の細胞毒性を示す
図6Aは、化合物6を用いた、P−gpによって生成されたダウノルビシン排出の阻害の動力学を示す。細胞内ダウノルビシンの経口を、漸増濃度の化合物6の存在下で測定し、結果を直接的に示した。排出阻害効果0%、25%、50%、75%および100%が、0μM(○)、0.12μM(▽)、0.22μM(□)、0.44μM(◇)、および10μM(上向きの△)にそれぞれ対応している
図6Bは、化合物6を用いた、P−gpによって生成されたダウノルビシン排出の阻害の動力学を示す。細胞内ダウノルビシンの経口を、漸増濃度の化合物6の存在下で測定し、結果をLineweaver & Burkeの二重回帰によって示した。排出阻害効果0%、25%、50%、75%および100%が、0μM(○)、0.12μM(▽)、0.22μM(□)、0.44μM(◇)、および10μM(上向きの△)にそれぞれ対応している。
【0119】
〔実施例〕
〔実施例1〕化合物2、3、4、5および6の調製
以下の実施例において、以下に示す省略形を使用する:hは時間を意味し、a.t.は周囲温度を意味し、asymは不斉を意味し、EtOAcは酢酸エチルを意味し、Bocはt−ブチロキシカルボニルを意味し、(Boc)Oはジ−t−ブチルジカーボネートを意味し、Buはブチルを意味し、DMFはN,N−ジメチルホルムアミドを意味し、PEは石油エーテルを意味し、ESIはエレクトロスプレーイオン化を意味し、Etはエチルを意味し、EtOはジエチルエーテルを意味し、HRは高分解能を意味し、Meはメチルを意味し、Phはフェニルを意味し、eqは当量を意味し、Hypは4−ヒドロキシプロリンを意味し、Lysはリジンを意味し、IRは赤外線を意味し、NMRは核磁気共鳴を意味し、MSは質量分析を意味し、TBTUは2−(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム(hydrouronium)テトラフルオロボラートを意味している。
【0120】
(1)Nα−Boc−トランス−4−Hyp(COR)−Lys(Z)−OtBuの合成
酸およびアミンの機能が予め保護されている、市販のトランス−4−ヒドロキシ−L−プロリン(Novabiochem参照番号04−10−0020)を用いて、上記の合成を行った。次いで、上記アルコールのエステル化し、続いて、上記の酸の脱保護し、そして二重保護された市販のリジンの誘導体(Novabiochem参照番号04−12−5122)とカップリングを行い、その結果として目的の制限されたアナログとなった。
【0121】
【化8】

【0122】
(1.1)Nα−Boc−トランス−4−Hyp−Oアリルの合成
L−ホモセリンについてCarrascoおよびBrownによって記載された手順(Carrasco M. R., Brown R. T. J. Org. Chem., 2003, 68(23), 8853-8858, [31] )に従って、上記誘導体74を97%の収率にて調製した。
【0123】
【化9】

【0124】
(4R)−ヒドロキシ−N−(t−ブチロキシカルボニル)−ピロリジン−(2S)−オイック酸74のアリルエステル
500mgの市販のトランス−4−ヒドロキシ−L−プロリン(3.816mmol;500mg)および170mgのNaOH(4.2mmol;1.1eq)を5mlの水および5mlのCHCNに溶解した。次いで1.24gの(Boc)O(5.7mmol;1.5eq)を加え、その溶液を周囲温度にて一晩攪拌した。上記溶媒を除去し、得られた油状の残渣を、EtOを用いて粉末状にし、真空下にて乾燥させ、次いで12mlのDMFに溶解した。得られた溶液を0.364mlのアリルブロミド(4.2mmol;1.1eq)とともに処理し、上記反応溶液(reaction)を周囲温度にて一晩攪拌した。上記DMFを除去し、得られた残渣をEtOAcに溶解した。この有機相を25mlのNaHCOの飽和溶液を用いて3回洗浄し、25mlの水を用いて1回洗浄し、0.1MのKHSO溶液25mlを用いて2回洗浄し、25mlのNaCl飽和溶液を用いて1回洗浄した。上記有機相を無水のNaSOを用いて乾燥させ、濾過して濃縮した。精製を必要としない無色の油の形態にて、生成物(3.69mmol;1g)を得た。
IR(NaCl;film):3436(νOH);2978 and 2936(νCH);1748 and 1682(νC=O);1415(νC−C−O asym);1368(νCH3t−Bu);1159(νO−C−C asym)。
H NMR(CDCl;300MHz):1.42 and 1.46(9H、2s、C(CHBoc 1st and 2nd conf.);2.09(1H、m、CHβ);2.31(1H、m、CHβ);3.55(2H、m、CHN);4.40−4.51(2H、m、CHα and CHOH);4.65(2H、d、J=5.6Hz、CH−CH=CH);4.26(1H、dd、J=0.7Hz and J=10.1Hz、CH−CH=CH);5.84(1H、dd、J=0.9Hz and J=18.2Hz、CH−CH=CH);5.91(1H、m、CH−CH=CH)。
【0125】
(1.2)Nα−Boc−トランス−4−Hyp(COR)−Oアリルの合成
フェニルアセチルクロリドまたは塩化シクロヘキサノイルを用いて、上記アルコール74をエステル化した。化合物75aの場合において、全ての反応に過剰の塩化シクロヘキサノイルおよび2当量のトリエチルアミンを用いた。2つのエステル、75aおよび75bを、それぞれ43%および84%の収率にて得た。
【0126】
【化10】

【0127】
(4R)−(ベンジルカルボニロキシ)−N−(t−ブチロキシカルボニル)ピロリジン−(2S)−オイック酸75aのアリルエステル
0℃にて156μlのトリエチルアミン(1.107mmol;1.5eq)および120μlのフェニルアセチルクロリド(0.885mmol;1.2eq)を、7mlのCHClに溶解したNα−Boc−トランス−4−Hyp−Oアリル74(0.738mmol;200mg)の溶液に添加した。周囲温度にて一晩攪拌した後に、15mlの水を加え、上記反応を20mlのCHClを用いて抽出した。水を用いて上記有機相を洗浄し、無水のNaSOを用いて乾燥させ、濾過して濃縮した。得られた油状の帯黄色の残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc/PE 20:80)によって精製した。生成物(0.320mmol;123mg)を帯黄色の油状の形態にて得た。
IR(NaCl;film):3065 and 3031(νφCH);2978 and 2933(νCH);1744 and 1704(νC=O);1455(νφC=C);1403 and 1367(δCH3t−Bu);1258(νC−C−O asym);1157(νO−C−C asym);931(δCH ビニル)。
H NMR(CDCl;300MHz):1.44 and 1.46(9H、2s、C(CHBoc 1st and 2nd conf.);2.20(1H、m、CHβ);2.38(1H、m、CHβ);3.62−3.76(4H、s+m、CHPh and CHN);4.32 and 4.43(1H、2t、J=8.0Hz and J=7.7Hz、CHα 1st and 2nd conf.);4.65(2H、m、CH−CH=CH);5.22−5.38(3H、m、CH−CH=CH and CHOCOBn);5.92(1H、m、CH−CH=CH)、7.33(5H、m、Ph)。
【0128】
(4R)−(シクロヘキシルカルボニロキシ)−N−(t−ブチロキシカルボニル)ピロリジン−(2S)−オイック酸75bのアリルエステル
0℃にて270μlのトリエチルアミン(1.92mmol;2eq)および224μlの塩化シクロヘキサノイル(1.632mmol;1.7eq)を、8mlのCHClに溶解したNα−Boc−トランス−4−Hyp−Oアリル74(0.960mmol;260mg)の溶液に添加した。周囲温度にて一晩攪拌した後に、15mlの水を加え、上記反応を20mlのCHClを用いて抽出した。上記有機相を水を用いて洗浄し、無水のNaSOを用いて乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。得られた油状の帯黄色の残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc/PE 20:80)によって精製した。生成物(0.808mmol;308mg)を帯黄色の油状の形態にて得た。
IR(NaCl;film):2977 and 2934(νCH);1733、1705 and 1699(νC=O);1403 and 1368(νCH3t−Bu);1248(νC−C−O asym);1163(νO−C−C asym);929(νCH vinyl)。
H NMR(CDCl;300MHz):1.21−1.38(4H、m、2CH cHex);1.44 and 1.47(9H、s、C(CHBoc 1st and 2nd conf.);1.61−1.91(6H、m、3CH cHex);2.14−2.43(3H、m、CH2β and CHCO cHex);3.63(2H、m、CHN);4.35 and 4.45(1H、2t、J=8.0Hz and J=7.7Hz、CHα 1st and 2nd conf.);4.66(2H、m、CH−CH=CH);5.23−5.38(3H、m、CH−CH=CH and CH−O Hyp);5.92(1H、m、CH−CH=CH)。
【0129】
(1.3)Nα−Boc−トランス−4−Hyp(COR)−OHの合成
CarrascoおよびBrownの方法([31])に従って、2つのアリルエステル、75aおよび75bのそれぞれの切断は、それぞれ、定量的な収率を有する酸76aおよび95%の収率を有する酸76bという結果になった。
【0130】
【化11】

【0131】
(4R)−(ベンジルカルボニロキシ)−N−(t−ブチロキシカルボニル)ピロリジン−(2S)−オイック酸76a
4mgのPPh(0.01555mmol;0.05eq)および27μlのピロリジン(0.3265mmol;1.05eq)を3mlのCHClに溶解したNα−Boc−トランス−4−Hyp(COBn)−Oアリル75a(0.311mmol;121mg)の溶液に添加し、次いでその混合溶液をアルゴン雰囲気下にて周囲温度で攪拌した。次いで9mgのPd(0)(0.007775mmol;0.025eq)を加え、その混合溶液を40分間攪拌した。上記溶媒を除去し、得られた残渣をEtOAcに溶解した。この有機相を0.1MのKHSO溶液を用いて3回洗浄し、NaClの飽和溶液を用いて1回洗浄し、次いで無水のNaSOを用いて乾燥させ、濾過し、濃縮した。得られた油状の黄色の残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc/PE 50:50、次いで同様の溶離液+0.1%のギ酸を用いた。)によって精製した。生成物(0.309mmol;108mg)を帯黄色の油状の形態にて得た。
IR(NaCl;film):2980(νCOOH);1732(νC=O);1455(νφC=C);1369(δCH3t−Bu);1257(νC−C−O asym);1160(νO−C−C asym)。
H NMR(CDCl;300MHz):1.46 and 1.48(9H、2s、C(CHBoc 1st and 2nd conf.);2.40(2H、m、CH2β);3.60−3.72(4H、m+s、CHN and CHPh);4.32 and 4.44(1H、2t、J=7.9Hz and J=7.9Hz、CHα 1st and 2nd conf.);5.29(1H、m、CHOCOBn);7.32(5H、m、Ph)。
【0132】
(4R)−(シクロヘキシルカルボニロキシ)−N−(t−ブチロキシカルボニル)ピロリジン−(2S)−オイック酸76b
α−Boc−トランス−4−Hyp(COcHex)−Oアリル75b(0.735mmol;287mg)を用いて、生成物76aのための方法と同一の方法に従って、この生成物を調製した。得られた油状の黄色の残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc/PE 50:50、次いで同様の溶離液+0.1%のギ酸を用いた。)によって精製した。生成物(0.718mmol;245mg)を帯黄色の油状の形態にて得た。
IR(NaCl;film):3446(νCOOH);2978 and 2933(νCH);1732(νC=O);1368(δCH3t−Bu);1249(νC−C−O asym)。
H NMR(CDCl;300MHz):1.25−1.41(4H、m、2CHcHex);1.45 and 1.49(9H、s、C(CHBoc 1st and 2nd conf.);1.63−1.90(6H、m、3CH cHex);2.23−2.52(3H、m、CH2β and CHCO cHex);3.65(2H、m、CHN);4.36 and 4.50(1H、2t、J=8.0Hz and J=7.9Hz、CHα 1st and 2nd conf.);5.29(1H、d、J=15.4Hz、CH−O Hyp);6.30−7.80(1H、M、COOH)。
【0133】
(1.4)Nα−Boc−トランス−4−Hyp(COR)−Lys(Z)−OtBuの合成
Laiらの方法([25])に従って、市販のH−Lys(Z)−OtBu.HCl(Novabiochem参照番号04−12−5122)を用いて2つのワンポットステップにて、2つの酸、76aおよび76bを結合させた。
【0134】
【化12】

【0135】
市販のトランス−4−ヒドロキシ−L−プロリン(Novabiochem参照番号04−10−0020)から始まる4つのステップにおいて、制限された2つの誘導体、化合物2および化合物3のそれぞれの全体の収率は、それぞれ27%および53%であった。
【0136】
α−Boc−トランス−4−Hyp(COBn)−L−Lys(Z)−OtBu77a
上記のNα−Boc−トランス−4−Hyp(COBn)−OH76a(0.30mmol;102mg)をアルゴン下にて4mlのCHClに溶解した。上記溶液を0℃まで冷却し、次いで、50μlのトリエチルアミン(0.33mmol;1.1eq)を5分間で滴下した。40μlのクロロギ酸エチル(0.33mmol;1.1eq)を5分間で滴下した。上記混合溶液を0℃にて30分間攪拌し、次いで、0℃にて4mlのCHClに溶解した、市販のH−Lys(Z)−OtBu.HClの溶液(0.30mmol;112mg)および100μlのトリエチルアミン(0.66mmol;2.2eq)の溶液を5分間にわたって加えた。上記の溶液を0℃にて2時間攪拌し、次いで周囲温度にて一晩攪拌した。5mlのCHClを加え、上記有機相を10mlのNaHCO飽和溶液を用いて2回洗浄し、1MのHCl溶液を用いて2回洗浄した。上記有機相を無水のNaSOを用いて乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。得られた油状の黄色の残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc/PE 50:50)によって精製した。生成物(0.195mmol;130mg)を無色の油状の形態にて得た。
Elemental analysis:Found C、64.93%;H,7.37%;N,6.06%。C3649 required C、64.75%;H,7.40%;N、6.29%。
IR(NaCl;film):3329(νNH);3065 and 3033(νφCH);2978 and 2933(νCH);1695(νC=O amide);1455(νφC=C);1394 and 1368(δCH3t−Bu);1251(νC−C−O asym);1158(νO−C−C asym)。
H NMR(CDCl;300MHz):1.44 and 1.49(9H、2s、C(CHBoc 1st and 2nd conf.);1.34−1.69(6H、m、3CH Lys);2.20(1H、m、CHβ);2.45(1H、m、CHβ);3.17(2H、m、CHNH);3.55−3.63(4H、m+s、CHN and CHPh);4.28(1H、m、CHα);4.44(1H、m、CHα);5.10(2H、s、CHPh Z);5.25(1H、m、CH−O Hyp);7.25−7.37(10H、m、2Ph)。
13C NMR(CDCl;75MHz):22.62(CH Lys);28.38 and 28.64(6CH Boc and t−Bu);29.44 and 30.11(2CH Lys);32.38(CH2β);40.96 and 41.72(CHNH and CHPh Hyp);52.91(CHN Hyp);58.97(CHα);60.82(CHα);66.94(CHPh Z);73.68(CHO Hyp);81.16(C−O t−Bu);82.47(C−O t−Bu);127.66、128.89、129.07 and 130.0(10CH 2Ph);133.94(Cq Ph);137.07(Cq Ph);155.50 and 156.89(2CO Boc and Z);171.23、171.37 and 171.59(CO amide and 2CO ester)。
MS(ESI;positive mode):1357.1[2M+Na];690.2[M+Na]
HR MS(ESI;positive mode):690.33599[M+Na](calc.690.3367)。
【0137】
α−Boc−トランス−4−Hyp(COcHex)−L−Lys(Z)−OtBu77b
α−Boc−トランス−4−Hyp(COcHex)−OH76b(0.642mmol;219mg)および市販のH−Lys(Z)−OtBu.HCl(0.642mmol;240mg)を用いて、生成物77aの方法と同一の方法に従って、上記ペプチドを調製した。得られた糊状の帯黄色の残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc/PE 40:60)によって精製した。生成物(0.443mmol;292mg)を粘着性ある黄色の油状の形態で得た。
Elemental analysis:Found C、63.95%;H、8.20%;N、6.30%。C3553 required C、63.71%;H、8.10%;N、6.37%。
IR(NaCl;film):3350(νNH);2933(νCH);1668(νC=O amide);1454(νφC=C);1394(δCH3t−Bu);1248(νC−C−O asym);1160(νO−C−C asym)。
H NMR(CDCl;300MHz):1.44 and 1.47(9H、2s、C(CHBoc 1st and 2nd conf.);1.23−1.88(16H、m、2CH Lys and 5CH cHex);2.18−2.54(3H、m、CH2β and CHCO cHex);3.19(2H、m、CHNH);3.56(2H、M、CHN);4.36(1H、m、CHα);4.45(1H、m、CHα);5.10(2H、systemAB、J=12.4Hz、CHPh);5.22(1H、M、CH−O Hyp);7.05(1H、M、NH);7.34(5H、m、Ph)。
13C NMR(CDCl;75MHz):21.46、22.19、22.64、29.43、30.08、32.35、32.94 and 34.68(5CH cHex and 3CH Lys);28.37 and 28.64(6CH Boc and t−Bu);37.32(CH2β);43.35(CHCO cHex);53.11(CHNH);59.04(CHα);60.41(CHα);60.80(CHN);72.81(CH−O Hyp);73.67(CHPh);81.11(C−O t−Bu);82.43(C−O t−Bu);128.16、128.43、128.51 and 128.87(5CH Ph);137.06(Cq Ph);155.67 and 156.89(2CO Boc and Z);171.30、171.95 and 175.87(CO amide and 2CO ester)。
MS(ESI;positive mode):1341.2[2M+Na];682.2[M+Na];660.0[MH]
HR MS(ESI;positive mode):682.36780[M+Na](calc.682.3680)。
【0138】
(2)Nα−Boc−トランス−4−Hyp(Bn)−Lys(Z)−OtBuの合成
カップリングのこの型のために以前用いた条件下([25])にて2つのワンポットステップにて、市販の2つの誘導体、Nα−Boc−トランス−4−Hyp(Bn)−OH(Bachem参照番号54631−81−1)およびH−Lys(Z)−OtBu.HCl(Novabiochem参照番号04−12−5122)をカップリングしたペプチドによって、この合成を行った。上記ペプチド4の収率は70%であった。
【0139】
【化13】

【0140】
α−Boc−トランス−4−Hyp(Bn)−L−Lys(Z)−OtBu78
市販のNα−Boc−トランス−4−Hyp(Bn)−OH(0.623mmol;200mg)および市販のH−Lys(Z)−OtBu.HCl(0.623mmol;232mg)を用いて、生成物77aの方法と同一の方法に従って、このペプチドを調製した。得られた油状の黄色の残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc/PE 40:60)によって精製した。生成物(0.438mmol;280mg)をおおよそ無色の油状の形態にて得た。
Elemental analysis:Found C、65.77%;H、7.66%;N、6.50%。C3549 required C、65.71%;H、7.72%;N、6.57%。
IR(NaCl;film):3325(νNH);3065 and 3033(νφCH);2977 and 2934(νCH);1679(νC=O amide);1455(νφC=C);1394 and 1367(νCH3t−Bu);1251(νC−C−O asym);1160(νO−C−C asym)。
H NMR(CDCl;300MHz):1.35 and 1.38(9H、2s、C(CHBoc 1st and 2nd conf.);1.23−1.78(6H、m、3CH Lys);2.07(1H、m、CHβ);2.32(1H、m、CHβ);3.09(2H、m、CHNH);3.44(2H、M、CHN);4.24−4.37(2H、m、2CHα);4.41(2H、d、J=3.7Hz、CHPh Hyp);4.96−5.05(3H、m、CH−O Hyp and CHPh Z);6.52(1H、M、NH);6.97(1H、M、NH);7.20−7.27(10H、m、2Ph)。
13C NMR(CDCl;75MHz):22.67(CH Lys);28.39 and 28.70(6CH Boc and t−Bu);29.45 and 32.37(2CH Lys);34.72(CH2β);40.97(CHNH);52.39(CHN);59.24(CHα);60.42(CHα);66.89(CHPh Hyp);71.64(CHPh Z);77.33(CH−O Hyp);80.84(C−O t−Bu);82.34(C−O t−Bu);128.03、128.18、128.50 and 128.87(10CH 2Ph);137.09(Cq Ph);138.28(Cq Ph);155.76 and 156.89(2CO Boc and Z);171.62 and 172.72(CO amide and CO ester)。
MS(ESI;positive mode):662.3[M+Na];540.2[MH]−isobutene−CO
HR MS(ESI;positive mode):662.34155[M+Na](calc.662.3417)。
【0141】
(3)Nα−Boc−トランス−4−Hyp(CHcHex)−Lys(Z)−OtBuの合成
上記の合成戦略は、Nα−Boc−トランス−4−Hyp(CHcHex)−OHと市販のH−Lys(Z)−OtBu.HCl(Novabiochem参照番号04−12−5122)との間のペプチドのカップリング反応を含む。Nα−Boc−トランス−4−Hyp−OHのシクロヘキシルメチルエーテルを市販のNα−Boc−トランス−4−Hyp(Bn)−OHのベンジルエーテル(Bachem参照番号54631−81−1)の接触水素化によって生成し得る。
【0142】
【化14】

【0143】
(3.1)Nα−Boc−トランス−4−Hyp(CHcHex)−OHの合成
Sekoら(Seko T., Kato M., Kohno H., Ono S., Hashimura K., Takimizu H., Nakai K., Maegawa H., Katsube N., Toda M. Bioorg. Med. Chem., 2003, 11(8), 1901-1913, [28] )は、プロパノール中でのアルミナ上のロジウム(Rh−Al)の存在下にて、Nα−Boc−L−Ser(Bn)−OHの接触水素化による、Nα−Boc−L−Ser(CHcHex)−OHの合成を開示している。Nαを保護されたセリンのシクロヘキシルメチルエーテルをヘキサンによる再結晶の後に86%の収率にて得た。
【0144】
上記反応を市販のNα−Boc−トランス−4−Hyp(Bn)−OH(Bachem参照番号54631−81−1)において同一の条件下にて行い、シクロヘキシルメチルエーテル79を定量的な収率にて得た。
【0145】
【化15】

【0146】
(4R)−(シクロヘキシルメチロキシ)−N−(t−ブチロキシカルボニル)ピロリジン−(2S)−オイック酸79
4mlのイソプロパノールに溶解した、市販のNα−Boc−トランス−4−Hyp(Bn)−OH(0.623mmol;200mg)とRh/Al(5%)(0.018mmol;37mg;0.028eq)との混合物を周囲温度にておよび水素雰囲気下にて一晩攪拌した。触媒を除去するために上記混合物を濾過し、その濾液を濃縮した。精製を必要としない、おおよそ無色の油状の形態にて生成物(0.62mmol;203mg)を得た。
IR(NaCl;film):3418(νCOOH);2974 and 2924(νCH);1705 and 1682(νC=O);1368(δCH3t−Bu);1257(νC−C−O asym);1163(νO−C−C asym)。
H NMR(CDCl;300MHz):1.17−1.27(6H、m、3CH cHex);1.43 and 1.50(9H、s、C(CHBoc 1st and 2nd conf.);1.65−1.76(5H、m、2CH and cHex);2.16(1H、m、CHβ);2.39(1H、m、CHβ);3.21(2H、m、CHN);3.54(2H、m、CHO);4.05(1H、m、CH−O);4.34 and 4.46(1H、2t、J=7.7Hz and J=7.3Hz、CHα);5−5.90(1H、M、COOH)。
【0147】
ii−Nα−Boc−トランス−4−Hyp(CHcHex)−Lys(Z)−OtBuの合成
化合物77aの合成のための条件下にて2つのワンポットステップにおいて、上記酸79を上記H−Lys(Z)−OtBu.HClと結合させた。この結合の結果として、67%の収率を有するジペプチド80を得た。
【0148】
【化16】

【0149】
α−Boc−トランス−L−4−Hyp(CHcHex)−L−Lys(Z)−OtBu80
生成物77aと同一の方法に従って、Nα−Boc−トランス−4−Hyp(CHcHex)−OH79(0.62mmol;203mg)および市販のH−Lys(Z)−OtBu.HCl(0.62mmol;231mg)を用いて、このジペプチドを調製した。得られた油状の帯黄色の残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc/PE 40:60)によって精製した。生成物(0.414mmol;267mg)を黄色の油状の形態で得た。
Elemental analysis:Found C、65.34%;H、8.78%;N、6.40%。C3555 required C、65.09%;H、8.58%;N、6.51%。
IR(NaCl;film):3325(νNH);3066 and 3034(νφCH);2977 and 2925(νCH);1681(νC=O amide);1454(νφC=C);1394 and 1368(δCH3t−Bu);1248(νC−C−O asym);1159(νO−C−C asym)。
H NMR(CDCl;300MHz):1.44 and 1.47(9H、2s、C(CHBoc 1st and 2nd conf.);1.12−1.89(17H、m、3CH Lys、5CH and CH cHex);2.06(1H、m、CHβ);2.34(1H、m、CHβ);3.13−3.21(4H、m、2CHN);3.46(2H、M、CHO Hyp);3.95 and 4.04(1H、2M、CHα 1st and 2nd conf.);4.31(1H、m、CHα);4.43(1H、m、CH−O Hyp);5.10(3H、M+s、NH and CHPh);7.06(1H、d、J=7.9Hz、NH);7.36(5H、s、Ph)。
13C NMR(CDCl;75MHz):21.43、22.30、22.68、29.43、30.08、30.37、30.43 and 32.39(5CH cHex and 3CH Lys);28.38 and 28.68(6CH Boc and t−Bu);34.73(CH2β);38.46(CH cHex);41.0(CHNH);52.33(CHN);52.92(CHα);59.25(CHα);66.90(CHO Hyp);75.48(CHPh);77.59(CH−O Hyp);80.71(C−O t−Bu);82.29(C−O t−Bu);128.46 and 128.86(5CH Ph);137.10(Cq Ph);155.89 and 156.86(2CO Boc and Z);171.61 and 172.87(CO amide and CO ester)。
MS(ESI;positive mode):1313.3[2M+Na];668.3[M+Na];646.1[MH]
HR MS(ESI;positive mode):668.38834[M+Na](calc.668.3887)。
【0150】
(4)Nα−Boc−トランス−4−Hyp(Bn)−ψ(CHNH)−Lys(Z)−OtBuの合成
下記に示す逆合成のスキームに従って、二重に保護された(doubly protected)トランス−4−ヒドロキシ−L−プロリンから誘導されたアルデヒドと保護されたリジンとの間の還元的アミノ化反応の方法によって、化合物4のアミノメチルアナログを合成した。
【0151】
【化17】

【0152】
この反応に用いた上記保護されたリジンは、市販のもの(Novabiochem参照番号04−12−5122)である。FehrentzおよびCastroの方法(Fehrentz J.-A., Castro B. Synthesis, 1983, 676-678, [29])に従って、市販の二重に保護されたトランス−4−ヒドロキシ−L−プロリン(Novabiochem参照番号04−10−0020)から誘導されたワインレブアミドの還元によって、上記アルデヒドを合成した。
【0153】
(4.1)Nα−Boc−トランス−4−Hyp(Bn)−N(OMe)Meの合成
FehrentzおよびCastroの方法([29])を、市販のNα−Boc−トランス−4−Hyp(Bn)−OH(Novabiochem参照番号04−10−0020)を用いて、66%の収率を有するワインレブアミド81の合成のために応用した。カップリング剤として用いられるBOP(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート)をTBTU(2−(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート)に置き換えた。
【0154】
【化18】

【0155】
(4R)−(ベンジロキシ)−N−(t−ブチロキシカルボニル)−N−メトキシ−N−メチルピロリジン−(2S)−アミド81
257μlのトリエチルアミン(1.83mmol;1eq)に続いて、586mgのTBTU(1.83mmol;1eq)を、市販のNα−Boc−トランス−4−Hyp(Bn)−OHの溶液に加えた。周囲温度にて5分間攪拌した後に、214mgのN,O−ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩(2.19mmol;1.2eq)を、さらなる309μlのトリエチルアミン(2.2mmol;1.2eq)とともに加えた。その反応を周囲温度にて24時間攪拌した。10mlのCHClを加え、その反応を以下に示す溶液:10%のHCl溶液、NaHCOの飽和溶液およびNaClの飽和溶液をそれぞれ用いて3回洗浄した。NaSOを用いて有機相を乾燥させ、濾過し、濃縮した。得られたおおよそ無色の油状の残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc/PE 50:50)によって精製した。生成物(1.063mmol;387mg)を黄色の油状の形態で得た。
IR(NaCl;film):3064 and 3031(νφCH);2975 and 2935(νCH);1736、1695 and 1683(νC=O);1455(νφC=C);1403 and 1367(δCH3t−Bu);1250(νC−C−O asym);1164(νO−C−C asym)。
H NMR(CDCl;300MHz):1.43 and 1.47(9H、2s、C(CHBoc 1st and 2nd conf.);2.04(1H、m、CHβ);2.38(1H、m、CHβ);3.21(3H、s、CHN);3.56−3.80(5H、m+2s、CHN and CHO 1st and 2nd conf.);4.19 and 4.26(1H、2m、CHα 1st and 2nd conf.);4.53(2H、m、CHPh);4.78 and 4.86(1H、2t、J=7.5Hz and J=7.3Hz、CHOBn 1st and 2nd conf.);7.34(5H、m、Ph)。
【0156】
(4.2)Nα−Boc−トランス−4−Hyp(Bn)−アールの合成
FehrentzおよびCastroの方法([29])に従って、水素化リチウムアルミニウムの存在下にてエチルエーテル中にて0℃で30分間にてワインレブアミド81を還元した。得られたアルデヒド82の収率は、69%であった。
【0157】
【化19】

【0158】
(4R)−(ベンジロキシ)−N−(t−ブチロキシカルボニル)ピロリジン−(2S)−アール82
6mlの無水のEtO溶解したNα−Boc−トランス−4−Hyp(Bn)−N(OMe)Me81の溶液(1mmol;360mg)を、氷浴にて冷却した50mgの水素化リチウムアルミニウム(1.25mmol;1.25eq)に滴下して加えた。上記混合溶液を0℃で30分間攪拌し、次いで0.3MのKHSO溶液5mlを用いて加水分解した。有機相を分離し、EtOを用いて水相を3回抽出した。エーテル相と組み合わせ、次いで以下の溶液:10%のHCl、NaHCOの飽和溶液およびNaClの飽和溶液をそれぞれ用いて3回洗浄した。最終的な有機相を無水のNaSOを用いて乾燥させ、濾過し、濃縮した。得られた黄色の油状の残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc/PE 40:60)によって精製した。生成物(0.688mmol;210mg)を帯黄色の油状の形態で得た。
IR(NaCl;film):3065 and 3032(νφCH);2978 and 2931(νCH);2715(νCHO);1738、1704 and 1694(νC=O);1455(νφC=C);1398 and 1367(δCH3t−Bu);1256(νC−C−O asym);1163(νO−C−C asym)。
H NMR(CDCl;300MHz):1.43 and 1.49(9H、2s、C(CHBoc 1st and 2nd conf.);1.98(1H、m、CHβ);2.28(1H、m、CHβ);3.55 and 3.81(2H、2m、CHN 1st and 2nd conf.);4.15(1H、m、CHα);4.25 and 4.36(1H、2m、CHOBn 1st and 2nd conf.);4.54(2H、systemAB、J=11.6Hz、CHPh);7.34(5H、m、Ph);9.45 and 9.57(1H、2d、J=3.7Hz and J=2.6Hz、CHO 1st and 2nd conf.)。
【0159】
(4.3)Nα−Boc−トランス−4−Hyp(Bn)−ψ(CHNH)−Lys(Z)−OtBuの合成
Martinezらが開示した方法(Martinez J., Bali J. P., Rodriguez M., Castro B., Magous R., Laur J., Lignon M-F. J. Med. Chem., 1985, 28(12), 1874-1879 [30] )と同一の方法に従って、市販の過剰量(1.2当量)の保護されたリジン(Novabiochem参照番号04−12−5122)とともにアルデヒド82を還元アミノ化反応に用いた。アミノメチルアナログ6を周囲温度にて1時間の反応の後に52%の収率にて得た。
【0160】
【化20】

【0161】
市販のNα−Boc−トランス−4−Hyp(Bn)−OH(Novabiochem参照番号04−10−0020)を用いた3つのステップにて、還元されたジペプチド6を24%の全収率にて得た。
【0162】
α−Boc−トランス−4−Hyp(Bn)−ψ(CHNH)−L−Lys(Z)−OtBu83
アルデヒド82(0.68mmol;207mg)を300mgの市販のH−Lys(Z)−OtBu.HCl(0.816mmol;1.2eq)を含む10mlのMeOH/CHCOOH(99:1)に溶解した。34mgのシアノ水素化ホウ素ナトリウム(0.554mmol;0.8eq)を、攪拌しながら少しずつ(in small portions)45分間にわたって加えた。周囲温度にて1時間攪拌した後に、丸底フラスコを氷で冷却した水の浴槽に浸し、次いで15mlのNaHCOの飽和溶液を加え、続いて20mlのEtOAcを加えた。有機相を分離し、10mlの水を用いて洗浄し、次いで無水のNaSOを用いて乾燥させ、濾過し、濃縮した。得られた油状の残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc/PE 40:60)によって精製した。生成物(0.350mmol;219mg)を帯黄色の油状の形態で得た。
Elemental analysis:Fpund C、66.91%;H、8.53%;N、6.77%。C3551 required C、67.17%;H、8.21%;N、6.71%。
IR(NaCl;film):3343(νNH);3065 and 3033(νφCH);2976 and 2933(νCH);1728、1716、1704、1694 and 1682(νC=O);1455(νφC=C);1394 and 1367(δCH3t−Bu);1247(νC−C−O asym);1162(νO−C−C asym)。
H NMR(CDCl;300MHz):1.46(9H、2s、C(CHBoc);1.35−1.68(6H、m、3CH Lys);2.11(2H、m、CH2β);2.65(2H、m、CHNH);3.19(2H、q、J=6.4Hz、CHNHZ);3.45(2H、m、CHN);3.91−4.14(2H、m、2CHα);4.49(2H、systemAB、J=13.3Hz、CHPh Hyp);4.80(1H、M、CHOBn);5.10(2H、s、CHPhZ);7.31−7.38(10H、m、2Ph)。
13C NMR(CDCl;75MHz):23.45(CH Lys);28.53 and 28.87(6CH Boc and t−Bu);30.07 and 33.65(2CH Lys);41.27(CH2β);51.13、51.31 and 51.96(3CHN);56.65(CHα);62.66(CHα);66.86(CHPh Hyp);71.25(CHPh Z);76.60(CH−O Hyp);79.96(C−O t−Bu);81.39(C−O t−Bu);128.06、128.51、128.82 and 128.91(10CH 2Ph);137.03(Cq Ph);138.52(Cq Ph);155.37 and 156.78(2CO Boc and Z);175.19(CO ester)。
MS(ESI;positive mode):626.2[MH];570.2[MH]−isobutene;514.1[MH]−2isobutene;470.3[MH]−2isobutene−CO
HR MS(ESI;positive mode):626.38092[MH](calc.626.3805)。
【0163】
〔実施例2〕化合物2、3、4、5および6の生物学的活性
(1)プロトコル
(1.1)細胞培養
pcDNA3.1発現ベクター(Invitrogen)にクリーニングしたBCRP(Robey R.W. et al. 2003, Br. J. Cancer 89(10) 1971-1978, [32])またはABCC1のいずれかを用いて、あるいは、空のpcDNA3.1ベクターを用いて、HEK−293ヒト繊維芽細胞株(ATCC cell collection CRL−1573)をトランスフェクトした。pHaMDR1/A(Cardarelli et al. 1995 Cancer Res 55 1086-1091, [33])を用いて、NIH3T3細胞株(ATCC CRL−1658)を安定的にトランスフェクトした。上記pHaMDR1/Aは、野生型のMDR1タンパク質を発現するレトロウイルスベクターである。pcDNA3.1発現ベクターにクリーニングしたMRP1または空のpcDNA3.1ベクターを用いて、BHK−21細胞株(ATCC CLL−10)をトランスフェクトした。10%のウシ胎仔血清および1%のペニシリン/ストレプトマイシンを補充したDMEM glutamax II(Invitrogen)中での培養にて上記細胞を維持した。Sigmaplot V11(http://www.systat.com/)およびIC50値を計算するための実験データの数学的な補正のための式:f=a×(1−exp(−b×x))(a=傾き、b=y軸上の切片)を用いて、上記のデータを処理した。
【0164】
(1.2)フローサイトメトリー
P−gp、BCRPおよびMRPを発現している細胞、ならびにそれらに対応するコントロールを、最初の2つのトランスポータについて10μMおよび2μMのミトキサントロンの存在下、ならびに3番目のトランスポータについて1μMのダウノルビシンの存在下にて置いた。種々の濃度の試験分子の存在下または非存在下にて、DMSO(ジメチルスルフォキシド)の最終濃度0.5%において、基質の集積を37℃で30分間行った。PBS(リン酸緩衝化生理食塩水)を用いて洗浄した後に、以前に試験した分子を同一の濃度を含む媒体中にて、上記細胞を37℃で1時間インキュベートした。ミトキサントロンの細胞内の蛍光およびダウノルビシン抗癌剤の細胞内の蛍光をFACscan flow cytometer(Becton Dickinson, Mountain, View, CA)を用いて測定した。上記薬物を488nmにて励起させた。ミトキサントロンの発光を650nmにて測定し、ダウノルビシンの発光を530nmにて測定した。試験分子の有効性を式1によって示した:有効性%=100×(F−FBG)/(F−FBG)、ここでFは、ABCG2を過剰発現した細胞にて測定された基質の細胞内レベルに対応し(インヒビタの非存在下における最も低い蛍光のレベルに対応する。)、Fは、空のベクターを用いてトランスフェクトしたコントロール細胞における蛍光に対応し(それによって細胞内の基質の最大の集積に対応する)、FBGは、基質の非存在下かつインヒビタの存在下にて測定された蛍光に対応する。
【0165】
(1.3)細胞毒性試験
96ウエルプレートにおいて1ウエルあたり10000の割合にて、上記細胞を植え付け、5%のCO下にて37℃で24時間インキュベートした。上記IC50の20倍まで化合物2、3、4、5および6の種々の濃度を次いで加えた。3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)を用いて細胞毒性を比色定量的に評価した。
【0166】
(2)結果
(2.1)P−gpの薬物排出活性に対する本発明の化合物の阻害効果
フローサイトメトリーによって、考慮されるポンプによって輸送される抗癌剤(すなわち、P−gpおよびBCRPについてのミトキサントロン、ならびにMRP1についてのダウノルビシン)の排出を測定することによって、上記化合物の阻害効果を定量化した。上記の値を参考用の製品であるレベルシン121の値と比較した。ミトキサントロンの排出の少なくとも80%をブロックする値について、この製品を10μMにて試験し、次いで2μMにて試験し、そしていくつかについて、図3に示されるように、50%阻害を生成する濃度の値であるIC50を定めるために、より完全な濃度範囲を試験した。図3は実際に、以下の化合物(レベルシン121、化合物3、化合物4、化合物5および化合物6)の濃度(μM)の関数としてミトキサントロンの排出を阻害する百分率を示す。対応する値を、以下の表2に示す。
【0167】
【表2】

【0168】
全ての化合物は活性であり、特にP−gpの抗癌剤排出活性を低減するための使用に適合性のある活性を示す。
【0169】
ほとんどの化合物が、10μMの濃度にてレベルシン121よりも活性であった。
【0170】
化合物3のP−gpにおけるIC50は、レベルシンのIC50よりも良好であり、レベルシンのIC50と同一オーダーの量であった。化合物3のBCRP阻害能およびMRP1阻害能は低いかまたはゼロであり、BCRPについては11.2%であり、MRP1については測定不可能であった。化合物4のIC50は、レベルシン121のIC50よりも2倍良好であり、なお低いかまたはゼロのBCRP阻害能およびMRP1阻害能を有していた。化合物6のIC50は、レベルシン121のIC50よりも7倍良好な値であった。
【0171】
(2.2)選択性
表2は、上記化合物がP−gpに対して特異的であり、そしてBCRPおよびMRP1に対してほとんど活性でないかまたは全く活性でないことを示しており、このことは、医療の観点にて、ほとんど毒性がない生成物を有し、その結果、所定の化学療法に対する耐性に関与しないトランシポータの生理学的役割を維持するという目的を成し遂げることを可能にする。
【0172】
(2.3)化学感受性
化学感受性を本願の図4に示す。図4は、投与されたミトキサントロンの濃度(μM)の関数として、P−gpを発現しているNIH313細胞の細胞生存率(▽、◇)またはP−gpを発現していないNIH313細胞の細胞生存率(○、□)を表し、そして化合物6の存在下でのNIH313細胞の細胞生存率(1μM、□、◇)または化合物6の非存在下でのNIH313細胞の細胞生存率(○、▽)を表す。
【0173】
同様の実験を化合物4を用いて行った。
【0174】
化合物4および6の非存在下にて、P−gpを発現している細胞は、P−gpを発現していない細胞よりも10倍以上耐性であった(▽を○と比較)。IC50の5倍に等しい濃度(例えば、化合物4について4μM、および化合物6について1μM)の添加は、用いた抗癌剤、ミトキサントロンに対する、P−gpを過剰発現した細胞の感受性を完全に回復させた。
【0175】
(2.4)細胞毒性
漸増濃度の化合物4および6を、P−gpを発現しているNIH3T3細胞またはP−gpを発現していないNIH3T3細胞にアプライした。細胞の生存を72時間後に測定し、細胞の生存を百分率として表した。細胞毒性を図5に示す。半数効果濃度(half−maximum−effect concentration)の10倍にて、上記の2つの化合物は毒性でなかった。これよりも高い濃度において、化合物4の毒性はごくわずかな程度を維持し、一方で化合物6の毒性は制限された程度を維持していた。
【0176】
したがって、この細胞毒性を欠くことは、哺乳動物にこれらの化合物の投与することに適合する。
【0177】
(2.5)阻害様式
図6は、化合物6による阻害のメカニズムが非競合性のタイプのメカニズムであることを示し、これは、特に右側のパネルにおける、ラインウィーバーバークの両辺逆数型(Lineweaver & Burke double reciprocal)の表示にて明らかである。蛍光ダウノルビシンの細胞内濃度を、化合物6の固定した値(0μM、0.12μM、0.22μM、0.44μMおよび10μM)の存在下または非存在下にて、ダウノルビシン濃度を増加させて測定した。上記値は、図3に従う排出阻害効果(0%、25%、50%、75%および100%)にそれぞれ対応する。両辺逆数型の表示(右側のパネル)は、直線が一点でx軸と交わった(cut)ことを示し、これは典型的な非競合型の阻害である。
【0178】
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34. Vogel’s textbook of practical organic chemistry, Vth edition, 1989, published by Longman Scientific & Technical。
【図面の簡単な説明】
【0179】
【図1】P−gpおよびBCRPの発現の、急性骨髄性白血病についての生存予測および寛解に対する影響を示す([12])。
【図2】化合物1,2,3,4,5および6、ならびにP−gpの排出機能に対するこれらの効果を示す。レベルシン121は参照化合物である([23], [27])。P−gp阻害率を、50%最大効果(IC50)についての濃度として示した。
【図3A】レベルシン121によるP−gpに輸送された抗癌剤であるニトザントロンの排出の阻害(パーセント)を示す。IC50値を、実験値の数学的処理によって取得し、表2に記録した。
【図3B】化合物3によるP−gpに輸送された抗癌剤であるニトザントロンの排出の阻害(パーセント)を示す。IC50値を、実験値の数学的処理によって取得し、表2に記録した。
【図3C】化合物5によるP−gpに輸送された抗癌剤であるニトザントロンの排出の阻害(パーセント)を示す。IC50値を、実験値の数学的処理によって取得し、表2に記録した。
【図3D】化合物4によるP−gpに輸送された抗癌剤であるニトザントロンの排出の阻害(パーセント)を示す。IC50値を、実験値の数学的処理によって取得し、表2に記録した。
【図3E】化合物6によるP−gpに輸送された抗癌剤であるニトザントロンの排出の阻害(パーセント)を示す。IC50値を、実験値の数学的処理によって取得し、表2に記録した。
【図4】化合物6を用いた、コントロールNIH3T3細胞(○、□)またはP−gpを発現するNIH3T3細胞(▽、◇)のミトザントロンに対する化学感受性を示す。漸増濃度(μM)のミトザントロン(MTX)が、化合物6の存在下または非存在下にて、P−gpを発現するNIH3T3細胞またはP−gpを発現しないNIH3T3細胞に適用された。細胞生存率をパーセントで示した。
【図5A】P−gpを発現するNIH3TS細胞(□)またはP−gpを発現しないNIH3T3細胞(○)に対する漸増濃度(μM)の化合物4の細胞毒性を示す。
【図5B】P−gpを発現するNIH3TS細胞(□)またはP−gpを発現しないNIH3T3細胞(○)に対する漸増濃度(μM)の化合物6の細胞毒性を示す。
【図6A】化合物6を用いた、P−gpによって生成されたダウノルビシン排出の阻害の動力学を示す。細胞内ダウノルビシンの経口を、漸増濃度の化合物6の存在下で測定し、結果を直接的に示した。排出阻害効果0%、25%、50%、75%および100%が、0μM(○)、0.12μM(▽)、0.22μM(□)、0.44μM(◇)、および10μM(上向きの△)にそれぞれ対応している。
【図6B】化合物6を用いた、P−gpによって生成されたダウノルビシン排出の阻害の動力学を示す。細胞内ダウノルビシンの経口を、漸増濃度の化合物6の存在下で測定し、結果をLineweaver & Burkeの二重回帰によって示した。排出阻害効果0%、25%、50%、75%および100%が、0μM(○)、0.12μM(▽)、0.22μM(□)、0.44μM(◇)、および10μM(上向きの△)にそれぞれ対応している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

(式中、Rは、−Bn、−COBn、−COcHexまたは−CHcHexを示し、Xは、−CHまたは−COを示し、Zは、ベンジロキシカルボニル基を示す。)
の化合物またはその塩の、医薬を調製するための、使用。
【請求項2】
前記医薬は、癌または感染症を処置することが意図されている、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記医薬は、癌または感染症の化学療法処置に対するアジュバントである、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記一般式(I)の構造の化合物は、約0.22μMの最大半分阻害濃度(IC50)を有している、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
前記医薬が、化学療法剤とともに投与される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記化学療法剤が抗癌剤または抗感染性剤である、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記医薬は、哺乳動物におけるABCB1排出タンパク質の活性を低減させることが意図されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記医薬は、薬学的に活性な物質に対する耐性を低減させることが意図されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の使用であって、
Rは−Bnを示しかつXは−CHを示す;
Rは−COBnを示しかつXは−COを示す;
Rは−COcHexを示しかつXは−COを示す;
Rは−Bnを示しかつXは−COを示す;または
Rは−CHcHexを示しかつXは−COを示す、使用。
【請求項10】
医薬として使用するための、請求項1に記載の一般式(I)の化合物またはその塩。
【請求項11】
癌または感染症の処置に使用するための、請求項1に記載の一般式(I)の化合物またはその塩。
【請求項12】
一般式(I)の化合物またはその塩および薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的組成物。
【請求項13】
一般式(I)の化合物の濃度が0.001〜500μMである、請求項12に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
化学療法剤をさらに含む、請求項12または13に記載の薬学的組成物。
【請求項15】
一般式(I)の化合物の、インビトロでABCB1排出ポンプを阻害するための使用。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【公表番号】特表2013−506707(P2013−506707A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532650(P2012−532650)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【国際出願番号】PCT/FR2010/052095
【国際公開番号】WO2011/042654
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(506066777)サントゥル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティ フィック セーエヌエールエス (22)
【出願人】(512089645)ウニヴェルシテ クロード ベルナール リヨン 1 (1)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE CLAUDE BERNARD LYON 1
【住所又は居所原語表記】43 Boulevard du 11 novembre 1918,F−69622 Villeurbanne Cedex,France
【Fターム(参考)】