説明

P2X7調節因子としてのオキサゾリジンおよびモルホリンカルボキサミド誘導体

本発明は、式(I):


(I)
で示される化合物またはその医薬上許容される塩に関する。該化合物または塩は、P2X7受容体機能を調節し、P2X7受容体でのATPの作用を拮抗しうる。本発明はまた、P2X7受容体によって媒介される障害、例えば、疼痛、炎症または神経変性疾患、特に、疼痛、例えば、炎症性疼痛、神経因性疼痛または内臓痛の治療または予防における、かかる化合物もしくは塩、またはその医薬組成物の使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、P2X7受容体機能を調節し、P2X7受容体でのATPの作用を拮抗しうる複素環アミド誘導体(「P2X7受容体アンタゴニスト」);その調製法;それらを含有する医薬組成物;および医薬としてのかかる化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
P2X7受容体は、造血系の細胞、例えば、マクロファージ、小グリア細胞、マスト細胞、およびリンパ球(TおよびB)中で発現するイオンチャネル内蔵型受容体であり(例えば、Colloら.Neuropharmacology,Vol.36,pp1277−1283(1997)を参照)、細胞外ヌクレオチド、特に、アデノシン三リン酸(ATP)により活性化される。P2X7受容体の活性化は、巨細胞形成、脱顆粒、細胞傷害性細胞死、CD62Lシェディング、細胞増殖の調節、および炎症性サイトカイン、例えば、インターロイキン1(IL−1β)および腫瘍壊死因子(TNFα)の放出に関与している(例えば、Hideら.Journal of Neurochemistry,Vol 75.,pp965−972(2000))。P2X7受容体はまた、抗原提示細胞、ケラチン生成細胞、耳下腺細胞、肝細胞、赤血球、赤白血病細胞、単球、線維芽細胞、骨髄細胞、ニューロン、および腎メサンギウム細胞に局在する。さらに、P2X7受容体は、中枢および末梢神経系におけるシナプス前終末で発現され、グリア細胞における放出を調節することが知られている(Anderson,C.ら.Drug.Dev.Res.,Vol.50,第92頁(2000))。
【0003】
これらの細胞からの重要な炎症性メディエータの放出能を伴う、免疫系の重要な細胞へのP2X7受容体の局在は、疼痛および神経変性障害を含む広範囲の疾患の治療におけるP2X7受容体アンタゴニストの役割の可能性を示唆する。最近の前臨床インビボ研究は、炎症性および神経因性疼痛両方におけるP2X7受容体に直接関与している(Dell’Antonioら,Neurosci.Lett.,327,pp87−90,2002。Chessell,IP.ら,Pain,114,pp386−396,2005)一方で、インビトロにおいて、P2X7受容体が皮膚ニューロンの小グリア細胞を調節するという証拠がある(Skaper,S.D.ら,Program No.937.7.2005 Abstract Viewer/Itinerary Planner.Washington,DC:Society for Neuroscience,2005.Online)。さらに、P2X7受容体のアップレギュレーションは、アルツハイマー病のマウスモデルにおけるβ−アミロイドプラーク周辺で観測されている(Parvathenani,L.ら.J.Biol.Chem.,Vol.278(15),pp.13309−13317,2003)。
【0004】
WO 02/00631 A2の調製例31および32(Fujisawa Pharmaceutical Co.,Ltd)は、N−ベンジル−((3S)−4−ベンジル−5−オキソモルホリン−3−イル)アミドの調製および合成的使用を開示する。EP 0 472 826 A2の参考例21(Kanebo Ltd)は、(S)−N−ベンジル−5−オキソ−3−モルホリンカルボキサミドの調製および合成的使用を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO 02/00631 A2
【特許文献2】EP 0 472 826 A2
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Colloら.Neuropharmacology,Vol.36,pp1277−1283(1997)
【非特許文献2】Hideら.Journal of Neurochemistry,Vol 75.,pp965−972(2000)
【非特許文献3】Anderson,C.ら.Drug.Dev.Res.,Vol.50,第92頁(2000)
【非特許文献4】Dell’Antonioら,Neurosci.Lett.,327,pp87−90,2002
【非特許文献5】Chessell,IP.ら,Pain,114,pp386−396,2005
【非特許文献6】Skaper,S.D.ら,Program No.937.7.2005 Abstract Viewer/Itinerary Planner.Washington,DC:Society for Neuroscience,2005.Online
【非特許文献7】Parvathenani,L.ら.J.Biol.Chem.,Vol.278(15),pp.13309−13317,2003
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、P2X7受容体機能を調節し、P2X7受容体でのATPの作用を拮抗しうる化合物(「P2X7受容体アンタゴニスト」)を提供する。
【0008】
本発明の第1の態様は、式(I):
【化1】

[式中:
は、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−6シクロアルキル、C3−6シクロアルキルメチル−、ピリジニルメチル−またはベンジル(そのいずれも、1、2または3個のハロゲン原子で所望により置換されていてもよい)、あるいは非置換フェニルを示し;
XはOまたは−(CR)−を示し;
Yは単結合またはOを示し;
ただし、XがOである場合、Yは単結合を示し、Xが−(CR)−である場合、YはOを示し;
およびRは、独立して、水素、C1−6アルキル、C6−10アリールメチル−またはC3−6シクロアルキルメチル−を示し、該C1−6アルキル、C6−10アリールメチル−またはC3−6シクロアルキルメチル−のいずれも、1、2または3個のハロゲン(例えば、フッ素)原子で所望により置換されていてもよく;
、RおよびRは、独立して、水素、フッ素またはメチルを示し;および
、R、R、R10およびR11は、独立して、水素、ハロゲン(例えば、フッ素または塩素)、シアノ、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−6シクロアルキルまたはフェニルを示し、該C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−6シクロアルキルまたはフェニルは、1、2または3個のハロゲン(例えば、フッ素)原子で所望により置換されていてもよく、あるいはR10およびR11は、それらが結合する炭素原子と一緒になって、1、2または3個のハロゲン(例えば、フッ素または塩素)原子で所望により置換されていてもよいベンゼン環を形成し;
ただし、RおよびR11の両方が水素またはフッ素から選択される場合、R、RおよびR10の少なくとも1つはハロゲン原子である]
で示される化合物またはその医薬上許容される塩を提供する。
【0009】
本発明の第2の態様は、医薬として用いるおよび/またはヒトもしくは動物薬として用いる、式(IA):
【化2】

[式中:
は、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−6シクロアルキル、C3−6シクロアルキルメチル−、ピリジニルメチル−またはベンジル(そのいずれも、1、2または3個のハロゲン原子で所望により置換されていてもよい)、あるいは非置換フェニルを示し;
XはOまたは−(CR)−を示し;
Yは単結合またはOを示し;
ただし、XがOである場合、Yは単結合を示し、Xが−(CR)−である場合、YはOを示し;
およびRは、独立して、水素、C1−6アルキル、C6−10アリールメチル−またはC3−6シクロアルキルメチル−を示し、該C1−6アルキル、C6−10アリールメチル−またはC3−6シクロアルキルメチル−のいずれも、1、2または3個のハロゲン(例えば、フッ素)原子で所望により置換されていてもよく;
、RおよびRは、独立して、水素、フッ素またはメチルを示し;および
、R、R、R10およびR11は、独立して、水素、ハロゲン(例えば、フッ素または塩素)、シアノ、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−6シクロアルキルまたはフェニルを示し、該C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−6シクロアルキルまたはフェニルのいずれも、1、2または3個のハロゲン(例えば、フッ素)原子で所望により置換されていてもよく、あるいはR10およびR11は、それらが結合する炭素原子と一緒になって、1、2または3個のハロゲン(例えば、フッ素または塩素)原子で所望により置換されていてもよいベンゼン環を形成し;
ただし、RおよびR11の両方が水素またはフッ素から選択される場合、R、RおよびR10の少なくとも1つはハロゲン原子であるか、またはR、RおよびR10の1つまではCF基である]
で示される化合物またはその医薬上許容される塩を提供する。
【0010】
具体的な実施態様において、式(IA)の化合物またはその塩では、RおよびR11の両方が水素またはフッ素から選択される場合、R、RおよびR10の少なくとも1つはハロゲン原子である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
式(I)の化合物またはその塩について本明細書に開示される、本発明の全ての実施態様、例えば、具体的なまたは好ましい特徴または態様(例えば、本発明の化合物もしくは塩および/または医薬組成物および/またはその使用の実施態様)はまた、表現のあらゆる必要な修正がされても、適当または可能な範囲まで、式(IA)の化合物またはその塩についても開示かつ示唆している。
【0012】
本明細書に用いられる、「アルキル」(基または基の一部として用いられる場合)なる語は、特定数の炭素原子を含有する直線状または分岐炭化水素鎖をいう。例えば、C1−6アルキルは、少なくとも1個、そして、最大で6個の炭素原子を含有する直線状または分岐炭化水素鎖を意味する。アルキルの例として、限定されるものではないが、メチル(Me)、エチル(Et)、n−プロピル、i−プロピル、n−ヘキシルおよびi−ヘキシルが挙げられる。
【0013】
本明細書に用いられる、「アルケニル」なる語は、特定数の炭素原子を含有する直線状または分岐炭化水素鎖をいい、少なくとも1個の炭素−炭素結合は二重結合である。アルケニルの例として、限定されるものではないが、エテニル、プロペニル、n−ブテニル、i−ブテニル、n−ペンテニルおよびi−ペンテニルが挙げられる。
【0014】
本明細書に用いられる、「アルキニル」なる語は、特定数の炭素原子を含有する直線状または分岐炭化水素鎖をいい、少なくとも1個の炭素−炭素結合は三重結合である。アルキニルの例として、限定されるものではないが、エチニル、プロピニル、ブチニル、i−ペンチニル、n−ペンチニル、i−ヘキシニルおよびn−ヘキシニルが挙げられる。
【0015】
「シクロアルキル」なる語は、特に明記しない限り、閉鎖3ないし6員の非芳香族環、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシルを意味する。
【0016】
本明細書に用いられる「アリール」なる語は、C6−10単環式または二環式炭化水素環をいい、少なくとも1個の環は芳香族である。かかる基の例として、フェニルおよびナフチルが挙げられる。
【0017】
本明細書に用いられる「ハロゲン」なる語は、特に明記しない限り、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素から選択される基を記載する。
【0018】
本発明が、置換基(例えば、X、Y、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10および/またはR11)の具体的な、好ましい、適当な、または他の実施態様の全ての可能な組合せ、例えば、実施態様が本明細書に記載される、異なる置換基の実施態様の全ての可能な組合せを包含および開示することを理解すべきである。
【0019】
本発明のある具体的な実施態様において、Rは、非置換C1−6アルキル(例えば、メチル、エチル、n−プロピルまたはi−プロピル)、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−6シクロアルキルまたはベンジルを示す。
【0020】
具体的な実施態様において、Rは、非置換メチル、エチルまたはベンジルを示す。
【0021】
好ましくは、Rは、非置換メチルまたはエチル(すなわち、メチルまたはエチル)を示す。
【0022】
本発明のある具体的な実施態様において、RおよびRは、独立して、水素または非置換C1−6アルキル、ベンジルまたはC3−6シクロアルキルメチル−を示す。
【0023】
好ましくは、RおよびRの両方は水素を示す。
【0024】
本発明の1の実施態様において、XはOを示し、Yは単結合を示す。本発明の別の実施態様において、Xは−(CR)−を示し、YはOを示す;その場合、好ましくは、Xは−CH−を示し、YはOを示す。
【0025】
本発明の具体的な実施態様において、RおよびRは、特に、両方とも水素を示しうる。具体的な実施態様において、Rは水素を示す。
【0026】
好ましくは、R、RおよびRの全ては水素を示す。
【0027】
本発明の具体的な実施態様において、R、R、R、R10およびR11は、独立して、水素、ハロゲン(例えば、フッ素または塩素)、シアノ、トリフルオロメチルまたは非置換C1−6アルキルを示すか;あるいはR10およびR11は、それらが結合する炭素原子と一緒になって、非置換ベンゼン環を示す。より具体的な実施態様において、R、R、R、R10およびR11は、独立して、水素、ハロゲン(例えば、フッ素または塩素)、シアノ、メチルまたはトリフルオロメチルを示すか;あるいはR10およびR11は、それらが結合する炭素原子と一緒になって、非置換ベンゼン環を形成する。さらにより具体的な実施態様において、R、R、R、R10およびR11は、独立して、水素、ハロゲン(例えば、フッ素または塩素)、メチルまたはトリフルオロメチルを示すか;あるいはR10およびR11は、それらが結合する炭素原子と一緒になって、非置換ベンゼン環を形成する。
【0028】
さらにより具体的な実施態様において、R、R、R、R10およびR11は、独立して、水素、塩素、フッ素、臭素、メチルまたはトリフルオロメチル;特に、水素、塩素、フッ素、メチルまたはトリフルオロメチルを示す。
【0029】
式(IA)の化合物またはその塩に関する、本明細書に記載の本発明の全ての実施態様において、RおよびR11の両方が水素またはフッ素から選択される場合、R、RおよびR10の少なくとも1つはハロゲン原子であるか、あるいはR、RおよびR10の1つまではCF基である。
【0030】
式(I)の化合物またはその塩に関する、本明細書に記載の本発明の全ての実施態様において、RおよびR11の両方が水素またはフッ素から選択される場合、R、RおよびR10の少なくとも1つはハロゲン原子である。
【0031】
式(I)もしくは(IA)の化合物またはその塩に関する、本明細書に記載の具体的な実施態様において、RおよびR11の両方が水素またはフッ素から選択される場合、R、RおよびR10の少なくとも1つはハロゲン原子であり、R、RおよびR10の1つまではCF基である。
【0032】
具体的な実施態様において、Rは水素であり、R11はフッ素または塩素であり、R、RおよびR10は、独立して、水素、塩素、フッ素またはトリフルオロメチルを示す。より具体的な実施態様において、Rは水素であり、R11はフッ素または塩素であり、R、RおよびR10の1つまたは2つ(例えば、2つ)は水素であり、R、RおよびR10の1つまたは2つ(例えば、1つ)は、独立して、塩素、フッ素またはトリフルオロメチルを示す。さらにより具体的な実施態様において、
、RおよびRは水素であり、R10はトリフルオロメチルであり、R11は塩素であるか、または
、RおよびR10は水素であり、RおよびR11は塩素であるか、または
、RおよびR10は水素であり、Rはフッ素であり、R11は塩素であるか、または
およびRは水素であり、R、R10およびR11はフッ素である。
【0033】
具体的な実施態様において、Rは水素であり、R11は塩素であり、R、RおよびR10は、独立して、水素、塩素、フッ素またはトリフルオロメチルを示す。より具体的な実施態様において、Rは水素であり、R11は塩素であり、R、RおよびR10の1つまたは2つ(例えば、2つ)は水素であり、R、RおよびR10の1つまたは2つ(例えば、1つ)は、独立して、塩素、フッ素またはトリフルオロメチルを示す。好ましい実施態様において、
、RおよびRは水素であり、R10はトリフルオロメチルであり、R11は塩素であるか、または
、RおよびR10は水素であり、RおよびR11は塩素であるか、または
、RおよびR10は水素であり、Rはフッ素であり、R11は塩素である。
【0034】
好ましくは、R、RおよびRは水素であり、R10はトリフルオロメチルであり、R11は塩素であるか、またはR、RおよびR10水素であり、RおよびR11は塩素である。
【0035】
より好ましくは、R、RおよびRは水素であり、R10はトリフルオロメチルであり、R11は塩素である。
【0036】
本発明の1の具体的な実施態様において、式(I)もしくは(IA)の化合物(式中: Rは、非置換メチル、エチルまたはベンジルを示し(特に、Rは、(非置換)メチルまたはエチルを示すことができ);
XはOまたは−CH−を示し;
Yは単結合またはOを示し;
ただし、XがOである場合、Yは単結合を示し、Xが−CH−である場合、YはOを示し;
、RおよびRの全ては水素を示し;および
、R、R、R10およびR11は、独立して、水素、塩素、フッ素、臭素、メチルまたはトリフルオロメチルを示すか、あるいはR10およびR11は、それらが結合する炭素原子と一緒になって、非置換ベンゼン環を形成し;
ただし、RおよびR11の両方が水素またはフッ素である場合、R、RおよびR10の少なくとも1つはハロゲン原子であり、R、RおよびR10の1つまではCF基である(式(I)においてまたは式(IA)の具体的な実施態様において、RおよびR11の両方が水素またはフッ素から選択される場合、R、RおよびR10の1つはハロゲン原子である))、またはその医薬上許容される塩が提供される。
【0037】
本発明の具体的な態様は、下記のおよび/または以下の名称で記載の、実施例E1ないしE10から選択される化合物を提供する。
【0038】
本発明の好ましい態様は、
(4S)−N−[(2−クロロ−4−フルオロフェニル)メチル]−3−エチル−2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−4−カルボキサミド(
【化3】

)、例えば、70%以上の鏡像体過剰率を有する(例えば、実施例1を参照)、または
N−{[2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−3−メチル−2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−4−カルボキサミド(
【化4】

)、または
N−{[2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−4−メチル−5−オキソ−3−モルホリンカルボキサミド(
【化5】

)。
【0039】
具体的な実施態様において、N−{[2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−3−メチル−2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−4−カルボキサミド(
【化6】

)は、(4R)−異性体、例えば、70%以上の鏡像体過剰率を有する(4R)−異性体(例えば、実施例3を参照);またはラセミ体;または好ましくは(4S)−異性体(
【化7】

)、好ましくは70%以上の鏡像体過剰率を有する(4S)−異性体(例えば、実施例4を参照)である。
【0040】
好ましい実施態様において、N−{[2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−4−メチル−5−オキソ−3−モルホリンカルボキサミド(
【化8】

)は、N−{[(1,1−ジメチルエチル)オキシ]カルボニル}−N−メチル−L−セリンから得られるかまたは調製される形態である(例えば、実施例10を参照)。
【0041】
本発明のさらに具体的な態様は、式(IB):
【化9】


[式中:
は、C1−4アルキルまたはC3−4シクロアルキルを示し、そのいずれも、1、2または3個のハロゲン(例えば、フッ素)原子で所望により置換されていてもよく、
X、Y、R、R、R、R、R、R、R、R、R10およびR11は、式(I)の化合物もしくはその塩または式(IA)の化合物もしくはその塩についての本明細書の記載と同義である]
で示される化合物またはその医薬上許容される塩を提供し、モル濃度が50%以上(例えば、70%以上、特に90%以上、例えば、95%以上)の式(IB)の化合物またはその医薬上許容される塩は、Rに結合した環炭素原子にて所定の立体化学を有する。
【0042】
具体的な実施態様において、式(IB)の化合物またはその医薬上許容される塩は、Rに結合した環炭素原子での所定の立体化学に関して、70%以上(例えば、80%以上、特に90%以上)の鏡像体過剰率を有する。
【0043】
具体的な実施態様において、式(IB)の化合物またはその塩では、Rは、非置換C1−4アルキルまたはC3−4シクロアルキル;より具体的には、(非置換)メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、シクロプロピル、またはシクロブチル;さらにより具体的には、(非置換)メチル、エチル、n−プロピルまたはi−プロピルを示す。
【0044】
最も具体的な実施態様には、式(IB)の化合物またはその塩では、Rは非置換メチルまたはエチルを示す。
【0045】
具体的な実施態様において、式(IB)の化合物またはその塩では、R、R、R、RおよびRの全てが水素を示す。
【0046】
式(I)の化合物またはその塩について本明細書に開示される、本発明の全ての実施態様、例えば、具体的なまたは好ましい特徴または態様(例えば、本発明の化合物もしくは塩および/または医薬組成物および/またはその使用の実施態様)はまた、表現のあらゆる必要な修正がされても、適当または可能な範囲まで、式(IB)の化合物またはその塩についても開示かつ示唆している。
【0047】
本発明の別の具体的な態様は、本明細書に記載の、式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩を提供し、ここで、該化合物または塩は、Rに結合した環炭素原子で実質上ラセミ体(例えば、ラセミ体)である。
【0048】
P2X7のアンタゴニストは、種々の疼痛状態(例えば、神経因性疼痛、慢性炎症性疼痛、および内臓痛)、炎症および神経変性、特に、アルツハイマー病を予防、治療または改善するのに有用でありうる。P2X7アンタゴニストはまた、関節リウマチおよび炎症性腸疾患の管理における有用な治療剤に寄与しうる。
【0049】
P2X7受容体機能を調節し、P2X7受容体でのATPの作用を拮抗しうる本発明の化合物または塩(「P2X7受容体アンタゴニスト」)は、P2X7受容体機能の競合的アンタゴニスト、逆アゴニスト、または負のアロステリック調節因子でありうる。
【0050】
式(I)のある化合物には、その酸付加塩を形成しうるものがある。当然のことながら、医薬用途について、式(I)の化合物は塩として使用することができ、その場合、該塩は医薬上許容されるべきである。医薬上許容される塩には、Berge, Bighley and Monkhouse, J. Pharm. Sci., 1977, 66, 1-19に記載されているものが含まれる。本発明の化合物が塩基性である場合、1の実施態様において、医薬上許容される塩は、医薬上許容される酸、例えば、無機酸または有機酸から、例えば、化合物と酸を混合することによって調製される。かかる酸には、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸などが含まれる。具体的な実施態様において、医薬上許容される酸は、ベンゼンスルホン酸、カンファースルホン酸、エタンスルホン酸、臭化水素酸、塩酸、メタンスルホン酸、硝酸、リン酸、硫酸またはp−トルエンスルホン酸である。
【0051】
医薬上許容される塩の例として、マレイン酸、フマル酸、安息香酸、アスコルビン酸、パモ酸、コハク酸、塩酸、硫酸、ビスメチレンサリチル酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、プロピオン酸、酒石酸、サリチル酸、クエン酸、グルコン酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、イタコン酸、グリコール酸、p−アミノ安息香酸、グルタミン酸、ベンゼンスルホン酸、シクロヘキシルスルファミン酸、リン酸および硝酸から形成されるものが挙げられる。
【0052】
式(I)の化合物またはその塩は、結晶形または非結晶形で調製され得、結晶形の場合、例えば、水和物として所望により溶媒和化されてもよい。本発明には、その範囲内に、化学量論的溶媒和物(例えば、水和物)および可変量の溶媒(例えば、水)を含有する化合物が包含される。
【0053】
式(I)の化合物またはその塩は、立体異性体(例えば、ジアステレオマーおよびエナンチオマー)として存在することができるものがあり、本発明は、これらの立体異性体の各々、およびラセミ化合物を包含するその混合物に及ぶ。異なる立体異性体は、常法により相互に分離されてもよく、または、立体特異的合成法または不斉合成法によって任意の所定の異性体を得てもよい。最終生成物の立体化学組成物がキラルHPLCにより(より具体的には、実施例に記載の方法(A)、(B)、(C)または(D)により)決定される例において、対応する立体特異的な名称および構造は、一般に、鏡像体過剰率(e.e.)が70%以上である最終生成物に配置されている。絶対立体化学の配置は、出発物質の既知のキラリティーに基づく。最終生成物の組成物がキラルHPLCにより特徴付けられない例において、最終生成物の立体化学は示されていない。しかしながら、化合物または塩の生成混合物の主成分のキラリティーは、一般に出発物質のキラリティーを示すことが期待されるであろう;および/または、鏡像体過剰率は、一般に用いられる合成法に依存するであろうし、類似の例を測定するものと同様である可能性がある(かかる一例が存在する場合)。したがって、1のキラル形態で示される化合物または塩は、適当な出発物質を用いて別のキラル形態で調製されうることが期待される。あるいは、ラセミ体出発物質を用いる場合、ラセミ生成物が製造され、単一のエナンチオマーが常法により分離されうることが期待されるであろう。本発明また、任意の互変異性体およびその混合物に及ぶ。
【0054】
本発明にはまた、同位体標識化合物が含まれ、それは、1個または複数の原子が最も一般的に自然界に見られる原子量または質量数とは異なる原子量または質量数を有する原子によって置き換えられるということ以外は式(I)記載のもの、またはその塩と同一である。本発明の化合物または塩の一部となりうる同位体の例として、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素、ヨウ素および塩素の同位体、例えば、3H、11C、14C、18F、123Iおよび125Iが挙げられる。
【0055】
上記同位体および/または他の原子の他の同位体を含有する本発明の化合物および該化合物の医薬上許容される塩は、本発明の範囲内にある。本発明の同位体標識化合物または塩、例えば、3H、14Cなどの放射性同位体が取り込まれているものは、薬物および/または基質組織分布アッセイにおいて有用である。トリチウム化同位体、すなわち、3H同位体、および炭素−14同位体、すなわち、14C同位体は、例えば、それらの調製および検出の容易性から所望により選択されうる。11C同位体および8F同位体は、一般にPET(陽電子放射型断層撮影法)において有用であり、125I同位体は、一般にSPECT(単一光子放射型コンピューター断層撮影法)において有用である。PETおよびSPECTは、脳画像診断において有用である。さらに、ジューテリウム、すなわち、2Hなどの重い同位体との置換は、より大きな代謝安定性から生じるある種の治療的利点、例えば、インビボ半減期の増大または必要量の減少をもたらすことができ、故に、選択されることがある。本発明の式(I)の同位体標識化合物またはその塩は、1の実施態様およびある場合において、同位体標識されていない試薬の代わりに容易に入手可能な同位体標識試薬を用いることによって下記のスキームおよび/または実施例に記載されている製法を実施することにより調製される。
【0056】
本発明のさらなる具体的な態様は、放射性同位体標識化合物または塩ではない式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩を提供する。具体的な実施態様において、化合物または塩は、同位体標識化合物または塩ではない。
【0057】
化合物の調製
【化10】

式(I)の化合物(式中:変数は上記と同義である)、ならびにその塩および溶媒和物は、本発明のさらなる態様を構成する下記の方法で調製されうる。
【0058】
本発明のさらなる態様にしたがって、式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩の調製法が提供され、以下の方法を含む:
(a)式(2)のカルボン酸(またはその活性誘導体)と式(3)のアミンとのカップリング(スキーム1を参照)、ここで、X、Y、R、R、R、R、R、R、R、R10、およびR11は上記と同義である。化合物(2)および(3)は所望により保護されていてもよい。
(b)ジクロロメタンなどの適当な溶媒中0℃〜70℃などの適当な温度での式(4)のアミドとホスゲン(または同等の試薬、例えば、トリホスゲン)および適当な塩基、例えば、トリエチルアミンとの反応(スキーム2を参照)、ここで、R、R、R、R、R、R、R、R10およびR11は上記と同義である。化合物(4)は所望により保護されていてもよい。この種の方法は、化学文献にすでに記載されている。
(c)式(4)のアミドと式(5)の試薬との反応およびテトラヒドロフランなどの適当な溶媒中室温などの適当な温度での適当な塩基、例えば、トリエチルアミンでの初期処理、次いで、エタノールまたはイソプロピルアルコールなどの適当な溶媒中室温などの適当な温度での別の適当な塩基、例えば、水酸化カリウムでの処理(スキーム3を参照)、ここで、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10およびR11は上記と同義である。LおよびLは、適当な脱離基、例えば、ハロゲン(例えば、臭素)である。化合物(4)は所望により保護されていてもよい。この種の方法は、化学文献にすでに記載されている。
(d)保護されている式(I)の化合物の脱保護。保護基の例およびその除去手段は、T.W.GreeneおよびP.G.M.Wuts 「Protective Groups in Organic Synthesis」(J.Wiley and Sons,第3版.1999)で見出されうる。
(e)式(I)の化合物の式(I)の他の化合物への相互変換。通常の相互変換法の例として、エピマー化、酸化、還元、アルキル化、芳香族置換、求核置換、アミドカップリングおよびエステル加水分解が挙げられる。
【化11】

【0059】
式(2)の酸および式(3)のアミンのカップリングは、典型的には、DMFおよび/またはジクロロメタンなどの適当な溶媒中適当な温度、例えば、0℃〜室温での活性剤、例えば、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩またはポリマー担体カルボジイミド、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)または1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAt)、および所望の適当な塩基、例えば、第三級アルキルアミン(例えば、ジイソプロピルエチルアミン、N−エチルモルホリン、トリエチルアミン)またはピリジンの使用を含む。あるいは、(2)および(3)のカップリングは、ジメチルホルムアミドなどの適当な溶媒中室温などの適当な温度でのO−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェートおよび適当な第三級アルキルアミン、例えば、ジイソプロピルエチルアミンでの処理により達成されうる。あるいは、式(2)の化合物は、活性誘導体(例えば、酸塩化物、混合無水物、活性エステル(例えば、O−アシル−イソウレア))として用いられてもよく、かかる場合に、方法(a)は、典型的には、該活性誘導体のアミンでの処理を含む(Ogliaruso,M.A.;Wolfe,J.F.のThe Chemistry of Functional Groups(Ed.Patai,S.) Suppl.B:The Chemistry of Acid Derivatives,Pt.1(John Wiley and Sons,1979),pp442−8;Beckwith,A.L.J.のThe Chemistry of Functional Groups(Ed.Patai,S.) Suppl.B:The Chemistry of Amides(Ed.Zabricky,J.)(John Wiley and Sons,1970),pp 73 ff)。
【化12】

【化13】

【0060】
式(2)および(4)の化合物の具体的な調製法は、以下のスキーム4〜6に示される:
【化14】

[式中:R、R、R、およびRは上記と同義である。Pは適当な保護基、例えば、C1−6アルキルを示し、Lは適当な脱離基、例えば、ハロゲン(例えば、臭素またはヨウ素)を示す]
【0061】
工程(i)は、典型的には、テトラヒドロフランなどの適当な溶媒中室温〜70℃の適当な温度での(6)のホスゲンまたは適当な同等物(例えば、トリホスゲン)での処理を含む。
【0062】
工程(ii)は、典型的には、ジメチルホルムアミドなどの適当な溶媒中0℃〜室温などの適当な温度での(7)の塩基、例えば、水素化ナトリウムおよびアルキル化剤(8)、例えば、ハロゲン化アルキルでの処理を含む。
【0063】
脱保護工程(iii)は、典型的には、カルボン酸エステルの酸への転換の標準的製法、例えば、メタノールなどの適当な溶媒中0℃などの適当な温度での適当な水酸化物塩(例えば、水酸化ナトリウム)の使用を含む。
【0064】
【化15】

[式中:R、R、R、R、R、およびRは上記と同義である。LおよびLは、適当な脱離基、例えば、ハロゲン(例えば、塩素、臭素またはヨウ素)を示す]
【0065】
工程(i)は、典型的には、水およびテトラヒドロフランの混合液などの適当な溶媒中−5℃〜室温などの適当な温度での(10)の適当な塩基、例えば、炭酸カリウムおよび(5)での処理を含む。
【0066】
【化16】

[式中:R、R、R、R、R、R、R、R10、およびR11は上記と同義である。Pは適当なアミン保護基、例えば、C1−4アルコキシカルボニルを示す。]
【0067】
工程(i)は、典型的には、ジクロロメタンなどの適当な溶媒中室温などの適当な温度で適当な活性化剤、例えば、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩および1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)または2−エトキシ−1−エトキシカルボニル−1,2−ジヒドロキノリンを用いて、式(11)のカルボン酸(またはその活性誘導体)を式(3)のアミンとカップリングすることを含む(上記スキーム1を参照)。
【0068】
脱保護工程(ii)は、典型的には、アルコキシカルボニル保護アミンの対応する遊離アミンへの転換の標準的製法、例えば、ジクロロメタンなどの適当な溶媒中室温などの適当な温度での適当な酸(例えば、トリフルオロ酢酸またはジエチルエーテル中1M塩化水素)の使用を含む。
【0069】
一般式(3)、(5)、(6)、(8)、(10)、および(11)の化合物は、典型的には、商業業者から入手可能であるかまたは化学文献に記載の方法を用いて(または類似の方法を用いて)当業者により調製されうる。
【0070】
関連性がある場合、医薬上許容される塩は、例えば、適当な酸または酸誘導体との反応により慣習上調製されうる。
【0071】
臨床的適応
本発明の化合物または医薬上許容される塩は、P2X7受容体機能を調節し、P2X7受容体でのATPの作用を拮抗しうる(P2X7受容体アンタゴニスト)ので、それらは、急性疼痛、慢性疼痛、慢性関節痛、筋骨格痛、神経因性疼痛、炎症性疼痛、内臓痛、癌に伴う疼痛、偏頭痛に伴う疼痛、緊張型頭痛および群発性頭痛、機能性腸障害に伴う疼痛、腰部頚部疼痛、捻挫および筋挫傷に伴う疼痛、交感神経的に維持されている疼痛;筋炎、インフルエンザまたは感冒などの他のウイルス感染症に伴う疼痛、リウマチ熱に伴う疼痛、心筋虚血に伴う疼痛、術後痛、癌化学療法、頭痛、歯痛および月経困難症を含む、疼痛の治療に有用でありうると考えられる。
【0072】
慢性関節痛状態には、関節リウマチ、変形性関節症、リウマチ様脊椎炎、痛風関節炎および若年性関節炎が含まれる。
【0073】
機能性腸障害に伴う疼痛には、非潰瘍性胃腸障害、非心臓性胸痛および過敏性腸症候群が含まれる。
【0074】
神経因性疼痛症候群には、糖尿病性ニューロパシー、坐骨神経痛、非特異的腰痛、三叉神経痛、多発性硬化症痛、線維筋痛症、HIV関連ニューロパシー、ヘルペス後神経痛、三叉神経痛、および、身体外傷、切断、幻肢症候群、脊髄手術、癌、毒または慢性炎症性症状により生じる疼痛が含まれる。さらに、神経因性疼痛状態には、「ピリピリした感覚(pins and needles)」などの通常は無痛の感覚に伴う痛み(知覚異常および異常感覚)、触れられた時の感受性の増大(知覚過敏)、無害な刺激後の痛い感覚(動的、静的、熱的または冷感異痛症)、侵害性刺激に対する感受性の増大(熱的、冷感、機械的痛覚過敏症)、刺激の除去後の痛みの感覚の継続(痛覚過敏)または選択的感覚経路の不在または欠損(痛覚鈍麻)が含まれる。
【0075】
本発明の化合物または医薬上許容される塩により処置される可能性のある他の病態には、発熱、炎症、免疫疾患、血小板機能異常疾患(例えば、閉塞性血管疾患)、インポテンスまたは勃起不全;異常な骨代謝または再吸収を特徴とする骨疾患;非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)およびシクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)阻害剤の血行動態的副作用、心血管疾患;神経変性疾患および神経変性、外傷後神経変性、耳鳴、オピオイド(例えば、モルヒネ)、CNS抑制剤(例えば、エタノール)、覚醒剤(例えば、コカイン)およびニコチンなどの依存症誘発性薬剤に対する依存症;I型糖尿病の合併症、腎機能障害、肝機能障害(例えば、肝炎、肝硬変)、胃腸障害(例えば、下痢)、結腸癌、過活動膀胱および切迫性尿失禁が含まれる。うつ病およびアルコール依存症はまた、本発明の化合物または医薬上許容される塩によって治療される可能性がある。
【0076】
炎症症状には、皮膚症状(例えば、日焼け、火傷、湿疹、皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、乾癬)、髄膜炎、眼疾患、例えば、緑内障、網膜炎、網膜症、ブドウ膜炎、および眼組織に対する急性損傷(例えば、結膜炎)、炎症性肺障害(例えば、喘息、気管支炎、肺気腫、アレルギー性鼻炎、呼吸窮迫症候群、ハト愛好家病、農夫肺、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気道過敏症);胃腸管障害(例えば、アフタ性潰瘍、クローン病、アトピー性胃炎、疣状胃炎(gastritis varialoforme)、潰瘍性大腸炎、セリアック病、限局性回腸炎、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、胃腸逆流症);臓器移植、ならびに血管疾患、偏頭痛、結節性動脈周囲炎、甲状腺炎、再生不良性貧血、ホジキン病、強皮症、重症無筋力症、多発性硬化症、サルコイドーシス、ネフローゼ症候群、ベーチェット症候群、歯肉炎、心筋虚血、発熱、全身性紅斑性狼瘡、多発性筋炎、腱炎、滑液包炎およびシェーグレン症候群などの炎症性要素を有する他の症状が含まれる。
【0077】
免疫疾患には、自己免疫疾患、免疫不全疾患または臓器移植が含まれる。
【0078】
異常な骨代謝または再吸収を特徴とする骨疾患には、骨粗鬆症(特に、閉経後骨粗鬆症)、高カルシウム血症、副甲状腺機能亢進症、パジェット骨疾患、骨溶解症、骨転移を伴うか伴わない悪性高カルシウム血症、関節リウマチ、歯周炎、変形性関節症、骨痛、骨減少症、癌性悪液質、結石症(calculosis)、結石症(lithiasis)(特に、尿路結石症)、固形癌、痛風および強直性脊椎炎、腱炎および滑液包炎が含まれる。
【0079】
心臓血管疾患には、高血圧または心筋虚血;アテローム性動脈硬化症;機能性または器質性静脈不全;静脈瘤療法;痔;および動脈圧の著しい低下に伴うショック状態(例えば、敗血症性ショック)が含まれる。
【0080】
神経変性疾患には、認知症、特に、変性認知症(老人性認知症、レビー小体型認知症、アルツハイマー病、ピック病、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病およびクロイツフェルト・ヤコブ病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)および運動ニューロン疾患を含む);血管性認知症(多発脳梗塞性認知症を含む);ならびに、頭蓋内占拠性病変、外傷、感染症および関連症状(HIV感染症、髄膜炎および帯状疱疹を含む)、代謝、毒素、無酸素症およびビタミン欠乏症に伴う認知症;および加齢に伴う軽度認知機能障害、特に加齢に伴う記憶障害が含まれる。
【0081】
式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩はまた、神経保護薬として、および、脳卒中、心停止、肺バイパス、外傷性脳障害、脊髄損傷などの外傷後の神経変性の治療において有用でありうる。
【0082】
本発明の化合物またはその医薬上許容される塩はまた、悪性細胞増殖および/または転移、ならびに筋芽細胞性白血病の治療に有用でありうる。
【0083】
1型糖尿病の合併症には、糖尿病性微小血管症、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、黄斑変性症、緑内障、ネフローゼ症候群、再生不良性貧血、ブドウ膜炎、川崎病およびサルコイドーシスが含まれる。
【0084】
腎機能障害には、腎炎、糸球体腎炎、特に、メサンギウム増殖性糸球体腎炎および腎炎症候群が含まれる。
【0085】
治療への言及は、他に明示的に記載しない限り、確立された症状の治療および予防的治療の両方を包含すると理解すべきである。
【0086】
したがって、本発明のさらなる態様によれば、本発明者らは、医薬としておよび/またはヒトまたは動物薬として用いる式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩を提供する。
【0087】
本発明の別の態様によれば、本発明者らは、例えば、哺乳動物、例えば、ヒトまたは齧歯動物、例えば、ヒトまたはラット、例えば、ヒトにおける、P2X7受容体によって調節される病態、例えば、本明細書に記載の病態または疾患(特に、疼痛、炎症または神経変性疾患、より具体的には、疼痛、例えば、炎症性疼痛、神経因性疼痛または内臓痛)の治療または予防(例えば、処置)に用いる式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩を提供する。
【0088】
本発明のさらなる態様によれば、本発明者らは、P2X7受容体によって媒介される病態[例えば、本明細書に記載の病態または疾患(特に、疼痛、炎症または神経変性、より具体的には、疼痛、例えば、炎症性疼痛、神経因性疼痛または内臓痛)]に罹患している、ヒトまたは動物(例えば、齧歯動物、例えば、ラット)対象、例えば、ヒト対象の治療方法であって、有効量の式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩を該対象に投与することを含む方法を提供する。
【0089】
本発明のさらなる態様によれば、本発明者らは、疼痛、炎症、免疫疾患、骨疾患または神経変性疾患(特に、疼痛、炎症または神経変性疾患、より具体的には、疼痛、例えば、炎症性疼痛、神経因性疼痛または内臓痛)に罹患している、ヒトまたは動物(例えば、齧歯動物、例えば、ラット)対象、例えば、ヒト対象の治療方法であって、有効量の式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩を該対象に投与することを含む方法を提供する。
【0090】
本発明のよりさらなる態様によれば、本発明者らは、炎症性疼痛、神経因性疼痛または内臓痛に罹患している、ヒトまたは動物(例えば、齧歯動物、例えば、ラット)対象、例えば、ヒト対象の治療方法であって、有効量の式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩を該対象に投与することを含む方法を提供する。
【0091】
本発明のさらなる態様によれば、本発明者らは、アルツハイマー病に罹患している、対象、例えば、ヒト対象の治療方法であって、有効量の式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩を該対象に投与することを含む方法を提供する。
【0092】
本発明の別の態様によれば、本発明者らは、例えば、ヒトまたは齧歯動物などの哺乳動物、例えば、ヒトまたはラット、例えば、ヒトにおける、P2X7受容体の作用によって媒介される病態、例えば、本明細書に記載の病態または疾患(特に、疼痛、炎症または神経変性疾患、より具体的には、疼痛、例えば、炎症性疼痛、神経因性疼痛または内臓痛)の治療または予防(例えば、処置)のための医薬の製造のための式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩の使用を提供する。
【0093】
本発明の別の態様によれば、本発明者らは、例えば、哺乳動物、例えば、ヒトまたは齧歯動物、例えば、ヒトまたはラット、例えば、ヒトにおける、疼痛、炎症、免疫疾患、骨疾患または神経変性疾患(特に、疼痛、炎症または神経変性疾患、より具体的には、疼痛、例えば、炎症性疼痛、神経因性疼痛または内臓痛)の治療または予防(例えば、処置)のための医薬の製造のための式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩の使用を提供する。
【0094】
本発明の別の態様によれば、本発明者らは、例えば、哺乳動物、例えば、ヒトまたはラット、例えば、ヒトまたはラット、例えば、ヒトにおける、炎症性疼痛、神経因性疼痛または内臓痛の治療または予防(例えば、処置)のための医薬の製造のための式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩の使用を提供する。
【0095】
本発明の1の態様において、本発明者らは、哺乳動物、例えば、ヒトまたは齧歯動物、例えば、ヒトまたはラット、例えば、ヒトにおける、アルツハイマー病の治療または予防(例えば、処置)のための医薬の製造のための式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩の使用を提供する。
【0096】
ヒトまたは他の哺乳動物の治療に式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩を使用するためには、通常、医薬組成物として標準的調剤業務にしたがって処方される。したがって、本発明の別の態様において、ヒトまたは動物薬としての使用に適した、式(I)の化合物、またはその医薬上許容される塩を含む医薬組成物が提供される。
【0097】
医薬として式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩を使用するためには、通常、標準的調剤業務にしたがって医薬組成物に処方されるであろう。
【0098】
本発明はまた、式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩、および所望により医薬上許容される担体または賦形剤を含む、医薬組成物を提供する。
【0099】
医薬組成物は、本明細書に記載の、治療方法または使用または治療もしくは予防に用いるためのものであってもよい。
【0100】
例えば、常温および大気圧で混合することによって調製されてもよい、本発明の医薬組成物は、通常、経口投与、非経口投与または直腸投与に適している。医薬組成物は、それ自体、錠剤、カプセル剤、経口液体製剤、散剤、顆粒剤、ロゼンジ剤、復元用散剤、注射用もしくは注入用液剤もしくは懸濁剤、または坐剤の剤形であってもよい。一般的に、経口投与用組成物が好ましい。
【0101】
経口投与用の錠剤およびカプセル剤は、単位投与形態であってもよく、通常の賦形剤、例えば、結合剤、充填剤、錠剤化潤滑剤、崩壊剤および/または許容される湿潤剤を含有していてもよい。錠剤は、例えば、通常の調剤業務にて周知の方法にしたがって被覆されうる。
【0102】
経口液体製剤は、例えば、水性または油性懸濁剤、液剤、乳剤、シロップ剤またはエリキシル剤の剤形であってもよく、または、使用前に水または他の好適なビヒクルで復元するための乾燥製剤の剤形であってもよい。かかる液体製剤は、通常の添加剤、例えば、懸濁化剤、乳化剤、非水性ビヒクル(食用油を含んでいてもよい)、保存剤、および必要に応じて、通常の香味剤または着色料を含有していてもよい。
【0103】
非経口投与について、流動性の単位投与剤形は、本発明の化合物またはその医薬上許容される塩および滅菌ビヒクルを使用して調製される。1の具体的な実施態様において、該化合物または塩は、ビヒクルおよび使用濃度に依存して、ビヒクルに懸濁または溶解される。液剤を調製する際には、該化合物または塩を、例えば、注射用に溶解し、濾過滅菌した後、適当なバイアルまたはアンプルに充填し、密封することができる。1の実施態様において、アジュバント(複数)、例えば、局所麻酔剤、保存剤および/または緩衝剤がビヒクルに溶解される。安定性を増強するために、該組成物を、例えば、バイアルに充填した後に冷凍し、水分を真空除去することができる。非経口懸濁剤は、典型的には、化合物または塩が、典型的には、ビヒクルに溶解される代わりに懸濁されることおよび滅菌が濾過によっては通常行えないこと以外は実質的に同一の方法で調製される。該化合物または塩は、例えば、滅菌ビヒクルに懸濁させる前にエチレンオキシドへの暴露によって滅菌されうる。具体的な実施態様において、本発明の化合物または塩の均一な分布を促進するために該組成物に界面活性剤または湿潤剤が含まれる。
【0104】
1の実施態様において、組成物は、例えば、投与方法によって、活性物質(本発明の化合物または医薬上許容される塩)を0.1重量%〜99重量%、特に、10重量%〜60重量%含有する。
【0105】
上記障害/疾患/病態の治療または予防(例えば、処置)に使用される化合物または医薬上許容される塩の投与量は、通常通り、障害の重篤度、患者の体重、および/または他の同様のファクターによって異なっていてもよい。しかしながら、一般的指針として、1の実施態様において、本発明の化合物または医薬上許容される塩の、0.05〜1000mg、例えば、0.05〜200mg、例えば、20〜40mgの単位投与量(化合物として測定)を、1の実施態様において、用いてもよい。1の実施態様において、かかる単位投与量は、例えば、ヒトなどの哺乳動物に1日1回投与されるか;あるいは、かかる単位投与量は、ヒトなどの哺乳動物に1日1回以上(例えば、2回)投与されうる。かかる療法は、数週間または数ヶ月に及んでいてもよい。
【0106】
組合せ
式(I)の化合物またはその塩は、他の治療剤、例えば、上記障害の治療に有用であるかまたはありうる医薬と組み合わせて用いられてもよい。
【0107】
他の治療剤の適当な例として、WO 2007/008155およびWO 2007/008157に記載の、呼吸器障害(例えば、喘息および慢性閉塞性肺疾患(COPD))の治療のための、β2アゴニスト(β2アドレナリン受容体作動薬としても既知、例えば、フォルモテロール)および/またはコルチコステロイド(例えば、ブデソニド、フルチカゾン(例えば、プロピオン酸またはフロ酸エステル)、モメタゾン(例えば、フロ酸塩として)、ベクロメタゾン(例えば、17−プロピオン酸または17,21−ジプロピオン酸エステル)、シクレソニド、トライアムシナロン(例えば、アセトニドとして)、フルニソリド、ロフレポニド、およびブチキソコルト(例えば、プロピオン酸エステルとして)が挙げられうる。
【0108】
さらなる治療剤には、WO 2006/083214に記載の心血管障害(例えば、アテローム性動脈硬化症)の治療のための、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル コエンザイムA(HMG CoA)レダクターゼ阻害薬(例えば、アトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、およびシンバスタチン)が含まれうる。
【0109】
さらなる治療剤には、WO 2005/025571に記載の炎症疾患または障害(例えば、関節リウマチまたは変形性関節症)の治療のための、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID;例えば、イブプロフェン、ナプロキセン、アスピリン、セレコキシブ、ジクロフェナク、エトドラク、フェノプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラック、オキサプロジン、ナブメトン、スリンダク、トルメチン、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、ルミラコキシブ、メロキシカム、エトリコキシブおよびパレコキシブ)が含まれうる。
【0110】
さらなる治療剤には、WO 2004/105798に記載の炎症疾患または障害(例えば、関節リウマチまたは変形性関節症)の治療のための、腫瘍壊死因子α(TNFα)阻害薬(例えば、エタネルセプトまたは抗TNFα抗体、例えば、インフリキシマブおよびアダリムマブ)が含まれうる。
【0111】
さらなる治療剤には、WO 2004/105797に記載の炎症疾患または障害(例えば、関節リウマチ)の治療のための、2−ヒドロキシ−5−[[4−[(2−ピリジニルアミノ)スルホニル]フェニル]アゾ]安息香酸(スルファサラジン)が含まれうる。
【0112】
さらなる治療剤には、WO 2004/105796に記載の炎症疾患または障害(例えば、関節リウマチ)の治療のための、N−[4−[[(2,4−ジアミノ−6−プテリジニル)メチル]メチルアミノ]ベンゾイル]−L−グルタミン酸(メトトレキサート)が含まれうる。
【0113】
さらなる治療剤には、WO 2004/073704に記載の炎症疾患または障害(例えば、関節リウマチ)の治療のための、プロTNFα変換酵素(TACE)の阻害薬が含まれうる。
【0114】
さらなる治療剤には、WO 2006/003517に記載のIL−1媒介疾患(例えば、関節リウマチ)の治療のための、
a)スルファサラジン;
b)スタチン、例えば、アトルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチン、セリバスタチン、クリルバスタチン、ダルバスタチン、ロスバスタチン、テニバスタチン、フルインドスタチン、ベロスタチン、ダルバスタチン、ニスバスタチン、ベルバスタチン、ピタバスタチン、リバスタチン、グレンタスタチン、エプタスタチン、テニバスタチン、フルラスタチン、ロスバスタチンまたはイタバスタチン;
c)グルココルチコイド剤、例えば、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロンおよびヒドロコルチゾン;
d)p38キナーゼ阻害薬;
e)抗IL−6受容体抗体;
f)アナキンラ;
g)抗IL−1モノクローナル抗体;
h)JAK3プロテインチロシンキナーゼ阻害薬;
i)抗マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)モノクローナル抗体;または
j)抗CD20モノクローナル抗体、例えば、リツキシマブ、PRO70769、HuMax−CD20(Genmab AJS)、AME−133(Applied Molecular Evolution)、またはhA20(Immunomedics,Inc.)が含まれうる。
【0115】
化合物が他の治療剤と組み合わせて用いられる場合、組成物は、任意の便利な経路で連続してまたは同時に投与されうる。
【0116】
したがって、本発明は、さらなる態様において、式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩とさらなる治療剤(複数)、例えば、本明細書に記載のものを一緒に含む組合せを提供する。
【0117】
上記の組合せは、都合のよいことに、医薬処方の形態での使用を示しうるので、上記組合せと医薬上許容される担体または賦形剤を一緒に含む医薬処方は、本発明のさらなる態様を包含する。かかる組合せの個々の成分は、個々のまたは合した医薬処方で連続してまたは同時に投与されうる。
【0118】
式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩が、同一の病状に対して活性である第2治療剤と組み合わせて用いられる場合、各化合物の投与量は、化合物が単独で用いられる場合と異なっていてもよい。
【0119】
以下の記載例および実施例は、本発明の化合物の調製を説明するものであるが、限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0120】
本発明の化合物の調製のための一般法(a)〜(e)は、上記のスキーム1〜6に記載の合成法に加えて、以下の実施例によりさらに説明される。
【0121】
実施例1 N−[(2−クロロ−4−フルオロフェニル)メチル]−3−エチル−2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−4−カルボキサミド(E1)
【化17】

[(2−クロロ−4−フルオロフェニル)メチル]アミン(0.307ml、2.4mmol)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(0.458g、2.4mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(0.323g、2.4mmol)、およびN−エチルモルホリン(1.18ml、9.18mmol)を、ジクロロメタン(25ml)中粗3−エチル−2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−4−カルボン酸(0.292g、約1.84mmol、下記のとおりに調製)に加えた。混合物を、アルゴン雰囲気下室温で一晩攪拌した。次いで、混合物を、さらにジクロロメタン(25ml)で希釈し、飽和水性炭酸水素ナトリウム(50ml)で洗浄した。有機層を、疎水性フリットに通して濾過し、次いで、蒸発乾固し、白色固体/ゴムを得た。粗物質を、ジエチルエーテルでトリチュレートし、次いで、乾燥し、黄色固体を得た(0.291g)。次いで、該物質を、フラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(それぞれ、200mlのジクロロメタンおよびメタノールの95:5混合液で溶出)に付してさらに精製し、乾燥後、白色固体としてN−[(2−クロロ−4−フルオロフェニル)メチル]−3−エチル−2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−4−カルボキサミドを得た(0.167g)。LC/MS [M+H]=301、保持時間=2.20分。
鏡像体過剰率=70.1%、キラルクロマトグラフィー方法Dにより測定、(4S)−N−[(2−クロロ−4−フルオロフェニル)メチル]−3−エチル−2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−4−カルボキサミド(
【化18】

)を示す、保持時間=10.01分
【0122】
上記の製法で用いられる3−エチル−2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−4−カルボン酸を、以下のとおりに調製した:
(i)トリホスゲン(1.9g、6.43mmol)のテトラヒドロフラン(6ml)中溶液を、アルゴン下室温でL−セリンメチルエステル塩酸塩(1g、6.43mmol)のテトラヒドロフラン(12ml)中懸濁液に加えた。混合物を、5.5時間還流温度で加熱し(全ての固体が溶解)、次いで、冷却し、濃縮し、黄色油を得た(約1.7g)。粗物質を、石油エーテル40−60中0−75%酢酸エチルで溶出する、フラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付して精製し、無色油として2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−4−カルボン酸メチルを得た(0.77g)。
(ii)2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−4−カルボン酸メチル(0.77g、5.31mmol)を、ジメチルホルムアミド(5ml)で溶解し、アルゴン下0℃で水素化ナトリウム(油中60%、0.255g、6.37mmol)のジメチルホルムアミド(5ml)中懸濁液に加えた。混合物を、0℃で0.5時間攪拌し、次いで、さらに5mlのジメチルホルムアミドを攪拌を補助するために加えた。次いで、ヨウ化エチル(0.509ml、6.37mmol)を加え、混合物を室温に加温し、次いで、一晩攪拌した。溶媒を蒸発させ、得られた残渣を、石油エーテル40−60中0−40%酢酸エチルで溶出する、フラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付して精製し、淡黄色油として3−エチル−2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−4−カルボン酸メチルを得た(0.250g)。該物質を、さらに精製することなく次の工程に用いた。
(iii)2N水性水酸化ナトリウム(1ml)を、0℃で3−エチル−2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−4−カルボン酸メチル(0.246g、1.42mmol)のメタノール(2ml)中溶液に滴下した。混合物を0℃で4時間攪拌し、次いで、メタノールを真空中で蒸発させた。得られた水層を、2N水性塩化水素(10ml)を用いて酸性化し、次いで、これをジクロロメタン(10ml)で抽出した。有機層を、疎水性フリットを用いて分離し、次いで、廃棄した。水層を蒸発させ、粗3−エチル−2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−4−カルボン酸を得、さらに精製することなく用いた。
LC/MS [M+H]=160、保持時間=0.82分。
【0123】
実施例2 N−[(2−クロロ−4−フルオロフェニル)メチル]−3−エチル−2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−4−カルボキサミド(E2)
【化19】

N−[(2−クロロ−4−フルオロフェニル)メチル]−3−エチル−2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−4−カルボキサミド(E2)を、L−セリンメチルエステル塩酸塩の代わりにD−セリンメチルエステル塩酸塩を用いること以外は上記の実施例1と類似の方法で調製した。LC/MS [M+H]=301、保持時間=2.20分。
鏡像体過剰率=68.7%、キラルクロマトグラフィー方法Dにより測定、(4R)−N−[(2−クロロ−4−フルオロフェニル)メチル]−3−エチル−2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−4−カルボキサミド(
【化20】

)を示す、保持時間=12.63分
【0124】
実施例3 N−{[2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−3−メチル−2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−4−カルボキサミド(E3)
【化21】

3−メチル−2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−4−カルボン酸(0.200g、約1mmol,下記のとおりに調製)のジクロロメタン(5ml)中懸濁液を、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(0.230g、1.2mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(0.162g、1.2mmol)、およびN−エチルモルホリン(0.5ml、3mmol)で処理し、次いで、室温で10分間攪拌した。次いで、混合物を、{[2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}アミン(0.210g、1mmol)のジクロロメタン(2ml)中溶液で処理し、アルゴン雰囲気下室温でさらに1時間攪拌した。混合物を、さらにジクロロメタンで希釈し、次いで、飽和水性炭酸水素ナトリウム溶液、水、およびブラインで連続して洗浄した。有機層を、分離し、乾燥し、蒸発乾固し、粗物質を得、その後、フラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチルおよびヘキサンの1:1混合物で溶出)に付して精製し、乾燥後、無色固体としてN−{[2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−3−メチル−2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−4−カルボキサミドを得た(0.068g)。LC/MS [M+H]=337/339、保持時間=2.36分。
鏡像体過剰率=90.9%、キラルクロマトグラフィー方法Eにより測定、(4R)−N−{[2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−3−メチル−2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−4−カルボキサミドを示す、保持時間=8.24分。
【0125】
上記の製法で用いられる3−メチル−2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−4−カルボン酸を、L−セリンメチルエステル塩酸塩の代わりにD−セリンメチルエステル塩酸塩を用いることおよびヨウ化エチルの代わりにヨウ化メチルを用いること以外は、実施例1の3−エチル−2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−4−カルボン酸を調製するために用いられる方法と類似の方法で調製した。
【0126】
実施例4 N−{[2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−3−メチル−2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−4−カルボキサミド(E4)
【化22】

粗N−{[2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−N−メチルセリンアミド(0.620g、2mmol、下記のとおりに調製)のジクロロメタン(30ml)中懸濁液を、アルゴン下5℃(氷浴)で攪拌し、トリエチルアミン(約0.9ml、6mmol)で処理した。5℃で5分間攪拌し続け、次いで、トリホスゲン(0.593g、2mmol)のジクロロメタン(5ml)中溶液を滴下した。5℃で1時間攪拌し続け、次いで、溶媒を蒸発させ、粗生成物を得た。上記の製法を、同一スケールで繰り返し、次いで、合した粗生成物を、酢酸エチルおよびヘキサンの1:1混合液、次いで、酢酸エチル単独、最終的に、それぞれ、酢酸エチルおよびメタノールの20:1混合液を用いて溶出する、フラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付して精製した。そうして得られた物質を、ジエチルエーテルでトリチュレートし、次いで、乾燥し、N−{[2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−3−メチル−2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−4−カルボキサミドを得た(0.280g)。LC/MS [M+H]=337/339、保持時間=2.37分。
鏡像体過剰率=99.9%、キラルクロマトグラフィー方法Eにより測定、(4S)−N−{[2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−3−メチル−2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−4−カルボキサミド(
【化23】

)を示す、保持時間=7.61分。
【0127】
上記の製法に用いられるN−{[2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−N−メチルセリンアミドを、以下のとおりに調製した:
(i)N−{[(1,1−ジメチルエチル)オキシ]カルボニル}−N−メチル−L−セリン(2.2g、10mmol)を、ジクロロメタン(60ml)で溶解し、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(2.3g、12mmol)および1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(1.62g、12mmol)で処理した。混合物を、室温で15分間攪拌し、次いで、{[2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}アミン(2.09g、10mmol)のジクロロメタン(10ml)中溶液を加え、混合物を室温でさらに1時間攪拌した。次いで、混合物を、飽和水性炭酸水素ナトリウム溶液、水、およびブラインで連続して洗浄した。乾燥し、蒸発させ、粗[2−({[2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}アミノ)−1−(ヒドロキシメチル)−2−オキソエチル]メチルカルバミン酸1,1−ジメチルエチルを得、さらに精製することなく次の工程に用いた。
(ii)粗[2−({[2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}アミノ)−1−(ヒドロキシメチル)−2−オキソエチル]メチルカルバミン酸1,1−ジメチルエチル(4.1g、約10mmol)を、ジクロロメタン(20ml)で溶解し、トリフルオロ酢酸(10ml)で処理した。混合物を、アルゴン下室温で約1時間攪拌し、次いで、溶媒を蒸発させ、残渣を、ジクロロメタンと飽和水性炭酸水素ナトリウム溶液(pH9)の間に分配した。有機層を分離し、ブラインで洗浄し、乾燥し、次いで、蒸発させた。残渣を、ジエチルエーテルでトリチュレートし、粗N−{[2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−N−メチルセリンアミドを得た(2.47g)。LC/MS [M+H]=311/313、保持時間=0.74分。
【0128】
実施例5 N−{[2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−5−オキソ−4−(フェニルメチル)−3−モルホリンカルボキサミド(E5)(N−(フェニルメチル)−L−セリンから得られるかまたは調製される形態)
【化24】

5−オキソ−4−(フェニルメチル)−3−モルホリンカルボン酸(0.075g、0.32mmol、下記のとおりに調製、N−(フェニルメチル)−L−セリンから開始)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(0.060g、0.32mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(0.043g、0.32mmol)、{[2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}アミン(0.067g、0.32mmol)、およびN−エチルモルホリン(0.167ml、1.28mmol)を、ジクロロメタン(5ml)中で合し、室温で3時間攪拌した。次いで、混合物を、飽和炭酸水素ナトリウム溶液および2N水性塩化水素で連続して洗浄し、次いで、有機層を、疎水性フリットを用いて分離し、真空中で蒸発させ、灰白色固体としてN−{[2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−5−オキソ−4−(フェニルメチル)−3−モルホリンカルボキサミドを得た(0.086g)。LC/MS [M+H]=427、保持時間=2.83分。
【0129】
上記の製法で用いられる5−オキソ−4−(フェニルメチル)−3−モルホリンカルボン酸を、以下のとおりに調製した:
予め冷却した炭酸カリウム(2.1g、15.39mmol)の水(10ml)中溶液を、N−(フェニルメチル)−L−セリン(1g、5.13mmol)のテトラヒドロフラン(10ml)中溶液に加えた。混合物を0℃に冷却し、次いで、塩化クロロアセチル(0.547ml、7.18mmol)を徐々に加え、30分間攪拌し続けた。pHが>13になるまで、水酸化ナトリウムの50%(重量%)水性溶液を(混合物を0℃で維持しながら)加えた。次いで、混合物を−5℃に冷却し、次いで、一晩攪拌し続けた。次いで、ヘキサン(2x10ml)を混合物に加え、混合物を2分間勢いよく攪拌し、その後、有機層を分離し、廃棄した。水層を、−10℃に冷却し、pHが<2になるまで濃塩酸水溶液で処理した。得られたスラリーを、−10℃で維持し、2時間攪拌した。固体を、濾過により回収し、真空中(45℃)で乾燥し、白色固体として5−オキソ−4−(フェニルメチル)−3−モルホリンカルボン酸を得(0.424g)、さらに精製することなく用いた。LC/MS [M+H]=235、保持時間=1.60分。
【0130】
実施例6−9
上記の実施例5に記載の方法と類似の方法において、下記の化合物(表1)を、上記の製法で用いられる{[2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}アミンの代わりに適当なアミン(またはその塩)を用いることにより調製した。表1に示される化合物を製造するために用いられる全てのアミンは、商業業者から入手可能であるかまたは化学文献にすでに記載されている経路もしくは類似の方法を用いて調製されうる。これらの実施例に用いられる5−オキソ−4−(フェニルメチル)−3−モルホリンカルボン酸を、カルボン酸エステルを対応するカルボン酸に転換する標準的方法(すなわち、メタノール中水性水酸化ナトリウムでの処理)を用いて市販の5−オキソ−4−(フェニルメチル)−3−モルホリンカルボン酸メチルから得た。
【表1】

【0131】
実施例10 N−{[2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−4−メチル−5−オキソ−3−モルホリンカルボキサミド(E10)(N−{[(1,1−ジメチルエチル)オキシ]カルボニル}−N−メチル−L−セリンから得られるかまたは調製される形態)
【化25】

−(ブロモアセチル)−N−{[2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−N−メチルセリンアミド(0.660g、1.53mmol、下記のとおりに調製、N−{[(1,1−ジメチルエチル)オキシ]カルボニル}−N−メチル−L−セリンから開始)を、テトラヒドロフラン(25ml)で溶解し、炭酸カリウム(0.663g、4.59mmol)で処理した。混合物を室温で一晩攪拌した。少量の生成物のみ形成したこと、およびほとんど未反応な出発物質の状態であることをLC/MSは示し、混合物を50℃でさらに8時間加熱し、少し相違をもたらした。溶媒を真空中で蒸発させ、残渣をイソプロピルアルコールで溶解し、水酸化カリウム(0.086g、1.53mmol)で処理した。次いで、混合物を室温で一晩攪拌した。真空中で蒸発させ、残渣を得、マスディレクティッド自動HPLCに付して精製し、淡黄色含水固体として生成物を得た。次いで、これをジエチルエーテルでトリチュレートし、N−{[2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−4−メチル−5−オキソ−3−モルホリンカルボキサミドを得た(0.061g)。
LC/MS [M+H]=350.93、保持時間=2.28分。
【0132】
上記の製法で用いられるN−(ブロモアセチル)−N−{[2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−N−メチル−セリンアミドを、以下のとおりに調製した:
(i)N−{[(1,1−ジメチルエチル)オキシ]カルボニル}−N−メチル−L−セリン(2.5g、11.4mmol)、2−クロロ−3−トリフルオロメチルベンジルアミン(2.38g、11.4mmol)、および2−エトキシ−1−エトキシカルボニル−1,2−ジヒドロキノリン(2.8g、11.63mmol)を、室温で2.5時間ジクロロメタン(50ml)中で一緒に攪拌した。次いで、混合物を、2N水性塩化水素(3x50ml)で、次いで、飽和水性炭酸水素ナトリウム溶液(50ml)で洗浄した。疎水性フリットを用いて有機層を分離し、真空中で蒸発させ、灰白色固体として[2−({[2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}アミノ)−1−(ヒドロキシメチル)−2−オキソエチル]メチルカルバミン酸1,1−ジメチルエチルを得(3.5g)、さらに精製することなく次の工程に用いた。
LC/MS [M+H]=311.00、保持時間=2.74分。
(ii)[2−({[2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}アミノ)−1−(ヒドロキシメチル)−2−オキソエチル]メチルカルバミン酸1,1−ジメチルエチル(3.5g、8.5mmol)を、ジクロロメタン(10ml)で溶解し、ジエチルエーテル中1M塩化水素で処理した。混合物を、室温で7時間攪拌し、次いで、さらに分割量(10ml)の1Mエーテル性塩化水素溶液で処理し、室温で一晩攪拌した。蒸発させ、残渣を、ヘキサンおよび酢酸エチルの1:1混合液でトリチュレートし、乾燥後、白色固体としてN−{[2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−N−メチルセリンアミド塩酸塩を得た(2.5g)。
LC/MS [M+H]=310.98、保持時間=1.52分。
(iii)N−{[2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−N−メチルセリンアミド塩酸塩(1g、2.89mmol)およびトリエチルアミン(0.79ml、5.78mmol)を、テトラヒドロフラン(20ml)で懸濁し、臭化ブロモアセチル(0.247ml、2.89mmol)で処理した。混合物を、室温で4.5時間攪拌し、次いで、真空中で濃縮し、残渣をジクロロメタン(25ml)と水(40ml)の間に分配した。有機相を、疎水性フリットを用いて分離し、次いで、2N水性塩化水素(30ml)および飽和水性炭酸水素ナトリウムで連続して洗浄した。溶媒を蒸発させ、ジクロロメタン中メタノールの0−10%勾配で溶出する、自動フラッシュ−シリカゲルカラムクロマトグラフィーに付して精製し、透明ゴムとしてN−(ブロモアセチル)−N−{[2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−N−メチル−セリンアミドを得た(0.666g)。
【0133】
マスディレクティッド自動HPLC
上記実施例に示される場合、以下の装置および条件を用いて、マスディレクティッド自動HPLCによる精製を行った:
【0134】
ハードウェア
Waters 2525 Binary Gradient Module
Waters 515 Makeup Pump
Waters Pump Control Module
Waters 2767 Inject Collect
Waters Column Fluidics Manager
Waters 2996 Photodiode Array Detector
Waters ZQ Mass Spectrometer
Gilson 202 fraction collector
Gilson Aspec waste collector
【0135】
ソフトウェア
Waters MassLynx version 4 SP2
【0136】
カラム
用いられるカラムは、Waters Atlantisであり、その寸法は、19mmx100mm(小スケール)および30mm×100mm(大スケール)である。固定相粒径は5μmである。
【0137】
溶媒
A:水性溶媒=水+0.1%ギ酸
B:有機溶媒=アセトニトリル+0.1%ギ酸
後処理溶媒=メタノール:水 80:20
ニードル洗浄溶媒=メタノール
【0138】
方法
目的化合物の分析的保持時間に依存して用いられる5つの方法がある。それらは、13.5分の実行時間を有しており、該実行時間は、10分間の勾配、次いで、3.5分間のカラムフラッシュおよび再平衡化工程を含む。
大/小 スケール 1.0−1.5=5−30%B
大/小 スケール 1.5−2.2=15−55%B
大/小 スケール 2.2−2.9=30−85%B
大/小 スケール 2.9−3.6=50−99%B
大/小 スケール 3.6−5.0=80−99%B(6分間、次いで、7.5分間のフラッシュおよび再平衡化)
【0139】
流速
上記方法は、全て、20ml/分(小スケール)または40ml/分(大スケール)の流速を有する。
【0140】
キラルHPLC
選択した試料の鏡像異性体純度を特徴付けるために用いられる装置および条件は以下のとおりであった:
【0141】
方法(A)
機器:Agilent 1100 Series Liquid Chromatogram
カラム:Chiralpak AD(250mmx4.6mm;粒径10μm)
移動相:ヘプタン:無水エタノール(70:30) v/v ポンプ混合
流速:1ml/分
温度:常温
U.V.波長:215nm
【0142】
方法(B)
機器:Agilent 1100 Series Liquid Chromatogram
カラム:Chiralpak AD(250mmx4.6mm;粒径10μm)
移動相:ヘプタン:無水エタノール(50:50) v/v ポンプ混合
流速:1ml/分
温度:常温
U.V.波長:215nm
【0143】
方法(C)
機器:Agilent 1100 Series Liquid Chromatogram
カラム:Chiralpak AD(250mmx4.6mm;粒径10μm)
移動相:ヘプタン:無水エタノール(80:20) v/v ポンプ混合
流速:1ml/分
温度:常温
U.V.波長:215nm
【0144】
方法(D)
機器:Agilent 1100 Series Liquid Chromatogram
カラム:Chiralpak AS(250mmx4.6mm;粒径10μm)
移動相:ヘプタン:無水エタノール(80:20) v/v ポンプ混合
流速:1ml/分
温度:常温
U.V.波長:215nm
【0145】
方法(E)
機器:Berger SFC Analytical
カラム:Chiralcel OD(250mmx4.6mm;粒径10μm)
移動相:二酸化炭素およびメタノール(SFC iso 90:10)
流速:2.35ml/分
温度/圧力:38℃/100Bar
U.V.波長:215nm
【0146】
液体クロマトグラフィー/質量分析法
以下の装置および条件を用いて、液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC/MS)による上記実施例の分析を行った:
【0147】
ハードウェア
Agilent 1100 Gradient Pump
Agilent 1100 Autosampler
Agilent 1100 DAD Detector
Agilent 1100 Degasser
Agilent 1100 Oven
Agilent 1100 Controller
Waters ZQ Mass Spectrometer
Sedere Sedex 85
【0148】
ソフトウェア
Waters MassLynx version 4.0 SP2
【0149】
カラム
用いられるカラムは、Waters Atlantisであり、その寸法は4.6mmx50mmである。固定相粒径は3μmである。
【0150】
溶媒
A:水性溶媒=水+0.05%ギ酸
B:有機溶媒=アセトニトリル+0.05%ギ酸
【0151】
方法
用いられる一般的な方法は5分間の実行時間を有する。
【表2】

【0152】
上記方法の流速は3ml/分である。
一般的方法についての注入量は5ulである。
カラム温度は30℃である。
UV検出範囲は220ないし330nmである。
【0153】
薬理データ
本発明の化合物は、以下の研究に従って、P2X7受容体におけるインビトロ生物活性について試験されうる:
【0154】
エチジウム蓄積アッセイ
以下の組成(mM単位):140mMのNaCl、HEPES 10、N−メチル−D−グルカミン 5、KCl 5.6、D−グルコース 10、CaCl 0.5(pH7.4)のNaClアッセイバッファーを用いて研究を行った。ヒト組み換えP2X7受容体を発現するHEK293細胞を、ポリ−L−リジンで予め処理した96ウェルプレートにて18〜24時間増殖させた(ヒトP2X7受容体のクローニングはUS6,133,434に記載されている)。細胞を350μlのアッセイバッファーで2回洗浄し、その後、50μlの試験化合物を加えた。次いで、細胞を室温(19〜21℃)で30分間インキュベートし、その後、ATPおよびエチジウム(100μMの最終アッセイ濃度)を加えた。ATP濃度は、受容体型についてのEC80付近を選択し、ヒトP2X7受容体についての研究では1mMであった。インキュベーションを8または16分間続け、5mMのP2X7受容体アンタゴニスト、リアクティブブラック(reactive black)5(アルドリッチ(Aldrich))を含む1.3Mのスクロースを25μl加えることにより終了した。エチジウムの細胞内蓄積は、キャンベラパッカード(Canberra Packard)のフルオロカウント(Fluorocount)(パンボーン(Pangbourne),UK)またはフレックステーション(Flexstation).II(モレキュラーデバイス(Molecular Devices))を用いて、プレート下からの蛍光(530nmの励起波長および620nmの発光波長)を測定することにより決定した。ATP応答を阻止するためのアンタゴニストpIC50値は、反復カーブフィッティング技法を用いて決定した。
【0155】
蛍光イメージングプレートリーダー(FLIPR)Caアッセイ
以下の組成(mM単位):137 NaCl;20 HEPES;5.37 KCl;4.17 NaHCO;1 CaCl;0.5 MgSO;および1g/LのD−グルコース(pH7.4)のNaClアッセイバッファーを用いて、ヒトP2X7についての研究を行った。
【0156】
ヒト組み換えP2X7受容体を発現するHEK293細胞を、ポリ−L−リジンで予め処理した384ウェルプレートにて42〜48時間増殖させた(ヒトP2X7受容体のクローニングはUS6,133,434に記載されている)。細胞を80μlのアッセイバッファーで3回洗浄し、2μMのフルオ(Fluo)4(テフラブズ(Teflabs))を37℃で1時間ロードし、再度3回洗浄し、30μlのバッファーと共に残し、その後、10μlの4倍濃縮した試験化合物を加えた。次いで、細胞を室温で30分間インキュベートし、その後、60μMの最終アッセイ濃度のベンゾイルベンゾイル−ATP(BzATP)を加えた(オンライン式,FLIPR384またはFLIPR3装置による(モレキュラーデバイス))。BzATP濃度は、受容体型についてのEC80付近を選択した。インキュベーションおよび読み取りを90秒間続け、細胞内カルシウム増大を、FLIPR CCDカメラを用いてプレート下からの蛍光(488nmの励起波長および516nmの発光波長)を測定することにより決定した。BzATP応答を阻止するためのアンタゴニストpIC50値は、反復カーブフィッティング技法を用いて決定した。
【0157】
実施例1〜10の化合物は、FLIPR Caアッセイおよび/またはエチジウム蓄積アッセイにて、ヒトP2X7受容体アンタゴニスト活性について試験され、FLIPR Caアッセイでは4.7を超えるpIC50値を、および/またはエチジウム蓄積アッセイでは5.5を超えるpIC50値を有することが見出された。実施例E1、E3、E4およびE10は、エチジウム蓄積アッセイにて約7.0以上のpIC50値を有することが見出された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中:
は、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−6シクロアルキル、C3−6シクロアルキルメチル−、ピリジニルメチル−またはベンジル(そのいずれも、1、2または3個のハロゲン原子で置換されていてもよい)、あるいは非置換フェニルを示し;
Xは、Oまたは−(CR)−を示し;
Yは、単結合またはOを示し;
ただし、XがOである場合、Yは単結合を示し、Xが−(CR)−である場合、YはOを示し;
およびRは、独立して、水素、C1−6アルキル、C6−10アリールメチル−またはC3−6シクロアルキルメチル−を示し、該C1−6アルキル、C6−10アリールメチル−またはC3−6シクロアルキルメチル−のいずれも、1、2または3個のハロゲン原子で置換されていてもよく;
、RおよびRは、独立して、水素、フッ素またはメチルを示し;および
、R、R、R10およびR11は、独立して、水素、ハロゲン、シアノ、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−6シクロアルキルまたはフェニルを示し、該C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−6シクロアルキルまたはフェニルのいずれも、1、2または3個のハロゲン原子で置換されていてもよく、あるいはR10およびR11は、それらが結合する炭素原子と一緒になって、1、2または3個のハロゲン原子で置換されていてもよいベンゼン環を形成し;
ただし、RおよびR11の両方が水素またはフッ素から選択される場合、R、RおよびR10の少なくとも1つはハロゲン原子である]
で示される化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項2】
ヒトまたは動物薬として用いる、式(IA):
【化2】

[式中:
は、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−6シクロアルキル、C3−6シクロアルキルメチル−、ピリジニルメチル−またはベンジル(そのいずれも、1、2または3個のハロゲン原子で置換されていてもよい)、あるいは非置換フェニルを示し;
Xは、Oまたは−(CR)−を示し;
Yは、単結合またはOを示し;
ただし、XがOである場合、Yは単結合を示し、Xが−(CR)−である場合、YはOを示し;
およびRは、独立して、水素、C1−6アルキル、C6−10アリールメチル−またはC3−6シクロアルキルメチル−を示し、該C1−6アルキル、C6−10アリールメチル−またはC3−6シクロアルキルメチル−のいずれも、1、2または3個のハロゲン(例えば、フッ素)原子で置換されていてもよく;
、RおよびRは、独立して、水素、フッ素またはメチルを示し;および
、R、R、R10およびR11は、独立して、水素、ハロゲン(例えば、フッ素または塩素)、シアノ、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−6シクロアルキルまたはフェニルを示し、該C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−6シクロアルキルまたはフェニルのいずれも、1、2または3個のハロゲン(例えば、フッ素)原子で置換されていてもよく、あるいはR10およびR11は、それらが結合する炭素原子と一緒になって、1、2または3個のハロゲン(例えば、フッ素または塩素)原子で置換されていてもよいベンゼン環を形成し;
ただし、RおよびR11の両方が水素またはフッ素から選択される場合、R、RおよびR10の少なくとも1つはハロゲン原子であるか、またはR、RおよびR10の1つまではCF基である]
で示される化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項3】
およびR11の両方が水素またはフッ素から選択される場合、R、RおよびR10の少なくとも1つはハロゲン原子である、請求項2記載の化合物または塩。
【請求項4】
が非置換メチル、エチルまたはベンジルを示す、請求項1、2または3記載の化合物または塩。
【請求項5】
がメチルまたはエチルを示す、請求項4記載の化合物または塩。
【請求項6】
およびRの両方が水素を示す、請求項1、2、3、4または5記載の化合物または塩。
【請求項7】
、RおよびRの全てが水素を示す、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の化合物または塩。
【請求項8】
、R、R、R10およびR11が、独立して、水素、ハロゲン、メチルまたはトリフルオロメチルを示すか、あるいはR10およびR11が、それらが結合する炭素原子と一緒になって、非置換ベンゼン環を形成する、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の化合物または塩。
【請求項9】
、R、R、R10およびR11が、独立して、水素、塩素、フッ素、臭素、メチルまたはトリフルオロメチルを示す、請求項8記載の化合物または塩。
【請求項10】
が非置換メチル、エチルまたはベンジルを示し;
XがOまたは−CH−を示し;
Yが単結合またはOを示し;
ただし、XがOである場合、Yは単結合を示し;Xが−CH−である場合、YはOを示し;
、RおよびRの全てが水素を示し;および
、R、R、R10およびR11が、独立して、水素、塩素、フッ素、臭素、メチルまたはトリフルオロメチルを示すか;あるいはR10およびR11が、それらが結合する炭素原子と一緒になって、非置換ベンゼン環を形成し;
ただし、RおよびR11の両方が水素またはフッ素から選択される場合、R、RおよびR10の少なくとも1つがハロゲン原子である、前記請求項のいずれか1項に記載の化合物または塩。
【請求項11】
、RおよびRが水素であり、R10がトリフルオロメチルであり、R11が塩素であるか、または
、RおよびR10が水素であり、RおよびR11が塩素であるか、または
、RおよびR10が水素であり、Rがフッ素であり、R11が塩素である、請求項10記載の化合物または塩。
【請求項12】
実施例E1ないしE10から選択される化合物。
【請求項13】
(4S)−N−[(2−クロロ−4−フルオロフェニル)メチル]−3−エチル−2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−4−カルボキサミド(
【化3】

)、
N−{[2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−3−メチル−2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−4−カルボキサミド(
【化4】

)、または
N−{[2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−4−メチル−5−オキソ−3−モルホリンカルボキサミド(
【化5】

)。
【請求項14】
前記請求項のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩、および医薬上許容される担体または賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項15】
ヒト医薬として用いる、請求項1ないし13のいずれか1項に記載の化合物または塩。
【請求項16】
疼痛、炎症または神経変性疾患に罹患しているヒトまたは動物対象の治療方法であって、有効量の請求項1ないし13のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩を該対象に投与することを含む、方法。
【請求項17】
疼痛、炎症または神経変性疾患の治療または予防のための医薬の製造のための、請求項1ないし13のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩の使用。
【請求項18】
炎症性疼痛、神経因性疼痛または内臓痛の治療または予防のための医薬の製造のための、請求項1ないし13のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩の使用。

【公表番号】特表2010−522710(P2010−522710A)
【公表日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−500239(P2010−500239)
【出願日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【国際出願番号】PCT/EP2008/053431
【国際公開番号】WO2008/119685
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】