説明

PGA実装基板の半田付け検査装置

【課題】基板上に立設されたピン側面における半田はい上がり高さを直接的に計測して、欠陥を精密に検出評価できるPGA実装基板の半田付け検査装置を提供する。
【解決手段】PGA実装基板に配置されたピンの半田付け画像を撮像して、取得された画像データをもとにピンの接合状態を評価するPGA実装基板の半田付け検査装置であって、PGA実装基板Kが載置される基板載置台11と、基板載置台の長手方向Aに対して斜め方向に延伸して設けられたカメラ移動台12と、カメラ移動台上に設置しPGA実装基板を斜め上方向から撮像するカメラ撮像部13と、カメラ撮像部をカメラ移動台上でその長手方向に移動させるカメラ撮像部移動手段14と、を備え、PGA実装基板のピンの格子状配列に対し、投影線Xにおいて交差するようにカメラ撮像部内に設けたリニアイメージセンサ13aのセンサ列を、カメラ撮像部移動手段によって移動させ、PGA実装基板を斜め上方から撮像するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はPGA(Pin Grid Array)実装基板に実装されたピンの半田付け状態を判別するためのPGA実装基板の半田付け検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
PGA実装基板は、数百から千を超えるピンがリフロー半田付けによりマトリックス状にプリント基板上に接合されて製造されるICチップなどであり、コンピュータなどの電子機器に搭載される。このようなPGA実装基板の製造においては、実装基板に半田付けされたピンへの半田はい上がり等の欠陥を検査するために光学的検査手法が多く採用されている。
例えば特許文献1(特開平6−58729号公報)では、I/Oピンを有する基板を照明器で照射して撮像装置により多階調画像データが生成される。このデータを2値化してピンの位置検出のためのパターンマッチングや2値化データによる暗部領域の特定が行われ、最終的に半田付け状態の検査が行われるようにした半田付け状態検査装置が開示されている。
また、特許文献2(特開平11−6718号公報)には、表面実装部品の各ピンの半田付け部の長手方向に対して交差する方向に照射する照明装置と、表面実装部品を撮像するカメラから出力されるピン半田付け部の画像の明るさにより、半田付け不良を判別するプリント基板半田不良検査装置が開示されている。ここでは、ワーク直上部に配置した2次元カメラを用いて、プリント基板の画像を撮影して、基板の欠陥が判定されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−58729号公報
【特許文献2】特開平11−6718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の基板の検査技術においては、図9に示すように、ワーク真上に配置した2次元カメラを用いて、半田はい上がりによるピンの形態を判定するため、基板上に立設されたピン側面における欠陥の大きさや半田はい上がり部分の高さを直接的に計測することはできず、欠陥を誤認識しやすいという問題点があった。さらに、近年、検査工程における欠陥検査を厳格に行うことが求められ、これに伴ってカメラの分解能を更に高めたり、カメラを多数台設置したりして対応せざるを得ない状況ともなっていてコスト面やメンテナンス面での対応に問題があった。
また、前記特許文献1、2の検査技術のものは、プリント基板に突設されたピンの半田不良部以外の部分にも撮影用の照明光が散乱して画像データからの半田部分の識別が困難で欠陥を誤検知しやすいとともに、その視野中央と周辺では視野角が大きく異なりので、画像のあおりや歪の効果により基板欠陥部分の長さ測定を精密に行うことが困難であるという問題点もあった。
【0005】
本発明は前記従来の課題を解決するためになされたもので、基板上に立設されたピン側面における欠陥の大きさや半田はい上がり部分の高さを直接的に計測することができ、半田付け工程に伴なって発生する不良や欠陥部分を光学的に精密に検出して、PGA実装基板を効率的に評価できるPGA実装基板の半田付け検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明のPGA実装基板の半田付け検査装置は、
PGA実装基板に配置されたピンの半田付け画像を撮像して、取得された画像データをもとにピンの接合状態を評価するPGA実装基板の半田付け検査装置であって、
PGA実装基板が載置される基板載置台と、
基板載置台の長手方向に対して斜め方向に延伸して設けられたカメラ移動台と、
カメラ移動台上に設置しPGA実装基板を斜め上方向から撮像するカメラ撮像部と、
カメラ撮像部をカメラ移動台上でその長手方向に移動させるカメラ撮像部移動手段と、を備え、
PGA実装基板のピンの格子状配列に対し、投影線において交差するようにカメラ撮像部内に設けたリニアイメージセンサのセンサ列を、
カメラ撮像部移動手段によって移動させ、PGA実装基板を斜め上方から撮像するようにしたことを特徴とする。
【0007】
(2)本発明のPGA実装基板の半田付け検査装置は、前記PGA実装基板のピンの格子状配列に対し、投影線において交差するようにカメラ撮像部内に設けたリニアイメージセンサのセンサ列の方向を、カメラ移動台に対して直角方向に設置し、基板載置台の長手方向Aとカメラ移動台の延伸方向Bのなす角を交差角度θsと等しくしたことを特徴とする。
【0008】
(3)本発明のPGA実装基板の半田付け検査装置は、前記(2)において、前記交差角度θsを、前記カメラ撮像部により取得される画像データ上で前記PGA実装基板のピン同士が重ならない範囲内に設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、PGA実装基板のピンの格子状配列に対し、投影線において交差するようにカメラ撮像部内に設けたリニアイメージセンサのセンサ列を、カメラ撮像部移動手段によって移動させ、PGA実装基板を斜め上方から撮像するようにしたので、
ピン側面側を望み隣接するピン列同士が干渉することなく撮像でき、撮像された画像データをもとに、ピン側面の欠陥部分を光学的に精密に検出して、PGA実装基板を効率的に評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施例に係るPGA実装基板の半田付け検査装置の概略斜視図である。
【図2】実施例に係るPGA実装基板の半田付け検査装置を正面から見た正面図である。
【図3】実施例に係るPGA実装基板の半田付け検査装置を上面から見た平面図である。
【図4】実施例において、交差角度θsを算出するための説明図である。
【図5】鏡面を有するPGAピン撮像用光源における理想位置の説明図である。
【図6】PGAピン撮像用照明の原理説明図である。
【図7】実施例において、PGAピン撮像用照明の構成例の説明図である。
【図8】マクロレンズにより撮像されたピン画像の説明図である。
【図9】従来のPGA実装基板の半田付け検査方法の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態のPGA実装基板の半田付け検査装置を図面を用いて説明する。
本実施形態のPGA実装基板の半田付け検査装置10は、PGA実装基板Kに配置されたピンPの半田付け画像を撮像して、取得された画像データをもとにピンPの接合状態を評価する検査装置である。
半田付け検査装置10は、PGA実装基板が載置される基板載置台11と、基板載置台11の長手方向Aに対して斜め方向Bに延伸して設けられたカメラ移動台12と、カメラ移動台12上に設置しPGA実装基板を斜め上方向から撮像するカメラ撮像部13と、カメラ撮像部13をカメラ移動台12上でその長手方向(延伸方向B)に移動させるカメラ撮像部移動手段14と、を備え、PGA実装基板のピンの格子状配列に対し、投影線Xにおいて交差するようにカメラ撮像部13内に設けたリニアイメージセンサのセンサ列である一次元カラーラインセンサーカメラ13aを、カメラ撮像部移動手段14によって移動させ、PGA実装基板を斜め上方から撮像するようにした。
これによって、撮像時においてピン同士が干渉する(重なる)ことのないように、PGA実装基板のピン側面側の画像を斜め上方向からスキャンして撮像した画像データをもとに、ピン側面の欠陥部分を数値化してピンの接合状態を解析することができる。例えば、このような画像データの解析においては、PGA実装基板のピン及びパッドの表面は明るくなり、ピンの側面側にはい上がって付着した半田表面は暗くなる。
さらに、このようにして得られた多階調画像データを固定値で2値化して2値化画像データを得ることによって、かかる2値化画像データをもとに予め設定した欠陥パターンとのパターンマッチングや、色や長さ測定処理のプログラムなどを用いて、PGA実装基板における半田付け状態などのピンの接合状態の評価などを正確に行うことができる。
【0012】
PGA実装基板Kは、コンピューターチップ、CPUチップ等を搭載するために縦横格子状(マトリックス状)に数百から千ピンを超えるPピン(以下ピンという)が高密度配置されたデバイスであって、PGA(Pin Grid Array)方式によるリフロー半田付け処理で製造されるが、先ずは、治具によりピンを基板に差し込み、次にこの治具に半田剤を塗布したプラスチック基板をセットし、これをリフロー炉に通すことでPGA実装基板が製造される。
PGA実装基板の半田はい上がりなどの欠陥検査はこの後の工程で実施される。
【0013】
本実施形態のPGA実装基板の半田付け検査装置に備えられた基板載置台11は、例えば、平板状のPGA実装基板をその上に固定載置する矩形状の基台などで構成される。基板載置台11上には、PGA実装基板の格子状に配列されたピンPの配列方向が基板載置台の長手方向Aに対し平行になるように固定載置される。
【0014】
このようなPGA実装基板の固定載置にあたって、基板載置台上に基板移動手段11aを設けることもできる。基板移動手段11aは、基板載置台11の上に配置されたPGA実装基板Kを移動させるための機構であって、基板載置台に設けられたXY移動テーブルや回転テーブルなどにより構成することができ、基板載置台の上に固定載置されるPGA実装基板の位置を調整する。
XY移動テーブルは、このXY移動テーブル上に固定載置されたPGA実装基板を基板載置台の長手方向(A方向)や長手方向と直角方向に移動させることができる。
回転テーブルは、この回転テーブル上に固定載置されたPGA実装基板を基板載置台の上で360度回転移動させることができ、PGA実装基板の格子状に配置されたピンの配列方向を基板載置台の長手方向Aに対し平行になるように回転移動させることができる。
このような基板移動手段11aは、半田付け検査装置の全体動作を制御するコンピュータなどの制御回路を介して実行させることができる。
【0015】
カメラ移動台12は、基板載置台11の長手方向Aに対して斜め方向Bに延伸して設けられている矩形状の基台などで構成される。カメラ移動台12上には、カメラ支持部15が立設されており、さらにカメラ支持部15の上方にカメラ撮像部13が設置されており、基板載置台11上のPGA実装基板を斜め上方向から撮像できるようになっている。
また、カメラ移動台12は、カメラ支持部15に設置されているカメラ撮像部13を、カメラ移動台12上でその長手方向Bに移動させるカメラ撮像部移動手段14と、を備えている。
カメラ撮像部移動手段14としては、カメラ移動台12上に設けられるリニアレールのような1軸ステージが好ましく用いられ、その動作は半田付け検査装置の全体動作を制御するコンピュータなどの制御回路を介して実行させることができる。
【0016】
カメラ撮像部13は、鉛直線16方向とカメラ撮像部13のレンズ光軸17方向とのなす角がθa(カメラ傾斜角)を有するようにして、被写体であるPGA実装基板Kの斜め上方向に設置されている。このようなθa(カメラ傾斜角)は、PGA実装基板を斜め上方向θa(カメラ傾斜角)の角度から撮像した場合に、ピン同士が重なり合うことなく、またピンの側面及びピン根元部分が視認できる角度範囲である。
カメラ傾斜角θaの角度範囲は、ピンの太さや高さなどのサイズ、隣接するピンの間隔などに応じて、模式図面やコンピュータを用いた数値計算により、シミュレーションをして決定することができる。
コンピュータを用いた数値計算によりカメラ傾斜角θaを決定する場合は、カメラ撮像部13のレンズ光軸17方向を鉛直線16方向に対する角度を任意に設定できるカメラ傾斜角設定手段18を設け、カメラ支持部15に固定支持されたカメラ撮像部13を鉛直線16方向に対してカメラ駆動部(モータなど)により傾動させるにようにすることができる。
【0017】
本実施形態においては、カメラ撮像部13内には、撮像素子としてリニアイメージセンサのセンサ列をPGA実装基板のピンの格子状配列に対し、投影線Xにおいて公差するよう(斜め方向)に設けてある。ここで、投影線Xの方向はリニアイメージセンサのセンサ列と同一方向である。
リニアイメージセンサのセンサ列をピンの格子状配列に対し、このように斜め方向に設け、リニアイメージセンサのセンサ列をカメラ撮像部移動手段14によってカメラ移動台12の長手方向Bに移動させることによって、基板載置台11上のPGA実装基板Kのピンの格子状配列に対し、投影線Xを前記カメラ移動台12の長手方向Bと平行にスキャンさせ、PGA実装基板の全面積を撮像することができる。
すなわち、カメラ移動台12の長手方向Bへの移動は、リニアイメージセンサにおけるセンサ列を、そのセンサ列方向と直角に移動させることになり、PGA実装基板上のピンの格子状配列に対しては、斜め方向の交差角度θsを有してリニアイメージセンサをスキャンさせることになる。
これによって、ピンの格子状配列に対し投影線においてピンの格子状配列からのピン画像データの取得をすることができる。
なお、ここで、交差角度θsは、センサ列の方向をカメラ移動台12に対して直角方向に設置した場合は、基板載置台11の長手方向Aとカメラ移動台12の移動方向Bのなす角が交差角度θsと等しくなる。
【0018】
交差角度θsをどのくらいにするかの決定は、PGA実装基板に立設されたピン同士が重ならないように、ピンサイズやその格子状配列に応じて、作図や数値計算によりシミュレーションして決定することができる。数値計算によるシミュレーションは、例えば、カメラの取り付け誤差も勘案して、回転移動角を5度おきに回転させた場合において、画像処理による各ピンの面積が全て同じならば重ならない角度として判断でき、その角度を交差角度θsとして決定する。
画像処理によって交差角度θsの決定の例を示すと、交差角度θsを20度とした場合、一つ一つのピンマスク(ピンの輪郭内)を白色で分離し、各「白色」面積がそれぞれで同じになるが、交差角度θsを10度とした場合では、一つ一つのピンマスクが分離されずにピン同士が引っ付いた状態となり、「白色」の面積が既定値より大きくなることからピン同士の重なり程度を判定する。
このようにして、「白色」の数や面積が既定値と一致したところで交差角度θsを決定する。
【0019】
一次元カラーラインセンサーカメラ13aに用いられるリニアイメージセンサは、光を検出して電荷を発生させるフォトダイオードを直線状に一列に配列したもの(センサ列)であり、センサ列方向の投影線を線画像として撮像することができる。
面積をもつ領域(PGA実装基板の表面全体)を撮像するには、センサ列と直角方向に走査(スキャン)することにより2次元の静止画を取得することができる。
センサ列と直角方向へのスキャンは、被写体(PGA実装基板)を一次元カラーラインセンサーカメラ13aと相対的に移動させるか、光学系によって同等の相対移動を行う(例えば、ミラーなどの使用)ことにより実行することができる。
本実施形態の場合は、被写体(PGA実装基板K)を基板載置台11上に固定載置して、カメラ撮像部13をカメラ撮像部移動手段14によって移動させて、PGA実装基板のピンPの格子状配列に対して斜め方向に設置された一次元カラーラインセンサーカメラ13aが取得する投影線Xを、一次元カラーラインセンサーカメラと直角方向(B方向)にスキャンしてPGA実装基板の表面全体を撮像するようにしている。
【0020】
本実施形態において、カメラ撮像部は、基板載置面に対してその斜め上方40度程度の角度位置に設置し、且つ、前後左右のピンが重ならないように見える位置に被写体を回転配置させ固定する。
撮像用の光源19としては被写体上部から比較的光量の多い、例えばメタルハライド光源による拡散光を照射する。照射された拡散光は低反射率のワーク基板面で反射し、PGA基板に実装されたピン側面の鏡面で再度反射され、この直接反射光を1次元カラーラインセンサにより受光する。
【0021】
さらに、本実施形態のPGA実装基板の半田付け検査装置は、カメラ傾斜角θa及び交差角度θsが、カメラ撮像部により取得される画像データ上でPGA実装基板のピン同士が重ならない範囲内に設定することができる。重ならない範囲内に設定するにあたっては、実際にピンが格子状配列されたPGA実装基板をもとにシミュレーションしたり、図面上計算を実行したりすることにより、カメラ傾斜角θa及び交差角度θsの適性範囲を決定する。
【実施例】
【0022】
以下、本発明の一実施例であるPGA実装基板の半田付け検査装置について図面を参照して具体化して説明する。
図1は本発明の一実施例であるPGA実装基板の半田付け検査装置の概略斜視図であり、図2はその上面側からみた平面図である。
本実施例のPGA実装基板の半田付け検査装置10は、図示するように、平板状のPGA実装基板Kが載置される基板載置台11と、このPGA実装基板Kを撮像するための一次元カラーラインセンサ(カメラ撮像部)12と、カメラ撮像部13をカメラ傾斜角θaで支持してカメラ傾斜角設定手段18を構成するカメラ支持部13と、カメラ支持部13を基板載置台11の長手方向に対して交差角度θsの方向に移動させるカメラ移動手段の一例である1軸ステージ14と、PGA実装基板Kの上部から拡散光を照射するための略長尺板状の発光部が形成されたメタルハライド光源19などを備えている。
メタルハライド光源19は、カメラ撮像部13と同様にカメラ移動手段14により移動するカメラ支持部13に固定されている。
【0023】
カメラ撮像部13及びカメラ支持部13、カメラ移動手段14は、図示しないコンピュータ制御部などを介して連携して駆動される。そして、PGA実装基板をカメラ撮像部13によりスキャンする毎にその取得された画像データがコンピュータ制御部に取り込まれて、所定の画像データ処理がなされるようになっている。
なお、カメラ傾斜角θaを鉛直線に対して反対方向に反転させて、ピンの反対側面側から撮像したり、あるいはカメラ傾斜角θaの異なる2台以上のカメラ撮像部を予めカメラ支持部13に設けたりすることによって、PGA実装基板上の異なる方向からの画像データを取得して欠陥検査の信頼性を高めるようにしてもよい。
【0024】
こうして、カメラ撮像部13を、カメラ傾斜角θa(例えば40度程度)の角度位置に設定し、且つ、前後左右のピンが重ならないように見える位置にPGA実装基板Kを配置・固定し、メタルハライド光源19により拡散光を照射し、PGA実装基板K上に実装されたピン側面で反射された反射光をカメラ撮像部13で受光する。
さらに、カメラ撮像部13をカメラ移動台上で一定速度で移動させることによってPGA実装基板の2次元解析画像を取得できる。
【0025】
なお、カメラ撮像部13に搭載するレンズは、ひずみのないテレセントリックレンズの他、比較的低価格のマクロレンズを使用することも可能である。マクロレンズ使用の場合には、後述するマクロ補正機能を組込み、マクロレンズにより発生するのひずみのあおり補正を行うことで、テレセントリックレンズと同等の光学精度を維持することができる。
【0026】
次に以上のように構成された半田付け検査装置10に適用されるPGA実装基板の検査方法について述べる。
(1)PGA実装基板のピン立て工程と半田付け検査
CPUチップ等を実装するPGA実装基板Kのピン立て及びリフロー半田付けの例を以下に示す。
例えば、40mm×40mmのプラスチック基板に940本のピンを形成する場合で、φ0.3mm、長さ2mmの金メッキで表面メッキを施す場合では、先ず振込機で治具にピンを振り込み、移し替え治具を焼成用治具にピンをセットし、次にこの治具に半田剤を塗布したプラスチック基板をセットし、これに加重治具を組込み、リフロー炉を用いて通炉半田付けすることでPGA実装基板が完成し、半田はい上がり検査を後工程で実施することになる。
【0027】
なお、従来の検査、特に半田はい上がり検査は、一般的には焼成後顕微鏡による目視検査が主流であり、自動機による検査はワーク上部から画像による推定検査が試験的に行われてはいるが精度が低く、推定による欠陥の誤認識が発生する等問題が多かった。本実施例における検査装置は、このような問題を解消して、誤認識の発生率を低減するものである。
【0028】
(2)画像取得の方法
カメラ撮像部13を、カメラ支持部13を介してカメラ傾斜角(θa=40度)の角度位置に傾けて設置し、且つ、隣接するピンPの前後左右が重ならないように見える角度位置にPGA実装基板Kを配置・固定し、PGAの全ピンPが視認出来るように配置した。
【0029】
ここで、PGA実装基板Kに実装された円筒状の短いピンPに対して、それぞれのピンの重なりがおきない場所を調べるシミュレーションについて説明する。
すなわち、数値計算によりシミュレーションは、回転移動角を少しずつ回転させ、画像処理による各ピンの面積が全て同じならば重ならないような角度を交差角度θsとして決定する。
図3、図4は、交差角度θsを算出するためのPGA実装基板上に配置されたピンPの説明図である。
水平面で見て斜め位置からPGA実装基板を撮像した場合に、格子状に配列されたピンPが重ならない交差角度θsを算出するために、仮想情報を使用してシミュレーションを行う。仮想情報には、図3や図4に示すように“ピン先端サイズ”、“シフト量XY”、“ピン数XY”、“ピッチXY”、“回転角”、“スケールファクタ”を使用する。
これにより仮想的に座標が描画できるため、その座標からピンの伸びる方向にマスクをしてみて重ならない箇所を算出することができるのである。
【0030】
カメラ撮像部13において一次元カラーラインセンサを用いたのは、計測を行うため二次元カメラでは得られない高分解能(本実施例では一次元7500素子)を得るためと、二次元カメラで生じるあおり角によるジャストフォーカスが得られない(フォーカス深度に入らない)事象を避けるためである。
さらに一次元カラーラインセンサで二次元的な全体画像を得るために、図1に示すようにカメラ移動台上を1方向に移動する1軸移動ステージ14上にカメラ支持部13を設け、
カメラ撮像部13を、一次元カラーラインセンサのセンサ列(一次元の配列)方向と直角方向(A方向)に移動させる構造とした。
なお、カメラ撮像部13のA方向移動に代えて、カメラ撮像部13を固定したままで、PGA実装基板Kを載置した基板載置台11をB方向に移動させる機構としてもよい。
ここで、B方向は、PGA実装基板K上にマトリックス配列されているピンの整列した方向をいう。
【0031】
また、モノクロカメラではなく、カラーカメラとしたのはPGAピン台座である基板色、金メッキされたピンPと、半田そのものをコントラストよくスペクトル分別処理できるようにするためである。モノクロ画像からでは、各々のスペクトルが分別できず、結果、ワークの微妙な色合いの差から半田はい上がりが検査できなくなることを避けるためである。
【0032】
(3)理想的照明位置
照明系としての光源には、一次元カラーラインセンサを用いることと、その設置のしやすさや十分な光量が確保できることなどを考慮し、メタルハライド光源を、光ガイド等を介して誘導して、被写体となるPGA実装基板Kの上方から照明する拡散板を取り付けた拡散照明系を構成するものとした。
【0033】
一般的にPGA実装基板上の一番端のピンPは横から光を当てて観察すると半田の状態がよく確認できることがわかる。これでは当然のことながら、それより奥のピンPは手前のピンに隠れて見ることができない。そこで、カメラ傾斜角θaが40度の角度位置にカメラ撮像部のレンズ光軸方向を傾け、ピンPの側面が前後左右のピンに隠れない位置を探すことでピン全体を見渡すことができるようにした。
しかし、PGAピンの場合、通常上方から光を入れてもピン表面が鏡面のため、乱反射する光成分がなく、カメラには黒く撮像される結果となる。
【0034】
図5に示すように、ピン上方の光源から照射される光は、ピンPの側面で全反射するためカメラにはいることがない。すなわち、カメラに取り込まれる成分が重要となる。このため照明位置に関しては、全ピンに対して斜め下方に光源を配置するのが理想だが、物理的に無理な配置となる。
そこで本実施例では、周囲からの間接的反射光をPGA実装基板のピンPに照射する。そして、カメラ傾斜角θaを40度の角度位置にカメラ撮像部のレンズ光軸方向を傾けて配置し、ピンPの側面が前後左右のピンに隠れない位置に設置した一次元カラーラインセンサを一方向にスキャンすることで全体を見渡すことができるようにしている。
【0035】
このような間接型反射照明と撮像方法の原理を図6に示す。ここでは、周りから強い光を入れることによって、表面での反射光をカメラに取り込むことができる。
また、ピンPが鏡面であるため、一方向から強い光が入るとハレーションを起こす。このため、図示するように広い角度範囲からの光が取り入れられる。こうして、本実施例では図7に示すように、ライン形拡散光源となるようなメタルハライド光源19を用いることによって、ピンPより十分な面積を取った強力光を当て、反射率が低くなる基板表面からの反射光でも一次元カラーラインセンサ12で検知して受光できるようにしているのである。
【0036】
(4)半田はい上がりの抽出
以上により、PGA実装基板Kのカラー画像を一次元カラーラインセンサ12で取得し、半田がはい上がっているかどうかを、RGPカラー空間をHSL空間に変換して“黄色ではなく彩度がない”部分を抽出することで判別する。
すなわち、ピンP以外の余計な部分(被検査部)は画像処理前にマスク(取り去る)しておき、ピンPだけを検査できるようにする。例えばカラーチャート上でパラメータ条件を指定して、「黄色ではなく、彩度が高く、明度もある」箇所を欠陥とするように画像データを抽出する。
こうして、本来あるべきピンでないイメージ、すなわち半田はい上がり状況を検査判定することができる。このようにHSLパラメータを使用することで、直感的な色選択を行いやすくすることができる。
【0037】
(5)マクロ補正
マクロレンズのあおり角による歪みは以下の手順により補正することができる。すなわち、レンズとしてテレセントリック光学系を使用してPGA実装基板を撮像すると角ピン垂直同一条件で理想的な解析が実施できる。但し、テレセントリック光学系は極めて高額であるため、比較的低価格なマクロレンズを使用しても、テレセントリック光学系同様の条件で検査判定できるように、あおり補正を加えピンの部分だけ抜き出して解析できるようにした。マクロレンズでピンPを撮像すると画像端部では図8のようないわゆるあおり角による歪みが生じる。
【0038】
このようなマクロ補正は以下の計算方法により実現できる。まず、マクロレンズを使用できるようにマクロ補正の手法を組み込む。マクロレンズによる歪みが線形であると仮定できるため、ピンPの先端座標がわかれば、下記の計算でどの程度傾いたピンなのかが計算できるため、高価なテレセントリック光学系を必ずしも使用しなくても、正確なピン先端位置が推測でき誤差無く半田はい上がり計測を実施することができる。
dx=x*a a:(a<1)の補正係数
このような計算によって、半田の抽出箇所を特定するためのマスクを作成でき、これによってシステムコストなどの大幅な低減が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
上記のように、本発明のPGA実装基板の半田付け検査装置は、カメラ撮像部がリニアに配列されたリニアイメージセンサによりレンズからの入射光を電気信号に変換して一次元画像データを取得する一次元カメラを用い、ピンからの直接反射光を受光計測するので、従来の推測判定でなく直接計測結果での判定が行え、誤評価は発生しない。
また、一次元カラーラインセンサカメラを使用しカメラ撮像部を一定速で移動することによりPGA実装基板のピンの格子状配列の二次元解析画像を取得することで、斜め上方設置によるあおり角によるフォーカスエラーの発生を抑制でき、基板の光学的情報を精度よく取得して、PGA実装基板の製造工程における半田付け不良などの欠陥を効率的かつ精密に判定することができ、産業上の利用可能性が極めて高い。
【符号の説明】
【0040】
10 PGA実装基板の半田付け検査装置
11 基板載置台
12 カメラ移動台
13 カメラ撮像部(一次元カラーラインセンサ)
14 カメラ撮像部移動手段(1軸ステージ)
15 カメラ支持部
16 鉛直線
17 レンズ光軸
18 カメラ傾斜角設定手段
19 光源
X 投影線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PGA実装基板に配置されたピンの半田付け画像を撮像して、取得された画像データをもとにピンの接合状態を評価するPGA実装基板の半田付け検査装置であって、
PGA実装基板が載置される基板載置台と、
基板載置台の長手方向に対して斜め方向に延伸して設けられたカメラ移動台と、
カメラ移動台上に設置しPGA実装基板を斜め上方向から撮像するカメラ撮像部と、
カメラ撮像部をカメラ移動台上でその長手方向に移動させるカメラ撮像部移動手段と、を備え、
PGA実装基板のピンの格子状配列に対し、投影線において交差するようにカメラ撮像部内に設けたリニアイメージセンサのセンサ列を、
カメラ撮像部移動手段によって移動させ、PGA実装基板を斜め上方から撮像するようにしたことを特徴とするPGA実装基板の半田付け検査装置。
【請求項2】
前記PGA実装基板のピンの格子状配列に対し、投影線において交差するようにカメラ撮像部内に設けたリニアイメージセンサのセンサ列の方向を、カメラ移動台に対して直角方向に設置し、基板載置台の長手方向Aとカメラ移動台の延伸方向Bのなす角を交差角度θsと等しくしたことを特徴とする請求項1に記載のPGA実装基板の半田付け検査装置。
【請求項3】
前記交差角度θsを、前記カメラ撮像部により取得される画像データ上で前記PGA実装基板のピン同士が重ならない範囲内に設定したことを特徴とする請求項2に記載のPGA実装基板の半田付け検査装置。

【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−158363(P2011−158363A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20788(P2010−20788)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(501298926)浜松メトリックス株式会社 (10)
【Fターム(参考)】