説明

PHS移動端末発見システム

【課題】従来不可能であったきわめて広い範囲において移動物体が屋内に在る場合においても当該位置を正確に探査することができるシステムを提供する。
【解決手段】PHS基地局から発する電波を受信するPHS移動端末8と、当該PHS移動端末8が発する電波を受信する指向性アンテナ9を具備した指向性受信機と、PHS基地局からの電波の電界強度によりPHS移動端末8の概略位置を計測する概略位置計測手段と、当該概略位置計測手段によって計測したPHS移動端末8の概略位置において指向性受信機で受信したPHS移動端末の電波の電界強度によりPHS移動端末8の詳細位置を特定する詳細位置特定手段とを備え、前記指向性受信機は、受信したPHS移動端末8の電波の電界強度の測定と共に、当該PHS移動端末8のIDの識別を行えるように設定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は広範且つ複雑な物流経路における移動物体の現在位置を高精度に探査するためのPHS移動端末発見システムに関する。
【背景技術】
【0002】
物流分野においては、紛失物の発見や、適切な製品供給のために、製品、車両、荷役機器などの移動物体の位置を遠隔で探査する技術が必要とされている。
【0003】
車両以外の製品や荷役機器は、倉庫、店舗、オフィス内などに存在することが多いため、屋内での探査が必要とされる。また、誤配送により、日本全国又は他国内を移動することもあるため、広範囲での探査が必要とされる。さらに、紛失物発見の際には、移動物体を直接視認できる距離まで探査精度を上げる必要がある。
【0004】
これらに関連する技術として、以下の方法がある。
第1の方法は、後述する特許文献にも示されているように、移動物体に、PHSなどの公衆通信用移動端末を装着し、当該公衆通信用移動端末により公衆通信用固定基地局(以下、基地局という)の電波強度を測定し、その測定値に基づき基地局からの距離を算出し、三点測量により移動端末の位置を算出する方法である。
【0005】
この方法は、公衆通信が可能な広い範囲に適用することができると共に、自動計測が可能という利点があり、車両や荷役機器の移動経路計測に用いられている。通常は、1日数回の計測を行い、電池寿命は半年以上である。しかし、計測誤差が数百メートルと大きいため紛失物の発見には使用できなかった。
【0006】
第2の方法は、移動物体に移動物体追跡用の電波発信機(以下、発信機という)を装着し、八木アンテナ(登録商標)などの指向性のあるアンテナを具備した受信機(以下、受信機という)により発信機の方向を検出し、その方向に受信機を移動して移動物体に到達するようにしたもので、ラジオテレメトリー法と呼ばれる。
【0007】
この方法は、誤差10メートル程度で探査が可能なため、野性動物や車両の探査に用いられている。しかしながら、発信機の電波到達範囲が最大数キロメートルと狭いため、広域での位置探査は不可能であった。また、移動物体が保管庫の中にある場合など、直接移動物体を視認できない場合には、移動物体の発見に時間が掛かるという問題があった。
【0008】
第3の方法は、移動物体にGPS装置を装着し、その位置データを公衆移動通信網により送信する方法である。この方法によった場合は数メートルの精度があり、公衆通信が可能な広範囲で利用可能という利点があるが、その性質上屋内では測位できないという問題点があると共に、GPSの電力消費量が大きく、頻度の多い定期的な電力の供給が不可欠であるという欠点があるため、車両以外の探査には利用できなかった。
【特許文献1】特開2003−11973公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、物流分野においては、広範囲に亘り紛失物の発見や、物流対象物、車両、荷役機器などの移動物体の現在位置を高精度で探査するシステムについて強い要望があるにも拘らず、現在までのところこれら全ての要求に応え得る発見システムは開発されていないというのが実態である。
【0010】
本発明は従来不可能であったきわめて広い範囲において移動物体が屋内に在る場合においても当該位置を正確に探査することができるシステムを実現するものである。
そのため、本発明はPHS移動端末と、端末位置計算システム及び指向性受信機の併用により、端末位置、すなわち移動物体の現在位置を高精度に探査するシステムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明の構成を詳述すれば、請求項1に係る発明は、PHS基地局から発する電波を受信するPHS移動端末と、当該PHS移動端末が発する電波を受信する指向性アンテナを具備した指向性受信機と、PHS基地局からの電波の電界強度によりPHS移動端末の概略位置を計測する概略位置計測手段と、当該概略位置計測手段によって計測したPHS移動端末の概略位置において指向性受信機で受信したPHS移動端末の電波の電界強度によりPHS移動端末の詳細位置を特定する詳細位置特定手段とを備え、前記指向性受信機は、受信したPHS移動端末の電波の電界強度の測定と共に、当該PHS移動端末のIDの識別を行えるように設定したことを特徴とするPHS移動端末発見システムである。
【0012】
請求項1に係る発明では、PHS移動端末と、端末位置測位計算システム及び指向性受信機を併用することで、広範囲、屋内、高精度の位置探査を行う。先ず、PHS移動端末と端末位置計算システムにより、広域の位置計測を行う。例えば商用のPHS移動端末を用いれば、日本全国の物流網をほぼ完全に網羅して位置探査を行うことができる。
【0013】
次に、PHS移動端末の発信電波を指向性受信機で受信して計測する方法を用いて狭域の探査を行う。PHS位置計算システムによる探査誤差は数十から数百メートルあるが、指向性受信機を用いることによりPHS移動端末の電波は端末から1〜2キロメートル離れた位置からでも計測することが可能であり、探査を行うことができる。
【0014】
そこで、PHS位置計算システムにより計測された位置に指向性受信機を持ち込むことにより発信機の電波を受信することができる。なお、PHS移動端末は、基地局との通信を確立する際に指定したPHS移動端末のIDを含む情報を発信する。PHS移動端末の発信電波はTDMA−TDD方式に対応したプロトコルアナライザを用いることで解析することができ、特定のPHS移動端末の電波を受信し、その電波強度を測定することができる。
【0015】
PHS移動端末の電波を受信できれば、受信機の指向性を用いることで、PHS移動端末の近傍に達することができる。最後にブザーの鳴動により移動物体の正確な位置を検知する。PHS移動端末の電波の探査によりPHS移動端末から10メートル以内の位置に近づくことができ、その位置においてブザーの鳴動音は十分に聴取できる。移動物体が机の中など、直接視認できない位置にあっても発見することができる。
【0016】
請求項2に係る発明は、請求項1のPHS移動端末発見システムにおいて、指向性受信機は、円偏波特性を有することを特徴とするものであり、この請求項2の発明では、請求項1の発明において、受信機の指向性と利得を端末位置探査用途に適したものとなるように指向性受信機の構成を設計する。すなわち、PHS移動端末の発信電波を受信する指向性受信機は持ち運べる大きさにすると共に、強い指向性と利得を有し、あらゆる向きの偏波を同等の感度で受信できるように円偏波特性を具備させる必要がある。また、受信した電波の強度を測定し、その電波が特定のPHS移動端末からの電波であることを確認できるものであることが必要である。
【0017】
従って、指向性受信機は、軽量且つ高利得、円偏波対応のアンテナ及びPHS移動端末の電波の強度と発信元の移動端末IDの解析を行うPHSアナライザで構成される。アンテナは軽量且つ高利得、円偏波受信が可能なものとするため、1メートル以下のヘリカルアンテナ素子と、直径2メートル以下の軽量素材の反射板の組み合わせで構成するヘリカルアンテナが好適である。ヘリカルアンテナは、ピッチ角を約10〜15°、ヘリクス周が約1波長(0.75〜1.33波長)とし、軸モード(ビームモード)で動作させる。
【0018】
このとき、ヘリカルアンテナは、ヘリカル素子の軸方向へ強い放射特性を示し、高利得の単一指向性アンテナとして動作する。ヘリカルアンテナを前記PHSアナライザと繋ぎ、受信したPHS移動端末の電波強度の測定と発信元の移動端末のIDを解析する。ヘリカルアンテナを数方向に向けてPHS移動端末の電波を受信し、その中で電波強度測定値が最も高いときのヘリカルアンテナが指している方向にPHS移動端末が存在する。
【0019】
請求項3に係る発明は、PHS基地局からの電波の電界強度によりPHS移動端末の概略位置を計測する概略位置計測手段を、受信した電波の電界強度が最大のPHS基地局位置をPHS移動端末位置とすることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のPHS移動端末発見システムである。すなわち、PHS移動端末が測定するPHS基地局の電波の電界強度によりPHS移動端末の概略位置を計測するにあたり、PHS移動端末が測定した複数の基地局電波の電界強度のうち、最大の電界強度を持つ基地局の位置をPHS移動端末の概略位置と推定するものである。
【0020】
請求項4に係る発明は、PHS基地局からの電波の電界強度によりPHS移動端末の概略位置を計測する概略位置計測手段を、受信した電界強度が大きい複数個の基地局を用いて最小二乗法により求めた位置をPHS移動端末位置とすることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のPHS移動端末発見システムであり、PHS移動端末が計測する基地局電波の電界強度をEとし、PHS移動端末から基地局までの距離をDとすると、EとDは反比例の関係にあり、E=k/Dと表すことができる。ここでkは比例定数であり、PHS移動端末及び基地局のアンテナの種類、設置環境などにより異なる値をとるが、測定時にkを決定するための情報を得るのは困難な場合が多い。
【0021】
また、基地局とPHS移動端末の間の障害物などの影響により、測定する基地局の電波によりEとDの上記の関係が成り立たない場合があり、実際には測定電界強度から計算された距離は誤差を含む。これを踏まえて、x−y座標上で、このEとDの関係に注目した最小二乗法を用いてPHS移動端末の位置を計算する方法が、次の式〔数1〕を最小にする点(X,Y)を計算結果とする計算方法である。
【0022】
【数1】

【0023】
ここで、xi及びyiはそれぞれ基地局番号i板の基地局のx座標及びy座標、riは電界強度から算出した基地局番号i番の基地局とPHS移動端末の間の距離、aはkを基にした比例定数、nは計算に使用した基地局の数である。この式の値を最小にするX,Y,aを求めることにより、PHS移動端末の現在位置の地点(X,Y)を求めることができる。
【0024】
請求項5に係る発明は、PHS基地局からの電波の電界強度によりPHS移動端末の概略位置を計測する概略位置計測手段を、受信した電界強度が大きい複数個の基地局の電界強度を質量とみなした場合の重心とすることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のPHS移動端末発見システムである。
【0025】
請求項5に示す方法は、PHS移動端末が測定する電界強度の強い電波を発する複数基地局の位置を質点とし、それぞれの基地局の測定電界強度をそれぞれの基地局に対応する質点における質量としたときの重心の地点を現在位置と推定する測位計算方法である。
【0026】
特に、市街地やビジネス街など建造物が多い地区においては、PHS移動端末による基地局電波の受信において電波の遮断やマルチパスが生じ易く、測定電界強度と距離との間に相関がほとんどなくなる場合がある。このとき、PHS移動端末が電界強度を取得する周辺の基地局は、端末を中心として周囲に無作為に選択される場合が多く、この場合、PHS移動端末が測定可能なそれぞれの基地局の位置を質点とし、それぞれの基地局の測定電界強度をそれぞれの基地局に対応する質点における質量としたときの、重心の地点をPHS移動端末の位置にする計算方法を用いることで測位計算精度が高くなる。
【0027】
2次元において、上記の重心計算をPHS移動端末の位置検出手段に用いると、各基地局が同一円周上にあり、円の中心と各基地局を結ぶ対称軸が2つ以上存在するとき、若しくはある円の中心と各基地局を結ぶ線を円周上に延長し,その円の中心と各基地局を結ぶ対称軸が2つ以上存在するとき、PHS移動端末の位置はその円の中心に計算される。
【0028】
つまり、PHS移動端末の位置計算に用いる基地局が端末の周囲に等間隔に並んでいる場合、計算結果と実際のPHS移動端末の位置が一致する。市街地やビジネス街は基地局設置間隔も狭く、PHS移動端末が電波の測定を行う基地局は、端末の周辺にほぼ等間隔に選択させることが多いので、上記の重心計算によりPHS移動端末の位置を特定することにより、測位計算精度を高くすることができる。また、上記の最小二乗法は計算結果を導くために何回も計算を繰り返すが、重心の計算は単純な計算を1回実行することで計算が終了するので、測位計算時間を短縮することができる。
【0029】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至請求項5に記載のPHS移動端末発見システムにおいて、PHS移動端末にLEDを付設し、当該LEDの発光パターンによるブザーの鳴動を遠隔で行えるようにしたことを特徴とするPHS移動端末発見システムである。
【0030】
すなわち、請求項6の発明では、PHS移動端末の位置を特定した後、発見する際にPHS移動端末に装着されたブザーを、PHS移動端末の改造を行わずに遠隔操作で鳴動させるためのブザーを装着したPHS移動端末の構成方法を示すものである。
【0031】
この方法としては、基地局側から、PHS移動端末に通信信号を送る。具体的には、公衆通信網を用いて、携帯電話やPHSなどから移動端末に電話を掛ければよい。多くのPHS移動端末には、LEDが装備されており、受信時に発光する設定となっている。
【0032】
そこで、当該LEDの発光を検出し得る光センサを移動端末の外部に装着して、LEDの発光を検出し、光センサの出力によりブザーのスイッチを閉じるようにする。PHS移動端末を改造した場合には、国家規格の技術適合認定を得る必要があり、多くの経費と時間を要する。しかし、本発明の場合には、PHS移動端末の外部にセンサ装置などを装着するため公衆通信用移動端末の改造とはならず、技術適合認定を取得する必要がない。
【0033】
指向性受信機でのPHS移動端末電波の探索により、移動物体に十分近づいたら、移動端末に通信信号を送り、LEDを発光させる。これを検出してブザーを鳴動させる。
【発明の効果】
【0034】
以上のように、第1の発明は、PHS移動端末と端末位置計算システムと指向性受信機の併用により端末位置、すなわち移動物体の現在位置を高精度に探査するシステムを提供するものであり、第2の発明は、受信機の指向性と利得を端末探査用途に適したものとする方法を示すものである。第3ないし第5の発明は、PHS移動端末の概略位置の測定を行う方法を示すものであり、第6の発明は、PHS移動端末の位置を特定した後、発見する際に遠隔操作でPHS移動端末に装着されたブザーを鳴動させるようにした方法を示すものである。これにより、従来実質的に不可能であったきわめて広い範囲において移動物体が屋内に在る場合においても当該位置を正確に探査することができるようになり、物流業界の要望に十分応えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明PHS移動端末発見システムの実施形態の一例を図面について詳細に説明する。
図1はブザーを装着した探索対象となるPHS移動端末の一例を示すブロック図、図2はヘリカルアンテナとPHSアナライザで構成した指向性受信機の一例を示す説明図、図3はブザーを装着したPHS移動端末の発見方法を示す説明図、図4は最小二乗法を用いたPHS測位方法を示す説明図である。
【0036】
先ず、図1に基づいて本発明実施の形態に係るブザーを具備したPHS移動端末装置を説明する。図中1はPHS移動端末本体であり、2は当該PHS移動端末本体1の適宜箇所に付設されたLEDである。このLED2は周知のとおり着信時に発光するようになっている。3は当該LED2の発光を受光し得る位置に配置した受光部であり、4は受光状態を電気信号に変換する光センサである。5はマイクロコントローラであり、ブザー6を制御する作用をなす。7は回路に電源を供給するバッテリであり、8はこれら全体を示すPHS移動端末装置を示すものである。
【0037】
PHS移動端末本体1から発する電波を受信し探索に利用する指向性受信機は、図2に示すように、電波受信用アンテナ部9と、PHSアナライザ部10により構成される。
電波受信用アンテナ部9は、ヘリカルアンテナ素子11と、軽量素材の反射板12の組み合わせで構成するヘリカルアンテナとする。
【0038】
本発明の実施の形態の流れを図3に基づいて説明する。
PHS移動端末本体1はPHS固定基地局と通信を行い、公衆通信網に接続が可能である。探索者13は、請求項3又は請求項4に示すいずれかの測位手段により、PHS移動端末装置8に備えられているPHS移動端末本体1の電波到達範囲内の地点14に移動する。
【0039】
探索者13は、PHS移動端末本体1と公衆通信網を用いて通信を行い、PHS移動端末本体1の電波を発信させ、指向性受信機を用いてその電波の電界強度を測定する。探索者13は、指向性受信機の電波受信用アンテナ部9の角度及びPHSアナライザ10の受信レベルを確認しながら、探索対象端末装置(PHS移動端末装置)8の方向と距離を判断し、探索対象端末装置8から数メートルの範囲内の地点に移動する。ヘリカルアンテナ素子11と、軽量素材の反射板12の組み合わせからなるアンテナ部9は強い指向性を有するため、アンテナの向きと受信電波強度の関係より探索対象端末装置8の方向を推定することができる。
【0040】
従って、アンテナ部9とPHSアナライザ10でPHS移動端末本体1の電波を測定し、電波強度の強い方向へ逐次移動すれば、探索対象端末装置8に接近することができる。探索対象端末装置8がビルなどの建物内にあるような場合、探索者13は建物内においても同様に電波を測定して建物内を垂直及び水平方向に移動することにより探索対象端末装置8が存在する階と部屋の位置を特定することができる。
【0041】
探索対象端末装置8から数メートルの範囲内にいる探索者13が、再びPHS移動端末本体1と公衆通信網を用いて通信を行うと、PHS移動端末本体1のLED2が特定の発光パターンで発光し、探索対象端末装置8に備えられた光センサ4及びマイクロコントローラ5はLED2の特定の発光パターンを検知し、ブザー6を制御してブザー6を鳴動させる。探索者13は聴覚により探索対象端末装置8、すなわち移動物体の正確な位置を特定することができる。
【0042】
次に、探索対象端末装置8を、戸口輸送用荷物のパッケージ内に封入し、戸口輸送用荷物の位置を探索する実施例につき説明する。
先ず、戸口輸送用荷物のパッケージに封入した探索対象端末装置8で測定した周辺の基地局の電波強度に基づき基地局からの距離を算出し、請求項4に示す測位手段による測位結果地点14を取得する。
【0043】
具体的な測位計算方法として、位置計算サーバがPHS移動端末から取得した基地局の位置と電界強度を用いて行う方法について、図4を用いて説明する。ここで、移動体通信端末は、基地局1,2,3,4からの電波を受信しており、受信した電界強度から計算したそれぞれの基地局1,2,3,4との距離をr1 ,r2 ,r3 ,r4 とする。x−y座標上において基地局1,2,3,4の位置の座標をそれぞれ(x1 ,y1 )、(x2 ,y2 )、(x3 ,y3 )、(x4 ,y4 )とする。また、端末が受信した基地局電波の電界強度は、基地局1,2,3,4の順で強いものとする。
【0044】
請求項4の測位計算方法により、移動体通信端末のx−y座標上の位置は次式〔数2〕を最小にする点(X,Y)上に計算される。
【0045】
【数2】

【0046】
上記計算式においてe1 はPHS移動端末が測定したそれぞれの基地局の電波の電界強度である。
基地局密度の高い地域においては、請求項5の計算方法に切り替える。この計算方法は図4の基地局と移動体通信端末の配置において、次の式〔数3〕で計算されるx−y座標上の点の座標(x,y)を測位結果とする方法である。
【0047】
【数3】

【0048】
当該〔数3〕の式において、m1 はPHS移動端末が測定したそれぞれの基地局の電波の電界強度である。基地局の電波強度を用いた測位方法を用いた測位システムは既に商用化されており、この測位システムを用いると、インターネット上のパソコンからの操作により地図上に移動端末の位置がプロットされる。
【0049】
基地局を用いた測位方法において、移動端末が固定基地局からの電波を測定する際、基地局からの電波が遮断されたり、反射を起こしたりすると、電波強度の値が変動するため、測位に誤差が生じる。誤差の大きさは、通信用基地局の設置間隔に依拠する。そこで、基地局設置間隔より、測位誤差15を想定し、測位誤差15がPHS移動端末本体1の電波計測可能範囲16内にある場合、測位された地点14に移動する(図3)。
【0050】
基地局電波の電界強度を利用した測位方法による測位地点14に移動した探索者13は、PHS移動端末本体1と公衆通信網を用いて通信を行うことにより、PHS移動端末本体1より電波を発信させる(図3)。指向性受信機は、PHS移動端末が発する電波を受信する。探索者13は指向性受信機のアンテナ部9の向き及びPHSアナライザ10の受信レベルを確認しながら、探索対象端末装置8の方向と距離を判断し、戸口輸送用荷物のパッケージ内の探索対象端末装置8から数メートルの範囲内の地点に移動する(図3)。
【0051】
戸口輸送用荷物は建物内に他の荷物などと共に置かれる場合が多いので、荷物のある部屋が特定できたとしても、目視で荷物の場所を特定できない場合が多い。そこで、探索対象端末装置8から数メートルの範囲内にいる探索者13が、再び戸口輸送用荷物のパッケージ内のPHS移動端末本体1と公衆電話網を用いて通信を行うと、LED2が特定の発光パターンで発光し、ブザー6はマイクロコントローラ5を介して鳴動を始める。探索者13は聴覚を用いて探索対象端末装置8の封入された戸口輸送用荷物の正確な位置を特定することができる。
【0052】
このように、本発明によれば、物流における移動物体の位置を広域且つ高精度に探査することが可能になる。さらに、ブザーの消費電力を低減し、且つ移動端末に改造を加えることなく探索対象端末装置を構成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】ブザーを装着した探索対象となるPHS移動端末の一例を示すブロック図である。
【図2】ヘリカルアンテナとPHSアナライザで構成した指向性受信機の一例を示す説明図である。
【図3】ブザーを装着したPHS移動端末の発見方法を示す説明図である。
【図4】最小二乗法を用いたPHS測位方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0054】
1:PHS移動端末本体
2:LED
3:受光部
4:光センサ
5:マイクロコントローラ
6:ブザー
7:バッテリ
8:PHS移動端末装置
9:電波受信用アンテナ部
10:PHSアナライザ
11:ヘリカルアンテナ素子
12:反射板
13:探索者
14:基地局電波強度を利用した測位の結果地点
15:測位誤差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PHS基地局から発する電波を受信するPHS移動端末と、当該PHS移動端末が発する電波を受信する指向性アンテナを具備した指向性受信機と、PHS基地局からの電波の電界強度によりPHS移動端末の概略位置を計測する概略位置計測手段と、当該概略位置計測手段によって計測したPHS移動端末の概略位置において指向性受信機で受信したPHS移動端末の電波の電界強度によりPHS移動端末の詳細位置を特定する詳細位置特定手段とを備え、前記指向性受信機は、受信したPHS移動端末の電波の電界強度の測定と共に、当該PHS移動端末のIDの識別を行えるように設定したことを特徴とするPHS移動端末発見システム。
【請求項2】
指向性受信機は、円偏波特性を有することを特徴とする請求項1記載のPHS移動端末発見システム。
【請求項3】
PHS基地局からの電波の電界強度によりPHS移動端末の概略位置を計測する概略位置計測手段を、受信した電波の電界強度が最大のPHS基地局位置をPHS移動端末位置とすることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のPHS移動端末発見システム。
【請求項4】
PHS基地局からの電波の電界強度によりPHS移動端末の概略位置を計測する概略位置計測手段を、受信した電界強度が大きい複数個の基地局を用いて最小二乗法により求めた位置をPHS移動端末位置とすることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のPHS移動端末発見システム。
【請求項5】
PHS基地局からの電波の電界強度によりPHS移動端末の概略位置を計測する概略位置計測手段を、受信した電界強度が大きい複数個の基地局の電界強度を質量とみなした場合の重心とすることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のPHS移動端末発見システム。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5に記載のPHS移動端末発見システムにおいて、PHS移動端末にLEDを付設し、当該LEDの発光パターンによるブザーの鳴動を遠隔で行えるようにしたことを特徴とするPHS移動端末発見システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−239562(P2009−239562A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−82406(P2008−82406)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(508092923)ユーピーアール株式会社 (1)
【Fターム(参考)】