説明

PI3キナーゼ阻害剤としてのチアゾリジンジオン誘導体

本発明は、チアゾリジンジオン誘導体を使用してPI3キナーゼの活性/機能を阻害する方法である。本発明はまた、チアゾリジンジオン誘導体を投与することによって、自己免疫障害、炎症性疾患、心血管疾患、神経変性疾患、アレルギー、喘息、膵臓炎、多臓器不全、腎臓疾患、血小板凝集、癌、精子の運動性、移植拒絶、移植片拒絶および肺傷害から選択される1種または複数の病態を治療する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホスホイノシチド3’OHキナーゼファミリー(以下PI3キナーゼ)、適切には、PI3Kα、PI3Kδ、PI3Kβおよび/またはPI3Kγの活性または機能を調整、特に阻害するためのチアゾリジンジオン誘導体の使用に関する。適切には、本発明は、自己免疫障害、炎症性疾患、心血管疾患、神経変性疾患、アレルギー、喘息、膵臓炎、多臓器不全、腎臓疾患、血小板凝集、癌、精子の運動性、移植拒絶、移植片拒絶および肺傷害から選択される1種または複数の病態の治療におけるチアゾリジンジオンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞膜は、種々のシグナル伝達経路に参加できるセカンドメッセンジャーの大きな貯蔵庫を表す。リン脂質シグナル伝達経路におけるエフェクター酵素の機能および調節に関して、これらの酵素は、膜リン脂質プールからのセカンドメッセンジャーを産生し(クラスI PI3キナーゼ(例えば、PI3Kα))、両特異性キナーゼ酵素(脂質キナーゼ活性(ホスホイノシチドのリン酸化)およびタンパク質キナーゼ活性の両方を示すことを意味する)は、分子内制御機構としての自己リン酸化を含めて、基質としてタンパク質のリン酸化ができることを示す。リン脂質シグナル伝達のこれらの酵素は、以下でスキームAに記載するような増殖因子、分裂促進因子、インテグリン(細胞間相互作用)、ホルモン、サイトカイン、ウイルスおよび神経伝達物質などの種々の細胞外シグナルに応答して、ならびにまた、例えば低分子量GTPase、キナーゼまたはホスファターゼなどの、他のシグナル伝達分子による細胞内調節(クロストーク、最初のシグナルが、いくつかの平行経路を活性化することができ、それが第2の工程において細胞内シグナル伝達事象によってシグナルをPI3Kに伝達する)によって活性化される。細胞内調節は、細胞の癌遺伝子または腫瘍抑制因子の異常な発現または発現の欠如の結果としても起こる場合がある。イノシトールリン脂質(ホスホイノシチド)細胞内シグナル伝達経路は、シグナル伝達分子の活性化(細胞外リガンド、刺激、受容体二量体化、異種受容体によるトランス活性化(例えば、受容体チロシンキナーゼ))および形質膜に組み込まれているGタンパク質連結型膜貫通受容体の関与を含めたPI3Kの動因および活性化によって開始する。
【0003】
PI3Kは、膜リン脂質PI(4,5)Pを、セカンドメッセンジャーとして機能するPI(3,4,5)Pに変換する。PIおよびPI(4)Pはまた、PI3Kの基質であり、リン酸化され、PI3PおよびPI(3,4)Pに各々変換されることが可能である。さらに、これらのホスホイノシチドは、5’特異的および3’特異的ホスファターゼによって他のホスホイノシチドに変換されることが可能であり、したがってPI3K酵素活性は、細胞内シグナル伝達経路においてセカンドメッセンジャーとして機能する2種の3’−ホスホイノシチドサブタイプの生成を直接的または間接的にもたらす(Trends Biochem.Sci.22(7)、267〜72頁(1997年)、Vanhaesebroeckら:Chem.Rev.101(8)、2365〜80頁(2001年)、Leslieら(2001年);Annu.Rev.Cell.Dev.Biol.17頁、615〜75頁(2001年)、Katsoら;Cell.Mol.Life Sci.59(5)、761〜79頁(2002年)、Tokerら)。触媒サブユニット、対応する調節サブユニットによる調節、発現パターンおよびシグナル伝達特異的機能によって分類される多数のPI3Kイソ型(p110α、β、δおよびγ)が、この酵素反応を行う(Exp.Cell.Res.25(1)、239〜54頁(1999年)、VanhaesebroeckおよびKatsoら、2001年、上記)。
【0004】
密接な関係があるイソ型p110αおよびβは、遍在的に発現し、一方δおよびγは、造血細胞系、平滑筋細胞、筋細胞および内皮細胞により特異的に発現する(Trends Biochem.Sci.22(7)、267〜72頁(1997年)、Vanhaesebroeckら)。それらの発現はまた、細胞、組織のタイプおよび刺激、ならびに疾患の状況によって、誘導的に調節し得る。タンパク質発現誘導能には、タンパク質合成、ならびに調節サブユニットとの関連によって部分的に調節されるタンパク質安定化が挙げられる。
【0005】
現在までに、配列相同性、構造、結合パートナー、活性化機序および基質選択性に基づいて3つの主要なクラス(I、IIおよびIII)に分けられる8種の哺乳動物PI3Kが同定されてきた。In vitroでは、クラスI PI3Kは、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルイノシトール−4−リン酸(PI4P)およびホスファチジルイノシトール−4,5−二リン酸(PI(4,5)P)をリン酸化し、ホスファチジルイノシトール−3−リン酸(PI3P)、ホスファチジルイノシトール−3,4−二リン酸(PI(3,4)P)およびホスファチジルイノシトール−3,4,5−三リン酸(PI(3,4,5)P)、を各々生成することができる。クラスII PI3Kは、PIおよびホスファチジルイノシトール−4−リン酸をリン酸化する。クラスIII PI3Kは、PIのみをリン酸化することができる(Vanhaesebrokeckら、1997年、上記;Vanhaesebroeckら、1999年、上記、およびLeslieら、2001年、上記)。
【0006】
【化1】


【0007】
上記のスキームAに例示するように、ホスホイノシチド3−キナーゼ(PI3K)は、イノシトール環の3位炭素のヒドロキシルをリン酸化する。PtdIns3,4,5−三リン酸(PtdIns(3,4,5)P)、PtdIns(3,4)PおよびPtdIns(3)Pを生じさせるホスホイノシチドのリン酸化によって、細胞増殖、細胞分化、細胞成長、細胞サイズ、細胞生存、アポトーシス、接着、細胞運動、細胞移動、走化性、浸潤、細胞骨格再構成、細胞形態変化、小胞輸送および代謝経路に必須であるものを含めて、種々のシグナル伝達経路のためのセカンドメッセンジャーが産生する(Katsoら、2001年、上記、およびMol.Med.Today6(9)、347〜57頁(2000年)、Stein)。GβγおよびRasなどの低分子量GTPaseを介したGタンパク質共役受容体媒介性のホスホイノシチド3’OH−キナーゼ活性化、ならびにその結果としてのPI3Kシグナル伝達は、細胞極性および細胞骨格の動的構成(共に細胞が移動する推進力を提供する)の確立および調整において中心的役割を果す。ケモカインとも称される走化性(化学的誘引物質の濃度勾配への細胞の有向運動)は、炎症/自己免疫、神経変性、血管新生、浸潤/転移および創傷治癒などの多くの重要な疾患に関わっている(Immunol.Today21(6)、260〜4頁(2000年)、Wymanら;Science287(5455)、1049〜53頁(2000年)、Hirschら;FASEB J.15(11)、2019〜21頁(2001年)、Hirschら、およびNat.Immunol.2(2)、108〜15頁(2001年)、Gerardら)。
【0008】
遺伝学的アプローチおよび薬理学的ツールを使用した最近の進展は、ウイルス腫瘍性タンパク質、ならびにイノシトール環の3’−ヒドロキシルでホスファチジルイノシトール(PI)およびそのリン酸化誘導体をリン酸化する増殖因子受容体チロシンキナーゼと関連する活性として最初に同定された走化性(これらのリン酸化シグナル伝達産物の産生に関与する、化学誘引物質により活性化されたGタンパク質共役受容体PI3−キナーゼに反応する)を媒介するシグナル伝達および分子経路への識見を提供してきた(Panayotouら、Trends Cell Biol.2、358〜60頁(1992年))。しかし、より最近の生化学試験によって、クラスI PI3キナーゼ(例えば、クラスIBイソ型PI3Kγ)は、両特異性キナーゼ酵素であることが明らかにされ、これは、脂質キナーゼ活性(ホスホイノシチドのリン酸化)ならびにタンパク質キナーゼ活性の両方を示すことを意味し、分子内調節機構として自己リン酸化を含めた、基質としての他のタンパク質をリン酸化することができることが示された。
【0009】
しがたって、PI3−キナーゼ活性化は、細胞成長、分化およびアポトーシスを含めた一連の細胞応答に関与していると考えられる(Parkerら、Current Biology、5、577〜99頁(1995年);Yaoら、Science、267、2003〜05頁(1995年))。PI3−キナーゼは、白血球活性化のいくつかの局面に関与していると思われる。p85関連PI3−キナーゼ活性は、抗原に反応してT細胞の活性化のための重要な共刺激分子であるCD28の細胞質ドメインと物理的に関連することが示された(Pagesら、Nature、369、327〜29頁(1994年);Rudd、Immunity4、527〜34頁(1996年))。CD28によるT細胞の活性化は、抗原による活性化の閾値を低下させ、増殖反応の規模および期間を増加させる。これらの作用は、重要なT細胞増殖因子であるインターロイキン−2(IL2)を含めたいくつかの遺伝子の転写の増加と関連する(Fraserら、Science251、313〜16頁(1991年))。PI3−キナーゼとより長く相互作用できるようなCD28の変異は、IL2産生の開始の障害をもたらし、これは、T細胞活性化におけるPI3−キナーゼの決定的役割を示唆する。PI3Kγは、JNK活性のGβγ依存性調節の介在物質として同定されてきており、Gβγは、ヘテロ三量体Gタンパク質のサブユニットである(Lopez−Ilasacaら、J.Biol.Chem.273(5)、2505〜8頁(1998年))。PI3Kが重要な役割を果たす細胞過程には、アポトーシスの抑制、アクチン骨格の再編成、心筋細胞増殖、インスリンによるグリコーゲン合成酵素刺激、TNFαが媒介する好中球プライミングおよびスーパーオキシド生成、ならびに白血球の遊走および内皮細胞への接着が挙げられる。
【0010】
最近(Laffargueら、Immunity16(3)、441〜51頁(2002年))、PI3Kγは、様々なG(i)共役受容体によって炎症シグナルを中継し、肥満細胞機能の中心、白血球免疫学における刺激には、例えば、サイトカイン、ケモカイン、アデノシン、抗体、インテグリン、凝集因子、増殖因子、ウイルスまたはホルモンが挙げられることが記載された(J.Cell.Sci.114(Pt16)、2903〜10頁(2001年)、Lawlorら;Laffargueら、2002年、上記、およびCurr.Opinion Cell Biol.14(2)、203〜13頁(2002年)、Stephensら)。
【0011】
酵素のファミリーの個々のメンバーに対する特異的阻害剤は、各酵素の解析機能のための貴重なツールを提供する。2種の化合物LY294002およびワートマニン(以下を参照されたい)は、PI3−キナーゼ阻害剤として広く使用されてきた。これらの化合物は、クラスI PI3−キナーゼの4種のメンバーを識別しないので非特異的PI3K阻害剤である。例えば、様々なクラスI PI3−キナーゼの各々に対するワートマニンのIC50値は、1〜10nMの範囲である。同様に、これらのPI3−キナーゼの各々に対するLY294002のIC50値は、約15〜20μM(Frumanら、Ann.Rev.Biochem.、67、481〜507頁(1998年))であり、またCK2プロテインキナーゼおよびホスホリパーゼに対するいくつかの阻害活性については5〜10μMである。ワートマニンは、この酵素の触媒ドメインに共有結合することによってPI3K活性を非可逆的に阻害する菌代謝物である。ワートマニンによるPI3K活性の阻害により、それに続く細胞外因子への細胞応答がなくなる。例えば、好中球は、PI3Kを刺激し、PtdIns(3、4、5)Pを合成することによって、ケモカインfMet−Leu−Phe(fMLP)に反応する。この合成は、侵入する微生物の好中球破壊に関与する呼吸バーストの活性化と関連がある。好中球のワートマニンによる処理によって、fMLPが誘発する呼吸バースト応答が防止される(Thelenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、91、4960〜64頁(1994年))。実際に、これらのワートマニンについての実験、ならびに他の実験上の証拠は、造血系統の細胞、特に好中球、単球および他のタイプの白血球中のPI3K活性は、急性および慢性炎症に関連する非記憶免疫応答の多くに関連することを示す。
【0012】
【化2】

LY294002 ワートマニン
【0013】
ワートマニンを使用した研究に基づいて、PI3−キナーゼ機能もまた、Gタンパク質共役受容体を介した白血球シグナル伝達のいくつかの局面に必要であるという証拠が存在する(Thelenら、1994年、上記)。さらに、ワートマニンおよびLY294002は、好中球遊走およびスーパーオキシド放出を遮断することが示された。シクロオキシゲナーゼ阻害ベンゾフラン誘導体については、John M.JanuszらによりJ.Med.Chem.1998年、第41巻、第18号に開示されている。
【0014】
癌遺伝子および癌抑制遺伝子の調節解除は、例えば細胞成長および増殖の増加または細胞生存増加によって、悪性腫瘍の形成の一因となることが今や十分理解されている。PI3Kファミリーによって媒介されるシグナル伝達経路は、増殖および生存を含めたいくつかの細胞過程において中心的役割を有し、これらの経路の調節解除は、広範囲のヒトの癌および他の疾患の原因の要因であることもまた現在では公知である(Katsoら、Annual Rev.Cell Dev.Biol.、2001年、17:615〜617頁およびFosterら、J.Cell Science、2003年、116:3037〜3040頁)。
【0015】
クラスI PI3Kは、p110触媒サブユニットおよび調節サブユニットからなるヘテロ二量体であり、このファミリーは、調節パートナーおよび調節機構に基づいて、クラスIaおよびクラスIb酵素にさらに分かれる。クラスIa酵素は、3種の別個の触媒サブユニット(p110α、p110βおよびp110δ)からなり、これは5種の別個の調節サブユニット(p85α、p55α、p50α、p85βおよびp55γ)と二量体化し、全ての触媒サブユニットは全ての調節サブユニットと相互作用し、種々のヘテロ二量体を形成することができる。クラスIa PI3Kは、受容体チロシンキナーゼの増殖因子刺激に反応して、調節サブユニットSH2ドメインと、活性化受容体の特異的リン酸化チロシン残基またはIRS−1などのアダプタータンパク質との相互作用を介して一般に活性化される。低分子量GTPase(一例としてras)もまた、受容体チロシンキナーゼ活性化と関連してPI3Kの活性化に関連している。p110αおよびp110βの両方は、全ての細胞型に恒常的に発現し、一方p110δの発現は、白血球集団およびいくつかの上皮細胞により限定されている。対照的に、単一のクラスIb酵素は、p110γ触媒サブユニットからなり、これはp101調節サブユニットと相互作用する。さらに、クラスIb酵素は、Gタンパク質共役受容体(GPCR)系に反応して活性化し、その発現は白血球に限られるようである。
【0016】
クラスIa PI3K酵素は、直接または間接に多種多様のヒト癌における腫瘍発生の一因となることを示す重要な証拠が今や存在する(VivancoおよびSawyers、Nature Reviews Cancer、2002年、2、489〜501頁)。例えば、p110αサブユニットは、卵巣(Shayestehら、Nature Genetics、1999年、21:99〜102頁)および頚部(Maら、Oncogene、2000年、19:2739〜2744頁)の腫瘍などのいくつかの腫瘍において増幅する。より最近では、p110α(PIK3CA遺伝子)内の活性化変異は、大腸の腫瘍ならびに胸部および肺の腫瘍などの様々な他の腫瘍に関連付けられてきた(Samuelsら、Science、2004年、304、554)。p85αにおける腫瘍関連変異はまた、卵巣および大腸の癌などの癌においても同定されてきた(Philpら、Cancer Research、2001年、61、7426〜7429頁)。直接の作用に加えて、クラスIa PI3Kの活性化は、例えば、受容体チロシンキナーゼ、GPCR系またはインテグリンのリガンド依存的またはリガンド非依存的活性化によって、シグナル伝達経路の上流で起こる催腫瘍性事象の一因となると考えられている(Varaら、Cancer Treatment Reviews、2004年、30、193〜204頁)。このような上流シグナル伝達経路の例には、PI3K媒介性経路の活性化をもたらす種々の腫瘍における受容体チロシンキナーゼErb2の過剰発現(Harariら、Oncogene、2000年、19、6102〜6114頁)、および癌遺伝子Rasの過剰発現(Kauffmann−Zehら、Nature、1997年、385、544〜548頁)が挙げられる。さらに、クラスIa PI3Kは間接的に、様々な下流シグナル伝達事象に起因する腫瘍発生の一因となり得る。例えば、PI(3,4,5)P3のPI(4,5)P2への逆変換を触媒するPTEN腫瘍抑制因子のホスファターゼの機能喪失は、PI(3,4,5)P3のPI3K媒介性産生の調節解除を介して、非常に広範囲の腫瘍と関連付けられる(SimpsonおよびParsons、Exp.Cell Res.、2001年、264、29〜41頁)。さらに、他のPI3K媒介性シグナル伝達事象の作用の増大は、例えばAKTの活性化によって、種々の癌の一因となると考えられている(NicholsonおよびAndeson、Cellular Signaling、2002年、14、381〜395頁)。
【0017】
クラスIa PI3K酵素はまた、腫瘍細胞での増殖および生存シグナル伝達の媒介における役割に加えて、腫瘍関連ストローマ細胞におけるその機能を介して腫瘍発生の一因となるという十分な証拠もある。例えば、PI3Kシグナル伝達は、VEGFなどの血管新生促進因子に反応して、内皮細胞での血管新生事象の媒介において重要な役割を果たすことが公知である(abidら、Arterioscler、Thromb.Vasc.Biol.、2004年、24、294〜300頁)。クラスI PI3K酵素はまた、運動性および移動にも関与するため(Sawyer、Expert Opinion investing.Drugs、2004年、13、1〜19頁)、PI3K阻害剤は、腫瘍細胞浸潤および転移の阻害を介して治療上の利点を提供することが予想される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、式(I):
【0019】
【化3】

(I)
[式中;
R1は、ヘテロアリールまたは置換ヘテロアリールであり、
R2は、水素、C1〜C6アルキル、置換C1〜C6アルキル、−COOH、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキルから選択され、
R3およびR4は各々、独立に、水素、ハロゲン、アシル、アミノ、置換アミノ、C1〜6アルキル、置換C1〜6アルキル、C3〜7シクロアルキル、置換C3〜7シクロアルキル、C3〜7ヘテロシクロアルキル、置換C3〜7ヘテロシクロアルキル、アルキルカルボキシ、アミノアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、アリールシクロアルキル、置換アリールシクロアルキル、ヘテロアリールアルキル、置換ヘテロアリールアルキル、シアノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ニトロ、アシルオキシおよびアリールオキシから選択され、
nは、0〜2である]
の新規な化合物、および/またはその医薬上許容される塩、水和物、溶媒和物もしくはプロドラッグに関する。
【0020】
本発明はまた、有効量の式(I)の化合物を、それを必要としている対象に投与する工程を含む、癌を治療する方法に関する。
【0021】
本発明はまた、有効量の式(I)の化合物を、それを必要としている対象に投与する工程を含む、自己免疫障害、炎症性疾患、心血管疾患、神経変性疾患、アレルギー、喘息、膵臓炎、多臓器不全、腎臓疾患、血小板凝集、精子の運動性、移植拒絶、移植片拒絶および肺傷害から選択される1種または複数の病態を治療する方法に関する。
【0022】
本発明のPI3キナーゼ阻害化合物をさらなる活性成分と一緒に投与する方法も本発明に含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の式(I)の化合物は、1種または複数のPI3キナーゼを阻害する。適切には、式(I)の化合物は、PI3Kα、PI3Kδ、PI3KβおよびPI3Kγから選択される1種または複数のPI3キナーゼを阻害する。
【0024】
適切には、PI3キナーゼ活性の阻害剤として活性な式(I)の化合物は、式(II):
【0025】
【化4】

(II)
[式中;
R1は、ヘテロアリールまたは置換ヘテロアリールであり、
R2は、水素、C1〜6アルキル、置換C1〜C6アルキル、−COOH、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキルから選択される]
を有する化合物、および/またはその医薬上許容される塩、水和物、溶媒和物もしくはプロドラッグである。
【0026】
適切には、本発明には、式(I)または(II)(式中、R1は、単環式ヘテロアリールまたは置換単環式ヘテロアリールである)の化合物が含まれる。
【0027】
適切には、本発明には、式(I)または(II)(式中、R2は、水素であり、R1は、単環式ヘテロアリールまたは置換単環式ヘテロアリールである)の化合物が含まれる。
【0028】
適切には、本発明には、式(I)または(II)(式中、R1は、1〜2個の窒素を含有する所望により置換された単環式ヘテロアリールである)の化合物が含まれる。
【0029】
適切には、本発明には、式(I)または(II)(式中、R2は、水素であり、R1は、1〜2個の窒素を含有する所望により置換された単環式ヘテロアリールである)の化合物が含まれる。
【0030】
適切には、本発明には、式(I)または(II)(式中、R1は、水素、ハロゲン、C1〜C6アルキル、アシル、トリフルオロメチル、−(CHCOOH、シアノ、アミノ、アルキルアミノ、ニトロ、ヒドロキシル、アルコキシ、アシルオキシ、アリールオキシ、アシルアミノ、アリールアミノからなる群から選択される1〜3個の置換基で所望により置換されている単環式ヘテロアリールであり、nは、0〜6である)の化合物が含まれる。
【0031】
適切には、本発明には、式(I)または(II)(式中、R2は、水素であり、R1は、水素、ハロゲン、C1〜C6アルキル、アシル、トリフルオロメチル、−(CHCOOH、シアノ、アミノ、アルキルアミノ、ニトロ、ヒドロキシル、アルコキシ、アシルオキシ、アリールオキシ、アシルアミノ、アリールアミノからなる群から選択される1〜3個の置換基で所望により置換されている単環式ヘテロアリールであり、nは、0〜6である)の化合物が含まれる。
【0032】
適切には、本発明には、式(I)または(II)(式中、R1は、水素、ハロゲン、C1〜C6アルキル、アシル、トリフルオロメチル、−(CHCOOH、シアノ、アミノ、アルキルアミノ、ニトロ、ヒドロキシル、アルコキシ、アシルオキシ、アリールオキシ、アシルアミノ、アリールアミノからなる群から選択される1〜3個の置換基で所望により置換されている1個または2個の窒素を含有する単環式ヘテロアリールであり、nは、0〜6である)の化合物が含まれる。
【0033】
適切には、本発明には、式(I)または(II)(式中、R2は、水素であり、R1は、水素、ハロゲン、C1〜C6アルキル、アシル、トリフルオロメチル、−(CHCOOH、シアノ、アミノ、アルキルアミノ、ニトロ、ヒドロキシル、アルコキシ、アシルオキシ、アリールオキシ、アシルアミノ、アリールアミノからなる群から選択される1〜3個の置換基で所望により置換されている1個または2個の窒素を含有する単環式ヘテロアリールであり、nは、0〜6である)の化合物が含まれる。
【0034】
適切には、本発明には、式(I)または(II)(式中、R2は、水素であり、R1は、水素、ハロゲン、C1〜C6アルキル、アシル、トリフルオロメチル、−(CHCOOH、シアノ、アミノ、アルキルアミノ、ニトロ、ヒドロキシル、アルコキシ、アシルオキシ、アリールオキシ、アシルアミノ、アリールアミノからなる群から選択される1〜3個の置換基で所望により置換されている1個の窒素を含有する単環式ヘテロアリールであり、nは、0〜6である)の化合物が含まれる。
【0035】
適切には、本発明には、式(I)または(II)(式中、R2は、水素またはC1〜6アルキルである)の化合物、および/またはその医薬上許容される塩、水和物、溶媒和物もしくはプロドラッグが含まれる。
【0036】
適切には、PI3キナーゼ活性の阻害剤として有用な本発明の化合物は、
(5Z)−5−{[4−(3−ピリジニル)−6−キノリニル]メチリデン}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン;
(5Z)−5−{[4−(2−ピリジニル)−6−キノリニル]メチリデン}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン;
(5Z)−5−({4−[2−(メチルオキシ)−5−ピリミジニル]−6−キノリニル}メチリデン)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン;
(5Z)−5−({4−[2−(メチルオキシ)−4−ピリジニル]−6−キノリニル}メチリデン)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン;
(5Z)−5−{[4−(6−アミノ−3−ピリジニル)−6−キノリニル]メチリデン}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン;
(5Z)−5−{[4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−4−ピリジニル)−6−キノリニル]メチリデン}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン;
(5Z)−5−({4−[6−(4−モルホリニル)−3−ピリジニル]−6−キノリニル}メチリデン)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン;
(5Z)−5−({4−[6−(4−メチル−1−ピペラジニル)−3−ピリジニル]−6−キノリニル}メチリデン)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン;
(5Z)−5−{[4−(3−ピリダジニル)−6−キノリニル]メチリデン}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン;
(5Z)−5−({4−[2−(メチルオキシ)−5−ピリミジニル]−6−キノリニル}メチリデン)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン;
(5Z)−5−{[4−(4−ピリジニル)−6−キノリニル]メチリデン}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン;および
(5Z)−3−メチル−5−{[4−(4−ピリジニル)−6−キノリニル]メチリデン}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン;
および/またはその医薬上許容される塩、水和物、溶媒和物もしくはプロドラッグである。
【0037】
本発明はまた、有効量の式(I)の化合物、および/またはその医薬上許容される塩と、微小管阻害剤、白金配位錯体、アルキル化剤、抗生物質製剤、トポイソメラーゼII阻害剤、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼI阻害剤、ホルモンおよびホルモン類似体、シグナル伝達経路阻害剤、非受容体チロシンキナーゼ血管新生阻害剤、免疫療法剤、アポトーシス促進剤および細胞周期シグナル伝達阻害剤からなる群から選択されものなどの少なくとも1種の抗悪性腫瘍薬とを、それを必要としている対象に一緒に投与する工程を含む、癌を治療する方法にも関する。
【0038】
本発明はまた、有効量の式(I)の化合物、および/またはその医薬上許容される塩と、受容体チロシンキナーゼ阻害剤、非受容体チロシンキナーゼ阻害剤、SH2/SH3ドメイン遮断剤、セリン/スレオニンキナーゼ阻害剤、ホスファチジルイノシトール−3キナーゼ阻害剤、ミオイノシトールシグナル伝達阻害剤およびRas癌遺伝子阻害剤からなる群から選択されるものなどの少なくとも1種のシグナル伝達経路阻害剤とを、それを必要としている対象に一緒に投与する工程を含む、癌を治療する方法にも関する
【0039】
本明細書で使用する場合、「有効量」という用語は、例えば、研究者または臨床医によって求められる、組織、系、動物またはヒトの生物学的または医学的反応を誘発するであろう薬物または医薬品の量を意味する。さらに、「治療有効量」という用語は、そのような量を投与されていない対応する対象と比較して、疾患、傷害もしくは副作用の、治療改善、治癒、予防もしくは寛解、または疾患もしくは障害の進行速度の減少をもたらす任意の量を意味する。この用語はまたその範囲内に、通常の生理機能を高めるのに効果的な量も含む。
【0040】
式(I)の化合物は、本発明の医薬組成物中に含まれる。
【0041】
置換アミノという用語は、本明細書で使用する場合、−NR30R40(式中、各R30およびR40は、水素、C1〜6アルキル、アシル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、C3〜C7シクロアルキルおよび置換シクロアルキルを含めた基から独立に選択される)を意味する。
【0042】
「アリール」という用語は、本明細書で使用する場合、別段の定義がない限り、芳香族炭化水素環系を意味する。環系は、単環式または縮合多環式(例えば、二環式、三環式など)でもよい。様々な実施形態では、単環式アリール環は、C5〜C10、またはC5〜C7、またはC5〜C6であり、これらの炭素数は、環系を形成する炭素原子の数を示す。C6環系、すなわちフェニル環は、適切なアリール基である。様々な実施形態では、多環式環は、二環式アリール基であり、適切な二環式アリール基は、C8〜C12、またはC9〜C10である。10個の炭素原子を有するナフチル環は、適切な多環式アリール基である。
【0043】
「ヘテロアリール」という用語は、本明細書で使用する場合、別段の定義がない限り、炭素および少なくとも1個のヘテロ原子を含有する芳香環系を意味する。ヘテロアリールは、単環式または多環式でもよい。単環式ヘテロアリール基は、環中に1〜4個のヘテロ原子を有してもよく、多環式環は、縮合環、スピロ環または架橋環の接合部を含有し得る。単環式ヘテロアリール環は、5〜8原子(炭素およびヘテロ原子)を含有してもよい。二環式ヘテロアリール環は、8〜12原子を含有してもよい。例示的なヘテロアリール基には、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、フラン、イミダゾール、インドール、イソチアゾール、オキサゾール、ピペラジン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、キノリン、キナゾリン、キノキサリン、チアゾールおよびチオフェンが挙げられる。
【0044】
「単環式ヘテロアリール」という用語は、本明細書で使用する場合、別段の定義がない限り、1〜5個の炭素原子および1〜3個のヘテロ原子を含有する単環式ヘテロアリール環を意味する。
【0045】
「アルコキシ」という用語は、本明細書で使用する場合は、−OCH、−OCHCHおよび−OC(CHを含めた、−O(アルキル)(アルキルは、本明細書に記載する通り)を意味する。
【0046】
「シクロアルキル」という用語は、本明細書で使用する場合、別段の定義がない限り、非芳香族不飽和または飽和の、環式または多環式C〜C12を意味する。
【0047】
シクロアルキルおよび置換シクロアルキル置換基の例には、本明細書で使用する場合、シクロヘキシル、アミノシクロヘキシル、シクロブチル、アミノシクロブチル、4−ヒドロキシ−シクロヘキシル、2−エチルシクロヘキシル、プロピル4−メトキシシクロヘキシル、4−メトキシシクロヘキシル、4−カルボキシシクロヘキシル、シクロプロピル、アミノシクロペンチルおよびシクロペンチルが挙げられる。
【0048】
「ヘテロシクロアルキル」という用語は、本明細書で使用する場合は、少なくとも1個の炭素および少なくとも1個のヘテロ原子を含有する、非芳香族不飽和または飽和の、単環式または多環式複素環を意味する。例示的な単環式複素環には、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジンおよびモルホリンが挙げられる。例示的な多環式複素環には、キヌクリジンが挙げられる。
【0049】
「置換」という用語は、本明細書で使用する場合、別段の定義がない限り、対象化学部分が、1個または複数の置換基、適切には1〜5個の置換基、適切には水素、ハロゲン、C1〜C6アルキル、アミノ、トリフルオロメチル、−(CHCOOH、C3〜C7シクロアルキル、アミノアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールシクロアルキル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクロアルキル、シアノ、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、アシルオキシ、アシルアミノ、アリールアミノ、ニトロ、オキソ、−CO50および−CONR5560(式中、R50、R55およびR60は、各々独立に、水素およびアルキルから選択され、nは、0〜6である)からなる群から選択される1〜3個の置換基を有することを意味する。
【0050】
「アシルオキシ」という用語は、本明細書で使用する場合は、−OC(O)アルキル(アルキルは、本明細書に記載される通りである)を意味する。アシルオキシ置換基の例には、本明細書で使用する場合、−OC(O)CH、−OC(O)CH(CHおよび−OC(O)(CHCHが挙げられる。
【0051】
「アシルアミノ」という用語は、本明細書で使用する場合は、−N(H)C(O)アルキル(アルキルは、本明細書に記載される通りである)を意味する。N−アシルアミノ置換基の例には、本明細書で使用する場合、−N(H)C(O)CH、−N(H)C(O)CH(CHおよび−N(H)C(O)(CHCHが挙げられる。
【0052】
「アリールオキシ」という用語は、本明細書で使用する場合は、−O(アリール)、−O(置換アリール)、−O(ヘテロアリール)または−O(置換ヘテロアリール)を意味する。
【0053】
「アリールアミノ」という用語は、本明細書で使用する場合は、−NH(アリール)、−NH(置換アリール)、−NH(ヘテロアリール)または−NH(置換ヘテロアリール)を意味する。
【0054】
「ヘテロ原子」という用語は、本明細書で使用する場合は、酸素、窒素または硫黄を意味する。
【0055】
「ハロゲン」という用語は、本明細書で使用する場合は、臭化物、ヨウ化物、塩化物およびフッ化物から選択される置換基を意味する。
【0056】
「−(CH」、「−(CH」などの用語で定義されるアルキル鎖を含めて、「アルキル」という用語およびその派生語、ならびに全ての炭素鎖において、本明細書で使用する場合、直鎖状または分枝状の、飽和または不飽和の炭化水素鎖を意味し、別段の定義がない限り、炭素鎖は1〜12個の炭素原子を含有する。
【0057】
本明細書で使用する場合、アルキルおよび置換アルキル置換基の例には、−CH、−CH−CH、−CH−CH−CH、−CH(CH、−CH−CH−C(CH、−CH−CF、−C≡C−C(CH、−C≡C−CH−OH、シクロプロピルメチル、−CH−C(CH−CH−NH、−C≡C−C、−C≡C−C(CH−OH、−CH−CH(OH)−CH(OH)−CH(OH)−CH(OH)−CH−OH、ピペリジニルメチル、メトキシフェニルエチル、−C(CH、−(CH−CH、−CH−CH(CH、−CH(CH)−CH−CH、−CH=CHおよび−C≡C−CHが含まれる。
【0058】
「治療する」という用語およびその派生語は、本明細書で使用する場合、予防的および治療的治療を意味する。
【0059】
「一緒の投与」という用語およびその派生語は、本明細書で使用する場合、本明細書に記載するようなPI3キナーゼ阻害化合物と、化学療法および放射線療法を含めた癌の治療に有用であることが公知のさらなる1種または複数の活性成分との同時投与、または別々の順次投与の任意の方法を意味する。さらなる1種または複数の活性成分という用語には、本明細書で使用する場合、癌の治療を必要としている患者に投与する場合に有利な特性を示すことが知られているまたは示す任意の化合物または治療剤が含まれる。適切には、投与が同時でない場合、化合物を互いに近い時間内に投与する。さらに化合物は、同一の剤形で投与してもよく、例えば1種の化合物を局所投与し、他の化合物を経口投与してもよい。
【0060】
「化合物」という用語は、本明細書で使用する場合、化合物の全ての異性体が含まれる。このような異性体の例には、エナンチオマー、互変異性体、回転異性体が含まれる。
【0061】
本明細書に記載する特定の化合物は、1個または複数のキラル原子を含有してもよく、またはそうでなければ2種のエナンチオマー、または2種以上のジアステレオマーとして存在することができる。したがって、本発明の化合物には、エナンチオマー/ジアステレオマーの混合物、ならびに精製したエナンチオマー/ジアステレオマー、または鏡像異性的/ジアステレオマー的に濃縮された混合物が含まれる。また本発明の範囲内に含まれるものは、上記の式IまたはIIで表される化合物の個々の異性体、ならびに完全平衡または部分平衡している任意のその混合物である。本発明はまた、その異性体との混合物として上記の式で表される化合物の個々の異性体も包含し、その1つまたは複数のキラル中心は反転している。さらに、可能性のある互変異性体の例は、ヒドロキシ置換基の代わりにオキソ置換基である。また上記のように、全ての互変異性体および互変異性体の混合物は、式IまたはIIの化合物の範囲内に含まれることが理解される。
【0062】
式(I)の化合物は、本発明の医薬組成物に含まれる。−COOH基または−OH基が存在する場合、−COOHでは、例えばメチルエステル、エチルエステル、ピバロイルオキシメチルエステルなど、−OHでは、酢酸エステル、マレイン酸エステルなどの医薬上許容されるエステル、および持続放出製剤またはプロドラッグ製剤として使用するため溶解度または加水分解特性を改質するための当技術分野において公知のエステルを用いることができる。
【0063】
本発明の化合物は、ホスホイノシチド3−キナーゼ(PI3K)の阻害剤であることが今や見出された。ホスホイノシチド3−キナーゼ(PI3K)酵素が本発明の化合物によって阻害されると、PI3Kは、その酵素の生物学的および/または薬理作用を発揮することができない。したがって、本発明の化合物は、自己免疫障害、炎症性疾患、心血管疾患、神経変性疾患、アレルギー、喘息、膵臓炎、多臓器不全、腎臓疾患、血小板凝集、癌、精子の運動性、移植拒絶、移植片拒絶および肺傷害の治療に有用である。
【0064】
式(I)の化合物は、特に、自己免疫障害、炎症性疾患、心血管疾患、神経変性疾患、アレルギー、喘息、膵臓炎、多臓器不全、腎臓疾患、血小板凝集、癌、精子の運動性、移植拒絶、移植片拒絶および肺傷害の治療のための医薬として有用である。本発明の一実施形態では、式(I)の化合物は、1種または複数のホスホイノシチド3−キナーゼ(PI3K)、適切には、ホスホイノシチド3−キナーゼγ(PI3Kγ)、ホスホイノシチド3−キナーゼγ(PI3Kα)、ホスホイノシチド3−キナーゼγ(PI3Kβ)、および/またはホスホイノシチド3−キナーゼγ(PI3Kδ)の阻害剤である。
【0065】
式(I)による化合物は、ホスホイノシチド3−キナーゼ(PI3K)、適切にはホスホイノシチド3−キナーゼ(PI3Kα)活性の調整、特に阻害に適切である。したがって、本発明の化合物はまた、PI3Kによって媒介される障害の治療に有用である。前記治療は、ホスホイノシチド3−キナーゼの調整、特に阻害またはダウンレギュレーションに関与する。
【0066】
適切には、本発明の化合物は、多発性硬化症、乾癬、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患、肺炎症、血栓症、または髄膜炎もしくは脳炎などの脳の感染症/炎症;アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、CNS外傷、脳卒中または虚血状態;アテローム性動脈硬化症、心臓肥大、心筋細胞機能障害、血圧上昇または血管収縮などの心血管疾患から選択される障害の治療のための医薬の調製に使用される。
【0067】
適切には、式(I)の化合物は、自己免疫障害または炎症性疾患、例えば多発性硬化症、乾癬、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患、肺炎症、血栓症、または髄膜炎もしくは脳炎などの脳の感染症/炎症の治療に有用である。
【0068】
適切には、式(I)の化合物は、多発性硬化症、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、CNS外傷、脳卒中または虚血状態を含めた神経変性疾患の治療に有用である。
【0069】
適切には、式(I)の化合物は、アテローム性動脈硬化症、心臓肥大、心筋細胞機能障害、血圧上昇または血管収縮などの心血管疾患の治療に有用である。
【0070】
適切には、式(I)の化合物は、慢性閉塞性肺疾患、アナフィラキシーショック、線維症、乾癬、アレルギー性疾患、喘息、脳卒中、虚血状態、虚血再灌流、血小板凝集/活性化、骨格筋萎縮/肥大、癌組織における白血球動因、血管新生、浸潤転移、特に黒色腫、カポジ肉腫、急性および慢性の細菌およびウイルス感染、敗血症、移植拒絶、移植片拒絶、糸球体硬化症、糸球体腎炎、進行性腎線維症、肺の内皮および上皮傷害、ならびに肺気道炎症の治療に有用である。
【0071】
本発明の医薬活性化合物、特に、選択的に、またはPI3Kδ、PI3Kβ、および/またはPI3Kγの1種または複数と併せて、PI3Kαを阻害する化合物は、PI3キナーゼ阻害剤として活性があるため、癌の治療において治療上の有用性を示す
【0072】
適切には、本発明は、ヒトを含めた哺乳動物における癌の治療方法に関し、癌は、脳(神経膠腫)、神経膠芽腫、白血病、Bannayan−Zonana症候群、カウデン病、レルミット−ダクロス病、胸部、炎症性乳癌、ウィルムス腫瘍、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫、上衣細胞腫、髄芽細胞腫、結腸、頭頸部、腎臓、肺、肝臓、黒色腫、卵巣、膵臓、前立腺、肉腫、骨肉腫、骨巨細胞腫および甲状腺から選択される。
【0073】
適切には、本発明は、ヒトを含めた哺乳動物における癌の治療方法に関し、癌は、リンパ芽球性T細胞白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、ヘアリーセル白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性好中球性白血病、急性リンパ芽球性T細胞白血病、形質細胞腫、免疫芽球性大細胞型白血病、外套細胞白血病、多発性骨髄腫、巨核芽球性白血病、多発性骨髄腫、急性巨核球性白血病、前骨髄球性白血病および赤白血病から選択される。
【0074】
適切には、本発明は、ヒトを含めた哺乳動物における癌の治療方法に関し、癌は、悪性リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、リンパ芽球性T細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫および濾胞性リンパ腫から選択される。
【0075】
適切には、本発明は、ヒトを含めた哺乳動物における癌の治療方法に関し、癌は、神経芽細胞腫、膀胱癌、尿路上皮癌、肺癌、外陰癌、子宮頚癌、子宮内膜癌、腎臓癌、中皮腫、食道癌、唾液腺癌、肝細胞癌、胃癌、上咽頭癌、頬粘膜癌、口腔癌、GIST(消化管間質腫瘍)および睾丸癌から選択される。
【0076】
式(I)の化合物が、癌の治療のために投与される場合、「一緒の投与」という用語およびその派生語は、本明細書で使用する場合は、本明細書に記載するようなPI3キナーゼ阻害化合物と、化学療法および放射線療法を含めた癌の治療に有用であると知られているさらなる1種または複数の活性成分との同時投与、または別々の順次投与の任意の方法を意味する。さらなる1種または複数の活性成分という用語には、本明細書で使用する場合、癌の治療を必要としている患者に投与する場合、有利な特性を示すことが知られているまたは示す任意の化合物または治療剤が含まれる。好ましくは、投与が同時でない場合、化合物を互いに近い時間内に投与する。さらに化合物は、同一の剤形で投与してもよく、例えば1種の化合物を局所投与し、他の化合物を経口投与してもよい。
【0077】
典型的には、治療を受ける感受性腫瘍に対して活性を有する任意の抗悪性腫瘍薬を、本発明の癌の治療において一緒に投与してもよい。このような薬剤の例は、Cancer Principles and Practice of Oncology、V.T.DevitaおよびS.Hellman(編集者)、第6版(2001年2月15日)、Lippincott Williams & Wilkins Publishersに見出すことができる。当業者であれば、薬剤のどの組合せが有用であるかを薬物および関与する癌の特定の性質に基づいて識別することができるであろう。本発明に有用な典型的な抗悪性腫瘍薬には、それだけに限らないが、ジテルペノイドおよびビンカアルカロイドなどの微小管阻害剤;白金配位錯体;ナイトロジェンマスタード、オキサザホスホリン、スルホン酸アルキル、ニトロソ尿素およびトリアゼンなどのアルキル化剤;アントラサイクリン、アクチノマイシンおよびブレオマイシンなどの抗生物質製剤;エピポドフィロトキシンなどのトポイソメラーゼII阻害剤;プリンおよびピリミジン類似体ならびに葉酸拮抗化合物などの代謝拮抗剤;カンプトテシンなどのトポイソメラーゼI阻害剤;ホルモンおよびホルモン類似体;シグナル伝達経路阻害剤;非受容体チロシンキナーゼ血管新生阻害剤;免疫療法剤;アポトーシス促進剤;ならびに細胞周期シグナル伝達阻害剤が挙げられる。
【0078】
本発明のPI3キナーゼ阻害化合物と組み合わせて使用する、または一緒に投与する1種または複数のさらなる活性成分の例は、化学療法剤である。
【0079】
微小管阻害剤または有糸分裂阻害剤は、細胞周期のM期または有糸分裂期の間に腫瘍細胞の微小管に対して活性のある期特異的薬剤である。微小管阻害剤の例には、それだけに限らないが、ジテルペノイドおよびビンカアルカロイドが挙げられる。
【0080】
自然源由来のジテルペノイドは、細胞周期のG/M期に作用する期特異的抗癌剤である。ジテルペノイドは、β−チューブリンサブユニットと結合することによって微小管のこのタンパク質を安定化させると考えられている。その結果、有糸分裂が抑止されることに伴いタンパク質の分解が阻害され、細胞死がもたらされると思われる。ジテルペノイドの例には、それだけに限らないが、パクリタキセルおよびその類似体ドセタキセルが挙げられる。
【0081】
パクリタキセル、(2R,3S)−N−ベンゾイル−3−フェニルイソセリンとの5β,20−エポキシ−1,2α,4,7β,10β,13α−ヘキサ−ヒドロキシタキス−11−エン−9−オン4,10−ジアセテート2−ベンゾアート13−エステルは、タイヘイヨウイチイから単離した天然のジテルペン生成物であり、注射剤TAXOL(登録商標)として市販されている。それは、テルペンのタキサンファミリーのメンバーである。1971年にWaniらによって初めて単離され(J.Am.Chem、Soc.、93:2325、1971年)、Waniらは、その構造を化学的およびX線結晶学的方法によって特徴付けた。その活性の1つの機構は、パクリタキセルがチューブリンに結合し、したがって癌細胞増殖を阻害する能力に関する。Schiffら、Proc.Natl、Acad、Sci.USA、77:1561〜1565頁(1980年);Schiffら、Nature、277:665〜667頁(1979年);Kumar、J.Biol、Chem、256:10435〜10441頁(1981年)。いくつかのパクリタキセル誘導体の合成および抗癌活性の概説については、D.G.I.Kingstonら、Studies in Organic Chemistry、第26巻、表題「New trends in Natural Products Chemistry 1986」、Attaur−Rahman、P.W.Le Quesne、Eds.(Elsevier、Amsterdam、1986年)219〜235頁を参照されたい。
【0082】
パクリタキセルは、米国において難治性の卵巣癌の治療(Markmanら、Yale Journal of Biology and Medicine、64:583、1991年;McGuireら、Ann.lntem,Med.、111:273,1989年)、ならびに乳癌の治療(Holmesら、J.Nat.Cancer Inst.、83:1797、1991年)における臨床用途が承認された。それは、皮膚(Einzigら、Proc.Am.Soc.Clin.Oncol.、20:46)および頭頸部癌(Forastireら、Sem.Oncol.、20:56、1990年)における新生物の治療のための有力候補である。この化合物はまた、多発性嚢胞腎(Wooら、Nature、368:750、1994年)、肺癌およびマラリアの治療のための可能性も示す。パクリタキセルによる患者の治療は、閾濃度(50nM)を超える投与の間に関連する(Kearns、C.M.ら、Seminars in Oncology、3(6)、16〜23頁、1995年)骨髄抑制をもたらす(多数の細胞系統、Ignoff、R.J.ら、Cancer Chemotherapy Pocket Guide、1998年)。
【0083】
ドセタキセル、(2R,3S)−N−カルボキシ−3−フェニルイソセリン,N−tert−ブチルエステル,13−エステルおよび5β−20−エポキシ−1,2α,4,7β,10β,13α−ヘキサヒドロキシタキス−11−エン−9−オン4−アセテート2−ベンゾアート、三水和物は、TAXOTERE(登録商標)として注射剤として市販されている。ドセタキセルは、乳癌の治療に適応される。ドセタキセルは、ヨーロッパイチイの木の針葉から抽出した天然の前駆物質である10−デアセチル−バッカチンIIIを使用して調製したパクリタキセル(所要量)の半合成誘導体である。ドセタキセルの用量制限毒性は、好中球減少である。
【0084】
ビンカアルカロイドは、植物のニチニチソウ由来の期特異的抗悪性腫瘍薬である。ビンカアルカロイドは、特異的にチューブリンに結合することによって、細胞周期のM期(有糸分裂)で作用する。その結果、結合したチューブリン分子は、微小管に重合できない。有糸分裂が分裂中期に停止し、細胞死がもたらされると考えられている。ビンカアルカロイドの例には、それだけに限らないが、ビンブラスチン、ビンクリスチンおよびビノレルビンが挙げられる。
【0085】
ビンブラスチン、硫酸ビンカロイコブラスチンは、VELBAN(登録商標)として注射剤として市販されている。それは、様々な固形腫瘍の二次治療に適応される可能性があるが、睾丸癌、ならびにホジキン病を含めた様々なリンパ腫;ならびにリンパ球性および組織球性リンパ腫の治療に主として適応される。骨髄抑制が、ビンブラスチンの用量を制限する副作用である。
【0086】
ビンクリスチン、ビンカロイコブラスチン、22−オキソ−、硫酸塩は、ONCOVIN(登録商標)として注射剤として市販されている。ビンクリスチンは、急性白血病の治療に適応され、ホジキンおよび非ホジキン悪性リンパ腫のための治療計画における使用も見出された。脱毛および神経作用が、ビンクリスチンの最も一般的な副作用であり、より少ない程度であるが骨髄抑制および消化管粘膜炎作用が起こる。
【0087】
ビノレルビン、3’,4’−ジデヒドロ−4’−デオキシ−C’−ノルビンカロイコブラスチン[R−(R,R)−2,3−ジヒドロキシブタン二酸(1:2)(塩)](酒石酸ビノレルビンの注射剤(NAVELBINE(登録商標))として市販されている)は、半合成ビンカアルカロイドである。ビノレルビンは、単一の薬剤としてまたはシスプラチンなどの他の化学療法剤と組み合わせて、様々な固形腫瘍、特に非小細胞肺癌、進行性乳癌および耐ホルモン性前立腺癌の治療に適応される。骨髄抑制が、ビノレルビンの最も一般的な用量を制限する副作用である。
【0088】
白金配位錯体は、DNAと相互作用する非期特異的抗癌剤である。白金錯体が腫瘍細胞に入り、アクア化され、DNAと鎖内および鎖間架橋を形成し、腫瘍に有害な生物学的作用をもたらす。白金配位錯体の例には、それだけに限らないが、シスプラチンおよびカルボプラチンが挙げられる。
【0089】
シスプラチン、cis−ジアンミンジクロロ白金は、PLATINOL(登録商標)として注射剤として市販されている。シスプラチンは、転移性睾丸癌、卵巣癌および進行性膀胱癌の治療に主として適応される。シスプラチンの主要な用量を制限する副作用は、腎毒性(水分負荷および利尿によって制御し得る)および聴器毒性である。
【0090】
カルボプラチン、白金,ジアンミン[1,1−シクロブタン−ジカルボキシラート(2−)−O,O’]は、PARAPLATIN(登録商標)として注射剤として市販されている。カルボプラチンは、進行卵巣癌腫の第一次および第二次治療に主として適応される。骨髄抑制は、カルボプラチンの用量制限毒性である。
【0091】
アルキル化剤は、非期特異的抗癌剤であり、強力な求電子物質である。典型的には、アルキル化剤は、リン酸、アミノ、スルフヒドリル、ヒドロキシル、カルボキシルおよびイミダゾール基などのDNA分子の求核性部分を介して、アルキル化によってDNAと共有結合を形成する。このようなアルキル化は、核酸機能を阻害し、細胞死をもたらす。アルキル化剤の例には、それだけに限らないが、シクロホスファミド、メルファランおよびクロラムブシルなどのナイトロジェンマスタード;ブスルファンなどのスルホン酸アルキル;カルムスチンなどのニトロソ尿素;ならびにダカルバジンなどのトリアゼンが挙げられる。
【0092】
シクロホスファミド、2−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]テトラヒドロ−2H−1,3,2−オキサザホスホリン2−オキシド一水和物は、CYTOXAN(登録商標)として注射剤または錠剤として市販されている。シクロホスファミドは、単一の薬剤として、または他の化学療法剤と組み合わせて、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫および白血病の治療に適応される。脱毛、悪心、嘔吐および白血球減少が、シクロホスファミドの最も一般的な用量を制限する副作用である。
【0093】
メルファラン、4−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]−L−フェニルアラニンは、ALKERAN(登録商標)として注射剤または錠剤として市販されている。メルファランは、多発性骨髄腫および卵巣の切除可能でない上皮癌腫の対症療法に適応される。骨髄抑制が、メルファランの最も一般的な用量を制限する副作用である。
【0094】
クロランブシル、4−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ベンゼンブタン酸は、LEUKERAN(登録商標)錠剤として市販されている。クロランブシルは、慢性リンパ性白血病;ならびにリンパ肉腫、巨大濾胞性リンパ腫およびホジキン病などの悪性リンパ腫の対症療法に適応される。骨髄抑制が、クロランブシルの最も一般的な用量を制限する副作用である。
【0095】
ブスルファン、1,4−ブタンジオールジメタンスルホナートは、MYLERAN(登録商標)錠剤として市販されている。ブスルファンは、慢性骨髄性白血病の対症療法に適応される。骨髄抑制が、ブスルファンの最も一般的な用量を制限する副作用である。
【0096】
カルムスチン、1,3−[ビス(2−クロロエチル)−1−ニトロソ尿素は、BiCNU(登録商標)として凍結乾燥材料の単一のバイアルとして市販されている。カルムスチンは、単一の薬剤として、または脳腫瘍、多発性骨髄腫、ホジキン病および非ホジキンリンパ腫のための他の薬剤と組み合わせて、対症療法に適応される。遅延型骨髄抑制が、カルムスチンの最も一般的な用量を制限する副作用である。
【0097】
ダカルバジン、5−(3,3−ジメチル−1−トリアゼノ)−イミダゾール−4−カルボキサミドは、DTIC−Dome(登録商標)として材料の単一のバイアルとして市販されている。ダカルバジンは、転移性悪性黒色腫の治療に適応され、他の薬剤と組み合わせてホジキン病の第二次治療に適応される。悪心、嘔吐および食欲不振が、ダカルバジンの最も一般的な用量を制限する副作用である。
【0098】
抗生物質の抗悪性腫瘍薬は、DNAと結合またはインターカレートする非期特異的薬剤である。典型的には、このような活性は、安定的DNA複合体または鎖切断をもたらし、これは核酸の通常の機能を阻害し、細胞死をもたらす。抗生物質の抗悪性腫瘍薬の例には、それだけに限らないが、ダクチノマイシンなどのアクチノマイシン;ダウノルビシンおよびドキソルビシンなどのアントラサイクリン;ならびにブレオマイシンが挙げられる。
【0099】
アクチノマイシンDとしても知られているダクチノマイシンは、COSMEGEN(登録商標)として注射剤型として市販されている。ダクチノマイシンは、ウィルムス腫瘍および横紋筋肉腫の治療に適応される。悪心、嘔吐および食欲不振が、ダクチノマイシンの最も一般的な用量を制限する副作用である。
【0100】
ダウノルビシン、(8S−cis−)−8−アセチル−10−[(3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−α−L−lyxo−ヘキソピラノシル)オキシ]−7,8,9,10−テトラヒドロ−6,8,11−トリヒドロキシ−1−メトキシ−5,12ナフタセンジオン塩酸塩は、DAUNOXOME(登録商標)としてリポソーム注射剤型として、またはCERUBIDINE(登録商標)として注射用として市販されている。ダウノルビシンは、急性非リンパ性白血病および進行したHIV関連カポジ肉腫の治療における寛解導入療法の治療に適応される。骨髄抑制が、ダウノルビシンの最も一般的な用量を制限する副作用である。
【0101】
ドキソルビシン、(8S、10S)−10−[(3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−α−L−lyxo−ヘキソピラノシル)オキシ]−8−グリコロイル,7,8,9,10−テトラヒドロ−6,8,11−トリヒドロキシ−1−メトキシ−5,12ナフタセンジオン塩酸塩は、RUBEX(登録商標)またはADRIAMYCIN RDF(登録商標)として注射剤型として市販されている。ドキソルビシンは、急性リンパ芽球性白血病および急性骨髄芽球性白血病の治療に主として適応されるが、いくつかの固形腫瘍およびリンパ腫の治療における有用な成分でもある。骨髄抑制が、ドキソルビシンの最も一般的な用量を制限する副作用である。
【0102】
ブレオマイシンは、ストレプトマイセスバーチシラスの菌株から単離された細胞傷害性糖ペプチド抗生物質の混合物であり、BLENOXANE(登録商標)として市販されている。ブレオマイシンは、単一の薬剤として、または扁平上皮癌腫、リンパ腫および睾丸癌の他の薬剤と組み合わせて、対症療法に適応される。肺および皮膚の毒性が、ブレオマイシンの最も一般的な用量を制限する副作用である。
【0103】
トポイソメラーゼII阻害剤には、それだけに限らないが、エピポドフィロトキシンが挙げられる。
【0104】
エピポドフィロトキシンは、植物のマンドレーク由来の期特異的抗悪性腫瘍薬である。エピポドフィロトキシンは典型的には、トポイソメラーゼIIおよびDNAと三元複合体を形成し、DNA鎖切断をもたらすことによって、細胞周期のS期およびG期における細胞に影響を及ぼす。鎖切断が蓄積し、細胞死がもたらされる。エピポドフィロトキシンの例には、それだけに限らないが、エトポシドおよびテニポシドが挙げられる。
【0105】
エトポシド、4’−デメチル−エピポドフィロトキシン9[4,6−0−(R)−エチリデン−β−D−グルコピラノシド]は、VePESID(登録商標)として注射剤またはカプセル剤として市販されており、VP−16として一般に公知である。エトポシドは、単一の薬剤として、または他の化学療法薬剤と組み合わせて、睾丸癌および非小細胞肺癌の治療に適応される。骨髄抑制が、エトポシドの最も一般的な副作用である。白血球減少の発生率は、血小板減少よりも重篤である傾向がある。
【0106】
テニポシド、4’−デメチル−エピポドフィロトキシン9[4,6−O−(R)−テニリデン−β−D−グルコピラノシド]は、VUMON(登録商標)として注射剤として市販されており、VM−26として一般に公知である。テニポシドは、単一の薬剤として、または他の化学療法薬剤と組み合わせて、子供の急性白血病の治療に適応される。骨髄抑制が、テニポシドの最も一般的な用量を制限する副作用である。テニポシドは、白血球減少および血小板減少の両方を誘発する場合がある。
【0107】
抗代謝悪性腫瘍薬は、DNA合成を阻害することによって、またはプリンまたはピリミジン塩基合成を阻害し、したがってDNA合成を制限することによって、細胞周期のS期(DNA合成)に作用する期特異的抗悪性腫瘍薬である。結果的に、S期は進行せず、細胞死がもたらされる。抗代謝抗悪性腫瘍薬の例には、それだけに限らないが、フルオロウラシル、メトトレキサート、シタラビン、メルカプトプリン、チオグアニンおよびゲムシタビンが挙げられる。
【0108】
5−フルオロウラシル、5−フルオロ−2,4−(1H,3H)ピリミジンジオンは、フルオロウラシルとして市販されている。5−フルオロウラシルの投与は、チミジル酸合成の阻害をもたらし、またRNAおよびDNAの両方に組み込まれる。結果は、典型的には細胞死である。5−フルオロウラシルは、単一の薬剤として、または他の化学療法薬剤と組み合わせて、胸部、結腸、直腸、胃および膵臓の癌腫の治療に適応される。骨髄抑制および粘膜炎が、5−フルオロウラシルの用量を制限する副作用である。他のフロロピリミジン類似体には、5−フルオロデオキシウリジン(フロクスウリジン)および5−フルオロデオキシウリジン一リン酸が挙げられる。
【0109】
シタラビン、4−アミノ−1−β−D−アラビノフラノシル−2(1H)−ピリミジノンは、CYTOSAR−U(登録商標)として市販されており、Ara−Cとして一般に知られている。シタラビンは、成長するDNA鎖へのシタラビンの末端取込みによりDNA鎖伸張を阻害することによって、S期において細胞期の特異性を示すと考えられている。シタラビンは、単一の薬剤として、または他の化学療法薬剤と組み合わせて、急性白血病の治療に適応される。他のシチジン類似体には、5−アザシチジンおよび2’,2’−ジフルオロデオキシシチジン(ゲムシタビン)が挙げられる。シタラビンは、白血球減少、血小板減少および粘膜炎を誘発する。
【0110】
メルカプトプリン、1,7−ジヒドロ−6H−プリン−6−チオン一水和物は、PURINETHOL(登録商標)として市販されている。メルカプトプリンは、まだ今のところ特定されていない機構によりDNA合成を阻害することによって、S期において細胞期の特異性を示す。メルカプトプリンは、単一の薬剤として、または他の化学療法薬剤と組み合わせて、急性白血病の治療に適応される。骨髄抑制および消化管粘膜炎が、高用量のメルカプトプリンの予想される副作用である。有用なメルカプトプリン類似体は、アザチオプリンである。
【0111】
チオグアニン、2−アミノ−1,7−ジヒドロ−6H−プリン−6−チオンは、TABLOID(登録商標)として市販されている。チオグアニンは、まだ今のところ特定されていない機構によってDNA合成を阻害することによってS期において細胞期の特異性を示す。チオグアニンは、単一の薬剤として、または他の化学療法薬剤と組み合わせて、急性白血病の治療に適応される。白血球減少、血小板減少および貧血を含めた骨髄抑制が、チオグアニン投与の最も一般的な用量を制限する副作用である。しかし、胃腸の副作用が起こり、用量を制限する場合がある。他のプリン類似体には、ペントスタチン、エリスロヒドロキシノニルアデニン、リン酸フルダラビンおよびクラドリビンが挙げられる。
【0112】
ゲムシタビン、2’−デオキシ−2’,2’−ジフルオロシチジン一塩酸塩(β−異性体)は、GEMZAR(登録商標)として市販されている。ゲムシタビンは、G1/S境界において細胞の進行を遮断することによって、S期において細胞期の特異性を示す。ゲムシタビンは、シスプラチンと組み合わせて局所進行性非小細胞肺癌の治療に適応され、単独で局所進行性膵癌の治療に適応される。白血球減少、血小板減少および貧血を含めた骨髄抑制が、ゲムシタビン投与の最も一般的な用量を制限する副作用である。
【0113】
メトトレキサート、N−[4[[(2,4−ジアミノ−6−プテリジニル)メチル]メチルアミノ]ベンゾイル]−L−グルタミン酸は、メトトレキサートナトリウムとして市販されている。メトトレキサートは、プリンヌクレオチドおよびチミジル酸の合成に必要であるジヒドロ葉酸レダクターゼの阻害を介して、DNA合成、修復および/または複製を阻害することによって、特にS期において細胞期の活性を示す。メトトレキサートは、単一の薬剤として、または他の化学療法薬剤と組み合わせて、絨毛癌、髄膜白血病、非ホジキンリンパ腫、ならびに胸部、頭、首、卵巣および膀胱の癌腫の治療に適応される。骨髄抑制(白血球減少、血小板減少および貧血)ならびに粘膜炎が、メトトレキサート投与の予想される副作用である。
【0114】
カンプトテシンおよびカンプトテシン誘導体を含めたカンプトテシンは、トポイソメラーゼI阻害剤として利用可能、または開発中である。カンプトテシン細胞毒性活性は、そのトポイソメラーゼI阻害活性と関連すると考えられている。カンプトテシンの例には、それだけに限らないが、下記で説明するようなイリノテカン、トポテカンおよび7−(4−メチルピペラジノ−メチレン)−10,11−エチレンジオキシ−20−カンプトテシンの様々な光学的形態が挙げられる。
【0115】
イリノテカンHCl、(4S)−4,11−ジエチル−4−ヒドロキシ−9−[(4−ピペリジノピペリジノ)カルボニルオキシ]−1H−ピラノ[3’,4’,6,7]インドリジノ[1,2−b]キノリン−3,14(4H,12H)−ジオン塩酸塩は、注射剤CAMPTOSAR(登録商標)として市販されている。
【0116】
イリノテカンは、その活性代謝物SN−38と共に、トポイソメラーゼI−DNA複合体に結合するカンプトテシンの誘導体である。細胞毒性は、トポイソメラーゼI:DNA:イリノテカンまたはSN−38三元複合体と複製酵素との相互作用によってもたらされる回復不能な二重鎖切断の結果として生じると考えられている。イリノテカンは、結腸または直腸の転移性癌の治療に適応される。イリノテカンHClの用量を制限する副作用は、好中球減少を含めた骨髄抑制および下痢を含めたGI作用である。
【0117】
トポテカンHCl、(S)−10−[(ジメチルアミノ)メチル]−4−エチル−4,9−ジヒドロキシ−1H−ピラノ[3’,4’,6,7]インドリジノ[1,2−b]キノリン−3,14−(4H,12H)−ジオン一塩酸塩は、注射剤HYCAMTIN(登録商標)として市販されている。トポテカンは、トポイソメラーゼI−DNA複合体に結合し、DNA分子のねじれひずみに反応してトポイソメラーゼIによって引き起こされる一本鎖切断の再結合を妨げるカンプトテシンの誘導体である。トポテカンは、卵巣の転移性癌腫および小細胞肺癌の第二次治療に適応される。トポテカンHClの用量を制限する副作用は、骨髄抑制、主に好中球減少である。
【0118】
また目的とする、化学名「7−(4−メチルピペラジノ−メチレン)−10,11−エチレンジオキシ−20(R,S)−カンプトテシン」(ラセミ混合物)または「7−(4−メチルピペラジノ−メチレン)−10,11−エチレンジオキシ−20(R)−カンプトテシン」(Rエナンチオマー)または「7−(4−メチルピペラジノ−メチレン)−10,11−エチレンジオキシ−20(S)−カンプトテシン」(Sエナンチオマー)で知られている、ラセミ混合物(R,S)形態、ならびにRおよびSエナンチオマーを含めた、現在開発中の下記の式Aのカンプトテシン誘導体である。
【0119】
【化5】

このような化合物、ならびに関連する化合物は、その作製方法を含めて、米国特許第6,063,923号、同第5,342,947号、同第5,559,235号、同第5,491,237号および1997年11月24日に出願された係属中の米国特許出願第08/977,217号に記載されている。
【0120】
ホルモンおよびホルモン類似体は、ホルモンと癌の増殖および/または増殖の欠如との関係がある癌を治療するために有用な化合物である。癌治療に有用なホルモンおよびホルモン類似体の例には、それだけに限らないが、子供の悪性リンパ腫および急性白血病の治療に有用なプレドニゾンならびにプレドニゾロンなどの副腎皮質ステロイド;エストロゲン受容体を含有する副腎皮質癌腫およびホルモン依存性乳癌の治療に有用なアミノグルテチミド、ならびにアナストロゾール、レトラゾール、ボラゾールおよびエキセメスタンなどの他のアロマターゼ阻害剤;ホルモン依存性乳癌および子宮内膜癌腫の治療に有用な酢酸メゲストロールなどのプロゲストリン;前立腺癌腫および良性前立腺肥大症に治療に有用なエストロゲン、アンドロゲンおよび抗アンドロゲン(フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、酢酸シプロテロンなど)、ならびに5α−レダクターゼ(フィナステリドおよびデュタステライドなど);米国特許第5,681,835号、同第5,877,219号および同第6,207,716号に記載されているような、ホルモン依存性乳癌および他の感受性癌の治療に有用なタモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、ヨードキシフェンなどの抗エストロゲン剤、ならびに選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM);ならびに前立腺癌腫の治療のための、黄体形成ホルモン(LH)および/または濾胞成熟ホルモン(FSH)の放出を刺激する性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)およびその類似体、例えば、酢酸ゴセレリンおよびロイプロリドなどのLHRHアゴニストおよびアンタゴニストが挙げられる。
【0121】
シグナル伝達経路阻害剤は、細胞内変化を誘起する化学過程を遮断または阻害する阻害剤である。本明細書で使用する場合、この変化は、細胞増殖または分化である。本発明に有用なシグナル伝達阻害剤には、受容体チロシンキナーゼ、非受容体チロシンキナーゼ、SH2/SH3ドメイン遮断剤、セリン/スレオニンキナーゼ、ホスファチジルイノシトール−3キナーゼ、ミオイノシトールシグナル伝達およびRas癌遺伝子の阻害剤が挙げられる。
【0122】
いくつかのタンパク質チロシンキナーゼは、細胞成長の制御に関与する様々なタンパク質の特定のチロシル残基のリン酸化を触媒する。このようなタンパク質チロシンキナーゼは、受容体または非受容体キナーゼとして広義に分類することができる。
【0123】
受容体チロシンキナーゼは、細胞外リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメインおよびチロシンキナーゼドメインを有する膜貫通タンパク質である。受容体チロシンキナーゼは、細胞成長の制御に関与しており、増殖因子受容体と一般に称される。これらのキナーゼの多くの不適切または制御されない活性化、すなわち例えば過剰発現または変異による異常なキナーゼ増殖因子受容体活性によって、制御されない細胞成長がもたらされることが示された。したがって、このようなキナーゼの異常な活性は、悪性組織増殖と関連付けられてきた。したがって、このようなキナーゼの阻害剤は、癌治療の方法を提供することができる。増殖因子受容体には、例えば、上皮増殖因子受容体(EGFr)、血小板由来増殖因子受容体(PDGFr)、erbB2、erbB4、血管内皮増殖因子受容体(VEGFr)、免疫グロブリン様および上皮増殖因子相同ドメインを有するチロシンキナーゼ(TIE−2)、インスリン増殖因子−I(IGFI)受容体、マクロファージコロニー刺激因子(cfms)、BTK、ckit、cmet、繊維芽細胞増殖因子(FGF)受容体、Trk受容体(TrkA、TrkBおよびTrkC)、エフリン(eph)受容体およびRET癌原遺伝子が挙げられる。増殖受容体のいくつかの阻害剤は、開発中であり、リガンドアンタゴニスト、抗体、チロシンキナーゼ阻害剤およびアンチセンスオリゴヌクレオチドが挙げられる。増殖因子受容体および増殖因子受容体機能を阻害する薬剤は、例えば、Kath、John C.、Exp.Opin.Ther.Patents(2000年)10(6):803〜818頁;Shawverら、DDT、第2巻、第2号、1997年2月;およびLofts、F.Jら、「Growth factor receptors as targets」、New Molecular Targets for Cancer Chemotherapy、ed.Workman、PaulおよびKerr、David、CRC press、1994年、Londonに記載されている。
【0124】
増殖因子受容体キナーゼではないチロシンキナーゼは、非受容体チロシンキナーゼと称される。抗癌剤の標的、または標的の可能性のある本発明に有用な非受容体チロシンキナーゼには、cSrc、Lck、Fyn、Yes、Jak、cAbl、FAK(局所接着キナーゼ)、Bruton型チロシンキナーゼおよびBcr−Ablが挙げられる。このような非受容体キナーゼおよび非受容体チロシンキナーゼ機能を阻害する薬剤は、Sinh、S.およびCorey,S.J.,(1999年)Journal of Hematotherapy and Stem Cell Research8(5):465〜80頁;およびBolen,J.B.、Brugge,J.S.,(1997年)Annual review of Immunology、15:371〜404頁に記載されている。
【0125】
SH2/SH3ドメイン遮断剤は、PI3−K p85サブユニット、Srcファミリーキナーゼ、アダプター分子(Shc、Crk、Nck、Grb2)およびRas−GAPを含めた種々の酵素またはアダプタータンパク質においてSH2またはSH3ドメイン結合を阻害する薬剤である。抗癌剤の標的としてのSH2/SH3ドメインは、Smithgall、T.E.(1995年)、Journal of Pharmacological and Toxicological Methods、34(3)125〜32頁に議論されている。
【0126】
Rafキナーゼ(rafk)、マイトジェンまたは細胞外調節キナーゼ(MEK)、および細胞外調節キナーゼ(ERK)の遮断剤を含めたMAPキナーゼカスケード遮断剤;ならびにPKC(α、β、γ、ε、μ、λ、ι、ζ)の遮断剤を含めたプロテインキナーゼCファミリーメンバー遮断剤を含むセリン/スレオニンキナーゼの阻害剤。IkBキナーゼファミリー(IKKa、IKKb)、PKBファミリーキナーゼ、AKTキナーゼファミリーメンバーおよびTGFβ受容体キナーゼ。このようなセリン/スレオニンキナーゼおよびその阻害剤は、Yamamoto,T.、Taya,S.、Kaibuchi,K.,(1999年)、Journal of Biochemistry、126(5)799〜803頁;Brodt,P、Samani,A.、およびNavab,R.(2000年)、Biochemical Pharmacology、60、1101〜1107頁;Massague,J.、Weis−Garcia,F.(1996年)Cancer Surveys、27:41〜64頁;Philip,P.A.、およびHarris,A.L.(1995年)、Cancer TreatmentおよびResearch、78:3〜27頁、Lackey,K.ら、Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters、(10)、2000年、223〜226頁;米国特許第6,268,391号;およびMartinez−Iacaci,L.ら、Int.J.Cancer(2000年)、88(1)、44〜52頁に記載されている。
【0127】
PI3−キナーゼ、ATM、DNA−PKおよびKuの遮断剤を含めたホスファチジルイノシトール−3キナーゼファミリーメンバーの阻害剤もまた、本発明に有用である。このようなキナーゼは、Abraham,R.T.(1996年)、Current Opinion in Immunology、8(3)412〜8頁;Canman,C.E.、Lim,D.S.(1998年)、Oncogene17(25)3301〜3308頁;Jackson,S.P.(1997年)、International Journal of Biochemistry and cell biology、29(7):935〜8頁;およびZhong,H.ら、Cancer res,(2000年)60(6)、1541〜1545頁に議論されている。
【0128】
本発明にまた有用であるものは、ホスホリパーゼC遮断剤およびミオイノシトール類似体などのミオイノシトールシグナル伝達阻害剤である。このようなシグナル阻害剤は、Powis,G.、およびKozikowski A.、(1994年)New Molecular Targets for Cancer Chemotherapy ed.、Paul WorkmanおよびDavid Kerr、CRC press 1994年、Londonに記載されている。
【0129】
シグナル伝達経路阻害剤の他の群は、Ras癌遺伝子の阻害剤である。このような阻害剤には、ファルネシルトランスフェラーゼ、ゲラニル−ゲラニルトランスフェラーゼおよびCAAXプロテアーゼの阻害剤、ならびにアンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイムおよび免疫療法が挙げられる。このような阻害剤は、野生型変異rasを含有する細胞においてras活性化を遮断し、したがって抗増殖剤として作用することが示された。Ras癌遺伝子阻害は、Scharovsky,O.G.、Rozados,V.R.、Gervasoni,S.I.Matar,P.(2000年)、Journal of Biomedical Science、7(4)292〜8頁;Ashby,M.N.(1998年)、Current Opinion in Lipidology、9(2)99〜102頁;およびBioChim.Biophys.Acta,(19899)1423(3):19〜30頁に議論されている。
【0130】
上記のように、受容体キナーゼリガンド結合への抗体アンタゴニストは、シグナル伝達阻害剤としての機能も果たし得る。このシグナル伝達経路阻害剤の群には、受容体チロシンキナーゼの細胞外リガンド結合ドメインへのヒト化抗体の使用が含まれる。例えば、Imclone C225EGFR特異抗体(Green,M.C.ら、Monoclonal Antibody Therapy for Solid Tumors,Cancer Treat.Rev.,(2000年)、26(4)、269〜286頁を参照されたい);Herceptin(登録商標)erbB2抗体(Tyrosine Kinase Signalling in Breast cancer:erbB Family Receptor Tyrosine Kniases, Breast cancer Res.、2000、2(3)、176〜183頁を参照されたい);および2CB VEGFR2特異抗体(Brekken,R.A.ら、Selective Inhibition of VEGFR2 Activity by a monoclonal Anti−VEGF antibody blocks tumor growth in mice、Cancer Res.(2000年)60、5117〜5124頁を参照されたい)である。
【0131】
非受容体キナーゼ血管新生阻害剤は、本発明にも使用することができる。VEGFRおよびTIE2に関連する血管新生阻害剤は、シグナル伝達阻害剤に関して上記で議論されている(両方の受容体は、受容体チロシンキナーゼである)。erbB2およびEGFRの阻害剤は、血管新生、主にVEGF発現を阻害することが示されたため、血管新生は一般に、erbB2/EGFRシグナル伝達と関連する。したがって、erbB2/EGFR阻害剤と血管新生阻害剤との組合せは、道理にかなう。したがって、非受容体チロシンキナーゼ阻害剤は、本発明のEGFR/erbB2阻害剤と組み合わせて使用することができる。例えば、VEGFR(受容体チロシンキナーゼ)を認識しないが、リガンドに結合する抗VEGF抗体;血管新生を阻害するであろうインテグリン(αβ)の小分子阻害剤;エンドスタチンおよびアンジオスタチン(非RTK)もまた、開示されているerbファミリー阻害剤と組み合わせて有用であることが分かり得る。(Bruns CJら(2000年)、Cancer Res.、60:2926〜2935頁;Schreiber AB、Winkler ME、およびDerynck R.(1986年)、Science、232:1250〜1253頁;Yen Lら(2000年)、Oncogene19:3460〜3469頁を参照されたい)。
【0132】
免疫療法計画に使用される薬剤もまた、式(I)の化合物と組み合わせて有用であり得る。erbB2またはEGFRに対する免疫応答を生じさせるいくつかの免疫学的戦略が存在する。これらの戦略は一般に、腫瘍ワクチン接種の領域にある。免疫学的アプローチの有効性は、小分子阻害剤を使用して、erbB2/EGFRシグナル伝達経路の阻害を合わせることによって大幅に高めることができる。erbB2/EGFRに対する免疫/腫瘍ワクチンアプローチについての議論は、Reilly RTら(2000年)、Cancer Res.60:3569〜3576頁;およびChen Y、Hu D、Eling DJ、Robbins J、およびKipps TJ.(1998年)、Cancer Res.58:1965〜1971頁に見出される。
【0133】
アポトーシス促進性療法に使用される薬剤(例えば、bcl−2アンチセンスオリゴヌクレオチド)もまた、本発明と組み合わせて有用であり得る。タンパク質のBcl−2ファミリーのメンバーは、アポトーシスを遮断する。したがって、bcl−2のアップレギュレーションは、化学療法抵抗性と関連付けられた。研究によって、上皮増殖因子(EGF)は、bcl−2ファミリーの抗アポトーシスメンバー(すなわち、mcl−1)を刺激することが示された。したがって、腫瘍においてbcl−2の発現をダウンレギュレートするように設計された戦略は臨床的利益を示しており、すなわち、Genta社のG3139 bcl−2アンチセンスオリゴヌクレオチドは、今や第II/III相試験中である。bcl−2のためのアンチセンスオリゴヌクレオチド戦略を使用したこのようなアポトーシス促進性戦略は、Water JSら(2000年)、J.Clin.Oncol.18:1812〜1823頁;およびKitada Sら(1994年)、Antisense Res.Dev.4:71〜79頁に議論されている。
【0134】
細胞周期シグナル伝達阻害剤は、細胞周期の制御に関与する分子を阻害する。サイクリン依存性キナーゼ(CDK)と称されるプロテインキナーゼのファミリー、およびサイクリンと称されるタンパク質のファミリーとのそれらの相互作用は、真核細胞周期の進行を制御する。異なるサイクリン/CDK複合体の協調的活性化および不活性化は、細胞周期の通常の進行のために必要である。細胞周期シグナル伝達のいくつかの阻害剤が開発中である。例えば、CDK2、CDK4およびCDK6を含めたサイクリン依存性キナーゼ、ならびにこれらの阻害剤の例は、例えば、Rosaniaら、Exp.Opin.Ther.Patents(2000年)10(2):215〜230頁に記載されている。
【0135】
一実施形態では、特許請求した本発明の癌治療の方法には、式Iの化合物、および/またはその医薬上許容される塩、水和物、溶媒和物もしくはプロドラッグと、微小管阻害剤、白金配位錯体、アルキル化剤、抗生物質製剤、トポイソメラーゼII阻害剤、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼI阻害剤、ホルモンおよびホルモン類似体、シグナル伝達経路阻害剤、非受容体チロシンキナーゼ血管新生阻害剤、免疫療法剤、アポトーシス促進剤および細胞周期シグナル伝達阻害剤からなる群から選択されるものなどの少なくとも1種の抗悪性腫瘍薬との一緒の投与が含まれる。
【0136】
本発明の医薬活性化合物、特に、選択的に、またはPI3Kδ、PI3Kβおよび/またはPI3Kαの1種または複数と併せて、PI3Kγを調整/阻害する化合物は、PI3キナーゼ阻害剤として活性があるため、自己免疫障害、炎症性疾患、心血管疾患、神経変性疾患、アレルギー、喘息、膵臓炎、多臓器不全、腎臓疾患、血小板凝集、精子の運動性、移植拒絶、移植片拒絶および肺傷害から選択される病態の治療において治療上の有用性を示す。
【0137】
式(I)の化合物が、自己免疫障害、炎症性疾患、心血管疾患、神経変性疾患、アレルギー、喘息、膵臓炎、多臓器不全、腎臓疾患、血小板凝集、精子の運動性、移植拒絶、移植片拒絶または肺傷害から選択される病態の治療のために投与される場合、「一緒の投与」という用語およびその派生語は、本明細書で使用する場合、本明細書に記載するようなPI3キナーゼ阻害化合物と、自己免疫障害、炎症性疾患、心血管疾患、神経変性疾患、アレルギー、喘息、膵臓炎、多臓器不全、腎臓疾患、血小板凝集、精子の運動性、移植拒絶、移植片拒絶および/または肺傷害の治療に有用であると知られているさらなる1種または複数の活性成分との同時投与、または別々の順次投与の任意の方法を意味する。
【0138】
生物学的アッセイ
PI3Kα Leadseeker SPAアッセイ
本発明の化合物を下記のアッセイによって試験し、PI3キナーゼ、特にPI3Kαの阻害剤として見出した。活性(IC50)は、PI3Kαに対して1nM〜500μMの範囲である。
【0139】
実施例1の化合物を試験し、アッセイにおいてPI3Kαに対して1nMのIC50を有することを見出した。
【0140】
アッセイの方式
SPAイメージングビーズは、可視スペクトルの赤領域において発光するシンチラントを含有するミクロスフィアである。その結果、これらのビーズは、ViewluxなどのCCD画像装置と共に使用するのに理想的に適している。このシステムに使用されるLeadseekerビーズは、ポリエチレンイミンと結合したポリスチレンビーズである。アッセイ混合物に加えた場合、ビーズは、基質(PIP2)および産物(PIP3)の両方を吸収する。吸着したP33−PIP3は、ADU(アナログデジタルユニット)として測定したシグナルの増加をもたらすであろう。このプロトコルは、His−p110/p85PI3Kαを使用するアッセイのためのPEI−PS Leadseekerビーズの使用を詳述する。
【0141】
アッセイプロトコル
固体化合物を典型的には、384ウェル平底低容量プレート(Greiner784075)の全てのウェル(6列および18列を除いて)中に100%DMSO0.1μlと共に入れる。化合物を、プレート全体にわたって1列〜12列および13列〜24列を段階希釈(100%DMSO中で3倍)し、DMSOのみを含有する6列および18列を残し、各試験化合物について11の濃度を得る。アッセイ緩衝液は、MOPS(pH6.5)、CHAPSおよびDTTを含有する。PI3KαおよびPIP2(L−α−D−myo−ホスファチジルイノシトール4,5−二リン酸[PI(4,5)P2]3−O−リン酸が結合された、D(+)−sn−1,2−ジ−O−オクタノイルグリセリル、CellSignals#901)を混合し、P33−ATPおよびMgCl(Zoomを使用して試薬を加える)を添加して反応が開始する30分前に、プレート中で化合物と共にインキュベートする。酵素を含有しないウェル(18列)を通常通りに行い、低対照を決定する。PBS/EDTA/CHAPS中のPEI−PS Leadseekerビーズを、(マルチドロップによって)加え反応物をクエンチし、遠心分離の前にプレートを少なくとも1時間(典型的には一晩)インキュベートする。Viewlux検出器を使用してシグナルを決定し、次いで濃度反応曲線の作成のために曲線の当てはめソフトウェア(Activity Base)に読み込む。高対照(C1、6列おいてDMSO0.1μl、A段〜P段))および低対照(C2、18列において緩衝液中の40μMのPIP2 5μl、A段〜P段)と比較して、100(1−(U1−C2)/(C1−C2))を使用して、活性の阻害割合を計算した。50%阻害を生じる試験化合物の濃度を、式y=((Vmaxx)/(K+x))+Y2(式中、「K」はIC50に等しかった)を使用して決定した。モル濃度でIC50値をpIC50値すなわち−log IC50に変換した。
【0142】
細胞アッセイ
1日目
正午前に細胞を蒔く。
クリア平底96ウェルプレート中に10K細胞/ウェル(f.v.105μl)。
最後の列の最後の4つのウェルは、培地のみを入れる。
37℃のインキュベーター中に一晩置く。
化合物プレート。
ポリプロピレン丸底96ウェルプレート中で調製する;プレート毎に8化合物、各々11−pt滴定(3×段階希釈)、最後の列中にDMSO(細胞上0.15%f.c.)。
最初のウェル中にDMSO15μl、残りに10μl;最初のウェルから5μlを採取し、次で混合する、プレート全体に続ける(最後の列を除く);箔のふたで密封し、4℃で置く。
2日目
溶解緩衝液阻害剤(4℃/−20℃)および化合物プレート(4℃)を取り出し、ベンチトップ上で解凍し、1×Tris洗浄緩衝液(WB)を作製し、プレートウォッシャー上の容器を充填し、ベンチサプライを満たし(MiliQを使用)、遠心機を作動させ、冷却させる。
MSDプレートをブロックする。
3%ブロッキング溶液20ml/プレート(WB20ml中に遮断剤A600mg)を作製し、150μl/ウェルを加え、室温で少なくとも1時間インキュベートする。
化合物を加える(ブロッキングの間)。
各化合物プレートにウェル(化合物の682倍希釈)毎に増殖培地(RPMI w/Q、10%FBS)300μlを加える。
二重プレート上で各ウェル(f.v.110μl)に化合物の希釈物5μlを加える。
37℃のインキュベーター中に30分間置く。
ライセートを作製する。
MSD溶解緩衝液を調製し、10mlについて、プロテアーゼ阻害剤溶液200μl、ならびにホスファターゼ阻害剤IおよびIIの各々を100μl加える(使用する状態となるまで氷上に置く)。
インキュベート後にプレートを取り出し、プレートウォッシャーで培地を吸引し、冷たいPBSで1度洗浄し、ウェル毎にMSD溶解緩衝液80μlを加え、振盪機上で4℃にて≧30分間インキュベートする。
冷却したまま2500rpmで10分間回転させ、使用する状態となるまで4℃の遠心機中にプレートを置く。
【0143】
AKT二重反復アッセイ
プレートを洗浄する(プレートウォッシャー中で200μl/ウェルのWBで4度);プレートをペーパータオルで軽くたたき吸い取る。
ライセート60μl/ウェルを加え、振盪機上で室温にて1時間インキュベートする。
インキュベートの間、検出Ab(3ml/プレート;2mlWBおよび1mlブロッキング溶液w/Ab(10nM))を調製し、洗浄工程を上記の通り繰り返す。
Ab25μl/ウェルを加え、振盪機上で室温にて1時間インキュベートし、洗浄工程を上記の通り繰り返す。
150μl/ウェル1×読み取り緩衝液(ddH2O中のストックを4倍希釈、20ml/プレート)を加え、直ちに読み取る。
【0144】
分析
各化合物濃度で全てのデータポイントを観察する。
最も高い阻害剤濃度からのデータポイントは、DMSO対照と等しい、または70%を超えるはずである。
二重反復試験のためのIC50は、互いに2倍以内であるはずである(サマリーテンプレートにおいてフラグを立てない)。
Y最小値は、0を超えるはずであり、両方の最小値が、赤いフラグが立つ場合(>35)、化合物は、不活性であると見なされる(IC50≧最も高い用量)。1つのみの最小値が、赤いフラグが立つが、それでもなお≦50である場合、表示されたようにIC50とする。
曲線と等しいまたは曲線から30%を超えたどのデータポイントも考慮しない。
【0145】
細胞成長/細胞死アッセイ
BT474、HCC1954およびT−47D(ヒト胸部)を、5%COインキュベーター中で10%ウシ胎児血清を含有するRPMI−1640中で37℃にて培養した。細胞を、アッセイのための収集時に約70〜80%集密度を得る濃度で、アッセイ準備の2〜3日前にT75フラスコ(Falcon#353136)に分割した。0.25%トリプシン−EDTA(Sigma#4049)を使用して細胞を収集した。トリパンブルー色素排除染色を使用して細胞懸濁液で細胞計数を行った。次いで、384ウェル黒平底ポリスチレン(Greiner#781086)中に、細胞をウェル毎に培地48μl中1,000細胞/ウェルで蒔いた。全てのプレートを5%CO、37℃に一晩置き、試験化合物を翌日加えた。0日目(t=0)の測定のために、1つのプレートをCellTiter−Glo(Promega#G7573)で処理し、下記で説明するように読み取った。試験化合物を、クリアボトムポリプロピレン384ウェルプレート(Greiner#781280)中において連続2倍希釈物で調製した。これらの希釈物4μlを、培地105μlに加え、溶液を混合した後、これらの希釈物2μlを、細胞プレートの各ウェルに加えた。全てのウェル中のDMSOの最終濃度は、0.15%であった。細胞を37℃、5%COで72時間インキュベートした。化合物との72時間のインキュベートに続いて、各プレートを展開し、読み取った。CellTiter−Glo試薬を、ウェル中の細胞培養容量に相当する容量を使用してアッセイプレートに加えた。プレートを約2分間振盪し、室温で約30分間インキュベートし、化学発光シグナルをAnalyst GT(Molecular Devices)リーダーで読み取った。結果をt=0のパーセントとして表し、化合物濃度に対してプロットした。XLfitソフトウェアを使用して4または6パラメーターカーブフィットによって用量反応を当てはめ、Y最小値をt=0として、およびY最大値をDMSO対照として、細胞成長の50%を阻害した濃度(gIC50)を決定することによって、各化合物について細胞成長阻害を決定した。細胞を有さないウェルからの値を、バックグラウンド補正のために全ての試料から差し引いた。
【0146】
さらなる参照文献
本発明の化合物はまた、下記の参照文献に従ってPI3Kα、PI3Kδ、PI3KβおよびPI3Kγでのそれらの阻害活性を決定するために試験することができる。
【0147】
全てのPI3Kイソ型について
ヒトクラスIaホスホイノシチド3−キナーゼイソ型のクローニング、発現、精製および性質決定:Meier,T.I.;Cook,J.A.;Thomas,J.E.;Radding,J.A.;Horn,C.;Lingaraj,T.;Smith,M.C.Protein Expr.Purif.、2004年、35(2)、218。
ホスホイノシチドキナーゼおよびホスファターゼ活性の検出のための競合的蛍光偏光アッセイ:Drees,B.E.;Weipert,A.;Hudson,H.;Ferguson,C.G.;Chakravarty,L.;Prestwich,G.D.Comb.Chem.High Throughput.Screen.、2003年、6(4)、321。
【0148】
PI3Kγについて:WO2005/011686A1
本発明の範囲内の医薬活性化合物は、それを必要としている哺乳動物、特にヒトにおいてPI3キナーゼ阻害剤として有用である。
【0149】
したがって、本発明は、式(I)の有効な化合物、またはその医薬上許容される塩、水和物、溶媒和物もしくはプロドラッグを投与する工程を含む、PI3キナーゼ阻害と関連する疾患、特に、自己免疫障害、炎症性疾患、心血管疾患、神経変性疾患、アレルギー、喘息、膵臓炎、多臓器不全、腎臓疾患、血小板凝集、癌、精子の運動性、移植拒絶、移植片拒絶および肺傷害、ならびにPI3キナーゼ調整/阻害を必要とする他の状態を治療する方法を提供する。式(I)の化合物はまた、PI3阻害剤として作用する能力によって上記に示した病態を治療する方法を提供する。薬物を、それを必要としている患者に、それだけに限らないが、静脈内、筋内、経口、皮下、皮内および非経口が挙げられる任意の従来の投与経路によって投与することができる。
【0150】
本発明の医薬活性化合物は、カプセル剤、錠剤、または注射用調製品などの便利な剤形に組み込まれる。固体または液体医薬担体が用いられる。固体担体には、デンプン、ラクトース、硫酸カルシウム二水和物、白土、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸が挙げられる。液体担体には、シロップ、落花生油、オリーブ油、食塩水および水が挙げられる。同様に、担体または希釈剤には、単独であるかまたはワックスを含む、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの任意の持続性放出材料を挙げることができる。固体担体の量は大きく異なるが、好ましくは、投与単位毎に約25mg〜約1gであろう。液体担体が用いられる場合、調製品は、シロップ剤、エリキシル剤、乳剤、軟質ゼラチンカプセル剤、アンプルなどの無菌注射用液剤、または水性または非水性の液体懸濁剤の形態であろう。
【0151】
医薬製剤は、錠剤形態のために必要な場合は、混合、造粒および圧縮、または所望の経口または非経口生成物を得るために必要に応じて、混合、充填および成分の溶解を伴う薬剤師の従来の技術に従って作製される。
【0152】
上記のような薬剤の投与単位中の本発明の医薬活性化合物の用量は、好ましくは0.001〜100mg/kg、好ましくは0.001〜50mg/kgの範囲の活性化合物から選択される有効な無毒性量であろう。PI3K阻害剤を必要としているヒト患者を治療する場合、選択した用量を、好ましくは毎日1〜6回経口または非経口で投与する。非経口投与の好ましい形態には、局所、直腸、経皮、注射および連続注入が挙げられる。ヒトへの投与のための経口投与単位は好ましくは、活性化合物0.05〜3500mgを含有する。より低い投与量を用いる経口投与が好ましい。しかし、患者にとって安全で便利である場合は、高い投与量による非経口投与もまた使用することができる。
【0153】
投与される最適な投与量は、当業者であれば用意に決定することができ、使用する特定のPI3キナーゼ阻害剤、調製物の強度、投与方法および疾患状態の進展によって変わるであろう。患者の年齢、体重、食事および投与時間を含めて、治療を受ける特定の患者によるさらなる要因によって、投与量の調整の必要性が生じるであろう。
【0154】
ヒトを含めた哺乳動物においてPI3キナーゼ阻害活性を誘発する本発明の方法は、このような活性を必要としている対象に、PI3キナーゼを調整/阻害する有効量の本発明の医薬活性化合物を投与する工程を含む。
【0155】
本発明はまた、PI3キナーゼ阻害剤として使用するための医薬の製造における式(I)の化合物の使用も提供する。
【0156】
本発明はまた、治療における使用のための医薬の製造における式(I)の化合物の使用も提供する。
【0157】
本発明はまた、自己免疫障害、炎症性疾患、心血管疾患、神経変性疾患、アレルギー、喘息、膵臓炎、多臓器不全、腎臓疾患、血小板凝集、癌、精子の運動性、移植拒絶、移植片拒絶および肺傷害の治療において使用するための医薬の製造における式(I)の化合物の使用も提供する。
【0158】
本発明はまた、式(I)の化合物および医薬上許容される担体を含む、PI3阻害剤として使用するための医薬組成物も提供する。
【0159】
本発明はまた、式(I)の化合物および医薬上許容される担体を含む、自己免疫障害、炎症性疾患、心血管疾患、神経変性疾患、アレルギー、喘息、膵臓炎、多臓器不全、腎臓疾患、血小板凝集、癌、精子の運動性、移植拒絶、移植片拒絶および肺傷害の治療において使用するための医薬組成物も提供する。
【0160】
本発明の化合物が本発明によって投与される場合、許容されない毒性学的影響は、予想されない。
【0161】
さらに、本発明の医薬活性化合物は、PI3キナーゼ阻害剤と組み合わせて使用する場合有用性を有することが知られている化合物を含めたさらなる活性成分と一緒に投与することができる。
【0162】
さらに詳述しなくても、当業者であれば、上記の説明を用いて本発明を最大限利用することができると考えられる。したがって、下記の実施例は、単なる例示であり、決して本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0163】
実験の詳細
調製
本明細書に記載する誘導体は、下記の一般方法によって調製される。
【0164】
スキーム/実験
【0165】
【化6】

条件:a)トリブチル(ビニル)スズ、Pd(PPh、ジオキサン、還流;b)OsO、NaIO、2,6−ルチジン、t−BuOH、ジオキサン、HO、室温;c)ヘテロアリール(R)ボロン酸、Pd(PPh、2MのKCO、DMF、100℃;d)2,4−チアゾリジンジオン、ピペリジン、AcOH、EtOH、μ波、150℃。
【実施例】
【0166】
(実施例1)
(5Z)−5−{[4−(4−ピリジニル)−6−キノリニル]メチリデン}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン
【0167】
【化7】

a)4−クロロ−6−エテニルキノリン
1,4−ジオキサン(150ml)中の6−ブロモ−4−クロロキノリン(6.52g、26.88mmol;J.Med.Chem.、21、268(1978年)を参照されたい)、トリブチル(ビニル)スズ(8.95g、28.22mmol)およびテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(0.62g、0.54mmol)の混合物を、2.0時間還流し、室温に冷却し、真空中で濃縮した。残渣を、シリカゲル(0〜4%MeOH:CHCl)上でフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、表題化合物(5.1g)を淡黄色の固体として得た。MS(ES)+ m/e 190[M+H]。この材料を、次の工程で直接使用した。
b)4−クロロ−6−キノリンカルバルデヒド
1,4−ジオキサン:HO(3:1混合物350ml)中の4−クロロ−6−エテニルキノリン(5.1g、26.88mmol)、2,6−ルチジン(5.76g、53.75mmol)、メタ過ヨウ素酸ナトリウム(22.99g、107.51mmol)および四酸化オスミウム(tert−ブタノール中の2.5%溶液5.48g、0.538mmol)の混合物を、室温で3.5時間撹拌し、真空中で濃縮した。残渣を、シリカゲル(CHCl)上でフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、表題化合物(2工程のために4.26g、83%)を淡黄色の固体として得た。MS(ES)+ m/e 192[M+H]
c)4−(4−ピリジニル)−6−キノリンカルバルデヒド
DMF(100ml)中の4−クロロ−6−キノリンカルバルデヒド(3.24g、16.92mmol)、4−ピリジルボロン酸(3.12g、25.38mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(0.978g、0.846mmol)および2Mの水性KCO(7.02g、50.76mmol、2Mの溶液25.4ml)の混合物を、100℃で3.0時間加熱し、室温に冷却した。混合物をセライトで濾過し、セライトをEtOAcで洗浄した。濾液を分液漏斗に移し、水および飽和NaClで洗浄、乾燥(NaSO)、濾過し、真空中で濃縮した。残渣を、シリカゲル(5%MeOH:CHCl)上でフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、表題化合物(2.03g、51%)を黄褐色の固体として得た。MS(ES)+ m/e 235[M+H]
d)(5Z)−5−{[4−(4−ピリジニル)−6−キノリニル]メチリデン}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン
EtOH(5ml)中の4−(4−ピリジニル)−6−キノリンカルバルデヒド(0.108g、0.463mmol)、2,4−チアゾリジンジオン(0.0417g、0.356mmol)、ピペリジン(0.0303g、0.356mmol)および酢酸(0.0214g、0.356mmol)の混合物を、マイクロ波オーブン中で150℃にて30分間加熱した。反応物を室温にまで冷却し、このように得られた沈殿物を濾過し、ブフナー漏斗で乾燥し、表題化合物(0.0594g、50%)を黄褐色の固体として得た。MS(ES)+ m/e 334[M+H]。1H NMR(400MHz,DMSO−d)□ ppm 9.08(d,J=4.42Hz,1H)8.80〜8.88(m,2H)8.25(d,J=8.72Hz,1H)8.00〜8.07(m,2H)7.98(s,1H)7.65〜7.68(m,2H)7.63(d,J=4.42Hz,1H)。
【0168】
(実施例2)
(5Z)−5−{[4−(3−ピリジニル)−6−キノリニル]メチリデン}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン
【0169】
【化8】

実施例1を調製するのに使用した手順に従って、4−ピリジニルボロン酸を3−ピリジニルボロン酸で置換することによって表題化合物を調製した。MS(ES)+ m/e 334[M+H]
【0170】
(実施例3)
(5Z)−3−メチル−5−{[4−(4−ピリジニル)−6−キノリニル]メチリデン}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン
【0171】
【化9】

実施例1を調製するのに使用した手順に従って、1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンを3−メチル−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンで置換することによって表題化合物を調製し、淡黄色の固体を得た。MS(ES)+m/e348[M+H]
【0172】
あるいは、ヘテロアリールボロン酸(またはヘテロアリールスタンナン)と、4−ヨード−6−キノリンカルバルデヒドとのパラジウム媒介鈴木(またはスティル)カップリングによって、いくつかの実施例を調製した(スキームII)。対応する塩化物を4NのHCl、次いでヨウ化ナトリウムで処理することによって、ヨウ化物中間体を調製した。実施例1を調製するために使用した同一の手順に従って、ヘテロアリールアルデヒドを表題化合物に変換した。
【0173】
【化10】

条件:a)ジオキサン中の4NのHCl、室温、5分;次いでNaI、105℃、18時間;b)ヘテロアリール(R)ボロン酸、Pd(PPh3)、2MのKCO、ジオキサン、100℃、またはc)トリブチル(ヘテロアリール)スズ、Pd(PPh、ジオキサン、還流。
【0174】
(実施例4)
(5Z)−5−({4−[2−(メチルオキシ)−5−ピリミジニル]−6−キノリニル}メチリデン)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン
【0175】
【化11】

a)4−ヨード−6−キノリンカルバルデヒド
大きな反応管中で、4−クロロ−6−キノリンカルバルデヒド(4.26g、22.2mmol)のプロピオニトリル(125ml)溶液に、ジオキサン中の4NのHCl(HCl2当量、11.1ml、44.4mmol)を加えた。溶液を15分間撹拌し、3当量のヨウ化ナトリウム(10g、66mmol)を添加した。反応管を密封し、105℃で一晩加熱した。反応をLCMSによってモニターした。反応物を周囲温度に冷却し、生成物を濾過し、アセトニトリルで洗浄した。次いで、粗固体をビーカーに入れ、pH9.5となるまで飽和炭酸水素ナトリウムを撹拌しながら加えた。次いで固体を塩化メチレンで抽出した。次いで塩化メチレン層を水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、真空中で濃縮し、表題化合物を85%収率で得た。
b)4−[6−(メチルオキシ)−3−ピリジニル]−6−キノリンカルバルデヒド
[6−(メチルオキシ)−3−ピリジニル]ボロン酸(225mg、1.5mmol)、4−ヨード−6−キノリンカルバルデヒド(283mg、1mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(57mg、0.05mmol)、2Mの水性KCO(2Mの溶液2.5ml)およびジオキサン(5ml)の混合物を、100℃で8時間加熱し、室温に冷却した。ジオキサンを減圧下で除去し、残渣を塩化メチレン/水の2:1混合物に溶解し、溶液を濾過した。有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶液をデカントし、塩化メチレンを蒸発させることによって粗生成物を得た。粗生成物を、塩化メチレン/メタノール(0〜1%メタノールグラジエント)で溶離するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、表題化合物(250mg、95%)を得た。MS(ES)+ m/e 265[M+H]
【0176】
(5Z)−5−({4−[2−(メチルオキシ)−5−ピリミジニル]−6−キノリニル}メチリデン)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンを、次いで実施例1dの手順に従って調製した。MS(ES)+ m/e 365[M+H]
【0177】
実施例4を調製するために使用した手順に従って、化合物5、6、7および8を調製する。
【0178】
【表1】

【0179】
(実施例9)
(5Z)−5−{[4−(3−ピリダジニル)−6−キノリニル]メチリデン}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン
【0180】
【化12】

a)4−(3−ピリダジニル)−6−キノリンカルバルデヒド
ジオキサン(3ml)中の4−ヨード−6−キノリンカルバルデヒド(142mg、0.5mmol)、3−(トリブチルスタンニル)ピリジジン(220mg、0.6mmol)およびジクロロ−[1,1’ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロロメタン付加物(12.2mg、0.015mmol)の混合物を、100℃で5時間加熱し、室温に冷却した。シリカゲル300ミリグラムを反応物に加え、ジオキサンを蒸発させた。ドライパックを塩化メチレン中に詰めた10グラムシリカカラムに上積みし、0〜3%MeOH:CHClで溶出し、表題化合物(170mg、72%)を固体として得た。MS(ES)+m/e236[M+H]。次いで、(5Z)−5−{[4−(3−ピリダジニル)−6−キノリニル]メチリデン}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンを、実施例1dの手順に従って調製した。MS(ES)+m/e335[M+H]。臭化ヘテロアリールと、4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−6−キノリンカルバルデヒドとのパラジウム媒介鈴木カップリングによって、さらなる実施例を調製した(スキームIII)。対応する塩化物のパラジウム(0)媒介反応によって、ボロン酸中間体を調製した。実施例1を調製するために使用した同一の手順に従って、ヘテロアリールアルデヒドを表題化合物に変換した。
【0181】
【化13】

条件:a)4,4,4’,4’,5,5,5’,5’−オクタメチル−2,2’−ビ−1,3,2−ジオキサボロラン、酢酸カリウム、ジクロロ−[1,1’ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロロメタン付加物、ジオキサン、100℃、18時間;b)臭化ヘテロアリール(R)(1.3当量)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)、2Mの水性KCO、ジオキサン、100℃、8時間。
【0182】
(実施例10)
(5Z)−5−{[4−(2−ピリジニル)−6−キノリニル]メチリデン}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン
【0183】
【化14】

a)4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−6−キノリンカルバルデヒド
ジオキサン(30ml)中の4−クロロ−6−キノリンカルバルデヒド(2.5g、13mmol)、4,4,4’,4’,5,5,5’,5’−オクタメチル−2,2’−ビ−1,3,2−ジオキサボロラン(7g、27mmole)、酢酸カリウム(5g、39mmol)およびジクロロ−[1,1’ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロロメタン付加物(530mg、0.65mmol)の混合物を、100℃で18時間加熱し、室温に冷却した。ジオキサンを減圧下で除去し、残渣を酢酸エチル/水の2:1混合物に溶解し、溶液を濾過した。有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶液をデカントし、酢酸エチルを蒸発させることによって粗生成物を得た。粗生成物を、塩化メチレン/メタノール(0〜2%メタノールグラジエント)で溶離するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、表題化合物(2.9g、78%)を得た。
b)4−(2−ピリジニル)−6−キノリンカルバルデヒド
4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−6−キノリンカルバルデヒド(180mg、0.64mmol)、2−ブロモピリジン(158mg、1.0mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(38mg、0.0335mmol)および2Mの水性KCO(2Mの溶液1ml)およびジオキサン(4ml))の混合物を、100℃で8時間加熱し、室温に冷却した。ジオキサンを減圧下で除去し、残渣を塩化メチレン/水の2:1混合物に溶解し、溶液を濾過した。有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶液をデカントし、塩化メチレンを蒸発させることによって粗生成物を得た。粗生成物を、塩化メチレン/メタノール(0〜2%メタノールグラジエント)で溶離するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、表題化合物(80mg、65%)を得た。MS(ES)+ m/e 235[M+H]
【0184】
次いで、実施例1dの手順に従って、(5Z)−5−{[4−(2−ピリジニル)−6−キノリニル]メチリデン}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンを調製した。MS(ES)+ m/e 334[M+H]
【0185】
化合物11および12を、実施例10を調製するために使用した手順に従って調製する。
【0186】
【表2】

【0187】
下記の実施例の化合物は、スキームIによって、または類似の方法によって容易に作製される。
【0188】
例示的なカプセル剤組成物
標準的な2つの部分から成る硬質ゼラチンカプセルに下記の表Iに示す割合で成分を充填することによって、本発明を投与するための経口剤形を生成する。
【0189】
【表3】

【0190】
例示的な注射用非経口組成物
本発明を投与するための注射剤型を、水中のプロピレングリコール10容量%中の(5Z)−5−{[4−(4−ピリジニル)−6−キノリニル]メチリデン}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン1.5重量%を撹拌することによって生成する。
【0191】
例示的な錠剤組成物
下記の表IIに示されているようなスクロース、硫酸カルシウム二水和物およびPI3K阻害剤を、10%ゼラチン溶液と共に、示した割合で混合し顆粒化する。湿った顆粒を、ふるいにかけ、乾燥し、デンプン、タルクおよびステアリン酸と混合し、ふるいにかけ、錠剤に圧縮する。
【0192】
【表4】

【0193】
本発明の好ましい実施形態を上記で例示したが、本発明は、本明細書において開示した厳密な指示に限定されず、添付の特許請求の範囲内である全ての修正を行う権利は確保されていることを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

(I)
[式中;
R1は、ヘテロアリールまたは置換ヘテロアリールであり、
R2は、水素、C1〜C6アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキルからなる群から選択され、
R3およびR4は各々、独立に、水素、ハロゲン、アシル、アミノ、置換アミノ、C1〜6アルキル、置換C1〜6アルキル、C3〜7シクロアルキル、置換C3〜7シクロアルキル、C3〜7ヘテロシクロアルキル、置換C3〜7ヘテロシクロアルキル、アルキルカルボキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、アリールシクロアルキル、置換トリフルオロメチル、アリールシクロアルキル、ヘテロアリールアルキル、置換ヘテロアリールアルキル、シアノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ニトロ、アシルオキシ、アシルアミノおよびアリールオキシからなる群から選択され、
nは、0〜2である]
で示される化合物、および/またはその医薬上許容される塩、水和物、溶媒和物もしくはプロドラッグ。
【請求項2】
式(II):
【化2】

(II)
[式中;
R1は、ヘテロアリールまたは置換ヘテロアリールであり、
R2は、水素、C1〜C6アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキルおよび置換アリールアルキルからなる群から選択される]
で示される化合物から選択される請求項1に記載の化合物、および/またはその医薬上許容される塩、水和物、溶媒和物もしくはプロドラッグ。
【請求項3】
R2が水素である、請求項1または2記載の化合物、および/またはその医薬上許容される塩、水和物、溶媒和物もしくはプロドラッグ。
【請求項4】
R1が置換されていてもよい単環式ヘテロアリールである、請求項1または2記載の化合物、および/またはその医薬上許容される塩、水和物、溶媒和物もしくはプロドラッグ。
【請求項5】
(5Z)−5−{[4−(4−ピリジニル)−6−キノリニル]メチリデン}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン;
(5Z)−3−メチル−5−{[4−(4−ピリジニル)−6−キノリニル]メチリデン}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン;
(5Z)−5−{[4−(3−ピリジニル)−6−キノリニル]メチリデン}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン;
(5Z)−5−{[4−(2−ピリジニル)−6−キノリニル]メチリデン}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン;
(5Z)−5−({4−[2−(メチルオキシ)−5−ピリミジニル]−6−キノリニル}メチリデン)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン;
(5Z)−5−({4−[2−(メチルオキシ)−4−ピリジニル]−6−キノリニル}メチリデン)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン;
(5Z)−5−{[4−(6−アミノ−3−ピリジニル)−6−キノリニル]メチリデン}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン;
(5Z)−5−{[4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−4−ピリジニル)−6−キノリニル]メチリデン}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン;
(5Z)−5−({4−[6−(4−モルホリニル)−3−ピリジニル]−6−キノリニル}メチリデン)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン;
(5Z)−5−({4−[6−(4−メチル−1−ピペラジニル)−3−ピリジニル]−6−キノリニル}メチリデン)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン;
(5Z)−5−{[4−(3−ピリダジニル)−6−キノリニル]メチリデン}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン;および
(5Z)−5−({4−[2−(メチルオキシ)−5−ピリミジニル]−6−キノリニル}メチリデン)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン;
からなる群から選択される請求項1記載の化合物、および/またはその医薬上許容される塩、水和物、溶媒和物もしくはプロドラッグ。
【請求項6】
(5Z)−5−{[4−(4−ピリジニル)−6−キノリニル]メチリデン}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンからなる群から選択される式(I)の化合物、および/またはその医薬上許容される塩、水和物、溶媒和物もしくはプロドラッグ。
【請求項7】
請求項1ないし2に記載の化合物、および医薬上許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項8】
哺乳動物に治療有効量の請求項1に記載の式(I)の化合物、および/またはその医薬上許容される塩、水和物、溶媒和物もしくはプロドラッグを投与する工程を含む、哺乳動物において1種または複数のホスホイノシチド3−キナーゼ(PI3K)を阻害する方法。
【請求項9】
哺乳動物に治療有効量の請求項2に記載の化合物を投与する工程を含む、哺乳動物において自己免疫障害、炎症性疾患、心血管疾患、神経変性疾患、アレルギー、喘息、膵臓炎、多臓器不全、腎臓疾患、血小板凝集、癌、精子の運動性、移植拒絶、移植片拒絶および肺傷害からなる群から選択される1種または複数の病態を治療する方法。
【請求項10】
請求項1に記載の化合物、および/またはその医薬上許容される塩、水和物、溶媒和物もしくはプロドラッグと、微小管阻害剤、白金配位錯体、アルキル化剤、抗生物質製剤、トポイソメラーゼII阻害剤、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼI阻害剤、ホルモンおよびホルモン類似体、シグナル伝達経路阻害剤、非受容体チロシンキナーゼ血管新生阻害剤、免疫療法剤、アポトーシス促進剤および細胞周期シグナル伝達阻害剤からなる群から選択されるものなどの少なくとも1種の抗悪性腫瘍薬とを一緒に投与する工程を含む、癌を治療する方法。
【請求項11】
病態が、多発性硬化症、乾癬、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患、肺炎症、血栓症、脳の感染症/炎症、髄膜炎および脳炎からなる群から選択される、請求項9記載の方法。
【請求項12】
病態が、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、CNS外傷、脳卒中および虚血状態からなる群から選択される、請求項9記載の方法。
【請求項13】
病態が、アテローム性動脈硬化症、心臓肥大、心筋細胞機能障害、血圧上昇および血管収縮からなる群から選択される、請求項9記載の方法。
【請求項14】
病態が、慢性閉塞性肺疾患、アナフィラキシーショック、線維症、乾癬、アレルギー性疾患、喘息、脳卒中、虚血再灌流、血小板凝集/活性化、骨格筋萎縮/肥大、癌組織における白血球動因、血管新生、浸潤転移、黒色腫、カポジ肉腫、急性および慢性細菌ならびにウイルス感染、敗血症、移植拒絶、移植片拒絶、糸球体硬化症、糸球体腎炎、進行性腎線維症、肺の内皮および上皮傷害、ならびに肺気道炎症からなる群から選択される、請求項9記載の方法。
【請求項15】
疾患が癌である、請求項9記載の方法。
【請求項16】
癌が、脳(神経膠腫)、神経膠芽腫、白血病、Bannayan−Zonana症候群、カウデン病、レルミット−ダクロス病、胸部、炎症性乳癌、ウィルムス腫瘍、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫、上衣細胞腫、髄芽細胞腫、結腸、頭頸部、腎臓、肺、肝臓、黒色腫、卵巣、膵臓、前立腺、肉腫、骨肉腫、骨巨細胞腫および甲状腺からなる群から選択される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
疾患が、卵巣癌、膵癌、乳癌、前立腺癌および白血病からなる群から選択される、請求項15記載の方法。
【請求項18】
哺乳動物がヒトである、請求項9ないし17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記PI3キナーゼがPI3αである、請求項8記載の方法。
【請求項20】
前記PI3キナーゼがPI3γである、請求項8記載の方法。
【請求項21】
前記化合物が、
(5Z)−5−{[4−(4−ピリジニル)−6−キノリニル]メチリデン}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン;
(5Z)−3−メチル−5−{[4−(4−ピリジニル)−6−キノリニル]メチリデン}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン;
(5Z)−5−{[4−(3−ピリジニル)−6−キノリニル]メチリデン}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン;
(5Z)−5−{[4−(2−ピリジニル)−6−キノリニル]メチリデン}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン;
(5Z)−5−({4−[2−(メチルオキシ)−5−ピリミジニル]−6−キノリニル}メチリデン)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン;
(5Z)−5−({4−[2−(メチルオキシ)−4−ピリジニル]−6−キノリニル}メチリデン)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン;
(5Z)−5−{[4−(6−アミノ−3−ピリジニル)−6−キノリニル]メチリデン}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン;
(5Z)−5−{[4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−4−ピリジニル)−6−キノリニル]メチリデン}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン;
(5Z)−5−({4−[6−(4−モルホリニル)−3−ピリジニル]−6−キノリニル}メチリデン)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン;
(5Z)−5−({4−[6−(4−メチル−1−ピペラジニル)−3−ピリジニル]−6−キノリニル}メチリデン)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン;
(5Z)−5−{[4−(3−ピリダジニル)−6−キノリニル]メチリデン}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン;および
(5Z)−5−({4−[2−(メチルオキシ)−5−ピリミジニル]−6−キノリニル}メチリデン)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン;
および/またはその医薬上許容される塩、溶媒和物、水和物もしくはプロドラッグから選択される、請求項8ないし17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記化合物が、(5Z)−5−{[4−(4−ピリジニル)−6−キノリニル]メチリデン}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン、および/またはその医薬上許容される塩、溶媒和物、水和物もしくはプロドラッグからなる群から選択される、請求項8ないし17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
請求項1に記載の化合物、および/またはその医薬上許容される塩、水和物、溶媒和物もしくはプロドラッグを医薬組成物として投与する、請求項8記載の方法。

【公表番号】特表2009−533467(P2009−533467A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−505582(P2009−505582)
【出願日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【国際出願番号】PCT/US2007/066359
【国際公開番号】WO2007/136940
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(591002957)スミスクライン・ビーチャム・コーポレイション (341)
【氏名又は名称原語表記】SMITHKLINE BEECHAM CORPORATION
【Fターム(参考)】