説明

PVDチャンバ用スパッターターゲット

ターゲット組立体とターゲット組立体を含むPVDチャンバが開示される。ターゲット組立体は凹形状のターゲットを含む。PVDチャンバ内で使用されると、凹状ターゲットは、スパッターチャンバ内に配置された基板上の半径方向に均一な堆積層を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、物理蒸着の分野に一般に関連する。より具体的には、本発明の実施の形態は、物理蒸着チャンバ内で蒸着されたフィルムの均一性を改良するために設計された凹状のスパッターターゲットと、凹状のスパッターターゲットを含むチャンバ、および凹状のターゲットを用いた基板上への材料のスパッタリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スパッタリングは物理蒸着(PVD)工程であり、その蒸着工程において、高エネルギーイオンが固体のターゲットに衝突し、固体ターゲットを浸食して、ターゲット材料を、半導体基板の表面上に堆積する。特定の例はシリコンウエーハである。半導体の製造において、スパッター工程は、PVD工程チャンバ、あるいは、スパッターチャンバとしても知られる半導体製造チャンバ内で通常遂行される。
【0003】
スパッターチャンバは、例えば、集積回路チップや映像表示部といった電子回路を製造するため基板上に材料をスパッター堆積するために用いられる。典型的には、スパッターチャンバは、その中にプロセスガスが導入されるプロセス領域を囲む包囲壁と、プロセスガスを活性化するガス活性化装置と、チャンバ内のプロセスガスの排気と圧力制御のための排気ポートと、を有する。スパッターチャンバは、例えば、アルミニウム、銅、タングステン、あるいはタンタルといった金属、あるいは窒化タンタル、窒化タングステン、あるいは窒化チタンといった金属化合物といったスパッターターゲットからの材料を基板上にスパッター堆積するために用いられる。スパッタリング工程において、スパッターターゲットにプラズマといった高エネルギーイオンが衝突し、材料がターゲットから叩き出され、基板上にフィルムとして堆積される。
【0004】
典型的な半導体作成チャンバは、ターゲットを保持する受け板に支持された固体金属またはその他材料の円盤形ターゲットを含むターゲット組立体を持つ。均一な堆積を促進するために、PVDチャンバは、円盤形ターゲットを円周方向に取り囲む、しばしばシールドと呼ばれる円環状で同心円の金属リングを持つ。シールドの内側面と、ターゲットの円周面の間の隙間は、よくダークスペースギャップと呼ばれる。
【0005】
図1および図2は、PVDチャンバ内で用いられるターゲット組立体の先行技術の配列を示す。図1は、先行技術の半導体製造チャンバ100の模式的断面図であり、該チャンバは、チャンバ本体102と、チャンバ本体102内に基板支持体106によって支持された基板104を有する。ターゲット組立体111は、受け板114によって支持されたターゲット112を含む。ターゲットは、基板支持体106に対して一定の間隔を空けて配置された正面あるいはスパッター可能領域120を含む。シールド108は、ターゲットを囲んで延びる一般に円環形状の金属リングからなる。シールド108は、シールド支持体110によってチャンバ内の所定位置に保持されている。ターゲット112の正面120は実質的に平坦面である。
【0006】
図2は、先行技術のターゲット組立体211のその他の構成を示し、受け板214と受け板と結合されたターゲット212を含む。ターゲット212は、錐台の形状であり、かつそれは、ターゲットの周辺部がターゲットの中心部より厚さが薄い、内側に向かって面取りした2つの端部213をもつ一般に凸形状である。
【0007】
半導体工業の最近の発展において、特に、高誘電体と金属ゲートの応用において、約1〜5オングストロームの薄いフィルムの良好な均一性が厳しく要求され、これは、従来の物理蒸着(PVD)に難題を課している。ターゲット表面からウエーハまでの距離が長いマグネトロンスパッタリングにおいて、ウエーハの中心領域のフィルムはウエーハの他の場所より厚くなり、このことが得られるフィルムの厚さの均一性を阻害する。基板の全半径に亘って、フィルム厚さのより良好な均一性を付与できるフィルムのスパッタリングシステムを供給することが望まれている。
【発明の概要】
【0008】
従って、本発明の1つまたはそれ以上の実施の形態はスパッタリング装置を示し、該スパッタリング装置は、基板支持体と、基板支持体から間隔を空けたターゲットとを含む工程領域を画成する壁部を持つチャンバを有し、そして、
【0009】
ターゲットから材料をスパッターするためにターゲットに結合した電源と、ターゲットは、ターゲットの周辺端部間に延びるスパッター可能なターゲット面を画成する正面と、周辺端部間にほぼ全体的に凹形を画成しているスパッター可能なターゲット表面をもつ。
【0010】
1つの実施の形態において、全体的な凹形は、傾斜領域に囲まれたほぼ平坦な中心領域で画成される。1つの実施の形態において、傾斜領域は約5度から約30度の範囲で傾斜して、ターゲットの周囲の厚さが中心領域の厚さより厚い。ある特定の例では、傾斜領域の角度は、約7度から約15度の範囲である。さらに、より特定の実施形態では、傾斜領域の角度は、約7度から約13度の範囲である。より具体的な実施形態において、傾斜領域は約7度から13度の範囲である。
【0011】
ある実施の形態において、傾斜領域は周囲端部にまで延びる。それに替わる実施形態では、傾斜領域は周辺正面領域にまで延びる。
【0012】
1つまたはそれ以上の実施の形態において、ターゲットの周辺端部は、ターゲットの直径Rpを画成し、中心領域は直径Rcを持ち、中心領域の直径は、比Rc/Rpが0%から約90%の範囲にある。1つあるいはそれ以上の実施の形態において、比Rc/Rpが少なくとも約60%そして約90%以下である。特定の実施形態では、比Rc/Rpが約70%である。
【0013】
本発明のその他の態様は、スパッターチャンバ内で用いるターゲット組立体に関し、ターゲットは周辺端部間に延びるスパッター可能なターゲット表面を画成する正面と、ほぼ両端部間で全体的に凹形状を画成しているスパッター可能なターゲット表面とを有する。1つの実施の形態において、全体的な凹形状は、傾斜領域に囲まれたほぼ平坦な中心領域によって画成される。1つの実施の形態において、傾斜領域の角度は、約5度から約20度の範囲にあって、ターゲットの周辺端部の厚さが中心領域の厚さより厚くなり、傾斜領域の角度は、例えば、約7度から15度の範囲で、より具体的には、約7度から13度の範囲で傾斜している。特定の実施の形態において、ターゲットの周辺端部はターゲットの直径Rpを画成し、中心領域は直径Rcを持ち、中心領域の直径は、比Rc/Rpが少なくとも約50%であり約90%以下である。その他の実施の形態において、比Rc/Rpは少なくとも約60%であり約90%以下である。特定の実施例においては、比Rc/Rpは約70%である。1つの実施の形態において、ターゲットは受け板に結合されている。
【0014】
その他の態様は、スパッターチャンバ内でのスパッタリング工程の半径方向の均一性を改良する方法に関し、その方法は、スパッターチャンバ内に、ターゲットに対面している半径方向表面を持つ基板と空間を空けてターゲットを配置し、ターゲットがターゲットの両端部間に延びるスパッター可能ターゲット表面を画成する正面と、ほぼ周辺端部との間に延びる全体的な凹形状を画成するスパッター可能なターゲット表面とを有し、ターゲットからの材料が基板の半径方向の表面に均一に堆積される工程を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
上記に簡単に要約した本発明のより詳細な説明は、添付した図面に図示されるその実施の形態を参照することによってなされる。しかし、明記すべきは、添付した図面は本発明の単なる典型的な実施形態に過ぎず、従って、本発明の範囲を制限するものではなく、本発明は他の同じく有効な実施の形態を容認する。
【0016】
【図1】図1は、平坦なターゲットを持つ先行技術の半導体製造チャンバの模式的断面図である。
【0017】
【図2】図2は、錐台形ターゲットを持つターゲット組立体の模式的断面図である。
【0018】
【図3A】図3Aは、第1実施形態によるターゲットを含む半導体製造チャンバの模式的断面図である。
【0019】
【図3B】図3Bは、図3Aに示すターゲット組立体の模式的断面図である。
【0020】
【図3C】図3Cは、ターゲット組立体の代替の実施形態の模式的断面図である。
【0021】
【図3D】図3Dは、ターゲット組立体の代替の実施形態の模式的断面図である。
【0022】
【図3E】図3Eはターゲット組立体の代替の実施形態の模式的断面図である。
【0023】
【図4】図4は3つのターゲット構造に対するTiNフィルムのフィルムの厚さを比較するグラフである。
【0024】
【図5】図5は、傾斜したターゲットの端部の角度がTiNフィルムの厚さおよび厚さの不均一性に及ぼす影響を示すグラフである。
【0025】
【図6A】図6Aは、本発明の実施の形態によるターゲットについて、Arガス流量が規格化されたAlの厚さに及ぼす影響を示す、RF電力を用いた工程において作られたグラフである。
【0026】
【図6B】図6Bは、平坦なターゲットについて、Arガス流量が規格化されたAlの厚さに及ぼす影響を示す、RF電力を用いた工程において作られた比較用グラフである。
【0027】
【図6C】図6Cは、本発明の実施の形態によるターゲットについて、ターゲットとウエーハとの間隔(T−W)が規格化されたAlの厚さに及ぼす影響を示すRF電力を用いた工程において作られたグラフである。
【0028】
【図6D】図6Dは、平坦なターゲットについて、ターゲットとウエーハとの間隔(T−W)が規格化されたAlの厚さに及ぼす影響を示す、RF電力を用いた工程において作られた比較用グラフである。
【0029】
【図6E】図6Eは、本発明の実施の形態によるターゲットについての、電力レベル(RF)が規格化されたAlの厚さに及ぼす影響を示すRF電力を用いた工程において作られたグラフである。
【0030】
【図6F】図6Fは、平坦なターゲットについての、電力レベル(RF)が規格化されたAlの厚さに及ぼす影響を示すRF電力を用いた工程において作られた比較用グラフである。
【0031】
【図7A】図7Aは、本発明の実施の形態によるターゲットについて、Arガス流量が規格化されたAlの厚さに及ぼす影響を示すDC電力を用いた工程において作られたグラフである。
【0032】
【図7B】図7Bは、平坦なターゲットについて、Arガス流量が規格化されたAlの厚ささに及ぼす影響を示すDC電力を用いた工程において作られた比較用グラフである。
【0033】
【図7C】図7Cは本発明の実施の形態によるターゲットについて、ターゲットとウエーハとの間隔(T−W)が規格化されたAlの厚さに及ぼす影響を示す、DC電力を用いた工程において作られたラフである。
【0034】
【図7D】図7Dは、平坦なターゲットについて、ターゲットとウエーハとの間隔(T−W)が規格化されたAlの厚さに及ぼす影響を示す、DC電力を用いた工程において作られた比較用グラフである。
【0035】
【図7E】図7Eは、本発明の実施の形態のターゲットについて、電力レベル(DC)が規格化されたAlの厚さに及ぼす影響を示すDC電力を用いた工程において作られたグラフである。
【0036】
【図7F】図7Fは、平坦なターゲットについて、電力レベル(DC)が規格化されたAlの厚さに及ぼす影響を示すDC電力を用いた工程において作られた比較用グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の幾つかの例示的な実施の形態を記述する前に、本発明は、以下の記載に定義された構成や処理ステップの詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は、その他の実施の形態であり得るし、種々の方法で実行又は遂行できる。
【0038】
図3Aおよび図3Bを参照すると、一般に凹形状を持つターゲットを備えた処理工程用チャンバの第1実施形態が示されている。図3Aは、チャンバ本体302とチャンバ本体302内の基板支持体306に支持された基板304とを有し、第1の実施の形態による半導体製造チャンバ300を示す。基板支持体306は、電気的にフロート状態か、またはペデスタル電源(図示されていない)によってバイアスされている。ターゲット組立体311は、受け板314によって支持されているターゲット312からなる。ターゲット312は、基板支持体306に対して隙間を空けた関係で配置されているスパッター可能領域320を含む正面を含む。チャンバ300の一例示実施形態は、カリフォルニア州サンタクララのアプライドマテリアル社によって開発されたSIP型チャンバのような自己イオン化されたプラズマチャンバである。典型的なチャンバ300は、スパッタリング作業のため基板304が配置されている工程空間を画成する、囲いの側壁330、底部壁332および天井部334からなる。
【0039】
プロセスガスは、通常、1つあるいはそれ以上のガス源を含む、チャンバの1つの壁部の開口であるガス導入口を経由してチャンバ内にガスを流入させる1つあるいはそれ以上のガス管にガスを供給する、プロセスガス供給部(図示していない)を含むガス供給システムを経由してチャンバ300内に導入される。プロセスガスは、ターゲット312に高エネルギーで衝突し、材料をスパッターする、アルゴンやキセノンといった非反応性ガスを有する。プロセスガスは、また、スパッターされた材料と反応可能で基板304上に層を形成する、1つまたはそれ以上の酸素含有ガスおよび窒素含有ガスといった反応性ガスを含むことも出来る。ターゲット312は、チャンバ300から絶縁され、例えば、RF電源、DC電源、パルスDC電源、RF電力および/またはDC電力またはパルスDC電力を用いる複合電力といったターゲット電源(図示されていない)に接続されている。1つの実施の形態において、ターゲット電源はターゲット312に負の電圧を印加し、プロセスガスをエネルギー化し、ターゲット312から材料を基板304上にスパッターする。
【0040】
アルミニウム、チタン、タングステン、あるいはその他の適切な材料といった通常は金属であるターゲットからスパッターされる材料は、基板304上に堆積し、金属の固体層を形成する。この層は、パターン化され、かつエッチングされるか、あるいは、続いてバルクメタルを堆積して、半導体ウエーハに相互接続層を形成する。
【0041】
図3Aおよび3Bにおいて、ターゲット組立体311は、ターゲット312に結合された受け板314を含む。正面320と反対のターゲットの背面は、受け板314に結合される。ターゲット312は、溶接、ロウ付け、機械的ファスナー、あるいはその他適切な結合技術で、受け板と結合されていることが分かるだろう。受け板は、高強度、導電性の金属で作られ、ターゲットと電気的に接続されている。ターゲットの受け板314およびターゲット312は、単一あるいは一体構造として形成されるが、通常、それらは、互いに結合した別々の部品である。
【0042】
ターゲット312は、ターゲット312の外周辺端部324に延びるチャンバ内に基板304と対面している正面320またはスパッター可能領域を持つ。正面320またはスパッター可能領域は、スパッター作業の間スパッターされるターゲットの面に触れることが分かる。ターゲットの全体の直径は、図3Bに示される距離Rpとして定義される。図3Bに示されるように、外周辺端部324の間にほぼ延びる周辺直径Rpを横断して延びる正面320全体の断面形状は凹状である。凹形状は、ターゲット312の外周部の厚さTpが、直径Rcによって画成される正面の中心領域の厚さTcより大きいように傾斜したまたは斜角の正面320の両端部領域313によって定義される。中心領域の直径Rcは外周辺端部324の間の全体の直径Rpより小さいことが分かる。端部領域313は、ターゲットの中心領域を囲む周辺領域である。距離Rcによって実質的に画成される中心領域はほぼ平坦である。
【0043】
当然のことながら、周辺端部の厚さTpは、図3Bの「A」によって示される傾斜角度によって決められ、傾斜あるいは斜面の端部領域313の長さは、中心領域直径Rcの全体ターゲット直径Rpに対する比によって決められることが理解されるだろう。示した実施の形態において、比Rc/Rpは、約60%から約75%の範囲にある。このRc/Rpの比は、約0%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、あるいは90%であってもよい。そして、この比は、基板304上へのフィルムの均一な堆積を最適化するための種々のターゲット材料の実験によって最適化することが出来る。中心領域からの傾斜あるいは斜面の角度によって定義されるように、傾斜端部313の角度「A」は、約5度から30度の間、より具体的には約5度から約20度の間、あるいは、7度と15度の間で変えることができ、最も具体的には、約7度と13度の間である。傾斜端部の角度「A」は、基板304の直径を横切って、均一な半径方向の堆積を得るための実験によって最適化することができる。
【0044】
図3Cは、Rcが概略0%で、Rc/Rpの比がほぼ0%のターゲットについての別の実施の形態を示す。換言すれば、傾斜端部313は、ターゲットの外周辺端部324から延びターゲット312の中心領域に集まる、図3Dは、さらに別の実施の形態を示し、その実施の形態においては、傾斜端部が、ターゲットの外周辺端部324にまで延びない。代わりに、傾斜領域315は傾斜端部を囲む外周辺正面領域326に延び、ほぼ平坦であり、ターゲットの外周辺端部324は外周辺正面領域326と隣接する。図3Eは、図3Dに示した構成の変形の1つである。図3Eにおいて、周辺端部領域は、受け板314の端部318に延びているので、ターゲットの直径Rは、受け板の直径RBPとほぼ等しい。図3Eの外周辺正面領域326は、図3Dの周辺辺正面より大きく、このことによって、スパッタリング期間中の受け板からの汚染を防ぐことができる。図3Dおよび図3Eの傾斜領域315は両外周辺端部324の間にほぼ延びることが分かるだろう。実際の外周辺端部324に延びるというより、傾斜領域315は外周辺正面領域326に延びる。1つまたはそれ以上の実施の形態において、外周辺正面領域326はターゲットのスパッター可能表面領域の約30%、20%、10%を超えない。従って、1つあるいはそれ以上の実施の形態によれば、スパッター可能な表面の全体的な凹形状が「ほぼ両端部の間」に延びるといわれる時、このことは、全体的な凹形状が、ターゲットの中心領域から周辺端部、または、スパッター可能な表面の30%を超えない領域を有する周辺領域にまで延びるという意味を持つことを意図しているのである。
【0045】
中心領域のターゲットの厚さTcの厚さは1/8インチの間、そして外周辺端部324の厚さTpが1/8インチから3/4インチの間で変えることができる。当然のことながら、これらの厚さとその他の寸法は特定のスパッター工程の堆積特性を最適化するために変えることが出来ることが理解されるだろう。その他の変形では、傾斜端部は平坦であるとことが示されるが、傾斜端部313は凹状あるいは凸状の形状を持つこともできる。
【0046】
本発明のその他の態様は、スパッタリング工程の半径方向の均一性を改良するために上述の種類のスパッターチャンバ内で凹状のターゲットから材料をスパッターする方法に関連する。この方法は、ターゲットに対面する半径方向の表面を持つ基板と空間を空けてターゲットをスパッターチャンバ内に配置することを含む。ターゲットは、ターゲットの周辺端部の間に延びるスパッター可能なターゲット表面を画成する正面と、周辺端部の間の全体に凹形状の表面をほぼ画成するスパッター可能表面とを含む。この方法は、さらに、ターゲットからの材料が基板の半径方向表面全体に均一に堆積されるようにターゲットからの材料をスパッターすることを含む。
【0047】
傾斜あるいは斜面の端部領域を持つ凹形状のターゲットを利用する効果を示すために、DCあるいはRF電力を用いて、チャンバ内で、各種実験が行われた。図4から図7に亘る図は、傾斜ターゲットを利用した実験データを示す。図4から図7に亘る図は、3種のターゲット構造、即ち、図3Aおよび図3Bに示す種類の凹状ターゲット、図1に示す種類の平坦なターゲット、および図2に示す種類の錐台形ターゲットについてフィルムの厚さおよびフィルムの厚さの不均一性を比較したグラフである。凹状ターゲットは、全体直径Rpがおおよそ17、5インチであり、中心領域直径Rcが約12インチ(即ち、比Rc/Rpが約68.5%)、そして、傾斜を変化させてテストした図5を除いて、端部の傾斜は約7度であった。
【0048】
図4および図5は、RFチャンバ内でチタンターゲットを用いたデータを示し、チャンバ内の工程パラメーターは、種々のターゲットについて一定に維持された。図4は、規格化されたアルミニウムの厚さ対300mm基板上での位置を示す。凹上のターゲットは、3.38%の変動を示したが、平坦なターゲットは、5.56%の変動を生み、錐台形ターゲットは、7.08%の変動を生じた。図5は、傾斜ターゲットの端部の角度が、フィルムの厚さおよび厚さの不均一性に及ぼす影響を示し、ここで、X軸は0度から13度の間で変わる角度と、Y軸は不均一性(NU%)とフィルムの厚さを示す。
【0049】
図6Aは、アルミニウムの凹状ターゲットを用いて、RFを電力源としたスパッターチャンバ内で得られたデータを示す。300mm基板上の種々の半径方向の位置で、規格化されたアルミニウムの厚さが測定された。図6Aは、アルゴンの流量が20sccm、30sccm、および40sccm場合のArガスの流量が規格化されたAlの厚さに及ぼす影響について示す。図6Bは、図6Aに示したと同じアルゴンの流量において、平坦なターゲットについて、Arガスの流量が規格化されたAlの厚さに及ぼす影響について示す。図6Aと図6Bのデータを比較すると、凹状のターゲットの厚さの均一性は平板のターゲットの厚さの均一性より良好であり、かつ、凹状のターゲットについて半径方向の厚さの均一性に及ぼすアルゴンの流量の影響はより小さいことがわかる。
【0050】
図6Cは、凹状ターゲットについて、ターゲットとウエーハ間の間隔(T−W)が規格化されたAlの厚さに及ぼす影響について、そして、図6Dは、平坦なターゲットについてターゲット−ウエーハ間の間隔(T−W)が規格化されたAlの厚さに及ぼす効果について示す。凹状ターゲットは、平坦なターゲットよりターゲットとウエーハ間の距離を調整すると、基板の半径方向表面全体に亘って厚さの均一性は良く変化は少ない。
【0051】
図6Eは、凹状ターゲットについて電力レベル(RF)が規格化されたAlの厚さに及ぼす影響について示し、図6Fは平坦なターゲットについて、電力レベル(RF)が規格化されたAlの厚さに及ぼす影響について示す。凹状ターゲットはスパッター電力を最適化することによって、平坦なターゲットに比してはるかに良好なフィルムの均一性が得られることを示した。
【0052】
図7Aから図7Fは、凹状および平坦なアルミニウムターゲットを用いてDC電力源のチャンバ内で得られた結果である。凹状のターゲットは上述と同じ寸法であった。図7Aは凹状ターゲットについて、Arガスの流量が規格化されたAlの厚さに及ぼす影響を示し、図7Bは、平坦なターゲットについてArガスの流量が規格化されたAlの厚さに及ぼす影響を示している。凹状ターゲットでは、平坦なターゲットに比して、Alの厚さの半径方向の均一性ははるかに良好であった。
【0053】
図7Cは、凹状のターゲットについて、ターゲットとウエーハの間隔(T−W)が規格化されたAlの厚さに及ぼす影響について示し、図7Dは、平坦なターゲットについてターゲットとウエーハの間隔(T−W)が規格化されたAlの厚さに及ぼす影響について示している。凹状ターゲットは、Alの厚さの半径方向の均一性が良好であることを示している。
【0054】
図7Eは、本発明の実施の1つの実施形態によるターゲットについて、電力レベル(DC)が規格化されたAlの厚さに及ぼす影響について示し、そして、図7Fは、平坦なターゲットについて、電力レベル(DC)が規格化されたAlの厚さに及ぼす影響について示している。凹状ターゲットはAlの厚さの半径方向の均一性が良好であった。
【0055】
上記データは、DCおよびRFの両電力源としたチャンバについて、電力、ターゲット−ウエーハ間隔、およびプロセスガスの流量を変えた工程条件においても、凹状ターゲットが、基板の半径方向表面の全域で良好な半径方向の均一性を示している。従って、図3Aおよび図3Bに示した種類の凹形状ターゲットを用いることによって、基板の半径方向表面の全域において堆積のさらなる均一性が得られるだろう。さらに、ターゲットとウエーハの間隔、プロセルガス流量、および電力といったプロセスのパラメータの変化は、堆積物の半径方向の均一性に影響が小さいと考えられる。
【0056】
本明細書を通して用いられた「1つの実施の形態」、「ある実施の形態」、「1つ又はそれ以上の実施の形態」、「1実施の形態」といった表現は、実施の形態に関して記載された独特の特徴、構造、材料、あるいは特性が、本発明の少なくとも1つの実施の形態に含まれることを意味する。それ故、この明細書を通して種々の場所に見られる「1つ又はそれ以上の実施の形態において」、「ある実施の形態において」、「1つの実施の形態において」といった表現は、必ずしも本発明の同じ実施の形態を参照しているわけではない。さらに、独特の特徴、構造、材料、あるいは特性は、1つ又はそれ以上の実施の形態において、適切な方法で組み合わせることができる。
【0057】
本発明は、ここに、個別詳細な実施の形態を参照して記載されたが、これらの実施の形態は本発明の原理あるいは応用の実例であるに過ぎないことを理解されたい。本発明の精神と範囲から逸脱することなく、本発明の方法や装置に対して種々の修正や変化を行なうことができることは当業者にとって明らかである。それ故、本発明は、添付した請求項やそれと同等なものの範囲内で、改良形や変形を含んでいることを意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパッタリング装置であって、スパッタリング装置は、
基板支持体を含み、処理空間を画成する壁部をもつチャンバと、
基板支持体から空間を空けて設けられたターゲットと、そして、
ターゲットから材料をスパッターするためターゲットに結合されたRF電力であって、
ターゲットは、ターゲットの周辺端部間に延びるスパッター可能なターゲット表面を画成する正面を持ち、ほぼ周辺端部間が全体的な凹形状をなすスパッター可能ターゲット表面をもつスパッタリング装置。
【請求項2】
全体的な凹形状は、傾斜領域に囲まれたほぼ平坦な中央領域によって画成される請求
項1の装置
【請求項3】
前記傾斜領域が約5度から約30度の範囲の角度で傾斜し、ターゲットの周辺端部の厚さが中心領域の厚さより厚くなっている請求項2の装置。
【請求項4】
傾斜領域の角度が約7度から13度の範囲である請求項3の装置。
【請求項5】
傾斜領域が周辺端部まで延びる請求項3の装置。
【請求項6】
傾斜領域が周辺正面領域まで延びる請求項3の装置。
【請求項7】
ターゲットの周辺端部はターゲットの直径Rpを画成し、中央領域は直径Rcを持ち、
中央領域の直径は比Rc/Rpが約60%から約90%の範囲にある請求項4の装置。
【請求項8】
スパッターチャンバ内で用いられるターゲット組立体であって、ターゲットは、
周辺端部の間に延びるスパッター可能なターゲット領域を画成する正面と、ほぼ両周辺
部間の全体的な凹形状を画成するスパッター可能なターゲット領域と、を有し、ターゲッ
トの周辺端部はターゲット直径Rpを画成し、中央領域は直径Rcを持ち、そして、中央
領域の直径は、比Rc/Rpが約60%から約90%の範囲に入るターゲット組立体。
【請求項9】
全体的な凹形状は、傾斜領域に囲まれたほぼ平坦な中央領域によって画成される請求
項8のターゲット組立体。
【請求項10】
傾斜領域は、角度が約5度から約20度の範囲で傾斜し、ターゲットの周辺端部の厚
さが中央領域の厚さより厚い請求項9のターゲット組立体。
【請求項11】
傾斜領域の角度が約7度から約13度の範囲である請求項10のターゲット組立体。
【請求項12】
ターゲットが受け板に結合されている請求項8のターゲット組立体。
【請求項13】
装置はさらに、ターゲットから材料をスパッターするためにDC電源がターゲットに結
合されている請求項1の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図6F】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図7F】
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【公表番号】特表2012−522894(P2012−522894A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503598(P2012−503598)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/029171
【国際公開番号】WO2010/114823
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(390040660)アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド (1,346)
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【Fターム(参考)】