説明

RFIDデータキャリア

【課題】アンテナ指向性の強弱を調節すること。
【解決手段】基材2の上にIC部3とアンテナ部4を備えたRFIDデータキャリア1において、アンテナ部4の形状を、直線状の放射器4−1と、放射器4−1を挟んだ両側に平行に配置した直線状の導波器4−2、4−2とを有するパターン形状とし、放射器4−1の線幅と導波器4−2の線幅をそれぞれ3〜15mmの範囲内に設定するとともに、放射器4−1と一方側の導波器4−2の間隔を、放射器4−1と他方側の導波器4−2の間隔よりも短く設定するものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波により非接触で各種データの送受信が行われるRFIDデータキャリアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、商品や荷物等の物品に関する各種データを管理する方法として、物品に取り付けたRFIDデータキャリアと、アンテナおよびコントローラを備えたリーダ/ライタ(以下「R/W」という。)とを利用したデータキャリアシステムが構築されている。この種のシステムでは、R/Wコントローラで制御された電波をR/Wアンテナから送信し、RFIDデータキャリアに対し非接触で各種データの読み書きを行うことができる。RFIDデータキャリアは、合成樹脂製の基材上にIC部とアンテナ部を実装したものが一般的であるが、そのアンテナ部の形状としては、図5に示したような各種のパターン形状が知られている。
【0003】
図5aはダイポールアンテナであり、IC部を中心として同一直線上に延びる一対のダイポール素子71、71を有している。また、図5bは3素子八木アンテナであり、IC部を有する直線状の放射器81を備え、放射器81よりも短い直線状の導波器82と、放射器81よりも長い直線状の反射器83とが放射器81を挟んだ両側に、等間隔で平行に配置されている。さらに、図5cは双方向八木アンテナであり、IC部を有する直線状の放射器91を備え、放射器91よりも短い同一長さの直線状の導波器92、92が放射器91を挟んだ両側に、等間隔で平行に配置されている。
【0004】
ところで、上述したデータキャリアシステムを利用したデータ管理において、RFIDデータキャリアによって商品や荷物等の物品の向きまで識別できると便利である。ところが、物品に対して所定の向きでデータキャリアを取り付けたとしても、図5に示したアンテナ形状のデータキャリアの場合には、次のような問題点があった。
【0005】
まず、ダイポールアンテナの場合には、図5に破線で示した通り、8の字に近い無指向性であり、ダイポール素子71の左右両側において指向性の強弱の差がないため、データキャリアの向きを識別することはできない。また、3素子八木アンテナの場合、導波器82側のメインローブに強い指向性を有しているが、反対に反射器83側のバックローブの指向性が極度に小さいため通信距離の面で不利となる。さらに、3素子双方向八木アンテナの場合には、放射器91の左右両側において均等な指向性を有しているので、ダイポールアンテナと同様にデータキャリアの向きを識別することはできない。
【0006】
なお、特許文献1には変形八木アンテナの例が開示されているが、このアンテナは複数方向に指向性を持たせることができるものの、その指向性の強度は一定であり、指向性の強弱を調節することは不可能である。
【0007】
【特許文献1】特開平11−112230号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、アンテナ部の指向性の強弱を調節することが可能なRFIDデータキャリアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明は、絶縁性の基材上に、外部R/Wからの電波によりデータの通信を行う通信手段およびデータを読み書き可能に記憶する記憶手段を有するIC部と、このIC部に接続された導電性のアンテナ部とを備えたRFIDデータキャリアであって、上記アンテナ部は、直線状の素子からなる放射器と、この放射器を挟んだ両側に、放射器に対し平行に配置された直線状の素子からなる導波器とを有するパターンで形成されるとともに、上記放射器および導波器の線幅が3〜15mmの範囲内に設定され、かつ、放射器および一方側の導波器間の間隔と、放射器および他方側の導波器間の間隔とが異なる長さに設定されていることを特徴とする。
【0010】
上記のような構成において、たとえば、放射器と一方側の導波器との間隔を、放射器と他方側の導波器との間隔よりも長く設定した場合、RFIDデータキャリアのアンテナ部において、放射器を中心とした一方側の指向性を他方側のそれよりも弱めることが可能になる。
【0011】
また、放射器および導波器の線幅を3〜15mmの範囲内とする理由は、線幅が3mm未満であると、放射器を中心とした両側において外部R/Wアンテナとの通信距離の差が現われなくなるためであり、線幅が15mmを超えると、その通信距離が極端に短くなってしまうからである。最大通信距離とその左右の差の双方を考慮すると、より好ましくは8〜10mmの範囲内とするのが良い。
【0012】
さらに、本発明において、上記基材を紙で構成することも可能であり、この場合、紙製の基材と上記アンテナ部との間に、アンテナ部に比して誘電率の変化が少なく、かつ、耐水性を有する被覆層を形成することが好ましい。このような構成によると、基材が湿気を帯びて水分を含んでいても、被覆層は誘電率の変化が少なく電波を吸収してしまうことがないため、アンテナ部の共振周波数のズレが減少してR/Wアンテナとの通信距離の低下を防止できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、RFIDデータキャリアのアンテナ部において、放射器と導波器の線長および線幅と、放射器と導波器の間隔を設定するだけの簡単な方法で、放射器を中心とした両側においてアンテナ指向性の強弱の差を設けることができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は本発明に係るRFIDデータキャリアの構成を示す平面図、図2は同データキャリアの断面図、図3はアンテナ部の形状を示す要部拡大図、図4は同データキャリアの通信可能領域を模式的に示す指向特性図である。
【0016】
図1に示したように、本実施形態のRFIDデータキャリア1は、所要形状に成形された基材2の上にIC部3とアンテナ部4とを実装したものである。このRFIDデータキャリア1の通信方式は、周波数がマイクロ波(2.45GHz)の電波を利用する電波方式を採用しており、静電結合方式や電磁誘導方式などの他の通信方式に比べ、通信距離が比較的広範囲に亘るのが特徴である。そして、外部のR/Wコントローラで制御されたマイクロ波の電波をR/Wアンテナから送信し、その送信された電波をRFIDデータキャリア1のアンテナ部4で受信することにより、R/WとRFIDデータキャリア1との間で各種データの送受信が非接触で行われる。
【0017】
基材2は、絶縁性の材料からなり、たとえば、PET等の合成樹脂や、上質紙、コート紙、合成紙等の各種紙類で構成される。紙類を使用した場合、合成樹脂を使用した場合に比べ、RFIDデータキャリア1を廉価に製作できる上に、薄型化や軽量化を図ることができる。また、基材2の上に必要事項をプリントできるという利点もある。
【0018】
図2に示したように、基材2を紙類で構成した場合には、紙が湿気を帯びて誘電率が変化することを防ぐため、基材2とアンテナ部4との間に被覆層6を形成することが好ましい。この被覆層6は、アンテナ部に比して誘電率の変化が少なく、かつ、耐水性を有する材料で構成される。そのような材料としては、ポリスチレンやABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリプロピレンやポリエチレンやポリブチレン等のオレフィン系樹脂、ポリフェニレンサルファイドやポリカーボネート等のエンジニアリングプラスチックのほか、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。その形成方法としては、これらの合成樹脂からなるフィルムを基材2上に粘着剤で貼着する方法や、これらの合成樹脂を含む紫外線硬化型または蒸発乾燥型インキを印刷する方法を採用することができる。
【0019】
このような構成によると、基材2が湿気を帯びて水分を含んでいても、被覆層6は誘電率の変化が少なく電波を吸収することがないので、アンテナ部4の共振周波数のズレが減少してR/Wアンテナとの通信距離の低下を防止できる。
【0020】
IC部3は、R/Wコントローラとの間でR/Wアンテナを介して各種データの通信を行う通信手段と、各種データを読み書き可能に記憶する記憶手段とを有するもので、たとえば、通信回路とメモリが内蔵された薄型ICチップを使用することができる。また、メモリとしてEEPROMやフラッシュメモリを用いることにより、電池レスタイプのデータキャリアとすることが可能である。
【0021】
アンテナ部4は、導電性の皮膜からなり、たとえば、銀ペースト、黒鉛、カーボン等を含有した導電性インキを基材2の上にパターン印刷して構成されている。本実施形態におけるアンテナ部4は、その素子のパターン形状として、3素子からなる双方向八木アンテナ形状を採用している。すなわち、アンテナ部4は、1本の素子からなる放射器4−1と2本の素子からなる導波器4−2、4−2を備えている。
【0022】
放射器4−1は、直線状の素子からなり、その中央端部には一対の給電部5、5が設けられている。放射器4−1は、外部のR/Wアンテナから送信された電波や導波器4−2から送り込まれた電波を捕捉する機能を有するとともに、R/Wアンテナに向けて電波を放射する機能を有している。また、一対の給電部5、5はIC部3の通信回路に電気的に接続されており、放射器4−1で捕捉した電波によって通信回路に給電が行われる。
【0023】
導波器4−2は、直線状の素子からなり、放射器4−1を挟んだ左右両側に、放射器4−1に対し平行に配置されている。導波器4−2は放射器4−1とは異なり無給電であって、R/Wアンテナから送信された電波を強めながら、その電波を放射器4−1に向けて送り込む作用をする。なお、本実施形態では、導波器4−2が放射器4−1の両側に1素子ずつ設けられているが、これに限らず複数本の素子を並べて配置しても良い。
【0024】
本実施形態では、アンテナ部4の指向性の強弱を調節するのが目的であるが、そのための構成として、放射器4−1と導波器4−2における素子の線長および線幅と、放射器4−1と導波器4−2の間隔を次の通りに設定するものとしている。
【0025】
図3に示したように、放射器4−1の素子の線長Lは、使用する電波の波長に応じて設定され、波長をλとするとλ/2である。ここで、周波数をf[Hz]とし、光速度をc[m/s]とすると、波長λ[m]は次の式で求められる。
【0026】
【数1】

【0027】
本実施形態では、周波数fが2.45[GHz]=2.45×10[Hz]の電波であり、光速度cは3.0×10[m/s]であるから、その波長λを上記の数式1により求めると約0.122[m]となる。よって、放射器4−1の素子の線長Lは約62mm前後に設定すれば良い。
【0028】
また、放射器4−1の素子の線幅Wは、3〜15mmの範囲内に設定される。その理由は、線幅Wが3mmよりも短いと、放射器4−1を中心としたアンテナ部4の左右両側において、外部R/Wアンテナとの通信距離の差が現われなくなるためであり、線幅Wが15mmよりも長くなると、今度はその通信距離が短くなってしまうからである。なお、後述する実施例によれば、最大通信距離とその左右差の双方の観点から、放射器4−1の素子の線幅Wは、より好ましくは8〜10mmの範囲内とするのが良い。
【0029】
導波器4−2の素子の線長Lは、放射器4−1の素子の線長L、すなわちλ/2よりもやや短い長さに設定され、本実施形態では約52mm前後とされている。また、導波器4−2の素子の線幅Wは、上述した理由から、放射器4−1の素子の線幅Wと同じく3〜15mmの範囲内、より好ましくは8〜10mmの範囲内に設定される。
【0030】
放射器4−1と導波器4−2の間隔は、放射器4−1を中心とした左右両側において異なる長さに設定され、アンテナ指向性を弱めたい側、すなわち通信距離を短くしたい側の間隔がその反対側の間隔よりも長く設定される。本実施形態では、図3において、放射器4−1と左側の導波器4−2との間隔Sが約25mmに設定され、放射器4−1と右側の導波器4−2との間隔Sが約30mmに設定されており、左側の間隔の方が右側の間隔よりも若干短く設定されている。
【0031】
以上のような構成によると、図4に示したように、このRFIDデータキャリア1について垂直偏波の水平面指向性を見た場合、アンテナ部4において放射器4−1を中心とした右側の指向性を左側のそれよりも弱めることが可能になる。
【0032】
このように、放射器4−1の左右両側においてアンテナ指向性の強弱を付けることができるため、次のような用途が考えられる。たとえば、本発明を車両の入出庫管理に適用した場合、車両の進行方向に対しアンテナ指向性の強弱を調節したRFIDデータキャリア1を車両本体に取り付け、R/Wアンテナを取り付けた車両ゲートと、このゲートを制御するR/Wコントローラを設置したデータキャリアシステムを構築することができる。この場合、車両に関する各種データを管理できるだけでなく、その車両が前進でゲートを通過したのか、あるいは後進でゲートを通過したのかまで識別することができ、入出庫管理システムの利便性が向上するという利点がある。
【0033】
なお、上述した実施形態では、RFIDデータキャリア1の通信方式として周波数がマイクロ波(2.45GHz)の電波を利用した電波方式の例を説明したが、周波数がUHF(956MHz)の電波を利用した電波方式にも同様に適用可能である。この場合、アンテナ部4の構成として、放射器4−1の素子の線長Lはλ/2(約157mm前後)、導波器4−2の素子の線長Lはλ/2よりもやや短い長さに設定する。また、放射器4−1と導波器4−2における素子の線幅WとWは、マイクロ波のときと同じく3〜15mm(より好ましくは8〜10mm)の範囲内に設定し、放射器4−1と導波器4−2の間隔は、放射器4−1を中心とした左右両側において異なる長さに設定すれば良い。
【0034】
これにより、上述したマイクロ波の場合と同様に、放射器4−1を中心とした左右両側においてアンテナ指向性の強弱を調節することが可能になるとともに、最大通信距離が約4m前後とマイクロ波に比べ通信距離を延ばすことができる。
【0035】
以下、本発明の具体的な実施例について、測定結果を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0036】
[アンテナ形状の相違についての検討]
RFIDデータキャリアにおけるアンテナ部のパターン形状として、図5で説明したダイポールアンテナ、3素子八木アンテナおよび3素子双方向八木アンテナと、本発明品に係るアンテナの各々について、R/Wアンテナとの間の通信距離(読み取り距離)を測定した。その測定結果を下記の表1に示す。なお、RFIDデータキャリアの各アンテナ部の形状は次の(A)〜(D)の通りであるが、アンテナ部以外の構成は全て同一とし、測定に用いた電波はマイクロ波(2.45GHz)とした。
【0037】
(A)ダイポールアンテナ
ダイポール素子…線幅5mm、線長68mm
(B)3素子八木アンテナ
放射器…線幅5mm、線長68mm
導波器…線幅5mm、線長47mm
反射器…線幅5mm、線長70mm
放射器と反射器(左側)の間隔…24mm
放射器と導波器(右側)の間隔…31mm
(C)3素子双方向八木アンテナ
放射器…線幅8mm、線長66mm
導波器…線幅8mm、線長52mm
放射器と導波器(左側)の間隔…25mm
放射器と導波器(右側)の間隔…25mm
(D)本発明品
放射器…線幅8mm、線長66mm
導波器…線幅8mm、線長52mm
放射器と導波器(左側)の間隔…25mm
放射器と導波器(右側)の間隔…30mm
【0038】
【表1】

【0039】
表1から明らかなように、上記(A)のダイポールアンテナでは、左右の通信距離が等しく、アンテナ左右の指向性に強弱を付けることは不可能である。また、上記(B)の3素子八木アンテナは、右(導波器)側のメインローブの通信距離に優れるが、左(反射器)側のバックローブの通信距離が極端に短いため、アンテナの左右両側において指向性の強弱の差が大きく付きすぎてしまうことが分かる。さらに、上記(C)の3素子双方向八木アンテナでは、ダイポールアンテナに比べ通信距離は延びるが、上記(A)のダイポールアンテナと同様に左右の通信距離が等しく、アンテナ左右の指向性に強弱を付けることはできなかった。
【0040】
それに対し、上記(D)の本発明品によると、上記(A)のダイポールアンテナに比べ左右共に通信距離を延ばすことができるとともに、上記(B)の3素子八木アンテナのように一方側の通信距離を極度に低下させることもなく、アンテナの左右両側において指向性の強弱の差を適度に設けられることが判明した。
【実施例2】
【0041】
[アンテナ左右の読み取り距離の差制御]
RFIDデータキャリアのアンテナ部の寸法に関し、放射器と導波器における線幅および線長、ならびに放射器と導波器の左右の間隔を変更してそのときの最大読み取り距離と左右の距離の差を測定した。その測定結果を下記の表2に示す。なお、測定に用いた電波はマイクロ波(2.45GHz)とし、放射器および導波器の寸法については、次の4通りのものを使用した。
【0042】
(1) 試料ア、イ、ウ
放射器…線幅5mm、線長62mm
導波器…線幅5mm、線長52mm
(2) 試料エ、オ、カ
放射器…線幅8mm、線長66mm
導波器…線幅8mm、線長52mm
(3) 試料キ、ク、ケ
放射器…線幅10mm、線長64mm
導波器…線幅10mm、線長54mm
(4) 試料コ、サ、シ
放射器…線幅15mm、線長62mm
導波器…線幅15mm、線長54mm
【0043】
【表2】

【0044】
表2の測定結果を参照すると、試料ア、イ、ウのように放射器と導波器の線幅が5mmの場合、放射器と導波器の左右の間隔を異ならせても、アンテナ部の左右において読み取り距離の差がほとんど現われなかった。
【0045】
試料エ、オ、カのように放射器と導波器の線幅が8mmの場合、放射器と導波器の左右の間隔が等しい試料エでは、左右の読み取り距離の差が現われなかったが、放射器と導波器の左右の間隔が異なる試料オとカでは、共に左右の読み取り距離の差が現われ、アンテナ部の左右に指向性の強弱を持たせることができた。
【0046】
試料キ、ク、ケのように放射器と導波器の線幅が10mmの場合、放射器と導波器の左右の間隔が等しい試料キでは、左右の読み取り距離の差が現われなかったが、放射器と導波器の左右の間隔が異なる試料クとケでは、共に左右の読み取り距離の差が現われ、アンテナ部の左右に指向性の強弱を持たせることができた。
【0047】
試料コ、サ、シのように放射器と導波器の線幅が15mmの場合、放射器と導波器の左右の間隔が等しい試料コでは、左右の読み取り距離の差が現われなかったが、放射器と導波器の左右の間隔が異なる試料サとシでは、共に左右の読み取り距離の差が現われ、アンテナ部の左右に指向性の強弱を持たせることができた。なお、試料コ、サ、シでは、線幅が8mmや10mmの場合に比べ、最大読み取り距離が短くなってしまうことが分かる。
【0048】
以上の測定結果から明らかなように、左右の読み取り距離の差が大きいのは、放射器と導波器の線幅が8mmと10mmの場合であり、最大読み取り距離とその左右差の双方の観点からすると、放射器と導波器の線幅は8mm〜10mmの範囲内に設定するのが適当であることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係るRFIDデータキャリアの構成を示す平面図。
【図2】図1に示すA−A線断面図。
【図3】アンテナ部の形状を示す要部拡大図。
【図4】本発明に係るRFIDデータキャリアの通信可能領域を示す指向特性図。
【図5】従来のアンテナ形状の通信可能領域を示す指向特性図。
【符号の説明】
【0050】
1 RFIDデータキャリア
2 基材
3 IC部
4 アンテナ部
4−1 放射器
4−2 導波器
5 給電部
6 被覆層
放射器の素子の線長
放射器の素子の線幅
導波器の素子の線長
導波器の素子の線幅
放射器と左側の導波器の間隔
放射器と右側の導波器の間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の基材上に、外部R/Wからの電波によりデータの通信を行う通信手段およびデータを読み書き可能に記憶する記憶手段を有するIC部と、このIC部に接続された導電性のアンテナ部とを備えたRFIDデータキャリアであって、
上記アンテナ部は、直線状の素子からなる放射器と、この放射器を挟んだ両側に、放射器に対し平行に配置された直線状の素子からなる導波器とを有するパターンで形成されるとともに、
上記放射器および導波器の線幅が3〜15mmの範囲内に設定され、かつ、放射器および一方側の導波器間の間隔と、放射器および他方側の導波器間の間隔とが異なる長さに設定されている
ことを特徴とするRFIDデータキャリア。
【請求項2】
上記基材が紙で構成され、その基材と上記アンテナ部との間に、アンテナ部に比して誘電率の変化が少なく、かつ、耐水性を有する被覆層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のRFIDデータキャリア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−67478(P2006−67478A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−250542(P2004−250542)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【出願人】(000186566)小林記録紙株式会社 (169)
【Fターム(参考)】