説明

RHOキナーゼ阻害化合物の眼科用製剤

本発明は、Rho関連タンパク質キナーゼ(ROCK)の阻害物質を少なくとも1種含む水性医薬製剤に関する。本発明の水性医薬製剤は、ROCK阻害物質 0.01〜0.4% w/v、非イオン性界面活性剤 0.01〜2% w/v、およびpH6.3〜7.8において浸透圧を220〜360mOsm/kGに維持できる等張化剤を含み、ROCK阻害物質、界面活性剤および等張化剤は製剤中で相溶である。本発明の水性眼科用製剤は、眼バイオアベイラビリティの増加および/または全身濃度の増加を伴わない房水濃度の増加を呈する。さらに、本発明は、眼圧を低下させる方法、特に、水性医薬製剤を被験者に投与することによって緑内障を治療する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Rhoキナーゼ(ROCK)阻害化合物およびその関連アナログの医薬製剤、特に眼科用水性製剤に関する。また、本発明は、細胞骨格の統合性(integrity)および再構築を変化させることによって疾患または障害を治療するための、特に眼圧(IOP)が上昇する疾患、例えば原発性開放隅角緑内障を治療するための上記製剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
Rhoファミリーの低分子量GTP結合タンパク質は、幾つかの細胞外刺激、例えば成長因子、ホルモンおよび機械的ストレスによって活性化され、不活性なGDP結合型と活性なGTP結合型との間を循環することによって分子シグナルスイッチとして機能し、細胞性応答を引き起こすことができる。Rhoキナーゼ(ROCK)はRhoの重要な下流メディエーターとして機能し、普遍的に発現する2種類のアイソフォーム(ROCK1およびROCK2)として存在する。ROCKは、細胞骨格タンパク質、例えばモエシン、Na+−H+交換輸送体1(NHE1)、LIMキナーゼおよびビメンチン、収縮性タンパク質、例えばミオシン軽鎖ホスファターゼ結合サブユニット(MYPT−1)、CPI−17、ミオシン軽鎖およびカルポニン、微小管結合タンパク質、例えばTauおよびMAP−2、神経細胞成長円錐関連タンパク質、例えばCRMP−2、シグナル伝達タンパク質、例えばPTEN、ならびに転写因子、例えば血清応答因子を含む多数の基質の機能を制御するセリン/トレオニンキナーゼである(Loirand等, Circ Res 98: 322-334 (2006))。また、ROCKは、RhoAによって誘導される細胞形質転換に必要である。複数のシグナル伝達経路の重要な媒体として、ROCKは、細胞骨格再構築、アクチンストレスファイバー形成、増殖、走化性、細胞質分裂、サイトカインおよびケモカイン分泌、内皮細胞および上皮細胞の結合統合性(junction integrity)、アポトーシス、転写活性化ならびに平滑筋収縮を含む多様な細胞現象を制御する。これらの細胞作用の結果として、ROCKは、生理的過程、例えば、血管収縮、気管支収縮、組織改造、炎症、浮腫、血小板凝集および増殖性疾患を制御する。
【0003】
十分に裏付けされたROCK活性の一例は、平滑筋収縮である。平滑筋細胞において、ROCKは、カルシウム感受性増加および平滑筋収縮を媒介する。Gタンパク質共役受容体に結合するアゴニスト(ノルアドレナリン、アセチルコリン、エンドセリン等)は、細胞質のCa2+濃度および収縮装置のCa2+感受性の両方を増加させることにより収縮を引き起こす。平滑筋収縮剤によるCa2+感受性増加の効果は、MYPT−1、すなわちミオシン軽鎖ホスファターゼ(MLCP)の調節サブユニットのROCK媒介リン酸化に起因し、MLCPの活性が阻害される結果、ミオシン軽鎖のリン酸化の促進および平滑筋収縮が生じる(WO 2005/003101A2,WO 2005/034866A2)。
【0004】
緑内障は、不可逆的な視力障害を引き起こす眼疾患である。それは、米国において、失明の第4番目に多い原因であり、視力障害の第2番目に多い原因であり、そして、アフリカ系アメリカ人において、不可逆的な視力障害の最も多い原因である。一般的には、その疾患は、少なくとも部分的には眼圧の増加から生じる有害効果によって引き起こされる進行性の視神経症によって特徴付けられる。正常個体において、眼圧は12〜20mmHgの範囲であり、平均は約16mmHgである。しかしながら、原発性開放隅角緑内障に罹患した個体において、眼圧は一般的に上昇して22〜30mmHgを超える。閉塞隅角または急性緑内障において、眼圧は70mmHgにまで達し、数日以内に失明に至る可能性がある。興味深いことに、視力障害は、通常、圧力に敏感な眼を有する個体において、統計的に正常な眼圧から生じ得る。すなわち、正常眼圧緑内障として知られる疾患である[例えば、P. L. Kaufman and T. W. Mittag, "Medical Therapy Of Glaucoma," Ch. 9, Sec. II (pp. 9.7-9.30) In P. L. Kaufman and T. W. Mittag (eds.): Glaucoma (Vol. 7 of S. M. Podos and M. Yanoff (eds): Textbook of Ophthalmology Series). London, Mosby-Year Book Europe Ltd. (1994); A. C. Guyton, Textbook of Medical Physiology (W. B. Saunders Co., Sixth Ed.), pp. 386-89 (1981)]。
【0005】
開放隅角緑内障は、原発緑内障全体の約90%を占め、眼からの液体(房水)流出に対する異常に高い耐性によって特徴付けられる。正常な耐性は、眼の統合性に必要な眼の形状を維持するのに十分な眼圧を維持するために必要である。この耐性は、特殊化した細胞からなる多層状組織と高密度アクトミオシン細胞骨格ネットワーク、膠原線維(collagenous beams)および細胞外マトリックスとの複合体である小柱網によってもたらされる。小柱網の耐性は、通常、眼圧が〜16mmHgであるものであり、その圧力において、房水はその産生速度(2.5μL/分)と同じ速度で流出する。緑内障の眼では、房水産生速度は一定であるが、眼圧の上昇に関与する、流出に対する耐性が増加する。
【0006】
緑内障の典型的な治療は、それぞれ欠点をもつ、様々な眼圧(IOP)低下薬によるアプローチを含む。βブロッカーおよび炭酸脱水酵素阻害剤は、無血管の水晶体および角膜内皮細胞の成長に必要とされる房水産生を低下させ、プロスタグランジンは、総流出機能の約10%を占めるにすぎないブドウ膜強膜(uvealscleral)流出経路に作用する。小柱網は、房水流出部位であり、房水流出に対する耐性の増加がIOPの上昇に関与するが、現在、小柱網に対して直接作用する、承認された市販の治療薬はない。したがって、この構造を標的とする、改良されたIOP低下薬の医学的必要性は依然として残ったままである。小柱網を標的とする薬剤は、現在のIOP低下薬に十分応答しない、および/またはこれらの薬剤に関連する副作用を忍容し得ない多数の患者に安楽をもたらすであろう。さらに、これらの分子は、その他のクラスのIOP低下薬を併用する補助療法として有用であろう。
【0007】
米国特許第6,586,425号、第6,110,912号および第5,798,380号は、眼のアクチンフィラメント統合性に影響を与えて房水流出を促進させる化合物を用いた緑内障の治療方法を開示する。これらの特許は、具体的には、ラトルンクリンA(latrunculin A)、ラトルンクリンB(latrunculin B)、スウィンホライドA(swinholide A)およびジャスプラキノリド(jasplakinolide)を開示し、これらは、小柱網におけるアクチン細胞骨格および密着結合複合体の摂動(perturbation)または基底膜(underlying membrane)との相互作用の変化を生じさせる。
【0008】
米国特許第6,649,625号および第6,673,812号は、Rhoキナーゼ阻害活性を有する特定の化合物の、緑内障の治療に関する医薬用途を開示する。
【0009】
眼科薬物治療において局所適用された緑内障薬の結膜および鼻粘膜を介した全身性吸収によって、有意な副作用が生じ得ることが長年認識されてきた[例えば、Nelson, W.L., Fraundfelder, F.T., Sills, J.M., Arrowsmith J.B., Kuritsky, J.N., "Adverse respiratory cardiac events attributed to timolol ophthalmic solution," Am. J. Ophthalmol. 1986, 102, pp606-11 ; Saxena, R. ; Prakash, J., Mathur, P., Gupta, S. K. "Pharmacotherapy of Glaucoma," Ind. J. Pharmacol, 2002, 34, pp71-85]。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
体循環における薬物濃度の増加を伴うことなく増加した薬物バイオアベイラビリティを呈し、これによって望ましくない薬物関連副作用を低減または排除し得る、改良されたIOP低下薬が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、式IIで表される少なくとも1種のROCK阻害物質 0.01〜0.4% w/v、非イオン性界面活性剤 0.01〜2% w/v、およびpH6.3〜7.8において浸透圧を220〜360mOsm/kGに維持できる等張化剤を含む水性医薬製剤であって、前記ROCK阻害物質、前記界面活性剤および前記等張化剤が前記製剤中で相溶である前記水性医薬製剤に関する。
【0012】
前記製剤における好ましい界面活性剤は、ポリソルベート、ポラキサマーまたはそれらの組み合わせである。前記製剤における好ましいpHは6.3〜7.5である。前記製剤におけるさらに好ましいpHは6.3〜7.3である。前記製剤は必要に応じてキレート剤および/または保存料をさらに含んでいてもよい。前記等張化剤は、非イオン性等張化剤、例えばグリセロール、マンニトールまたはデキストロースであり得る。また、前記等張化剤は、イオン性等張化剤、例えば塩化ナトリウムであり得る。
【0013】
本発明の眼科用水性製剤は、全身濃度の増加を伴うことなく増加した眼バイオアベイラビリティおよび/または房水濃度を呈する。
【0014】
本発明はさらに、治療の必要がある被験者を特定し、前記被験者に前記水性医薬製剤を投与することによって眼圧を低下させる方法、特に、緑内障を治療する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、温度60℃、pH5.3、6.3および7.3における化合物Aの安定性を示す。製剤を60℃で一定期間保存した後、化合物Aの残存率を測定して図1に示した。
【図2A】図2Aは、pH5.3、6.3および7.3の0.12% 化合物Aを投与した後の房水(AH)Cmaxを示す。
【図2B】図2Bは、pH5.3、6.3および7.3の0.12% 化合物Aを投与した後の房水AUCを示す。データは平均値±SEM、N=4個の眼である。
【図3A】図3Aは、pH5.3、6.3および7.3の0.12% 化合物Aを投与した後の血漿Cmaxを示す。
【図3B】図3Bは、pH5.3、6.3および7.3の0.12% 化合物Aを投与した後の血漿AUCを示す。データは平均値±SEM、N=2匹の動物である。
【図4】図4は、pH5.3、6.3および7.3の0.12%(3mM) 化合物Aを投与した後の経時的な眼表面濃度を示す。データは平均値±SEM、N=4個の眼である。
【図5】図5は、種々の製剤における眼の快適性スコアを示す。
【図6】図6は、種々の濃度の化合物2.039における眼の快適性スコアをその他の薬物と比較して示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
定義
特に明記しない限り、下記用語は一般的に次のように定義されるが、これに限定されるわけではない。
ハロ置換基は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素から選択される。
【0017】
「アルキル」は、1〜12個、さらに好ましくは1〜8個、最も好ましくは1〜6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐鎖状の基である。
【0018】
「アルケニル」は、2〜12個の炭素原子を含む直鎖状または分岐鎖状の基であり、少なくとも1つの二重結合を含むが、2つ以上の二重結合を含んでいてもよい。
【0019】
「アルキニル」は、2〜12個の炭素原子を含む直鎖状または分岐鎖状の基であり、少なくとも1つの三重結合を含むが、2つ以上の三重結合を含んでいてもよく、さらに1つまたは2つ以上の二重結合部分を含んでいてもよい。
【0020】
「アルコキシ」は、アルキル−O−という基であり、アルキル基は上記と同義であり、上記で定義されたアルキル基が任意に置換化されたものも含まれる。
【0021】
「アルケノキシ」は、アルケニル−O−という基であり、アルケニル基は上記と同義であり、上記で定義されたアルケニル基が任意に置換化されたものも含まれる。
【0022】
「アルキノキシ」は、アルキニル−O−という基であり、アルキニル基は上記と同義であり、上記で定義されたアルキニル基が任意に置換化されたものも含まれる。
【0023】
「アリール」は、1個の環(例えばフェニル)または複数個の縮合環(例えばナフチルまたはアントリル)を有する、6〜14個の炭素原子を含む不飽和芳香族炭素環式基である。好ましいアリールとしては、例えば、フェニル、ナフチル等が挙げられる。
【0024】
「アリールアルキル」は、アリール−アルキル−という基であり、好ましくはアルキル部分に1〜6個の炭素原子を含み、アリール部分に6〜10個の炭素原子を含む。そのようなアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル、フェネチル等が挙げられる。
【0025】
「アリールアルケニル」は、アリール−アルケニル−という基であり、好ましくはアルケニル部分に2〜6個の炭素原子を含み、アリール部分に6〜10個の炭素原子を含む。
【0026】
「アリールアルキニル」は、アリール−アルキニル−という基であり、好ましくはアルキニル部分に2〜6個の炭素原子を含み、アリール部分に6〜10個の炭素原子を含む。
【0027】
「シクロアルキル」は、1〜3個のアルキル基で任意に置換されていてもよい1個の環または複数個の縮合環を有する、3〜12個の炭素原子を含む環状アルキル基である。そのようなシクロアルキルとしては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロオクチル、1−メチルシクロプロピル、2−メチルシクロペンチル、2−メチルシクロオクチル等の単環構造、またはアダマンチル等の複数環構造が挙げられる。
【0028】
「シクロアルケニル」は、1〜3個のアルキル基で任意に置換されていてもよい1個の環または複数個の縮合環を有するとともに分子内に少なくとも1ヵ所の不飽和を有する、4〜12個の炭素原子を含む環状アルケニル基である。好適なシクロアルケニル基としては、例えば、シクロブタ−2−エニル、シクロペンタ−3−エニル、シクロオクタ−3−エニル等が挙げられる。
【0029】
「シクロアルキルアルキル」は、シクロアルキル−アルキル−という基であり、好ましくはアルキル部分に1〜6個の炭素原子を含み、シクロアルキル部分に6〜10個の炭素原子を含む。そのようなシクロアルキルアルキル基としては、例えば、シクロプロピルメチル、シクロヘキシルエチル等が挙げられる。
【0030】
「シクロアルキルアルケニル」は、シクロアルキル−アルケニル−という基であり、好ましくはアルケニル部分に2〜6個の炭素原子を含み、シクロアルキル部分に6〜10個の炭素原子を含む。そのようなシクロアルキルアルケニル基としては、例えば、シクロヘキシルエテニル等が挙げられる。
【0031】
「シクロアルキルアルキニル」は、シクロアルキル−アルキニル−という基であり、好ましくはアルキニル部分に2〜6個の炭素原子を含み、シクロアルキル部分に6〜10個の炭素原子を含む。そのようなシクロアルキルアルキニル基としては、例えば、シクロプロピルエチニル等が挙げられる。
【0032】
「ヘテロアリール」は、1〜10個の炭素原子を含むとともに、酸素、窒素および硫黄から選択される1〜4個のヘテロ原子を環内に含む一価の芳香族複素環式基である。そのようなヘテロアリール基は、1個の環を有していてもよいし(例えばピリジルまたはフリル)、複数個の縮合環を有していてもよい(例えばインドリジニルまたはベンゾチエニル)。
【0033】
「ヘテロアリールアルキル」は、ヘテロアリール−アルキル−という基であり、好ましくはアルキル部分に1〜6個の炭素原子を含み、ヘテロアリール部分に6〜10個の原子を含む。そのようなヘテロアリールアルキル基としては、例えば、ピリジルメチル等が挙げられる。
【0034】
「ヘテロアリールアルケニル」は、ヘテロアリール−アルケニル−という基であり、好ましくはアルケニル部分に2〜6個の炭素原子を含み、ヘテロアリール部分に6〜10個の原子を含む。
【0035】
「ヘテロアリールアルキニル」は、ヘテロアリール−アルキニル−という基であり、好ましくはアルキニル部分に2〜6個の炭素原子を含み、ヘテロアリール部分に6〜10個の原子を含む。
【0036】
「複素環」は、1〜8個の炭素原子を含むとともに、窒素、硫黄または酸素から選択される1〜4個のヘテロ原子を環内に含む、1個の環または複数個の縮合環を有する飽和または不飽和基である。そのような複素環基は、1個の環を有していてもよいし(例えばピペリジニルまたはテトラヒドロフリル)、複数個の縮合環を有していてもよい(例えばインドリニル、ジヒドロベンゾフランまたはキヌクリジニル)。好ましい複素環としては、例えば、ピペリジニル、ピロリジニルおよびテトラヒドロフリルが挙げられる。
【0037】
「複素環−アルキル」は、複素環−アルキル−という基であり、好ましくはアルキル部分に1〜6個の炭素原子を含み、複素環部分に6〜10個の原子を含む。そのような複素環−アルキル基としては、例えば、モルホリノ−エチル、ピロリジニルメチル等が挙げられる。
【0038】
「複素環−アルケニル」は、複素環−アルケニル−という基であり、好ましくはアルケニル部分に2〜6個の炭素原子を含み、複素環部分に6〜10個の原子を含む。
【0039】
「複素環−アルキニル」は、複素環−アルキニルという基であり、好ましくはアルキニル部分に2〜6個の炭素原子を含み、複素環部分に6〜10個の原子を含む。
【0040】
複素環およびヘテロアリールの具体例としては、特に限定されるわけではないが、フラン、チオフェン、チアゾール、オキサゾール、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチルピリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリン、イソチアゾール、フェナジン、イソオキサゾール、フェノキサジン、フェノチアジン、イミダゾリジン、イミダゾリン、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、インドリン等が挙げられる。
【0041】
特に明記しない限り、上記基において水素によって占められる位置は、置換基でさらに置換されてもよく、置換基としては、特に限定されるわけではないが、例えば、ヒドロキシ、オキソ、ニトロ、メトキシ、エトキシ、アルコキシ、置換化アルコキシ、トリフルオロメトキシ、ハロアルコキシ、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、ハロ、メチル、エチル、プロピル、ブチル、アルキル、アルケニル、アルキニル、置換化アルキル、トリフルオロメチル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、チオ、アルキルチオ、アシル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、カルボキシアミド、置換化カルボキシアミド、アルキルスルホニル、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニルアミノ、スルホンアミド、置換化スルホンアミド、シアノ、アミノ、置換化アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキル、アシルアミノ、アミジノ、アミドオキシモ(amidoximo)、ヒドロキサモイル(hydroxamoyl)、フェニル、アリール、置換化アリール、アリールオキシ、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ピリジル、イミダゾリル、ヘテロアリール、置換化ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、置換化シクロアルキル、シクロアルキルオキシ、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリノ、複素環、(複素環)オキシ、および(複素環)アルキルが挙げられ、好ましいヘテロ原子は酸素、窒素および硫黄である。これらの置換基の価数に空きがある場合、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールおよび/または複素環基でさらに置換されていてもよい。炭素の価数に空きがある場合、ハロゲンで、および酸素、窒素または硫黄結合置換基でさらに置換されていてもよい。そのような価数の空きが複数ある場合、結合の直接形成により、または新しいヘテロ原子、好ましくは酸素、窒素または硫黄への結合の形成により、これらの基が結合して環を形成してもよい。置換基による水素の置換が本発明の分子に許容し得ない不安定性を導入しない場合、およびにそうでなくても置換基による水素の置換が化学的に妥当である場合に、上記置換を行うことができる。
【0042】
「ヘテロ原子含有置換基」は、少なくとも1個の非ハロゲンのヘテロ原子を含有する置換基である。そのような置換基の具体例としては、特に限定されるわけではないが、例えば、ヒドロキシ、オキソ、ニトロ、メトキシ、エトキシ、アルコキシ、置換化アルコキシ、トリフルオロメトキシ、ハロアルコキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、チオ、アルキルチオ、アシル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、カルボキシアミド、置換化カルボキシアミド、アルキルスルホニル、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニルアミノ、スルホンアミド、置換化スルホンアミド、シアノ、アミノ、置換化アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキル、アシルアミノ、アミジノ、アミドオキシモ(amidoximo)、ヒドロキサモイル(hydroxamoyl)、アリールオキシ、ピリジル、イミダゾリル、ヘテロアリール、置換化ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、シクロアルキルオキシ、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリノ、複素環、(複素環)オキシ、および(複素環)アルキルが挙げられ、好ましいヘテロ原子は酸素、窒素および硫黄である。これらの置換基の価数に空きがある場合、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールおよび/または複素環基でさらに置換されていてもよい。炭素の価数に空きがある場合、ハロゲンで、および酸素、窒素または硫黄結合置換基でさらに置換されていてもよい。そのような価数の空きが複数ある場合、結合の直接形成により、または新しいヘテロ原子、好ましくは酸素、窒素または硫黄への結合の形成により、これらの基が結合して環を形成してもよい。置換基による水素の置換が本発明の分子に許容し得ない不安定性を導入しない場合、およびにそうでなくても置換基による水素の置換が化学的に妥当である場合に、上記置換を行うことができる。
【0043】
「薬学的に許容し得る塩」は、親化合物の所望の生物活性を保持するが、望まない毒性効果は付加されていない塩である。薬学的に許容し得る塩の形態としては、例えば、多形および非晶形の、酸または塩基付加物から誘導した様々な塩が挙げられる。酸付加塩は、無機または有機酸を用いて形成させることができる。そのような酸の具体例としては、特に限定されるわけではないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、クエン酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、ナフトエ酸、シュウ酸、コハク酸、ゲンチシン酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、アジピン酸、乳酸、酒石酸、サリチル酸、メタンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、カンファースルホン酸およびエタンスルホン酸が挙げられる。薬学的に許容し得る塩基付加塩は、金属または有機対イオン、例えば、特に限定されるわけではないが、ナトリウムまたはカリウム等のアルカリ金属塩;マグネシウムまたはカルシウム等のアルカリ土類金属塩;およびアンモニウムまたはテトラアルキルアンモニウム塩、すなわちNX4+(XはC1-4)、を用いて形成させることができる。
【0044】
「互変異性体」は、互変異性型と呼ばれる1種または2種以上の形態で存在し得る化合物であり、隣接する二重結合の配置の再構成に伴って生じる化合物中の1個または2個以上の水素原子の移動によって相互転換し得る。これらの互変異性型は、互いに平衡状態にあり、平衡点は、化合物の物理的状態の正確な特性に依存する。互変異性型が可能である限り、本発明は全ての可能な互変異性型に関するものと理解されるべきである。
【0045】
「溶媒和物」は、式Iまたは式IIの化合物が薬学的に許容し得る共溶媒とある一定の比率で結合している付加錯化合物である。共溶媒としては、特に限定されるわけではないが、例えば、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、酢酸エチル、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチレングリコール、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、ピリジン、ジオキサンおよびジエチルエーテルが挙げられる。水和物は、共溶媒が水である溶媒和物である。式Iおよび式IIの化合物の定義には、所定の活性を有する限り、全ての可能な、任意の比率の水和物および溶媒和物が含まれると理解されるべきである。
【0046】
本発明は、ROCK阻害化合物およびその関連アナログを含む医薬製剤に関する。
緑内障を治療するための局所製剤の開発を成功させるためには、溶解性、製剤安定性、眼表面の忍容性、全身曝露および房水曝露という重要な5つの制約がある。眼表面は、角膜表面および結膜表面と関係する。眼表面滞留時間は、薬物が眼表面に滞留する平均時間である。房水は、前眼房内の液体であり、作用部位である小柱網における濃度と緊密な相関関係を有する。ある条件下で5つの制約すべてを同時に最適化し得る物理化学的特性の薬物は稀である。緑内障を治療するための理想的な眼科用製剤は、(1)治療量の薬物を送達するのに十分な溶解性を有し、(2)緑内障治療薬たる市販製品として長期保存するのに十分な安定性を有し、(3)治療量において良好な眼表面の忍容性を示し、(4)最小限の全身曝露での、治療域の房水(作用部位)中薬物濃度の達成およびこれによる全身性副作用の最小化を可能とするものである。
【0047】
本発明のROCK阻害化合物に関し、本発明者等は、製剤のpHが上記5つの制約のうち3つに影響を与え得ることを見出した。pHの低下は、水性製剤中のROCK阻害化合物の溶解性および安定性を改善する。一方、本発明者等は、製剤のpHの増加が、化合物の眼表面滞留時間を増加させることにより、前眼房に浸透する薬物を増加させ、その結果、房水中の化合物濃度が増加することを見出した。本発明者等は、製剤のpH(pH5.3〜7.3)は、全身曝露に対する効果を有しないことを見出した。本発明者等は、製剤のpHがpH7.3以下であるときに眼の快適性に影響を与えることの証拠を見出していない。但し、眼表面は一般的に塩基性製剤よりも酸性製剤に対して忍容性を示す。
【0048】
本発明者等は、溶解性、安定性、眼忍容性、全身曝露および房水曝露の相互間で、許容可能な犠牲または交換を可能とするpHの範囲としてpH6.3〜7.8を特定および選択した(例えば、あるpHにおいて、忍容性または曝露の増加が達成されるならば、不十分な溶解性は許容し得る)。
【0049】
ROCK阻害化合物の濃度は、眼の快適性に影響する。すなわち、濃度が低下すると、快適性は増加する。本発明者等は、製剤中のROCK阻害化合物の濃度範囲として0.01〜0.4%(w/v)を特定および選択した。そのような濃度では、治療効果が効果的に実現されるとともに、眼の不快適性は生じない。
【0050】
本発明者等は、局所眼科用製剤として薬学的に許容し得るpH範囲(pH4.5〜pH7.8)において、製剤のpHを酸性pHから生理的pHに調整すると、その水溶解度がpHの増加とともに減少する特定のROCK阻害化合物が、有意に増加した前眼房バイオアベイラビリティを呈することを予期せず見出した。また、本発明者等は、眼科用製剤のpHが増加すると、本発明のROCK阻害化合物の眼表面滞留時間が増加し、房水中濃度が増加することを予期せず見出した。眼表面滞留時間および前眼房バイオアベイラビリティの増加によって、細胞骨格崩壊と関連する疾患および障害、例えば原発性開放隅角緑内障の治療に用いるべき薬物濃度の低下が実現可能となる。
【0051】
本発明者等は、全身曝露、例えば血漿濃度によって測定される全身曝露は、眼科用製剤のROCK阻害物質濃度および量に関係するだけであり、製剤のpHまたは組成には関係しないことを見出した。したがって、中性pHに近いが通常使用される眼科用製剤のpHよりも高い6.3〜7.8というpHを有する眼科用製剤を提供することによって、膜透過量の増加を通じて製剤の前眼房バイオアベイラビリティを増加させ、しかし全身曝露の増加は付随して生じさせないことが可能となり、これにより眼治療限界を全身治療限界にまで増加させることが可能となる。
【0052】
このように、溶解性および安定性のためにpHが6.3〜7.8に限定されても、この限定を埋め合わすのに十分に房水曝露は増加する。本発明によれば、高濃度の薬物を眼表面に曝露する必要がなく、治療のリスク対効果を最適化することができる。
【0053】
Rhoキナーゼ阻害化合物
本発明で有用なRhoキナーゼ阻害化合物には、一般式Iおよび一般式IIの化合物、および/またはその互変異性体、および/またはその薬学的に許容し得る塩、および/またはその溶媒和物、および/またはその水和物が含まれる。
【0054】
式Iまたは式IIの化合物は、幾つかの形態のジアステレオマーとして存在し得る。式Iおよび式IIの一般的な構造には、特に明記しない限り、その物質の全ての形態のジアステレオマーが含まれる。式Iおよび式IIには、これらの式の化合物の混合物、例えば、エナンチオマー、ジアステレオマーおよび/またはその他の異性体を任意の比率で含む混合物が含まれる。
【0055】
A.式I
式Iの化合物は次のとおりである。
【化1】


[式中、
1はアリールまたはヘテロアリールであり、任意に置換されていてもよく;
QはC=O、SO2または(CR45)n3であり;
1は1、2または3であり;
2は1または2であり;
3は0、1、2または3であり;
【化2】


で表される環は、アルキル、ハロ、オキソ、OR6、NR67またはSR6で任意に置換されていてもよく;
2は任意に置換されていてもよい次のヘテロアリール系から選択され;
【化3】


3−R7は独立してH、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルケニルまたはシクロアルキルアルキニルであり、任意に置換されていてもよい。]
【0056】
式Iにおいて、好ましいR1は置換化アリール、さらに好ましいR1は置換化フェニルであり、好ましいQは(CR45)n3であり、さらに好ましいQはCH2であり、好ましいn1は1または2であり、好ましいn2は1であり、好ましいn3は1または2であり、そして好ましいR3−R7はHである。
【0057】
[1]本発明の一態様は式Iによって表され、式Iにおいて、R2は任意に置換されていてもよい5−インダゾリルまたは6−インダゾリル(R2−1)である。
[1a]態様1において、R2−1は1個または2個以上のアルキルまたはハロ置換基で置換される。
[1b]態様1において、R2−1は1個または2個以上のアミノ、アルキルアミノ、ヒドロキシルまたはアルコキシ置換基で置換される。
[1c]態様1において、R2−1は非置換である。
【0058】
[2]別の態様において、本発明は式Iによって表され、式Iにおいて、R2は任意に置換されていてもよい5−イソキノリニルまたは6−イソキノリニル(R2−2)である。
[2a]態様2において、R2−2は1個または2個以上のアルキルまたはハロ置換基で置換される。
[2b]態様2において、R2−2は1個または2個以上のアミノ、アルキルアミノ、ヒドロキシルまたはアルコキシ置換基で置換される。
[2c]態様2において、R2−2は非置換である。
【0059】
[3]別の態様において、本発明は式Iによって表され、式Iにおいて、R2は任意に置換されていてもよい4−ピリジルまたは3−ピリジル(R2−3)である。
[3a]態様3において、R2−3は1個または2個以上のアルキルまたはハロ置換基で置換される。
[3b]態様3において、R2−3は1個または2個以上のアミノ、アルキルアミノ、ヒドロキシルまたはアルコキシ置換基で置換される。
[3c]態様3において、R2−3は非置換である。
【0060】
[4]別の態様において、本発明は式Iによって表され、式Iにおいて、R2は任意に置換されていてもよい7−アザインドール−4−イルまたは7−アザインドール−5−イル(R2−4)である。
[4a]態様4において、R2−4は1個または2個以上のアルキルまたはハロ置換基で置換される。
[4b]態様4において、R2−4は1個または2個以上のアミノ、アルキルアミノ、ヒドロキシルまたはアルコキシ置換基で置換される。
[4c]態様4において、R2−4は非置換である。
【0061】
[5]別の態様において、本発明は式Iによって表され、式Iにおいて、R2は任意に置換されていてもよい4−(3−アミノ−1,2,5−オキサジアゾール−4−イル)フェニルまたは3−(3−アミノ−1,2,5−オキサジアゾール−4−イル)フェニル(R2−5)である。
[5a]態様5において、R2−5は非置換である。
【0062】
[6]別の態様において、本発明は式Iによって表され、式Iにおいて、R2は1個または2個以上のアルキル、ハロ、アミノ、アルキルアミノ、ヒドロキシルまたはアルコキシ置換基で置換された、R2−1〜R2−5からなる群のうちの1つである。
[6a]態様6において、R2は1個または2個以上のアルキルまたはハロ置換基で置換される。
[6b]態様6において、R2は1個または2個以上のアミノ、アルキルアミノ、ヒドロキシルまたはアルコキシ置換基で置換される。
【0063】
[7]別の態様において、本発明は式Iによって表され、式Iにおいて、R2はR2−1〜R2−5からなる群のうちの1つであって、非置換である。
【0064】
[8]別の態様において、本発明は式Iによって表され、式Iにおいて、R3はHである。
【0065】
[9]別の態様において、本発明は式Iによって表され、式Iにおいて、Qは(CR45)n3であり、そしてn3は1または2である。
【0066】
[10]別の態様において、本発明は式Iによって表され、式Iにおいて、Qは(CH2)n3であり、そしてn3は1である。
【0067】
[11]別の態様において、本発明は式Iによって表され、式Iにおいて、R1は1個または2個以上のアルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルケニル、シクロアルキルアルキニル、複素環、(複素環)アルキル、(複素環)アルケニルまたは(複素環)アルキニル置換基で置換されたアリールまたはヘテロアリールであり、上記置換基は任意に置換されていてもよい。
【0068】
態様11の具体的な化合物としては、例えば、下記表Iに示される化合物1.009、1.010、1.011、1.012、1.020、1.021、1.030、1.034、1.037、1.044、1.047、1.076、1.077、1.083、2.010、2.011、2.019、2.020、2.022、2.023および2.031が挙げられる。
【0069】
[12]別の態様において、本発明は式Iによって表され、式Iにおいて、R1は1個または2個以上のヘテロ原子含有置換基で置換されたアリールまたはヘテロアリールである、但し、第1に、R1の置換基が非環式であって炭素原子によってR1に結合する場合には、該置換基は少なくとも1個の窒素原子または硫黄原子を含有し、第2に、R1の置換基が非環式であって酸素原子または窒素原子によってR1に結合する場合には、該置換基は少なくとも1個の追加的な酸素原子、窒素原子または硫黄原子を含有し、そして、第3に、R1の置換基がスルホン結合「−SO2−」によってR1に結合する場合には、R2は窒素または酸素で置換されたR2−2ではない。
[12a]態様12において、ヘテロ原子含有置換基は、酸素原子または窒素原子によってR1に結合する。
[12b]態様12において、ヘテロ原子含有置換基は、スルフィド結合「−S−」によってR1に結合する。
【0070】
態様12の具体的な化合物としては、例えば、下記表Iに示される化合物1.001、1.002、1.004、1.005、1.038、1.048、1.055、1.056、2.002、2.003、2.005、2.007、1.003、1.006、1.007、1.018、1.039、1.051、1.058、1.060、1.084、1.085、1.086、1.087、1.088、1.090、1.091、1.092、1.093、1.094、1.095、1.096、1.097、1.098、1.102、1.111、1.113、1.115、1.116、1.117、1.118、1.120、1.121、1.123、1.124、1.125、1.126、1.127、1.128、1.129、1.130、2.004、2.008、2.032、2.033、2.034、2.035、2.036、2.037、2.038、2.039、2.040、2.041、2.042、2.043、2.044、1.008、1.017、1.026、1.040、1.074、1.075、2.009、2.012、2.021、2.024、2.026および2.029が挙げられる。
【0071】
[13]別の態様において、本発明は式Iによって表され、式Iにおいて、R1は1個または2個以上のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルケニル、シクロアルキルアルキニル、複素環、(複素環)アルキル、(複素環)アルケニルまたは(複素環)アルキニル置換基で置換されたアリールまたはヘテロアリールであり、上記置換基は1個または2個以上のヘテロ原子含有置換基でさらに置換されている、但し、R1の置換基が非環式であって、該置換基をR1に結合させる炭素原子に該置換基のヘテロ含有置換基が位置する場合には、ヘテロ含有置換基は少なくとも1個の窒素原子または硫黄原子を含有する。
【0072】
態様13の具体的な化合物としては、例えば、下記表Iに示される化合物1.019、1.027、1.028、1.029、1.035、1.041、1.042、1.043、1.057、1.061、1.099、1.101、1.103、1.104、1.105、1.106、1.107、1.108、1.109、1.112、1.114、1.119および1.122が挙げられる。
【0073】
[14]別の態様において、本発明は式Iによって表され、式Iにおいて、R1は1個または2個以上のアルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルケニル、シクロアルキルアルキニル、複素環、(複素環)アルキル、(複素環)アルケニルまたは(複素環)アルキニル置換基で置換されたアリールまたはヘテロアリールであって、上記置換基は任意に置換されていてもよく、そして、R2は任意に置換されていてもよい5−インダゾリル(R2−1)または5−イソキノリニル(R2−2)である。
[14a]態様14において、R2は1個または2個以上のアルキル、ハロ、アミノ、アルキルアミノ、ヒドロキシルまたはアルコキシ置換基で任意に置換されていてもよい5−インダゾリル(R2−1)である。
[14b]態様14において、R2は1個または2個以上のアルキル、ハロ、アミノ、アルキルアミノ、ヒドロキシルまたはアルコキシ置換基で任意に置換されていてもよい5−イソキノリニル(R2−2)である。
[14c]態様14において、R2は非置換である。
【0074】
態様14の具体的な化合物としては、例えば、下記表Iに示される化合物1.009、1.010、1.011、1.012、1.020、1.021、1.030、1.034、1.037、1.044、1.047、1.076、1.077、1.083、2.010、2.011、2.019、2.020、2.022、2.023および2.031が挙げられる。
【0075】
[15]別の態様において、本発明は式Iによって表され、式Iにおいて、R1は1個または2個以上のヘテロ原子含有置換基で置換されたアリールまたはヘテロアリールであり、R2は任意に置換されていてもよい5−インダゾリル(R2−1)または5−イソキノリニル(R2−2)である、但し、第1に、R1の置換基が非環式であって炭素原子によってR1に結合する場合には、該置換基は少なくとも1個の窒素原子または硫黄原子を含有し、第2に、R1の置換基が非環式であって酸素原子または窒素原子によってR1に結合する場合には、該置換基は少なくとも1個の追加的な酸素原子、窒素原子または硫黄原子を含有し、そして、第3に、R1の置換基がスルホン結合「−SO2−」によってR1に結合する場合には、R2は窒素または酸素で置換されたR2−2ではない。
[15a]態様15において、R2は1個または2個以上のアルキル、ハロ、アミノ、アルキルアミノ、ヒドロキシルまたはアルコキシ置換基で任意に置換されていてもよい5−インダゾリル(R2−1)である。
[15b]態様15において、R2は1個または2個以上のアルキル、ハロ、アミノ、アルキルアミノ、ヒドロキシルまたはアルコキシ置換基で任意に置換されていてもよい5−イソキノリニル(R2−2)である。
[15c]態様15において、R2は非置換である。
[15d]態様15において、ヘテロ原子含有置換基は、酸素原子または窒素原子によってR1に結合する。
[15e]態様15において、ヘテロ原子含有置換基は、スルフィド結合「−S−」によってR1に結合する。
【0076】
態様15の具体的な化合物としては、例えば、下記表Iに示される化合物1.001、1.002、1.004、1.005、1.038、1.048、1.055、1.056、2.002、2.003、2.005、2.007、1.003、1.006、1.007、1.018、1.039、1.051、1.058、1.060、1.084、1.085、1.086、1.087、1.088、1.090、1.091、1.092、1.093、1.094、1.095、1.096、1.097、1.098、1.102、1.111、1.113、1.115、1.116、1.117、1.118、1.120、1.121、1.123、1.124、1.125、1.126、1.127、1.128、1.129、1.130、2.004、2.008、2.032、2.033、2.034、2.035、2.036、2.037、2.038、2.039、2.040、2.041、2.042、2.043、2.044、1.008、1.017、1.026、1.040、1.074、1.075、2.009、2.012、2.021、2.024、2.026および2.029が挙げられる。
【0077】
[16]別の態様において、本発明は式Iによって表され、式Iにおいて、R1は、1個または2個以上のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルケニル、シクロアルキルアルキニル、複素環、(複素環)アルキル、(複素環)アルケニルまたは(複素環)アルキニル置換基で置換されたアリールまたはヘテロアリールであって、上記置換基のうち少なくとも1個は1個または2個以上のヘテロ原子含有置換基でさらに置換されており、そして、R2は任意に置換されていてもよい5−インダゾリル(R2−1)または5−イソキノリニル(R2−2)である、但し、第1に、R1の置換基が非環式であって、該置換基をR1に結合させる炭素原子に該置換基のヘテロ含有置換基が結合する場合には、ヘテロ含有置換基は少なくとも1個の窒素原子または硫黄原子を含有する。
[16a]態様16において、R2は1個または2個以上のアルキル、ハロ、アミノ、アルキルアミノ、ヒドロキシルまたはアルコキシ置換基で任意に置換されていてもよい5−インダゾリル(R2−1)である。
[16b]態様16において、R2は1個または2個以上のアルキル、ハロ、アミノ、アルキルアミノ、ヒドロキシルまたはアルコキシ置換基で任意に置換されていてもよい5−イソキノリニル(R2−2)である。
[16c]態様16において、R2は非置換である。
【0078】
態様16の具体的な化合物としては、例えば、下記表Iに示される化合物1.019、1.027、1.028、1.029、1.035、1.041、1.042、1.043、1.057、1.061、1.099、1.101、1.103、1.104、1.105、1.106、1.107、1.108、1.109、1.112、1.114、1.119および1.122が挙げられる。
【0079】
B.式II
好ましい式Iの化合物では、下記式IIで示されるように、R1=Ar−Xである。
【化4】


[式中、
Arは単環式または二環式のアリールまたはヘテロアリール環、例えばフェニルであり;
XはArにおける1〜3個の置換基であり、それぞれが独立してZがArに結合しているY−Zの形態であり;
YはZにおける1個または2個以上の置換基であり、それぞれが独立してH、ハロゲンまたはヘテロ原子含有置換基、例えば、特に限定されるわけではないが、OR8、NR89、NO2、SR8、SOR8、SO28、SO2NR89、NR8SO29、OCF3、CONR89、NR8C(=O)R9、NR8C(=O)OR9、OC(=O)NR89またはNR8C(=O)NR910、から選択され;
Zは、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルケニル、シクロアルキルアルキニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、複素環、(複素環)アルキル、(複素環)アルケニル、(複素環)アルキニルまたは不存在から独立して選択され;
8はH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルケニル、シクロアルキルアルキニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、(複素環)アルキル、(複素環)アルケニル、(複素環)アルキニルまたは複素環であり;1個または2個以上のハロゲンまたはヘテロ原子含有置換基、例えば、特に限定されるわけではないが、OR11、NR1112、NO2、SR11、SOR11、SO211、SO2NR1112、NR11SO212、OCF3、CONR1112、NR11C(=O)R12、NR11C(=O)OR12、OC(=O)NR1112またはNR11C(=O)NR1213、で任意に置換されていてもよく;
9およびR10は独立してH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルケニル、シクロアルキルアルキニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、(複素環)アルキル、(複素環)アルケニル、(複素環)アルキニルまたは複素環であり;1個または2個以上のハロゲンまたはヘテロ原子含有置換基、例えば、特に限定されるわけではないが、OR14、NR1415、NO2、SR14、SOR14、SO214、SO2NR1415、NR14SO215、OCF3、CONR1415、NR14C(=O)R15、NR14C(=O)OR15、OC(=O)NR1415またはNR14C(=O)NR1516、で任意に置換されていてもよく;
8、R9およびR10のいずれか2個は、直接結合、−O−、−S−、−SO−、−SO2−および−NR17−からなる群より選択された結合で任意に連結されて環を形成していてもよく;
11−R17は独立してH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルケニル、シクロアルキルアルキニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、(複素環)アルキル、(複素環)アルケニル、(複素環)アルキニルまたは複素環である。]
【0080】
式IIにおいて、好ましいYは、H、ハロゲン、OR8、NR89、NO2、SR8、SOR8、SO28、SO2NR89、NR8SO29、OCF3、CONR89、NR8C(=O)R9、NR8C(=O)OR9、OC(=O)NR89またはNR8C(=O)NR910であり、さらに好ましいYは、H、ハロゲン、OR8、SR8、SOR8、SO28、SO2NR89、NR8SO29、CONR89またはNR8C(=O)NR910であり、好ましいZは、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキルまたは不存在であり、さらに好ましいZは、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキルまたは不存在であり、好ましいQは(CR45)n3であり、さらに好ましいQはCH2であり、好ましいn1は1または2であり、好ましいn2は1であり、好ましいn3は1または2であり、好ましいR3−R7はHであり、好ましいR8は、H、アルキル、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキルまたは複素環であり、好ましいR8の置換基は、H、ハロゲン、OR11、NR1112、SR11、SOR11、SO211、SO2NR1112、NR11SO212、CONR1112、NR11C(=O)R12であり、好ましいR9−R17はHまたはアルキルである。
【0081】
[1]本発明の一態様は式IIによって表され、式IIにおいて、R2は任意に置換されていてもよい5−インダゾリルまたは6−インダゾリル(R2−1)である。
[1a]態様1において、R2−1は1個または2個以上のアルキルまたはハロ置換基で置換される。
[1b]態様1において、R2−1は1個または2個以上のアミノ、アルキルアミノ、ヒドロキシルまたはアルコキシ置換基で置換される。
[1c]態様1において、R2−1は非置換である。
【0082】
[2]別の態様において、本発明は式IIによって表され、式IIにおいて、R2は任意に置換されていてもよい5−イソキノリニルまたは6−イソキノリニル(R2−2)である。
[2a]態様2において、R2−2は1個または2個以上のアルキルまたはハロ置換基で置換される。
[2b]態様2において、R2−2は1個または2個以上のアミノ、アルキルアミノ、ヒドロキシルまたはアルコキシ置換基で置換される。
[2c]態様2において、R2−2は非置換である。
【0083】
[3]別の態様において、本発明は式IIによって表され、式IIにおいて、R2は任意に置換されていてもよい4−ピリジルまたは3−ピリジル(R2−3)である。
[3a]態様3において、R2−3は1個または2個以上のアルキルまたはハロ置換基で置換される。
[3b]態様3において、R2−3は1個または2個以上のアミノ、アルキルアミノ、ヒドロキシルまたはアルコキシ置換基で置換される。
[3c]態様3において、R2−3は非置換である。
【0084】
[4]別の態様において、本発明は式IIによって表され、式IIにおいて、R2は任意に置換されていてもよい7−アザインドール−4−イルまたは7−アザインドール−5−イル(R2−4)である。
[4a]態様4において、R2−4は1個または2個以上のアルキルまたはハロ置換基で置換される。
[4b]態様4において、R2−4は1個または2個以上のアミノ、アルキルアミノ、ヒドロキシルまたはアルコキシ置換基で置換される。
[4c]態様4において、R2−4は非置換である。
【0085】
[5]別の態様において、本発明は式IIによって表され、式IIにおいて、R2は任意に置換されていてもよい4−(3−アミノ−1,2,5−オキサジアゾール−4−イル)フェニルまたは3−(3−アミノ−1,2,5−オキサジアゾール−4−イル)フェニル(R2−5)である。
[5a]態様5において、R2−5は非置換である。
【0086】
[6]別の態様において、本発明は式IIによって表され、式IIにおいて、R2は1個または2個以上のアルキル、ハロ、アミノ、アルキルアミノ、ヒドロキシルまたはアルコキシ置換基で置換された、R2−1〜R2−5からなる群のうちの1つである。
[6a]態様6において、R2は1個または2個以上のアルキルまたはハロ置換基で置換される。
[6b]態様6において、R2は1個または2個以上のアミノ、アルキルアミノ、ヒドロキシルまたはアルコキシ置換基で置換される。
【0087】
[7]別の態様において、本発明は式IIによって表され、式IIにおいて、R2はR2−1〜R2−5からなる群のうちの1つであって、非置換である。
【0088】
[8]別の態様において、本発明は式IIによって表され、式IIにおいて、R3はHである。
【0089】
[9]別の態様において、本発明は式IIによって表され、式IIにおいて、Qは(CR45)n3であり、n3は1または2である。
【0090】
[10]別の態様において、本発明は式IIによって表され、式IIにおいて、Qは(CH2)n3であり、n3は1である。
【0091】
[11]別の態様において、本発明は式IIによって表され、式IIにおいて、Zはアルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルケニル、シクロアルキルアルキニル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、複素環、(複素環)アルキル、(複素環)アルケニルまたは(複素環)アルキニルである。
【0092】
態様11の具体的な化合物としては、例えば、下記表Iに示される化合物1.009、1.010、1.011、1.012、1.020、1.021、1.030、1.034、1.037、1.044、1.047、1.076、1.077、1.083、2.010、2.011、2.019、2.020、2.022、2.023および2.031が挙げられる。
【0093】
[12]別の態様において、本発明は式IIによって表され、式IIにおいて、Zは不存在であり、Yはヘテロ原子含有置換基、例えば、特に限定されるわけではないが、OR8、NR89、SR8、SOR8、SO28、SO2NR89、NR8SO29、CONR89、NR8C(=O)R9、NR8C(=O)OR9、OC(=O)NR89またはNR8C(=O)NR910である、但し、第1に、置換基Yが非環式であって、炭素原子によってArに結合する場合には、該置換基は少なくとも1個の窒素原子または硫黄原子を含み、第2に、置換基Yが非環式であって、酸素原子または窒素原子によってArに結合する場合には、該置換基は少なくとも1個の追加的な酸素原子、窒素原子または硫黄原子を含み、そして、第3に、置換基Yがスルホン結合「−SO2−」によってArに結合する場合には、R2は窒素または酸素で置換されたR2−2ではない。
[12a]態様12において、ヘテロ原子含有置換基は、酸素原子または窒素原子によってR1に結合する。
[12b]態様12において、ヘテロ原子含有置換基は、スルフィド結合「−S−」によってR1に結合する。
【0094】
態様12の具体的な化合物としては、例えば、下記表Iに示される化合物1.001、1.002、1.004、1.005、1.038、1.048、1.055、1.056、2.002、2.003、2.005、2.007、1.003、1.006、1.007、1.018、1.039、1.051、1.058、1.060、1.084、1.085、1.086、1.087、1.088、1.090、1.091、1.092、1.093、1.094、1.095、1.096、1.097、1.098、1.102、1.111、1.113、1.115、1.116、1.117、1.118、1.120、1.121、1.123、1.124、1.125、1.126、1.127、1.128、1.129、1.130、2.004、2.008、2.032、2.033、2.034、2.035、2.036、2.037、2.038、2.039、2.040、2.041、2.042、2.043、2.044、1.008、1.017、1.026、1.040、1.074、1.075、2.009、2.012、2.021、2.024、2.026および2.029が挙げられる。
【0095】
[13]別の態様において、本発明は式IIによって表され、式IIにおいて、Zはアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルケニル、シクロアルキルアルキニル、複素環、(複素環)アルキル、(複素環)アルケニルまたは(複素環)アルキニルであり、Yはヘテロ原子含有置換基、例えば、特に限定されるわけではないが、OR8、NR89、NO2、SR8、SOR8、SO28、SO2NR89、NR8SO29、OCF3、CONR89、NR8C(=O)R9、NR8C(=O)OR9、OC(=O)NR89またはNR8C(=O)NR910である、但し、Zが非環式であって、ZをArに結合させる炭素原子にYが位置する場合には、Yは少なくとも1個の窒素原子または硫黄原子を含む。
【0096】
態様13の具体的な化合物としては、例えば、下記表Iに示される化合物1.019、1.027、1.028、1.029、1.035、1.041、1.042、1.043、1.057、1.061、1.099、1.101、1.103、1.104、1.105、1.106、1.107、1.108、1.109、1.112、1.114、1.119および1.122が挙げられる。
【0097】
[14]別の態様において、本発明は式IIによって表され、式IIにおいて、Zはアルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルケニル、シクロアルキルアルキニル、複素環、(複素環)アルキル、(複素環)アルケニルまたは(複素環)アルキニルであり、R2は任意に置換されていてもよい5−インダゾリル(R2−1)または5−イソキノリニル(R2−2)である。
[14a]態様14において、R2は1個または2個以上のアルキル、ハロ、アミノ、アルキルアミノ、ヒドロキシルまたはアルコキシ置換基で任意に置換されていてもよい5−インダゾリル(R2−1)である。
[14b]態様14において、R2は1個または2個以上のアルキル、ハロ、アミノ、アルキルアミノ、ヒドロキシルまたはアルコキシ置換基で任意に置換されていてもよい5−イソキノリニル(R2−2)である。
[14c]態様14において、R2は非置換である。
【0098】
態様14の具体的な化合物としては、例えば、下記表Iに示される化合物1.009、1.010、1.011、1.012、1.020、1.021、1.030、1.034、1.037、1.044、1.047、1.076、1.077、1.083、2.010、2.011、2.019、2.020、2.022、2.023および2.031が挙げられる。
【0099】
[15]別の態様において、本発明は式IIによって表され、式IIにおいて、Zは不存在であり、Yはヘテロ原子含有置換基、例えば、特に限定されるわけではないが、OR8、NR89、SR8、SOR8、SO28、SO2NR89、NR8SO29、CONR89、NR8C(=O)R9、NR8C(=O)OR9、OC(=O)NR89またはNR8C(=O)NR910であり、R2は任意に置換されていてもよい5−インダゾリル(R2−1)または5−イソキノリニル(R2−2)である、但し、第1に、置換基Yが非環式であって、炭素原子によってArに結合する場合には、該置換基は少なくとも1個の窒素原子または硫黄原子を含み、第2に、置換基Yが非環式であって、酸素原子または窒素原子によってArに結合する場合には、該置換基は少なくとも1個の追加的な酸素原子、窒素原子または硫黄原子を含み、そして、第3に、置換基Yがスルホン結合「−SO2−」によってArに結合する場合には、R2は窒素または酸素で置換されたR2−2ではない。
[15a]態様15において、R2は1個または2個以上のアルキル、ハロ、アミノ、アルキルアミノ、ヒドロキシルまたはアルコキシ置換基で任意に置換されていてもよい5−インダゾリル(R2−1)である。
[15b]態様15において、R2は1個または2個以上のアルキル、ハロ、アミノ、アルキルアミノ、ヒドロキシルまたはアルコキシ置換基で任意に置換されていてもよい5−イソキノリニル(R2−2)である。
[15c]態様15において、R2は非置換である。
[15d]態様15において、ヘテロ原子含有置換基は、酸素原子または窒素原子によってR1に結合する。
[15e]態様15において、ヘテロ原子含有置換基は、スルフィド結合「−S−」によってR1に結合する。
【0100】
態様15の具体的な化合物としては、例えば、下記表Iに示される化合物1.001、1.002、1.004、1.005、1.038、1.048、1.055、1.056、2.002、2.003、2.005、2.007、1.003、1.006、1.007、1.018、1.039、1.051、1.058、1.060、1.084、1.085、1.086、1.087、1.088、1.090、1.091、1.092、1.093、1.094、1.095、1.096、1.097、1.098、1.102、1.111、1.113、1.115、1.116、1.117、1.118、1.120、1.121、1.123、1.124、1.125、1.126、1.127、1.128、1.129、1.130、2.004、2.008、2.032、2.033、2.034、2.035、2.036、2.037、2.038、2.039、2.040、2.041、2.042、2.043、2.044、1.008、1.017、1.026、1.040、1.074、1.075、2.009、2.012、2.021、2.024、2.026および2.029が挙げられる。
【0101】
[16]別の態様において、本発明は式IIによって表され、式IIにおいて、Zはアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルケニル、シクロアルキルアルキニル、複素環、(複素環)アルキル、(複素環)アルケニルまたは(複素環)アルキニルであり、Yはヘテロ原子含有置換基、例えば、特に限定されるわけではないが、OR8、NR89、NO2、SR8、SOR8、SO28、SO2NR89、NR8SO29、OCF3、CONR89、NR8C(=O)R9、NR8C(=O)OR9、OC(=O)NR89またはNR8C(=O)NR910であり、R2は任意に置換されていてもよい5−インダゾリル(R2−1)または5−イソキノリニル(R2−2)である、但し、第1に、Zが非環式であって、ZをArに結合させる炭素にYが位置する場合には、Yは少なくとも1個の窒素原子または硫黄原子を含む。
[16a]態様16において、R2は1個または2個以上のアルキル、ハロ、アミノ、アルキルアミノ、ヒドロキシルまたはアルコキシ置換基で任意に置換されていてもよい5−インダゾリル(R2−1)である。
[16b]態様16において、R2は1個または2個以上のアルキル、ハロ、アミノ、アルキルアミノ、ヒドロキシルまたはアルコキシ置換基で任意に置換されていてもよい5−イソキノリニル(R2−2)である。
[16c]態様16において、R2は非置換である。
【0102】
態様16の具体的な化合物としては、例えば、下記表Iに示される化合物1.019、1.027、1.028、1.029、1.035、1.041、1.042、1.043、1.057、1.061、1.099、1.101、1.103、1.104、1.105、1.106、1.107、1.108、1.109、1.112、1.114、1.119および1.122が挙げられる。
【0103】
式IIの態様11〜16において、好ましいQは(CR45)n3であり、さらに好ましいQはCH2であり、好ましいn1は1または2であり、好ましいn2は1であり、好ましいn3は1または2であり、好ましいR3はHである。
【0104】
本発明の化合物は、眼科用途、特に、眼圧を低下させる、または緑内障を治療するのに有用である。眼科用途において治療効果を発揮するために、化合物は、十分な効能と適正な薬物速度論的特性、例えば眼表面に対する良好な透過性、とを兼ね備える必要がある。一般的に、極性官能基を有する化合物は好ましい吸収特性を有しており、局所眼科用途に特に好適である。一般的に、小さな親油性官能基を有する化合物は、良好なROCK阻害効能を有する。
【0105】
式IにおけるR1の置換および式IIにおけるXは、薬物速度論的特性およびROCK阻害効能にとって重要な因子である。具体的には、極性官能基を有する化合物、特に、式IおよびIIの上記態様11、12、13、14、15および16で規定された化合物は、十分なROCK阻害活性を有しており、局所眼科用途に特に好適である。式IおよびIIの上記態様11、12、13、14、15および16で規定されるような、小さな親油性官能基を有する化合物は、十分な眼透過性を有し、ROCK阻害を示す。
【0106】
式Iおよび式IIの具体的な化合物を以下の表Iに示す。化合物例において、1.nnnという番号が、R2がR2−1である化合物を示し、2.nnnという番号が、R2がR2−2である化合物を示し、そして、残りの化合物番号および基R2についても同様の様式となるように、番号が付けられる。以下の構造において、便宜上、水素は構造式から省略されている。記載された互変異性体は可能な全ての互変異性体を示す。構造は、好ましい立体化学を示すように記載されるが、これらの化合物において立体異性体が生じ得る場合、可能な立体異性体のそれぞれ1つまたは任意の比率の立体異性体混合物を意味する。
【0107】
【表1−1】

【0108】
【表1−2】

【0109】
【表1−3】

【0110】
【表1−4】

【0111】
【表1−5】

【0112】
【表1−6】

【0113】
【表1−7】

【0114】
【表1−8】

【0115】
【表1−9】

【0116】
【表1−10】

【0117】
【表1−11】

【0118】
【表1−12】

【0119】
【表1−13】

【0120】
【表1−14】

【0121】
【表1−15】

【0122】
【表1−16】

【0123】
【表1−17】

【0124】
【表1−18】

【0125】
【表1−19】

【0126】
【表1−20】

【0127】
【表1−21】

【0128】
【表1−22】

【0129】
【表1−23】

【0130】
【表1−24】

【0131】
【表1−25】

【0132】
【表1−26】

【0133】
【表1−27】

【0134】
【表1−28】

【0135】
【表1−29】

【0136】
【表1−30】

【0137】
【表1−31】

【0138】
【表1−32】

【0139】
【表1−33】

【0140】
【表1−34】

【0141】
【表1−35】

【0142】
【表1−36】

【0143】
【表1−37】

【0144】
【表1−38】

【0145】
好ましい本発明のROCK阻害化合物としては、特に限定されるわけではないが、例えば、上記態様5、14、15および16記載のROCK阻害化合物ならびにそれらの関連塩、互変異性体、溶媒和物または水和物が挙げられる。化合物2.039および化合物1.123が特に好ましい。
【化5】


(R)-2-(3-((3-(イソキノリン-5-イルアミノ)ピロリジン-1-イル)メチル)フェノキシ)エタノール(化合物2.039)
【化6】


(R)-N-(3-((3-(1H-インダゾール-5-イルアミノ)ピペリジン-1-イル)メチル)フェニル)エタンスルホンアミド(化合物1.123)
【0146】
製剤処方
本発明は、眼表面滞留時間および前眼房の房水中におけるバイオアベイラビリティが増進するように、かつ全身曝露が低減するようにpH調節された水性溶媒中に製剤化されたROCK阻害化合物の眼科特性を向上させる1種または2種以上の薬剤を含有する製剤を提供する。
【0147】
本発明は、治療上の使用に好適であるとともに通常使用時の保存条件下で長期間安定であるROCK阻害化合物の水性製剤を提供する。該製剤は、哺乳動物における眼圧を低下させるのに有用である。局所的投与では、眼表面に該製剤の1〜2滴が1日あたり1〜4回投与される。
【0148】
本発明の眼科用水性製剤は、全身濃度の増加を伴わずに、眼表面における滞留時間の増加および/または房水濃度の増加を呈する。
【0149】
本発明は、0.001〜2% ROCK阻害化合物、pHを約6.3〜7.8に維持するのに好適な1〜100mM 緩衝液、0.01〜2% 界面活性剤、および浸透圧を約220〜360mOsm/kGに維持できる等張化剤を含有する水性医薬製剤に関する。ここで用いられる「約」とは±15%を意味する。好ましいpHは約6.3〜7.5であり、さらに好ましいpHは約6.3〜7.3である。
【0150】
水性製剤中のROCK阻害化合物の濃度は、通常0.001〜2%、好ましくは0.01〜0.5%、さらに好ましくは0.01〜0.4%、さらに好ましくは0.03〜0.2%、さらに好ましくは0.03〜0.15または0.03〜0.1%(w/v)である。
【0151】
pHを6.3〜7.8に維持するのに好適な緩衝液としては、例えば、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、マレイン酸緩衝液またはそれらの組み合わせが挙げられる。緩衝液の好適な濃度は、1〜100mM、好ましくは5〜50mM、さらに好ましくは5〜25mM、最も好ましくは10〜20mMである。
【0152】
本発明で好適な界面活性剤(サーファクタント)または可溶化剤は、眼科用製剤での使用を許容し得るものである。界面活性剤はイオン性または非イオン性であり得る。好ましくは、該界面活性剤は非イオン性である。有用な界面活性剤としては、特に限定されるわけではないが、例えば、ポリソルベート80、チロキサポール、ステアリン酸ポリオキシル、ポリエトキシ化ヒマシ油、ポロキサマー、ポラキサミン、中鎖および長鎖脂肪酸ならびにリン脂質が挙げられる。製剤中の界面活性剤の濃度は約0.01〜3%、好ましくは0.01〜2%、さらに好ましくは0.1〜1% w/vである。
【0153】
等張化剤は、製剤の最終的な浸透圧を220〜360mOsm/kG、好ましくは250〜340mOsm/kG、最も好ましくは260〜320mOsm/kGとする量で存在する。等張化剤は非イオン性またはイオン性であり得る。非イオン性等張化剤としては、例えば、グリセロール、マンニトール、エリトリトール等のジオール類;デキストロース等の糖類が挙げられる。その他の非イオン性等張化剤として、共溶媒としても機能するポリエチレングリコール、プロピレングリコール等を用いることもできる。非イオン性等張化剤の量は通常0〜20%、好ましくは0〜10%、さらに好ましくは0〜5%である。好ましい非イオン性等張化剤は、2〜6%のグリセロール、マンニトールおよびデキストロースである。
【0154】
等張化剤は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、平衡塩類溶液、リン酸ナトリウムまたはクエン酸ナトリウム等のイオン性等張化剤であってもよい。イオン性等張化剤は、0.3〜1.5%、好ましくは0.6〜0.9%の量で存在し得る。
【0155】
界面活性剤、等張化剤、緩衝液および製剤に導入されるその他の成分は、良好な水溶性を有するとともに製剤中の他の成分との相溶性を有する必要がある。様々な国の健康規制は、反復投与される眼科用製剤が保存料を含有することを要求する。他の幾つかの眼科用製剤で使用されている公知の数多くの保存料は、本発明で使用することはできない。それらの保存料は、眼への反復使用が安全であると見なされていないし、また、本発明で用いられる界面活性剤と相互作用して、保存料の殺菌活性を低減させる複合体を形成するからである。ある態様では、塩化ベンザルコニウムが安全な保存料として用いられる。塩化ベンザルコニウムは、抗微生物活性を増強するキレート剤であるエデト酸2ナトリウム(EDTA)とともに用いてもよい。その他の好適な保存料としては、例えば、ベンジルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロロブタノール、塩化ホウ酸塩および塩化ベンゼトニウムが挙げられる。典型的には、これらの保存料は0.001〜1%、好ましくは0.001〜0.25%、最も好ましくは0.001〜0.2%のレベルで用いられる。
【0156】
必要に応じて、製剤は、眼表面における製剤の滞留時間を増加させる増粘剤を含有することができる。増粘剤は眼の不快感を引き起こすものであってはならない。例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、本発明の増粘剤として許容し得るものである。
【0157】
ある態様では、医薬製剤は0.5〜0.9% イオン性浸透圧調節剤(例えば塩化ナトリウム)を含有する。該製剤は、さらに、緩衝剤(例えばリン酸ナトリウム)を5〜100mM、界面活性剤を0.01〜3%、保存料を0.001〜0.1%、キレート剤を0.01〜0.5% w/vおよびpH調節剤を含有する。そのような水性組成物は、220〜360mOsm/kGの浸透圧を有し、pH6.3〜7.8に製剤化される。
【0158】
別の態様では、医薬製剤は、1〜3% 非イオン性等張化剤(例えばグリセロール)を含有する。該製剤は、緩衝剤(例えばリン酸ナトリウムおよび/またはクエン酸ナトリウムならびにクエン酸)を5〜50mM、界面活性剤を0.01〜2%、キレート剤を0.005〜0.5% w/vおよびpH調節剤を含有する。そのような水性組成物は、220〜360mOsm/kGの浸透圧を有し、pH6.3〜7.8に製剤化される。該製剤は必要に応じて保存料を0.001〜0.1% w/v含有する。
【0159】
本発明はまた、0.001〜2% ROCK阻害化合物、0.02〜0.25% ポラキサマー、および浸透圧を220〜360mOsm/kGに維持する等張化剤を含有する水性医薬製剤に関する。該製剤は必要に応じて、pHを6.3〜7.8に維持する1〜100mM 緩衝液を含有する。好適な緩衝液としては、例えば、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、マレイン酸緩衝液またはそれらの組み合わせが挙げられる。リン酸緩衝液が好ましい。
【0160】
ある態様では、本発明の医薬製剤は、点眼薬の形態で眼に対して局所的に投与される。本発明の医薬製剤は、無菌法で製造されるか、あるいは最終滅菌される。本発明の液剤は、ROCK阻害化合物、緩衝液、浸透圧調節剤、界面活性剤、キレート剤;必要に応じて、非イオン性ポリマー、錯化剤、可溶化剤、保存料および抗酸化剤を十分に混合することによって調製される。
【0161】
本発明に至る知見は、pHと関連する水溶性および製剤安定性に関する。本発明者等は、高pH範囲よりもむしろ、局所眼科用製剤で許容し得る低pH範囲(pH4.5)において、製剤の溶解性および製剤安定性が高くなることを予期せずに見出した。製剤の安定性および溶解性は、pHの増加とともに減少する。しかしながら、pH6.3〜7.8において、本発明の医薬製剤の安定性および溶解性は許容し得るものである。したがって、本発明の製剤は、許容し得る水溶性および長期間の安定性を有するとともに、向上した治療特性を有する。7.8よりも高いpHにおいて、化合物の安定性は許容し得るものではないし、眼の忍容性は低下する。
【0162】
医薬製剤は、滅菌グレードフィルター、好ましくは公称孔径0.22ミクロンのもの、による製剤のフィルタリングよって滅菌することができる。医薬製剤はまた、1種または2種以上の滅菌法を用いた最終滅菌によって滅菌することもできる。滅菌法としては、特に限定されるわけではないが、例えば、オートクレーブ法等の熱処理が挙げられる。
【0163】
本発明の医薬製剤は、線維柱帯切除術後の創傷治癒の調節のための薬剤として有用である。本発明の医薬製剤は、一般的に、5−フルオロウラシルまたはマイトマイシンC等の代謝拮抗物質よりも、角膜内皮細胞に対する毒性が少ない。本発明の医薬製剤は、アクチンマイクロフィラメント系の崩壊(deterioration)およびその膜固定の摂動(perturbation)を引き起こし、細胞−細胞外マトリックス接着を弱化させるアクトミオシン誘導性収縮を阻害する。これらの特性は、創傷治癒を阻害し、これによって手術後のブレブ不全(bleb failure)を低減させる。
【0164】
本発明の医薬製剤は、眼圧を低下させる薬剤として有用であり、そして、緑内障または緑内障関連眼疾患の治療または予防に有用である。
【0165】
本発明の医薬製剤は、眼圧の増加および眼ニューロンに対する損傷の結果である神経変性疾患の治療または予防に有用である。
【0166】
本発明は、眼圧を低下させる方法、緑内障を治療する方法、および線維柱帯切除術後の創傷治癒を阻害する方法を提供する。本発明の方法は、本発明の医薬製剤を、アクチン細胞骨格を変化させる、例えばアクチン重合を阻害することによってアクチン細胞骨格を変化させるのに有効な量で、治療が必要な被験者に投与する工程を含む。
【0167】
本発明の医薬製剤は、任意の好適な手段によって、患者の眼に投与することができるが、好ましくは、点眼剤、噴霧剤またはゲル形成水溶液剤の形態で投与される。また、本発明の医薬製剤は、リポソーム、ミセル、エマルションおよび/またはマイクロエマルションの水性製剤を用いて眼に適用することもできる。さらに、本発明の医薬製剤は、ポンプカテーテルシステムを用いて涙膜に注入することもできる。別の態様では、本発明の医薬製剤を、メンブラン等の継続的または選択的放出デバイス、例えば、特に限定されるわけではないが、Ocusert(登録商標)(Alza Corp., Palo Alto, CA)またはRetisert(Bausch & Lomb, Rochester, NY)で用いられるメンブラン内に含有させる。さらに別の態様では、本発明の医薬製剤は、眼に装着されるコンタクトレンズ内に含有されるか、あるいはそれに担持または結合されていてもよい。本発明の別の態様には、眼表面に適用できるスワブまたはスポンジ内に含有させた医薬製剤が含まれる。本発明の別の態様には、眼表面に適用できる液体スプレー内に含有させた医薬製剤が含まれる。本発明の別の態様には、医薬製剤の涙器組織または眼表面への直接注射が含まれる。
【0168】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明されるが、本発明の範囲が実施例に記載された特定の態様に限定されると解釈されるべきではない。当業者は、上記記載に基づいて本発明を十分に実施できると考えられる。したがって、以下の好ましい具体的態様は、単なる例示であり、いかなる意味においても開示を限定するものではないと解釈されるべきである。
【0169】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明されるが、本発明の範囲が実施例に記載された特定の態様に限定されると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0170】
実施例1:化合物の溶解性に対するpHの効果
緩衝化共溶媒系(plON pSOL Evolution)を用いて、標的とするpH範囲4.0〜9.0内で溶解度を測定した。表1の結果は、化合物2.039(A)がpH4〜5.8において>20mg/mLの溶解度を有していたこと、および化合物1.123(B)がpH5.6において5mg/mLの最大溶解度を有していたことを示す。これらの結果は、pHの増加とともに、化合物の溶解度が減少することを示す。
【0171】
【表2】

【0172】
等張化剤(NaCl)および非イオン性界面活性剤を含有する媒体中に化合物Aを製剤化し、標的とするpH7.3における該化合物の溶解度を測定する別の実験を実施した。用いた界面活性剤の濃度は、一般的に安全と認められた(GRAS)賦形剤に関する最大許容濃度であった。20mMの濃度の化合物を0.85% NaClに配合し、次いで、ろ過し、UV分析によって化合物Aの濃度を測定した。その結果、ポリソルベート80およびポロキサマー407を含有する製剤において、化合物Aの溶解度が最も高かった。したがって、ポリソルベート80およびポロキサマー407は、中性pHである約7.3における溶解度の低下をある程度是正し得る。
【0173】
【表3】

【0174】
実施例2:化合物Aの安定性(向上した安定性)
化合物Aを、0.1% EDTA、0.01% 塩化ベンザルコニウムおよび0.8% ポリソルベート80を含有する0.9%食塩水に、3種類のpHレベル、すなわち5.3、6.3および7.3で製剤化した。化合物の溶解度に対するpHの効果を測定するために、溶液を60℃で保存し、UV検出を用いたHPLCによって分析した。図1に示すように、pH5.3からpH6.3および7.3へのpHの増加は、化学分解に起因した化合物Aの安定性の減少を引き起こした。
【0175】
実施例3:眼表面、房水および全身性バイオアベイラビリティに対するpHの効果
用量処方および投与.化合物Aを0.12% w/v(当量ミリモル濃度は3mM)となるように10mM リン酸、0.8% ポリソルベート80、0.85% NaCl、0.01% BAC、0.1% EDTA中に、3種類のpHレベル、すなわち5.3、6.3および7.3で製剤化した。化合物Aを、投薬群の各動物の両眼に1滴(30μL)投与し、眼曝露および全身曝露に対するpHの影響を調べた。
【0176】
サンプリング.投薬後0.25、0.5、1および2時間において、各投薬群の2匹の動物(4つの眼)から血漿、房水および眼サンプルを採取した。
【0177】
図2Aは、房水Cmax 対 pHを示す。図2Bは、房水AUC 対 pHを示す。房水は、前眼房内の液体であり、作用部位、すなわち小柱網における濃度と緊密な相関関係を有する。Cmaxは、房水内で観察された薬物のピーク濃度を示す。AUCは、時間内における房水内の薬物の総濃度を示す。図2Aおよび2Bの結果は、製剤のpHの増加は、房水内の曝露を促進することを示す。
【0178】
図3Aは、血漿Cmax 対 pHを示す。図2Bは血漿AUC 対 pHを示す。血漿濃度分析は、全身曝露を示す。全身曝露は全身に対する薬物の曝露である。CmaxおよびAUCはそれぞれ、血漿中の化合物Aに関する薬物のピーク濃度および時間内における薬物の総濃度である。図3Aおよび3Bの結果は、製剤のpHの増加は、化合物の血漿濃度に対して何の効果もないことを示す。
【0179】
図4は、化合物Aの経時的な眼表面濃度を示す。化合物Aの投与後0.25時間、0.5時間、1時間および2時間において、食塩水40μLを眼に適用し、洗浄液をサンプルとして回収した。眼表面は、角膜および結膜の表面に関係する。眼表面滞留時間は、化合物Aが眼表面に滞留する平均時間である。図4は、化合物A製剤のpHが5.3、6.3から7.3へ増加したときの滞留時間の増加を示す。0.25時間において、化合物Aの眼濃度はpH5.3および6.3の間で少しだけ増加したが、pH6.3から7.3では変化しなかった。時間が経過したポイントでは、pH5.3〜7.3間における化合物Aの眼濃度の差が大きかった。化合物Aの眼濃度はpH7.3において1および2時間の間で一定であった。このデータは、より高いpHは、2時間にわたって滞留時間を増加させ、これにより前眼房に浸透する薬物を増加させることができることを示す。
【0180】
これらの実験は、製剤のpHが増加すると、ROCK阻害化合物は眼表面滞留時間の増加を呈するとともに前眼房の房水内濃度の増加を呈する一方、全身曝露に対しては何の効果も呈しないことを示す。
【0181】
実施例4:眼の快適性に対する濃度および製剤化の効果
用量処方および投与.化合物2.039を0.16% w/vとなるように次の4種類の処方A〜Dで製剤化した。
【0182】
処方A:10mM リン酸,1% ポリソルベート80,0.85% NaCl,0.02% BAC,0.2% EDTA,pH7.0
【0183】
処方B:10mM リン酸,1% ポリソルベート80,2.36% グリセロール,0.02% BAC,0.2% EDTA,pH7.1
【0184】
処方C:10mM リン酸,1% ポリソルベート80,2.36% グリセロール,0.02% BAC,0.2% EDTA,0.5% ヒドロキシプロピルメチルセルロース,pH7.1
【0185】
処方D:10mM リン酸,1% ポリソルベート80,2.36% グリセロール,0.02% BAC,0.2% EDTA,1% 1,2ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン,pH7.1
【0186】
薬力学的解析.処方A−Dを2滴(1滴30μL)として投薬群の各ウサギの右眼に投与した。点眼後15分間ウサギを評価し、行動の変化を記録した。ウサギが片目をまばたきする、両目をまばたきする、顔を擦る(front pay wipe of the face)、引っ掻くおよび頭を揺する回数に基づき、各処置群の各ウサギの複合スコア(composite score)を算出した。スコアが大きくなると、動物の不快適性が増加する。各群について平均値±SEを算出した。
【0187】
図5は、眼の快適性のスコア 対 処方を示す。図5に示すように、増粘剤であって眼表面滞留を増加させる1,2ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン等のある種の補助剤の添加によって、眼の不快適性は増加した。
【0188】
次いで、化合物2.039を、0.03%、0.1%および0.32% w/vとなるように、上記処方Aで製剤化し、その他の承認された緑内障医薬との比較によって、眼表面の快適性に対する濃度の効果を調べた。結果を図6に示す。
【0189】
図6は、眼の快適性スコア 対 化合物Aの濃度を示す。図6に示すように、ROCK阻害化合物の濃度の増加によって、眼の不快適性は増加した。しかしながら、低濃度(0.03および0.1% w/v)における眼の快適性は、ALPHAGAN(登録商標)、RESTASIS(登録商標)、ピロカルピンおよびLUMIGAN(登録商標)等の承認された緑内障医薬のそれと匹敵する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式IIで表される少なくとも1種のROCK阻害物質 0.01〜0.4% w/v、非イオン性界面活性剤 0.01〜2% w/v、およびpH6.3〜7.8において浸透圧を220〜360mOsm/kGに維持できる等張化剤を含む水性医薬製剤であって、
前記ROCK阻害物質、前記界面活性剤および前記等張化剤が前記製剤中で相溶である前記水性医薬製剤。
【化1】


[式中、
QはC=O、SO2または(CR45)n3であり;
1は1、2または3であり;
2は1または2であり;
3は0、1、2または3であり;
【化2】


で表される環は、アルキル、ハロ、オキソ、OR6、NR67またはSR6で任意に置換されていてもよく;
2はR2−1またはR2−2であり、任意に置換されていてもよく;
【化3】


Arは単環式または二環式のアリールまたはヘテロアリール環であり;
XはArにおける1〜3個の置換基であり、それぞれが独立してOR8、NR89、SR8、SOR8、SO28、SO2NR89、NR8SO29、CONR89、NR8C(=O)R9、NR8C(=O)OR9、OC(=O)NR89およびNR8C(=O)NR910からなる群より選択され;
3−R7は独立してH、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルケニルまたはシクロアルキルアルキニルであり、任意に置換されていてもよく;
8はH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルケニル、シクロアルキルアルキニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、(複素環)アルキル、(複素環)アルケニル、(複素環)アルキニルまたは複素環であり;1個または2個以上のハロゲンで、あるいは、OR11、NR1112、NO2、SR11、SOR11、SO211、SO2NR1112、NR11SO212、OCF3、CONR1112、NR11C(=O)R12、NR11C(=O)OR12、OC(=O)NR1112およびNR11C(=O)NR1213からなる群より選択された1個または2個以上のヘテロ原子含有置換基で任意に置換されていてもよく;
9およびR10は独立してH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルケニル、シクロアルキルアルキニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、(複素環)アルキル、(複素環)アルケニル、(複素環)アルキニルまたは複素環であり;1個または2個以上のハロゲンで、あるいは、OR14、NR1415、NO2、SR14、SOR14、SO214、SO2NR1415、NR14SO215、OCF3、CONR1415、NR14C(=O)R15、NR14C(=O)OR15、OC(=O)NR1415およびNR14C(=O)NR1516からなる群より選択された1個または2個以上のヘテロ原子含有置換基で任意に置換されていてもよく;
置換基R8、R9およびR10のいずれか2個は、直接結合、−O−、−S−、−SO−、−SO2−および−NR17−からなる群より選択された結合で任意に連結されて環を形成していてもよく;
11−R17は独立してH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルケニル、シクロアルキルアルキニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、(複素環)アルキル、(複素環)アルケニル、(複素環)アルキニルまたは複素環であり;
但し、
第1に、Xが非環式であって、炭素原子によってArに結合する場合には、Xは少なくとも1個の窒素原子または硫黄原子を含み、
第2に、Xが非環式であって、酸素原子または窒素原子によってArに結合する場合には、Xは少なくとも1個の追加的な酸素原子、窒素原子または硫黄原子を含み、さらに、
第3に、Xが−SO2−結合によってArに結合する場合には、R2は窒素または酸素で置換されたR2−2ではない。]
【請求項2】
式IIで表される少なくとも1種のROCK阻害物質 0.01〜0.4% w/v、非イオン性界面活性剤 0.01〜2% w/v、およびpH6.3〜7.8において浸透圧を220〜360mOsm/kGに維持できる等張化剤を含む水性医薬製剤であって、
前記ROCK阻害物質、前記界面活性剤および前記等張化剤が前記製剤中で相溶である前記水性医薬製剤。
【化4】


[式中、
QはC=O、SO2または(CR45)n3であり;
1は1、2または3であり;
2は1または2であり;
3は0、1、2または3であり;
【化5】


で表される環は、アルキル、ハロ、オキソ、OR6、NR67またはSR6で任意に置換されていてもよく;
2はR2−1またはR2−2であり、任意に置換されていてもよく;
【化6】


Arは単環式または二環式のアリールまたはヘテロアリール環であり;
XはArにおける1〜3個の置換基であり、それぞれが独立してZがArに結合しているY−Zの形態であり;
YはZにおける1個または2個以上の置換基であり、それぞれが独立してH、ハロゲン、OR8、NR89、NO2、SR8、SOR8、SO28、SO2NR89、NR8SO29、OCF3、CONR89、NR8C(=O)R9、NR8C(=O)OR9、OC(=O)NR89およびNR8C(=O)NR910からなる群より選択され;
Zはアルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルケニル、シクロアルキルアルキニル、複素環、(複素環)アルキル、(複素環)アルケニルまたは(複素環)アルキニルであり;
3−R7は独立してH、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルケニルまたはシクロアルキルアルキニルであり、任意に置換されていてもよく;
8はH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルケニル、シクロアルキルアルキニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、(複素環)アルキル、(複素環)アルケニル、(複素環)アルキニルまたは複素環であり;1個または2個以上のハロゲンで、あるいは、OR11、NR1112、NO2、SR11、SOR11、SO211、SO2NR1112、NR11SO212、OCF3、CONR1112、NR11C(=O)R12、NR11C(=O)OR12、OC(=O)NR1112およびNR11C(=O)NR1213からなる群より選択された1個または2個以上のヘテロ原子含有置換基で任意に置換されていてもよく;
9およびR10は独立してH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルケニル、シクロアルキルアルキニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、(複素環)アルキル、(複素環)アルケニル、(複素環)アルキニルまたは複素環であり;1個または2個以上のハロゲンで、あるいは、OR14、NR1415、NO2、SR14、SOR14、SO214、SO2NR1415、NR14SO215、OCF3、CONR1415、NR14C(=O)R15、NR14C(=O)OR15、OC(=O)NR1415およびNR14C(=O)NR1516からなる群より選択された1個または2個以上のヘテロ原子含有置換基で任意に置換されていてもよく;
置換基R8、R9およびR10のいずれか2個は、直接結合、−O−、−S−、−SO−、−SO2−および−NR17−からなる群より選択された結合で任意に連結されて環を形成していてもよく;
11−R17は独立してH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルケニル、シクロアルキルアルキニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、(複素環)アルキル、(複素環)アルケニル、(複素環)アルキニルまたは複素環である。]
【請求項3】
式IIで表される少なくとも1種のROCK阻害物質 0.01〜0.4% w/v、非イオン性界面活性剤 0.01〜2% w/v、およびpH6.3〜7.8において浸透圧を220〜360mOsm/kGに維持できる等張化剤を含む水性医薬製剤であって、
前記ROCK阻害物質、前記界面活性剤および前記等張化剤が前記製剤中で相溶である前記水性医薬製剤。
【化7】


[式中、
QはC=O、SO2または(CR45)n3であり;
1は1、2または3であり;
2は1または2であり;
3は0、1、2または3であり;
【化8】


で表される環は、アルキル、ハロ、オキソ、OR6、NR67またはSR6で任意に置換されていてもよく;
2はR2−1またはR2−2であり、任意に置換されていてもよく;
【化9】


Arは単環式または二環式のアリールまたはヘテロアリール環であり;
XはArにおける1〜3個の置換基であり、それぞれが独立してZがArに結合しているY−Zの形態であり;
YはZにおける1個または2個以上の置換基であり、それぞれが独立してOR8、NR89、NO2、SR8、SOR8、SO28、SO2NR89、NR8SO29、OCF3、CONR89、NR8C(=O)R9、NR8C(=O)OR9、OC(=O)NR89またはNR8C(=O)NR910であり;
Zはアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルケニル、シクロアルキルアルキニル、複素環、(複素環)アルキル、(複素環)アルケニルまたは(複素環)アルキニルであり;
3−R7は独立してH、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルケニルまたはシクロアルキルアルキニルであり、任意に置換されていてもよく;
8はH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルケニル、シクロアルキルアルキニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、(複素環)アルキル、(複素環)アルケニル、(複素環)アルキニルまたは複素環であり;1個または2個以上のハロゲンで、あるいは、OR11、NR1112、NO2、SR11、SOR11、SO211、SO2NR1112、NR11SO212、OCF3、CONR1112、NR11C(=O)R12、NR11C(=O)OR12、OC(=O)NR1112およびNR11C(=O)NR1213からなる群より選択された1個または2個以上のヘテロ原子含有置換基で任意に置換されていてもよく;
9およびR10は独立してH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルケニル、シクロアルキルアルキニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、(複素環)アルキル、(複素環)アルケニル、(複素環)アルキニルまたは複素環であり;1個または2個以上のハロゲンで、あるいは、OR14、NR1415、NO2、SR14、SOR14、SO214、SO2NR1415、NR14SO215、OCF3、CONR1415、NR14C(=O)R15、NR14C(=O)OR15、OC(=O)NR1415およびNR14C(=O)NR1516からなる群より選択された1個または2個以上のヘテロ原子含有置換基で任意に置換されていてもよく;
置換基R8、R9およびR10のいずれか2個は、直接結合、−O−、−S−、−SO−、−SO2−および−NR17−からなる群より選択された結合で任意に連結されて環を形成していてもよく;
11−R17は独立してH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルケニル、シクロアルキルアルキニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、(複素環)アルキル、(複素環)アルケニル、(複素環)アルキニルまたは複素環であり;
但し、Zがアルキル、アルケニルおよびアルキニルからなる群より選択され、YがZをArに結合させる炭素に位置する場合には、Yは少なくとも1個の窒素原子または硫黄原子を含む。]
【請求項4】
式IIで表される少なくとも1種のROCK阻害物質 0.01〜0.4% w/v、非イオン性界面活性剤 0.01〜2% w/v、およびpH6.3〜7.8において浸透圧を220〜360mOsm/kGに維持できる等張化剤を含む水性医薬製剤であって、
前記ROCK阻害物質、前記界面活性剤および前記等張化剤が前記製剤中で相溶である前記水性医薬製剤。
【化10】


[式中、
QはC=O、SO2または(CR45)n3であり;
1は1、2または3であり;
2は1または2であり;
3は0、1、2または3であり;
【化11】


で表される環は、アルキル、ハロ、オキソ、OR6、NR67またはSR6で任意に置換されていてもよく;
2−5は
【化12】


であり、任意に置換されていてもよく;
Arは単環式または二環式のアリールまたはヘテロアリール環であり;
XはArにおける1〜3個の置換基であり、それぞれが独立してZがArに結合しているY−Zの形態であり;
YはZにおける1個または2個以上の置換基であり、それぞれが独立してH、ハロゲン、OR8、NR89、NO2、SR8、SOR8、SO28、SO2NR89、NR8SO29、OCF3、CONR89、NR8C(=O)R9、NR8C(=O)OR9、OC(=O)NR89およびNR8C(=O)NR910からなる群より選択され;
Zは独立して不存在、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルケニル、シクロアルキルアルキニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、複素環、(複素環)アルキル、(複素環)アルケニルおよび(複素環)アルキニルからなる群より選択され;
3−R7は独立してH、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルケニルまたはシクロアルキルアルキニルであり、任意に置換されていてもよく;
8はH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルケニル、シクロアルキルアルキニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、(複素環)アルキル、(複素環)アルケニル、(複素環)アルキニルまたは複素環であり;1個または2個以上のハロゲンで、あるいは、OR11、NR1112、NO2、SR11、SOR11、SO211、SO2NR1112、NR11SO212、OCF3、CONR1112、NR11C(=O)R12、NR11C(=O)OR12、OC(=O)NR1112およびNR11C(=O)NR1213からなる群より選択された1個または2個以上のヘテロ原子含有置換基で任意に置換されていてもよく;
9およびR10は独立してH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルケニル、シクロアルキルアルキニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、(複素環)アルキル、(複素環)アルケニル、(複素環)アルキニルまたは複素環であり;1個または2個以上のハロゲンで、あるいは、OR14、NR1415、NO2、SR14、SOR14、SO214、SO2NR1415、NR14SO215、OCF3、CONR1415、NR14C(=O)R15、NR14C(=O)OR15、OC(=O)NR1415およびNR14C(=O)NR1516からなる群より選択された1個または2個以上のヘテロ原子含有置換基で任意に置換されていてもよく;
置換基R8、R9およびR10のいずれか2個は、直接結合、−O−、−S−、−SO−、−SO2−および−NR17−からなる群より選択された結合で任意に連結されて環を形成していてもよく;
11−R17は独立してH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルケニル、シクロアルキルアルキニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、(複素環)アルキル、(複素環)アルケニル、(複素環)アルキニルまたは複素環である。]
【請求項5】
前記非イオン性界面活性剤が、ポリソルベート、チロキサポール、ポリオキシルヒマシ油、ポラキサマー、ポリエチレングリコール、カプリル酸トリグリセリド、ステアリン酸ポリオキシル、モノステアリン酸グリセリンおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1〜4のいずれかに記載の水性医薬製剤。
【請求項6】
前記非イオン性界面活性剤が、ポリソルベート、ポラキサマーまたはそれらの組み合わせである、請求項5記載の水性医薬製剤。
【請求項7】
pHを6.3〜7.8に維持できる1〜100mM 緩衝液をさらに含む、請求項1〜4のいずれかに記載の水性医薬製剤。
【請求項8】
前記緩衝液が、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、マレイン酸緩衝液またはそれらの組み合わせである、請求項7記載の水性医薬製剤。
【請求項9】
キレート剤および/または保存料をさらに含む、請求項1〜4のいずれかに記載の水性医薬製剤。
【請求項10】
前記等張化剤が非イオン性等張化剤である、請求項1〜4のいずれかに記載の水性医薬製剤。
【請求項11】
前記非イオン性等張化剤が、グリセロール、マンニトールまたはデキストロースである、請求項10記載の水性医薬製剤。
【請求項12】
前記等張化剤がイオン性等張化剤である、請求項1〜4のいずれかに記載の水性医薬製剤。
【請求項13】
前記ROCK阻害物質が(R)-2-(3-((3-(イソキノリン-5-イルアミノ)ピロリジン-1-イル)メチル)フェノキシ)エタノールである、請求項1記載の水性医薬製剤。
【請求項14】
前記ROCK阻害物質が(R)-N-(3-((3-(1H-インダゾール-5-イルアミノ)ピペリジン-1-イル)メチル)フェニル)エタンスルホンアミドである、請求項1記載の水性医薬製剤。
【請求項15】
前記ROCK阻害物質が0.03〜0.2%(w/v)である、請求項1〜4のいずれかに記載の水性医薬製剤。
【請求項16】
前記pHが6.3〜7.3である、請求項1〜4のいずれかに記載の水性医薬製剤。
【請求項17】
その必要がある被験者の眼圧を低下させる方法であって、
その必要がある被験者を特定する工程、および
前記被験者に、請求項1〜4のいずれかに記載の水性医薬製剤を、アクトミオシン相互作用を阻害するのに有効な量で投与する工程
を含む前記方法。
【請求項18】
前記方法によって緑内障を治療する、請求項17記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−524912(P2011−524912A)
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−514714(P2011−514714)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際出願番号】PCT/US2009/047108
【国際公開番号】WO2009/155209
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(500297524)インスパイアー ファーマシューティカルズ,インコーポレイティド (17)
【Fターム(参考)】