TFTアレイ検査方法およびTFTアレイ検査装置
【課題】半導体や絶縁物の残渣物質による欠陥の検出を容易とする。
【解決手段】TFTアレイ基板を検査するためにアレイに印加する検査信号と同期させて、TFTアレイ基板の表面に光を照射することによって電極の電圧変化を強調させることで、半導体や絶縁物の残渣物質による欠陥の検出を容易とする。TFTアレイ基板のパネルに所定電圧の検査信号を印加してアレイを駆動し、このパネル上に電子線を照射して走査し、電子線走査で検出される検出信号に基づいてTFTアレイ基板のアレイを検査するTFTアレイ検査装置において、パネル上に電子線を照射する電子線源と、電子線走査による二次電子を検出して検出信号を出力する二次電子検出器と、二次電子検出器の検出信号を用いて欠陥を検出する欠陥検出部と、パネルに検査信号を印加する検査信号駆動部と、TFTアレイ基板の表面に光を照射すると光照射部と、検査信号駆動部と光照射部とを同期制御する制御部とを備える。
【解決手段】TFTアレイ基板を検査するためにアレイに印加する検査信号と同期させて、TFTアレイ基板の表面に光を照射することによって電極の電圧変化を強調させることで、半導体や絶縁物の残渣物質による欠陥の検出を容易とする。TFTアレイ基板のパネルに所定電圧の検査信号を印加してアレイを駆動し、このパネル上に電子線を照射して走査し、電子線走査で検出される検出信号に基づいてTFTアレイ基板のアレイを検査するTFTアレイ検査装置において、パネル上に電子線を照射する電子線源と、電子線走査による二次電子を検出して検出信号を出力する二次電子検出器と、二次電子検出器の検出信号を用いて欠陥を検出する欠陥検出部と、パネルに検査信号を印加する検査信号駆動部と、TFTアレイ基板の表面に光を照射すると光照射部と、検査信号駆動部と光照射部とを同期制御する制御部とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶基板等のTFTアレイ基板のアレイを検査するTFTアレイ検査に関し、特に、TFTアレイを駆動させて欠陥検出を行うTFTアレイ検査方法およびTFTアレイ検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶アレイ検査装置等のアレイ検査装置において、液晶基板等の基板上を撮像して得られる撮像画像として、光学的に撮像して得られる光学撮像画像、あるいは、電子ビームやイオンビーム等の荷電ビームを基板上で二次元的に走査して得られる走査画像を用いることができる。
【0003】
TFTディスプレイ装置に用いるTFTアレイ基板の製造工程では、製造されたTFTアレイ基板が正しく駆動するかの検査が行われる(特許文献1,2)。
【0004】
例えば、検査対象である基板のアレイに検査信号を印加してアレイを所定電位状態とし、基板上に電子ビームやイオンビーム等の荷電ビームを二次元的に照射して走査し、このビーム走査で得られる走査画像に基づいてTFTのアレイを検査するアレイ検査装置が知られている。TFTアレイ検査では、例えば、電子線の照射によって放出される二次電子をフォトマルチプライヤなどによってアナログ信号に変換して検出し、この検出信号の各信号強度から求めた画像によってアレイ欠陥を判定している。
【0005】
TFTアレイ基板のアレイとピクセルは対応して形成されており、アレイに駆動信号を印加することによって特定のピクセルを駆動することができる。TFTアレイ検査において、アレイに所定パターンの駆動信号を印加して基板内に形成されたパネルの各ピクセルを所定パターンで駆動し、これらの所定パターンで駆動したピクセルに電子線を照射し、照射点から放出される二次電子を検出する。この電子線の照射をパネル内で走査して行うことによって、パネル内の各ピクセルから検出信号を取得している。
【0006】
ピクセルに対して電子線を走査して得られた検出信号は、パネル上のピクセルの座標位置と電子線の照射位置との位置関係に基づいて各ピクセルに割り付けられる。割り付けられた検出信号の信号強度に基づいて各ピクセルの信号強度を表す画像を形成し、画像処理によって欠陥ピクセルを抽出し、対応する欠陥アレイの検査を行う。
【0007】
アクティブ型液晶パネルの基板の欠陥検査において、液晶パネル化を行う前のマトリクス基板と呼ばれるガラス基板の動作状態を、マトリクス基板を液晶パネル化した液晶パネルの実動作状態に合わせるために、液晶セルの抵抗分に相当する蓄積容量の放電量を増やして点欠陥検査を行うことが提案され、この蓄積容量の放電量を増やす具体的手段として、TFTの動作温度を変化させたり、TFTに光を照射させて、新たにリーク抵抗を添加することが提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−271516号公報
【特許文献2】特開2004−309488号公報
【特許文献3】特公平7−3446号公報(第3頁5-29行、第3頁50行-第4頁8行、第4頁22-25行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
TFTアレイ基板のアレイ欠陥として、各種工程で使用される物質がアレイ上に残り、この残渣物質が欠陥の要因となることが知られている。例えば、隣接するアレイの間、アレイと電極との間等にまたがって残渣が形成されると、アレイ間やアレイと電極との間が抵抗接続あるいは容量接続されることになりアレイ欠陥となる。
【0010】
残渣により生じるアレイ欠陥の内、残渣物質が金属材である場合にはメタル残渣と呼ばれる。このようなメタル残渣の場合には、電流のリークが比較的短時間で行われるため短時間で電圧が変動する。そのため欠陥検出を容易に行うことができる。
【0011】
一方、残渣物質がa−Siのような半導体や絶縁物である場合には、電流のリークに時間がかかるため電圧変動に長時間を要する。
【0012】
図11は、a−Siの残渣を説明するための図である。図11において、TFTのスイッチング素子と電極とを備え、スイッチング素子のゲート端子Gにゲート信号を印加するゲート線(GATE)と、スイッチング素子のソース端子Sにソース信号を印加するソース線(SOURCE)とを接続してなるピクセル構成を示している。また、電極の一方はスイッチング素子のドレイン端子Dに接続され、電極の他方は共通ラインに接続されている。
【0013】
図11(a)中の一ピクセルには、a−Siの残渣が欠陥として残っている例であり、電極とソースラインとの間にまたがって存在する例を示している。図11(b)は等価回路を示している。残渣は、電極容量Coと並列接続される残渣容量Cstとして表される。
【0014】
この残渣例では、電極の容量は電極容量Coと残渣容量Cstとの和で表されるため、時定数τはτ=RSD×(Co+Cst)で表され、残渣欠陥が無い場合の時定数τ=RSD×Coより大きくなる。時定数τが大きいため、残渣欠陥を有する電極の電位変動に時間がかかり、検査時間内に電圧変動を検出することができず、欠陥検出が困難となる場合がある。
【0015】
例えば、端子間を短絡するシーティングバーによってパネル上の全ピクセルをチャージし、このチャージ後のピクセルの電位変化を検出することによって欠陥検出を行う場合には、電流リークによる欠陥ピクセルの電位低下が小さいため、検査時間内において欠陥ピクセルと正常ピクセルとの電圧差は小さい。そのため、ピクセル間の電位の違いから欠陥ピクセルを抽出することは困難である。
【0016】
したがって、従来の電圧の差異による欠陥検出では、a−Si等の半導体や絶縁物の残渣による欠陥ピクセルと正常ピクセルとの識別が困難であるという問題がある。
【0017】
そこで、本発明は上記課題を解決して、半導体や絶縁物の残渣物質による欠陥の検出を容易とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本願発明は、TFTアレイ基板を検査するためにアレイに印加する検査信号と同期させて、TFTアレイ基板の表面に光を照射することによって電極の電圧変化を強調させることで、半導体や絶縁物の残渣物質による欠陥の検出を容易とする。
【0019】
本願発明は、TFTアレイ基板検査方法の態様とTFTアレイ基板検査装置の態様とすることができる。
【0020】
[TFTアレイ基板検査方法の態様]
本願発明のTFTアレイ基板検査方法の態様では、TFTアレイ基板のパネルに所定電圧の検査信号を印加してアレイを駆動し、パネル上に電子線を照射して走査し、電子線走査で検出される検出信号に基づいてTFTアレイ基板のアレイを検査するTFTアレイ検査方法であり、検査信号に同期してTFTアレイ基板の表面に光を照射する。
【0021】
検査信号と同期させてTFTアレイ基板に光を照射することによって、TFTのスイッチング素子に流れる電流を増加させる。
【0022】
TFTのスイッチング素子に流れる電流は、ピクセルの電極が備える容量分を充電する。ここで、a−Si等の半導体や絶縁物の残渣は、アレイと電極との間に容量性接続を形成し、この残渣による容量分は電極が備える容量分と並列接続されるため、欠陥ピクセルの電極の容量分は正常ピクセルの電極の容量分よりも大きくなり、欠陥ピクセルの時定数は正常ピクセルの時定数よりも大きくなる。
【0023】
このピクセルの電極には、TFTのスイッチング素子を通して電流が流入して充電される。
【0024】
残渣を有した欠陥ピクセルは、残渣によって電極部分に容量が付加されて時定数が大きくなっているため、充放電時において電極の電位が変化するに要する時間が正常ピクセルよりも長くかかる。
【0025】
そのため、検査時間内に欠陥ピクセルの電極の電位変化を検出することは困難となる。本願発明は、a−SiのTFTアレイ基板のソースドレイン電流特性が光照射の有無によって異なり、光照射の下ではTFTのスイッチング素子に流れる電流が増加する特性を適用すると共に、光を照射するタイミングを検査信号と同期させる。この光照射と検査信号とを同期させることによって、電極に対して行われる充電時又は放電時、あるいは、充放電時においてTFTアレイ基板に光を照射してTFTのスイッチング素子に流れる電流を増加させることによって、時定数を実質的に低下させ、光を照射しない場合と比較して電極の電位変化を強調させ、これによって、欠陥ピクセルの検出を容易なものとする。
【0026】
また、本発明は、光照射と検査信号とを同期させると共に、シンチレータ等の検出器によって電子線照射で放出される二次電子線等を検出する走査において、この走査中には光照射を行わないようにすることによって、検出器に光照射による光が入射してノイズとなることを防ぐという効果を奏することができる。
【0027】
ピクセルとアレイとは対応関係にあるため、電極電圧を電子線走査で検出し、検出信号により得られる各ピクセルの信号強度に基づいてピクセルの欠陥検出を行い、この欠陥検出で検出された欠陥ピクセルに対応するアレイを欠陥アレイとして検出することができる。
【0028】
検査信号とTFTアレイ基板の表面への光照射との同期は複数の態様によって行うことができる。
【0029】
検査信号とTFTアレイ基板の表面への光照射との同期の第1の態様は、検査信号において、電極への電圧印加の終了と同期して光照射を開始し、次に電極へ電圧を印加する前に光照射を終了する。
【0030】
この第1の態様によれば、充電された電極を放電する際に光を照射することによって、電極からの放電電流を増加させる。この放電電流の増加は、TFTのスイッチング素子に並列に抵抗を追加し、スイッチング素子の抵抗と電極の容量とで定まる時定数を実質的に低下させることに相当し、光を照射しない場合と比較して電極の放電による電位低下を速めることができる。
【0031】
検査信号とTFTアレイ基板の表面への光照射との同期の第2の態様は、検査信号において、電極への電圧印加の開始と同期して光照射を開始し、電極への電圧印加の終了と同期して光照射を終了する。
【0032】
この第2の態様によれば、電極を充電する際に光を照射することによって、電極への充電電流を増加させる。この充放電流の増加は、TFTのスイッチング素子に並列に抵抗を追加し、スイッチング素子の抵抗と電極の容量とで定まる時定数を実質的に低下させることに相当し、光を照射しない場合と比較して電極の充電による電位上昇を速めることができる。
【0033】
検査信号とTFTアレイ基板の表面への光照射との同期の第3の態様は、検査信号において、電極への電圧印加の開始と同期して光照射を開始し、電極への電圧印加が終了した後も光照射を継続し、次に電極へ電圧を印加する前に光照射を終了する。
【0034】
この第3の態様によれば、電極を充電する際に光を照射することによって、電極への充電電流を増加させ、充電された電極を放電する際に光を照射することによって、電極からの放電電流を増加させる。
【0035】
この充電電流および放電電流の増加は、TFTのスイッチング素子に並列に抵抗を追加し、スイッチング素子の抵抗と電極の容量とで定まる時定数を実質的に低下させることに相当し、光を照射しない場合と比較して電極の充電による電位上昇および放電による電位低下を速めることができる。
【0036】
本願発明は、検査信号に同期して行うTFTアレイ基板の表面への光照射において、複数の発光波長を用意しておき、検査信号の駆動パターンに応じて、これら複数の発光波長から光照射する光の発光波長を選択し、また、発光するタイミングを制御することができる。
【0037】
検査信号において、ゲートおよびソースに対して電圧を印加する組み合わせを変えると、パネル上で駆動するピクセルの駆動パターンが変化する。この駆動パターンによって、検出する欠陥の種類を変えることができる。
【0038】
印加する検査信号と同期して照射される光についても、残渣の位置など検出する欠陥の種類に応じて最適な発光波長を用いることで、欠陥の検出精度を向上させることができる。
【0039】
[TFTアレイ基板検査装置の態様]
本願発明のTFTアレイ基板検査装置の態様では、TFTアレイ基板のパネルに所定電圧の検査信号を印加してアレイを駆動し、このパネル上に電子線を照射して走査し、電子線走査で検出される検出信号に基づいてTFTアレイ基板のアレイを検査するTFTアレイ検査装置において、パネル上に電子線を照射する電子線源と、電子線走査による二次電子を検出して検出信号を出力する二次電子検出器と、二次電子検出器の検出信号を用いて欠陥を検出する欠陥検出部と、パネルに検査信号を印加する検査信号駆動部と、TFTアレイ基板の表面に光を照射すると光照射部と、検査信号駆動部と光照射部とを同期制御する制御部とを備える。
【0040】
制御部は、同期制御によって検査信号に同期してTFTアレイ基板の表面に光を照射させ、この光照射によってTFTのスイッチング素子の電流を増加させることによって、パネル上のピクセルの電極の電圧変化の差異を強調させる。
【0041】
欠陥検出部は、電極の電圧を電子線走査による検出信号から得られる各ピクセルの信号強度に基づいてピクセルの欠陥検出を行い、欠陥検出で検出された欠陥ピクセルに対応するアレイを欠陥アレイとして検出する。
【0042】
光照射部は、電子銃の照射位置を挟んで二次電子検出器と反対側に設置する構成とする。この配置構成によって、電子銃および二次電子検出器の各装置との干渉、および、電子銃から放出される電子線やTFTアレイ基板の照射位置から放出される二次電子線との干渉を避けることができる。
【0043】
光照射部は、波長を異にする複数のLED発光ダイオードを備える構成とし、制御部は、検査信号駆動部が出力する検査信号の駆動パターンに応じて、これら複数のLED発光ダイオードの発光波長と発光のタイミングを制御する構成とする。この構成とすることで、異なる欠陥種類に適した発光波長を選択することができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、半導体や絶縁物の残渣物質による欠陥の検出を容易とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明のTFTアレイ検査装置の構成を説明するための概略図である。
【図2】本発明の光照射の第1の態様の検査信号と光照射の同期状態を説明するための図である。
【図3】ゲート電圧(VG)に対するスイッチング素子に流れる電流(ISD)の光照射による特性を示す図である。
【図4】ピクセルの等価回路例を示す図である。
【図5】光照射の有無によるスイッチング素子に流れる電流ISDの変動と電極電位との関係を示す図である。
【図6】本発明の光照射の第2の態様の検査信号と光照射の同期状態を説明するための図である。
【図7】光照射の有無によるスイッチング素子に流れる電流ISDの変動と電極電位との関係を示す図である。
【図8】本発明の光照射の第3の態様の検査信号と光照射の同期状態を説明するための図である。
【図9】光照射の有無によるスイッチング素子に流れる電流ISDの変動と電極電位との関係を示す図である。
【図10】光照射の有無による欠陥イメージを説明するための図である。
【図11】a−Siの残渣を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明の実施の形態について図を参照しながら詳細に説明する。以下では、図1を用いて本発明のTFTアレイ検査装置の構成例を説明し、図2〜図5を用いて本発明のTFTアレイ検査の光照射の第1の態様を説明し、図6,7を用いて本発明のTFTアレイ検査の光照射の第2の態様を説明し、図8,9を用いて本発明のTFTアレイ検査の光照射の第3の態様を説明する。図10は、光照射の有無による欠陥イメージを説明するための図である。
【0047】
[TFTアレイ検査装置の構成]
図1は本発明のTFTアレイ検査装置の構成を説明するための概略図である。図1において、TFTアレイ検査装置1は、真空チャンバ4内に配置された基板10に対して電子線を照射する電子銃2と、電子線の照射により基板10から放出された2次電子を検出する2次電子検出器3を備える。
【0048】
TFTアレイ基板10と2次電子検出器3との間には、エネルギーフィルタ6を備える。このエネルギーフィルタ6は、複数枚のグリッドで構成する。図1では、2枚のグリッド6A,6Bによって構成し、TFTアレイ基板10に近い側にグリッド6Bを設け、TFTアレイ基板10から遠い側にグリッド6Aを設けている。
【0049】
エネルギーフィルタ6のグリッド6A,6Bは、TFTアレイ基板10を配置するステージ7に対して平行となるよう設けてもよい。エネルギーフィルタ6のグリッド6A,6Bをステージ7に対して平行に設ける構成によれば、グリッド6A,6BはTFTアレイ基板10に対して平行となり、これによって、TFTアレイ基板10に対して広い範囲の測定に適した構成とすることができる。
【0050】
また、エネルギーフィルタ6のグリッド6A,6Bには、電子銃2とTFTアレイ基板10上の照射位置とを結ぶ線上に、電子銃2からの電子線をTFTアレイ基板10に照射するための開口部を設けても良い。また、2次電子検出器3の前面には、検出器グリッド8が設けられている。
【0051】
真空チャンバ4内には、上記したエネルギーフィルタ6のグリッド6A,6Bの他に、内周壁面に沿って内部空間を囲むように反跳2次電子抑制用グリッド5が設けられる。この反跳2次電子抑制用グリッド5は、横方向に進んだ2次電子を反跳させて、2次電子検出器3の捕集率を高めるものである。
【0052】
上記したエネルギーフィルタ6のグリッド6Aとグリッド6Bとにはそれぞれ電源16A,16Bが接続され、グリッド毎に異なる電圧を印加することができる。この電源16A,16Bがグリッド6A,6Bに印加する電圧は、図示していないグリッド電源制御部によって制御される。また、TFTアレイ基板10には、検査信号駆動部13から検査信号が印加される。
【0053】
制御部11は、グリッド電源制御部(図示していない)および検査信号駆動部13を制御し、検査対象でありTFTアレイ基板10の欠陥種に応じたグリッド電圧と検査信号が印加されるように制御する。この制御は、例えば、TFTアレイ基板の種類や検査対象の欠陥種に対して、各グリッド6A,6Bに印加するグリッド電圧と、検査信号駆動部13が印加する検査信号のパターンとの対応関係を記憶しておき、TFTアレイ検査装置が検査する基板種や欠陥種に基づいて、これらグリッド電圧および検査信号パターンを読み出し、読み出したグリッド電圧をグリッド電源制御部(図示していない)に指示することでグリッド6A,6Bに所定電圧を印加させ、また、読み出した検査信号パターンを検査信号駆動部13に指示することでTFTアレイ基板10に印加する検査信号を制御する。
【0054】
また、反跳2次電子抑制用グリッド5には電源15が接続され、所定の電圧を印加して2次電子を反跳させる。
【0055】
グリッド電源制御部(図示していない)は電源16A,16Bを制御して、グリッド6A,6Bに印加する電圧を個別に調整し、エネルギーフィルタ6の電位を可変とする。エネルギーフィルタ6は、その電位によってTFTアレイ基板10から放出された2次電子を所定のエネルギー値でエネルギー選別し、通過した2次電子のみが2次電子検出器3で検出されるようにする。
【0056】
2次電子検出器3で検出された検出信号は検出信号処理部14に入力され、イメージ画像が形成される。欠陥形成部17は、イメージ画像を用いて欠陥ピクセルを抽出し、この欠陥ピクセルに対応するアレイを欠陥アレイとして検出する。
【0057】
本発明のTFTアレイ検査装置1は、真空チャンバ4内に光照射部12を備える。光照射部12は、例えば、LED発光ダイオードを用いることができる。光照射部12としてLED発光ダイオードを用いることによって真空内で使用が可能としている。図1において、光照射部12は、電子銃2による電子線の照射位置を挟んで、2次電子検出器3と反対側に配置する。この配置とすることで、電子銃2および2次電子検出器3の配置位置に係わらず配置することができ、また、電子線および二次電子線を遮ることなく配置することができる。
【0058】
光照射部12(12A,12B,…)は、発光波長が異ならせて複数個配置することができる。例えば、可視光の場合には、赤色発光ダイオード、緑色発光ダイオード、青色発光ダイオード、白色発光ダイオード等の発光色を異にする複数のLED発光ダイオードを配置する構成とすることができる。
【0059】
制御部11は、TFTアレイ基板10に印加する検査信号に同期して、光照射部12の何れの発光波長を発光するか、検出信号に対して何れのタイミングで発光をオン/オフするかを制御する。例えば、ピクセルの電極の放電時、ピクセルの電極の充電時、ピクセルの電極の充電および放電時と同期して、TFTアレイ基板10に光を照射する。複数の発光波長を用いる場合には、これら放電時、充電時、充放電時によって発光波長を変更する他、検出する欠陥種によって発光波長を変更してもよい。
【0060】
放電時にTFTアレイ基板10に光を照射することによってa−Si残渣による電流リークを促進させ、光を照射しない場合と比較して電極の電位変化を強調させ、これによって欠陥検出を容易とする。
【0061】
充電時にTFTアレイ基板10に光を照射することによって電極に充電速度を速め、光を照射しない場合と比較して電極の電位上昇を促進させると共に、欠陥検出の検査時間を短縮する。なお、充放電時に行うことで、放電時の効果を充電時の効果の両方を奏することができる。
【0062】
[TFTアレイ検査の光照射の第1の態様]
TFTアレイ検査の光照射の第1の態様について図2〜図5を用いて説明する。第1の態様は、光照射を検査信号がオフ時点と同期させるものであり、ピクセルの電極の放電時に同期して光を照射する。
【0063】
図2は光照射の第1の態様の検査信号と光照射の同期状態を説明するための図である。図2(a)は検査信号の内、ソースラインを介してTFTのスイッチング素子のソース端子に印加するソース信号であり、図2(b)は検査信号の内、ゲートラインを介してTFTのスイッチング素子のゲート端子に印加するゲート信号の一例を示している。
【0064】
ピクセルの電極には、TFTのスイッチング素子がONの状態においてゲート信号がハイ状態である間にソース信号が印加されて充電が行われる。第1の態様では、この充電期間では光照射は行わず、放電期間に光照射を行う。
【0065】
ゲート信号がロー状態となってTFTのスイッチング素子がOFFの状態となると、ソース信号の印加が停止されると共に、電極に充電された電荷の放電が開始される。第1の態様では、この放電期間において光照射を行うことによって、放電を促進して電極電位の降下を速める。図2(d)は電極電位を示し、図中の破線は光照射を行わない場合の電位変化を示している。放電時に光照射を照射することによってa−Siの残渣による電流リークを増加させ、これによって、電極電位の降下を、光照射が無い場合(図中の破線)と比較して速めることができる。
【0066】
図3は、ゲート電圧(VG)に対するスイッチング素子に流れる電流(ISD)特性について光を照射した場合(図中の実線で示す)と光を照射しない場合(図中の破線で示す)について示している。スイッチング素子に流れる電流ISDは、TFTアレイ基板に光を照射することによって増加することを示している。
【0067】
図4は、ピクセルの等価回路例を示し、光照射の有無による相違を示している。図4(a)は、ゲートライン、ソースライン、およびピクセルの関係を模式的に示している。ここで、図中の右上方に示すピクセルにa−Siの残渣がある場合には、例えば、この残渣は電極に対して付加容量が並列接続された状態として表すことができる。図4(b)は光を照射していない状態の等価回路を示している。a−Si残渣による容量Cstは電極容量Coと並列接続され、電極容量は(Co+Cst)で表される。なお、スイッチング素子のソース−ドレイン間の抵抗はRSDで示している。
【0068】
一方、図4(c)は光を照射した状態の等価回路を示している。光照射によるリーク電流の増加は、スイッチング素子のソース−ドレイン間の抵抗RSDに並列接続された付加抵抗Rで表すことができる。
【0069】
a−Si残渣を有したピクセルの電極では、電極の電荷は、光照射が無い場合には抵抗分RSDと容量分(Co+Cst)のRC回路の放電と見ることができ、光照射が有る場合には抵抗分(RSD・R/RSD+R))と容量分(Co+Cst)のRC回路の放電と見ることができる。それぞれの時定数τは、光照射が無い場合には(RSD・(Co+Cst))で表され、光照射が有る場合には((RSD・R/RSD+R)・(Co+Cst))で表され、光照射によって時定数を小さくすることができる。
【0070】
図5は、光照射の有無によるスイッチング素子に流れる電流ISDの変動と電極電位との関係を示している。
【0071】
図5(a)は検査信号のゲート信号の一例を示し、図5(b)は光照射を示し、ゲート信号の立ち下がりと同期して光照射を行う。この光照射の有無によって、図5(c)に示すように、スイッチング素子に流れる電流ISDはゲート信号の立ち下がりと同期して“b”から“A”に移行する。この“A”の電流ISDは、光照射を行わない場合の電流ISD“a”と比較して大きくなる。
【0072】
これにより、図5(d)に示すように、ゲートをOFFとした後に電極が放電を開始すると、光照射を行ったときの電極電位(図5(d)中の実線で示す)は、光照射を行わないときの電極電位(図5(d)中の破線で示す)よりも速く降下する。なお、上記した“A”,“a”,“b”は図3中に示した符号と対応して示している。
【0073】
[TFTアレイ検査の光照射の第2の態様]
図6は光照射の第2の態様の検査信号と光照射の同期状態を説明するための図である。図6(a)は検査信号の内、ソースラインを介してTFTのスイッチング素子のソース端子に印加するソース信号であり、図6(b)は検査信号の内、ゲートラインを介してTFTのスイッチング素子のゲート端子に印加するゲート信号の一例を示している。
【0074】
ピクセルの電極には、TFTのスイッチング素子がONの状態においてゲート信号がハイ状態となっている間に、ソース信号が印加されて充電が行われる。第2の態様では、この充電期間に光照射を行い、充電を促進して電極電位の上昇を速める。図6(d)は電極電位を示し、図中の破線は光照射を行わない場合の電位変化を示している。充電時に光照射を行うことによって充電速度を速め、電極電位の上昇を光照射が無い場合(図中の破線)と比較して速めることができる。
【0075】
図7は、光照射の有無によるスイッチング素子に流れる電流ISDの変動と電極電位との関係を示している。
【0076】
図7(a)は検査信号のゲート信号の一例を示し、図7(b)は光照射を示し、ゲート信号の立ち上がりと同期して光照射を行う。この光照射の有無によって、図7(c)に示すように、スイッチング素子に流れる電流ISDはゲート信号の立ち上がりと同期して“B”となり、光照射が終了すると“B”から“b”に移行し、さらに、ゲート信号がOFFとなると“b”から“a”に移行する。光照射時の“B”の電流ISDは、光照射を行わない場合の電流ISD“b”と比較して大きくなる。
【0077】
これにより、図7(d)に示すように、ゲートをONとした後に電極が充電を開始すると、光照射を行ったときの電極電位(図7(d)中の実線で示す)は、光照射を行わないときの電極電位(図7(d)中の破線で示す)よりも速く上昇する。なお、上記した“B”,“a”,“b”は図3中に示した符号と対応して示している。
【0078】
[TFTアレイ検査の光照射の第3の態様]
図8は光照射の第3の態様の検査信号と光照射の同期状態を説明するための図である。図8(a)は検査信号の内、ソースラインを介してTFTのスイッチング素子のソース端子に印加するソース信号であり、図8(b)は検査信号の内、ゲートラインを介してTFTのスイッチング素子のゲート端子に印加するゲート信号の一例を示している。
【0079】
ピクセルの電極には、TFTのスイッチング素子がONの状態においてゲート信号がハイ状態となっている間にソース信号が印加されて充電が行い、ゲート信号がロー状態となっている間に放電を行う。
【0080】
第3の態様では、この充電期間および放電期間に光照射を行い、充電時には充電を促進して電極電位の上昇を速め、放電時には電流リークを促進する。図8(d)は電極電位を示し、図中の破線は光照射を行わない場合の電位変化を示している。充電時に光照射を行うことによって充電速度を速め、電極電位の上昇を光照射が無い場合(図中の破線)と比較して速める。また、放電時に光照射を行うことによって電流リークを促進し、電極電位の下降を光照射が無い場合(図中の破線)と比較して速める。
【0081】
図9は、光照射の有無によるスイッチング素子に流れる電流ISDの変動と電極電位との関係を示している。
【0082】
図9(a)は検査信号のゲート信号の一例を示し、図9(b)は光照射を示し、ゲート信号の立ち上がりと同期して光照射を開始する。この光照射の有無によって、図9(c)に示すように、スイッチング素子に流れる電流ISDはゲート信号の立ち上がりと同期して“B”となり、ゲート信号がOFFとなると“B”から“A”に移行し、光照射が終了すると“A”から“a”に移行する。光照射時の“B”の電流ISDは、光照射を行わない場合の電流ISD“b”と比較して大きく、また、光照射時の“A”の電流ISDは、光照射を行わない場合の電流ISD“a”と比較して大きくなる。
【0083】
これにより、図9(d)に示すように、ゲートをONとした後に電極が充電を開始すると、光照射を行ったときの電極電位(図9(d)中の実線で示す)は、光照射を行わないときの電極電位(図9(d)中の破線で示す)よりも速く上昇し、ゲートをOFFとした後に電極が放電を開始すると、光照射を行ったときの電極電位(図9(d)中の実線で示す)は、光照射を行わないときの電極電位(図9(d)中の破線で示す)よりも速く下降する。なお、上記した“A”,“B”,“a”,“b”は図3中に示した符号と対応して示している。
【0084】
前記した各態様において、光照射と検査信号とを同期させると共に、電子線照射で放出される二次電子線等をシンチレータ等の検出器で検出する電子線走査において、この電子線走査中には光照射を行わないようにすることによって、検出器に光照射による光が入射してノイズとなることを防ぐことができる。
【0085】
また、前記した各態様において、充電時および放電時に光照射を行うことによって、光特性によってTFTに流れる電流量が増加するため、スイッチング素子を高速で動作させることができる。また、充電後に光を照射し、光照射の後に電子線走査を行い、検出器で二次電子を検出することによって、検出器への光の入射を防いでノイズの発生を抑制すると共に、欠陥部分からの電流リークを促進させて、欠陥を強調することができる。
【0086】
図10は、欠陥イメージの一例であり、検出信号強度をイメージ画像と表している。ここでは、一例として、ゲート信号のOFFと同期して光照射を行った場合を、光照射を行わない場合と比較して示している。この例は、上記した第1の態様の放電時に光照射を行う場合の例に相当している。また、この例では、ソース電圧を+15Vと-12Vで切り替え、ゲート電圧を+30Vと-15Vで切り替え、グリッドAの電圧を+30Vとし、グリッドBの電圧を+5Vとし、共通ラインCsの電圧を+30Vとしている。
【0087】
光照射を行った場合(LED ON時)には、ゲートをOFF状態としてから10.434ms後に欠陥を確認することができる。一方、光照射を行わない場合(LED OFF時)には、ゲートをOFF状態としてから欠陥を確認するまで27.174msを要している。このことは、光照射を行った場合には、光照射を行わない場合よりも早くa−Siの残渣による欠陥検出がされたことを示している。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、TFTアレイ基板は液晶基板や有機ELとすることができ、液晶基板や有機ELを形成する成膜装置の他、種々の半導体基板を形成する成膜装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 アレイ検査装置
2 電子銃
3 2次電子検出器
4 真空チャンバ
5 次電子抑制用グリッド
6 エネルギーフィルタ
6A,6B グリッド
7 ステージ
8 検出器グリッド
10 基板
11 制御部
12 光照射部
13 検査信号駆動部
15 電源
16A,16B 電源
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶基板等のTFTアレイ基板のアレイを検査するTFTアレイ検査に関し、特に、TFTアレイを駆動させて欠陥検出を行うTFTアレイ検査方法およびTFTアレイ検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶アレイ検査装置等のアレイ検査装置において、液晶基板等の基板上を撮像して得られる撮像画像として、光学的に撮像して得られる光学撮像画像、あるいは、電子ビームやイオンビーム等の荷電ビームを基板上で二次元的に走査して得られる走査画像を用いることができる。
【0003】
TFTディスプレイ装置に用いるTFTアレイ基板の製造工程では、製造されたTFTアレイ基板が正しく駆動するかの検査が行われる(特許文献1,2)。
【0004】
例えば、検査対象である基板のアレイに検査信号を印加してアレイを所定電位状態とし、基板上に電子ビームやイオンビーム等の荷電ビームを二次元的に照射して走査し、このビーム走査で得られる走査画像に基づいてTFTのアレイを検査するアレイ検査装置が知られている。TFTアレイ検査では、例えば、電子線の照射によって放出される二次電子をフォトマルチプライヤなどによってアナログ信号に変換して検出し、この検出信号の各信号強度から求めた画像によってアレイ欠陥を判定している。
【0005】
TFTアレイ基板のアレイとピクセルは対応して形成されており、アレイに駆動信号を印加することによって特定のピクセルを駆動することができる。TFTアレイ検査において、アレイに所定パターンの駆動信号を印加して基板内に形成されたパネルの各ピクセルを所定パターンで駆動し、これらの所定パターンで駆動したピクセルに電子線を照射し、照射点から放出される二次電子を検出する。この電子線の照射をパネル内で走査して行うことによって、パネル内の各ピクセルから検出信号を取得している。
【0006】
ピクセルに対して電子線を走査して得られた検出信号は、パネル上のピクセルの座標位置と電子線の照射位置との位置関係に基づいて各ピクセルに割り付けられる。割り付けられた検出信号の信号強度に基づいて各ピクセルの信号強度を表す画像を形成し、画像処理によって欠陥ピクセルを抽出し、対応する欠陥アレイの検査を行う。
【0007】
アクティブ型液晶パネルの基板の欠陥検査において、液晶パネル化を行う前のマトリクス基板と呼ばれるガラス基板の動作状態を、マトリクス基板を液晶パネル化した液晶パネルの実動作状態に合わせるために、液晶セルの抵抗分に相当する蓄積容量の放電量を増やして点欠陥検査を行うことが提案され、この蓄積容量の放電量を増やす具体的手段として、TFTの動作温度を変化させたり、TFTに光を照射させて、新たにリーク抵抗を添加することが提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−271516号公報
【特許文献2】特開2004−309488号公報
【特許文献3】特公平7−3446号公報(第3頁5-29行、第3頁50行-第4頁8行、第4頁22-25行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
TFTアレイ基板のアレイ欠陥として、各種工程で使用される物質がアレイ上に残り、この残渣物質が欠陥の要因となることが知られている。例えば、隣接するアレイの間、アレイと電極との間等にまたがって残渣が形成されると、アレイ間やアレイと電極との間が抵抗接続あるいは容量接続されることになりアレイ欠陥となる。
【0010】
残渣により生じるアレイ欠陥の内、残渣物質が金属材である場合にはメタル残渣と呼ばれる。このようなメタル残渣の場合には、電流のリークが比較的短時間で行われるため短時間で電圧が変動する。そのため欠陥検出を容易に行うことができる。
【0011】
一方、残渣物質がa−Siのような半導体や絶縁物である場合には、電流のリークに時間がかかるため電圧変動に長時間を要する。
【0012】
図11は、a−Siの残渣を説明するための図である。図11において、TFTのスイッチング素子と電極とを備え、スイッチング素子のゲート端子Gにゲート信号を印加するゲート線(GATE)と、スイッチング素子のソース端子Sにソース信号を印加するソース線(SOURCE)とを接続してなるピクセル構成を示している。また、電極の一方はスイッチング素子のドレイン端子Dに接続され、電極の他方は共通ラインに接続されている。
【0013】
図11(a)中の一ピクセルには、a−Siの残渣が欠陥として残っている例であり、電極とソースラインとの間にまたがって存在する例を示している。図11(b)は等価回路を示している。残渣は、電極容量Coと並列接続される残渣容量Cstとして表される。
【0014】
この残渣例では、電極の容量は電極容量Coと残渣容量Cstとの和で表されるため、時定数τはτ=RSD×(Co+Cst)で表され、残渣欠陥が無い場合の時定数τ=RSD×Coより大きくなる。時定数τが大きいため、残渣欠陥を有する電極の電位変動に時間がかかり、検査時間内に電圧変動を検出することができず、欠陥検出が困難となる場合がある。
【0015】
例えば、端子間を短絡するシーティングバーによってパネル上の全ピクセルをチャージし、このチャージ後のピクセルの電位変化を検出することによって欠陥検出を行う場合には、電流リークによる欠陥ピクセルの電位低下が小さいため、検査時間内において欠陥ピクセルと正常ピクセルとの電圧差は小さい。そのため、ピクセル間の電位の違いから欠陥ピクセルを抽出することは困難である。
【0016】
したがって、従来の電圧の差異による欠陥検出では、a−Si等の半導体や絶縁物の残渣による欠陥ピクセルと正常ピクセルとの識別が困難であるという問題がある。
【0017】
そこで、本発明は上記課題を解決して、半導体や絶縁物の残渣物質による欠陥の検出を容易とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本願発明は、TFTアレイ基板を検査するためにアレイに印加する検査信号と同期させて、TFTアレイ基板の表面に光を照射することによって電極の電圧変化を強調させることで、半導体や絶縁物の残渣物質による欠陥の検出を容易とする。
【0019】
本願発明は、TFTアレイ基板検査方法の態様とTFTアレイ基板検査装置の態様とすることができる。
【0020】
[TFTアレイ基板検査方法の態様]
本願発明のTFTアレイ基板検査方法の態様では、TFTアレイ基板のパネルに所定電圧の検査信号を印加してアレイを駆動し、パネル上に電子線を照射して走査し、電子線走査で検出される検出信号に基づいてTFTアレイ基板のアレイを検査するTFTアレイ検査方法であり、検査信号に同期してTFTアレイ基板の表面に光を照射する。
【0021】
検査信号と同期させてTFTアレイ基板に光を照射することによって、TFTのスイッチング素子に流れる電流を増加させる。
【0022】
TFTのスイッチング素子に流れる電流は、ピクセルの電極が備える容量分を充電する。ここで、a−Si等の半導体や絶縁物の残渣は、アレイと電極との間に容量性接続を形成し、この残渣による容量分は電極が備える容量分と並列接続されるため、欠陥ピクセルの電極の容量分は正常ピクセルの電極の容量分よりも大きくなり、欠陥ピクセルの時定数は正常ピクセルの時定数よりも大きくなる。
【0023】
このピクセルの電極には、TFTのスイッチング素子を通して電流が流入して充電される。
【0024】
残渣を有した欠陥ピクセルは、残渣によって電極部分に容量が付加されて時定数が大きくなっているため、充放電時において電極の電位が変化するに要する時間が正常ピクセルよりも長くかかる。
【0025】
そのため、検査時間内に欠陥ピクセルの電極の電位変化を検出することは困難となる。本願発明は、a−SiのTFTアレイ基板のソースドレイン電流特性が光照射の有無によって異なり、光照射の下ではTFTのスイッチング素子に流れる電流が増加する特性を適用すると共に、光を照射するタイミングを検査信号と同期させる。この光照射と検査信号とを同期させることによって、電極に対して行われる充電時又は放電時、あるいは、充放電時においてTFTアレイ基板に光を照射してTFTのスイッチング素子に流れる電流を増加させることによって、時定数を実質的に低下させ、光を照射しない場合と比較して電極の電位変化を強調させ、これによって、欠陥ピクセルの検出を容易なものとする。
【0026】
また、本発明は、光照射と検査信号とを同期させると共に、シンチレータ等の検出器によって電子線照射で放出される二次電子線等を検出する走査において、この走査中には光照射を行わないようにすることによって、検出器に光照射による光が入射してノイズとなることを防ぐという効果を奏することができる。
【0027】
ピクセルとアレイとは対応関係にあるため、電極電圧を電子線走査で検出し、検出信号により得られる各ピクセルの信号強度に基づいてピクセルの欠陥検出を行い、この欠陥検出で検出された欠陥ピクセルに対応するアレイを欠陥アレイとして検出することができる。
【0028】
検査信号とTFTアレイ基板の表面への光照射との同期は複数の態様によって行うことができる。
【0029】
検査信号とTFTアレイ基板の表面への光照射との同期の第1の態様は、検査信号において、電極への電圧印加の終了と同期して光照射を開始し、次に電極へ電圧を印加する前に光照射を終了する。
【0030】
この第1の態様によれば、充電された電極を放電する際に光を照射することによって、電極からの放電電流を増加させる。この放電電流の増加は、TFTのスイッチング素子に並列に抵抗を追加し、スイッチング素子の抵抗と電極の容量とで定まる時定数を実質的に低下させることに相当し、光を照射しない場合と比較して電極の放電による電位低下を速めることができる。
【0031】
検査信号とTFTアレイ基板の表面への光照射との同期の第2の態様は、検査信号において、電極への電圧印加の開始と同期して光照射を開始し、電極への電圧印加の終了と同期して光照射を終了する。
【0032】
この第2の態様によれば、電極を充電する際に光を照射することによって、電極への充電電流を増加させる。この充放電流の増加は、TFTのスイッチング素子に並列に抵抗を追加し、スイッチング素子の抵抗と電極の容量とで定まる時定数を実質的に低下させることに相当し、光を照射しない場合と比較して電極の充電による電位上昇を速めることができる。
【0033】
検査信号とTFTアレイ基板の表面への光照射との同期の第3の態様は、検査信号において、電極への電圧印加の開始と同期して光照射を開始し、電極への電圧印加が終了した後も光照射を継続し、次に電極へ電圧を印加する前に光照射を終了する。
【0034】
この第3の態様によれば、電極を充電する際に光を照射することによって、電極への充電電流を増加させ、充電された電極を放電する際に光を照射することによって、電極からの放電電流を増加させる。
【0035】
この充電電流および放電電流の増加は、TFTのスイッチング素子に並列に抵抗を追加し、スイッチング素子の抵抗と電極の容量とで定まる時定数を実質的に低下させることに相当し、光を照射しない場合と比較して電極の充電による電位上昇および放電による電位低下を速めることができる。
【0036】
本願発明は、検査信号に同期して行うTFTアレイ基板の表面への光照射において、複数の発光波長を用意しておき、検査信号の駆動パターンに応じて、これら複数の発光波長から光照射する光の発光波長を選択し、また、発光するタイミングを制御することができる。
【0037】
検査信号において、ゲートおよびソースに対して電圧を印加する組み合わせを変えると、パネル上で駆動するピクセルの駆動パターンが変化する。この駆動パターンによって、検出する欠陥の種類を変えることができる。
【0038】
印加する検査信号と同期して照射される光についても、残渣の位置など検出する欠陥の種類に応じて最適な発光波長を用いることで、欠陥の検出精度を向上させることができる。
【0039】
[TFTアレイ基板検査装置の態様]
本願発明のTFTアレイ基板検査装置の態様では、TFTアレイ基板のパネルに所定電圧の検査信号を印加してアレイを駆動し、このパネル上に電子線を照射して走査し、電子線走査で検出される検出信号に基づいてTFTアレイ基板のアレイを検査するTFTアレイ検査装置において、パネル上に電子線を照射する電子線源と、電子線走査による二次電子を検出して検出信号を出力する二次電子検出器と、二次電子検出器の検出信号を用いて欠陥を検出する欠陥検出部と、パネルに検査信号を印加する検査信号駆動部と、TFTアレイ基板の表面に光を照射すると光照射部と、検査信号駆動部と光照射部とを同期制御する制御部とを備える。
【0040】
制御部は、同期制御によって検査信号に同期してTFTアレイ基板の表面に光を照射させ、この光照射によってTFTのスイッチング素子の電流を増加させることによって、パネル上のピクセルの電極の電圧変化の差異を強調させる。
【0041】
欠陥検出部は、電極の電圧を電子線走査による検出信号から得られる各ピクセルの信号強度に基づいてピクセルの欠陥検出を行い、欠陥検出で検出された欠陥ピクセルに対応するアレイを欠陥アレイとして検出する。
【0042】
光照射部は、電子銃の照射位置を挟んで二次電子検出器と反対側に設置する構成とする。この配置構成によって、電子銃および二次電子検出器の各装置との干渉、および、電子銃から放出される電子線やTFTアレイ基板の照射位置から放出される二次電子線との干渉を避けることができる。
【0043】
光照射部は、波長を異にする複数のLED発光ダイオードを備える構成とし、制御部は、検査信号駆動部が出力する検査信号の駆動パターンに応じて、これら複数のLED発光ダイオードの発光波長と発光のタイミングを制御する構成とする。この構成とすることで、異なる欠陥種類に適した発光波長を選択することができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、半導体や絶縁物の残渣物質による欠陥の検出を容易とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明のTFTアレイ検査装置の構成を説明するための概略図である。
【図2】本発明の光照射の第1の態様の検査信号と光照射の同期状態を説明するための図である。
【図3】ゲート電圧(VG)に対するスイッチング素子に流れる電流(ISD)の光照射による特性を示す図である。
【図4】ピクセルの等価回路例を示す図である。
【図5】光照射の有無によるスイッチング素子に流れる電流ISDの変動と電極電位との関係を示す図である。
【図6】本発明の光照射の第2の態様の検査信号と光照射の同期状態を説明するための図である。
【図7】光照射の有無によるスイッチング素子に流れる電流ISDの変動と電極電位との関係を示す図である。
【図8】本発明の光照射の第3の態様の検査信号と光照射の同期状態を説明するための図である。
【図9】光照射の有無によるスイッチング素子に流れる電流ISDの変動と電極電位との関係を示す図である。
【図10】光照射の有無による欠陥イメージを説明するための図である。
【図11】a−Siの残渣を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明の実施の形態について図を参照しながら詳細に説明する。以下では、図1を用いて本発明のTFTアレイ検査装置の構成例を説明し、図2〜図5を用いて本発明のTFTアレイ検査の光照射の第1の態様を説明し、図6,7を用いて本発明のTFTアレイ検査の光照射の第2の態様を説明し、図8,9を用いて本発明のTFTアレイ検査の光照射の第3の態様を説明する。図10は、光照射の有無による欠陥イメージを説明するための図である。
【0047】
[TFTアレイ検査装置の構成]
図1は本発明のTFTアレイ検査装置の構成を説明するための概略図である。図1において、TFTアレイ検査装置1は、真空チャンバ4内に配置された基板10に対して電子線を照射する電子銃2と、電子線の照射により基板10から放出された2次電子を検出する2次電子検出器3を備える。
【0048】
TFTアレイ基板10と2次電子検出器3との間には、エネルギーフィルタ6を備える。このエネルギーフィルタ6は、複数枚のグリッドで構成する。図1では、2枚のグリッド6A,6Bによって構成し、TFTアレイ基板10に近い側にグリッド6Bを設け、TFTアレイ基板10から遠い側にグリッド6Aを設けている。
【0049】
エネルギーフィルタ6のグリッド6A,6Bは、TFTアレイ基板10を配置するステージ7に対して平行となるよう設けてもよい。エネルギーフィルタ6のグリッド6A,6Bをステージ7に対して平行に設ける構成によれば、グリッド6A,6BはTFTアレイ基板10に対して平行となり、これによって、TFTアレイ基板10に対して広い範囲の測定に適した構成とすることができる。
【0050】
また、エネルギーフィルタ6のグリッド6A,6Bには、電子銃2とTFTアレイ基板10上の照射位置とを結ぶ線上に、電子銃2からの電子線をTFTアレイ基板10に照射するための開口部を設けても良い。また、2次電子検出器3の前面には、検出器グリッド8が設けられている。
【0051】
真空チャンバ4内には、上記したエネルギーフィルタ6のグリッド6A,6Bの他に、内周壁面に沿って内部空間を囲むように反跳2次電子抑制用グリッド5が設けられる。この反跳2次電子抑制用グリッド5は、横方向に進んだ2次電子を反跳させて、2次電子検出器3の捕集率を高めるものである。
【0052】
上記したエネルギーフィルタ6のグリッド6Aとグリッド6Bとにはそれぞれ電源16A,16Bが接続され、グリッド毎に異なる電圧を印加することができる。この電源16A,16Bがグリッド6A,6Bに印加する電圧は、図示していないグリッド電源制御部によって制御される。また、TFTアレイ基板10には、検査信号駆動部13から検査信号が印加される。
【0053】
制御部11は、グリッド電源制御部(図示していない)および検査信号駆動部13を制御し、検査対象でありTFTアレイ基板10の欠陥種に応じたグリッド電圧と検査信号が印加されるように制御する。この制御は、例えば、TFTアレイ基板の種類や検査対象の欠陥種に対して、各グリッド6A,6Bに印加するグリッド電圧と、検査信号駆動部13が印加する検査信号のパターンとの対応関係を記憶しておき、TFTアレイ検査装置が検査する基板種や欠陥種に基づいて、これらグリッド電圧および検査信号パターンを読み出し、読み出したグリッド電圧をグリッド電源制御部(図示していない)に指示することでグリッド6A,6Bに所定電圧を印加させ、また、読み出した検査信号パターンを検査信号駆動部13に指示することでTFTアレイ基板10に印加する検査信号を制御する。
【0054】
また、反跳2次電子抑制用グリッド5には電源15が接続され、所定の電圧を印加して2次電子を反跳させる。
【0055】
グリッド電源制御部(図示していない)は電源16A,16Bを制御して、グリッド6A,6Bに印加する電圧を個別に調整し、エネルギーフィルタ6の電位を可変とする。エネルギーフィルタ6は、その電位によってTFTアレイ基板10から放出された2次電子を所定のエネルギー値でエネルギー選別し、通過した2次電子のみが2次電子検出器3で検出されるようにする。
【0056】
2次電子検出器3で検出された検出信号は検出信号処理部14に入力され、イメージ画像が形成される。欠陥形成部17は、イメージ画像を用いて欠陥ピクセルを抽出し、この欠陥ピクセルに対応するアレイを欠陥アレイとして検出する。
【0057】
本発明のTFTアレイ検査装置1は、真空チャンバ4内に光照射部12を備える。光照射部12は、例えば、LED発光ダイオードを用いることができる。光照射部12としてLED発光ダイオードを用いることによって真空内で使用が可能としている。図1において、光照射部12は、電子銃2による電子線の照射位置を挟んで、2次電子検出器3と反対側に配置する。この配置とすることで、電子銃2および2次電子検出器3の配置位置に係わらず配置することができ、また、電子線および二次電子線を遮ることなく配置することができる。
【0058】
光照射部12(12A,12B,…)は、発光波長が異ならせて複数個配置することができる。例えば、可視光の場合には、赤色発光ダイオード、緑色発光ダイオード、青色発光ダイオード、白色発光ダイオード等の発光色を異にする複数のLED発光ダイオードを配置する構成とすることができる。
【0059】
制御部11は、TFTアレイ基板10に印加する検査信号に同期して、光照射部12の何れの発光波長を発光するか、検出信号に対して何れのタイミングで発光をオン/オフするかを制御する。例えば、ピクセルの電極の放電時、ピクセルの電極の充電時、ピクセルの電極の充電および放電時と同期して、TFTアレイ基板10に光を照射する。複数の発光波長を用いる場合には、これら放電時、充電時、充放電時によって発光波長を変更する他、検出する欠陥種によって発光波長を変更してもよい。
【0060】
放電時にTFTアレイ基板10に光を照射することによってa−Si残渣による電流リークを促進させ、光を照射しない場合と比較して電極の電位変化を強調させ、これによって欠陥検出を容易とする。
【0061】
充電時にTFTアレイ基板10に光を照射することによって電極に充電速度を速め、光を照射しない場合と比較して電極の電位上昇を促進させると共に、欠陥検出の検査時間を短縮する。なお、充放電時に行うことで、放電時の効果を充電時の効果の両方を奏することができる。
【0062】
[TFTアレイ検査の光照射の第1の態様]
TFTアレイ検査の光照射の第1の態様について図2〜図5を用いて説明する。第1の態様は、光照射を検査信号がオフ時点と同期させるものであり、ピクセルの電極の放電時に同期して光を照射する。
【0063】
図2は光照射の第1の態様の検査信号と光照射の同期状態を説明するための図である。図2(a)は検査信号の内、ソースラインを介してTFTのスイッチング素子のソース端子に印加するソース信号であり、図2(b)は検査信号の内、ゲートラインを介してTFTのスイッチング素子のゲート端子に印加するゲート信号の一例を示している。
【0064】
ピクセルの電極には、TFTのスイッチング素子がONの状態においてゲート信号がハイ状態である間にソース信号が印加されて充電が行われる。第1の態様では、この充電期間では光照射は行わず、放電期間に光照射を行う。
【0065】
ゲート信号がロー状態となってTFTのスイッチング素子がOFFの状態となると、ソース信号の印加が停止されると共に、電極に充電された電荷の放電が開始される。第1の態様では、この放電期間において光照射を行うことによって、放電を促進して電極電位の降下を速める。図2(d)は電極電位を示し、図中の破線は光照射を行わない場合の電位変化を示している。放電時に光照射を照射することによってa−Siの残渣による電流リークを増加させ、これによって、電極電位の降下を、光照射が無い場合(図中の破線)と比較して速めることができる。
【0066】
図3は、ゲート電圧(VG)に対するスイッチング素子に流れる電流(ISD)特性について光を照射した場合(図中の実線で示す)と光を照射しない場合(図中の破線で示す)について示している。スイッチング素子に流れる電流ISDは、TFTアレイ基板に光を照射することによって増加することを示している。
【0067】
図4は、ピクセルの等価回路例を示し、光照射の有無による相違を示している。図4(a)は、ゲートライン、ソースライン、およびピクセルの関係を模式的に示している。ここで、図中の右上方に示すピクセルにa−Siの残渣がある場合には、例えば、この残渣は電極に対して付加容量が並列接続された状態として表すことができる。図4(b)は光を照射していない状態の等価回路を示している。a−Si残渣による容量Cstは電極容量Coと並列接続され、電極容量は(Co+Cst)で表される。なお、スイッチング素子のソース−ドレイン間の抵抗はRSDで示している。
【0068】
一方、図4(c)は光を照射した状態の等価回路を示している。光照射によるリーク電流の増加は、スイッチング素子のソース−ドレイン間の抵抗RSDに並列接続された付加抵抗Rで表すことができる。
【0069】
a−Si残渣を有したピクセルの電極では、電極の電荷は、光照射が無い場合には抵抗分RSDと容量分(Co+Cst)のRC回路の放電と見ることができ、光照射が有る場合には抵抗分(RSD・R/RSD+R))と容量分(Co+Cst)のRC回路の放電と見ることができる。それぞれの時定数τは、光照射が無い場合には(RSD・(Co+Cst))で表され、光照射が有る場合には((RSD・R/RSD+R)・(Co+Cst))で表され、光照射によって時定数を小さくすることができる。
【0070】
図5は、光照射の有無によるスイッチング素子に流れる電流ISDの変動と電極電位との関係を示している。
【0071】
図5(a)は検査信号のゲート信号の一例を示し、図5(b)は光照射を示し、ゲート信号の立ち下がりと同期して光照射を行う。この光照射の有無によって、図5(c)に示すように、スイッチング素子に流れる電流ISDはゲート信号の立ち下がりと同期して“b”から“A”に移行する。この“A”の電流ISDは、光照射を行わない場合の電流ISD“a”と比較して大きくなる。
【0072】
これにより、図5(d)に示すように、ゲートをOFFとした後に電極が放電を開始すると、光照射を行ったときの電極電位(図5(d)中の実線で示す)は、光照射を行わないときの電極電位(図5(d)中の破線で示す)よりも速く降下する。なお、上記した“A”,“a”,“b”は図3中に示した符号と対応して示している。
【0073】
[TFTアレイ検査の光照射の第2の態様]
図6は光照射の第2の態様の検査信号と光照射の同期状態を説明するための図である。図6(a)は検査信号の内、ソースラインを介してTFTのスイッチング素子のソース端子に印加するソース信号であり、図6(b)は検査信号の内、ゲートラインを介してTFTのスイッチング素子のゲート端子に印加するゲート信号の一例を示している。
【0074】
ピクセルの電極には、TFTのスイッチング素子がONの状態においてゲート信号がハイ状態となっている間に、ソース信号が印加されて充電が行われる。第2の態様では、この充電期間に光照射を行い、充電を促進して電極電位の上昇を速める。図6(d)は電極電位を示し、図中の破線は光照射を行わない場合の電位変化を示している。充電時に光照射を行うことによって充電速度を速め、電極電位の上昇を光照射が無い場合(図中の破線)と比較して速めることができる。
【0075】
図7は、光照射の有無によるスイッチング素子に流れる電流ISDの変動と電極電位との関係を示している。
【0076】
図7(a)は検査信号のゲート信号の一例を示し、図7(b)は光照射を示し、ゲート信号の立ち上がりと同期して光照射を行う。この光照射の有無によって、図7(c)に示すように、スイッチング素子に流れる電流ISDはゲート信号の立ち上がりと同期して“B”となり、光照射が終了すると“B”から“b”に移行し、さらに、ゲート信号がOFFとなると“b”から“a”に移行する。光照射時の“B”の電流ISDは、光照射を行わない場合の電流ISD“b”と比較して大きくなる。
【0077】
これにより、図7(d)に示すように、ゲートをONとした後に電極が充電を開始すると、光照射を行ったときの電極電位(図7(d)中の実線で示す)は、光照射を行わないときの電極電位(図7(d)中の破線で示す)よりも速く上昇する。なお、上記した“B”,“a”,“b”は図3中に示した符号と対応して示している。
【0078】
[TFTアレイ検査の光照射の第3の態様]
図8は光照射の第3の態様の検査信号と光照射の同期状態を説明するための図である。図8(a)は検査信号の内、ソースラインを介してTFTのスイッチング素子のソース端子に印加するソース信号であり、図8(b)は検査信号の内、ゲートラインを介してTFTのスイッチング素子のゲート端子に印加するゲート信号の一例を示している。
【0079】
ピクセルの電極には、TFTのスイッチング素子がONの状態においてゲート信号がハイ状態となっている間にソース信号が印加されて充電が行い、ゲート信号がロー状態となっている間に放電を行う。
【0080】
第3の態様では、この充電期間および放電期間に光照射を行い、充電時には充電を促進して電極電位の上昇を速め、放電時には電流リークを促進する。図8(d)は電極電位を示し、図中の破線は光照射を行わない場合の電位変化を示している。充電時に光照射を行うことによって充電速度を速め、電極電位の上昇を光照射が無い場合(図中の破線)と比較して速める。また、放電時に光照射を行うことによって電流リークを促進し、電極電位の下降を光照射が無い場合(図中の破線)と比較して速める。
【0081】
図9は、光照射の有無によるスイッチング素子に流れる電流ISDの変動と電極電位との関係を示している。
【0082】
図9(a)は検査信号のゲート信号の一例を示し、図9(b)は光照射を示し、ゲート信号の立ち上がりと同期して光照射を開始する。この光照射の有無によって、図9(c)に示すように、スイッチング素子に流れる電流ISDはゲート信号の立ち上がりと同期して“B”となり、ゲート信号がOFFとなると“B”から“A”に移行し、光照射が終了すると“A”から“a”に移行する。光照射時の“B”の電流ISDは、光照射を行わない場合の電流ISD“b”と比較して大きく、また、光照射時の“A”の電流ISDは、光照射を行わない場合の電流ISD“a”と比較して大きくなる。
【0083】
これにより、図9(d)に示すように、ゲートをONとした後に電極が充電を開始すると、光照射を行ったときの電極電位(図9(d)中の実線で示す)は、光照射を行わないときの電極電位(図9(d)中の破線で示す)よりも速く上昇し、ゲートをOFFとした後に電極が放電を開始すると、光照射を行ったときの電極電位(図9(d)中の実線で示す)は、光照射を行わないときの電極電位(図9(d)中の破線で示す)よりも速く下降する。なお、上記した“A”,“B”,“a”,“b”は図3中に示した符号と対応して示している。
【0084】
前記した各態様において、光照射と検査信号とを同期させると共に、電子線照射で放出される二次電子線等をシンチレータ等の検出器で検出する電子線走査において、この電子線走査中には光照射を行わないようにすることによって、検出器に光照射による光が入射してノイズとなることを防ぐことができる。
【0085】
また、前記した各態様において、充電時および放電時に光照射を行うことによって、光特性によってTFTに流れる電流量が増加するため、スイッチング素子を高速で動作させることができる。また、充電後に光を照射し、光照射の後に電子線走査を行い、検出器で二次電子を検出することによって、検出器への光の入射を防いでノイズの発生を抑制すると共に、欠陥部分からの電流リークを促進させて、欠陥を強調することができる。
【0086】
図10は、欠陥イメージの一例であり、検出信号強度をイメージ画像と表している。ここでは、一例として、ゲート信号のOFFと同期して光照射を行った場合を、光照射を行わない場合と比較して示している。この例は、上記した第1の態様の放電時に光照射を行う場合の例に相当している。また、この例では、ソース電圧を+15Vと-12Vで切り替え、ゲート電圧を+30Vと-15Vで切り替え、グリッドAの電圧を+30Vとし、グリッドBの電圧を+5Vとし、共通ラインCsの電圧を+30Vとしている。
【0087】
光照射を行った場合(LED ON時)には、ゲートをOFF状態としてから10.434ms後に欠陥を確認することができる。一方、光照射を行わない場合(LED OFF時)には、ゲートをOFF状態としてから欠陥を確認するまで27.174msを要している。このことは、光照射を行った場合には、光照射を行わない場合よりも早くa−Siの残渣による欠陥検出がされたことを示している。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、TFTアレイ基板は液晶基板や有機ELとすることができ、液晶基板や有機ELを形成する成膜装置の他、種々の半導体基板を形成する成膜装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 アレイ検査装置
2 電子銃
3 2次電子検出器
4 真空チャンバ
5 次電子抑制用グリッド
6 エネルギーフィルタ
6A,6B グリッド
7 ステージ
8 検出器グリッド
10 基板
11 制御部
12 光照射部
13 検査信号駆動部
15 電源
16A,16B 電源
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TFTアレイ基板のパネルに所定電圧の検査信号を印加してアレイを駆動し、前記パネル上に電子線を照射して走査し、当該電子線走査で検出される検出信号に基づいてTFTアレイ基板のアレイを検査するTFTアレイ検査方法において、
前記検査信号に同期して前記TFTアレイ基板の表面に光を照射し、当該光照射によってTFTのスイッチング素子の電流を増加させることによって、前記パネル上のピクセルの電極の電位変化を強調させ、
前記電極電位を前記電子線走査で検出し、検出信号により得られる各ピクセルの信号強度に基づいてピクセルの欠陥検出を行い、当該欠陥検出で検出された欠陥ピクセルに対応するアレイを欠陥アレイとして検出することを特徴とする、TFTアレイ検査方法。
【請求項2】
前記検査信号に同期して行うTFTアレイ基板の表面への光照射において、
前記検査信号において、電極への電圧印加の終了と同期して光照射を開始し、次に電極に電圧を印加する前に光照射を終了することを特徴とする請求項1に記載のTFTアレイ検査方法。
【請求項3】
前記検査信号に同期して行うTFTアレイ基板の表面への光照射において、
前記検査信号において、電極への電圧印加の開始と同期して光照射を開始し、電極への電圧印加の終了と同期して光照射を終了することを特徴とする請求項1に記載のTFTアレイ検査方法。
【請求項4】
前記検査信号に同期して行うTFTアレイ基板の表面への光照射において、
前記検査信号において、電極への電圧印加の開始と同期して光照射を開始し、電極への電圧印加が終了した後も光照射を継続し、次に電極に電圧を印加する前に光照射を終了することを特徴とする請求項1に記載のTFTアレイ検査方法。
【請求項5】
前記検査信号に同期して行うTFTアレイ基板の表面への光照射において、
前記検査信号の駆動パターンに応じて、光照射する光の発光波長および発光タイミングを制御することを特徴とする、請求項1から4の何れか一つに記載のTFTアレイ検査装置。
【請求項6】
TFTアレイ基板のパネルに所定電圧の検査信号を印加してアレイを駆動し、前記パネル上に電子線を照射して走査し、当該電子線走査で検出される検出信号に基づいてTFTアレイ基板のアレイを検査するTFTアレイ検査装置において、
パネル上に電子線を照射する電子線源と、
電子線走査による二次電子を検出して検出信号を出力する二次電子検出器と、
前記二次電子検出器の検出信号を用いて欠陥を検出する欠陥検出部と、
前記パネルに検査信号を印加する検査信号駆動部と、
前記TFTアレイ基板の表面に光を照射すると光照射部と、
前記検査信号駆動部と前記光照射部とを同期制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記同期制御によって前記検査信号に同期して前記TFTアレイ基板の表面に光を照射させ、当該光照射によってTFTのスイッチング素子の電流を増加させることによって、残渣欠陥による付加容量の有無による前記パネル上のピクセルの電極の電位変化を強調させ、
前記欠陥検出部は、前記電極の電位を前記電子線走査による検出信号から得られる各ピクセルの信号強度に基づいてピクセルの欠陥検出を行い、当該欠陥検出で検出された欠陥ピクセルに対応するアレイを欠陥アレイとして検出することを特徴とする、TFTアレイ検査装置。
【請求項7】
前記光照射部は、前記電子銃の照射位置を挟んで前記二次電子検出器と反対側に設置することを特徴とする、請求項6に記載のTFTアレイ検査装置。
【請求項8】
前記光照射部は、波長を異にする複数のLED発光ダイオードを備え、
前記制御部は、検査信号駆動部が出力する検査信号の駆動パターンに応じて、前記複数のLED発光ダイオードの発光波長と発光のタイミングを制御することを特徴とする、請求項6又は7に記載のTFTアレイ検査装置。
【請求項1】
TFTアレイ基板のパネルに所定電圧の検査信号を印加してアレイを駆動し、前記パネル上に電子線を照射して走査し、当該電子線走査で検出される検出信号に基づいてTFTアレイ基板のアレイを検査するTFTアレイ検査方法において、
前記検査信号に同期して前記TFTアレイ基板の表面に光を照射し、当該光照射によってTFTのスイッチング素子の電流を増加させることによって、前記パネル上のピクセルの電極の電位変化を強調させ、
前記電極電位を前記電子線走査で検出し、検出信号により得られる各ピクセルの信号強度に基づいてピクセルの欠陥検出を行い、当該欠陥検出で検出された欠陥ピクセルに対応するアレイを欠陥アレイとして検出することを特徴とする、TFTアレイ検査方法。
【請求項2】
前記検査信号に同期して行うTFTアレイ基板の表面への光照射において、
前記検査信号において、電極への電圧印加の終了と同期して光照射を開始し、次に電極に電圧を印加する前に光照射を終了することを特徴とする請求項1に記載のTFTアレイ検査方法。
【請求項3】
前記検査信号に同期して行うTFTアレイ基板の表面への光照射において、
前記検査信号において、電極への電圧印加の開始と同期して光照射を開始し、電極への電圧印加の終了と同期して光照射を終了することを特徴とする請求項1に記載のTFTアレイ検査方法。
【請求項4】
前記検査信号に同期して行うTFTアレイ基板の表面への光照射において、
前記検査信号において、電極への電圧印加の開始と同期して光照射を開始し、電極への電圧印加が終了した後も光照射を継続し、次に電極に電圧を印加する前に光照射を終了することを特徴とする請求項1に記載のTFTアレイ検査方法。
【請求項5】
前記検査信号に同期して行うTFTアレイ基板の表面への光照射において、
前記検査信号の駆動パターンに応じて、光照射する光の発光波長および発光タイミングを制御することを特徴とする、請求項1から4の何れか一つに記載のTFTアレイ検査装置。
【請求項6】
TFTアレイ基板のパネルに所定電圧の検査信号を印加してアレイを駆動し、前記パネル上に電子線を照射して走査し、当該電子線走査で検出される検出信号に基づいてTFTアレイ基板のアレイを検査するTFTアレイ検査装置において、
パネル上に電子線を照射する電子線源と、
電子線走査による二次電子を検出して検出信号を出力する二次電子検出器と、
前記二次電子検出器の検出信号を用いて欠陥を検出する欠陥検出部と、
前記パネルに検査信号を印加する検査信号駆動部と、
前記TFTアレイ基板の表面に光を照射すると光照射部と、
前記検査信号駆動部と前記光照射部とを同期制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記同期制御によって前記検査信号に同期して前記TFTアレイ基板の表面に光を照射させ、当該光照射によってTFTのスイッチング素子の電流を増加させることによって、残渣欠陥による付加容量の有無による前記パネル上のピクセルの電極の電位変化を強調させ、
前記欠陥検出部は、前記電極の電位を前記電子線走査による検出信号から得られる各ピクセルの信号強度に基づいてピクセルの欠陥検出を行い、当該欠陥検出で検出された欠陥ピクセルに対応するアレイを欠陥アレイとして検出することを特徴とする、TFTアレイ検査装置。
【請求項7】
前記光照射部は、前記電子銃の照射位置を挟んで前記二次電子検出器と反対側に設置することを特徴とする、請求項6に記載のTFTアレイ検査装置。
【請求項8】
前記光照射部は、波長を異にする複数のLED発光ダイオードを備え、
前記制御部は、検査信号駆動部が出力する検査信号の駆動パターンに応じて、前記複数のLED発光ダイオードの発光波長と発光のタイミングを制御することを特徴とする、請求項6又は7に記載のTFTアレイ検査装置。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図1】
【図10】
【図11】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図1】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−226825(P2011−226825A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94358(P2010−94358)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
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