X線分析装置および方法
【課題】結晶構造を有する試料から発生する散乱線および不純線を抑制し、回折X線を回避することができるX線分析装置および方法を提供する。
【解決手段】X線分析装置は、試料Sを試料の所定点周りに360°回転させながら1次X線2を照射させて取得した回折パターンを記憶する制御手段15と、試料SのR−θ座標において試料の測定面上に位置することができる試料の平行移動範囲の上下限値のθ座標を、演算および/または記憶する演算記憶手段17と、演算および/または記憶されたθ座標の上下限値、および回折パターンに基づいて、隣り合う間隔がθ座標の上下限値範囲内の角度であって、回折X線を回避できる回避角度を選択するための選択手段とを備え、制御手段15が試料の測定点の座標に応じて、回避角度の中から測定点の座標に最も近い回避角度を読み出して、読み出した回避角度に試料を設定する。
【解決手段】X線分析装置は、試料Sを試料の所定点周りに360°回転させながら1次X線2を照射させて取得した回折パターンを記憶する制御手段15と、試料SのR−θ座標において試料の測定面上に位置することができる試料の平行移動範囲の上下限値のθ座標を、演算および/または記憶する演算記憶手段17と、演算および/または記憶されたθ座標の上下限値、および回折パターンに基づいて、隣り合う間隔がθ座標の上下限値範囲内の角度であって、回折X線を回避できる回避角度を選択するための選択手段とを備え、制御手段15が試料の測定点の座標に応じて、回避角度の中から測定点の座標に最も近い回避角度を読み出して、読み出した回避角度に試料を設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハ等の円板状の試料の任意の測定部位を測定するX線分析装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、ウエーハの分析には、試料表面に1次X線を照射して、試料表面から発生する2次X線の強度を検出して分析している。ウエーハなどの結晶構造を有する試料はX線が照射されると、蛍光X線、回折X線などの2次X線を発生する。蛍光X線分析において、この回折X線が測定の障害となる場合がある。回折X線は結晶構造である(110)面、(111)面などの試料のカット面によって発生する角度位置が異なる。
【0003】
そこで、試料の蛍光X線分析に先立って、試料を試料の所定点周りに180°以上回転させながら、この試料に1次X線を照射して、試料から発生する蛍光X線および回折X線を含む2次X線を検出し、得られた2次X線強度が最小値を示す回転方向位置に試料を位置決めし、この状態で、試料を、その測定面に平行な面内で互いに直交するXY方向に移動させて、試料の測定面全域の分析を行なう蛍光X線分析方法がある(特許文献1)。
【0004】
また、図11に示すように、試料の縁近傍にある所望の測定部位の測定において、試料Sの上方の領域外から1次X線2が照射されて前記領域へ全反射するように位置させて測定すると、1次X線2の一部が板状の試料Sの鉛直な端面に照射され、四方に向けて強い散乱線9が発生する。この散乱線9の一部は、測定すべき蛍光X線に対して大きなバックグラウンドとなる。
【0005】
そこで、試料の縁近傍にある任意の測定部位について、試料の上方の領域から1次X線が照射されて前記領域外へ全反射するように位置させて試料の端面から発生する散乱線を抑制して測定する全反射蛍光X線分析装置がある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−126768号公報
【特許文献2】特開2002−5858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の蛍光X線分析方法では、結晶構造が回転対称の試料から発生する回折X線を回避することはできるが、結晶構造が回転対称でない試料から発生する回折X線を回避することができなかった。
【0008】
特許文献2に記載の全反射蛍光X線分析装置では、試料の縁近傍から発生する散乱線の影響を抑制することができるが、結晶構造が回転対称でない試料から発生する回折X線を回避することを考慮していないので、散乱線の影響を排除できる位置に試料を設定しても回折X線を回避することできず、試料によっては精度のよい分析ができなかった。
【0009】
そこで、本発明は前記従来の問題に鑑みてなされたもので、結晶構造を有する円板状の試料の縁近傍ならびに試料近傍の装置構造物から発生する散乱線および不純線を抑制回避するとともに、試料から発生する回折X線を回避することによって、簡単に精度のよい分析をすることができるX線分析装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の第1構成のX線分析装置は、結晶構造を有する円板状の試料が載置される試料台と、試料に1次X線を照射するX線源と、試料から発生する2次X線を検出する検出器と、試料測定面の任意の位置に1次X線を照射させるように前記試料台を平行移動させる平行移動手段と、試料測定面に垂直な軸を中心に前記試料台を回転させる回転手段と、を備え、試料の縁近傍にある任意の測定部位について、試料の上方の領域から1次X線が照射されて前記領域外へ反射するように位置させて測定する。
【0011】
さらに、このX線分析装置は、試料を試料の所定点周りに前記回転手段によって360°回転させながら前記X線源から1次X線を照射させ、試料から発生して前記検出器に入射する2次X線の強度を試料の回転角度と対応させた回折パターンを表示手段に表示させ、その回折パターンを記憶する制御手段と、試料への1次X線の水平方向成分と同一方向を向いた仮想線であって、試料の測定面上における前記検出器の視野の外周に接する2つの仮想線が、試料のR−θ座標において試料の測定面上に位置することができる試料の平行移動範囲の上下限値のθ座標を、試料の直径ごとに、演算および/または記憶する演算記憶手段と、測定者が前記演算記憶手段によって演算および/または記憶されたθ座標の上下限値、ならびに前記表示手段に表示された回折パターンに基づいて、隣り合う間隔がθ座標の上下限値範囲内の角度であって、回折X線を回避できる回避角度を選択するための選択手段と、を備え、前記制御手段が、測定者によって前記選択手段を用いて選択された回避角度を記憶し、試料の測定点の座標に応じて、前記記憶した回避角度の中から測定点の座標に最も近い回避角度を読み出して、前記回転手段を制御して前記読み出した回避角度に試料を設定し、前記平行移動手段を制御して試料の測定点を1次X線の照射位置に設定する。
【0012】
本発明の第1構成のX線分析装置によれば、結晶構造を有する円板状の試料の縁近傍ならびに試料近傍の装置構造物から発生する散乱線および不純線を抑制回避するとともに、試料から発生する回折X線を回避することによって、簡単に精度のよい分析をすることができる。
【0013】
本発明の第2構成のX線分析装置は、結晶構造を有する円板状の試料が載置される試料台と、試料に1次X線を照射するX線源と、試料から発生する2次X線を検出する検出器と、試料測定面の任意の位置に1次X線を照射させるように前記試料台を平行移動させる平行移動手段と、試料測定面に垂直な軸を中心に前記試料台を回転させる回転手段と、を備え、試料の縁近傍にある任意の測定部位について、試料の上方の領域から1次X線が照射されて前記領域外へ反射するように位置させて測定する。
【0014】
さらに、このX線分析装置は、試料を試料の所定点周りに前記回転手段によって360°回転させながら前記X線源から1次X線を照射させ、試料から発生して前記検出器に入射する2次X線の強度を試料の回転角度と対応させた回折パターンを表示手段に表示させ、その回折パターンを記憶する制御選択手段と、試料への1次X線の水平方向成分と同一方向を向いた仮想線であって、試料の測定面上における前記検出器の視野の外周に接する2つの仮想線が、試料のR−θ座標において試料の測定面上に位置することができる試料の平行移動範囲の上下限値のθ座標を、試料の直径ごとに、演算および/または記憶する演算記憶手段と、を備え、前記制御選択手段が、前記演算記憶手段によって演算および/または記憶されたθ座標の上下限値、ならびに前記表示手段に表示された回折パターンに基づいて、隣り合う間隔がθ座標の上下限値範囲内の角度であって、前記回折パターンにおいて所定の閾値以下のX線強度であって回折X線を回避できる回避角度を選択して記憶し、試料の測定点の座標に応じて、前記記憶した回避角度の中から測定点の座標に最も近い回避角度を読み出して、前記回転手段を制御して前記読み出した回避角度に試料を設定し、前記平行移動手段を制御して試料の測定点を1次X線の照射位置に設定する。
【0015】
本発明の第2構成のX線分析装置によれば、自動的に、結晶構造を有する円板状の試料の縁近傍ならびに試料近傍の装置構造物から発生する散乱線および不純線を抑制回避するとともに、試料から発生する回折X線を回避することによって、簡単に精度のよい分析をすることができる。
【0016】
本発明の第3構成のX線分析方法は、結晶構造を有する円板状の試料が載置される試料台と、試料に1次X線を照射するX線源と、試料から発生する2次X線を検出する検出器と、試料測定面の任意の位置に1次X線を照射させるように前記試料台を平行移動させる平行移動手段と、試料測定面に垂直な軸を中心に前記試料台を回転させる回転手段と、を備え、試料の縁近傍にある任意の測定部位について、試料の上方の領域から1次X線が照射されて前記領域外へ反射するように位置させて測定するX線分析装置を用いる。
【0017】
さらに、このX線分析方法は、前記試料台に載置された試料を前記回転手段によって試料の所定点周りに360°回転させながら1次X線を照射させ、試料から発生して前記検出器に入射する2次X線の強度を試料の回転角度と対応させた回折パターンを取得し、
試料への1次X線の水平方向成分と同一方向を向いた仮想線であって、試料の測定面上における前記検出器の視野の外周に接する2つの仮想線が、試料のR−θ座標において試料の測定面上に位置することができる試料の平行移動範囲の上下限値のθ座標を、試料の直径ごとに、演算して記憶し、演算記憶されたθ座標の上下限値、および前記表示手段に表示された回折パターンに基づいて、隣り合う間隔がθ座標の上下限値範囲内の角度であって、回折X線を回避できる回避角度を選択し、前記回転手段によって前記選択した回避角度に試料を設定し、前記平行移動手段によって試料の測定点を1次X線の照射位置に設定して分析する。
【0018】
本発明の第3構成のX線分析方法によれば、結晶構造を有する円板状の試料の縁近傍ならびに試料近傍の装置構造物から発生する散乱線および不純線を抑制回避するとともに、試料から発生する回折X線を回避することによって、簡単に精度のよい分析をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態のX線分析装置を示す概略図である。
【図2】同装置の試料台における試料の初期位置を示す図である。
【図3】同装置によって測定した試料の回折パターンを示す図である。
【図4】同装置の測定点Aと仮想線との位置関係を示す図である。
【図5】同装置の測定点Bと仮想線との位置関係を示す図である。
【図6】同装置の測定点Cと仮想線との位置関係を示す図である。
【図7】同装置の測定点Dと仮想線との位置関係を示す図である。
【図8】同装置によって回折パターンを取得するときの試料位置を示す図である。
【図9】同装置の測定点Fが回折X線回避角度に設定された図である。
【図10】本発明の第3実施形態のX線分析装置を示す概略図である。
【図11】従来のX線分析装置における試料からの散乱線発生部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の第1実施形態のX線分析装置について説明する。まず、X線分析装置の構成について、図にしたがって説明する。図1は、この発明のX線分析方法を実施するために使用する全反射蛍光X線分析装置などのX線分析装置の概略構成図であり、このX線分析装置は、ウエーハなどの結晶構造を有する円板状の試料Sに向けて1次X線2を照射するX線管などのX線源1と、1次X線2の照射によって試料Sから発生する蛍光X線、回折X線などの2次X線4の強度を検出する検出器7と、試料Sを載置する試料台8と、この試料台8を試料Sの測定面に垂直な軸を中心に回転させる、この実施形態では試料Sの中心O周りに回転させる回転手段11と、この回転手段11を回転可能に支持した状態で、試料Sの測定面の任意の位置に1次X線2を照射させるように測定面に平行な面内でR−θ方向に移動させるR−θステージなどの平行移動手段12とを備えている。例えば、R−θステージは特開平8−161049に開示されているステージである。
【0021】
試料Sの座標はR−θ座標で示され、図2に示すように、R−θ座標において時計方向の角度を−θ、反時計方向の角度を+θと表示し、試料Sが回転手段11によって回転される反時計方向の回転角度を符号ωと表示する。試料Sは試料台8に載置され、ウエーハのノッチNやオリフラなどを基準として初期位置に設定される。試料Sの初期位置において、試料Sの中心Oと検出器7の視野Vの中心Pとは合致している。図2に示す符号I、II、III、IVは座標の第1象限、第2象限、第3象限、第4象限を示している。
【0022】
試料Sの縁近傍にある任意の測定部位について、試料Sの上方の領域から1次X線2が照射されて前記領域外へ反射するように位置させて測定できるように、図1に示すように1次X線2を紙面の左方から試料Sの右側縁近傍に照射している。1次X線2の試料Sへの照射方向は所定の方向に固定されている。検出器7はSDDなどの半導体検出器である。検出器7は装置の所定の部位に固定されており、試料S測定面上の視野Vは一定の大きさ(一定面積)となる。第1実施形態のX線分析装置では、例えば、検出器7の視野Vは円形であり、半径Tは10mmである。
【0023】
第1実施形態のX線分析装置は、さらに、制御手段15、表示手段16、演算記憶手段17および選択手段18を備えている。制御手段15は、試料Sを試料Sの中心O周りに回転手段11によって反時計方向に360°回転させながらX線源1から1次X線2を照射させ、試料Sから発生して検出器7に入射する2次X線4の強度を試料Sの回転角度ωと対応させた回折パターンを表示手段16に表示させ、その回折パターンを記憶する。本実施形態の装置で1次X線W−Lβ1を照射して取得され、表示手段16に表示されて記憶された回折パターンの例を図3に示す。なお、試料Sの回転方向は時計方向であってもよい。
【0024】
演算記憶手段17は、試料Sへの1次X線2の水平方向成分と同一方向を向いた仮想線であって、試料の測定面上における検出器7の視野の外周に接する2つの仮想線が、試料Sの測定面上に位置することができる試料Sの平行移動範囲の上下限値のθ座標を、試料Sの直径Rごとに、演算および/または記憶する。仮想線は、図4に示す符号Hと符号Mで表示され、1次X線2の水平方向成分と同一方向を向いており、試料Sの測定面上における検出器7の視野Vの外周に接する仮想の線である。図1で説明したように1次X線2の試料Sへの照射方向は図4の矢印で示す方向に固定されており、検出器7の視野Vも一定であるので、2つの仮想線H、Mは図4に示す一定位置にある。平行移動手段12によって測定点Aが検出器7の視野Vの中心Pに配置されて測定される。
【0025】
測定者は、選択手段18を用いて、演算記憶手段17によって演算または記憶されたθ座標の上下限値、および表示手段16に表示された回折パターンに基づいて、隣り合う間隔がθ座標の上下限値範囲内の角度であって、回折X線を回避できる回避角度を選択する。
【0026】
制御手段15が、選択手段18を用いて、選択された回避角度ωを記憶し、試料Sの測定点の座標に応じて、前記記憶した回避角度ωの中から測定点の座標に最も近い回避角度ωを読み出して、回転手段11を制御して前記読み出した回避角度ωに試料Sを設定し、平行移動手段12を制御して、設定された回避角度ωを維持した状態で試料Sを移動させて測定点を検出器7の視野Vの中心Pに合致させる。
【0027】
2つの仮想線H、Mが試料SのR−θ座標において試料Sの測定面上に位置することができる、試料Sの平行移動範囲の上下限値のθ座標について、以下に説明する。測定点B(R、−90)と検出器7の視野Vとの位置が図5に示す状態であると、右側仮想線Mが試料Sの測定面上の外側にあり、1次X線2が試料Sの右側エッジに当たり、散乱線が発生する。また、1次X線2が試料Sの下方に(図5の紙面奥方向)存在する装置構造材に照射され散乱線と不純線(試料Sの下方に存在する装置構造材から発生する蛍光X線)が発生する。このようにして発生した最初の散乱線と不純線が、さらなる散乱線と不純線を発生させる。最初の散乱線と不純線、および、さらなる散乱線と不純線が検出器7に入射する。
【0028】
一方、測定点C(R、−θ1)と検出器7の視野Vとの位置が図6に示す状態であると、左側仮想線Hは試料Sの測定面上にあり、右側仮想線Mは試料Sの右側側面に接している。したがって、一部の1次X線2が試料Sの右側エッジや試料Sの下方に存在する装置構造材に照射されても、それらの個所から発生した散乱線および不純線は、検出器7の視野Vの外側に進行し、検出器7には入射しない。
【0029】
このように、左側仮想線Hと右側仮想線Mの2つの仮想線がともに試料Sの測定面上に位置するように平行移動手段12によって試料Sを配置すると、散乱線および不純線が検出器7に入射しないようにすることができる。
【0030】
図7に示す測定点D(R、−θ2)については、左側仮想線Hと右側仮想線Mはともに試料Sの測定面上にあり、測定点Cのθ1(図6)と測定点Dのθ2の角度関係は、θ1>θ2である。これから分かるように、測定点の位置が0〜−θ1の角度範囲であれば、散乱線および不純線が検出器7に入射しないようにすることができる。
【0031】
試料Sの第1象限座標について説明したが、第2象限座標についても同様に考えられ、測定点の位置が0〜+θ1の角度範囲内であれば、散乱線と不純線ともに検出器7に入射しないようにすることができる。すなわち、測定点の位置が−θ1〜+θ1の角度範囲内であれば、散乱線と不純線ともに検出器7に入射しないようにすることができ、+θ1が上限角度、−θ1が下限角度となり、絶対値の角度範囲としては2θ1となる。
【0032】
図6に示すように、上限角度θ1、試料Sの半径Rおよび検出器7の視野Vの半径Tとの間には、下記の(1)式の関係が成立する。
【0033】
sinθ1=(R−T)/R (1)
【0034】
検出器7は装置の所定の部位に固定されており、その検出器7の視野Vの半径Tも一定であり、試料Sの半径Rによって上限角度θ1を求めることができる。
【0035】
演算記憶手段17には、上記(1)式および検出器視野の半径Tが格納されており、入力手段19によって試料半径Rが入力されると、演算して上下限角度±θ1および2θ1を求め、表示手段16に表示するとともに記憶する。
【0036】
次に、第1実施形態のX線分析装置の動作とともに、本発明の第2実施形態のX線分析方法について説明する。直径200mmの試料Sの全反射蛍光X線分析に先立って、試料Sの360°の回折パターンを取得する。
【0037】
すなわち、試料Sが試料搬送手段(図示なし)によって図1に示す試料台8に載置される。試料Sが試料台8に載置された初期位置から平行移動手段12によって移動され、図8に示すように試料エッジからの散乱線の影響が少ない測定点E(R1、0)に設定される。回転手段11によって試料台8および試料Sを、試料Sの中心Oの周りに反時計方向に360°回転させながら、測定点EにX線源1から1次X線2を照射し、試料Sから発生する蛍光X線および回折X線を含んだ2次X線4を検出器7により検出する。これによって、図3に示す回折パターンが表示手段16に表示されるとともに制御手段15に記憶される。図3では、測定されたW−Lβ線(W)の回折パターンを示しており、横軸は試料Sの回転角度ω、縦軸はW−Lβ線のX線強度を表している。
【0038】
次に、測定者が入力手段19から演算記憶手段17に試料Sの半径Rを入力する。演算記憶手段17は試料Sの半径Rが入力されると、上記(1)式に基づいて、演算して上下限角度±θ1および2θ1を求め、表示手段16に表示するとともに記憶する。本実施形態では、検出器視野の半径Tが10mm、試料半径Rは100mmであり、θ1として64°、2θ1として128°が求まる。
【0039】
上記の例では、試料Sの半径Rを入力し、演算記憶手段17によって演算して上下限角度±θ1および2θ1を求めたが、結晶構造を有する試料Sであるシリコンウエーハ、液晶ガラス、ハードディスク、磁気ディスクなどは、半導体業界において、その直径は、50mm(2インチ)、76mm(3インチ)、100mm、125mm、150mm、200mm、300mmなどに規格化されているので、演算記憶手段17に試料直径に対応した上下限角度±θ1および2θ1を記憶させ、測定時にそれを読み出してもよい。
【0040】
次に、測定者が、表示手段16に表示された図3の回折パターンの中から回折X線の強度が低く、近接する角度位置において急激な強度増加を示さない、回折X線を回避する回避角度を選択手段18によって選択する。このとき、選択された回避角度の隣り合う角度位置の角度幅が、演算記憶手段17によって演算された角度範囲2θ1未満の角度、本実施形態では128°未満になるように、例えば、25°、95°、180°、260°、345°を選択する。選択手段18によって選択した回避角度を登録する。登録されると、制御手段15がその回避角度を測定条件として記憶し、表示手段16に表示された回折パターン上に回避角度25°、95°、180°、260°、345°のそれぞれの位置に縦線の回避角度マークが表示される。
【0041】
このように、選択された回避角度マークが回折パターン上に表示されるので、選択した回避角度の隣り合う角度位置の角度幅が128°未満の回避角度になっているか、否かを容易に視認することができる。さらに、角度幅が128°を超えている場合には、登録することができない。このように、角度幅を128°未満の回避角度に確実に設定できるようになっている。
【0042】
次に、測定を開始すると、制御手段15が記憶した回避角度の中から測定点のθ座標に最も近い回避角度ω1を読み出して、回転手段11によって回避角度ω1に試料Sを設定する。回転手段11によって試料Sが回避角度ω1に設定されると、測定点は検出器7の視野Vから反時計方向に角度ω1ずれるので、制御手段15が平行移動手段12を制御して、設定された回避角度ω1を維持した状態で試料Sを移動させて測定点を検出器7の視野Vの中心Pに合致させる。
【0043】
例えば、測定点F(100、−30)の測定を開始すると、制御手段15が記憶している回避角度の中から測定点Fのθ座標の角度位置に最も近い回避角度−15°(345°)を読み出して、回転手段11によって回避角度−15°に試料Sを設定する。回転手段11によって試料Sが−15°に回転されると、測定点Fは検出器7の視野Vから反時計方向に−15°ずれるので、図9に示すように、制御手段15が平行移動手段12を制御して、設定された回避角度−15°を維持した状態で試料Sを移動させて測定点Fを検出器7の視野Vの中心Pに合致させる。
【0044】
これにより、試料Sは回折X線を回避した回避角度−15°(345°)に設定され、試料Sの測定点FにX線源1から1次X線2が照射されて、試料Sから発生する2次X線4を検出器7により検出して分析する。その他の測定点についても座標に応じて、制御手段15が回転手段11を制御して試料Sからの回折X線を回避する回避角度25°、95°、180°、260°、345°に設定し、平行移動手段12を制御して試料Sの測定点を1次X線の照射位置に設定して分析する。試料Sの縁近傍以外の測定点についても同様にして分析される。
【0045】
直径200mmの試料Sについて説明したが、その他の直径の試料Sについても、同様に分析される。
【0046】
このように、第1の実施形態のX線分析装置および第2の実施形態の方法によれば、結晶構造を有する試料Sの直径Rに応じて試料Sの縁近傍ならびに試料S近傍の装置構造物から発生する散乱線および不純線を抑制回避するとともに、試料Sから発生する回折X線を回避することによって、簡単に精度のよい分析をすることができる。
【0047】
次に、本発明の第3実施形態のX線分析装置について説明する。図10に示すように、この装置は第1実施形態のX線分析装置の制御手段15と選択手段18とを備えず、それに換わって制御選択手段20を備え、その他の構成は同じであるので、異なる構成のみについて説明する。
【0048】
制御選択手段20は、試料Sを試料Sの所定点周りに回転手段11によって360°回転させながらX線源1から1次X線2を照射させ、試料Sから発生して検出器7に入射する2次X線4の強度を試料Sの回転角度と対応させた回折パターンを表示手段16に表示させ、その回折パターンを記憶する。記憶した回折パターン(図3)を所定のX線強度閾値で走査して、この閾値以下のX線強度が所定の角度範囲、例えば、3°〜5°にわたって存在していると、この所定の角度範囲の中心角度位置を回避角度として記憶する。この中心角度位置は、例えば、25°、95°、180°、260°、345°などである。
【0049】
制御選択手段20は、演算記憶手段17によって演算および/または記憶されたθ座標の上下限値、ならびに表示手段16に表示された回折パターンに基づいて、隣り合う間隔がθ座標の上下限値範囲内の角度であって、前記回折パターンにおいて所定の閾値以下のX線強度であって回折X線を回避できる回避角度ω1を選択して記憶し、試料Sの測定点の座標に応じて、前記記憶した回避角度ω1の中から測定点の座標に最も近い回避角度ω1を読み出して、その回避角度ω1に試料Sを設定するように回転手段11を制御する。回転手段11によって試料Sが回避角度ω1に設定されると、測定点は検出器7の視野Vから反時計方向に角度ω1ずれるので、制御選択手段20が平行移動手段12を制御して、設定された回避角度ω1を維持した状態で測定点を検出器7の視野Vの中心Pに移動させる。
【0050】
次に、第3実施形態のX線分析装置の動作とともに、第4実施形態のX線分析方法について説明する。第3実施形態の装置は、第1実施形態の装置の制御手段15と選択手段18とを備えず、それに換わって制御選択手段20を備え、その他の構成は同じであるので、異なる動作のみについて説明する。
【0051】
第1実施形態の装置では、測定者が表示手段16に表示された回折パターンの中から回折X線の強度が低く、近接する角度位置において急激な強度増加を示さない、回折X線を回避する回避角度を選択手段18によって選択したが、第3実施形態の装置では、制御選択手段20が回避角度を自動選択して記憶し、記憶した回避角度の中から測定点の座標に最も近い回避角度を読み出して、平行移動手段12と回転手段11とを制御して、その回避角度に試料Sを自動設定するとともに、設定された回避角度を維持した状態で測定点を検出器7の視野Vの中心Pに移動させて分析する。
【0052】
第3の実施形態のX線分析装置および第4実施形態の方法によれば、自動的に、結晶構造を有する試料Sの直径に応じて試料Sの縁近傍ならびに試料S近傍の装置構造物から発生する散乱線および不純線を抑制回避するとともに、試料Sから発生する回折X線を回避することによって、より簡単に精度のよい分析をすることができる。
【0053】
本実施形態のX線分析装置では、全反射蛍光X線分析装置について説明したが、全反射型でないエネルギー分散型蛍光X線分析装置、波長分散型蛍光X線分析装置などであってもよい。本発明は、結晶構造を有する試料Sから発生する散乱線および不純線を抑制回避し、回折X線を回避する必要のあるX線分析装置であればよく、例えば、蛍光X線分析装置、X線反射率測定装置、X線回折装置などが組み合わされた複合型のX線分析装置であってもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 X線源
2 1次X線
4 2次X線
7 検出器
8 試料台
11 回転手段
12 平行移動手段
15 制御手段
16 表示手段
17 演算記憶手段
18 選択手段
20 制御選択手段
S 試料
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハ等の円板状の試料の任意の測定部位を測定するX線分析装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、ウエーハの分析には、試料表面に1次X線を照射して、試料表面から発生する2次X線の強度を検出して分析している。ウエーハなどの結晶構造を有する試料はX線が照射されると、蛍光X線、回折X線などの2次X線を発生する。蛍光X線分析において、この回折X線が測定の障害となる場合がある。回折X線は結晶構造である(110)面、(111)面などの試料のカット面によって発生する角度位置が異なる。
【0003】
そこで、試料の蛍光X線分析に先立って、試料を試料の所定点周りに180°以上回転させながら、この試料に1次X線を照射して、試料から発生する蛍光X線および回折X線を含む2次X線を検出し、得られた2次X線強度が最小値を示す回転方向位置に試料を位置決めし、この状態で、試料を、その測定面に平行な面内で互いに直交するXY方向に移動させて、試料の測定面全域の分析を行なう蛍光X線分析方法がある(特許文献1)。
【0004】
また、図11に示すように、試料の縁近傍にある所望の測定部位の測定において、試料Sの上方の領域外から1次X線2が照射されて前記領域へ全反射するように位置させて測定すると、1次X線2の一部が板状の試料Sの鉛直な端面に照射され、四方に向けて強い散乱線9が発生する。この散乱線9の一部は、測定すべき蛍光X線に対して大きなバックグラウンドとなる。
【0005】
そこで、試料の縁近傍にある任意の測定部位について、試料の上方の領域から1次X線が照射されて前記領域外へ全反射するように位置させて試料の端面から発生する散乱線を抑制して測定する全反射蛍光X線分析装置がある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−126768号公報
【特許文献2】特開2002−5858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の蛍光X線分析方法では、結晶構造が回転対称の試料から発生する回折X線を回避することはできるが、結晶構造が回転対称でない試料から発生する回折X線を回避することができなかった。
【0008】
特許文献2に記載の全反射蛍光X線分析装置では、試料の縁近傍から発生する散乱線の影響を抑制することができるが、結晶構造が回転対称でない試料から発生する回折X線を回避することを考慮していないので、散乱線の影響を排除できる位置に試料を設定しても回折X線を回避することできず、試料によっては精度のよい分析ができなかった。
【0009】
そこで、本発明は前記従来の問題に鑑みてなされたもので、結晶構造を有する円板状の試料の縁近傍ならびに試料近傍の装置構造物から発生する散乱線および不純線を抑制回避するとともに、試料から発生する回折X線を回避することによって、簡単に精度のよい分析をすることができるX線分析装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の第1構成のX線分析装置は、結晶構造を有する円板状の試料が載置される試料台と、試料に1次X線を照射するX線源と、試料から発生する2次X線を検出する検出器と、試料測定面の任意の位置に1次X線を照射させるように前記試料台を平行移動させる平行移動手段と、試料測定面に垂直な軸を中心に前記試料台を回転させる回転手段と、を備え、試料の縁近傍にある任意の測定部位について、試料の上方の領域から1次X線が照射されて前記領域外へ反射するように位置させて測定する。
【0011】
さらに、このX線分析装置は、試料を試料の所定点周りに前記回転手段によって360°回転させながら前記X線源から1次X線を照射させ、試料から発生して前記検出器に入射する2次X線の強度を試料の回転角度と対応させた回折パターンを表示手段に表示させ、その回折パターンを記憶する制御手段と、試料への1次X線の水平方向成分と同一方向を向いた仮想線であって、試料の測定面上における前記検出器の視野の外周に接する2つの仮想線が、試料のR−θ座標において試料の測定面上に位置することができる試料の平行移動範囲の上下限値のθ座標を、試料の直径ごとに、演算および/または記憶する演算記憶手段と、測定者が前記演算記憶手段によって演算および/または記憶されたθ座標の上下限値、ならびに前記表示手段に表示された回折パターンに基づいて、隣り合う間隔がθ座標の上下限値範囲内の角度であって、回折X線を回避できる回避角度を選択するための選択手段と、を備え、前記制御手段が、測定者によって前記選択手段を用いて選択された回避角度を記憶し、試料の測定点の座標に応じて、前記記憶した回避角度の中から測定点の座標に最も近い回避角度を読み出して、前記回転手段を制御して前記読み出した回避角度に試料を設定し、前記平行移動手段を制御して試料の測定点を1次X線の照射位置に設定する。
【0012】
本発明の第1構成のX線分析装置によれば、結晶構造を有する円板状の試料の縁近傍ならびに試料近傍の装置構造物から発生する散乱線および不純線を抑制回避するとともに、試料から発生する回折X線を回避することによって、簡単に精度のよい分析をすることができる。
【0013】
本発明の第2構成のX線分析装置は、結晶構造を有する円板状の試料が載置される試料台と、試料に1次X線を照射するX線源と、試料から発生する2次X線を検出する検出器と、試料測定面の任意の位置に1次X線を照射させるように前記試料台を平行移動させる平行移動手段と、試料測定面に垂直な軸を中心に前記試料台を回転させる回転手段と、を備え、試料の縁近傍にある任意の測定部位について、試料の上方の領域から1次X線が照射されて前記領域外へ反射するように位置させて測定する。
【0014】
さらに、このX線分析装置は、試料を試料の所定点周りに前記回転手段によって360°回転させながら前記X線源から1次X線を照射させ、試料から発生して前記検出器に入射する2次X線の強度を試料の回転角度と対応させた回折パターンを表示手段に表示させ、その回折パターンを記憶する制御選択手段と、試料への1次X線の水平方向成分と同一方向を向いた仮想線であって、試料の測定面上における前記検出器の視野の外周に接する2つの仮想線が、試料のR−θ座標において試料の測定面上に位置することができる試料の平行移動範囲の上下限値のθ座標を、試料の直径ごとに、演算および/または記憶する演算記憶手段と、を備え、前記制御選択手段が、前記演算記憶手段によって演算および/または記憶されたθ座標の上下限値、ならびに前記表示手段に表示された回折パターンに基づいて、隣り合う間隔がθ座標の上下限値範囲内の角度であって、前記回折パターンにおいて所定の閾値以下のX線強度であって回折X線を回避できる回避角度を選択して記憶し、試料の測定点の座標に応じて、前記記憶した回避角度の中から測定点の座標に最も近い回避角度を読み出して、前記回転手段を制御して前記読み出した回避角度に試料を設定し、前記平行移動手段を制御して試料の測定点を1次X線の照射位置に設定する。
【0015】
本発明の第2構成のX線分析装置によれば、自動的に、結晶構造を有する円板状の試料の縁近傍ならびに試料近傍の装置構造物から発生する散乱線および不純線を抑制回避するとともに、試料から発生する回折X線を回避することによって、簡単に精度のよい分析をすることができる。
【0016】
本発明の第3構成のX線分析方法は、結晶構造を有する円板状の試料が載置される試料台と、試料に1次X線を照射するX線源と、試料から発生する2次X線を検出する検出器と、試料測定面の任意の位置に1次X線を照射させるように前記試料台を平行移動させる平行移動手段と、試料測定面に垂直な軸を中心に前記試料台を回転させる回転手段と、を備え、試料の縁近傍にある任意の測定部位について、試料の上方の領域から1次X線が照射されて前記領域外へ反射するように位置させて測定するX線分析装置を用いる。
【0017】
さらに、このX線分析方法は、前記試料台に載置された試料を前記回転手段によって試料の所定点周りに360°回転させながら1次X線を照射させ、試料から発生して前記検出器に入射する2次X線の強度を試料の回転角度と対応させた回折パターンを取得し、
試料への1次X線の水平方向成分と同一方向を向いた仮想線であって、試料の測定面上における前記検出器の視野の外周に接する2つの仮想線が、試料のR−θ座標において試料の測定面上に位置することができる試料の平行移動範囲の上下限値のθ座標を、試料の直径ごとに、演算して記憶し、演算記憶されたθ座標の上下限値、および前記表示手段に表示された回折パターンに基づいて、隣り合う間隔がθ座標の上下限値範囲内の角度であって、回折X線を回避できる回避角度を選択し、前記回転手段によって前記選択した回避角度に試料を設定し、前記平行移動手段によって試料の測定点を1次X線の照射位置に設定して分析する。
【0018】
本発明の第3構成のX線分析方法によれば、結晶構造を有する円板状の試料の縁近傍ならびに試料近傍の装置構造物から発生する散乱線および不純線を抑制回避するとともに、試料から発生する回折X線を回避することによって、簡単に精度のよい分析をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態のX線分析装置を示す概略図である。
【図2】同装置の試料台における試料の初期位置を示す図である。
【図3】同装置によって測定した試料の回折パターンを示す図である。
【図4】同装置の測定点Aと仮想線との位置関係を示す図である。
【図5】同装置の測定点Bと仮想線との位置関係を示す図である。
【図6】同装置の測定点Cと仮想線との位置関係を示す図である。
【図7】同装置の測定点Dと仮想線との位置関係を示す図である。
【図8】同装置によって回折パターンを取得するときの試料位置を示す図である。
【図9】同装置の測定点Fが回折X線回避角度に設定された図である。
【図10】本発明の第3実施形態のX線分析装置を示す概略図である。
【図11】従来のX線分析装置における試料からの散乱線発生部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の第1実施形態のX線分析装置について説明する。まず、X線分析装置の構成について、図にしたがって説明する。図1は、この発明のX線分析方法を実施するために使用する全反射蛍光X線分析装置などのX線分析装置の概略構成図であり、このX線分析装置は、ウエーハなどの結晶構造を有する円板状の試料Sに向けて1次X線2を照射するX線管などのX線源1と、1次X線2の照射によって試料Sから発生する蛍光X線、回折X線などの2次X線4の強度を検出する検出器7と、試料Sを載置する試料台8と、この試料台8を試料Sの測定面に垂直な軸を中心に回転させる、この実施形態では試料Sの中心O周りに回転させる回転手段11と、この回転手段11を回転可能に支持した状態で、試料Sの測定面の任意の位置に1次X線2を照射させるように測定面に平行な面内でR−θ方向に移動させるR−θステージなどの平行移動手段12とを備えている。例えば、R−θステージは特開平8−161049に開示されているステージである。
【0021】
試料Sの座標はR−θ座標で示され、図2に示すように、R−θ座標において時計方向の角度を−θ、反時計方向の角度を+θと表示し、試料Sが回転手段11によって回転される反時計方向の回転角度を符号ωと表示する。試料Sは試料台8に載置され、ウエーハのノッチNやオリフラなどを基準として初期位置に設定される。試料Sの初期位置において、試料Sの中心Oと検出器7の視野Vの中心Pとは合致している。図2に示す符号I、II、III、IVは座標の第1象限、第2象限、第3象限、第4象限を示している。
【0022】
試料Sの縁近傍にある任意の測定部位について、試料Sの上方の領域から1次X線2が照射されて前記領域外へ反射するように位置させて測定できるように、図1に示すように1次X線2を紙面の左方から試料Sの右側縁近傍に照射している。1次X線2の試料Sへの照射方向は所定の方向に固定されている。検出器7はSDDなどの半導体検出器である。検出器7は装置の所定の部位に固定されており、試料S測定面上の視野Vは一定の大きさ(一定面積)となる。第1実施形態のX線分析装置では、例えば、検出器7の視野Vは円形であり、半径Tは10mmである。
【0023】
第1実施形態のX線分析装置は、さらに、制御手段15、表示手段16、演算記憶手段17および選択手段18を備えている。制御手段15は、試料Sを試料Sの中心O周りに回転手段11によって反時計方向に360°回転させながらX線源1から1次X線2を照射させ、試料Sから発生して検出器7に入射する2次X線4の強度を試料Sの回転角度ωと対応させた回折パターンを表示手段16に表示させ、その回折パターンを記憶する。本実施形態の装置で1次X線W−Lβ1を照射して取得され、表示手段16に表示されて記憶された回折パターンの例を図3に示す。なお、試料Sの回転方向は時計方向であってもよい。
【0024】
演算記憶手段17は、試料Sへの1次X線2の水平方向成分と同一方向を向いた仮想線であって、試料の測定面上における検出器7の視野の外周に接する2つの仮想線が、試料Sの測定面上に位置することができる試料Sの平行移動範囲の上下限値のθ座標を、試料Sの直径Rごとに、演算および/または記憶する。仮想線は、図4に示す符号Hと符号Mで表示され、1次X線2の水平方向成分と同一方向を向いており、試料Sの測定面上における検出器7の視野Vの外周に接する仮想の線である。図1で説明したように1次X線2の試料Sへの照射方向は図4の矢印で示す方向に固定されており、検出器7の視野Vも一定であるので、2つの仮想線H、Mは図4に示す一定位置にある。平行移動手段12によって測定点Aが検出器7の視野Vの中心Pに配置されて測定される。
【0025】
測定者は、選択手段18を用いて、演算記憶手段17によって演算または記憶されたθ座標の上下限値、および表示手段16に表示された回折パターンに基づいて、隣り合う間隔がθ座標の上下限値範囲内の角度であって、回折X線を回避できる回避角度を選択する。
【0026】
制御手段15が、選択手段18を用いて、選択された回避角度ωを記憶し、試料Sの測定点の座標に応じて、前記記憶した回避角度ωの中から測定点の座標に最も近い回避角度ωを読み出して、回転手段11を制御して前記読み出した回避角度ωに試料Sを設定し、平行移動手段12を制御して、設定された回避角度ωを維持した状態で試料Sを移動させて測定点を検出器7の視野Vの中心Pに合致させる。
【0027】
2つの仮想線H、Mが試料SのR−θ座標において試料Sの測定面上に位置することができる、試料Sの平行移動範囲の上下限値のθ座標について、以下に説明する。測定点B(R、−90)と検出器7の視野Vとの位置が図5に示す状態であると、右側仮想線Mが試料Sの測定面上の外側にあり、1次X線2が試料Sの右側エッジに当たり、散乱線が発生する。また、1次X線2が試料Sの下方に(図5の紙面奥方向)存在する装置構造材に照射され散乱線と不純線(試料Sの下方に存在する装置構造材から発生する蛍光X線)が発生する。このようにして発生した最初の散乱線と不純線が、さらなる散乱線と不純線を発生させる。最初の散乱線と不純線、および、さらなる散乱線と不純線が検出器7に入射する。
【0028】
一方、測定点C(R、−θ1)と検出器7の視野Vとの位置が図6に示す状態であると、左側仮想線Hは試料Sの測定面上にあり、右側仮想線Mは試料Sの右側側面に接している。したがって、一部の1次X線2が試料Sの右側エッジや試料Sの下方に存在する装置構造材に照射されても、それらの個所から発生した散乱線および不純線は、検出器7の視野Vの外側に進行し、検出器7には入射しない。
【0029】
このように、左側仮想線Hと右側仮想線Mの2つの仮想線がともに試料Sの測定面上に位置するように平行移動手段12によって試料Sを配置すると、散乱線および不純線が検出器7に入射しないようにすることができる。
【0030】
図7に示す測定点D(R、−θ2)については、左側仮想線Hと右側仮想線Mはともに試料Sの測定面上にあり、測定点Cのθ1(図6)と測定点Dのθ2の角度関係は、θ1>θ2である。これから分かるように、測定点の位置が0〜−θ1の角度範囲であれば、散乱線および不純線が検出器7に入射しないようにすることができる。
【0031】
試料Sの第1象限座標について説明したが、第2象限座標についても同様に考えられ、測定点の位置が0〜+θ1の角度範囲内であれば、散乱線と不純線ともに検出器7に入射しないようにすることができる。すなわち、測定点の位置が−θ1〜+θ1の角度範囲内であれば、散乱線と不純線ともに検出器7に入射しないようにすることができ、+θ1が上限角度、−θ1が下限角度となり、絶対値の角度範囲としては2θ1となる。
【0032】
図6に示すように、上限角度θ1、試料Sの半径Rおよび検出器7の視野Vの半径Tとの間には、下記の(1)式の関係が成立する。
【0033】
sinθ1=(R−T)/R (1)
【0034】
検出器7は装置の所定の部位に固定されており、その検出器7の視野Vの半径Tも一定であり、試料Sの半径Rによって上限角度θ1を求めることができる。
【0035】
演算記憶手段17には、上記(1)式および検出器視野の半径Tが格納されており、入力手段19によって試料半径Rが入力されると、演算して上下限角度±θ1および2θ1を求め、表示手段16に表示するとともに記憶する。
【0036】
次に、第1実施形態のX線分析装置の動作とともに、本発明の第2実施形態のX線分析方法について説明する。直径200mmの試料Sの全反射蛍光X線分析に先立って、試料Sの360°の回折パターンを取得する。
【0037】
すなわち、試料Sが試料搬送手段(図示なし)によって図1に示す試料台8に載置される。試料Sが試料台8に載置された初期位置から平行移動手段12によって移動され、図8に示すように試料エッジからの散乱線の影響が少ない測定点E(R1、0)に設定される。回転手段11によって試料台8および試料Sを、試料Sの中心Oの周りに反時計方向に360°回転させながら、測定点EにX線源1から1次X線2を照射し、試料Sから発生する蛍光X線および回折X線を含んだ2次X線4を検出器7により検出する。これによって、図3に示す回折パターンが表示手段16に表示されるとともに制御手段15に記憶される。図3では、測定されたW−Lβ線(W)の回折パターンを示しており、横軸は試料Sの回転角度ω、縦軸はW−Lβ線のX線強度を表している。
【0038】
次に、測定者が入力手段19から演算記憶手段17に試料Sの半径Rを入力する。演算記憶手段17は試料Sの半径Rが入力されると、上記(1)式に基づいて、演算して上下限角度±θ1および2θ1を求め、表示手段16に表示するとともに記憶する。本実施形態では、検出器視野の半径Tが10mm、試料半径Rは100mmであり、θ1として64°、2θ1として128°が求まる。
【0039】
上記の例では、試料Sの半径Rを入力し、演算記憶手段17によって演算して上下限角度±θ1および2θ1を求めたが、結晶構造を有する試料Sであるシリコンウエーハ、液晶ガラス、ハードディスク、磁気ディスクなどは、半導体業界において、その直径は、50mm(2インチ)、76mm(3インチ)、100mm、125mm、150mm、200mm、300mmなどに規格化されているので、演算記憶手段17に試料直径に対応した上下限角度±θ1および2θ1を記憶させ、測定時にそれを読み出してもよい。
【0040】
次に、測定者が、表示手段16に表示された図3の回折パターンの中から回折X線の強度が低く、近接する角度位置において急激な強度増加を示さない、回折X線を回避する回避角度を選択手段18によって選択する。このとき、選択された回避角度の隣り合う角度位置の角度幅が、演算記憶手段17によって演算された角度範囲2θ1未満の角度、本実施形態では128°未満になるように、例えば、25°、95°、180°、260°、345°を選択する。選択手段18によって選択した回避角度を登録する。登録されると、制御手段15がその回避角度を測定条件として記憶し、表示手段16に表示された回折パターン上に回避角度25°、95°、180°、260°、345°のそれぞれの位置に縦線の回避角度マークが表示される。
【0041】
このように、選択された回避角度マークが回折パターン上に表示されるので、選択した回避角度の隣り合う角度位置の角度幅が128°未満の回避角度になっているか、否かを容易に視認することができる。さらに、角度幅が128°を超えている場合には、登録することができない。このように、角度幅を128°未満の回避角度に確実に設定できるようになっている。
【0042】
次に、測定を開始すると、制御手段15が記憶した回避角度の中から測定点のθ座標に最も近い回避角度ω1を読み出して、回転手段11によって回避角度ω1に試料Sを設定する。回転手段11によって試料Sが回避角度ω1に設定されると、測定点は検出器7の視野Vから反時計方向に角度ω1ずれるので、制御手段15が平行移動手段12を制御して、設定された回避角度ω1を維持した状態で試料Sを移動させて測定点を検出器7の視野Vの中心Pに合致させる。
【0043】
例えば、測定点F(100、−30)の測定を開始すると、制御手段15が記憶している回避角度の中から測定点Fのθ座標の角度位置に最も近い回避角度−15°(345°)を読み出して、回転手段11によって回避角度−15°に試料Sを設定する。回転手段11によって試料Sが−15°に回転されると、測定点Fは検出器7の視野Vから反時計方向に−15°ずれるので、図9に示すように、制御手段15が平行移動手段12を制御して、設定された回避角度−15°を維持した状態で試料Sを移動させて測定点Fを検出器7の視野Vの中心Pに合致させる。
【0044】
これにより、試料Sは回折X線を回避した回避角度−15°(345°)に設定され、試料Sの測定点FにX線源1から1次X線2が照射されて、試料Sから発生する2次X線4を検出器7により検出して分析する。その他の測定点についても座標に応じて、制御手段15が回転手段11を制御して試料Sからの回折X線を回避する回避角度25°、95°、180°、260°、345°に設定し、平行移動手段12を制御して試料Sの測定点を1次X線の照射位置に設定して分析する。試料Sの縁近傍以外の測定点についても同様にして分析される。
【0045】
直径200mmの試料Sについて説明したが、その他の直径の試料Sについても、同様に分析される。
【0046】
このように、第1の実施形態のX線分析装置および第2の実施形態の方法によれば、結晶構造を有する試料Sの直径Rに応じて試料Sの縁近傍ならびに試料S近傍の装置構造物から発生する散乱線および不純線を抑制回避するとともに、試料Sから発生する回折X線を回避することによって、簡単に精度のよい分析をすることができる。
【0047】
次に、本発明の第3実施形態のX線分析装置について説明する。図10に示すように、この装置は第1実施形態のX線分析装置の制御手段15と選択手段18とを備えず、それに換わって制御選択手段20を備え、その他の構成は同じであるので、異なる構成のみについて説明する。
【0048】
制御選択手段20は、試料Sを試料Sの所定点周りに回転手段11によって360°回転させながらX線源1から1次X線2を照射させ、試料Sから発生して検出器7に入射する2次X線4の強度を試料Sの回転角度と対応させた回折パターンを表示手段16に表示させ、その回折パターンを記憶する。記憶した回折パターン(図3)を所定のX線強度閾値で走査して、この閾値以下のX線強度が所定の角度範囲、例えば、3°〜5°にわたって存在していると、この所定の角度範囲の中心角度位置を回避角度として記憶する。この中心角度位置は、例えば、25°、95°、180°、260°、345°などである。
【0049】
制御選択手段20は、演算記憶手段17によって演算および/または記憶されたθ座標の上下限値、ならびに表示手段16に表示された回折パターンに基づいて、隣り合う間隔がθ座標の上下限値範囲内の角度であって、前記回折パターンにおいて所定の閾値以下のX線強度であって回折X線を回避できる回避角度ω1を選択して記憶し、試料Sの測定点の座標に応じて、前記記憶した回避角度ω1の中から測定点の座標に最も近い回避角度ω1を読み出して、その回避角度ω1に試料Sを設定するように回転手段11を制御する。回転手段11によって試料Sが回避角度ω1に設定されると、測定点は検出器7の視野Vから反時計方向に角度ω1ずれるので、制御選択手段20が平行移動手段12を制御して、設定された回避角度ω1を維持した状態で測定点を検出器7の視野Vの中心Pに移動させる。
【0050】
次に、第3実施形態のX線分析装置の動作とともに、第4実施形態のX線分析方法について説明する。第3実施形態の装置は、第1実施形態の装置の制御手段15と選択手段18とを備えず、それに換わって制御選択手段20を備え、その他の構成は同じであるので、異なる動作のみについて説明する。
【0051】
第1実施形態の装置では、測定者が表示手段16に表示された回折パターンの中から回折X線の強度が低く、近接する角度位置において急激な強度増加を示さない、回折X線を回避する回避角度を選択手段18によって選択したが、第3実施形態の装置では、制御選択手段20が回避角度を自動選択して記憶し、記憶した回避角度の中から測定点の座標に最も近い回避角度を読み出して、平行移動手段12と回転手段11とを制御して、その回避角度に試料Sを自動設定するとともに、設定された回避角度を維持した状態で測定点を検出器7の視野Vの中心Pに移動させて分析する。
【0052】
第3の実施形態のX線分析装置および第4実施形態の方法によれば、自動的に、結晶構造を有する試料Sの直径に応じて試料Sの縁近傍ならびに試料S近傍の装置構造物から発生する散乱線および不純線を抑制回避するとともに、試料Sから発生する回折X線を回避することによって、より簡単に精度のよい分析をすることができる。
【0053】
本実施形態のX線分析装置では、全反射蛍光X線分析装置について説明したが、全反射型でないエネルギー分散型蛍光X線分析装置、波長分散型蛍光X線分析装置などであってもよい。本発明は、結晶構造を有する試料Sから発生する散乱線および不純線を抑制回避し、回折X線を回避する必要のあるX線分析装置であればよく、例えば、蛍光X線分析装置、X線反射率測定装置、X線回折装置などが組み合わされた複合型のX線分析装置であってもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 X線源
2 1次X線
4 2次X線
7 検出器
8 試料台
11 回転手段
12 平行移動手段
15 制御手段
16 表示手段
17 演算記憶手段
18 選択手段
20 制御選択手段
S 試料
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶構造を有する円板状の試料が載置される試料台と、
試料に1次X線を照射するX線源と、
試料から発生する2次X線を検出する検出器と、
試料測定面の任意の位置に1次X線を照射させるように前記試料台を平行移動させる平行移動手段と、
試料測定面に垂直な軸を中心に前記試料台を回転させる回転手段と、
を備え、
試料の縁近傍にある任意の測定部位について、試料の上方の領域から1次X線が照射されて前記領域外へ反射するように位置させて測定するX線分析装置であって、
試料を試料の所定点周りに前記回転手段によって360°回転させながら前記X線源から1次X線を照射させ、試料から発生して前記検出器に入射する2次X線の強度を試料の回転角度と対応させた回折パターンを表示手段に表示させ、その回折パターンを記憶する制御手段と、
試料への1次X線の水平方向成分と同一方向を向いた仮想線であって、試料の測定面上における前記検出器の視野の外周に接する2つの仮想線が、試料のR−θ座標において試料の測定面上に位置することができる試料の平行移動範囲の上下限値のθ座標を、試料の直径ごとに、演算および/または記憶する演算記憶手段と、
測定者が前記演算記憶手段によって演算および/または記憶されたθ座標の上下限値、ならびに前記表示手段に表示された回折パターンに基づいて、隣り合う間隔がθ座標の上下限値範囲内の角度であって、回折X線を回避できる回避角度を選択するための選択手段と、
を備え、
前記制御手段が、測定者によって前記選択手段を用いて選択された回避角度を記憶し、試料の測定点の座標に応じて、前記記憶した回避角度の中から測定点の座標に最も近い回避角度を読み出して、前記回転手段を制御して前記読み出した回避角度に試料を設定し、前記平行移動手段を制御して試料の測定点を1次X線の照射位置に設定するX線分析装置。
【請求項2】
結晶構造を有する円板状の試料が載置される試料台と、
試料に1次X線を照射するX線源と、
試料から発生する2次X線を検出する検出器と、
試料測定面の任意の位置に1次X線を照射させるように前記試料台を平行移動させる平行移動手段と、
試料測定面に垂直な軸を中心に前記試料台を回転させる回転手段と、
を備え、
試料の縁近傍にある任意の測定部位について、試料の上方の領域から1次X線が照射されて前記領域外へ反射するように位置させて測定するX線分析装置であって、
試料を試料の所定点周りに前記回転手段によって360°回転させながら前記X線源から1次X線を照射させ、試料から発生して前記検出器に入射する2次X線の強度を試料の回転角度と対応させた回折パターンを表示手段に表示させ、その回折パターンを記憶する制御選択手段と、
試料への1次X線の水平方向成分と同一方向を向いた仮想線であって、試料の測定面上における前記検出器の視野の外周に接する2つの仮想線が、試料のR−θ座標において試料の測定面上に位置することができる試料の平行移動範囲の上下限値のθ座標を、試料の直径ごとに、演算および/または記憶する演算記憶手段と、
を備え、
前記制御選択手段が、前記演算記憶手段によって演算および/または記憶されたθ座標の上下限値、ならびに前記表示手段に表示された回折パターンに基づいて、隣り合う間隔がθ座標の上下限値範囲内の角度であって、前記回折パターンにおいて所定の閾値以下のX線強度であって回折X線を回避できる回避角度を選択して記憶し、試料の測定点の座標に応じて、前記記憶した回避角度の中から測定点の座標に最も近い回避角度を読み出して、前記回転手段を制御して前記読み出した回避角度に試料を設定し、前記平行移動手段を制御して試料の測定点を1次X線の照射位置に設定するX線分析装置。
【請求項3】
結晶構造を有する円板状の試料が載置される試料台と、
試料に1次X線を照射するX線源と、
試料から発生する2次X線を検出する検出器と、
試料測定面の任意の位置に1次X線を照射させるように前記試料台を平行移動させる平行移動手段と、
試料測定面に垂直な軸を中心に前記試料台を回転させる回転手段と、
を備え、
試料の縁近傍にある任意の測定部位について、試料の上方の領域から1次X線が照射されて前記領域外へ反射するように位置させて測定するX線分析装置を用いるX線分析方法であって、
前記試料台に載置された試料を前記回転手段によって試料の所定点周りに360°回転させながら1次X線を照射させ、試料から発生して前記検出器に入射する2次X線の強度を試料の回転角度と対応させた回折パターンを取得し、
試料への1次X線の水平方向成分と同一方向を向いた仮想線であって、試料の測定面上における前記検出器の視野の外周に接する2つの仮想線が、試料のR−θ座標において試料の測定面上に位置することができる試料の平行移動範囲の上下限値のθ座標を、試料の直径ごとに、演算して記憶し、
演算記憶されたθ座標の上下限値、および前記表示手段に表示された回折パターンに基づいて、隣り合う間隔がθ座標の上下限値範囲内の角度であって、回折X線を回避できる回避角度を選択し、前記回転手段によって前記選択した回避角度に試料を設定し、前記平行移動手段によって試料の測定点を1次X線の照射位置に設定して分析するX線分析方法。
【請求項1】
結晶構造を有する円板状の試料が載置される試料台と、
試料に1次X線を照射するX線源と、
試料から発生する2次X線を検出する検出器と、
試料測定面の任意の位置に1次X線を照射させるように前記試料台を平行移動させる平行移動手段と、
試料測定面に垂直な軸を中心に前記試料台を回転させる回転手段と、
を備え、
試料の縁近傍にある任意の測定部位について、試料の上方の領域から1次X線が照射されて前記領域外へ反射するように位置させて測定するX線分析装置であって、
試料を試料の所定点周りに前記回転手段によって360°回転させながら前記X線源から1次X線を照射させ、試料から発生して前記検出器に入射する2次X線の強度を試料の回転角度と対応させた回折パターンを表示手段に表示させ、その回折パターンを記憶する制御手段と、
試料への1次X線の水平方向成分と同一方向を向いた仮想線であって、試料の測定面上における前記検出器の視野の外周に接する2つの仮想線が、試料のR−θ座標において試料の測定面上に位置することができる試料の平行移動範囲の上下限値のθ座標を、試料の直径ごとに、演算および/または記憶する演算記憶手段と、
測定者が前記演算記憶手段によって演算および/または記憶されたθ座標の上下限値、ならびに前記表示手段に表示された回折パターンに基づいて、隣り合う間隔がθ座標の上下限値範囲内の角度であって、回折X線を回避できる回避角度を選択するための選択手段と、
を備え、
前記制御手段が、測定者によって前記選択手段を用いて選択された回避角度を記憶し、試料の測定点の座標に応じて、前記記憶した回避角度の中から測定点の座標に最も近い回避角度を読み出して、前記回転手段を制御して前記読み出した回避角度に試料を設定し、前記平行移動手段を制御して試料の測定点を1次X線の照射位置に設定するX線分析装置。
【請求項2】
結晶構造を有する円板状の試料が載置される試料台と、
試料に1次X線を照射するX線源と、
試料から発生する2次X線を検出する検出器と、
試料測定面の任意の位置に1次X線を照射させるように前記試料台を平行移動させる平行移動手段と、
試料測定面に垂直な軸を中心に前記試料台を回転させる回転手段と、
を備え、
試料の縁近傍にある任意の測定部位について、試料の上方の領域から1次X線が照射されて前記領域外へ反射するように位置させて測定するX線分析装置であって、
試料を試料の所定点周りに前記回転手段によって360°回転させながら前記X線源から1次X線を照射させ、試料から発生して前記検出器に入射する2次X線の強度を試料の回転角度と対応させた回折パターンを表示手段に表示させ、その回折パターンを記憶する制御選択手段と、
試料への1次X線の水平方向成分と同一方向を向いた仮想線であって、試料の測定面上における前記検出器の視野の外周に接する2つの仮想線が、試料のR−θ座標において試料の測定面上に位置することができる試料の平行移動範囲の上下限値のθ座標を、試料の直径ごとに、演算および/または記憶する演算記憶手段と、
を備え、
前記制御選択手段が、前記演算記憶手段によって演算および/または記憶されたθ座標の上下限値、ならびに前記表示手段に表示された回折パターンに基づいて、隣り合う間隔がθ座標の上下限値範囲内の角度であって、前記回折パターンにおいて所定の閾値以下のX線強度であって回折X線を回避できる回避角度を選択して記憶し、試料の測定点の座標に応じて、前記記憶した回避角度の中から測定点の座標に最も近い回避角度を読み出して、前記回転手段を制御して前記読み出した回避角度に試料を設定し、前記平行移動手段を制御して試料の測定点を1次X線の照射位置に設定するX線分析装置。
【請求項3】
結晶構造を有する円板状の試料が載置される試料台と、
試料に1次X線を照射するX線源と、
試料から発生する2次X線を検出する検出器と、
試料測定面の任意の位置に1次X線を照射させるように前記試料台を平行移動させる平行移動手段と、
試料測定面に垂直な軸を中心に前記試料台を回転させる回転手段と、
を備え、
試料の縁近傍にある任意の測定部位について、試料の上方の領域から1次X線が照射されて前記領域外へ反射するように位置させて測定するX線分析装置を用いるX線分析方法であって、
前記試料台に載置された試料を前記回転手段によって試料の所定点周りに360°回転させながら1次X線を照射させ、試料から発生して前記検出器に入射する2次X線の強度を試料の回転角度と対応させた回折パターンを取得し、
試料への1次X線の水平方向成分と同一方向を向いた仮想線であって、試料の測定面上における前記検出器の視野の外周に接する2つの仮想線が、試料のR−θ座標において試料の測定面上に位置することができる試料の平行移動範囲の上下限値のθ座標を、試料の直径ごとに、演算して記憶し、
演算記憶されたθ座標の上下限値、および前記表示手段に表示された回折パターンに基づいて、隣り合う間隔がθ座標の上下限値範囲内の角度であって、回折X線を回避できる回避角度を選択し、前記回転手段によって前記選択した回避角度に試料を設定し、前記平行移動手段によって試料の測定点を1次X線の照射位置に設定して分析するX線分析方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−52840(P2012−52840A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193677(P2010−193677)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【特許番号】特許第4884553号(P4884553)
【特許公報発行日】平成24年2月29日(2012.2.29)
【出願人】(000250339)株式会社リガク (206)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【特許番号】特許第4884553号(P4884553)
【特許公報発行日】平成24年2月29日(2012.2.29)
【出願人】(000250339)株式会社リガク (206)
【Fターム(参考)】
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