説明

X線源、X線撮像装置及びX線コンピュータ断層撮像システム

【課題】 複数のX線ビームを出射させるX線源を用いたX線撮像装置であって、干渉パターンの不均一さを軽減することを目的とする。
【解決手段】 X線撮像装置は、電子源とターゲットとを有するX線源と、X線源からのX線を回折する回折格子と、遮蔽格子からのX線を検出する検出器と、を備える。X線源のターゲットは複数の凸部を有し、複数の凸部の各々は出射面を有する。出射面は、電子源からの電子線が入射することにより、回折格子へ向かうX線を出射する。出射面から出射されたX線は、回折格子で回折されることにより、干渉パターンを形成する。ターゲットの複数の凸部は、複数の干渉パターンの明部同士及び暗部同士が互いに重なるように配列されていて、複数の出射面の各々と回折格子との距離が互いに等しいことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線撮像装置及びX線コンピュータ断層撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
X線タルボ干渉法はタルボ効果を利用したX線撮像方法である。回折格子にX線を照射すると、回折格子から特定の距離に自己像と呼ばれる干渉パターンが生じる。被検体をX線源と検出器との間に置くと、被検体によってX線の位相が変化する。そのため、被検体の位相情報をもつ干渉パターンが検出され、そこから被検体の位相像を得ることができる。
【0003】
タルボ干渉法で使用するX線には空間的可干渉性が求められる。空間的可干渉性はX線源のサイズが小さいほど高くなる。一方、得られる画像の輝度を上げたり、被検体の露光時間を短くしたりするために、使用するX線には強度も求められる。
【0004】
そこで、複数の細いX線ビームを発生させるX線源を用いてタルボ干渉法を行うことで、X線の空間的可干渉性と強度の両方を確保する方法が提案されている。
【0005】
非特許文献1には、細い溝が形成されたターゲットに電子線を照射することによって複数のX線ビームを発生させることができるX線源が記載されている。このX線源はターゲット上にX線を出射する面(以下、「X線出射面」あるいは単に「出射面」と呼ぶ場合がある。)を有する。このX線出射面に対して斜め方向に出射するX線ビームを利用して、X線出射面に対して垂直に出射するX線を利用する場合と比較して単位面積当たりのX線量を増加させている。
【0006】
なお、特許文献1にも、溝が形成されたターゲットに電子線を照射することによって単位面積当たりのX線量を増加させることができるX線源が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−158474号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「Japanese Journal of Applied Physics」2009年 第48巻 p.076512
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、非特許文献1に示す方法ではターゲット上の各々のX線ビーム出射面と回折格子との間の距離が一定でない。そのため、干渉パターンが不均一になり、正確な撮像が妨げられる可能性があるということが本発明者らの検討によって明らかになった。
【0010】
そこで本発明は、複数のX線ビームを出射させるX線源を用いたX線撮像装置であって、干渉パターンの不均一さを軽減し、より正確な撮像を可能にするX線撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
その目的を達成するために、本発明の一側面としてのX線撮像装置は、電子源とターゲットとを有するX線源と、前記X線源からのX線を回折する回折格子と、前記遮蔽格子からの前記X線を検出する検出器と、を備えた被検体を撮像するX線撮像装置であって、
前記ターゲットは複数の凸部を有し、前記複数の凸部の各々は出射面を有し、前記出射面は、前記電子源からの電子線が入射することにより、前記回折格子へ向かう前記X線を出射し、前記出射面から出射された前記X線は、前記回折格子で回折されることにより、干渉パターンを形成し、前記複数の凸部は、複数の前記干渉パターンの明部同士及び暗部同士が互いに重なるように配列され、複数の前記出射面の各々と前記回折格子との距離が互いに等しいことを特徴とする。
【0012】
本発明のその他の側面については、以下で説明する実施の形態で明らかにする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一側面としてのX線撮像装置によれば、複数のX線ビームを出射するX線源を用い、各々のX線ビーム出射面と回折格子との距離のばらつきが従来よりも軽減されたX線撮像装置を提供することができる。そのため、X線出射面と回折格子との距離のばらつきにより生じる干渉パターンの不均一さを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態1に係るX線撮像装置およびX線源の模式図。
【図2】本発明の実施形態1に係るターゲットの模式図。
【図3】本発明の実施形態1に係るターゲットの形状例の断面の模式図。
【図4】本発明の実施形態1に係る出射面と回折格子の距離について説明する模式図。
【図5】本発明の実施形態1に係るターゲットの形状と電子線の入射方向との関係を説明する模式図。
【図6】本発明の実施形態1に係るターゲットへ入射する電子線の密度と発生するX線の強度の関係を説明する模式図。
【図7】本発明の実施形態1に係るターゲットの形状と発生するX線の強度の関係を説明する模式図。
【図8】本発明の実施形態1に係る電子源を説明する模式図。
【図9】本発明の実施形態1に係るターゲットの第1変形例の模式図。
【図10】本発明の実施形態1に係るターゲットの第2変形例の模式図。
【図11】本発明の実施形態2に係るターゲットの模式図。
【図12】本発明の実施形態2に係るX線発生方法を説明する模式図。
【図13】本発明の実施形態2に係るX線源の変形例の模式図。
【図14】本発明の実施形態1に係るターゲットの第3変形例の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の好ましい実施形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。
なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
[実施形態1]
図1(a)は本実施形態におけるX線撮像装置の構成例である。図1(a)に示したX線撮像装置はX線源58と、X線源から出射したX線を回折する回折格子62と、回折格子で回折されたX線の一部を遮光する遮蔽格子64と、遮蔽格子を経たX線を検出する検出器66を備える。遮蔽格子は、回折格子からタルボ距離と呼ばれる特定の距離はなれて配置されている。
【0017】
X線源58から出射したX線10を回折格子62が回折すると、タルボ距離と呼ばれる特定の距離に回折格子62の形状を反映したタルボ自己像と呼ばれる干渉パターンが現れる。X線源58と回折格子62の間、または回折格子62と遮蔽格子64の間に被検体60がおかれると、被検体60によりX線10の位相がシフトするため、干渉パターンが被検体60の位相変化の情報を持つようになる。一般的に、この干渉パターンのピッチは検出器で検出するには小さいため、本実施形態では遮蔽格子を用いてモアレを形成させ、これを検出する。そのために、X線の一部を遮光する遮蔽格子64を干渉パターンが現れる位置、つまり回折格子からタルボ距離はなれた位置に配置してモアレを形成させ、このモアレを検出器66で検出する。検出したモアレを画像処理すると被検体60の位相像を得ることができる。
【0018】
図1(b)は図1(a)に示したX線源58の拡大図である。X線源は、電子源4と電子源から発生する電子線が入射するターゲット2とターゲット2で発生したX線をX線源外へ放出するX線窓6を有する。ターゲット2は電子源4から発生した電子線12が入射する出射面14(14a、14b)を複数持ち、出射面14(以下第1の面)が電子線12によって励起されることでX線10がし、X線窓6からX線がX線源外へ放出される。本明細書における第1の面とは、電子線が入射し、それによってX線を回折格子へ向かって出射することができる面のことを指し、第1の面は回折格子の垂線となす角度が0度を超え45度以下であることが好ましい。尚、X線源においては、第一の面は、電子線が入射し、それによってX線をX線窓へ向かって出射することができる面のことを指し、ターゲットの中心とX線窓の中心を結んだ線に平行な直線となす角度が0度を超え45度以下であることが好ましい。
【0019】
図2に本実施形態におけるターゲット2の模式図を示す。本実施形態におけるターゲット2は平板状のターゲット上に凸部を形成した形であり、第1の面14を含む面15と第2の面16を含む面17とが交互に繰り返される構造をとる。但し、本実施形態における第2の面とは、第1の面よりも入射する電子密度が低い面の事を指す。凸部の形状はこれに限定されない。図3に凸部がとることのできる形状の例を示した。図3(a)に示すように隣り合う凸部同士が接していなくても良く、図3(b)や(c)に示すように凸部が逆V字型をとらなくても良い。また、図3(d)に示すように凸部が曲面で構成されていても良い。
【0020】
図1(b)における第1の面14の距離P1、P11は、出射するX線の強度分布の距離となる。但し、第1の面14の距離とは第1の面14の中心間の距離のことであり、X線の強度分布の距離とはX線強度のピーク間の距離のことである。タルボ干渉法を用いる場合、第1の面14aから出射したX線が回折格子で回折されることにより形成する干渉パターンと第1の面14bから出射したX線が形成する干渉パターンの明部同士と暗部同士が互いに強めあうように重なる必要がある。よって、距離P1とP11はこの条件を満たす長さをとる。但し、干渉パターンの明部同士及び暗部同士は部分的に重なっていても良い。部分的に重なっているとは、第1の面14aから出射したX線が形成する干渉パターンの明部の一部と第1の面14bから出射したX線が形成する干渉パターンの明部の一部が重なっていることを指す。暗部同士の重なりも同様である。干渉パターンの明部同士及び暗部同士は重なっているほどより正確な撮像が可能になる。しかし、例えば、第1の面14aからのX線が形成する干渉パターンと第1の面14bからのX線が形成する干渉パターンとのズレが最大で干渉パターンのピッチの1/4以下であれば、タルボ干渉法に用いることができる。したがって、複数の第1の面(14a、14b、・・・)からのX線が形成する干渉パターンのズレは、最大で干渉パターンのピッチの1/4以下であることが好ましい。更に正確な撮像のためには、干渉パターンのズレが最大で干渉パターンのピッチの1/8以下であることが更に好ましく、1/20以下が最も好ましい。
【0021】
干渉パターンが互いに強めあうように重なるために、距離P1やP11は下記式のP0で現される値をとることが好ましい。P0=n×Ps×(L/d)。但し、Psは干渉パターンのピッチ、Lはターゲットから回折格子までの距離、dは回折格子から干渉パターンまでの距離、nは任意の正の整数である。Lについては後ほど説明をするが、dは回折格子の中心から干渉パターンの中心までの距離のことをさす。本実施形態のように遮蔽格子を用いる場合、干渉パターンのピッチとは遮蔽格子上における干渉パターンのピッチであり、回折格子から干渉パターンまでの距離とは回折格子の中心から遮蔽格子の中心までの距離を指す。遮蔽格子を用いずに直接干渉パターンを検出器で検出する場合、干渉パターンのピッチとは、検出器上における干渉パターンのピッチであり、回折格子から干渉パターンまでの距離とは回折格子の中心から検出器の検出面の中心までの距離を指す。
【0022】
第1の面14同士の距離は同一のターゲット2において一定であっても異なっていても良い。つまり、P1とP11の値は前述の式を満たせば異なっていても良く、nとして異なる正の整数をとることもできる。
【0023】
以下、図2に示すターゲット2を例にとって本実施形態の説明を行う。以下の説明においては、断りのない限り、図2の面15と17は、他の断面図においても対応する位置にあるものとする。
【0024】
図4に本実施形態における第1の面14と回折格子62の距離について説明をする模式図を示す。回折格子から第1の面の中心に向かって引かれる垂線18(18a、18b)の長さのことを、第1の面と回折格子との距離L(La、Lb)と呼ぶ。但し、垂線18の長さとは、回折格子の接面から第1の面の中心までの長さのことを指す。この時、回折格子の接面とは、第1の面に最も近い回折格子の表面に接する面である。本実施例では、第1の面14aと回折格子62距離Laと、第1の面14bと回折格子62の距離Lbが等しくなるようにターゲット2と回折格子62が配置されている。他の第1の面14と回折格子62の距離もLaと等しい。但し、第1の面を有する凸部の高さ(以下凸部の高さという事がある)程度の誤差が干渉パターンに与える影響は一般的に小さいため、無視できる。つまり、距離LaとLbの長さが凸部の高さ程度異なっていても、本明細書では距離LaとLbは等しいとみなす。
【0025】
ここで、ターゲット2において第1の面を有する複数の凸部の高さ(以下凸部の高さという事がある)の中心を結んでできる面を基準面20とする。前述の通り、複数の第1の面14と回折格子62の距離Lが互いに等しくなるようにターゲット2と回折格子62を配置すると、基準面20と回折格子62は平行である。但し、ここで言う平行とは完全な平行でなくても良い。上述した通り距離LaとLbは凸部の高さ程度異なっていても良いため、それに対応する程度の誤差であれば基準面20と回折格子62は平行であるとする。尚、第1の面と回折格子の距離Lが、基準面の20の四隅で等しければ基準面20と回折格子62は平行であるとみなす。但しここで言う等しいも、上述の凸部の高さ程度の誤差は許容するものとする。また、図4(b)に示したように、ターゲット上の電子が照射される領域である電子照射領域の中心200cとX線窓の中心6c中心を結んだ線と基準面は90度をなす。図4(a)と図4(b)では図面上の凸部全ての高さの中心を結んだ面を基準面として図示しているが、ターゲット上の全ての凸部の高さの中心を結んだ面でなく、2つ以上の凸部の中心を結んだ面であれば基準面とする。
【0026】
図5にターゲット2の形状と電子線の入射密度について説明をする図を示す。電子源4から発生した電子線12が照射されると、ターゲット2の凸部の構造に起因して電子線12の入射密度の大きい領域26と小さい領域28が存在することになる。
【0027】
本実施形態では、図5(a)に示すように面17とほぼ平行に電子線12をターゲット2へ入射させた。この時、第1の面は面15の全体である。面17は、第1の面である面15よりも入射する電子線12の密度が低いため、第2の面である。面17に比べて面15の方が入射する電子線12の密度が高くなり、その結果面15の方が強く励起される。
【0028】
図5(b)に示すように、電子線12と第1の面のなす角度が、面15と面17のなす角度よりも大きくとも良い。この場合、電子線12が入射しない領域30(30a、30b)が生じ、この領域30からのX線発生量はゼロに等しくなる。この時、面15において、領域30bは第1の面ではなく、領域26のみが第1の面である。このように、第1の面であるか否かは、ターゲットの形状だけでなく、電子線の入射方向にも左右される。
【0029】
以下、図5(a)に示すように面17とほぼ平行に電子線12をターゲット2へ入射させた場合を例にとって本実施形態の説明を行う。この時、面15の全体が第1の面である。
【0030】
図6と図7にターゲット2の形状、電子線の入射密度と出射するX線の強度の空間分布の関係を説明する図を示す。前述のように本実施形態において、電子線12は主に面15(第1の面14)に入射し、面17(第2の面16)にはほとんど入射しない。そのため、面15からはX線が出射するが、面17からはほとんど出射しない。
【0031】
ターゲット2の近傍で測定されるX線の強度分布40は、ターゲット表面の構造を反映し、第1の面14の距離(図1(b)に示すP1やP11)と同じ距離で強度が増減する強度分布となる。図6に示す強度の強い領域の幅38は、図7に示す、回折格子と平行な平面への投影面積71の幅で決定される。つまり、X線強度のピーク半値幅は、第1の面14と回折格子62の垂線18のなす角度θ1で決定される。角度θ1が0度に近いほど、投影面積71の幅は小さくなり、強度分布40におけるX線強度ピーク半値幅が減少する。一方、角度θ1が90度に近づくほど、強度分布40におけるピーク半値幅が増加する。第1の面14が曲面の場合、第1の面14の四隅を結んで出来る面を仮定して、その面と垂線18の角度をθ1として考える。以下、第1の面14と線や面との角度を規定する時に第1の面が曲面の場合は、同様に第1の面の四隅を結んで出来る面との角度を第1の面14と線や面との角度と考える。
【0032】
本実施形態において、第1の面14と回折格子62の垂線のなす角度θ1よりも、第1の面14とそこへ入射する電子線12の入射方向のなす角度θ2のほうが90°に近い。この時、第1の面14を電子線12の入射方向と垂直な平面へ投影すると形成される投影面積72よりも、第1の面14を回折格子と平行な平面へ投影すると形成される投影面積71の方が小さくなる。本発明において第1の面14と電子線12の入射方向とは、第1の面14に直線的に入射する1つの電子線12が入射する方向である。電子源と第1の面の間に電子線を偏向させるものがない場合は、第1の面14の中心部と、電子線源の電子線放出部の最短距離とみなすことができる。但し、レンズを用いて電子線を絞ってターゲット2に照射する場合のように、電子線12が収束もしくは拡散している場合、第1の面14へ入射する電子線12が第1の面14に入射する方向の平均を電子線12の入射方向とする。
【0033】
投影面積71は第1の面14が回折格子へ向けて出射するX線の断面積、投影面積72は第1の領域に入射する電子線12の断面積に相当する。第1の面14に入射する電子線12の断面積よりも第1の面14が回折格子へ向けて出射するX線の断面積の方が小さいという事は、第1の面14から出射するX線の単位面積当たりの強度を増加させる効果があることを意味する。この効果は投影面積71と72の大きさに差があるほど大きくなる。この効果を利用するため、第1の面は、電子線12の入射方向と垂直な平面への投影面積72よりも、回折格子と平行な平面への投影面積71の方が小さいことが好ましい。また、この効果によって、本実施例における第1の面14と第2の面16とから出射するX線の強度の差をより顕著にするために、第2の面は電子線12の入射方向と垂直な平面への投影面積よりも、回折格子と平行な平面への投影面積の方が大きいことが好ましい。
【0034】
前述の通り、第1の面14と回折格子の垂線18のなす角度θ1が0度に近いほど投影面積71は小さくなり、一方第1の面14と電子線12のなす角度θ2が90度に近いほど、投影面積72は大きくなる。これらのことを考慮すると、角度θ1は0度以上45度以下であることが好ましい。また、角度θ2は60度を超え、120度未満であることが好ましく、80度以上100度以下が更に好ましい。
【0035】
しかし、角度θ1が0度、すなわち第1の面と回折格子が垂直だと、第1の面の表面の細かな凹凸により、第1の面で発生したX線が第1の面自体によって吸収を受けるというヒール効果がおこるため、出射するX線の強度が減少する。これを考慮すると、第1の面14と回折格子の垂線18のなす角度θ1は0度を超えることが好ましく、更に3度以上であることがより好ましい。
【0036】
角度θ1が0度を超えて45度以下であり、角度θ2が60度を超えて120度未満である時、電子線12と基準面20のなす角θ3は0度を超え、75度未満である。また、基準面20と回折格子は平行なため、θ1が0度を超えて45度以下である時、基準面20と第1の面のなす角度は45度以上90度未満である。
【0037】
電子源4は、陽極を持たなくても良いが、陽極を持つ方がより好ましい。図8に電子源4とターゲット2との作用を説明する図を示す。電子線12は電界に沿って進む。電界は導体表面においては、表面の法線方向に接続することが知られている。図8(a)は陽極を持たない電子源とターゲット2の作用を示している。電子源が陽極を持たない場合、ターゲット2に陰極よりも高い電圧を印加することで陽極とし、電子線12を発生させる。ターゲット2の表面近傍では、ターゲット2の形状に沿う形で等電位面34が形成され、形状を反映した電界が発生する。そのため、第1の面14に向かって陰極32から直進した電子線12は、ターゲット2の近傍で曲がり、第2の面16へも入射する。
【0038】
図8(b)は、陰極32に加えて陽極36を持つ電子源とターゲット2の作用を示している。陽極36は電子線12が透過可能であればよく、網状や薄膜状や孔状のものを用いることができる。陰極32から発生した電子は陽極36との間で加速される。陽極36とターゲット2とを等電位にすると陽極36とターゲット2の間に電界は発生しない。そのため、陽極36を透過した電子線12はターゲット2の構造に依存することなく直線的な入射が可能になる。
【0039】
ターゲットは帯状の部分ターゲットを複数組み合わせて構成しても良い。1つの部分ターゲットにおける第1の面が配置されている方向とは垂直な方向に、複数の部分ターゲットを並べて1つのターゲットを構成することもできる。
【0040】
異なる材料からなる表面を持つ部分ターゲットを組み合わせてターゲット2を構成すると、出射するX線ビームに2次元の配列を持たせることもできる。図9に異なる材料からなる帯状の部分ターゲットを組み合わせて1つのターゲット2aとした例の模式図を示す。図9(a)が斜視図、(b)が平面図である。ターゲット2aは第1の部分ターゲット44と第2の部分ターゲット46とを交互につなぎ合わせて構成される。第1の部分ターゲットは電子線のエネルギーをX線へ変換する重金属でできており、第2の部分ターゲットは電子線のエネルギーをX線へ変換する変換率が第1の部分ターゲットよりも低い軽金属からできている。第1の部分ターゲットに用いられる重金属としては例えばモリブデン、タングステン、銀が挙げられ、第2の部分ターゲットに用いられる軽金属としては例えばカーボン、アルミニウム、ベリリウムが挙げられる。この軽金属は電子線が照射されてもX線をほとんど発生させないため、第2の部分ターゲットは電子線を照射してもX線をほとんど発生しない。そのため、面17に対して平行に電子線12を照射し、面15を励起すると、部分ターゲット44上の面15である第1の面14相当する個所以外からはほとんどX線が発生しない。その結果、出射するX線は二次元に配列した強度分布をとる。この時、X線ビームは面15の配列方向と平行及び垂直に配列の軸を持つ。第1の面14から出射するX線が形成する干渉パターンが互いに強めあうように、距離P2とP3は前述した式n×Ps×(L/d)で表される値をとる。また、P2とP3の値は等しくても異なっていても良い。第2の部分ターゲットはX線の発生にほとんど寄与しないため、特に形状は問わない。
【0041】
第1の面14を、面15の配列方向と垂直な方向に対して不連続に並べてターゲットを構成しても、出射するX線ビームに2次元の配列を持たせることができる。この時、ターゲット全体における第1の面の配列方向は、第1の部分ターゲットが並べられている方向に対して斜めであり、1つの前記第1の部分ターゲットにおける前記出射面の配列方向と交差し、第1の部分ターゲットが並べられている方向とも交差する。異なる材料からなる表面をもつ部分ターゲットを複数組み合わせ、且つ第1の面14を不連続に並べたターゲットを図10に示す。図10(a)が斜視図、(b)が平面図である。図10(a)に示したターゲット2bでは、第1の部分ターゲット44と第2の部分ターゲット46を1対組み合わせたものを1つの領域48としている。更に、隣り合う領域48同士を部分ターゲットの面15の配列方向に距離P4の半分ずらして並べている。面17に対して平行に電子線12を照射し、第1の面を励起すると、図9(a)で示したターゲット同様、第1の面14に相当する個所以外からはほとんどX線が発生しない。その結果2次元に配列した強度分布のX線が出射する。この時X線ビームの配列の軸は、面15の配列方向と45°傾いた軸となる。図10(a)に記載したターゲット2bの第1の面14に相当する個所から発生するX線が形成する干渉パターンが互いに強めあうように、距離P5は前述した式n×Ps×(L/d)で表される値をとる。この時距離P5はターゲット2において最も近くにある第1の面同士の距離のことを指す。
【0042】
隣り合う領域48同士の面15の配列方向のずれは距離P4の半分である必要はない。但し、発生した複数のX線ビームが回折格子62により回折されて形成する干渉パターンの明部同士及び暗部同士は重なり合う必要がある。
【0043】
複数の電子線源から電子線を出射し、第1の面へ入射させてもよい。複数の電子線源を用いることでより細かな電子線の制御を行う事が可能になる。またターゲットは反射型だけでなく、透過型のものを用いることもできる。透過型のターゲットを用い、1つの第1の面に対して1つ電子線源を配置したものを図14に示す。図14に示したX線源では、電子線源400からの電子線12が透過型ターゲットの第1の面140へ入射するとX線10が発生する。発生したX線はX線窓6からX線源外へ放出され、回折格子62に回折されて干渉パターンを形成する。但し、一般的に透過型のターゲットよりも反射型のターゲットを用いる方が冷却効率が良く、ターゲットの温度上昇を軽減することができるため、入力電力を増やすことができる。よって、反射型のターゲットを用いる方が好ましい。
【0044】
このように本実施形態では第1の面14(a,b,…)と回折格子62の距離(La、Lb、…)を等しくしたため、ターゲット上の各々のX線出射面と回折格子の距離が異なる撮像装置と比較して、干渉パターンの不均一さを軽減することができる。
【0045】
各々のX線出射面と回折格子の距離が異なると、各々のX線出射面から出射したX線ビーム毎に回折格子の拡大率(X線ビーム出射面と回折格子の距離/X線ビーム出射面と遮蔽格子の距離)が異なる。そのため、各々のX線出射面から出射したX線が形成する干渉パターンのピッチも異なり、一般的に夫々のX線ビームが形成する干渉パターンが重なり合って形成される干渉パターンが不均一になる。干渉パターンの中心から遠ざかるほどこの影響が大きくなるため、撮像範囲を大きくするためにはこの影響を軽減することが重要であり、本実施形態の撮像装置が有効である。
【0046】
[実施形態2]
以下図面11から13を用いて実施形態2の説明をする。
【0047】
実施形態2は、X線源のターゲットが回転型である点で実施形態1と異なる。X線源以外は実施形態1と同様なので説明は省略する。
【0048】
図11に本実施形態に用いられるターゲット102の模式図を示す。ターゲット102は円柱状であり、対称軸52を中心に回転可能な構造をとる。また、回折格子62は対称軸52と平行に配置されている。ターゲット102は円柱の側面に凸部を有する。凸部の配列方向は円柱の対称軸52に平行である。
【0049】
図12(a)に本実施形態のX線発生方法を説明する模式図を示す。電子線12の照射方向と凸部の面との関係、X線10の取り出し方向と強度分布の関係は実施形態1と同じである。
【0050】
電子線12は円筒の側面の有限な電子線照射領域53(以下照射領域)に照射し、照射領域53からのみX線が発生する。対称軸52を中心にターゲット102を回転させることで、電子線の熱は円柱側面全体に分散し、電子線の照射によるターゲットの温度上昇を軽減することができる。そのため、固定型のターゲットを用いた場合と比べて入力電力を増やすことができる。
【0051】
図12を用いて本実施形態における第1の面14と回折格子62の距離について説明をする。第1の面の配列方向と平行な方向に照射領域53の中心線55を引く。この中心線55上には複数の第1の面が存在する。中心線55上に存在する第1の面の中心へ向かって、回折格子62から垂線118aを引く。この垂線118の長さのことを第1の面と回折格子62との距離Lcと呼ぶ。実施形態1と同様に、垂線118の長さとは、回折格子の接面から第1の面の中心までの長さのことを指し、回折格子62と中心線55上に存在する複数の第1の面の距離はLcに等しい。対称軸52を中心にターゲット102を回転させても、回折格子62とターゲット102とに対して照射領域53を固定することで、X線が発生する第1の面と回折格子62の距離は一定に保たれる。
【0052】
また、本実施形態における基準面とは中心線55上の凸部の高さの中心を結んで出来る面である。実施形態1と同様に照射領域の中心53cとX線窓の中心106cを結んだ線は、基準面と90度をなし、垂線118と平行である。
【0053】
図13(a)に示すように、照射領域53が四角形の場合、出射するX線は41の様な1次元の配列の強度分布をとる。出射したX線は、1次元配列の強度分布のまま取り出しても良いし、図13(a)に示すように2次元配列へ変換して取り出しても良い。X線源はX線窓107に、X線を帯状に遮蔽するX線遮蔽部材54を有する。図13(b)にX線窓107の斜視図を示した。X線遮蔽部材の配列方向は第1の面の配列方向と直交しているため、X線41がX線窓107から取り出されると、強度分布56が得られる。発生した複数のX線ビームが回折格子62により回折されて形成する干渉パターンの明部同士及び暗部同士は重なり合う必要がある。そのため、X線遮蔽部材54の距離P02はn×Ps×(L2/d)で表される。但し、nは整数、Psは自己像のピッチ、L2は前記X線窓と前記回折格子の距離、dは前記回折格子と前記遮蔽格子の距離である。
【0054】
尚、X線遮蔽部材を有するX線窓を用いてX線ビームを2次元配列へ変換する方法は、実施形態1のような固定型のターゲットを用いた場合にも適用することが可能である。
【0055】
各実施形態のより具体的な実施例について説明する。
【実施例1】
【0056】
実施例1では、実施形態1のより具体的な実施例について説明する。
【0057】
本実施例において、凸部を有するターゲット2は、モリブデン板の表面にV字型の溝を切削加工することにより作製する。前記凸部は、前記第1の面14と前記回折格子の垂線18のなす角度θ1が6度、前記第2の面16と前記回折格子の垂線18のなす角度が84度で構成される。第1の面14と第2の面16とは90度をなす。
【0058】
第1の面は、複数の第1の面から出射するX線の干渉パターンが重なり合うような距離で配置される。本実施例においては、自己像における干渉パターンのピッチが2μm、Lが1.765m、dが27.77mm、としたので、n×Ps×(L/d)の式を満たすように、nを1として第1の面の距離を127μmで作成した。上述した角度と距離で凸部作製すると、凸部の高さは13.2μmになる。
【0059】
ターゲット2に対して、電子線12が第2の面16に平行に入射するように電子源4を設ける。この時、電子線12は第1の面14に対して垂直に入射する。電子源4は、タングステン製のフィラメントを陰極32と、タングステンメッシュ製の陽極36とで構成される。
【0060】
陽極36とターゲット2は0V、陰極32を−30kVに設定する。陰極32のフィラメントを加熱することで発生した電子を陰極32と陽極36との電界で加速し、電子線12が発生する。陽極36とターゲット2の間には電界がないため、電子線12はターゲット2に向かって第2の面16と平行に入射し、第1の面14のみが電子線12により励起される。励起された第1の面14からはX線10が等方的に出射する。回折格子の方向に設置された厚さ1mmのベリリウム製X線窓6からX線源の外へX線10が放出される。
【0061】
前述した通り、本実施例において回折格子の垂線と第1の面のなす角度は6度、電子線と第1の面のなす角度は90度である。この時、回折格子62の垂線の方向から見た場合に見える第1の面14の面積は、第1の面14に入射する電子線の方向から見た場合に見える第1の面14の面積と比較して約10分の1になる。結果、単位面積当たりのX線の強度が高まる。第2の面16がほとんど励起されないことと、第1の面14からの単位面積当たりのX線の強度が増加することで、出射するX線は1次元配列の強度分布をとる。1次元配列において、第1の面の配列方向のX線10の幅は1.3μm程度となる。
【0062】
X線10の配列の方向と回折格子の配列の方向を揃えることで、X線10は可干渉性を持つ。複数の第1の面14からのX線10の干渉パターンが重なり合い干渉パターンの強度が増加する。このタルボ自己像を検出し、回折格子62の前に置かれた被検体60の位相情報を取得する。
【実施例2】
【0063】
実施例2では、実施形態2をX線コンピュータ断層撮影システムに適用した場合のより具体的な実施例について説明をする。
【0064】
本実施例において、ターゲット102はモリブデンの円柱を用いる。円柱の直径は10cm、高さを2cmとする。モリブデンの円柱の側面に、円周方向に溝を切削加工することでターゲットの表面に凸部を作製する。凸部の角度、第1の面の距離と深さは実施例1と同様である。
【0065】
ターゲット102の対称軸52と回折格子の垂線118を含む面内において、電子線12が第1の面114に対して垂直に入射するように電子源4を設ける。電子源4は、実施例1と同様に、タングステン製のフィラメントを陰極32とタングステンメッシュ製の陽極36とで構成される。実施例1と同様に電子源4から電子線12を照射してターゲット2を励起し、X線10を発生させる。電子線12を照射する時は、対称軸52を中心に6000rpmでターゲット102を回転させる。回折格子の方向に設置された厚さ1mmのベリリウム製X線窓106からX線10をX線源外へ放出させ、タルボ干渉を利用して複数の方向から被検体60の位相情報を取得する。得られた複数の位相像をコンピュータ処理することで、被検体の断層像が得られる。
【0066】
尚、本明細書の発明を実施するための形態には遮蔽格子64と検出器66が独立して配置されているX線撮像装置を記載したが、遮蔽格子64と検出器66は一体化されていても良い。遮蔽格子は回折格子の自己像と重なってモアレを形成させるものであればよく、検出器はそのモアレを検出できればよい。例えば特開2008−224661に記載されている検出器を用いることもできる。遮蔽格子と検出器が一体になっている場合、モアレを形成させる部材と回折格子の距離をdとする。
【0067】
また、自己像を直接検出器で検出することができればモアレを形成させる必要はないため、遮蔽格子を用いなくても良い。自己像を直接検出器で検出するためには、回折格子のピッチやX線源から回折格子までの距離を大きくして自己像のピッチを大きくしたり、解像度の高い検出器を用いたりすれば良い。
また、自己像を直接検出する場合、自己像の明部同士と暗部同士は検出器の検出面上で互いに強めあうように重なれば良い。
【0068】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。従って、本発明の範囲を公にするために以下の請求項を添付する。
【符号の説明】
【0069】
2 ターゲット
4 電子源
10 X線
12 電子線
14 出射面
62 回折格子
64 遮蔽格子
66 検出器
P1〜P5 出射面の距離
P02 X線遮蔽部材の距離
P11 出射面の距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子源とターゲットとを有するX線源と、
前記X線源からのX線を回折する回折格子と、
前記回折格子からの前記X線を検出する検出器と、
を備えた被検体を撮像するX線撮像装置であって、
前記ターゲットは複数の凸部を有し、
前記複数の凸部の各々は出射面を有し、
前記出射面は、前記電子源からの電子線が入射することにより、前記回折格子へ向かう前記X線を出射し、
前記出射面から出射された前記X線は、前記回折格子で回折されることにより、干渉パターンを形成し、
前記複数の凸部は、複数の前記干渉パターンの明部同士及び暗部同士が互いに重なるように配列され、
複数の前記出射面の各々と前記回折格子との距離が互いに等しいことを特徴とするX線撮像装置。
【請求項2】
前記ターゲットは、前記出射面を有する複数の凸部の高さの中心を結んでできる基準面と前記回折格子とが平行になるように配列されていることを特徴とする請求項1に記載のX線撮像装置。
【請求項3】
複数の前記出射面は、前記回折格子の垂線となす角度が0度を超え45度以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のX線撮像装置。
【請求項4】
前記電子線は、前記出射面を有する複数の凸部の高さ方向の中心を結んでできる基準面に対して0度を超え75度未満で前記ターゲットへ入射することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のX線撮像装置。
【請求項5】
前記ターゲットは複数の第2の面を有し、前記複数の出射面に入射する電子線の密度は前記複数の第2の面に入射する電子線の密度よりも高いことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のX線撮像装置。
【請求項6】
前記ターゲットは反射型のターゲットであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のX線撮像装置。
【請求項7】
前記出射面は、下記式のP0で現わされる距離で前記ターゲット上に配列されていることを特徴とする請求項1乃至6に記載のX線撮像装置。
P0=n×Ps×(L/d)
但し、nは整数、Psは前記干渉パターンのピッチ、Lは前記ターゲットと前記回折格子の距離、dは前記回折格子と前記干渉パターンの距離である。
【請求項8】
前記X線源は発生したX線を前記X線源の外へ放出するためのX線窓を有し、
前記X線窓は発生したX線を遮蔽するX線遮蔽部材を有し、
前記X線遮蔽部材は下記式のP02で現わされる距離で前記X線窓に配列されており、前記X線遮蔽部材の配列方向が前記出射面の配列方向と直交していることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のX線撮像装置。
P02=n×Ps×(L2/d)
但し、nは整数、Psは前記干渉パターンのピッチ、L2は前記X線窓と前記回折格子の距離、dは前記回折格子と前記干渉パターンの距離である。
【請求項9】
前記ターゲットは、第1の部分ターゲットが複数組み合わされて構成されており、
前記第1の部分ターゲットは前記出射面を複数持ち、
前記出射面は前記電子線のエネルギーをX線へ変換する材料からなり、
1つの前記第1の部分ターゲットにおける前記出射面の配列の方向と垂直な方向に複数の前記第1の部分ターゲットが並べられており、
前記出射面は下記式のP0で表される距離で配列されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のX線撮像装置。
P0=n×Ps×(L/d)
但し、nは整数、Psは前記干渉パターンのピッチ、Lは前記ターゲットと前記回折格子の距離、dは前記回折格子と前記干渉パターンの距離である。
【請求項10】
前記ターゲットは複数の前記第1の部分ターゲットと、
前記電子線のエネルギーをX線へ変換する変換率が前記第1の部分ターゲットよりも低い材料からなる表面を持つ、複数の第2の部分ターゲットを有し、
1つの前記第1の部分ターゲットにおける前記出射面のピッチの方向と垂直な方向に複数の前記第1の部分ターゲットと前記第2の部分ターゲットが並べられており、
少なくとも、前記第1の部分ターゲットは前記式のP0で表される距離で配列されていることを特徴とする請求項9に記載のX線撮像装置。
【請求項11】
前記ターゲットにおける前記出射面の配列方向が、
前記第1の部分ターゲットにおける前記出射面の配列の方向と交差し、
且つ、前記第1の部分ターゲットが並べられている方向と交差する請求項9に記載のX線撮像装置。
【請求項12】
前記干渉パターンの明部同士及び暗部同士は、部分的に重なっていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載のX線撮像装置。
【請求項13】
被検体の断層像を求めるX線コンピュータ断層撮影システムであって、
請求項1乃至11のいずれか1項に記載のX線撮像装置と、
複数の異なる方向から前記X線撮像装置で前記被検体を撮像することで取得した該被検体の複数の位相像に基づいて、該被検体の断層像を求めるコンピュータと、を有することを特徴とするX線コンピュータ断層撮影システム。
【請求項14】
電子源とターゲットとを有するX線源と、
前記X線源からのX線を回折する回折格子と、
前記回折格子からの前記X線を検出する検出器と
を備えたX線撮像装置に用いられるX線源であって、
前記ターゲットは複数の凸部を有し、
前記複数の凸部は各々出射面を有し、
前記出射面は、
前記電子源からの電子線が入射することにより前記回折格子へ向かう前記X線を出射し、
前記出射面から出射されたX線は、前記回折格子で回折されることにより、干渉パターンを形成し、
前記複数の凸部は、複数の前記干渉パターンの明部同士及び暗部同士が互いに重なるように配列し、
複数の前記出射面の各々と前記回折格子との距離が互いに等しいことを特徴とするX線源。
【請求項15】
電子線を発生する電子源と、
前記電子線が入射するターゲットと、
前記ターゲットから出射されるX線をX線源外へ放出するX線窓と、を有するX線源であって、
前記ターゲットは複数の凸部を有し、
複数の前記凸部は各々出射面を有し、
前記出射面は、
前記電子源からの電子線が入射することにより前記X線窓へX線を出射し、
複数の凸部の高さの中心を結んでできる面を基準面とすると、
前記X線窓の中心と前記ターゲットの電子線照射領域における前記基準面の中心を結んだ線が、前記基準面に対して垂直であることを特徴とするX線源。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−32387(P2012−32387A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143204(P2011−143204)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】