説明

X線異物検出装置

【課題】簡単な操作によって被検査物に対するX線の照射角度を変更して容易にその照射角度を最適化し、さらに、装置サイズをコンパクトに維持する。
【解決手段】搬送面上の被検査物Wを所定の搬送方向Yに搬送する搬送手段5と、搬送面上を搬送される被検査物Wに向けてX線を照射するX線発生器18と、搬送面を挟んでX線発生器18と対向配置され、被検査物Wを透過してくるX線をX線検出面に受けるX線検出器19と、を備えるX線異物検出装置1において、搬送手段5が、搬送面を形成する搬送コンベア6を備えるとともに搬送面のX線検出面に対する角度が変更自在となるように傾斜可能に設けられ、且つ傾斜時に被検査物Wの側面を支持しながら被検査物Wの搬送をガイドするガイドコンベア12を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送面上の被検査物にX線を照射し、その透過量に基づいて当該被検査物に混入している異物を検出するX線異物検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のX線異物検出装置は、搬送コンベアなどの搬送手段によって搬送される被検査物に対して真上から鉛直下向きにX線を照射し、その下方に設けられたX線検出器で透過X線を受けて被検査物中の異物検出を行うものである。ところが、被検査物Wが例えばスティック状の冷菓Cなどを詰め合わせた箱体などである場合、真上からX線を照射するとX線の透過距離が長くなり、検出精度が低下することがあった(図5(a)参照)。
【0003】
また、下記特許文献1に開示されるX線異物検出装置は、搬送機構(搬送コンベア)によって水平方向に搬送される検査対象物に対して斜め上方からX線を照射するものである。例えば、この装置を用いて上述したような被検査物W(スティック状の冷菓Cを詰め合わせた箱体)の異物検出を行うと、鉛直下向きにX線を照射する場合に比べて各冷菓CごとのX線の透過距離が短くなるため検出精度が向上する(図5(b)参照)。
【特許文献1】特開2004−317184号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来のX線異物検出装置(上記特許文献1)では、図5(b)のようにX線を照射するX線発生器と、このX線発生器から照射されたX線を受けるX線検出器とが筐体内で斜め方向に対向配置されているため、筐体内におけるX線照射のための遮蔽空間を大きく設けなければならず、装置が大型化するという問題があった。
【0005】
また、上記特許文献1のX線異物検出装置では、被検査物のサイズなどに応じてX線の照射角度を最適に変更することができる。その場合、図5(b)からわかるようにX線を照射するX線発生器の位置を変えることにより、X線を受けるX線検出器も同時に位置を変えなければならず、X線の照射角度を変更する作業が煩雑となっていた。
【0006】
そこで本発明は、上記状況に鑑みてなされたもので、搬送手段を傾斜させるという簡単な操作によって被検査物に対するX線の照射角度を変更し、X線照射角度を容易に最適化できるようになり、また、X線発生器やX線検出器の位置は固定されるため、遮蔽空間を大きく設ける必要もなく、したがって、装置が大型化することもないX線異物検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載のX線異物検出装置は、搬送面上の被検査物Wを所定の搬送方向Yに搬送する搬送手段5と、
前記搬送面上を搬送される前記被検査物Wに向けてX線を照射するX線発生器18と、
前記搬送面を挟んで前記X線発生器18と対向配置され、前記被検査物Wを透過してくるX線をX線検出面に受けるX線検出器19と、を備えるX線異物検出装置1において、
前記搬送手段5は、前記搬送面を形成する搬送コンベア6を備えるとともに前記搬送面の前記X線検出面に対する角度が変更自在となるように傾斜可能に設けられ、且つ傾斜時に前記被検査物Wの側面を支持しながら該被検査物Wの搬送をガイドするガイド手段12を具備することを特徴としている。
【0008】
請求項2記載のX線異物検出装置は、前記ガイド手段12は、前記搬送面と直交する搬送面を形成するガイドコンベアを備えることを特徴としている。
【0009】
請求項3記載のX線異物検出装置は、前記搬送コンベア6と前記ガイドコンベア12とが共通の駆動源11を有することを特徴としている。
【0010】
請求項4記載のX線異物検出装置は、前記搬送手段5を傾斜させるアクチュエータ17を備えることを特徴としている。
【0011】
請求項5記載のX線異物検出装置は、前記搬送手段5に搬入される前記被検査物Wを検知するためのセンサを備え、
前記センサからの検知信号に基づいて前記アクチュエータ17を作動させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明による請求項1記載のX線異物検出装置によれば、搬送手段が傾斜可能に設けられているため、搬送手段を傾斜させるという簡単な操作によって被検査物に対するX線の照射角度を変更できる。これにより、被検査物のサイズなどに応じたX線照射角度を容易に最適化できるようになる。また、この場合、X線発生器やX線検出器の位置が固定されるため、筐体内の遮蔽空間を大きく設ける必要はなく、したがって、装置が大型化することもない。さらに、搬送手段の傾斜時に被検査物がガイド手段によって支持されるため、搬送手段が傾斜したときに被検査物が落下などすることを防止できるようになる。
【0013】
請求項2記載のX線異物検出装置によれば、搬送手段の傾斜時には、被検査物は搬送コンベアの他にガイドコンベアによっても搬送されるため、搬送手段による傾斜時の搬送をスムーズに行うことができる。
【0014】
請求項3記載のX線異物検出装置によれば、部品点数を抑えるという効果に加えて、搬送コンベアとガイドコンベアとを同期的に駆動させることができる。
【0015】
請求項4記載のX線異物検出装置によれば、搬送手段の傾斜動作を自動化することができる。
【0016】
請求項5記載のX線異物検出装置によれば、被検査物が搬送手段に搬入されることに伴い、搬送手段を自動的に傾斜させることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して具体的に説明する。
図1(a)は本発明によるX線異物検出装置の通常時の正面図、(b)は同側面図、図2(a)は同装置の搬送手段の傾斜時の正面図、(b)は同側面図、図3は搬送手段の傾斜構造の説明図、図4〜6は搬送手段の傾斜動作の斜視図である。
【0018】
この実施の形態のX線異物検出装置は、製造ラインの一部に設けられ、搬送される被検査物にX線を照射して、その透過量に基づいて該被検査物に混入している金属、ガラス、石、合成樹脂材などの異物を検出するものである。
【0019】
また、この実施の形態で異物検出を行う被検査物としては、例えばスティック状の冷菓などを詰め合わせた略矩形の箱体である(図4など参照)。
【0020】
図1,2に示すように、この実施の形態は、装置1本体となる箱型の筐体2を備えている。筐体2は四本の脚部3によって設置面上に支持されている。さらに、筐体2は、その内部から有害な量のX線が外部に漏洩しないように放射線防護材を用いて形成されている。また、筐体2の前面は開放されており、筐体2の前面には前面開口を閉塞するための開閉自在な扉4が設けられている。
【0021】
図1,2に示すように、搬送手段5は、筐体2を水平方向に略貫通するように設けられ、前段のコンベアから搬入されてきた被検査物Wを所定の搬送方向Y(水平方向)に搬送し、筐体2内を通過して、更に後段のコンベアに搬出するものである。
【0022】
図3〜6に示すように、搬送手段5は、搬送コンベア6と、ガイド手段12とで略構成されている。搬送コンベア6(ベルトコンベア)は、一対の主ローラ7,7と、一対の副ローラ8,8とに無端状のベルト9が掛け回されてなり、被検査物Wを搬送するための搬送面を形成している。また、主ローラ7と副ローラ8の間には各主、副ローラ7,8を連結するようにフレーム10が設けられている。さらに、一対の主ローラ7,7のうち一方は駆動源としての駆動モータ11に接続されている。
【0023】
ガイド手段12は、ガイドコンベア(ベルトコンベア)からなり、一対のローラ13,13に無端状のベルト14が掛け回されたものが、搬送コンベア6の一方の外側部に設けられるとともに、搬送コンベア6の搬送面と略直交して設けられている。また、ガイドコンベア12は、箱体状の被検査物Wの側面を支持するように搬送コンベア6の搬送面と直交した搬送面を形成している。さらに、一対のローラ13,13のうち一方は駆動源としての前記駆動モータ11に接続されている。なお、駆動モータ11は、その駆動軸11aにベベルギア15が設けられ、このベベルギア15と噛合する同径のベベルギア15がガイド手段12のローラ13に設けられている。これにより、両コンベア6,12を同期的に駆動させることができる。
【0024】
さらに、特に図3に示すように、搬送手段5は、その一方側部(ガイドコンベア12が設けられている側)に基端軸16が設けられ、これを軸として搬送コンベア6の搬送面の角度が変更自在となるように傾斜可能に設けられている。また、搬送手段5の基端軸16近傍には、搬送手段5を傾斜させるためのアクチュエータ17(例えばエアシリンダなど)が設けられている。
【0025】
また、図示しないが、搬送コンベア6の搬入端部には、搬送コンベア6(搬送手段5)に搬入されてきた被検査物Wを検知するための投光及び受光センサからなる一対のセンサが設けられている。この一対のセンサは、搬送方向Yと直交する方向に対向配置することで被検査物Wの搬入を検知することができる。さらに、この一対のセンサは、被検査物Wの搬入を検知すると前記アクチュエータ17の駆動制御を行う図示しない制御部に信号を出力し、アクチュエータ17を作動させる。
【0026】
次に、この実施の形態の光学系について説明する。図1,2に示すように、筐体2内には、X線発生器18と、X線検出器19とが設けられている。X線発生器18は、筐体2の上部に設けられ、金属製の箱内にX線を発生させるX線管が絶縁油に浸漬されてなり、搬送手段5によって搬送されてきた被検査物Wに向けてX線を照射する。なお、X線発生器18から照射されるX線の態様は、搬送方向Yと直交する面状となり、その面は下向きに拡がる略三角形状となっている。
【0027】
X線検出器19は、筐体2の下部に設けられ、搬送コンベア6の搬送面を挟んでX線発生器18と対向配置されている。X線検出器19は、フォトダイオードと、フォトダイオード上に配設されたシンチレータからなる図示しない多数の受光素子が搬送方向Yと直交する方向に一列に配設されたラインセンサを備えている。
【0028】
このような構成では、搬送コンベア6の搬送面上を搬送される被検査物Wに対してX線発生器18からX線が照射され、このX線照射に伴って被検査物Wを透過してくるX線がX線検出器19のシンチレータで光に変換される。シンチレータで変換された光はフォトダイオードで受光され、更に電気信号に変換されて外部コンピュータなどに出力される。そして、このX線検出器19からの出力と予め設定された各種異物ごとの判別用の閾値とを比較し、その結果に基づいて被検査物Wに混入している異物が検出される。
【0029】
ここから、図4〜6を参照して搬送手段の傾斜動作について説明する。
まず、図4に示すように、前段のコンベアから被検査物Wが搬送手段5に搬入される前では、搬送手段5の傾斜角度(被検査物Wが搬送される搬送コンベア6の搬送面のX線検出器のX線検出面に対する角度)は0°(水平状態)である。
【0030】
次に、図5に示すように、前段のコンベアから被検査物Wが搬送手段5にその搬入端部から搬入されると、図示しないセンサによって検知され、センサからの信号を受けて搬送手段5が所定角度θ(被検査物のサイズなどに応じた最適な角度)になるように傾斜動作を始める。このとき、搬送手段5は、少なくともX線の照射位置に被検査物Wが到達するまでに所定角度θとなればよい。また、搬送手段5の傾斜に伴って傾いた被検査物Wの下り側面は、ガイドコンベア12に支持されながら搬送ガイドされる。なお、搬送コンベア6とガイドコンベア12とは同期的に駆動しているため、各ベルト9,14の循環速度は等しくなる。
【0031】
次に、被検査物WがX線照射位置を過ぎると、傾斜した搬送手段5は徐々に水平状態に復帰し、被検査物Wが搬出端部に到達するときには完全な水平状態となる。
【0032】
そして、図6に示すように、水平状態となった搬送手段5から後段のコンベアに被検査物Wが搬出され、搬送手段5は次の被検査物Wが搬入されるまで待機状態となる。以下、搬送手段5は上述した動作を繰り返すことになる。
【0033】
上述した実施の形態によれば、搬送手段5が傾斜可能に設けられているため、搬送手段5を傾斜させるという簡単な操作によって被検査物Wに対するX線の照射角度を変更でき、被検査物Wのサイズなどに応じたX線照射角度を容易に最適化できるようになる。また、この場合、X線発生器18やX線検出器19の位置が固定されるため、筐体2内の遮蔽空間を大きく設ける必要はなく、したがって、装置1が大型化することもない。さらに、搬送手段5の傾斜時に被検査物Wがガイドコンベア12によって支持されるため、搬送手段5が傾斜したときに被検査物Wが落下などすることを防止できるようになる。さらに、傾斜時の被検査物Wの搬送をスムーズに行うことができる。
【0034】
また、搬送コンベア6と、ガイドコンベア12とを共通の駆動モータ11で駆動することにより、部品点数を抑えるとともに、両コンベア6,12を同期的に駆動できるようになる。
【0035】
さらに、被検査物Wが搬送手段5に搬入されるとセンサによって検知され、更にアクチュエータによって搬送手段5を自動的に傾斜させることができる。
【0036】
なお、上述した実施の形態では、被検査物Wの搬送中には搬送手段5が傾斜動作を繰り返す構成となっているが、例えば、搬送手段5は所定角度に傾斜させたまま、前段及び後段のコンベアを傾斜動作させるように構成してもよい。このような構成によれば、X線照射位置において被検査物は所定角度に傾いているため、上記した効果と同様の効果が得られる。
【0037】
また、上述した実施の形態では説明を省略したが、筐体2の側部には被検査物Wの出入口となる開口からX線が漏洩しないようにX線遮蔽部材が設けられている。このX線遮蔽部材は、傾斜動作を行う搬送手段5にも対応可能に形成されたものを用いる必要があり、例えば、搬送方向Yに長く突出した形状にするなど、搬送手段5の傾斜動作と干渉しないようなものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】(a)本発明によるX線異物検出装置の通常時の正面図である。 (b)本発明によるX線異物検出装置の通常時の側面図である。
【図2】(a)本発明によるX線異物検出装置の搬送手段の傾斜時の正面図である。 (b)本発明によるX線異物検出装置の搬送手段の傾斜時の側面図である。
【図3】搬送手段の傾斜構造を示す説明図である。
【図4】搬送手段の傾斜動作を示す斜視図である。
【図5】搬送手段の傾斜動作を示す斜視図である。
【図6】搬送手段の傾斜動作を示す斜視図である。
【図7】(a),(b)従来のX線異物検出装置によるX線照射状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0039】
1…X線異物検出装置
5…搬送手段
6…搬送コンベア
11…駆動源(駆動モータ)
12…ガイド手段(ガイドコンベア)
17…アクチュエータ
18…X線発生器
19…X線検出器
W…被検査物
Y…搬送方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送面上の被検査物(W)を所定の搬送方向(Y)に搬送する搬送手段(5)と、
前記搬送面上を搬送される前記被検査物に向けてX線を照射するX線発生器(18)と、
前記搬送面を挟んで前記X線発生器と対向配置され、前記被検査物を透過してくるX線をX線検出面に受けるX線検出器(19)と、を備えるX線異物検出装置(1)において、
前記搬送手段は、前記搬送面を形成する搬送コンベア(6)を備えるとともに前記搬送面の前記X線検出面に対する角度が変更自在となるように傾斜可能に設けられ、且つ傾斜時に前記被検査物の側面を支持しながら該被検査物の搬送をガイドするガイド手段(12)を具備することを特徴とするX線異物検出装置。
【請求項2】
前記ガイド手段(12)は、前記搬送面と直交する搬送面を形成するガイドコンベアを備えることを特徴とする請求項1記載のX線異物検出装置。
【請求項3】
前記搬送コンベア(6)と前記ガイドコンベア(12)とが共通の駆動源(11)を有することを特徴とする請求項2記載のX線異物検出装置。
【請求項4】
前記搬送手段(5)を傾斜させるアクチュエータ(17)を備えることを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載のX線異物検出装置。
【請求項5】
前記搬送手段(5)に搬入される前記被検査物(W)を検知するためのセンサを備え、
前記センサからの検知信号に基づいて前記アクチュエータ(17)を作動させることを特徴とする請求項4記載のX線異物検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−97966(P2009−97966A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−269252(P2007−269252)
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【出願人】(302046001)アンリツ産機システム株式会社 (238)
【Fターム(参考)】