説明

X線質量測定装置

【課題】連続体を被測定物として生産ラインに流した場合であっても、早期に連続体の一部である製品部分の質量の過不足を発見し作業効率の低下を防止することができるX線質量測定装置を提供すること。
【解決手段】搬送中の連続体に対しX線を照射するX線照射手段3と、連続体を透過したX線の透過量を検出するX線検出手段4と、検出されたX線の透過量に基づいて、所望の領域に対応する連続体に吸収されたX線吸収量を算出するX線吸収量算出手段34と、連続体に吸収されたX線吸収量から連続体の質量に換算するための質量換算係数を予め記憶する質量換算係数記憶手段42と、連続体の延在方向を分割するための分割領域22を設定する分割領域設定手段33と、連続体の分割領域22のX線吸収量と質量換算係数とに基づいて、連続体の分割領域22の質量を測定する質量測定手段35とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送中の被測定物にX線を照射してそのX線の透過量に基づいて、被測定物の質量を測定するX線質量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のX線質量測定装置は、食品工場等の生産ラインに組み込まれて、被測定物の質量を測定するようになっている。
【0003】
この種のX線質量測定装置として、被測定物を搬送する搬送路と、搬送路上の被測定物にX線を照射するX線源と、被測定物を透過したX線の透過量を検出するX線検出器とを備え、X線検出器に検出されたX線の透過量に基づいて被測定物の質量を測定するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載のX線質量測定装置は、搬送中の被測定物にX線源によりX線を照射し、被測定物を透過したX線の透過量をX線検出器により検出し、検出されたX線の透過量から被測定物に吸収されたX線吸収量を算出して、被測定物のX線吸収量から被測定物の質量に換算することにより被測定物の質量を測定するようになっている。
【特許文献1】特開2006−300887号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような従来のX線質量測定装置では、被測定物単位で質量を測定するため、被測定物が連続体の場合には、連続体の一部である製品部分の正確な質量を測定することができないという問題があった。したがって、連続体の一部である製品部分に質量の過不足が生じた場合に、当該製品部分が連続体から切り離された後でなければ、質量の過不足を発見することができず、製品部分の切り離しから質量が測定されるまでの作業工数が無駄となり作業効率が低下するという問題があった。例えば、帯状の食品生地のような連続体は、食品生地から複数の製品部分を切り離した後でなければ、製品部分の質量の過不足を発見することができず、特に製品部分をオーブンで長い時間をかけて焼成した後に質量を測定する場合には、作業効率が大幅に低下するという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、前述のような従来の問題を解決するためになされたもので、連続体を被測定物として生産ラインに流した場合であっても、早期に連続体の一部である製品部分の質量の過不足を発見し作業効率の低下を防止することができるX線質量測定装置を提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るX線質量測定装置は、上記目的を達成するため、(1)連続体を延在方向に搬送する搬送手段と、前記搬送手段により搬送中の前記連続体に対しX線を照射するX線照射手段と、前記連続体を透過した前記X線の透過量を検出するX線検出手段と、前記X線検出手段で検出された前記X線の透過量に基づいて、X線が前記連続体を透過した所望の領域に対応する前記連続体に吸収されたX線吸収量を算出するX線吸収量算出手段と、前記連続体に吸収されたX線吸収量から前記連続体の質量に換算するための質量換算係数を予め記憶する質量換算係数記憶手段と、前記連続体の延在方向を分割するための分割領域を設定する分割領域設定手段と、前記X線吸収量算出手段により算出される前記連続体の前記分割領域のX線吸収量と前記質量換算係数記憶手段に記憶された前記質量換算係数とに基づいて、前記連続体の前記分割領域における質量を測定する質量測定手段とを備えるよう構成する。
【0008】
この構成により、分割領域設定手段により連続体の延在方向の分割位置を指定して分割領域を設定できるため、X線吸収量算出手段により連続体の分割領域におけるX線吸収量が算出され、質量測定手段により分割領域のX線吸収量と質量換算係数とに基づいて、分割領域の質量が測定される。したがって、連続体の製品部分を分割領域として設定することにより、連続体の搬送中に製品部分を質量測定することができ、早期に製品部分の質量の過不足を発見することができる。その結果、連続体が下流に流れる前に、連続体から質量の過不足部分を取り除くことができるため、作業工数が無駄となることがなく作業効率を向上させることができる。なお、本発明に係る連続体とは、延在方向に複数の製品部分を含むものをいう。
【0009】
また、上記(1)に記載のX線質量測定装置は、(2)前記質量測定手段により測定された前記連続体の前記分割領域における質量を出力する出力手段をさらに備えるよう構成する。
【0010】
この構成により、出力手段により連続体の分割領域における質量を出力して、作業者に対して連続体の分割領域における質量を知らせて、早期に対応させることができる。なお、本発明に係る出力手段は、ディスプレイに質量を表示させる構成としてもよいし、印刷装置により質量を印刷させる構成としてもよいし、X線質量測定装置の上流または下流に配置された加工装置に対して電気通信により質量信号を出力する構成としてもよい。
【0011】
また、上記(1)または(2)に記載のX線質量測定装置は、(3)前記分割領域設定手段が、搬送方向下流に設置され、前記連続体を予め定められた寸法に切断する切断装置から出力された切断タイミングを示すカット信号に基づいて、前記連続体の延在方向を分割するための延在方向分割位置を設定する延在分割設定手段を有するよう構成する。
【0012】
この構成により、切断装置の切断タイミングに基づいてX線質量測定装置に分割領域の延在方向の寸法が設定されるため、切断装置で切断された製品部分の質量と連続体の分割領域における質量とを一致させることができる。したがって、製品部分が連続体から切り離される前に、当該製品部分の質量を精度よく測定することができる。
【0013】
また、上記(1)から(3)のいずれかに記載のX線質量測定装置は、(4)前記分割領域設定手段が、さらに前記連続体の幅方向を分割するための幅方向分割位置を設定する幅分割設定手段を有するよう構成する。
【0014】
この構成により、連続体の幅方向に複数の分割領域を設定することができる。特に、連続体の幅方向に複数の製品部分を含む場合に有用である。
【0015】
また、上記(1)から(4)のいずれかに記載のX線質量測定装置は、(5)前記質量測定手段により測定された前記連続体の前記分割領域における質量が所定の範囲内であるか否かを判定する質量判定手段と、前記質量判定手段によって前記連続体の前記分割領域における質量が所定の範囲外であると判定された場合に、その旨を報知する報知手段とをさらに備えるよう構成する。
【0016】
この構成により、分割領域の質量が所定の範囲外である旨が報知されるため、作業者に連続体が下流に流れる前に、連続体から質量の過不足部分を取り除かすよう促し、作業工数が無駄となることがなく作業効率を向上させることができる。
【0017】
また、上記(5)に記載のX線質量測定装置は、(6)前記連続体が帯状の食品生地であり、前記食品生地の幅方向の両端部を判定除外領域として設定する判定除外領域設定手段をさらに備え、前記質量判定手段は、前記分割領域の少なくとも一部に前記判定除外領域が含まれる場合に、当該分割領域の質量判定を禁止するよう構成する。
【0018】
この構成により、厚みが不安定な帯状の食品生地の幅方向の両端部を判定除外領域として設定しておくことで、分割領域の少なくとも一部に判定除外領域が含まれた場合に、質量判定手段による質量判定が禁止されるため、厚みが不安定な食品生地の幅方向の両端部を除いて質量判定を適切に行うことができる。
【0019】
また、上記(1)から(5)のいずれかに記載のX線質量測定装置は、(7)前記連続体は、内容物を収容した複数の包装体が帯状に連なった連包であって、前記質量換算係数記憶手段には、単一の前記包装体について前記質量換算係数が記憶されており、前記内容物を収容していない単一の包装体の質量を示す空袋質量を予め記憶する空袋質量記憶手段をさらに備え、単一の前記包装体を前記分割領域とした場合に、前記質量測定手段は、前記X線吸収量算出手段により算出される前記分割領域のX線吸収量と前記質量換算係数記憶手段に記憶された質量換算係数と前記空袋質量記憶手段に記憶された前記空袋質量とに基づいて前記包装体に収容されている内容物の質量を測定するよう構成されている。
【0020】
この構成により、連続体が連包である場合であっても、単一の包装体を分割領域に設定することで、X線吸収量算出手段により単一の包装体に吸収されたX線吸収量を算出し、質量換算係数記憶手段に記憶された質量換算係数と、空袋質量記憶手段に記憶された空袋質量とに基づいて包装体に収容されている内容物の質量を測定することができる。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に係るX線質量測定装置によれば、分割領域設定手段により連続体の延在方向の分割位置を指定して分割領域を設定できるため、X線吸収量算出手段により連続体の分割領域におけるX線吸収量が算出され、質量測定手段により分割領域のX線吸収量と質量換算係数とに基づいて、分割領域の質量が測定される。したがって、連続体の製品部分を分割領域として設定することにより、連続体の搬送中に製品部分を質量測定することができ、早期に製品部分の質量の過不足を発見することができる。その結果、連続体が下流に流れる前に、連続体から質量の過不足部分を取り除くことができるため、作業工数が無駄となることがなく作業効率を向上させることができる。
【0022】
請求項2に係るX線質量測定装置によれば、さらに、出力手段により連続体の分割領域における質量を出力して、作業者に対して連続体の分割領域における質量を知らせて、早期に対応させることができる。
【0023】
請求項3に係るX線質量測定装置によれば、さらに、切断装置の切断タイミングに基づいてX線質量測定装置に分割領域の延在方向の寸法が設定されるため、切断装置で切断された製品部分の質量と連続体の分割領域における質量とを一致させることができる。したがって、製品部分が連続体から切り離される前に、当該製品部分の質量を精度よく測定することができる。
【0024】
請求項4に係るX線質量測定装置によれば、さらに、連続体の幅方向に複数の分割領域を設定することができる。
【0025】
請求項5に係るX線質量測定装置によれば、さらに、分割領域の質量が所定の範囲外である旨が報知されるため、作業者に連続体が下流に流れる前に、連続体から質量の過不足部分を取り除かすよう促し、作業工数が無駄となることがなく作業効率を向上させることができる。
【0026】
請求項6に係るX線質量測定装置によれば、さらに、厚みが不安定な帯状の食品生地の幅方向の両端部を判定除外領域として設定しておくことで、分割領域の少なくとも一部に判定除外領域が含まれた場合に、質量判定手段による質量判定が禁止されるため、厚みが不安定な食品生地の幅方向の両端部を除いて質量判定を適切に行うことができる。
【0027】
請求項7に係るX線質量測定装置によれば、さらに、連続体が連包である場合であっても、単一の包装体を分割領域に設定することで、X線吸収量算出手段により単一の包装体に吸収されたX線吸収量を算出し、質量換算係数記憶手段に記憶された質量換算係数と、空袋質量記憶手段に記憶された空袋質量とに基づいて包装体に収容されている内容物の質量を測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図1から図5を参照して本発明の第1の実施の形態について説明する。
【0029】
(第1の実施の形態)
まず構成について説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るX線質量測定装置1の外観斜視図である。また、図2は、本発明の第1の実施の形態に係るX線質量測定装置1の全体構成図である。
【0030】
図1および図2に示すように、X線質量測定装置1は、食品工場の生産ラインの一部に組み込まれ、生産ラインを流れてくる搬送物の質量をX線の透過量に基づいて測定するものであり、搬送手段としての搬送部2と、X線照射手段としてのX線照射部3と、X線検出手段としてのX線検出部4と、投受光部5と、制御部6と、表示部7と、操作部8とから構成されている。なお、本実施の形態では、搬送部2に搬送される搬送物として、連続体としての帯状の食品生地W1を例にあげて説明する。
【0031】
搬送部2は、4つのローラ11a、11b、11c、11dと、これらローラに掛け渡された搬送ベルト12とにより構成されている。ローラ11aは、駆動モータ13に接続されており、搬送部2は、駆動モータ13の駆動によりローラ11aが回転し、一定の速度で帯状の食品生地W1を搬送するようになっている。また、駆動モータ13の駆動は、制御部6に制御されている。
【0032】
X線照射部3は、搬送部2の上方に設けられ、上方から食品生地W1に対してX線を照射するようになっている。X線照射部3は、図示しない金属製の箱体内部にX線管が設けられており、X線管の陰極からの電子ビームを陽極ターゲットに照射させてX線を発生させるようになっている。X線管は、搬送方向に延在するように設けられており、箱体の底面には、X線管の延在方向に対して直行する方向にスリットが形成されている。そして、X線管により発生されたX線は、スリットを介して搬送部2上の食品生地W1に対して略三角形のスクリーン状に照射されるようになっている。
【0033】
X線検出部4は、搬送部2の上方に設けられたX線照射部3に対向するようにして搬送部2の下方に設けられ、X線照射部3により照射された食品生地W1を透過したX線の透過量を検出するようになっている。このX線検出部4は、幅方向にライン状に配設された複数の検出素子15を備えたアレイ状のラインセンサが用いられている。検出素子15は、幅方向に等間隔のピッチで配設され、食品生地W1の搬送に伴ってスキャンするようになっている。
【0034】
検出素子15は、図示しないフォトダイオードと、フォトダイオード上に設けられた図示しないシンチレータとから構成され、シンチレータは、X線のエネルギーを吸収して発光するようになっている。フォトダイオードは、受光した光を検出信号に変換し、制御部6に出力するようになっている。X線検出部4は、食品生地W1にX線照射部3からX線が照射されると、食品生地W1を透過したX線をシンチレータが光に変換し、変換された光をフォトダイオードが検出信号に変換して制御部6に出力するようになっている。
【0035】
また、単一の検出素子15に対応した食品生地W1の表面の領域を透過領域21とすると、透過領域21は検出素子15の配設ピッチやスキャン速度に基づいて区画されるようになっている。以下、図3(a)、(b)を参照して透過領域21について説明する。
【0036】
図3(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る透過領域21の幅方向の寸法の説明図である。図3(b)は、本発明の第1の実施の形態に係る透過領域21の斜視図である。
【0037】
図3(a)に示すように、食品生地W1の表面上に区画される透過領域21の幅方向の寸法は、X線がX線照射部3から食品生地W1に略三角形のスクリーン状に照射されるため、食品生地W1の下方に位置する検出素子15のピッチよりも短くなるようになっている。透過領域21の幅方向の寸法は、X線検出部4の検出素子15のピッチに、X線照射部3から食品生地W1の表面までの距離とX線照射部3からX線検出部4までの距離との比率を乗算することにより算出される。具体的には、X線照射部3から食品生地W1の表面までの距離を480mm、X線照射部3からX線検出部4までの距離を500mm、検出素子15のピッチを0.4mmとすると、0.4×480/500=0.384mmが透過領域21の幅方向の寸法として算出される。
【0038】
一方、食品生地W1の表面上に区画される透過領域21の搬送方向の寸法は、搬送速度をスキャン速度で除算することにより算出される。したがって、透過領域21を正方形に区画するためには、透過領域21の搬送方向の寸法を幅方向の寸法に合わせるようにスキャン速度が制御されるようになっている。具体的には、搬送速度を400mm/秒とすると、上記したように透過領域21の幅方向の寸法が0.384mmであるため透過領域21の搬送方向の寸法を0.384mmとし、400/0.384=1041回/秒がスキャン速度として算出される。
【0039】
このように、X線検出部4におけるスキャン速度が制御されることにより、図3(b)に示すように、食品生地W1の表面に0.384×0.384mmの正方形の透過領域21が複数区画されるようになっている。なお、搬送部2の搬送速度およびX線検出部4のスキャン速度は、制御部6に制御されるようになっている。
【0040】
図1および図2に戻り、投受光部5は、投光部17と受光部18とから構成され、投光部17および受光部18は、搬送部2を挟んで対向するようにして配置されている。受光部18は、投光部17からの光を検知しており、食品生地W1の前端が投光部17からの光を遮光して受光部18が光を検知できなくなることで、食品生地W1の搬入を検知するようになっている。投受光部5は、食品生地W1の前端を検知すると、X線検出部4に搬入検知信号を出力し、搬入検知信号は、X線検出部4によるX線の透過量の検出開始のタイミングに利用される。
【0041】
操作部8は、X線質量測定装置1の設定情報を入力するための各種キーやスイッチから構成され、搬送部2の搬送速度、X線照射部3のX線照射量、X線質量測定装置1の動作モード、分割領域22の設定情報、食品生地W1上に分割領域22を指定するための後述する領域設定座標系25の設定情報等を入力するようになっている。また、制御部6には、食品生地W1を分割する各種分割領域22の周縁形状や各分割領域22の食品生地W1上の配置レイアウトが記憶されており、操作部8の操作により各種分割領域22の周縁形状や配置レイアウトを選択することができるようになっている。さらに、操作部8の操作により食品生地W1の幅方向の両端部の質量判定を禁止する判定除外領域23を入力することができるようになっている。
【0042】
なお、分割領域22の周縁形状は、一般的に製品部分の形状として用いられる矩形や円形以外にも食品生地W1から切り離される製品部分の輪郭に応じて多角形等の複雑な形状を選択することも可能である。また、操作部8によりX線質量測定装置1の設定情報を入力する構成に加えて、外部記憶媒体から設定情報を入力する構成としてもよい。
【0043】
表示部7は、いわゆる液晶ディスプレイであり、X線質量測定装置1の設定情報、食品生地W1の分割領域22における質量、領域設定座標系25、分割領域22の周縁形状や配置レイアウト等の各種情報を表示するようになっている。つまり、作業者は、表示部7を参照しながら操作部8によりX線質量測定装置1の各種設定情報を入力するようになっている。
【0044】
制御部6は、モード切換部31と、透過量入力部32と、分割領域設定手段としての分割領域設定部33と、X線吸収量算出手段としてのX線吸収量算出部34と、質量測定手段としての質量測定部35と、出力手段としての出力部36と、判定除外領域設定手段としての判定除外領域設定部37と、質量判定手段としての質量判定部38と、報知手段としての報知部39とを有している。なお、各部は、制御部6に組み込まれたCPU(Central Processing Unit)がROM(Read Only Memory)内の各種プログラムに従ってRAM(Random Access Memory)内のデータを演算し、さらにX線質量測定装置1の各部と協働して処理を実行することにより実現されるようになっている。
【0045】
また、制御部6は、透過量データ記憶部41と、質量換算係数記憶手段としての質量換算係数記憶部42と、分割領域アドレスデータ記憶部43と、判定除外領域アドレスデータ記憶部44と、判定閾値記憶部45とを有している。なお、各記憶部は、RAMの一部により構成されている。
【0046】
モード切換部31は、分割領域質量測定モードと質量換算係数算出モードとの間でX線質量測定装置1の動作モードを切り換えるようになっている。分割領域質量測定モードは、食品生地W1の分割領域22における質量を測定するモードであり、質量換算係数算出モードは、食品生地W1のX線吸収量から質量に換算するための質量換算係数を食品生地W1のマスターワークから算出するモードである。なお、本実施の形態におけるマスターワークとは、食品生地W1と同一の物性を有するものであり、例えば、食品生地W1から切り取られた一部のことをいう。
【0047】
透過量入力部32は、X線検出部4の各検出素子15からの透過量の検出信号をそれぞれA/D変換により透過量データに変換し、X線検出部4の各検出素子15の配設ピッチに対応する単位搬送時間毎に、透過量データを透過量データ記憶部41に入力するようになっている。具体的には、透過量入力部32は、X線検出部4のスキャンに合わせて透過領域21毎にアドレスデータを生成し、各透過領域21のアドレスデータに対応させて透過量データを透過量データ記憶部41に書き込むようになっている。
【0048】
分割領域設定部33は、食品生地W1の延在方向を分割する延在方向分割位置を設定する延在分割設定手段としての延在分割設定部33aと、食品生地W1の幅方向を分割する幅方向分割位置を設定する幅分割設定手段としての幅分割設定部33bとを備えている。分割領域設定部33は、操作部8により操作されて、延在分割設定部33aおよび幅分割設定部33bにより延在方向分割位置および幅方向分割位置を設定することにより、食品生地W1から切り離される製品部分の輪郭を周縁形状とする分割領域22を設定するようになっている。なお、分割領域設定部33により設定される分割領域22の詳細については後述する。
【0049】
X線吸収量算出部34は、各透過領域21におけるX線の透過量から透過領域21のX線吸収量を算出し、合算することで所望の領域におけるX線吸収量を算出するようになっている。すなわち、透過領域21の面積は、食品生地W1の最小単位面積を示しており、食品生地W1の各透過領域21のX線吸収量を算出し、所望の領域を構成する各透過領域21を合算することにより所望の領域におけるX線吸収量を算出することができるようになっている。
【0050】
ここで、X線の透過量と厚みとの関係について説明する。X線の照射量をI、X線の透過量をI、X線の吸収率をμ、食品生地W1の透過領域21における厚みをXとすると、食品生地W1の透過領域21のX線吸収量Tは、次式(1)が成り立つ。
T=(logI‐logI)=μX (1)
式(1)は、X線吸収量TがX線の照射量IとX線の透過量Iとの差分であることを示している。また、X線の照射量IはX線吸収量がゼロであるときのX線の透過量と一致する。すなわち、搬送ベルト12上に食品生地W1が無い状態で検出したX線の透過量がX線の照射量Iとなるようになっている。
【0051】
また、X線の吸収率μは、λをX線波長、ρを食品生地W1の密度、Zを原子番号、Cを定数とすると、次式(2)の関係を有している。
μ=λρZC (2)
【0052】
一方、透過領域21における食品生地W1の質量Mは、透過領域21における厚みXに透過領域21の面積Sを乗じた体積Vに対し、密度ρを乗じた値であるから、質量MとX線吸収量Tの関係は次式(3)のようになる。
T=λZC・M/S (3)
式(3)は、X線吸収量Tとその面積の積が、質量に比例することを示している。
【0053】
また、式(3)の透過領域21の面積Sは、食品生地W1の最小単位面積を示しているから、所望の大きさの領域における質量mとX線吸収量Tとの関係は、1/λZCを質量換算係数αに置き換えて表すと式(3)から次式(4)のようになる。
m=α・ΣT (4)
つまり、X線照射条件および物性が同じならば質量換算係数αは一定値となり、所望の領域における質量mは、所望の領域内の透過領域21毎に算出されるX線吸収量Tを合算して、これに質量換算係数αを乗算して求めることができる。
【0054】
X線吸収量算出部34は、X線質量測定装置1の動作モードが分割領域質量測定モードの場合には、透過量データ記憶部41に書き込まれた透過量データのうち分割領域22を構成する各透過領域21に対応した透過量データを読み出し、上記した式(1)から分割領域22内の各透過領域21のX線吸収量を算出し、合算することにより分割領域22のX線吸収量を算出するようになっている。
【0055】
一方、X線質量測定装置1の動作モードが質量換算係数算出モードの場合には、マスターワーク全体を構成する各透過領域21に対応した透過量データを読み出し、上記した式(1)からX線吸収量を算出し、合算することによりマスターワーク全体のX線吸収量を算出するようになっている。
【0056】
質量測定部35は、X線吸収量算出部34により算出された食品生地W1の分割領域22のX線吸収量と予め質量換算係数記憶部42に記憶された質量換算係数を乗算することにより、分割領域22の質量を測定するようになっている。
【0057】
質量換算係数は、図外の秤により測定されたマスターワークの質量が、質量換算係数算出モードの状態で算出されたマスターワークの全体のX線吸収量により除算されることにより算出されるようになっている。算出された質量換算係数は、質量換算係数記憶部42に記憶される。
【0058】
出力部36は、質量測定部35により測定された分割領域22の質量を出力して表示部7に表示させるようになっている。なお、本実施の形態に係る出力部36は、表示部7に質量を表示させる構成に限らず、図外の印刷装置により質量を印刷物として出力させる構成としてもよいし、X線質量測定装置1の上流または下流に配置された図外の加工装置に対して質量信号を出力する構成としてもよい。
【0059】
出力部36が分割領域22の質量を印刷装置により印刷物として出力する場合には、紙媒体で分割領域22の質量を保管しておくことができるようになっている。また、出力部36が質量信号を加工装置に出力する場合には、出力した質量信号に基づいて加工装置の駆動制御を行うことができるようになっている。
【0060】
質量判定部38は、分割領域22の質量に過不足が生じるか否かの判定基準となる判定閾値を判定閾値記憶部45から読み出し、質量測定部35により測定された分割領域22の質量が判定閾値により規定される許容範囲内にあるか否かを判定するようになっている。
【0061】
報知部39は、質量判定部38により分割領域22の質量が許容範囲外であると判定された場合に、その旨を報知するようになっている。このように、報知部39により分割領域の質量が許容範囲外である旨が報知されるため、作業者に連続体が下流に流れる前に、連続体から質量の過不足部分を取り除かすよう促し、作業工数が無駄となることがなく作業効率を向上させることができる。この場合、表示部7に分割領域22の質量が許容範囲外である旨を表示させる構成に限らず、音声により報知させる構成としてもよい。
【0062】
判定除外領域設定部37は、操作部8により操作されて、食品生地W1の幅方向の両端部を判定除外領域23として設定するようになっている。判定除外領域23が設定されると、分割領域22の一部に判定除外領域23が含まれる場合に、質量判定部38による分割領域22の質量判定が禁止されるようになっている。
【0063】
このように、厚みが不安定な帯状の食品生地W1の幅方向の両端部を判定除外領域23として設定しておくことで、分割領域22の少なくとも一部に判定除外領域23に含まれることがなく、厚みが不安定な食品生地W1の幅方向の両端部を除いて、分割領域22の質量判定を適切に行うことができるようになっている。また、判定除外領域23を食品生地W1の幅方向の両端だけでなく、搬送方向の前端についても設定可能としてもよい。
【0064】
透過量データ記憶部41には、上述したように透過量入力部32により各透過領域21において入力された透過量データと各透過領域21のアドレスデータとが関連付けられて記憶されている。この透過量データ記憶部41に記憶された透過領域21のアドレスデータを指定することにより、透過量データ記憶部41から所望の透過領域21の透過量データを読み出すことができるようになっている。
【0065】
質量換算係数記憶部42には、マスターワークの質量換算係数が記憶されている。分割領域アドレスデータ記憶部43および判定除外領域アドレスデータ記憶部44には、分割領域22および判定除外領域23のアドレスデータが記憶されている。判定閾値記憶部45には、分割領域22の質量の過不足の判定基準となる判定閾値が記憶されている。
【0066】
図4(a)、(b)、(c)を参照して、分割領域設定部33により設定される分割領域22および判定除外領域設定部37により設定される判定除外領域23について説明する。
【0067】
図4(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る領域設定座標系25の模式図である。図4(b)は、本発明の第1の実施の形態に係る領域設定座標系25に表示された配置レイアウトの模式図である。図4(c)は、本発明の第1の実施の形態に係る領域設定座標系25に表示された分割領域22および判定除外領域23の模式図である。
【0068】
図4(a)に示すように、分割領域設定部33は、操作部8の操作により搬送方向のX軸を単位搬送時間、幅方向のY軸を複数の検出素子15の個数とした領域設定座標系25を表示部7に表示させるようになっている。領域設定座標系25のX軸は、投受光部5が食品生地W1の前端を検知してから所定時間経過後を基準としており、単位搬送時間毎に目盛を表示している。
【0069】
一方、領域設定座標系25のY軸は、複数の検出素子15がライン状に配設されたX線検出部4の延在方向の中央を基準としており、検出素子15の数に応じた目盛を表示している。本実施の形態では、領域設定座標系25のY軸は、X線検出部4の中央を基準に、両側に検出素子15の半数の目盛を有するようになっている。
【0070】
このように、領域設定座標系25のX軸に単位搬送時間に対応する単位搬送時間毎に目盛が表示され、Y軸に検出素子15毎に目盛が表示されているため、領域設定座標系25のX軸の目盛間隔が透過領域の搬送方向の寸法に対応し、領域設定座標系25のY軸の目盛間隔が透過領域の幅方向の寸法に対応するようになっている。つまり、搬送方向の目盛と幅方向の目盛とに区画された部分が食品生地W1の表面に区画された透過領域21に対応するようになっている。
【0071】
図4(b)に示すように、分割領域設定部33は、操作部8により分割領域22の配置レイアウトが選択されると、各分割領域22の中心を示すレイアウトマーク26を領域設定座標系25上に表示するようになっている。配置レイアウトは、複数種類のテンプレートとして制御部6に記憶されているが、領域設定座標系25上に個別に座標指定することによりレイアウトマーク26を設定する構成としてもよい。
【0072】
図4(c)に示すように、分割領域設定部33は、操作部8により分割領域22の周縁形状が選択されると、レイアウトマーク26を中心とした分割領域22を領域設定座標系25に表示するようになっている。具体的には、分割領域22の周縁形状およびレイアウトマーク26の座標から、延在分割設定部33aが分割領域22の搬送方向の座標を設定し、幅分割設定部33bが分割領域22の幅方向の座標を設定して、分割領域22を領域設定座標系25に表示するようになっている。そして、分割領域設定部33は、各分割領域22を構成する各透過領域21のアドレスデータを領域設定座標系25から読み出し、分割領域アドレスデータ記憶部43に記憶させる。
【0073】
そして、X線吸収量算出部34は、分割領域アドレスデータ記憶部43に記憶されたアドレスデータに対応した透過量データだけを透過量データ記憶部41から読み出して、分割領域22のX線吸収量を算出するようになっている。
【0074】
また、判定除外領域設定部37は、操作部8により判定除外領域23が設定されると、判定除外領域23を領域設定座標系25に表示するようになっている。そして、判定除外領域設定部37は、各判定除外領域23を構成する各透過領域21のアドレスデータを判定除外領域アドレスデータ記憶部44に記憶させる。
【0075】
なお、上記したように分割領域22を領域設定座標系25上で座標指定する構成に代えて、操作部8により数値入力することにより分割領域22を設定する構成としてもよい。例えば、分割領域22の搬送方向の寸法を設定時間の入力により設定し、分割領域22の幅方向の寸法を幅方向の分割数の入力により設定するようにする。
【0076】
この場合、操作部8により設定時間が入力されると、延在分割設定部33aが設定時間と搬送速度とを乗算して分割領域22の搬送方向の寸法を設定し、幅方向の分割数が入力されると、幅分割設定部33bが食品生地W1の幅を等分に分割して分割領域22の幅方向の寸法を設定するようになっている。
【0077】
さらに、設定時間および分割数により分割領域22を設定する他、搬送方向の長さおよび分割幅の入力により分割領域22を設定するようにしてもよい。
【0078】
次に動作について説明する。
【0079】
図5は、本発明の第1の実施の形態に係るX線質量測定装置1の分割領域22の質量判定処理を示すフロー図である。
【0080】
マスターワークの質量換算係数が質量換算係数記憶部42に記憶されていないと(ステップS01:No)、モード切換部31によりX線質量測定装置1の動作モードが質量換算係数算出モードに切り換えられる(ステップS02)。なお、既に質量換算係数が質量換算係数記憶部42に記憶されている場合には(ステップS01:Yes)、ステップS07に進む。
【0081】
マスターワークが図外の秤により計量され、マスターワークの質量が制御部6に記憶されると(ステップS03)、マスターワークが搬送部2に搬送されるとともに、X線吸収量算出部34によりマスターワーク全体のX線吸収量が算出される(ステップS04)。
【0082】
マスターワークのX線吸収量が算出されると、マスターワークの質量が算出されたマスターワークのX線吸収量により除算されることにより質量換算係数が算出され、質量換算係数記憶部42に記憶される(ステップS05)。
【0083】
質量換算係数が質量換算係数記憶部42に記憶されると、モード切換部31によりX線質量測定装置1の動作モードが分割領域質量測定モードに切り換えられる(ステップS06)。
【0084】
判定除外領域設定部37および分割領域設定部33により、判定除外領域23のアドレスデータおよび分割領域22のアドレスデータがそれぞれ判定除外領域アドレスデータ記憶部44および分割領域アドレスデータ記憶部43に書き込まれると(ステップS07)、分割領域22の質量の測定が開始される。
【0085】
食品生地W1が搬送部2に搬送され、X線照射部3により食品生地W1にX線が照射され、X線検出部4により食品生地W1を透過したX線の透過量が検出されると、透過量入力部32が各透過領域21のアドレスに対応させて透過量データを透過量データ記憶部41に書き込む(ステップS08)。
【0086】
そして、X線吸収量算出部34により透過量データ記憶部41から分割領域22を構成する各透過領域21のアドレスデータに対応した各透過量データが読み出され、分割領域22のX線吸収量が算出される(ステップS09)。
【0087】
分割領域22のX線吸収量が算出されると、質量測定部35により質量換算係数記憶部42から質量換算係数が読み出され、分割領域22のX線吸収量と質量換算係数とが乗算されて分割領域22の質量が測定される(ステップS10)。
【0088】
分割領域22の質量が測定されると、出力部36により分割領域22の質量が表示部7に表示され(ステップS11)、質量判定部38により分割領域22の一部に判定除外領域23が含まれるか否かが判定される(ステップS12)。
【0089】
質量判定部38により分割領域22の一部に判定除外領域23が含まれると判定されると(ステップS12:Yes)、分割領域22の質量の判定が禁止される(ステップS13)。一方、質量判定部38により分割領域22の一部に判定除外領域23が含まれないと判定されると(ステップS12:No)、分割領域22の質量が許容範囲内にあるか否かが判定される(ステップS14)。
【0090】
質量判定部38により分割領域22の質量が許容範囲外であると判定されると(ステップS14:No)、報知部39により分割領域22の質量に過不足がある旨が報知されるようになっている(ステップS15)。
【0091】
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態に係るX線質量測定装置1は、帯状の食品生地W1を延在方向に搬送する搬送部2と、搬送中の食品生地W1に対しX線を照射するX線照射部3と、食品生地W1を透過したX線の透過量を検出するX線検出部4と、分割領域22を設定する分割領域設定部33と、X線検出部4で検出されたX線の透過量に基づいて、分割領域22において食品生地W1に吸収されたX線吸収量を算出するX線吸収量算出部34と、X線吸収量から質量に換算するための質量換算係数を予め記憶する質量換算係数記憶部42と、X線吸収量算出部34により算出される分割領域22のX線吸収量と質量換算係数記憶部42に記憶された質量換算係数とを乗算し、分割領域22における質量を測定する質量測定部35と、質量測定部35により測定された食品生地W1の分割領域22における質量を出力する出力部36とを備えている。
【0092】
したがって、分割領域設定部33により食品生地W1の分割領域22を設定できるため、X線吸収量算出部34により食品生地W1の分割領域22におけるX線吸収量が算出され、質量測定部35により分割領域22のX線吸収量と質量換算係数とが乗算されて分割領域22の質量が測定され、これを出力部36により出力して、作業者に対して分割領域の質量を知らせることができる。したがって、食品生地W1の製品部分を分割領域22として設定することにより、食品生地W1の搬送中に製品部分を質量測定することができ、早期に製品部分の質量の過不足を発見することができる。その結果、食品生地W1が下流に流れる前に、食品生地W1から質量の過不足部分を取り除くことができるため、作業工数が無駄となることがなく作業効率を向上させることができる。特に、生産ラインに焼成時間の長い焼成工程がある場合であっても、製品部分が焼成工程に入る前に製品部分の質量の過不足を発見することができ、作業効率の低下を防止することができる。
【0093】
(第2の実施の形態)
図6から図7を参照して本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0094】
本発明の第1の実施の形態では、分割領域設定部33が操作部8の操作に基づいて分割領域22を設定したが、本発明の第2の実施の形態では、X線質量測定装置61の下流に食品生地W1から製品部分を切り離す切断装置51が設置され、切断装置51の切断タイミングに合わせて分割領域22の搬送方向の寸法を設定するようにしている。なお、本発明の第1の実施の形態と同一の構成については同一の符号を用いて説明し、特に相違点についてのみ詳述する。
【0095】
図6は、本発明の第2の実施の形態のX線質量測定装置61を備えたシステム構成図である。
【0096】
図6に示すように、X線質量測定装置61の下流には、搬送コンベア52を介して切断装置51が配置されている。X線質量測定装置61と切断装置51とは、制御信号が互いに接続されており、切断装置51から切断タイミングを示すカット信号がX線質量測定装置61に送信されるようになっている。
【0097】
次に、図7を参照して、切断タイミングと分割領域22の搬送方向の寸法との関係について説明する。
【0098】
図7は、本発明の第2の実施の形態に係る切断タイミングと分割領域22の搬送方向の寸法との関係の一例を示す説明図である。
【0099】
図7は、図示右側に食品生地W1を切断装置51により切断するタイミングを示し、図示左側に領域設定座標系25に表示される分割領域22を示している。今、切断装置51により切断タイミングT1時にカット信号がX線質量測定装置61に出力されると、分割領域設定部33は、領域設定座標系25に座標C1を設定するようになっている。次に、切断装置51により切断タイミングT2時にカット信号がX線質量測定装置61に出力されると、分割領域設定部33は、領域設定座標系25に座標C2を設定するようになっている。
【0100】
つまり、切断タイミングT2と切断タイミングT1とのカット信号の出力によって、領域設定座標系25に表示される分割領域のX軸方向の座標が設定されるため、カット信号の出力間隔が単位搬送時間の何倍にあたるかを算出することにより、分割領域22の搬送方向の寸法が算出されるようになっている。
【0101】
例えば、透過領域21の搬送方向の寸法は0.384mm、搬送速度は400mm/sであるので、単位搬送時間は0.384/400=0.00096sであり、カット信号が0.25秒間隔にX線質量測定装置61に出力される場合には、分割領域22の搬送方向の寸法は、透過領域21の0.25/0.00096=260.42倍となる。したがって、分割領域22の搬送方向の寸法は、260.42×0.384=100mmとして自動的に算出される。
【0102】
なお、切断装置51の切断タイミングに基づいて、領域設定座標系25の座標を設定する構成に代えて、切断装置51の切断タイミングに基づいて、搬送方向の寸法を示す設定時間や搬送方向の長さを設定する構成としてもよい。
【0103】
以上説明したように、本発明の第2の実施の形態に係るX線質量測定装置61は、分割領域設定部33が、搬送方向下流に設置され、食品生地W1を予め定められた寸法に切断する切断装置51から出力された切断タイミングを示すカット信号に基づいて、分割領域22の搬送方向の寸法を設定するため、切断装置51で切断された製品部分の質量と食品生地W1の分割領域22における質量とを一致させることができる。したがって、製品部分が食品生地W1から切り離される前に、当該製品部分の質量を精度よく測定することができる。
【0104】
(第3の実施の形態)
図8から図9を参照して本発明の第3の実施の形態について説明する。
【0105】
本発明の第1の実施の形態では、連続体として帯状の食品生地W1を搬送したが、本発明の第3の実施の形態では、帯状の食品生地W1に代えて、連包W2を搬送するようにしている。なお、本実施の形態における連包W2とは、内容物を収容した複数の包装体が帯状に連なったものであり、例えば、内部にインスタントラーメンのスープ等を収容したものである。なお、本発明の第1の実施の形態と同一の構成については同一の符号を用いて説明し、特に相違点についてのみ詳述する。
【0106】
図8は、本発明の第3の実施の形態に係るX線質量測定装置71の全体構成図である。また、図9は、本発明の第3の実施の形態に係る単一の包装体のX線の吸収量を示す図である。なお、図9に示すX線の吸収量は、搬送ベルト12の吸収量が0になるように補正されている。
【0107】
図8に示すように、X線質量測定装置71は、第1の実施の形態に係るX線質量測定装置1に包装体吸収量判定部56と、包装体吸収量データ記憶部59と、空袋質量記憶部58とをさらに備えたものである。また、包装体吸収量データ記憶部59には、予め内容物を収容していない包装体の吸収量データが閾値として記憶され、空袋質量記憶部58には、予め内容物を収容していない包装体の質量が記憶されている。
【0108】
分割領域設定部33は、連包W2の各包装体の周縁形状を分割領域22として設定するようになっている。
【0109】
X線吸収量算出部34は、単一の包装体を分割領域22とし、式(1)に示すようにX線の照射量IとX線の透過量Iとの差分として包装体のX線の吸収量データを算出するようになっている。
【0110】
包装体吸収量判定部56は、X線吸収量算出部34により算出された吸収量データと包装体吸収量データ記憶部59に記憶された閾値と比較を比較することにより判定するようになっている。具体的には、図9の実線で示すように、X線吸収量算出部34により算出された吸収量データが閾値より吸収量が多い場合には、搬送中の包装体があると判定する。一方、図9の破線で示すように、X線吸収量算出部34により算出された吸収量データが閾値以下の場合には、搬送中の包装体がないと判定する。
【0111】
そして、包装体吸収量判定部56は、包装体がないと判定すると、表示部7に包装体がない旨を表示させるようになっている。なお、表示部7に表示させる構成に限らず、音声により報知する構成にしてもよい。このようにして、複数の包装体が連なった連包W2が断続的に搬送されたことを検知することができるようになっている。
【0112】
質量測定部35は、包装体の質量から包装体に収容された内容物の質量を測定する内容物質量測定部35aを備えており、X線吸収量算出部34に算出された包装体のX線吸収量と質量換算係数記憶部42に記憶された単一の包装体の質量換算係数とを乗算することにより包装体の質量を測定し、内容物質量測定部35aにより包装体の質量から空袋質量記憶部58に記憶された空袋質量を減算することにより包装体の内容物の質量を測定するようになっている。
【0113】
以上説明したように、本発明の第3の実施の形態に係るX線質量測定装置71は、内容物を収容していない単一の包装体の質量を示す空袋質量を予め記憶する空袋質量記憶部58と、単一の包装体を分割領域22とした場合に、X線吸収量算出部34により算出される分割領域22のX線吸収量と質量換算係数記憶部42に記憶された質量換算係数と空袋質量記憶部58に記憶された空袋質量とに基づいて包装体に収容されている内容物の質量を測定する質量測定部35を備えている。
【0114】
したがって、連続体が連包W2である場合であっても、単一の包装体を分割領域22に設定することで、X線吸収量算出部34により単一の包装体に吸収されたX線吸収量を算出し、質量換算係数記憶部42に記憶された質量換算係数と、空袋質量記憶部58に記憶された空袋質量とに基づいて包装体に収容されている内容物の質量を測定することができる。
【0115】
また、上記に示した各実施例によらず、X線質量測定装置について、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更も可能である。
【産業上の利用可能性】
【0116】
以上、説明したように、本発明は、連続体を被測定物として生産ラインに流した場合であっても、早期に連続体の一部である製品部分の質量の過不足を発見し作業効率の低下を防止することができるという効果を有し、搬送中の被測定物にX線を照射してそのX線の透過量に基づいて、被測定物の質量を測定するX線質量測定装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るX線質量測定装置の外観斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るX線質量測定装置の全体構成図である。
【図3】(a)は本発明の第1の実施の形態に係る透過領域の幅方向の寸法の説明図であり、(b)は本発明の第1の実施の形態に係る透過領域の斜視図である。
【図4】(a)は本発明の第1の実施の形態に係る領域設定座標系の模式図であり、(b)は本発明の第1の実施の形態に係る領域設定座標系に表示された配置レイアウトの模式図であり、(c)は本発明の第1の実施の形態に係る領域設定座標系に表示された分割領域および判定除外領域の模式図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係るX線質量測定装置の分割領域の質量判定処理を示すフロー図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態のX線質量測定装置を備えたシステム構成図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る切断タイミングと分割領域の搬送方向の寸法との関係の一例を示す説明図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係るX線質量測定装置の全体構成図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態に係る単一の包装体のX線の吸収量を示す図である。
【符号の説明】
【0118】
1、61、71 X線質量測定装置
2 搬送部(搬送手段)
3 X線照射部(X線照射手段)
4 X線検出部(X線検出手段)
5 投受光部
6、55 制御部
7 表示部
8 操作部
11a、11b、11c、11d ローラ
12 搬送ベルト
13 駆動モータ
15 検出素子
17 投光部
18 受光部
21 透過領域
22 分割領域
23 判定除外領域
25 領域設定座標系
26 レイアウトマーク
31 モード切換部
32 透過量入力部
33 分割領域設定部(分割領域設定手段)
33a 延在分割設定部(延在分割設定手段)
33b 幅分割設定部(幅分割設定手段)
34 X線吸収量算出部(X線吸収量算出手段)
35 質量測定部(質量測定手段)
35a 内容物質量測定部
36 出力部(出力手段)
37 判定除外領域設定部(判定除外領域設定手段)
38 質量判定部(質量判定手段)
39 報知部(報知手段)
41 透過量データ記憶部
42 質量換算係数記憶部(質量換算係数記憶手段)
43 分割領域アドレスデータ記憶部
44 判定除外領域アドレスデータ記憶部
45 判定閾値記憶部
51 切断装置
52 搬送コンベア
56 包装体吸収量判定部
58 空袋質量記憶部(空袋質量記憶手段)
59 包装体吸収量データ記憶部(包装体吸収量記憶手段)
W1 食品生地
W2 連包

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続体を延在方向に搬送する搬送手段(2)と、
前記搬送手段により搬送中の前記連続体に対しX線を照射するX線照射手段(3)と、
前記連続体を透過した前記X線の透過量を検出するX線検出手段(4)と、
前記X線検出手段で検出された前記X線の透過量に基づいて、X線が前記連続体を透過した所望の領域に対応する前記連続体に吸収されたX線吸収量を算出するX線吸収量算出手段(34)と、
前記連続体に吸収されたX線吸収量から前記連続体の質量に換算するための質量換算係数を予め記憶する質量換算係数記憶手段(42)と、
前記連続体の延在方向を分割するための分割領域(22)を設定する分割領域設定手段(33)と、
前記X線吸収量算出手段により算出される前記連続体の前記分割領域のX線吸収量と前記質量換算係数記憶手段に記憶された前記質量換算係数とに基づいて、前記連続体の前記分割領域における質量を測定する質量測定手段(35)とを備えたことを特徴とするX線質量測定装置。
【請求項2】
前記質量測定手段により測定された前記連続体の前記分割領域における質量を出力する出力手段(36)をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のX線質量測定装置。
【請求項3】
前記分割領域設定手段が、搬送方向下流に設置され、前記連続体を予め定められた寸法に切断する切断装置(51)から出力された切断タイミングを示すカット信号に基づいて、前記連続体の延在方向を分割するための延在方向分割位置を設定する延在分割設定手段(33a)を有することを特徴とする請求項1または2に記載のX線質量測定装置。
【請求項4】
前記分割領域設定手段が、さらに前記連続体の幅方向を分割するための幅方向分割位置を設定する幅分割設定手段(33b)を有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のX線質量測定装置。
【請求項5】
前記質量測定手段により測定された前記連続体の前記分割領域における質量が所定の範囲内であるか否かを判定する質量判定手段(38)と、
前記質量判定手段によって前記連続体の前記分割領域における質量が所定の範囲外であると判定された場合に、その旨を報知する報知手段(39)とをさらに備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のX線質量測定装置。
【請求項6】
前記連続体が帯状の食品生地(W1)であり、前記食品生地の幅方向の両端部を判定除外領域(23)として設定する判定除外領域設定手段(37)をさらに備え、
前記質量判定手段は、前記分割領域の少なくとも一部に前記判定除外領域が含まれる場合に、当該分割領域の質量判定を禁止することを特徴とする請求項5に記載のX線質量測定装置。
【請求項7】
前記連続体は、内容物を収容した複数の包装体が帯状に連なった連包(W2)であって、前記質量換算係数記憶手段には、単一の前記包装体について前記質量換算係数が記憶されており、
前記内容物を収容していない単一の包装体の質量を示す空袋質量を予め記憶する空袋質量記憶手段(58)をさらに備え、
単一の前記包装体を前記分割領域とした場合に、前記質量測定手段は、前記X線吸収量算出手段により算出される前記分割領域のX線吸収量と前記質量換算係数記憶手段に記憶された質量換算係数と前記空袋質量記憶手段に記憶された前記空袋質量とに基づいて前記包装体に収容されている内容物の質量を測定することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のX線質量測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−85876(P2009−85876A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−258853(P2007−258853)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【出願人】(302046001)アンリツ産機システム株式会社 (238)
【Fターム(参考)】