説明

n個のうちのm個の電気エネルギ消費体が同時に電気エネルギの供給を受ける、n個の電気エネルギ消費体の構成

【課題】 実際に必要とするだけの電力量を利用可能にするという問題に対処することにある。
【解決手段】 本発明は、同じ消費電力または異なる消費電力を有する幾つかの電気エネルギ消費体の構成に関する。一般に、必ずしも全ての消費体に同時に電気エネルギを供給する必要がないため(例えばメンテナンス作業のためある消費体は作動していないことがある)、相互接続可能な幾つかのモジュールからなるモジュラエネルギ供給システムが設けられ、これにより各消費体には、必要とする電力を小型ユニットから供給することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求の範囲の請求項1の前提部に記載の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
工業施設では、しばしば幾つかの電気設備が必要とされるが、必ずしもこれらの全ての電気設備が同時に作動しているものではない。
【0003】
例えば、コーティング施設は、しばしば、例えばガラス上に異なるコーティングを塗装するための幾つかのスパッタ装置を有している。この施設では、各スパッタ装置は装置自体のエネルギ源を有し、このエネルギ源はDCエネルギ源またはACエネルギ源とすることができる。
【0004】
スパッタ装置を作動する電力はいろいろで、15kWであることも、180kWであることもある。例えば、15基のスパッタ装置の所要電力が、180kW(AC)、30kW(DC)、75kW(DC)、30kW(DC)、30kW(DC)、120kW(DC)、120kW(AC)、120kW(AC)、75kW(DC)、120kW(DC)、30kW(DC)、30kW(DC)、120kW(DC)、120kW(AC)120kW(AC)であると仮定すると、合計660kWのAC電力および合計660kWのDC電力を供給すべきであることが計算される。現在、電力1kW当りの電力供給コストは約700.00ユーロであるため、合計電力供給コストは924,000.00ユーロとなる。
【0005】
実際には全てのスパッタ装置が同時に作動することはないので、全部で1320kWのうち、比較的少ないkW数の電力が要求されるに過ぎない。従って、合計300kWのDC電力もあれば充分である。
【0006】
幾つかのターゲット電極を有し、各ターゲット電極にはそれ自体の電源から給電される構成のスパッタ装置は既知である(下記特許文献1の図1参照)。これらのエネルギ源のうちの1つは、パルス型電源を対応電極に接続する構成のパルスコントローラにより制御される。このスパッタ装置では、エネルギ源の節約は行なわれない。
【0007】
複数の電子装置を有するコンピュータシステムによるパワー・シェアリングも知られている(下記特許文献2参照)。このパワー・シェアリング技術では、幾つかのバッテリ作動型装置をサポートするだけでなく、ホルスターが設けられた通信装置をもサポートするベルトが設けられている。また、バスバーまたはパワーバスも設けられており、これらを介して装置が互いに接続されている。非使用時には、このような装置は、このパワーバーを介して、これらのバッテリ電力を他の装置に出力できる。ここでは、特定装置に適合した種々のパワーユニットの特定の組合せはなされない。
【0008】
既知のエネルギ消費管理システムでは、例えば風力発電、ソーラエネルギ発電、ガス発電等の幾つかのエネルギ発生器が互いにリンクされている(下記特許文献3参照)。しかしながら、エネルギ発生器の選択は、電力消費の観点で行なわれるのではなく、利用可能性の観点で行なわれている。
【0009】
また、異なる電圧を必要とする電子システム用電源のインテリジェント制御も知られている(下記特許文献4参照)。電子回路が電源に接続される場合には、制御はこの回路の存在を確認して、対応電力を要求する。幾つかの電子回路が付加される場合には、コントローラは全ての電子回路をその要求について試験し、電力競合(power conflict)の存否を決定する。競合が存在する場合には、コントローラは、競合が解消されるまで電子回路への給電は行なわない。いかなる競合も存在しない場合には、コントローラは、電源に命令を伝送することにより、所要電力に従って、接続された電子回路に給電する。全ての電子回路は、パワーバスを介して幾つかの電圧源に接続される。
【0010】
最後に、電力産業では、カップリングラインを介して幾つかのネットワークを接続し、エネルギ発生をエネルギ消費により良く適合させることも知られている(例えば、下記非特許文献1参照)。この相互接続された電力産業を通じて、エネルギ消費の局所的な変動(例えば時間のずれによる東部から西部への変動)または発電機によるエネルギ変動(例えば風力発電所およびソーラ発電所の場合のエネルギ変動)を補償できる。
【0011】
【特許文献1】米国特許第4 902 394号明細書
【特許文献2】米国特許第5 914 585号明細書
【特許文献3】欧州特許EP 1 263 108 A1号明細書
【特許文献4】米国特許第6 448 672 B1号明細書
【非特許文献1】Buchhold/Happold著「Elektrische Kraftwerke und Netze」(第4版、第523頁以降)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って本発明は、実際に必要とするだけの電力量を利用可能にするという問題に対処するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記問題は、特許請求の範囲の請求項1記載の特徴により解決される。
【0014】
従って本発明は、電気エネルギの幾つかの消費体(consumers)(電力要求量が同じ消費体もあれば、異なる消費体もある)の構成に関する。一般に、必ずしも全ての消費体が同時的に電気エネルギの供給を必要とする訳ではなく、例えばある消費体はメンテナンス作業のため作動していないことがあるため、相互接続できる幾つかのモジュールからなるモジュラエネルギ供給システムが設けられる。このため、各消費体は、必要な出力をもつ小型ユニットからの供給を受けることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明により得られる長所は、特に、高価な電気エネルギ供給による出費を節約できることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面に示す本発明の一実施形態について更に詳細に説明する。
【0017】
図1には幾つかのスパッタ装置1〜15がボックスで概略的に示されており、これらのスパッタ装置は、例えば施設(hall)上で互いに前後に配置されている。例えばコーティングすべきガラスディスクをこれらのスパッタ装置1〜15に通すことにより、ガラスディスクには1つまたは幾つかの層が設けられる。ボックス内には、これらのスパッタ装置1〜15の特定の電気接続電力並びにスパッタリングすべきターゲットの材料が示されている。スパッタリングされる材料により基板上に形成される層が、スパッタ装置1〜15の右側に隣接して示されている。
【0018】
慣用のスパッタ装置では、各装置は、各場合に必要とされる電力を利用可能にする個々の装置自体の電流源を有している。
【0019】
本発明によれば、全てのスパッタ装置1〜15の電力は、モジュラエネルギ源100により作られる。モジュラエネルギ源100は、例えば20個の個々のエネルギ源16〜35からなり、この例では、各エネルギ源は15kWのDC電源である。ここでは、必ずしも全てのスパッタ装置1〜15が同時に作動する訳ではなく、一定時点では例えばスパッタ装置5、7、10および13のみが作動するものと仮定する。これらの装置は、合計で300kWを必要とする。これらの300kWは、個々のエネルギ源16〜35を適当に相互接続することにより作ることができる(例えば、20×15kW=300kW)。ここでは、相互接続はコントローラ36により行なわれ、コントローラ36は、制御ラインおよびスイッチ37〜67を介して、幾つかの個々のエネルギ源16〜35を互いにリンクする。
【0020】
スパッタ装置5は30kWを必要とするため、例えば個々のエネルギ源19と23との相互接続またはエネルギ源18と19との相互接続等で充分である。
【0021】
スパッタ装置5がスイッチ・オンされると、ライン70を介してのコントローラ36へのレポート・バックがなされ、コントローラ36には、次に、スパッタ装置5が30kWを利用できるようにしなければならないことが通知される。次にコントローラ36は、例えば制御コマンドにより、ライン71およびスイッチ43を介して2つの個々のエネルギ源19と23とをリンクさせる。ライン71が制御/エネルギラインとして機能する場合には、相互接続された電力がコントローラ36によりループ化され、かつライン70を介してスパッタ装置5に供給される。
【0022】
前述したように、図1に示す構成のスパッタ電圧の調整が分散的に行なわれる。すなわち、各スパッタ装置はそれ自体のレギュレーションを有し、その仕事は、特にアーキングを防止することである。従って、いわゆるアークマネージメントは、個々のスパッタ装置1〜15またはこれらのカソードに関連した状態を維持している。AC電流作動の場合には、各カソードに順応ネットワーク(adaptation network)を割当てなくてはならない。スパッタカソードがパルス型DCにより作動される場合には、各カソードも、これ自体のアークマネージメントに加えて、パルス発生器に接続される。2つのカソードが使用される場合には、1つの極反転ユニットが両カソードに割当てられる。
【0023】
図2には、2つの個々のエネルギ源19、23のスイッチング回路が、再び2極型として示されている。この場合にも、スパッタ装置5に30kWを供給しなければならないことは明白である。この目的のため、2つの個々のエネルギ源19、23は、スイッチ80、81または82、83を介して供給ライン84、85に接続されている。制御ライン86〜89および供給ライン84、85は、単一ケーブル内に支持してコントローラ36に導くことができる。しかしながら、両ライン形式を別々に支持することもできる。
【0024】
アークマネージメント、順応ネットワーク、およびパルス作動に必要な回路は、カソードに直接またはカソードの近くに配置することができる。
【0025】
本発明はかなりのコスト節約を可能にする。合計で300kWのみの電力の使用を可能にするので、今や、電源のコストは、924,000.00ユーロではなく僅かに210,000.00ユーロで済む。個々のエネルギモジュール間のリンケージ回路はコスト有効性をもって作ることができるため、合計コストはかなり低減される。これにより、常に、別の調整ユニットおよび/または順応ユニットを依然としてスパッタ装置の各カソードに割当てなくてはならないため、電源の合計節約は、慣用技術に比べて約30〜40%となる。
【0026】
本発明によれば、真空装置の多くのカソードを、所望の態様で電源16〜35に接続できる。しかしながら、単一または少数のカソードを備えた幾つかの真空装置をモジュラエネルギ源100に接続できる。
【0027】
スパッタ装置1〜15は、これらの全てに同じ出力データをもたせることができることは理解されよう。例えば、製造施設内に同じ形式の多くのコーティング装置が配置される場合、および例えばメンテナンスまたは変更のためある装置が作動されず、このため実際のキャパシティ利用度が約80%である場合には、必要電力は、モジュラ構造の電源100により、作動している装置に切換えられる。この場合、休止状態にある装置は、電源には接続されない。
【0028】
以上、スパッタ装置に関する実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明はあらゆるコーティング装置、更にはあらゆる電力消費体に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】モジュラエネルギ源の基本構成を示す図面である。
【図2】供給ラインへのエネルギ供給源の2極スイッチング回路を示す図面である。
【符号の説明】
【0030】
1〜15 スパッタ装置
16〜35 エネルギ源(電源)
36 コントローラ
37〜67 スイッチ
80〜83 スイッチ
84、85 供給ライン
86〜89 制御ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
n個のうちのm個(m<n)の電気エネルギ消費体が同時に電気エネルギの供給を受ける、n個の電気エネルギ消費体の構成において、
a)k個のエネルギモジュール(16〜35)からなるモジュラエネルギ源(100)と、
b)コントローラ(36)とを有し、該コントローラ(36)は、1つの消費体(1〜15)が必要とする電力を受けるのに要する数のモジュラエネルギ源(16〜35)を、前記1つの消費体(1〜15)に接続することを特徴とする構成。
【請求項2】
前記消費体(1〜15)がスパッタ装置であり、該スパッタ装置の各カソードはこれ自体のアークマネージメントを有していることを特徴とする請求項1記載の構成。
【請求項3】
電気エネルギはDC電流で実現されることを特徴とする請求項1記載の構成。
【請求項4】
電気エネルギはAC電流で実現されることを特徴とする請求項1記載の構成。
【請求項5】
電気エネルギはパルス型DC電流で実現されることを特徴とする請求項1記載の構成。
【請求項6】
前記各カソードにはこれ自体の順応ネットワークが設けられていることを特徴とする請求項1、2および4のいずれか1項記載の構成。
【請求項7】
前記消費体(1〜15)はスパッタ装置であり、各スパッタ装置は2つのカソードを有し、両カソードには1つの極反転ユニットが割当てられることを特徴とする請求項1記載の構成。
【請求項8】
前記消費体(1〜15)はスパッタ装置であり、各スパッタ装置は2つのカソードを有し、一方のカソードはAC電圧の1つの極に接続され、他方のカソードは前記AC電圧の他方の極に接続されることを特徴とする請求項1記載の構成。
【請求項9】
前記各カソードにはパルス発生器が割当てられることを特徴とする請求項5記載の構成。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−514527(P2006−514527A)
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−508828(P2005−508828)
【出願日】平成15年11月10日(2003.11.10)
【国際出願番号】PCT/DE2003/003714
【国際公開番号】WO2005/027299
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(502208722)アプライド フィルムズ ゲーエムベーハー アンド コンパニー カーゲー (28)
【Fターム(参考)】