説明

電子写真機器用スポンジロール

【課題】ウレタン発泡後の未反応成分がスポンジ層の表面に析出するのを抑えるとともに、成形型内での発泡成形時にスポンジ層の硬化収縮を抑える電子写真機器用スポンジロールを提供すること。
【解決手段】a1〜a3成分を含み、成分全体の水酸基に占める1級水酸基の割合がモル比で80%以上のポリオール成分と、2官能のイソシアネートを含み、成分全体に占める2官能のイソシアネートの割合が30質量%以上のポリイソシアネート成分とを含有するウレタン用組成物を成形型内で発泡・硬化させて得たスポンジ層14を軸体12の外周に有するスポンジロール10とする。ただし、(a1)末端が2級水酸基のポリオキシプロピレンポリオール、(a2)末端がエチレンオキサイドにより1級水酸基とされたポリオキシプロピレンポリオール、(a3)末端がプロピレンオキサイドにより1級水酸基とされたポリオキシプロピレンポリオール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真機器用スポンジロールに関し、さらに詳しくは、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の電子写真機器のトナー供給ロールやクリーニングロール等に用いて好適な電子写真機器用スポンジロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器が知られている。電子写真機器の内部には、通常、感光ドラムが組み込まれており、感光ドラムの周囲には、現像ロール、帯電ロール、転写ロール、トナー供給ロール、クリーニングロールなどが配設されている。
【0003】
トナー供給ロールは、トナーボックス内のトナーを現像ロールに供給する。また、感光ドラムの静電潜像に付着されずに現像ロールの表面に残ったトナーを掻き取り回収する。クリーニングロールは、複写紙に転写されずに感光ドラムの表面に残ったトナーを掻き取り回収する。
【0004】
トナー供給ロールやクリーニングロールなどは、通常、軸体と、軸体の外周に形成されたスポンジ層とを有するスポンジロールで構成されている。スポンジロールのスポンジ層は、ポリウレタンフォームにより形成されることが多い。ポリウレタンフォームの製造方法としては、特許文献1に記載された方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3688667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電子写真機器のトナー供給ロールやクリーニングロールなどに用いられる従来のスポンジロールは、例えばロール表面が長期に圧接されることにより、ウレタンのスポンジ層中の未反応成分がスポンジ層の表面に析出することがあった。この未反応成分がトナーに付着すると、その付着した箇所でトナーの転写濃度が変化し、スジ状の画像不具合が発生する。
【0007】
この未反応成分は、主にポリウレタンを形成するためのポリオール成分に由来するものである。この未反応成分がスポンジロールから析出するのを抑えるためには、ポリイソシアネート成分に対し、ポリオール成分を十分に反応させる必要がある。このためには、例えば、末端の水酸基が1級水酸基である高活性なポリオールを用いることが考えられる。
【0008】
しかしながら、高活性なポリオールを用いると、硬化反応が速くなりすぎて、成形型内で硬化収縮が起こるという問題が新たに発生する。これにより、寸法精度が安定しないという問題がある。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、ウレタン発泡後の未反応成分がスポンジ層の表面に析出するのを抑えるとともに、成形型内での発泡成形時にスポンジ層の硬化収縮を抑えることができる電子写真機器用スポンジロールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため本発明に係る電子写真機器用スポンジロールは、軸体と、前記軸体の外周に形成されたポリウレタンのスポンジ層とを有する電子写真機器用スポンジロールにおいて、前記スポンジ層は、下記のa〜b成分を含有するウレタン用組成物が成形型内で発泡・硬化されて形成されたものであることを要旨とするものである。
(a)下記のa1〜a3成分を含み、ポリオール成分全体の水酸基に占める1級水酸基の割合がモル比で80%以上であるポリオール成分
(a1)末端が2級水酸基であるポリオキシプロピレンポリオール
(a2)末端がエチレンオキサイドにより1級水酸基とされたポリオキシプロピレンポリオール
(a3)末端がプロピレンオキサイドにより1級水酸基とされたポリオキシプロピレンポリオール
【0011】
この際、前記b成分は3官能以上の多官能のイソシアネートを含み、前記多官能のイソシアネートに対する前記2官能のイソシアネートの質量割合は、(2官能のイソシアネート)/(多官能のイソシアネート)で、50/50〜80/20の範囲内にあることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る電子写真機器用スポンジロールによれば、ポリオール成分に上記のa3成分を含み、ポリオール成分全体の水酸基に占める1級水酸基の割合をモル比で80%以上にまで高めたことにより、未反応で残存するポリオキシプロピレンポリオールの量を低減させることができる。これにより、ウレタン発泡後の未反応成分がスポンジ層の表面に析出するのを抑えることができる。この際、上記のa3成分を用い、ポリオール成分の1級水酸基の割合を高めたことにより、成形型内での発泡成形時にスポンジ層の硬化収縮が発生するおそれがあったが、ポリイソシアネート成分に特定量の2官能のイソシアネートを含有させることととしたため、成形型内での発泡成形時にスポンジ層の硬化収縮を抑えることができる。
【0013】
また、上記のポリオール成分の1級水酸基の割合を高くするにあたり、(a2)末端がエチレンオキサイドにより1級水酸基とされたポリオキシプロピレンポリオールとともに(a3)末端がプロピレンオキサイドにより1級水酸基とされたポリオキシプロピレンポリオールを用いているため、a2成分により高められるスポンジ層の吸水性をa3成分により低くすることで、スポンジ層の吸水性が上がるのを抑えることができる。これにより、寸法精度にも優れる。
【0014】
そして、多官能のイソシアネートに対する2官能のイソシアネートの割合を特定の範囲に設定することで、発泡を阻害しにくくできる。また、スポンジ層の硬化収縮を抑えつつ、スポンジロールに適した硬度と架橋度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第一実施形態に係るスポンジロールの周方向断面図である。
【図2】図1のスポンジロールの製造に好適なロール成形型を模式的に示した軸方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の構成について具体的に明らかにする。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係るスポンジロールの周方向断面図である。一実施形態に係るスポンジロール10は、図1に示す構造が軸方向に連続する構成を備えている。図1に示すように、スポンジロール10は、中実棒状の軸体12と、軸体12の外周にロール状に形成されたポリウレタンのスポンジ層14とにより構成されている。
【0018】
スポンジ層14は、成形型を用い、成形型内でウレタン用組成物を発泡・硬化することにより形成されている。ウレタン用組成物は、(a)特定のポリオール成分と、(b)特定のイソシアネート成分とを含有するものである。
【0019】
ポリオール成分は、下記のa1〜a3成分を含み、ポリオール成分全体の水酸基に占める1級水酸基の割合がモル比で80%以上となるものである。
(a1)末端が下記の式(1)に示すように2級水酸基であるポリオキシプロピレンポリオール(PPG)
(a2)末端が下記の式(2)に示すようにエチレンオキサイドにより1級水酸基とされたポリオキシプロピレンポリオール(PPG)
(a3)末端が下記の式(3)に示すようにプロピレンオキサイドにより1級水酸基とされたポリオキシプロピレンポリオール(PPG)
【化1】

【化2】

【化3】

【0020】
2級水酸基は1級水酸基と比べてイソシアネートとの反応性が比較的低いため、ポリオール成分全体の水酸基に占める1級水酸基の割合をモル比で80%以上に設定したことで、ウレタン発泡後の未反応成分がスポンジ層14の表面に析出するのを抑えることができる。また、ポリオール成分の反応性が高まったことで、スポンジ層14の架橋度を高くできる。これにより、圧縮永久歪み(圧縮残留歪み)を低減できるため、スポンジ層14の弾性回復性(耐ヘタリ性)を向上できる。また、ポリオール成分の反応性が高まったことで、発泡体の硬化性が良好になるため、スポンジ層14を短時間で脱型できる。この観点から、上記1級水酸基の割合は、より好ましくは84%以上である。上記1級水酸基の割合は、例えば上記a1〜a3成分の割合を調整することなどにより変更できる。
【0021】
上記1級水酸基の割合は、例えばH−NMR法により算出することができる。具体的には、ポリオール成分のH−NMR測定を行い、1級水酸基の隣のメチレン基の積分値と、2級水酸基の隣のメチン基の積分値と、を比較することにより、上記1級水酸基の割合を算出することができる。H−NMR測定の際には、特定のポリオール成分の水酸基を無水トリフルオロ酢酸などで変性して測定しやすいように試料調製を行うことができる。
【0022】
ポリエーテルポリオールであるポリオキシプロピレンポリオールは、例えば活性水素を有する化合物にプロピレンオキサイドを付加することにより製造できるものである。付加反応の触媒には、通常用いられるKOHなどのアルカリ触媒を用いることができる。a1成分は、通常の触媒により製造できる。活性水素を有する化合物は、多価アルコールや、アミン類、多価フェノール類、ポリカルボン酸類などを挙げることができる。
【0023】
多価アルコールとしては、脂肪族ポリオール、脂環式ポリオールなどを挙げることができる。多価アルコールの価数は、特に限定されるものではないが、2〜5価程度であることが好ましい。多価アルコールの炭素数は、特に限定されるものではないが、2〜20程度であることが好ましい。
【0024】
脂肪族ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどのアルキレングリコールや、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ヘキサントリオールなどのアルカントリオールや、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ジグリセリン、ジペンタエリスリトールなどの4価以上のアルカンポリオールや、これらの分子内もしくは分子間脱水物や、ショ糖、グルコース、マンノース、フラクトース、メチルグルコシドなどの糖類およびその誘導体などを挙げることができる。また、脂環式ポリオールとしては、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどを挙げることができる。
【0025】
アミン類としては、アンモニア、脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミン、複素環式アミンなどを挙げることができる。アミン類の価数は、特に限定されるものではないが、2〜5価程度であることが好ましい。アミン類の炭素数は、特に限定されるものではないが、2〜20程度であることが好ましい。
【0026】
脂肪族アミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミンなどのアルカノールアミンや、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアルキレンジアミンや、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどのポリアルキレンポリアミンなどを挙げることができる。脂環式アミンとしては、シクロヘキシルアミン、イソホロンジアミン、シクロヘキシレンジアミン、ジシクロヘキシルメタンジアミンなどを挙げることができる。芳香族アミンとしては、アニリン、トルイジン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、メチレンジアニリン、ジフェニルエーテルジアミンなどを挙げることができる。複素環式アミンとしては、ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどを挙げることができる。
【0027】
多価フェノールとしては、ピロガロール、ハイドロキノン、フロログルシン、ビスフェノールA 、ビスフェノールF 、ビスフェノールスルホン、フェノールとホルムアルデヒドの縮合物(ノボラック)などを挙げることができる。ポリカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、アゼライン酸などの脂肪族ポリカルボン酸や、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ポリカルボン酸を挙げることができる。
【0028】
a2成分は、ポリオキシプロピレンポリオールの末端の水酸基にエチレンオキサイドを付加させることにより製造できる。付加触媒には、通常のアルカリ触媒やBFなどを用いることができる。a2成分のポリエチレンオキサイド部分は親水性であるため、ポリウレタンの吸水性が上昇する要因になりやすい。これにより、成形物の寸法安定性が悪化するおそれがある。したがって、ポリオール成分におけるa2成分の割合は、1級水酸基の割合との兼ね合いより、好ましくは70〜95質量%の範囲内、より好ましくは70〜85質量%の範囲内である。
【0029】
a3成分は、ポリオキシプロピレンポリオールの末端の水酸基にプロピレンオキサイドを付加させることにより製造できる。付加触媒には、フッ化ホウ素系の触媒を用いることができる。この際、所定の割合でa1成分が生成されている。すなわち、a1成分とa3成分との混合物が得られる。a3成分は、ポリオール成分全体の疎水性を高める効果を有する。このため、ポリウレタンの吸水性を上昇させる要因となるa2成分を含んでいても、a3成分を含むことで、全体としてポリウレタンの吸水を抑えることができる。したがって、a3成分を含まない場合と比べてa2成分の割合を多くしてもポリウレタンの吸水が抑えられるため、a3成分を含まない場合と比べてa2成分の割合を比較的多くすることができる。ポリオール成分におけるa3成分の割合は、2質量%以上にすることが好ましい。より好ましくは5質量%以上である。ポリオール成分にa3成分が含まれることで、a2成分による吸水性を抑えつつ、ポリオール成分全体の水酸基に占める1級水酸基の割合をモル比で80%以上に設定することができる。
【0030】
a1成分とa2成分との混合物は、例えば、合成したa1成分に対して所定量のエチレンオキサイドをさらに反応させることにより得ることができる。また、a1成分とa3成分との混合物は、例えば、上記a3成分を得るための反応によっても得られるし、上記a3成分を得るための触媒を用い、合成したa1成分に対して所定量のプロピレンオキサイドをさらに反応させることによっても得ることができる。また、a1成分とa2成分とa3成分との混合物は、例えば、上記a1成分とa3成分との混合物を得た後、所定量のエチレンオキサイドをさらに反応させることにより得ることができる。そして、これらの方法を組み合わせるなどにより、a1〜a3成分の割合を調整することができる。
【0031】
ポリオール成分は、上記のa1〜a3成分以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で、他のポリオール成分を含んでいても良い。他のポリオール成分としては、他のポリエーテルポリオールであっても良いし、ポリエステルポリオールであっても良い。
【0032】
ポリオール成分の水酸基価としては、ウレタン用組成物の硬化速度や粘度などの点から、10〜200の範囲内であることが好ましい。より好ましくは20〜100の範囲内である。
【0033】
ポリイソシアネート成分は、2官能のイソシアネートを含み、ポリイソシアネート成分全体に占める2官能のイソシアネートの割合が30質量%以上となるものである。
【0034】
上述するように、ポリオール成分にa3成分を含み、ポリオール成分全体の水酸基に占める1級水酸基の割合をモル比で80%以上にまで高めたことにより、ポリオール成分の反応性が高まっている。この際、ポリイソシアネート成分全体に占める2官能のイソシアネートの割合を30質量%以上に設定したことで、成形型内での発泡成形時にスポンジ層14の硬化収縮(発泡後の硬化による収縮)を抑えることができる。
【0035】
また、上述するようにポリオール成分の反応性を高めたことで、発泡途中で硬化(架橋)しすぎて増粘し、発泡途中で発泡を妨げるおそれがあったが、2官能のイソシアネートは主にポリウレタンの鎖を延長する反応が優先され、多官能のイソシアネートよりもポリマー鎖間を架橋する反応が起こりにくいことから発泡を妨げにくいものであり、2官能のイソシアネートを特定量含有させたことで、成形型内での発泡が阻害されるおそれを低減できる。
【0036】
ポリイソシアネート成分は、2官能のイソシアネート以外に、3官能以上の多官能のイソシアネートを含むことができる。3官能以上の多官能のイソシアネートを含むことにより、ポリウレタンの架橋度が向上し、スポンジ層14の圧縮残留歪みを低減できる。これにより、スポンジ層14の弾性回復性(耐ヘタリ性)に優れる。また、より一層、ウレタン発泡後の未反応成分がスポンジ層14の表面に析出するのを抑えることができる。
【0037】
上記2官能のイソシアネートの割合としては、好ましくは30〜80質量%の範囲内、より好ましくは50〜80質量%の範囲内である。また、3官能以上の多官能のイソシアネートに対する2官能のイソシアネートの質量割合は、2官能/多官能で、好ましくは30/70〜80/20の範囲内、より好ましくは50/50〜80/20の範囲内である。2官能のイソシアネートの割合が30〜80質量%の範囲内にある場合には、スポンジ層14が低硬度で弾性回復性(耐ヘタリ性)に優れる。このため、スポンジ層14の硬化収縮を抑えつつ、スポンジロール10に適した硬度と架橋度を得ることができる。また、2官能のイソシアネートの割合が50〜80質量%の範囲内にある場合には、発泡途中で架橋しすぎて発泡を阻害するおそれが少ない。
【0038】
ポリイソシアネートとしては、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、これらの変性物(例えば、カルボジイミド変性、アロファネート変性、ウレア変性、ビューレット変性、イソシヌアレート変性、オキサゾリドン変性など)およびこれらの2種以上の混合物を挙げることができる。
【0039】
芳香族ポリイソシアネートとしては、芳香族ジイソシアネート、芳香族トリイソシアネートおよびこれらのイソシアネートの粗製物(crude品)などを挙げることができる。より具体的には、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(粗製MDI)、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0040】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネートを挙げることができる。脂環式ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネートを挙げることができる。芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香脂肪族ジイソシアネートなどを挙げることができる。変性ポリイソシアネートとしては、ウレタン変性MDI、カルボジイミド変性MDI、ショ糖変性TDI、ひまし油変性MDIなどを挙げることができる。
【0041】
これらのうちで好ましいものは、TDI、MDI、粗製MDI、ショ糖変性TDI、ウレタン変性MDI、カルボジイミド変性MDIである。
【0042】
ポリイソシアネートとポリオールとの配合割合を調整することにより、下記の式で算出されるNCO%の値を所定の範囲に設定することができる。NCO%の値としては、5〜50質量%の範囲内とすることが好ましい。NCO%の値が5質量%未満では、ウレタン用組成物の粘度が十分低下せず、成形が困難になる傾向がある。一方、NCO%の値が50質量%を超えると、硬度が高くなりすぎる傾向や、硬化反応が不均一となり、ウレタンゴムの物性が低下する傾向などがある。
【数1】

【0043】
NCOインデックスは、圧縮永久歪みの観点から、50〜150の範囲内に設定することが好ましい。より好ましくは80〜130の範囲内である。なお、NCOインデックスとは、ポリイソシアネート成分のイソシアネート基と反応する水酸基を持つポリオール成分の合計当量100に対するイソシアネート基の当量を意味する。
【0044】
ウレタン用組成物には、ポリオール成分およびポリイソシアネート成分以外に、必要に応じて、発泡剤、触媒、添加剤を含めることができる。
【0045】
発泡剤には、ウレタン反応に通常使用される発泡剤を用いることができる。このような発泡剤としては、水、水素原子含有ハロゲン化炭化水素、低沸点炭化水素、液化炭酸ガスなどを挙げることができる。水素原子含有ハロゲン化炭化水素としては、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)などを挙げることができる。低沸点炭化水素としては、ブタン、ペンタン、シクロペンタンなど、沸点が−5〜70℃程度のものを挙げることができる。これらの発泡剤の含有量は、適宜定めることができる。例えば、ポリオール成分100質量部に対し、0.1〜10質量部の範囲内とすることができる。
【0046】
触媒には、ポリウレタン反応に通常使用される触媒を用いることができる。このような触媒としては、アミン系触媒、金属触媒を挙げることができる。アミン系触媒としては、トリエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、N−エチルモルホリン、ジエチルエタノールアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−ウンデセン−7、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル(カルボン酸塩)などを挙げることができる。金属触媒としては、オクチル酸第一スズ、ジラウリル酸ジブチル第二スズ、オクチル酸鉛などを挙げることができる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。触媒の含有量としては、特に限定されるものではないが、ポリオール成分100質量部に対し、0.05〜5質量部の範囲内とすることができる。
【0047】
ウレタン用組成物に好適に配合される添加剤としては、整泡剤、架橋剤、架橋促進剤、導電剤、増量剤、補強剤、加工助剤、酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、シリコーンオイル、滑剤、助剤、界面活性剤などを挙げることができる。整泡剤としては、ジメチルシロキサン系整泡剤やポリエーテル変性ジメチルシロキサン系整泡剤などのシリコーン整泡剤を挙げることができる。整泡剤の含有量としては、ポリオール成分100質量部に対し、0.1〜5質量部の範囲内とすることができる。
【0048】
スポンジロール10は、例えば、ロール成形型を用いて軸体12の外周にスポンジ層14を形成することにより製造できる。ロール成形型20は、図2に示すように、スポンジ層14の軸方向の長さに略等しい長さの円筒型22(パイプ)と、この円筒型22の両端に取り付けられてこの円筒型22の両端を閉塞するキャップ24とから構成されている。円筒型22内に軸体12を円筒型22と同軸に配置させた状態で、円筒型22の両端をキャップ24で閉塞し、型締すると、軸体12がキャップ24によって円筒型22と同軸に支持され、円筒型22内に目的とするスポンジロール10の最終ロール形状を与える成形キャビティ26が形成される。そして、このロール成形型20の成形キャビティ26内に、スポンジ層14の形成材料であるウレタン用組成物を注入し、発泡硬化させてスポンジ層14を軸体12の周囲に一体成形した後、脱型する。
【0049】
スポンジ層14の硬度(アスカーF硬度)は、スポンジロール10の用途に応じて適宜定めると良い。例えば50〜95の範囲内であることが好ましい。より好ましくは60〜90の範囲内である。また、スポンジ層14の圧縮残留歪みは、弾性回復性の観点から、10%以下であることが好ましい。より好ましくは7%以下である。
【0050】
スポンジ層14の未反応成分は、例えば、アセトンなどの有機溶剤を用いて抽出することにより、定量することができる。アセトン抽出量は、抽出前のスポンジ層14の質量に対する抽出量の割合で、2%以下であることが好ましい。より好ましくは1.5%以下である。アセトン抽出量が2%を超えるものは、スポンジ層14の表面からの未反応成分の析出が発生しやすい。
【0051】
軸体12は、例えば、鉄、ステンレス、アルミニウム、鉄にメッキを施したもの等の金属、またはポリアセタール(POM)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、ポリカーボネート、ポリアミド等のプラスチックが挙げられる。また、軸体12の外周面には、必要に応じて、接着剤やプライマー等が塗布されていても良い。
【0052】
このような構成のスポンジロール10は、例えば、電子写真機器のトナー供給ロールやクリーニングロールなどに好適に用いられる。
【実施例】
【0053】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0054】
(実施例1)
<ウレタン用組成物の調製>
ポリエーテルポリオール(PPG<1>、三洋化成工業社製、1級水酸基84%、OH価=50)100質量部と、2官能のイソシアネート(TDI、三井化学ポリウレタン社製「コスモネートT80」、NCO48%)21.7質量部と、多官能のイソシアネート(crude−MDI、日本ポリウレタン社製「ミリオネートMR200」、NCO31%)9.3質量部と、架橋剤(ジエタノールアミン)0.5質量部と、シリコーン系整泡剤(東芝シリコーン社製「L650」)1.0質量部と、水2.0質量部と、触媒(トリエチレンジアミン)0.2質量部と、触媒(ペンタメチルジエチレントリアミン)0.3質量部とを混合することにより、ウレタン用組成物を調製した。
【0055】
<スポンジロールの作製>
ロール成形型のパイプ型内に、直径5mmのSUM22製中実円柱状の軸体を同軸に配置し、パイプ型の両端をキャップにて閉塞するとともに軸体を支持した。この状態において、発泡体比重が0.13(g/cc)となるように、成形キャビティ内にウレタン用組成物を注入し、60℃×30分間の条件にて発泡硬化させ、軸体の周りにポリウレタンのスポンジ層(厚み3mm)が一体的に形成されてなるスポンジロールを作製した。
【0056】
(実施例2〜9、比較例1〜4)
表1に記載の配合組成(質量割合)とした以外は実施例1と同様にしてスポンジロールを作製した。なお、用いた各材料は以下の通りである。
・PPG<2>、三洋化成工業社製、1級水酸基80%、OH価=29
・PPG<3>、三洋化成工業社製、1級水酸基94%、OH価=29
・PPG<4>:三洋化成社製「サンニックスGP3000」、1級水酸基0%、水酸基価56
・PPG<5>:三洋化成社製「サンニックスGL3000」、1級水酸基70%、水酸基価56
・2官能イソシアネート(MDI、日本ポリウレタン社製「ミリオネートMT」、NCO34%)
【0057】
各ウレタン用組成物の硬化物について、硬度、圧縮残留歪みを測定した。また、作製した各スポンジロールについて、硬化収縮および画像の評価を行った。また、作製した各スポンジロールについて、アセトンによる抽出量を測定した。測定方法および評価方法は以下の通りである。これらの結果を表1に示した。また、各ポリエーテルポリオール(PPG<1>〜PPG<5>)の組成(質量割合)を表2に示した。
【0058】
(硬度)
アルミ製の直方体状の金型に発泡比重0.13となるように材料を注入し、60℃で30分硬化発泡させた後、金型からブロック形状の発泡体を取り出して、評価用の試験片とした。この試験片を用いて、アスカーF硬度を測定した。
【0059】
(圧縮残留歪み)
作製した試験片を70℃の恒温条件下で1週間放置させた後、JIS K6400(2007年)に準拠して圧縮残留歪みを測定した。
【0060】
(硬化収縮)
スポンジロールを成形型から脱型した後に、硬化収縮し、スポンジロールの形状が変化したものを不良「×」とし、脱型後に形状の変化は見られるが、クラッシングにより形状が戻ったものを合格「○」とし、脱型後に形状の変化がなかったものを特に良好「◎」であるとした。
【0061】
(アセトンによる抽出量)
作製したスポンジロールについて、アセトンを用いて80℃で40時間ソックスレー抽出を行った後、スポンジロールを70℃で16時間乾燥させ、スポンジロールの重量減少分を抽出量とした。この際、抽出量が2%以下の場合を良好と評価した。
【0062】
(画像評価)
スポンジロールをトナー供給ロールとして市販のカートリッジに組み込み、40℃×95%RH環境下で1週間放置した後、当該カートリッジを市販のプリンター(キヤノン社製、商品名「LBP2510」)に装着し、画出し評価を行った。ウレタンの未反応成分により画像にスジが発生したものを「×」、極僅かにスジが見られるものを「○」、スジがまったく発生しなかったものを「◎」とした。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
比較例1〜2では、ポリエーテルポリオールの1級水酸基の割合が少ないため、ポリエーテルポリオールの未反応成分が多くなり、画像不具合が生じた。また、比較例3〜4では、2官能イソシアネートの割合が少なく、多官能イソシアネートの割合が多いため、成形型内での発泡成形時にスポンジ層の硬化収縮が発生した。
【0066】
これに対し、実施例では、ポリエーテルポリオールの未反応成分が少なく、画像に不具合が生じていないことが確認できた。また、成形型内での発泡成形時にスポンジ層の硬化収縮が発生していないことが確認できた。
【0067】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0068】
例えば、上記実施形態においては、軸体12の外周にスポンジ層14が形成されたスポンジロール10を示したが、本発明のスポンジロールは、スポンジ層の外周に、所定の機能を付与する目的で、必要に応じて樹脂組成物の表面層を形成したものであっても良いし、スポンジ層の表面に、所定の機能を付与する目的で、必要に応じて表面処理を施したものであっても良い。
【符号の説明】
【0069】
10 スポンジロール
12 軸体
14 スポンジ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、前記軸体の外周に形成されたポリウレタンのスポンジ層とを有する電子写真機器用スポンジロールにおいて、
前記スポンジ層は、下記のa〜b成分を含有するウレタン用組成物が成形型内で発泡・硬化されて形成されたものであることを特徴とする電子写真機器用スポンジロール。
(a)下記のa1〜a3成分を含み、ポリオール成分全体の水酸基に占める1級水酸基の割合がモル比で80%以上であるポリオール成分
(a1)末端が2級水酸基であるポリオキシプロピレンポリオール
(a2)末端がエチレンオキサイドにより1級水酸基とされたポリオキシプロピレンポリオール
(a3)末端がプロピレンオキサイドにより1級水酸基とされたポリオキシプロピレンポリオール
(b)2官能のイソシアネートを含み、ポリイソシアネート成分全体に占める2官能のイソシアネートの割合が30質量%以上であるポリイソシアネート成分
【請求項2】
前記b成分は3官能以上の多官能のイソシアネートを含み、前記多官能のイソシアネートに対する前記2官能のイソシアネートの質量割合は、(2官能のイソシアネート)/(多官能のイソシアネート)で、50/50〜80/20の範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の電子写真機器用スポンジロール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−137519(P2012−137519A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287965(P2010−287965)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】