説明

α−オレフィンポリマーの製造法

α−オレフィンポリマーの製造法であって、少なくとも1のα−オレフィンを、α−オレフィンポリマーの粒子を含有する機械的攪拌床式気相反応器へ供給すること、および上記α−オレフィンを、チタン化合物、マグネシウム化合物、アルミニウム−アルキル化合物および任意的な有機シランドナーに基づく触媒の存在下で重合させることを含む方法において、エトキシル化アミン、脂肪酸エステル、ジエタノールアミド、エトキシル化アルコール、アルキルスルホネートおよびアルキルホスフェートの群から選択される少なくとも1の化合物が100ppm未満の量で上記重合中に存在するところの方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式CH2=CHR(ここで、Rは1〜10の炭素原子数を有するアルキルまたはアリール基である)のオレフィンのポリマーおよびコポリマーの製造法であって、活性形のハロゲン化マグネシウムに担持されたチタン化合物およびAlアルキル化合物から得られる高活性触媒の存在下での気相中での少なくとも1の(共)重合工程を含むところの方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1以上のオレフィンの重合法が知られており、これは、いわゆるチーグラーナッタ触媒の存在下で流動床または機械的攪拌床の反応器中で気相中で行われる。
【0003】
これらの型の方法では、反応熱が、反応器内に置かれたまたは反応ガスの再循環ラインに置かれた熱交換器によって除去される。
【0004】
この型の重合法、特に流動式気相反応器中での重合法において通常遭遇する問題は、既に存在する細かい触媒粒子から生成される、または触媒自体の破壊の結果として生じるおよびポリマー粒子の磨耗から生じる非常に細かいポリマー粒子の存在に起因する。これらのいわゆる微粒子は、ガスおよび再循環流とともにポリマー床の外に引かれ、そして反応器の壁にまたは、反応器に連結した膨張ゾーン、水平に攪拌される気相反応器中に存在する1または2以上の反応器ドーム、配管、コンデンサーおよび熱交換器中に沈着する傾向にある。
【0005】
これらの微粒子は、反応器、膨張部、ドームおよび熱交換器の内壁に沈着し、それによって、断熱効果およびより低い熱移動を引き起こし、反応器中にホットスポットを生じる。
【0006】
これらの影響は、気相α−オレフィン重合法が、高活性触媒、例えばアルミニウムアルキルと活性形のハロゲン化マグネシウムに担持されたチタン化合物との反応生成物(チーグラーナッタ触媒)および任意的に有機シラン化合物を含むもの、の存在下で行われるときに高められる。
【0007】
これらの問題は、ガス、触媒およびポリマー粉末の高流動故に流動式気相反応器においてほとんど一般的に起こり、静止状態を作り出す。したがって、流動式気相反応器でのこれらの問題の解決は、文献において比較的多く注目されている。しかし、この問題は、水平または垂直に攪拌される、機械的攪拌式ガス反応器では、付着物の原因として認識されていない。
【0008】
欧州特許出願EP359444は、オレフィン重合速度を低下させるために、重合阻害剤または触媒を壊すことができる物質から選択される抑制剤の少量(一般的には重合混合物に関して0.1ppmより少ない量)を重合反応器に導入することを記載している。しかし、上記特許出願に記載されているように、より多量の抑制剤を使用することは、製造されるポリマーの品質および特性の両方、例えばメルトインデックス、メルトフローレートおよび/またはポリマーの立体規則性、に悪影響を及ぼすとともにプロセスの効率を低下させる。
【0009】
欧州特許出願EP560035は、アルキルアルミニウム化合物と反応可能な少なくとも2の基を有しかつ850ミクロン未満の粒子上での重合を阻害することができる化合物の使用を記載している。これらの化合物は、100ppmより多い量で使用される。使用される化合物は一般に、触媒毒または少なくとも阻害剤と考えられる。
【0010】
この方法は、触媒の活性を低下させるという第一の欠点を有するが、さらにより重要なことは、最終のプロピレンポリマーの生成物特性に影響を及ぼすことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、機械的攪拌床式反応器、特に水平機械的攪拌床式反応器、および再循環システムの付着物の問題の解決を、製造されるポリマーの重要な生成物特性に実質的に影響を及ぼすことなく提供することである。特に、メルトフローレートおよび嵩密度はあまり影響されるべきでない。本発明は、比較的少量の特定の化合物が、気体状重合混合物に添加されると、付着物を減少させ、同時に他の生成物特性を不変のままにする(ただし低下する傾向にある凝集を除く)という発見に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は従って、α−オレフィンポリマーの製造法であって、少なくとも1のα−オレフィンを、α−オレフィンポリマーの粒子を含有する機械的攪拌床式気相反応器へ供給すること、および上記α−オレフィンを、ハロゲン化マグネシウムに担持されたチタン化合物、アルミニウム−アルキル化合物および任意的な有機シラン化合物(しばしば立体規則性制御剤または外部ドナーと言う)に基づく触媒の存在下で重合させることを含む製造法に関し、上記方法において、エトキシル化アミン、脂肪酸エステル、ジエタノールアミド、エトキシル化アルコール、アルキルスルホネートおよびアルキルホスフェートの群から選択される少なくとも1の化合物が100ppm未満の量で上記重合中に存在する。
【0013】
好ましくは、添加される化合物が、エトキシル化アミン、好ましくはN−アルキルジエタノールアミンである。上記化合物は、プロピレンの量(重量)に基づいて100ppm未満の量で添加される。好ましい量は、5〜80ppmである。特に、より少ない量が、非常に有効かつ良好な効果を有することが分かった。
【0014】
上記化合物は、再循環している気相または液相に、または反応器に直接、添加され、好ましくは触媒成分が反応器に入っているところに接近して添加される。原則として、上記化合物は、反応器に入る通常の気体または液体モノマー流とともに添加され得る。助触媒注入流またはシランドナー流を介する添加も可能である。上記化合物が重合中に存在することが重要である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の方法により、反応器壁の付着物および/または反応器の充填および排出パイプの詰まりが回避され、同時に、プロセス効率、触媒収率および生成物の品質を保持する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の方法は、オレフィンの(コ)ポリマーの製造に関し、上記方法は、機械的攪拌床が維持されるところの気相中で、(1)任意的に電子ドナーを含む活性形のマグネシウムジハライドに担持されたチタン化合物を含む固体触媒成分と(2)アルキルアルミニウム化合物との、任意的に電子ドナーの存在下での反応の生成物を含む触媒の存在下で、少なくとも1の(共)重合工程を含む。
【0017】
一般に、本発明の方法は、機械的攪拌床式反応器中でチーグラーナッタ型触媒を使用し、気相の再循環を伴う、あらゆる型のプロピレン重合に適用され得る。この機械的攪拌床は、当業者に知られている論文、発表および本に、または例えばEP Moore編のプロピレンハンドブック(Hanser Verlag, 1996)に記載されているように、水平式または垂直式であり得る。
【0018】
本発明の方法では、プロピレンホモポリマーまたは1以上の種類のコモノマーを包含するプロピレンコポリマーのいずれかが製造され得る。好ましくは、プロピレンコポリマーが製造される場合には、コモノマーがα−オレフィンの群から選択され、より好ましくはC2−C8α−オレフィンの群から、さらにより好ましくはC2−C4α−オレフィンの群から選択される。コモノマーがエチレンであるのが特に好ましい。
【0019】
さらに好ましくは、プロピレンを重合するための記載された方法が、一段法で、またはプロピレンホモポリマーまたはコポリマーを製造する一連の重合反応器を含み得る多段法で行われる。使用される反応器は、機械的攪拌床式気相反応器であり、当該技術分野で知られているように、水平式または垂直式であるが、より好ましくは水平式である。この反応器は、流動床反応器とは対照的に、機械的に撹拌される。
【0020】
重合は、高収率チーグラーナッタ触媒および任意的に水素または他の分子量制御剤の存在下で行われる。
【0021】
上記方法では、慣用の反応条件、例えば温度、圧力、不活性希釈剤の存在、触媒−モノマー比、重合時間など、が使用され得る。
【0022】
重合温度は典型的には、50〜110℃、より好ましくは60〜90℃、さらにより好ましくは60〜80℃である。反応器中の圧力は、好ましくは20〜100バール、好ましくは30〜60バールであり、気相反応器中では40バールより下、より好ましくは10〜40バールである。
【0023】
「チーグラーナッタ触媒」は、4〜8族の遷移金属、好ましくは4〜6族の遷移金属、および上記金属の原子価を満たす1以上のリガンドを含む遷移金属化合物を意味する。リガンドは好ましくは、有機アルミニウム化合物と組み合わせられたマグネシウム含有化合物上に担持された(またはそれと共沈されたまたはそれと反応した)ハライド、アルコキシ、ヒドロキシ、オキソ、アルキルおよびそれらの組合せである。チーグラーナッタ触媒は、メタロセンまたは他のシングルサイト触媒を除外する。
【0024】
同じように、チーグラーナッタプロ触媒系は、4〜6族遷移金属化合物、マグネシウム化合物および内部ドナーを特徴とする。好ましくは、上記遷移金属化合物がTi、VまたはCr、最も好ましくはTiである。そのような好ましい遷移金属化合物は、ハロゲン化チタン、チタンアルコキシド、ハロゲン化バナジウムおよびそれらの混合物を包含し、特にTiCl、TiCl、VOClとTiClとの混合物およびVClとTiClとの混合物、を包含する。適するマグネシウム化合物は、ハロゲン化マグネシウム、例えば塩化マグネシウム、マグネシウムアルコキシド、ジアルキルマグネシウム化合物、例えばジエチルマグネシウム、および有機マグネシウムハライド(すなわちグリニャール試薬)、例えばメチルマグネシウムクロライド、エチルマグネシウムクロライド、およびブチルマグネシウムブロマイド、を包含する。内部ドナーはしばしば、有機エステル、例えばエチルベンゾエート、ジエステル、例えばジアルキルフタレート、エーテル、ジエーテル、例えば1,3−ジメトキシプロパン誘導体、ケトン、アミドおよびそれらの組合せである。
【0025】
助触媒成分は、アルミニウムアルキル化合物であり、好ましくは一般式AlR3−n(Rは1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル基を表わし、Xはハロゲンを表わし、nは0、1、2または3を表わす)のものである。
【0026】
上記化合物に加えて、少なくとも1の電子ドナーも存在し、一般には、シラン、例えばシクロヘキシルメチルジメトキシシラン(CHMDMS)、ジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)、ジ−イソプロピルジメトキシシラン(DIPDMS)、イソ−ブチル−イソ−プロピルジメトキシシラン(IBIPDMS)またはジ−イソ−ブチルジメトキシシラン(DIBDMS)である。
【0027】
触媒成分の量は、アルミニウムアルキルとCとの、電子ドナーとCとの、アルミニウムアルキルとTiとの、および電子ドナーとTiとのモル比として定義される。
【実施例】
【0028】
次に、本発明を下記実施例に基づいて説明する。
【0029】
実施例
プロピレンを、新鮮なプロピレンの連続供給を伴う機械的撹拌床式反応器中で、ZNプロ触媒(塩化マグネシウム/塩化チタン/内部ドナー)、トリエチルアルミニウム(TEA)、およびジアルキル−ジメチルシランを含む、チーグラーナッタ触媒系に基づく触媒を使用して重合した。TEA/Tiモル比は104であり、シラン/Tiモル比は11であった。気相は、プロピレンと、少量の窒素、アルカン希釈剤およびプロパンを21バールの合計圧力で含んでいた。ある量のN−アルキル−ジエタノールアミン(Atmer 163)を、上記アルミニウムアルキルおよびシランドナーと共に反応器に添加した。
【0030】
すでに存在するTEAおよびシランドナーとともに21バールで平衡にされた反応器中にZNプロ触媒を導入することによって50℃で重合を開始し、5分のスタートアップ期間中に76℃の重合温度に達した。
【0031】
重合を60分後に停止した。
【0032】
反応器の壁およびカバー上に作られたポリマーを示すサインは、気相中の(ポリマー床中ではない)熱電対の温度である。ポリマー粒子が反応器の壁およびカバーの表面を覆っているとき、冷却器のカバーへの熱移動が減少する。熱移動の減少は、この熱電対によって測定される気相温度の上昇を引き起こす。温度変化の時間プロファイルおよびその広がりにより、ポリマー沈着の始まり、その大きさ/広がりが決定され得る。
【0033】
表に、結果が、気相に添加されたN−アルキル−ジエタノールアミンの量に依存して示される。
【0034】
【表1】

【0035】
比較例
O実験(2および5ppm)およびO実験(1.9ppm)
N−アルキル−ジエタノールアミンを反応器に添加する代わりに、所定量の酸素または水(プロピレン中の混合物として供給)が反応器に添加された後、反応がZNプロ触媒を添加することにより開始された。
【0036】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
α−オレフィンポリマーの製造法であって、少なくとも1のα−オレフィンを、α−オレフィンポリマーの粒子を含有する機械的攪拌床式気相反応器へ供給すること、および上記α−オレフィンを、チタン化合物、マグネシウム化合物、アルミニウム−アルキル化合物および任意的な有機シランドナーに基づく触媒の存在下で重合させることを含む方法において、エトキシル化アミン、脂肪酸エステル、ジエタノールアミド、エトキシル化アルコール、アルキルスルホネートおよびアルキルホスフェートの群から選択される少なくとも1の化合物が100ppm未満の量で上記重合中に存在するところの方法。
【請求項2】
該少なくとも1の化合物の量が5〜80ppmである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
該少なくとも1の化合物がエトキシル化アミン、好ましくはN−アルキル−ジエタノールアミンである、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
3〜5の炭素原子を有するα−オレフィンが、全気体に関して20〜90%のモル濃度で気相中に存在する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
該α−オレフィンがプロピレンである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
該チタン化合物が少なくとも1のハライド−Ti結合を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
該Alアルキル化合物が、トリエチルアルミニウムまたは他のトリアルキルアルミニウムから選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
気相が反応器の上で少なくとも部分的に再循環される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
該撹拌床式気相反応器が水平式である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
該撹拌床式気相反応器が垂直式である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。


【公表番号】特表2011−525940(P2011−525940A)
【公表日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516167(P2011−516167)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【国際出願番号】PCT/NL2009/050376
【国際公開番号】WO2009/157770
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(500586141)ビーエーエスエフ コーポレーション (12)
【Fターム(参考)】