説明

うろこ状皮膜除去方法

【課題】ガラス表面に固着したアルカリ性物質等のうろこ状皮膜を除去する方法を提供する。
【解決手段】ガラス表面に固着したうろこ状皮膜を中和反応して軟化させる作用を有する酸性の軟化処理材を、前処理として前記うろこ状皮膜に塗布して、該うろこ状皮膜を軟化させ、然る後、前記軟化したうろこ状皮膜に、洗剤に微粒子状の研磨材を混合して製造された皮膜除去クリーナーを塗布し、研磨用パッドで軽く研磨して除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温泉やサウナ等の温浴施設の窓ガラスや鏡、自動車等の窓ガラス、磁器、陶器に、アルカリ(塩基)性物質が付着して硬く固って固着したうろこ状皮膜に、前処理として酸性の軟化処理材を塗布して軟化させ、然る後、前記軟化したうろこ状皮膜に、洗剤に研磨材を混合して製造された皮膜除去クリーナーを塗布して、前記軟化したうろこ状皮膜を、研磨用パッドで軽く研磨して除去するようにしたうろこ状皮膜除去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特に、温泉やサウナ等の温浴施設の窓ガラスや鏡、あるいは自動車の窓ガラスに付着した珪酸塩、炭酸塩、アルミニウム化合物、カルシウム化合物およびマグネシウム化合物等、アルカリ(塩基)性物質が乾燥したガラス表面に固着して化石化して、「うろこ」と称される強固なうろこ状皮膜がガラス表面に製造されると、前記うろこ状皮膜は、人間の歯の隙間に歯石が溜まる状態に似ていて、その除去には多大な労力が必要となる。
【0003】
従来、前記ガラス表面に固着したうろこ状皮膜を除去する方法として、単に研磨材を用いてガラス表面を研磨して、うろこ状皮膜を除去する方法が用いられていた。
【0004】
そして、ガラス表面に固着したうろこ状皮膜を除去する皮膜除去材の先行技術につき、特許文献を遡及検索したところ、下記の特許文献1に開示された皮膜除去材が公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-17290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来のように、研磨材を用いてガラス表面のうろこ状皮膜を除去するには、かなりの費用と労力を必要とするという課題があった。
【0007】
更に、前記従来のうろこ状皮膜除去方法において、研磨材を使用してガラスの表面を研磨すると、該研磨材によってガラスの表面が削られて、該ガラスの表面に微細な傷が発生するという課題があった。
【0008】
一方、労力のかからない方法として、研磨材を含まない液状製品が販売されている。これら製品には、フッ化水素酸および酸性フッ化アンモニウムが配合され、また、前記成分に加え酸性フッ化ナトリウムが配合されることもあるが、フッ化水素酸は毒物であり、酸性フッ化アンモニウムは劇物であって、危険を伴うという課題があった。
【0009】
前記研磨材を含まない液状製品は、うろこ状皮膜を非常によく除去する能力を有しているが、同時に、前記製品に含まれるフッ化水素酸、酸性フッ化アンモニウム、および酸性フッ化ナトリウムは、いずれもガラスを溶解侵食する性質があり、またフッ化水素酸および酸性フッ化アンモニウムは、作業者の皮膚を侵す性質を有している。従って、前記製品は、毒性物取扱資格者以外の一般ユーザーには販売できないという課題があった。
【0010】
また、前記特許文献1に開示された皮膜除去材は、フッ化水素酸のような毒物や酸性フッ化アンモニウムのような劇物の何れも含有していないので、極めて安全性の高い皮膜除去材であるが、特許文献1の皮膜除去材をガラス面のうろこ状皮膜に塗布して暫く放置すると、前記皮膜除去材に含まれている溶媒成分が蒸発し、有機金属化合物を中心とした金属化合物によって製造された白色固体皮膜が、後に残ってうろこ状皮膜に密着して、該金属化合物の層に無数の亀裂が生じ、前記うろこ状皮膜がガラス面から容易に脱落し易い状態となり、その後、通常の研磨材入り油膜除去材でガラス表面を擦ると、油膜除去材が前記白色固体皮膜に接触した瞬間に、該白色固体皮膜が加水分解され、ガラス面から消失し、そして、ガラス面に製造されたうろこ状皮膜は前記油膜除去材によって容易に擦り取られて除去される旨、記載されている。
【0011】
しかしながら、前記特許文献1の記載の皮膜除去材では、ガラス表面のうろこ状皮膜を軟化させるという作用はなく、単にうろこ状皮膜に亀裂を生じさせるのみであるため、研磨材で強く研磨しないと、該うろこ状皮膜を除去できないという課題がある。
【0012】
本発明は、前記課題を解決すべくなされたものであって、ガラス表面に固着したうろこ状皮膜がアルカリ性物質より成るので、これを中和反応して軟化させる作用を有する酸性の軟化処理材を、前処理として塗布して、うろこ状皮膜を軟化させ、然る後、前記軟化したうろこ状皮膜を、洗剤に微粒子状の研磨材を混合して製造された皮膜除去クリーナーで研磨して除去するようにしたうろこ状皮膜除去方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、ガラス表面に固着したうろこ状皮膜を中和反応して軟化させる作用を有する酸性の軟化処理材を、前処理として前記うろこ状皮膜に塗布して、該うろこ状皮膜を軟化させ、然る後、前記軟化したうろこ状皮膜に、洗剤に微粒子状の研磨材を混合して製造された皮膜除去クリーナーを塗布し、研磨用パッドで軽く研磨してうろこ状皮膜除去するようにするという手段を採用することにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、温泉やサウナ等の温浴施設の窓ガラスや鏡、自動車等の窓ガラス、磁器、陶器に、アルカリ(塩基)性物質が付着して硬く固って固着したうろこ状皮膜に、酸性の軟化処理材を塗布して軟化させ、然る後、前記軟化したうろこ状皮膜に、洗剤に研磨材を混合攪拌して製造された皮膜除去クリーナーを塗布して、前記軟化したうろこ状皮膜を、強く研磨することなく、研磨用パッドにより軽く研磨するだけで、ガラス表面を傷付けることなく、うろこ状皮膜が除去されるので、新品のガラス同様の美麗な表面とすることができる。更に、本発明うろこ状皮膜除去方法によれば、ガラス表面を強く研磨する必要がなく、軽く研磨用パッドで研磨するだけなので、うろこ状皮膜除去作業が比較的軽作業で、簡単、且つ容易に、然も短時間ででき、従ってコストも安いという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ガラス表面に固着したうろこ状皮膜を中和反応して軟化させる作用を有する酸性の軟化処理材を、前処理として前記うろこ状皮膜に塗布して、該うろこ状皮膜を軟化させ、然る後、前記軟化したうろこ状皮膜に、洗剤に微粒子状の研磨材を混合して製造された皮膜除去クリーナーを塗布し、研磨用パッドで軽く研磨して除去することにより、ガラス表面を傷付けることなく、うろこ状皮膜を除去することができる。
【実施例】
【0016】
温泉やサウナ等の温浴施設の窓ガラスや鏡、自動車等の窓ガラスに付着するうろこ状皮膜は、温泉水や水道水等の水質中に含まれる金属イオンと水が化合物となり、水酸化イオンをもった状態で生成される。
【0017】
本発明は前記メカニズムでガラス面に付着して生成されたうろこ状皮膜は、前記したように、温泉水や水道水等の水質中に含まれる金属イオンと水が化合物となり、水酸化イオンをもった状態で生成される。すなわち、アルカリ(塩基)性物質が付着して硬く固化したものであるので、該うろこ状皮膜に、前処理として、酸性の軟化処理材を塗布して、前記うろこ状皮膜を軟化させ、然る後、該軟化したうろこ状皮膜に、洗剤に微粒子状の研磨材を混合攪拌して製造された皮膜除去クリーナーを塗布して、電動ポリッシャー等の研磨用パッドを用いて、前記軟化したうろこ状皮膜を軽く研磨して除去するようにしたうろこ状皮膜除去方法である。以下、本発明について詳細に説明する。
【0018】
本発明うろこ状皮膜除去方法において、前処理材として使用する酸性の軟化処理材は、精製水に酸性の化学物質である酢酸、クエン酸、塩酸およびフィチン酸を混合攪拌して製造された水溶液である。
【0019】
前記各化学物質の精製水への混合割合は、前記うろこ状皮膜に塗布して軟化テストを繰返した結果、精製水100重量%に対して、酢酸1〜5重量%、好ましくは2〜4重量%、クエン酸1〜5重量%、好ましくは2〜4重量%、塩酸1〜5重量%、好ましくは2〜4重量%、フィチン酸10〜15重量%、好ましくは12〜14重量%を混合して攪拌し、pH2〜3程度として製造された酸性の軟化処理材が、該うろこ状皮膜を軟化させるには最適であった。
【0020】
なお、前記精製水に混合する化学物質は、何れも酸性の化学物質であるため、これら化学物質は、前記記載のすべてのものを使用する必要はなく、1つの化学物質、または複数の化学物質の組み合わせであってもよい。その場合の精製水への混合比率は、1つの化学物質、または複数の化学物質の組み合わせであっても、前記の混合比率をそのまま適用しても、充分うろこ状皮膜を軟化させることができる。
【0021】
前記前処理材としての酸性の軟化処理材をうろこ状皮膜に塗布すると、該うろこ状皮膜が中和反応により軟化する。
【0022】
次に、前記軟化したうろこ状皮膜に皮膜除去クリーナーを塗布するが、該皮膜除去クリーナーは、前記軟化したうろこ状皮膜に塗布して、研磨除去するテストを繰返した結果、特に限定する必要はないが、好ましくは、トウモロコシ等の植物系の天然素材より成る界面活性剤を含む洗剤100重量%に対して、粒径が10μm程度の微粒子状のシリカ系研磨材20〜25重量%、好ましくは22〜24重量%、アルミナ系研磨材10〜15重量%、好ましくは12〜14重量%、セリウム系研磨材1〜5重量%、好ましくは2〜4重量%を添加混合して製造された軟化処理材が、該軟化したうろこ状皮膜を研磨して除去するには最適であった。
【0023】
なお、前記皮膜除去クリーナーは、3種類の研磨材を洗剤に添加混合して製造されているが、前記記載のすべての研磨材を使用する必要はなく、1つの研磨材、または複数の研磨材の組み合わせであってもよい。その場合の洗剤へ添加混合する混合比率は、1つの研磨材、または複数の研磨材の組み合わせであっても、前記の混合比率をそのまま適用しても、充分軟化したうろこ状皮膜を研磨して除去することができる。
【0024】
そして、前記皮膜除去クリーナーを、前記軟化処理材の作用により軟化したうろこ状皮膜に塗布し、然る後、電動ポリッシャーやスポンジ等の研磨用パッドを用いて、前記軟化したうろこ状皮膜を軽く研磨して除去する。なお、前記皮膜除去クリーナーは微粒子状に製造されていると共に、既にうろこ状皮膜が軟化しているので、強く研磨することなく、軽く研磨することによって除去されるために、ガラス面が研磨材によって傷つくことがない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス表面に固着したうろこ状皮膜を中和反応して軟化させる作用を有する酸性の軟化処理材を、前処理として前記うろこ状皮膜に塗布して、該うろこ状皮膜を軟化させ、然る後、前記軟化したうろこ状皮膜に、洗剤に微粒子状の研磨材を混合して製造された皮膜除去クリーナーを塗布し、研磨用パッドで軽く研磨して除去するようにしたことを特徴とするうろこ状皮膜除去方法。
【請求項2】
請求項1記載の軟化処理材が、精製水100重量%に対して、酢酸1〜5重量%、クエン酸1〜5重量%、塩酸1〜5重量%、およびフィチン酸10〜15重量%を混合攪拌して、pH2〜3程度として製造されたものであることを特徴とするうろこ状皮膜除去方法。
【請求項3】
請求項1記載の軟化処理材が、精製水100重量%に対して、酢酸1〜5重量%、クエン酸1〜5重量%、塩酸1〜5重量%、およびフィチン酸10〜15重量%のうち、少なくとも1種類を混合攪拌して、pH2〜3程度として製造されたものであることを特徴とするするうろこ状皮膜除去方法。
【請求項4】
請求項1記載の皮膜除去クリーナーが、植物系の天然素材より成る界面活性剤を含む洗剤100重量%に対して、粒径が10μm程度の微粒子状のシリカ系研磨材20〜25重量%、アルミナ系研磨材10〜15重量%、およびセリウム系研磨材1〜5重量%を混合攪拌して製造されたものであることを特徴とするするうろこ状皮膜除去方法。
【請求項5】
請求項1記載の皮膜除去クリーナーが、植物系の天然素材より成る界面活性剤を含む洗剤100重量%に対して、粒径が10μm程度の微粒子状のシリカ系研磨材20〜25重量%、アルミナ系研磨材10〜15重量%、およびセリウム系研磨材1〜5重量%のうち、少なくとも1種類を混合攪拌して製造されたものであることを特徴とするするうろこ状皮膜除去方法。

【公開番号】特開2010−163299(P2010−163299A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5364(P2009−5364)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(509014630)
【Fターム(参考)】