説明

かご状オリゴシロキサンの修飾方法

【解決手段】 シラノール部位を有するかご状オリゴシロキサンと下記一般式(1)で表されるオルガノアシロキシシランとを反応させることを特徴とするかご状オリゴシロキサンの修飾方法。
【化1】


(式中、R1は置換又は非置換の炭素数1〜40の1価炭化水素基あるいは水素原子であり、同一分子における複数のR1は互いに異なっていてもよい。R2は置換又は非置換の炭素数1〜20の1価炭化水素基を表す。nは0〜3の整数を表す。)
【効果】 本発明の方法により、かご状オリゴシロキサンの修飾を温和な条件下で行うことができるため副反応が抑制され、高収率である。また、様々な官能基を導入することができるため汎用性が高く、副生成物が少なく、反応の後処理が簡便である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かご状オリゴシロキサンの修飾方法に関する。かご状オリゴシロキサンはポリマー変性剤、ポリマー添加剤、有機−無機ハイブリッドやナノコンポジット用のビルディングブロック等として有用である。
【背景技術】
【0002】
かご状オリゴシロキサン類は、近年そのユニークな構造に加えて各種官能基が導入できることにより、種々の応用が図られている化合物である。例えば米国特許第6362279号明細書(特許文献1)には、各種ポリマーに添加して難燃性を向上させる方法が記載されており、また、国際公開特許01/72885号パンフレット(特許文献2)では同様に各種ポリマーに添加することにより機械特性を向上させている。官能基を有するかご状オリゴシロキサンを重合性モノマーとして使用することにより、かご状オリゴシロキサンを有するポリマーを合成する報告も多くなされており、Macromolecules,2004年,37巻,p1276−1282(非特許文献1)ではノルボルネン、Macromolecules,2003年,36巻,p9122−9127(非特許文献2)ではアミン、Macromolecules,2004年,37巻,p99−109(非特許文献3)ではアミンやエポキシドの各種官能基で修飾したかご状オリゴシロキサンが用いられている。
【0003】
有機官能基を導入したかご状シロキサンを得るためには、所望の有機官能基とアルコキシ基等の加水分解性基を有するシランから直接かご状オリゴシロキサンを構築する方法がもっとも簡便である。しかし、この方法では二つ以上の有機基を導入する場合に生成物が必然的に多くの化合物の混合物となるため、求められる性能が十分に発揮されないことがある。そこで、まず反応性部位を有するかご状オリゴシロキサンを中間体として得た後、それを他の有機基に変換する手法が広く用いられている。
【0004】
このような反応性部位を有するかご状オリゴシロキサン類を有機基で修飾するためには、これまでに主に次の方法が報告されている。即ち、(i)シラノール部位を有するかご状オリゴシロキサンのシリル化、(ii)オレフィンやハロアルキル基等有機官能基を有するかご状オリゴシロキサンの官能基変換(付加、オレフィンメタセシス、酸化、求核置換等)等である。
【0005】
(i)の方法は、種々の官能基を有するシリル化剤が入手可能であり、共通の中間体を経由して様々な官能基を導入できることから広範に用いられている。(ii)の方法では、導入できる官能基の種類が限られる上に、官能基に応じた前駆体が必要であり、汎用性に劣る。
【0006】
従来、かご状オリゴシロキサンのシリル化は、シリル化剤としてクロロシラン又はアルコキシシランを用いて行われている。クロロシランをシリル化剤として用いる場合には、塩基の添加は必ずしも必要でないが、反応を完結させるため、また発生する酸が強酸であり、官能基に作用するおそれがあるため、中和のためにアミン等の塩基を1当量以上、通常過剰量用いて反応を行う。従って、反応終了時には塩が生成し、塩除去工程が必要であった。また、シラノールは塩基性条件で縮合しやすいため、反応剤として多量の塩基を用いると原料が自己縮合して収率が低下することがあった。
【0007】
他方、アルコキシシランをシリル化剤として用いる場合には、例えば国際公開特許03/64490号パンフレット(特許文献3)や国際公開特許03/42223号パンフレット(特許文献4)、特開2004−51847号公報(特許文献5)には塩基触媒を用いてアルコキシシランとシラノール部位を有するかご状オリゴシロキサンとを反応させる方法が開示されている。この場合もまた塩基性条件で原料が自己縮合しやすいため高収率で目的物を得難い。更に、塩基触媒による不均化や再分配によって原料や生成物が消費され、収率が低下するおそれがある。
【0008】
また、p−トルエンスルホン酸を触媒としてメルカプトプロピルトリメトキシシランとトリシラノールを反応させる方法がEur.J.Inorg.Chem.,1998年,p813−817(非特許文献4)に記載されている。しかし、不揮発性の強酸を用いて反応を行うと目的物から完全にそれを取り除くことが難しく、そのことが目的物の保存安定性の低下につながることがある。
【0009】
アミノ基含有アルコキシシランとシラノール部位を有するかご状オリゴシロキサンの反応が無触媒かつ温和な条件で進行することが、特開2004−51848号公報(特許文献6)に開示されている。この方法ではアミノ基を有するかご状オリゴシロキサンの合成が高効率で行えるものの、他の官能基を有する化合物の合成には適用することができない。
【0010】
このように、既存のかご状オリゴシロキサンの修飾のための方法は必ずしも満足とはいえず、汎用性があり収率の高い方法が求められていた。
【0011】
【特許文献1】米国特許第6362279号明細書
【特許文献2】国際公開特許01/72885号パンフレット
【特許文献3】国際公開特許03/64490号パンフレット
【特許文献4】国際公開特許03/42223号パンフレット
【特許文献5】特開2004−51847号公報
【特許文献6】特開2004−51848号公報
【非特許文献1】Macromolecules,2004年,37巻,p1276−1282
【非特許文献2】Macromolecules,2003年,36巻,p9122−9127
【非特許文献3】Macromolecules,2004年,37巻,p99−109
【非特許文献4】Eur.J.Inorg.Chem.,1998年,p813−817
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記要望に応えるためになされたもので、かご状オリゴシロキサンを高収率で修飾する汎用性の高い方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、シラノール部位を有するかご状オリゴシロキサンとオルガノアシロキシシランとを反応させることによって、温和な条件で修飾されたかご状オリゴシロキサンを製造できることを見出した。
【0014】
即ち、本発明はシラノール部位を有するかご状オリゴシロキサンと下記一般式(1)で表されるオルガノアシロキシシランとを反応させることを特徴とする修飾かご状オリゴシロキサンの製造方法を提供する。
【0015】
【化1】

【0016】
(式中、R1は置換又は非置換の炭素数1〜40の1価炭化水素基あるいは水素原子であり、同一分子における複数のR1は互いに異なっていてもよい。R2は置換又は非置換の炭素数1〜20の1価炭化水素基を表す。nは0〜3までの整数を表す。)
【発明の効果】
【0017】
本発明の方法により、かご状オリゴシロキサンの修飾を温和な条件下で行うことができるため副反応が抑制され、高収率である。また、様々な官能基を導入することができるため汎用性が高く、副生成物が少なく、反応の後処理が簡便である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の修飾かご状オリゴシロキサンの製造方法において、シラノール部位を有するかご状オリゴシロキサンを出発原料として用いる。
【0019】
本発明のかご状オリゴシロキサンとは、シロキサン骨格がかご状又は半かご形状をなしているものをいい、かご状又は半かご形状骨格を形成するケイ素数は好ましくは5〜30、更に好ましくは6〜16である。シラノール部位を有するかご状オリゴシロキサンの一例として、下記式で示されるものがある。
【0020】
【化2】

【0021】
図中、Rは同一でも異なってもよく、水酸基以外の任意の置換基を表すが、好ましくは置換又は非置換の炭素数1〜40の1価炭化水素基、置換又は非置換の炭素数1〜20のオルガノキシ基、ケイ素数1〜50のオルガノ(ポリ)シロキシ基(ケイ素上の置換基は置換又は非置換の炭素数1〜40の1価の有機基又は水素原子)を表す。
【0022】
Rで表される置換基として具体的には、例えば、メチル基、クロロメチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、エチル基、メトキシエチル基、ヒドロキシエチル基、2−メトキシカルボニルエチル基、2−エトキシカルボニルエチル基、2−シアノエチル基、プロピル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−アセトキシプロピル基、3−トリメチルシロキシプロピル基、3−トリエチルシロキシプロピル基、ジメチルアミノプロピル基、ジエチルアミノプロピル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基、グリシジルオキシプロピル基、3−アクリロイルオキシプロピル基、3−メタクリロイルオキシプロピル基、3−メルカプトプロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、tert−ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ノナフルオロヘキシル基、ヘプチル基、シクロヘプチル基、ノルボルニル基、オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ヘプタデカフルオロデシル基、4−tert−ブチルシクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、ドデシル基、ステアリル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基等の直鎖状、分岐鎖状、環状の置換もしくは非置換のアルキル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、5−ノルボルネン−2−イル基、シクロオクテニル基、デセニル基等の直鎖状、分岐鎖状、環状の置換もしくは非置換のアルケニル基、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等の直鎖状、分岐鎖状、環状の置換もしくは非置換のアルキニル基、フェニル基、4−フルオロフェニル基、4−クロロフェニル基、4−ブロモフェニル基、4−ヨードフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、スチリル基、4−tert−ブチルフェニル基、3,5−ジ−tert−ブチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、フェナンスリル基、アントラセニル基等の置換もしくは非置換のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、ナフチルエチル基等の置換もしくは非置換のアラルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、イソブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ノルボルニルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基等の置換もしくは非置換のアルコキシ基、フェノキシ基、3−クロロフェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、2,5−ジメチルフェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、ナフチルオキシ基等の置換もしくは非置換のアリールオキシ基、ベンジルオキシ基、2−クロロベンジルオキシ基、3−クロロベンジルオキシ基、4−クロロベンジルオキシ基、フェニルエチルオキシ基、ナフチルエチルオキシ基等の置換もしくは非置換のアラルキルオキシ基、ジメチルシロキシ基、ジエチルシロキシ基、ジフェニルシロキシ基、トリメチルシロキシ基、クロロメチルジメチルシロキシ基、プロピルジメチルシロキシ基、3−クロロプロピルジメチルシロキシ基、3,3,3−トリフルオロプロピルジメチルシロキシ基、(3,4−エポキシシクロヘキシルエチル)ジメチルシロキシ基、(グリシジルオキシプロピル)ジメチルシロキシ基、(メタクリロイルオキシプロピル)ジメチルシロキシ基、(アクリロイルオキシプロピル)ジメチルシロキシ基、メルカプトプロピルジメチルシロキシ基、tert−ブチルジメチルシロキシ基、ヘキシルジメチルシロキシ基、シクロヘキシルジメチルシリル基、トリエチルシロキシ基、トリイソブチルシロキシ基、ビニルジメチルシロキシ基、エチニルジメチルシロキシ基、フェニルジメチルシロキシ基、ジフェニルメチルシロキシ基、1,1,3,3,3−ペンタメチルジシロキサニロキシ基、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサニロキシ基、ビス(トリメチルシロキシ)シロキシ基、メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ基、トリス(トリメチルシロキシ)シロキシ基、1,3,3,5,5−ペンタメチルシクロトリシロキサン−1−イルオキシ基、1,3,5−トリメチル−3,5−ビス(3,3,3−トリフルオロプロピル)シクロトリシロキサン−1−イルオキシ基、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン−1−イルオキシ基、ω−メチルポリジメチルシロキサニロキシ基、ω−ヒドロポリジメチルシロキサニロキシ基等の直鎖状、分岐鎖状、環状のオルガノ(ポリ)シロキシ基等が挙げられる。
【0023】
このようなシラノール部位を有するかご状オリゴシロキサンの具体例としては、3,5,7,9,11,13,15−ヘプタシクロペンチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−オール、3,5,7,9,11,13,15−ヘプタシクロヘキシルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−オール、3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソブチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−オール、3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソオクチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−オール、3,5,7,9,11,13,15−ヘプタエチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−オール、3,5,7,9,11,13,15−ヘプタフェニルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−オール、3,5,7,9,11,13,15−ヘプタキス(トリメチルシロキシ)ペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−オール、3,5,7,9,11,13,15−ヘプタフェニルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−オール、
1,3,5,7,9,11,14−ヘプタシクロペンチルテトラシクロ[7.3.3.15,117,14]ヘプタシロキサン−3−オール、1,3,5,7,9,11,14−ヘプタイソブチルテトラシクロ[7.3.3.15,117,14]ヘプタシロキサン−3−オール、1,3,5,7,9,11,14−ヘプタキス(トリメチルシロキシ)テトラシクロ[7.3.3.15,117,14]ヘプタシロキサン−3−オール、
1,3,5,7,9,11,14、16−オクタシクロペンチルテトラシクロ[7.3.3.37,14.15,11]オクタシロキサン−3,16−ジオール、1,3,5,7,9,11,14、16−オクタイソブチルテトラシクロ[7.3.3.37,14.15,11]オクタシロキサン−3,16−ジオール、1,3,5,7,9,11,14、16−オクタキス(トリメチルシロキシ)テトラシクロ[7.3.3.37,14.15,11]オクタシロキサン−3,16−ジオール、
1,3,5,7,9,11,14−ヘプタシクロペンチルトリシクロ[7.3.3.15,11]ヘプタシロキサン−3,7,14−トリオール、1,3,5,7,9,11,14−ヘプタシクロヘキシルトリシクロ[7.3.3.15,11]ヘプタシロキサン−3,7,14−トリオール、1,3,5,7,9,11,14−ヘプタイソブチルトリシクロ[7.3.3.15,11]ヘプタシロキサン−3,7,14−トリオール、1,3,5,7,9,11,14−ヘプタイソオクチルトリシクロ[7.3.3.15,11]ヘプタシロキサン−3,7,14−トリオール、1,3,5,7,9,11,14−ヘプタエチルトリシクロ[7.3.3.15,11]ヘプタシロキサン−3,7,14−トリオール、1,3,5,7,9,11,14−ヘプタフェニルトリシクロ[7.3.3.15,11]ヘプタシロキサン−3,7,14−トリオール、
1,3,5,7,9,11,14−ヘプタシクロペンチル−14−トリメチルシロキシトリシクロ[7.3.3.15,11]ヘプタシロキサン−3,7−ジオール、1,3,5,7,9,11,14−ヘプタシクロヘキシル−14−トリメチルシロキシトリシクロ[7.3.3.15,11]ヘプタシロキサン−3,7−ジオール、1,3,5,7,9,11,14−ヘプタイソブチル−14−トリメチルシロキシトリシクロ[7.3.3.15,11]ヘプタシロキサン−3,7−ジオール、1,3,5,7,9,11,14−ヘプタイソオクチル−14−トリメチルシロキシトリシクロ[7.3.3.15,11]ヘプタシロキサン−3,7−ジオール、1,3,5,7,9,11,14−ヘプタエチル−14−トリメチルシロキシトリシクロ[7.3.3.15,11]ヘプタシロキサン−3.7−ジオール、1,3,5,7,9,11,14−ヘプタフェニル−14−トリメチルシロキシトリシクロ[7.3.3.15,11]ヘプタシロキサン−3,7−ジオール、
1,3,5,7,9,11,14−ヘプタシクロペンチル−7,14−ビス(トリメチルシロキシ)トリシクロ[7.3.3.15,11]ヘプタシロキサン−3−オール、1,3,5,7,9,11,14−ヘプタシクロヘキシル−7,14−ビス(トリメチルシロキシ)トリシクロ[7.3.3.15,11]ヘプタシロキサン−3−オール、1,3,5,7,9,11,14−ヘプタイソブチル−7,14−ビス(トリメチルシロキシ)トリシクロ[7.3.3.15,11]ヘプタシロキサン−3−オール、1,3,5,7,9,11,14−ヘプタイソオクチル−7,14−ビス(トリメチルシロキシ)トリシクロ[7.3.3.15,11]ヘプタシロキサン−3−オール、1,3,5,7,9,11,14−ヘプタエチル−7,14−ビス(トリメチルシロキシ)トリシクロ[7.3.3.15,11]ヘプタシロキサン−3−オール、1,3,5,7,9,11,14−ヘプタフェニル−7,14−ビス(トリメチルシロキシ)トリシクロ[7.3.3.15,11]ヘプタシロキサン−3−オール等が挙げられる。
【0024】
本発明の製造方法においては、シラノール部位を有するかご状オリゴシロキサンを下記一般式(1)で表されるアシロキシシランと反応させる。
【0025】
【化3】

【0026】
上記一般式(1)において、nは0〜3までの整数を表す。R1は置換又は非置換の炭素数1〜40の1価炭化水素基あるいは水素原子であり、同一分子における複数のR1は互いに異なっていてもよい。R1における置換基としては、ハロゲン基、アルコキシ基、アシロキシ基、アシル基、エポキシ基、メルカプト基、シリル基、シロキシ基、エステル、ラクトン、ケトン、酸無水物、アミン、アミド、ラクタム等が挙げられる。R1で表される基の例として具体的には、メチル基、クロロメチル基、トリフルオロメチル基、エチル基、エポキシシクロヘキシルエチル基、(5−ノルボルネニル)エチル基、シクロヘキセニルエチル基、シクロヘキシルエチル基、ノルボルニルエチル基、プロピル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−アセトキシプロピル基、3−アクリロイルオキシプロピル基、3−メタクリロイルオキシプロピル基、3−シンナモイルオキシプロピル基、3−ベンゾイルオキシプロピル基、3−メルカプトプロピル基、テトラヒドロフラン−2,5−ジオン−3−イルプロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、テキシル基、2−エチルヘキシル基、ノナフルオロヘキシル基、ヘプチル基、シクロヘプチル基、ノルボルニル基、オクチル基、デシル基、ヘプタデカフルオロデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等の直鎖状、分岐鎖状、環状の置換もしくは非置換の脂肪族飽和炭化水素基、ビニル基、エチニル基、アリル基、プロピニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、5−ノルボルネニル基、デセニル基等の直鎖状、分岐鎖状、環状の置換もしくは非置換の脂肪族不飽和炭化水素基、フェニル基、4−フルオロフェニル基、4−クロロフェニル基、4−ブロモフェニル基、4−ヨードフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−ベンゾイルフェニル基、4−メトキシカルボニルフェニル基、1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−1,3−ジオン−5−イル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニリル基等の置換もしくは非置換のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等の置換もしくは非置換のアラルキル基等が挙げられる。
【0027】
上記一般式(1)においてR2は置換又は非置換の炭素数1〜20、好ましくは1〜10の1価炭化水素基を表す。R2の具体例としてはメチル基、クロロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモメチル基、ヨードメチル基、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、トリメチルシロキシメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ステアリル基等の直鎖状、分岐鎖状、環状の置換もしくは非置換のアルキル基、ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、デセニル基、ウンデセニル基等の直鎖状、分岐鎖状、環状の置換もしくは非置換のアルケニル基、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等の直鎖状、分岐鎖状、環状の置換もしくは非置換のアルキニル基、フェニル基、4−フルオロフェニル基、4−アセチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、2−トリル基、3−トリル基、4−トリル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基等の置換もしくは非置換のアリール基、ベンジル基、2−クロロベンジル基、4−ブロモベンジル基、4−メトキシベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等の置換もしくは非置換のアラルキル基等が挙げられるが、中でもメチル基が好ましい。
【0028】
上記一般式(1)で表されるアシロキシシランとして具体的には、ジメチルアセトキシシラン、ジエチルアセトキシシラン、ジイソプロピルアセトキシシラン、ジフェニルアセトキシシラン、トリメチルアセトキシシラン、トリメチル(クロロアセトキシ)シラン、トリメチル(トリクロロアセトキシ)シラン、トリメチル(フルオロアセトキシ)シラン、トリメチル(トリフルオロアセトキシ)シラン、トリメチルプロパノイルオキシシラン、トリメチルベンゾイルオキシシラン、トリメチルアクリロイルオキシシラン、トリメチルメタクリロイルオキシシラン、クロロメチルジメチルアセトキシシラン、(トリメチルシリルメチル)ジメチルアセトキシシラン、アセトキシメチルジメチルアセトキシシラン、(アクリロイルオキシメチル)ジメチルアクリロイルオキシシラン、(メタクリロイルオキシメチル)ジメチルメタクリロイルオキシシラン、エチルジメチルアセトキシシラン、3−クロロプロピルジメチルアセトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルジメチルアセトキシシラン、ジエチルメチルアセトキシシラン、トリエチルアセトキシシラン、トリプロピルアセトキシシラン、トリイソプロピルアセトキシシラン、イソプロピルジメチルアセトキシシラン、ブチルジメチルアセトキシシラン、トリブチルアセトキシシラン、トリイソブチルアセトキシシラン、イソブチルジメチルアセトキシシラン、sec−ブチルジメチルアセトキシシラン、tert−ブチルジメチルアセトキシシラン、ペンチルジメチルアセトキシシラン、シクロペンチルジメチルアセトキシシラン、ヘキシルジメチルアセトキシシラン、シクロヘキシルジメチルアセトキシシラン、テキシルジメチルアセトキシシラン、テキシルジイソプロピルアセトキシシラン、2−エチルヘキシルジメチルアセトキシシラン、ノナフルオロヘキシルジメチルアセトキシシラン、ヘプチルジメチルアセトキシシラン、シクロヘプチルジメチルアセトキシシラン、ノルボルニルジメチルアセトキシシラン、オクチルジメチルアセトキシシラン、デシルジメチルアセトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルジメチルアセトキシシラン、ドデシルジメチルアセトキシシラン、テトラデシルジメチルアセトキシシラン、ヘキサデシルジメチルアセトキシシラン、オクタデシルジメチルアセトキシシラン、(エポキシシクロヘキシルエチル)ジメチルアセトキシシラン、(5−ノルボルネニル)エチルジメチルアセトキシシラン、シクロヘキセニルエチルジメチルアセトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメチルアセトキシシラン、ノルボルニルエチルジメチルアセトキシシラン、プロピルジメチルアセトキシシラン、3−アセトキシプロピルジメチルアセトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルジメチルアセトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルジメチルアクリロイルオキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルジメチルアセトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルジメチルメタクリロイルオキシシラン、3−シンナモイルオキシプロピルジメチルアセトキシシラン、3−ベンゾイルオキシプロピルジメチルアセトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメチルアセトキシシラン、(テトラヒドロフラン−2,5−ジオン−3−イルプロピル)ジメチルアセトキシシラン、ビニルジメチルアセトキシシラン、エチニルジメチルアセトキシシラン、アリルジメチルアセトキシシラン、2−プロペニルジメチルアセトキシシラン、プロピニルジメチルアセトキシシラン、ブテニルジメチルアセトキシシラン、ヘキセニルジメチルアセトキシシラン、シクロヘキセニルジメチルアセトキシシラン、5−ノルボルネニルジメチルアセトキシシラン、デセニルジメチルアセトキシシラン、フェニルジメチルアセトキシシラン、4−フルオロフェニルジメチルアセトキシシラン、4−クロロフェニルジメチルアセトキシシラン、4−ブロモフェニルジメチルアセトキシシラン、4−ヨードフェニルジメチルアセトキシシラン、ペンタフルオロフェニルジメチルアセトキシシラン、(1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−1,3−ジオン−5−イル)ジメチルアセトキシシラン、メチルジフェニルアセトキシシラン、トリフェニルアセトキシシラン、トリ−p−トリルアセトキシシラン、トリ−m−トリルアセトキシシラン、トリ−o−トリルアセトキシシラン、1,4−ビス(アセトキシジメチルシリル)ベンゼン、トリルジメチルアセトキシシラン、キシリルジメチルアセトキシシラン、ナフチルジメチルアセトキシシラン、ビフェニリルジメチルアセトキシシラン、ベンジルジメチルアセトキシシラン、(フェニルエチル)ジメチルアセトキシシラン、(フェニルプロピル)ジメチルアセトキシシラン等のモノアシロキシシラン、
メチルジアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジメチルビス(クロロアセトキシ)シラン、ジメチルビス(トリクロロアセトキシ)シラン、ジメチルビス(フルオロアセトキシ)シラン、ジメチルビス(トリフルオロアセトキシ)シラン、ジメチルジプロパノイルオキシシラン、ジメチルジベンゾイルオキシシラン、(エポキシシクロヘキシルエチル)メチルジアセトキシシラン、[(5−ノルボルネニル)エチル]メチルジアセトキシシラン、(シクロヘキシルエチル)メチルジアセトキシシラン、(ノルボルニルエチル)メチルジアセトキシシラン、プロピルメチルジアセトキシシラン、3−アセトキシプロピルメチルジアセトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルジアセトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジアセトキシシラン、3−シンナモイルオキシプロピルメチルジアセトキシシラン、3−ベンゾイルオキシプロピルメチルジアセトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジアセトキシシラン、(テトラヒドロフラン−2,5−ジオン−3−イルプロピル)メチルジアセトキシシラン、ジプロピルジアセトキシシラン、イソプロピルメチルジアセトキシシラン、ジイソプロピルジアセトキシシラン、ブチルメチルジアセトキシシラン、ジブチルアセトキシシラン、イソブチルメチルジアセトキシシラン、ジイソブチルアセトキシシラン、sec−ブチルメチルジアセトキシシラン、tert−ブチルメチルジアセトキシシラン、ジ−tert−ブチルジアセトキシシラン、ペンチルメチルジアセトキシシラン、シクロペンチルメチルジアセトキシシラン、ジシクロペンチルジアセトキシシラン、ヘキシルメチルジアセトキシシラン、シクロヘキシルメチルジアセトキシシラン、ジシクロヘキシルジアセトキシシラン、テキシルメチルジアセトキシシラン、2−エチルヘキシルメチルジアセトキシシラン、ノナフルオロヘキシルメチルジアセトキシシラン、ヘプチルメチルジアセトキシシラン、シクロヘプチルメチルジアセトキシシラン、ノルボルニルメチルジアセトキシシラン、オクチルメチルジアセトキシシラン、デシルメチルジアセトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルメチルジアセトキシシラン、ドデシルメチルジアセトキシシラン、テトラデシルメチルジアセトキシシラン、ヘキサデシルメチルジアセトキシシラン、オクタデシルメチルジアセトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、エチニルメチルジアセトキシシラン、アリルメチルジアセトキシシラン、2−プロペニルメチルジアセトキシシラン、プロピニルメチルジアセトキシシラン、ブテニルメチルジアセトキシシラン、ヘキセニルメチルジアセトキシシラン、シクロヘキセニルメチルジアセトキシシラン、5−ノルボルネニルメチルジアセトキシシラン、デセニルメチルジアセトキシシラン、フェニルメチルジアセトキシシラン、4−フルオロフェニルメチルジアセトキシシラン、4−クロロフェニルメチルジアセトキシシラン、4−ブロモフェニルメチルジアセトキシシラン、4−ヨードフェニルメチルジアセトキシシラン、ペンタフルオロフェニルメチルジアセトキシシラン、(1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−1,3−ジオン−5−イル)メチルジアセトキシシラン、トリルメチルジアセトキシシラン、キシリルメチルジアセトキシシラン、ナフチルメチルジアセトキシシラン、ビフェニリルメチルジアセトキシシラン、ベンジルメチルジアセトキシシラン、(フェニルエチル)メチルジアセトキシシラン、(フェニルプロピル)メチルジアセトキシシラン等のジアシロキシシラン、
メチルトリアセトキシシラン、メチルトリス(クロロアセトキシ)シラン、メチルトリス(トリクロロアセトキシ)シラン、メチルトリス(フルオロアセトキシ)シラン、メチルトリス(トリフルオロアセトキシ)シラン、メチルトリプロパノイルオキシシラン、メチルトリベンゾイルオキシシラン、(エポキシシクロヘキシルエチル)トリアセトキシシラン、[(5−ノルボルネニル)エチル]トリアセトキシシラン、(シクロヘキシルエチル)トリアセトキシシラン、(ノルボルニルエチル)トリアセトキシシラン、プロピルトリアセトキシシラン、3−アセトキシプロピルトリアセトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリアセトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリアセトキシシラン、3−シンナモイルオキシプロピルトリアセトキシシラン、3−ベンゾイルオキシプロピルトリアセトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリアセトキシシラン、(テトラヒドロフラン−2,5−ジオン−3−イルプロピル)トリアセトキシシラン、イソプロピルトリアセトキシシラン、ブチルトリアセトキシシラン、イソブチルトリアセトキシシラン、sec−ブチルトリアセトキシシラン、tert−ブチルトリアセトキシシラン、ペンチルトリアセトキシシラン、シクロペンチルトリアセトキシシラン、ヘキシルトリアセトキシシラン、シクロヘキシルトリアセトキシシラン、テキシルトリアセトキシシラン、2−エチルヘキシルトリアセトキシシラン、ノナフルオロヘキシルトリアセトキシシラン、ヘプチルトリアセトキシシラン、シクロヘプチルトリアセトキシシラン、ノルボルニルトリアセトキシシラン、オクチルトリアセトキシシラン、デシルトリアセトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリアセトキシシラン、ドデシルトリアセトキシシラン、テトラデシルトリアセトキシシラン、ヘキサデシルトリアセトキシシラン、オクタデシルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、エチニルトリアセトキシシラン、アリルトリアセトキシシラン、2−プロペニルトリアセトキシシラン、プロピニルトリアセトキシシラン、ブテニルトリアセトキシシラン、ヘキセニルトリアセトキシシラン、シクロヘキセニルトリアセトキシシラン、5−ノルボルネニルトリアセトキシシラン、デセニルトリアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、4−フルオロフェニルトリアセトキシシラン、4−クロロフェニルトリアセトキシシラン、4−ブロモフェニルトリアセトキシシラン、4−ヨードフェニルトリアセトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリアセトキシシラン、(1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−1,3−ジオン−5−イル)トリアセトキシシラン、o−トリルトリアセトキシシラン、m−トリルトリアセトキシシラン、p−トリルトリアセトキシシラン、キシリルトリアセトキシシラン、ナフチルトリアセトキシシラン、ビフェニリルトリアセトキシシラン、ベンジルトリアセトキシシラン、(フェニルエチル)トリアセトキシシラン、(フェニルプロピル)トリアセトキシシラン等のトリアシロキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラプロパノイルオキシシラン等のテトラアシロキシシラン等が挙げられる。
【0029】
これらのアシロキシシランは公知の方法で容易に得られるものである。例えば対応するクロロシランのアシロキシ化やヒドロアシロキシシランを用いた不飽和化合物のヒドロシリル化、ヒドロシランとカルボン酸の脱水素反応等である。
【0030】
上記一般式(1)の化合物の使用量は、かご状オリゴシロキサンのシラノール1モルに対し、上記一般式(1)の化合物に含有されるアシロキシ基のモル数が0.5〜5.0モル、より好ましくは0.8〜2.0モルとなるような比率で反応させるのが好ましい。一般にどちらかの化合物を過剰量使用するとその化合物に対する収率が低下するため、上記比率は1.0であることが好適であるが、基質の組み合わせ等によって十分な反応速度が得られない場合や分離困難な副生成物が生成するおそれがある場合には、どちらかの基質を過剰とすることが好ましい。
【0031】
本発明のかご状シロキサンの修飾方法において、反応促進剤は必ずしも必要ないが、反応進行と共に発生するカルボン酸を中和するために塩基を添加してもよい。添加しうる塩基としては例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、N−メチルピペリジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、N,N−ジメチルアニリン等のアミン、ピリジン、N,N−ジメチルアミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン等の窒素含有複素環化合物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸カリウム等の無機塩等が挙げられる。その使用量は、任意であるが、発生するカルボン酸量に対して1当量以下とし、過剰量としないことが好ましい。
【0032】
反応は常圧下又は減圧下、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うのが一般的であるが、必ずしもこれに限定されない。反応温度は通常−100〜100℃、好ましくは0〜40℃である。
【0033】
反応溶媒は必ずしも必要でないが、溶媒を使用して反応を行ってもよい。この場合、ヘキサン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素や、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル、アセトンやメチルイソブチルケトン等のケトン、N,N−ジメチルアセタミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の硫黄化合物等を溶媒として用いることができる。
【0034】
本発明の修飾方法は、シラノールと一般式(1)のアシロキシシランの間で脱カルボン酸縮合反応を行わせるものであり、本発明の製造方法によって得られた修飾かご状オリゴシロキサンは、反応混合物から溶媒等を減圧除去した後、残渣を溶媒洗浄又は再結晶する等の方法により容易に単離することができる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において、反応は全て窒素雰囲気下で行った。
【0036】
[実施例1] 3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソブチル−1−ビニルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサンの合成(下記式においてAcはアセチル基、i−Buはイソブチル基を表す)
【0037】
【化4】

【0038】
ジムロート式還流冷却器、撹拌機、温度計を備えた100mLの四つ口フラスコを窒素置換した。1,3,5,7,9,11,14−ヘプタイソブチルトリシクロ[7.3.3.15,11]ヘプタシロキサン−3,7,14−トリオール2.37g(3.0mmol)をTHF42mLに溶解してフラスコ内に仕込んだ。更に、ビニルトリアセトキシシラン0.98g(4.2mmol)を加えて室温で36時間撹拌した。反応混合物を減圧濃縮し、メタノール10mLを添加して析出した固体を濾過し、メタノール5mLで洗浄した。これを真空乾燥して1.76gの白色固体を得た。収率は69.5%であった。MS、NMR,GPCによる同定結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3,300MHz):δ(ppm)6.04(1H,dd,J=13.3Hz,5.4Hz),5.99(1H,dd,J=20.6Hz,5.4Hz),5.86(1H,dd,J=20.6Hz,13.3Hz),1.86(7H,九重線,J=6.7Hz),0.96(42H,d×2,J=6.6Hz),0.61(14H,d×2,J=7.0Hz)
13C−NMR(CDCl3,75.6MHz):δ(ppm)135.8,130.0,25.7×2,23.8,22.5,22.4
29Si−NMR(CDCl3,59.7MHz):δ(ppm)−67.4,−67.9,−81.5
MS(EI):m/z 842(M+),785,729
GPC(ポリスチレン換算、RI検出器)Mw=796、Mw/Mn=1.005
【0039】
[実施例2] 3,7,14−トリス(ジメチルシロキシ)−1,3,5,7,9,11,14−ヘプタイソブチルトリシクロ[7.3.3.15,11]ヘプタシロキサンの合成(下記式においてMeはメチル基、Acはアセチル基、i−Buはイソブチル基を表す)
【0040】
【化5】

【0041】
ジムロート式還流冷却器、撹拌機、温度計を備えた100mLの四つ口フラスコを窒素置換した。フラスコ内に1,3,5,7,9,11,14−ヘプタイソブチルトリシクロ[7.3.3.15,11]ヘプタシロキサン−3,7,14−トリオール1.58g(2.0mmol)をTHF8mLに溶解して仕込み、ジメチルアセトキシシラン0.54g(6mmol)を添加して室温で5時間撹拌した。ジメチルアセトキシシラン0.54g(6mmol)を追加して更に室温で5時間撹拌した後、反応混合物を減圧濃縮して粗生成物を得た。これをメタノール10mLで洗浄して真空乾燥することにより白色固体1.75gが得られた。収率は90.6%であった。MS、NMR,GPCによる同定結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3,300MHz):δ(ppm)4.74(3H,七重線,J=2.9Hz),1.84(7H,九重線×2,J=6.7Hz),0.96(42H,d×3,J=6.6Hz),0.56+0.55(14H,d+d,J=7.0Hz),0.22(18H,d,J=2.9Hz)
13C−NMR(CDCl3,75.6MHz):δ(ppm)26.0,25.8,25.6,24.6,24.1,24.0,23.9,23.6,22.4,0.6
29Si−NMR(CDCl3,59.7MHz):δ(ppm)−5.5,−67.1,−67.7,−68.0
MS(EI):m/z 964(M+),949,907,847
GPC(ポリスチレン換算、RI検出器)Mw=936、Mw/Mn=1.005


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シラノール部位を有するかご状オリゴシロキサンと下記一般式(1)で表されるオルガノアシロキシシランとを反応させることを特徴とするかご状オリゴシロキサンの修飾方法。
【化1】

(式中、R1は置換又は非置換の炭素数1〜40の1価炭化水素基あるいは水素原子であり、同一分子における複数のR1は互いに異なっていてもよい。R2は置換又は非置換の炭素数1〜20の1価炭化水素基を表す。nは0〜3の整数を表す。)
【請求項2】
一般式(1)においてR2がメチル基である請求項1記載のかご状オリゴシロキサンの修飾方法。
【請求項3】
シラノール部位を有するかご状オリゴシロキサンが、ケイ素数5〜30のシラノール部位を有するかご状オリゴシロキサンである請求項1又は2記載のかご状オリゴシロキサンの修飾方法。

【公開番号】特開2006−104123(P2006−104123A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−292316(P2004−292316)
【出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】