しわ検出装置およびしわ検出方法
【課題】勾配に基づいて、しわを特定できるしわ検出装置を提供する。
【解決手段】しわ検出装置100は、電極およびセパレータが積層されてなる積層体40に対して相対的に移動しながら、最外層のセパレータに対して、スリット光を投光する投光部110と、セパレータ上のスリット光の形状を撮影するカメラ120と、撮影されたスリット光の形状に基づいて、セパレータの表面形状を検出し、検出した表面形状に基づいて、セパレータの勾配を算出し、算出した勾配に基づいてしわを判定する制御部130と、を有する。
【解決手段】しわ検出装置100は、電極およびセパレータが積層されてなる積層体40に対して相対的に移動しながら、最外層のセパレータに対して、スリット光を投光する投光部110と、セパレータ上のスリット光の形状を撮影するカメラ120と、撮影されたスリット光の形状に基づいて、セパレータの表面形状を検出し、検出した表面形状に基づいて、セパレータの勾配を算出し、算出した勾配に基づいてしわを判定する制御部130と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、しわ検出装置およびしわ検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な製品で二次電池が使用されている。二次電池は、正極、セパレータ、負極が積層された電池要素を含む。電池要素を形成する際には、正極、セパレータ、負極、セパレータという順のように、電極とセパレータを交互に積層する。
【0003】
セパレータを電極上に重ねる際に、セパレータにしわができたり、後にしわになりうるような膨らみができてしまうことがある。セパレータにしわができると、積層が不均等になって、局所的圧力が加わったり、電極間の距離が変わったりして、電池品質を低下してしまう。したがって、しわができたかどうかは、電池品質を判断するのに重要である。目視でしわは判定できるものの、見落としがある場合があり、またサイクルタイム観点から、好ましくない。
【0004】
そこで、セパレータの表面にレーザ光を照射し、表面からの反射光強度に従って、しわを検出する技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−214828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の発明では、大きさ(長さ、幅)を基準にしわを検出している。将来的にしわになるような箇所や実際に問題となるしわ(両者を含めて以下では単に、しわと言う)は、大きさではなく起伏の勾配により判定できる。
【0007】
本願発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、勾配に基づいて、しわを特定できるしわ検出装置およびしわ検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のしわ検出装置は、投光手段、撮影手段、検出手段および判定手段を有する。投光手段は、電極およびセパレータが積層されてなる積層体に対して相対的に移動しながら、最外層のセパレータに対して、スリット光を投光する。撮影手段は、セパレータ上に映し出されたスリット光の形状を撮影する。検出手段は、撮影されたスリット光の形状に基づいて、セパレータの表面形状を検出する。判定手段は、検出された表面形状に基づいて、セパレータの勾配を算出し、算出した勾配に基づいてしわを判定する。
【0009】
本発明のしわ検出方法は、投光工程、撮影工程、検出工程および判定工程を含む。投光工程は、電極およびセパレータが積層されてなる積層体に対して相対的に移動しながら、最外層のセパレータに対して、スリット光を投光する。撮影工程は、セパレータ上に映し出されたスリット光の形状を撮影する。検出工程は、撮影されたスリット光の形状に基づいて、セパレータの表面形状を検出する。判定工程は、検出された表面形状に基づいて、セパレータの起伏を算出し、算出した勾配に基づいてしわを判定する。
【発明の効果】
【0010】
しわ検出装置およびしわ検出方法によれば、セパレータ表面の勾配に基づいて、しわを検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】リチウムイオン二次電池の外観を表した斜視図である。
【図2】リチウムイオン二次電池の分解斜視図である。
【図3】負極の平面図である。
【図4】袋詰正極の平面図である。
【図5】しわ検出装置の概略構成を示す図である。
【図6】セパレータ上のしわにスリット光が投影された様子を示す図である。
【図7】セパレータのしわを示す断面図である。
【図8】しわの候補となる画素を特定する様子を示す図である。
【図9】しわを特定する様子を示す図である。
【図10】吸着コンベアで搬送される袋詰正極のセパレータのしわを検出する様子を示す図である。
【図11】パレットに載置されて搬送される発電要素上のセパレータのしわを検出する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0013】
最初に、セパレータを含む電池の構成を簡単に説明する。セパレータが、しわ検出装置によりしわを検出する対象である。
【0014】
図1はリチウムイオン二次電池(積層型電池)の外観を表した斜視図、図2はリチウムイオン二次電池の分解斜視図、図3は負極の平面図、図4は袋詰正極の平面図である。
【0015】
図1に示すとおり、リチウムイオン二次電池10は、扁平な矩形形状を有しており、正極タブおよび負極タブが外装材の同一端部から導出されている。外装材の内部には、充放電反応が進行する発電要素(電池要素)20が収容されている。
【0016】
図2に示すとおり、発電要素20は、負極30と袋詰正極40とが交互に積層されて形成される。負極30は、図3に示すように、ごく薄いシート状の負極集電体の両面に負極活物質層が形成されてなる。
【0017】
袋詰正極40は、正極50が、セパレータ60により挟み込まれてなる。正極50は、シート状の正極集電体の両面に正極活物質層が形成されてなる。正極50は、タブ部分がセパレータ60の袋から引き出されている。2枚のセパレータ60は、図4に示すように、端部において溶着部62より相互に溶着されて、袋状に形成されている。溶着部62は、たとえば、熱溶着により形成される。
【0018】
なお、負極30と袋詰正極40とを交互に積層してリチウムイオン二次電池を製造する方法自体は、一般的なリチウム二次電池の製造方法であるため、詳細な説明は省略する。
【0019】
次に、しわ検出装置について説明する。
【0020】
図5はしわ検出装置の概略構成を示す図、図6はセパレータ上のしわにスリット光が投影された様子を示す図、図7はセパレータのしわを示す断面図である。
【0021】
図5に示すように、しわ検出装置100は、投光部110、カメラ120および制御部130を有する。投光部110は、投光手段として、セパレータ60にスリット光を投光する。図5では、袋詰正極40のセパレータ60にスリット光を投光している様子を示している。スリット光は、図5に一点鎖線に示されるように、セパレータ60の表面に線状に投影される。
【0022】
カメラ120は、撮影手段として、セパレータ60の表面に映し出されたスリット光の形状を、斜めから撮影する。たとえば、図6に示すように、セパレータ60上に起伏がある場合、カメラ120から見たスリット光の形状は起伏に従って、起伏部分が曲線になる。カメラ120は、起伏によるスリット光の変形を撮影する。図6に示すような起伏があると、将来起伏が崩れてしわになる可能性がある。しわは、図7に示すようにセパレータ60の表面で折り畳みができた状態である。カメラ120により、このような将来的にしわになりそうな起伏を検出できる。
【0023】
また、初めから図7に示すようなしわがセパレータ60の表面に形成されている場合でも、スリット光が当たると変形する。カメラ120は、しわによるスリット光の変形を撮影できる。カメラ120は、将来的にしわになる図6のような起伏や、図7のような折り畳みじわの両方を撮影できる。
【0024】
投光部110およびカメラ120は、セパレータ60の表面全体にスリット光を順次投影できるように、セパレータ60に対して相対的に移動している。移動する方向は、線状のスリット光と交差する方向である。スリット光と交差する方向に相対的に移動することによって、セパレータ60の表面全体にスリット光を投影し、カメラ120により撮影できる。たとえば、袋詰正極40が搬送されて移動している場合、投光部110は、搬送方向に対して平面方向に交差するスリット光を投射する。好ましくは、投光部110は、搬送方向に対して90度交差する方向に延びたスリット光を投射する。
【0025】
制御部130は、検出手段および判定手段として、セパレータ60の表面形状を検出し、表面の勾配からしわを判定する。しわの検出および判定手法は、次の通りである。
【0026】
図8はしわの候補となる画素を特定する様子を示す図、図9はしわを特定する様子を示す図である。
【0027】
制御部130は、カメラ120が撮影したセパレータ60上のスリット光の形状に基づいて、スリット光が投影されている位置のセパレータ60の断面形状を算出する。この断面形状には、高さが含まれる。たとえば、図6に示すスリット光は、2つの膨らみを反映した形状になっている。この形状と、カメラ120の撮影角度に基づいて、スリット光投影部分のセパレータ60の断面形状(高さ)が算出される。算出された断面形状を合成することで、セパレータ60の表面形状が立体的に特定される。光切断法と呼ばれる手法である。
【0028】
カメラ120により撮影され、スリット光の投影部分を表現する各画素に対して、制御部130は、断面形状に基づいて、高さの情報を関連付け、図示しない記憶部に記憶する。各画素に高さを関連づけた後、制御部130は、各画素について、急な勾配が周囲にあるか算出する。
【0029】
たとえば、図8に示すように、画素P1について、半径R1以内の画素と高さを比較し、所定の閾値th1以上高いか低い画素の個数をカウントする。カウントされた個数が、所定個数th2以上の場合、画素P1の周りで急な高さの差が多くある、すなわち、急勾配が広く形成されていることがわかる。したがって、制御部130は、画素P1をしわを構成する部分の候補(しわ候補)として、記憶する。たとえば、しわ候補には赤色を着色して他の画素と区別して記憶する。制御部130は、カメラ20により撮影したセパレータ60を示す全ての画素について、しわ候補か否かを判定する。
【0030】
制御部130は、しわ候補の判別が終わると、今度は、図9に示すように、しわ候補だけを抽出し、しわ候補の各画素を用いてしわの範囲を特定する。しわの範囲の特定はたとえば次の通りである。しわ候補の画素P2から半径R2以内のしわ候補の画素の個数をカウントし、カウントした個数が所定の閾値th3以上の場合には、画素P2がしわを構成すると判定して記憶する。制御部130は、全てのしわ候補の画素について、しわを構成するか否かを判定する。
【0031】
以上のように、しわ検出装置100は、セパレータ60の表面を撮影し、画素に高さを関連づけ、各画素の周囲の画素との高さの差から急勾配を検出し、しわを判定できる。つまり、セパレータ60の表面の勾配に基づいて、しわを判定できる。したがって、しわがあると判定された袋詰正極40を、後の工程において、払い出したり、そのような袋詰正極40を含む電池を不良品として排除したりできる。
【0032】
なお、上記実施形態において、半径R1は、当業者によって適宜決定される値である。R1を小さな値とすることで、狭い範囲での勾配を検出できる。たとえば、画素間の距離が0.2〜0.3mmであるときに、R1は2〜3mmである。また、閾値th1や閾値th2も当業者によって適宜設定できる。半径R1の値を小さく、閾値th1/閾値th2の値を大きくすることによって、より急激な変化をしわと判定できるようになる。このように、半径R1、閾値th1および閾値th2は、しわを判定するための閾値を構成するパラメータである。したがって、半径R1、閾値th1および閾値th2の値を調整することで、しわと判定するための勾配の閾値を調整できる。半径R2および閾値th3も、当業者によって適宜決定される値である。半径R2および閾値th3も適宜調整することによって、しわと判定するための勾配の閾値を調整できる。
【0033】
次に、上記しわ検出装置100が適用される工程の例について説明する。
【0034】
図10は吸着コンベアで搬送される袋詰正極のセパレータのしわを検出する様子を示す図である。
【0035】
図4に示す袋詰正極40が作成されて搬送される際に、上記しわ検出装置100を適用できる。ここで、袋詰正極40は、吸着コンベア70、72により、図中矢印で示す方向に搬送されているとする。吸着コンベア70、72は、回転するコンベア表面に負圧を発生し、負圧により袋詰正極40を固定しつつ搬送する。吸着コンベア70および吸着コンベア72の間には、隙間74が設けられている。吸着コンベア70および吸着コンベア72の対向する端部では、負圧が開放され、スムーズに吸着コンベア70、72間で袋詰正極40が受け渡される。
【0036】
しわ検出装置100は、吸着コンベア70、72の上方および下方に、投光部110およびカメラ120がそれぞれ2組設けられている。上方の投光部110およびカメラ120により、袋詰正極40の表側のセパレータ60表面のしわを検出できる。また、下方の投光部110およびカメラ120により、袋詰正極40の裏側のセパレータ60の表面のしわを検出できる。下方の投光部110およびカメラ120は、吸着コンベア70、72間の隙間74からセパレータ60の表面にスリット光を投光し、そのスリット光を撮影できるように、角度が調整されている。
【0037】
以上のように、搬送手段の合間を狙ってしわ検出装置100を配置することによって、両面にセパレータ60が配置された袋詰正極40を採用している場合でも、その両面のセパレータ60表面のしわを検出できる。
【0038】
また、袋詰正極40を採用しない場合でも、しわ検出装置100は適用できる。
【0039】
図11はパレットに載置されて搬送される発電要素上のセパレータのしわを検出する様子を示す図である。
【0040】
搬送されているパレット80に、順次、電極(正極または負極)およびセパレータを交互に積層して積層体90(発電要素)を形成していく生産ラインがある。このような生産ラインの場合、セパレータ60が最上層に積層されて、搬送される過程に、図11に示すように、しわ検出装置100を適用できる。積層体90の上方に投光部110およびカメラ120を配置しておくことで、姿勢が固定された投光部110から、移動するセパレータ60表面全長にスリット光を投影できる。カメラ120が順次セパレータ60上のスリット光を撮影することで、制御はセパレータ60のしわを検出できる。最上層にセパレータ60が積層されて搬送される過程毎に、しわ検出装置100を適用することで、全部のセパレータ60についてしわを検出でる。
【0041】
なお、移動しないパレット80上に順次、電極およびセパレータを交互に積層してもよい。この場合、パレット80上方に設置された投光部110およびカメラ120は、セパレータ60の全面にスリット光を投光し、そのスリット光を撮影できるように移動する。移動方向は、スリット光が延びる方向に対して、平面方向に交差する方向であり、好ましくは90度交差する方向である。
【0042】
以上のように、本実施形態のしわ検出装置100は、生産ラインにおいて、様々な工程にも適用できる。
【0043】
上記実施形態では、図8に示すように、半径R1以内で高低差が閾値th1以上ある画素が閾値th2個以上ある場合に、画素Pをしわ候補として判定し、さらに、しわ候補から、図9に示す条件によりしわを判定していた。しかし、これに限定されない。図8の条件を満たす画素の部分を、しわ候補ではなく、しわと判定してもよい。
【0044】
また、しわ候補またはしわを判定する際に、半径R1、R2の範囲において、画素を評価していた。しかし、半径R1、R2のような円形の領域でなく、矩形の領域や他の多角形の領域内において画素を評価してもよい。
【0045】
また、袋詰正極40として、セパレータ60に正極50が袋詰めされた形態について説明した。しかし、袋詰めされるのは負極30であってもよい。この場合でも、同様にセパレータ60表面のしわを検出できる。
【0046】
また、上記実施形態では、図1に示すように、正極タブおよび負極タブが外装材の同一端部から導出されている場合について説明した。しかし、これに限定されない。正極タブおよび負極タブがたとえば反対の端部から導出されてもよい。この場合、二次電池10の発電要素20を形成する際には、タブ部分が相互に反対向きになるように負極30と袋詰正極40が積層される。
【0047】
また、上記実施形態では、1本の線状のスリット光をセパレータ60上に映し出していたが、これに限定されない。複数本のストライプ状のスリット光を投影してもよい。
【符号の説明】
【0048】
10 二次電池、
20 カメラ、
20 発電要素、
30 負極、
40 袋詰正極、
50 正極、
60 セパレータ、
62 溶着部、
70、72 吸着コンベア、
74 隙間、
80 パレット、
90 積層体、
100 検出装置、
110 投光部、
120 カメラ、
130 制御部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、しわ検出装置およびしわ検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な製品で二次電池が使用されている。二次電池は、正極、セパレータ、負極が積層された電池要素を含む。電池要素を形成する際には、正極、セパレータ、負極、セパレータという順のように、電極とセパレータを交互に積層する。
【0003】
セパレータを電極上に重ねる際に、セパレータにしわができたり、後にしわになりうるような膨らみができてしまうことがある。セパレータにしわができると、積層が不均等になって、局所的圧力が加わったり、電極間の距離が変わったりして、電池品質を低下してしまう。したがって、しわができたかどうかは、電池品質を判断するのに重要である。目視でしわは判定できるものの、見落としがある場合があり、またサイクルタイム観点から、好ましくない。
【0004】
そこで、セパレータの表面にレーザ光を照射し、表面からの反射光強度に従って、しわを検出する技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−214828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の発明では、大きさ(長さ、幅)を基準にしわを検出している。将来的にしわになるような箇所や実際に問題となるしわ(両者を含めて以下では単に、しわと言う)は、大きさではなく起伏の勾配により判定できる。
【0007】
本願発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、勾配に基づいて、しわを特定できるしわ検出装置およびしわ検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のしわ検出装置は、投光手段、撮影手段、検出手段および判定手段を有する。投光手段は、電極およびセパレータが積層されてなる積層体に対して相対的に移動しながら、最外層のセパレータに対して、スリット光を投光する。撮影手段は、セパレータ上に映し出されたスリット光の形状を撮影する。検出手段は、撮影されたスリット光の形状に基づいて、セパレータの表面形状を検出する。判定手段は、検出された表面形状に基づいて、セパレータの勾配を算出し、算出した勾配に基づいてしわを判定する。
【0009】
本発明のしわ検出方法は、投光工程、撮影工程、検出工程および判定工程を含む。投光工程は、電極およびセパレータが積層されてなる積層体に対して相対的に移動しながら、最外層のセパレータに対して、スリット光を投光する。撮影工程は、セパレータ上に映し出されたスリット光の形状を撮影する。検出工程は、撮影されたスリット光の形状に基づいて、セパレータの表面形状を検出する。判定工程は、検出された表面形状に基づいて、セパレータの起伏を算出し、算出した勾配に基づいてしわを判定する。
【発明の効果】
【0010】
しわ検出装置およびしわ検出方法によれば、セパレータ表面の勾配に基づいて、しわを検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】リチウムイオン二次電池の外観を表した斜視図である。
【図2】リチウムイオン二次電池の分解斜視図である。
【図3】負極の平面図である。
【図4】袋詰正極の平面図である。
【図5】しわ検出装置の概略構成を示す図である。
【図6】セパレータ上のしわにスリット光が投影された様子を示す図である。
【図7】セパレータのしわを示す断面図である。
【図8】しわの候補となる画素を特定する様子を示す図である。
【図9】しわを特定する様子を示す図である。
【図10】吸着コンベアで搬送される袋詰正極のセパレータのしわを検出する様子を示す図である。
【図11】パレットに載置されて搬送される発電要素上のセパレータのしわを検出する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0013】
最初に、セパレータを含む電池の構成を簡単に説明する。セパレータが、しわ検出装置によりしわを検出する対象である。
【0014】
図1はリチウムイオン二次電池(積層型電池)の外観を表した斜視図、図2はリチウムイオン二次電池の分解斜視図、図3は負極の平面図、図4は袋詰正極の平面図である。
【0015】
図1に示すとおり、リチウムイオン二次電池10は、扁平な矩形形状を有しており、正極タブおよび負極タブが外装材の同一端部から導出されている。外装材の内部には、充放電反応が進行する発電要素(電池要素)20が収容されている。
【0016】
図2に示すとおり、発電要素20は、負極30と袋詰正極40とが交互に積層されて形成される。負極30は、図3に示すように、ごく薄いシート状の負極集電体の両面に負極活物質層が形成されてなる。
【0017】
袋詰正極40は、正極50が、セパレータ60により挟み込まれてなる。正極50は、シート状の正極集電体の両面に正極活物質層が形成されてなる。正極50は、タブ部分がセパレータ60の袋から引き出されている。2枚のセパレータ60は、図4に示すように、端部において溶着部62より相互に溶着されて、袋状に形成されている。溶着部62は、たとえば、熱溶着により形成される。
【0018】
なお、負極30と袋詰正極40とを交互に積層してリチウムイオン二次電池を製造する方法自体は、一般的なリチウム二次電池の製造方法であるため、詳細な説明は省略する。
【0019】
次に、しわ検出装置について説明する。
【0020】
図5はしわ検出装置の概略構成を示す図、図6はセパレータ上のしわにスリット光が投影された様子を示す図、図7はセパレータのしわを示す断面図である。
【0021】
図5に示すように、しわ検出装置100は、投光部110、カメラ120および制御部130を有する。投光部110は、投光手段として、セパレータ60にスリット光を投光する。図5では、袋詰正極40のセパレータ60にスリット光を投光している様子を示している。スリット光は、図5に一点鎖線に示されるように、セパレータ60の表面に線状に投影される。
【0022】
カメラ120は、撮影手段として、セパレータ60の表面に映し出されたスリット光の形状を、斜めから撮影する。たとえば、図6に示すように、セパレータ60上に起伏がある場合、カメラ120から見たスリット光の形状は起伏に従って、起伏部分が曲線になる。カメラ120は、起伏によるスリット光の変形を撮影する。図6に示すような起伏があると、将来起伏が崩れてしわになる可能性がある。しわは、図7に示すようにセパレータ60の表面で折り畳みができた状態である。カメラ120により、このような将来的にしわになりそうな起伏を検出できる。
【0023】
また、初めから図7に示すようなしわがセパレータ60の表面に形成されている場合でも、スリット光が当たると変形する。カメラ120は、しわによるスリット光の変形を撮影できる。カメラ120は、将来的にしわになる図6のような起伏や、図7のような折り畳みじわの両方を撮影できる。
【0024】
投光部110およびカメラ120は、セパレータ60の表面全体にスリット光を順次投影できるように、セパレータ60に対して相対的に移動している。移動する方向は、線状のスリット光と交差する方向である。スリット光と交差する方向に相対的に移動することによって、セパレータ60の表面全体にスリット光を投影し、カメラ120により撮影できる。たとえば、袋詰正極40が搬送されて移動している場合、投光部110は、搬送方向に対して平面方向に交差するスリット光を投射する。好ましくは、投光部110は、搬送方向に対して90度交差する方向に延びたスリット光を投射する。
【0025】
制御部130は、検出手段および判定手段として、セパレータ60の表面形状を検出し、表面の勾配からしわを判定する。しわの検出および判定手法は、次の通りである。
【0026】
図8はしわの候補となる画素を特定する様子を示す図、図9はしわを特定する様子を示す図である。
【0027】
制御部130は、カメラ120が撮影したセパレータ60上のスリット光の形状に基づいて、スリット光が投影されている位置のセパレータ60の断面形状を算出する。この断面形状には、高さが含まれる。たとえば、図6に示すスリット光は、2つの膨らみを反映した形状になっている。この形状と、カメラ120の撮影角度に基づいて、スリット光投影部分のセパレータ60の断面形状(高さ)が算出される。算出された断面形状を合成することで、セパレータ60の表面形状が立体的に特定される。光切断法と呼ばれる手法である。
【0028】
カメラ120により撮影され、スリット光の投影部分を表現する各画素に対して、制御部130は、断面形状に基づいて、高さの情報を関連付け、図示しない記憶部に記憶する。各画素に高さを関連づけた後、制御部130は、各画素について、急な勾配が周囲にあるか算出する。
【0029】
たとえば、図8に示すように、画素P1について、半径R1以内の画素と高さを比較し、所定の閾値th1以上高いか低い画素の個数をカウントする。カウントされた個数が、所定個数th2以上の場合、画素P1の周りで急な高さの差が多くある、すなわち、急勾配が広く形成されていることがわかる。したがって、制御部130は、画素P1をしわを構成する部分の候補(しわ候補)として、記憶する。たとえば、しわ候補には赤色を着色して他の画素と区別して記憶する。制御部130は、カメラ20により撮影したセパレータ60を示す全ての画素について、しわ候補か否かを判定する。
【0030】
制御部130は、しわ候補の判別が終わると、今度は、図9に示すように、しわ候補だけを抽出し、しわ候補の各画素を用いてしわの範囲を特定する。しわの範囲の特定はたとえば次の通りである。しわ候補の画素P2から半径R2以内のしわ候補の画素の個数をカウントし、カウントした個数が所定の閾値th3以上の場合には、画素P2がしわを構成すると判定して記憶する。制御部130は、全てのしわ候補の画素について、しわを構成するか否かを判定する。
【0031】
以上のように、しわ検出装置100は、セパレータ60の表面を撮影し、画素に高さを関連づけ、各画素の周囲の画素との高さの差から急勾配を検出し、しわを判定できる。つまり、セパレータ60の表面の勾配に基づいて、しわを判定できる。したがって、しわがあると判定された袋詰正極40を、後の工程において、払い出したり、そのような袋詰正極40を含む電池を不良品として排除したりできる。
【0032】
なお、上記実施形態において、半径R1は、当業者によって適宜決定される値である。R1を小さな値とすることで、狭い範囲での勾配を検出できる。たとえば、画素間の距離が0.2〜0.3mmであるときに、R1は2〜3mmである。また、閾値th1や閾値th2も当業者によって適宜設定できる。半径R1の値を小さく、閾値th1/閾値th2の値を大きくすることによって、より急激な変化をしわと判定できるようになる。このように、半径R1、閾値th1および閾値th2は、しわを判定するための閾値を構成するパラメータである。したがって、半径R1、閾値th1および閾値th2の値を調整することで、しわと判定するための勾配の閾値を調整できる。半径R2および閾値th3も、当業者によって適宜決定される値である。半径R2および閾値th3も適宜調整することによって、しわと判定するための勾配の閾値を調整できる。
【0033】
次に、上記しわ検出装置100が適用される工程の例について説明する。
【0034】
図10は吸着コンベアで搬送される袋詰正極のセパレータのしわを検出する様子を示す図である。
【0035】
図4に示す袋詰正極40が作成されて搬送される際に、上記しわ検出装置100を適用できる。ここで、袋詰正極40は、吸着コンベア70、72により、図中矢印で示す方向に搬送されているとする。吸着コンベア70、72は、回転するコンベア表面に負圧を発生し、負圧により袋詰正極40を固定しつつ搬送する。吸着コンベア70および吸着コンベア72の間には、隙間74が設けられている。吸着コンベア70および吸着コンベア72の対向する端部では、負圧が開放され、スムーズに吸着コンベア70、72間で袋詰正極40が受け渡される。
【0036】
しわ検出装置100は、吸着コンベア70、72の上方および下方に、投光部110およびカメラ120がそれぞれ2組設けられている。上方の投光部110およびカメラ120により、袋詰正極40の表側のセパレータ60表面のしわを検出できる。また、下方の投光部110およびカメラ120により、袋詰正極40の裏側のセパレータ60の表面のしわを検出できる。下方の投光部110およびカメラ120は、吸着コンベア70、72間の隙間74からセパレータ60の表面にスリット光を投光し、そのスリット光を撮影できるように、角度が調整されている。
【0037】
以上のように、搬送手段の合間を狙ってしわ検出装置100を配置することによって、両面にセパレータ60が配置された袋詰正極40を採用している場合でも、その両面のセパレータ60表面のしわを検出できる。
【0038】
また、袋詰正極40を採用しない場合でも、しわ検出装置100は適用できる。
【0039】
図11はパレットに載置されて搬送される発電要素上のセパレータのしわを検出する様子を示す図である。
【0040】
搬送されているパレット80に、順次、電極(正極または負極)およびセパレータを交互に積層して積層体90(発電要素)を形成していく生産ラインがある。このような生産ラインの場合、セパレータ60が最上層に積層されて、搬送される過程に、図11に示すように、しわ検出装置100を適用できる。積層体90の上方に投光部110およびカメラ120を配置しておくことで、姿勢が固定された投光部110から、移動するセパレータ60表面全長にスリット光を投影できる。カメラ120が順次セパレータ60上のスリット光を撮影することで、制御はセパレータ60のしわを検出できる。最上層にセパレータ60が積層されて搬送される過程毎に、しわ検出装置100を適用することで、全部のセパレータ60についてしわを検出でる。
【0041】
なお、移動しないパレット80上に順次、電極およびセパレータを交互に積層してもよい。この場合、パレット80上方に設置された投光部110およびカメラ120は、セパレータ60の全面にスリット光を投光し、そのスリット光を撮影できるように移動する。移動方向は、スリット光が延びる方向に対して、平面方向に交差する方向であり、好ましくは90度交差する方向である。
【0042】
以上のように、本実施形態のしわ検出装置100は、生産ラインにおいて、様々な工程にも適用できる。
【0043】
上記実施形態では、図8に示すように、半径R1以内で高低差が閾値th1以上ある画素が閾値th2個以上ある場合に、画素Pをしわ候補として判定し、さらに、しわ候補から、図9に示す条件によりしわを判定していた。しかし、これに限定されない。図8の条件を満たす画素の部分を、しわ候補ではなく、しわと判定してもよい。
【0044】
また、しわ候補またはしわを判定する際に、半径R1、R2の範囲において、画素を評価していた。しかし、半径R1、R2のような円形の領域でなく、矩形の領域や他の多角形の領域内において画素を評価してもよい。
【0045】
また、袋詰正極40として、セパレータ60に正極50が袋詰めされた形態について説明した。しかし、袋詰めされるのは負極30であってもよい。この場合でも、同様にセパレータ60表面のしわを検出できる。
【0046】
また、上記実施形態では、図1に示すように、正極タブおよび負極タブが外装材の同一端部から導出されている場合について説明した。しかし、これに限定されない。正極タブおよび負極タブがたとえば反対の端部から導出されてもよい。この場合、二次電池10の発電要素20を形成する際には、タブ部分が相互に反対向きになるように負極30と袋詰正極40が積層される。
【0047】
また、上記実施形態では、1本の線状のスリット光をセパレータ60上に映し出していたが、これに限定されない。複数本のストライプ状のスリット光を投影してもよい。
【符号の説明】
【0048】
10 二次電池、
20 カメラ、
20 発電要素、
30 負極、
40 袋詰正極、
50 正極、
60 セパレータ、
62 溶着部、
70、72 吸着コンベア、
74 隙間、
80 パレット、
90 積層体、
100 検出装置、
110 投光部、
120 カメラ、
130 制御部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極およびセパレータが積層されてなる積層体に対して相対的に移動しながら、最外層の前記セパレータに対して、スリット光を投光する投光手段と、
前記セパレータ上に映し出された前記スリット光の形状を撮影する撮影手段と、
撮影されたスリット光の形状に基づいて、前記セパレータの表面形状を検出する検出手段と、
検出された表面形状に基づいて前記セパレータの勾配を算出し、算出した勾配に基づいてしわを判定する判定手段と、
を有するしわ検出装置。
【請求項2】
前記投光手段および前記撮影手段は、前記積層体を搬送する搬送経路に設置されており、
前記撮影手段は、積層体におけるセパレータの表面形状を検出する請求項1記載のしわ検出装置。
【請求項3】
前記積層体は、袋状に形成されたセパレータ内に電極が配置されてなり、
前記投光手段は、前記積層体の両面にそれぞれスリット光を投光し、
前記撮影手段は、前記積層体の両面のセパレータ表面のスリット光の形状を撮影する請求項1または請求項2に記載のしわ検出装置。
【請求項4】
前記判定手段は、検出された表面形状に基づいて、前記撮影手段により撮影された前記セパレータの画像を構成する各画素に高さを関連付け、前記画素毎に、所定の範囲内における他の前記画素との高低差を比較して、しわを構成するか判定する請求項1〜3のいずれか一項に記載のしわ検出装置。
【請求項5】
電極およびセパレータが積層されてなる積層体に対して相対的に移動しながら、最外層の前記セパレータに対して、スリット光を投光する投光工程と、
前記セパレータ上に映し出された前記スリット光の形状を撮影する撮影工程と、
撮影されたスリット光の形状に基づいて、前記セパレータの表面形状を検出する検出工程と、
検出された表面形状に基づいて前記セパレータの勾配を算出し、算出した勾配に基づいてしわを判定する判定工程と、
を含むしわ検出方法。
【請求項1】
電極およびセパレータが積層されてなる積層体に対して相対的に移動しながら、最外層の前記セパレータに対して、スリット光を投光する投光手段と、
前記セパレータ上に映し出された前記スリット光の形状を撮影する撮影手段と、
撮影されたスリット光の形状に基づいて、前記セパレータの表面形状を検出する検出手段と、
検出された表面形状に基づいて前記セパレータの勾配を算出し、算出した勾配に基づいてしわを判定する判定手段と、
を有するしわ検出装置。
【請求項2】
前記投光手段および前記撮影手段は、前記積層体を搬送する搬送経路に設置されており、
前記撮影手段は、積層体におけるセパレータの表面形状を検出する請求項1記載のしわ検出装置。
【請求項3】
前記積層体は、袋状に形成されたセパレータ内に電極が配置されてなり、
前記投光手段は、前記積層体の両面にそれぞれスリット光を投光し、
前記撮影手段は、前記積層体の両面のセパレータ表面のスリット光の形状を撮影する請求項1または請求項2に記載のしわ検出装置。
【請求項4】
前記判定手段は、検出された表面形状に基づいて、前記撮影手段により撮影された前記セパレータの画像を構成する各画素に高さを関連付け、前記画素毎に、所定の範囲内における他の前記画素との高低差を比較して、しわを構成するか判定する請求項1〜3のいずれか一項に記載のしわ検出装置。
【請求項5】
電極およびセパレータが積層されてなる積層体に対して相対的に移動しながら、最外層の前記セパレータに対して、スリット光を投光する投光工程と、
前記セパレータ上に映し出された前記スリット光の形状を撮影する撮影工程と、
撮影されたスリット光の形状に基づいて、前記セパレータの表面形状を検出する検出工程と、
検出された表面形状に基づいて前記セパレータの勾配を算出し、算出した勾配に基づいてしわを判定する判定工程と、
を含むしわ検出方法。
【図1】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図5】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図5】
【公開番号】特開2012−220326(P2012−220326A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85793(P2011−85793)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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