説明

アウターロータ型モータ

【課題】部品点数を減らして小型化を図り、組立が容易で製造コストを削減可能なアウターロータ型モータを提供する。
【解決手段】インシュレータ12の軸孔方向一方側に突設された円環部16がモータ基板14の貫通孔14aに嵌め込まれ、該貫通孔14aの内周部に形成された基板係合爪21を係合して組み付ける基板固定部17が円環部外壁に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定子コアを覆って絶縁するインシュレータを備えた固定子と回転子軸を備えた回転子がモータ基板と共に取付け部に組み付けられるアウターロータ型モータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばレーザービームプリンターや複写機などのOA機器においては、紙送り用、感光ドラム駆動用、定着器ローラ駆動用などの駆動源としてアウターロータ型のDCブラシレスモータが好適に用いられる。
【0003】
DCブラシレスモータの構成の一例について説明する。ブラケット(又は取付け板)にモータ駆動回路が設けられたモータ基板が固定され、ブラケット外周に固定子が組み付けられる。ブラケットの軸孔には、軸受部を介して回転子軸が回転可能に支持されて回転子が組み付けられている。
【0004】
固定子は、固定子コアに設けられた貫通孔を通じてブラケット(又は取付け板)に対してねじ止め固定される。モータ基板は、ブラケット(又は取付け板)に対してねじ止め固定される。
【特許文献1】特開平7−59324号公報
【特許文献2】特開2006−94675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、固定子とブラケット(又は取付け板)、モータ基板とブラケット(又は取付け板)をねじ止めにより固定するのは、部品点数が多く、組み立て工数も嵩むため、モータの小型化、製造コスト削減を図り難い。
【0006】
本発明はこれらの課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、部品点数を減らして小型化を図り、組み立てが容易で製造コストを削減可能なアウターロータ型モータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
固定子コアを覆って絶縁するインシュレータを備えた固定子と回転子軸を備えた回転子がモータ基板と共に取付け部に組み付けられるアウターロータ型モータであって、インシュレータの軸孔方向一方側に突設された円環部がモータ基板の貫通孔に嵌め込まれ、該貫通孔の内周部に形成された基板係合爪を係合して組み付ける基板固定部が円環部外壁に設けられていることを特徴とする。
また、インシュレータの円環部の端面に突起部が設けられ、該突起部が取付け部に設けられた嵌合孔に嵌合して固定子が位置決めされて組み付けられていることを特徴とする。
インシュレータの突起部は、取付け部の嵌合孔を貫通して突起部先端側が溶着されていることを特徴とする。
また、インシュレータの円環部外壁には段付部が形成され該段付部の周方向一端側には段付部に対向するストッパーが形成されており、モータ基板の貫通孔の周縁部を切り欠いて形成された基板係合爪を段付部に軸方向に重ね合わせて円環部が嵌め込まれ基板係合爪を相対的に周方向一端側に円環部壁面に突き当たるまで移動させて当該基板係合爪がストッパーと段付部に挟み込まれてモータ基板がインシュレータに位置決め固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上述したブラシレスモータを用いれば、インシュレータの軸孔方向一方側に突設された円環部がモータ基板の貫通孔に嵌め込まれ、該貫通孔の内周部に形成された基板係合爪を係合して組み付ける基板固定部が円環部外壁に設けられているので、モータ基板の貫通孔へインシュレータの円環部を挿入して基板固定爪を基板固定部へ係合することで周方向及び軸方向位置が固定される。よって、モータ組立て用のねじを省略してモータ基板を固定子に組み付けることができるので、モータの小型化、低コスト化を実現できる。
また、インシュレータの円環部の端面に突起部が設けられ、該突起部が取付け部に設けられた嵌合孔に嵌合して組み付けられので、固定子を取付け部に対して位置決めして組み付けることができ、組立て性がよい。また、インシュレータの突起部は、取付け部の嵌合孔を貫通して突起部先端側が溶着されていると、組み立て時の固定子の位置決めが確実に行なえるうえに、インシュレータの軸方向の強度を向上できる。
特に、モータ基板の貫通孔の周縁部を切り欠いて形成された基板係合爪を段付部に軸方向に重ね合わせて円環部が嵌め込まれ、基板係合爪を相対的に周方向一端側に円環部壁面に突き当たるまで移動させて当該基板係合爪がストッパーと段付部に挟み込まれてモータ基板がインシュレータに位置決め固定されるので、組立工数が減り、製造コストが削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係るアウターロータ型モータの最良の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。本実施形態では、一例としてアウターロータ型のDCブラシレスモータを用いて説明する。
【0010】
図3、図6、図7を参照して、DCブラシレスモータの概略構成について説明する。
図6において、ロータ1は、カップ状のロータヨーク2が用いられる。ロータヨーク2のハブ3には回転子軸4がかしめ或いは圧入若しくは焼嵌めなどにより一体に固定されている。ロータヨーク2の内周面には、リング状のマグネット5が固着されている。マグネット5は、周方向にN極とS極とで交互に着磁されている。図7において、取付け部である取付け板6には円筒部7が形成されている。この円筒部7にはベアリング8,9を介して回転子軸4が回転可能に支持されている。出力側のベアリング9は、ウェーブワッシャー9aにより予圧がかけられている。
【0011】
図7において、固定子10は、固定子コア11が円筒部7に嵌め込まれてインシュレータ12が取付け板6に位置決めされて組み付けられる。図3A,Bにおいて、固定子コア11はインシュレータ12に覆われており、ティース部にモータコイル13が巻付けられている。また、図7において、モータ駆動回路が設けられたモータ基板14は、インシュレータ12に一体に組み付けられている。モータ基板14のグランドパターンはねじ15によって、取付け板6に電気的に接続されてアースされている。
【0012】
次に、インシュレータ12及びモータ基板14の構造について図1及び図2を参照して説明する。図1において、インシュレータ12の軸孔方向一方側には円環部16が突設されている。円環部外壁側にはモータ基板14を組み付ける基板固定部17が例えば3箇所に設けられている。
【0013】
具体的には、図1において、インシュレータ12の円環部外壁には段付部18が例えば3箇所に形成されている。各段付部18の周方向一端側(円環部壁面16b近傍)には凹溝19と該凹溝19に対向するストッパー20が形成されている。尚、凹溝19は省略してもよい。
図2Aにおいて、モータ基板14の貫通孔14aの周縁部を切り欠いて基板係合爪21が3箇所に形成されている。このモータ基板14の基板係合爪21を段付部18に軸方向に重ね合わせて円環部16が貫通孔14aに嵌め込まれる。そして、基板係合爪21を周方向に凹溝19側にスライドさせて円環部壁面16bに突き当たることで、基板係合爪21が周方向に位置決めされかつ軸方向にストッパー20と段付部18によって挟み込まれて、モータ基板14が基板固定部17に位置決め固定される。
【0014】
また、図1及び図2Bにおいて、インシュレータ12の円環部16の端面には突起部16aが3箇所に設けられている。また、図5Aにおいて、取付け板6には、嵌合孔6aが3箇所に設けられている。図5Bにおいて、インシュレータ12の突起部16aが取付け板6に設けられた嵌合孔6aに嵌合して固定子10が位置決めされて組み付けられる。
【0015】
次に、モータの組み立て構成の一例について、図3乃至図7を参照して説明する。
先ず、図3A,Bにおいて、固定子コア11をインシュレータ12で覆って絶縁した状態で、ティース部にモータコイル13を巻付けて固定子10を組み立てる。
【0016】
次に、図4A,Bにおいて、モータ基板14をインシュレータ12の円環部16に設けられた基板固定部17へ組み付ける。モータ基板14の基板係合爪21を段付部18(図1参照)に軸方向に重ね合わせて円環部16を貫通孔14aに挿入する。そして、基板係合爪21を周方向に円環部壁面16bに突き当たるまで回してストッパー20と段付部18によって挟み込む。これにより、基板係合爪21が周方向に及び軸方向に位置決めされて、モータ基板14が基板固定部17に位置決め固定される。尚、段付部18にはストッパー20に対向する位置に凹溝19が形成されているので、基板係合爪21を段付部18に沿って円環部壁面16bに突き当たるまで回す際に、当該基板係合爪21の逃げとなるため組立て性が良い。
【0017】
次に、図5A,Bにおいて、固定子10を取付け板6に組み付ける。組み付けは、固定子コア11を円筒部7の外周面に嵌め合わせて(中間嵌め又は圧入状態)接着固定される。このとき、インシュレータ12の円環部16に設けられた突起部16aが、取付け板6に設けられた嵌合孔6aに嵌合して固定子10が取付け板6に対して位置決めされて組み付けられる。尚、インシュレータ12の突起部16aは、取付け板6の嵌合孔6aを貫通して突起部先端側が溶着されて抜け止めされるようにしてもよい。これにより、組み立て時の固定子10の位置決めが確実に行なえるうえに、インシュレータ12の軸方向の強度を向上できる。
【0018】
次に、図6に示す回転子1を固定子10に組み付ける。図7において回転子1の回転子軸4は反出力側(ロータヨーク2側)のベアリング8とスラストワッシャー9b、ウェーブワッシャー9aを介して嵌め込まれた出力側のベアリング9によって回転可能に支持される。
【0019】
最後に、図7において、モータ基板14の回路パターンと取付け板6に設けられたねじ孔にねじ15を嵌め込んで、グランドに接続することにより組み立てが完了する。
【0020】
上記実施例において、インシュレータ12の基板固定部17及び突起部16a、モータ基板14の基板係止爪21、取付け板6の嵌合孔6aの数は任意である。また、DCブラシレスモータを用いて説明したが、ブラシ付モータやACモータなど、他のアウターロータ型モータに用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】インシュレータの斜視図である。
【図2】モータ基板及びインシュレータの平面図である。
【図3】固定子の平面図及び右側面図である。
【図4】図3の固定子にモータ基板を組み付けた平面図及び右側面図である。
【図5】図4の固定子に取付け板を組み付けた状態の平面図及び右側面図である。
【図6】回転子の断面図である。
【図7】DCブラシレスモータの断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 ロータ
2 ロータヨーク
3 ハブ
4 回転子軸
5 マグネット
6 取付け板
6a 嵌合孔
7 円筒部
8,9 ベアリング
9a ウェーブワッシャー
9b スラストワッシャー
10 固定子
11 固定子コア
12 インシュレータ
13 モータコイル
14 モータ基板
14a 貫通孔
15 ねじ
16 円環部
16a 突起部
16b 円環部壁面
17 基板固定部
18 段付部
19 凹溝
20 ストッパー
21 基板係合爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子コアを覆って絶縁するインシュレータを備えた固定子と回転子軸を備えた回転子がモータ基板と共に取付け部に組み付けられるアウターロータ型モータであって、
インシュレータの軸孔方向一方側に突設された円環部がモータ基板の貫通孔に嵌め込まれ、該貫通孔の内周部に形成された基板係合爪を係合して組み付ける基板固定部が円環部外壁に設けられているアウターロータ型モータ。
【請求項2】
インシュレータの円環部の端面に突起部が設けられ、該突起部が取付け部に設けられた嵌合孔に嵌合して固定子が位置決めされて組み付けられている請求項1記載のアウターロータ型モータ。
【請求項3】
インシュレータの突起部は、取付け部の嵌合孔を貫通して突起部先端側が溶着されている請求項2記載のアウターロータ型モータ。
【請求項4】
インシュレータの円環部外壁には段付部が形成され該段付部の周方向一端側には段付部に対向するストッパーが形成されており、モータ基板の貫通孔の周縁部を切り欠いて形成された基板係合爪を段付部に軸方向に重ね合わせて円環部が嵌め込まれ、基板係合爪を相対的に周方向一端側に円環部壁面に突き当たるまで移動させて当該基板係合爪がストッパーと段付部に挟み込まれてモータ基板がインシュレータに位置決め固定される請求項1記載のアウターロータ型モータ。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【公開番号】特開2008−271761(P2008−271761A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−115302(P2007−115302)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【出願人】(000106944)シナノケンシ株式会社 (316)
【Fターム(参考)】