説明

アクセスポイント監視システム、監視方法、及び監視装置

【課題】無線アクセスポイントを最適に監視すること。
【解決手段】アクセスポイント監視システム10は、少なくとも1つの無線端末と、無線端末と無線アンテナ部を介して通信接続する複数の無線アクセスポイントと、無線アクセスポイントと通信接続する監視装置と、を備えている。無線端末は、無線アクセスポイントに対してスキャンを行い、各無線アクセスポイントのスキャン情報を監視装置に対して送信する。監視装置は、無線端末から送信された各無線アクセスポイントのスキャン情報に基づいて、無線アクセスポイントの無線アンテナ部の異常を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線端末が通信接続する無線アクセスポイントを監視するためのアクセスポイント監視システム、監視方法、及び監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線端末が複数の無線アクセスポイントの中から1つの無線アクセスポイントを選択し、選択した無線アクセスポイントを介して通信を行う無線通信システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、このような無線通信システムにおいて、例えば、監視装置が、各無線アクセスポイントを監視し、無線アクセスポイントの運用状況や、故障の有無をシステム保守者に対して報知する。監視装置は、例えば、無線アクセスポイントの故障やネットワーク障害により、無線アクセスポイントを監視できない場合、アラーム表示等を行い、システム保守者に対してその異常の報知を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−352660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、無線端末と無線接続する無線アクセスポイント内部の無線アンテナ部のみが故障した場合、監視装置は、当該無線アクセスポイントを通常通り監視できることとなる。したがって、監視装置は、その無線アクセスポイントを正常として誤認識し、システム管理者は、その無線アクセスポイントの無線アンテナ部の障害を検知することが困難となる虞がある。
【0005】
なお、各無線アクセスポイントが、例えば、送受信パケット数を監視する等の方法で、自身の無線アンテナ部を監視することも考えられるが、正常運用でも通信が無い場合、送受信パケット数が上がらない等の理由で、無線アンテナ部の正常性を正確に判断するのが困難となる。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、無線アクセスポイントを最適に監視できるアクセスポイント監視システム、監視方法、及び監視装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、少なくとも1つの無線端末と、前記無線端末と無線アンテナ部を介して通信接続する複数の無線アクセスポイントと、前記無線アクセスポイントと通信接続する監視装置と、を備えるアクセスポイント監視システムであって、前記無線端末は、前記無線アクセスポイントに対してスキャンを行い、前記各無線アクセスポイントのスキャン情報を前記監視装置に対して送信し、前記監視装置は、前記無線端末から送信された前記各無線アクセスポイントのスキャン情報に基づいて、前記無線アクセスポイントの無線アンテナ部の異常を検出する、ことを特徴とするアクセスポイント監視システムである。
【0008】
他方、上記目的を達成するための本発明の一態様は、少なくとも1つの無線端末と、前記無線端末と無線アンテナ部を介して通信接続する複数の無線アクセスポイントと、前記無線アクセスポイントと通信接続する監視装置と、を備えるアクセスポイント監視システムの監視方法であって、前記無線端末が、前記無線アクセスポイントに対してスキャンを行い、前記各無線アクセスポイントのスキャン情報を前記監視装置に対して送信し、前記監視装置が、前記無線端末から送信された前記各無線アクセスポイントのスキャン情報に基づいて、前記無線アクセスポイントの無線アンテナ部の異常を検出する、ことを特徴とするアクセスポイント監視システムの監視方法であってもよい。
【0009】
また、上記目的を達成するための本発明の一態様は、少なくとも1つの無線端末と無線アンテナ部を介して通信接続する複数の無線アクセスポイントと、通信接続する監視装置であって、前記無線端末から送信される、前記無線アクセスポイントに対するスキャン情報に基づいて、前記無線アクセスポイントの無線アンテナ部の異常を検出する、ことを特徴とする監視装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、無線アクセスポイントを最適に監視できるアクセスポイント監視システム、監視方法、及び監視装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係るアクセスポイント監視システムの概略的な構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るアクセスポイント監視システムにおける無線端末、無線アクセスポイント、及び無線LAN監視装置の概略的な構成を示すブロック図である。
【図3】各無線アクセスポイントの隣接情報の一例を示す図である。
【図4】各無線アクセスポイントのスキャン統計情報の一例を示す図である。
【図5】各無線アクセスポイントのスキャン失敗回数閾値の一例を示す図である。
【図6】無線端末のスキャン情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るアクセスポイント監視システムの概略的な構成を示すブロック図である。本実施形態に係るアクセスポイント監視システム10は、少なくとも1つの無線端末301と、無線端末301に無線を介して通信接続する複数の無線アクセスポイント(AP)101〜103と、各無線アクセスポイント101〜103にケーブルなどの有線を介して通信接続する無線LAN(Local Area Network)監視装置201と、を備えている。
【0013】
図2は、本実施形態に係るアクセスポイント監視システムにおける無線端末、無線アクセスポイント、及び無線LAN監視装置の概略的な構成を示すブロック図である。
【0014】
無線端末301は、無線スキャン部302と、帰属管理部303と、データ通信部304と、無線アンテナ部305と、を有している。無線スキャン部302は、周囲をスキャンするスキャン動作を行い、そのスキャン結果を無線LAN監視装置201に対して送信する。帰属管理部303は、各無線アクセスポイント101〜103の帰属情報を管理する。データ通信部304は、各無線アクセスポイント101〜103との間で無線アンテナ部305を介して、データ通信を行う。無線端末301と各無線アクセスポイント101〜103は、夫々の無線アンテナ部305、402を介して相互に無線通信を行う。
【0015】
無線端末301の無線スキャン部302は、例えば、無線端末301が無線アクセスポイント102に帰属したとき、帰属した無線アクセスポイント102に隣接する無線アクセスポイント101、103からスキャン結果がない場合、無線LAN監視装置201に対してスキャン結果を送信する。
【0016】
無線端末301は、無線アクセスポイント102に帰属した後、その無線アクセスポイント102の無線アンテナ部402の故障を検出した場合、別の無線アクセスポイント101、103に帰属した後に、無線LAN監視装置201に、無線アクセスポイント102の故障を通知する。
【0017】
ここで、各無線アクセスポイント101〜103の無線アンテナ部402の故障は、例えば、beaconを含め、無線アンテナ部402からの無線区間に対し全種類のパケットが送信されない場合(例えば、無線アンテナ部402のハードウェア故障、無線アンテナ制御部403のソフトウェア故障など)、やbeaconは送信されるが一部種類のパケット(例えば、認証用パケット、データパケット)が送信されない場合(例えば、無線アンテナ制御部403のソフトウェア故障)、などの無線アンテナ部402の送信側の故障と、beaconは送信されるが認証用パケットやデータパケットが受信できない場合(例えば、無線アンテナ制御部403のソフトウェア故障)などの無線アンテナ部402の受信側の故障と、を含む。
【0018】
無線アクセスポイント101〜103は、有線LAN部401と、無線アンテナ部402と、無線アンテナ制御部403と、を有している。有線LAN部401は、無線LAN監視装置201との間で有線LAN通信を行う。無線アンテナ部402は、例えば、IEEE801.11に基づいて、無線端末301の無線アンテナ部305との間でインフラストラクチャモードによる通信接続を行う。
【0019】
無線LAN監視装置(監視装置)201は、監視部202と、情報表示部203と、を有している。監視部202は、各無線アクセスポイント101〜103の監視を行う。情報表示部203は、例えば、液晶や有機ELなどから構成される表示画面上に、各無線アクセスポイント101〜103の故障の表示やアラーム表示等を行う。
【0020】
無線LAN監視装置201の監視部202は、例えば、無線端末301から受信したスキャン結果および各無線アクセスポイント101〜103の故障情報と、各無線アクセスポイント101〜103の有線部分の状態と、に基づいて、各無線アクセスポイント101〜103の無線アンテナ部402の故障を判断し、情報表示部203にその故障情報やアラーム表示を表示させる。なお、監視部202は、各無線アクセスポイント101〜103の無線アンテナ部402の故障情報を、音声等を用いてシステム保守者に報知してもよい。
【0021】
システム保守者は、無線LAN監視装置201の情報表示部203に表示された各無線アクセスポイント101〜103の状態を確認し、各無線アクセスポイント101〜103の運用を復旧する。なお、無線LAN監視装置201は、各無線アクセスポイント101〜103の無線アンテナ部402の故障を、自動的に復旧するように構成されていてもよい。
【0022】
無線LAN監視装置201は、無線アンテナ部402の故障が発生した各無線アクセスポイント101〜103に対し、無線アンテナ部402の再起動を指示する。当該無線アクセスポイントの無線アンテナ制御部403は、無線LAN監視装置201からの無線アンテナ部402の再起動指示に応じて、無線アンテナ部402を自動的に再起動する。
【0023】
次に、本実施形態1に係るアクセスポイント監視システム10の処理フローについて、詳細に説明する。
【0024】
(初期化処理)
無線端末301が、例えば、無線アクセスポイント102に帰属すると、帰属された無線アクセスポイント102は、無線LAN監視装置201に対して無線端末302の帰属情報を送信する。無線LAN監視装置201は、無線アクセスポイント102から帰属情報を受信すると、その帰属情報に対応する無線端末301に対して、当該機能である無線アクセスポイント102の監視動作を行うか否かを問い合わせる。そして、無線端末301は、その問合せに応じて、無線アクセスポイント102の監視動作を行うことを、無線LAN監視装置201に対して応答する。
【0025】
(スキャン結果の送信処理)
無線端末301が無線アクセスポイント102に帰属する際、無線スキャン部302は近隣の無線をスキャンし、無線アクセスポイント101〜103のスキャン結果を受信する。
【0026】
ここで、無線端末301のスキャンとは、例えば、無線端末301がIEEE802.11に基づくProbe Request信号(リクエスト信号)を周囲に送信することであり、スキャン結果とは、無線端末301からProbe Request信号を受信した各無線アクセスポイント101〜103が、Probe Response信号(応答信号)を無線端末301に対して返信することである。
【0027】
無線端末301の無線スキャン部302は、各無線アクセスポイント101〜103から受信したスキャン結果を一定時間、保存する。無線端末301は、無線アクセスポイント102に帰属した後、無線アクセスポイント102の隣接する無線アクセスポイント101、103のスキャン結果を、無線LAN監視装置201に対して送信する。
【0028】
無線端末301が無線アクセスポイント102に帰属している間、無線端末301の無線スキャン部302は、所定周期で周辺を無線アクセスポイント101〜103のスキャンを行い、例えば、無線アクセスポイント102に隣接する無線アクセスポイント101、103のスキャン結果を、無線LAN監視装置201に対して送信する。
【0029】
(隣接情報の登録処理)
無線LAN監視装置201は、無線アクセスポイント102に帰属している無線端末301から、スキャン情報504(図6)を受信した場合、図3に示す、無線アクセスポイント102の隣接情報501に、無線アクセスポイント101、103のBSSID(Basic Service Set Identifier)などのネットワーク識別子を登録する。これにより、無線LAN監視装置201は、無線アクセスポイント101、103が、無線アクセスポイント102に隣接していることを保持できる。
【0030】
ここで、無線アクセスポイント102の隣接情報501に、無線アクセスポイント101、103を登録する条件として、例えば、無線端末301によって観測された、隣接する無線アクセスポイント101、103の受信信号強度と、無線アクセスポイント102の受信信号強度との差が、無線アクセスポイント101、103と無線アクセスポイント102との間隔に対して十分小さくなければならない。
【0031】
例えば、無線アクセスポイント101、103と無線アクセスポイント102との間隔を15mに設定した場合、2つの無線アクセスポイント101、103と102間の受信信号強度(Received Signal Strength Indication)の差は、20dB程度であるのが好ましい。
【0032】
(無線アクセスポイントの故障時の処理)
無線端末301は、例えば、無線アクセスポイント102に帰属する際、周辺の無線アクセスポイント101、103の存在を確認するためにスキャンを行う。このとき、無線アクセスポイント101の無線アンテナ部402に故障が発生している場合、無線アクセスポイント101は、無線端末301から送信されるProbe Request信号に対して、Probe Response信号を返信できない。
(無線アクセスポイント故障時のスキャン結果送信処理)
【0033】
無線端末301が各無線アクセスポイント101〜103のスキャンを行った結果、無線端末301は無線LAN監視装置201に対し、例えば、無線アクセスポイント102のスキャン成功回数を含むスキャン情報504を送信する。このとき、無線アクセスポイント101の無線アンテナ部402が故障している場合、無線アクセスポイント101は無線端末301に対してProbe Response信号を返信できないため、上記スキャン情報504のスキャン成功回数には含まれない。
【0034】
また、無線LAN監視装置201の監視部202は、各無線アクセスポイント101〜103毎にスキャン統計情報502(図4)とスキャン失敗回数閾値503(図5)とを保持している。
【0035】
スキャン統計情報502は、例えば、各無線アクセスポイント101〜103の、スキャン回数、スキャン失敗回数、最終スキャン時刻、及びスキャン失敗割合、などの情報が含まれる。また、スキャン失敗回数閾値503は、例えば、各無線アクセスポイント101〜103の、監視時間、最低スキャン回数、及びスキャン失敗割合、などの情報が含まれる。さらに、上記無線端末301のスキャン情報504(図6)には、例えば、スキャン回数、スキャン開始時刻、スキャン終了時刻、各無線アクセスポイント101〜103のスキャン成功回数、などの情報が含まれる。
【0036】
無線LAN監視装置201の監視部202は、無線端末301からスキャン情報504を受信し、例えば、無線アクセスポイント102のスキャン成功回数が1以上であり、無線アクセスポイント102に隣接する無線アクセスポイント101、103のスキャン成功回数が0であり、かつ、無線端末301のスキャン終了時刻が、無線アクセスポイント101のスキャン統計情報502の最終スキャン時刻と、スキャン失敗回数閾値503の監視時間と、の和を超えていない場合において、無線アクセスポイント101、103のスキャン統計情報502のスキャン失敗回数に、無線アクセスポイント101、103のスキャンに失敗した回数として、スキャン情報504のスキャン回数を加算する。
【0037】
一方、無線LAN監視装置201の監視部202は、無線端末301のスキャン終了時刻が、無線アクセスポイント101のスキャン統計情報502の最終スキャン時刻と、スキャン失敗回数閾値503の監視時間と、の和を超えている場合において、無線アクセスポイント101のスキャン統計情報502のスキャン失敗回数に、無線アクセスポイント101のスキャンに失敗した回数をとして、スキャン情報504のスキャン回数を設定する。
【0038】
無線LAN監視装置201の監視部202は、無線アクセスポイント101のスキャン統計情報502の最終スキャン時刻に、無線端末301のスキャン終了時刻を設定する。
(無線LAN監視装置におけるアラーム表示処理)
【0039】
無線LAN監視装置201の監視部202は、無線アクセスポイント101のスキャン統計情報502におけるスキャン回数及びスキャン失敗回数に基づいて、スキャン失敗割合(スキャン失敗回数/スキャン回数)を算出する。情報表示部203は、監視部202により算出されたスキャン失敗割合が、スキャン失敗回数閾値503のスキャン失敗割合(所定閾値)を超えていると判断した場合、無線アクセスポイント101の無線アンテナ部402の故障情報をアラーム表示する。
【0040】
ここで、監視部202の動作例として、スキャン失敗回数閾値503の監視時間を1分、最低スキャン回数を10回、スキャン失敗割合を100%として、無線アクセスポイント101のアンテナ部402に故障が発生し、スキャン結果を受けられない状態を想定する。
【0041】
無線端末301が無線アクセスポイント101の周辺に移動し、スキャン動作を行うと、無線アクセスポイント101に隣接する無線アクセスポイント102のみがスキャン結果を無線端末301に対して送信する。無線端末301は、周辺の無線アクセスポイント101からスキャン結果が送信されないため、1分間に10回のスキャンを行った後、無線アクセスポイント102に帰属する。そして、無線端末301は、無線LAN監視装置201に対して、1分間のスキャンを10回行い、無線アクセスポイント102から10回スキャン結果が返信された旨のスキャン情報504を送信する。
【0042】
無線LAN監視装置201の監視部202は、無線アクセスポイント102の隣接情報501に基づいて、無線アクセスポイント101に隣接する、無線アクセスポイント102のスキャン統計情報502のスキャン回数に、無線端末301から送信されたスキャン情報504のスキャン回数を加算する。
【0043】
無線LAN監視装置201の監視部202は、スキャン失敗回数閾値503のスキャン失敗割合と、無線アクセスポイント102のスキャン統計情報502のスキャン失敗割合と、を比較することで、全ての無線端末301が1分間に10回以上、100%のスキャンを失敗したことを導出する。そして、監視部202は、情報表示部203に対して、無線アクセスポイント102のアラーム表示を行うよう指示する。無線LAN監視装置201の情報表示部203は、監視部202からの指示に応じて、無線アクセスポイント102が故障した旨のアラーム表示を行う。
【0044】
(無線アクセスポイント故障時における自動的再起動処理)
無線LAN監視装置201の監視部202には、各無線アクセスポイント101〜103のアンテナ部402が故障した場合に、その復旧を自動的に行うための設定がなされている。また、監視部202は、例えば、無線アクセスポイント101のスキャン統計情報502のスキャン失敗割合の値が、スキャン失敗回数閾値503のスキャン失敗割合の値を超えていた場合、無線アクセスポイント101に対し、無線アンテナ部402の再起動を指示する。
【0045】
無線アクセスポイント101の無線アンテナ制御部403は、無線LAN監視装置201から無線アンテナ部402の再起動を指示された場合、無線アンテナ部402を再起動させる。
【0046】
(無線アクセスポイント自体の運用停止時の処理)
例えば、無線アクセスポイント101の電源が遮断した場合や、無線LAN監視装置201と無線アクセスポイント101の間の有線LANネットワークが断絶した場合、などの理由で、無線アクセスポイント101の有線LAN部401から応答がないときがある。この場合、無線LAN監視装置201の監視部202は、情報表示部203に、無線アクセスポイント101の無線アンテナ部402の故障を表示させず、無線アクセスポイント101が運用停止状態にあることを表示させる。
(無線端末が現在帰属している無線アクセスポイントが故障した場合の動作)
【0047】
無線端末301が無線アクセスポイント102に帰属し、無線アクセスポイント102の無線アンテナ部402が故障した場合を想定する。無線端末301は、定期的に周辺の無線アクセスポイント101〜103をスキャンする。そして、無線端末301は、無線アクセスポイント102からProbe Response信号(スキャン応答)が送信されないことを検知すると、現在帰属している無線アクセスポイント102から帰属解除し、隣接の無線アクセスポイント101、103に帰属する。
【0048】
無線端末301は、上記スキャン動作を行い、無線アクセスポイント101、103に帰属した後、そのスキャン情報を無線LAN監視装置201に対して送信する。無線LAN監視装置201は、無線アクセスポイント101、103の隣接アクセスポイントである、無線アクセスポイント102のスキャン統計情報502の、スキャン回数と、スキャン失敗回数と、を加算する。
【0049】
上述のようにして、無線LAN監視装置201の監視部202は、無線アクセスポイント102のスキャン統計情報502のスキャン失敗割合の値が、スキャン失敗回数閾値503のスキャン失敗割合を超えていた場合、情報表示部203に、無線アクセスポイント102の無線アンテナ部402の故障情報を表示させる。
【0050】
また、無線アクセスポイント101〜103の運用中、無線アクセスポイント101〜103の無線アンテナ部402が故障し、無線端末301を収容できなくなり、あるいは、無線端末301の送信データを中継できなくなった場合、無線LAN監視装置201の情報表示部203がその故障情報を警告表示することで、システム保守者が故障を容易に検知し、修復することができる。この場合、無線LAN監視装置201が故障を検知し、故障を自動的に修復することもできる。
【0051】
さらに、無線アクセスポイント101〜103に複数の無線アンテナ部402を設けることなく、無線端末301が無線アクセスポイント101〜103の無線アンテナ部402の故障を調査し、その調査結果を無線LAN監視装置201に対して通知することで、特別なハードウェアを追加することなく、例えば、無線アクセスポイント101〜103及び無線端末301のソフトウェア処理だけで無線アクセスポイント101〜103の無線アンテナ部402を監視することができる。
【0052】
さらに、本実施形態に係るアクセスポイント監視システム10は、無線アクセスポイント101〜103における、後述のような様々な異常を検知することもできる。
【0053】
(認証シーケンス失敗時の処理)
無線端末301が無線アクセスポイント101に帰属中、無線アクセスポイント102に帰属を試みた場合、例えば、IEEE802.11およびIEEE801.1Xの正常な帰属処理において、Authentication(クライアント認証)、Association(アクセス権獲得)、及びキー交換のシーケンスが無線端末301の帰属管理部303と無線アクセスポイント102との間で実行される。
【0054】
無線アクセスポイント102の無線アンテナ部402において異常が発生している場合、Authentication、Association、及びキー交換のいずれかのシーケンスに異常が生じるため、無線端末301は無線アクセスポイント102への帰属に失敗する。
【0055】
無線端末301の帰属管理部303は、無線アクセスポイント102への帰属に失敗した後、無線アクセスポイント101への帰属を継続する。無線端末301は、無線アクセスポイント102への帰属に失敗したことを、無線LAN監視装置201に対してその原因と共に通知する。そして、無線LAN監視装置201は、図3に示す無線アクセスポイント102の隣接情報(故障情報)に含まれる、Authenticationシーケンス失敗回数、Associationシーケンス失敗回数、キー交換シーケンス失敗回数の何れかの失敗回数を加算する。
【0056】
無線LAN管理装置201の情報表示部203は、無線アクセスポイント102の故障情報に含まれる、無線端末301が無線アクセスポイント102への帰属に失敗した失敗回数と、帰属に失敗したシーケンスにおけるAuthentication、Association、及びキー交換の失敗回数を、シーケンス毎に表示する。システム保守者は、情報表示部203に表示されたこの失敗回数を観測することで、無線アクセスポイント102へ無線端末301が帰属に失敗していることを検知することができる。
【0057】
なお、従来の課題として、無線端末が無線アクセスポイントに帰属できない障害が発生した場合に、帰属できない原因を調査するために、例えば、無線パケットキャプチャや、無線アナライズを行う必要があった。一方で、本実施形態に係るアクセスポイント監視システム10によれば、無線端末301が正常な無線アクセスポイント101〜103に接続した後に、接続失敗の原因を無線端末301から無線LAN監視装置201に対して送信することで、システム保守者が無線パケットキャプチャを行うことなく、無線アクセスポイント101〜103の障害を容易に解析することが出来る。
【0058】
(無線アクセスポイントがデータパケットを転送できなくなった場合の処理)
例えば、無線端末301が無線アクセスポイント101に帰属中、無線アクセスポイント101の無線アンテナ部402が故障した場合を想定する。この場合、無線端末301のデータ通信部304は、無線アクセスポイント101に対し送信するデータパケットに対して、IEEE802.11に定めるAckパケットを受信できないという事象を検出することで、無線アクセスポイント101に対してデータパケットを送信できないと判断する。そして、無線端末301は、無線アクセスポイント101から帰属解除し、無線アクセスポイント102、103に帰属する。
【0059】
無線端末301は、無線アクセスポイント102、103を介して無線LAN監視装置201に対し、無線アクセスポイント101を介してデータパケットを送信できなかった回数である、パケット送信失敗回数を送信する。
【0060】
無線LAN監視装置201は、無線アクセスポイント101の故障情報において、パケット送信失敗回数に、無線端末301が送信したパケット送信失敗回数を加算する。無線LAN監視装置201の情報表示部203は、無線アクセスポイント101の故障情報の、パケット送信失敗回数を表示させることで、複数の無線端末301が無線アクセスポイント101に帰属しながら、データパケットを送信できなかったことをシステム保守者等に対して通知する。
【0061】
システム保守者は、無線LAN監視装置201の情報表示部203に表示されたこのデータパケットが送信できなかったパケット送信失敗回数を観測することで、無線アクセスポイント101の無線アンテナ部402に、データパケットの受信障害があることを検知することができる。なお、上述の如く、アクセスポイント監視システム10が1つの無線端末301を備える構成について説明したが、複数の無線端末301を備える構成についても上記同様の作用効果を奏するため、詳細な説明を省略する。
【0062】
以上、本実施形態に係るアクセスポイント監視システム10において、無線LAN監視装置201の監視部202は、無線端末301から送信される各無線アクセスポイント101〜103のスキャン情報に基づいて、各無線アクセスポイント101〜103の無線アンテナ部402の異常を検出し、情報表示部203に、その検出された無線アクセスポイント101〜103の無線アンテナ部402の故障情報を表示させる。これにより、システム管理者は、情報表示部203に表示された各無線アクセスポイント101〜103の無線アンテナ部402の故障情報を確認することで、各無線アクセスポイント101〜103を最適に監視できる。
【0063】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上記実施形態において、無線端末301がリクエスト信号を送信し、各無線アクセスポイント101〜103が応答信号を返信するアクティブスキャンが適用されているが、これに限らず、各無線アクセスポイント101〜103が制御信号(Beaconフレーム)を無線端末301に対して送信するパッシブスキャンを適用してもよい。
【0064】
また、上述の実施の形態では、本発明をハードウェアの構成として説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。本発明は、例えば、無線LAN監視装置201の監視部202、情報表示部203、各無線アクセスポイント101〜103の無線アンテナ制御部403などが実行する処理を、CPU(Central Processing Unit)にコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。
【0065】
プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R、CD−R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。
【0066】
また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0067】
さらに、上記実施の形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0068】
(付記1)
少なくとも1つの無線端末と、前記無線端末と無線アンテナ部を介して通信接続する複数の無線アクセスポイントと、前記無線アクセスポイントと通信接続する監視装置と、を備えるアクセスポイント監視システムであって、前記無線端末は、前記無線アクセスポイントに対してスキャンを行い、前記各無線アクセスポイントのスキャン情報を前記監視装置に対して送信し、前記監視装置は、前記無線端末から送信された前記各無線アクセスポイントのスキャン情報に基づいて、前記無線アクセスポイントの無線アンテナ部の異常を検出する、ことを特徴とするアクセスポイント監視システム。
(付記2)
(付記1)のアクセスポイント監視システムであって、前記無線端末は、リクエスト信号を送信し、前記無線アクセスポイントから前記リクエスト信号に対する応答信号を受信できないとき、前記無線アクセスポイントのスキャンを失敗と判断し、該スキャンの失敗回数を前記無線アクセスポイントのスキャン情報として、前記監視装置に対して送信し、前記監視装置は、前記スキャン情報の失敗回数の全スキャン回数に対する割合が所定閾値以上となるとき、前記無線アクセスポイントの無線アンテナ部の異常を検出する監視部を有する、ことを特徴とするアクセスポイント監視システム。
(付記3)
(付記1)又は(付記2)のアクセスポイント監視システムであって、前記監視装置は、前記無線アクセスポイントの無線アンテナ部の異常を検出したときに、該異常を報知する報知部を有する、ことを特徴とするアクセスポイント監視システム。
(付記4)
(付記3)のアクセスポイント監視システムであって、前記報知部は、前記無線アクセスポイントの無線アンテナ部の故障情報を表示する情報表示部である、ことを特徴とするアクセスポイント監視システム。
(付記5)
(付記1)乃至(付記4)のうちいずれかのアクセスポイント監視システムであって、前記監視装置は、前記無線アクセスポイントの無線アンテナ部の異常を検出したとき、該無線アクセスポイントの無線アンテナ部の異常を自動的に修復する、ことを特徴とするアクセスポイント監視システム。
(付記6)
(付記5)のアクセスポイント監視システムであって、前記監視装置は、前記無線アクセスポイントの無線アンテナ部の異常を検出したとき、該無線アクセスポイントの無線アンテナ部を再起動させる、ことを特徴とするアクセスポイント監視システム。
(付記7)
(付記1)乃至(付記6)のうちいずれかのアクセスポイント監視システムであって、前記無線端末は、前記無線アクセスポイントに対してスキャンを行う無線スキャン部と、帰属する前記無線アクセスポイントの帰属情報を管理する帰属管理部と、前記監視装置とデータ通信を行うデータ通信部と、を有する、ことを特徴とするアクセスポイント監視システム。
(付記8)
少なくとも1つの無線端末と、前記無線端末と無線アンテナ部を介して通信接続する複数の無線アクセスポイントと、前記無線アクセスポイントと通信接続する監視装置と、を備えるアクセスポイント監視システムの監視方法であって、前記無線端末が、前記無線アクセスポイントに対してスキャンを行い、前記各無線アクセスポイントのスキャン情報を前記監視装置に対して送信し、前記監視装置が、前記無線端末から送信された前記各無線アクセスポイントのスキャン情報に基づいて、前記無線アクセスポイントの無線アンテナ部の異常を検出する、ことを特徴とするアクセスポイント監視システムの監視方法。
(付記9)
少なくとも1つの無線端末と無線アンテナ部を介して通信接続する複数の無線アクセスポイントと、通信接続する監視装置であって、前記無線端末から送信される、前記無線アクセスポイントに対するスキャン情報に基づいて、前記無線アクセスポイントの無線アンテナ部の異常を検出する、ことを特徴とする監視装置。
【符号の説明】
【0069】
10 アクセスポイント監視システム
101〜103 無線アクセスポイント
201 無線LAN監視装置
202 監視部
203 情報表示部
301 無線端末
302 無線スキャン部
303 帰属管理部
304 データ通信部
305 無線アンテナ部
401 有線LAN部
402 無線アンテナ部
403 無線アンテナ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの無線端末と、
前記無線端末と無線アンテナ部を介して通信接続する複数の無線アクセスポイントと、
前記無線アクセスポイントと通信接続する監視装置と、を備えるアクセスポイント監視システムであって、
前記無線端末は、前記無線アクセスポイントに対してスキャンを行い、前記各無線アクセスポイントのスキャン情報を前記監視装置に対して送信し、
前記監視装置は、前記無線端末から送信された前記各無線アクセスポイントのスキャン情報に基づいて、前記無線アクセスポイントの無線アンテナ部の異常を検出する、ことを特徴とするアクセスポイント監視システム。
【請求項2】
請求項1記載のアクセスポイント監視システムであって、
前記無線端末は、リクエスト信号を送信し、前記無線アクセスポイントから前記リクエスト信号に対する応答信号を受信できないとき、前記無線アクセスポイントのスキャンを失敗と判断し、該スキャンの失敗回数を前記無線アクセスポイントのスキャン情報として、前記監視装置に対して送信し、
前記監視装置は、前記スキャン情報の失敗回数の全スキャン回数に対する割合が所定閾値以上となるとき、前記無線アクセスポイントの無線アンテナ部の異常を検出する監視部を有する、ことを特徴とするアクセスポイント監視システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載のアクセスポイント監視システムであって、
前記監視装置は、前記無線アクセスポイントの無線アンテナ部の異常を検出したときに、該異常を報知する報知部を有する、ことを特徴とするアクセスポイント監視システム。
【請求項4】
請求項3記載のアクセスポイント監視システムであって、
前記報知部は、前記無線アクセスポイントの無線アンテナ部の故障情報を表示する情報表示部である、ことを特徴とするアクセスポイント監視システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちいずれか1項記載のアクセスポイント監視システムであって、
前記監視装置は、前記無線アクセスポイントの無線アンテナ部の異常を検出したとき、該無線アクセスポイントの無線アンテナ部の異常を自動的に修復する、ことを特徴とするアクセスポイント監視システム。
【請求項6】
請求項5記載のアクセスポイント監視システムであって、
前記監視装置は、前記無線アクセスポイントの無線アンテナ部の異常を検出したとき、該無線アクセスポイントの無線アンテナ部を再起動させる、ことを特徴とするアクセスポイント監視システム。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちいずれか1項記載のアクセスポイント監視システムであって、
前記無線端末は、前記無線アクセスポイントに対してスキャンを行う無線スキャン部と、帰属する前記無線アクセスポイントの帰属情報を管理する帰属管理部と、前記監視装置とデータ通信を行うデータ通信部と、を有する、ことを特徴とするアクセスポイント監視システム。
【請求項8】
少なくとも1つの無線端末と、
前記無線端末と無線アンテナ部を介して通信接続する複数の無線アクセスポイントと、
前記無線アクセスポイントと通信接続する監視装置と、を備えるアクセスポイント監視システムの監視方法であって、
前記無線端末が、前記無線アクセスポイントに対してスキャンを行い、前記各無線アクセスポイントのスキャン情報を前記監視装置に対して送信し、
前記監視装置が、前記無線端末から送信された前記各無線アクセスポイントのスキャン情報に基づいて、前記無線アクセスポイントの無線アンテナ部の異常を検出する、ことを特徴とするアクセスポイント監視システムの監視方法。
【請求項9】
少なくとも1つの無線端末と無線アンテナ部を介して通信接続する複数の無線アクセスポイントと、通信接続する監視装置であって、
前記無線端末から送信される、前記無線アクセスポイントに対するスキャン情報に基づいて、前記無線アクセスポイントの無線アンテナ部の異常を検出する、ことを特徴とする監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−105038(P2012−105038A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251489(P2010−251489)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000227205)NECインフロンティア株式会社 (1,047)
【Fターム(参考)】