説明

アクチュエータ、バルブ装置及びダンパ装置

【課題】手動と電動の操作切り替え及び出力軸の変速を簡易な構成で実現することができるアクチュエータ及びこれを用いたバルブ装置、ダンパ装置を提供する。
【解決手段】同軸に一体で回転する複数のギアから構成された手動/変速クラッチギア8を固定軸9に沿って移動操作することにより、前段側の伝達ギア又は後段側の伝達ギアと手動/変速クラッチギア8との噛み合わせを解除し、また手動/変速クラッチギア8と後段側の伝達ギアとの間での所望の減速比を与えるギアを噛み合わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動モータにより駆動対象物を駆動制御するアクチュエータ及びこのアクチュエータを用いてバルブを開閉制御するバルブ装置及びダンパを開閉制御するダンパ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アクチュエータによるバルブ操作において、バルブの据え付け、点検、緊急時等には、手動操作によるバルブ開度の調整が必要とされる場合がある。このため、バルブの開閉制御を行う電動のアクチュエータでは、電動モータ等の駆動源とアクチュエータ出力軸との間のギアユニット内に電動操作と手動操作の切り替えを行うクラッチ機構を介在させている。
【0003】
図8は、手動と電動の操作切替用のクラッチ機構を有するアクチュエータを備えたバルブ装置を示す斜視図であり、図8(a)はアクチュエータ100をバルブ101に取り付けた状態を示し、図8(b)はバルブ101を全開にする手動操作例を示し、図8(c)はバルブ101を閉状態とする手動操作例を示している。
【0004】
図8に示すように、アクチュエータ100は、ケーシングにバルブ開度メモリ104に沿って回動可能な手動操作レバー102、及びケーシングから突出させたクラッチボタン103を備える。なお、アクチュエータ100のケーシング内は図示していないが、電動モータ等の駆動源、バルブ101の弁軸に連結された出力軸、及び駆動源からの駆動力を出力軸に伝えるギアユニットが設けられている。
【0005】
バルブ101の開度調整を手動操作にて行う場合、図8(b)、(c)に示すように、クラッチボタン103を押下する(図8中に黒色矢印で示す)。これにより、ケーシング内のギアユニットと駆動源との機械的な結合が解除される。このとき、図8(b)に示すバルブ開度メモリ104の開度100の位置まで手動操作レバー102を回動させると、これに応じて出力軸が回転してバルブ101が全開状態になる。また、図8(c)に示すように、バルブ開度メモリ104の開度0の位置まで手動操作レバー102を回動させると、これに応じて出力軸が逆方向に回転してバルブ101が閉状態になる。
【0006】
このような手動操作用のクラッチ機構を有する従来のアクチュエータとしては、例えば特許文献1に開示されるものがある。特許文献1に開示されるアクチュエータでは、ケーシング内に設けたクラッチボタンの押圧ストロークでアクチュエータの電源オンオフすると共に、クラッチボタンの押圧操作に連動して上下動するクラッチ桿によりギアユニットの噛合ギア群の1つを離脱させる。これにより、出力軸の手動操作が可能になる。
【0007】
また、特許文献2には、クラッチ手段がオフの状態でバルブの手動操作が行われたことを前提として、タイマの動作を開始させると共に、バルブの開度を目標開度に調整する制御回路の作動を停止させ、且つタイマのタイムアップに基づいて制御回路の作動を復帰させる手段を具備するバルブ制御装置が開示されている。このバルブ制御装置では、手動で調節したバルブ開度を設定変更可能なタイマに設定されているタイムアップ時間まで保持することが可能である。
【0008】
一方、アクチュエータは、一定の速度でバルブの開度操作を行うことが一般的であるが、バルブの動作速度を変えたい場合がある。例えば、開く方向(流量が増加する)へは高速で、閉じる方向(流量が減少する)へは低速で動かしたいという要求がある。このような要求に対応するには、変速用のクラッチ機構(変速クラッチ)を設ける必要がある。
【0009】
図9は、手動操作用のクラッチ機構と変速用のクラッチ機構を有する従来のアクチュエータのギアユニットの構成例を示す図である。図9に示すアクチュエータは、電動モータ200と出力軸210の間に介在させたギアユニット内に、電動操作と手動操作を切り替えるためのギアである電動/手動切替クラッチ202と、速度比の変更用ギアである変速クラッチ205とを設けた構成例を示している。この電動/手動切替クラッチ202と変速クラッチ205は、図9中の矢印で示すように上下動自在にギアユニット内に支持される。
【0010】
電動/手動切替クラッチ202は、電動操作時(通常のアクチュエータ使用時)において、伝達ギア203と電動モータ200の駆動軸に取り付けられた伝達ギア201とにそれぞれ噛み合った状態にある。この状態で電動モータ200を駆動させると、その駆動力が伝達ギア203の後段のギアに順次伝達されて出力軸210が駆動する。
【0011】
手動操作時には、電動/手動切替クラッチ202を図9中に示す手動操作位置にシフトさせて伝達ギア201との噛み合いを解除する。これによって、電動/手動切替クラッチ202から後段のギアと電動モータ200との機械的結合が解除されるので、手動操作レバー204を回動操作することにより出力軸210を手動操作することができる。
【0012】
また、変速クラッチ205は、例えば大径ギアと小径ギアが同軸に一体に形成された構造を有しており、図9に示す第1変速位置で出力軸側に隣接する第1変速ギア206と噛み合い、第2変速位置で出力軸側に隣接する第2変速ギア207と噛み合う。第1変速ギア206は第2変速ギア207より小径のギアであり、両者は伝達ギア208の上下に設けられる。伝達ギア208は、出力軸210に設けられた伝達ギア209と噛み合っている。これにより、第1変速位置と第2変速位置で異なる減速比で電動モータ200の回転を出力軸210に伝えることができる。
【0013】
【特許文献1】特開平8−21557号
【特許文献2】特開2001−343084号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
バルブの開閉制御等では、バルブの用途によって開閉動作の速度を速めたり、動作量が異なっても動作時間を維持したい場合がある。このため、バルブの開閉動作を制御するアクチュエータの動作速度を可変に設定できることが望まれる。
【0015】
従来のアクチュエータにおいて、出力軸の回転速度を可変とするには、例えば図9に示す変速クラッチ205のような変速用のクラッチ機構をギアユニット内に新たに設けるか、若しくは電動モータ等の駆動源自体を速度可変にすること等が考えられる。
【0016】
しかしながら、例えば手動操作用のクラッチ機構を有するアクチュエータに対して変速用のクラッチ機構を設ける場合、図9に示すように部品点数が増えてギアユニット内の空間が占有され、アクチュエータが大型化、複雑化するという課題がある。また、駆動源を速度可変にするには、高価な速度制御回路やこれに対応した駆動源が必要であり、コスト的に不利である。
【0017】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、手動と電動の操作切り替え及び出力軸の変速を簡易な構成で実現することができるアクチュエータ及びこれを用いてバルブを開閉制御するバルブ装置及びダンパを開閉制御するダンパ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この発明に係るアクチュエータは、同軸に一体で回転する複数のギアから構成され、中心軸に沿って移動可能に取り付けられた手動/変速クラッチギアと、手動/変速クラッチギアと噛み合って電動モータからの回転トルクを伝達する前段側伝達ギア部と、手動/変速クラッチギアと噛み合って異なる減速比を与える複数のギアを含んで構成され、電動モータからの回転トルクを出力軸側に伝達する後段側伝達ギア部と、手動/変速クラッチギアの中心軸に沿った移動操作により、前段側伝達ギア部又は後段側伝達ギア部のうちのいずれか一方と手動/変速クラッチギアとの噛み合わせ解除と、手動/変速クラッチギアと後段側伝達ギア部との間で選択的にギアの噛み合わせとを行うクラッチギア切替手段とを備えるものである。
【0019】
この発明に係るバルブ装置は、上記アクチュエータと、アクチュエータの出力軸の動作に応じて開閉するバルブ本体とを備えるものである。
【0020】
この発明に係るダンパ装置は、上記アクチュエータと、アクチュエータの出力軸の動作に応じて開閉するダンパ本体とを備えるものである。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、同軸に一体で回転する複数のギアから構成された手動/変速クラッチギアを中心軸に沿って移動操作することにより、前段側伝達ギア又は後段側伝達ギアと手動/変速クラッチギアとの噛み合わせを解除し、また手動/変速クラッチギアと後段側伝達ギアとの間での所望の減速比を与えるギアを噛み合わせるので、同軸に一体で回転する簡易な構成のギアの追加により、ケーシング内の収納空間を占有する部品点数の増加を招くことなく、手動と電動の操作切り替え及び出力軸の変速を実現することができるという効果がある。また、上記アクチュエータをバルブ装置やダンパ装置に用いることで、手動でバルブやダンパの開度調整を行うことができる上、所望の速度でバルブを開閉制御できる。さらに、複数の動作速度が得られるので、バルブやダンパ等の駆動対象物の様々な動作制御仕様に対して1機種で対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるアクチュエータの内部機構を概略的に示す図であり、図2は、図1中のギアユニットを示す図である。実施の形態1によるアクチュエータ1では、ケーシング内に収納された支持プレート2a,2b、支持プレート2a上に配置された電動モータ3、支持プレート2a,2bを貫通して回転自在に設けられた出力軸4、及び電動モータ3の回転トルクを出力軸4まで伝達するギアユニットを備える。
【0023】
支持プレート2aと支持プレート2bは、ケーシング内に一定の間隔で平行に配置される。電動モータ3は、回転軸5が支持プレート2aを貫通して配置されており、回転軸5には伝達ギア6が取り付けられる。アクチュエータ1の出力軸4は、図1の下方に取り付けられる図示しないバルブの弁軸に連結され、出力軸4の回転に応じて当該バルブが開閉する。
【0024】
ギアユニットは、電動モータ3の回転軸5に取り付けられた伝達ギア6、伝達ギア6と噛み合う伝達ギア7a、伝達ギア7aと同軸に一体に形成された伝達ギア7b、ギア部8a,8b,8cを有する手動/変速クラッチギア8、同軸に形成されて一体に回転する伝達ギア10a,10b,10c、出力軸4と一体に回転する伝達ギア12を備える。なお、同軸に一体に形成された伝達ギア7a,7bが前段側伝達ギアを構成し、同軸に形成されて一体に回転する伝達ギア10a,10b,10cが後段側伝達ギア部を構成する。
【0025】
伝達ギア7aは、電動モータ3の回転軸5に取り付けられた小径の伝達ギア6と噛み合っており、支持プレート2b側に同軸で一体に伝達ギア7aより小径の伝達ギア7bが形成される。また、伝達ギア7a,7bは、支持プレート2a,2bに固定された固定軸7を中心に回転自在に取り付けられる。
【0026】
手動/変速クラッチギア8は、同軸で一体に形成されたギア部8a,8b,8cから構成され、支持プレート2a,2bに固定された固定軸9に回転自在で、かつ、図2中に矢印で示す軸方向に沿ってスライド可能に取り付けられる。支持プレート2a側のギア部8aと支持プレート2b側のギア部8cとの間に形成されたギア部(前段ギア部)8bは、ギア部8a,8cと比較して大径であり、電動モータ3側(以降、前段側と称す)に隣接する同一ピッチで小径の伝達ギア7bと噛み合う。
【0027】
なお、伝達ギア7bは、手動/変速クラッチギア8が固定軸9に沿ってスライドしても噛み合いが外れない歯幅を有している。つまり、図1及び図2では、手動/変速クラッチギア8により手動操作に切り替えた際、手動/変速クラッチギア8の前段側の伝達ギアとの噛み合いが維持され、後段側の伝達ギアとの噛み合いが外れる構成を示している。
【0028】
手動/変速クラッチギア8のギア部8a(第1ギア部)は、ギア部8cより大径であり、手動/変速クラッチギア8の固定軸9に沿ったスライド操作により、出力軸4側(以降、後段側と称す)に隣接する伝達ギア10a(第1ギア)との噛み合い及びその解除が選択的に決定される。また、ギア部8c(第2ギア部)は、手動/変速クラッチギア8の固定軸9に沿ったスライド操作により、後段側に隣接する伝達ギア10b(第2ギア)との噛み合い及びその解除が選択的に決定される。
【0029】
本実施の形態1によるアクチュエータ1では、手動/変速クラッチギア8のギア部8aと後段側の伝達ギア10aとが噛み合った状態と、手動/変速クラッチギア8のギア部8cと後段側の伝達ギア10bとが噛み合った状態とが、それぞれ異なる減速比のギアユニットを構成する。
【0030】
手動/変速クラッチギア8の後段側に隣接して配置される伝達ギア10a,10b,10cは同軸に一体で回転するように形成されており、支持プレート2a,2b間に軸支された回転軸10に一体に取り付けられる。伝達ギア10bは、伝達ギア10a,10cの双方よりも大径であり、伝達ギア10aは伝達ギア10cよりも大径である。
【0031】
また、本実施の形態1では、手動/変速クラッチギア8の手動操作位置、つまり図1及び図2に示す伝達ギア10aとギア部8a及び伝達ギア10bとギア部8cの噛み合いがそれぞれ解除される手動/変速クラッチギア8のスライド位置を基準として、後段側に隣接する伝達ギアを配置する。例えば、変速用のギア部8aと噛み合わせる伝達ギア10aは、上記手動操作位置より支持プレート2a側に配置し、変速用のギア部8cと噛み合わせる伝達ギア10bは上記手動操作位置より支持プレート2b側に配置する。
【0032】
出力軸4と一体に回転する伝達ギア12は、前段側に隣接する小径の伝達ギア10cと噛み合う。伝達ギア10cに伝わった電動モータ3の回転トルクは、伝達ギア12を介して出力軸4に伝わり、バルブの開閉動作が行われる。
【0033】
また、回転軸10には、支持プレート2aを貫通し、ケーシング外に突出する手動操作レバー11が設けられる。手動操作時に、手動/変速クラッチギア8をスライド操作して後段側の伝達ギアと前段側の伝達ギアとの連結を遮断し、手動操作レバー11を回転軸10に対して円周方向に回動操作すると、この回転トルクが伝達ギア10c,12を経て出力軸4に伝わり回転する。
【0034】
このように、本発明では、電動と手動の操作切り替え用のクラッチ機構と変速用のクラッチ機構とを、同軸で一体に回転するギアとして共通化している。これにより、ケーシング内の水平方向の空間を過剰に占有することなく、電動と手動の操作の切り替え機能と2変速機能とを簡易な構成で実現でき、アクチュエータの小型化を図ることができる。
【0035】
図3は、クラッチギア切替手段を示す図であり、図3(a)は手動/変速クラッチギア8の支持プレート2a側からみた上面を示し、図3(b)はピニオン部17の軸方向に垂直な側面を示している。また、図3(a)において、支持プレート2aを透明にして、手動/変速クラッチギア8と弾性緩衝部の構成を視認しやすく示している。
【0036】
このクラッチギア切替手段は、図3(b)に示すように、固定軸9に沿って上下方向から手動/変速クラッチギア8を挟み込んで保持する弾性保持部材13と、外部からピニオン部17の軸に対して円周方向に加えられた回転力を固定軸9の軸方向に弾性保持部材13をスライドさせる力に変換して弾性保持部材13に保持された手動/変速クラッチギア8を固定軸9に沿ってスライドさせる操作部16とを備える。
【0037】
弾性保持部材13はその一端部で手動/変速クラッチギア8のギア部8aの上面に当接して弾性保持する上方弾性保持部13−1と、その一端部で手動/変速クラッチギア8のギア部8cの下面に当接して弾性保持する下方弾性保持部13−2と、手動/変速クラッチギア8のギア部8bの外周に位置するとともに上方弾性保持部13−1の他端部と下方弾性保持部13−2の他端部とを連結する連結部13−3から構成されており、その連結部13−3の外側面には、操作部16のピニオン部17と噛み合うラック部(伝達部)14が形成されており、ラック部14の両側面部には、図3(a)、(b)に示すように、固定軸9の軸方向に平行な溝部15がそれぞれ形成されている。
【0038】
また、図3(a)に示すように、ラック部14の両溝部15に対向するようにレール部18が設けられる。レール部18には、固定軸9に平行な線状の当接部18aが形成されており、当接部18aは溝部15に係合する。なお、図3(b)では、弾性保持部材13及びその周辺構成を視認し易くするために、レール部18の記載を省略している。
【0039】
操作部16は、ケーシングの外壁2cから突出して外部から回転操作が可能な操作ダイヤル20と、この操作ダイヤル20に一端が接続する操作軸19と、操作軸19の他端が接続し、ラック部14に噛み合うピニオン部17とを備える。操作ダイヤル20により操作軸19を中心軸とするピニオン部17の回転操作が行われると、その回転がラック部14に伝わり、固定軸9の軸方向に平行な移動に変換されて溝部15を介し弾性保持部材13がレール部18の当接部18a上を摺動する。これにより、手動/変速クラッチギア8は、弾性保持部材13により上下から付勢力が加えられながら、固定軸9に沿ってスライドする。
【0040】
例えば、図3(a)に示す「MANUAL」の位置に操作ダイヤル20を回転させると、手動/変速クラッチギア8が、図1及び図2に示す後段側に隣接する伝達ギアとの噛み合いが解除される位置(手動操作位置)になる。また、一例ではあるが、「30S」又は「60S」はフルストローク動作時間(全閉から全開、もしくは全開から全閉までの動作時間)を示しており、30秒又は60秒でバルブの開度が変更されることを示している。つまり、「30S」又は「60S」の位置に操作ダイヤル20を合わせると、手動/変速クラッチギア8のギア部8a又はギア部8cと後段側の伝達ギア10a又は伝達ギア10bとが噛み合う。
【0041】
上述したような手動/変速クラッチギア8のスライド操作により後段側のギアと手動/変速クラッチギア8のギア部とを噛み合わせる際に、後段側のギアと手動/変速クラッチギア8のギア部とが噛み合い位置にない場合がある。
即ち、本実施の形態1では、後段の伝達ギアと手動/変速クラッチギア8のギア部が噛み合いの位置にない場合、操作ダイヤル20で設定された位置までラック部14を固定軸9に沿ってスライドさせる力(手動/変速クラッチギア8のスライド方向の力)により、後段側の伝達ギアの歯端面と手動/変速クラッチギア8のギア部の歯端面とが上下に当接した状態になる。
【0042】
例えば、後段側の伝達ギア10aと手動/変速クラッチギア8のギア部8aとを噛み合わせる際、本来であれば図4中で符号bを付した位置で両ギアが噛み合うが、両ギアが噛み合いの位置にない場合、図4中で符号aを付した位置にギア部8aがある状態で伝達ギア10aとギア部8aとの双方の歯端面が上下に当接する。このとき、弾性保持部材13の上方弾性保持部13−1の保持力が弱まるとともに、弾性保持部材13の下方弾性保持部13−2による保持力は強まるものの、下方弾性保持部13−2が図4に示す下向きの矢印で示す方向(スライド方向と逆方向)に弾性変形することによりその保持力の上昇も緩和される。それによって、両ギアの双方の歯端面の当接部に生じる応力が緩和され歯車の歯形の損傷を防ぐことができる。
【0043】
この後、電動モータ3を駆動させると、手動/変速クラッチギア8は固定軸9に対して回転して、噛み合い位置になかった両ギアが噛み合いの位置に移行すると、弾性保持部材13はもとの状態に復帰し、復帰により発生した反力を上記スライド方向の力として開放する。そして、弾性保持部材13は開放されたスライド方向の力によって、手動/変速クラッチギア8を固定軸9に沿って更に上方にスライドさせ、ギア部8aは図4のbの位置まで移動して伝達ギア10aと完全に噛み合うようになる。
【0044】
一方、後段側の伝達ギア10bと手動/変速クラッチギア8のギア部8cとを噛み合わせる際、本来であれば図4中で符号dを付した位置で両ギアが噛み合うが、両ギアが噛み合い位置にないと、図4中で符号cを付した位置にギア部8cがある状態で伝達ギア10bとギア部8cとの双方の歯端面が上下に当接する。このとき、弾性保持部材13の下方弾性保持部13−2の保持力が弱まるとともに、弾性保持部材13の上方弾性保持部13−1の保持力は強まるものの、上方弾性保持部13−1が図4に示す上向きの矢印で示す方向(スライド方向と逆方向)に弾性変形することによりその保持力の上昇も緩和される。それによって、両ギアの双方の歯端面の当接部に生じる応力が緩和され歯車の歯形の損傷を防ぐことができる。
【0045】
この後、電動モータ3を駆動させると、手動/変速クラッチギア8は固定軸9に対して回転して、噛み合い位置になかった両ギアが噛み合いの位置に移行すると、弾性保持部材13はもとの状態に復帰し、復帰により発生した反力を上記スライド方向の力として開放する。そして、弾性保持部材13は開放されたスライド方向の力によって、手動/変速クラッチギア8を固定軸9に沿って更に下方にスライドさせ、ギア部8cは図4のdの位置まで移動して伝達ギア10bと完全に噛み合うようになる。
【0046】
このように、図3に示すクラッチギア切替手段では、噛み合わせようとする両ギアが噛み合いの位置になく双方の歯端面が上下に当接しても、弾性保持部材13の上方弾性保持部13−1又は下方弾性保持部13−2がスライド方向と逆方向に弾性変形することにより両ギアの双方の歯端面の当接部に生じる応力が緩和され歯車の歯形の損傷を防ぐことができ、その状態で電動モータ3を駆動することにより両ギアが噛み合い位置に移行すると、弾性保持部材13はもとの状態に復帰することにより発生する反力により、両ギアを自動的に完全に噛み合い状態とすることができる。
【0047】
なお、手動/変速クラッチギア8のギア部(8a,8b)と後段側の伝達ギア(10a,10b)が噛み合い状態になると、弾性保持部材13は変形状態からもとの状態に復帰し、上方弾性保持部13−1の保持力と下方弾性保持部13−2の保持力ももとに戻るので、手動/変速クラッチギア8は安定して保持される。
【0048】
図5は、クラッチギア切替手段の他の構成例を示す図であり、図5(a)はピニオン部17の軸方向に垂直な側面を示し、図5(b)は(a)中の矢印A,Bの方向からそれぞれみたピニオン部17及び弾性操作軸19a,19bを示している。図5に示す弾性緩衝部は、保持部材13Aと、操作部16A(又は操作部16B)とを備える。保持部材13Aは、固定軸9に沿った上下から手動/変速クラッチギア8を挟み込むように保持する。図3に示した弾性保持部材13と異なり、保持部材13A自体は弾性変形しない。
【0049】
また、保持部材13Aも、図3に示した弾性保持部材13と同様に、その一端部で手動/変速クラッチギア8のギア部8aの上面に当接して保持する上方保持部13A−1と、その一端部で手動/変速クラッチギア8のギア部8cの下面に当接して保持する下方保持部13A−2と、手動/変速クラッチギア8のギア部8bの外周に位置するとともに上方保持部13A−1の他端部と下方保持部13A−2の他端部とを連結する連結部13A−3から構成されており、その連結部13A−3の外側面に操作部16A(又は操作部16B)のピニオン部17と噛み合うラック部(伝達部)14が形成される。なお、保持部材13Aに対して弾性保持部材13と同様な溝部を形成し、保持部材13Aの溝部がレール部の当接部上を摺動することにより、手動/変速クラッチギア8が、固定軸9に沿ってスライドする構成としてもよい。
【0050】
操作部16Aは、図3(a)に示したような操作ダイヤルに一端が接続する線状の弾性部材からなる弾性操作軸19aと、弾性操作軸19aの他端が接続し、保持部材13Aのラック部14に噛み合うピニオン部17とを備える。一方、操作部16Bでは、図5(b)に示すように、固定軸9の軸方向に対して垂直方向に延びる線状の弾性部材からなる弾性操作軸19bを2本平行して設けている。
【0051】
不図示の操作ダイヤルで弾性操作軸19a(又は弾性操作軸19b,19b)を軸とするピニオン部17の回転操作が行われると、その回転がラック部14に伝わり、手動/変速クラッチギア8の固定軸9の軸方向に沿った移動に変換されて手動/変速クラッチギア8がスライドする。
【0052】
ここで、後段側の伝達ギアと手動/変速クラッチギア8のギア部とが噛み合い位置にない場合、操作ダイヤルで設定された位置までラック部14を固定軸9に沿ってスライドさせる力(手動/変速クラッチギア8のスライド方向の力)により、後段側の伝達ギアと手動/変速クラッチギア8のギア部の双方の歯端面が上下に当接した状態になる。
【0053】
上述のように歯端面が当接して手動/変速クラッチギア8のスライドが規制されると、操作ダイヤルの回転操作により加えられた回転力によって、弾性操作軸19a(又は弾性操作軸19b,19b)が、図5(b)に示すように捩れ変形する。
つまり、図5に示すクラッチギア切替手段では、両ギアが噛み合いの位置になるまで、手動/変速クラッチギア8を所定のスライド位置に設定するためのスライド方向の力が、弾性操作軸19a(又は弾性操作軸19b,19b)の捩れ変形によって吸収(蓄積)される。このように構成することでも、図3に示したクラッチギア切替手段と同様に、当接する両ギアの歯端面にかかる応力を緩和し、歯車の歯形の損傷を防ぐことができる。
【0054】
この後、電動モータ3を駆動させる等して両ギアを噛み合い位置にすると、弾性操作軸19a(又は弾性操作軸19b,19b)は、捩れ変形状態から捻れのない状態に復帰し、復帰の際に発生する反力を上記スライド方向の力として解放する。この力はピニオン部17からラック部14に伝達されることにより、手動/変速クラッチギア8が、保持部材13Aを介して操作ダイヤルで設定された適切な位置にスライドして後段側の伝達ギアと噛み合う。
【0055】
なお、図3乃至図5に示した構成の他、手動/変速クラッチギア8の上下に巻バネ部材を設け、これら巻バネ部材によって手動/変速クラッチギア8に対して上下双方から付勢力を与えるようにしても良いし、要は手動/変速クラッチギア8の上下双方に弾性保持力を与えられる構成を付加することができればどのような構成でも良い。これらの構成によっても、上記と同様な効果を得ることができる。
【0056】
以上のように、この実施の形態1によれば、電動モータ3からの回転トルクを伝える前段側の伝達ギアと噛み合うギア部と、変速用の径の異なる複数のギア部とが同軸に形成され、固定軸9を中心として全てのギア部が一体に回転すると共に、固定軸9に沿ってスライド可能な手動/変速クラッチギア8を備え、手動/変速クラッチギア8のギア部と後段側の伝達ギアとの連結が外れる手動操作時の状態と、変速用の径の異なる複数のギア部の各々と後段側の対応する伝達ギアとが噛み合う各変速の状態とを、固定軸9に沿った手動/変速クラッチギア8のスライド操作により選択的に決定する。このように構成することで、ケーシング内の収納空間を占有する部品点数の増加を招くことなく、同軸にギアを組み合わせた簡易な構成の手動/変速クラッチギア8を追加するだけで、手動と電動の操作切り替えと変速の双方を実現することができる。
【0057】
また、上記実施の形態1によれば、手動/変速クラッチギア8と後段側の伝達ギアとが噛み合い位置になく、両ギアの歯端面が上下に当接した際、弾性保持部材13や弾性操作軸19a,19bの弾性変形により手動/変速クラッチギア8のスライド方向の力を吸収して両ギアの歯端面への応力を緩和することができる。さらに、両ギアが噛み合い位置になると、弾性変形した弾性保持部材13や弾性操作軸19a,19bがもとの状態に復帰して、その反力を手動/変速クラッチギア8の固定軸9に沿ったスライド方向の力として解放する。この力によって両ギアを適切な位置で噛み合わせることができる。
【0058】
さらに、上記実施の形態1では、手動/変速クラッチギア8がギア部8a,8cによる2変速である場合を示したが、本発明は2変速に限定されるものではない。
図6は、実施の形態1によるギアユニットの他の構成例を示す図である。ギア部21a,21b,21cは、上記実施の形態1で示した手動/変速クラッチギア8のギア部8a,8b,8cに相当するものであるが、図6に示す手動/変速クラッチギア21には、ギア部21cより小径のギア部21dをさらに設けている。また、後段側に隣接する伝達ギアとして、ギア部21dに対応する伝達ギア10dを、伝達ギア10a,10b,10cと同軸で一体に回転するように設けている。
【0059】
このように、本発明では、ギア部21dと伝達ギア10dによる変速段を一段追加して3変速としたが、それ以上の変速段数にも容易に拡張可能である。
【0060】
実施の形態2.
上記実施の形態1では手動操作するにあたり、手動/変速クラッチギアによって後段側の伝達ギアとの連結を遮断する例を示したが、本実施の形態2は、手動/変速クラッチギアにより前段側の伝達ギアとの連結を遮断するものである。
【0061】
図7は、この発明の実施の形態2によるアクチュエータのギアユニットを示す図である。図7に示すギアユニットは、電動モータ3の回転軸5に固定された伝達ギア6、ギア部22a,22b,22c,22dを有する手動/変速クラッチギア22、同軸に形成されて一体に回転する伝達ギア24a,24b,24cを備える。
【0062】
手動/変速クラッチギア22は、同軸に一体に形成されたギア部22a,22b,22c,22dから構成され、支持プレート2a,2bに固定された固定軸23に回転自在で、かつ固定軸23の軸方向に沿ってスライド可能に設けられる。なお、手動/変速クラッチギア22の各ギア部では、支持プレート2a側から2b側に向かって小径のギア部が形成され、電動操作時においてギア部22aと電動モータ3の回転軸5に取り付けられた伝達ギア6とが噛み合う。また、伝達ギア24aには図示しない出力軸と一体に回転する伝達ギア(図1中の伝達ギア12に相当するもの)と常時噛み合っている。
【0063】
実施の形態2によるアクチュエータでは、ギア部22aと伝達ギア6との噛み合いが外れない範囲で手動/変速クラッチギア22を固定軸23に沿ってスライド操作することにより、ギア部(第1ギア部)22dと後段側に隣接する伝達ギア(第1ギア)24cとが噛み合う状態と、ギア部(第2ギア部)22cと後段側に隣接する伝達ギア(第2ギア)24bとが噛み合う状態と、ギア部(第3ギア部)22bと後段側に隣接する伝達ギア(第3ギア)24aとが噛み合う状態の3段階の回転速度を選択することが可能である。
【0064】
また、手動操作時には、手動/変速クラッチギア22を固定軸23に沿って更に下方にスライド操作してギア部22aと伝達ギア6との噛み合いを外せば良く、手動操作としては、例えば後段側伝達ギアの回転軸24の支持プレートから外部に露出した端部25の周面に取り付けられた手動操作レバー26を回動操作することによって回転トルクを出力軸に伝え、出力軸を回転させる。
【0065】
以上のように、この実施の形態2によれば、同軸にギアを組み合わせた簡易な構成の手動/変速クラッチギア22を追加するだけで、手動操作と電動操作の切り替え機能と変速用機能の双方を実現することができる。
【0066】
なお、実施の形態1及び2では選択的に手動/変速クラッチギアのギア部と噛み合う変速用の減速比の異なる複数の伝達ギアを手動/変速クラッチギアの後段に配置した例を示したが、これらの伝達ギアを電動モータと手動/変速クラッチギアとの間、即ち、手動/変速クラッチギアの前段に配置しても良く、本発明の技術思想の範囲に含まれる。
また、これら選択的に手動/変速クラッチギアのギア部と噛み合う変速用の減速比の異なる複数の伝達ギアを同軸に一体に設けずに、それぞれ異なる軸を中心に回転するように構成し、電動時には手動/変速クラッチギアの位置の違いによって、それぞれ異なる伝達ギアを経由して出力軸に電動モータの回転トルクを伝達するように構成することも本発明の技術思想の範囲に含まれる。
【0067】
本発明によるアクチュエータは、図8に示したようなバルブ装置に適用することで、より効果を発揮することができる。例えば、弁軸の回転により開度が決定されるボールバルブのバルブ開閉を電動制御するバルブ装置を構成するにあたり、本発明によるアクチュエータで弁軸の回転を制御する。
【0068】
このバルブ装置では、上記実施の形態1、2で説明したように出力軸の回転速度を変速することができるので、所望の速度でバルブを開閉制御できる。また、手動/変速クラッチギアのスライド操作により容易に手動でバルブの開度調整を行うこともできる。
なお、上述のようなバルブ装置を構成するバルブとしては、ボールバルブに限定されるものでなく、本発明によるアクチュエータの出力軸の回転に応じて開閉するものであればよいし、また、弁軸を垂直方向に上昇下降させて弁開度を制御する直動型のバルブにも適用できる。
【0069】
更に、ダンパ開度の制御を行うダンパ装置にも適用でき、その場合も上記実施の形態1、2で説明したように出力軸の回転速度を変速することができるので、所望の速度でダンパを開閉制御できる。また、停電時でも手動/変速クラッチギアのスライド操作により容易に手動でダンパの開度調整を行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】この発明の実施の形態1によるアクチュエータの内部機構を概略的に示す図である。
【図2】図1中のギアユニットを示す図である。
【図3】クラッチギア切替手段を示す図である。
【図4】噛み合い位置にない場合における弾性保持部材の変形を示す図である。
【図5】クラッチギア切替手段の他の構成例を示す図である。
【図6】実施の形態1によるギアユニットの他の構成例を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態2によるアクチュエータのギアユニットを示す図である。
【図8】手動と電動の操作切替用のクラッチ機構を有するアクチュエータを備えたバルブ装置を示す斜視図である。
【図9】従来のアクチュエータのギアユニットの構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0071】
1 アクチュエータ
2a,2b 支持プレート
2c 外壁
3 電動モータ
4 出力軸
5,10 回転軸
6,7a,7b,10a,10b,10c,10d,12,24a,24b,24c 伝達ギア
7,9,23,24 固定軸
8,22 手動/変速クラッチギア
8a,8b,8c,21a,21b,21c,21d,22a,22b,22c,22d ギア部
11,26 手動操作レバー
13 弾性保持部材
13−1 上方弾性保持部
13−2 下方弾性保持部
13−3,13A−3 連結部
13A 保持部材
13A−1 上方保持部
13A−2 下方保持部
14 ラック部
15 溝部
16,16A,16B 操作部
17 ピニオン部
18 レール部
18a 当接部
19 操作軸
19a,19b 弾性操作軸
20 操作ダイヤル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動対象物に連結された出力軸を電動モータの回転トルクを伝達することで動作させ、前記駆動対象物を駆動制御するアクチュエータにおいて、
同軸に一体で回転する複数のギアから構成され、中心軸に沿って移動可能に取り付けられた手動/変速クラッチギアと、
前記手動/変速クラッチギアと噛み合って前記電動モータの回転トルクを伝達する前段側伝達ギア部と、
前記手動/変速クラッチギアと噛み合って異なる減速比を与える複数のギアを含んで構成され、前記電動モータの回転トルクを出力軸側に伝達する後段側伝達ギア部と、
前記手動/変速クラッチギアの中心軸に沿った移動操作により、前記前段側伝達ギア部又は前記後段側伝達ギア部のうちのいずれか一方と前記手動/変速クラッチギアとの噛み合わせ解除と、前記手動/変速クラッチギアと前記後段側伝達ギア部との間で選択的にギアの噛み合わせとを行うクラッチギア切替手段とを備えたことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
後段側伝達ギア部は、
手動/変速クラッチギアの中心軸に沿った移動操作により前記手動/変速クラッチギアとの噛み合い状態が選択的に決定され、前記手動/変速クラッチギアとの噛み合い状態が維持されている場合に電動モータの回転トルクを出力軸に伝達する第1ギアと、
前記手動/変速クラッチギアの中心軸に沿った移動操作により前記手動/変速クラッチギアとの噛み合い状態が選択的に決定され、前記手動/変速クラッチギアとの噛み合い状態が維持されている場合に電動モータの回転トルクを出力軸に伝達すると共に、前記第1ギアとは異なる減速比を与える第2ギアとを有し、
前記手動/変速クラッチギアは、
前段側伝達ギア部と噛み合って前記電動モータの回転トルクを伝達する前段ギア部と、
前記第1ギアと噛み合う第1ギア部と、
前記第2ギアと噛み合う第2ギア部とを有し、
クラッチギア切替手段は、
前記手動/変速クラッチギアの中心軸に沿った移動操作により、
前記第1ギアと前記第1ギア部とが噛み合わず、かつ前記第2ギアと前記第2ギア部とが噛み合わない状態と、
前記第1ギアと前記第1ギア部とが噛み合い、かつ前記第2ギアと前記第2ギア部とが噛み合わない状態と、
前記第1ギアと前記第1ギア部とが噛み合わず、かつ前記第2ギアと前記第2ギアとが噛み合う状態とのいずれか一つの状態に切り替えることを特徴とする請求項1記載のアクチュエータ。
【請求項3】
後段側伝達ギア部は、
手動/変速クラッチギアの中心軸に沿った移動操作により前記手動/変速クラッチギアとの噛み合い状態が選択的に決定され、前記手動/変速クラッチギアとの噛み合い状態が維持されている場合に電動モータの回転トルクを出力軸に伝達する第1ギアと、
前記手動/変速クラッチギアの中心軸に沿った移動操作により前記手動/変速クラッチギアとの噛み合い状態が選択的に決定され、前記手動/変速クラッチギアとの噛み合い状態が維持されている場合に電動モータの回転トルクを出力軸に伝達すると共に、前記第1ギアとは異なる減速比を与える第2ギアとを有し、
前記手動/変速クラッチギアは、
前記第1ギアと噛み合う第1のギア部と、
前記第2ギアと噛み合う第2のギア部と、
前記手動/変速クラッチギアの中心軸に沿った移動操作により前記前段側伝達ギア部と噛み合う状態および噛み合わない状態のいずれかの状態が選択的に決定される前段ギア部とを有し、
クラッチギア切替手段は、
前記手動/変速クラッチギアの中心軸に沿った移動操作により、
前記前段ギア部と前記前段側伝達ギア部とが噛み合い、かつ、前記第1ギアと前記第1ギア部のみが噛み合う状態と、
前記前段ギア部と前記前段側伝達ギア部とが噛み合い、かつ、前記第2ギアと前記第2ギア部のみが噛み合う状態と、
前記前段ギア部と前記前段側伝達ギア部とが噛み合わない状態とのいずれか一つの状態に切り替えることを特徴とする請求項1記載のアクチュエータ。
【請求項4】
駆動対象物に連結された出力軸を電動モータの回転トルクを伝達することで動作させ、前記駆動対象物を駆動制御するアクチュエータにおいて、
同軸に一体で回転する複数のギアから構成され、中心軸に沿って移動可能に取り付けられた手動/変速クラッチギアと、
前記手動/変速クラッチギアと噛み合って異なる減速比を与える複数のギアを含んで構成され、前記電動モータの回転トルクを伝達する前段側伝達ギア部と、
前記手動/変速クラッチギアと噛み合って前記電動モータの回転トルクを出力軸側に伝達する後段側伝達ギア部と、
前記手動/変速クラッチギアの中心軸に沿った移動操作により、前記前段側伝達ギア部又は前記後段側伝達ギア部のうちのいずれか一方と前記手動/変速クラッチギアとの噛み合わせ解除と、前記手動/変速クラッチギアと前記前段側伝達ギア部との間で選択的にギアの噛み合わせとを行うクラッチギア切替手段とを備えたことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項5】
前段側伝達ギア部は、
手動/変速クラッチギアの中心軸に沿った移動操作により前記手動/変速クラッチギアとの噛み合い状態が選択的に決定され、前記手動/変速クラッチギアとの噛み合い状態が維持されている場合に電動モータの回転トルクを出力軸に伝達する第1ギアと、
前記手動/変速クラッチギアの中心軸に沿った移動操作により前記手動/変速クラッチギアとの噛み合い状態が選択的に決定され、前記手動/変速クラッチギアとの噛み合い状態が維持されている場合に電動モータの回転トルクを伝達すると共に、前記第1ギアとは異なる減速比を与える第2ギアとを有し、
前記手動/変速クラッチギアは、
後段側伝達ギア部と噛み合って前記電動モータの回転トルクを出力軸に伝達する後段ギア部と、
前記第1ギアと噛み合う第1ギア部と、
前記第2ギアと噛み合う第2ギア部とを有し、
クラッチギア切替手段は、
前記手動/変速クラッチギアの中心軸に沿った移動操作により、
前記第1ギアと前記第1ギア部とが噛み合わず、かつ前記第2ギアと前記第2ギア部とが噛み合わない状態と、
前記第1ギアと前記第1ギア部とが噛み合い、かつ前記第2ギアと前記第2ギア部とが噛み合わない状態と、
前記第1ギアと前記第1ギア部とが噛み合わず、かつ前記第2ギアと前記第2ギアとが噛み合う状態とのいずれか一つの状態に切り替えることを特徴とする請求項4記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前段側伝達ギア部は、
手動/変速クラッチギアの中心軸に沿った移動操作により前記手動/変速クラッチギアとの噛み合い状態が選択的に決定され、前記手動/変速クラッチギアとの噛み合い状態が維持されている場合に電動モータの回転トルクを伝達する第1ギアと、
前記手動/変速クラッチギアの中心軸に沿った移動操作により前記手動/変速クラッチギアとの噛み合い状態が選択的に決定され、前記手動/変速クラッチギアとの噛み合い状態が維持されている場合に電動モータの回転トルクを伝達すると共に、前記第1ギアとは異なる減速比を与える第2ギアとを有し、
前記手動/変速クラッチギアは、
前記第1ギアと噛み合う第1のギア部と、
前記第2ギアと噛み合う第2のギア部と、
前記手動/変速クラッチギアの中心軸に沿った移動操作により前記後段側伝達ギア部と噛み合う状態および噛み合わない状態のいずれかの状態が選択的に決定される後段ギア部とを有し、
クラッチギア切替手段は、
前記手動/変速クラッチギアの中心軸に沿った移動操作により、
前記後段ギア部と前記後段側伝達ギア部とが噛み合い、かつ、前記第1ギアと前記第1ギア部のみが噛み合う状態と、
前記後段ギア部と前記後段側伝達ギア部とが噛み合い、かつ、前記第2ギアと前記第2ギア部のみが噛み合う状態と、
前記後段ギア部と前記後段側伝達ギア部とが噛み合わない状態とのいずれか一つの状態に切り替えることを特徴とする請求項4記載のアクチュエータ。
【請求項7】
クラッチギア切替手段は、
手動/変速クラッチギアを弾性保持する弾性保持部材と、
外力を前記手動/変速クラッチギアの中心軸に沿った移動力に変換する操作部と、
前記操作部により変換された前記移動力を前記弾性保持部材に伝達し、前記弾性保持部材を介して前記手動/変速クラッチギアを移動させる伝達部とを備え、
前記弾性保持部材は、
前記手動/変速クラッチギアを所定位置まで移動させる際にその移動が規制されると、前記移動力により前記手動/変速クラッチギアの移動方向とは逆方向に変形し、前記手動/変速クラッチギアの移動規制が解除されると、もとの状態に復帰する際の反力によって前記手動/変速クラッチギアを前記所定位置まで移動させることを特徴とする請求項1から請求項6のうちのいずれか1項記載のアクチュエータ。
【請求項8】
クラッチギア切替手段は、
手動/変速クラッチギアを保持する保持部材と、
弾性部材からなる弾性操作軸を有し、外部から加えられた回転力を前記手動/変速クラッチギアの中心軸と平行な方向の移動力に変換する操作部と、
前記操作部により変換された前記移動力を前記保持部材に伝達し、前記保持部材を介して前記手動/変速クラッチギアを中心軸に沿って移動させる伝達部とを備え、
前記弾性操作軸は、
前記手動/変速クラッチギアを所定位置まで移動させる際にその移動が規制されると前記回転力により捩れ変形し、
前記伝達部は、
前記手動/変速クラッチギアの移動規制が解除されて前記弾性操作軸がもとの状態に復帰する際の反力を、前記手動/変速クラッチギアを前記所定位置まで移動させる移動力として前記保持部材に伝達することを特徴とする請求項1から請求項6のうちのいずれか1項記載のアクチュエータ。
【請求項9】
請求項1から請求項8のうちのいずれか1項記載のアクチュエータと、前記アクチュエータの出力軸の動作に応じて開閉するバルブ本体とを備えたバルブ装置。
【請求項10】
請求項1から請求項8のうちのいずれか1項記載のアクチュエータと、前記アクチュエータの出力軸の動作に応じて開閉するダンパ本体とを備えたダンパ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−157262(P2008−157262A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−343126(P2006−343126)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】