説明

アクチュエーターを被覆するための方法

燃料インジェクター内で使用するアクチュエーターを被覆する方法であって、本体セクション(12)、第1の末端片(14)および第2の末端片(16)を有するアクチュエーター(20)を用意するステップと、第1および第2の末端を有するシュラウド(50)を用意するステップと、末端片(14、16)の外部表面の少なくとも一部分(18、19)、および/またはシュラウド(50)の少なくとも一部に、シーラント材料を適用するステップと、シーラント材料が末端片(14、16)とシュラウド(50)との間に中間層(70、80)を提供し、それらの間で液密シールを形成するように、アクチュエーター(20)をシュラウド(50)で被覆するステップとを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
技術分野
本発明は、内燃エンジンの燃料システムでの使用を目的とする種類の燃料インジェクター内で使用するためのアクチュエーター装置に関する。
【0002】
背景技術
既知の燃料インジェクターでは、圧電性アクチュエーターは、燃焼空間への燃料の供給を制御する働きをする。圧電性アクチュエーターは、電気コネクターを通じて使用時に電圧が印加される多数の圧電性要素を、一般的に含む。この種類の燃料インジェクターは本出願者の取得特許、欧州特許第0995901明細書に記載されている。
【0003】
使用時、高圧燃料を受け入れるために配置される、インジェクター内のアキュムレーター体積内に、圧電性スタックを配置することが知られている。従って、通常、圧電性アクチュエーターは、その使用期間を通じて燃料に浸漬される。さらに、燃料インジェクションシステムが使用されている場合、アクチュエーターは、例えば、20MPaから200MPa(200から2000bar)の範囲のレール圧力で燃料に晒されている。インジェクターが15年(>130000時間)の寿命を有していると予想することは合理的である。圧電性アクチュエーターを損傷から保護するには、燃料がアクチュエーターを形成している各要素の間の接続部へと侵入することを防ぐために、アキュムレーター体積内の燃料からアクチュエーターがシール隔離されていることが重要である。燃料は、例えば、場合により水および/またはアルコールを含む、ディーゼル、バイオディーゼル、ガソリン、あるいは混合物でよい。また、圧電性アクチュエーターを水分のような環境的汚染物質から保護することも重要である。アクチュエーター内の流体の存在により、電気化学的影響が生じ短絡故障に繋がる場合がある。
【0004】
アクチュエーターが静圧加圧モードで使用される場合、例えば、本出願者の取得特許、欧州特許第1096137明細書に記載されているように、圧電性アクチュエーターは、静圧加圧流体の侵入から保護されなければならない。
【0005】
圧電性アクチュエーターは、例えば、欧州特許第0995901明細書に記載されているように、柔軟なシーラント材料で構成されるコーティングまたはスリーブを備えることができる。コーティングは、アキュムレーター体積内の燃料から、圧電性アクチュエーター要素をシールすることを支援する。さらに、コーティングは柔軟なので、前記アクチュエーターは、加圧下の燃焼によって加えられる圧縮荷重を受け、構造内の亀裂展開の低減に役立つ。この目的のために、圧電性アクチュエーターをプラスチックコーティング内に封入するオーバーモールド技術、または本出願者の取得特許、国際公開第02/061856パンフレットに記載されているような、スリーブ部材を使用することが知られている。コーティングまたはスリーブは、本出願者の取得特許、欧州特許第1079097明細書に記載されているように、電気コネクターを封入してもよい。スリーブは、好ましくは、例えば、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、ペルフルオロアルコキシ(PFA)またはポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の低透過性のフルオロポリマーから形成される。
【0006】
しかしながら、アクチュエーターとコーティングまたはスリーブとの間の界面へ流体が依然として侵入し得ることが認められてきた。例えば、上記のスリーブは、アクチュエーターが開口チューブに挿入できるような、第1および第2の開口終端を有するチューブ等の弾性材料または熱収縮材料から好ましくは形成される。前記チューブは、次いで、アクチュエーターを封入するために、弾性的に収縮できるようにするか、加熱により収縮される(すなわち熱収縮)。スリーブは、そのときアクチュエーターにきつく押し付けられているが、チューブの第1および第2の末端は、コーティングと封入されたアクチュエーターの間の界面に流体が侵入する経路を付与すると理解されよう。
【0007】
本出願者の同時係属中の出願である欧州特許第05256852明細書に記載されているように、端末シールを改良するために、1以上のクリップが、スリーブの終端に付与されてもよい。クリップは、スリーブに対して外側に設置され、スリーブとアクチュエーター表面の間の界面でシールを形成するように、下部のアクチュエーター外部表面に対してスリーブを押し付けるのに十分な収縮力を働かせる。それでもなお、燃料インジェクター内の苛酷な環境条件下では、クリップがあるにもかかわらず、流体がスリーブ終端の下方に移行する危険性が残る。
【0008】
例えば、本出願者の同時係属中の出願である国際公開第02/061856号パンフレットに記載されているように、コーティングとアクチュエーター間の流体侵入を制限しようとして、コーティングと封入されたアクチュエーターの間に充填材料を供与することが知られている。しかし、これはコーティングとアクチュエーターの間で規定される空間全体を硬化可能な物質で充填することが必要となり、脱気ステップも必要になる可能性もあるので、アクチュエーター装置と組立て方法に複雑さが加わる。
【0009】
アクチュエーター装置のコスト、複雑さ、またはサイズに著しい上乗せをせずに、上記の問題を軽減することが本発明の目的である。
発明の概要
本発明の第1の態様として、燃料インジェクター内で使用するアクチュエーターを被覆する方法であって、本体セクション、第1の末端片および第2の末端片を有するアクチュエーターを用意するステップと、第1および第2の末端を有するシュラウドを用意するステップと、末端片の外部表面の少なくとも一部および/またはシュラウドの少なくとも一部に、シーラント材料を適用するステップと、アクチュエーターをシュラウドで被覆することで、シーラント材料が末端片とシュラウドの間に中間層を提供し、それらの間で液密シールを形成するステップとを含む方法が提供される。適切には、シュラウドはフルオロポリマーまたは熱可塑性ポリマーから選択される材料を含む。
【0010】
好ましい実施形態では、シーラント材料は接着剤である。適切には、接着剤はシリコーン、フルオロシリコーン類、フルオロカーボンポリマー類、エポキシ類およびシアヌレート類を含む群から選択される。好ましくは、接着剤は強化エポキシであり、理想的にはコア−シェル強化エポキシである。好ましくは、接着剤は高架橋密度と、80℃を超える、理想的には90℃を超えるガラス転移温度を有する。
【0011】
好ましい実施形態では、前記方法はシーラント材料を適用する前に、シーラント材料と接触する少なくとも1つの表面にカップリング剤を適用するという追加のステップを含む。適切には、カップリング剤はアクチュエーターの末端片の表面および/またはスリーブの表面、および中間層のシーラント材料と反応して適合させる、接着促進剤、理想的にはシラン、最も理想的には官能性シランを含む。
【0012】
好ましくは、接着促進剤は、アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルシラントリオール、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミンおよびビス[3−トリメトキシシリル)プロピル]−エチレンジアミンから選択される。
【0013】
カップリング剤は、1以上の接着促進剤の混合物を含むことができる。
本発明の実施形態では、シュラウドは複数の層またはコーティングを含む。適切には、少なくとも1つの層またはコーティングは、フルオロポリマーを含む。好ましくは、少なくとも1つの層またはコーティングは、シュラウド経由のイオン種の透過を規制することに適した材料を含む。
【0014】
本発明の他の実施形態では、本方法は、シュラウドの外部にクリップを止める追加のステップであって、クリップがシュラウドに収縮力を加え、シュラウドを下部の中間層に押し付けるように適合されるステップを含む。
【0015】
本発明の第2の態様として、被覆されたアクチュエーター装置であって、本体セクション、第1の末端片および第2の末端片を有するアクチュエーターと、フルオロポリマーを含むシュラウドとを含み、前記装置は、シーラント層が、末端片とシュラウドの間に液密シールを形成するように、第1の末端片の一部とシュラウドの間に配置される、シーラント材料を含む中間層と、第2の末端片の一部とシュラウドの間に配置される、シーラント材料を含む中間層とをさらに含むことを特徴とする、被覆されたアクチュエーター装置が提供される。
【0016】
好ましくは、シーラント材料はシリコーン類、フルオロシリコーン類、フルオロカーボンポリマー類、エポキシ類およびシアヌレート類を含む群から選択される接着剤を含む。適切には、接着剤は強化エポキシであり、理想的にはコア−シェル強化エポキシである。
【0017】
これより、説明の手段に限定して、添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
好適な態様の詳細な説明
図1は、本発明の方法に従って封入された既知の圧電性アクチュエーター20を含むアクチュエーター装置10を示す。アクチュエーター20は少なくとも1つの圧電性要素(図示せず)を含み、内燃エンジンの燃料インジェクター内の使用に適している。
【0018】
アクチュエーター20は、一般的に、圧電性要素またはスタックを収容する中央主要部125を備える円筒状本体セクション12、ならびに第1および第2の末端を含む。本体セクション12の第1終端において(上端方向に示される)、末端片14は、使用中に電圧源(図示せず)からの電圧を受ける、第1および第2端末を有する電気コネクター145、および本体セクション12の第1終端に境を接する部位18等を含む。本体セクション12の第2の末端において(下端方向に示される)、第2の末端片16は、使用時に燃料インジェクターの制御ピストンまたはバルブニードル(図示せず)と協調する荷重伝達部材165、および本体セクション12の第2の末端に境を接する部位19等を含む。
【0019】
圧電性スタックおよびアクチュエーター20の内部要素の詳細、ならびにアクチュエーターの作動法の記述は、本出願者の取得特許、欧州特許第0995901明細書に十分に開示されているので、本明細書では記載しない。
【0020】
図2および3から分かるように、アクチュエーター20の第1および第2の末端にそれぞれ対応する、第1および第2の末端を有する柔軟なスリーブ50が存在する。スリーブ50は、被覆しアクチュエーター20の輪郭と一致する。スリーブ50は、上部末端片14から下部末端片16までのアクチュエーター20の長さに沿って伸長している。
【0021】
電気コネクター145直前のアクチュエーター20の第1終端にある部位18には、末端片14の外部表面とスリーブ50の内部表面の間に中間層70が設けられる。荷重伝達部材165の直前のアクチュエーター20の第2の末端にある部位19には、末端片16の外部表面とスリーブ50の内部表面の間に同様の中間層80が設けられる。
【0022】
中間層70、80は、接着剤等の硬化または固化したシーラント材料を含むので、中間層70、80がスリーブ50をそれぞれ部位18、19に接着して、アクチュエーター20のどちらの終端でも液密シールを形成する。好ましい実施形態では、中間層70、80は、高架橋密度と90℃を超えるガラス転移温度を有するコア−シェル強化エポキシを含む。
【0023】
本発明の方法によれば、アクチュエーター20は、以下のように封入される。接着促進剤は、2つの末端片14、16の外部表面のうちそれぞれの部位18、19に適用され、次いで硬化される。接着促進剤は、スリーブ50の内部表面にも適用され、硬化される。接着剤は、事前に接着促進剤で処理された領域の頂部の部位18、19に適用される。接着促進剤で事前に処理されたスリーブ50の内部表面が接着剤に接触するように、スリーブ50は、アクチュエーター20を被覆するように適用される。
【0024】
接着剤が、末端片14、16の外部表面の代わりに、または追加して、場合によってはスリーブ50の内部表面に適用されうることは、理解されるであろう。理想的には、接着剤は、接着促進剤で処理された表面に接触するが、場合によっては、接着剤は、接着促進剤で処理されていない表面に接触してもよい。接着促進剤と接着剤は、圧電性スタックを含む、中央部分125の表面には適用されないことが、好ましい。
【0025】
適切には、接着剤は約50ナノメートルから約200マイクロメートルの間の厚さで適用される。好ましくは、接着剤は10から50マイクロメートルの間の厚さで適用される。
【0026】
本発明の接着促進剤は、任意の適切なカップリング剤でよいが、好ましくはシランであり、適切には官能化シランである。接着促進剤は、好ましくは、適用される表面との反応に適した1以上の官能基を含み、さらにシーラント層との反応に適した1以上の官能基を含む。適切なカップリング剤/接着促進剤は一般的に下式で記述できる。
【0027】
−L−M−X
式中、Yは有機官能基であり、Lはリンカーであり、Mは好ましくは金属または半金属(メタロイド)原子であり、Xは加水分解可能な基である。この分子は、複数の有機官能(Y)基および/または複数の加水分解可能(X)基を含んでもよく、好ましくはa=1〜3、b=1〜3である。
【0028】
適切には、有機官能基(Y)は、接着剤の官能基と反応するように適合され、加水分解可能な基(X)は末端片14、16および/またはスリーブ50の表面と反応するように適合される。好ましくは、これは接着剤と表面の間共有結合を生じる。
【0029】
Mは、好ましくは珪素、またはアルミニウム、チタンもしくはジルコニウムのような遷移金属である。代替として、原子Mは、Mが、例えば炭素原子である有機カップリング剤から選択できる。有機官能基Yは、アミノ(R−NH)またはアミン(R−NH)基から選択できる。ここで、Rは脂肪族もしくは芳香族のいずれか、またはアミノ基である有機基である。代替として、Yはエポキシ、イソシアネート、メタクリレートまたはビニル基から選択できる。リンカーLは、好ましくは、n=1〜10の脂肪族基(CH、またはエーテル基、エステル基もしくは芳香族基である。好ましくは、少なくとも1つの加水分解可能な基Xは、例えば、メトキシ(R=CH)、エトキシ(R=C)またはプロポキシ(R=C)等のアルコキシ基(OR)である。Xは、またメチル、エチルもしくはプロピル基、またはアシルオキシ、ハロゲンまたはアミンを含んでもよい。
【0030】
一例として、接着促進剤は、
(3−アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン
3−アミノプロピルトリエトキシシラン
3−アミノプロピルトリメトキシシラン
アミノプロピルシラントリオール
N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン
(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン
(3−グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン
3−クロロプロピルトリメトキシシラン
3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン
ビニルトリエトキシシラン
ビニルトリメトキシシラン
を含む一覧から選択可能であり、
または、接着促進剤は、例えば、
ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン
ビス[3−トリメトキシシリル)プロピル]−エチレンジアミン
等のジポーダル(dipodal)カップリング剤でよく、
または、当業者が理解するように、接着促進剤は上記の非制限例の任意の適切な混合物、および適切な溶媒を含むことができる。
【0031】
接着促進剤は、非常に薄い層を形成するために、それ自体との反応するようになし得る。接着促進剤は、加熱した際に反応できる官能基を含み得る。好ましくは、接着促進剤の適用は、適用した表面の表面張力の変化を起こすべきである。適切には、接着促進剤は、部位18、19および/またはスリーブ50の表面に、樹脂の形態で接着促進剤は適用されるが、場合によってはゲル、液体、粉体、または任意の他の適切な形態でもよい。接着促進剤は、例えば、ディッピング、スプレー、スピンコーティング、または蒸着等の堆積手法を用いて堆積することができる。
【0032】
接着促進剤は、熱処理、または照射、または溶媒の揮散、または環境湿度への暴露により硬化できる。これらの方法のうちいずれか1つが、程度の差はあるものの、使用する特定の接着促進剤の硬化に適合し得ることは、当業者により理解されるであろう。また、接着剤も同様の方法で硬化できる。
【0033】
中間層70、80の形成に使用されるシーラント材料は、熱硬化性樹脂またはエラストマーを含む一覧から選択できる。適切なエラストマーは、シリコーン類、フルオロシリコーン類およびフルオロカーボンポリマー類等を含むことができる。適切な熱硬化性樹脂は、エポキシ類およびシアヌレート類等を含むことができる。好ましくは、接着剤は強化エポキシであり、ゴム強化剤またはコア−シェル強化剤から選択される強化剤を含む。最も適切な接着剤はコア−シェル強化エポキシであり、高架橋密度を有している。
【0034】
適切には、接着剤は80℃、好ましくは90℃を超えるガラス転移温度を有する。場合によっては、接着材料は、例えば、遊離基もしくはイオン種捕捉化合物、または保存料のような、有利な材料または物質を含有するようになし得る。
【0035】
好ましい実施形態では、スリーブ50は、開口の第1および第2の末端を有する熱収縮材料のチューブを含み、加熱によりアクチュエーター20の周囲で収縮させる。適切には、接着促進剤および/または接着剤は、スリーブ50を熱収縮する工程によって、それらが完全に硬化しないように、適合されている。接着剤と接着促進剤の完全な反応を確実にするため、および接着強度を最大にするために、スリーブを収縮した後に、さらに熱処理を適用できる。
【0036】
本発明の1つの実施形態では、図1から3に示すように、クリップ30、40が、アクチュエーター20の第1および第2の末端に付与される。この種のクリップは、例えば、本出願者の同時係属中の出願である欧州特許第05256852明細書にすべて開示されており、このため本明細書では詳細に説明しない。
【0037】
クリップ30、40は、スリーブ50に対して外部に配置されるので、クリップ30、40の内部表面はスリーブ50の外部を支持し、スリーブ50の内部表面を中間層70,80に対して押し付けるのに十分な収縮力をその上に働かせる。一方のクリップ30は、上部末端片14を、電気コネクター145の丁度手前で取り囲み、他方のクリップ40は、下部末端片16を、荷重伝達部材165の丁度手前で取り囲む。
【0038】
組立ての間、クリップ30、40は、乾燥した接着促進剤でコーティングしたスリーブ50の内部表面を中間層70、80に押し付けるように、スリーブ50上に止められる。
本発明の概念内で、数種の変更が可能である。例えば、スリーブ50は、アクチュエーター20の被覆に使用されうる種々のシュラウドの一例である。好ましくは、シュラウドは、アクチュエーター20が開口のチューブに挿入できるように、第1および第2開口終端を有するチューブである。適切には、シュラウドは、加熱した際に被覆されたアクチュエーターの輪郭に一致するように収縮させることができる熱収縮ポリマーで構成される。好ましくは、シュラウドは、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、ペルフルオロアルコキシ(PFA)またはポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフルオロポリマーから形成される。シュラウドは、適切には、半結晶性熱可塑性樹脂である高性能熱可塑性樹脂のオーバーモールドでもよい。熱可塑性樹脂オーバーモールドの使用に適切な材料の例としては、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド(PI)、ポリフェニレンテレフタルアミド(PPA)、および液晶ポリマー(LCP)を含むことができる。
【0039】
中間層70、80に対する接着性をさらに改善するために、末端片14、16および/またはシュラウド50の部位18、19の表面は、接着促進剤の適用前、または、接着促進剤が使用されない場合は、中間層70、80と接触する前に処理される。適切な処理としては、例えば、化学エッチングを含むことができる。
【0040】
さらなる適切な処理工程は、接着促進剤の適用の前に、末端片14、16の活性部位18、19に気体プラズマ処理を適用することである。プラズマ処理は、反応性を向上するために、材料の表面を改質する点で有効である。本発明では、適用される気体プラズマは、末端片14、16の表面上に存在する官能基を増加させる。接着促進剤は、前記官能基と結合する。接着剤は、前記接着促進剤と、より有効に結合する。
【0041】
気体プラズマ処理の代替としては、末端片14、16上に非晶性シリケート層を堆積する、燃焼駆動型の化学蒸着工程を使用することも可能であり、スリーブ50と終端要素14、16の間の結合強度を改善する同じ利点を有する。
【0042】
1以上の追加の層またはコーティングは、スリーブ50の代わりに、またはそれに追加して設けることができる。例えば、添付の図には示されていないが、スリーブ50の半径方向内側にスタックの表面に直接隣接して、ポリマー表面安定化層を設けてもよい。そのような表面安定化層は、当技術分野で「表面フラッシュオーバー」と呼ばれることもある、スタックの表面を覆う電気アークの抑制に適切であることが知られている。別のそのような層は、例えば、本出願者の同時係属中の出願である英国特許第0602956.5明細書および英国特許第0604467.1に記載されているような、バリアー層でもよい。接着剤は、被覆されたアクチュエーターの表面とスリーブまたはそれに隣接するバリアー層との間、およびこの層と追加の各層との間に供給し得ることは、理解されるであろう。このため、用語「アクチュエーター」は例えばそれに適用される、上記のようなすべての保護手段を含んだ機能完全なる圧電性装置を指すものと解釈すべきであることを、理解すべきである。
【0043】
本発明の中間層70、80に加えて、アクチュエーターの外部表面とスリーブの内部表面の間に配置される、少なくとも1つの充填材料または他の物質が場合によりあってもよい。
【0044】
アクチュエーター20が任意の種類でよいことは、理解されるであろう。封入されたアクチュエーター装置が燃料インジェクタシステム内に配置された場合、アクチュエーターは、場合により水および/もしくはアルコールを含有するディーゼル、バイオディーゼル、ガソリン、または混合物を含む燃料に晒される。
【0045】
本発明の好ましい特定の実施形態を記載してきたが、問題としている該実施形態は典型的に過ぎず、適切な知識と技術を有する人には思い付くと思われるような変更および改良は、添付の特許請求の範囲に記載されるような本発明の範囲から逸脱せずになし得ることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の方法により組立てた圧電性アクチュエーター装置の斜視図である。
【図2】図1のアクチュエーター装置の第1の末端の拡大断面図である。
【図3】図1のアクチュエーターの第2の末端の拡大断面詳細図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料インジェクター内で使用するアクチュエーターを被覆する方法であって、
本体セクション(12)、第1の末端片(14)および第2の末端片(16)を有するアクチュエーター(20)を用意するステップと、
第1および第2の末端を有するシュラウド(50)を用意するステップと、
末端片(14、16)の外部表面の少なくとも一部分(18、19)、および/またはシュラウド(50)の少なくとも一部に、シーラント材料を適用するステップと、
シーラント材料が末端片(14、16)とシュラウド(50)との間に中間層(70、80)を提供し、それらの間で液密シールを形成するように、アクチュエーター(20)をシュラウド(50)で被覆するステップと
を含む方法。
【請求項2】
シュラウド(50)が、フルオロポリマーまたは熱可塑性ポリマーから選択される材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
シーラント材料が接着剤である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
接着剤が、シリコーン類、フルオロシリコーン類、フルオロカーボンポリマー類、エポキシ類およびシアヌレート類を含む群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
接着剤が、強化エポキシであり、好ましくはコア−シェル強化エポキシである、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
接着剤が、高い架橋密度と、80℃を超える、好ましくは90℃を超えるガラス転移温度とを有する、請求項3から5のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
シーラント材料を適用する前に、シーラント材料と接触する少なくとも1つの表面にカップリング剤を適用する追加のステップを含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
カップリング剤が接着促進剤を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
接着促進剤がシランを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
接着促進剤が、末端片(14、16)および/またはスリーブ(50)の表面、ならびに中間層(70、80)のシーラント材料と反応するように適合された官能性シランを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
接着促進剤が、以下の
(3−アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、
3−アミノプロピルトリエトキシシラン、
3−アミノプロピルトリメトキシシラン、
アミノプロピルシラントリオール、
N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、
(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、
(3−グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン、
3−クロロプロピルトリメトキシシラン、
3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、
ビニルトリエトキシシラン、
ビニルトリメトキシシラン、
ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミンおよび
ビス[3−トリメトキシシリル)プロピル]−エチレンジアミンから選択される、請求項8または9に記載の方法。
【請求項12】
カップリング剤が、1以上の接着促進剤の混合物を含む、請求項7から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
カップリング剤の適用前に、少なくとも1つの表面に気体プラズマ処理法を適用するステップをさらに含む、請求項7から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
カップリング剤の適用前に、燃焼駆動型の化学蒸着法により、少なくとも1つの表面に非晶性シリケート層を適用するステップをさらに含む、請求項7から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
シュラウドが、複数の層またはコーティングを含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つの層またはコーティングが、フルオロポリマーを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つの層またはコーティングが、シュラウド経由のイオン種の透過を規制するように適合された材料を含む、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
シュラウド(50)の外側にクリップ(30、40)を止める追加のステップであって、クリップがシュラウド(50)に収縮力を加え、シュラウド(50)を下部の中間層(70、80)に押し付けるように適合されるステップを含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
被覆されたアクチュエーター装置(10)であって、
本体セクション(12)、第1の末端片(14)および第2の末端片(16)を有するアクチュエーター(20)と、
フルオロポリマーを含むシュラウド(50)と
を含み、
前記装置(10)は、シーラント層(70、80)が、末端片(14、16)とシュラウド(50)との間に液密シールを形成するように、
第1の末端片(14)の一部分(18)とシュラウド(50)との間に配置される、シーラント材料を含む中間層(70)と、
第2の末端片(16)の一部分(19)とシュラウド(50)の間に配置される、シーラント材料を含む中間層(80)と
をさらに含むことを特徴とする、被覆されたアクチュエーター装置。
【請求項20】
シーラント材料が、シリコーン類、フルオロシリコーン類、フルオロカーボンポリマー類、エポキシ類およびシアヌレート類を含む群から選択される接着剤を含む、請求項19に記載の被覆されたアクチュエーター装置(10)。
【請求項21】
接着剤が強化エポキシであり、好ましくはコア−シェル強化エポキシである、請求項20に記載の被覆されたアクチュエーター装置(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−535564(P2009−535564A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−508445(P2009−508445)
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【国際出願番号】PCT/GB2007/000623
【国際公開番号】WO2007/128948
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(599023978)デルファイ・テクノロジーズ・インコーポレーテッド (281)
【Fターム(参考)】