説明

アクチュエータ装置

【課題】
接触子が取り付けられる台座の座面を高精度に成形できるアクチュエータ装置を提供する。
【解決手段】
回転駆動する回転軸13aに接続されたウォーム12とそれと噛み合って回転力を伝達させるウォームホイール14とがハウジング17に収容され、ウォームホイール14の回転量を検知させるための接触ブラシ16aがウォームホイール14に設けられた樹脂製台座11に取り付けられ、接触ブラシ16aが電気的に接触するカーボン抵抗部16bがハウジング17の内側面に設けられたアクチュエータ装置10である。
そして、樹脂製台座11は複数の固定部11a,11aを有し、その固定部11a,11a間に溝部11b,11bが成形される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の自動変速装置において運転者が操作するセレクトレバーの操作アシスト機構などに用いられるアクチュエータ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、運転者が自動変速装置のセレクトレバーを操作する操作力を軽減すると共に、シフトデバイスのショートストローク化を図るための操作アシスト機構が知られている(特許文献1,2など参照)。
【0003】
この操作アシスト機構は、運転者の操作力を検出して、その値が所定値以上の場合に図5に示すようなアクチュエータ装置1を作動させてセレクトレバーの操作アシストをおこなう構造となっている。
【0004】
このアクチュエータ装置1は、電動モータ3によって回転する回転軸3aを介してウォーム2を回転させ、そのウォーム2に噛合させたウォームホイール4に回転力を伝達し、そのウォームホイール4の回転に伴って出力軸8を回動させる(特許文献3の図4など参照)。
【0005】
このウォーム2とウォームホイール4は、ハウジング7内部に収容され、このウォームホイール4には、図5に示すようにウォームホイール4の回転量(変位)を検知させるための位置検知手段としてのポテンショメータ6が設けられている。
【0006】
このポテンショメータ6は、図5及び図6に示すように、ハウジング7の内側面に取り付けるカーボン抵抗部6bと、その表面と電気的に接触する接触ブラシ6aと、その接触ブラシ6aをウォームホイール4に固定するための樹脂製の台座6cとから形成されている。
【0007】
そして、ウォームホイール4が回動すると接触ブラシ6aがそれに伴ってカーボン抵抗部6bの表面上を移動し、抵抗が変化することによってウォームホイール4の位置(角度)が検出される。
【0008】
この接触ブラシ6aは、図5に示すように取付け用の嵌通孔6e,6eを2箇所に設けた取付部とブラシ状の接触部が一体に形成されており、台座6cに突設された2箇所の固定部6d,6dに接触ブラシ6aに設けた嵌通孔6e,6eを嵌合させて取り付けられる(特許文献3の図1,2など参照)。
【特許文献1】特開2003−4135号公報(図1,5、0042段落乃至0046段落)
【特許文献2】特開平11−344114号公報(図1,3)
【特許文献3】特開平7−296928号公報(図1,2,4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記したアクチュエータ装置1の接触ブラシ6aを取り付ける台座6cは、樹脂材料によって成形されるため、ひけが発生するおそれがある。ここで、「ひけ」とは、樹脂材料によって部材の成形を行なう際に発生する不具合の一つで、金型の温度が高い場合に冷却固化が他の部分より遅れて、表面に収縮がでることをいう(図6の二点鎖線で示した台座6cの外形線を参照)。
【0010】
このように台座6cにひけが発生すると、固定部6d,6dが傾いて、接触ブラシ6aの取り付けが困難となったり、接触ブラシ6aの先端をカーボン抵抗部6bに対して正確な位置に配置できなかったりするおそれがある。
【0011】
そこで、本発明は、接触子が取り付けられる台座の座面を高精度に成形できるアクチュエータ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、回転駆動する回転軸に接続されたウォームとそれと噛み合って回転力を伝達させるウォームホイールとがハウジングに収容され、前記ウォームホイールの回転量を検知させるための接触子が該ウォームホイールに設けられた樹脂製台座に取り付けられ、該接触子が電気的に接触する抵抗部が前記ハウジングの内側面に設けられたアクチュエータ装置であって、前記樹脂製台座は複数の固定部を有し、該固定部間に溝部が成形されたアクチュエータ装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
このように構成された請求項1に記載の発明は、ウォームホイールに設けられた樹脂製台座に複数の固定部が設けられ、その固定部の間に溝部が成形されている。
【0014】
そして、この溝部によって前記樹脂製台座の肉厚部が薄くなって、ひけの発生を抑えることができる。
【0015】
このため、樹脂製台座の座面を高精度で平坦に成形することができ、前記接触子の先端を前記抵抗部に対して正確な位置に配置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の最良の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図2は、本実施の形態によるアクチュエータ装置10が組み込まれた自動変速装置30の全体構成を示している。
【0018】
まず、この自動変速装置30の構成から説明すると、この自動変速装置30は、運転者が操作を行なうセレクトユニット24と、操作力の操作アシストをおこなうアクチュエータ装置10と、セレクトユニット24によって選択された位置に対応するレンジ位置に切り替えられる自動変速ユニット28と、これらを連結するコントロールケーブル21,22とを備えている。
【0019】
このセレクトユニット24は、運転者により操作されるセレクトレバー24aを有しており、例えば運転席脇のセンタクラスタ24bに設けられている。このセレクタレバー24aは、上端にセレクト操作時に運転者が把持するためのセレクトノブ24cが付設されており、支点軸24dを中心に回動操作される。
【0020】
さらに、セレクトレバー24aの下端部には、セレクトレバージョイント25を介してプッシュプル式のコントロールケーブル21が接続されている。
【0021】
そして、このコントロールケーブル21は、アクチュエータ装置10の入力レバー20と回動自在に接続されている。これらの接続によって、セレクトレバー24aの回転運動が直線運動に変換されて、セレクトレバー24aの操作により発生した操作力が入力レバー20に伝達される。
【0022】
また、この入力レバー20は、回動可能に設けられた出力軸18を介して出力レバー23と連結されている。この出力軸18は、アクチュエータ装置10の出力軸18となっており、電動モータ13の駆動力も伝達される。
【0023】
さらに、出力レバー23には、プッシュプル式のコントロールケーブル22が接続されており、このコントロールケーブル22は自動変速ユニット28の制御アーム29と接続されている。
【0024】
そして、コントロールケーブル22により出力レバー23の回動運動が直線運動に変換されて、運転者の操作力と電動モータ13の駆動力との合成力が自動変速ユニット28の制御アーム29に伝達される。
【0025】
このように制御アーム29を作動させる力をアシストする本実施の形態のアクチュエータ装置10には、図3に示すように電動モータ13によって回転駆動する回転軸13aに接続されたウォーム12と、それと噛合部15で噛み合って回転力を伝達させるウォームホイール14と、これらを収容するハウジング17と、ウォームホイール14の回転量(変位)を検知させる位置検知手段としてのポテンショメータ16とが備えられている。
【0026】
なお、図3にはウォーム12とウォームホイール14の位置関係を明確にするために上蓋(図示省略)を撤去した状態のハウジング17の切断図を示しており、使用時にはウォーム12やウォームホイール14が露出されないようにハウジング17内に収容されている。
【0027】
また、ポテンショメータ16は、図1に示すように、ハウジング17の上蓋の内側面に取り付けられた抵抗部としてのカーボン抵抗部16bと、その表面と電気的に接触する接触子としての接触ブラシ16a,16aとから形成されている。
【0028】
さらに、この接触ブラシ16a,16aをウォームホイール14に取り付けるための樹脂製台座11,11が成形されている。この樹脂製台座11,11は、図4に示すようにウォームホイール14の板状の基部14aの噛合部15側半部(図4の上半部)が扇型に被覆されるように流し込まれた樹脂材料によって成形される。
【0029】
ここで、図4には、2個の接触ブラシ16a,16aを取り付けるための2つの樹脂製台座11,11が図示されている。この1つの樹脂製台座11には、2つの固定部11a,11aが離隔した状態で備えられている。
【0030】
この固定部11aは、ピン状の突起部とその周囲の平坦な座面によって砲台状に形成され、図1に示すように固定部11aと固定部11aの間には溝部11b,11bが形成される。
【0031】
さらに、この固定部11a,11aに固定される接触ブラシ16aは、図3に示すように取付け用の嵌通孔16c,16cを2箇所に設けた取付部とブラシ状の接触部が一体に形成されている。
【0032】
そして、この接触ブラシ16aに設けた嵌通孔16c,16cを、固定部11a,11aに嵌合させることで接触ブラシ16aが取り付けられる。この際、固定部11a,11a間の接触ブラシ16aの取付部は、溝部11b,11b間に残された中間支持部11cによって下方から支持される。
【0033】
このように構成されたアクチュエータ装置10は、ウォーム12の回転力が噛合部15を介してウォームホイール14に伝達され、このウォームホイール14の回動に伴って接触ブラシ16a,16aがカーボン抵抗部16b表面上を移動することによって抵抗値が変化し、ウォームホイール14の位置(角度)が検出される。
【0034】
次に、本実施の形態のアクチュエータ装置10のウォームホイール14に設ける樹脂製台座11,11の成形方法について説明すると共に、その作用について説明する。
【0035】
まず、図1及び図4に示すような凸型の固定部11a,・・・と、固定部11a,11a間に設けられる溝部11b,・・・と、中間支持部11c,11cの外形を備えた扇型の金型(図示せず)をウォームホイール14の基部14aの上半部を覆うように取り付け、樹脂材料を流し込む。
【0036】
この流し込まれた樹脂材料が冷却固化する際に、固定部11a,11a間に設けられた溝部11b,11bからも冷却固化が起きるため、固定部11a,11a間の冷却固化が他の部分より遅れてひけが発生してしまうことがない。
【0037】
このようにひけを発生させることなく樹脂製台座11,11の座面を金型通りの平坦に成形することができるので、接触ブラシ16aをカーボン抵抗部16bに対して正確な位置に容易に取り付けることができる。
【0038】
以上、図面を参照して、本発明の最良の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0039】
例えば、前記実施の形態では、アクチュエータ装置10を車両の自動変速装置30に組み込んだ場合について使用したが、これに限定されるものではなく、車両のドアロック装置や空気調和装置のミックスドアの作動などに使用される、樹脂製台座を介して位置検知手段用の接触子が取り付けられるアクチュエータ装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の最良の実施の形態のアクチュエータ装置のウォームホイールの樹脂製台座を説明する図3のB−B線断面図である。
【図2】車両の自動変速装置の概略構成を説明する説明図である。
【図3】本発明の最良の実施の形態のアクチュエータ装置の構成を説明する切断図である。
【図4】樹脂製台座を設けたウォームホイールの平面図である。
【図5】従来のアクチュエータ装置の構成を説明する切断図である。
【図6】図5のA−A線断面図である。
【符号の説明】
【0041】
10 アクチュエータ装置
11 樹脂製台座
11a 固定部
11b 溝部
12 ウォーム
13a 回転軸
14 ウォームホイール
16 ポテンショメータ(位置検知手段)
16a 接触ブラシ(接触子)
16b カーボン抵抗部(抵抗部)
17 ハウジング


【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動する回転軸に接続されたウォームとそれと噛み合って回転力を伝達させるウォームホイールとがハウジングに収容され、前記ウォームホイールの回転量を検知させるための接触子が該ウォームホイールに設けられた樹脂製台座に取り付けられ、該接触子が電気的に接触する抵抗部が前記ハウジングの内側面に設けられたアクチュエータ装置であって、
前記樹脂製台座は複数の固定部を有し、該固定部間に溝部が成形されたことを特徴とするアクチュエータ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−144869(P2006−144869A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−334061(P2004−334061)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】