説明

アクチュエータ

【課題】 小型軽量化を可能にするとともに、簡易な機構により、高減速、高トルクを発生できるようにしたアクチュエータを提供する。
【解決手段】 駆動手段14を構成する複数の励磁コイル141に駆動制御部142から所定のタイミングで順番に電流を供給してこれら励磁コイル141を順番にかつサイクリックに励磁し、この励磁に伴う磁極16の磁気的吸引作用によりロータ13をステータ12の円筒内面12aに沿い転動させてロータ13を遊星回転させ、このロータ13の回転を動力変換手段15により減速して出力するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットの操作部や工作機械の送り機構、家電機器の操作部や玩具の操作部などを駆動するアクチュエータに関し、特に、高トルク、低速タイプのアクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボットの操作部や工作機械の送り機構などを駆動する高トルク、低速タイプのアクチュエータは、ハウジングと、このハウジング内に収容された電動機と、ハウジング内に収容され電動機の回転を減速するギヤ列からなる減速機構と、ハウジング内に収容され減速機構の回転運動を直線運動に変換するボールねじ機構等から構成され、減速機構の回転運動を利用してロボットの操作部を回転または旋回駆動したり、あるいはボールねじ機構の直線運動を利用して工作機械の送り機構を駆動できるようになっている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特表2002−541398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような従来のアクチュエータは、電動機と、この電動機の回転を減速するギヤ列からなる減速機構とを組み合わせ、さらにボールねじ機構を組み込んだものから構成されるため、高トルクで低速のアクチュエータを得ようとすると、減速機構を構成するギヤ数が増大し、アクチュエータ自体の構造が複雑かつ大型化してしまい、小型軽量化が困難になり、コスト高となる問題がある。
また、減速機構はギヤ列から構成されるため、ギヤ列のバックラッシュがロボットの操作や工作機械の送り精度などに悪影響を及ぼすことになる。さらに、バックラッシュを除去するには、減速機構にバックラッシュ除去機構を組み込む必要があり、このようにするとアクチュエータが更に複雑化、大型化されてしまうという問題がある。また、従来のアクチュエータに使用される電動機においては、負荷トルク以上の保持トルクが発生し得るように電動機を定格の直流電圧で励磁しておく必要があり、このようにしないと、負荷トルクによって電動機の静止角度が変化してしまい、ロボットの操作精度や工作機械の送り精度が低下する問題がある。
【0004】
本発明は上記のような従来の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、小型軽量化を可能にするとともに、簡易な機構により高減速、高トルクを発生できるようにしたアクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために本発明のアクチュエータは、ハウジングと、前記ハウジング内に装着され所定径の円筒内面を有するステータと、前記ステータの円筒内面と内接しながら遊星回転可能に設けられた、前記円筒内面の内径より小さい外径のロータと、前記ステータに設けられ前記ロータを前記円筒内面に沿い転動させて該ロータを遊星回転させる駆動手段と、前記ロータの回転を減速もしくは直線運動に変換して出力する動力変換手段とを備えることを特徴とする。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1記載のアクチュエータにおいて、前記ステータは、一定の角度でリング状に配列した複数の磁極を有し、前記複数の磁極の前記ロータに対向する面は前記円筒内面を構成し、前記駆動手段は、前記複数の磁極にそれぞれ巻装した複数の励磁コイルと、前記複数の励磁コイルに所定のタイミングで順番に電流を供給してこれら励磁コイルを順番にかつサイクリックに励磁し、この励磁に伴う前記磁極の磁気的吸引作用により前記ロータを前記円筒内面に沿い転動させる駆動制御部とから構成されていることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1また2記載のアクチュエータにおいて、前記ステータの円筒内面に所定のピッチで内歯車が形成され、前記ロータの外周面に前記内歯車と噛合する外歯車が形成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項4の発明は、請求項1記載のアクチュエータにおいて、前記駆動手段は、前記ステータに該ステータの周方向に一定の角度で配列され、かつ前記ステータの円筒内面から内方へ突出可能に設けられた複数の押圧体を有し、前記複数の押圧体を所定のタイミングで順番に前記円筒内面の内方へ突出動作させて前記ロータの外周面を法線方向から押圧することにより前記ロータを前記円筒内面に沿い転動させる駆動制御部とから構成されていることを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項4記載のアクチュエータにおいて、前記押圧体は、前記駆動制御部から供給される電圧により伸張動作して前記ロータの外周面を法線方向から押圧することで前記ロータを転動させる逆圧電効果型の圧電体もしくは前記駆動制御部から供給される電流により伸張動作して前記ロータの外周面を法線方向から押圧することで前記ロータを転動させる電磁プランジャの何れか一方からなることを特徴とする。
【0008】
請求項6の発明は、請求項1記載のアクチュエータにおいて、前記ロータは、該ロータの外周に相対回転可能に設けたれたリング部材を備え、前記駆動手段は、前記ステータに該ステータの周方向に一定の角度で配列された複数の形状記憶体と、前記複数の形状記憶体に所定のタイミングで順番に電流を供給してこれら形状記憶体の形状を順番にかつサイクリックに変化させる駆動制御部とを備え、この形状記憶体の形状変化動作により前記ロータを前記円筒内面に沿い転動させるように構成したことを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項6記載のアクチュエータにおいて、前記ステータの円筒内面に所定のピッチで内歯車が形成され、前記ロータの外周面に前記内歯車と噛合する外歯車が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のアクチュエータによれば、駆動手段によりロータをステータの円筒内面に沿い転動させてロータを遊星回転させ、このロータの回転を減速もしくは直線運動に変換して出力するように構成したので、アクチュエータを小型軽量化できるとともに、簡易な機構により高減速で高トルクのアクチュエータを容易に実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明にかかるアクチュエータの実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本発明にかかるアクチュエータは、以下に説明する実施の形態に限定されるものではない。
【0011】
(実施の形態1)
図1は本実施の形態1におけるアクチュエータの縦断側面図、図2は図1の2−2線に沿う断面図である。
図1及び図2において、アクチュエータ10は、ハウジング11を有し、このハウジング11には、ステータ12、ロータ13、駆動手段14および動力変換手段15が収容されている。
【0012】
ステータ12は、図1及び図2に示すように、同一円周上に一定の角度(例えば45°の角度)でリング状に配列された複数個、例えば8つの磁極16を有し、この各磁極16はロータ13の法線方向に突出しているとともに、その突出端にはロータ13の外周と対向する磁極片16aが形成され、これら磁極片16aのロータ13の外周と対向する面はエンドレスの円筒内面12aを構成し、この円筒内面12aの内径はロータ13の外径より大きい径に形成され、さらに、円筒内面12aには内歯車17が所定のピッチで形成されている。なお、ステータ12の外周形状は八角形を呈している。
【0013】
ロータ13は、少なくとも円筒内面12aと内接する外周部分が磁性体から形成されるもので、図1及び図2に示すように、ステータ12の内側に、その円筒内面12aと内接しながら遊星回転できる状態に設けられている。すなわち、ロータ13は円筒内面12aの内径より小さい外径に形成されているとともに、その外周には円筒内面12aの内歯車17と噛合する外歯車18が形成され、この外歯車18を円筒内面12aの内歯車17に噛合させた状態でロータ13を円筒内面12aに沿い転動することにより遊星回転できるように構成されている。
【0014】
駆動手段14はロータ13の外歯車18が円筒内面12aの内歯車17に噛合する内接状態でロータ13を円筒内面12aに沿い転動させることによりロータ13を遊星回転させるためのものであり、この駆動手段14は、図1及び図2に示すように、ステータ12を構成する8個の磁極16のそれぞれに巻装した8個の励磁コイル141と、この各励磁コイル141に所定のタイミングで順番に電流を供給してこれら励磁コイル141を順番にかつサイクリックに励磁し、この励磁に伴う磁極15の磁気的吸引作用によりロータ13を円筒内面12aに沿い転動させる駆動制御部142とから構成されている。
【0015】
前記駆動制御部142は、励磁コイル141に電流を供給する電源部142aと、ロータ13の転動方向や転動速度などを指令する指令信号SP1に応じて、励磁する8個の励磁コイル141の切り換えを行うための切換信号S1〜S8を順に送出する分配回路142bと、この分配回路142bから順に送出される切換信号S1〜S8に基づき電源部142aから8個の励磁コイル141に電流を順に流して8個の励磁コイル141を順番に励磁する電流増幅回路142cとから構成されている。
【0016】
動力変換手段15はロータ13の回転を希望する速度に減速して出力するもので、この動力変換手段15は、図1及び図2に示すように、ロータ13の中心部に形成した中心穴13aを貫通してステータ12の中心軸線19に一致して配置され、かつハウジング11の両側カバー部11aに回転可能に支持された出力軸151と、この出力軸151に軸線を一致して設けられた、所定ピッチの内歯152aを有する太陽歯車152と、ロータ13に同軸に設けられ、太陽歯車152の内歯152aと内接状態に噛合する外歯153aを有する遊星歯車153とから構成されている。
【0017】
このような本実施の形態1に示すアクチュエータ10において、図示省略のマイクロコンピュータから指令信号SPが分配回路142bに入力されると、分配回路142bからは指令信号SP1に応じた切換信号S1〜S8が順に送出され、電流増幅回路142cに順次入力される。これにより、電流増幅回路142cでは、切換信号S1〜S8にしたがって電流増幅回路142cを動作することにより、電源部142aから8個の励磁コイル141に、例えば図2に示す給電順番N1〜N8の順に電流を所定の時間ずつ順番に供給して、各励磁コイル141を給電順番N1からN8の順に励磁する。例えば給電順番N2に位置する励磁コイル141が励磁されると、その磁極16に磁気的吸引力が発生するため、この磁気的吸引力により給電順番N1に位置するロータ13を給電順番N2の方向へ転動させると同時に、その外歯車18を給電順番N2に対応する磁極16の内歯車17に対して、給電順番N1に示す場合と同様な噛合状態にする。さらに、この状態から給電順番N3に位置する励磁コイル141が励磁されると、これによる磁極16の磁気的吸引力によってロータ13が給電順番N3と対応する側へ転動され、その外歯車18を給電順番N3に位置する磁極16の内歯車17に対して、給電順番N1に示す場合と同様な噛合状態にする。
以下、同様な動作を順に繰り返すことにより、ロータ13は、その外歯車18と円筒内面12aの内歯車17とが互いに噛み合いながらステータ12の円筒内面12aに沿って図2の矢印A方向に転動されると同時に、図2の矢印B方向に回転される。すなわちロータ13を遊星回転することができる。
【0018】
なお、8個の励磁コイル141の励磁が図2に示すアルファベット符号a,b,c,〜g,hの順序で一巡した時のロータ13の回転角度θ1は次式で与えられる。
θ1=360°×(D1−D2/D2)
ただし、D1は円筒内面12aの内径で、D2はロータ13の外径であり、D1>D1の関係にある。また、ロータ13の回転角の分解能は、円周方向に一定の角度でリング状に配列される磁極16の数により決定され、磁極16の数が多いほど分解能が高くなる。また、D1とD2との差が小さい程、ロータ13の回転角度θ1は小さくなる。これにより、高減速、高トルクのアクチュエータを実現できる。
【0019】
一方、ロータ13が遊星回転すると、その回転は、太陽歯車152に内接しながら噛合する遊星歯車153の遊星運動によって太陽歯車152に伝達され、さらに、この太陽歯車152を介して出力軸151に伝達される。この時の出力軸151の回転角度θ2は次式で与えられる。
θ2=θ1×(D3−D4/D4)
ただし、D3は太陽歯車152の内径で、D4は遊星歯車153の外径であり、D3
>D4の関係にある。
【0020】
このような本実施の形態1に示すアクチュエータによれば、駆動手段14を構成する複数の励磁コイル141に駆動制御部142から所定のタイミングで順番に電流を供給してこれら励磁コイル141を順番にかつサイクリックに励磁し、この励磁に伴う磁極16の磁気的吸引作用によりロータ13をステータ12の円筒内面12aに沿い転動させてロータ13を遊星回転させ、このロータ13の回転を動力変換手段15により減速して出力するように構成したので、アクチュエータを小型軽量化できるとともに、簡易な機構により高減速で高トルクのアクチュエータを容易に、かつ低コストで実現でき、さらに、従来のアクチュエータのように保持トルクを得るための手段が不要になるという効果がある。
【0021】
また、本実施の形態1に示すアクチュエータによれば、ステータ12の円筒内面12aに内歯車17を形成し、ロータ13の外周に円筒内面12aの内歯車17と噛合する外歯車18を形成し、この外歯車18を円筒内面12aの内歯車17に噛合させた状態でロータ13を円筒内面12aに沿い転動させるようにしたので、アクチュエータの高トルク化が確実にできるとともに、動力変換手段15を太陽歯車152と、この太陽歯車152に内接しながら噛合する遊星歯車153で構成することにより、より高減速で高トルクのアクチュエータを実現できるという効果がある。
【0022】
(実施の形態2)
次に、図3及び図4により本発明に係るアクチュエータの実施の形態2について説明する。
図3は本実施の形態2におけるアクチュエータの縦断側面図、図4は図3の4−4線に沿う断面図である。
図3及び図4において、アクチュエータ20は、ハウジング21を有し、このハウジング21には、ステータ22、ロータ23、駆動手段24および動力変換手段25が収容されている。
【0023】
ステータ22は、図3及び図4に示すように、所定径の円筒内面22aを有するとともに外周形状が八角形を呈する樹脂材等の筒体から構成されている。
ロータ23は合成樹脂材等から成形されるもので、図3及び図4に示すように、ステータ22の軸方向の寸法より僅かに小さい長さ寸法を有する円柱状を呈するとともにステータ22の円筒内面22aの内径より小さい外径に形成されている。このようなロータ23はステータ22の内側に、その円筒内面22aと内接しながら円筒内面22aに沿い転動することで遊星回転できるように設けられている。
【0024】
駆動手段24はロータ23を円筒内面22aに内接しながら円筒内面22aに沿い転動させることにより遊星回転させるためのものであり、この駆動手段24は、図3及び図4に示すように、ステータ22にその周方向に一定の角度(例えば45°の角度)で配列され、かつステータ22の円筒内面22aから内方へ突出できるようにロータ23の法線方向に延在して設けられた複数、例えば8個の逆圧電効果型圧電体(特許請求の範囲に記載した押圧体に相当する)241と、この複数の圧電体241を所定のタイミングで順番に円筒内面22aの内方へ伸張動作させてロータ23の外周面を法線方向から押圧することによりロータ23をステータ22の円筒内面22aに沿い転動させるための駆動制御部242とを備えている。
【0025】
駆動制御部242は、圧電体241に電圧を供給する電源部242aと、ロータ23の転動方向や転動速度などを指令する指令信号SP2に応じて、伸長動作する8個の圧電体241の切り換えを行うための切換信号S21〜S28を順に送出する分配回路242bと、この分配回路242bから順に送出される切換信号S21〜S28に基づき電源部242aから8個の圧電体241に電圧を順に供給して8個の圧電体241を順番に伸長させる電圧供給回路242cとから構成されている。
【0026】
動力変換手段25は、ロータ23の回転を希望する速度に減速して出力するもので、この動力変換手段25は、図3及び図4に示すように、ロータ23の中心部に同軸に形成した中心穴23aを貫通してステータ22の中心軸線24上に一致して配置され、かつハウジング21の両側カバー部21aに回転可能に支持された出力軸251と、この出力軸251に軸線を一致して設けられ、ロータ23の中心穴23aの内周面に内接しながら回転する回転体252とから構成されている。
【0027】
このような本実施の形態2に示すアクチュエータ20において、図示省略のマイクロコンピュータから指令信号SP2が分配回路242bに入力されると、分配回路242bからは指令信号SP2に応じた切換信号S21〜S28が順に送出され、電圧供給回路242cに順次入力される。これにより、電圧供給回路242cでは、切換信号S21〜S28にしたがって電圧供給回路242cを動作することにより、電源部242aから8個の圧電体241に、例えば図4に示す給電順番N1〜N8の昇冪順に電圧を所定の時間ずつ順番に供給し、各圧電体241を逆圧電効果により給電順番N1からN8の順に伸張動作させる。例えば給電順番N2に位置する圧電体241が伸張動作されると、この伸張動作によってロータ23を法線方向に押圧すると同時に、このロータ23を給電順番N1に示す位置から給電順番N2の方向へステータ22の円筒内面22aに沿い転動させる。さらに、この状態から給電順番N3に位置する圧電体241が伸張動作されると、ロータ23は法線方向に押圧されると同時に、給電順番N3に示す位置から給電順番N4の方向へステータ22の円筒内面22aに沿い転動される。
以下、同様な動作を順に繰り返すことにより、ロータ23はステータ22の円筒内面22aに沿って図4の矢印A方向に転動されると同時に、図4の矢印B方向に回転される。すなわちロータ23は遊星回転される。
【0028】
一方、ロータ23が遊星回転すると、回転体252はロータ23の中心穴23aの内周面に内接しながら出力軸251を中心にして図4の矢印C方向に回転される。この回転体252の回転は出力軸251から負荷に伝達される。
【0029】
このような本実施の形態2に示すアクチュエータによれば、駆動手段24を構成する複数の逆圧電効果型圧電体241に駆動制御部242から所定のタイミングで順番に電圧を供給してこれら圧電体241を順番にかつサイクリックに伸張動作してロータ23の外周面を法線方向から押圧し、この押圧操作でロータ23をステータ22の円筒内面22aに沿い転動させながら遊星回転させ、このロータ23の回転を動力変換手段25により変速して出力するように構成したので、アクチュエータを小型軽量化できるとともに、簡易な機構により高減速で高トルクのアクチュエータを容易に、かつ低コストで実現でき、さらに、従来のアクチュエータのように保持トルクを得るための手段が不要になるという効果がある。
【0030】
(実施の形態3)
次に、図5及び図6により本発明に係るアクチュエータの実施の形態3について説明する。
図5は本実施の形態3におけるアクチュエータの縦断側面図、図6は図5の6−6線に沿う断面図である。
図5及び図6において、アクチュエータ30は、ハウジング31を有し、このハウジング31には、ステータ32、ロータ33、駆動手段34および動力変換手段35が収容されている。
【0031】
ステータ32は、図3及び図4に示すように、所定径の円筒内面321aを有するとともに外周形状が八角形を呈する樹脂材等のドーナツ状の一対の円盤体321を有し、この円盤体321は軸線が一致するように所定の間隔を離して結合部材322により一体に結合されている。また、各円盤体321の円筒内面321aの内径はロータ33の外径より大きい径に形成され、さらに、各円筒内面321aには内歯車36が所定のピッチで形成されている。
【0032】
ロータ33は合成樹脂材等から成形されるもので、図5及び図6に示すように、ステータ32の軸方向の寸法より僅かに小さい長さ寸法を有する円柱状を呈するとともにステータ32の円筒内面321aの内径より小さい外径に形成されている。
このようなロータ33の前記ステータ32の内歯車36と対向する外周面には、図5及び図6に示すように、ステータ32の内歯車36と噛合する一対の外歯車37が形成されており、この一対の外歯車37を、対応するステータ32の内歯車36に噛合させた状態でロータ33をステータ32の円筒内面321aに沿い転動することにより遊星回転できるように構成されている。また、ロータ33の一対の外歯車37間に位置する外周にはリング部材38が相対回転可能に設けられている。
【0033】
駆動手段34はロータ33をステータ32の円筒内面321aに内接しながら円筒内面321aに沿い転動させることにより遊星回転させるためのものであり、この駆動手段24は、図5及び図6に示すように、一対の円盤体321の間に位置してステータ32の周方向に一定の角度(例えば45°の角度)で配列された複数、例えば8個のコイル状の形状記憶体341と、この複数の形状記憶体341に所定のタイミングで順番に電流を供給してこれら形状記憶体341の形状を順番にかつサイクリックに変化させる駆動制御部342とを備える。
前記複数の形状記憶体341の一端はピン39により結合部材322に揺動可能に連結され、複数の形状記憶体341の他端はピン40によりリング部材38に揺動可能に連結されている。
【0034】
駆動制御部342は、形状記憶体341に電流を供給する電源部342aと、ロータ33の転動方向や転動速度などを指令する指令信号SP3に応じて、収縮動作する8個の形状記憶体341の切り換えを行うための切換信号S31〜S38を順に送出する分配回路342bと、この分配回路342bから順に送出される切換信号S31〜S38に基づき電源部342aから8個の形状記憶体341に電流を順に供給して8個の形状記憶体341を順番に収縮させる電流供給回路342cとから構成されている。
【0035】
動力変換手段35はロータ33の回転を希望する速度に減速して出力するもので、この動力変換手段35は、図5及び図6に示すように、ロータ33の中心部に形成した中心穴33aを貫通してステータ32の中心軸線41に一致して配置され、かつハウジング31の両側カバー部31aに回転可能に支持された出力軸351と、この出力軸351に軸線を一致して設けられた、所定ピッチの内歯352aを有する太陽歯車352と、ロータ33に同軸に設けられ、太陽歯車352の内歯352aと内接状態に噛合する外歯353aを有する遊星歯車353とから構成されている。
【0036】
このような本実施の形態3に示すアクチュエータ30において、図示省略のマイクロコンピュータから指令信号SP3が分配回路342bに入力されると、分配回路342bからは指令信号SP3に応じた切換信号S31〜S38が順に送出され、電流供給回路342cに順次入力される。これにより、電流供給回路342cでは、切換信号S31〜S38にしたがって電流供給回路342cを動作することにより、電源部342aから8個の形状記憶体341に、例えば図6に示す給電順番N1〜N8の昇冪順に電流を所定の時間ずつ順番に供給し、各形状記憶体341を給電順番N1からN8の順に収縮動作させる。例えば給電順番N2に位置する形状記憶体341が収縮動作されると、この収縮動作によってロータ33を法線方向に引っ張ると同時に、このロータ33を、その外歯車37がステータ32の内歯車36に噛合されたままの状態で給電順番N1に示す位置から給電順番N2の方向へステータ32の円筒内面321aに沿い転動させる。さらに、この状態から給電順番N3に位置する形状記憶体341が収縮動作すると、ロータ33は法線方向に引っ張られると同時に、外歯車37が内歯車36と噛み合いながら給電順番N3に示す位置から給電順番N4の方向へステータ32の円筒内面321aに沿い転動される。
以下、同様な動作を順に繰り返すことにより、ロータ33は、その外歯車37とステータ32の内歯車36とが互いに噛み合いながらステータ32の円筒内面321aに沿って図6の矢印A方向に転動されると同時に、図6の矢印B方向に回転される。すなわちロータ33を遊星回転することができる。
【0037】
一方、ロータ33が遊星回転すると、その回転は、太陽歯車352に内接しながら噛合する遊星歯車353の遊星運動によって太陽歯車352に伝達され、さらに、この太陽歯車352を介して出力軸351に伝達される。この出力軸251の回転は負荷に伝達される。
【0038】
このような本実施の形態3に示すアクチュエータによれば、駆動手段34を構成する複数の形状記憶体341に駆動制御部342から所定のタイミングで順番に電流を供給してこれら形状記憶体341を順番にかつサイクリックに収縮動作してロータ33を法線方向に引っ張り、この引っ張り操作でロータ33をステータ32の円筒内面321aに沿い転動させながら遊星回転させ、このロータ33の回転を動力変換手段35により減速して出力するように構成したので、アクチュエータを小型軽量化できるとともに、簡易な機構により高減速で高トルクのアクチュエータを容易に、かつ低コストで実現できる。さらに、従来のアクチュエータのように保持トルクを得るための手段が不要になるという効果がある。
【0039】
また、本実施の形態3に示すアクチュエータによれば、ステータ32の円筒内面321aに内歯車36を形成し、ロータ33の外周に円筒内面321aの内歯車36と噛合する外歯車37を形成し、この外歯車37を円筒内面321aの内歯車36に噛合させた状態でロータ33を円筒内面321aに沿い転動させるようにしたので、アクチュエータの高トルク化が確実にできるとともに、動力変換手段35を太陽歯車352と、この太陽歯車352に内接しながら噛合する遊星歯車353で構成することにより、より高減速で高トルクのアクチュエータを実現できるという効果がある。
【0040】
(実施の形態4)
次に、図7及び図8により本発明に係るアクチュエータの実施の形態4について説明する。
図7は本実施の形態4におけるアクチュエータの縦断側面図、図8は図7の8−8線に沿う断面図である。
この図7及び図8において、アクチュエータ30は、上記実施の形態3に示す場合と同様にハウジング31を有し、このハウジング31には、ステータ32、ロータ33、駆動手段34および動力変換手段45が収容されており、上記実施の形態3と異なる点は動力変換手段45の構成にある。
【0041】
動力変換手段45はロータ33の回転を直線運動に変化するもので、図7及び図8から明らかなように、ロータ33の中心穴33aの内周面に所定ピッチで形成された雌ねじ451と、ロータ33の中心穴33aを貫通してステータ32の中心軸線41に一致して配置され、かつハウジング31の両側カバー部31aに回転可能に支持された、中心穴33aの内径より小さい外径の出力軸452と、ロータ33の雌ねじ451と内接状態で噛合するように出力軸452に外周面に形成された雄ねじ部453とから構成されている。
【0042】
このようなアクチュエータ30の動力変換手段45において、ロータ33が遊星回転すると、ロータ33の回転は、その雌ねじ451及びこれと内接しながら噛合する雄ねじ部453とによって直線運動に変換され、出力軸452を図7の矢印Dに示す方向に往復移動させることが可能になる。
このようなアクチュエータ30においても、上記実施の形態3と同様な作用効果を発揮することができる。
【0043】
上記実施の形態2では、ロータ23の外周面を法線方向から押圧する駆動手段24の押圧体に逆圧電効果型の圧電体241を用いた場合について説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、図9に示すように、ステータ22の円筒内面22aから内方へ突出可能に設けられた押圧用の可動体51と、この可動体51を円筒内面22aの内方へ突出させてロータ23の外周面を法線方向から押圧動作させる電磁コイル52と、可動体51をステータ22の円筒内面22aから突出しない位置に復元させるコイルばね53とから構成される電磁プランジャ50を用いることができる。この場合、圧電体241に比較して大型化するが、圧電体241よりも大きな駆動力を得ることができる。
また、上記実施の形態1〜3に示す動力変換手段は、ロータの回転を減速または変速する方式の場合について説明したが、本発明はこれに限らず、ロータの回転を直線運動に変化する動力変換手段に変えることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態1におけるアクチュエータの縦断側面図である。
【図2】図1の2−2線に沿う断面図である。
【図3】本発明の実施の形態2におけるアクチュエータの縦断側面図である。
【図4】図3の4−4線に沿う断面図である。
【図5】本実施の形態3におけるアクチュエータの縦断側面図である。
【図6】図5の6−6線に沿う断面図である。
【図7】本発明の実施の形態4におけるアクチュエータの縦断側面図である。
【図8】図7の8−8線に沿う断面図である。
【図9】本発明のアクチュエータにおける動力変換手段の他の例を示す要部の説明図である。
【符号の説明】
【0045】
10,20,30 アクチュエータ
11,21,31 ハウジング
12,22,32 ステータ
13,23,33 ロータ
14,24,34 駆動手段
15,25,35 動力変換手段
12a,22a,321a 円筒内面
16 磁極
17,36 内歯車
18,37 外歯車
142,242,342 駆動制御部
241 圧電体
341 形状記憶体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジング内に装着され所定径の円筒内面を有するステータと、
前記ステータの円筒内面と内接しながら遊星回転可能に設けられた、前記円筒内面の内径より小さい外径のロータと、
前記ステータに設けられ前記ロータを前記円筒内面に沿い転動させて該ロータを遊星回転させる駆動手段と、
前記ロータの回転を減速もしくは直線運動に変換して出力する動力変換手段とを備えることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記ステータは、一定の角度でリング状に配列した複数の磁極を有し、前記複数の磁極の前記ロータに対向する面は前記円筒内面を構成し、前記駆動手段は、前記複数の磁極にそれぞれ巻装した複数の励磁コイルと、前記複数の励磁コイルに所定のタイミングで順番に電流を供給してこれら励磁コイルを順番にかつサイクリックに励磁し、この励磁に伴う前記磁極の磁気的吸引作用により前記ロータを前記円筒内面に沿い転動させる駆動制御部とから構成されていることを特徴とする請求項1記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記ステータの円筒内面に所定のピッチで内歯車が形成され、前記ロータの外周面に前記内歯車と噛合する外歯車が形成されていることを特徴とする請求項1また2記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記駆動手段は、前記ステータに該ステータの周方向に一定の角度で配列され、かつ前記ステータの円筒内面から内方へ突出可能に設けられた複数の押圧体を有し、前記複数の押圧体を所定のタイミングで順番に前記円筒内面の内方へ突出動作させて前記ロータの外周面を法線方向から押圧することにより前記ロータを前記円筒内面に沿い転動させる駆動制御部とから構成されていることを特徴とする請求項1記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記押圧体は、前記駆動制御部から供給される電圧により伸張動作して前記ロータの外周面を法線方向から押圧することで前記ロータを転動させる逆圧電効果型の圧電体もしくは前記駆動制御部から供給される電流により伸張動作して前記ロータの外周面を法線方向から押圧することで前記ロータを転動させる電磁プランジャの何れか一方からなることを特徴とする請求項4記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記ロータは、該ロータの外周に相対回転可能に設けたれたリング部材を備え、前記駆動手段は、前記ステータに該ステータの周方向に一定の角度で配列された複数の形状記憶体と、前記複数の形状記憶体に所定のタイミングで順番に電流を供給してこれら形状記憶体の形状を順番にかつサイクリックに変化させる駆動制御部とを備え、この形状記憶体の形状変化動作により前記ロータを前記円筒内面に沿い転動させるように構成したことを特徴とする請求項1記載のアクチュエータ。
【請求項7】
前記ステータの円筒内面に所定のピッチで内歯車が形成され、前記ロータの外周面に前記内歯車と噛合する外歯車が形成されていることを特徴とする請求項6記載のアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−315490(P2007−315490A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−145726(P2006−145726)
【出願日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【出願人】(391006083)三光合成株式会社 (67)
【出願人】(505026734)
【Fターム(参考)】