アクチュエータ
【課題】作動時のピストンロッドが、所定の移動ストロークを安定して確保でき、かつ、受止材を安定して支持できるアクチュエータを提供すること。
【解決手段】本発明のアクチュエータA1は、シリンダ23内において前進移動したピストンロッド46の後退移動を規制するロック機構R1を備えている。ロック機構R1が、ピストンロッド46から突設される回転片部50と、シリンダ23の内周面側に形成されるガイド面32と、シリンダ23の内周面におけるピストンロッド46の前進移動完了時の配置位置に形成されてピストンロッド46に設けられた係止部を係止可能な係止面と、を、備える。ピストンロッド46が、回転片部50をガイド面32に沿って移動させることにより、シリンダ23に対して、軸回り方向に沿って回転させつつ前進移動されて、係止部を、係止面に係止させることにより、後退移動を規制される。
【解決手段】本発明のアクチュエータA1は、シリンダ23内において前進移動したピストンロッド46の後退移動を規制するロック機構R1を備えている。ロック機構R1が、ピストンロッド46から突設される回転片部50と、シリンダ23の内周面側に形成されるガイド面32と、シリンダ23の内周面におけるピストンロッド46の前進移動完了時の配置位置に形成されてピストンロッド46に設けられた係止部を係止可能な係止面と、を、備える。ピストンロッド46が、回転片部50をガイド面32に沿って移動させることにより、シリンダ23に対して、軸回り方向に沿って回転させつつ前進移動されて、係止部を、係止面に係止させることにより、後退移動を規制される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用安全装置に使用されるアクチュエータに関し、例えば、保護対象物としての歩行者を受け止める際のフードパネルを持ち上げる等の作動に使用されるアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載される自動車用安全装置のアクチュエータとしては、フードパネルの塑性変形時のエネルギー吸収を利用して、フードパネル自体で歩行者を受け止めることができるように、フードパネルの後端側を上昇させるものがあった。具体的には、従来、アクチュエータとして、筒状のシリンダ内に配置されたピストンロッドを、シリンダ内に作動用流体を流入させることにより、移動させるピストンシリンダタイプとして構成されて、前進移動(上昇移動)したピストンロッドの後退移動(下降移動)を規制するロック機構を備える構成のものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この従来のアクチュエータでは、ピストンロッドが、ピストン部と、ピストン部から延びてフードパネルを支持可能な支持ロッド部と、から構成され、ロック機構として、支持ロッド部におけるピストン部近傍の部位に、くびれ部を設けて、上昇移動後に、支持ロッド部を、くびれ部の部位で屈曲させ、この屈曲部位をストッパとして作用させて、ピストンロッドの下降移動を規制していた。
【特許文献1】特開2002−29366公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のアクチュエータでは、支持ロッド部に強度を弱くしたくびれ部を設け、このくびれ部を屈曲させてストッパとすることにより、支持ロッド部の下降移動を規制する構成であることから、支持ロッド部の上昇移動後に、ストッパを形成するようにくびれ部が屈曲すれば、フードパネルが歩行者を受け止める際に、さらに、くびれ部が屈曲することが避けられない。すなわち、アクチュエータのピストンロッドが、フードパネルを安定して支持できず、フードパネルによって歩行者を円滑に受け止めることができない。
【0005】
また、従来のアクチュエータでは、支持ロッド部の上昇移動完了前に、シリンダ内でくびれ部が屈曲される虞れもあり、その場合には、ピストンロッドが所定の上昇移動位置に配置されず、ピストンロッドの支持するフードパネルの後端を、所定位置に上昇移動させることができない場合もあった。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、作動時のピストンロッドが、所定の移動ストロークを安定して確保でき、かつ、受止材を安定して支持できるアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るアクチュエータは、自動車安全装置に使用されて、
筒状のシリンダ内に配置されたピストンロッドを、作動時に、前進移動させるピストンシリンダタイプとして、構成されるとともに、
前進移動したピストンロッドの後退移動を規制するロック機構を備えて構成され、さらに、
シリンダの先端壁部から突出したピストンロッドの先端が、保護対象物を受け止める受止材を支持するように、受止材に連結される構成のアクチュエータであって、
ロック機構が、
ピストンロッドの移動方向と略直交するようにピストンロッドから突設される回転片部と、
シリンダの内周面側に形成されて、前進移動を完了させる直前のピストンロッドを、シリンダに対して、軸回り方向に沿って回転可能とするように、回転片部をガイド可能なガイド面と、
ピストンロッドに形成される係止部と、
シリンダの内周面におけるピストンロッドの前進移動完了時の配置位置に形成されて、回転移動後の係止部を係止可能な係止面と、
を、備える構成とされて、
回転片部を、ピストンロッドの前進移動時に、ガイド面に沿って移動させることにより、ピストンロッドを、シリンダに対して、軸回り方向に沿って回転させつつ前進移動させて、係止部を、係止面に係止させることにより、ピストンロッドの後退移動を規制するように、構成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明のアクチュエータでは、作動時、シリンダ内に収納されたピストンロッドが、前進移動することとなる。そして、前進移動するピストンロッドに設けられた回転片部が、前進移動完了直前に、シリンダの内周面側に形成されるガイド面に当接すると、回転片部がガイド面に沿って移動することとなり、この回転片部の移動に伴って、ピストンロッドが、シリンダに対して、軸回り方向に沿って回転しつつ前進移動することとなる。その後、ピストンロッドに設けられた係止部が、シリンダの内周面に設けられた係止面に対応する位置に配置されるまで、ピストンロッドが軸回り方向に沿って回転しつつ前進移動すれば、係止部が係止面に係止され、この係止部により、ピストンロッドが後退移動を規制されることとなる。すなわち、本発明のアクチュエータでは、ピストンロッドを、シリンダに対して、前進移動時の移動方向(軸方向)と交差する軸回り方向に沿って回転移動させた後に、シリンダ側に設けられる係止面に、係止部を係止させることにより、ピストンロッドの後退移動を規制していることから、係止面によって係止部を安定して係止させることができ、ピストンロッドの作動後の後退移動を確実に防止することができる。そのため、本発明のアクチュエータでは、前進移動させたピストンロッドにより、受止材を安定して支持させることができる。また、本発明のアクチュエータでは、ピストンロッドの前進移動の完了直前に、係止面によって係止部を係止させる構成であることから、作動時におけるピストンロッドの所定の移動ストロークを、安定して確保することができる。
【0009】
したがって、本発明のアクチュエータでは、作動時のピストンロッドが、所定の移動ストロークを安定して確保でき、かつ、受止材を安定して支持することができる。
【0010】
また、本発明のアクチュエータにおいて、ピストンロッドを、ピストン部と、ピストン部から延びて受止材を支持可能な支持ロッド部と、から構成して、
ピストン部を、断面形状を非円形とした柱状として、
シリンダを、
ピストン部を摺動可能な摺動部と、
先端壁部と摺動部との間に配置されるとともに、前進移動完了後のピストン部を収納させるように、内径寸法を摺動部より大きくして構成される収納凹部と、
を備える構成とし、
ピストン部を、外周縁近傍の部位を係止部として、前進移動完了後に、収納凹部における摺動部の開口周縁の面から構成される係止面により、底面側を係止されて、ピストンロッドの後退移動を規制させる構成とすることが好ましい。
【0011】
上記構成のアクチュエータでは、上昇移動後のピストン部における外周縁近傍の部位自体を係止部として、収納凹部における摺動部の開口周縁の面から構成される係止面に、底面側を係止させる構成であることから、係止部を別途形成しなくともよく、アクチュエータの構成を簡便にすることができる。
【0012】
さらに、本発明のアクチュエータにおいて、ピストンロッドを、ピストン部と、ピストン部から延びて受止材を支持可能な支持ロッド部と、から構成して、
ピストン部を、略円柱状として、
シリンダにおけるガイド面における回転片部の移動方向の先端側に、回転移動後の回転片部を係止するとともに、回転片部の後退移動方向側を係止可能な係止面を形成し、
回転片部を、係止部として係止面に係止させることにより、支持ロッドの後退移動を規制する構成としてもよい。
【0013】
アクチュエータを上記構成とすれば、シリンダを円筒形状とすることができることから、ピストン部を非円柱状とする場合と比較して、シリンダやピストン部の製造コストを低減させることができる。また、上記構成のアクチュエータにおいても、回転片部と係止部とを兼用している構成であることから、係止部を別途形成しなくともよく、アクチュエータの構成を簡便にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。第1実施形態のアクチュエータA1は、図1〜3に示すように、車両Vに搭載される自動車安全装置としての歩行者保護装置Mにおける上昇装置Uに使用されるものであり、この上昇装置Uは、アクチュエータA1の作動時に、フードパネル15の後端15cを上昇させる構成である。そして、実施形態のアクチュエータA1は、車両Vのフードパネル15の後端15c付近の下方に配設されている。なお、歩行者保護装置Mは、歩行者を受け止めることとなる受止材としてのフードパネル15の後端15cを上昇させる上昇装置Uと、フロントピラー4から歩行者を保護するエアバッグ10を有したエアバッグ装置9と、を備えて構成されている。
【0015】
車両Vのフロントバンパ5には、図1に示すように、保護対象物としての歩行者との衝突を検知若しくは予測可能なセンサ6が、配設されている。そして、センサ6からの信号を入力させている図示しない作動回路が、センサ6からの信号に基づいて車両Vの歩行者との衝突を検知若しくは予測した際、エアバッグ装置9のインフレーター11(図3参照)と、上昇装置UのアクチュエータA1における駆動源としてのガス発生器41(図5参照)と、を作動させるように構成されている。
【0016】
フードパネル15は、図1〜3に示すように、車両VにおけるエンジンルームERの上方を覆うように配設されるもので、左右方向の両縁における後端15c近傍に配置されるヒンジ部16により、車両Vのボディ1に対して、前開きで開閉可能に連結されている。フードパネル15は、アルミニウム(アルミニウム合金)等からなる板金製として、上面側のアウタパネル15aと、下面側に位置してアウタパネル15aより強度を向上させたインナパネル15bと、から構成されている。フードパネル15は、歩行者を受け止めた際に、歩行者の運動エネルギーを吸収できるように、塑性変形するものである。そして、実施形態では、この塑性変形時の変形量を増大させるように、エンジンルームERの上方に大きな空間を設けることを目的として、車両Vの歩行者との衝突時、上昇装置UのアクチュエータA1を作動させて、後端15cを上昇させることとなる。また、実施形態の上昇装置Uは、フードパネル15の後端15cを持ち上げて、カウル7とフードパネル15の後端15cとの間に、エアバッグ10を突出させる大きな隙間Sを設ける役目も果たしている。
【0017】
ヒンジ部16は、フードパネル15の後端15c側における左縁15dと右縁15eとに配設され(図1,2参照)、それぞれ、ボディ1側のフードリッジリインホース2に連結される取付フランジ2aに固定されるヒンジベース17と、フードパネル15側に固定されるヒンジアーム19と、を、備えて構成されている(図3,4参照)。各ヒンジアーム19は、図3に示すように、板金製のアングル材を下向きに突出させるように略半円弧状に湾曲させた形状として構成され、ヒンジベース17側の元部端19aが、支持軸18を利用してヒンジベース17に対して回動可能に連結されている。また、各ヒンジアーム19は、元部端19aから離れる先端19b側に、先端19bからフードパネル15の下面に略沿うように延びる連結板部20を備える構成とされ、この連結板部20が、フードパネル15の後端15cにおける下面側に、溶接等を利用して結合されている。また、ヒンジアーム19の先端19b付近には、下縁を略円形状に切り欠くように構成される切欠凹部19cが、形成されており、この切欠凹部19cの周囲の部位が、アクチュエータA1の作動時において後述するピストンロッド46がフードパネル15の後端15cを押し上げた際に、塑性変形する塑性変形部19dとされて、フードパネル15の上昇を許容することとなる(図4参照)。
【0018】
各支持軸18は、それらの軸方向を、車両Vの左右方向に沿わせるように、配設されている。そして、フードパネル15を開く際には、図3の実線から二点鎖線に示すように、左右の支持軸18を回転中心として、各ヒンジアーム19の先端19b側とともに、フードパネル15の前端15f側(図1参照)を、前開きで上昇させれば、フードパネル15を前開きで開くことができる。ちなみに、フードパネル15の後端15cの上昇時には、フードパネル15の前端15fは、通常閉塞用として前端15f側に配置されている図示しないフードロックストライカを係止するラッチ機構により、ボディ1側から外れることはない。
【0019】
エアバッグ装置9は、図2,3に示すように、エアバッグ10、エアバッグ10に膨張用ガスを供給するインフレーター11、エアバッグ10とインフレーター11とを収納するケース12、及び、エアバッグ10とインフレーター11とを収納したケース12を開き可能に覆うエアバッグカバー13、を備えて構成され、フードパネル15の後端15cにおける左縁15dと右縁15eとの下方付近のカウル7の部位に搭載されている。エアバッグ装置9は、上昇装置Uが作動してフードパネル15の後端15cを上昇させた際、その後端15cとカウル7との間の隙間Sから、エアバッグ10を突出させるようにインフレーター11が作動して、折り畳まれたエアバッグ10に膨張用ガスが供給される(図4参照)。そして、エアバッグ10は、膨張用ガスを流入させると、ケース12の後部側の開口12aを覆っていたエアバッグカバー13の扉部13aを押し開いて展開膨張し、左右のフロントピラー4,4の前面側を覆うこととなる(図1参照)。
【0020】
なお、カウル7は、図3に示すように、ボディ1側の剛性の高いカウルパネル7aと、カウルパネル7aの上方のカウルルーバ7bと、を備えて構成されている。カウルルーバ7bは、後端側をフロントウィンドシールド3の下部3a側に連ならせるように配設されている。また、フロントウィンドシールド3の左右には、図1,2に示すように、フロントピラー4,4が、配設されている。
【0021】
上昇装置Uは、図1〜3に示すように、フードパネル15における左右のヒンジ部16の近傍に配設されるもので、フードパネル15の後端15cの下方に配設されるアクチュエータA1と、各アクチュエータA1に対応してアクチュエータA1の上方のフードパネル15側に配設される受け座55と、を備えて構成されている。
【0022】
各アクチュエータA1は、ガス発生器41の作動時に発生するガスGを駆動源とするピストンシリンダタイプとされるもので、それぞれ、図3に示すように、フードリッジリインホース2に連結された取付フランジ2bに対してボルト53止めされる断面略U字形状の取付ブラケット52により保持されて、フードパネル15の後端15c側における左縁15d及び右縁15eの下方となる各ヒンジ部16の下方に、配設されている。各アクチュエータA1は、図4に示すように、軸方向を鉛直方向(上下方向)に略沿わせて配設される筒状のシリンダ23と、シリンダ23内に作動用流体としてのガスGを流入させるガス発生器41と、シリンダ23から上方に突出するように配設されるピストンロッド46と、上昇移動(前進移動)後のピストンロッド46の下降移動(後退移動)を規制するロック機構R1と、を備えて構成されている。ロック機構R1は、実施形態の場合、シリンダ23側に設けられる係止面30及びガイド面32と、ピストンロッド46側に設けられる係止部48及び回転片部50と、から、構成されている。
【0023】
シリンダ23は、図5に示すように、筒状の本体24と、本体24の上下端にそれぞれ固定されるキャップ35,37と、を備えて構成されている。本体24は、上昇移動時にピストンロッド46の後述するピストン部47を摺動させる摺動部25と、上昇移動完了後のピストン部47を収納可能に摺動部25の上方となる上端24a側に配置される収納凹部26と、収納凹部26の上方に配置されるガイド面32と、を備えている。摺動部25は、内周面25aにおいて上昇移動するピストン部47を摺動可能に、ピストン部47の外形形状に合わせて、内周面25aを略楕円形とした楕円筒状とされている。実施形態の場合、摺動部25は、図6に示すように、水平方向に沿った断面形状を、長軸方向を左右方向に略沿わせるように構成される略楕円筒状とされている。
【0024】
収納凹部26は、上昇移動完了直前に回転移動するピストン部47(上昇移動完了後のピストン部47)を収納可能に構成されるもので、この収納凹部26と、収納凹部26の上方に配置されるガイド面32と、は、摺動部25の上方に配置されて、下端近傍部位の内径寸法D1(収納凹部26の内径寸法)(図8参照)を、摺動部25における長軸方向側の開口幅寸法W1(図10参照)、すなわち、ピストン部47の長軸方向側の幅寸法W2(図10参照)よりも大径とした筒状スリーブ部27から、構成されている。筒状スリーブ部27は、実施形態の場合、図10に示すように、中心軸C1を、摺動部25の中心軸C2と一致させるようにして、構成されている。さらに具体的には、実施形態の場合、筒状スリーブ部27は、摺動部25を構成する部材よりも内径寸法を大径とするとともに、上端側を開口させ、摺動部25を連結させる部位を除いて下端側を閉塞させた略円筒形状とされるもので、摺動部25における上端側の開口25bの周縁を構成するように水平方向に沿って延びる底壁部28と、底壁部28の周縁から上方に延びる略円筒状の周壁部29と、から構成されている。筒状スリーブ部27は、底壁部28の部位において、溶接等により摺動部25を構成する部材と一体化されている。そして、実施形態の場合、筒状スリーブ部27における底壁部28の上面28a側、すなわち、収納凹部26における摺動部25の上端側の開口25bの周縁部位の端面が、ピストン部47の回転移動後に、ピストン部47の底面47a側における外周縁近傍の部位(具体的には長軸方向側の縁部側部位47b,47b)の底面47a側を係止する係止面30を構成することとなる。詳細には、実施形態の場合、係止面30は、筒状スリーブ部27の底壁部28の上面28aにおいて、摺動部25の上端側の開口25bの前後両側に配置される部位28b,28cから、構成されることとなる(図8,11参照)。
【0025】
さらに、実施形態では、図8に示すように、筒状スリーブ部27の周壁部29が、下側の領域を、肉厚を薄くした薄肉部29aとし、上側の領域を、肉厚を厚くした厚肉部29bとして、この薄肉部29aと厚肉部29bとの間に段差29cを設けるように、構成されている。実施形態では、上昇移動後のピストン部47を収納させる収納凹部26は、薄肉部29aの領域から構成されるものであり、収納凹部26(薄肉部29a)は、上下方向の長さ寸法L1(図8参照)を、上昇移動して摺動部25から離脱したピストン部47がさらに回転移動しつつ、収納凹部26内を上昇移動可能とし、さらに、回転移動後に、図10のB及び図11のAに示すごとく、ピストン部47の上面47cが周壁部29における段差29cと接触しないような寸法に、設定されている。厚肉部29bは、ピストンロッド46の後述する支持ロッド部49に設けられた回転片部50の先端50aと当接可能とするように、内周面を薄肉部29aよりも内側に突出させて肉厚を大きくして、構成されている。さらに詳細には、実施形態の場合、後述するごとく、厚肉部29bの下端面(収納凹部26側の端面)から、ガイド面32が構成されることとなり、厚肉部29bは、中心側への張り出し寸法(下端面の幅寸法)t1(図8参照)(段差29cにおけるシリンダ59の軸直交方向側の幅寸法と一致)を、回転片部50の先端50aを安定してガイド可能な寸法とするように、設定されている。
【0026】
そして、厚肉部29bの下端面における回転片部50の直上となる位置(実施形態の場合には、回転片部50は、後述するごとく、突出方向をピストン部47の長軸方向に沿わせて左右両側に突出するように形成されていることから、ピストン部47の長軸方向の端部側となる左右方向の端面側となる位置)には、薄肉部29aとの段差29cから、下端面側を切り欠くようにして、ガイド用凹部31が、形成されている(図7参照)。このガイド用凹部31の部位は、図7,8に示すように、シリンダ23の軸直交方向に沿う肉厚を、薄肉部29aの肉厚と略一致させるようにして、構成されている。このガイド用凹部31は、ピストンロッド46の回転片部50に対応して、2箇所に形成されている。各ガイド用凹部31は、図9の二点鎖線に示すように、筒状スリーブ部27の中心軸C1を中心として点対称形となるように、形成されるもので、それぞれ、左右方向側から見た際に、下面31a側を、回転片部50が当接する部位から、図9に示すような時計回り方向(軸回り方向)に沿って上昇させるように傾斜させた略直角三角形状として、構成されている(図8参照)。そして、このガイド用凹部31における下面31a(厚肉部29bの下端面)が、回転片部50をガイドするガイド面32を構成することとなる。ガイド面32は、上昇する回転片部50の直上に位置する元部32a側に、回転片部50を当接させ(図10のA参照)、その後、回転片部50を、図8の二点鎖線に示すごとく、上方に向かって傾斜している時計回り方向側の先端32bにかけて案内するように、ガイドして、ピストンロッド46全体を、さらに上昇移動させつつ、時計回り方向に回転移動させることとなる(図10のB及び図11のA参照)。なお、実施形態の場合、各ガイド用凹部31(ガイド面32)は、ピストンロッド46を90°回転移動可能なように、周壁部29を上方から見た際の略1/4円弧状の領域に、形成されている(図9参照)。また、実施形態の場合、ガイド面32は、水平方向に対する傾斜角度α(図8参照)を、45°前後として、設定されている。さらに、ガイド面32の先端(上端)32b側には、図7に示すように、ガイド用凹部31の側面31bが、上下方向に沿うようにして形成されている。この側面31bは、回転移動する回転片部50と当接して、ピストンロッド46のさらなる回転移動を規制するストッパ面32cを構成することとなる。
【0027】
本体24の下端24b側には、図5に示すように、摺動部25より内径寸法を小径とされるとともに下端側を開口させて構成されて、ガス発生器41の上端側を保持する略円筒形状の保持筒部33が、形成されている。
【0028】
本体24の上端24a側に配置されるキャップ35は、図5に示すように、シリンダ23の先端壁部を構成するもので、略円柱状とされて、中央に、ピストンロッド46における後述する支持ロッド部49の軸部49aを挿通させる挿通孔35aを貫通させて構成されるとともに、下端側における外周面に、シリンダ23の本体24における上端24a内周側(筒状スリーブ部27における周壁部29の厚肉部29bの内周側)に設けられた雌ねじ24cを螺合させる雄ねじ35bを備えている。キャップ35は、挿通孔35aに支持ロッド部49の軸部49aを挿通させた状態で、雄ねじ35bを雌ねじ24cに螺合させて、本体24に取り付けられている。
【0029】
本体24の下端24b側に配置されるキャップ37は、図5に示すように、保持筒部33の下端側を塞ぐように配設される元部端壁部38と、元部端壁部38の外周縁から上方に延びる略円筒状の周壁部39と、を備えて構成されている。元部端壁部38には、ガス発生器41の後述するコネクタ42を挿通可能な挿通孔38aが、形成されている。周壁部39は、上端側内周面に、シリンダ23の本体24における下端24b外周側(保持筒部33の外周側)に設けられた雄ねじ24dに螺合する雌ねじ39aを、配設させている。キャップ37は、元部端壁部38における挿通孔38a周縁の部位と、周壁部39における下部側の部位と、を利用して、元部端壁部38にガス発生器41を取り付けた状態で、雌ねじ39aを雄ねじ24dに螺合させて、本体24に取り付けられている。
【0030】
ガス発生器41としては、マイクロガスジェネレータが使用されており、ガス発生器41の下端面には、図示しない制御回路からの電気信号を入力させるリード線42aを結線させたコネクタ42が、配置されている(図5参照)。ガス発生器41は、リード線42aを経て、図示しない制御回路からの電気信号を入力させると、内蔵されている火薬を燃焼させて燃焼ガスを発生させ、そのガス(燃焼ガス)Gを作動用流体として、シリンダ23内のピストン部47の底面47a側へ供給することとなる。
【0031】
ピストンロッド46は、図5に示すように、シリンダ23内において摺動可能に収納されるピストン部47と、ピストン部47から延びて受止材としてのフードパネル15を支持可能な支持ロッド部49と、シリンダ23に設けられたガイド面32にガイドされる回転片部50と、から、構成されている。
【0032】
ピストン部47は、図5,6に示すように、シリンダ23の摺動部25に対して摺動可能な略楕円柱状とされるもので、実施形態の場合、水平方向に沿った断面形状(上方から見た際の外形形状)を、長軸方向を左右方向に略沿わせるように構成される略楕円形状として、構成されている(図6参照)。実施形態では、ピストン部47は、図10に示すように、底面47aを摺動部25から離脱させた状態で、回転片部50をガイド面32に対してスライドさせることにより、シリンダ23に対して略90°回転移動されることとなり、ピストン部47の回転移動後の長軸方向側の縁部側部位47b,47bが、底面47a側をシリンダ23の収納凹部26における摺動部25の上端側の開口25bの周縁に形成される係止面30に対して係止される係止部48を、構成することとなる(図9のB及び図11のB参照)。
【0033】
支持ロッド部49は、ピストン部47と中心軸を一致させるように、ピストン部47の中央から上方に延びるように構成されるもので、図5に示すように、丸棒状の軸部49aと、軸部49aの上端側に配置されて軸部49aより外径寸法を大径とした略円柱状の頭部49bと、から構成されている。頭部49bは、ピストンロッド46の上昇移動時に、図4に示すように、フードパネル15側に設けられる受け座55の下面55aに当接して、フードパネル15の後端15cを上方に押し上げて支持することとなる。実施形態の場合、支持ロッド部49は、ピストン部47と一体として、鋼等の金属材から構成されている。
【0034】
回転片部50は、支持ロッド部49の軸部49aにおいて、ピストン部47の近傍となる位置に形成されるもので、実施形態の場合、丸棒状として、それぞれ、軸方向を、ピストン部47の長軸方向に沿った左右方向に略沿わせるようにして、軸部49aからピストンロッド46の移動方向(支持ロッド部49の軸方向)と直交する左右両側に突出するような2箇所に、形成されている(図7,9参照)。実施形態の場合、各回転片部50は、長さ寸法(軸部49aからの突出量)L2(図9参照)を、ピストン部47の長軸方向側の端部から突出させず、かつ、上昇移動後に、先端50aの上面50bを、シリンダ23側に設けられたガイド面32に当接可能とするような寸法に、設定されている。さらに具体的には、回転片部50は、ピストンロッド46が上昇移動して、先端50aをガイド面32の元部(下端)32aに当接させた際に、ピストン部47が、図10に示すごとく、底面47aを摺動部25から離脱させて、収納凹部26内に収納されるような位置に、形成されている。
【0035】
この回転片部50は、ピストンロッド46が上昇移動して、ピストン部47が摺動部25から離脱し、シリンダ23に設けられたガイド面32の元部32a側に先端50aを当接させると、ガス発生器41から発生するガスGの押圧力を受けて、図8の二点鎖線に示すごとく、時計回り方向(軸回り方向)(図9参照)に沿って上昇するように傾斜しているガイド面32に沿って、移動することとなり、この回転片部50のガイド面32の先端(上端)32bに向かう移動を受けて、ピストンロッド46全体が、シリンダ23に対して、時計回り方向(軸回り方向)に沿って回転移動することとなる(図10のB及び図11のA参照)。実施形態の場合、回転片部50の移動時に、ピストンロッド46は、ピストン部47の底面47aを押し上げるように作用するガスGの押圧力を受けて、回転移動しつつ上昇移動することから、ピストン部47は、摺動部25から離脱した状態で、さらに、収納凹部26の底面(底壁部28の上面28a)との間に隙間を設けるように、回転移動しつつ上昇移動することとなる(図10のB及び図11のA参照)。そして、回転片部50が、ガイド面32の先端32b側に形成されたストッパ面32cと当接すれば、ピストンロッド46の回転移動が停止されることとなる。ピストンロッド46の回転移動後に、ガス発生器41からのガスGの発生が停止されて、ピストン部47の底面47a側にガスGの押圧力が作用しなくなれば、ピストンロッド46は、下方に向かって移動することとなるが、ピストンロッド46が、シリンダ23に対して90°回転移動していることから、長軸方向を前後方向に向けるように回転移動した楕円柱状のピストン部47における長軸方向側の縁部側部位47b,47bから構成される係止部48が、図11のBに示すように、摺動部25の上端側の開口25b周縁となる前後両側に配置される係止面30(底壁部28における摺動部25の前後両側に配置される部位28b,28bの上面)に底面47a側を係止されて、ピストンロッド46の下降移動を規制されることとなる。
【0036】
受け座55は、図3,4に示すように、フードパネル15の後端15cの下面に配設されたヒンジアーム19の先端19b側に設けられた連結板部20の部位に取り付けられて、下面55aの部位で、アクチュエータA1の上昇するピストンロッド46の上端側に設けられた支持ロッド部49の頭部49bを受け止め可能に、構成されている。
【0037】
第1実施形態の歩行者保護装置Mでは、センサ6からの信号により、図示しない作動回路が、車両Vの歩行者との衝突を検知若しくは予測した際に、各上昇装置UのアクチュエータA1におけるガス発生器41を作動させるとともに、エアバッグ装置9のインフレーター11を作動させることとなる。
【0038】
そして、アクチュエータA1のガス発生器41が作動されれば、図5のBに示すように、発生したガスGがシリンダ23の本体24内に収納されるピストンロッド46のピストン部47を押し上げ、支持ロッド部49の上端の頭部49bを受け座55の下面55aに当接させて、フードパネル15の後端15cを上昇させ、フードパネル15の後端15cとカウル7との間に隙間Sを形成する。また、エアバッグ装置9のインフレーター11が作動すれば、図1,2の二点鎖線や図4に示すように、折り畳まれて収納されていたエアバッグ10が、インフレーター11からのガスを流入させて、エアバッグカバー13の扉部13aを押し開いてケース12から突出し、さらに、隙間Sを経て、フロントウィンドシールド3の上方側に突出するように膨張する。膨張を完了させたエアバッグ10は、フロントピラー4の前方側を覆うこととなる。その後、受止材としてのフードパネル15が歩行者を受け止めれば、フードパネル15が、歩行者の運動エネルギーを吸収するように、塑性変形することとなる。
【0039】
そして、第1実施形態のアクチュエータA1では、作動時、ガス発生器41からガスGが発生すれば、このガスG(作動用流体)がシリンダ23内に流入されて充満されることとなり、シリンダ23内に収納されたピストンロッド46が、ピストン部47の底面47a側をガスGに押されて、上昇移動することとなる。そして、上昇移動するピストンロッド46に設けられた回転片部50が、上昇移動完了直前に、図10のAに示すように、シリンダ23の内周面側に形成されるガイド面32に当接すると、回転片部50がガイド面32に沿って移動することとなり、この回転片部50の移動に伴って、ピストンロッド46が、シリンダ23に対して、軸回り方向に沿って回転しつつ上昇移動することとなる(図10のB及び図11のA参照)。その後、ピストンロッド46に設けられた係止部48が、シリンダ23の内周面に設けられた係止面30に対応する位置に配置されるまで、ピストンロッド46が軸回り方向に沿って回転しつつ上昇移動すれば、この係止部48の底面が係止面30に係止され、この係止部48により、ピストンロッド46が下降移動を規制されることとなる(図11のB参照)。すなわち、第1実施形態のアクチュエータA1では、ピストンロッド46を、シリンダ23に対して、上昇移動時の移動方向(軸方向)と交差する軸回り方向に沿って回転移動させた後に、シリンダ23側に設けられる係止面30に、係止部48を係止させることにより、ピストンロッド46の下降移動を規制していることから、係止面30によって係止部48を安定して係止させることができ、ピストンロッド46の作動後の下降移動を確実に防止することができる。そのため、第1実施形態のアクチュエータA1では、上昇移動させたピストンロッド46により、受止材としてのフードパネル15の後端15cを安定して支持させることができる。また、第1実施形態のアクチュエータA1では、ピストンロッド46の上昇移動の完了直前に、係止面30によって係止部48を係止させる構成であることから、作動時におけるピストンロッド46の所定の移動ストロークを、安定して確保することができる。
【0040】
したがって、第1実施形態のアクチュエータA1では、作動時のピストンロッド46が、所定の移動ストロークを安定して確保でき、かつ、受止材としてのフードパネル15の後端15cを安定して支持することができる。そのため、第1実施形態では、フードパネル15の後端15cの上昇移動量を、安定して確保することができ、かつ、上昇移動したフードパネル15の後端15cをピストンロッド46により安定して支持できることから、フードパネル15が歩行者を受け止めた際のフードパネル15の塑性変形量を安定して確保でき、歩行者の運動エネルギーを安定して吸収させることができる。
【0041】
また、第1実施形態のアクチュエータA1では、ピストンロッド46のピストン部47を、断面形状を非円形とした略楕円柱状として、上昇移動後のピストン部47の底面47a側における外周縁近傍となる長軸方向側の縁部側部位47b,47bを、係止部48として、摺動部25の開口周縁の面から構成される係止面30により、係止させる構成であることから、係止部を別途形成しなくともよく、アクチュエータA1の構成を簡便にすることができる。なお、第1実施形態では、ピストン部47を略楕円柱状とし、ピストン部47を摺動させるシリンダ23の摺動部25を、略楕円筒状としているが、ピストン及び摺動部の形状は、ピストンの回転移動後に、摺動部の開口周縁の面によりピストンの外周縁近傍の部位を係止して、ピストンの下降移動を防止可能であれば、これに限られるものではなく、例えば、ピストンを、三角柱や四角柱等の多角柱状とし、摺動部を、ピストンに対応させた多角筒状とするように、構成してもよい。
【0042】
特に、第1実施形態のアクチュエータA1では、図9に示すように、略楕円柱状のピストン部47を、シリンダ23に対して略90°回転移動させていることから、上昇移動完了後のピストンロッド46が、ガス発生器41からのガスGの発生が停止されて下方に向かって移動する際に、軸回り方向に沿って多少回転するような態様となっても、ピストン部47に形成される係止部48を、確実に、摺動部25の開口25bの周縁に形成される係止面30により、係止させて、ピストンロッド46の下降移動を防止することができ、安定して、ピストンロッド46の上昇移動状態を維持することができる。
【0043】
次に、本発明の第2実施形態であるアクチュエータA2について、説明をする。第2実施形態のアクチュエータA2も、図示しないが、第1実施形態のアクチュエータA1と同様に、車両のフードパネルの後端を上昇させる上昇装置に使用されるものである。
【0044】
アクチュエータA2は、図12に示すように、軸方向を鉛直方向(上下方向)に略沿わせて配設される筒状のシリンダ59と、シリンダ59内にガスGを流入させるガス発生器41と、シリンダ59から上方に突出するように配設されるピストンロッド67と、上昇移動後のピストンロッド67の下降移動を規制するロック機構R2と、を備えて構成されている。ガス発生器41は、第1実施形態のアクチュエータA1で使用されるガス発生器41と同一の構成であり、同一の図符号を付して詳細な説明を省略する。ロック機構R2は、シリンダ59側に設けられる係止面(上面64a)及びガイド面63と、ピストンロッド67側に設けられる回転片部69と、から構成されている。
【0045】
シリンダ59は、図12に示すように、筒状の本体60と、本体60の上下端にそれぞれ固定されるキャップ35A,37Aと、を備えて構成されている。キャップ35A,37Aは、外形形状が若干異なる以外は、前述の第1実施形態のアクチュエータA1におけるキャップ35,37と同様の構成であることから、同一の部材には、同一の図符号の末尾に「A」を付して、詳細な説明を省略する。本体60は、上昇移動時にピストンロッド67の後述するピストン部68を摺動させる摺動部61と、摺動部61の上方に配置されるガイド面63と、を備えている。摺動部61は、内周面61aにおいて上昇移動するピストン部68を摺動可能な略円筒形状とされている。
【0046】
本体60は、図13及び図14に示すように、肉厚を薄くして、摺動部61を構成する薄肉部60aと、薄肉部60a(摺動部61)の上側に配置されて薄肉部60aの部位より内周面を内側に突出させるように肉厚を厚くした厚肉部60bと、を備える構成とされ、薄肉部60aと厚肉部60bとの間に段差60cを設けるようにして、構成されている。この厚肉部60bの下端面(摺動部61側の端面)は、前述のアクチュエータA1と同様に、ピストンロッド67の後述する支持ロッド部49に設けられる回転片部69をガイドするガイド面63を構成するものであり、厚肉部60bは、中心側への張り出し寸法(下端面の幅寸法であって、段差60cにおけるシリンダ59の軸直交方側の幅寸法と一致)t2(図14参照)を、回転片部69の先端69aを安定してガイド可能な寸法とするように、設定されている。
【0047】
そして、厚肉部60bの下端面における回転片部69の上方となる左右方向の縁部側の位置には、図13に示すように、薄肉部60aとの段差60cから、後述する突出壁部64の部位を残して、下端面側を切り欠くようにして、ガイド用凹部62が、形成されている。このガイド用凹部62の部位は、シリンダ59の軸直交方向に沿う肉厚を、薄肉部60aの肉厚と略一致させるようにして、構成されている。実施形態の場合、このガイド用凹部62は、ピストンロッド67の回転片部69に対応して、2箇所に形成されている。各ガイド用凹部62は、図15に示すように、本体60の中心軸C3を中心として点対称形となるように、形成されるもので、それぞれ、左右方向側から見た際に、下面62a側を時計回り方向に沿って上昇させるように傾斜させた略直角三角形状として、構成されている(図13,14参照)。そして、このガイド用凹部62における下面62a(厚肉部60bの下端面)が、回転片部69をガイドするガイド面63を構成することとなる。ガイド面63は、上昇移動する回転片部69の先端69aを当接させ、その後、回転片部69を、上方に向かって傾斜している時計回り方向側の先端63aにかけて案内するように、ガイドして、ピストンロッド67全体を、さらに上昇移動させつつ、時計回り方向に回転移動させることとなる。なお、実施形態の場合、各ガイド用凹部62(ガイド面63)は、回転片部69の直上となる位置から軸回り方向に沿った両側に延びるように形成されるもので、ピストンロッド67の上昇移動時に回転片部69がピストンロッド67とともに軸回り方向に沿って多少回転するような態様となっても、回転片部69と当接可能なように、実施形態の場合、それぞれ、本体60を上方から見た際の略1/3円弧状の領域に、形成されている(図15参照)。また、実施形態の場合、ガイド面63は、水平方向に対する傾斜角度β(図14参照)を、45°前後として、設定されている。さらに、ガイド面63の先端(上端)63a側には、ガイド用凹部62の側面62bが、上下方向に沿うようにして形成されている(図13参照)。この側面62bは、回転移動する回転片部69の先端69aと当接して、ピストンロッド67のさらなる回転移動を規制するストッパ面63bを構成することとなる。
【0048】
また、ガイド用凹部62における側面62b(ストッパ面63b)の下端側には、ストッパ面63bから軸回り方向に沿って突出する板状の突出壁部64が、形成されている(図13,14参照)。この突出壁部64は、中心側への張り出し寸法t3(図14参照)を、厚肉部60bの中心側への張り出し寸法(段差60cにおけるシリンダ59の軸直交方向側の幅寸法)と一致させて、回転片部69の先端69aの下面側を当接可能に構成されるもので、ストッパ面63bに当接した回転片部69が、下降移動するのを防止可能なように、略水平方向に沿って形成されている。そして、第2実施形態の場合、この突出壁部64の上面64aが、回転片部69の先端69aを係止する係止面を構成することとなり、第2実施形態のアクチュエータA2では、図17のBに示すように、この回転片部69を、係止部として、突出壁部64の上面(係止面)64aに係止させることにより、ピストンロッド67の下降移動を規制する構成である。
【0049】
本体60の上端側における厚肉部60bの内周面側には、キャップ35Aに設けられた雄ねじ35bに螺合される雌ねじ60dが、形成されている。また、本体60の下端側における薄肉部60aの外周面側には、キャップ37Aの周壁部39Aに設けられた雌ねじ39aを螺合させる雄ねじ60eが、形成されている(図12参照)。
【0050】
ピストンロッド67は、図12に示すように、シリンダ59内において摺動可能に収納されるピストン部68と、ピストン部68から延びる支持ロッド部49と、シリンダ59に設けられたガイド面63にガイドされる回転片部69と、から、構成されている。支持ロッド部49は、前述のアクチュエータA1における支持ロッド部49と同様の構成であり、同一の部材には同一の図符号を付して説明を省略する。ピストン部68は、シリンダ59の摺動部61に対して摺動可能な略円柱状とされている(図12,13,15参照)。
【0051】
回転片部69は、支持ロッド部49の軸部49aにおいて、ピストン部68の近傍となる位置に形成されるもので、丸棒状として、それぞれ、軸方向を、ピストンロッド67の移動方向(軸部49aの軸方向)と直交させるように、軸部49aから左右両側に突出するような2箇所に、形成されている(図15参照)。実施形態の場合、各回転片部69は、長さ寸法(軸部49aからの突出量)L3(図15参照)を、ピストン部68の半径より小さくしてピストン部68の外周縁から突出させず、かつ、上昇移動後に、先端69aの上面69bを、シリンダ59側に設けられたガイド面63に当接可能とするような、寸法に設定されている。さらに、回転片部69は、ピストン部68の上面68bから上面69bまでの距離L5(図16参照)を、ガイド用凹部62における側面62b側の段差60cからの距離L4(図14参照)より大きくして、回転片部69がガイド面63にガイドされて上昇移動した際に、図16のB及び図17のAに示すごとく、ピストン部68の上面68bが厚肉部60bの下端面(突出壁部64)と当接しないように、構成されている。
【0052】
そして、この回転片部69は、ピストンロッド67が上昇移動して、シリンダ59に設けられたガイド面63に先端69aの上面69b側を当接させると(図16のA参照)、ガス発生器41から発生するガスGの押圧力を受けて、時計回り方向に沿って上昇するように傾斜しているガイド面63に沿って移動することとなり、この回転片部69のガイド面63の先端63aに向かう移動を受けて、ピストンロッド67全体が、シリンダ59に対して時計回り方向(軸回り方向)に沿って回転移動しつつ、上昇移動することとなる(図16のB及び図17のA参照)。実施形態の場合、回転片部69は、ピストンロッド67を時計回り方向に略90°回転させるように、移動することとなる(図15参照)。そして、回転片部69が、ガイド面63の先端63a側に形成されたストッパ面63bと当接すれば、ピストンロッド67の回転移動が停止されることとなる。ピストンロッド67の回転移動後に、ガス発生器41からのガスGの発生が停止されて、ピストン部68の底面68a側にガスGの押圧力が作用しなくなれば、ピストンロッド67は、下方に向かって移動することとなるが、回転片部69の下方に形成される突出壁部64の上面64a(係止面)に、回転片部69の下面側が係止されて、ピストンロッド67の下降移動を規制されることとなる(図17のB参照)。
【0053】
第2実施形態のアクチュエータA2においても、作動時、ガス発生器41からガスGが発生すれば、このガスGがシリンダ59内に流入されて充満されることとなり、シリンダ59内に収納されたピストンロッド67が、図12のBに示すごとく、ピストン部68の底面68a側をガスGに押されて、上昇移動することとなる。そして、上昇移動するピストンロッド67に設けられた回転片部69が、上昇移動完了直前に、シリンダ59の内周面側に形成されるガイド面63に当接すると(図16のA参照)、回転片部69がガイド面63に沿って移動することとなり、この回転片部69の移動に伴って、ピストンロッド67が、シリンダ59に対して、軸回り方向に沿って回転しつつ上昇移動することとなる(図16のB及び図17のA参照)。その後、ピストンロッド67に設けられた係止部としての回転片部69が、シリンダ59の内周面に設けられた係止面としての突出壁部64の上面64aに対応する位置に配置されるまで、ピストンロッド67が軸回り方向に沿って回転しつつ上昇移動すれば、回転片部69が突出壁部64の上面64aに係止され、この係止部としての回転片部69により、ピストンロッド67が後退移動を規制されることとなる。すなわち、第2実施形態のアクチュエータA2においても、ピストンロッド67を、シリンダ59に対して、上昇移動時の移動方向(軸方向)と交差する軸回り方向に沿って回転移動させた後に、シリンダ59側に設けられる突出壁部64の上面64aに、回転片部69を係止させることにより、ピストンロッド67の下降移動を規制していることから、突出壁部64の上面64aによって回転片部69を安定して係止させることができ、ピストンロッド67の作動後の下降移動を確実に防止することができる。そのため、第2実施形態のアクチュエータA2においても、上昇移動させたピストンロッド67により、受止材としての図示しないフードパネルを安定して支持させることができる。また、第2実施形態のアクチュエータA2においても、ピストンロッド67の上昇移動の完了直前に、突出壁部64の上面64aによって回転片部69を係止させる構成であることから、作動時におけるピストンロッド67の所定の移動ストロークを、安定して確保することができる。
【0054】
したがって、第2実施形態のアクチュエータA2においても、作動時のピストンロッド67が、所定の移動ストロークを安定して確保でき、かつ、受止材としての図示しないフードパネルを安定して支持することができる。
【0055】
また、第2実施形態のアクチュエータA2では、ピストンロッド67のピストン部68を略円柱状としていることから、ピストン部68を摺動させるシリンダ58の摺動部61を円筒形状とすることができて、第1実施形態のアクチュエータA1のごとく、ピストン部47を非円柱状とする場合と比較して、シリンダ58及びピストン部68の製造コストを低減させることができる。また、第2実施形態のアクチュエータA2では、回転片部69自体を係止面としての突出壁部64の上面64aに係止させており、回転片部と係止部とを兼用している構成であることから、係止部を別途形成しなくともよく、アクチュエータA2の構成を簡便にすることができる。
【0056】
なお、実施形態のアクチュエータA1,A2では、ピストンロッド46,67における支持ロッド部49の軸部49bに、回転片部50,69を配設させているが、回転片部の配置位置はこれに限られるものではなく、シリンダの摺動部に、回転片部を挿通可能な凹溝を形成すれば、回転片部を、ピストン部の外周面から突出させるように、構成してもよい。
【0057】
また、実施形態では特に明示はしていないが、ピストンロッド46,67における支持ロッド部49の軸部49aは、フードパネル15が歩行者を受け止めて塑性変形する際に、歩行者の運動エネルギーを吸収可能に塑性変形させるように構成してもよい。
【0058】
さらに、実施形態では、前進移動を上昇させる移動とし、後退移動を下降させる移動として、フードパネル15の後端15cを上昇移動させるための上昇装置Uに、アクチュエータA1,A2を使用しているが、アクチュエータの作動方向や、本発明のアクチュエータを適用可能な自動車用安全装置はこれに限定されるものではなく、水平方向を作動方向とする自動車用安全装置に、本発明のアクチュエータを使用してもよい。
【0059】
なお、第1,第2実施形態のアクチュエータA1,A2では、ガス発生器41の作動時に発生するガスGを駆動源として、ピストンロッド46,67を移動させているが、駆動源を構成する作動用流体としては、ガスに限られるものではなく、水や油等を利用してもよい。さらには、ピストンロッド46,67を移動させる駆動源として、流体を使用しなくともよく、例えば、駆動源として、ソレノイドの吸引力を利用したり、圧縮させたばねの付勢力(復元力)を利用することができる。駆動源としてソレノイドの吸引力を使用する場合には、ピストンロッドを可動鉄心から構成して、シリンダ内に配置させ、シリンダ内のピストンロッドの周囲に、励磁コイルを配置させ、この励磁コイルに通電すれば、ピストンロッドを前進移動させることができる。また、駆動源としてばねを利用する場合には、圧縮させたコイルばねの自由端側にピストンロッドを接続させるとともに、引き込み可能にソレノイド等から構成されるストッパで、ピストンロッドもしくは圧縮コイルばねの自由端を係止させておき、係止を解除させるようにストッパを引き込ませれば、ピストンロッドを圧縮コイルばねの復元する付勢力により、前進移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第1実施形態であるアクチュエータを使用した歩行者保護装置を搭載した車両の斜視図である。
【図2】第1実施形態のアクチュエータを使用した歩行者保護装置を搭載させた車両の部分拡大平面図である。
【図3】実施形態の歩行者保護装置における車両前後方向に沿った概略縦断面図であり、図2のIII−III部位に対応する。
【図4】実施形態の歩行者保護装置の作動時を示す概略縦断面図である。
【図5】第1実施形態のアクチュエータの概略断面図であり、作動前と作動完了時とを示す。
【図6】図5のVI−VI部位の断面図である。
【図7】第1実施形態のアクチュエータにおいて、ピストンロッドと、シリンダの収納凹部の部位と、を示す概略分解斜視図である。
【図8】第1実施形態のアクチュエータにおいて、シリンダの収納凹部を構成する大径部の車両前後方向に沿った断面図であり、図9のVIII−VIII部位に対応する。
【図9】第1実施形態のアクチュエータにおいて、シリンダの収納凹部の部位の概略横断面図であり、ピストンロッドの回転前と回転後とを示す。
【図10】第1実施形態のアクチュエータにおいて、シリンダの収納凹部の部位を示す左右方向に沿った概略縦断面図であり、ピストンロッドの回転前と回転後とを示す。
【図11】第1実施形態のアクチュエータにおいて、シリンダの収納凹部の部位を示す前後方向に沿った概略縦断面図であって、図10のXI−XI部位に対応する図であり、ピストンロッドの回転後と下降移動後とを示す。
【図12】本発明の第2実施形態であるアクチュエータの概略断面図であり、作動前と作動完了時とを示す。
【図13】第2実施形態のアクチュエータにおいて、ピストンロッドと、シリンダにおける本体の上端側の部位と、を示す概略分解斜視図である。
【図14】第2実施形態のアクチュエータにおいて、シリンダの本体の上端側の部位の車両前後方向に沿った断面図であり、図15のXIV−XIV部位に対応する。
【図15】第2実施形態のアクチュエータにおいて、シリンダの本体の上端側の部位の概略横断面図であり、ピストンロッドの回転前と回転後とを示す。
【図16】第2実施形態のアクチュエータにおいて、シリンダの本体の上端側の部位を示す左右方向に沿った概略縦断面図であり、ピストンロッドの回転前と回転後とを示す。
【図17】第2実施形態のアクチュエータにおいて、シリンダの本体の上端側の部位を示す前後方向に沿った概略縦断面図であって、図16のXVII−XVII部位に対応する図であり、ピストンロッドの回転後と下降移動後とを示す。
【符号の説明】
【0061】
15…フードパネル(受止材)、
23,59…シリンダ、
24,60…本体、
25,61…摺動部、
26…収納凹部、
30…係止面、
31,62…ガイド用凹部、
32,63…ガイド面、
41…ガス発生器、
46,67…ピストンロッド、
47,68…ピストン部、
47b…縁部側部位、
48…係止部、
49…支持ロッド部、
49a…軸部、
49b…頭部、
50,69…回転片部、
52…取付ブラケット、
55…受け座、
64…突出壁部、
64a…上面(係止面)、
M…歩行者保護装置、
R1,R2…ロック機構、
U…上昇装置、
V…車両、
A1,A2…アクチュエータ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用安全装置に使用されるアクチュエータに関し、例えば、保護対象物としての歩行者を受け止める際のフードパネルを持ち上げる等の作動に使用されるアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載される自動車用安全装置のアクチュエータとしては、フードパネルの塑性変形時のエネルギー吸収を利用して、フードパネル自体で歩行者を受け止めることができるように、フードパネルの後端側を上昇させるものがあった。具体的には、従来、アクチュエータとして、筒状のシリンダ内に配置されたピストンロッドを、シリンダ内に作動用流体を流入させることにより、移動させるピストンシリンダタイプとして構成されて、前進移動(上昇移動)したピストンロッドの後退移動(下降移動)を規制するロック機構を備える構成のものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この従来のアクチュエータでは、ピストンロッドが、ピストン部と、ピストン部から延びてフードパネルを支持可能な支持ロッド部と、から構成され、ロック機構として、支持ロッド部におけるピストン部近傍の部位に、くびれ部を設けて、上昇移動後に、支持ロッド部を、くびれ部の部位で屈曲させ、この屈曲部位をストッパとして作用させて、ピストンロッドの下降移動を規制していた。
【特許文献1】特開2002−29366公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のアクチュエータでは、支持ロッド部に強度を弱くしたくびれ部を設け、このくびれ部を屈曲させてストッパとすることにより、支持ロッド部の下降移動を規制する構成であることから、支持ロッド部の上昇移動後に、ストッパを形成するようにくびれ部が屈曲すれば、フードパネルが歩行者を受け止める際に、さらに、くびれ部が屈曲することが避けられない。すなわち、アクチュエータのピストンロッドが、フードパネルを安定して支持できず、フードパネルによって歩行者を円滑に受け止めることができない。
【0005】
また、従来のアクチュエータでは、支持ロッド部の上昇移動完了前に、シリンダ内でくびれ部が屈曲される虞れもあり、その場合には、ピストンロッドが所定の上昇移動位置に配置されず、ピストンロッドの支持するフードパネルの後端を、所定位置に上昇移動させることができない場合もあった。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、作動時のピストンロッドが、所定の移動ストロークを安定して確保でき、かつ、受止材を安定して支持できるアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るアクチュエータは、自動車安全装置に使用されて、
筒状のシリンダ内に配置されたピストンロッドを、作動時に、前進移動させるピストンシリンダタイプとして、構成されるとともに、
前進移動したピストンロッドの後退移動を規制するロック機構を備えて構成され、さらに、
シリンダの先端壁部から突出したピストンロッドの先端が、保護対象物を受け止める受止材を支持するように、受止材に連結される構成のアクチュエータであって、
ロック機構が、
ピストンロッドの移動方向と略直交するようにピストンロッドから突設される回転片部と、
シリンダの内周面側に形成されて、前進移動を完了させる直前のピストンロッドを、シリンダに対して、軸回り方向に沿って回転可能とするように、回転片部をガイド可能なガイド面と、
ピストンロッドに形成される係止部と、
シリンダの内周面におけるピストンロッドの前進移動完了時の配置位置に形成されて、回転移動後の係止部を係止可能な係止面と、
を、備える構成とされて、
回転片部を、ピストンロッドの前進移動時に、ガイド面に沿って移動させることにより、ピストンロッドを、シリンダに対して、軸回り方向に沿って回転させつつ前進移動させて、係止部を、係止面に係止させることにより、ピストンロッドの後退移動を規制するように、構成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明のアクチュエータでは、作動時、シリンダ内に収納されたピストンロッドが、前進移動することとなる。そして、前進移動するピストンロッドに設けられた回転片部が、前進移動完了直前に、シリンダの内周面側に形成されるガイド面に当接すると、回転片部がガイド面に沿って移動することとなり、この回転片部の移動に伴って、ピストンロッドが、シリンダに対して、軸回り方向に沿って回転しつつ前進移動することとなる。その後、ピストンロッドに設けられた係止部が、シリンダの内周面に設けられた係止面に対応する位置に配置されるまで、ピストンロッドが軸回り方向に沿って回転しつつ前進移動すれば、係止部が係止面に係止され、この係止部により、ピストンロッドが後退移動を規制されることとなる。すなわち、本発明のアクチュエータでは、ピストンロッドを、シリンダに対して、前進移動時の移動方向(軸方向)と交差する軸回り方向に沿って回転移動させた後に、シリンダ側に設けられる係止面に、係止部を係止させることにより、ピストンロッドの後退移動を規制していることから、係止面によって係止部を安定して係止させることができ、ピストンロッドの作動後の後退移動を確実に防止することができる。そのため、本発明のアクチュエータでは、前進移動させたピストンロッドにより、受止材を安定して支持させることができる。また、本発明のアクチュエータでは、ピストンロッドの前進移動の完了直前に、係止面によって係止部を係止させる構成であることから、作動時におけるピストンロッドの所定の移動ストロークを、安定して確保することができる。
【0009】
したがって、本発明のアクチュエータでは、作動時のピストンロッドが、所定の移動ストロークを安定して確保でき、かつ、受止材を安定して支持することができる。
【0010】
また、本発明のアクチュエータにおいて、ピストンロッドを、ピストン部と、ピストン部から延びて受止材を支持可能な支持ロッド部と、から構成して、
ピストン部を、断面形状を非円形とした柱状として、
シリンダを、
ピストン部を摺動可能な摺動部と、
先端壁部と摺動部との間に配置されるとともに、前進移動完了後のピストン部を収納させるように、内径寸法を摺動部より大きくして構成される収納凹部と、
を備える構成とし、
ピストン部を、外周縁近傍の部位を係止部として、前進移動完了後に、収納凹部における摺動部の開口周縁の面から構成される係止面により、底面側を係止されて、ピストンロッドの後退移動を規制させる構成とすることが好ましい。
【0011】
上記構成のアクチュエータでは、上昇移動後のピストン部における外周縁近傍の部位自体を係止部として、収納凹部における摺動部の開口周縁の面から構成される係止面に、底面側を係止させる構成であることから、係止部を別途形成しなくともよく、アクチュエータの構成を簡便にすることができる。
【0012】
さらに、本発明のアクチュエータにおいて、ピストンロッドを、ピストン部と、ピストン部から延びて受止材を支持可能な支持ロッド部と、から構成して、
ピストン部を、略円柱状として、
シリンダにおけるガイド面における回転片部の移動方向の先端側に、回転移動後の回転片部を係止するとともに、回転片部の後退移動方向側を係止可能な係止面を形成し、
回転片部を、係止部として係止面に係止させることにより、支持ロッドの後退移動を規制する構成としてもよい。
【0013】
アクチュエータを上記構成とすれば、シリンダを円筒形状とすることができることから、ピストン部を非円柱状とする場合と比較して、シリンダやピストン部の製造コストを低減させることができる。また、上記構成のアクチュエータにおいても、回転片部と係止部とを兼用している構成であることから、係止部を別途形成しなくともよく、アクチュエータの構成を簡便にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。第1実施形態のアクチュエータA1は、図1〜3に示すように、車両Vに搭載される自動車安全装置としての歩行者保護装置Mにおける上昇装置Uに使用されるものであり、この上昇装置Uは、アクチュエータA1の作動時に、フードパネル15の後端15cを上昇させる構成である。そして、実施形態のアクチュエータA1は、車両Vのフードパネル15の後端15c付近の下方に配設されている。なお、歩行者保護装置Mは、歩行者を受け止めることとなる受止材としてのフードパネル15の後端15cを上昇させる上昇装置Uと、フロントピラー4から歩行者を保護するエアバッグ10を有したエアバッグ装置9と、を備えて構成されている。
【0015】
車両Vのフロントバンパ5には、図1に示すように、保護対象物としての歩行者との衝突を検知若しくは予測可能なセンサ6が、配設されている。そして、センサ6からの信号を入力させている図示しない作動回路が、センサ6からの信号に基づいて車両Vの歩行者との衝突を検知若しくは予測した際、エアバッグ装置9のインフレーター11(図3参照)と、上昇装置UのアクチュエータA1における駆動源としてのガス発生器41(図5参照)と、を作動させるように構成されている。
【0016】
フードパネル15は、図1〜3に示すように、車両VにおけるエンジンルームERの上方を覆うように配設されるもので、左右方向の両縁における後端15c近傍に配置されるヒンジ部16により、車両Vのボディ1に対して、前開きで開閉可能に連結されている。フードパネル15は、アルミニウム(アルミニウム合金)等からなる板金製として、上面側のアウタパネル15aと、下面側に位置してアウタパネル15aより強度を向上させたインナパネル15bと、から構成されている。フードパネル15は、歩行者を受け止めた際に、歩行者の運動エネルギーを吸収できるように、塑性変形するものである。そして、実施形態では、この塑性変形時の変形量を増大させるように、エンジンルームERの上方に大きな空間を設けることを目的として、車両Vの歩行者との衝突時、上昇装置UのアクチュエータA1を作動させて、後端15cを上昇させることとなる。また、実施形態の上昇装置Uは、フードパネル15の後端15cを持ち上げて、カウル7とフードパネル15の後端15cとの間に、エアバッグ10を突出させる大きな隙間Sを設ける役目も果たしている。
【0017】
ヒンジ部16は、フードパネル15の後端15c側における左縁15dと右縁15eとに配設され(図1,2参照)、それぞれ、ボディ1側のフードリッジリインホース2に連結される取付フランジ2aに固定されるヒンジベース17と、フードパネル15側に固定されるヒンジアーム19と、を、備えて構成されている(図3,4参照)。各ヒンジアーム19は、図3に示すように、板金製のアングル材を下向きに突出させるように略半円弧状に湾曲させた形状として構成され、ヒンジベース17側の元部端19aが、支持軸18を利用してヒンジベース17に対して回動可能に連結されている。また、各ヒンジアーム19は、元部端19aから離れる先端19b側に、先端19bからフードパネル15の下面に略沿うように延びる連結板部20を備える構成とされ、この連結板部20が、フードパネル15の後端15cにおける下面側に、溶接等を利用して結合されている。また、ヒンジアーム19の先端19b付近には、下縁を略円形状に切り欠くように構成される切欠凹部19cが、形成されており、この切欠凹部19cの周囲の部位が、アクチュエータA1の作動時において後述するピストンロッド46がフードパネル15の後端15cを押し上げた際に、塑性変形する塑性変形部19dとされて、フードパネル15の上昇を許容することとなる(図4参照)。
【0018】
各支持軸18は、それらの軸方向を、車両Vの左右方向に沿わせるように、配設されている。そして、フードパネル15を開く際には、図3の実線から二点鎖線に示すように、左右の支持軸18を回転中心として、各ヒンジアーム19の先端19b側とともに、フードパネル15の前端15f側(図1参照)を、前開きで上昇させれば、フードパネル15を前開きで開くことができる。ちなみに、フードパネル15の後端15cの上昇時には、フードパネル15の前端15fは、通常閉塞用として前端15f側に配置されている図示しないフードロックストライカを係止するラッチ機構により、ボディ1側から外れることはない。
【0019】
エアバッグ装置9は、図2,3に示すように、エアバッグ10、エアバッグ10に膨張用ガスを供給するインフレーター11、エアバッグ10とインフレーター11とを収納するケース12、及び、エアバッグ10とインフレーター11とを収納したケース12を開き可能に覆うエアバッグカバー13、を備えて構成され、フードパネル15の後端15cにおける左縁15dと右縁15eとの下方付近のカウル7の部位に搭載されている。エアバッグ装置9は、上昇装置Uが作動してフードパネル15の後端15cを上昇させた際、その後端15cとカウル7との間の隙間Sから、エアバッグ10を突出させるようにインフレーター11が作動して、折り畳まれたエアバッグ10に膨張用ガスが供給される(図4参照)。そして、エアバッグ10は、膨張用ガスを流入させると、ケース12の後部側の開口12aを覆っていたエアバッグカバー13の扉部13aを押し開いて展開膨張し、左右のフロントピラー4,4の前面側を覆うこととなる(図1参照)。
【0020】
なお、カウル7は、図3に示すように、ボディ1側の剛性の高いカウルパネル7aと、カウルパネル7aの上方のカウルルーバ7bと、を備えて構成されている。カウルルーバ7bは、後端側をフロントウィンドシールド3の下部3a側に連ならせるように配設されている。また、フロントウィンドシールド3の左右には、図1,2に示すように、フロントピラー4,4が、配設されている。
【0021】
上昇装置Uは、図1〜3に示すように、フードパネル15における左右のヒンジ部16の近傍に配設されるもので、フードパネル15の後端15cの下方に配設されるアクチュエータA1と、各アクチュエータA1に対応してアクチュエータA1の上方のフードパネル15側に配設される受け座55と、を備えて構成されている。
【0022】
各アクチュエータA1は、ガス発生器41の作動時に発生するガスGを駆動源とするピストンシリンダタイプとされるもので、それぞれ、図3に示すように、フードリッジリインホース2に連結された取付フランジ2bに対してボルト53止めされる断面略U字形状の取付ブラケット52により保持されて、フードパネル15の後端15c側における左縁15d及び右縁15eの下方となる各ヒンジ部16の下方に、配設されている。各アクチュエータA1は、図4に示すように、軸方向を鉛直方向(上下方向)に略沿わせて配設される筒状のシリンダ23と、シリンダ23内に作動用流体としてのガスGを流入させるガス発生器41と、シリンダ23から上方に突出するように配設されるピストンロッド46と、上昇移動(前進移動)後のピストンロッド46の下降移動(後退移動)を規制するロック機構R1と、を備えて構成されている。ロック機構R1は、実施形態の場合、シリンダ23側に設けられる係止面30及びガイド面32と、ピストンロッド46側に設けられる係止部48及び回転片部50と、から、構成されている。
【0023】
シリンダ23は、図5に示すように、筒状の本体24と、本体24の上下端にそれぞれ固定されるキャップ35,37と、を備えて構成されている。本体24は、上昇移動時にピストンロッド46の後述するピストン部47を摺動させる摺動部25と、上昇移動完了後のピストン部47を収納可能に摺動部25の上方となる上端24a側に配置される収納凹部26と、収納凹部26の上方に配置されるガイド面32と、を備えている。摺動部25は、内周面25aにおいて上昇移動するピストン部47を摺動可能に、ピストン部47の外形形状に合わせて、内周面25aを略楕円形とした楕円筒状とされている。実施形態の場合、摺動部25は、図6に示すように、水平方向に沿った断面形状を、長軸方向を左右方向に略沿わせるように構成される略楕円筒状とされている。
【0024】
収納凹部26は、上昇移動完了直前に回転移動するピストン部47(上昇移動完了後のピストン部47)を収納可能に構成されるもので、この収納凹部26と、収納凹部26の上方に配置されるガイド面32と、は、摺動部25の上方に配置されて、下端近傍部位の内径寸法D1(収納凹部26の内径寸法)(図8参照)を、摺動部25における長軸方向側の開口幅寸法W1(図10参照)、すなわち、ピストン部47の長軸方向側の幅寸法W2(図10参照)よりも大径とした筒状スリーブ部27から、構成されている。筒状スリーブ部27は、実施形態の場合、図10に示すように、中心軸C1を、摺動部25の中心軸C2と一致させるようにして、構成されている。さらに具体的には、実施形態の場合、筒状スリーブ部27は、摺動部25を構成する部材よりも内径寸法を大径とするとともに、上端側を開口させ、摺動部25を連結させる部位を除いて下端側を閉塞させた略円筒形状とされるもので、摺動部25における上端側の開口25bの周縁を構成するように水平方向に沿って延びる底壁部28と、底壁部28の周縁から上方に延びる略円筒状の周壁部29と、から構成されている。筒状スリーブ部27は、底壁部28の部位において、溶接等により摺動部25を構成する部材と一体化されている。そして、実施形態の場合、筒状スリーブ部27における底壁部28の上面28a側、すなわち、収納凹部26における摺動部25の上端側の開口25bの周縁部位の端面が、ピストン部47の回転移動後に、ピストン部47の底面47a側における外周縁近傍の部位(具体的には長軸方向側の縁部側部位47b,47b)の底面47a側を係止する係止面30を構成することとなる。詳細には、実施形態の場合、係止面30は、筒状スリーブ部27の底壁部28の上面28aにおいて、摺動部25の上端側の開口25bの前後両側に配置される部位28b,28cから、構成されることとなる(図8,11参照)。
【0025】
さらに、実施形態では、図8に示すように、筒状スリーブ部27の周壁部29が、下側の領域を、肉厚を薄くした薄肉部29aとし、上側の領域を、肉厚を厚くした厚肉部29bとして、この薄肉部29aと厚肉部29bとの間に段差29cを設けるように、構成されている。実施形態では、上昇移動後のピストン部47を収納させる収納凹部26は、薄肉部29aの領域から構成されるものであり、収納凹部26(薄肉部29a)は、上下方向の長さ寸法L1(図8参照)を、上昇移動して摺動部25から離脱したピストン部47がさらに回転移動しつつ、収納凹部26内を上昇移動可能とし、さらに、回転移動後に、図10のB及び図11のAに示すごとく、ピストン部47の上面47cが周壁部29における段差29cと接触しないような寸法に、設定されている。厚肉部29bは、ピストンロッド46の後述する支持ロッド部49に設けられた回転片部50の先端50aと当接可能とするように、内周面を薄肉部29aよりも内側に突出させて肉厚を大きくして、構成されている。さらに詳細には、実施形態の場合、後述するごとく、厚肉部29bの下端面(収納凹部26側の端面)から、ガイド面32が構成されることとなり、厚肉部29bは、中心側への張り出し寸法(下端面の幅寸法)t1(図8参照)(段差29cにおけるシリンダ59の軸直交方向側の幅寸法と一致)を、回転片部50の先端50aを安定してガイド可能な寸法とするように、設定されている。
【0026】
そして、厚肉部29bの下端面における回転片部50の直上となる位置(実施形態の場合には、回転片部50は、後述するごとく、突出方向をピストン部47の長軸方向に沿わせて左右両側に突出するように形成されていることから、ピストン部47の長軸方向の端部側となる左右方向の端面側となる位置)には、薄肉部29aとの段差29cから、下端面側を切り欠くようにして、ガイド用凹部31が、形成されている(図7参照)。このガイド用凹部31の部位は、図7,8に示すように、シリンダ23の軸直交方向に沿う肉厚を、薄肉部29aの肉厚と略一致させるようにして、構成されている。このガイド用凹部31は、ピストンロッド46の回転片部50に対応して、2箇所に形成されている。各ガイド用凹部31は、図9の二点鎖線に示すように、筒状スリーブ部27の中心軸C1を中心として点対称形となるように、形成されるもので、それぞれ、左右方向側から見た際に、下面31a側を、回転片部50が当接する部位から、図9に示すような時計回り方向(軸回り方向)に沿って上昇させるように傾斜させた略直角三角形状として、構成されている(図8参照)。そして、このガイド用凹部31における下面31a(厚肉部29bの下端面)が、回転片部50をガイドするガイド面32を構成することとなる。ガイド面32は、上昇する回転片部50の直上に位置する元部32a側に、回転片部50を当接させ(図10のA参照)、その後、回転片部50を、図8の二点鎖線に示すごとく、上方に向かって傾斜している時計回り方向側の先端32bにかけて案内するように、ガイドして、ピストンロッド46全体を、さらに上昇移動させつつ、時計回り方向に回転移動させることとなる(図10のB及び図11のA参照)。なお、実施形態の場合、各ガイド用凹部31(ガイド面32)は、ピストンロッド46を90°回転移動可能なように、周壁部29を上方から見た際の略1/4円弧状の領域に、形成されている(図9参照)。また、実施形態の場合、ガイド面32は、水平方向に対する傾斜角度α(図8参照)を、45°前後として、設定されている。さらに、ガイド面32の先端(上端)32b側には、図7に示すように、ガイド用凹部31の側面31bが、上下方向に沿うようにして形成されている。この側面31bは、回転移動する回転片部50と当接して、ピストンロッド46のさらなる回転移動を規制するストッパ面32cを構成することとなる。
【0027】
本体24の下端24b側には、図5に示すように、摺動部25より内径寸法を小径とされるとともに下端側を開口させて構成されて、ガス発生器41の上端側を保持する略円筒形状の保持筒部33が、形成されている。
【0028】
本体24の上端24a側に配置されるキャップ35は、図5に示すように、シリンダ23の先端壁部を構成するもので、略円柱状とされて、中央に、ピストンロッド46における後述する支持ロッド部49の軸部49aを挿通させる挿通孔35aを貫通させて構成されるとともに、下端側における外周面に、シリンダ23の本体24における上端24a内周側(筒状スリーブ部27における周壁部29の厚肉部29bの内周側)に設けられた雌ねじ24cを螺合させる雄ねじ35bを備えている。キャップ35は、挿通孔35aに支持ロッド部49の軸部49aを挿通させた状態で、雄ねじ35bを雌ねじ24cに螺合させて、本体24に取り付けられている。
【0029】
本体24の下端24b側に配置されるキャップ37は、図5に示すように、保持筒部33の下端側を塞ぐように配設される元部端壁部38と、元部端壁部38の外周縁から上方に延びる略円筒状の周壁部39と、を備えて構成されている。元部端壁部38には、ガス発生器41の後述するコネクタ42を挿通可能な挿通孔38aが、形成されている。周壁部39は、上端側内周面に、シリンダ23の本体24における下端24b外周側(保持筒部33の外周側)に設けられた雄ねじ24dに螺合する雌ねじ39aを、配設させている。キャップ37は、元部端壁部38における挿通孔38a周縁の部位と、周壁部39における下部側の部位と、を利用して、元部端壁部38にガス発生器41を取り付けた状態で、雌ねじ39aを雄ねじ24dに螺合させて、本体24に取り付けられている。
【0030】
ガス発生器41としては、マイクロガスジェネレータが使用されており、ガス発生器41の下端面には、図示しない制御回路からの電気信号を入力させるリード線42aを結線させたコネクタ42が、配置されている(図5参照)。ガス発生器41は、リード線42aを経て、図示しない制御回路からの電気信号を入力させると、内蔵されている火薬を燃焼させて燃焼ガスを発生させ、そのガス(燃焼ガス)Gを作動用流体として、シリンダ23内のピストン部47の底面47a側へ供給することとなる。
【0031】
ピストンロッド46は、図5に示すように、シリンダ23内において摺動可能に収納されるピストン部47と、ピストン部47から延びて受止材としてのフードパネル15を支持可能な支持ロッド部49と、シリンダ23に設けられたガイド面32にガイドされる回転片部50と、から、構成されている。
【0032】
ピストン部47は、図5,6に示すように、シリンダ23の摺動部25に対して摺動可能な略楕円柱状とされるもので、実施形態の場合、水平方向に沿った断面形状(上方から見た際の外形形状)を、長軸方向を左右方向に略沿わせるように構成される略楕円形状として、構成されている(図6参照)。実施形態では、ピストン部47は、図10に示すように、底面47aを摺動部25から離脱させた状態で、回転片部50をガイド面32に対してスライドさせることにより、シリンダ23に対して略90°回転移動されることとなり、ピストン部47の回転移動後の長軸方向側の縁部側部位47b,47bが、底面47a側をシリンダ23の収納凹部26における摺動部25の上端側の開口25bの周縁に形成される係止面30に対して係止される係止部48を、構成することとなる(図9のB及び図11のB参照)。
【0033】
支持ロッド部49は、ピストン部47と中心軸を一致させるように、ピストン部47の中央から上方に延びるように構成されるもので、図5に示すように、丸棒状の軸部49aと、軸部49aの上端側に配置されて軸部49aより外径寸法を大径とした略円柱状の頭部49bと、から構成されている。頭部49bは、ピストンロッド46の上昇移動時に、図4に示すように、フードパネル15側に設けられる受け座55の下面55aに当接して、フードパネル15の後端15cを上方に押し上げて支持することとなる。実施形態の場合、支持ロッド部49は、ピストン部47と一体として、鋼等の金属材から構成されている。
【0034】
回転片部50は、支持ロッド部49の軸部49aにおいて、ピストン部47の近傍となる位置に形成されるもので、実施形態の場合、丸棒状として、それぞれ、軸方向を、ピストン部47の長軸方向に沿った左右方向に略沿わせるようにして、軸部49aからピストンロッド46の移動方向(支持ロッド部49の軸方向)と直交する左右両側に突出するような2箇所に、形成されている(図7,9参照)。実施形態の場合、各回転片部50は、長さ寸法(軸部49aからの突出量)L2(図9参照)を、ピストン部47の長軸方向側の端部から突出させず、かつ、上昇移動後に、先端50aの上面50bを、シリンダ23側に設けられたガイド面32に当接可能とするような寸法に、設定されている。さらに具体的には、回転片部50は、ピストンロッド46が上昇移動して、先端50aをガイド面32の元部(下端)32aに当接させた際に、ピストン部47が、図10に示すごとく、底面47aを摺動部25から離脱させて、収納凹部26内に収納されるような位置に、形成されている。
【0035】
この回転片部50は、ピストンロッド46が上昇移動して、ピストン部47が摺動部25から離脱し、シリンダ23に設けられたガイド面32の元部32a側に先端50aを当接させると、ガス発生器41から発生するガスGの押圧力を受けて、図8の二点鎖線に示すごとく、時計回り方向(軸回り方向)(図9参照)に沿って上昇するように傾斜しているガイド面32に沿って、移動することとなり、この回転片部50のガイド面32の先端(上端)32bに向かう移動を受けて、ピストンロッド46全体が、シリンダ23に対して、時計回り方向(軸回り方向)に沿って回転移動することとなる(図10のB及び図11のA参照)。実施形態の場合、回転片部50の移動時に、ピストンロッド46は、ピストン部47の底面47aを押し上げるように作用するガスGの押圧力を受けて、回転移動しつつ上昇移動することから、ピストン部47は、摺動部25から離脱した状態で、さらに、収納凹部26の底面(底壁部28の上面28a)との間に隙間を設けるように、回転移動しつつ上昇移動することとなる(図10のB及び図11のA参照)。そして、回転片部50が、ガイド面32の先端32b側に形成されたストッパ面32cと当接すれば、ピストンロッド46の回転移動が停止されることとなる。ピストンロッド46の回転移動後に、ガス発生器41からのガスGの発生が停止されて、ピストン部47の底面47a側にガスGの押圧力が作用しなくなれば、ピストンロッド46は、下方に向かって移動することとなるが、ピストンロッド46が、シリンダ23に対して90°回転移動していることから、長軸方向を前後方向に向けるように回転移動した楕円柱状のピストン部47における長軸方向側の縁部側部位47b,47bから構成される係止部48が、図11のBに示すように、摺動部25の上端側の開口25b周縁となる前後両側に配置される係止面30(底壁部28における摺動部25の前後両側に配置される部位28b,28bの上面)に底面47a側を係止されて、ピストンロッド46の下降移動を規制されることとなる。
【0036】
受け座55は、図3,4に示すように、フードパネル15の後端15cの下面に配設されたヒンジアーム19の先端19b側に設けられた連結板部20の部位に取り付けられて、下面55aの部位で、アクチュエータA1の上昇するピストンロッド46の上端側に設けられた支持ロッド部49の頭部49bを受け止め可能に、構成されている。
【0037】
第1実施形態の歩行者保護装置Mでは、センサ6からの信号により、図示しない作動回路が、車両Vの歩行者との衝突を検知若しくは予測した際に、各上昇装置UのアクチュエータA1におけるガス発生器41を作動させるとともに、エアバッグ装置9のインフレーター11を作動させることとなる。
【0038】
そして、アクチュエータA1のガス発生器41が作動されれば、図5のBに示すように、発生したガスGがシリンダ23の本体24内に収納されるピストンロッド46のピストン部47を押し上げ、支持ロッド部49の上端の頭部49bを受け座55の下面55aに当接させて、フードパネル15の後端15cを上昇させ、フードパネル15の後端15cとカウル7との間に隙間Sを形成する。また、エアバッグ装置9のインフレーター11が作動すれば、図1,2の二点鎖線や図4に示すように、折り畳まれて収納されていたエアバッグ10が、インフレーター11からのガスを流入させて、エアバッグカバー13の扉部13aを押し開いてケース12から突出し、さらに、隙間Sを経て、フロントウィンドシールド3の上方側に突出するように膨張する。膨張を完了させたエアバッグ10は、フロントピラー4の前方側を覆うこととなる。その後、受止材としてのフードパネル15が歩行者を受け止めれば、フードパネル15が、歩行者の運動エネルギーを吸収するように、塑性変形することとなる。
【0039】
そして、第1実施形態のアクチュエータA1では、作動時、ガス発生器41からガスGが発生すれば、このガスG(作動用流体)がシリンダ23内に流入されて充満されることとなり、シリンダ23内に収納されたピストンロッド46が、ピストン部47の底面47a側をガスGに押されて、上昇移動することとなる。そして、上昇移動するピストンロッド46に設けられた回転片部50が、上昇移動完了直前に、図10のAに示すように、シリンダ23の内周面側に形成されるガイド面32に当接すると、回転片部50がガイド面32に沿って移動することとなり、この回転片部50の移動に伴って、ピストンロッド46が、シリンダ23に対して、軸回り方向に沿って回転しつつ上昇移動することとなる(図10のB及び図11のA参照)。その後、ピストンロッド46に設けられた係止部48が、シリンダ23の内周面に設けられた係止面30に対応する位置に配置されるまで、ピストンロッド46が軸回り方向に沿って回転しつつ上昇移動すれば、この係止部48の底面が係止面30に係止され、この係止部48により、ピストンロッド46が下降移動を規制されることとなる(図11のB参照)。すなわち、第1実施形態のアクチュエータA1では、ピストンロッド46を、シリンダ23に対して、上昇移動時の移動方向(軸方向)と交差する軸回り方向に沿って回転移動させた後に、シリンダ23側に設けられる係止面30に、係止部48を係止させることにより、ピストンロッド46の下降移動を規制していることから、係止面30によって係止部48を安定して係止させることができ、ピストンロッド46の作動後の下降移動を確実に防止することができる。そのため、第1実施形態のアクチュエータA1では、上昇移動させたピストンロッド46により、受止材としてのフードパネル15の後端15cを安定して支持させることができる。また、第1実施形態のアクチュエータA1では、ピストンロッド46の上昇移動の完了直前に、係止面30によって係止部48を係止させる構成であることから、作動時におけるピストンロッド46の所定の移動ストロークを、安定して確保することができる。
【0040】
したがって、第1実施形態のアクチュエータA1では、作動時のピストンロッド46が、所定の移動ストロークを安定して確保でき、かつ、受止材としてのフードパネル15の後端15cを安定して支持することができる。そのため、第1実施形態では、フードパネル15の後端15cの上昇移動量を、安定して確保することができ、かつ、上昇移動したフードパネル15の後端15cをピストンロッド46により安定して支持できることから、フードパネル15が歩行者を受け止めた際のフードパネル15の塑性変形量を安定して確保でき、歩行者の運動エネルギーを安定して吸収させることができる。
【0041】
また、第1実施形態のアクチュエータA1では、ピストンロッド46のピストン部47を、断面形状を非円形とした略楕円柱状として、上昇移動後のピストン部47の底面47a側における外周縁近傍となる長軸方向側の縁部側部位47b,47bを、係止部48として、摺動部25の開口周縁の面から構成される係止面30により、係止させる構成であることから、係止部を別途形成しなくともよく、アクチュエータA1の構成を簡便にすることができる。なお、第1実施形態では、ピストン部47を略楕円柱状とし、ピストン部47を摺動させるシリンダ23の摺動部25を、略楕円筒状としているが、ピストン及び摺動部の形状は、ピストンの回転移動後に、摺動部の開口周縁の面によりピストンの外周縁近傍の部位を係止して、ピストンの下降移動を防止可能であれば、これに限られるものではなく、例えば、ピストンを、三角柱や四角柱等の多角柱状とし、摺動部を、ピストンに対応させた多角筒状とするように、構成してもよい。
【0042】
特に、第1実施形態のアクチュエータA1では、図9に示すように、略楕円柱状のピストン部47を、シリンダ23に対して略90°回転移動させていることから、上昇移動完了後のピストンロッド46が、ガス発生器41からのガスGの発生が停止されて下方に向かって移動する際に、軸回り方向に沿って多少回転するような態様となっても、ピストン部47に形成される係止部48を、確実に、摺動部25の開口25bの周縁に形成される係止面30により、係止させて、ピストンロッド46の下降移動を防止することができ、安定して、ピストンロッド46の上昇移動状態を維持することができる。
【0043】
次に、本発明の第2実施形態であるアクチュエータA2について、説明をする。第2実施形態のアクチュエータA2も、図示しないが、第1実施形態のアクチュエータA1と同様に、車両のフードパネルの後端を上昇させる上昇装置に使用されるものである。
【0044】
アクチュエータA2は、図12に示すように、軸方向を鉛直方向(上下方向)に略沿わせて配設される筒状のシリンダ59と、シリンダ59内にガスGを流入させるガス発生器41と、シリンダ59から上方に突出するように配設されるピストンロッド67と、上昇移動後のピストンロッド67の下降移動を規制するロック機構R2と、を備えて構成されている。ガス発生器41は、第1実施形態のアクチュエータA1で使用されるガス発生器41と同一の構成であり、同一の図符号を付して詳細な説明を省略する。ロック機構R2は、シリンダ59側に設けられる係止面(上面64a)及びガイド面63と、ピストンロッド67側に設けられる回転片部69と、から構成されている。
【0045】
シリンダ59は、図12に示すように、筒状の本体60と、本体60の上下端にそれぞれ固定されるキャップ35A,37Aと、を備えて構成されている。キャップ35A,37Aは、外形形状が若干異なる以外は、前述の第1実施形態のアクチュエータA1におけるキャップ35,37と同様の構成であることから、同一の部材には、同一の図符号の末尾に「A」を付して、詳細な説明を省略する。本体60は、上昇移動時にピストンロッド67の後述するピストン部68を摺動させる摺動部61と、摺動部61の上方に配置されるガイド面63と、を備えている。摺動部61は、内周面61aにおいて上昇移動するピストン部68を摺動可能な略円筒形状とされている。
【0046】
本体60は、図13及び図14に示すように、肉厚を薄くして、摺動部61を構成する薄肉部60aと、薄肉部60a(摺動部61)の上側に配置されて薄肉部60aの部位より内周面を内側に突出させるように肉厚を厚くした厚肉部60bと、を備える構成とされ、薄肉部60aと厚肉部60bとの間に段差60cを設けるようにして、構成されている。この厚肉部60bの下端面(摺動部61側の端面)は、前述のアクチュエータA1と同様に、ピストンロッド67の後述する支持ロッド部49に設けられる回転片部69をガイドするガイド面63を構成するものであり、厚肉部60bは、中心側への張り出し寸法(下端面の幅寸法であって、段差60cにおけるシリンダ59の軸直交方側の幅寸法と一致)t2(図14参照)を、回転片部69の先端69aを安定してガイド可能な寸法とするように、設定されている。
【0047】
そして、厚肉部60bの下端面における回転片部69の上方となる左右方向の縁部側の位置には、図13に示すように、薄肉部60aとの段差60cから、後述する突出壁部64の部位を残して、下端面側を切り欠くようにして、ガイド用凹部62が、形成されている。このガイド用凹部62の部位は、シリンダ59の軸直交方向に沿う肉厚を、薄肉部60aの肉厚と略一致させるようにして、構成されている。実施形態の場合、このガイド用凹部62は、ピストンロッド67の回転片部69に対応して、2箇所に形成されている。各ガイド用凹部62は、図15に示すように、本体60の中心軸C3を中心として点対称形となるように、形成されるもので、それぞれ、左右方向側から見た際に、下面62a側を時計回り方向に沿って上昇させるように傾斜させた略直角三角形状として、構成されている(図13,14参照)。そして、このガイド用凹部62における下面62a(厚肉部60bの下端面)が、回転片部69をガイドするガイド面63を構成することとなる。ガイド面63は、上昇移動する回転片部69の先端69aを当接させ、その後、回転片部69を、上方に向かって傾斜している時計回り方向側の先端63aにかけて案内するように、ガイドして、ピストンロッド67全体を、さらに上昇移動させつつ、時計回り方向に回転移動させることとなる。なお、実施形態の場合、各ガイド用凹部62(ガイド面63)は、回転片部69の直上となる位置から軸回り方向に沿った両側に延びるように形成されるもので、ピストンロッド67の上昇移動時に回転片部69がピストンロッド67とともに軸回り方向に沿って多少回転するような態様となっても、回転片部69と当接可能なように、実施形態の場合、それぞれ、本体60を上方から見た際の略1/3円弧状の領域に、形成されている(図15参照)。また、実施形態の場合、ガイド面63は、水平方向に対する傾斜角度β(図14参照)を、45°前後として、設定されている。さらに、ガイド面63の先端(上端)63a側には、ガイド用凹部62の側面62bが、上下方向に沿うようにして形成されている(図13参照)。この側面62bは、回転移動する回転片部69の先端69aと当接して、ピストンロッド67のさらなる回転移動を規制するストッパ面63bを構成することとなる。
【0048】
また、ガイド用凹部62における側面62b(ストッパ面63b)の下端側には、ストッパ面63bから軸回り方向に沿って突出する板状の突出壁部64が、形成されている(図13,14参照)。この突出壁部64は、中心側への張り出し寸法t3(図14参照)を、厚肉部60bの中心側への張り出し寸法(段差60cにおけるシリンダ59の軸直交方向側の幅寸法)と一致させて、回転片部69の先端69aの下面側を当接可能に構成されるもので、ストッパ面63bに当接した回転片部69が、下降移動するのを防止可能なように、略水平方向に沿って形成されている。そして、第2実施形態の場合、この突出壁部64の上面64aが、回転片部69の先端69aを係止する係止面を構成することとなり、第2実施形態のアクチュエータA2では、図17のBに示すように、この回転片部69を、係止部として、突出壁部64の上面(係止面)64aに係止させることにより、ピストンロッド67の下降移動を規制する構成である。
【0049】
本体60の上端側における厚肉部60bの内周面側には、キャップ35Aに設けられた雄ねじ35bに螺合される雌ねじ60dが、形成されている。また、本体60の下端側における薄肉部60aの外周面側には、キャップ37Aの周壁部39Aに設けられた雌ねじ39aを螺合させる雄ねじ60eが、形成されている(図12参照)。
【0050】
ピストンロッド67は、図12に示すように、シリンダ59内において摺動可能に収納されるピストン部68と、ピストン部68から延びる支持ロッド部49と、シリンダ59に設けられたガイド面63にガイドされる回転片部69と、から、構成されている。支持ロッド部49は、前述のアクチュエータA1における支持ロッド部49と同様の構成であり、同一の部材には同一の図符号を付して説明を省略する。ピストン部68は、シリンダ59の摺動部61に対して摺動可能な略円柱状とされている(図12,13,15参照)。
【0051】
回転片部69は、支持ロッド部49の軸部49aにおいて、ピストン部68の近傍となる位置に形成されるもので、丸棒状として、それぞれ、軸方向を、ピストンロッド67の移動方向(軸部49aの軸方向)と直交させるように、軸部49aから左右両側に突出するような2箇所に、形成されている(図15参照)。実施形態の場合、各回転片部69は、長さ寸法(軸部49aからの突出量)L3(図15参照)を、ピストン部68の半径より小さくしてピストン部68の外周縁から突出させず、かつ、上昇移動後に、先端69aの上面69bを、シリンダ59側に設けられたガイド面63に当接可能とするような、寸法に設定されている。さらに、回転片部69は、ピストン部68の上面68bから上面69bまでの距離L5(図16参照)を、ガイド用凹部62における側面62b側の段差60cからの距離L4(図14参照)より大きくして、回転片部69がガイド面63にガイドされて上昇移動した際に、図16のB及び図17のAに示すごとく、ピストン部68の上面68bが厚肉部60bの下端面(突出壁部64)と当接しないように、構成されている。
【0052】
そして、この回転片部69は、ピストンロッド67が上昇移動して、シリンダ59に設けられたガイド面63に先端69aの上面69b側を当接させると(図16のA参照)、ガス発生器41から発生するガスGの押圧力を受けて、時計回り方向に沿って上昇するように傾斜しているガイド面63に沿って移動することとなり、この回転片部69のガイド面63の先端63aに向かう移動を受けて、ピストンロッド67全体が、シリンダ59に対して時計回り方向(軸回り方向)に沿って回転移動しつつ、上昇移動することとなる(図16のB及び図17のA参照)。実施形態の場合、回転片部69は、ピストンロッド67を時計回り方向に略90°回転させるように、移動することとなる(図15参照)。そして、回転片部69が、ガイド面63の先端63a側に形成されたストッパ面63bと当接すれば、ピストンロッド67の回転移動が停止されることとなる。ピストンロッド67の回転移動後に、ガス発生器41からのガスGの発生が停止されて、ピストン部68の底面68a側にガスGの押圧力が作用しなくなれば、ピストンロッド67は、下方に向かって移動することとなるが、回転片部69の下方に形成される突出壁部64の上面64a(係止面)に、回転片部69の下面側が係止されて、ピストンロッド67の下降移動を規制されることとなる(図17のB参照)。
【0053】
第2実施形態のアクチュエータA2においても、作動時、ガス発生器41からガスGが発生すれば、このガスGがシリンダ59内に流入されて充満されることとなり、シリンダ59内に収納されたピストンロッド67が、図12のBに示すごとく、ピストン部68の底面68a側をガスGに押されて、上昇移動することとなる。そして、上昇移動するピストンロッド67に設けられた回転片部69が、上昇移動完了直前に、シリンダ59の内周面側に形成されるガイド面63に当接すると(図16のA参照)、回転片部69がガイド面63に沿って移動することとなり、この回転片部69の移動に伴って、ピストンロッド67が、シリンダ59に対して、軸回り方向に沿って回転しつつ上昇移動することとなる(図16のB及び図17のA参照)。その後、ピストンロッド67に設けられた係止部としての回転片部69が、シリンダ59の内周面に設けられた係止面としての突出壁部64の上面64aに対応する位置に配置されるまで、ピストンロッド67が軸回り方向に沿って回転しつつ上昇移動すれば、回転片部69が突出壁部64の上面64aに係止され、この係止部としての回転片部69により、ピストンロッド67が後退移動を規制されることとなる。すなわち、第2実施形態のアクチュエータA2においても、ピストンロッド67を、シリンダ59に対して、上昇移動時の移動方向(軸方向)と交差する軸回り方向に沿って回転移動させた後に、シリンダ59側に設けられる突出壁部64の上面64aに、回転片部69を係止させることにより、ピストンロッド67の下降移動を規制していることから、突出壁部64の上面64aによって回転片部69を安定して係止させることができ、ピストンロッド67の作動後の下降移動を確実に防止することができる。そのため、第2実施形態のアクチュエータA2においても、上昇移動させたピストンロッド67により、受止材としての図示しないフードパネルを安定して支持させることができる。また、第2実施形態のアクチュエータA2においても、ピストンロッド67の上昇移動の完了直前に、突出壁部64の上面64aによって回転片部69を係止させる構成であることから、作動時におけるピストンロッド67の所定の移動ストロークを、安定して確保することができる。
【0054】
したがって、第2実施形態のアクチュエータA2においても、作動時のピストンロッド67が、所定の移動ストロークを安定して確保でき、かつ、受止材としての図示しないフードパネルを安定して支持することができる。
【0055】
また、第2実施形態のアクチュエータA2では、ピストンロッド67のピストン部68を略円柱状としていることから、ピストン部68を摺動させるシリンダ58の摺動部61を円筒形状とすることができて、第1実施形態のアクチュエータA1のごとく、ピストン部47を非円柱状とする場合と比較して、シリンダ58及びピストン部68の製造コストを低減させることができる。また、第2実施形態のアクチュエータA2では、回転片部69自体を係止面としての突出壁部64の上面64aに係止させており、回転片部と係止部とを兼用している構成であることから、係止部を別途形成しなくともよく、アクチュエータA2の構成を簡便にすることができる。
【0056】
なお、実施形態のアクチュエータA1,A2では、ピストンロッド46,67における支持ロッド部49の軸部49bに、回転片部50,69を配設させているが、回転片部の配置位置はこれに限られるものではなく、シリンダの摺動部に、回転片部を挿通可能な凹溝を形成すれば、回転片部を、ピストン部の外周面から突出させるように、構成してもよい。
【0057】
また、実施形態では特に明示はしていないが、ピストンロッド46,67における支持ロッド部49の軸部49aは、フードパネル15が歩行者を受け止めて塑性変形する際に、歩行者の運動エネルギーを吸収可能に塑性変形させるように構成してもよい。
【0058】
さらに、実施形態では、前進移動を上昇させる移動とし、後退移動を下降させる移動として、フードパネル15の後端15cを上昇移動させるための上昇装置Uに、アクチュエータA1,A2を使用しているが、アクチュエータの作動方向や、本発明のアクチュエータを適用可能な自動車用安全装置はこれに限定されるものではなく、水平方向を作動方向とする自動車用安全装置に、本発明のアクチュエータを使用してもよい。
【0059】
なお、第1,第2実施形態のアクチュエータA1,A2では、ガス発生器41の作動時に発生するガスGを駆動源として、ピストンロッド46,67を移動させているが、駆動源を構成する作動用流体としては、ガスに限られるものではなく、水や油等を利用してもよい。さらには、ピストンロッド46,67を移動させる駆動源として、流体を使用しなくともよく、例えば、駆動源として、ソレノイドの吸引力を利用したり、圧縮させたばねの付勢力(復元力)を利用することができる。駆動源としてソレノイドの吸引力を使用する場合には、ピストンロッドを可動鉄心から構成して、シリンダ内に配置させ、シリンダ内のピストンロッドの周囲に、励磁コイルを配置させ、この励磁コイルに通電すれば、ピストンロッドを前進移動させることができる。また、駆動源としてばねを利用する場合には、圧縮させたコイルばねの自由端側にピストンロッドを接続させるとともに、引き込み可能にソレノイド等から構成されるストッパで、ピストンロッドもしくは圧縮コイルばねの自由端を係止させておき、係止を解除させるようにストッパを引き込ませれば、ピストンロッドを圧縮コイルばねの復元する付勢力により、前進移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第1実施形態であるアクチュエータを使用した歩行者保護装置を搭載した車両の斜視図である。
【図2】第1実施形態のアクチュエータを使用した歩行者保護装置を搭載させた車両の部分拡大平面図である。
【図3】実施形態の歩行者保護装置における車両前後方向に沿った概略縦断面図であり、図2のIII−III部位に対応する。
【図4】実施形態の歩行者保護装置の作動時を示す概略縦断面図である。
【図5】第1実施形態のアクチュエータの概略断面図であり、作動前と作動完了時とを示す。
【図6】図5のVI−VI部位の断面図である。
【図7】第1実施形態のアクチュエータにおいて、ピストンロッドと、シリンダの収納凹部の部位と、を示す概略分解斜視図である。
【図8】第1実施形態のアクチュエータにおいて、シリンダの収納凹部を構成する大径部の車両前後方向に沿った断面図であり、図9のVIII−VIII部位に対応する。
【図9】第1実施形態のアクチュエータにおいて、シリンダの収納凹部の部位の概略横断面図であり、ピストンロッドの回転前と回転後とを示す。
【図10】第1実施形態のアクチュエータにおいて、シリンダの収納凹部の部位を示す左右方向に沿った概略縦断面図であり、ピストンロッドの回転前と回転後とを示す。
【図11】第1実施形態のアクチュエータにおいて、シリンダの収納凹部の部位を示す前後方向に沿った概略縦断面図であって、図10のXI−XI部位に対応する図であり、ピストンロッドの回転後と下降移動後とを示す。
【図12】本発明の第2実施形態であるアクチュエータの概略断面図であり、作動前と作動完了時とを示す。
【図13】第2実施形態のアクチュエータにおいて、ピストンロッドと、シリンダにおける本体の上端側の部位と、を示す概略分解斜視図である。
【図14】第2実施形態のアクチュエータにおいて、シリンダの本体の上端側の部位の車両前後方向に沿った断面図であり、図15のXIV−XIV部位に対応する。
【図15】第2実施形態のアクチュエータにおいて、シリンダの本体の上端側の部位の概略横断面図であり、ピストンロッドの回転前と回転後とを示す。
【図16】第2実施形態のアクチュエータにおいて、シリンダの本体の上端側の部位を示す左右方向に沿った概略縦断面図であり、ピストンロッドの回転前と回転後とを示す。
【図17】第2実施形態のアクチュエータにおいて、シリンダの本体の上端側の部位を示す前後方向に沿った概略縦断面図であって、図16のXVII−XVII部位に対応する図であり、ピストンロッドの回転後と下降移動後とを示す。
【符号の説明】
【0061】
15…フードパネル(受止材)、
23,59…シリンダ、
24,60…本体、
25,61…摺動部、
26…収納凹部、
30…係止面、
31,62…ガイド用凹部、
32,63…ガイド面、
41…ガス発生器、
46,67…ピストンロッド、
47,68…ピストン部、
47b…縁部側部位、
48…係止部、
49…支持ロッド部、
49a…軸部、
49b…頭部、
50,69…回転片部、
52…取付ブラケット、
55…受け座、
64…突出壁部、
64a…上面(係止面)、
M…歩行者保護装置、
R1,R2…ロック機構、
U…上昇装置、
V…車両、
A1,A2…アクチュエータ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車安全装置に使用されて、
筒状のシリンダ内に配置されたピストンロッドを、作動時に、前進移動させるピストンシリンダタイプとして、構成されるとともに、
前進移動した前記ピストンロッドの後退移動を規制するロック機構を備えて構成され、さらに、
前記シリンダの先端壁部から突出した前記ピストンロッドの先端が、保護対象物を受け止める受止材を支持するように、該受止材に連結される構成のアクチュエータであって、
前記ロック機構が、
前記ピストンロッドの移動方向と略直交するように前記ピストンロッドから突設される回転片部と、
前記シリンダの内周面側に形成されて、前進移動を完了させる直前の前記ピストンロッドを、前記シリンダに対して、軸回り方向に沿って回転可能とするように、前記回転片部をガイド可能なガイド面と、
前記ピストンロッドに形成される係止部と、
前記シリンダの内周面における前記ピストンロッドの前進移動完了時の配置位置に形成されて、回転移動後の前記係止部を係止可能な係止面と、
を、備える構成とされて、
前記回転片部を、前記ピストンロッドの前進移動時に、前記ガイド面に沿って移動させることにより、前記ピストンロッドを、前記シリンダに対して、軸回り方向に沿って回転させつつ前進移動させて、前記係止部を、前記係止面に係止させることにより、前記ピストンロッドの後退移動を規制するように、構成されていることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記ピストンロッドが、ピストン部と、該ピストン部から延びて前記受止材を支持可能な支持ロッド部と、から構成されて、
前記ピストン部が、断面形状を非円形とした柱状とされ、
前記シリンダが、
前記ピストン部を摺動可能な摺動部と、
前記先端壁部と前記摺動部との間に配置されるとともに、前進移動完了後の前記ピストン部を収納させるように、内径寸法を前記摺動部より大きくして構成される収納凹部と、
を備えて、
前記ピストン部が、外周縁近傍の部位を前記係止部として、前進移動完了後に、前記収納凹部における前記摺動部の開口周縁の面から構成される前記係止面により、底面側を係止されて、前記ピストンロッドの後退移動を規制する構成であることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記ピストンロッドが、ピストン部と、該ピストン部から延びて前記受止材を支持可能な支持ロッド部と、から構成されて、
前記ピストン部が、略円柱状とされて、
前記シリンダが、前記ガイド面における前記回転片部の移動方向の先端側に、回転移動後の前記回転片部を係止するとともに、前記回転片部の後退移動方向側を係止可能な係止面を備え、
前記回転片部を、前記係止部として前記係止面に係止させることにより、前記ピストンロッドの後退移動が、規制されていることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項1】
自動車安全装置に使用されて、
筒状のシリンダ内に配置されたピストンロッドを、作動時に、前進移動させるピストンシリンダタイプとして、構成されるとともに、
前進移動した前記ピストンロッドの後退移動を規制するロック機構を備えて構成され、さらに、
前記シリンダの先端壁部から突出した前記ピストンロッドの先端が、保護対象物を受け止める受止材を支持するように、該受止材に連結される構成のアクチュエータであって、
前記ロック機構が、
前記ピストンロッドの移動方向と略直交するように前記ピストンロッドから突設される回転片部と、
前記シリンダの内周面側に形成されて、前進移動を完了させる直前の前記ピストンロッドを、前記シリンダに対して、軸回り方向に沿って回転可能とするように、前記回転片部をガイド可能なガイド面と、
前記ピストンロッドに形成される係止部と、
前記シリンダの内周面における前記ピストンロッドの前進移動完了時の配置位置に形成されて、回転移動後の前記係止部を係止可能な係止面と、
を、備える構成とされて、
前記回転片部を、前記ピストンロッドの前進移動時に、前記ガイド面に沿って移動させることにより、前記ピストンロッドを、前記シリンダに対して、軸回り方向に沿って回転させつつ前進移動させて、前記係止部を、前記係止面に係止させることにより、前記ピストンロッドの後退移動を規制するように、構成されていることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記ピストンロッドが、ピストン部と、該ピストン部から延びて前記受止材を支持可能な支持ロッド部と、から構成されて、
前記ピストン部が、断面形状を非円形とした柱状とされ、
前記シリンダが、
前記ピストン部を摺動可能な摺動部と、
前記先端壁部と前記摺動部との間に配置されるとともに、前進移動完了後の前記ピストン部を収納させるように、内径寸法を前記摺動部より大きくして構成される収納凹部と、
を備えて、
前記ピストン部が、外周縁近傍の部位を前記係止部として、前進移動完了後に、前記収納凹部における前記摺動部の開口周縁の面から構成される前記係止面により、底面側を係止されて、前記ピストンロッドの後退移動を規制する構成であることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記ピストンロッドが、ピストン部と、該ピストン部から延びて前記受止材を支持可能な支持ロッド部と、から構成されて、
前記ピストン部が、略円柱状とされて、
前記シリンダが、前記ガイド面における前記回転片部の移動方向の先端側に、回転移動後の前記回転片部を係止するとともに、前記回転片部の後退移動方向側を係止可能な係止面を備え、
前記回転片部を、前記係止部として前記係止面に係止させることにより、前記ピストンロッドの後退移動が、規制されていることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−208695(P2009−208695A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−55553(P2008−55553)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】
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