説明

アクティブマトリクス装置、スイッチング素子の製造方法、電気光学表示装置、および電子機器

【課題】省電力化を図りつつ、開口率をより向上させることができるアクティブマトリクス装置、スイッチング素子の製造方法、電気光学表示装置、および電子機器を提供すること。
【解決手段】本発明のアクティブマトリクス装置10は、基板50の一方の面側に設けられた複数の画素電極8と、各画素電極8に対応して設けられ、画素電極8に接続された固定電極3と、固定電極3に対向して設けられ、固定電極3側へ変位可能な可動電極5と、可動電極5に静電ギャップを介して対向して設けられた駆動電極2とを備えるスイッチング素子1と、各可動電極5に接続された第1の配線11と、各駆動電極2に接続された第2の配線12とを有し、固定電極3、可動電極5および駆動電極2は、基板50の板面に沿った方向で互いに異なる位置に配置され、可動電極5は、基板50の板面に沿った方向で固定電極3側に変位するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクティブマトリクス装置、スイッチング素子の製造方法、電気光学表示装置、および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、アクティブマトリクス駆動方式を採用するLCD(Liquid Crystal Display)パネルには、複数の画素電極と、前記各画素電極に対応して設けられたスイッチング素子と、各スイッチング素子に接続された配線とを備えるアクティブマトリクス装置が設けられている(例えば、特許文献1参照。)。
一般に、アクティブマトリクス装置では、スイッチング素子としてTFTが用いられている。TFTは、その半導体層にa−Si薄膜やp−Si薄膜が用いられるが、これらは光導電性を有しているため、光が入射すると、光リークが生じ、TFTのオフ抵抗が低下したり、TFTの閾値がシフトしたりするおそれがある。
【0003】
前述したような光リークによる問題を解決するには、一般に、TFTへの光を遮光するブラックマトリクスのような遮光層を設ける手法が採られるが、このような遮光層を設けると、パネルの開口率が低くなり、パネルを通過する光量が少なくなってしまう。
そこで、特許文献1にかかるアクティブマトリクス装置(電気光学表示装置用バックプレーン)では、前述したようなTFTに代えてメカニカルなスイッチング素子を用いている。このようなメカニカルなスイッチング素子は光リークが生じない。そのため、遮光層を設ける必要がなく、開口率を大きくすることができる。また、メカニカルなスイッチング素子は、TFTのような温度による特性変動を生じないため、優れたスイッチング特性を有する。
【0004】
特許文献1にかかるスイッチング素子では、片持ばりにアクチュエータ電極が対向して設けられ、アクチュエータ電極に通電することにより、アクチュエータ電極と片持ばりとの間に静電引力を生じさせ、片持ばりを変位させて画素電極と接触させる。これにより、画素電極と配線とを導通状態とすることができる。
しかしながら、かかるアクティブマトリクス装置では、各スイッチング素子が基板上に設けられているが、各スイッチング素子に備えられた片持ばりが板状をなし、その板面が基板の板面に平行となっているため、片持ばりの板面の面積分だけ開口率が低下してしまう。そのため、かかるアクティブマトリクス装置は、メカニカルなスイッチング素子を用いることによる効果(開口率の向上)を十分に発揮することができなかった。
仮に、開口率を大きくするために片持ばりの板面の面積を小さくすると、片持ばりとアクチュエータ電極との対向面積の減少に伴って、これらの間に生じる静電引力も小さくなってしまうため、スイッチング素子の駆動電圧を大きくする必要がある。
【0005】
【特許文献1】特開2004−6782号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、省電力化を図りつつ、開口率をより向上させることができるアクティブマトリクス装置、スイッチング素子の製造方法、電気光学表示装置、および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明のアクティブマトリクス装置は、基板の一方の面側に設けられた複数の画素電極と、
前記各画素電極に対応して設けられ、前記画素電極に接続された固定電極と、前記固定電極に対し接触/離反するように変位可能に設けられた可動電極と、前記可動電極に静電ギャップを介して設けられた駆動電極とを備えるスイッチング素子と、
前記各可動電極に接続された第1の配線と、
前記各駆動電極に接続された第2の配線とを有し、
前記可動電極と前記駆動電極との間に電圧を印加することにより、前記可動電極と前記駆動電極との間に静電引力を生じさせ、これにより、前記可動電極を変位させて、前記可動電極と前記固定電極とを接触させ、前記第1の配線と前記画素電極とを導通状態とするように構成され、
前記固定電極、前記可動電極および前記駆動電極は、前記基板の板面に沿った方向で互いに異なる位置に配置され、前記可動電極は、前記基板の板面に沿った方向で前記固定電極側に変位するように構成されていることを特徴とする。
これにより、省電力化を図りつつ、開口率をより向上させることができるアクティブマトリクス装置を提供することができる。
【0008】
本発明のアクティブマトリクス装置では、前記固定電極、前記可動電極、および前記駆動電極は、それぞれ、薄板状をなし、その板面が前記基板の板面に対しほぼ直角となるように設置されていることが好ましい。
これにより、基板を平面視したときに、可動電極と固定電極と駆動電極とのそれぞれの面積を極めて小さくすることができる。その結果、極めて高い開口率を得ることができる。
【0009】
本発明のアクティブマトリクス装置では、前記固定電極、前記可動電極、および前記駆動電極は、それぞれ、前記第1の配線または前記第2の配線に平行な方向に延在していることが好ましい。
これにより、基板を平面視したときに、スイッチング素子と画素電極とが重なる領域の面積を小さくすることができる。その結果、開口率を向上させることができる。
【0010】
本発明のアクティブマトリクス装置では、前記可動電極は、片持ち支持され、その自由端側が変位するように構成され、前記固定電極は、前記可動電極の自由端側の端部に対向するように設置され、前記駆動電極は、前記固定電極よりも前記可動電極の固定端側の部分に対向するように設置されていることが好ましい。
これにより、スイッチング素子の構造を簡単なものとすることができる。また、駆動電極が可動電極の固定端側に対向するため、可動電極が駆動電極側に変位(曲げ変形)したときに、可動電極が元の状態に復帰しようとする反力が大きい。そのため、駆動電極と可動電極との固着を確実に防止することができる。
【0011】
本発明のアクティブマトリクス装置では、前記固定電極と前記可動電極と前記駆動電極とは、前記可動電極と前記駆動電極とが離間した状態のまま、前記可動電極が前記固定電極に接触するように配設されていることが好ましい。
これにより、可動電極と駆動電極との固着を防止することができる。
本発明のアクティブマトリクス装置では、前記可動電極と前記固定電極との対向面のうちの少なくとも一方の面上には、前記可動電極と前記駆動電極との接触を阻止するように突起が形成されていることが好ましい。
これにより、より確実かつ簡単に、可動電極と駆動電極とが離間した状態のまま、可動電極と固定電極とを接触させることができる。
【0012】
本発明のアクティブマトリクス装置では、前記各スイッチング素子毎に前記可動電極と前記駆動電極と前記固定電極とを収納する収納部を有し、該収納部が気密空間を形成していることが好ましい。
これにより、スイッチング素子の各部の劣化を防止することができる。そのため、長期にわたり優れたスイッチング特性を発揮することができる。
【0013】
本発明のアクティブマトリクス装置では、前記複数の画素電極は、前記複数のスイッチング素子に対し前記基板の厚さ方向にて異なる位置に設けられ、前記各画素電極は、平面視したときに、対応する前記スイッチング素子を包含するように設置されていることが好ましい。
これにより、開口率を向上させることができる。
本発明のアクティブマトリクス装置では、前記第1の配線は、前記基板に沿って互いに平行に複数設けられ、前記第2の配線は、前記各第1の配線に交差するとともに、前記基板に沿って互いに平行に複数設けられ、前記各スイッチング素子は、前記各第1の配線と前記各第2の配線との交点付近に設けられていることが好ましい。
これにより、マトリクス状に配列された複数の画素電極に対応して複数のスイッチング素子を配列することができる。
【0014】
本発明のスイッチング素子の製造方法は、本発明のアクティブマトリクス装置に備えられたスイッチング素子の製造方法であって、
前記基板の一方の面側に、前記基板の板面に垂直な壁面を備える段差部を形成する工程と、
前記壁面上に第1の電極を形成する工程と、
前記第1の電極を覆うように、絶縁性を有する絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層を介して前記第1の電極に対向するように、前記絶縁層上に第2の電極を形成する工程と、
前記絶縁層の一部を除去して、前記第1の電極と前記第2の電極との間に静電ギャップを形成とするとともに、前記第2の電極を前記第1の電極に対し接触/離反するように変位可能とする工程とを有し、
前記第1の電極を前記駆動電極とし、前記第2の電極を前記可動電極とすることを特徴とする。
【0015】
駆動電極と可動電極とを同一層から形成した場合、駆動電極と可動電極との間の距離は、フォトリソグラフィーを用いて形成し得るラインまたはスペースの最小幅により限界があり、その最小幅内にスイッチング素子を1つしか形成することができない。これに対し、本発明のスイッチング素子の製造方法によれば、駆動電極と可動電極との間の距離は、フォトリソグラフィーを用いて形成し得るラインまたはスペースの最小幅により制限されずに、その最小幅内に、2つのスイッチング素子を形成することができる。したがって、本発明のスイッチング素子を用いて周辺回路等を形成した場合、そのデザインサイズを縮小化することができる。
【0016】
また、絶縁層の厚さで可動電極と駆動電極との間の距離(すなわち静電ギャップ)の大きさを規定することができる。そのため、静電ギャップを小さくすることができる。その結果、スイッチング素子の駆動電圧を低減することができ、また、スイッチング素子の設置スペースが小さく、アクティブマトリクス装置の設計自由度を高めることができる。また、可動電極と駆動電極との間の距離を高精度に規定することができ、その結果、安定したスイッチング特性を実現することができる。
【0017】
本発明の電気光学表示装置は、本発明のアクティブマトリクス装置を備えることを特徴とする。
これにより、省電力化を図りつつ、高品位な画像を表示することができる。
本発明の電子機器は、本発明の電気光学表示装置を備えることを特徴とする。
これにより、省電力化を図りつつ、高品位な画像を表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明のアクティブマトリクス装置、電気光学表示装置、スイッチング素子の製造方法、および電子機器の好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態にかかるアクティブマトリクス装置を示す平面図、図2は、図1中のA−A線断面図、図3は、図1に示すアクティブマトリクス装置に備えられたスイッチング素子を説明するための拡大平面図、図4は、図3に示すスイッチング素子を説明するための斜視図、図5は、図3に示すスイッチング素子の作動を説明するための図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、図1中の紙面手前側を「上」、紙面奥側を「下」、右側を「右」、左側を「左」と言い、図2中および図4中の上側を「上」、下側を「下」、右側を「右」、左側を「左」と言う。
【0019】
(アクティブマトリクス装置)
図1に示すアクティブマトリクス装置10は、複数の第1の配線11と、この複数の第1の配線11に交差するように設けられた複数の第2の配線12と、各第1の配線11と各第2の配線12との交点付近に設けられた複数のスイッチング素子1と、各スイッチング素子1に対応して設けられた複数の画素電極8とを有し、これらが基板50上に設けられている。
【0020】
基板50は、アクティブマトリクス装置10を構成する各部(各層)を支持するもの(支持体)である。
基板50には、例えば、ガラス基板、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルホン(PES)、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)等で構成されるプラスチック基板(樹脂基板)、石英基板、シリコン基板、ガリウム砒素基板等を用いることができる。
【0021】
また、基板50の平均厚さは、その構成材料等によって若干異なり、特に限定されないが、10〜2000μm程度であるのが好ましく、30〜300μm程度であるのがより好ましい。基板50の厚さが薄すぎると、基板50の強度が低下し、支持体としての機能が損なわれるおそれがあり、一方、基板50の厚さが厚過ぎると、軽量化の観点から好ましくない。
【0022】
複数の第1の配線11は、基板50に沿って互いに平行に設けられ、複数の第2の配線12は、各第1の配線11に交差するとともに、基板50に沿って互いに平行に設けられている。
本実施形態では、複数の第1の配線11と複数の第2の配線12は、互いに直交するように配列されている。そして、複数の第1の配線11は、行選択のためのものであり、複数の第2の配線12は、列選択のためのものである。すなわち、第1の配線11および第2の配線12のうち、一方がデータ線であり、他方が走査線である。このような複数の第1の配線11と複数の第2の配線12を用いて行選択および列選択を行うことにより、選択的に所望のスイッチング素子1を作動(可動電極5と駆動電極2との間に電圧を印加)させることができる。
【0023】
このように配列された各第1の配線11と各第2の配線12との交点付近に各スイッチング素子1を設けることで、マトリクス状に配列された複数の画素電極8に対応して複数のスイッチング素子1を配列することができる。
このような各第1の配線11および各第2の配線12の構成材料は、それぞれ、導電性を有するものであれば、特に限定されず、例えば、Pd、Pt、Au、W、Ta、Mo、Al、Cr、Ti、Cuまたはこれらを含む合金等の導電性材料、ITO、FTO、ATO、SnO等の導電性酸化物、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン等の炭素系材料、ポリアセチレン、ポリピロール、PEDOT(poly−ethylenedioxythiophene)のようなポリチオフェン、ポリアニリン、ポリ(p−フェニレン)、ポリフルオレン、ポリカルバゾール、ポリシランまたはこれらの誘導体等の導電性高分子材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、前述した導電性高分子材料は、通常、酸化鉄、ヨウ素、無機酸、有機酸、ポリスチレンサルフォニック酸などの高分子でドープされ導電性を付与された状態で用いられる。これらの中でも、各第1の配線11および各第2の配線12の構成材料としては、それぞれ、Al、Au、Cr、Ni、Cu、Ptまたはこれらを含む合金を主とするものが好適に用いられる。これらの金属材料を用いると、電解あるいは無電解メッキ法を用いて、容易かつ安価に各第1の配線11および各第2の配線12を形成することができる。また、アクティブマトリクス装置10の特性を向上することができる。
【0024】
図2に示すように、本実施形態では、基板50の一方の面(上面)上には、スイッチング素子1の各部を形成するための第1の絶縁層41が設けられている。
そして、この第1の絶縁層41上には、後述するスイッチング素子1の各電極と接続するための端子61、62、63が設けられているとともに、これらの端子61、62、63を覆うように第2の絶縁層71が設けられている。
【0025】
さらに、この第2の絶縁層71上には、前述した複数の第2の配線12が設けられているとともに、この複数の第2の配線12を覆うように第3の絶縁層72が設けられている。
また、この第3の絶縁層72上には、前述した複数の第1の配線11が設けられているとともに、この複数の第1の配線を覆うように第4の絶縁層73が設けられている。
【0026】
これらの絶縁層41、71、72、73は、それぞれ、一部が除去されていて、後述するスイッチング素子1の駆動部分を収納する収納部(除去部)13が形成されている。
また、第2の絶縁層71には、端子61と第1の配線11との接続のための貫通電極111と、端子62と画素電極8との接続のための貫通電極部81と、端子63と第2の配線12との接続のための貫通電極部121とがそれぞれ貫通している。
【0027】
また、第3の絶縁層72には、端子61と第1の配線11との接続のための貫通電極111と、端子62と画素電極8との接続のための貫通電極部81とがそれぞれ貫通している。
また、第4の絶縁層73には、端子62と画素電極8との接続のための貫通電極部81が貫通している。
【0028】
このような絶縁層41、71、72、73の構成材料としては、それぞれ、絶縁性を有するものであれば、特に限定されず、各種有機材料(特に有機高分子材料)や、各種無機材料を用いることができる。
絶縁性を有する有機材料としては、例えば、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリビニルフェニレン、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)のようなアクリル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなフッ素系樹脂、ポリビニルフェノールあるいはノボラック樹脂のようなフェノール系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブテンなどのオレフィン系樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
一方、絶縁性を有する無機材料としては、例えば、シリカ(SiO)、窒化珪素、酸化アルミ、酸化タンタル等の金属酸化物、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコニウムチタン酸鉛等の金属複合酸化物が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
各画素電極8は、前述した基板50の一方の面側に設けられ、アクティブマトリクス装置10を用いて後述する液晶パネル100を構築した際に、各画素を駆動させるための電圧を印加する一方の電極を構成するものである。
【0030】
本実施形態では、平面視にて、互いに隣接する2つの第1の配線11と、互いに隣接する2つの第2の配線12とで囲まれた領域内に、画素電極8が設けられている。
特に、複数の画素電極8は、複数のスイッチング素子1に対し基板50の厚さ方向にて異なる位置(上方)に設けられ、各画素電極8は、平面視したときに、対応するスイッチング素子1を包含するように設置されている。これにより、各画素電極8の面積を最大限大きくすることができ、開口率を向上させることができる。
【0031】
画素電極8の構成材料としては、例えば、Ni、Pd、Pt、Li、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb、Ag、Cu、Co、Al、Cs、Rb等の金属、これらを含むMgAg、AlLi、CuLi等の合金、ITO(Indium Tin Oxide)、SnO2、Sb含有SnO2、Al含有ZnO等の酸化物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。特に、アクティブマトリクス装置10を後述するような透過型の液晶パネル100に組み込む場合には、画素電極8の構成材料としては、前述したものの中でも、透明材料が選択される。
【0032】
また、各画素電極8の下面(基板50側の面)の一部は、前述した収納部13の壁面の一部を構成しており、各画素電極8には、後述する製造工程において収納部13を形成するに際しエッチング液を供給するための貫通孔(図示せず)が形成されている。この貫通孔は、封止層9によって封止されている。
封止層9の構成材料は、上記貫通孔を封止する機能を有するものであれば、特に限定されず、各種有機材料、各種無機材料を用いることができるが、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリビニルアルコール、ポリテトラフルオロエチレン等の高分子材料を用いるのが好ましい。これにより、後述する液晶パネル100のように配光膜を兼ねることができる。
【0033】
このような各画素電極8には、各画素電極8に対応して設けられたスイッチング素子1が前述した端子62および貫通電極部81を介して接続されている。このスイッチング素子1の作動を制御することにより、後述する液晶パネル100において各画素の駆動が制御される。
各スイッチング素子1は、図3および図4に示すように、対応する第2の配線12に電気的に接続された駆動電極2と、対応する画素電極8に電気的に接続された固定電極3と、対応する第1の配線11に電気的に接続された可動電極(スイッチ片)5とを有している。
【0034】
以下、スイッチング素子1を構成する各部を順次詳細に説明する。
駆動電極2は、薄板状をなし、その板面が基板50の板面に対しほぼ直角となるように設けられ、平面視にてL字状をなしていて、第1の配線11に沿って延びる部分と第2の配線に沿って延びる部分とを有している。
また、駆動電極2は、基板50および画素電極8のそれぞれに対し離間している。言い換えると、駆動電極2は、収納部13の底面および上面のそれぞれに対し離間している。
【0035】
このような駆動電極2は、後述するように可動電極5に静電ギャップを介して対向して設けられている。
この駆動電極2は、可動電極5との間に電圧を印加する(電位差を生じさせる)ことにより、可動電極5との間(静電ギャップ)に静電引力を生じさせるものである。
このような駆動電極2は、前述した貫通電極部121および端子63を介して第2の配線12に電気的に接続されている。本実施形態では、駆動電極2と端子63とが一体的に形成されている。
【0036】
このような駆動電極2の構成材料は、導電性を有するものであれば、特に限定されず、例えば、前述した各第1の配線11および各第2の配線12の構成材料と同様のものを用いることができる。
また、駆動電極2の厚さは、それぞれ、特に限定されないが、10〜1000nm程度とするのが好ましく、50〜500nm程度とするのがより好ましい。
【0037】
固定電極3は、薄板状をなし、その板面が基板50の板面に対しほぼ直角となるように設けられ、平面視にて直線状をなしていて、前述した駆動電極2に間隔を隔てて設けられている。
また、固定電極3は、基板50の厚さ方向において、前述した駆動電極2とほぼ同位置に設けられている。
【0038】
この固定電極3は、可動電極5と接触することにより、第1の配線11と電気的に接続されるものである。
このような固定電極3は、前述した端子62および貫通電極部81を介して画素電極8に電気的に接続されている。
このような固定電極3の構成材料は、導電性を有するものであれば、特に限定されず、例えば、前述した各第1の配線11および各第2の配線12の構成材料と同様のものを用いることができる。
【0039】
また、固定電極3の厚さは、特に限定されないが、10〜1000nm程度とするのが好ましく、50〜500nm程度とするのがより好ましい。
可動電極5は、薄板状をなし、その板面が基板50の板面に対しほぼ直角となるように設けられ、平面視にて主に第2の配線11に沿って延びていて、前述した駆動電極2および固定電極3に対向するように設けられている。
【0040】
また、可動電極5は、基板50の厚さ方向において、前述した駆動電極2および固定電極3とほぼ同位置に設けられている。
この可動電極5は、長手形状(すなわち帯状)をなし、その長手方向での第1の配線11側の端(図3にて左側の端)51が固定され、片持ち支持されている。これにより、可動電極5は、その自由端52側が駆動電極2および固定電極3側(下側)へ変位可能となっている。
【0041】
また、可動電極5の先端部、すなわち、可動電極5の固定電極3との対向部分には、突起53が形成されている。
この突起53は、可動電極5と駆動電極2との接触を阻止するように形成され、可動電極5と駆動電極2との固着を防止する固着防止手段を構成する。これにより、可動電極5と駆動電極2とが離間した状態のまま、可動電極5が固定電極3に接触することができる。
【0042】
このようにして、可動電極5は、固定電極3に対して接触/離反するように変位可能に設けられている。
このような可動電極5の構成材料は、導電性を有するとともに、弾性変形可能なものであれば、特に限定されないが、例えば、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、シリコンカーバイトのようなシリコン材料、ステンレス鋼、チタン、アルミニウムのような金属材料、またはこれらの各材料の1種または2種以上を組み合わせた複合材料等が挙げられる。
【0043】
本実施形態では、前述したような駆動電極2、固定電極3、および可動電極5は、画素電極8と基板50との間に形成された収納部13内に収納されている。
収納部13内は、減圧状態としてもよいし、非酸化性のガスを充填してもよし、絶縁性の液体を充填してもよい。
また、このような収納部13は気密空間を形成している。これにより、スイッチング素子1の各部の劣化を防止することができる。そのため、長期にわたり優れたスイッチング特性を発揮することができる。また、可動電極5の外部からの影響を防止するため、スイッチング素子は1安定した駆動特性を発揮することができる。また、各スイッチング素子1毎に収納部13が設けられているので、スイッチング素子1間の影響も防止することができる。
【0044】
このような各スイッチング素子1では、可動電極5と駆動電極2との間に電圧が印加されていないときには、図3および図4に示すように、可動電極5と固定電極3とが離間していて第1の配線11から画素電極8への通電が遮断状態となっている。
そして、可動電極5と駆動電極2との間に電圧が印加されることにより、可動電極5と駆動電極2との間に静電引力を生じさせ、図5に示すように、可動電極5と固定電極3とを接触させて第1の配線11から画素電極8への通電を導通状態とする。
【0045】
このようなメカニカルなスイッチング素子1は、TFTに比し優れた耐光性を有する。また、かかるスイッチング素子1は、TFTのような光リークを生じない。そのため、スイッチング素子1を遮光するためのブラックマトリクスのような遮光層を設ける必要がなく、アクティブマトリクス装置10における開口率を大きくすることができる。また、かかるスイッチング素子1は、温度による特性変動がないため、アクティブマトリクス装置10の冷却機構を簡易化することができる。さらに、かかるスイッチング素子1は、TFTに比し高速にスイッチング動作させることができる。
【0046】
以上説明したようなスイッチング素子1では、固定電極3、可動電極5および駆動電極2が基板50の板面に沿った方向で互いに異なる位置に配置され、可動電極5が基板50の板面に沿った方向で固定電極3側に変位するように構成されている。
このように構成することで、前述したように各電極の電極面の面積(特に、可動電極5と駆動電極2との対向面の面積)を大きくしても、平面視での各電極の面積を抑えることができる。そのため、スイッチング素子1の駆動電圧を大きくすることなく、開口率を向上させることができる。すなわち、省電力化を図りつつ、メカニカルなスイッチング素子を用いる利点を最大限発揮させ、開口率をより向上させることができる。
【0047】
特に、本実施形態では、固定電極3、可動電極5、および駆動電極2は、それぞれ、薄板状をなし、その板面が基板50の板面に対しほぼ直角となるように設置されているため、基板50を平面視したときに、可動電極5と固定電極3と駆動電極2とのそれぞれの面積を極めて小さくすることができる。その結果、極めて高い開口率を得ることができる。
しかも、固定電極3、可動電極5、および駆動電極2は、それぞれ、第1の配線11または第2の配線12に平行な方向に延在しているため、基板50を平面視したときに、スイッチング素子1と画素電極8とが重なる領域の面積を小さくすることができる。その結果、開口率を向上させることができる。
【0048】
ここで、前述したように、可動電極5は、片持ち支持され、その自由端52側が変位するように構成され、固定電極2は、可動電極5の自由端52側の端部に対向するように設置され、駆動電極3は、固定電極2よりも可動電極5の固定端51側の部分に対向するように設置されている。そして、固定電極2と駆動電極3と可動電極5とは、図5に示すように、可動電極5と駆動電極2とが離間した状態のまま、可動電極5が固定電極3に接触するようになっている。これにより、可動電極5と駆動電極5との固着を防止することができる。
【0049】
特に、前述したように可動電極5を片持ち支持した構造とすることにより、スイッチング素子1の構造を簡単なものとすることができる。また、駆動電極2が可動電極5の固定端側に対向するため、可動電極5が駆動電極2側に変位(曲げ変形)したときに、可動電極5が元の状態に復帰しようとする反力が大きい。そのため、駆動電極2と可動電極5との固着を確実に防止することができる。
【0050】
(アクティブマトリクス装置の製造方法)
次に、図6ないし図8を参照しつつ、本実施形態のアクティブマトリクス装置10の製造方法の一例を説明する。
図6ないし図8は、それぞれ、図1および図2に示すアクティブマトリクス装置の製造方法(各スイッチング素子の製造方法)を説明するための図である。なお、図6および図7は、それぞれ、左側が図3に対応する平面図を示し、右側が図2に対応する断面図を示しており、図8は、図2に対応する断面図を示している。また、以下の説明では、説明の便宜上、図6および図7中の右側の図中、および、図8中において、上側を「上」、下側を「下」、左側を「左」、右側を「右」と言う。
【0051】
アクティブマトリクス装置10の製造方法は、[A]基板50上に第1の絶縁層41となるべき第1の絶縁膜を形成する工程と、[B]駆動電極2と固定電極3と可動電極5と端子61、62、63とを形成する工程と、[C]第2の絶縁膜と第2の配線12と第3の絶縁膜と第1の配線11と第4の絶縁膜と画素電極8とをこの順で形成する工程と、[D]収納部13を形成する工程と、[E]封止層9を形成する工程とを有する。
【0052】
以下、各工程を順次詳細に説明する。
[A]
まず、基板50を用意し、この基板50上に、図6(a)に示すように、第1の絶縁膜41Aを形成する。
この第1の絶縁膜41Aは、後述する工程[F]により第1の絶縁層41となるものである。
【0053】
例えば、第1の絶縁膜41Aを有機絶縁材料で構成する場合、第1の絶縁膜41Aは、有機絶縁材料またはその前駆体を含む溶液を基板50上に塗布(供給)した後、必要に応じて、この塗膜に対して後処理(例えば加熱、赤外線の照射、超音波の付与等)を施すことにより形成することができる。
有機絶縁材料またはその前駆体を含む溶液を基板50上へ塗布(供給)する方法としては、例えば、塗布法、印刷法等を用いることができる。
また、第1の絶縁膜41Aを無機材料で構成する場合、第1の絶縁膜41Aは、例えば、熱酸化法、CVD法、SOG法等により形成することができる。また、原材料にポリシラザンを用いることで、第1の絶縁膜41Aとして、シリカ膜、窒化珪素膜を湿式プロセスで成膜することが可能である。
【0054】
[B]
−B1−
次に、図6(b)に示すように、第1の絶縁膜41A上に、溝411を形成する。これにより、第1の絶縁膜41Bが得られる。
ここで、溝411は、その底面が基板50に達しないような深さで形成する。
【0055】
この溝411は、基板50の板面に直角な側面を有する横断面形状(四角形)をなしていて、その側面は、後述するようにスイッチング素子1の各電極2、3、5を形成するための面である。
溝411の形成方法(第1の絶縁膜41Aの一部を除去する方法)としては、特に限定されず、例えば、プラズマエッチング、リアクティブイオンエッチング、ビームエッチング、光アシストエッチング等の物理的エッチング法、ウェットエッチング等の化学的エッチング法等のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
このとき、第1の絶縁膜41A上に、フォトリソグラフィー法により、溝411の形状に対応する形状の開口を有するレジスト層を形成する。このレジスト層をマスクとして用いて、第1の絶縁膜41Aの不要部分を除去する。
その後、レジスト層を除去することにより、溝411が得られる。
なお、駆動電極2および固定電極3等は、それぞれ、例えば、導電性粒子を含有するコロイド液(分散液)、導電性ポリマーを含有する液体(溶液または分散液)等の液状材料を基板50上に供給して被膜を形成した後、必要に応じて、この被膜に対して後処理(例えば加熱、赤外線の照射、超音波の付与等)を施すことにより形成することもできる。
【0057】
−B2−
次に、図7(a)に示すように、第1の絶縁膜41B上に、導電性膜64を形成する。
この導電性膜64は、スイッチング素子1の各電極2、3、5および端子61、62、63となるべきものである。
この導電性膜64の構成材料は、前述したスイッチング素子1の各電極2、3、5の構成材料を用いることができる。
【0058】
また、導電性膜64の形成方法としては、特に限定されず、プラズマCVD、熱CVD、レーザーCVDのような化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング(低温スパッタリング)、イオンプレーティング等の乾式メッキ法、電解メッキ、浸漬メッキ、無電解メッキ等の湿式メッキ法、溶射法、ゾル・ゲル法、MOD法、薄膜の接合等を用いることができる。
導電性膜64をシリコンを主材料として構成する場合、例えば、α―Si(アモルファスシリコン)材料やシリコンカーバイトをCVDで形成することができる。
【0059】
−B3−
次に、図7(b)に示すように、導電性膜64の一部(不要部分)を除去する。これにより、駆動電極2と固定電極3と可動電極5と端子61、62、63とが得られる。
導電性膜64の一部を除去する方法としては、特に限定されず、前述した工程−B1−と同様の方法を用いることができる。
【0060】
[C]
次に、図8(a)に示すように、第2の絶縁膜71Aと第2の配線12と第3の絶縁膜72Aと第1の配線11と第4の絶縁膜73Aと画素電極8とをこの順で形成する。ここで、第2の絶縁層71の形成時に、第1の絶縁膜41Bの溝411部が埋められて、第1の絶縁膜41Cが得られる。
【0061】
ここで、第2の絶縁膜71Aは、第2の絶縁層71となるべきものであり、第3の絶縁膜72Aは、第3の絶縁層72となるべきものであり、第4の絶縁膜73Aは、第4の絶縁層73となるべきものである。
第2の配線12と第1の配線11と画素電極8との形成方法は、それぞれ、特に限定されず、前述した工程[A]および工程−B1−と同様の方法を用いることができる。
【0062】
なお、前述した工程−B2−にて導電性膜64をシリコンを主材料として構成した場合、第1の配線11や導電層6をAlを主材料として構成するときには、Al−Si合金(Si含有量2%)を用いるのが好ましい。
また、第2の絶縁膜71Aと第3の絶縁膜72Aと第4の絶縁膜73Aとの形成方法は、それぞれ、前述した工程[A]と同様の方法を用いることができる。
【0063】
[D]
次に、画素電極8に形成された貫通孔(図示せず)を通じて、第1の絶縁膜41Cと第2の絶縁膜71Aと第3の絶縁膜72Aと第4の絶縁膜73Aとをウェットエッチングして、図8(b)に示すように、収納部13を形成する。これにより、第1の絶縁層41と第2の絶縁層71と第3の絶縁層72と第4の絶縁層73とが得られる。
【0064】
より具体的に説明すると、画素電極8の貫通孔(図示せず)が露出するように開口を有するマスクを画素電極8上に形成し、このマスクを介してウェットエッチングすることにより、第1の絶縁膜41Cと第2の絶縁膜71Aと第3の絶縁膜72Aと第4の絶縁膜73Aとのそれぞれの一部を除去して、第1の絶縁層41と第2の絶縁層71と第3の絶縁層72と第4の絶縁層73とを形成する。これにより、駆動電極2と固定電極3と可動電極5とを収容する収納部13が形成される。
その後、マスクを除去する。
【0065】
[E]
次に、図8(c)に示すように、複数の画素電極8を覆うように封止層9を形成する。これにより、アクティブマトリクス装置10(スイッチング素子1)を得る。
以上説明したようにして、アクティブマトリクス装置10を製造することができる。
【0066】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
図9は、本発明の第2実施形態にかかるアクティブマトリクス装置に備えられたスイッチング素子の概略構成を示す図、図10ないし図12は、それぞれ、図9に示すスイッチング素子の製造方法を説明するための図、図13は、図9に示すスイッチング素子の応用例の一例であるインバータ回路を示す図である。なお、図9(a)は、本発明の第2実施形態にかかるスイッチング素子の平面図、図9(b)は、図9(a)のB−B線断面図である。また、図10ないし図12は、それぞれ、図9(b)に対応する断面図を示している。
【0067】
以下、第2実施形態について、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。また、図9では、前述した第1実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
本実施形態のスイッチング素子は、その製造方法およびこれに伴う構成が異なる以外は、前述した第1実施形態でのスイッチング素子と同様である。
【0068】
図9に示すスイッチング素子1Aは、駆動電極2と、固定電極3と、可動電極5Aとを備え、これらが基板50の一方の面側に設けられている。
このようなスイッチング素子1Aの主要部(すなわち駆動電極2と固定電極3と可動電極5Aとのそれぞれの主要部)は、基板50上に設けられた収納部13A内に収納されている。この収納部13Aは、基板50上に設けられた絶縁層41Dを基板50の厚さ方向に貫通するように形成されている。
【0069】
絶縁層41Dは、第1の層412と第2の層413と第3の層414とで構成されている。
第1の層412は、基板50の板面に垂直な壁面415を備え、この壁面415上には、駆動電極2が形成されている。また、第1の層412は、基板50の板面に垂直でかつ壁面415と平行な壁面416を備え、この壁面416上には、固定電極3が形成されている。なお、第1の層412と第2の層413と第3の層414とについては、後述する製造方法の説明にて詳述する。
【0070】
このような駆動電極2および固定電極3に対向するように、可動電極5Aが設けられている。
可動電極5Aは、長手形状(すなわち帯状)をなし、その長手方向での一端(図9(a)にて左側の端)が固定され、片持ち支持されている。これにより、可動電極5Aは、その自由端側が駆動電極2および固定電極3側(下側)へ変位可能となっている。
【0071】
また、可動電極5Aの固定電極3との対向部分、すなわち、可動電極5Aの先端部には、固定電極3の電極面と略平行な平坦面53Aが形成されている。このような平坦面53Aを可動電極5Aに設けることにより、可動電極5Aと固定電極3とが接触したときに、その接触面積を大きくすることができる。これにより、可動電極5Aと固定電極3とが所望時に確実に接触し、スイッチング素子1Aの信頼性を向上させることができる。
【0072】
次に、前述したように構成されたスイッチング素子1Aの製造方法を説明する。なお、以下の説明では、本発明のスイッチング素子の製造方法の一例として、スイッチング素子1Aの製造方法を説明する。
スイッチング素子1Aの製造方法は、[1]基板50上に段差部を形成する工程と、[2]段差部の壁面上に第1の電極を形成する工程と、[3]第1の電極を覆うように絶縁層を形成する工程と、[4]絶縁層上に第2の電極を形成する工程と、[5]絶縁層の一部を除去する工程とを有し、第1の電極を駆動電極とし、第2の電極を可動電極とする。
【0073】
以下、各工程[1]〜[5]を順次詳細に説明する。
[1]
まず、図10(a)に示すように、基板50上に、第1の層412を形成する。これにより、基板50の一方の面側に、基板50の板面に垂直な壁面415を備える段差部が形成される。
【0074】
第1の層412は、絶縁膜を形成し、その絶縁膜の一部を除去することで形成することができる。絶縁膜の形成方法としては、前述した第1実施形態のスイッチング素子1の製造方法における工程[A]の第1の絶縁膜41Aの形成方法と同様の方法を用いることができる。また、絶縁膜の一部を除去する方法としては、前述した第1実施形態のスイッチング素子1の製造方法における工程B1の溝411の形成方法と同様の方法を用いることができる。
【0075】
[2]
2−1
次いで、図10(b)に示すように、第1の層412を覆うように、第1の電極層65を形成する。
このとき、第1の電極層65は、壁面415、416上を覆うように形成される。
第1の電極層65の形成方法としては、前述した第1実施形態のスイッチング素子1の製造方法における工程B2の導電性膜64の形成方法と同様の方法を用いることができる。
【0076】
2−2
その後、図10(c)に示すように、第1の電極層65の一部を除去(パターンニング)して、第1の電極65Aを形成する。
第1の電極65Aは、駆動電極2と同一形状および同一寸法で形成されている。すなわち、本工程では、駆動電極2が形成される。また、本工程では、図示しないが、第1の電極層65をパターンニングすることで、固定電極3も形成される。
第1の電極層65の一部を除去する方法としては、前述した第1実施形態のスイッチング素子1の製造方法における工程B3の導電性膜64の一部を除去する方法と同様の方法を用いることができ、特に、等方性エッチングを用いるのが好ましい。
このようにして、壁面415上に第1の電極65Aが形成される。
【0077】
[3]
次に、図11(a)に示すように、第1の電極65Aを覆うように、絶縁性を有する絶縁層413Aを形成する。
絶縁層413Aは、その一部が後述する工程[5]において除去され、前述した第2の層413となるもの(犠牲層)である。
【0078】
絶縁層413Aの形成方法としては、前述した第1実施形態のスイッチング素子1の製造方法における工程[A]の第1の絶縁膜41Aの形成方法と同様の方法を用いることができる。
また、絶縁層413Aの厚さは、前述した駆動電極2と可動電極5Aとの間の距離(すなわち静電ギャップ)に対応したものとなっている。これにより、後述する工程[5]において、絶縁層413Aの一部を除去したときに、駆動電極2と可動電極5Aとの間の距離を絶縁層413Aの厚さで規定することができる。
【0079】
また、図示しないが、絶縁層413Aは、固定電極3も覆うように形成されている。
また、本工程[3]では、後述する工程[5](犠牲層除去)に用いるエッチングに対し耐性を有する膜を形成しておき、その膜上に絶縁層413Aを形成するのが好ましい。これにより、後述する工程[5]において、第1の電極65Aや基板50等がエッチングされるのを防止することができる。
【0080】
[4]
4−1
次に、図11(b)に示すように、絶縁層413A上に第2の電極層66を形成する。
第2の電極層66の形成方法としては、前述した第1実施形態のスイッチング素子1の製造方法における工程B2の導電性膜64の形成方法と同様の方法を用いることができる。
【0081】
4−2
その後、図11(c)に示すように、第2の電極層66の一部を除去して、第2の電極66Aを形成する。
第2の電極層66の一部を除去する方法としては、前述した第1実施形態のスイッチング素子1の製造方法における工程B3の導電性膜64の一部を除去する方法と同様の方法を用いることができ、特に、異方性エッチングを用いるのが好ましい。
【0082】
第2の電極66Aは、可動電極5Aと同一形状および同一寸法で形成されている。すなわち、本工程では、可動電極5Aが形成される。
このようにして、絶縁層413Aを介して第1の電極65A(駆動電極2)に対向するように、絶縁層413A上に第2の電極66A(可動電極5A)が形成される。
また、図示しないが、第2の電極66Aは、絶縁層413Aを介して固定電極3にも対向するように形成されている。
【0083】
[5]
5−1
次に、図12(a)に示すように、第3の層414を形成する。
第3の層414は、絶縁膜を形成し、その絶縁膜の一部を除去することで形成することができる。絶縁膜の形成方法としては、前述した第1実施形態のスイッチング素子1の製造方法における工程[A]の第1の絶縁膜41Aの形成方法と同様の方法を用いることができる。また、絶縁膜の一部を除去する方法としては、前述した第1実施形態のスイッチング素子1の製造方法における工程B1の溝411の形成方法と同様の方法を用いることができる。
【0084】
5−2
次いで、図12(b)に示すように、絶縁層413Aの一部を除去する。このとき、絶縁層413Aのうち、第1の電極65A(駆動電極2)と第2の電極66A(可動電極5A)との間の部分、および、第2の電極66A(可動電極5A)の周囲の部分を除去する。
【0085】
これにより、第2の層413が形成され、第1の電極65A(駆動電極2)と第2の電極66A(可動電極5A)との間に静電ギャップを形成とするとともに、第2の電極66A(可動電極5A)を第1の電極65A(駆動電極2)に対し接触/離反するように変位可能とする。
また、図示しないが、絶縁層413Aのうち、固定電極3と第2の電極66A(可動電極5A)との間の部分も除去される。
【0086】
絶縁層413Aの一部を除去する方法としては、等方性エッチングを用いることができる。また、絶縁層413Aの一部を除去する際には、第3の層414の開口417を通じて等方性エッチングを行うが、その等方性エッチングに先立ち、異方性エッチングを用いるのが好ましい。すなわち、異方性エッチング、等方性エッチングの順で第3の層414の開口417を通じてエッチングを行うのが好ましい。これにより、絶縁層413Aのサイドエッチングの量を少なく(不本意なサイドエッチングが生じるのを防止)することができる。
【0087】
以上のようにして、駆動電極2と可動電極5Aとが静電ギャップを介して対向するとともに、可動電極5Aを駆動電極2に対し接触/離反するように変位可能に構成されたスイッチング素子1Aが得られる。
以上説明したようなスイッチング素子1Aの製造方法によれば、絶縁層413Aの厚さで可動電極5Aと駆動電極2との間の距離(すなわち静電ギャップ)の大きさを規定することができる。そして、絶縁層413Aの厚さはフォトリソグラフィーを用いて形成し得るラインまたはスペースの最小幅よりも小さくすることができる。そのため、静電ギャップを小さくすることができる。その結果、スイッチング素子1Aの駆動電圧を低減することができ、また、スイッチング素子1Aの設置スペースが小さく、スイッチング素子1Aを用いたアクティブマトリクス装置の設計自由度を高めることができる。また、絶縁層413Aの厚さはフォトリソグラフィーを用いて形成し得るラインまたはスペースの幅の寸法精度に比し高精度で規定することができる。そのため、前述したようにして製造されたスイッチング素子1Aは、可動電極5Aと駆動電極2との間の距離を高精度に規定することができ、その結果、素子ごとの静電ギャップのバラツキが少なく、安定したスイッチング特性を実現することができる。
【0088】
また、前述した第1実施形態では、駆動電極2と可動電極5とを同一層(導電性膜64)から形成するため、駆動電極2と可動電極5との間の距離は、フォトリソグラフィーを用いて形成し得るラインまたはスペースの最小幅による限界があり、その最小幅内にスイッチング素子を1つしか形成することができない。これに対し、本実施形態にかかるスイッチング素子1Aの製造方法によれば、駆動電極2と可動電極5Aとの間の距離は、フォトリソグラフィーを用いて形成し得るラインまたはスペースの最小幅による制限を受けずに、その最小幅内に、2つのスイッチング素子を形成することができる。したがって、かかるスイッチング素子を用いて周辺回路等を形成した場合、そのデザインサイズを縮小化することができる。
【0089】
例えば、このようなスイッチング素子1Aと同様の構成のスイッチング素子は、図13に示すように、駆動電極2および固定電極3を共通として2つ組み合わせることで、インバータ回路を構成することができる。また、かかるスイッチング素子は、その組み合わせにより、その他ロジック回路を構成することができる。図13に示すインバータ回路は、Vinが(Vdd+Vss)/2−ΔVtであるときに、Vddを出力し、Vinが(Vdd+Vss)/2+ΔVtであるときに、Vssを出力する。このようなロジック回路は、ΔVthが(Vdd−Vss)/2以下であれば、CMOS回路で構成したロジック回路のような貫通電流(リーク電流)を生じないため、極めて信頼性の高いものとなる。
【0090】
(電気光学表示装置)
次に、本発明の電気光学表示装置の一例として、前述したアクティブマトリクス装置10を備える液晶パネルを説明する。
図14は、本発明の電気光学表示装置を液晶パネルに適用した場合の実施形態を示す縦断面図である。
【0091】
図14に示すように、電気光学表示装置である液晶パネル100は、前述したアクティブマトリクス装置10と、アクティブマトリクス装置10に接合された配向膜60と、液晶パネル用対向基板20と、液晶パネル用対向基板20に接合された配向膜40と、配向膜60と配向膜40との空隙に封入された液晶よりなる液晶層90と、アクティブマトリクス装置(液晶駆動装置)10の外表面(上面)側に接合された偏光膜70と、液晶パネル用対向基板20の外表面(下面)側に接合された偏光膜80とを有している。
【0092】
液晶パネル用対向基板20は、マイクロレンズ基板201と、かかるマイクロレンズ基板201の表層202上に設けられ、開口203が形成されたブラックマトリックス204と、表層202上にブラックマトリックス204を覆うように設けられた透明導電膜(共通電極)209とを有している。
マイクロレンズ基板201は、凹曲面を有する複数(多数)の凹部(マイクロレンズ用凹部)205が設けられたマイクロレンズ用凹部付き基板(第1の基板)206と、かかるマイクロレンズ用凹部付き基板206の凹部205が設けられた面に樹脂層(接着剤層)207を介して接合された表層202とを有しており、また、樹脂層207では、凹部205内に充填された樹脂によりマイクロレンズ208が形成されている。
【0093】
ここで、アクティブマトリクス装置10は、液晶層90の液晶を駆動する装置である。
このアクティブマトリクス装置10のスイッチング素子1は、図示しない制御回路に接続され、画素電極8へ供給する電流を制御する。これにより、画素電極8の充放電が制御される。
配向膜60は、アクティブマトリクス装置10の画素電極8に接合されており、配向膜40は、液晶パネル用対向基板20の液晶層90にされている。ここで、配向膜60は、前述したアクティブマトリクス装置10の封止層9を兼ねている。
【0094】
配向膜40、60は、それぞれ、液晶層90を構成する液晶分子の(電圧無印加時における)配向状態を規制する機能を有する。
配向膜40、60は、特に限定されないが、通常、主として、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリビニルアルコール、ポリテトラフルオロエチレン等の高分子材料で構成されたものである。前記高分子材料の中でも特に、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂が好ましい。配向膜40、60が、主として、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂で構成されたものであると、製造工程において簡便に高分子膜を形成できるとともに、耐熱性、耐薬品性などに優れた特性を有するものとなる。
【0095】
また、配向膜40、60としては、通常、上記のような材料で構成された膜に、液晶層90を構成する液晶分子の配向を規制する配向機能を付与するための処理が施されたものが用いられる。配向機能を付与するための処理法としては、例えば、ラビング法、光配向法等が挙げられる。
このような配向膜は、その平均厚さが20〜120nmであるのが好ましく、30〜80nmであるのがより好ましい。
【0096】
液晶層90は液晶分子を含有しており、画素電極8の充放電に対応して、かかる液晶分子、すなわち液晶の配向が変化する。
かかる液晶分子としては、ネマチック液晶、スメクチック液晶など配向し得るものであればいかなる液晶分子を用いても構わないが、TN型液晶パネルの場合、ネマチック液晶を形成させるものが好ましく、例えば、フェニルシクロヘキサン誘導体液晶、ビフェニル誘導体液晶、ビフェニルシクロヘキサン誘導体液晶、テルフェニル誘導体液晶、フェニルエーテル誘導体液晶、フェニルエステル誘導体液晶、ビシクロヘキサン誘導体液晶、アゾメチン誘導体液晶、アゾキシ誘導体液晶、ピリミジン誘導体液晶、ジオキサン誘導体液晶、キュバン誘導体液晶等が挙げられる。さらに、これらネマチック液晶分子にモノフルオロ基、ジフルオロ基、トリフルオロ基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基などのフッ素系置換基を導入した液晶分子も含まれる。
【0097】
このような液晶パネル100では、通常、1個のマイクロレンズ208と、かかるマイクロレンズ208の光軸Qに対応したブラックマトリックス204の1個の開口203と、1個の画素電極8と、かかる画素電極8に接続された1個のスイッチング素子1とが、1画素に対応している。
液晶パネル用対向基板20側から入射した入射光Lは、マイクロレンズ用凹部付き基板206を通り、マイクロレンズ208を通過する際に集光されつつ、樹脂層207、表層202、ブラックマトリックス204の開口203、透明導電膜209、液晶層90、画素電極8、基板50を透過する。このとき、マイクロレンズ基板201の入射側に偏光膜80が設けられているため、入射光Lが液晶層90を透過する際に、入射光Lは直線偏光となっている。その際、この入射光Lの偏光方向は、液晶層90の液晶分子の配向状態に対応して制御される。したがって、液晶パネル100を透過した入射光Lを偏光膜70に透過させることにより、出射光の輝度を制御することができる。
【0098】
このような液晶パネル100は、前述したようにマイクロレンズ208を有しており、しかも、マイクロレンズ208を通過した入射光Lは、集光されてブラックマトリックス204の開口203を通過する。一方、ブラックマトリックス204の開口203が形成されていない部分では、入射光Lは遮光される。したがって、液晶パネル100では、画素以外の部分から不要光が漏洩することが防止され、かつ、画素部分での入射光Lの減衰が抑制される。このため、液晶パネル100は、画素部で高い光の透過率を有する。
【0099】
以上説明したようなアクティブマトリクス装置10を備える液晶パネル100によれば、優れた信頼性を有するとともに、高品位な画像を表示することができる。
なお、本発明の電気光学表示装置は、このような液晶パネルへの適用に限定されるものではなく、電気泳動表示装置、有機または無機EL表示装置等に適用することもできる。
【0100】
(電子機器)
次に、本発明の電子機器の例として、前述した液晶パネル100を備える電子機器を図15ないし図18に示す第1〜4の例に基づき説明する。
(第1の例)
図15は、本発明の電子機器の第1の例であるモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【0101】
この図において、パーソナルコンピュータ1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。
このパーソナルコンピュータ1100においては、表示ユニット1106が、前述の液晶パネル100と、図示しないバックライトとを備えている。バックライトからの光を液晶パネル100に透過させることにより画像(情報)を表示し得るものである。
【0102】
(第2の例)
図16は、本発明の電子機器の第2の例である携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
この図において、携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202、受話口1204および送話口1206とともに、前述の液晶パネル100と、図示しないバックライトとを備えている。
【0103】
(第3の例)
図17は、本発明の電子機器の第3の例であるディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。
ここで、通常のカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、ディジタルスチルカメラ1300は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
【0104】
ディジタルスチルカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、前述の液晶パネル100と、図示しないバックライトとが設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、液晶パネル100は、被写体を電子画像として表示するファインダとして機能する。
ケースの内部には、回路基板1308が設置されている。この回路基板1308は、撮像信号を格納(記憶)し得るメモリが設置されている。
【0105】
また、ケース1302の正面側(図示の構成では裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。
撮影者が液晶パネル100に表示された被写体像を確認し、シャッタボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、回路基板1308のメモリに転送・格納される。
【0106】
また、このディジタルスチルカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示のように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニタ1430が、データ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピュータ1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、回路基板1308のメモリに格納された撮像信号が、テレビモニタ1430や、パーソナルコンピュータ1440に出力される構成になっている。
【0107】
(第4の例)
図18は、本発明の電子機器の第4の例である投射型表示装置(液晶プロジェクター))の光学系を模式的に示す図である。
同図に示すように、投射型表示装置300は、光源301と、複数のインテグレータレンズを備えた照明光学系と、複数のダイクロイックミラー等を備えた色分離光学系(導光光学系)と、赤色に対応した(赤色用の)液晶ライトバルブ(液晶光シャッターアレイ)240と、緑色に対応した(緑色用の)液晶ライトバルブ(液晶光シャッターアレイ)250と、青色に対応した(青色用の)液晶ライトバルブ(液晶光シャッターアレイ)260と、赤色光のみを反射するダイクロイックミラー面211および青色光のみを反射するダイクロイックミラー面212が形成されたダイクロイックプリズム(色合成光学系)210と、投射レンズ(投射光学系)220とを有している。
【0108】
また、照明光学系は、インテグレータレンズ302および303を有している。色分離光学系は、ミラー304、306、309、青色光および緑色光を反射する(赤色光のみを透過する)ダイクロイックミラー305、緑色光のみを反射するダイクロイックミラー307、青色光のみを反射するダイクロイックミラー(または青色光を反射するミラー)308、集光レンズ310、311、312、313および314とを有している。
【0109】
液晶ライトバルブ250は、前述した液晶パネル100を備えている。液晶ライトバルブ240および260も、液晶ライトバルブ250と同様の構成となっている。これら液晶ライトバルブ240、250および260が備えている液晶パネル100は、図示しない駆動回路にそれぞれ接続されている。
なお、投射型表示装置300では、ダイクロイックプリズム210と投射レンズ220とで、光学ブロック200が構成されている。また、この光学ブロック200と、ダイクロイックプリズム210に対して固定的に設置された液晶ライトバルブ240、250および260とで、表示ユニット230が構成されている。
【0110】
以下、投射型表示装置300の作用を説明する。
光源301から出射された白色光(白色光束)は、インテグレータレンズ302および303を透過する。この白色光の光強度(輝度分布)は、インテグレータレンズ302および303により均一にされる。光源301から出射される白色光は、その光強度が比較的大きいものであるのが好ましい。これにより、スクリーン320上に形成される画像をより鮮明なものとすることができる。また、投射型表示装置300では、耐光性に優れた液晶パネル100を用いているため、光源301から出射される光の強度が大きい場合であっても、優れた長期安定性が得られる。
【0111】
インテグレータレンズ302および303を透過した白色光は、ミラー304で図18中左側に反射し、その反射光のうちの青色光(B)および緑色光(G)は、それぞれダイクロイックミラー305で図18中下側に反射し、赤色光(R)は、ダイクロイックミラー305を透過する。
ダイクロイックミラー305を透過した赤色光は、ミラー306で図18中下側に反射し、その反射光は、集光レンズ310により整形され、赤色用の液晶ライトバルブ240に入射する。
【0112】
ダイクロイックミラー305で反射した青色光および緑色光のうちの緑色光は、ダイクロイックミラー307で図18中左側に反射し、青色光は、ダイクロイックミラー307を透過する。
ダイクロイックミラー307で反射した緑色光は、集光レンズ311により整形され、緑色用の液晶ライトバルブ250に入射する。
【0113】
また、ダイクロイックミラー307を透過した青色光は、ダイクロイックミラー(またはミラー)308で図18中左側に反射し、その反射光は、ミラー309で図18中上側に反射する。前記青色光は、集光レンズ312、313および314により整形され、青色用の液晶ライトバルブ260に入射する。
このように、光源301から出射された白色光は、色分離光学系により、赤色、緑色および青色の三原色に色分離され、それぞれ、対応する液晶ライトバルブに導かれ、入射する。
【0114】
この際、液晶ライトバルブ240が有する液晶パネル100の各画素(スイッチング素子1とこれに接続された画素電極8)は、赤色用の画像信号に基づいて作動する駆動回路(駆動手段)により、スイッチング制御(オン/オフ)、すなわち変調される。
同様に、緑色光および青色光は、それぞれ、液晶ライトバルブ250および260に入射し、それぞれの液晶パネル100で変調され、これにより緑色用の画像および青色用の画像が形成される。この際、液晶ライトバルブ250が有する液晶パネル100の各画素は、緑色用の画像信号に基づいて作動する駆動回路によりスイッチング制御され、液晶ライトバルブ260が有する液晶パネル100の各画素は、青色用の画像信号に基づいて作動する駆動回路によりスイッチング制御される。
【0115】
これにより赤色光、緑色光および青色光は、それぞれ、液晶ライトバルブ240、250および260で変調され、赤色用の画像、緑色用の画像および青色用の画像がそれぞれ形成される。
前記液晶ライトバルブ240により形成された赤色用の画像、すなわち液晶ライトバルブ240からの赤色光は、面213からダイクロイックプリズム210に入射し、ダイクロイックミラー面211で図18中左側に反射し、ダイクロイックミラー面212を透過して、出射面216から出射する。
【0116】
また、前記液晶ライトバルブ250により形成された緑色用の画像、すなわち液晶ライトバルブ250からの緑色光は、面214からダイクロイックプリズム210に入射し、ダイクロイックミラー面211および212をそれぞれ透過して、出射面216から出射する。
また、前記液晶ライトバルブ260により形成された青色用の画像、すなわち液晶ライトバルブ260からの青色光は、面215からダイクロイックプリズム210に入射し、ダイクロイックミラー面212で図18中左側に反射し、ダイクロイックミラー面211を透過して、出射面216から出射する。
【0117】
このように、前記液晶ライトバルブ240、250および260からの各色の光、すなわち液晶ライトバルブ240、250および260により形成された各画像は、ダイクロイックプリズム210により合成され、これによりカラーの画像が形成される。この画像は、投射レンズ220により、所定の位置に設置されているスクリーン320上に投影(拡大投射)される。
【0118】
以上説明したような液晶パネル100を備える電子機器によれば、優れた信頼性を有するとともに、高品位な画像を表示することができる。
なお、本発明の電子機器は、図15のパーソナルコンピュータ(モバイル型パーソナルコンピュータ)、図16の携帯電話機、図17のディジタルスチルカメラ、図18の投射型表示装置の他にも、例えば、テレビや、ビデオカメラ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡、POS端末、タッチパネルを備えた機器(例えば金融機関のキャッシュディスペンサー、自動券売機)、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電表示装置、超音波診断装置、内視鏡用表示装置)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータなどが挙げられる。そして、これらの各種電子機器の表示部、モニタ部として、前述した本発明の電気光学表示装置が適用可能なことは言うまでもない。
【0119】
以上のようにアクティブマトリクス装置10を備えた電気光学表示装置や電子機器は、省電力化を図りつつ、高品位な画像を表示することができる。
以上、本発明のアクティブマトリクス装置、電気光学表示装置および電子機器を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、本発明のアクティブマトリクス装置、電気光学表示装置および電子機器では、各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。
【0120】
例えば、前述した実施形態では、第1の配線11および第2の配線12がスイッチング素子1に対し基板50と反対側に設けられていた(すなわち、第1の配線11および第2の配線12と基板50との間にスイッチング素子1が設けられていた)が、第1の配線11および第2の配線12がスイッチング素子1と基板50との間に設けられていてもよい。この場合、前述した製造工程において、第2の配線12、第3の絶縁膜72A、第1の配線11および第4の絶縁膜73Aの形成を第1の絶縁膜41Aの形成前に行い、適宜貫通電極部を形成すればよい。
【0121】
また、前述した実施形態では、基板50の厚さ方向においてスイッチング素子1の各電極2、3、5の形成位置(中心位置)がほぼ一致するものについて説明したが、可動電極5に対し固定電極3および駆動電極2がそれぞれ対向していれば、これに限定されず、基板50の厚さ方向においてスイッチング素子1の各電極2、3、5の形成位置(中心位置)がずれていてもよい。この場合、例えば、前述した製造工程において、溝411の側面上には、可動電極5のみを形成し、溝411の壁面上に絶縁膜を形成して溝411よりも若干浅く幅狭の溝を形成し、その溝の側面上(絶縁膜上)に固定電極3や駆動電極2を形成すればよい。
【0122】
また、前述した実施形態では、投射型表示装置(電子機器)は、3個の液晶パネルを有するものであり、これらの全てに本発明の電気光学表示装置を適用したものについて説明したが、少なくともこれらのうち1個が、本発明にかかる電気光学表示装置(液晶パネル)であればよい。この場合、少なくとも、青色用の液晶ライトバルブに用いられる液晶パネルに本発明を適用するのが好ましい。
また、前述した実施形態では、透過型の電気光学表示装置に本発明を適用した例を説明したが、本発明は、これに限定されず、LCOS(Liquid crystal on silicon)のような反射型の電気光学表示装置に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかるアクティブマトリクス装置を示す平面図である。
【図2】図1中のA−A線断面図である。
【図3】図1に示すアクティブマトリクス装置に備えられたスイッチング素子を説明するための拡大平面図である。
【図4】図3に示すスイッチング素子を説明するための斜視図である。
【図5】図3に示すスイッチング素子の作動を説明するための図である。
【図6】図1および図2に示すアクティブマトリクス装置の製造方法を説明するための図である。
【図7】図1および図2に示すアクティブマトリクス装置の製造方法を説明するための図である。
【図8】図1および図2に示すアクティブマトリクス装置の製造方法を説明するための図である。
【図9】本発明の第2実施形態にかかるアクティブマトリクス装置に備えられたスイッチング素子の概略構成を示す図である。
【図10】図9に示すスイッチング素子の製造方法を説明するための図である。
【図11】図9に示すスイッチング素子の製造方法を説明するための図である。
【図12】図9に示すスイッチング素子の製造方法を説明するための図である。
【図13】図9に示すスイッチング素子の応用例の一例であるインバータ回路を示す図である。
【図14】本発明の電気光学表示装置の一例たる液晶パネルの構成を示す縦断面図である。
【図15】本発明の電子機器の第1の例であるモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【図16】本発明の電子機器の第2の例である携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
【図17】本発明の電子機器の第3の例であるディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。
【図18】本発明の電子機器の第4の例である投射型表示装置の光学系を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0124】
1、1A‥‥スイッチング素子 2‥‥駆動電極 3‥‥固定電極 41‥‥第1の絶縁層 41A、41B、41C‥‥第1の絶縁膜 41D‥‥絶縁層 411‥‥溝 412‥‥第1の層 413‥‥第2の層 414‥‥第3の層 413A‥‥絶縁層 415、416‥‥壁面 417‥‥開口 5、5A‥‥可動電極 51‥‥固定端 52‥‥自由端 53‥‥突起 53A‥‥平坦面 6‥‥導電層 61、62、63‥‥端子 64‥‥導電性膜 65‥‥第1の電極層 65A‥‥第1の電極 66‥‥第2の電極層 66A‥‥第2の電極 71‥‥第2の絶縁層 71A‥‥第2の絶縁膜 72‥‥第3の絶縁層 72A‥‥第3の絶縁膜 73‥‥第4の絶縁層 73A‥‥第4の絶縁膜 8‥‥画素電極 111‥‥貫通電極 81、121‥‥貫通電極部 82‥‥貫通孔 9‥‥封止層 10‥‥アクティブマトリクス装置 11‥‥第1の配線 12‥‥第2の配線 13、13A‥‥収納部 100‥‥液晶パネル 90‥‥液晶層 60‥‥配向膜 50‥‥基板 40‥‥配向膜 209‥‥透明導電膜 70‥‥偏光膜 80‥‥偏光膜 201‥‥マイクロレンズ基板 206‥‥マイクロレンズ用凹部付き基板 205‥‥凹部 208‥‥マイクロレンズ 202‥‥表層 207‥‥樹脂層 20‥‥液晶パネル用対向基板 204‥‥ブラックマトリックス 203‥‥開口 1100‥‥パーソナルコンピュータ 1102‥‥キーボード 1104‥‥本体部 1106‥‥表示ユニット 1200‥‥携帯電話機 1202‥‥操作ボタン 1204‥‥受話口 1206‥‥送話口 1300‥‥ディジタルスチルカメラ 1302‥‥ケース(ボディー) 1304‥‥受光ユニット 1306‥‥シャッタボタン 1308‥‥回路基板 1312‥‥ビデオ信号出力端子 1314‥‥データ通信用の入出力端子 1430‥‥テレビモニタ 1440‥‥パーソナルコンピュータ 300‥‥投射型表示装置 301‥‥光源 302、303‥‥インテグレータレンズ 304、306、309‥‥ミラー 305、307、308‥‥ダイクロイックミラー 310〜314‥‥集光レンズ 320‥‥スクリーン 200‥‥光学ブロック 210‥‥ダイクロイックプリズム 211、212‥‥ダイクロイックミラー面 213〜215‥‥面 216‥‥出射面 220‥‥投射レンズ 230‥‥表示ユニット 240、250、260‥‥液晶ライトバルブ L‥‥入射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の一方の面側に設けられた複数の画素電極と、
前記各画素電極に対応して設けられ、前記画素電極に接続された固定電極と、前記固定電極に対し接触/離反するように変位可能に設けられた可動電極と、前記可動電極に静電ギャップを介して設けられた駆動電極とを備えるスイッチング素子と、
前記各可動電極に接続された第1の配線と、
前記各駆動電極に接続された第2の配線とを有し、
前記各スイッチング素子は、前記可動電極と前記駆動電極との間に電圧を印加することにより、前記可動電極と前記駆動電極との間に静電引力を生じさせ、これにより、前記可動電極を変位させて、前記可動電極と前記固定電極とを接触させ、前記第1の配線と前記画素電極とを導通状態とするように構成され、
前記固定電極、前記可動電極および前記駆動電極は、前記基板の板面に沿った方向で互いに異なる位置に配置され、前記可動電極は、前記基板の板面に沿った方向で前記固定電極側に変位するように構成されていることを特徴とするアクティブマトリクス装置。
【請求項2】
前記固定電極、前記可動電極、および前記駆動電極は、それぞれ、薄板状をなし、その板面が前記基板の板面に対しほぼ直角となるように設置されている請求項1に記載のアクティブマトリクス装置。
【請求項3】
前記固定電極、前記可動電極、および前記駆動電極は、それぞれ、前記第1の配線または前記第2の配線に平行な方向に延在している請求項1または2に記載のアクティブマトリクス装置。
【請求項4】
前記可動電極は、片持ち支持され、その自由端側が変位するように構成され、前記固定電極は、前記可動電極の自由端側の端部に対向するように設置され、前記駆動電極は、前記固定電極よりも前記可動電極の固定端側の部分に対向するように設置されている請求項1ないし3のいずれかに記載のアクティブマトリクス装置。
【請求項5】
前記固定電極と前記可動電極と前記駆動電極とは、前記可動電極と前記駆動電極とが離間した状態のまま、前記可動電極が前記固定電極に接触するように配設されている請求項1ないし4のいずれかに記載のアクティブマトリクス装置。
【請求項6】
前記可動電極と前記固定電極との対向面のうちの少なくとも一方の面上には、前記可動電極と前記駆動電極との接触を阻止するように突起が形成されている請求項5に記載のアクティブマトリクス装置。
【請求項7】
前記各スイッチング素子毎に前記可動電極と前記駆動電極と前記固定電極とを収納する収納部を有し、該収納部が気密空間を形成している請求項1ないし6のいずれかに記載のアクティブマトリクス装置。
【請求項8】
前記複数の画素電極は、前記複数のスイッチング素子に対し前記基板の厚さ方向にて異なる位置に設けられ、前記各画素電極は、平面視したときに、対応する前記スイッチング素子を包含するように設置されている請求項1ないし7のいずれかに記載のアクティブマトリクス装置。
【請求項9】
前記第1の配線は、前記基板に沿って互いに平行に複数設けられ、前記第2の配線は、前記各第1の配線に交差するとともに、前記基板に沿って互いに平行に複数設けられ、前記各スイッチング素子は、前記各第1の配線と前記各第2の配線との交点付近に設けられている請求項1ないし8のいずれかに記載のアクティブマトリクス装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載のアクティブマトリクス装置に備えられたスイッチング素子の製造方法であって、
前記基板の一方の面側に、前記基板の板面に垂直な壁面を備える段差部を形成する工程と、
前記壁面上に第1の電極を形成する工程と、
前記第1の電極を覆うように、絶縁性を有する絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層を介して前記第1の電極に対向するように、前記絶縁層上に第2の電極を形成する工程と、
前記絶縁層の一部を除去して、前記第1の電極と前記第2の電極との間に静電ギャップを形成とするとともに、前記第2の電極を前記第1の電極に対し接触/離反するように変位可能とする工程とを有し、
前記第1の電極を前記駆動電極とし、前記第2の電極を前記可動電極とすることを特徴とするスイッチング素子の製造方法。
【請求項11】
請求項1ないし9のいずれかに記載のアクティブマトリクス装置を備えることを特徴とする電気光学表示装置。
【請求項12】
請求項11に記載の電気光学表示装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−134256(P2009−134256A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−203579(P2008−203579)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】