説明

アクティブマトリックス液晶表示装置及びその駆動方法

【課題】追加のソースラインまたはゲートラインを加えることなく、1つのサブ画素内における2つの画素に異なるガンマ信号電圧を得ることができるアクティブマトリックス液晶表示装置及びその駆動方法を提供する。
【解決手段】第1画素11及び第2画素12を有するサブ画素内の第1画素11がゲートライン32のみでスイッチングされ、第2画素12がゲートライン32とソースライン31とによってスイッチングされ、第1画素11は第1TFT21と静電容量34とを有し、第2画素12は直列接続された第2TFT22及び第3TFT23を有し、一方の第2TFT22のゲート端はゲートライン32に接続され、他方の第3TFT23のゲート端はソースライン31に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクティブマトリックス液晶表示装置に関し、特に、視野角の向上を図るためのアクティブマトリックス液晶表示装置及びその駆動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アクティブマトリックス液晶表示装置は、スイッチであるアクティブ素子をマトリックス状に配列させ、表示すべき画像データに応じた電圧を各画素に印加して液晶物質の光透過率を制御することにより、画像表示を行う液晶表示装置である。
【0003】
図4は、アクティブマトリックス液晶表示装置の構成を示す図である。アクティブマトリックス液晶表示装置は、マトリックス状に配された複数の画素により画像を表示する液晶パネル1と、液晶パネル1における駆動を制御するゲートドライバ2及びソースドライバ3と、表示対象の映像信号を入力してゲートドライバ2及びソースドライバ3へ制御信号及び表示データを出力する信号処理回路4とを備えている。
【0004】
画素電極40は行方向及び列方向に対してマトリックス状に配置された電極である。走査信号線41はゲートドライバ2の制御により同一行方向の画素を選択する走査信号線であり、データ信号線42はソースドライバ3の制御により同一列方向の画素に表示データに応じた印加電圧を伝達するデータ信号線である。スイッチング素子43は、走査信号によりデータ信号線42のデータを液晶セルの画素に伝えるスイッチング素子であり、例えばTFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)で構成される。対向電極44は各液晶セルの共通電圧を供給するための電極である。画素電極40と対向電極44との間に液晶セルが介挿されており、1組の画素電極40と対向電極44との間に介挿された液晶セルを画素と呼ぶ。
【0005】
液晶セルは画素電極40及び対向電極44間の印加電圧によって、光を調節するシャッターの役目を果たす。画素を規則的にRGBに割り当て、対向電極44側にRGBのカラーフィルタを設ければ、人間の目には、RGBの光が合成されてカラー画像が認識される。画素のRGB配列に対応する部分をそれぞれサブ画素と呼ぶ。
【0006】
各サブ画素には、信号電圧が印加され、それに対応した輝度が表示される。図5及び図6は、信号電圧と輝度との関係を表したガンマ曲線である。曲線aは液晶画面を正面から見た際のガンマ曲線である。しかしながら、液晶表示画面の輝度は視野角依存性があり、実際には、正面からずれた斜め方向から見た際のガンマ曲線は理想のガンマ曲線からはずれてしまい、観察者に不鮮明な画像を表示する。
【0007】
そこで、図5及び図6に示されるように、各サブ画素を2分割し、それぞれに斜めから見たときの輝度の平均値が理想のガンマ曲線aとなるような曲線bと曲線cとの2種類の異なる信号電圧を与えることによって、視野角依存性を低減することが提案されている。このような2種類の信号電圧としては、図5及び図6以外にも各種の組合せが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−6289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、各サブ画素を2分割して2種類の異なる信号電圧を与えようとすると、通常よりソースラインまたはゲートラインを増やさなければならず、液晶画面の開口率が低下してしまうという問題があった。
【0010】
本発明の目的は、追加のソースラインまたはゲートラインを加えることなく、1つのサブ画素内における2つの画素に異なるガンマ信号電圧を得ることができ、液晶画面の開口率を低下させることなく、視野角の向上を図ることができるアクティブマトリックス液晶表示装置及びその駆動方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るアクティブマトリックス液晶表示装置は、入力データが新しいデータに変換されるデータ処理によって1つのサブ画素に2つの異なるガンマ信号を生成させることにより目標ガンマ信号を得るアクティブマトリックス液晶表示装置であって、各サブ画素は、第1画素と、第2画素と、前記第1画素及びソースラインの間に接続され、そのゲートがゲートラインに接続された第1薄膜トランジスタと、前記第1画素及びゲートラインの間に接続された静電容量と、前記第2画素及び信号線の間に直列接続され、そのゲートが前記ゲートラインに接続された第2薄膜トランジスタ並びにそのゲートが前記ソースラインに接続された第3薄膜トランジスタとを含み、前記第1画素が前記ゲートラインによってスイッチングされ、前記第2画素が前記ゲートライン及び前記ソースラインによってスイッチングされ、前記第1画素と前記第2画素とで異なるガンマ信号を生成することを特徴とする。
【0012】
本発明に係るアクティブマトリックス液晶表示装置は、前記信号線がコモンラインであることを特徴とする。
【0013】
本発明に係るアクティブマトリックス液晶表示装置は、前記2つの異なるガンマ信号の一方が黒色信号または白色信号であり、その他方が灰色信号であることを特徴とする。
【0014】
本発明に係るアクティブマトリックス液晶表示装置は、前記静電容量が前記第1画素に接続される前記第1薄膜トランジスタのドレイン電圧を調整することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る電子装置は、上記のアクティブマトリックス液晶表示装置を使用する電子装置であって、携帯電話、デジタルカメラ、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、自動車用ディスプレイ、航空用ディスプレイ、デジタルフォトフレーム、またはポータブルDVDプレーヤであることを特徴とする。
【0016】
本発明に係るアクティブマトリックス液晶表示装置の駆動方法は、上記のアクティブマトリックス液晶表示装置の駆動方法であって、ゲートラインをオンにする工程と、ソースラインの電圧を低電位にする工程と、ソースラインの電圧を高電位にする工程と、信号線の電圧を反転する工程と、ソースラインの電圧を再び低電位にし、第2画素の電圧を信号線の電圧と同じ電圧にして、第2画素を黒表示とする工程と、ソースラインの電圧を再び高電位にし、第2画素の電圧を固定する工程とにより、暗いグレイスケール信号を生成することを特徴とする。
【0017】
本発明に係るアクティブマトリックス液晶表示装置の駆動方法は、上記のアクティブマトリックス液晶表示装置の駆動方法であって、ゲートラインをオンにする工程と、ソースラインの電圧を低電位にする工程と、ソースラインの電圧を高電位にする工程と、信号線の電圧を反転する工程と、ソースラインの電圧を高電位に保持したまま、第2画素の電圧を固定する工程とにより、明るいグレイスケール信号を生成することを特徴とする。
【0018】
本発明は、上記課題を解決するために、既存のソースラインにゲートラインと同じ働きをさせ、サブ画素内の片方の画素のスイッチングに使用するものである。
【0019】
本発明のアクティブマトリクス液晶表示装置では、第1画素及び第2画素を有するサブ画素内の第1画素が1つのゲートラインのみでスイッチングされ、第2画素がゲートラインとソースラインとによってスイッチングされ、第1画素は1つの薄膜トランジスタと1つの静電容量とを有し、第2画素は直列接続された2つの薄膜トランジスタを有し、この2つの薄膜トランジスタのうちの一方の薄膜トランジスタのゲート端はゲートラインに接続され、他方の薄膜トランジスタのゲート端はソースラインに接続されている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、1つのサブ画素において、追加のソースラインまたはゲートラインを加えることなく、2つのガンマ電圧信号を得るための回路配置を提供することができ、これによって、液晶表示装置の開口率を低下させることなく、視野角の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のアクティブマトリックス液晶表示装置における1つのサブ画素内の回路配置を示す図である。
【図2】本発明のアクティブマトリックス液晶表示装置の駆動方法を示すタイミングチャートである。
【図3】本発明のアクティブマトリックス液晶表示装置の駆動方法を示すタイミングチャートである。
【図4】アクティブマトリックス液晶表示装置の構成を示す図である。
【図5】信号電圧と輝度との関係(ガンマ曲線)を示すグラフである。
【図6】信号電圧と輝度との関係(ガンマ曲線)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面を参照して具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0023】
図1は、本発明のアクティブマトリックス液晶表示装置における1つのサブ画素内の回路配置を示した図である。各サブ画素内には、第1画素11及び第2画素12があり、それぞれラインが選択されるときスイッチングとして働く第1TFT21及び第2TFT22に接続されている。第1TFT21及び第2TFT22の各ゲートは、ゲートライン32に接続されている。第2画素12は、さらに、ゲート端がソースライン31に接続されている追加の第3TFT23を有している。
【0024】
ソースライン31の電圧が十分に低い場合、第2画素12の第3TFT23のゲートは開き、信号線としてのコモンライン33及び第2TFT22を通じて白色信号または黒色信号を得る。第1画素11の構成は従来例と同様であるが、ソースライン31の電圧範囲は第3TFT23が適正に動くように通常より高く設定されている。ゲートライン32が閉じるとき、追加の静電容量34によって第1画素11の電圧は減少し、適切な画素電圧にすることができる。本発明に使用される静電容量34は、第1画素11に接続される第1TFT21のドレイン電圧を調整するために使用される。
【0025】
次に、タイミングチャートを参照することにより、本発明のアクティブマトリックス液晶表示装置の具体的な駆動方法の実施例を詳細に説明する。
【0026】
(実施例1)
暗い(50%以下)グレイスケールを達成するときの駆動方法の実施例について説明する。図2のタイミングチャートに示されるように、ゲートライン32をオン(15V)にすることにより第1TFT21及び第2TFT22のゲートを開く。次に、ソースライン31の電圧をオン(0V)にすることにより、第3TFT23のゲートを開き、第2画素12の電圧をコモンライン33の電圧と同じ電圧(1V)にする。
【0027】
ソースライン31の電圧を9Vにすることにより第3TFT23のゲートを閉じ、第2画素12の電圧を1Vに固定する。次に、コモンライン33の電圧を1Vから6Vに反転する。ソースライン31の電圧を0Vにし、第2画素12の電圧をコモンライン33の電圧と同じ電圧(6V)にして、第2画素12を黒表示とする。この状態で、ソースライン31の電圧を再び9Vにすることにより第2画素12を黒表示に固定する。
【0028】
最後に、ゲートライン32をオフ(−5V)にすることにより第1TFT21及び第2TFT22のゲートを閉じ、第2画素12の電圧を6Vに固定する。ゲートが閉じたときのカップリングの影響により、第1画素11の電圧は9Vから4Vに変化する。このように、第1画素11では電圧4Vが得られ、第2画素12では電圧6Vが得られ、サブ画素として暗いグレイスケール信号が生成される。
【0029】
(実施例2)
明るい(50%以上)グレイスケールを達成するときの駆動方法の実施例について説明する。図3のタイミングチャートに示されるように、ゲートライン32をオン(15V)にすることにより第1TFT21及び第2TFT22のゲートを開く。次に、ソースライン31の電圧をオン(0V)にすることにより、第3TFT23のゲートを開き、第2画素12の電圧をコモンライン33の電圧と同じ電圧(1V)にする。
【0030】
ソースライン31の電圧を9Vにすることにより第3TFT23のゲートを閉じ、第2画素12の電圧を1Vに固定する。次に、コモンライン33の電圧を1Vから6Vに反転する。ソースライン31の電圧を9Vに保持することにより、第2画素12を白表示に固定する。
【0031】
最後にゲートライン32をオフ(−5V)にすることにより第1TFT21及び第2TFT22のゲートを閉じ、第2画素12の電圧を1Vに固定する。ゲートが閉じたときのカップリングの影響により、第1画素11の電圧は9Vから4Vに変化する。このように、第1画素11では電圧4Vが得られ、第2画素12では電圧1Vが得られ、サブ画素として明るいグレイスケール信号が生成される。
【0032】
以上のように、本発明によれば、1つのサブ画素において、追加のソースラインまたはゲートラインを加えることなく、2つのガンマ電圧を得るための回路配置及びその駆動方法が提供される。
【0033】
本発明のアクティブマトリックス液晶表示装置は、携帯電話、デジタルカメラ、パーソナルデジタルアシスタント、自動車用ディスプレイ、航空用ディスプレイ、デジタルフォトフレーム、またはポータブルDVDプレーヤである電子装置に適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0034】
1 液晶パネル
2 ゲートドライバ
3 ソースドライバ
4 信号処理回路
11 第1画素
12 第2画素
21 第1TFT(第1薄膜トランジスタ)
22 第2TFT(第2薄膜トランジスタ)
23 第3TFT(第3薄膜トランジスタ)
31 ソースライン
32 ゲートライン
33 コモンライン(信号線)
34 静電容量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力データが新しいデータに変換されるデータ処理によって1つのサブ画素に2つの異なるガンマ信号を生成させることにより目標ガンマ信号を得るアクティブマトリックス液晶表示装置であって、
各サブ画素は、
第1画素と、
第2画素と、
前記第1画素及びソースラインの間に接続され、そのゲートがゲートラインに接続された第1薄膜トランジスタと、
前記第1画素及びゲートラインの間に接続された静電容量と、
前記第2画素及び信号線の間に直列接続され、そのゲートが前記ゲートラインに接続された第2薄膜トランジスタ並びにそのゲートが前記ソースラインに接続された第3薄膜トランジスタとを含み、
前記第1画素が前記ゲートラインによってスイッチングされ、前記第2画素が前記ゲートライン及び前記ソースラインによってスイッチングされ、前記第1画素と前記第2画素とで異なるガンマ信号を生成することを特徴とするアクティブマトリックス液晶表示装置。
【請求項2】
前記信号線は、コモンラインであることを特徴とする請求項1に記載のアクティブマトリックス液晶表示装置。
【請求項3】
前記2つの異なるガンマ信号は、一方が黒色信号または白色信号であり、他方が灰色信号であることを特徴とする請求項1に記載のアクティブマトリックス液晶表示装置。
【請求項4】
前記静電容量は、前記第1画素に接続される前記第1薄膜トランジスタのドレイン電圧を調整することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のアクティブマトリックス液晶表示装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のアクティブマトリックス液晶表示装置を使用する電子装置であって、携帯電話、デジタルカメラ、パーソナルデジタルアシスタント、自動車用ディスプレイ、航空用ディスプレイ、デジタルフォトフレーム、またはポータブルDVDプレーヤであることを特徴とする電子装置。
【請求項6】
請求項1に記載のアクティブマトリックス液晶表示装置の駆動方法であって、
ゲートラインをオンにする工程と、
ソースラインの電圧を低電位にする工程と、
ソースラインの電圧を高電位にする工程と、
信号線の電圧を反転する工程と、
ソースラインの電圧を再び低電位にし、第2画素の電圧を信号線の電圧と同じ電圧にして、第2画素を黒表示とする工程と、
ソースラインの電圧を再び高電位にし、第2画素の電圧を固定する工程と
により、暗いグレイスケール信号を生成することを特徴とするアクティブマトリックス液晶表示装置の駆動方法。
【請求項7】
請求項1に記載のアクティブマトリックス液晶表示装置の駆動方法であって、
ゲートラインをオンにする工程と、
ソースラインの電圧を低電位にする工程と、
ソースラインの電圧を高電位にする工程と、
信号線の電圧を反転する工程と、
ソースラインの電圧を高電位に保持したまま、第2画素の電圧を固定する工程と
により、明るいグレイスケール信号を生成することを特徴とするアクティブマトリックス液晶表示装置の駆動方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−191384(P2010−191384A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38369(P2009−38369)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(503141075)統寶光電股▲ふん▼有限公司 (155)
【氏名又は名称原語表記】TPO Displays,Corp.
【住所又は居所原語表記】No.12,Ke Jung Rd,Science−Based Industrial Park,Chu−Nan 350,Miao−Li County,Taiwan,R.O.C.
【Fターム(参考)】